説明

重量物運搬装置および杭の撤去方法

【課題】既設構造物の地下に埋設された部分を撤去する場合のように、狭い空間で効率的な重量物の運搬を可能とする重量物運搬装置を提供すること。
【解決手段】運搬対象となる杭PLを切断した各撤去ブロックRMa〜cを搭載可能に形成された支持フレーム30と、支持フレーム30を油圧シリンダ20,20により上下に昇降可能に支持するベースフレーム10と、ベースフレーム10を移動させるキャスター12と、を備えていることを特徴とする重量物運搬装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中埋設杭などの既設構造物の撤去の際に既設構造物の一部などの重量物を運搬するのに好適な重量物運搬装置およびこの重量物運搬装置を用いた杭の撤去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地中埋設杭などの既設構造物の撤去を行う場合、既設構造物の周囲地盤を掘削し、既設構造物を地上に引き上げることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、例えば、既設の橋の下を通る道路を拡幅する場合などにおいて、既設橋の主桁を残しながら、一部の橋脚やフーチングなどを撤去する技術も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−332559号公報
【特許文献2】特開平8−3937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、地下に新たに地下鉄・地下道路・下水道などの地下施設を建設する場合に、その建設予定の地下に建物や橋などの既設構造物を支持する杭が存在することがある。しかしながら、上述のような従来の技術では、この既設構造物の支持状態を維持しながら、この邪魔になる杭の一部のみを撤去することが困難であった。また、このような杭の一部を撤去するのに最適な運搬装置も知られていなかった。
【0005】
本発明は、上述の従来の問題点に着目して成されたもので、既設構造物の地下に埋設された部分を撤去する場合のように、狭い空間で効率的な重量物の運搬を可能とする重量物運搬装置およびこの重量物運搬装置を用いた杭の撤去方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために本発明では、運搬対象となる重量物を搭載可能に形成された重量物支持部と、この重量物支持部を昇降駆動機構により上下に昇降可能に支持するベース部と、このベース部を移動させる移動手段と、を備えていることを特徴とする重量物運搬装置とした。
【0007】
また、この重量物運搬装置を用いた本発明の杭の撤去方法は、橋の基礎フーチング部を支持する杭の一部である撤去対象部を撤去する杭の撤去方法であって、前記撤去対象部の上端部を露出させた開削部を掘削し、前記基礎フーチング部の下方において、前記基礎フーチング部を支持可能であるとともに、前記撤去対象部を挿通させた挿通穴を備えた支持床を前記撤去対象部の高さに構築する工程と、前記支持床と前記基礎フーチング部との間に支持装置を介在させて、前記支持床により前記橋を支持する工程と、前記支持床の下方部分を掘削して前記支持床の下方に作業スペースを形成する工程と、前記撤去対象部の下方に前記重量物運搬装置を配置させ、さらに、前記重量物支持部を上昇させて前記撤去対象部を支持可能な状態とする工程と、前記撤去対象部を前記基礎フーチング部側から切り離して前記重量物運搬装置により下方から支持した状態とする工程と、前記重量物支持部を下降させて前記撤去対象部を前記作業スペースの下部まで下降させるとともに、前記撤去対象部の上部を吊下装置により前記支持床から吊下状態で支持する工程と、前記作業スペース内において、前記撤去対象物を前記吊下装置による支持位置よりも下方位置で切断し、切断箇所よりも下方に形成された前記ブロックを前記重量物運搬装置により支持し、前記切断箇所よりも上方に残った前記撤去対象部を前記吊下装置により前記支持床から吊下支持した状態とする工程と、前記重量物運搬装置に支持された前記ブロックを前記作業スペースの外部に搬出する工程と、を実行することを特徴とする構造物撤去方法とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明の重量物運搬装置では、重量物支持部を上昇させて重量物を支持した後、重量物支持部を下降させた状態で、水平移動させることが可能である。
したがって、上方の重量物を搭載した後、上下方向に狭いスペースにおける重量物の運搬作業が容易である。特に、請求項2に記載の重量物運搬装置では、重量物支持部を上昇させて既設構造物を下方から支持した後、この既設構造物を切断したブロックを搭載した重量物支持部を下降させた状態で水平移動させることが可能である。また、請求項3に記載の重量物運搬装置では、重量物支持部を下降させた時に、ベース部と干渉することなくベース部よりも下方まで下降可能であるため、いっそう上下方向に狭いスペースでの運搬が可能である。
【0009】
また、本発明の杭の撤去方法では、橋の基礎フーチング部を支持床により支持した状態で、杭の撤去対象部を基礎フーチング部から切り離して吊下装置により支持床から挿通穴を通して挿通させ、重量物運搬装置の重量物支持部を上昇および下降させることで、撤去対象部を、この昇降ストロークに応じた上下寸法で下から切断し、その切断したブロックを開削部の外部に搬出することができる。
したがって、橋の基礎フーチング部を支持する地下に埋設された杭を狭い空間で効率的に撤去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態の重量物運搬装置を示す側面図であり、(a)は支持フレームの下降状態を示し、(b)は支持フレームの上昇状態を示す。
【図2】実施の形態の重量物運搬装置を示す平面図である。
【図3】実施の形態の重量物運搬装置を用いた杭の撤去方法を説明するための断面図である。
【図4】図3における矢印YCから見た矢視図を基本とする配置説明図である。
【図5】実施の形態の重量物運搬装置を用いた杭の撤去方法に用いる支持装置を示す断面図である。
【図6】実施の形態の重量物運搬装置を用いた杭の撤去方法の手順を説明するための説明図である。
【図7】実施の形態の重量物運搬装置を用いた杭の撤去方法の手順を説明するための説明図である。
【図8】実施の形態の重量物運搬装置を用いた杭の撤去方法で使用した吊下装置の装着具を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図1〜図8に基づいて、この発明の実施の形態の重量物運搬装置Aおよびこの重量物運搬装置Aを用いた杭の撤去方法について説明する。
【0012】
(重量物運搬装置)
まず、図1および図2に基づいて、実施の形態の重量物運搬装置Aについて説明する。
この重量物運搬装置Aは、後述する撤去対象部としての杭PLを切断したブロック(重量物)を運搬するのに最適に形成されたもので、図1および図2に示すように、ベースフレーム(ベース部)10と、一対の油圧シリンダ(昇降駆動機構)20,20と、支持フレーム(重量物支持部)30とを備えている。
【0013】
ベースフレーム10は、金属製であり、図2に示すように上方から見て略正方形の枠状に形成されており、内周には、上方から見て略8角形の通過用穴(通過部)11が形成されている。さらに、ベースフレーム10の4箇所のコーナ部の近傍には、下面に移動手段としてのキャスター12,12,12,12が設けられており、キャスター12の回転によって水平方向へ移動可能となっている。
油圧シリンダ20は、ベースフレーム10の四角形の対向する一対の辺の中央部に図1に示すように軸方向を上下方向に向けて立設され、シリンダ22に対してピストンロッド21が上下に移動する。また、シリンダ22の下端部には、ベースフレーム10よりも下方に配置された下方突出部22aを備えている。
【0014】
支持フレーム30は、略水平に配置された支持ベース31と、この支持ベース31から立ち上げられた上下フレーム32と、この上下フレーム32の上端部とピストンロッド21の上端部とを結合する結合フレーム33とを備えている。
【0015】
支持ベース31は、図2に示すように、油圧シリンダ20,20を水平に結ぶ直線と平行に延在された一対の横フレーム31a,31aと、これら横フレーム31a,31aに対して直交方向に架け渡されて両横フレーム31a,31aを連結する一対の連結フレーム31b,31bと、各横フレーム31aから外方に張り出して設けられた張出部31cとが、上面を同一の高さとして結合されている。なお、支持ベース31は、通過用穴11を上下方向に通過可能な寸法に形成されている。
【0016】
前述した上下フレーム32は、全部で4本設けられており、各横フレーム31a,31aの両端部に結合され、図1に示すように、各横フレーム31a,31aから上方に立ち上げられている。
そして、一対の上下フレーム32,32の上端部が、結合フレーム33を介して、ピストンロッド21の上端部に結合されている。
したがって、支持フレーム30は、油圧シリンダ20の伸縮ストロークに伴って上下に移動するようになっており、油圧シリンダ20の最短縮時には、通過用穴11を通り図1(a)に示すように、ベースフレーム10よりも下方に支持ベース31が配置される。一方、油圧シリンダ20の最伸張時には、図1(b)に示すように、支持ベース31がシリンダ22の上端の近傍の高さに配置される。
【0017】
また、図2において二点鎖線で示す杭PLは、本実施の形態の既設構造物における撤去対象部RMであり、支持ベース31は、この杭PLを下方から支持可能な寸法に形成され、かつ、油圧シリンダ20,20は、杭PLと干渉しないよう杭PLの直径よりも大きな間隔で設置されている。
【0018】
(既設構造物)
次に、本実施の形態の重量物運搬装置Aにより撤去する杭PLを備えた既設構造物について説明する。
図3に示す既設構造物としての高架橋ELBを示しており、この高架橋ELBの橋脚BBは、地中に設置された基礎フーチング部FDに支持され、この基礎フーチング部FDは、地中に打設された複数の杭PLに支持されている。
このような高架橋ELBの下方の地下に地下鉄・地下道路・下水道などの地下施設を新たに建設する際に、地下施設を設置する深さによっては杭PLが邪魔になる場合がある。
本実施の形態の重量物運搬装置Aを用いた杭の撤去方法は、高架橋ELBを供用しながら、杭PLの撤去を可能とする方法であり、かつ、この杭PLにおいて、基礎フーチング部FDの下面に結合されている上端部分(これを撤去対象部RMとする)を撤去するのに、実施の形態の重量物運搬装置Aを用いる。
【0019】
(杭の撤去方法)
次に、図3〜図8に基づいて実施の形態の杭の撤去方法について順を追って説明する。
(逆巻きスラブ設置工程)
<掘削工程>
杭PLの撤去に先立ち、掘削によって図3に示す開削部100を形成する。この開削部100は、最初は、地表SEから杭PLの上部の撤去対象部RMが露出する深さL1で掘削する。
【0020】
<本体杭の打ち込み工程>
次に、この開削部100において、あらかじめ設定された位置に本体杭101を打ち込む。この本体杭101は、例えば、鋼管製のものを用い、図4に示すように、撤去対象の杭PLが設置された範囲を囲むように高架橋ELBの延在方向に沿って2列に配列されるとともに、この列の間にも複数配置する。
【0021】
<上床スラブ構築工程>
次に、本体杭101の上に、図3に示す上床スラブ(支持床)102を構築する。
なお、上床スラブ102には、杭PLを挿通させる挿通穴102aを形成する。また、上床スラブ102は、高架橋ELBよりも幅広い範囲に設け、かつ、図4に示すように、高架橋ELBに沿って長く帯状に設ける。なお、この上床スラブ102は、地下施設を建設した場合に、天井部分などの地下施設の上部を構成する部分である。
そして、上床スラブ102の硬化後に、開削部100をさらに掘り下げ、上床スラブ102との間に作業スペース103を有した作業床104を形成する。この作業スペース103の上下方向寸法は、実施の形態の重量物運搬装置Aにおいて油圧シリンダ20を最も短縮させた際の重量物運搬装置Aの上下方向寸法よりも大きな寸法とする。
なお、本実施の形態では、開削部100の上を地表SEの高さにおいて覆工板CVで覆い、地表SEをこの作業前と同様の形態で使用可能とする。
【0022】
(杭撤去工程)
次に、杭PLのうちで、基礎フーチング部FDに連続する上部の撤去対象部RMを撤去する工程を、順を追って説明する。
<荷重支持工程>
杭PLの撤去対象部RMの撤去に先立ち、高架橋ELBの荷重を上床スラブ102により支持する荷重支持工程を実施する。
この場合、基礎フーチング部FDと上床スラブ102との間に支持装置200を設置する。この支持装置200は、いわゆる油圧ジャッキであり、図5に示すように、シリンダ201と、このシリンダ201内に上下に摺動可能に設けられて両者の間にシリンダ室202を形成するピストン203と、シリンダ201の外周に形成された図示を省略した雄ネジに噛み合う図示を省略した雌ネジを内周に有した外部ナット204とを備えている。なお、外部ナット204には、この外部ナット204を回転するためのハンドル204aが取り付けられている。
【0023】
この支持装置200による荷重支持工程を順に説明する。
まず、支持装置200を、上床スラブ102と基礎フーチング部FDとの間に設置し、次に、シリンダ室202に油圧を供給して図5(a)に示すようにピストン203を上昇させ、支持装置200により高架橋ELBにおいて基礎フーチング部FDよりも上方部分の荷重を支持した状態とする。
次に、外部ナット204を、シリンダ201に対して回転させて上昇させ、支持装置200の機械的構造部分で荷重を支持可能な状態とする。このとき、本実施の形態では、並行してシリンダ室202に油圧を供給し、図5(b)に示すように外部ナット204をピストン203とともに基礎フーチング部FDの元の高さよりも僅かに高い位置まで上昇させる。
次に、シリンダ室202の油圧を抜いて、図5(c)に示すようにピストン203を下降させ、高架橋ELBにおいて基礎フーチング部FDよりも上方の荷重を、支持装置200により機械的に支持した状態とする。このとき、外部ナット204とシリンダ201との間のネジ部分の撓みや圧縮変形により基礎フーチング部FDは僅かに下降する。したがって、この下降時に基礎フーチング部FDが元の高さとなるように、図5(b)の段階で元の高さよりも僅かに高い位置に配置するようにしている。
【0024】
<第1切断工程>
次に、杭PLの撤去対象部RMの撤去の手順を図6および図7に基づいて説明する。
まず、図6STEP1に示すように、撤去対象部RMの下端部を作業床104の上面に沿って第1切断部301にて切断する。
【0025】
<第2の切断工程>
次に、撤去対象部RMの下において、第1切断部301の切断に伴い生じた隙間部分に台車210を配置する。
次に、撤去対象部RMにおいて作業スペース103に露出している部分の上端部を第2切断部302にて切断する。したがって、第2切断部302により撤去対象部RMから切り離された第1撤去ブロックRMaが台車210に支持された状態となり、この第1撤去ブロックRMaを台車210により開削部100の外部に搬出する。
【0026】
<第3切断工程>
次に、残った撤去対象部RMの下方に重量物運搬装置Aを配置し、さらに、図6STEP2に示すように、油圧シリンダ20,20を伸張駆動させて支持フレーム30を上昇させ、支持ベース31を撤去対象部RMの下面に当接あるいは近接させて撤去対象部RMを受け止め可能な状態とする。
【0027】
これと同時に、撤去対象部RMの上端部に吊下装置400を装着する。
この吊下装置400は、装着具410と、図6STEP3に示す吊下装置本体420とを備えている
装着具410は、図8に示すように、円環状を成す本体411と、この本体411の外周から外径方向へ突出した一対の吊下部412と、ボルトの締め付けによるストローク変化により本体411を縮径可能に構成された調整部413とを備えている。
【0028】
また、吊下装置本体420は、挿通穴102aの上部に架け渡し可能な長さの吊下ロッド421と、この吊下ロッド421から吊り下げられ、図示を省略したチェーンブロックにより吊下長さを変更可能な一対のチェーン422,422とを備えている。
【0029】
以上のような吊下装置400の装着具410を、図6STEP2に示すように、撤去対象部RMの上部の外周に装着し、調整部413により本体411を縮径させて、きつく装着させる。なお、このときの装着具410の装着位置は、基礎フーチング部FDから後述する第3切断部303による切断を可能とするスペースを確保して下方に下がった位置とする。
次に、撤去対象部RMの上端部において基礎フーチング部FDと装着具410との間を切断する。この切断部分を第3切断部303とする。
この切断により、撤去対象部RMは、基礎フーチング部FDから切り離され、その荷重は、重量物運搬装置Aに支持される。
【0030】
<第4切断工程>
次に、重量物運搬装置Aの油圧シリンダ20を短縮させ、図6STEP3に示すように支持フレーム30を下降させて撤去対象部RMの下部が作業スペース103内に配置させた状態とする。
【0031】
さらに、撤去対象部RMを吊下装置本体420から吊り下げた状態とする。
すなわち、上床スラブ102の上において挿通穴102aを跨いで吊下ロッド421を架け渡し、この吊下ロッド421から垂下された一対のチェーン422,422を、装着具410の吊下部412,412に係止させ、さらに、図示を省略したチェーンブロックによりチェーン422の長さを調節して、チェーン422に弛みがない状態とする。
【0032】
そして、この状態で、図6STEP4に示すように、撤去対象部RMの作業スペース103に配置された部分の上端部を第4切断部304にて切断する。
この切断により、撤去対象部RMから切り離された第2撤去ブロックRMbは、重量物運搬装置Aに支持され、一方、撤去対象部RMの残りの部分は、吊下装置400により上床スラブ102から吊り下げられた状態となる。
その後、重量物運搬装置Aを移動させ、第2撤去ブロックRMbを開削部100から外部へ搬出する。
【0033】
<第5切断工程>
次に、重量物運搬装置Aを再び撤去対象部RMの下方へ移動させ、さらに、図6STEP5に示すように、支持フレーム30を、撤去対象部RMを支持可能に上昇させる。
そして、図7STEP6に示すように、吊下装置400のチェーン422を下方へ引き出すとともに、重量物運搬装置Aの支持フレーム30を下降させる。
【0034】
さらに、支持フレーム30が下降したら、この状態でチェーン422の長さを調節して展張状態とし、図7STEP7で示すように、撤去対象部RMを第5切断部305にて切断し、撤去対象部RMから第3撤去ブロックRMcを切り離す。
【0035】
したがって、第3撤去ブロックRMcは、重量物運搬装置Aに支持され、撤去対象部RMは、吊下装置400により吊り下げられた状態となる。この状態で、重量物運搬装置Aを移動させて、第3撤去ブロックRMcを開削部100から外部へ搬出する。
【0036】
その後、重量物運搬装置Aを、吊下装置400に吊り下げられた撤去対象部RMの下方に移動させ、さらに、図7STEP8に示すように、支持フレーム30を、撤去対象部RMを支持するまで上昇させる。
次に、吊下装置400のチェーン422を吊下ロッド421から下方へ引き出して、撤去対象部RMを支持フレーム30で支持した状態とし、支持フレーム30を下降させる。また、この支持フレーム30の下降過程で、図7STEP9に示すように、チェーン422を装着具410から取り外すとともに、装着具410を撤去対象部RMから取り外す。
その後、重量物運搬装置Aを移動させて、撤去対象部RMを開削部100の外部へ搬出する。
【0037】
以上のようにして、杭PLにおいて、基礎フーチング部FDに結合されている上端部である撤去対象部RMの撤去を終了する。
その後、上床スラブ102の下方に下床スラブなどを設け、両スラブの間に地下鉄・地下道路・下水道などの地下施設を建設し、その際に、杭PLの撤去対象部RMよりも下方部分を撤去する。
以上説明した実施の形態の重量物運搬装置Aおよびこの重量物運搬装置Aを用いた杭PLの撤去方法は、以下に列挙する効果を備えている。
a)重量物運搬装置Aは、キャスター12により水平移動可能なベースフレーム10と、撤去対象部RMを支持可能に形成され、かつ、ベースフレーム10に油圧シリンダ20,20により上下可能に取り付けられた支持フレーム30とを備えているため、重量物運搬装置Aの上方に配置された撤去対象部RMを支持して下降させ、この下降状態で、水平移動させることが可能である。
したがって、上下方向に狭い作業スペース103において撤去対象部RMから切り離した各撤去ブロックRMa〜cおよび撤去対象部RMの運搬作業が容易である。特に、ベースフレーム10には通過用穴11を形成し、支持フレーム30を下降させた時に、ベースフレーム10よりも下方まで下降可能であるため、このときの上下方向寸法を小さく抑えてより狭い作業スペース103での運搬が可能である。
【0038】
b)撤去対象部RMを、吊下装置400により上床スラブ102から吊り下げるとともに、重量物運搬装置Aを用いることにより、撤去対象部RMを切断した際に、この切断した部分よりも下方の塊部分のみを、重量物運搬装置Aにより支持し運搬して開削部100の外部に搬出可能である。
すなわち、本実施の形態では、撤去対象部RMを第1撤去ブロックRMa、第2撤去ブロックRMb、第3撤去ブロックRMcおよびその残り部分に順に切断し、それぞれを1つの塊として搬出可能となった。
よって、撤去対象部RMの撤去を、はつり作業などの手作業により行うものと比較して、効率よく、短時間に、静かに、粉塵などの発生を抑えて行うことが可能である。
【0039】
c)油圧シリンダ20のシリンダ22には、ベースフレーム10よりも下方に配置された下方突出部22aを備えている。したがって、油圧シリンダ20の上端の高さを低く抑えつつ、ピストンロッド21の上下方向ストローク量を大きく確保することができる。
これにより、上記a)のように上下方向寸法が限られたスペースで、支持フレーム30の上下移動量を大きくすることができる。よって、撤去対象部RMの一回の切断による上下方向寸法を大きくし、切断回数を抑え作業効率向上を図ることができる。
【0040】
d)杭PLの撤去対象部RMの撤去を、高架橋ELBの橋脚BBを上床スラブ102により支持した状態を維持して行うようにしたため、高架橋ELBの掛け替えなどが不要であり、効率的に地下施設を設けることができる。
【0041】
e)支持装置200には、シリンダ201の外周に外部ナット204を設けたため、シリンダ室202の油圧を抜いても基礎フーチング部FDを機械的に支持する状態を維持できる。したがって、油圧のみで支持するのと比較して、継続的な支持が容易である。
【0042】
以上、図面を参照して本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0043】
例えば、実施の形態では、既設構造物として高架橋ELBを示し、また、撤去対象部として杭PLの上端部を示し、運搬対象の重量物として杭PLを切断したブロックとしましたが、既設構造物、撤去対象部、重量物としては、これらに限定されるものではなく、柱や橋脚の一部を撤去する際にも重量物運搬装置を使用することができ、かつ、重量物としても、上下方向に移動させるものであれば、このような既設構造物の撤去以外の重量物の運搬にも使用することができる。
【0044】
また、実施の形態では、ベース部としてのベースフレーム10は、四角の枠状に形成したが、この構造は、枠状のものに限定されず、板状など他の形状に形成してもよい。また、枠状に形成した場合でも、その形状は、実施の形態で示した四角に限定されない。さらに、通過部としての通過用穴11の形状も同様に実施の形態で示した形状に限定されるものではなく、運搬対象の既設構造物およびそれを切断したブロックの形状に基づいて任意の形状に形成することができる。
【0045】
また、実施の形態では、ベース部を移動させる移動手段として、キャスター12を示しこのキャスター12が回転して水平方向へ移動可能とした例を示したが、ベース部を移動させる手段としてはキャスター12に限られるものではなく、例えば、駆動手段により回転される駆動輪を備えたものや、車輪以外の無限軌道などの他の手段を用いてベース部を移動させるものなどを用いることもできる。
【0046】
実施の形態では、昇降駆動機構として、一対の油圧シリンダ20,20を示したが、重量物支持部をベース部に対して昇降させるものであれば、実施例で示したものに限定されない。例えば、油圧以外の流体圧力を使用するものや、あるいは、モータなどの駆動手段の回転により歯車やチェーンなどを用いた減速回転伝達により昇降させるものを用いてもよい。
【0047】
また、実施の形態では、重量物支持部として、複数のフレームを組み合わせた支持フレーム30を示したが、その構造や形状は実施の形態で示したものに限定されるものではなく、その一部や全てにフレーム以外の板状や網状のものを用いた構造としてもよい。
【0048】
また、実施の形態では、支持床として、新たに建設する地下施設を構成する上床スラブ102を示したが、これに限定されるものではなく、支持専用の床を用いてもよい。
【符号の説明】
【0049】
10 ベースフレーム(ベース部)
11 通過用穴(通過部)
12 キャスター(移動手段)
20 油圧シリンダ(昇降駆動機構)
30 支持フレーム(重量物支持部)
100 開削部
102 上床スラブ(支持床)
102a 挿通穴
103 作業スペース
200 支持装置
400 吊下装置
A 重量物運搬装置
ELB 高架橋(既設構造物)
PL 杭
RM 撤去対象部
RMa 第1撤去ブロック(重量物)
RMb 第2撤去ブロック(重量物)
RMc 第3撤去ブロック(重量物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運搬対象となる重量物を搭載可能に形成された重量物支持部と、
この重量物支持部を昇降駆動機構により上下に昇降可能に支持するベース部と、
このベース部を移動させる移動手段と、
を備えていることを特徴とする重量物運搬装置。
【請求項2】
前記重量物は、既設構造物を切断したブロックであり、
前記重量物支持部は、前記ブロックを切断する前の既設構造物を下方から支持可能に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の重量物運搬装置。
【請求項3】
前記ベース部は、前記重量物支持部を下降させた時に、前記重量物支持部と干渉せずに通過させる通過部を備え、
前記昇降駆動機構は、前記重量物支持部を、前記通過部を通過させて前記ベース部よりも下方まで下降可能に構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の重量物運搬装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の重量物運搬装置を用いて橋の基礎フーチング部を支持する杭の一部である撤去対象部を撤去する杭の撤去方法であって、
前記撤去対象部の上端部を露出させた開削部を掘削し、前記基礎フーチング部の下方において、前記基礎フーチング部を支持可能であるとともに、前記撤去対象部を挿通させた挿通穴を備えた支持床を前記撤去対象部の高さに構築する工程と、
前記支持床と前記基礎フーチング部との間に支持装置を介在させて、前記支持床により前記橋を支持する工程と、
前記支持床の下方部分を掘削して前記支持床の下方に作業スペースを形成する工程と、
前記撤去対象部の下方に前記重量物運搬装置を配置させ、さらに、前記重量物支持部を上昇させて前記撤去対象部を支持可能な状態とする工程と、
前記撤去対象部を前記基礎フーチング部側から切り離して前記重量物運搬装置により下方から支持した状態とする工程と、
前記重量物支持部を下降させて前記撤去対象部を前記作業スペースの下部まで下降させるとともに、前記撤去対象部の上部を吊下装置により前記支持床から吊下状態で支持する工程と、
前記作業スペース内において、前記撤去対象物を前記吊下装置による支持位置よりも下方位置で切断し、切断箇所よりも下方に形成された前記ブロックを前記重量物運搬装置により支持し、前記切断箇所よりも上方に残った前記撤去対象部を前記吊下装置により前記支持床から吊下支持した状態とする工程と、
前記重量物運搬装置に支持された前記ブロックを前記作業スペースの外部に搬出する工程と、
を実行することを特徴とする構造物撤去方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−197610(P2012−197610A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62817(P2011−62817)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(390027513)大瀧ジャッキ株式会社 (26)
【Fターム(参考)】