説明

重量靴

【課題】片足の靴の全体重量を装着者の体格に合わせ、着用初期設定を最小重量にして適切なトレーニング効果を上げるとともにその後体力増強に応じて全体重量を重量調整部材の交換で重量設定でき、しかも重りを靴内部に収納し外観を良好するとともに、歩行工程での重量バランスが容易に調整でき、靴底踏付け部が屈曲するので歩行を阻害することなく歩き易い重量靴を提供するものである。
【解決手段】重量靴1の片足の最小重量を装着者の体重の0.6%以上とし、第1の重量調整部材4を靴底3の踵部に埋設すると共に、第2の重量調整部材5を靴底3と中敷8の間に配設し、予め準備した重さが異なる第2の重量調整部材の着脱交換によって全体重量を調節可能とした。また第2の重量調整部材5は平面形状が足形で厚みを一定の板状とすると共にゴムと鉄粉との混合物で構成し可撓部材とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行時に足の筋肉に通常より下肢に大きな負荷を与えることができる重量靴に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、運動不足による体脂肪の増加防止や体力維持向上のため、重たい靴を用いて歩行、走行などの運動を行い下半身に負荷を与え足の筋肉強化やエネルギー消費増加による減量効果を図ることが提案されている。例えば、従来の重量靴の靴底として、弾力性を有するアウトソール及びこの上方に配されたカップインソールから構成され、前記アウトソールの上面に1つの凹部が爪先から踵部にかけた長手方向に前記アウトソールの輪郭に相似するように形成され、前記凹部に弾性材料に金属粉粒を混合した1つの重りを埋設された靴底が特開2002−125708号公報で開示されている。また、重量部材を備えた靴においては、靴底又は中敷に重量部材を着脱することにより、全体重量又は重量バランスが調節されるようにした靴が特開2000−312602号公報に開示されている。
【0003】
しかしながら、前者の重量靴の靴底に埋設された重りは爪先側が薄く踵部は厚くなるような形状であるため靴の重心が踵部よりになり、歩行中に踵部が下がって踵抜けが発生したりして歩行しづらいものであった。またその重りを成形するにはサイズ毎に成形型を準備しなければならず製造コストが増加し、またその重量靴は全体重量が当初から通常の3〜4倍重く設定され、しかも靴完成後では重りの着脱ができない構造であるため、装着者の体格にあわず足や膝を痛める原因となっていた。
【0004】
一方、後者の重量靴は重りを着脱し、靴の全体重量又は重量バランスが調整できるように構成されているが、靴底側面に多数貫通した重りの装着孔が形成され、また重量を重く設定するにはそれだけ装着する靴底の装着孔の径も大きくなり、それに伴って通常の靴底よりも厚くなる。よって、重量靴は重りが多数であるため重量バランスを設定することが難しく、また靴底に装着した重り又は装着孔が外部から見えるため違和感があり外観が好ましいものでなく満足できるものではなかった。そしてその靴の全体重量は単にウォーキング用には片足の重量が400g〜800g程度で単に想定されており、特に体格の小さい者(体重が軽い人)にとっては上記と同様に前記重りは重量過剰となり足を痛める原因となり、一方体格が大きい人(体重が重たい人)にとっては重りが重量過小となり長い期間トレーニングしても効果が効果的に得られず、全体重量に関して装着者の体格は全く考慮されていなかった。
【特許文献1】特開2002−125708号公報
【特許文献2】特開2000−312602号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、従来の欠点を解消し装着者の体格を考慮したもので、片足の靴の全体重量の初期設定を最小重量にして適切なトレーニング効果を上げるとともにその後体力増強に応じて全体重量を重く設定変更でき、しかも重りを靴内部に収納して外部から見えないようし外観を良好するとともに、重量バランスの調整を容易にし、爪先部に屈曲性を有させ歩き易い重量靴を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、重量調整部材を2箇所備えた重量靴において、片足の最小重量を装着者の体重の0.6%以上とし、第1の重量調整部材を靴底の踵部内に埋設すると共に、第2の重量調整部材は外形形状が同一で比重が夫々異なるものとし、靴底と中敷の間に着脱交換によって全体重量を調節可能とした重量靴を要旨とする。本発明の重量靴について最小重量を装着者の体重の0.6%以上に設定することは、鋭意研究の結果、週当たり140分以上20週継続した歩行実験を行い図3に示すように大腰筋の増加がみられ、効果が得られることが判明した。また片足の重量靴は、最大重量を体重の3%以下と設定することが好ましい。これらの重量靴の重量設定は、重量靴の重量が体重の0.6%未満であれば大腰筋増加の効果はみられず、また重量靴の最大重量を体重の3%以上とすると足や膝に負荷が掛かりすぎ痛みを生じる虞があるからである。
【0007】
また前記第2の重量調整部材は平面形状を足形とし厚みを一定にすると共にゴムと金属粉との混合物で構成し可撓部材としたことを要旨とする。金属粉としては鉄、鉛、ステンレスなどが使用できるが、コスト面から鉄が好ましい。これにより、本発明は靴の中に入れて装着しても屈曲するので歩行動作をスムーズに行うことができる。また第2の重量調整部材は平板状にしたためロール成形できるので成形型が必要なく、多量生産でき、製造コストを低く抑えることができる。第2の重量調整部材は前記金属粉を天然ゴム、合成ゴムなどに配合しロールでシート状に生地出しして、足形に裁断して成形される。また第2の重量調整部材はサイズ毎に外形を同一形状し、前記混合物の配合比により比重を夫々変えて100g〜200g重量差のものを複数個準備しておき、必要に応じて着脱交換し、重量靴の全体重量を変更することができる。
【0008】
さらに前記第1の重量調整部材と第2の重量調整部材との重量バランスにより靴の重心を足の第1中足骨の母指球と踵骨の最下点と中間付近に設定したことを要旨とする。本発明の重量靴は靴底の踵部に第1の重量調整部材を埋設したことで靴の重心が靴底中央付近から踵方向に移動するが、第2の重量調整部材が図2及び図5に示すように爪先部が幅広く踵部は狭い板状の足形であるので、その重心(g)は本体部材の中心(f)から少し爪先よりに位置されているので、これを靴底と中敷の間に配設することにより、前記靴底の踵部に第1の重量調整部材を埋設した靴の重心(e)を爪先方向に戻して移動させ足の第1中足骨(b)の母指球(c)と踵骨(d)の最下点との中間付近に調整設定することができる。従って、本発明の重量靴は靴の重心を足の骨格構造のおける縦アーチの中央部に合致させ、具体的にはその位置は足の舟状骨(a)に相当し、爪先部と踵部とに均等に全体重量を分散することができ、疲労感が少なく歩行又は走行がスムーズに行える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の重量靴は重量調整部材が靴底の踵部に埋設した第1の重量調整部材と靴底と中敷の間の配設した第2の重量調整部材で構成し、片足の重量靴の最小重量を装着者の体重の0.6%以上とし最小重量の初期設定でトレーニング効果、例えば大腰筋や大殿筋の増強強化が図られるとともに、体脂肪の増加が防止される。また本発明の重量靴は重量調整部材を外部から見えず、しかも重量靴の全体重量を上記2箇所に分散した構造であるので通常の靴と変わらず靴底の厚みを薄くでき外観が良好となる。さらに、本発明の重量靴は靴底本体に重量調整部材が踵部のみに埋設され爪先部には埋設されていない構造であるので爪先部は屈曲性を有し、また靴の重心は第2の重量調整部材の着脱交換で足の第1中足骨の母指球と踵骨の最下点と中間付近に設定調整できる。そして、重量靴は全体重量を爪先部と踵部とに均等に分散できるので、多少重たく設定しても踵抜けがなく歩行し易く足や膝を痛めることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の重量靴は装着者の体格に対応して下肢強化や体脂肪増加防止という目的を、初期設定を最小重量で足に最適な負荷をかけ、その後体力増強に応じて重量を増加し負荷を選定できるようにした。また重量調整部材を外部から見えなくするとともに靴底内部と外部との2箇所に分散して重量バランスを容易に調整できるようにした。
【実施例1】
【0011】
図1は、本発明の重量靴の断面図であり、1は重量靴、2は胛被、3は靴底、4は第1の重量調整部材、5は第2の重量調整部材、6は舌片、7は履口部、8は中敷である。図2は第2の重量調整部材の斜視図であり、図3は体重当たりの靴重量と大腰筋変化率との相関関係を示す図である。図4は体重と靴サイズとの関係を示す相関図であり、図5は本発明の重量靴の重心を足の骨格構造に合わせて全体重量を爪先部と踵部に均等に分散させ状態を示した説明図である。
【0012】
本発明の実施例の重量靴1は、胛被2と、その底面に備えた靴底3とから構成される。胛被2は、皮革、合皮などの素材からなり履口前方には切欠きを設けて緊締部を形成し、そこに鳩目を設け紐が通されている。靴紐は靴重量で伸びが発生しない素材が好ましい。そして、緊締部の内側には通常より厚い低反発スポンジ素材、ゲル素材を用いた舌片6を設けておくと足の甲にかかる衝撃を和らげ足を痛めることがない。
胛被2の素材は縫製箇所が重りで傷むことから引張強度が大きい縫い糸で縫製されることが好ましい。また靴の爪先部には歩行中の衝撃力を緩和するために合成樹脂製又は金属製の爪先補強片を設けることが好ましい。また履口部7の内側には通常より厚いスポンジを介在すれば足首が保護され踵抜けがさらに防止される。
【0013】
また、重量調整部材は2つの第1の重量調整部材4と第2の重量調整部材5とからなり、第1の重量調整部材4は靴底3の踵部に埋設され、金属、ゴム、合成樹脂などの重たい素材を使用できるが、後述する第2の重量調整部材と同一素材でもよい。第2の重量調整部材5は天然ゴムや合成ゴムに鉄粉配合しロールで厚み5mmのゴムシート状に生地出した後足形に裁断し加硫して成形する。また比重を異にした第2の重量調整部材5は、ゴムに対して鉄粉の配合率を変えて成形され、例えば150g、300g、450gの重量差150gの3種類の重りを作成し、重さが異なるものを準備する。
【0014】
そして靴底3には胛被の踵下面部に例えば100gの第1の重量調整部材4を両面接着テープで装着し、その後胛被の下部の靴底成形空隙に熱可塑性ウレタン素材を射出成形して第1の重量調整部材を埋設した靴を成形する。またこの他の成形法として、前記靴底3はゴムや合成樹脂で成形したユニットソールの踵部に第1の重量調整部材を埋設し、その後胛被と接着して靴を成形してもよい。
【0015】
片足の重量靴の全体重量は図4に示すように体重と靴サイズとの相関表より、例えば靴サイズを23.5cmとすれば、体格に相関する体重を55kgと推定されその体重の0.6%の330gとなるように第1の重量調整部材を埋設した重量靴を成形し、これに第2の重量調整部材の代わりに同一厚みの同一形状した軽量スポンジ中底(重さ20g)を配設して初期設定の重量靴の最小重量を350gにした。
【0016】
そして、前記軽量スポンジ中底を配設した350gの重量靴は、必要に応じて上記軽量スポンジ中底を取り出し、該軽量スポンジ中底と前記150g、300g、450gの重量差150gの3種類の重りの第2の重量調整部材と夫々交換することにより重量靴の全体重量を500g、650g、750gへと段階的に変更し重量設定することができる。次に、重量設定した重量靴は、履口から第2の重量調整部材4を靴の中に挿入した後、中敷8をセットして本発明の重量靴1を完成させる。
【0017】
完成した重量靴1は、当初踵に埋設された第1の重量調整部材4により靴の重心が中心から踵よりなるが、次に第2の重量調整部材5を靴内にセットすることで、靴の重心が爪先前方へ移動しほぼ足の第1中足骨の母指と踵骨の最下点と中間付近に容易に設定でき、これにより重量バランスがとれた状態での歩行又は走行ができ、しかも全体重量を均等に爪先部と踵部に分散できるので、歩き易い効果が得られる。また、本発明の重量靴は第2の重量調整材が同一厚みなので交換しても足との隙間が変わることがなく、履用感が一定に保たれる。
【0018】
さらに、本発明は装着者の体力増強により順次重たい第2の重量調整部材と交換し体力増強に応じて全体重量を設定できる。また本発明の重量靴は第1の重量調整部材が靴底本体踵部のみで爪先部には埋設されてなく、しかも靴底上面に可撓性の第2の重量付加靴を配置した構造であるので靴底の爪先部が屈曲できスムーズな歩行又は走行が行なえる。そして、本発明の重量靴は第1の重量調整部材が靴底踵部に埋設されているので踵部が補強され着地での安定性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例の重量靴の断面図である。
【図2】本発明の実施例において第2の重量調整部材の斜視図である。
【図3】本発明についての体重当たりの靴重量と大腰筋変化率との関係を示す図である。
【図4】本発明についての体重と靴サイズとの関係を示す相関図である。
【図5】重量靴の重心を足の骨格構造に合わせて全体重量を爪先部と踵部とに均等に分散させた状態を示した説明図である。
【符号の説明】
【0020】
1 重量靴
2 胛被
3 靴底
4 第1の重量調整部材
5 第2の重量調整部材
6 舌片
7 履口部
8 中敷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量調整部材を2箇所備えた重量靴において、片足の最小重量を装着者の体重の0.6%以上とし、第1の重量調整部材は靴底の踵部に埋設すると共に、第2の重量調整部材は外形形状が同一で比重が夫々異なるものとし、靴底と中敷の間に着脱交換によって全体重量を調節可能とした重量靴。
【請求項2】
前記第2の重量調整部材は平面形状が足形で厚みが一定の板状とすると共にゴムと金属粉との混合物で構成し可撓部材としたことを特徴とする請求項1記載の重量靴。
【請求項3】
前記第1の重量調整部材と第2の重量調整部材との重量バランスで靴の重心を靴の側面からみて足の第1中足骨の母指球と踵骨の最下点と中間付近に設定したことを特徴とする請求項2記載の重量靴。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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