説明

野球又はソフトボール用プロテクターの緩衝構造

【課題】低い反発性能と高い緩衝性能を兼ね備えた実用性の高い野球用プロテクターの緩衝構造を提供する。
【解決手段】プロテクター本体の外面側に形成する衝撃吸収用の緩衝凸部4Aの緩衝層8が、素材種の異なる複数の緩衝部材を緩衝層厚み方向に並ぶ状態に積層して構成されているとともに、複数の緩衝部材のうちの一部の緩衝部材として、高粘性流体的な変形特性を示す半固形状のゲル状素材9aからなるゲル状緩衝部材9が備えられている。そして、好ましくは、緩衝層厚み方向においてゲル状緩衝部材9のプロテクター外面側に弾性を有する発泡樹脂緩衝部材10を隣接させて配する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胸腹部への衝撃による怪我を抑止するために野球やソフトボール等のキャッチャーや審判が装着する野球又はソフトボール用プロテクターの緩衝構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のプロテクターは、ボール等による衝撃を低減することを主目的とし、基本的に、身体の胸腹部を被覆可能なプロテクター本体の外面側に複数の衝撃吸収用の緩衝凸部が形成されている。
【0003】
そして従来、ボールを捕球し損ねた際のキャッチャーの次の送球動作を素早く行なえるようにする等のために、ボールがプロテクターに衝突したときの撥ね返りを抑えるべく、このプロテクターの緩衝構造として、反発性能の低い固形状の素材(具体的には、EVA VN600、ゴムスポンジ、EPE38倍フォームなど)からなる緩衝部材により前記緩衝凸部を構成するものが知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2006−280426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、反発性能の低い固形状の素材からなる緩衝部材で緩衝凸部を構成する上記従来の緩衝構造では、反発性能はある程度低減し得るものの未だ一層の反発性能の低減が望まれ、しかも、基本的に要求される緩衝性能については、反発性能の低い固形状の素材に高い緩衝性能を併せ備えるものがないため、緩衝構造として十分な緩衝性能を得ることが難しくなり、これらのことで、プロテクターの緩衝構造として満足な実用性が得られない問題があった。
【0006】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、合理的な構成を採ることで、低い反発性能と高い緩衝性能とを兼ね備えた実用性の高い野球又はソフトボール用プロテクターの緩衝構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1特徴構成は、野球又はソフトボール用プロテクターの緩衝構造に係り、その特徴は、
身体の胸腹部を被覆可能なプロテクター本体の外面側に複数の衝撃吸収用の緩衝凸部が形成されている野球又はソフトボール用プロテクターの緩衝構造であって、
前記緩衝凸部が、前記プロテクター本体の内装材と外装材との間に緩衝凸部の突出代に相当する厚み寸法の緩衝層を配して構成され、
前記緩衝層が、素材種の異なる複数の緩衝部材を緩衝層厚み方向に並ぶ状態に積層して構成されているとともに、
複数の前記緩衝部材のうちの一部の緩衝部材として、半固形状のゲル状素材からなるゲル状緩衝部材が備えられている点にある。
【0008】
つまり、一般に半固形状のゲル状素材は、その変形特性として高粘性流体的な変形特性も有し、この高粘性流体的な変形特性は物体の衝突による衝撃に対して低い反発性能と高い緩衝性能とを効果的に発揮する。
【0009】
従って、このような半固形状のゲル状素材からなるゲル状緩衝部材を用いて前記緩衝凸部を構成する上記構成によれば、その緩衝凸部に低い反発性能と高い緩衝性能とを兼ね備えさせることができる。
【0010】
一方、ゲル状素材は一般に重いことから、前記緩衝層の全体を半固形状のゲル状素材からなるゲル状緩衝部材で構成すると、低い反発性能と高い緩衝性能は得られるものの、緩衝層の重量(ひいてはプロテクターの全体重量)が大きくなり、そのことで実用性の低下を招くが、積層する複数の緩衝部材のうちの一部の緩衝部材のみを半固形状のゲル状素材からなるゲル状緩衝部材にする上記構成であれば、他の緩衝部材に適当な素材のもの(軽量で、しかも、低い反発性能や高い緩衝能を得られるもの)を選定することで、緩衝層の重量増大も抑えることができる。
【0011】
これらのことから、上記構成によれば、プロテクターの緩衝構造として低い反発性能と高い緩衝性能とを兼ね備え、また重量面でも問題のない実用性の高いものにすることができる。
【0012】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
複数の前記緩衝部材のうちの一部の緩衝部材として、発泡樹脂素材からなる発泡樹脂緩衝部材が備えられているとともに、
前記ゲル状緩衝部材と前記発泡樹脂緩衝部材とが緩衝層厚み方向で互いに隣接する状態で配されている点にある。
【0013】
つまり、半固形状のゲル状素材からなるゲル状緩衝部材は、その高粘性流体的な変形特性のため、低い反発性能と高い緩衝性能を確実かつ安定して発揮し得る適切な装備状態を保つには何らかの支持が必要になる。
【0014】
この点、上記構成によれば、緩衝層厚み方向でゲル状緩衝部材に隣接させた発泡樹脂緩衝部材により、半固形状のゲル状素材からなるゲル状緩衝部材を適度な面圧の面接触状態で弾性的に支持して、低い反発性能と高い緩衝性能を確実かつ安定して発揮し得る適切な装備状態に保持することができる。
【0015】
そしてまた、このようにゲル状緩衝部材を弾性的に支持することで、半固形状のゲル状素材が備える高粘性流体的な変形特性を面方向及び緩衝層厚み方向の両方について十分に活かし得る状態(略言すれば、半固形状のゲル状素材からなるゲル状緩衝部材を拘束しない状態)でゲル状緩衝部材を支持することができる。
【0016】
これらのことが相俟って、上記構成によれば、プロテクターの使用姿勢によらず、衝撃に対し低い反発性能と高い緩衝性能とを一層効果的かつ確実に発揮させることができて、プロテクターの緩衝構造として実用性の一層高いものにすることができる。
【0017】
本発明の第3特徴構成は、第2特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記ゲル状緩衝部材が、緩衝層厚み方向において前記発泡樹脂緩衝部材のプロテクター外面側に配されている点にある。
【0018】
上記構成によれば、ボール等が衝撃吸収用の緩衝凸部に衝突したとき、緩衝層厚み方向においてゲル状緩衝部材のプロテクター内面側に位置する発泡樹脂緩衝部材の弾性変形により、ゲル状緩衝部材の窪み湾曲変形(曲げ変形)をバックアップ的に抑制することができる。
【0019】
そして、このようにゲル状緩衝部材の窪み湾曲変形を抑制することで、衝突による衝撃に対して、半固形状のゲル状素材からなるゲル状緩衝部材の高粘性流体的な変形を緩衝部材の面方向へ拡散的に進行させることができる。
【0020】
換言すれば、衝撃をゲル状緩衝部材の面方向へ効果的に分散させて、その分散衝撃成分の夫々に対してゲル状緩衝部材の高粘性流体的な変形を効果的に生じさせることができ、これにより、半固形状のゲル状素材からなるゲル状緩衝部材の高粘性流体的な変形特性を一層効果的に活用する形態にして、プロテクターの緩衝構造として低い反発性能と高い緩衝性能とをさらに効果的に発揮させることができる。
【0021】
本発明の第4特徴構成は、第1〜第3特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記ゲル状緩衝部材が、半固形状のゲル状素材をシート状体で被覆して構成されているとともに、
前記ゲル状緩衝部材とそれに対する緩衝層厚み方向における隣接部材とが非接着となる状態で前記ゲル状緩衝部材が配されている点にある。
【0022】
つまり、半固形状のゲル状素材からなるゲル状緩衝部材を被覆のないそのままの状態で緩衝層中に配した場合、ゲル状素材特有の表面粘着性によりゲル状緩衝部材とそれに対する隣接部材とが接着状態になり、これが原因で、ゲル状緩衝部材を面方向について拘束する傾向が強くなって、半固形状のゲル状素材からなるゲル状緩衝部材の高粘性流体的な変形特性に制限が掛かる状態になる。
【0023】
これに対し、上記構成によれば、半固形状のゲル状素材をシート状体で被覆して構成したゲル状緩衝部材をそれに対する隣接部材と非接着の状態にするから、衝突による衝撃に対し、ゲル状緩衝部材を面方向について非拘束ないしそれに近い状態で高粘性流体的に変形させることができ、これにより、高粘性流体的な変形特性により得られる低い反発性能と高い緩衝性能を一層確実かつ効果的に発揮させることができる。
【0024】
さらに言えば、上記の如くゲル状緩衝部材と隣接部材とを非接着の状態にして、衝突による衝撃に対し、ゲル状緩衝部材を非拘束ないしそれに近い状態で面方向に変形(即ち、ポアソン効果による直交方向への伸び変形,図4参照)させることで、衝撃エネルギーによるゲル状緩衝部材の面方向への変形が隣接部材により制限されることの反作用として衝撃エネルギーが反発エネルギーの形で弾性的に隣接部材に蓄積されるのを回避することができ、また、衝撃エネルギーの一部をゲル状緩衝部材と隣接部材との面方向での相対移動による摩擦熱として放散させることもでき、これらのことからも反発性能の一層の低減と緩衝性能の一層の向上が可能になる。
【0025】
なお、ゲル状緩衝部材と隣接部材とが非接着となる状態とは、緩衝層厚み方向におけるゲル状緩衝部材の両側の隣接部材のうち、プロテクター外面側の隣接部材又はプロテクター内面側の隣接部材のいずれか一方のみがゲル状緩衝部材と非接着となる状態、あるいは、プロテクター外面側の隣接部材とプロテクター内面側の隣接部材との両方がゲル状緩衝部材と非接着となる状態のいずれであってもよい。
【0026】
また、半固形状のゲル状素材を被覆してゲル状緩衝部材を構成するシート状体は、ゲル状緩衝部材な適切な装備が可能な範囲で、ゲル状素材の高粘性流体的な変形を極力大きく許容し得るものにしておくのが望ましい。
【0027】
本発明の第5特徴構成は、第2又は第3特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記ゲル状緩衝部材の厚み寸法が、前記発泡樹脂緩衝部材の厚み寸法よりも小さい寸法に構成されている点にある。
【0028】
上記構成によれば、半固形状のゲル状素材なからゲル状緩衝部材を発泡樹脂緩衝部材により前述の如く弾性的に支持することにおいて、比重の大きいゲル状緩衝部材を少量化して全体としての重量を小さくすることができ、これにより、前述の如く低い反発性能と高い緩衝性能とを兼ね備えながら、プロテクター着用者の重量面での動作負担を一層軽減することができて、プロテクターの緩衝構造として実用性の一層高いものにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】野球又はソフトボール用プロテクターの正面図
【図2】図1のII−II線断面図
【図3】ボールの衝突時の変形状態を示す断面図
【図4】ゲル状緩衝部材と発泡樹脂緩衝部材の変形を概念的に示す模式図
【図5】野球又はソフトボール用プロテクターの別実施形態を示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、野球やソフトボールのキャッチャー用のプロテクター1(野球又はソフトボール用プロテクターの一例)を示す。このプロテクター1は、身体の胸腹部を被覆可能なプロテクター本体2と、該プロテクター本体2が身体の前腹部に位置する状態で身体に装着するための装着手段としての取付けバンド3とから構成されている。また、プロテクター本体2の外面側には、面方向で分散する状態で複数の衝撃吸収用の緩衝凸部4が区画形成されている。
【0031】
図1、図2に示すように、プロテクター本体2は、皮革製等の内装材5と、樹脂製のマット状の緩衝材6と、皮革製等の外装材7との3者の積層構造を基本構造とし、内装材5と外装材7との間(具体的には、マット状緩衝材6と外装材7との間)に緩衝凸部4の突出代に相当する厚み寸法の緩衝層8を配して構成されている。なお、11は、内装材5、樹脂製のマット状緩衝材6、皮革製等の外装材7の3者を一体化する縫着部である。
【0032】
そして、複数の緩衝凸部4のうち、上下略中央位置の二個(一個又は複数個の一例)の緩衝凸部4A(中央緩衝凸部)の緩衝層8は、素材種の異なる複数の緩衝部材を緩衝層厚み方向(即ち、プロテクター内外方向)に並ぶ状態に積層して構成されている。
【0033】
また、中央緩衝凸部4Aを除く他の緩衝凸部4Bの緩衝層(図示しない)は、発泡ウレタン樹脂に代表される固形状の樹脂素材などからなる緩衝部材の単層構造或いは積層構造に構成されている。
【0034】
中央緩衝凸部4Aの緩衝層8は、全体としての重量を抑えながら低い反発性能と高い緩衝性能が得られるように、比重が大きいものの高粘性流体的な変形特性を有して低い反発性能と高い緩衝性能が発現される半固形状のゲル状素材9aからなるゲル状緩衝部材9と、発泡樹脂素材からなる発泡樹脂緩衝部材10とから構成されている。
【0035】
これらゲル状緩衝部材9と発泡樹脂緩衝部材10は、緩衝層厚み方向においてゲル状緩衝部材9が発泡樹脂緩衝部材10の外層側(即ち、プロテクター外面側)に位置し、且つ、ゲル状緩衝部材9と発泡樹脂緩衝部材10とが緩衝層厚み方向において隣接する状態で配されている。
【0036】
このため、プロテクター2の内装材5と外装材7との間において、半固形状のゲル状素材9aからなるゲル状緩衝部材9を発泡樹脂緩衝部材10により適度な面圧の面接触状態で弾性的に支持して、プロテクターの使用姿勢にからわらず低い反発性能と高い緩衝性能を確実かつ安定して発揮し得る適切な装備状態にゲル状緩衝部材9を保持することができ、また、半固形状のゲル状素材9aが備える高粘性流体的な変形特性を面方向及び緩衝層厚み方向の両方について十分に活かし得る状態でゲル状緩衝部材9を支持することができる。
【0037】
そして、図3に示すように、ボール12が衝撃吸収用の中央緩衝凸部4Aに衝突したとき、発泡樹脂緩衝部材10の弾性変形によりゲル状緩衝部材9の窪み湾曲変形をバックアップ的に抑制した状態で、衝撃をゲル状緩衝部材9の面方向へ効果的に分散させて、この分散衝撃成分の夫々に対してゲル状緩衝部材9の高粘性流体的な変形を効果的に生じさせることができ、これにより、ボール12の衝突に対し低い反発性能と高い緩衝性能を効果的に発揮させて、ボールの跳ね返りを抑制するとともに身体への衝撃伝達を効果的に低減することができる。
【0038】
ゲル状緩衝部材9は、半固形状のゲル状素材9aをウレタン樹脂シート9b(シート状体の一例)で被覆して構成されており、ゲル状素材9aとしては、スチレン系ブロック共重合体及びブチルゴムの一種類又は複数種類のブレンド樹脂をベースとした組成物等が挙げられる。当該組成物等には、必要に応じて、軟化剤、粘着付与樹脂、酸化防止剤のうちの少なくとも一つを配合してもよい。なお、本例では、半固形状のゲル状素材9aとして、上記組成物等の一例である株式会社加地製の商品名「EXGEL」(登録商標)を採用している。
【0039】
マット状の緩衝材6と発泡樹脂緩衝部材10は夫々、発泡ウレタン樹脂(樹脂素材の一例)から構成されていて、このうち、発泡樹脂緩衝部材10は、所謂、低反発仕様の発泡ウレタン樹脂から構成されている。
【0040】
そして、緩衝層厚み方向においてプロテクター外面側から衝撃力が加わったときに中央緩衝凸部4A全体の反発エネルギーを小さくするように、ゲル状緩衝部材9をそれの隣接部材(具体的には、プロテクター内面側の発泡樹脂緩衝部材10とプロテクター外面側の外装材7)に対して非接着の状態にして配してあり、また、内装材5とマット状緩衝材6、及び、マット状緩衝材6と発泡樹脂緩衝部材10も夫々、非接着の状態にしてある。
【0041】
そのため、プロテクター外面側から衝撃が加わったときのゲル状緩衝部材9及び発泡樹脂緩衝部材10夫々の変形形態(特に、面方向での変形形態)は、模式的に示せば図4に示す如きものになる。
【0042】
つまり、プロテクター外面側から衝撃Pが加わった際、ゲル状緩衝部材9には、図中矢印Y1で示す厚み方向での圧縮変形とともに、ポアソン効果によって図中矢印X1で示す面方向(厚み方向に対する直交方向)への伸び変形が生じる。
【0043】
これに対し、ゲル状緩衝部材9に隣接する発泡樹脂緩衝部材10(隣接部材)はゲル状緩衝部材9と非接着の状態にあることから、ゲル状緩衝部材9の面方向への伸び変形に引っ張られる形態で発泡樹脂緩衝部材10がゲル状緩衝部材9と同率に面方向に伸び変形することが抑止され、発泡樹脂緩衝部材10には、図中矢印Y2で示す厚み方向での圧縮変形とともに、自身のポアソン効果により図中矢印X2で示す面方向への独立的な伸び変形が生じるだけとなる。
【0044】
従って、ゲル状緩衝部材9の面方向への伸び変形に引っ張られる形態で発泡樹脂緩衝部材10がゲル状緩衝部材9と同率に面方向に伸び変形することの反作用(換言すれば、衝撃エネルギーによるゲル状緩衝部材9の面方向への変形が発泡樹脂緩衝部材10により制限されることの反作用)として、衝撃エネルギーが反発エネルギーの形で発泡樹脂緩衝部材10に蓄積されるのを回避することができ、また、衝撃エネルギーの一部をゲル状緩衝部材9と発泡樹脂緩衝部材10との面方向での相対移動による摩擦熱として放散させることもでき、これらのことから、反発性能の一層の低減と緩衝性能の一層の向上が可能になる。
【0045】
また、比重の大きいゲル状緩衝部材9を少量化して全体としての重量を小さくなるように、ゲル状緩衝部材9の厚み寸法t9は発泡樹脂緩衝部材10の厚み寸法t10よりも小に構成されている。
【0046】
低重量化を図りながら低い反発性能と高い緩衝性能を高い次元で得るには、ゲル状緩衝部材9の厚み寸法t9は3〜7mmの範囲が好ましく、発泡樹脂緩衝部材10の厚み寸法t10は10〜30mmの範囲が好ましく、マット状緩衝材6の厚み寸法t6は3〜7mmの範囲が好ましく、本例では、ゲル状緩衝部材9及びマット緩衝材6の厚み寸法を5mmとし、発泡樹脂緩衝部材10の厚み寸法t10を20mmとしている。
【0047】
上記の如く構成されたプロテクター1は、速度120fps(約130km/h)相当の圧縮空気により硬式ボールを発射して受板部に配設した緩衝凸部4Aに衝突させる実験を行ったところ、衝撃吸収用の緩衝凸部4Aの緩衝層8を低反発性の固形状の樹脂素材のみにより構成した従来のプロテクターと比較して、反発係数(=反発速度/入射速度)が約3割減少し、受板部に加わる衝撃力がほぼ同等との結果が得られ、低い反発性能と高い緩衝性能が検証された。
【0048】
[別実施形態]
前述の実施形態では、大型の緩衝凸部4が構成されているプロテクター1における上下中間位置で左右幅方向の略全域に亘る緩衝凸部4Aにゲル状緩衝部材9が配されている場合を例に示したが、例えば、図5に示すように、小型の緩衝凸部4が構成されているプロテクター1における上下中間位置且つ左右中間位置の緩衝凸部4Aにゲル状緩衝部材9が配されていてもよい。
【0049】
前述の実施形態では、一部の緩衝凸部4Aにゲル状緩衝部材9が配されている場合を例に示したが、全部の緩衝凸部4にゲル状緩衝部材9が配されていてもよい。
【0050】
前述の実施形態では、隣接する複数個の緩衝凸部4Aにゲル状緩衝部材9を配する場合を例に示したが、一個の緩衝凸部4だけにゲル状緩衝部材9を配してもよく、或いは、上下方向や左右方向で一個置きとなるなど、間隔を空けた複数個の緩衝凸部4にゲル状緩衝部材9が配されていてもよい。
【0051】
前述の実施形態では、緩衝層8が、固形状素材からなる一個の緩衝部材と半固形状のゲル状素材からなる一個のゲル状緩衝部材9とが備えられている場合を例に示したが、固形状素材からなる一個又は複数個の緩衝部材と半固形状のゲル状素材からなる一個又は複数個のゲル状緩衝部材9とが備えられていてもよく、また、液状素材からなる一個又は複数個の液状緩衝部材が備えられていてもよい。
【0052】
前述の実施形態では、ゲル状緩衝部材9が緩衝層8の最外層に配されている場合を例に示したが、最内層や中間層に配されていてもよい。
【0053】
内装材5や外装材7は、前述の実施形態で示した皮革に限らず、生地などから構成されていてもよい。なお、低い反発性能と高い緩衝性能を得るには、内装材5や外装材7を皮革よりも変形し易い生地から構成するのが好ましく、特に、外装材7を皮革よりも変形し易い生地から構成するのが好ましい。
【0054】
本発明の緩衝構造は、野球又はソフトボール用プロテクターに限らず心臓震盪防止用等の種々の目的のプロテクターにも適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
2 プロテクター本体
4,4A 緩衝凸部
5 内装材
6 緩衝材
7 外装材、隣接部材
8 緩衝層
9 ゲル状緩衝部材
9a 半固形状のゲル状素材
9b シート状体
t9 ゲル状緩衝部材の厚み寸法
10 発泡樹脂緩衝部材、隣接部材
t10 発泡樹脂緩衝部材の厚み寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体の胸腹部を被覆可能なプロテクター本体の外面側に複数の衝撃吸収用の緩衝凸部が形成されている野球又はソフトボール用プロテクターの緩衝構造であって、
前記緩衝凸部が、前記プロテクター本体の内装材と外装材との間に緩衝凸部の突出代に相当する厚み寸法の緩衝層を配して構成され、
前記緩衝層が、素材種の異なる複数の緩衝部材を緩衝層厚み方向に並ぶ状態に積層して構成されているとともに、
複数の前記緩衝部材のうちの一部の緩衝部材として、半固形状のゲル状素材からなるゲル状緩衝部材が備えられている野球又はソフトボール用プロテクターの緩衝構造。
【請求項2】
複数の前記緩衝部材のうちの一部の緩衝部材として、発泡樹脂素材からなる発泡樹脂緩衝部材が備えられているとともに、
前記ゲル状緩衝部材と前記発泡樹脂緩衝部材とが緩衝層厚み方向で互いに隣接する状態で配されている請求項1記載の野球又はソフトボール用プロテクターの緩衝構造。
【請求項3】
前記ゲル状緩衝部材が、緩衝層厚み方向において前記発泡樹脂緩衝部材のプロテクター外面側に配されている請求項2記載の野球又はソフトボール用プロテクターの緩衝構造。
【請求項4】
前記ゲル状緩衝部材が、半固形状のゲル状素材をシート状体で被覆して構成されているとともに、
前記ゲル状緩衝部材とそれに対する緩衝層厚み方向における隣接部材とが非接着となる状態で前記ゲル状緩衝部材が配されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の野球又はソフトボール用プロテクターの緩衝構造。
【請求項5】
前記ゲル状緩衝部材の厚み寸法が、前記発泡樹脂緩衝部材の厚み寸法よりも小さい寸法に構成されている請求項2又は3記載の野球又はソフトボール用プロテクターの緩衝構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−125404(P2012−125404A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279577(P2010−279577)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000108258)ゼット株式会社 (36)
【出願人】(000205627)大阪府 (238)