説明

野外設置用日除け

【課題】野外作業者の人数や動きに応じて遮光領域を適宜に変化させることができるとともに、風の影響を受けにくくて作業の邪魔にならない、野外設置用日除けを提供する。
【解決手段】野外作業者を強い日差しから保護するための日除けであって、遮光対象の地面上に立設される複数本の支柱と、支柱の上端部に設けられた複数対のワイヤー張架部材と、対のワイヤー張架部材の間に張架されるワイヤーであって、略平行に延在する対のワイヤーと、覆いの一端側を対のワイヤーに対して固定的に吊り下げる一端側吊り下げ部材と、覆いの他端側を対のワイヤーに対して固定的又は可動的に吊り下げる他端側吊り下げ部材と、覆いを対のワイヤーに沿ってスライド移動させるための覆い移動手段と、を備えて、野外作業者の人数や動きに応じて覆いをスライド移動させることにより、覆いで遮光される遮光領域を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農地や工事現場等の野外で作業する野外作業者を保護するために設置される日除けに関する。
【背景技術】
【0002】
農地や工事現場等の野外での作業場所においては、太陽からの強い日差しを遮る遮蔽物が少ないかほとんど無いという状況にある。そのため、当該野外作業場所で夏場等の日差しの強い季節に作業する野外作業者にとっては、作業環境が非常に悪い。とりわけ、近年、農地で作業する農作業者が暑熱環境下に曝されることによって熱中症(日射病や熱射病を総称したもの)を発症することが、社会問題化している。しかしながら、このような野外作業者の熱中症に対する何らかの有効な対策がなされていないのが実情である。
【0003】
ところで、野外での比較的安定した作業環境を確保するための手段として、工事現場用テントが知られている。(例えば特許文献1を参照のこと。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−060302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
工事現場用テントは、一般に、野外での工事現場や資材等が降雨によって濡れないように保護することを主眼に置いている。すなわち、工事現場用テントの天幕は、工事の施工場所や資材の保管場所を濡れから防止する濡れ防止空間を固定的に且つ全体的に覆うように構成されている。したがって、工事現場用テントは、概して、作業者等を濡れから防止するためのものでは無く、さらには暑熱環境下で作業場所を転々と変える作業者を保護するためのものでは無い。
【0006】
また、工事現場用テントの天幕は、降雨による濡れ防止の遮蔽性のシート体であるから、雨を透過させる開孔を有するものではない。すなわち、工事現場用テントの天幕は、通気性を全く有しないシート体である。したがって、工事現場用テントは、遮蔽性の天幕によって濡れ防止空間の上方から下方へ(又は下方から上方へ)と抜ける風の通路形成を妨げるために、濡れ防止空間内に熱がこもりやすいという問題を有している。
【0007】
ところで、野外作業者にとっては、野外作業者自身が何らかの日除け部材を着用して、熱中症から身を守るしかないということになるが、日除け部材の着用は作業の邪魔になるという問題がある。
【0008】
固定的な保護対象物を濡れないようにする通気性の無い工事現場用テントを、場所を転々と変える野外作業者を保護するための遮光用日除けに単純に適用すれば良いのでないかと想定されるかもしれない。しかしながら、通気性の無い天幕の表面積を大きくすると、当該天幕が強い風にあおられて吹き飛ばされてしまう恐れがある。また、天幕の表面積を小さくすると、小さな遮光面積や地表面での太陽光の照り返しにより熱中症対策には不十分であるという問題もある。
【0009】
したがって、本発明の解決すべき技術的課題は、野外作業者を強い日差しから保護するための日除けであって、野外作業者の人数や動きに応じて遮光領域を適宜に変化させることができるとともに、風の影響を受けにくくて作業の邪魔にならない、野外設置用日除けを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記技術的課題を解決するために、本発明によれば、以下の野外設置用日除けが提供される。
【0011】
すなわち、本発明の請求項1に係る野外設置用日除けは、
野外作業者を強い日差しから保護するための日除けであって、
遮光対象の地面上に立設される複数本の支柱と、
前記支柱の上端部に設けられた複数対のワイヤー張架部材と、
前記対のワイヤー張架部材の間に張架されるワイヤーであって、略平行に延在する対のワイヤーと、
通気性及び遮光性を有する方形状の覆いと、
前記覆いの一端側を前記対のワイヤーに対して固定的に吊り下げる一端側吊り下げ部材と、
前記覆いの他端側を前記対のワイヤーに対して固定的又は可動的に吊り下げる他端側吊り下げ部材と、
前記覆いを前記対のワイヤーに沿ってスライド移動させるための覆い移動手段と、
を備えて、
野外作業者の人数や動きに応じて前記覆いをスライド移動させることにより、前記覆いで遮光される遮光領域を変化させることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項2に係る野外設置用日除けは、
前記覆いが遮光対象の地面の大略全体を覆う形状をしており、
前記覆いの他端側が前記他端側吊り下げ部材によって前記対のワイヤーのそれぞれに可動的に吊り下げられており、
前記覆いの他端側が前記覆い移動手段により前記対のワイヤーに沿ってスライド移動することを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項3に係る野外設置用日除けは、
前記覆い移動手段は、前記覆いの他端側において前記覆い又は他端側吊り下げ部材から垂下する操作ロープであることを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項4に係る野外設置用日除けは、
前記覆いが遮光対象の地面の一部分を覆う形状をしており、
前記覆いの他端側が前記他端側吊り下げ部材によって前記対のワイヤーのそれぞれに固定的に吊り下げられており、
前記覆い及び前記対のワイヤーが前記覆い移動手段によって一体的にスライド移動することを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項5に係る野外設置用日除けは、
前記覆い移動手段は、前記ワイヤー張架部材を回転駆動する回転駆動装置であることを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項6に係る野外設置用日除けシステムは、
前記覆いがメッシュ体又はネット体であることを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項7に係る野外設置用日除けシステムは、
前記覆いが前記一端側吊り下げ部材及び他端側吊り下げ部材から着脱可能に構成されていることを特徴とする。
【0018】
本発明の請求項8に係る野外設置用日除けシステムは、
前記遮光対象の地面が農地であることを特徴とする。
【0019】
本発明の請求項9に係る野外設置用日除けシステムは、
前記覆いが、前記農地に形成された畝に対して直交する畝直交方向にスライド移動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に係る本発明では、覆い移動手段で、野外作業者の人数や動きに応じて覆いをワイヤーに沿ってスライド移動させることにより、覆いが遮光する遮光領域を適宜に変化することができ、風の影響を受けにくくて作業の邪魔にならないという効果を奏する。
【0021】
様々な形態の覆いを使用することができるが、請求項2に係る本発明は、覆いが遮光対象の地面の大略全体を覆う形状をしており、覆いを折り畳んだ開口透光状態と、覆いを全面に広げた閉鎖遮光状態との間で、遮光領域の面積を自在に増減することができるという効果を奏する。特に、野外作業者の人数が多い場合や、野外作業者が散在している場合に好適である。
【0022】
覆いをスライド移動させるために外部の覆い移動手段を設けることもできるが、請求項3に係る本発明は、野外作業者が操作ロープを操作することで覆いを容易にスライド移動させることができ、優れた操作性を与えるという効果を奏する。
【0023】
請求項4に係る本発明は、覆いが遮光対象の地面の一部分を覆う形状をしており、野外作業者の動きに応じて覆いの位置を変えることができるという効果を奏する。特に、野外作業者が少ない場合に好適である。
【0024】
請求項5に係る本発明は、覆いの変位操作を自動化できるという効果を奏する。
【0025】
請求項6に係る本発明は、メッシュ体又はネット体の開口径や開口率を変えることにより、覆いの通気性及び遮光性を容易に調節することができるという効果を奏する。
【0026】
請求項7に係る本発明は、強風で覆いが吹き飛ばされてしまう恐れがあるときには、覆いを取り外すことができるという効果を奏する。
【0027】
請求項8に係る本発明は、周囲に強い日差しを遮るものがほとんど無い農地において、上述した効果を顕著に奏する。
【0028】
請求項9に係る本発明は、農作業者の通常の農作業動作に合わせているので、覆いをスライド移動させる頻度を少なくできるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第一実施形態に係る野外設置用日除けを説明する斜視図である。
【図2】図1に示した野外設置用日除けの使用形態を説明する図である。覆いを折り畳んだ開口透光状態を示している。
【図3】図1に示した野外設置用日除けの使用形態を説明する図である。覆いを全面に広げた閉鎖遮光状態を示している。
【図4】本発明の第二実施形態に係る野外設置用日除けを説明する斜視図である。
【図5】図4に示した野外設置用日除けの使用形態を説明する図である。覆いを一端側に配置した形態を示している。
【図6】図4に示した野外設置用日除けの使用形態を説明する図である。覆いを他端側に配置した形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明に係る野外設置用日除け1を農業分野に適用した実施形態を、図1乃至60を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明に係る野外設置用日除け1は、農業分野に限定されるものではなく、土木・建築分野にも適用可能である。
【0031】
まず、図1乃至3を参照しながら、本発明の第一実施形態に係る野外設置用日除け1を農地(例えば、一反(20m×50m)の略長方形形状)に適用した場合について説明する。なお、遮光対象である農地の面積や形状に応じて日除けの使用形態が適宜に選択される。例えば、遮光対象領域の面積が大きいために、遮光対象領域を二つの区画に分けて(例えば20m×50mの農地を20m×25mの区画に2分割して)、二つの覆い26で遮光する構成を図1に開示している。しかしながら、遮光対象領域の面積が大きい場合であっても、遮光対象領域を二つの区画に分けることなく一つの覆い26で遮光する構成であってよいことは言うまでもない。
【0032】
本発明の第一実施形態に係る野外設置用日除け1は、覆い26が遮光対象である農地50の大略全体を覆う形状をしており、覆い26を折り畳んだ開口透光状態と、覆い26を全面に広げた閉鎖遮光状態との間で、覆い26による遮光領域Sの面積を自在に増減できることを基本的特徴としている。
【0033】
野外設置用日除け1は、複数の支柱10と、複数の滑車20と、少なくとも一つの覆い26と、複数対のワイヤー24と、を備えている。また、野外設置用日除け1は、オプションとして、鳥獣害回避手段としての側面防鳥網14、上面防鳥網16及び電気柵18と、風速検出手段としての風速計(不図示)を備えている。
【0034】
支柱10は、遮光対象である農地50の所定箇所(略長方形をした農地50のコーナー部分や中間部分)に埋設された土台12から立設されている。なお、支柱10を地面に対して固定的に設置することができるのであれば、必ずしも地面に埋設する必要は無い。図1に示した例では、略長方形の農地50の四つのコーナー地点に設置されたコーナー支柱10a,10bと、長手方向に存在する二つのコーナー地点をつなぐ長手線分の略中間に位置する中間地点に設置された中間支柱10c,10dと、いう合計6本の支柱10を備えている。支柱10の高さは、例えば約5mである。支柱10は、コンクリート円柱や鋼管柱等から構成される。支柱10の当該構成は、あくまでも例示であり、農地50の面積や形状によって選択されるべきものである。
【0035】
滑車20は、滑車支持体22を介して各支柱10の上端部に固定・支持されている。略畝直交方向に沿って配置された一対の滑車20の間に、ワイヤー24が固定的に張架されている。対向配置された一対のワイヤー24の間に、覆い26が畝長手方向に拡張状態で架け渡されている。図1に示した実施形態では、2対のワイヤー24が畝長手方向に対して略直交する畝直交方向に延在するように張架・配置されている。ワイヤー24の当該配置は、野外作業者としての農作業者60が農作業時における主たる動きが、農作物54が畝52に植え付けられる方向、すなわち、畝長手方向とおおよそ同じになるので、農作業者60の動きに追従するように覆い26を動かす際に覆い26をスライド移動させる頻度を低減させるのに効果的である。
【0036】
覆い26は、通気性及び遮光性を有する方形状のメッシュ体又はネット体である。覆い26は、農地50という大面積のものを覆うものであるので、大面積であって軽量であることが要求される。メッシュ体は、平織や亀甲や菱形等の金網、ポリアミド網、ポリエステル網、ポリエチレン網、ポリプロピレン網である。ネット体は、材質が耐候性ポリプロピレンの網である。覆い26の開口径や開口率を変えることにより、覆い26の通気性及び遮光性を容易に調節することができる。覆い26が通気性を有するので、強い風にあおられることが低減される。
【0037】
覆い26の一端側には、固定吊り下げ部材30が取り付けられている。固定吊り下げ部材30の上端部は、ワイヤー24の一端側又は一端側の支柱10や滑車20や滑車支持体22に固着されており、固定端を形成している。固定吊り下げ部材30の下端部は、覆い26を保持する覆い保持手段を有している。
【0038】
覆い26の他端側、及び、覆い26の一端側と他端側との間の複数の所定箇所には、それぞれ、可動吊り下げ部材32が取り付けられている。各可動吊り下げ部材32の上端部は、ワイヤー24に沿って移動自在に係着された係着フック部を備えていて、自由端を形成している。可動吊り下げ部材32の下端部は、覆い26を保持する覆い保持手段を有している。ワイヤー24は、複数の可動吊り下げ部材32及びそれらに保持された覆い26のスライド移動を可能にするためのガイドとして機能している。
【0039】
覆い26の一端側がワイヤー24の一端側又は一端側の支柱10や滑車20や滑車支持体22に固着された固定端になっているとともに、覆い26の他端側がワイヤー24に沿ってスライド移動可能な自由端になっているので、覆い26を自在に開閉することができる。したがって、本願発明において、一端側の固定吊り下げ部材30によって覆い26の一端側が対のワイヤー24に対して固定的に吊り下げられているというのは、ワイヤー24の一端側に固着されている場合に加えて、一端側の支柱10や滑車20や滑車支持体22に固着された場合も含む広い概念である。
【0040】
図2は、覆い26の一端側が固定吊り下げ部材30によってワイヤー24等の一端側に固定されているとともに、覆い26の他端側、及び、覆い26の一端側と他端側との間の複数の所定箇所が、可動吊り下げ部材32によってワイヤー24に沿ってスライド移動可能に構成されていることを示している。そして、複数の可動吊り下げ部材32によって保持された覆い26が、屏風のように複数段に折り畳まれている。図2は、覆い26を折り畳んだ開口透光状態を示している。複数段に折り畳まれた覆い26が上面防鳥網16によって支持されることにより、覆い26が大きく垂れ下がることを防止するようにしてもよい。また、覆い26の一端側が固定吊り下げ部材30によってワイヤー24等の一端側に固定されているとともに、覆い26の他端側が可動吊り下げ部材32によってワイヤー24に沿ってスライド移動可能に構成されてもよい。この場合、覆い26が大きくUの字状に折り畳まれて大きく垂れ下がるので、上面防鳥網16による覆い26の支持が垂れ下がり防止に効果的である。
【0041】
図2に示した折り畳んだ開口透光状態は、農地50の大部分が覆い26で覆われずに開口した状態になっており、多くの日差しを農地50に導くことができる。そして、図2に示した折り畳んだ開口透光状態は、遮光性を持った覆い26が完全に折り畳まれて遮光領域Sがゼロになるのではなく、畝52の直交方向にある幅を持った遮光領域Sを有している。したがって、覆い26によって形成された遮光領域Sの下で農作業をしている農作業者60が、強い日差しから保護される。当該開口透光状態は、少人数の農作業者60(例えば、農作業者60が一人か二人である)が一端側支柱10a,10cの近傍にいる場合か、農作業者60が多人数であっても一端側支柱10a,10cに片寄っている場合に好適である。また、通気性を持った覆い26により遮光領域Sの上方から下方へ(又は下方から上方へ)と抜ける風の通路が形成されているので、日除け1の内部に熱がこもることはない。
【0042】
覆い26の他端側においては、覆い26又は可動吊り下げ部材32から垂下する操作ロープ34が取り付けられている。操作ロープ34が他端側の畝長手方向の略中央部に取り付けられていることが好適である。農作業者60が操作ロープ34をワイヤー24の張架方向すなわち畝直交方向に操作することで、覆い26を容易にスライド移動させることができ、優れた操作性を与える。なお、操作ロープ34は、略Yの字状にして、ロープの左上端部及び右上端部のそれぞれをコーナー側取付部位及び中間側取付部位に取着して、中央に垂れ下がったロープを操作することが好適である。当該略Yの字状の操作ロープ34により、均等な操作力がコーナー側取付部位及び中間側取付部位のそれぞれに印加されるので、どちらかに片寄った操作力に起因した引っ掛かりが無くなって、覆い26をスムーズにスライド移動させることが可能になる。
【0043】
図3は、一端側に固定され且つ複数段に折り畳まれた覆い26を、他端側の方向に全面に広げた閉鎖遮光状態を示している。図3に示した閉鎖遮光状態は、農地50の大部分が覆い26で覆われた閉鎖状態であり、農地50に降り注ぐ強い日差しを遮断している。遮光領域Sの畝直交方向の幅が、一対の支柱10(一端側コーナー支柱10aと他端側コーナー支柱10b)間の距離に対応している。遮光領域Sが最も大きくなっている。当該閉鎖遮光状態は、多人数の農作業者60が農地にいる(例えば、農作業者60が三人乃至五人程度である)場合か、農作業者60が農地50に散在している(少なくとも一人の農作業者60が一端側にいて且つ少なくとも一人の農作業者60が他端側にいる)場合に好適である。
【0044】
なお、固定吊り下げ部材30及び可動吊り下げ部材32の下端部に設けられた覆い保持手段を着脱可能な構成とすることにより、強風で覆い26が吹き飛ばされてしまう恐れがあるときには、覆い26をワイヤー24から取り外すことができる。覆い保持手段は、例えば、吊り下げ部材本体の下端に設けられたリング状受け金具と、覆い26を保持するとともに前記リング状受け金具に対して着脱可能に係着する逆J字状の引っ掛け金具と、から構成することができる。
【0045】
また、覆い移動手段として上記操作ロープ34の代わりに、覆い26の他端側をワイヤー24の張架方向すなわち畝直交方向に機械的且つ自動的にスライド移動させる他の覆い移動手段(外部の覆い移動手段)を設けてもよい。他の覆い移動手段(外部の覆い移動手段)としては、例えば、覆い26の他端側を一端側に付勢するバネ等の付勢部材と、覆い26の他端側を他端側に引き寄せる駆動モーターと、によって構成することができる。
【0046】
さらにまた、他の覆い移動手段(外部の覆い移動手段)として、略畝直交方向に沿って配置された一対の滑車20の間に、ワイヤー24が移動可能に張架され、覆い26の一端側が固定吊り下げ部材30によって一端側の滑車支持体22や支柱10に固定され、覆い26の他端側が固定吊り下げ部材30によってワイヤー24に固定され、覆い26の一端側と他端側との間の複数の所定箇所が可動吊り下げ部材32によってワイヤー24に沿ってスライド移動可能であるような構成としてもよい。そして、ワイヤー24自体をその張架方向すなわち畝直交方向に自動的にスライド移動させるために滑車20を回転駆動する滑車回動モーターを設けてもよい。
【0047】
上記の駆動モーターや滑車回動モーターの動きを制御する制御盤やスイッチ類をいずれかの支柱10に設置することも可能であるが、操作のために制御盤やスイッチ類の設置された支柱10のところまで農作業者60が行くことが必要になってしまう。そこで、駆動モーターや滑車回動モーターの動作を公知の無線送信装置及び無線受信装置を介して制御する構成にしてもよい。このような構成によれば、覆い26の他端側から離れた位置にいる農作業者60が手元の無線送信装置を操作することで、覆い26の移動状態(開閉状態)を随意にコントロールすることができる。
【0048】
次に、本発明の第二実施形態に係る野外設置用日除け1を、図4乃至6を参照しながら説明する。なお、第二実施形態の特徴部分を除く他の構成は上述した第一実施形態と同じであるので、第二実施形態の特徴部分以外の他の構成に関する説明を省略する。
【0049】
本発明の第二実施形態に係る野外設置用日除け1は、覆い26が遮光対象である農地50の一部分を覆う形状をしており、覆い26を一端側から他端側までの範囲で自在に移動させることができ、且つ、覆い26による遮光領域Sの面積が一定であることを基本的特徴としている。
【0050】
図4において、略畝直交方向に沿って配置された一対の滑車20の間に、ワイヤー24が移動可能に張架されている。滑車支持体22は、回動軸23を中心にして回転自在であるように滑車20を支持している。ワイヤー24自体(後述するようにワイヤー24に付随する覆い26)をその張架方向すなわち畝直交方向にスライド移動させるための覆い移動手段を備えている。覆い移動手段としては、上述した第一実施形態のところで説明したのと同様に農作業者60の操作によって移動させる操作ロープ34や、ワイヤー24自体を自動的にスライド移動させるために滑車20を回転駆動する滑車回動モーター(不図示)を用いることができる。
【0051】
覆い26の一端側には、固定吊り下げ部材30が取り付けられている。一端側の固定吊り下げ部材30の上端部は、ワイヤー24の一端側に固着されており、固定端を形成している。固定吊り下げ部材30の下端部は、覆い26を保持する覆い保持手段を有している。
【0052】
同様に、覆い26の他端側にも、固定吊り下げ部材30が取り付けられている。他端側の固定吊り下げ部材30の上端部は、ワイヤー24の他端側に固着されており、固定端を形成している。固定吊り下げ部材30の下端部は、覆い26を保持する覆い保持手段を有している。
【0053】
対向配置された一対のワイヤー24の間に、覆い26が畝長手方向に拡張状態で架け渡されている。図4に示した実施形態においても、2対のワイヤー24が畝直交方向に延在するように張架・配置されている。覆い26すなわち遮光領域Sの畝直交方向の幅は、例えば、おおよそ2乃至3mである。
【0054】
したがって、本発明の第二実施形態では、覆い26の一端側及び他端側の両方がワイヤー24に固着された固定端になっている。ワイヤー24がその張架方向すなわち畝直交方向に移動することに付随して、覆い26がその形態を保持しながらワイヤー24に沿ってスライド移動する。その結果、農作業者60の動きに応じて覆い26の位置を変えて遮光領域Sの場所を適宜に変えることができる。
【0055】
図5は、少なくとも一人の農作業者60が一端側の近傍で農作業しているので、農作業者60を保護するために、覆い26を一端側に配置した形態を示している。また、図6は、少なくとも一人の農作業者60が他端側の近傍で農作業しているので、農作業者60を保護するために、覆い26を他端側に配置した形態を示している。
【0056】
図5及び6において、農作業者60が遮光を必要とする領域及び場所に、覆い26による遮光領域Sを形成している。第二実施形態における覆い26すなわち遮光領域Sの畝直交方向の幅は、上述した第一実施形態との比較において、狭くて且つ一定であるので、農作業者60が少ない(例えば、一人か二人の農作業者60が狭い領域で農作業している)場合に好適である。
【0057】
覆い26の畝直交方向の幅が狭いことは、覆い26が風の影響を受けにくくなること、日除け1の内部での上方から下方へ(又は下方から上方へ)と抜ける風の通路が確保されること等の利点を有する。
【0058】
なお、本発明を理解しやすくするために具体的数値を示しながら説明したが、これらの数値はあくまでも例示であって本願発明の保護範囲を制限するものではない。
【符号の説明】
【0059】
1:野外設置用日除け
10:支柱
12:土台
14:側面防鳥網
16:上面防鳥網
18:電気柵
20:滑車(ワイヤー張架部材)
22:滑車支持体(ワイヤー張架部材)
23:回動軸
24:ワイヤー
26:覆い
30:固定吊り下げ部材
32:可動吊り下げ部材
34:操作ロープ(覆い移動手段)
50:農地(遮光対象)
52:畝
54:農作物
60:農作業者(野外作業者)
S:遮光領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
野外作業者を強い日差しから保護するための日除けであって、
遮光対象の地面上に立設される複数本の支柱と、
前記支柱の上端部に設けられた複数対のワイヤー張架部材と、
前記対のワイヤー張架部材の間に張架されるワイヤーであって、略平行に延在する対のワイヤーと、
通気性及び遮光性を有する方形状の覆いと、
前記覆いの一端側を前記対のワイヤーに対して固定的に吊り下げる一端側吊り下げ部材と、
前記覆いの他端側を前記対のワイヤーに対して固定的又は可動的に吊り下げる他端側吊り下げ部材と、
前記覆いを前記対のワイヤーに沿ってスライド移動させるための覆い移動手段と、
を備えて、
野外作業者の人数や動きに応じて前記覆いをスライド移動させることにより、前記覆いで遮光される遮光領域を変化させることを特徴とする野外設置用日除け。
【請求項2】
前記覆いが遮光対象の地面の大略全体を覆う形状をしており、
前記覆いの他端側が前記他端側吊り下げ部材によって前記対のワイヤーのそれぞれに可動的に吊り下げられており、
前記覆いの他端側が前記覆い移動手段により前記対のワイヤーに沿ってスライド移動することを特徴とする、請求項1に記載の野外設置用日除け。
【請求項3】
前記覆い移動手段は、前記覆いの他端側において前記覆い又は他端側吊り下げ部材から垂下する操作ロープであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の野外設置用日除け。
【請求項4】
前記覆いが遮光対象の地面の一部分を覆う形状をしており、
前記覆いの他端側が前記他端側吊り下げ部材によって前記対のワイヤーのそれぞれに固定的に吊り下げられており、
前記覆い及び前記対のワイヤーが前記覆い移動手段によって一体的にスライド移動することを特徴とする、請求項1に記載の野外設置用日除け。
【請求項5】
前記覆い移動手段は、前記ワイヤー張架部材を回転駆動する回転駆動装置であることを特徴とする、請求項1又は4に記載の野外設置用日除け。
【請求項6】
前記覆いがメッシュ体又はネット体であることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一つに記載の野外設置用日除け。
【請求項7】
前記覆いが前記一端側吊り下げ部材及び他端側吊り下げ部材から着脱可能に構成されていることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一つに記載の野外設置用日除け。
【請求項8】
前記遮光対象の地面が農地であることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一つに記載の野外設置用日除け。
【請求項9】
前記覆いが、前記農地に形成された畝に対して直交する畝直交方向にスライド移動することを特徴とする、請求項8に記載の野外設置用日除け。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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