説明

野球靴のスパイク金具の取付構造

【課題】各スパイク爪22の立ち上がり角度θを異ならせることが容易であって、アウトソール11への締結力を高める。
【解決手段】スパイク金具20は、アウトソール下面に当てがわれる正多角形基板21とその基板の表面から立ち上がる一本のスパイク爪22とから成る。一本のスパイク爪をその基板でもって個別にアウトソールに取付ければ、その各スパイク爪の取付位置・立ち上がり角度θを任意に得ることができるため、守備位置の相違やプレーヤの癖等に十分に対応した最良位置等にスパイク爪を設けることができる。スパイク金具は、尖鋭突起24の食い込みや、アウトソールの枠40への基板の嵌め込みによってアウトソールに強固に取付ける。スパイク爪22は基板の直線状部(辺)21aから立ち上がっているため、一枚の片でもって、基板からスパイク爪を折り曲げ加工によって立ち上げてスパイク金具を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、野球靴のアウトソール底面(下面)にスパイク金具を取付けたそのスパイク金具の取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
野球靴においては、走行時、バットスイング時、ボールスローイング時等の踏ん張り力の確保のため、アウトソール(靴底)下面にスパイク金具を設けている。このスパイク金具は、金属製が主であるが、樹脂製などもある。
その野球靴のスパイク金具は、アウトソール下面に固定される基板と、その基板の表面から立ち上がるスパイク爪とから成るものが一般的である(特許文献1参照)。また、そのスパイク爪は、金属製のものの場合、一枚の片でもって、基板の周縁から折り曲げ立ち上げ加工した一体ものが一般的であって、基板を釘(ねじ)、リベット等にとってアウトソールに固定することによって、スパイク金具をアウトソール下面に取付けている。
【0003】
この野球靴のスパイク金具において、従来、一枚の基板に複数のスパイク爪を設けたものが主流であり、このスパイク金具は、その基板の取付位置の変更に基づく、スパイク爪の位置、爪先方向に対する立ち上がり角度(本願図2において、左右方向に対するスパイク爪22の幅方向の角度β参照)を変更し得るに過ぎない(特許文献1 図1〜図3参照)。すなわち、各スパイク爪個々に、その位置を変更したり、爪先(つまさき)方向に対する立ち上がり角度βを変更したり、その立ち上がり角度(本願図3の角度θ参照)を変更したりすることはできない。
野球プレーヤには、投手、内野手、外野手等の守備位置の相違、各プレーヤの癖などによって、スパイク爪の最良位置や、爪先方向に対する最良立ち上がり角度βや、その最良立ち上がり角度θは様々である。
【0004】
一方、スパイク金具として、基板に一つのスパイク爪を設け、その基板を同一内周面形状のアウトソール下面の枠内に嵌めて構成したものがある。これらのスパイク金具において、その枠内で基板を所要回転位置で固定することによって、スパイク爪の爪先方向に対する立ち上がり角度βを変更可能としたものがあり(特許文献2)、また、単に、枠をスパイク金具の強固な固定手段としたものもある(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭60−25408号公報
【特許文献2】実開昭60−146403号公報
【特許文献3】実開昭60−4206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記枠内で基板を所要回転位置で固定することによって、スパイク爪の爪先方向に対する立ち上がり角度βを変更可能としたもの(特許文献2)は、基板の周縁及び枠内周面形状が、歯が三角の歯車状であって、前記角度βの調整割合は細かい利点はあるが、その各歯状の形状が正確でないと、基板周縁と枠内周面の間に隙間が生じ、その隙間に土が入り込み、その土の浸入によってスパイク金具の取り付け強度が劣化する等の支障が生じやすい。また、スパイク爪を基板にロー付によって固着しており(同文献2第7図参照)、その固着強度に問題がある。
【0007】
さらに、基板からスパイク爪を折り曲げ立ち上げた考えも示されているが(特許文献2第8〜11図参照)、このスパイク金具にあっては、そのスパイク爪の立ち上がり外面と枠内周面との間に大きな隙間が生じ、その隙間に入り込んだ土によってスパイク金具の取り付け強度が劣化する等の支障が生じる。また、同様に、基板からスパイク爪を折り曲げ立ち上げてその基板を枠内周面に対応する形状に樹脂被覆した考えも示されているが(特許文献2第12〜17図参照)、このスパイク金具は、その樹脂被覆した分、重くなる問題がある。
【0008】
なお、枠をスパイク金具の強固な固定手段としたもの(特許文献3)は、枠を略方形としており(同文献明細書第3頁第15〜16行参照)、上記のように、単に、枠をスパイク金具の強固な固定手段としたものもあることから、スパイク爪の爪先方向に対する立ち上がり角度βを変更可能とする考えは示されていない。
【0009】
この発明は、以上の実情の下、スパイク爪の形成を容易にするとともに、スパイク爪それぞれの(個々の)上記立ち上がり角度等の変更を容易にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成するために、この発明の一手段は、まず、スパイク金具を、平面視正多角形の基板と、その基板の少なくとも一辺から折り曲げ加工によって立ち上がる一本のスパイク爪とから成るものとしたのである。
このように、一本のスパイク爪をその基板でもってアウトソールに取付け得るようにすれば、そのスパイク爪の取付位置、爪先方向に対する立ち上がり角度βやその立ち上がり角度θを任意に得ることができるため、スパイク爪が、上記守備位置の相違やプレーヤの癖等に十分に対応した最良位置・立ち上がり角度等のものを設けることができる。
また、基板が平面視多角形であって、その基板の少なくとも一辺から折り曲げ加工によってのスパイク爪が立ち上がった構成であるため、一枚の金属片からの打ち抜き折り曲げによってスパイク金具を製作することができ、安価なものとすることができるとともに、折り曲げ加工であることから、基板に対するスパイク爪の固定強度も高いものとなる。
【0011】
つぎに、この発明は、上記アウトソール下面に上記当てがわれた基板の周囲を囲む枠を形成し、その枠の内周面は基板と同一の平面視正多角形としたのである。
このようにすれば、基板(スパイク爪)のアウトソールへの締結前において、上記平面視正多角形の各頂角の角度毎に上記基板を任意に回転することによって、上記爪先方向に対する複数の立ち上がり角βを容易に得ることができる。
また、枠内に嵌っているため、アウトソールに対するスパイク金具の固定強度も十分であり、基板周縁及び枠内周面が同一の平面視正多角形であることから、その基板周縁と枠内周面との隙間も生じにくく、その隙間に土も入り難い。
【0012】
この発明の構成としては、アウトソールの下面にスパイク金具を設けた野球靴の前記スパイク金具の取付構造であって、スパイク金具は、アウトソール下面に当てがわれる平面視正多角形の基板と、その基板の少なくとも一辺から折り曲げ加工によって立ち上がる一本のスパイク爪とから成り、アウトソール下面に上記当てがわれた基板の周囲を囲む枠を形成し、その枠の内面は基板と同一の平面視正多角形とされ、基板を枠内に嵌めて、その基板の孔に通したねじ、釘又はリベットによってアウトソールに締結し、その締結前にあっては、前記孔を中心とした前記枠内における基板の回転によってスパイク爪の爪先方向に対する角度を調整可能である構成を採用することができる。
【0013】
上記課題を達成するためのこの発明の他の手段は、まず、スパイク金具を、上記手段と同様に、平面視多角形の基板と、その基板の少なくとも一辺から折り曲げ加工によって立ち上がる一本のスパイク爪とから成るものとしたのである。
この構成の意義は上記と同様であるが、この手段にあっては、基板は「平面視正多角形」である必要はなく、「平面視多角形」としている。これは、枠に嵌めないからである。
【0014】
つぎに、この発明は、上記基板にアウトソールの下面に食い込む尖鋭突起を設けたのである。
このようにすれば、その尖鋭突起がアウトソール下面に食い込み、スパイク金具はアウトソールに強固に位置決めされ、その位置決めは、基板の位置やスパイク爪の向きに関係なく担保される。このため、スパイク爪の任意の取付位置及び立ち上がり角度等において、スパイク金具はアウトソールに強固に位置決め固定される。
このとき、枠がなくても、多角形基板の角部が少なからずアウトソールに食い込むため、その食い込みによって基板のアウトソールへの固着強度を高める効果を得ることができる。
【0015】
この発明の構成としては、アウトソールの下面にスパイク金具を設けた野球靴のスパイク金具の取付構造であって、基板は、アウトソールの下面に食い込む尖鋭突起を有しており、スパイク金具は、アウトソール下面に当てがわれる平面視多角形の基板と、その基板の少なくとも一辺から折り曲げ加工によって立ち上がる一本のスパイク爪とから成り、基板をアウトソールにその基板の孔に通したねじ、釘又はリベットによって締結するとともに、前記尖鋭突起をアウトソールの下面に食い込ませて基板を回転不能にし、その締結前にあっては、前記孔を中心とした基板の回転によってスパイク爪の爪先方向に対する角度を調整可能である構成を採用することができる。
【0016】
上記両発明において、上記基板は平面視多角形であるから、その各辺にスパイク爪を個々に折り曲げによって立ち上げることができる。すなわち、所要の角度αをもって立ち上がるスパイク爪を容易に得ることができる(本願図5参照)。このとき、スパイク爪は、基板の少なくとも一辺に設ければ、スパイクの機能を発揮するが、複数の辺に設ければ、スパイク力が増大する。さらに、各辺に連続したものとすれば、基板が平面視正多角形であることから、どの立ち上がり角度βであっても、スパイク爪のカッチャク力が変化することはない。
【0017】
また、上記各発明において、踵部に位置するスパイク爪の立ち上がり角度を、基板に対して後反りの72〜75度とすれば、野球用ベースに滑り込む場合、通常、プレーヤは野球靴に地面に対して15度程度(15〜18度)の傾きをもって滑るため、スパイク爪は、地面に対してほぼ直角になって食い込むこととなる。直角な食い込みは安定したブレーキ効果を得ることができる。
このスパイク爪の立ち上がり角度θを基板に対しての72〜75度とすることは、踵部のみならず、爪先部等の全てのスパイク爪においても、後反り又は前屈みの72〜75度とすることができる。例えば、爪先部のスパイク爪の立ち上がり角度θを基板に対して前屈みの72〜75度とすれば、走行時にはその爪先部は後方斜め上方に傾くため、スパイク爪は、地面に対してほぼ直角になって食い込むこととなる。直角な食い込みは安定したグリップ効果を得ることができる。その72〜75度の立ち上がり角度は爪先部のスパイク爪のみに採用することができる。
【0018】
スパイク金具の材料(鋼片)としては、従来と同様なS45C、S50C、S55C、S60C、S65Cを使用することができるが、更なる、スパイク爪の耐摩耗性と基板の曲げ強度の両立を図るには、従来のスパイク金具として使用されていないSCM415、SCM420、SUS420、SUS420、又はSUS440を使用することができる。因みに、そのS45C、S50C、S55Cのヤング率(GPa):206、SCM415、SCM420のヤング率:210、SUS420、SUS440のヤング率:204である。
【0019】
上記基板をねじでもってアウトソールに締結する場合には、前記基板の孔の周縁全周にバーリング加工等によって突条を形成することが好ましい。このようにすれば、その突条によって締付用座金の代用がなされて、締結後のねじの弛みを防止し得る。このため、スパイク金具の十分な締結を永年に亘って得ることができる。突条は、孔周縁全周にあって座金の機能を発揮する態様であれば、例えば周囲間歇的等と何れでも良い。
【発明の効果】
【0020】
この発明は、以上のように構成して、各スパイク爪をアウトソール下面の所要の位置及び立ち上がり角度等でもって取り付けることができため、守備位置の相違やプレーヤの癖等に十分に対応した最良位置に所要立ち上がり角度のスパイク爪を設けた野球靴を容易に得ることができる。
また、安価にしてスパイク金具を製作することができ、基板に対するスパイク爪の固定強度も高いものとなるとともに、アウトソールに対するスパイク金具の固定強度も十分であり、その基板周縁と枠内周面との隙間も生じにくく、その隙間に土も入り難い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明に係る野球靴の一実施形態の正面図
【図2】同実施形態の下面図
【図3】(a)〜(c)は同実施形態のスパイク金具の取付部の各例の切断正面図
【図4】(a)は同実施形態のスパイク金具の斜視図、(b)は同断面図、(c)は同ねじ止め金具の斜視図
【図5】同スパイク金具の他例の斜視図
【図6】(a)〜(d)は同スパイク金具の各例の平面図
【図7】同他の実施形態の下面図
【図8】スパイク金具の取付部の他例の切断正面図
【図9】(a)は同他例の下面図、(b)は同例のスパイク爪の折り曲げ加工説明図
【図10】スパイク金具の取付部の他例の切断正面図
【図11】同他例の下面図
【図12】(a)〜(d)はスパイク金具の各例の平面図
【図13】(a)〜(h)はスパイク金具の各例の平面図
【図14】(a)〜(d)はスパイク爪の各例の斜視図
【図15】図14(c)のスパイク爪の一取付態様斜視図
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明に係わる野球靴の一実施形態を図1〜図4に示し、この実施形態の野球靴は、そのシューズ本体10が、靴底を構成するアウトソール11と、そのアウトソール11の上面に設けた中材12と、アウトソール11の周全縁にその下縁が固定された甲被13とからなる。図示しないが、中材12の上にはインソールが適宜に設けられる。
アウトソール11の下面の適宜位置にスパイク金具20が取付けられる。
【0023】
このスパイク金具20は、上記S45C、S50C、S55C、SUS420、SUS440、SCM415、SCM420等の鋼片を使用し、例えば、住友金属工業株式会社製 商品名:SK−5の1.2mm厚の焼き入れ鋼片を打ち抜き折り曲げ絞り加工して製作する。このとき、使用環境、例えば、外野手用などに応じて、オーステンパー処理、ショットピーニング処理、浸炭窒化焼き入れ処理等を行ってこのスパイク金具20の剛性・弾性を高めることが好ましい。
【0024】
因みに、今日、スパイク金具の上記各材料によって供給され使用されている(製造販売されている)鋼片の厚みは、1.4mm、1.6mmであるが、鋼片としては、厚さ:1.0mm、1.2mmも製造販売されており、この実施形態にあっては、従来のスパイク金具に比べて高い弾性機能を持たせるため、厚み:1.2mmの鋼片を使用し、製造公差が±0.1mmであるから、好ましいスパイク金具(基板)の厚みは、1.1mm〜1.3mmとなる。このとき、厚み:1.4mmの鋼片であっても、薄引きの鋼片であれば、厚み:1.3mmとなるものの場合、その厚み:1.4mmの薄引きの鋼片も含むものとする。また、厚み:1.0mmの鋼片であっても、厚引きの鋼片であれば、厚み:1.1mmとなるものの場合、その厚み:1.0mmの厚引きの鋼片も含むものとする。
【0025】
スパイク金具20は、アウトソール11下面に当てがわれる基板21と、その基板21の表面から立ち上がる一本のスパイク爪22とから成る。基板21は、図4に示すように、平面視、正五角形をしており、その五角形の周縁の直線状一辺21aから四角形片のスパイク爪22が折り曲げ加工によって立ち上げ形成されている。
このスパイク爪22の立ち上げ角度θは、図3(a)に示すように基板21に対して直角(90度)が一般的であるが、踵部分のものにあっては、その立ち上げ角度θを後反りの72〜75度としている(同図(c)参照)。
【0026】
基板21の中央には孔23が形成され、その基板21のアウトソール11の下面に当てがわれる面に尖鋭突起24が設けられている。この突起24の位置及び数は食い込み強度を考慮して適宜に決定する。孔23の周囲のスパイク爪22側には、バーリング加工によってその全周に突条25が形成されている。この突条25は、図3に示すように、スパイク金具20がねじ30で締結される際、その突条25によって締付用座金の代用がなされて、締結後のねじ30の弛みを防止する。
【0027】
アウトソール11のスパイク金具20の取付位置には貫通孔15を形成し、その孔15に筒状取付金具16を嵌入する。この取付金具16は、その端の鍔17に尖鋭突起18を有して、この突起18がアウトソール11(中材12)に食い込んで、取付金具16が強固にアウトソール11に固定される。
この取付金具16の筒状胴部の外周面には凹凸加工16aが施されている。この凹凸加工16aが孔15内面に食い込んで孔15への高い嵌入強度を得ることができる。また、基板21及びスパイク爪22の地盤(地表)に接する表面には凹凸加工を施すことによって、土の付着を抑制することができる。
【0028】
このスパイク金具20は、図3(a)に示すように、アウトソール11の孔15に取付金具16を嵌め込むとともに、その突起18を食い込ませた後、基板21の孔23に通したねじ(ビス)30を取付金具16にねじ込むことによって、スパイク金具20をアウトソール11下面に締結する。この突起18及び上記突起24はスパイク金具20の弛みを招く等の支障が生じない限りにおいて省略することができる。
図3(b)に示すように、ねじ30に代えて、リベット31による締結としたり、同図(c)に示すように、従来周知の釘止め(締結)32としたりし得る。図3(c)には、スパイク爪22の立ち上り角度θが後反り又は前屈み72〜75度の場合を示す。
【0029】
スパイク爪22の態様としては、図4に示す、単純な「四角形片」のみならず、三角形片、五角形片等も考えられ、また、その四角形片等を所定角度で連結した態様、例えば、図5のように、2つの四角状片から成るものとし得る。この複数の四角状片の態様の場合、基板21が多角形、好ましくは、正多角形であれば、その直線状各辺21aから折り曲げ加工によって各スパイク爪22を立ち上げ形成することができる。
【0030】
このとき、その直線状部(辺)21aが隣接して2つ以上あれば、図5に示すように、その2つ以上の直線状部21aからスパイク爪22を折り曲げ絞り加工によって立ち上げることができる。すなわち、角度αをもって立ち上がるスパイク爪22を容易に得ることができる。このように、隣接しその側縁が接して立ち上がっている場合、一つのスパイク爪22と考え得るため、この態様も本願に係る発明で言う「1本のスパイク爪」であって、特許文献1図1で示されるように、複数のスパイク爪が隣接しない位置にあって、連続していない(離れた)態様とは異なる。隣接するスパイク爪片は、図5に示すように横方向に連続していても、その横方向に分かれて非連続でも良い。
【0031】
基板21の多角形状としては、図6(a)〜(c)に示す、三角形、四角形、六角形等が考えられ、同(d)に示す、円形なども考え得る。これらの基板21の場合、いずれの回転角度(立ち上げ角度β)においても、突起24で回り止め(立ち上げ角度βの固定)がなされる。以上の実施形態の基板21は、図6(d)を除いて正多角形としたが、多角形であれば良く、スパイク爪22の立ち上げ易さから、周囲に凹部(例えば、歯車状)がないものが好ましい。
【0032】
基板21が多角形の場合、図7に示すように、アウトソール11下面にその基板21が嵌る平面視同一形状の凸条枠40を形成すれば、図8、図9(a)に示すように、その枠40内に基板21を嵌めることによって基板21の回転を阻止した状態で取り付けることができる。このとき、正多角形であれば、その角部の角度、例えば、正六角形であれば、60度、正五角形であれば、72度の回転角度でもってスパイク爪21の爪先方向に対する立ち上がり角度βの変更をすることができる。また、基板21を枠40に嵌める場合は、その嵌め合いによって基板21の回転が阻止されるため、上記尖鋭突起24は省略することができる。
【0033】
また、枠40内においてスパイク金具20を回転させてスパイク爪22の立ち上がり角度βの変更をする場合、枠内周面と基板21周縁とに隙間が生じないように基板21からスパイク爪22を折り曲げ加工することが必要である。例えば、図9(b)に示すように、スパイク爪22を立ち上げる辺のスパイク爪22の立ち上がり両端に板厚長さの切り込み22aを入れ、その切り込み22aの先端(内端)で折り曲げ加工(折り曲げ線22b)するようにして、図8、図9(a)に示すように、枠40の周縁においては、その周縁形状と基板21(スパイク爪22の外縁)の周縁が平面視同一正多角形状となるようにすることが好ましい。
【0034】
この枠40へ嵌めるスパイク金具20としては、図10、図11に示すように、基板21の二辺、三辺などに連続したスパイク爪22を折り曲げ絞り加工によって立ち上げたものとすることができる。このとき、同図に示すように、スパイク爪22は基板21に対して直角に立ち上げることができる。
【0035】
この枠40を設けた実施形態におけるスパイク金具20の形状としては、上記平面視正五角形に限らず、図12(a)〜(d)に示す、正三角形、正四角形、正六角形、正八角形や、さらに、正七角形、正九角形、正十角形、正十一形、正十二角形、正十三角形、・・正二十角形などが考えられるが、二辺以上からスパイク爪22を連続して折り曲げ絞り加工によって立ち上げることを考慮すると、正四角形から正八角形のように、その各頂角が90度から135度とするのが好ましい。特に、正五角形(頂角:108度)の場合がより好ましく、枠40への嵌め込みによる取付強度も高いものとなる。
【0036】
このように、上記厚み:1.2mmの鋼片を使用して、二以上の辺に連続してスパイク爪22を形成すると、その各辺に連続する稜部分において、平面視「く」字状に屈曲されて剛性の高いものとなる。このため、厚み:1.2mm鋼片の基板21において、従来(1.4〜1.6mm厚鋼片製スパイク爪)と同様な強度のスパイク爪22を打ち抜き折り曲げ絞り加工によって得ることができる。因みに、1.4mm厚以上の鋼片であると、打ち抜き折り曲げ絞り加工する際、そのく字状屈曲立ち上げが難しく、スパイク爪がその基部で折れる恐れが高い。このため、従来では、強度を担保できれば、そのく字状屈曲立ち上げをしないのが実状である。
【0037】
さらに、基板21に設けるスパイク爪22の態様としては、図13(a)〜(h)に示すように、スパイク爪22を離して基板21の各辺に設けたり、二つ以上の辺に連続して設けたりすることができる。この複数のスパイク爪22を設けた際、各スパイク爪22の高さを変えることもできる。
【0038】
因みに、図14に示すように、基板21とスパイク爪22を立体形としたものとすることができ、このスパイク具(金具)20はポイント式スパイクに最適である。
このスパイク具(金具)20は、鋼、アルミニウム、超硬合金等の鋳造・鍛造・切削加工品、樹脂成型品などとし得る。その形状は、三角錐状、三角錐台状、四角錐状、四角錐台状、円錐状、円錐台状、五角錐状、五角錐台状等と任意である。これらは、ねじ30、リベットなどの締結手段によってアウトソール11の任意の位置に取り付けることができる。また、立ち上がり角度θや角度βも任意とし得る。
さらに、これらにおいて、正多角錐状とすれば、その平面視が正多角形となり、例えば、図15に示すように、アウトソール11下面にその正多角形に対応する枠40を形成すれば、そのねじ孔23回りの回転でもって立ち上がり角度βを変更することができる。そのとき、同図に示すように、底部にその枠40内にぴったり嵌る座20aを設けると、スパイク金具20と枠40内面に隙間が生じないものとし得る。
【0039】
なお、上記スパイク爪22の72〜75度の立ち上げ角度θ、基板21、スパイク爪22、ねじ30等の地面と接する面に凹凸を形成する凹凸加工、ねじ孔23周縁の突条25は、特許文献1の図1に示される、従来の複数のスパイク爪を有するスパイク金具においても採用することができる。
上記実施形態において、スパイク爪22の立ち上がり角度θ:72〜75度は、踵部のみならず、爪先部にも採用したり、一方のみに採用したりすることができ、一方、従来と同様に、その立ち上がり角度θを全てのスパイク爪22においてアウトソール11に対して直角にすることができることは勿論である。
さらに、枠40を設けた実施形態においても、基板21に突起24を設けることができる。枠40は、上記各実施形態のようにアウトソール11下面に凸状とせず、アウトソール11の強度等に支障がない限りにおいてその下面に凹部を形成し、その凹部内周面で基板21が嵌る枠を構成することもできる。
【符号の説明】
【0040】
11 アウトソール
12 中材
13 甲被
20 スパイク金具
21 スパイク金具の基板
21a 基板の直線状辺(直線状部)
22 スパイク爪
23 ねじ用孔
24 尖鋭突起
30 ねじ
31 リベット
40 枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウトソール(11)の下面にスパイク金具(20)を設けた野球靴の前記スパイク金具(20)の取付構造であって、
前記スパイク金具(20)は、前記アウトソール(11)下面に当てがわれる平面視正多角形の基板(21)と、その基板(21)の少なくとも一辺(21a)から折り曲げ加工によって立ち上げた一本のスパイク爪(22)とから成り、
上記アウトソール(11)下面に上記当てがわれた基板(21)の周囲を囲む枠(40)を形成し、その枠(40)の内面は上記基板(21)と同一の平面視正多角形とされ、
上記基板(21)を上記枠(40)内に嵌めて、その基板(21)の孔(23)に通したねじ(30)、釘又はリベット(31)によってアウトソール(11)に締結し、その締結前にあっては、前記孔(23)を中心とした前記枠(40)内における基板(21)の回転によって前記スパイク爪(22)の爪先方向に対する角度(β)を調整可能であることを特徴とする野球靴のスパイク金具の取付構造。
【請求項2】
アウトソール(11)の下面にスパイク金具(20)を設けた野球靴の前記スパイク金具(20)の取付構造であって、
上記基板(21)は、上記アウトソール(11)の下面に食い込む尖鋭突起(24)を有しており、
上記スパイク金具(20)は、上記アウトソール(11)下面に当てがわれる平面視多角形の基板(21)と、その基板(21)の少なくとも一辺(21a)から折り曲げ加工によって立ち上げた一本のスパイク爪(22)とから成り、
上記基板(21)をアウトソール(11)にその基板(21)の孔(23)に通したねじ(30)、釘又はリベット(31)によって締結するとともに、上記尖鋭突起(24)を前記アウトソール(11)の下面に食い込ませて基板(21)を回転不能にし、その締結前にあっては、前記孔(23)を中心とした基板(21)の回転によって前記スパイク爪(22)の爪先方向に対する角度(β)を調整可能であることを特徴とする野球靴のスパイク金具の取付構造。
【請求項3】
上記スパイク爪(22)は、上記基板(21)の2つ以上の辺に相互に連続して形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の野球靴のスパイク金具の取付構造。
【請求項4】
踵部に位置する上記スパイク爪(22)の立ち上がり角度(θ)を、上記基板(21)に対して後反りの72〜75度としたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1つに記載の野球靴のスパイク金具の取付構造。
【請求項5】
爪先部に位置する上記スパイク爪(22)の立ち上がり角度(θ)を、上記基板(21)に対して前屈みの72〜75度としたことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1つに記載の野球靴のスパイク金具の取付構造。
【請求項6】
上記基板(21)をねじ(30)でもって上記アウトソール(11)に締結する場合には、前記基板(21)の孔(23)の周縁全周に突条(25)を形成し、その突条(25)によって締付用座金を代用したことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1つに記載の野球靴のスパイク金具の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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