説明

野球またはソフトボール用捕球具

【課題】装着者の手の握力をより有効に利用し、安定した捕球を可能とする野球用捕球具を提供する。
【解決手段】本発明に係る野球用捕球具は、受球面部11を含み装着者の掌側に配置される手掌側部分1と、手掌側部分1と縫着され、装着者の手甲側に配置され、手掌側部分1との間に装着者の指を受け入れ可能な領域を形成する手甲側部分99とを備える。手掌側部分1と手甲側部分99との間に位置する手受入領域90に設けられ、装着者の中指を薬指側に近づけた状態で固定可能な中指固定部70とを備える。中指固定部70は装着者の中指における人差指側の側面に当接される側面壁部71を含み、手受入領域90には、装着した際に装着者の親指を手掌側部分1に固定可能な親指固定部75をさらに備えていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定した捕球を可能にする野球またはソフトボール用捕球具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に野球またはソフトボール用捕球具は、装着者の実際の手の大きさよりも大きいサイズに設計される。したがって、捕球時に野球またはソフトボール用捕球具の内部で装着者の指が不必要に動き、指の力が当該野球またはソフトボール用捕球具に十分に伝達できない。
【0003】
そこで、たとえば以下の特許文献1には次に述べる態様を有する野球用グローブが開示されている。当該野球用グローブは、装着者の薬指を受け入れ可能な第1帯状体と、装着者の小指を受け入れ可能な第2帯状体とを設けている。第1帯状体と第2帯状体とのそれぞれは指を受け入れ可能とするためグローブ本体の内部で折り曲げられ輪状をなした状態で、それぞれの帯状体の一方の端部を野球用グローブ本体の外部で結着固定可能にしている。このようにして、装着者の指の大きさに応じて当該輪の大きさを調整可能とし、装着者の薬指および小指の力を安定に当該輪に伝達して捕球することを図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平7−37253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
たとえばボールを捕球する際の、装着者の手の各指の力を測定したところ、薬指や小指よりも、人差指や中指の方が大きいことがわかっている。このため、上記の特許文献のように薬指と小指のみを野球またはソフトボール用捕球具に固定しても、装着者の手の力を効率的に野球用グローブに伝達することは困難である。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、装着者の手の力を効率的に野球またはソフトボール用捕球具に伝達することで、安定した捕球を可能とする野球またはソフトボール用捕球具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る野球またはソフトボール用捕球具は、受球面部を含み装着者の掌側に配置される手掌側部分と、手掌側部分と結合され、装着者の手甲側に配置され、手掌側部分との間に装着者の指を受け入れ可能な空間を形成する手甲側部分とを備える。手掌側部分と手甲側部分との間に位置する第1の領域に設けられ、装着者の中指を薬指側に近づけた状態で固定可能な固定部とを備える。
【0008】
上記固定部は、装着者の中指を、装着者の中指に繋がる中手骨の軸線の延長線よりも薬指側に近づけた状態で固定することが好ましい。
【0009】
上記固定部は、第1の領域内に設けられ、装着者の中指における人差指側の側面に当接される壁部を含むことが好ましい。
【0010】
上記固定部は、装着した際に、装着者の中指と人差指とがなす角度が、装着者の中指と薬指とがなす角度よりも大きくなるように中指を配置することが好ましい。
【0011】
上記固定部は、装着した際に装着者の中指と薬指とを手掌側部分に対して固定することが好ましい。
【0012】
装着した際に装着者の親指を手掌側部分に固定可能な親指固定部をさらに備えることが好ましい。上記固定部と上記親指固定部との間に、装着者の人差指を受け入れ、装着者の人差指を中指側と親指側との双方に移動可能となるように第2の領域を設けていてもよい。上記親指固定部は、手掌側部分と手甲側部分との間に位置する第3の領域に設けることが好ましい。
【0013】
上記手甲側部分の外表面上に設けられ、装着した際に装着者の人差指を受け入れ可能な人差指袋をさらに備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る野球またはソフトボール用捕球具は、手掌側部分と手甲側部分との間に位置する第1の領域に、装着者の中指を薬指側に近づけた状態で固定可能な固定部を備える。したがって、装着者の中指を当該固定部により野球またはソフトボール用捕球具に対して固定することができる。したがって、装着者は意識的に強い力を加えなくても、薬指や小指よりも強い中指の力を有効に利用して、安定にかつ容易に捕球を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係るミットを手掌側部分側から見た概略図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るミットを手甲側部分側から見た概略図である。
【図3】ミットの手甲側部分と内皮を広げた状態を示す概略図である。
【図4】ミットの内皮の表面上の構造例を示す概略図である。
【図5】ミットの内部を手挿入口側から見た概略図である。
【図6】ミットの内部を図5と異なる角度から見た概略図である。
【図7】装着者の手の骨格を示す概略図である。
【図8】装着者が捕球具に加える力を計測するためのセンサユニットを示した図である。
【図9】図8に示すセンサユニットを装着者がはめる手袋に取り付けた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。本発明の実施の形態の野球またはソフトボール用捕球具であるミット100は、左手に装着するタイプであり、図1に示す手掌側部分1と、図2に示す手甲側部分99とを有する。ただし、ミット100と同様の構成や機能などを有する右手用のミットについても以下と同様の作用や効果を奏することができる。
【0017】
手掌側部分1は、当該ミット100を装着した装着者の手の掌側を覆うように配置される部分である。図1に示すように、手掌側部分1は、ボールを捕球する受球面部11を中央部分に含んでいる。手掌側部分1は、上記受球面部11を含む、ミット100の外部に現れる前面側領域と、装着者の掌に対向する、すなわち装着者の手を受け入れ可能なミット100の内部空間の一部を規定する背面側領域としての内皮50とを有する。
【0018】
また、手甲側部分99は、当該ミット100を装着した装着者の手の甲(手甲)側を覆うように配置される部分であり、たとえば外周部である結合部15において手掌側部分1と互いに結合されている。
【0019】
このようにして手掌側部分1と手甲側部分99とが互いに結合されることにより、手掌側部分1と手甲側部分99との間に手受入領域90が形成される。手受入領域90は、装着者の手を受け入れ可能な、ミット100の内部の空間領域である。手挿入口21から手を手受入領域90に挿入することにより、ミット100を手に装着することができる。
【0020】
図3、図4はミット100として組み立てる前の、手甲側部分99と内皮50とを示すものである。たとえば図3に示す連結紐31により、手甲側部分99と内皮50とはそれぞれ連結され、図1や図2に示すミット100の態様となる。
【0021】
図3、図4に示すように、内皮50の、ミット100として装着した際に装着者の掌に対向する側の表面上に中指固定部70が配置されている。
【0022】
中指固定部70は、たとえば薄革製の材料にて形成された帯状(矩形状)の部材の長軸方向における一方および他方の端部を、内皮50の、上記表面上に接合することにより形成される。すると、当該帯状の部材と内皮50の表面とに囲まれた空間領域は、接合部72から内皮50の上側へ、装着者の中指を挿通することが可能な輪環状をなすように形成される。このようにして上記帯状の部材は中指固定部70としての作用を奏する。中指固定部70のなす輪環状の空間領域に中指を挿通することにより、中指を中指固定部70の部材に固定することができる。
【0023】
なお、図3から図6においては、図の左側が、当該ミット100ないし、内皮50などの各部材を組み立てた際の装着者の左手の小指側に相当する領域であり、図の右側が、同装着者の左手の親指側に相当する領域である。したがって、図4から図6に示すように
、内皮50の、装着者の掌に対向する表面上には、中指固定部70と同様に帯状の部材で形成される、装着者の小指を手掌側部分1に固定するための小指固定部73が左側に、装着者の親指を手掌側部分1に固定するための親指固定部75が右側に配置されている。
上述したように、中指固定部70は、輪環状の空間領域に中指を挿通する領域である。しかし中指固定部70は、たとえば図5および図6に示すように、手受入領域90の左右方向(手の小指側から親指側へ延在する方向)の中央部分よりも左側、すなわち薬指や小指側に寄った領域に配置されている。
【0024】
このことを図7を用いて具体的に説明する。図7に示す手の骨格は、装着者の右手の骨格を掌側から見たものである。しかし、装着者の左手の骨格を手甲側から見た場合も同様の左右方向の位置関係となり、図7における左側が装着者の小指側であり、図7における右側が装着者の親指側に相当する。上述した中指固定部70は、装着者の中指を、中指に繋がる中手骨10の軸線20の延長線よりも薬指側(図7の左側)に近づけた状態で固定することができる位置に配置することが好ましい。
【0025】
ミット100は、中指固定部70に中指を挿通することにより、薬指や小指よりも捕球する力の大きい中指が不必要に動かないように固定することができる。このため、ミットの内部で中指が不必要に動く場合に比べて、捕球するために用いる手の力のうち、手掌側部分1に対して安定に固定された中指の力が寄与する割合が高くなる。したがって、捕球する際に手が加える力の総量は従来のグローブなどを用いた場合と同等であったとしても、中指の強い力を有効にミット100に伝達することにより捕球を行なうことができる。このため、装着者が意識的に強い力を加えなくても、安定にかつ容易に、捕球を行なうことができる。
【0026】
また、上述したように中指固定部70は、手受入領域90の左右方向の中央部分よりも左側、すなわち薬指や小指側に寄った領域に配置されている。このため装着者の中指を薬指や小指側に近づけた状態でミット100に対して固定することにより、装着者の中指と薬指、小指の3本間が互いに接近した状態となる。
【0027】
このため、捕球する力を加えることができる当該3本の指のそれぞれの間隔が小さくなる。すなわち当該3本の指は、指の並ぶ左右方向に関してほぼ連続した並びとなる。このため、指の並ぶ左右方向に関して、捕球する力を加えることができる指の存在する領域が広くなる。その結果、装着者は手を開閉することによるミット100の開閉を容易に行なうことができる。ミット100の受球面部11の開閉を容易に行なうことができれば、たとえば手の動作で受球面部11を閉じることにより、強い力で捕球することができる。したがって、3本の指の力を有効にミット100に伝達することができ、安定した捕球を行なうことが可能になる。
【0028】
さらに、中指を薬指や小指側に近づけた状態となるよう固定することにより、人差指をミット100の左右方向の中央付近に配置することができる。したがって後述するように、親指と中指により強い力を与えることができる。
【0029】
中指固定部70は、ミット100を装着した際に、装着者の中指と人差指とがなす角度が、装着者の中指と薬指とがなす角度よりも大きくすることができる位置に配置することが好ましい。言い換えれば、ミット100を装着した際に、装着者の中指と人差指との間隔が、装着者の中指と薬指との間隔よりも大きくなるように配置することが好ましい。
【0030】
このため、上述したように中指固定部70は、手受入領域90の左右方向の中央部分よりも左側、すなわち薬指や小指側に寄った領域に配置されている。このようにすれば、装着者の中指と薬指、および小指の3本の指の間隔を狭くすることができ、上述した効果を奏することが可能になる。
【0031】
上述した中指固定部70は、輪環状の空間領域の大きさを調整することにより、装着者の中指および薬指をミット100に対して固定することができるようにしてもよい。具体的には、輪環状の空間領域の大きさを調整することにより、装着者の中指および薬指の両方を中指固定部70のなす輪環状の空間領域に挿通することができる構成としてもよい。
【0032】
このようにすれば、たとえば装着者の中指と薬指とが互いに密着した状態で、両者を、装着者の薬指側(小指側)に近づけた状態で固定することができる。したがって、中指と薬指とが手の指の並ぶ方向に関して互いに連続した配置となるため、捕球する力を供給できる指が存在する領域が連続することになる。このため、ボールなどを安定に捕球することができる領域を広くすることができる。したがって、さらに容易に指の力をミット100に伝達することができる。このため容易にミット100の開閉を行ない、安定に捕球を行なうことが可能になる。
【0033】
また、中指と薬指とが互いに密着した状態で固定されるため、強い安定した力をミット100に伝達する。したがって、容易にミット100の開閉や捕球を行なうことができる。
【0034】
さらに、たとえば中指固定部70が上述したように装着者の中指と薬指との両方を手掌側部分1に対して固定する役割を有する場合、ミット100を装着した状態で手を最大限開いたときの薬指が、中指および小指と接触する位置になるように配置されることがより好ましい。このようにすれば、当該ミット100を装着した装着者の手の開閉が、より容易になる。上述した態様をとるために、たとえば中指固定部70が中指を薬指側および小指側に近づけた状態で、中指と薬指と小指との3本の指を挿通できる構成としてもよい。
【0035】
ここで、中指固定部70は装着者の中指における人差指側の側面に当接される壁部としての側面壁部71を備えている。すなわち、側面壁部71により、装着者の中指の側面と人差指の側面とが互いに接触しないよう分離される。
【0036】
このように、中指固定部70に側面壁部71を備えることにより、装着者の中指を、中指固定部70の存在する、手受入領域90の中央よりも薬指側に近い領域に、より安定に固定することができる。したがって、中指固定部70は、上述した構成の代わりに、たとえば内皮50の装着者の掌と対向する表面上と、手甲側部分99の装着者の手甲と対向する表面とを帯状の部材で連結するようにして側面壁部71を形成したものであってもよい。この場合においても、当該中指固定部70を、手受入領域90の中央部分よりも薬指や小指側に近い領域に配置することが好ましい。さらに、ミット100においては、輪環状をなす中指固定部70の接合部72は内皮50の表面上に形成されているが、手甲側部分99の、装着者の手甲と対向する表面上に接合部72を形成して、上述と同様の輪環状をなす中指固定部70を形成してもよい。
【0037】
ところで、図4から図6に示すように、内皮50の装着者の掌と対向する表面上には、装着者の人差指を固定するための、帯状の部材からなる固定部が配置されていない。上述したように、装着者の中指が薬指に近づけた状態で中指固定部70に固定され、装着者の親指が親指固定部75により固定される。すると、人差指が親指および中指と広い間隔(大きな角度)を保った状態で手受入領域90の、具体的には人差指用領域63に挿入される。
【0038】
このようにすれば、人差指は、手受入領域90のうち、装着者の人差指を中指側、すなわち中指固定部70側、および親指側、すなわち親指固定部75側の双方に移動可能な人差指用領域63の内部を自由に移動することができる。このように、装着者の人差指を人差指用領域63の内部を自由に移動可能な構成とすることにより、装着者の捕球時の手の動きや角度など、捕球の方法に応じて、人差指を自由な位置に配置することができる。
【0039】
人差指用領域63は内皮50と手甲側部分99とに挟まれた空間の領域の一部である。しかし人差指用領域63のうち、実際に装着者の人差指を受け入れ可能な領域は、図2に示す縫着部64で手甲側部分99と内皮50とが縫着された領域に囲まれた空間の領域としての人差指領域62(図6参照)である。このため、人差指領域62の内部で人差指は移動することが可能な領域の拘束を受ける。したがって、ミット100の装着時に人差指は比較的広い人差指領域62の内部を自由に移動可能といえども、無秩序に移動することを抑制することができる。
【0040】
上述したように人差指は、薬指や小指よりも捕球する力は大きい。しかし実際に捕球を行なう際には、人差指による力はほとんど利用していない。したがって、ミット100においては、人差指を薬指側に近づける構成とする必要はない。
【0041】
ミット100は、装着した際に人差指が左右方向の中央付近に存在する構成とすることにより、装着者の人差指が捕球を行なう際に重心としての役割を担うことになる。人差指は捕球の感覚を敏感に察知することができる指であるため、人差指を中央に配置することにより、当該感覚をより敏感にすることができる。
【0042】
また、ミット100は、装着者の人差指を中心として、人差指から中指、人差指から親指のそれぞれの距離を大きくとることができる。このようにすれば、中心に存在する人差指を支点として、捕球に寄与する作用点である中指および親指までの距離が大きいため、捕球を行なう力のモーメントを大きくすることができる。したがって、装着者の親指および中指がミット100に対して与える力をより大きくすることができる。
【0043】
ミット100は、上述したように装着者の人差指を、手受入領域90の内部の人差指領域62の内部を自由に移動可能とすることもできる。しかし図2、図3に示すように、手甲側部分99の外側の表面上に設けられ、装着した際に装着者の人差指を受入可能な人差指袋60を備えていてもよい。このようにすれば、ミット100を装着する際に、人差指をミット100の内部の人差指領域62に挿入することも、ミット100の外部の人差指袋60に挿入することもできる。したがって、装着者の好みにより、人差指の配置を選択することが可能となる。また、人差指袋60の内部に装着者の人差指を挿入すれば、当該人差指のミット100に対する固定をより安定にすることができ、安定した捕球を行なうことが可能になる。
【0044】
たとえば図2に示すように、人差指袋60は、人差指領域62と同様に、ミット100の左右方向の中央付近に配置することが好ましい。このようにすれば、人差指領域62に人差指を挿入した場合と同様に、人差指を重心として捕球を行なうことができる。
【実施例1】
【0045】
以上に本発明の実施の形態に係るミット100について説明したが、当該ミット100を用いてボールを実際に捕球し、各指がボールに加える力を調査した。
【0046】
図8に示すように、センサユニット101は、5本に枝分かれしており、各々の枝が複数のセンサ集合部102を有する。センサユニット101は簡単に変形させることができ、図9に示すように、センサユニット101を変形させ、手袋200に巻き付けることができ、センサユニット101が装着された手袋200を装着者がはめ、その上にミット100を装着者がはめる。なお、センサ集合部102は、合計で20個配置され、センサ集合部102としては、Glove typeのセンサーシート(ニッタ株式会社製)が用いられる。
【0047】
そしてミット100を装着した手でボールを最大限の握力で把握し、手の各指の加えた最大力の計測を行なった。同様の計測を、ミット100を用いた場合と従来から用いられる通常のグローブを用いた場合とについて行ない、計測データの比較を行なった。
【0048】
上記の通常のグローブを用いた場合、ボール全体に加わる握力の総和を100とすれば、人差指の加える力は3、中指の加える力は35、薬指の加える力は25、そして小指の加える力は18であった。これに対して、当該ミット100を用いた場合、同様にボール全体に加わる握力の総和を100とすれば、人差指の加える力は4、中指の加える力は43、薬指の加える力は23、そして小指の加える力は9であった。なお、これらを合計しても100に満たないが、残りの力は親指の加える力や、手袋手掌部201のセンサが観測した、装着者の掌が加えた力などである。
【0049】
このことから、本発明に係るミット100を用いた場合、通常のグローブを用いた場合と比べて、ボール全体に加わる握力の総和は同等であっても、中指がボールに力を加える割合が増加しており、薬指や小指が加える力の割合が減少している。上述したように中指は薬指や小指よりも大きな力を加えることができるため、中指が加える力の割合が増加する本発明に係るミット100を用いることにより、通常のグローブを用いる場合に比べて安定に、かつ容易にボールを把握することができる。
【0050】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、今回開示した各実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、装着者の手の力を効率的に野球またはソフトボール用捕球具に伝達することで、安定した捕球を可能とする野球またはソフトボール用捕球具を提供する技術として、特に優れている。
【符号の説明】
【0052】
1 手掌側部分、10 中手骨、11 受球面部、15 結合部、20 軸線、21 手挿入口、31 連結紐、50 内皮、60 人差指袋、62 人差指領域、63 人差指用領域、64 縫着部、70 中指固定部、71 側面壁部、72 接合部、73 小指固定部、75 親指固定部、90 手受入領域、99 手甲側部分、100 ミット、101 センサユニット、102 センサ集合部、200 手袋、201 手袋手掌部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受球面部を含み装着者の掌側に配置される手掌側部分と、
前記手掌側部分と結合され、装着者の手甲側に配置され、前記手掌側部分との間に装着者の指を受け入れ可能な空間を形成する手甲側部分と、
前記手掌側部分と前記手甲側部分との間に位置する第1の領域に設けられ、装着者の中指を薬指側に近づけた状態で固定可能な固定部とを備える、野球またはソフトボール用捕球具。
【請求項2】
前記固定部は、装着者の中指を、装着者の中指に繋がる中手骨の軸線の延長線よりも薬指側に近づけた状態で固定する、請求項1に記載の野球またはソフトボール用捕球具。
【請求項3】
前記固定部は、前記第1の領域内に設けられ、装着者の中指における人差指側の側面に当接される壁部を含む、請求項1または2に記載の野球またはソフトボール用捕球具。
【請求項4】
前記固定部は、装着した際に、装着者の中指と人差指とがなす角度が、装着者の中指と薬指とがなす角度よりも大きくなるように中指を配置する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の野球またはソフトボール用捕球具。
【請求項5】
前記固定部は、装着した際に装着者の中指と薬指とを前記手掌側部分に対して固定する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の野球またはソフトボール用捕球具。
【請求項6】
装着した際に装着者の親指を前記手掌側部分に固定可能な親指固定部をさらに備え、
前記固定部と前記親指固定部との間に、装着者の人差指を受け入れ、この人差指を中指側と親指側との双方に移動可能となるように第2の領域を設け、前記親指固定部を前記手掌側部分と前記手甲側部分との間に位置する第3の領域に設けた、請求項1〜5のいずれか1項に記載の野球またはソフトボール用捕球具。
【請求項7】
前記手甲側部分の外表面上に設けられ、装着した際に装着者の人差指を受け入れ可能な人差指袋をさらに備える、請求項1〜6のいずれか1項に記載の野球またはソフトボール用捕球具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−158476(P2010−158476A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−3894(P2009−3894)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(000005935)美津濃株式会社 (239)