説明

野球用グローブ

【課題】指挿入部が手甲側に反り返った状態になるのを効率的に抑止し得る野球用グローブを提供する。
【解決手段】指挿入部2a〜2eの手掌側部位を構成する指手掌側構成皮部8、6B、15の指幅方向中間位置における指長方向先端領域には、指手掌側構成皮部8、6B、15の指幅方向両側部位よりも肉厚の反り防止用の拡厚帯部11が指長方向に沿って延設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野球やソフトボールなどで捕球するために手に装着して使用される野球用グローブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の野球用グローブでは、指挿入部が、複数枚の皮革とこれよりも曲げ剛性の高いフェルト状の指芯から指長方向の全長に亘って同等の曲げ剛性で構成されていた(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−13308号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、この種の野球用グローブは球技者の手よりも大きく構成されている関係上、球技者の手に装着した状態で各指挿入部の先端部と球技者の指先との間に隙間が生じるため、球技者の手に装着した状態では、指挿入部の指長方向手元側は球技者の指で支持される一方で、指挿入部の指長方向先端側は球技者の指で支持されない状態になる。
【0005】
そのため、指挿入部が指長方向の全長に亘って同等の曲げ剛性で構成されている上記従来の野球用グローブでは、捕球時の握り操作やゴロ迎球操作(つまり、グローブ先端部を接地させる操作)及び捕球時のボール衝撃力等で指挿入部の指長方向先端側が手甲側に反り返った状態になって、捕球直後のボールが捕球部から脱落する不具合(つまり、落球する不具合)が多々生じていた。
【0006】
本発明は、上述の実情に鑑みて為されたものであって、その主たる課題は、指挿入部が手甲側に反り返った状態になるのを効率的に抑止し得る野球用グローブを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1特徴構成は、野球用グローブに係り、その特徴は、
指挿入部の手掌側部位を構成する指手掌側構成皮部の指幅方向中間位置における指長方向先端領域には、指手掌側構成皮部の指幅方向両側部位よりも肉厚の反り防止用の拡厚帯部が指長方向に沿って延設されている点にある。
【0008】
上記構成によれば、指手掌側構成皮部の指幅方向中間位置における指長方向先端領域に形成された反り防止用の拡厚帯部によって、指挿入部の曲げ剛性を捕球面側から高めることができて、指挿入部が手甲側に反り返った状態になるのを効果的且つ効率的に抑止することができる。
【0009】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記拡厚帯部が、前記指手掌側構成皮部における指長方向手元領域を除く指長方向中間領域と指長方向先端領域とに亘る状態で延設されている点にある。
【0010】
すなわち、指手掌側構成皮部における指長方向手元領域が、指挿入部における指装着領域となる一方で、指手掌側構成皮部における指長方向中間領域の全部又は一部は指装着領域から外れることから、上記構成によれば、指挿入部における指の装着に影響しない領域を活用する形態で前記拡厚帯部を形成することができ、これにより、指挿入部が手甲側に反り返った状態になるのを一層効果的且つ効率的に抑止することができる。
【0011】
本発明の第3特徴構成は、第1又は第2特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記拡厚帯部を構成するのに、
前記指手掌側構成皮部が指幅方向で複数に分断されているとともに、
隣り合う分断部分の各対向辺が手甲側に突出するように両分断部分をLの字状に折り曲げて両分断部分の対向面どうしを突き合せた状態で、両分断部分が連結されている点にある。
【0012】
上記構成によれば、両分断部分を折り曲げ圧縮状態にすることで拡厚帯部の曲げ剛性を高めることができるとともに、両分断部分の対向面どうしを突き合わせ連結することで両分断部分間の接触摩擦や接着力等で拡厚帯部の曲げ剛性を高めることができて、これらのことから、指挿入部が手甲側に反り返った状態になるのをさらに効果的且つ効率的に抑止することができる。
【0013】
本発明の第4特徴構成は、第3特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記両分断部分どうしの対向面間に補強用の芯材が挟み込まれている点にある。
【0014】
上記構成によれば、拡厚帯部を構成する構造を利用する形態で補強用の芯材を取り付けることができるから、拡厚帯部の曲げ剛性を効率的に高めることができ、これにより、指挿入部が手甲側に反り返った状態になるのをさらに効果的且つ効率的に抑止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は野球やソフトボールにおいて球技者の利き手と反対の手(本例では左手)に装着して使用される野球用グローブを示し、この野球用グローブは、手首挿入部1、親指挿入部2a、人差指挿入2b、中指挿入部2c、薬指挿入部2d、小指挿入部2eを有する手袋状のグローブ本体3と、親指挿入部2aと人差指挿入部2bとの間に配設される皮革製の捕球用ウェブ4とを紐状部材の一例である皮紐5(連結手段の一例)で連結して構成されている。
【0016】
前記グローブ本体3は、図1、図2に示すように、外郭を形成する手袋状の外袋6の内部に手袋状の内袋7を挿設した二重袋構造に構成されている。当該内袋7は、前記皮紐5及び糸(図示しない)により外袋6に連結されている。
【0017】
前記外袋6は、多数の皮片を連結した略手形状の手甲側皮革6Aと、捕球面を形成する略手形状の手掌側皮革6Bとを皮紐5及び糸(図示しない)により連結して構成されている。
【0018】
前記内袋7は、着用者の手掌面に対する接触面を構成する略手形状の基皮8と、当該基皮8の手甲側面との間に各指Yの挿入空間を区画形成する親指空間形成皮9a、人差指空間形成皮9b、中指空間形成皮9c、薬指空間形成皮9d、小指空間形成皮9eとから構成されている。
【0019】
前記親指空間形成皮9aは、平面視で基皮8の親指形状部10aに対応する形状に形成されているとともに、前記小指空間形成皮9eは、平面視で基皮8の小指形状部10eに対応する形状に形成されている。
【0020】
一方、前記人差指空間形成皮9bは、平面視で基皮8の人差指形状部10bの指長方向手元領域R1と指長方向中間領域R2とに亘る略手元側半領域に対応する形状に形成され、前記中指空間形成皮9cは、平面視で基皮8の中指形状部10cの略手元側半領域に対応する形状に形成され、前記薬指空間形成皮9dは、平面視で基皮8の略薬指形状部10dの略手元側半領域に対応する形状に形成されている。
【0021】
前記親指空間形成皮9aと小指空間形成皮9eの各々は、手元側縁部を除く先端側縁部及び両横側縁部が基皮8の親指形状部10aと小指形状部10eの各々の先端側縁部及び両横側縁部に糸12(連結手段の一例)で連結されている。
【0022】
一方、前記人差指空間形成皮9bと中指空間形成皮9cと薬指空間形成皮9dの各々は、先端側縁部及び手元側縁部を除く両横側縁部が基皮8の人差形状部10bと中指形状部10cと薬指形状部10dの各々における手元側半領域の両横側縁部に糸12で縫着連結されている。また、各指空間形成皮9a〜9dどうしは、隣接する手元側縁部どうしを糸12で縫着連結されている。
【0023】
なお、前記基皮8の人差指形状部10b、中指形状部10c、薬指形状部10dの各々の手掌側面には、フェルト状の指芯15が糸12によって積層状態で連結されている。
【0024】
そして、前記基皮8の人差指形状部10b、中指形状部10c、薬指形状部10dの各々の指幅方向中央部位における指長方向先端領域R3と指長方向中間領域R2に亘る指長方向略先端半領域には、指幅方向両側部位よりも肉厚の反り防止用の拡厚帯部11が指長方向に沿って延設されている。
【0025】
前記拡厚帯部11の各々は、人差指形状部10b、中指形状部10c、薬指形状部10dの各々の指長方向略先端半領域を指幅方向で複数(本例では2つ)に分断したのち、それら分断部分11a、11bの各対向辺が手甲側に突出するように両分断部分11a、11bをLの字状に折り曲げた上で、両分断部分11a、11bの対向面どうしを突き合せた姿勢で両分断部分11a、11bを一体的に連結して構成されている。
【0026】
両分断部分11a、11bの対向面どうしは、皮革よりも曲げ剛性の高いフェルト状素材からなる補強用の芯材13を介して突き合せた状態(換言すれば、芯材13を挟み込ませた状態)で連結糸14(連結手段の一例)により指長手方向の全長に亘って共縫い状態で縫合連結されている。
【0027】
16は、前記外袋6及び前記内袋7の適所に貫通形成された連結紐5用の紐通穴16である。
【0028】
なお、本実施形態において、内袋7の基皮8、指芯15及び外袋6の手掌側皮革6Bは、指挿入部2a〜2eの手掌側部位を構成する指手掌側構成皮部に相当する。
【0029】
〔その他の実施形態〕
(1)拡厚帯部11の形成部位は、前述の実施形態で示した部位に限らず、外袋6の手掌側皮革6Bや内袋7の指芯13などであってもよい。
【0030】
(2)前述の実施形態では、拡厚帯部11が、指挿入部における指長方向先端領域R3と指長方向中間領域R2の一部に亘る領域に形成されている場合を例に示したが、指長方向先端領域R3の一部と指長方向中間領域R2の一部又は全部に亘る領域、指長方向先端領域R3の全部と指長方向中間領域R2の全部に亘る領域、指長方向中間領域に亘らない指長方向先端領域R3の一部又は全部などに形成されていてもよい。
【0031】
(3)前述の実施形態では、拡厚帯部11が指Yの配置領域に重ならない状態で形成されている場合を例に示したが、拡厚帯部11が指Yの配置領域の先端側に重なる状態で形成されていてもよい。このようにすれば、拡厚帯部11による曲げ剛性の向上範囲と球技者の指Yによる押圧支持範囲との間の隙間を不存とすることができ、指挿入部の反り返りを一層効果的に抑止することができる。
【0032】
(4)前述の実施形態では、拡厚帯部11が、人差指挿入部と中指挿入部と薬指挿入部に形成されている場合を例に示したが、各指挿入部2a〜2eのいずれか1つ又は各指挿入部2a〜2eから適宜に選択した複数、或いは、各指挿入部2a〜2eの全部に形成されていてもよい。
【0033】
(5)前記拡厚帯部11の具体的構成は、前述の実施形態で示した構成に限らず種々の構成変更が可能である。例えば、拡厚帯部11が、指手掌側構成皮部に別部材(例えば、帯状の皮革部材など)を積層状態で配設することによって、或いは、分割部分11a、11bの対向辺部どうしを重合連結することなどによって構成されていてもよい。また、例えば、指手掌側構成皮部を指幅方向中央位置が手甲側に突出する凸字状に折り曲げて構成されていてもよい。
【0034】
前述の如く、拡厚帯部11を指手掌側構成皮部に別部材を積層状態で配設して構成する場合において、例えば、少し長めの別部材を配設することによって指挿入部を捕球に適し且つ手甲側に反り返り難い手掌側反り返り状態に保持するように構成されていてもよい。
【0035】
(6)指挿入部の手掌側部位を構成する指手掌側構成皮部や外袋を構成する部材は、前述の実施形態で示した皮革製のものに限らず、樹脂製やエラストマー素材製や布生地製などであってもよい。
【0036】
(7)前述の実施形態では、分断部分11a、11bの対向面間に芯材13が挟み込まれている場合を例に示したが、必ずしも芯材13を設ける必要はない。
【0037】
(8)前述の実施形態では、指芯15が、フェルト状素材から構成されている場合を例に示したが、皮革などから構成されていてもよい。
【0038】
(9)前述の実施形態では、各部を連結する連結手段の一例として紐状部材5や糸状部材12、14を例に示したが、接着剤や連結金具などであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】野球用グローブの外観図
【図2】グローブ本体の分解図
【図3】内袋の斜視図
【図4】内袋の斜視図
【図5】内袋の要部の拡大図
【図6】図5のA−A線断面図
【符号の説明】
【0040】
2a 指挿入部(親指挿入部)
2b 指挿入部(人差指挿入部)
2c 指挿入部(中指挿入部)
2d 指挿入部(薬指挿入部)
2e 指挿入部(子指挿入部)
R1 指長方向手元領域
R2 指長方向中間領域
R3 指長方向先端領域
8、6B、15 指手掌側構成皮部
11 拡厚帯部
11a、11b 分断部分
13 芯材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指挿入部の手掌側部位を構成する指手掌側構成皮部の指幅方向中間位置における指長方向先端領域には、指手掌側構成皮部の指幅方向両側部位よりも肉厚の反り防止用の拡厚帯部が指長方向に沿って延設されている野球用グローブ。
【請求項2】
前記拡厚帯部が、前記指手掌側構成皮部における指長方向手元領域を除く指長方向中間領域と指長方向先端領域とに亘る状態で延設されている請求項1記載の野球用グローブ。
【請求項3】
前記拡厚帯部を構成するのに、
前記指手掌側構成皮部が指幅方向で複数に分断されているとともに、
隣り合う分断部分の各対向辺が手甲側に突出するように両分断部分をLの字状に折り曲げて両分断部分の対向面どうしを突き合せた状態で、両分断部分が連結されている請求項1又は2記載の野球用グローブ。
【請求項4】
前記両分断部分どうしの対向面間に補強用の芯材が挟み込まれている請求項3記載の野球用グローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−291239(P2009−291239A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−144708(P2008−144708)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(000108258)ゼット株式会社 (36)