説明

重金属イオンを含有する液体から重金属イオンを除去する方法

【課題】白金等の貴金属を必要とせずに低コストでかつ効率よく、液中に存在する重金属イオンを光照射により還元し重金属として析出させることによって除去することのできる光触媒を使用して重金属イオンを含有する液体から重金属イオンを除去する方法を提供する。
【解決手段】重金属イオンを含有する液体を、(1)酸化セリウムに、(2)カルシウム、ストロンチウム、イットリウム、ランタンからなる群から選択された少なくとも1種の異種元素を添加してなる酸化セリウム光触媒と接触させて光照射することにより、重金属イオンを含有する液体から重金属イオンを除去する。光触媒中の異種元素の添加量は酸化セリウムを基準として0.1〜100モル%、好ましくは1〜50モル%、特に5〜20モル%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液中に存在する重金属イオンを光を照射することによって酸化あるいは還元し、重金属あるいは酸化物として析出させることによって除去することのできる光触媒を使用して重金属イオンを含有する液体から重金属イオンを除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工場排水や、鉱山跡から溶出した鉛、カドミウム、6価クロム、ヒ素、水銀等の有害重金属による干潟、運河、河川、泥地等の汚染が深刻化しており、健全な生態系の保持の観点から早急な対策が求められている。
めっき工業や金属加工業から排出される重金属の捕集については、これまでに化学的にキレートを形成させることによって不溶化する方法、イオン交換法によって重金属を吸着剤により固定する方法、焼却炉で高温処理し重金属成分を分離する方法等により回収されている。これらの方法はいずれもシステムが複雑化するために処理コストが高くなるとともに、既に環境中に放出された重金属、特に低濃度の重金属については回収が困難であるという問題がある。
【0003】
一方、光触媒については、光照射によって生じる電子で反応物を還元、正孔で反応物を酸化する能力を持つことが既に知られており、この技術を応用した有害物質の分解除去、光化学反応、および水分解反応などの化学反応プロセスは、環境およびエネルギー問題の観点から近年、注目を集めている。(例えば、非特許文献1,2及び特許文献1,2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−144136号公報
【特許文献2】特開平6−320011号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Chemical Engineering Science,Vol.47, No.15/16, p3857-3862(1992)
【非特許文献2】化学技術研究報告書、第81巻、第12号、p719−722(1986)
【0006】
上記の非特許文献1には、酸化チタンに白金を光電着した光触媒による鉛イオンの光析出が開示されている。この文献には、当該触媒に光を照射することにより水中の鉛濃度が減少することが報告されているが、犠牲試薬としてメタノールを用いている。光励起により生成した電子はメタノールを還元して水素を発生させ、正孔は鉛を酸化析出させる。しかしながら、この方法では助触媒として高価な貴金属を用いることや、犠牲試薬としてメタノールを必要とするといった問題点がある。
【0007】
非特許文献2には、酸化チタンを光触媒とした、鉛、マンガン、タリウム、コバルトイオン等の重金属イオンの光化学的沈殿法が開示されている。当該触媒は、非特許文献1に記載の触媒と同様に助触媒として白金を担持することによって、光照射により高い効率で重金属を光電着することができるものであるが、白金が存在しない場合には著しく電着速度が遅いことが報告されている。そして、白金を担持した酸化チタン触媒を用いることによって、光照射60分後において鉛の濃度は91%減少することが報告されている。
【0008】
また、特許文献1及び2には、ガラス繊維からなる織布に貴金属を担持させずに酸化チタンを被覆した光触媒を用いることにより、液中の水銀、鉛、カドミウム、ヒ素、銅、マンガン、6価クロム等の重金属イオンを除去することが開示されている。
【0009】
これらの文献に記載された光触媒はいずれも紫外光により励起される酸化チタンを用いるものである。したがって、環境中に存在する低濃度の重金属イオンを除去するには、さらに高い光触媒機能を有するとともに、白金等の高価な貴金属を必要としない低コストの光触媒の開発が求められていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明は白金等の貴金属を必要とせずに低コストでかつ効率よく、液中に存在する重金属イオンを光照射により酸化あるいは還元し、金属あるいは酸化物として析出させることによって除去することのできる光触媒を使用して重金属イオンを含有する液体から重金属イオンを除去する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、上記課題を解決するために、次の構成1〜5を採用する。
1.重金属イオンを含有する液体を、(1)酸化セリウムに、(2)カルシウム、ストロンチウム、イットリウム、ランタンからなる群から選択された少なくとも1種の異種元素を添加してなる酸化セリウム光触媒と接触させて光照射することを特徴とする、重金属イオンを含有する液体から重金属イオンを除去する方法。
2.前記酸化セリウム光触媒における(2)異種元素の添加量が、(1)酸化セリウムを基準として0.1〜100モル%であることを特徴とする、1に記載の重金属イオンを含有する液体から重金属イオンを除去する方法。
3.前記酸化セリウム光触媒が基材表面に薄膜状に被覆したものであることを特徴とする、1又は2に記載の重金属イオンを含有する液体から重金属イオンを除去する方法。
4.前記基材が板状体であることを特徴とする、3に記載の重金属イオンを含有する液体から重金属イオンを除去する方法。
5.前記基材が多孔質材料又は繊維状材料であることを特徴とする、3に記載の重金属イオンを含有する液体から重金属イオンを除去する方法。
本発明において重金属を含有する液体とは、水又は水と水溶性有機溶媒との混合物中に、重金属イオンを溶解又は分散させた液体を意味する。
【発明の効果】
【0012】
本発明で使用する酸化セリウム光触媒は、液中に存在する水銀、鉛、カドミウム、ヒ素、銅、マンガン、6価クロム等の重金属イオンを光照射により酸化あるいは還元し、金属あるいは酸化物として析出させることによって効率よく除去することができる。また、白金等の貴金属を必要とせずに低コストで光触媒を製造することが可能であるとともに、低濃度の重金属イオンも容易に捕集することができることから、水質系の浄化等に極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は実施例及び比較例で得られた、異種元素M10mol%添加酸化セリウムのX線回折パターン(M=なし、Mg2+,Ca2+,Sr2+,Ba2+,Zn2+,Pb2+)を示す図である。
【図2】図2は実施例及び比較例で得られた、異種元素M10mol%添加酸化セリウムの可視紫外拡散反射スペクトル(M=なし、Mg2+,Ca2+,Sr2+,Ba2+,Zn2+,Pb2+)を示す図である。
【図3】図3は実施例1で得られた、10mol%ストロンチウム添加酸化セリウムの発光分光スペクトルを示す図である。
【図4】図4は実施例1及び2で得られた、ストロンチウム、ランタン各10mol%添加酸化セリウムの光触媒活性を示す図である。
【図5】図5は実施例3で得られた、ストロンチウムの添加量が異なる酸化セリウム光触媒の光触媒活性を示す図である。
【図6】図6は実施例1、2及び4で得られた、ストロンチウム、ランタン、イットリウム、カルシウム各10mol%添加酸化セリウムの光触媒活性を示す図である。
【図7】図7は実施例5で測定した、ストロンチウム10mol%添加酸化セリウムの光触媒活性を示す図である。
【図8】図8は実施例6で測定した、ストロンチウム10mol%添加酸化セリウムの光触媒活性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明で使用する光触媒を製造する好ましい手順の例について、以下に説明する。
1)はじめに、粉末状の(1)酸化セリウムと(2)カルシウム、ストロンチウム、イットリウム、ランタンからなる群から選択された異種元素を含む化合物の1種又は2種以上を、(2)異種元素の添加量が(1)酸化セリウムを基準として0.1〜100モル%の範囲で混合して前駆体を得る。
2)次に、前駆体を空気中、500〜1400℃の温度に加熱する。
【0015】
上記1)の別法として、1’)(1)硝酸セリウムあるいは塩化セリウムと、(2)ストロンチウム、カルシウム、イットリウム、ランタンからなる群から選択された異種元素を含む水溶性化合物を、(2)異種元素の添加量が(1)セリウム化合物を基準として0.1〜100モル%の範囲で水に溶解させ、pHを7以上に調製して得られた沈殿を前駆体とすることもできる。
【0016】
(2)異種元素の添加量は、(1)セリウム化合物を基準として0.1〜100モル%の範囲で選択することができるが、通常は1〜50モル%、特に5〜20モル%程度とすることが好ましい。
得られたセリウム光触媒は、粉末状で処理対象とする液中に分散させて使用することができる。また、板状体、多孔質材料、繊維状材料等の基材表面に、光触媒を薄膜状に被覆したものを、処理対象とする重金属イオンを含有する液体と接触させて使用しても良い。粉末状の光触媒を液中に分散させて使用する場合には、光照射の際に光触媒反応が液体の表面でのみ進行することがあり、また処理後に光触媒を分離する工程が必要となる。これに対して、基材表面に光触媒を被覆したものでは、このような問題点が解消されるので好ましい。
【0017】
板状体の基材としては、例えば各種のセラミックス板、ガラス板、金属板、耐熱性プラスチック板等を使用することができる。
また、多孔質基材としては、各種のゼオライト類を使用することができる。好ましい、多孔質基材としては、例えばKaolin、ZSM-5、Mordenite、Faujasite等が挙げられる。
さらに、繊維状基材としては、ガラス繊維、セラミックス繊維、金属繊維、炭素繊維等の耐熱性繊維を単繊維、織布、不織布等の形態で使用することができる。
【実施例】
【0018】
次に本発明で使用する光触媒を製造する方法、及び得られた光触媒を使用して重金属イオンを含有する液体から重金属イオンを除去する方法、について実施例によりさらに詳細に説明するが、以下の具体例は本発明を限定するものではない。
以下の例では、光触媒の性能は光照射前後の水溶液中の重金属イオンの濃度を、ICP発光分析法によりつぎのようにして測定することにより評価した。
(ICP発光分析法)
ICP発光分光装置(島津社製ICPS−7510)を用い、重金属を含む水溶液をアルゴンプラズマ中に噴霧し、そこから放出される元素固有の光の波長の強度を計測した。既知濃度の重金属イオンを含む溶液を標準試料とし、その強度と比較することにより該水溶液の重金属イオン濃度を決定した。
【0019】
(実施例1)
粉末状の酸化セリウムと炭酸ストロンチウムを、セリウム元素に対してストロンチウム元素が10%のモル比となるように混合し、大気中で、1000℃の温度で10時間焼成して、ストロンチウム10モル%添加酸化セリウム光触媒を作製した。
得られた光触媒のX線回折パターンを図1に、紫外可視拡散反射スペクトルを図2に、そして発光スペクトルを図3に示す。
【0020】
図1のX線回折パターンによると、ストロンチウム添加酸化セリウムは酸化セリウムと同様な結晶構造を有し、ほぼ単一相であること、および高い結晶性を有することが判る。また、図2の可視紫外拡散反射スペクトルから、ストロンチウムを添加した酸化セリウムの光吸収特性は、酸化セリウムとほぼ一致し、吸収端は450nm付近であることが判る。そして、図3の発光スペクトルから、ストロンチウムを添加することにより、470nm付近に発光ピークが出現し、その励起スペクトルの最大波長は275nmであることが判る。
【0021】
(光触媒の活性試験)
硝酸鉛又は硫酸鉛を純水に溶解して100ppmの濃度の鉛イオンを含む水溶液を調製した。石英窓を取り付けた反応セルに、この鉛イオンを含む水溶液30mLと上記で得られた粉末状のストロンチウム添加酸化セリウム光触媒0.25gを収容し、マグネチックスターラーにより攪拌懸濁させた。この懸濁液に、250W水銀キセノンランプを用いて光を3時間照射した。懸濁液を遠心分離することにより粉末光触媒を分離し、光照射前後の鉛イオンの濃度をICP発光分析法に求めて、その結果を図4に示した。
図4にみられるように、光照射前の水溶液中の鉛イオンの濃度は仕込み量に近い103.21ppmであったが、光照射後は0.00ppmに低下した。また、光照射前の光触媒は白色を呈していたが、光照射後は褐色となり光触媒表面に鉛を含む化合物が光析出したことが確認された。通常の紫外線可視拡散反射スペクトル法及びX線光電子分光法によって、光触媒表面に酸化鉛が存在することが判明した。
【0022】
光照射によって鉛イオンが酸化析出することを実証するために、対照として上記で得られた粉末状のストロンチウム添加酸化セリウム光触媒0.25gを鉛イオン100ppmを含む水溶液30mLに懸濁させて、光照射を行わずに3時間攪拌した後に鉛イオンの濃度を測定した結果を図4に示した。
図4にみられるように、水溶液中の鉛イオンは光触媒上に吸着し、その濃度は34.01ppmになった。また、光照射を行わない場合には、光触媒の色に変化はみられず白色のままであった。
【0023】
(実施例2)
実施例1において、炭酸ストロンチウムに代えて酸化ランタンを用いた以外は実施例1と同様にして、ランタン10モル%添加酸化セリウム光触媒を作製した。この光触媒を用いて実施例1と同様にして3時間光照射して活性試験を行ったところ、鉛イオンの濃度は0.22ppmに低下し、光触媒の色は褐色に変化した。これに対して、光照射を行わずに3時間攪拌したものでは鉛イオンの濃度は25.86ppmであり、光触媒の色は変化しなかった。(図4参照)
【0024】
(比較例1)
比較のために、光触媒として異種元素を添加していない酸化セリウム及び市販の酸化チタン(Degussa P-25)を用いて、実施例1と同様にして光触媒の活性試験を行った結果を図4に示した。
図4にみられるように、異種元素を添加していない酸化セリウムでは、光触媒表面への吸着により、光照射をせずに3時間攪拌したものでは鉛イオンの濃度は97.20ppm、光照射をしたものでは98.34ppmとなり、光照射による鉛イオンの濃度の低下はみられなかった。また、光照射後にも光触媒の色の変化は認められなかった。
また、酸化チタンでは、光触媒表面への吸着により、光照射をせずに3時間攪拌したものでは鉛イオンの濃度は76.35ppm、光照射をしたものでは76.70ppmとなり、光照射によって鉛イオンの濃度は殆ど変化しなかった。また、光照射後にも光触媒の色の変化は認められず、白色のままであった。
【0025】
(実施例3)
実施例1において、酸化セリウムに対する炭酸ストロンチウムの混合量を変えた以外は実施例1と同様にして、ストロンチウムの添加量が20モル%及び50モル%のストロンチウム添加酸化セリウム光触媒を作製した。これらの光触媒を使用して活性試験を行った結果を、実施例1で得られたストロンチウムの添加量が10モル%の酸化セリウム光触媒による結果とともに図5に示した。
ストロンチウムを各10、20、50モル%添加した酸化セリウム光触媒では、光照射30分後に鉛イオンの濃度の濃度はそれぞれ20.08ppm、0.00ppm,14.78ppmに減少し、ストロンチウムの添加量が20モル%の光触媒で最も高い鉛イオンの濃度の低下(光析出効果)が認められた。また、いずれの光触媒においても、光照射120分後には鉛イオンの濃度は0.00ppmになった。
【0026】
(実施例4)
実施例1において、炭酸ストロンチウムに代えてそれぞれ酸化イットリウム、及び炭酸カルシウムを用いた以外は実施例1と同様にして、イットリウム10モル%添加酸化セリウム光触媒及びカルシウム10モル%添加酸化セリウム光触媒を作製した。これらの光触媒、並びに実施例1で得られたストロンチウム10モル%添加酸化セリウム光触媒及び実施例2で得られたランタン10モル%添加酸化セリウム光触媒を用いて活性試験を行った結果を図6に示した。いずれの光触媒においても、光照射時間の経過とともに顕著な鉛イオン濃度の低下がみられ、光触媒の色は褐色に変化した。
【0027】
(比較例2)
実施例1において、炭酸ストロンチウムに代えてそれぞれランタン以外のランタノイド元素14種、アクチノイド元素15種、インジウム、ニッケル、銅、及び亜鉛の各酸化物を用いた以外は実施例1と同様にして、これらの異種元素を10モル%添加した酸化セリウム光触媒を作製した。これらの光触媒を使用して同様に活性試験を行ったが、光照射による鉛イオンの捕集効果は認められなかった。
【0028】
(実施例5)
硝酸カドミウム又は硫酸カドミウムを純水に溶解することにより50ppmの濃度のカドミウムイオンを含む水溶液を調製した。この水溶液を試験液として、実施例1で得られたストロンチウム10モル%添加酸化セリウム光触媒を用いて、実施例1と同様にして活性試験を行った結果を図7に示した。
図7にみられるように、光照射を3時間行った場合には、カドミウムイオン濃度は9.45ppmに低下した。これに対して、光照射を行わずに攪拌のみを3時間行った場合には、カドミウムイオンの濃度は47.43ppmであった。
【0029】
(実施例6)
硝酸鉛又は硫酸鉛、並びに硝酸カドミウム又は硫酸カドミウムを純水に溶解することにより鉛イオン50ppm及びカドミウムイオン50ppmを含む水溶液を調製した。この混合水溶液を試験液として、実施例1で得られたストロンチウム10モル%添加酸化セリウム光触媒を用いて、実施例1と同様にして活性試験を行った結果を図8に示した。
図8にみられるように、光照射を3時間行うことにより、鉛イオン濃度は0.00ppm、カドミウムイオン濃度は2.32ppmに低下し、混合試験液に対しても光捕集効果が認められた。
【0030】
(実施例7)
6価クロムイオン50ppm、ヒ素イオン50ppm、及び水銀イオン50ppmを含む混合水溶液を試験液として、実施例1で得られたストロンチウム10モル%添加酸化セリウム光触媒を用いて、実施例1と同様にして活性試験を行ったところ、3時間の光照射により各重金属イオンの濃度は数ppm以下に低下した。
【0031】
(実施例8)
実施例1で得られたストロンチウム10モル%添加酸化セリウム光触媒を、水ガラス: 光触媒が1:100の重量比で混合し、縦30cm、横30cm、厚さ1mmのセラミックス板(シリカーアルミナ複合材料)の表面に塗布し、大気中、約1000℃で10時間焼成することによって、セラミックス板の表面に厚さ約10μmの光触媒膜を形成した。また、同様にして、縦30cm、横30cm、厚さ1mmのガラス板の表面に厚さ約10μmの光触媒膜を形成した。
これらの光触媒材料を鉛イオンを含有する水溶液に浸して、250Wの高圧水銀ランプを用いて光を照射したところ、水溶液中の鉛イオンの濃度は時間の経過とともに低下し、鉛イオンの光捕集効果が認められた。
【0032】
(実施例9)
セリウム元素に対してストロンチウム元素が10モル%になるように、硝酸セリウム及び硝酸ストロンチウムを純水に対して10重量%になるように溶解し、得られた水溶液を多孔質材料であるゼオライト(Kaolin, SIGMA-ALDRICH)に対して5重量%の濃度で含浸させた後に、大気中、1000℃で10時間焼成した。
これらの光触媒材料を鉛イオンを含有する水溶液に浸して、250Wの高圧水銀ランプを用いて光を照射したところ、水溶液中の鉛イオンの濃度は時間の経過とともに低下し、鉛イオンの光捕集効果が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明で得られる異種元素を添加した酸化セリウム光触媒は、重金属イオンを含有する液体から重金属イオンを低コストで極めて効率良く捕集することができるものであり、重金属で汚染された水質系の浄化等に有用な材料となる。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
重金属イオンを含有する液体を、(1)酸化セリウムに、(2)カルシウム、ストロンチウム、イットリウム、ランタンからなる群から選択された少なくとも1種の異種元素を添加してなる酸化セリウム光触媒と接触させて光照射することを特徴とする、重金属イオンを含有する液体から重金属イオンを除去する方法。
【請求項2】
前記酸化セリウム光触媒における(2)異種元素の添加量が、(1)酸化セリウムを基準として0.1〜100モル%であることを特徴とする、請求項1に記載の重金属イオンを含有する液体から重金属イオンを除去する方法。
【請求項3】
前記酸化セリウム光触媒が基材表面に薄膜状に被覆したものであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の重金属イオンを含有する液体から重金属イオンを除去する方法。
【請求項4】
前記基材が板状体であることを特徴とする、請求項3に記載の重金属イオンを含有する液体から重金属イオンを除去する方法。
【請求項5】
前記基材が多孔質材料又は繊維状材料であることを特徴とする、請求項3に記載の重金属イオンを含有する液体から重金属イオンを除去する方法。







【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−152735(P2012−152735A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−30125(P2012−30125)
【出願日】平成24年2月15日(2012.2.15)
【分割の表示】特願2007−267277(P2007−267277)の分割
【原出願日】平成19年10月13日(2007.10.13)
【出願人】(304021288)国立大学法人長岡技術科学大学 (458)
【Fターム(参考)】