説明

重金属捕集剤の薬注制御方法

【課題】重金属含有排水をジチオカルバミン酸系重金属捕集剤によって処理する方法において、この重金属捕集剤の薬注量を過不足のない適正量とすることができる重金属捕集剤の薬注制御方法を提供する。
【解決手段】重金属含有排水にジチオカルバミン酸系重金属捕集剤を添加し、このジチオカルバミン酸系重金属捕集剤添加後、固液分離された処理水に重金属化合物を加え、重金属イオンと該処理水中のジチオカルバミン酸系重金属捕集剤とを反応させて発色させた後に400〜700nmの波長の吸光度又は透過率を測定し、その測定結果に基づいて、前記ジチオカルバミン酸系重金属捕集剤の添加量を制御することを特徴とする重金属捕集剤の薬注制御方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重金属捕集剤の薬注制御方法に係り、特に重金属含有排水にジチオカルバミン酸系重金属捕集剤を加えて該排水中の重金属成分を除去する重金属含有排水の処理方法におけるジチオカルバミン酸系重金属捕集剤の薬注制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
メッキ排水、塗装排水等の重金属含有排水は、銅、クロム、亜鉛、鉛、マンガン、鉄、ニッケル、カドミウム等の重金属を含むものであり、これらの重金属含有排水は、水質汚濁防止法等により適切な処理を行うことが義務づけられている。
【0003】
重金属含有排水の処理法として、ジチオカルバミン酸基を主体とするキレート系重金属捕集剤を添加して、凝集沈殿処理を行う方法が知られている(特許文献1)。このジチオカルバミン酸系重金属捕集剤を用いた重金属含有排水の処理方法において、重金属含有排水の水質変動にかかわらず、キレート系重金属捕集剤を定量添加で処理すると、キレート系重金属捕集剤添加量が不足する場合も過剰添加の場合、処理水質が低下する。一方、過剰添加の場合にはジチオカルバミン酸系重金属捕集剤コストが徒に嵩む。
【0004】
特許文献1には、重金属含有排水にキレート系重金属捕集剤を加えて該排水中の重金属成分を除去するに当たり、該重金属含有排水にキレート系重金属捕集剤を添加し、このキレート系重金属捕集剤の添加量と、このキレート系重金属捕集剤の添加前後の該排水の酸化還元電位の変化量を測定し、この測定結果に基いて、必要添加量を決定する方法が記載されている。
【0005】
キレート系重金属捕集剤は、キレート形成基(ジチオカルバミン酸基)を持ち、この基が排水中の重金属イオンと反応して不溶化物を作り沈殿を生成する。この反応時には、酸化還元電位(ORP)が低下する。特許文献1の方法は、このORPの変化、即ち、処理対象排水へのキレート系重金属捕集剤の添加濃度を変化させるとそれに応じて、重金属捕集剤の添加濃度が高くなるほどORPが低くなるように変化することを利用したものである。
【0006】
特許文献2には、重金属抽出処理物などの廃棄物からサンプルを採取し、サンプルの所定量に対して液体キレート剤を添加してサンプル中の重金属と液体キレート剤とを反応させ、液体キレート剤を添加したサンプルについて、液体キレート剤について特異的な波長における吸光度IBを求め、吸光度IBからサンプル中の未反応の液体キレート剤の量Bを求め、空試験により添加した液体キレート剤の全量に相当する波長における吸光度IAを求め、吸光度IAから添加した液体キレート剤の全量Aを求める。この全量Aと量Bの差から重金属と反応した液体キレート剤の量Cを求め、この量Cとサンプルの所定量との比に基づいて廃棄物を処理するに適正な液体キレート剤の添加量を決定することが記載されている。特許文献2には、キレート剤がジチオカルバミン酸系の場合、この波長として286nm、257nm、215nmが記載されている。
【0007】
特許文献3には、重金属含有飛灰をジチオカルバミン酸系キレート剤で重金属不溶化処理する方法が記載されている。この特許文献3には、液中のキレート剤濃度を330nm以上の波長(具体的には350nm)の吸光度によって測定することが記載されている(特許文献3の0018段落、0028段落)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−340874
【特許文献2】特開平10−337550
【特許文献3】特開2010−260010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2,3の吸光度法によるジチオカルバミン酸系キレート剤の定量は、ジチオカルバミン酸系キレート剤それ自体の吸光度を検出するものであるため、重金属含有排水の処理等のジチオカルバミン酸系キレート剤の濃度が低い場合や、吸光度に影響する検水中の有機物濃度が変動する場合などにあっては、測定精度が低いものとなる。
【0010】
本発明は、重金属含有排水をジチオカルバミン酸系重金属捕集剤によって処理する方法において、この重金属捕集剤の薬注量を過不足のない適正量とすることができる重金属捕集剤の薬注制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の重金属捕集剤の薬注制御方法は、重金属含有排水にジチオカルバミン酸系重金属捕集剤を加えて該排水中の重金属成分を除去するための、該ジチオカルバミン酸系重金属捕集剤の必要添加量を決定する重金属捕集剤の薬注制御方法において、該重金属含有排水にジチオカルバミン酸系重金属捕集剤を添加し、このジチオカルバミン酸系重金属捕集剤添加後、固液分離された処理水に重金属化合物を加え、重金属イオンと該処理水中のジチオカルバミン酸系重金属捕集剤とを反応させて発色させた後に400〜700nmの波長の吸光度又は透過率を測定し、その測定結果に基づいて、前記ジチオカルバミン酸系重金属捕集剤の添加量を制御することを特徴とするものである。
【0012】
請求項2の重金属捕集剤の薬注制御方法は、請求項1において、重金属化合物が水溶性の鉄塩であることを特徴とするものである。
【0013】
請求項3の重金属捕集剤の薬注制御方法は、請求項2において、400〜500nmの波長の吸光度又は透過率を測定することを特徴とするものである。
【0014】
請求項4の重金属捕集剤の薬注制御方法は、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記吸光度より求められる処理水中の捕集剤濃度が2〜10mg/Lとなるように前記重金属捕集剤の添加量を制御することを特徴とするものである。
【0015】
請求項5の重金属捕集剤の薬注制御方法は、重金属含有排水にジチオカルバミン酸系重金属捕集剤を加えて該排水中の重金属成分を除去するための、該ジチオカルバミン酸系重金属捕集剤の必要添加量を決定する重金属捕集剤の薬注制御方法において、該重金属含有排水にジチオカルバミン酸系重金属捕集剤を添加し、このジチオカルバミン酸系重金属捕集剤添加後、固液分離された処理水の400〜700nmの波長の吸光度又は透過率を測定し、その測定結果に基づいて、前記ジチオカルバミン酸系重金属捕集剤の添加量を制御することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の重金属捕集剤の薬注制御方法では、重金属含有排水へのジチオカルバミン酸系重金属捕集剤の添加量を決定する際に、該排水に該捕集剤を添加し、固液分離し、固液分離処理水に水溶性鉄塩、銅塩等の重金属化合物を添加して重金属イオンと残留ジチオカルバミン酸系重金属捕集剤とを反応させて発色させた後、400〜700nmの吸光度又は透過率を測定する。このように、重金属イオンとジチオカルバミン酸系重金属捕集剤との反応によって発色させ、400〜700nmの可視光域の吸光度又は透過率を測定するため、該捕集剤の可視光吸収の影響を受けることなく、また吸光度又は透過率に影響する有機物濃度が変動する場合であっても、残留捕集剤を精度よく検出ないし定量することができる。400〜700nmの吸光度センサ又は透過率センサは、UV吸光度センサ等に比べて安価である。
【0017】
なお、固液分離処理水中に十分量の重金属イオンが予め存在する場合には、重金属化合物を添加しなくても発色反応が生じ、該残留捕集剤を検出ないし定量することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態に係る重金属捕集剤の薬注制御方法を示すフロー図である。
【図2】別の実施の形態に係る重金属捕集剤の薬注制御方法を示すフロー図である。
【図3】重金属捕集剤の吸光度を示すグラフである。
【図4】Fe2+を添加したときの吸光度を示すグラフである。
【図5】Fe2+を添加したときの吸光度を示すグラフである。
【図6】Fe2+を添加したときの吸光度を示すグラフである。
【図7】Cu2+を添加したときの吸光度を示すグラフである。
【図8】Fe3+,Al3+又はCa2+を添加したときの吸光度を示すグラフである。
【図9】Cu2+又はFe2+を添加したときの吸光度を示すグラフである。
【図10】Cu2+を添加したときの吸光度を示すグラフである。
【図11】処理水中のNi,Zn濃度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0020】
本発明では、重金属含有排水にジチオカルバミン酸系重金属捕集剤を添加して、該排水中の重金属を該捕集剤と反応させて不溶化させた後、固液分離する。
【0021】
この重金属含有排水としては、鉄鋼や半導体及び自動車製造のメッキ工程、清掃工場や発電所の洗煙、集塵工程、電池、硝子製造工程、産業廃棄物処理場の埋立浸出水などからの排水が例示されるが、これに限定されない。
【0022】
この重金属含有排水中の重金属としては、水銀、カドミウム、砒素、鉛、6価クロム、セレン、銅、亜鉛、マンガン、2価鉄、ニッケル、3価鉄などが例示されるが、これに限定されない。
【0023】
重金属含有排水中の重金属イオン濃度は、通常は約100ppm以下、例えば1〜50ppm程度であるが、これに限定されない。
【0024】
ジチオカルバミン酸系重金属捕集剤としては、ジチオカルバミン酸塩、ジアルキルジチオカルバミン酸塩、シクロアルキルジチオカルバミン酸塩、ピペラジンビスジチオカルバミン酸塩、テトラエチレンペンタミンジチオカルバミン酸塩、ポリアミンのジチオカルバミン酸塩などが例示されるが、これに限定されない。なお、これらの1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
重金属含有排水に上記捕集剤を添加して生成した不溶化物を固液分離するための固液分離手段としては、沈降分離、濾過、遠心分離、膜分離などのいずれでもよい。
【0026】
この固液分離処理水に添加され、残留捕集剤と反応して発色する重金属化合物としては、Fe2+、Fe3+、Cu2+、Zn2+、Pb2+、Ni2+、Cd2+、Mn2+などの硫酸塩、塩酸塩等の水溶性塩が挙げられるが、発色の度合や分析作業終了後の放流時に特段の処理が不要となることからFe2+又はFe3+の塩が好適である。
【0027】
一般に、上記ジチオカルバミン酸系重金属捕集剤の希薄水溶液に上記重金属化合物を添加した場合の発色は、該重金属化合物の添加量が増加するほど発色が濃くなるが、水中の捕集剤の全量と添加重金属化合物とが反応する当反応量以上になると、重金属化合物添加量を多くしても発色はそれ以上濃くならない。従って、本発明において、固液分離処理水中の残留捕集剤濃度を定量するときには、上記の当反応量以上(例えば当反応量の1〜10倍、特に1.5〜5倍程度)に重金属化合物を添加することが好ましい。
【0028】
当反応量以上に重金属化合物を添加して吸光度を測定した後、予め求めておいた検量線(又は検量関係)に基づいて固液分離処理水中の残留捕集剤濃度を求める。この検量線(又は検量関係)は、濃度既知の捕集剤水溶液に当反応量以上の重金属化合物を添加して測定した吸光度によって求められるものである。
【0029】
このようにして求めた固液分離処理水中の捕集剤濃度に基づいて、排水に対する捕集剤添加量を制御する。この制御は、固液分離処理水中の捕集剤濃度が目標濃度範囲となるように行われる。目標濃度範囲の下限値としては、例えば0〜10mg/L特に2〜5mg/L、上限値としては例えば8〜50mg/L特に10〜30mg/L程度とされるが、これに限定されない。
【0030】
なお、固液分離処理水中に捕集剤が残留しているか否かを検出する場合には、重金属化合物の添加量は上記当反応量よりも少なくてもよい。
【0031】
また、排水中の重金属濃度が高い等に起因して固液分離処理水中に重金属が相当量残留しており、捕集剤が残留重金属イオンと反応しても発色している場合には、重金属化合物を添加しなくてもよいことがある。
【0032】
吸光度又は透過率の測定波長は400〜700nm、好ましくは400〜660nm、特に好ましくは400〜500nmである。この範囲より小さくなると、排水中の他の有機化合物の影響を受けたり、また、感度も低くなる。この範囲より大きいと感度が低くなる。
【0033】
固液分離処理水中の捕集剤濃度に基づいて排水への捕集剤添加量を制御する排水処理方法のフローの一例について図1,2を参照して説明する。
【0034】
この排水処理系では、重金属含有排水に中和槽1で酸(HCl等)又はアルカリ(NaOH等)のpH調整剤を添加してpH調整した後、反応槽2に導入し、薬剤貯槽3から薬注ポンプPでキレート系重金属捕集剤を添加して反応させ、反応液に無機凝集剤を添加して凝集槽4で凝集処理し、次いで高分子凝集剤を添加して凝集槽5で凝集処理し、凝集処理液を沈殿池6で固液分離し、得られた上澄水を処理水として放流する。また、分離された汚泥は脱水機(図示略)等で脱水処理する。
【0035】
沈殿池6からの処理水の一部を分取して計測槽7に導入し、重金属化合物を添加し、400〜700nmの吸光度を吸光度計8で計測する。この吸光度が制御器9に入力され、キレート系重金属捕集剤の必要添加量が算出される。この算出結果に基づいて薬注ポンプPが制御され、キレート系重金属捕集剤の適正な薬注が行われる。
【0036】
計測槽7での吸光度測定は連続的に行われてもよく、バッチ式に行われてのよい。
【0037】
なお、吸光度計8と制御器9の算出結果を通信端末を経て電話回線で遠隔地のセンターの中央監視装置に送信すると共に、この中央監視装置からの設定変更(例えば、計測間隔の設定変更、補正係数等の制御設定値の変更等)を電話回線で通信端末を経て制御器に送信し、現地/センター相互のデータ通信で遠隔地における処理状況の把握及び監視と遠隔制御が行うようにしてもよい。
【0038】
図1では、沈殿池6からの処理水について重金属化合物を添加して吸光度を測定しているが、図2のように、凝集槽5の上部から採水して計測槽7に導入し、重金属化合物を添加し、吸光度を測定してもよい。この場合、槽7に採取水を導入し重金属化合物を添加して攪拌した後、暫く静置し、凝集物を沈降させてから、上澄水について吸光度を測定するのが好ましい。図2の方法は、図1の方法に比べ吸光度計が汚れやすいものの、キレート剤を添加してから吸光度測定までのタイムラグが小さいため、精度の良い制御が可能となる。
【0039】
なお、図1,2では、沈殿池6を用いているが、前述の通り、固液分離手段としては各種のものを用いることができる。また、固液分離処理水中に重金属が相当量残留し、重金属化合物の添加が不要の場合には、沈殿池6から放流される処理水流路や沈殿池6に吸光度計8を設けることもできる。また、吸光度計8にかわり透過率計を用いることもできる。
【0040】
図1、図2では処理水質の更なる向上を目的に凝集槽4を設けて無機凝集剤による凝集処理を行っているが、無機凝集剤による凝集処理を行った場合には、無機凝集剤によって余分な重金属捕集剤が除去されて制御が困難になることがあり、このような場合には、凝集槽4を設けずに無機凝集剤による処理は省略される。なお、無機凝集剤は、過剰に添加された重金属捕集剤(残留重金属捕集剤)の除去を目的に添加される場合がある。本発明においては、重金属捕集剤がわずかに残留する程度に制御可能なため、上記の目的で無機凝集剤が添加されている場合には、無機凝集剤による処理を省略することが可能となる。
【0041】
無機凝集剤としてはポリ硫酸第二鉄、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化第二鉄等を、高分子凝集剤としてはアニオン性の高分子凝集剤であるアクリルアミドのホモポリマー、アクリル酸ナトリウムとアクリルアミドのコポリマー、アクリル酸ナトリウムとアクリルアミドと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のターポリマーなどを使用することができる。
【0042】
本発明の方法は、ジチオカルバミン酸系重金属捕集剤との反応が可能な重金属を含有するものであれば、どのような重金属含有排水にも適用可能である。
【実施例】
【0043】
以下に実験例及び実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0044】
<実験例1>
ジチオカルバミン酸系重金属捕集剤として、表1の4種類の薬剤1〜4について吸光度スペクトルを測定し、図3に示した。図示の通り、いずれの捕集剤も200〜350nmに強い吸収帯を有し、約240nm付近に吸光ピークを有する。また、400nm以上では吸光度はきわめて小さい。
【0045】
【表1】

【0046】
<実験例2>
捕集剤として薬剤3を30mg/L溶解させた水にFeSOをFe2+として10mg/L添加し、吸光度スペクトルを測定した。結果を図4に示す。図4には、FeSO無添加の場合のスペクトルを併せて示す。
【0047】
図4の通り、Fe2+を添加することにより、420nmをピークとする強い吸光が生じることが認められた。
【0048】
そこで、薬剤3の30mg/L水溶液に対するFeSOの添加量を変えたときの470nmの吸光度を測定し、図5に示した。図5の通り、Fe2+添加量が10mg/L以上では吸光度が頭打ちとなり、30mg/Lの薬剤3に対するFe2+の当反応量は10mg/Lであることが認められた。
【0049】
そこで、薬剤3の濃度を3〜30mg/Lの範囲とし、FeSOを当反応量以上であるFe2+として10mg/L添加したときの470nmの吸光度を測定し、結果を図6に示した。図6の通り、薬剤3の濃度と吸光度との間には直線関係が存在する。このことから、Fe2+を当反応量以上添加して測定した吸光度から、水中の薬剤3の濃度を定量できることが認められた。
【0050】
<実験例3,4>
Fe2+以外の重金属イオンの発色作用を確認するために、30mg/Lの薬剤3水溶液に対し、CuSOをCu2+として20mg/L添加した場合のスペクトルを測定し、図7に示した(実験例3)。また、30mg/Lの薬剤3水溶液に対し、Fe(SOをFe3+として10mg/L添加した場合のスペクトルを測定し、図8に示した(実験例4)。
【0051】
その結果、Cu2+,Fe3+の場合も、薬剤3と反応して約460nm(Cu2+の場合)又は360nm(Fe3+の場合)にピークを有する発色が生じることが認められた。なお、Al3+,Ca2+を添加したところ、図8の通り、発色は生じないことが認められた。
【0052】
<実験例5>
捕集剤として薬剤2の3〜36mg/Lの水溶液を作成し、各々に対しCuSO又はFeSOをCu2+又はFe2+として10mg/L添加し、425nmの吸光度を図9に示した。図9にはCu2+,Fe2+無添加の吸光度も示した。図9の通り、薬剤2の場合も、Cu2+,Fe2+と反応して発色すること、吸光度と薬剤2の濃度との間に線形の相関関係が存在し、吸光度から薬剤2の濃度を定量できることが認められた。
【0053】
<実験例6>
実験例3において、捕集剤として薬剤1又は4を用いたほかは同様にして吸光度を測定した。結果を図10に示した。図10の通り、薬剤1、4の場合もCu2+と反応して発色することが認められる。
【0054】
<実験例7>
図1に示す排水処理系にて、自動車工場の重金属含有排水(Ni,Zn含有排水)を模擬した模擬排水を処理した。即ち、NiSO5mgasNi/L及びZnSO5mgasZn/Lを含む水溶液に薬剤2を3、6、9、12、15、18又は24mg/L添加し、その後無機凝集剤(ポリ硫酸第二鉄)、アニオン性高分子凝集剤(ポリアクリルアミド)を添加して処理した。
【0055】
処理水中のNi2+,Zn2+濃度を図11に示した。図11の通り、この排水の場合、薬剤2を15〜24mg/L添加すれば、過剰薬注することなくNi及びZnが十分に捕集されることが認められた。
【0056】
<実施例1>
上記実験例7において、沈殿池からの処理水にFe2+を10mg/L添加し、425nmの吸光度を測定した。そして、この吸光度が0.12〜1となるように(即ち、処理水中の薬剤2の濃度が5〜25mg/Lとなるように)薬注制御したところ、処理水中のNi2+及びZn2+濃度はいずれも0.1mg/L以下となった。
【符号の説明】
【0057】
1 中和槽
2 反応槽
3 薬剤貯槽
4 凝集槽
5 凝集槽
6 沈殿池
7 計測槽
8 吸光度計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重金属含有排水にジチオカルバミン酸系重金属捕集剤を加えて該排水中の重金属成分を除去するための、該ジチオカルバミン酸系重金属捕集剤の必要添加量を決定する重金属捕集剤の薬注制御方法において、
該重金属含有排水にジチオカルバミン酸系重金属捕集剤を添加し、このジチオカルバミン酸系重金属捕集剤添加後、固液分離された処理水に重金属化合物を加え、
重金属イオンと該処理水中のジチオカルバミン酸系重金属捕集剤とを反応させて発色させた後に400〜700nmの波長の吸光度又は透過率を測定し、その測定結果に基づいて、前記ジチオカルバミン酸系重金属捕集剤の添加量を制御することを特徴とする重金属捕集剤の薬注制御方法。
【請求項2】
請求項1において、重金属化合物が水溶性の鉄塩又は銅塩であることを特徴とする重金属捕集剤の薬注制御方法。
【請求項3】
請求項2において、400〜500nmの波長の吸光度又は透過率を測定することを特徴とする重金属捕集剤の薬注制御方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記吸光度又は透過率より求められる処理水中の捕集剤濃度が10〜30mg/Lとなるように前記重金属捕集剤の添加量を制御することを特徴とする重金属捕集剤の薬注制御方法。
【請求項5】
重金属含有排水にジチオカルバミン酸系重金属捕集剤を加えて該排水中の重金属成分を除去するための、該ジチオカルバミン酸系重金属捕集剤の必要添加量を決定する重金属捕集剤の薬注制御方法において、
該重金属含有排水にジチオカルバミン酸系重金属捕集剤を添加し、このジチオカルバミン酸系重金属捕集剤添加後、固液分離された処理水の400〜700nmの波長の吸光度又は透過率を測定し、その測定結果に基づいて、前記ジチオカルバミン酸系重金属捕集剤の添加量を制御することを特徴とする重金属捕集剤の薬注制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−161724(P2012−161724A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22909(P2011−22909)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】