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重金属分析装置及び重金属の分析方法
説明

重金属分析装置及び重金属の分析方法

【課題】測定試料の洗浄、測定試料からの重金属の抽出、重金属の分析測定を連続的に行うことが可能な、重金属分析装置及び重金属の分析方法を提供する。
【解決手段】一定量の抽出液17aを循環させることにより重金属を含む測定試料16aを充填したカラム16に上記抽出液を通過させて測定試料を洗浄するとともに抽出液に重金属を抽出する重金属抽出部11と、重金属抽出部で重金属を抽出した抽出液から測定対象の重金属を選択的に吸着する重金属吸着部12と、溶離液18により重金属吸着部で吸着した重金属を溶離する溶離部13とを備え、重金属抽出部と重金属吸着部とが第1流路19により相互に接続され、溶離部と重金属吸着部とが第2流路21により相互に接続され、重金属吸着部が第3流路22により溶離液に含まれる溶離した重金属を測定する測定部14に接続されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定試料の洗浄、測定試料からの重金属の抽出、重金属の分析測定を連続的に行うことが可能な、重金属分析装置及び重金属の分析方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題への関心が高く、土壌分析の需要が高まっている。通常、土壌汚染対策法(以下、「公定法」という。)に基づいて行われる土壌試料の前処理工程では、粉砕、ふるい、洗浄及び抽出が行われた後に測定が行われる。しかし、土壌分析を困難にしている要因として、妨害物質の混在や反応容器の洗浄、廃液の処理が面倒である点がある。また、ほぼ全ての作業を手作業で行う「公定法」に基づく操作は、熟練と時間を要し、煩雑な操作によって生じる夾雑物質の混入や試料量のロス、測定者間の誤差などに繋がる。そこで、前処理から測定までの自動化が期待されている。
【0003】
土壌分析として、以下のような技術が開発されている。
【0004】
先ず、土壌中のアンモニア態窒素濃度を測定する土壌分析システムであって、データベースと演算処理部を有し、単位面積あたりの窒素系肥料施肥量に対応した経時的アンモニア態窒素の減少度合い情報が蓄積され、アンモニア態窒素濃度の測定値と窒素系肥料の施肥量を出力する土壌分析システムが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、上記特許文献1に示される土壌分析システムは、金属類を分析対象にしたものでない。
【0005】
次いで、植生可能な土壌に改良するための土壌分析システムであって、以下に示す土壌の分析項目について適正範囲値が設定され、解析を行って、適正値になるように肥料や土壌改良材の種類、施肥量を設定し、更に、適正な土壌改良方法や植生工法を設定する土壌分析システムが開示されている(例えば、特許文献2参照。)。分析項目:1.pH(水)、2.腐植含有率、3.りん酸吸収係数、4.塩基置換容量、5.有効態りん酸、6.置換性石灰、7.置換性苦土、8.置換性カリ、9.塩基飽和度、10.石灰飽和度、11.石灰・苦土比、12.苦土・カリ比、13.有効窒素、14.土性、15.土壌硬度
しかし、上記特許文献2に示される土壌分析システムは、分析項目に示される通り、土壌中の重金属を対象に分析するものではない。
【0006】
次に、土壌に光を照射し、その土壌が反射する反射光から得られた土壌スペクトルから該土壌の特性を分析する土壌分析方法であって、複数の土壌から得られた土壌スペクトルの波形の集合体から該波形の近似した複数の波形群を生成し、該各波形群における特徴スペクトルを求め、土壌の検出スペクトルと特徴スペクトルを比較して該検出スペクトルがどの波形群に属するかを特定するか、該検出スペクトルが属する波形群のキャリブレーション式を使って解析することにより、土壌の光スペクトルから土壌の特性及び成分、土性、タイプ等を高い精度で予測又は推定する土壌分析方法が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。しかし、上記特許文献3に示される土壌分析方法は、土壌の光スペクトルを基に、土壌の特性等を予測、推定する方法であり、実際に重金属の含有量及び溶出量を測定するものではない。
【0007】
次に、農作物栽培に使用する土壌の状態を農業生産者または消費者がインターネット網を利用して確認できる土壌診断方法が開示されている(例えば、特許文献4参照。)。しかし、上記特許文献4に示す土壌診断方法は、分析機関に土壌サンプルを送付して分析してもらい、その分析結果がインターネット網を利用して閲覧することができるが、その分析手法は既知の手法を用いたものである。
【0008】
次に、特定場所から採取した土壌を粉砕・攪拌して後その一部を取り出しプレスして円盤形状のペレット状試料とし、エネルギー分散型蛍光X線分析装置を用いて入射X線の照射スポットをその円盤面の異なる領域に移動させつつ検出データを蓄積し、統計的な処理を加えて分析することを特徴とする重金属等の含有量を測定する土壌分析方法が開示されている(例えば、特許文献5参照。)。しかし、上記特許文献5に示される土壌分析方法は、土壌の重金属の化学形態を測定する方法ではない。
【0009】
次に、土壌に含まれる分析対象成分を溶液に抽出する抽出部と、前記抽出部で得られた試料溶液に含まれる成分をコロナ放電によりイオン化するイオン化部と、前記イオン化部で生成されたイオンを質量分析する質量分析部とを備える土壌分析装置が開示されている(例えば、特許文献6参照。)。しかし、上記特許文献6に示される土壌分析装置ではダイオキシンを測定対象としており、土壌中の重金属を対象に分析するものではない。
【0010】
次に、試料容器をある角度に傾ける手段と、測定容器を供給した試料ごと重量測定する手段と、試薬の比重に合わせた容積を測定・供給する手段と、これらの容積測定を行う制御機構を備えた土壌分析前処理装置において、必要な試料を供給する機構と、直接重量測定した試料に対し、試薬の比重にあわせた適量を測定・供給する機能を有していることを特徴とする土壌分析前処理装置が開示されている(例えば、特許文献7参照。)。しかし、上記特許文献7に示される土壌分析前処理装置は、重金属の選択回収及び測定装置までのラインを具備したものではない。
【0011】
次に、土壌や地下水の汚染状況の分析において、測定データ及び複数の対象成分に関連する多系統の基礎データから特定の対象成分の分析値を算出する方法に関し、当該特定成分に関連した複数の基礎データの相関に限定した演算を繰り返し行う土壌分析装置が開示されている(例えば、特許文献8参照。)。しかし、上記特許文献8に示される土壌分析装置では、演算により特定の対象成分の分析値を算出する方法であり、測定データを得るための測定手法は既知の手法を用いたものである。
【0012】
更に、土壌中の複数の成分をイオン交換反応により置換抽出する塩基化合物として他のイオンと化合させることにより析出除去することが可能な塩を使用し、塩の水溶液に土壌を加えて振とうし土壌中の複数の成分を抽出する抽出工程と、振とう・抽出後の液を濾過して抽出液を取り出す抽出液取出し工程と、抽出液に他のイオンを生成する物質を加えて塩を析出させ、析出物を除去する析出・除去工程と、分析計により析出物除去後の抽出液から土壌中の複数の成分を測定する分析工程とを有する土壌分析方法が開示されている(例えば、特許文献9参照。)。しかし、上記特許文献9に示される土壌分析方法では、重金属の選択回収及び測定装置までのオンラインでの測定を可能にしたものではない。
【0013】
また、土壌中の重金属分析として、以下のような技術が開発されている。
【0014】
先ず、採取した土壌試料に水または塩酸を混合して遠心分離することにより得られた土壌抽出液を不溶化濃縮する工程と、濃縮された土壌抽出液を蛍光X線分析して含有多元素成分を同時分析する工程とからなる重金属等多元素成分同時分析方法が開示されている(例えば、特許文献10参照。)。しかし、上記特許文献10に示される土壌中における重金属等多元素成分同時分析方法は、重金属の土壌成分の溶出試験を具備しているものではない。
【0015】
次いで、搬送されてくる汚染土壌中に含まれる重金属濃度を蛍光X線分析装置で測定する方法であって、汚染土壌と蛍光X線分析装置の測定窓との間に樹脂フィルムを供給すると共に、汚染土壌と樹脂フィルムを停止させた状態で蛍光X線分析装置を下降させ、樹脂フィルムを挟んで蛍光X線分析装置の測定窓と汚染土壌を近接させて測定した後、蛍光X線分析装置を上昇させて汚染土壌と樹脂フィルムを搬送する汚染土壌の重金属濃度測定方法が開示されている(例えば、特許文献11参照。)。しかし、上記特許文献11に示される汚染土壌の重金属濃度測定方法では、重金属の土壌成分の溶出試験を具備しているものではない。
【0016】
次に、土壌から溶出される重金属等の有害物質を蛍光X線分析により定量的に分析する土壌中有害物質含有量分析方法であって、採取された土壌を試料として蛍光X線分析により有害物質の含有量を分析する前分析工程と、試料とされた土壌から有害物質を溶出するように土壌に水系溶媒を加えて混合した後に固液分離する溶出工程と、溶出工程において固液分離されたうちの固体成分を試料として蛍光X線分析法により有害物質の含有量を分析する後分析工程と、前分析工程で分析された有害物質の含有量から後分析工程で分析された有害物質の含有量を減算し、溶出された有害物質の含有量を算出する溶出量算出工程と、を備える土壌中有害物質含有量分析方法が開示されている(例えば、特許文献12参照。)。しかし、上記特許文献12に示される土壌中有害物質含有量分析方法では、固体成分中の重金属含有量を測定するが、環境影響に直接かかわる溶出液中の重金属を直接測定できない。
【0017】
次に、土壌に含まれる重金属類の溶出量分析方法において、土壌から作成した検液に所定の割合でキレート剤を加え、このキレート剤に検液中の測定対象物質を吸着させる手順と、検液をろ過し、測定対象物質を吸着したキレート剤を回収する手順と、蛍光X線分析装置により、回収したキレート剤が吸着した測定対象物質を定量分析し、この分析結果を検液中の測定対象物質の溶出量に換算する手順とを有する溶出量分析方法が開示されている(例えば、特許文献13参照。)。しかし、上記特許文献13に示される溶出量分析方法では、測定までの操作工程が複数存在する。
【0018】
次に、土壌、底質、灰、排水などを試料として採取し、この採取された試料を所定のpHに調整された液体に溶解して被検液とし、この被検液を機能性フィルタを用いて濾過し、この機能性フィルタに捕集された微量特定物質をX線分析装置によって分析する環境における微量特定物質の簡易定量分析方法が開示されている(例えば、特許文献14参照。)。しかし、上記特許文献14に示される環境における微量特定物質の簡易定量分析方法では、試料を機能性フィルターに導入するための、土壌からの重金属抽出工程は含まれていない。
【0019】
次に、秤量した土壌試料に蒸留水または希塩酸等の鉱酸を加え、超音波照射して土壌試料から重金属を溶出させ、これを濾過して得た試料液を多元素同時分析装置に導入して試料から溶出した有害重金属濃度を測定し、試料の秤量値に基づいて有害重金属量を求める分析方法において、超音波の周波数を30〜40KHzとし、超音波照射時に土壌試料を乾燥試料1gあたり5〜15平方cmの範囲に浮遊分散させる土壌含有重金属の溶出方法が開示されている(例えば、特許文献15参照。)。しかし、上記特許文献15に示される土壌含有重金属の溶出方法では、土壌試料に含まれるマトリックスの影響を考慮していない。
【0020】
次に、土壌試料を秤量し、硝酸とフッ化水素酸および過酸化水素水を容器に入れて密封し、マイクロ波による加圧酸分解を進めた後に、容器内の試料溶液に蒸留水を加えて重量調整して一定容量にし、これを多元素同時分析装置に導入して試料中の有害重金属濃度を測定し、試料の秤量値に基づいて土壌試料中の有害重金属量を求めることを特徴とする土壌含有重金属の分析方法が開示されている(例えば、特許文献16参照。)。上記特許文献16に示される土壌含有重金属の分析方法では、従来の公定法に比較して試料調製から元素分析にいたる所要時間が極めて短くなっているが、高濃度の塩を除去し、様々な測定機器に対応できる分析方法とはなっていない。
【0021】
次に、対象液中の重金属物を分析する装置であって、重金属物を吸着保持するキレート体と、キレート体に対象液を流通させる対象液供給手段と、キレート体にレーザ光またはX線を照射する照射手段と、レーザ光またはX線の照射に伴うキレート体からの発光の強度に基づいて対象液中の重金属物の量を求める重金属物量測定手段とを備えていることを特徴とする重金属物分析装置が開示されている(例えば、特許文献17参照。)。しかし、上記特許文献17に示される重金属物分析装置では、あらかじめ土壌から重金属を溶出する必要があり、妨害物の存在(ケイ素、鉄、アルミニウム等)の除去技術についても触れられていない。
【0022】
次に、土壌の試料にレーザ光を照射し、レーザ光の照射に伴う試料からの発光の強度を測定して、発光強度に基づいて、試料中の重金属系有害物質の量を求める土壌中の重金属系有害物質分析方法において、試料の少なくともレーザ光の照射表面を乾燥させるようにした土壌中の重金属系有害物質分析方法が開示されている(例えば、特許文献18参照。)。しかし、上記特許文献18に示される土壌中の重金属系有害物質分析方法では、重金属の土壌成分の溶出試験を具備しているものではない。
【0023】
次に、土壌中の水分量および土壌の粒径を測定する一方、レーザ光を土壌に照射して、レーザ光の照射に伴う土壌からの発光の強度を測定し、水分量および粒径に基づいて発光強度を補正し、補正した発光強度に基づいて、土壌中の重金属系有害物質の量を求める土壌中の重金属系有害物質分析方法が開示されている(例えば、特許文献19参照。)。しかし、上記特許文献19に示される土壌中の重金属系有害物質分析方法では、重金属の土壌成分の溶出試験を具備しているものではない。
【0024】
更に、被測定土壌試料をその内部にセットするための測定ベッセルと、測定ベッセル内に保持された被測定土壌試料に対してレーザを照射するためのレーザ照射手段と、レーザ照射によって被測定土壌試料から放射された励起光を測定ベッセル外へ導波する光搬送手段と、光搬送手段によって運ばれてきた励起光のスペクトルから存在する汚染物質である金属元素の種類と濃度を検出するスペクトル分析手段と、測定ベッセル内を真空状態にすると共に、レーザ照射によって加熱された被測定土壌試料から生じた気体を測定ベッセル外へ吸引搬送する真空吸引手段と、真空吸引手段によって運ばれてきた気体から存在する汚染物質である有機物の種類と濃度を検出する質量分析手段との組み合わせからなる土壌の汚染物質測定装置が開示されている(例えば、特許文献20参照。)。特許文献20によれば、共通の被測定土壌試料を用い、短時間で同時的に重金属とハロゲン化炭化水素の測定ができ、2つの異なる種類の測定を1つの装置で行うことで装置の集約小型化と可搬性を可能とし、現場と分析場所との近接化によるメリットを得ることができる土壌の汚染物質測定装置の提供を課題とするものである。しかし、上記特許文献20に示される土壌の汚染物質測定装置では、土壌中の重金属の含有量と溶出量の測定を両方可能にする構成とはなっていない。
【0025】
また、畜産や食品の重金属分析として、以下のような技術が開発されている。
【0026】
蛍光X線分析装置による毛髪・皮膚・爪・歯・骨など生体内固形物中の元素検査、血液・尿・涙・汗・唾液などの生体液中の元素検査、穀類・豆類・いも及びでん粉類・キノコ類・果実類・野菜類など農作物中の元素検査、藻類・魚介類など海産物中の元素検査、食肉・卵類・乳類など畜産物中の元素検査、菓子類、調味料及び香辛料、調理加工食品類中の元素検査方法が開示されている(例えば、特許文献21参照。)。しかし、上記特許文献21に示す検査方法は、元素分析が目的であり、抽出液別での重金属の溶出、化学形態を判断できる方法にはなっていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】特開2008−197017号公報(請求項1)
【特許文献2】特開2006−343303号公報(請求項1)
【特許文献3】特開2006−38511号公報(請求項1〜4、段落[0005])
【特許文献4】特開2005−147738号公報(請求項1)
【特許文献5】特開2005−49205号公報(請求項1)
【特許文献6】特開2003−222613号公報(請求項3)
【特許文献7】特開2003−161680号公報(請求項1)
【特許文献8】特開2002−350425号公報(請求項1)
【特許文献9】特開平11−37996号公報(請求項1)
【特許文献10】特開2010−271247号公報(請求項1)
【特許文献11】特開2010−38539号公報(請求項3)
【特許文献12】特開2006−349514号公報(請求項1)
【特許文献13】特開2004−294329号公報(請求項1)
【特許文献14】特開2004−251828号公報(請求項1)
【特許文献15】特開2004−245579号公報(請求項1)
【特許文献16】特開2004−198324号公報(請求項1)
【特許文献17】特開2003−194722号公報(請求項5)
【特許文献18】特開2003−98085号公報(請求項1)
【特許文献19】特開2003−98084号公報(請求項1)
【特許文献20】特開2002−122542号公報(請求項1、段落[0004])
【特許文献21】特開2011−107113号公報(請求項1〜6)
【非特許文献】
【0028】
【非特許文献1】A. Tessier, et. al., Anal. Chem., 51 (1979) 844.
【非特許文献2】中野浩司,他,分析化学, 59(9) (2010) 829 - 838.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
前述した通り、土壌から焼却灰、畜産廃棄物まで、多種多様な固体試料を迅速に測定するためには、土壌試料からの重金属の抽出のみにとどまらず、目的の重金属を回収し、高濃度の塩(Na,K,Mg)の除去することによって、炎光分析、原子吸光分析、ICP発光分析などの測定装置に直接分析できる方法が必要となっている。
【0030】
従来の技術において、前処理から分析までを一つのラインとして行う土壌分析が困難であった主な理由として、第1に土壌の粒度が不均一であるため、同じ抽出操作を行っても実験結果にバラつきが生じること、第2に土壌には鉄、シリカ等のマトリックスが多く含まれるため、これらを除去する溶媒のpHやキレート剤投入等、複数のマスキングが必要であること、第3に様々な酸や有機化合物を用いるため、反応容器の洗浄、廃液の処理が面倒であること、第4に工場跡地や重金属汚染土壌地域に浄化技術を導入するための分析において迅速な対応が要請されていること、などが挙げられる。上記第4の理由で「迅速な対応」としたが、これは非常に重要なキーワードであり、土壌分析そのものが時間を要し、例えば農地や宅地の依頼分析を行うと約1ヶ月程度を要し、他の依頼分析よりも時間がかかるのは常識となっている。ライン化すると早くなるので、問題ないとも考えられるが、実際には測定項目が多く、土壌の前処理を測定者自身が手作業で行うので、遅速に係わらず測定値のばらつきが大きい。そして、セシウムやカドミウムのように「流動性の高い」元素の測定は、測定時間の経過が長いほど誤差が大きくなるためである。
【0031】
本発明の目的は、測定試料の洗浄、測定試料からの重金属の抽出及び重金属の分析測定を連続的に行うことが可能な、重金属分析装置及び重金属の分析方法を提供することにある。
【0032】
本発明の別の目的は、従来の測定まで時間の短縮を図ることができ、かつ測定値のばらつきを抑制し得る、重金属分析装置及び重金属の分析方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0033】
本発明者らは、土壌中の重金属による生態系への影響に関する研究を実施するに当たり、前処理から測定までの工程を自動で行うことが可能な重金属分析装置の開発について鋭意検討した結果、測定試料を洗浄するとともに、重金属を抽出する循環型の重金属抽出部、目的の重金属のみを選択的に吸着する重金属吸着部及び吸着させた重金属を溶離させる溶離部を具備し、これらを流路により相互に接続する構成を見出し、本発明を完成した。
【0034】
本発明の第1の観点は、図1に示すように、一定量の抽出液17aを循環させることにより重金属を含む測定試料16aを充填したカラム16に上記抽出液17aを通過させて測定試料16aを洗浄するとともに抽出液17aに重金属を抽出する重金属抽出部11と、重金属抽出部11で重金属を抽出した抽出液17aから測定対象の重金属を選択的に吸着する重金属吸着部12と、溶離液18aにより重金属吸着部12で吸着した重金属を溶離する溶離部13とを備え、重金属抽出部11と重金属吸着部12とが第1流路19により相互に接続され、溶離部13と重金属吸着部12とが第2流路21により相互に接続され、重金属吸着部12が第3流路22により溶離液18aに含まれる溶離した重金属を測定する測定部14に接続されることを特徴とする重金属分析装置である。
【0035】
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更に図2〜図4に示すように、重金属抽出部11が、抽出液17aを貯える第1容器17と、脱イオン化水24aを貯える第2容器24と、重金属を含む測定試料16aを充填可能なカラム16と、カラム16に抽出液17a又は脱イオン化水24aを導入するための導入流路26と、カラム16を通過した抽出液17aが循環するための導入流路26を含む循環流路27と、第1流路19に接続され循環した抽出液17aを脱イオン化水24aとともに送出するための送出流路28と、第1容器17から抽出液17aをカラム16に導入するように又は第2容器24から脱イオン化水24aをカラム16に導入するように切換える第1切換弁29と、第1切換位置と第2切換位置を有する第2切換弁31と、カラム16と第2切換弁31の間の流路に設けられた第1ポンプ32とを備え、第2切換弁31が第1切換位置に切換えられたときに、第1ポンプ32が導入流路26を介して抽出液17a又は脱イオン化水24aをカラム16に導入しかつ抽出液17aを脱イオン化水24aとともに送出流路28に送出し、第2切換弁31が第2切換位置に切換られたときに、第1ポンプ32が循環流路27を介して抽出液17aを循環させるように構成されたことを特徴とする。
【0036】
本発明の第3の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更に図5に示すように、重金属吸着部12が、対極電極34、参照電極36及び高温焼結炭素繊維カラムからなる作用電極37を備えた電着セルであり、作用電極37と第1流路19で送られてきた抽出液17aとの間に測定対象の重金属に応じた電着電位を印加することにより、重金属抽出部11で抽出された抽出液17aに含まれる測定対象の重金属のみを選択的に作用電極37に吸着するように構成されたことを特徴とする。
【0037】
本発明の第4の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更に図1に示すように、溶離部13が、溶離液18aを貯える第3容器18と、溶離液18aを第2流路21、重金属吸着部12及び第3流路22を経て測定部14に移送する第2ポンプ39とを有することを特徴とする。
【0038】
本発明の第5の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更に測定試料が、0.01mm〜0.1mmの粒度を有する、土壌、畜産廃棄物、農産廃棄物、海産廃棄物、焼却灰、食品又は植物を少なくとも1種含むことを特徴とする。
【0039】
本発明の第6の観点は、重金属を含む測定試料を充填したカラムに導入流路を介して一定量の抽出液を導入する工程Aと、導入した抽出液を導入流路を含む循環流路を介してカラムに一定時間循環させて抽出液に重金属を抽出する工程Bと、カラムを循環する抽出液の循環を停止した後、抽出液を脱イオン化水とともに送出流路を介して重金属吸着部に送る工程Cと、送られてきた抽出液から測定対象の重金属を選択的に重金属吸着部に吸着する工程Dと、溶離液により重金属吸着部に吸着した重金属を溶離する工程Eと、溶離液に含まれる溶離した重金属を測定する工程Fとを含む重金属の分析方法である。
【0040】
本発明の第7の観点は、第6の観点に基づく発明であって、更に測定試料が、0.01mm〜0.1mmの粒度を有する、土壌、畜産廃棄物、農産廃棄物、海産廃棄物、焼却灰、食品又は植物を少なくとも1種含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0041】
本発明の第1の観点では、測定試料を洗浄するとともに、重金属を抽出する循環型の重金属抽出部、目的の重金属のみを選択的に吸着する重金属吸着部及び吸着させた重金属を溶離させる溶離部を具備し、これらを第1流路及び第2流路により相互に接続する構成とし、かつ重金属吸着部を第3流路により溶離液に含まれる溶離した重金属を測定する測定部に接続する構成としたので、測定試料の洗浄、測定試料からの重金属の抽出及び重金属の分析測定を連続的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の重金属分析装置の概略図である。
【図2】重金属抽出部において抽出液を導入する工程Aを示す図。
【図3】重金属抽出部において循環抽出する工程Bを示す図。
【図4】重金属抽出部において脱イオン化水を導入する工程Cを示す図。
【図5】重金属吸着部を構成する電着セルの簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
次に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0044】
図1に示すように、本発明の重金属分析装置10は、重金属抽出部11と重金属吸着部12と溶離部13とを備える。重金属抽出部11では一定量の抽出液17aを循環させることにより重金属を含む測定試料16aを充填したカラム16に上記抽出液17aを通過させて測定試料16aを洗浄するとともに抽出液17aに重金属を抽出する。重金属吸着部12では重金属抽出部11で重金属を抽出した抽出液17aから測定対象の重金属を選択的に吸着する。溶離部13では溶離液18aにより重金属吸着部12で吸着した重金属を溶離する。
【0045】
そして、重金属抽出部11と重金属吸着部12とが第1流路19により相互に接続され、溶離部13と重金属吸着部12とが第2流路21により相互に接続され、重金属吸着部12が第3流路22により溶離液18aに含まれる溶離した重金属を測定する測定部14に接続される。
【0046】
なお、図1では、第1流路19と第2流路21とが第3切換弁23で合流し、第3切換弁23から重金属吸着部12までの流路を共有させ、第3切換弁23を切り換えることにより、第1流路19で重金属抽出部11と重金属吸着部12とが相互に接続され、第2流路21で溶離部13と重金属吸着部12とが相互に接続された構成としている。
【0047】
重金属抽出部11は、図2〜図4に示されるように、抽出液17aを貯える第1容器17と、脱イオン化水24aを貯える第2容器24と、重金属を含む測定試料16aを充填可能なカラム16と、カラム16に抽出液17a又は脱イオン化水24aを導入するための導入流路26と、カラム16を通過した抽出液17aが循環するための導入流路26を含む循環流路27と、第1流路19に接続され循環した抽出液17aを脱イオン化水24aとともに送出するための送出流路28と、第1容器17から抽出液17aをカラム16に導入するように又は第2容器24から脱イオン化水24aをカラム16に導入するように切換える第1切換弁29と、第1切換位置と第2切換位置を有する第2切換弁31と、カラム16と第2切換弁31の間の流路に設けられた第1ポンプ32とを備える。
【0048】
そして、第2切換弁31が第1切換位置に切換えられたときに、第1ポンプ32が導入流路26を介して抽出液17a又は脱イオン化水24aをカラム16に導入しかつ抽出液17aを脱イオン化水24aとともに送出流路28に送出し、第2切換弁31が第2切換位置に切換られたときに、第1ポンプ32が循環流路27を介して抽出液17aを循環させるように構成される。なお、図2〜図4では、導入流路26から分岐するように形成され、第2切換弁31を経て送出流路28へと合流する、循環を補助するための補助流路33が設けられ、この補助流路33にも第1ポンプ32’が設けられる。
【0049】
重金属吸着部12は、図5に示すように、対極電極34、参照電極36及び高温焼結炭素繊維カラムからなる作用電極37を備えた電着セルである。作用電極37は、炭素棒37a、高温焼結炭素繊維37b及び多孔質パイコールガラス管37cから構成される。
【0050】
そして、作用電極37と第1流路19で送られてきた抽出液との間に測定対象の重金属に応じた電着電位を印加することにより、重金属抽出部11で抽出された抽出液に含まれる測定対象の重金属のみを選択的に作用電極37に吸着するように構成される。また、図1に示すように、対極電極34、参照電極36は、電圧を一定にすることが可能なポテンショスタット38に接続されている。
【0051】
溶離部13は、図1に示すように、溶離液18aを貯える第3容器18と、溶離液18aを第2流路21、重金属吸着部12及び第3流路22を経て測定部14に移送する第2ポンプ39とを有する。なお、測定部14は、その測定対象の分析に適した装置を自由に選択することが可能であり、例えば、炎光分析、原子吸光分析、ICP(高周波誘導結合プラズマ)発光分析を用いた装置などが挙げられる。
【0052】
このように構成された重金属分析装置を用いた本発明の重金属の分析方法について説明する。
【0053】
測定対象の重金属を含む測定試料は、0.01mm〜0.1mmの粒度を有する、土壌、畜産廃棄物、農産廃棄物、海産廃棄物、焼却灰、食品又は植物を少なくとも1種含む固体試料である。測定試料の粒度を上記範囲内に揃えることで、様々な種類の固体試料に含まれる重金属の抽出、回収、測定に対応することができ、測定値のばらつきを抑制することができる。なお、下限値未満の粒度では、細かすぎて取り扱い難く、また抽出の際に、カラムに充填した試料が流路内に流れ出てしまうなどの不具合が生じるおそれがあり、上限値を越える粒度では、抽出が不十分になる、抽出時間がかかるなどの不具合が生じるおそれがあるためである。また、測定試料を上記範囲内の粒度だけでなく、上記範囲外の粒度を含むことにすると、同様の抽出操作を行っても実験結果にばらつきが生じてしまう。なお、本発明の分析方法で分析対象とする重金属としては、銅、亜鉛、鉛、カドミウム、ヒ素、セレン、水銀などが挙げられる。またストロンチウムやセシウムのようなイオン半径の大きな陽イオンの濃度測定なども可能である。
【0054】
本発明の分析方法では、予め分析目的の重金属に併せた抽出液の選択ができ、更に土壌分析において重要な「土壌からの溶出のし易さに基づいた化学形態分析」に適用できる。具体的には、土壌中の重金属の化学形態分析を行うため、Tessierらの「土壌の化学形態分析」を適用し、溶出のし易さで下記の5段階に分けるものである(例えば、非特許文献1,2参照。)。
【0055】
1段階:イオン交換体と結合している形態であり、中性条件でも容易に溶出する形態(塩化物等)
2段階:炭酸塩と結合している形態
3段階:Fe−Mn酸化物と結合している形態
4段階:コロイド状の有機物あるいは硫黄と結合している形態
5段階:ケイ酸塩岩石などの結晶内に存在し最も溶出しにくい形態(鉱物)
このとき用いられる抽出液は、
1段階:MgCl2(pH7)、
2段階:CH3COOH/CH3COONa(pH5)、
3段階:NH2OH−HCl/CH3COOH(pH3)、
4段階:HNO3−H22(pH1〜2)、
5段階:HF−HClO4(pH<1)
となっているが、本発明の分析方法では、機器への影響を考慮して1段階から4段階までの化学形態分析を連続的に行うことができる。これは、重金属に汚染された土壌から、どのpHレベルの水によって溶出するか判定するものであり、特に酸性雨の多い、火山地帯周辺地域での農地、埋め立て処分場、工場跡地などの土壌分析診断に迅速な対応が可能である。なお、上記化学形態分析の5段階目においては、熱を加えなければ土壌を溶かすことできず、加熱によって危険なフッ素や塩素ガスが発生するため、本発明の適用外とした。また、4段階目は1段階目〜3段階目に比べて抽出効率が悪いため、抽出効率を上げるためには、5段階目と同様に熱を加えることが考えられるが、4段階においては、1段階目〜3段階目に比べて流速を半分程度に減少させ、循環(抽出)時間も倍程度に延ばすことで、室温でも重金属を抽出することができる。
【0056】
先ず、本発明の分析方法では、重金属抽出部11において、重金属を含む測定試料16aを充填したカラム16に導入流路26を介して一定量の抽出液17aを導入する(工程A)。この工程Aでは、図2に示すように、測定試料16aの入ったカラム16を重金属抽出部11の第2切換弁31と第1ポンプ32との間に接続し、第1切換弁29を抽出液導入側に切換え、第2切換弁31を第1切換位置に切換えて、第1ポンプ32,32’を駆動することにより、第1容器17内の抽出液17aを導入流路26を介してカラム16内に一定量導入する。
【0057】
なお、図2において、抽出液17aは、第1切換弁29及び循環流路26を通って第2切換弁31の6番目の弁に入り、第2切換弁31の5番目の弁から出て、第1ポンプ32を介してカラム16に導入される。なお、カラム16から溢れた余剰の抽出液17aは循環流路27を通って第2切換弁31の8番目の弁に入り、第2切換弁31の7番目の弁から出て、送出流路28へと至る。また、抽出液17aは、第1切換弁29、循環流路26及び補助流路33を通って第2切換弁31の2番目の弁に入り、第2切換弁31の1番目の弁から出て、第1ポンプ32’を介して第2切換弁31の4番目の弁に入り、第2切換弁31の3番目の弁から出て、送出流路28へと至る。
【0058】
次いで、導入した抽出液17aを導入流路26を含む循環流路27を介してカラム16に一定時間循環させて抽出液17aに重金属を抽出する(工程B)。この工程Bでは、図3に示すように、第2切換弁31を第2切換位置に切換えて、第1ポンプ32,32’を駆動することにより、導入した抽出液17aを導入流路26を含む循環流路27を介してカラム16に一定時間循環させる。
【0059】
なお、図3において、第2切換弁31を第2切換位置に切換えた状態では、カラム16及び循環流路27を通って第2切換弁31の7番目の弁に入り、第2切換弁31の8番目の弁から出て、補助流路33を通って第1ポンプ32’を介して第2切換弁31の3番目の弁に入り、第2切換弁31の4番目の弁から出て、第1ポンプ32を介してカラム16へと至る閉鎖系の環状流路が形成されている。
【0060】
重金属の種類及びその化学形態によっても多少前後するが、1時間〜3時間の循環時間で測定試料から重金属を抽出でき、従来の公定法に定められた方法と比較して、測定時間の大幅な時間短縮が見込める。
【0061】
次に、カラムを循環する抽出液の循環を停止した後、抽出液を脱イオン化水とともに送出流路28を介して重金属吸着部12に送る(工程C)。この工程Cでは、図4に示すように、第1切換弁29を脱イオン化水導入側に切換え、第2切換弁31を第1切換位置に切換えて、第1ポンプ32,32’を駆動することにより、第2容器24内の脱イオン化水24aを導入流路26を介してカラム16内に導入する。脱イオン化水24aを送りこむことで、循環して重金属を抽出した抽出液17aを脱イオン化水24aとともに送出流路28から送出する。
【0062】
なお、この工程Cにおける脱イオン化水24aの流れは、前述した工程Aにおける抽出液17aの流れと同様であり、送出流路28から送出された、重金属を抽出した抽出液17a及び脱イオン化水24aは、第1流路19を経て、重金属吸着部12へと送られる。
【0063】
従来の公定法に基づく土壌試料からの重金属抽出で実施されるバッチ式では、土壌試料から重金属を溶出する際、実験操作中でのコンタミネーションが生じ易い問題があったが、本発明の重金属分析装置の重金属抽出部11で行われる本発明の分析方法の工程A〜工程Cでは、測定試料から重金属を循環抽出する際に閉鎖系の環状流路で行うため、系外の影響が小さく、また重金属吸着部への抽出液の移送も重金属抽出部11と重金属吸着部12とが第1流路19によって相互に接続されているため、コンタミネーションの影響が大きく軽減される。また、本発明の分析方法では循環抽出を採用しているため、廃液量が軽減される。
【0064】
また、重金属抽出部11では、上記工程A〜工程Cを連続して行うことができ、また、上記工程A〜工程Cは、コンピューターによって重金属抽出部11の主要な可動部である第1切換弁29、第2切換弁31の切替や第1ポンプ32,32’の駆動を連動させることにより、自動化が可能である。
【0065】
次に、重金属抽出部11から第1流路19で送られてきた抽出液17aから測定対象の重金属を選択的に重金属吸着部12に吸着させる(工程D)。
【0066】
土壌などの試料から重金属を抽出しただけでは、抽出液中にはフミン酸のような高分子有機物等が、畜産廃棄物が混入した試料では、抽出液中にはタンパク質、脂肪及び糖等のマトリックスが存在する。また、高濃度の塩分を含む試料では、抽出液中には塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化アルミニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウムなどのマトリックスが存在する。そして、これらのマトリックスを重金属と一緒に、ICP装置を具備した発光分析装置のような分析装置に導入すると、ICPでの干渉作用並びに試料を吸引するネブライザーの塩析による故障等の原因に繋がる。従って、従来の技術では、これらを除去するために、溶媒のpHやキレート剤投入等、複数のマスキングが必要であった。しかし、重金属の選択的回収に汎用されているキレート樹脂は溶離が困難であり、また土壌のような測定試料の場合、多く含まれる鉄やカルシウム等のマトリックスの妨害を受けやすい問題があった。
【0067】
そのため、本発明の分析方法の工程Dでは、重金属抽出部11で抽出した抽出液17aを直接測定部14には送らず、図5に示すような、重金属を選択的に吸着することが可能な高温焼結炭素繊維カラムを作用電極37とした電着セルからなる重金属吸着部12に送り、ここで測定対象の重金属を選択的に吸着させ、重金属とマトリックスとを分離することで、測定部14に導入する成分からマトリックスを除去する。重金属吸着部12によってマトリックスを除去するため、後述する測定部14において、得られる重金属分析結果へのマトリックスが存在することによる影響を軽減することができる。また重金属吸着部12の作用電極37への吸着で重金属が濃縮されることから、後述する測定部14において、ppbオーダーの高感度重金属測定が可能となる。
【0068】
具体的には重金属吸着部12では、作用電極37と第1流路19で送られてきた抽出液17aとの間に、重金属の吸着に最適な−1〜0Vの範囲で電位を印加することで、作用電極37に重金属を選択的に吸着させる。
【0069】
次に、溶離液18aにより重金属吸着部12の作用電極37で吸着された重金属を溶離する(工程E)。この工程Eでは、溶離部13の第2ポンプ39を駆動することにより、溶離液18aを第2流路を介して重金属吸着部12へと移送し、重金属吸着部12の作用電極37に選択的に吸着させた重金属を溶離液18aによって溶離する。そして、溶離させた重金属を含む溶離液18aは重金属吸着部12から第3流路22を経て、そのまま、測定部14へと運び入れることができる。重金属を溶離することが可能な溶離液18aとしては、硝酸、塩酸、硫酸のいずれかが挙げられる。
【0070】
最後に、測定部14において、溶離液18aに含まれる溶離した重金属を測定する(工程F)。第3流路22を経て測定部14に送られた溶離させた重金属を含む溶離液18aは、重金属吸着部12によってマトリックスが除去されているため、マトリックスが存在することによる影響を軽減した、信頼度の高い分析結果が得られる。また、重金属吸着部12の作用電極37への吸着で重金属が濃縮されていることから、ppbオーダーの高感度重金属測定が可能となる。
【0071】
このように、本発明の重金属分析装置で行われる本発明の分析方法では、測定試料の洗浄、測定試料からの重金属の抽出及び重金属の分析測定を連続的に行うことができる。即ち、通常土壌汚染対策法に行われる土壌試料の前処理工程のうち、粉砕とふるい以外は、連続的に行うことができる。
【0072】
なお、重金属抽出部11、重金属吸着部12及び溶離部13は、各々手動で行ってもよいが、それぞれをコンピューターによって切換弁の切替やポンプの駆動を連動させることにより、全自動化も可能である。
【実施例】
【0073】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
【0074】
<実施例1>
先ず、採取した土壌を測定試料とし、粒度は0.01〜1mmに調整した。また図1に示す重金属分析装置10を用いた。次いで、図2に示すように、測定試料16aを充填したカラム16を重金属抽出部11に接続し、このカラム16に導入流路26を介して抽出液(1M塩酸)17aを一定量導入した。そして、図3に示すように、導入した抽出液17aを導入流路26を含む循環流路27を介してカラム16に1時間循環させて、抽出液17aに測定試料に含まれる重金属(Cu、Zn、Pb)を抽出した。次に、カラム16を循環する抽出液17aの循環を停止した後、図4に示すように、抽出液17aを脱イオン化水24aとともに送出流路28を介して重金属吸着部12に送り、図5に示すように、重金属吸着部12の作用電極37と抽出液17aとの間に−0.8Vの電位を印加することにより、測定対象の重金属を選択的に重金属吸着部12に吸着させ、重金属と、鉄やアルミニウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ケイ素、高分子有機物等のマトリックスとを分離した。次に、溶離液(1M硝酸)18aにより重金属吸着部12に吸着した重金属を溶離させ、溶離液18aに含まれる溶離した重金属を原子吸光装置により測定した。その結果を次の表1にそれぞれ示す。
【0075】
<比較例1>
実施例1と同様の採取した土壌を測定試料とし、公定法(土壌汚染対策法)に基づく溶出試験法を用いて測定試料中に含まれる重金属を測定した。その結果を次の表1にそれぞれ示す。
【0076】
【表1】

表1から明らかなように、実施例1の本発明の重金属分析装置を用いた分析方法による結果は、比較例1の公定法で行う溶出試験法による結果とほぼ一致していた。
【0077】
また、実施例1では測定時間は2〜3時間程度であり、比較例1(公定法)の測定時間が10〜15時間を要するのに対し、大幅な時間短縮となった。更に、比較例1の測定時に生じる廃液量に比べ、実施例1では測定時に生じる廃液は約1/10迄削減することができており、本発明の重金属分析装置を用いた分析方法は、公定法と比較して、土壌のような測定試料から重金属を容易に分析することができることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の重金属分析装置及び重金属の分析方法は、分析、無機、環境の化学分野、不動産、環境アセスメント、製鉄場など、土壌中の重金属分析を採用する分野、又は畜産業からの家畜糞、一般及び工業からの焼却灰、浄水場の汚泥等の常時大量の産業廃棄物が産出され、埋め立て処分や再利用開発を行う際に重金属の測定が必須項目に関わる技術分野、最近では、放射能汚染における土壌のセシウム、ストロンチウムのようなイオン半径の大きな陽イオンの濃度測定が必要な分野への利用にも適用が可能である。
【符号の説明】
【0079】
10 重金属分析装置
11 重金属抽出部
12 重金属吸着部
13 溶離部
14 測定部
16 カラム
16a 測定試料
17 第1容器
17a 抽出液
18 第3容器
18a 溶離液
19 第1流路
21 第2流路
22 第3流路
23 第3切換弁
24 第2容器
24a 脱イオン化水
26 導入流路
27 循環流路
28 送出流路
29 第1切換弁
31 第2切換弁
32 第1ポンプ
33 補助流路
34 対極電極
36 参照電極
37 作用電極
38 ポテンショスタット
39 第2ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定量の抽出液を循環させることにより重金属を含む測定試料を充填したカラムに前記抽出液を通過させて前記測定試料を洗浄するとともに前記抽出液に重金属を抽出する重金属抽出部と、前記重金属抽出部で重金属を抽出した抽出液から測定対象の重金属を選択的に吸着する重金属吸着部と、溶離液により前記重金属吸着部で吸着した重金属を溶離する溶離部とを備え、
前記重金属抽出部と前記重金属吸着部とが第1流路により相互に接続され、前記溶離部と前記重金属吸着部とが第2流路により相互に接続され、前記重金属吸着部が第3流路により前記溶離液に含まれる溶離した重金属を測定する測定部に接続されることを特徴とする重金属分析装置。
【請求項2】
前記重金属抽出部が、前記抽出液を貯える第1容器と、脱イオン化水を貯える第2容器と、重金属を含む測定試料を充填可能な前記カラムと、前記カラムに前記抽出液又は前記脱イオン化水を導入するための導入流路と、前記カラムを通過した前記抽出液が循環するための前記導入流路を含む循環流路と、前記第1流路に接続され前記循環した抽出液を前記脱イオン化水とともに送出するための送出流路と、前記第1容器から前記抽出液を前記カラムに導入するように又は前記第2容器から前記脱イオン化水を前記カラムに導入するように切換える第1切換弁と、第1切換位置と第2切換位置を有する第2切換弁と、前記カラムと前記第2切換弁の間の流路に設けられた第1ポンプとを備え、
前記第2切換弁が前記第1切換位置に切換えられたときに、前記第1ポンプが前記導入流路を介して前記抽出液又は前記脱イオン化水を前記カラムに導入しかつ前記抽出液を前記脱イオン化水とともに前記送出流路に送出し、前記第2切換弁が前記第2切換位置に切換られたときに、前記第1ポンプが前記循環流路を介して前記抽出液を循環させるように構成された請求項1記載の重金属分析装置。
【請求項3】
前記重金属吸着部が、対極電極、参照電極及び高温焼結炭素繊維カラムからなる作用電極を備えた電着セルであり、前記作用電極と前記第1流路で送られてきた前記抽出液との間に測定対象の重金属に応じた電着電位を印加することにより、前記重金属抽出部で抽出された抽出液に含まれる前記測定対象の重金属のみを選択的に前記作用電極に吸着するように構成された請求項1記載の重金属分析装置。
【請求項4】
前記溶離部が、溶離液を貯える第3容器と、前記溶離液を前記第2流路、前記重金属吸着部及び前記第3流路を経て前記測定部に移送する第2ポンプとを有する請求項1記載の重金属分析装置。
【請求項5】
前記測定試料が、0.01mm〜0.1mmの粒度を有する、土壌、畜産廃棄物、農産廃棄物、海産廃棄物、焼却灰、食品又は植物を少なくとも1種含む請求項1記載の重金属分析装置。
【請求項6】
重金属を含む測定試料を充填したカラムに導入流路を介して一定量の抽出液を導入する工程と、
前記導入した抽出液を前記導入流路を含む循環流路を介して前記カラムに一定時間循環させて前記抽出液に重金属を抽出する工程と、
前記カラムを循環する抽出液の循環を停止した後、前記抽出液を脱イオン化水とともに送出流路を介して重金属吸着部に送る工程と、
前記送られてきた抽出液から測定対象の重金属を選択的に前記重金属吸着部に吸着する工程と、
溶離液により前記重金属吸着部に吸着した重金属を溶離する工程と、
前記溶離液に含まれる溶離した重金属を測定する工程と
を含む重金属の分析方法。
【請求項7】
前記測定試料が、0.01mm〜0.1mmの粒度を有する、土壌、畜産廃棄物、農産廃棄物、海産廃棄物、焼却灰、食品又は植物を少なくとも1種含む請求項6記載の重金属の分析方法。

【図1】
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【図5】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−64603(P2013−64603A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201816(P2011−201816)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(504145364)国立大学法人群馬大学 (352)
【Fターム(参考)】