野菊抽出物またはこの分画物を含む抗炎症活性を持つ組成物
本発明は、野菊抽出物またはこの分画物を含む抗炎症活性を持つ組成物に関し、前記組成物は、炎症疾患、特に、アトピーに対する予防及び治療効果を持つところ、薬学組成物に利用されることができ、この他に医薬外品、化粧品組成物、食品、及び軟水器などで様々な用途として利用され得る。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、野菊(Chrysanthemum boreale Makino)抽出物またはこの分画物を含む抗炎症活性を持つ組成物に関する。
【0002】
〔背景技術〕
人の皮膚は、老化が進行されるに応じて様々な内的及び外的要因による変化を経験する。内的には、新陳代謝を調節する各種ホルモンの分泌が減少し、兔疫細胞の機能及び細胞の活性が減少し、従って、生体及び生体タンパク質に必要な免疫タンパク質の生合成が減る。外的には、環境汚染及び紫外線がシワの増加、弾力減少、皮膚乾燥を含む、様々な変化を起こし、肝斑、そばかす、及び黒い斑点(age spot)などを増加させて皮膚悪化に至るようにする。現在は、ほとんどの人々が若くて美しく見えることを望むので、内的要因だけでなく、紫外線及びストレスのような、外的要因に起因した皮膚老化を予防または、改善しようとする強い欲求を持つ。
【0003】
皮膚疾患中の一つであるアトピー皮膚炎(AD)は、免疫学的、遺伝的、薬理的、生理学的、及び環境的など複合因子的要因によって発病されるが、特に、感染、ストレス、季節と気候変化、刺激、及びアレルギー抗原などによって発病される。アトピー皮膚炎は、幼児から大人まで、すべての年齢層に発生する皮膚の慢性的な炎症である。
【0004】
一般的に、アトピー皮膚炎の中で約80%程度がIgEと関連付けられてあり、これは、外因性形態(IgE−媒介された)及び内因性形態(非−IgE−媒介された)の2つの形態で分類され得る。増加されたIgE反応及び好酸球増加がアトピー皮膚炎患者で観察され、これは、Th1サイトカインである、インターフェロン−γ生産の減少が隋伴する、IL−4、IL−5のようなTh2サイトカインの増加された反応を反映する。これに係って、ピメクロリムス(pimecrolimus)、タクロリムス(tacrolimus)のような様々な免疫治療剤などの使用が試みされた。特に、免疫反応を直接的に抑制することができるCD4+CD25+調節T細胞(Treg cells)の存在が最近知られた。Treg細胞は胸腺から起源し、様々なTリンパ球の活性を制御する能力を持っている。更に、Treg細胞はそれらの表面にCTLA4、GITR、CD25及びLAG3の発現による大食細胞及びB細胞のような兔疫細胞などの間に免疫抑制信号を伝達するとか相互作用を抑制する。Treg細胞はIL−10の外にTGF−β、IL−35のようなサイトカインを介して免疫抑制反応を誘導する。アトピー皮膚炎において、IL−4及びIL−5のようなTh2サイトカインはTh2細胞発達の欠陷によって過量生産される一方、IFN−γのようなTh1サイトカインの生産は抑制される。最近、TARC/CCL17、MDC/CCL22、及びCTACK/CCL2に代表される、Th2ケモカインがTh2細胞発達に直接的な影響を及ぼすということが知られた。
【0005】
サイトカインなどは、様々な細胞によって作られ、多くの互いに異なる作用をする。特に、同一のサイトカインが互いに異なる機能ができるから、サイトカインなどは分類するのに非常に難しい。T細胞が大食細胞が提示した抗原を認識して活性化されて免疫反応を誘導する場合、多数のサイトカインなどがこの過程に関与する。先天免疫と適応免疫の各段階、抗原認識からエフェクター段階まで関与し、一部サのイトカインなどはリンパ球やその他の血球の生成にも関与している。核心的サイトカインの作用は下記の通りである。
【0006】
IL−1(インターロイキン1)は、活性化された単核食菌細胞 、上皮細胞、または血管内皮細胞などによって作られ、炎症反応を媒介するサイトカインである。IL−1には、IL−1αとIL−1βの2つの類型がある。少量のIL−1は、CD4−T細胞とB細胞を活性化し、炎症細胞を刺激することができる。しかし、過量のIL−1は、ホルモンとして作用して発熱及び急性期反応を誘導する。
【0007】
IL−4(インターロイキン4)は、約20kDaのサイズを持ったタンパク質であって、CD4T細胞及び活性化された肥満細胞によって作られ、B細胞成長因子として作用する。IL−4は、またB細胞の兔疫グロブリンのクラススィッチに関与する分化因子として作用し、CD4T細胞、肥満細胞、大食細胞などをまた活性化することができる。
【0008】
IL−10(インターロイキン10)は、IL−2と相乗作用によって活性化されたT細胞のCTLsへの分化を誘導し、またNK細胞とLAK細胞、及び活性化されたT細胞の増殖を誘導する。
【0009】
IFN−γ(インターフェロン−γ、またII型インターフェロンとして公知される)は、CD4T細胞またはCD8T細胞によって作られて免疫反応を調節するので、従って免疫インターフェロンとも呼ぶ。IFN−γはT細胞、B細胞、好中性NK細胞、血管内皮細胞に作用してそれらを活性化させることができ、大食細胞活性化因子として作用して1種と2種MHCの発現を増加させる。IFN−γは、また他のインターフェロンのように、ウイルスの増殖を抑制することができる。
【0010】
NOは、生理的状態下で血管拡張剤として機能する。しかし、大食細胞が炎症サイトカインによって刺激された場合、iNOS(誘導型酸化窒素合成剤) によって生成されたNOは、病理的状態下で炎症反応を誘導してCOX−2(シクロオキシゲナーゼ−2)の活性を増加させ、アラキドン酸カスケードを介した炎症反応を増幅させる。
【0011】
COX−2は、アラキドン酸からプロスタグランジンを生産するようにする核心的な調節子である。COX−2は、アラキドン酸をPGG2に転換する。酵素によってPGG2はPGE2、PGD2、PGF2、PGI2、またはTXA2に転換され、これらは体内で互いに異なる作用をする。代表的なCOX−2阻害剤としてはアスピリンである。
【0012】
最近の研究傾向は、免疫調節によるIgE生産の上向及び下向調節に焦点を合わせており、またアトピー皮膚炎を持った患者に対する臨床的に活用可能な、漢方薬の効果が活発に研究されている。しかし、野菊のアトピー皮膚炎に対する効果に対しては全然報告されたところがない。
【0013】
〔発明の開示〕
〔技術的課題〕
従って、本発明者などは野菊抽出物及びこの分画物に血清IgE濃度減少効果を含めて炎症疾患で炎症−関連の因子に対する抑制効果を持つことを証明した。この研究を基礎にして、本発明者らは野菊抽出物及びこの分画物が各種炎症疾患、特に、アトピー皮膚炎の予防的及び治療的効果を奏することを見つけ、これによって本発明を完成した。
【0014】
〔課題解決方法〕
本発明の目的は、野菊抽出物またはこの分画物を含む、抗炎症活性を持つ組成物を提供することである。
【0015】
本発明のまた他の目的は、野菊抽出物またはこの分画物を含む組成物を有効成分として含む、炎症疾患の予防または治療用薬学組成物、及び化粧品組成物、食品組成物、炎症疾患の予防または改善用医薬外品組成物を提供することである。
【0016】
本発明のまた他の目的は、野菊抽出物またはこの分画物を含む組成物を有効成分として含むフィルター充填剤を含む、炎症疾患の予防または改善用軟水器を提供することである。
【0017】
本発明のまた他の目的は、野菊抽出物またはこの分画物を含む組成物を炎症疾患が発病した、または発病可能性のある患者に投与して炎症疾患を予防または治療する方法を提供することである。
【0018】
〔発明の効果〕
本発明による組成物は、抗炎症活性を持つので、アトピー皮膚炎のような炎症疾患の予防または治療に使用することができ、また医薬外品、化粧品、食品、及び軟水器を含む、様々な用途に適用され得る。
【0019】
〔図面の簡単な説明〕
<図1> 図1は野菊抽出物とこの分画物取得過程を示したフローチャートである;
<図2> 図2はDNCB処理されたNC/Ngaマウスの感作スケジュールを示したものである;
<図3> 図3は薬物処理前及び薬物処理後のスコアによるNC/Nga マウスモデルの変化を示す写真である。
【0020】
<図4> 図4は野菊、タンポポ、黄伯、石菖蒲、ヒイラギモチ、及びソメイヨシノ抽出物処理後のアトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの掻く行動変動値を示すものである;
<図5> 図5は野菊、タンポポ、黄伯、石菖蒲、ヒイラギモチ、及びソメイヨシノ抽出物処理後のアトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの臨床評価結果を示すものである;
<図6> 図6は野菊、タンポポ、黄伯、石菖蒲、ヒイラギモチ、及びソメイヨシノ抽出物処理後のアトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの血清IgE濃度変化を示したものである;
<図7> 図7は薬物処理前及び野菊抽出物処理後のスコアによるNC/Ngaマウスモデルのアトピー症状の変化過程を示す写真である;
<図8> 図8は野菊抽出物処理後のアトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの臨床評価結果を示すものである;
<図9> 図9は野菊抽出物処理後のアトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの掻く行動結果を示すものである;
<図10> 図10は野菊抽出物処理後のアトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの耳厚さを長さ(mm)で測定した結果を示すものである;
<図11> 図11は野菊抽出物処理後のアトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの耳厚さを体積(%)で測定した結果を示すものである;
<図12> 図12は(a)野菊抽出物の経口投与後のアトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの血清中のIgE濃度を測定した結果を示すものである;(b)野菊抽出物の皮膚塗布後のアトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの血清中のIgE濃度を測定した結果を示すものである;
<図13> 図13は野菊抽出物処理後のアトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの血清中のIFN−γ濃度を測定した結果を示すものである;
<図14> 図14は野菊抽出物処理後のアトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの血清中のIL−4濃度を測定した結果を示すものである;
<図15> 図15は野菊抽出物処理後のアトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの耳組織断面を撮影したものである;
<図16> 図16は野菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内酸化窒素生成を測定したものである;
<図17> 図17は野菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内iNOS(誘導型酸化窒素合成剤) 生成を測定したものである;
<図18> 図18は野菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内PGE2生成を測定したものである;
<図19> 図19は野菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内COX−2生成を測定したものである;
<図20> 図20は野菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内IκB生成を測定したものである;
<図21> 図21は野菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内P50生成を測定したものである;
<図22> 図22は野菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内P65生成を測定したものである;
<図23> 図23は甘菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内酸化窒素生成を測定したものである;
<図24> 図24は甘菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内iNOS(誘導型酸化窒素合成剤) 発生量を測定したものである;
<図25> 図25は甘菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内PGE2生成を測定したものである;
<図26> 図26は甘菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内COX−2生成を測定したものである;
<図27> 図27は甘菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内IκB生成を測定したものある;
<図28> 図28は甘菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内P65生成を測定したものである;
<図29> 図29はMTS分析方法による野菊抽出物及びこの分画物の細胞毒性を測定したものである。
【0021】
〔発明を実施するための最良の形態〕
前記目的を達成するための一態様として、本発明は、野菊抽出物またはこの分画物を含む、抗炎症活性を持つ組成物を提供する。
【0022】
本発明者らは野菊、タンポポ、黄伯、石菖蒲、ヒイラギモチ及びソメイヨシノの抽出物を選択し、炎症疾患に対するこれらの効果を試した。その結果、野菊が最も優れた効果を奏することを確認した。具体的な実験例(実施例1)によれば、アトピー皮膚炎誘導モデルに野菊、タンポポ、黄伯、石菖蒲、ヒイラギモチ及びソメイヨシノの抽出物を処理し、その後、臨床評価を行った場合、野菊抽出物が紅斑、浮腫、血腫(excoriation)、掻痒、皮膚乾燥症、糜爛及び苔癬化で低い点数を記録し(表1と2、及び図4と5)、血中兔疫グロブリンE濃度が他の植物に比べて、著しく低いことを確認することができた(表3及び図6)。
【0023】
野菊はキキョウ目に属する菊科の一種で宿根性多年草であり、韓国、日本、中国北部、シベリアに分布し、主に谷または野で見られる。全体の高さは1−1.5mである。葉は互生し、下部の物は花が咲く時に倒れる。中央部の物は長い楕円状の卵形であり、長さ5−7m、幅4−6cmである。基部が少し心臟底であるとか截底であり、羽状で裂け、裂片はサイズがほとんど類似し、長い楕円形であり、鈍頭であり、端に鋭い欠刻状の鋸歯がある。葉柄は、長さ1−2cmである。側裂片は2対であって、裂片の間が広く、表面に毛が少しあり、裏面の中間に付く毛がある。花は9−10月に咲いて、直径1.5cmとして枝の端と主茎の端に山状のように垂れ下がる。総苞の長さは4mm、直径が8mmである。苞片は3−4行に配列され、外片は線形または長い楕円形であって表に毛があり、内片は長い楕円形で端が膜質である。舌状花冠は長さ5−7mmであって黄色であり、筒状花冠は端が5つに裂ける。痩果は倒卵形で長さ1mm程度であり、5−6行があり、冠毛が無く、10−11月に実る。茎の高さは1−1.5mで枝が多く裂けて、全体に短い白色毛がある。この植物は四方に多くの根が伸びている。どのような土壌でもよく育ち、特に肥沃な所でよく育ち、じめじめする所よりも乾燥した所が好きである。
【0024】
本発明での野菊は、学名Chrysanthemum boreale Makinoをいい、商業的に販売されるものを購入して使用するとか、自然から採取、または栽培されたものを使用することができる。さらに、本発明による野菊抽出物は、天然、雑種、または変種植物の様々な器官から抽出されることができ、例えば、根、茎、葉、花、実の果肉及び皮だけでなく植物組織培養物から抽出可能であるが、野菊の花から抽出するのが最も好ましい。
【0025】
本発明による野菊抽出物は、水、有機溶媒またはこれらの混合溶媒を用いて抽出することによって取得することができる。好ましくは、野菊を一定時間乾燥させて粉砕し、続いて熱水抽出、冷浸抽出、加熱抽出、超音波抽出、及び冷却抽出のような当業界に公知された通常的な方法によって抽出する。抽出方法は特に制限されず、有効成分が破壊されないとか最小化された条件で室温または加温して抽出することができる。好ましくは、洗浄及び乾燥で異物が除去された野菊を粉砕して取得した野菊乾燥物を水、低級C1〜C4のアルコール、またはこれらの混合溶媒で抽出することができ、より好ましくは、水またはメタノールを使用して抽出することができる。
【0026】
前記野菊の熱水抽出は、野菊を水に入れて沸かした後、野菊をフィルタリングする段階、ろ過液を濃縮させた後、賦形剤で粉末化させる段階、及び粉末化された野菊抽出物を結合剤と共に混合して打錠する段階からなることができる。
【0027】
前記賦形剤は、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロース、ラクトース、またはゼラチンであり得る。
【0028】
また、前記結合剤は、例えば、デキストリン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、予備ゼラチン化澱粉、ポビドン(ポリビニルピロリドン)、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、またはエチルセルロースであり得る。
【0029】
抽出時間は特に限定はないが、約2〜5時間程度であることができ、熱水抽出時の温度は70〜100℃、好ましくは80〜100℃であり得る。野菊重量の10〜30体積倍、好ましくは15体積倍〜25体積倍、より好ましくは約20体積倍の水を用いて野菊熱水抽出物を製造するのに使用することができる。
【0030】
一方、本発明で野菊分画物は、前記野菊抽出物から分画して得ることができる。分画物を得るために、当業界に公知された様々な溶媒が使用されることができ、好ましくは有機溶媒が使用され得る。例えば、ペンタン、ヘキサン、2、2、4−トリメチルペンタン、ジカイン、シクロヘキサン、二硫化炭素、四塩化炭素、クロロブタン、ジイソプロピルエテル、クロロホルム、アセトン、ニトロプロパン、ブタノン、ジクロロエタン、ピリジン、プロパノール、メタノール、及び酢酸エチルが含まれる。前記有機溶媒としては、非極性有機溶媒が好ましく、特に好ましいものとして、クロロホルム、エタノール、酢酸エチルまたはこれらの混合溶媒などがあるが、これに限定されない。本発明の具体的な実施例でクロロホルム、エタノールまたはこれらの混合溶媒を使用してそれぞれの分画物を得り、すべての分画物が活性を示した。これらのうち、クロロホルム分画物が最高の抗炎症活性を示した(表8、9及び10)。
【0031】
本願における用語‘‘抗炎症活性’’は、炎症を抑制することをいい、前記炎症はどのような刺激に対する身体の内部防御メカニズムの一つであって、3つを併発する複雑な病変をいう:組織変質、循環障害と滲出、組織増殖。より具体的に、炎症は先天性免疫の一部であり、他の動物でのように人間の先天性免疫は、病原体に特異的に存在する細胞表面のパターンを認識する。貪食細胞はそのような表面を持つ細胞を非自己として認識する。もし、病源菌が身体の物理的な障壁を破って入って来たら炎症反応が生じる。炎症反応は、傷部位に侵入した微生物などに対する敵対環境を作る非特異的な防御作用である。炎症反応で、傷がつくとか外部感染体が体内に入って来た時、初期段階免疫反応に関与する白血球などが寄り集まってサイトカインを放出する。従って、細胞内サイトカインの発現量が炎症反応活性化の指標になる。
【0032】
本発明者らは、野菊を対象に実験を行い、野菊抽出物及びこの分画物に抗炎症活性があることを見つけた。本発明の具体的な実験例(実施例3)で、本発明者らは野菊抽出物またはこの分画物を処理した後の炎症疾患動物モデルで血清IgE(兔疫グロブリンE)、IFN−γ(インターフェロン−γ)、IL−4(インターロイキン4)の濃度の減少(それぞれ図12、13、14);細胞内NO(酸化窒素)の発現量の減少(図15);iNOS(誘導型酸化窒素合成剤) 発現の減少(図17);細胞内PGE2(プロスタグランジンE2)発現量の減少(図18);細胞内COX−2タンパク質発現量の減少(図18);及びIκBのリン酸化抑制、NF−κBの細胞核内移動の減少(図20、図21、図22)を示すことを確認した。これら物質は、すべて炎症反応またはアレルギー反応で特異的に発現量が増加される物質であるので、これら物質の発現量減少は、野菊抽出物が抗炎症活性を持つことを示す。
【0033】
特に、菊科の多年草で高さ60〜90cmであり、茎は普通赤黒い色を帯び、葉は筋違いに出て羽状で深く裂けてあり、10〜11月に茎の端に香ばしい黄色い花が咲く特性を持つ甘菊と比較した時、野菊(5ug/ml)のメタノール(MeOH)抽出物、クロロホルム(CHCl3)抽出物、及びエタノール(EtOAc)抽出物が炎症疾患動物モデルで細胞内酸化窒素(NO)の量をそれぞれ約38%、78%、30%減少することを確認し(実施例3−2)、一方、それぞれの濃度2.5μg/ml、25μg/ml、50μg/ml、100μg/mlの甘菊のメタノール抽出物は97.9%、89.0%、37.3%、及び17.8%に減少することを確認し、甘菊のクロロホルム分画物では50.6%、19.2%、16.6%、7.5%に減少することを確認した(表14)。このような結果は、野菊抽出物はより少量で甘菊抽出物と同等なまたは上昇された効果を示すことが分かった。また、iNOS(誘導型酸化窒素合成剤) 量の減少(図24);細胞内PGE2(プロスタグランジンE2)量の減少(図25);細胞内COX−2タンパク質発現量の減少(図26);及びIκBのリン酸化抑制及びNF−κBの細胞質から細胞核への移動の減少(図27及び図28)を比較した時、野菊抽出物及びこの分画物が甘菊抽出物及びこの分画物に比べて少ない含量でもより効果的に示された。
【0034】
酸化窒素(NO)は、生理的状態で拡張剤として機能する。しかし、大食細胞が炎症サイトカインによって刺激された場合、iNOSによって生成された酸化窒素は、病理的状態で炎症反応を起こして、COX−2(シクロシクロオキシゲナーゼ−2)の活性を増強させ、アラキドン酸カスケードを介した炎症反応を増幅させる。
【0035】
IFN−γは、タイプIIインターフェロンとも呼ばれ、CD4T細胞またはCD8T細胞によって作られて免疫反応を調節し、従って、免疫インターフェロンとも呼ぶ。IFN−γはT細胞、B細胞、NK細胞、及び内皮細胞に作用してそれらを活性化させ、大食細胞活性因子として作用して1種と2種MHC発現を増加させる。IFN−γは、また他のインターフェロンのようにウイルスの増殖を抑制することができる。
【0036】
IL−4は、約20kDaサイズを持つタンパク質であり、CD4T細胞及び活性化された肥満細胞によって作られ、B細胞成長因子として作用する。IL−4は、またB細胞で兔疫グロブリンのクラススイチングに関与する分化因子として作用することができ、CD4T細胞、肥満細胞、及び大食細胞をまた活性化することができる。
【0037】
前記の結果などによって、本発明による野菊抽出物またはこの分画物は、炎症疾患、特にアレルギー性炎症疾患に対する優秀な予防及び治療活性を持つ。
【0038】
前記野菊抽出物及びこの分画物は、人工的に合成された化合物ではなく、天然抽出物から獲得した成分を基盤にする。従って、これらは安全で、非毒性であり、副作用がなくて長期間の服用が可能である。また、前記組成物は、人間だけでなく、炎症疾患を持った猿、犬、猫、ウサギ、モルモット、ラット、マウス、牛、羊、豚、ヤギを含む、炎症性疾患を持った動物に使用されることもできる。
【0039】
従って、本発明は、野菊抽出物またはこの分画物を有効成分として含む炎症疾患予防及び治療用薬学組成物の製造に適用されることができ、この組成物を投与して炎症疾患を予防または治療することができる。
【0040】
本発明のまた他の態様として、本発明は、野菊抽出物またはこの分画物を有効成分として含む炎症疾患の予防または治療用薬学組成物、及びこの分画物を含む組成物を炎症疾患が発病したまたは発病する可能性がある患者に投与して炎症疾患を予防または治療する方法に関する。
【0041】
前記炎症疾患は、アレルギー性炎症疾患であることができ、前記アレルギー性炎症疾患には、慢性閉鎖性肺疾患(COPD)、喘息、リウマチ関節炎、アトピー皮膚炎、及び炎症性腸疾患が含まれることができる。しかし、炎症反応及びアレルギー反応によって誘導される疾病は制限なく含まれることができ、好ましくはアトピー皮膚炎である。
【0042】
本願における用語‘‘予防’’は、本発明による野菊抽出物またはこの分画物を含む組成物の投与で前記疾患の発病を抑制または遅延させるすべての行為を意味する。
【0043】
本願における用語‘‘治療’’は、本発明による野菊抽出物またはこの分画物を含む組成物の投与で前記疾患の症状が好転するとか良いに変更するすべての行為をいう。
【0044】
本発明の具体的な実験例(実施例2)によれば、本発明者らは野菊抽出物を処理した後の炎症疾患動物モデルで、1)紅斑、浮腫、血腫、掻痒、皮膚乾燥症、糜爛及び苔癬化の減少(図7及び図8);2)耳浮腫の減少(図10及び図11);3)掻く行動の減少(図9)及び4)線維芽細胞増殖、コラーゲン層異常増殖、及び潰瘍の抑制、肥満細胞の浸潤の減少、及び好中球とリンパ球の浸潤による炎症減少(図15)が示されることを確認し、これは炎症疾患、特に、アトピー皮膚炎に対する治療学的効果を示すものである。
【0045】
本発明による野菊抽出物またはこの分画物を含む炎症疾患予防及び治療用薬学組成物は、ラット、マウス、家畜、人間を含む哺乳動物に様々な経路で投与され得る。投与のすべての方式は予想されることができ、例えば、経口、直腸または静脈、筋肉、皮下、子宮内硬膜または脳血管内注射によって投与され得る。好ましくは、前記組成物は皮膚などに塗布することができ、経口投与が最も好ましい。
【0046】
本発明の炎症疾患予防及び治療用薬学組成物は、薬学的に有効な量で投与される。本願における用語‘‘薬学的に有効な量’’は、医学的治療に適用可能である合理的な受益/危険の比率で疾患を治療するに十分な量を意味する。本組成物の有効用量水準は、個体及び重症度、年齢、性別、感染されたウイルス種類、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路、排出比率、治療期間、同時使用される薬物、及びその他に医学分野によく知られた要因に応じて決定され得る。前記有効な量は、当業者に認識されたように、投与の経路、賦形剤の使用及び他の薬剤との同時使用に応じて異なることができる。
【0047】
本発明の炎症疾患予防及び治療用薬学的組成物は、これらの薬学的に許容される塩の形態、及びまた単独でまたは他の薬学的に活性化合物と組み合わせて使用され得る。
【0048】
本発明の炎症疾患予防及び治療用薬学組成物は、哺乳動物に投与された後、活性成分の迅速、持続または遅延された放出を提供するように当業界によく知られた方法を使用して薬学的剤形に製造され得る。剤形の製造において、活性成分を担体とともに混合または希釈するとか、容器形態の担体内に封入させることが好ましい。
【0049】
従って、本発明の炎症疾患予防及び治療用薬学組成物は、通常の方法によって散剤、 顆粒剤、 錠剤、 カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾルなどの経口型剤形、外用剤、坐剤及び滅菌注射溶液の形態に剤形化して使用され得る。組成物の製造に通常的に使用する適切な担体、賦形剤及び希釈剤をさらに含むことができる。
【0050】
例えば、本発明の薬学組成物に含まれることができる担体、賦形剤及び希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルジネート、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱油を持つことができる。剤形化する場合には、普通使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用して調製される。
【0051】
経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれる。このような固形製剤は、前記抽出物に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロース、ラクトース、ゼラチンなどを混ぜて調製される。また、賦形剤の以外にステアリン酸マグネシウム及びタルクのような潤滑剤も使用され得る。
【0052】
経口のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが含まれる。よく使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれ得る。
【0053】
非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、 凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどが含まれ得る。坐剤の基剤としては、ウィテップゾール、マクロゴ−ル、ツイン61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが使用され得る。
【0054】
また他の態様として、本発明は、野菊抽出物またはこの分画物を有効成分として含む炎症疾患改善用食品組成物を提供する。
【0055】
本発明の食品組成物は、丸剤、散剤、顆粒剤、注射剤、錠剤、カプセル剤または液剤の形態で製造されることができ、様々な食品など、例えば、飲み物、ガム、茶、ビタミン複合剤、健康補助食品類などに添加され得る。
【0056】
本発明の食品組成物で含むことができる必須成分として、前記野菊抽出物またはこの分画物を含む組成物の他には、他の成分には特別な制限がなく、通常の食品のように様々な生薬抽出物、食品補助添加剤または天然炭水化物などを追加成分として含むことができる。
【0057】
前記食品組成物は、野菊、タンポポ、黄伯、石菖蒲、ヒイラギモチ、及びソメイヨシノからなる群から選択された1種以上の生薬抽出物を更に含むことができる。
【0058】
また、食品補助添加剤を更に含むことができるが、食品補助添加剤は、当業界に通常的に知られた、香味剤、風味剤、着色剤、充填剤、安定化剤などを含む。
【0059】
前記天然炭水化物の例は、モノサッカライド(例えば、ブドウ糖、果糖など)、ジサッカライド(例えば、マルトス、スクロースなど)、及びポリサッカライド (例えば、デキストリン、シクロデキストリンなど)のような通常的な糖、及びキシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどを含む。また、香味制として、タウマチン、ステビア抽出物(例えば、レバウジオシドA、グリチルリチンなど)のような天然香味剤及びサッカリン、アスパルテームなどのような合成香味剤を適切に使用することができる。
【0060】
さらに、本発明の食品組成物は、様々な営養剤、ビタミン、鉱物(電解質)、風味剤(合成風味剤及び天然風味剤などのような)、着色剤、増進剤(チーズ、チョコレートなど)、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などを含むことができる。また、本発明の食品組成物は、天然フルーツジュース、フルーツジュース飲料、及び野菜飲料の製造のために使用され得る果肉を含むことができる。前記のこのような成分のそれぞれは、独立、またはこれらのどのような組み合わせでも使用することができる。
【0061】
さらに、適用可能な飲食物には、いかなる制限もなく、例えば、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンデー類、スナック類、クッキー類、ピザ、ラーメン、ガム類、アイスクリーム類、スープ、飲料、茶、機能水、ドリンク剤、アルコール飲物、及びビタミン複合剤である。
【0062】
また他の態様として、本発明は、野菊抽出物またはこの分画物を有効成分として含む組成物を含む化粧品組成物に関する。
【0063】
本発明による化粧品組成物には、pH調節物質、香料、乳化剤、及び防腐剤などを通常的な方法を使用して付加し、化粧水、ゲル、水溶性パウダー、脂溶性パウダー、水溶性リキッド、クリームまたはエッセンスなどで剤形化され得る。
【0064】
また他の態様として、本発明は、野菊抽出物またはこの分画物を有効成分として含む組成物を含む医薬外品組成物に関する。すなわち、本発明の組成物は、炎症疾患の予防または改善を目的に医薬外品組成物に添加され得る。
【0065】
本発明の野菊抽出物またはこの分画物を医薬外品添加物として使用する場合、前記抽出物またはこの分画物をそのまま添加するとか、または通常的な方法によって他の医薬外品または医薬外品成分とともに使用され得る。有効成分の混合量は、使用目的(予防、健康または治療的処理)によって適合に決定され得る。好ましくは、前記医薬外品組成物は、消毒清潔剤、シャワーフォーム、口腔洗浄薬、ウェットティッシュ、洗剤石鹸、ハンドウォッシュ、加湿器充填剤、マスク、軟膏剤、コーティング剤またはフィルター充填剤の製造に使用され得る。本発明によるフィルター充填剤を含むフィルターは、様々な領域に使用されることができ、当業界に公知されたすべてのフィルタリング機器に使用され得る。
【0066】
従って、また他の態様として、本発明は、前記フィルター充填剤を含む炎症疾患の予防または改善用軟水器を提供する。
【0067】
本願における用語‘‘軟水器’’は、硬水に入っているカルシウムとマグネシウムのような陽イオンを除去して軟水を作る器具であって、硬水軟化機ともいうことで、軟水製造機能の他に空気清浄機能、浄水機能などを含むことができる。本軟水器は、この分画物を含む組成物を有効成分として含むフィルター充填剤を含むので、炎症疾患、特に、アトピー皮膚炎予防及び改善に効果的である。本軟水器は、その目的に応じて野菊抽出物またはこの分画物外に漢方薬を含んだ様々な成分を含むことができる。
【0068】
〔発明の実施のための形態〕
以下、本発明を実施例によってより詳細に説明する。ただし、下記実施例は、本発明を例示するというだけ、本発明の内容が下記実施例によって限定されるのではない。
【0069】
実施例1.サンプル抽出及びスクリーニング
(1)候補薬剤サンプル抽出
野菊、タンポポ、黄伯、石菖蒲、ヒイラギモチ、及びソメイヨシノをそれぞれ100gを100%メタノール(MeOH)を溶媒として110℃抽出器で3回繰り返し抽出し、ロータリー蒸発器を用いて減圧濃縮し、その後、凍結乾燥してそれぞれの100%メタノール抽出物を取得した。
【0070】
(2)NC/Ngaマウスモデル導入
NC/Ngaマウスは、JAK3キナーゼの過リン酸化によるIgEの生成の亢進によってもたらされた、自発的アトピー皮膚炎マウスモデルとしてよく知られている。最近、IgEとTh2サイトカイン生成に必須なSTAT6ノックアウトNC/Ngaマウスを作って試した結果、皮膚炎も自発的に誘導されたところ、これは皮膚炎が他の予想外のメカニズムによって誘導されることを示唆する(J.I.1999,162:1056−63)。このような長所にもかかわらず、自発的な皮膚炎誘導比率が低く、誘導された皮膚炎の深刻性に大きい差がある。事実上、前記マウスモデルは、評価のための信頼できるモデルではない。従って、日本ではハプテン、ピクリルクロライドを用いて皮膚炎を人為的に誘導してこのような問題を解決している。しかし、ピクリルクロライドの場合、韓国内搬入が禁止されているので、本願では、構造的にピクリルクロライドと類似する、DNCB(1−クロロ2、4−ジニトロベンゼン、シグマ23732−9)を用いて試験を進行して類似の結果を得ることができた。
【0071】
このモデルによれば、アトピー皮膚炎の主な症状など(掻痒、IgE生成増加、皮膚炎症)がすべて観察され、さらには、アトピー皮膚炎の治療剤としてよく知られている、局所ステロイドまたは経口用シクロスポリンによって症状が完全に癒された。従って、アトピー皮膚炎治療剤の効能を評価するための生体内モデルとしてNC/Ngaマウスモデルを導入した。
【0072】
(3)NC/Ngaマウスを用いたスクリーニング方法
自発的アトピー皮膚炎マウスモデルとして知られたNC/Ngaマウスを用いてアトピー皮膚炎を誘導し、その後、次のような方法を行って最も有用な薬剤を選定した。薬物選定は、次の実験群を用いて行った:DNCB溶液を処理しないアトピー皮膚炎が誘導されない正常群、DNCB溶液を処理してアトピー皮膚炎を誘導させた対照群、野菊抽出物を処理した経口投与群(100mg/kg、400mg/kg)、及び野菊抽出物(200μl;1%希釈、2%希釈)を処理した皮膚塗布群。
【0073】
A.臨床評価
臨床評価は、DNCB(シグマ23732−9)処理後、及び治療薬物(野菊、ヒイラギモチ、黄伯、タンポポ、石菖蒲、及びソメイヨシノの各100mg/kg、400mg/kg)の処理後、それぞれ2回実施した。アトピー皮膚炎の臨床評価は、実験有経験者2人以上がそれぞれ実施し、協議して決定した。特に、薬物処置が終わった後には写真を撮って保管した。目視評価結果は、次の5つの項目をそれぞれ評価したスコアの総合として示した。評価項目は、紅斑、掻痒と皮膚乾燥症、浮腫と血腫、糜爛、そして、苔癬化に分け、このそれぞれの項目を次のように採点した:無し(0)、僅か(1)、重症度(2)、及び激しい(3):従って、スコアは、最小0点から最高15点範囲であった。薬物処理の前と後のスコアを比較して減少した比率を決定し、運搬体を処理した群の減少比率と比較して有意性を検証した。
【0074】
B.掻く行動評価
薬物投与後、即時、掻痒症を意味する掻く行動を30分間観察した。後肢で掻く行動は、掻く行動1回として記録し、1秒以内に急速で頻繁に掻く行動も掻く行動1回として記録した。
【0075】
C.血清IgE濃度
血清IgE濃度は、DNCB(シグマ23732−9)を処理して皮膚炎症を誘導した後、候補者治療薬物(野菊、ヒイラギモチ、黄伯、タンポポ、石菖蒲、及びソメイヨシノの各100mg/kg及び400mg/kg)を処理した後、ELISAを用いて決定した。薬物処理の前及び後の血清IgE濃度を比較して減少した比率を求めた後、運搬体を処理した群の減少比率と比較して有意性を検証した。
【0076】
A.薬物処理群:[処理前IgE(薬物)−処理後IgE(薬物)]/処理前IgE(薬物)
B.運搬体処理群:[処理前IgE(運搬体)−処理後IgE(運搬体)]/処理前IgE(運搬体)。
【0077】
(4)結果
A.評価結果
臨床評価結果、野菊は、他の候補者薬物に比べて低いスコアを記録し、そのスコアは正常群に近接した。さらに、表1は、アトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの臨床評価を示したものである(図5)。
【0078】
【表1】
【0079】
B.掻く行動評価結果
表2は、アトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの掻く行動の変動値を示したものである。掻痒症を意味する掻く行動を示すのか調査した結果、それぞれ野菊100(mg/kg)及び野菊400(mg/kg)を処理した時、30.4±1.1(点)、21.8±2.8(点)を記録した。この結果は、他の薬物のスコアと比較する際に低い(図4)。
【0080】
【表2】
【0081】
C.血清IgE濃度測定結果
血清IgE濃度で、他の候補者薬物と比較する時、野菊が低いスコアを記録した。野菊100(mg/kg)及び野菊400(mg/kg)をそれぞれ処理した時、63.46±16.92(ng/ml)、46.99±8.88(ng/ml)を記録した。表3は、アトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの血清中のIgE濃度変化を示したものである(図6)。
【0082】
【表3】
【0083】
実施例2.アトピー皮膚炎に対する実験:NC/Ngaマウス実験
2−1.実験方法
(1)NC/Ngaマウスモデル導入
NC/Ngaマウスをアトピー皮膚炎の主な症状など(掻痒、IgE増加など)に対する野菊抽出物及びこの分画物の効果を試すために使用した。
【0084】
(2)野菊の抽出及び分画
野菊100gを100%メタノール(MeOH)を溶媒として110℃抽出器で3回繰り返し抽出し、ロータリー蒸発器を用いて減圧濃縮した後、凍結乾燥してそれぞれの100%メタノール抽出物を取得した。前記で取得した野菊の100%メタノール抽出物のうち、32.3gを熱水に溶かした後、クロロホルムと酢酸エチルを用いて分画した。その後、各分画物を濃縮して水分画物4.3g、クロロホルム分画物2.7g、及び酢酸エチル分画物0.56gをそれぞれ取得した(図1)。
【0085】
(3)試薬及び器機
1)試薬
−DNCB(Sigma 23732-9)
−オリーブオイル(Shinyo Chemical 912193)
−NC/Ngaマウス(Central Lab.animal Inc., 韓国)
−マウスIgEマウス用ELISAキット(SHIBAYAGI Co., Ltd,日本)
−IL−4(R&D systems,Quantikine Immunoassay Kit,MN.米国)
−IFN−γ(R&D systems,Quantikine Immunoassay Kit,MN.米国)
−退行性染色(Harris’hematoxylin,MUTO,日本)
−エオシン(MUTO,日本)
−カナダバルサム(JUNSEI,日本)。
【0086】
2)器機
−ELISAプレートリーダー:Versamax(Molecular Devices Co., 米国)
−プレートシェーカ:REO ROTOR(Hoefer Pharmacia Biotech Inc.)
−マイクロメータ(IP65 coolant proof,#293-240,mitutoyo,日本)
−マイクロトーム(HM325)
−クリッパ(JC-4005,JOAS Elec.CO., 韓国)。
【0087】
(4)皮膚炎誘導及びサンプル処理
1)実験動物
5週齢のNC/Ngaマウスを中央実験動物(株)から供給されて実験動物として使用し、飼育場で1週間適応させた後、体重を測定(22±3g)した。1群当り6〜8匹を実験に使用した。実験期間中、固形飼料と水は自由に攝取させ、飼育室の温度(21±1℃)、湿度(50±5%)は、一定に維持した。実験開始の一日前、実験動物の耳の下端部分から尾の上端部分まで背中部位全体をマウス除毛用クリッパー(JC-4005,JOAS Elec.CO., 韓国)できれいに毛を除去した。すべての動物実験手続きは、韓国の慶煕大学校実験動物倫理委員会の事前審議を受けて動物実験倫理委員会の規定によって行われた。
【0088】
2)アトピー皮膚炎の誘導及びサンプル処理
アトピー皮膚炎誘導のためにNc/Ngaマウスの背中部位を除毛した後、24時間目に、免疫化のために0.5%DNCB(シグマ23732−9)溶液(アセトン:オリーブオイル=3:1)200μlを2週間毎日背中部位に塗布した。サンプル投与開始後3週目からは、1週間に3回ずつ0.5%DNCB溶液200μlを除毛された背中部位に塗布してアトピー皮膚炎を誘導した。各マウスの除毛された背中部位は、2週間DNCB処理してアトピーを誘導した後、4週間毎日サンプルを投与した(経口と皮膚塗布)。経口では100mg/kg及び400mg/kgをそれぞれ投与し、外用では1%及び2%に希釈して200μlずつをそれぞれ塗布した。DNCB処理されたNC/Ngaマウスを用いたアトピー皮膚炎の誘導及びサンプル処理実験の過程は、図2に示した。
【0089】
(5)評価方法
A.臨床評価
NC/Ngaマウスのアトピー皮膚炎は、一般的に使用される臨床的目視評価法を用いた。臨床評価は、DNCB処理直前、処理中間、薬物処理直前、薬物処理中間と薬物処理が終わる時にそれぞれ実施した。アトピー皮膚炎の臨床評価は、実験有経験者2人以上がそれぞれ実施し、協議して決定した。特に、薬物処理が終了した後には写真を撮って保管した。目視評価結果は、次の5つの項目をそれぞれ評価したスコアの総合として示した。評価項目は、紅斑、掻痒と皮膚乾燥症、浮腫と血腫、糜爛、そして、苔癬化を含み、これはそれぞれ次のように記録される:無し(0)、僅か(1)、重症度(2)、及び激しい(3)。従って、前記スコアは、最小0点から最高15点の間の範囲である。アトピー皮膚炎のスコアリングは、実験有経験者2人以上がそれぞれ実施し、協議して決定した。特に、薬物処理が終了した後には写真を撮って保管した。
【0090】
B.掻く行動評価
薬物投与直後、掻痒症を意味する掻く行動評価を30分間観察した。後肢で掻く行動は、掻く行動1回として記録し、また1秒以内に急速で頻繁に掻く行動も掻く行動1回として記録した。
【0091】
C.耳の厚さ測定
右耳の中央の厚さをマイクロメーター(IP65 coolant proof,#293-240,mitutoyo,日本)を用いて測定した。
【0092】
D.血清IgE、IFN−γ、及びIL−4濃度の測定
実験終了日に、マウスの心臓から採血した後、5、000rpm、4℃で3分間遠心分離して血清を分離した。実験に使用する前まで−70℃冷凍庫で保管し、使用する前に溶かして実験に使用した。Nc/Ngaマウスの血清IgE、IL−4、及びIFN−γ濃度は、それぞれマウス用ELISAキット(SHIBAYAGI Co., Ltd,日本)、IL−4(R&D systems,Quantikine Immunoassay Kit,MN.米国)、IFN−γ(R&D systems,Quantikine Immunoassay Kit,MN.米国)を使用して測定した。
【0093】
IgE濃度は、IgEマウス用ELISAキット(SHIBAYAGI Co., Ltd,日本)の手続きによって測定した。すべての試薬は、室温で準備し、その後、直ちに使用した。
【0094】
プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄した後、IgE標準溶液またはサンプル溶液(サンプル5μl+バッファ45μl)を50μlずつ各ウェルに分注し、マイクロプレートシェーカで軽く混合した。プレートを2時間室温(20−25℃)で培養させて反応させた後、緩衝溶液でプレートを3回洗浄した。ビオチン−コンジュゲートされた抗−IgE抗体50μlを各ウェルに分注し、マイクロプレートシェーカで軽く混合した。プレートを2時間室温で培養させて反応させた後、洗浄緩衝液でプレートを3回洗浄した。各ウェルにHRP−アビジン溶液50μlを入れ、マイクロプレートシェーカで軽く混合した。前記プレートを1時間室温で培養させて反応させた。その後にクロマジェニック基質溶液50μlを入れ、マイクロプレートシェーカで軽く混合した。プレートを20分間室温で培養させて反応させた。その後、各ウェルに反応中断剤50μlを入れて追加の色発現が止めるようによく混合した後、30分内に450nmで吸光度を測定した。
【0095】
IL−4とIFN−γ濃度は、IL−4(R&D systems,Quantikine Immunoassay Kit,MN.米国)とIFN−γ(R&D systems,Quantikine Immunoassay Kit,MN.米国)の方法に従って測定した。
【0096】
指示に従って、すべての試薬とサンプルを準備し、すべての試薬溶液は、室温で維持させ、2回繰り返し実験した。各ウェルにAssay Diluent RD1−18(IL−4)またはRD1−21(IFN−γ)50μlを入れた。正常群、対照群及びサンプルを各ウェル当り50μlずつ入れ、1分間負域をゆっくり軽くたたいて混合した。プレートを覆って、2時間室温で培養した。各ウェルの溶液をアスピレータで完壁に除去して洗浄した。この手続きを5回繰り返した。IL−4(マウスIL−4コンジュゲート)またはIFN−γ(IFN−γコンジュゲート)100μlを各ウェルに入れた。プレートを新しい接着カバーで覆って、2時間室温で培養した後、再び5回繰り返して洗浄した。 各ウェルに基質溶液100μlを入れ、遮光状態で30分間室温で培養した。終結溶液100μlを各ウェルに入れ、プレートを軽くたたいて完全に混合した。30分内に、各ウェルの吸光度は、450nmで測定した値を540nm(または570nm)で測定した値で差し引いて補正した。
【0097】
E.組織染色及び評価
実験終了後、マウスを犠牲させて背中と耳の組織を取り外して10%中性ホルマリンで固定させた。その組織をパラフィンで包埋してパラフィン包埋ブロックを製作した。パラフィンブロックは、マイクロトーム(Microm−HM325)を用いてトリミングの薄切厚さを10μm程度に整えた後、切断時3〜4μmの厚さで組織切片を得る。得られた組織切片は、キシレンで脱パラフィン化させ、浸水段階[100%アルコール(3分)→90%アルコール(3分)→80%アルコール(3分)→70%アルコール(3分)→D.W(3分)]を経って、その後、染色[ハリスヘマトキシリン(4分)→洗浄→1%HClアルコール(1回)→洗浄(10分)→エオシン(10−20秒)]させた後、脱水段階[70%アルコール(ディッピング)→80%アルコール(ディッピング)→95%アルコール(ディッピング)→100%アルコール(ディッピング)→100%アルコール(ディッピング)]と脱染色段階[キシレン(3分)→キシレン(3分)]を経って続いて密封した。
【0098】
また、炎症の程度を評価するために、アトピー皮膚炎誘導皮膚の表皮厚さ、肥満細胞浸潤、好酸球浸潤、好中球とリンパ球浸潤、及び線維芽細胞増殖及びコラーゲン層異常増殖で組織学実験を行った。組織中の肥満細胞は、アルシアンブルーで染色して観察した。
【0099】
F.統計分析
測定結果は、実験前後の平均を比較する時、対応t検定(paired t-test)で検定した。統計的有意性は、P<0.05、すなわち、5%未満にした。
【0100】
2−2.実験結果
A.臨床評価結果
正常群、DNCB誘導されたアトピー皮膚炎対照群、経口投与群(野菊抽出物100mg/mL及び400mg/mL)、皮膚塗布群(1%及び2%の野菊抽出物200μl)の総6群でマウスの背中皮膚と耳で生じされたアトピー症状を1週間間隔で総5回繰り返し観察した。臨床評価では、図3を参考インデックスにした。
【0101】
正常群の皮膚はきれいだったし、対照群では紅斑、浮腫、角化、外被形成、及び苔癬化のような明白なアトピー症状が示された。サンプル経口投与群と皮膚塗布群で、いずれも対照群に比べてアトピー症状が著しく抑制されることを確認することができたが、経口投与群が皮膚塗布群より目視で観察する時、速く皮膚炎改善症状を示すことを観察することができた(図7)。
【0102】
アトピー皮膚炎誘導1週間目の臨床評価スコアは、対照群で6.2±O.8、経口投与群(野菊100mg/kg及び400mg/kg)でそれぞれ5.5±2.1、5.5±1.1であり、皮膚塗布群(野菊1%及び2%)でそれぞれ5.2±1.0、5.5±1.4で示され、アトピー皮膚炎がすべての群で誘導されることを示す。
【0103】
アトピー皮膚炎誘導後2週目の臨床評価スコアは、対照群で11.3±1.5、経口投与群(野菊100mg/kg及び400mg/kg)でそれぞれ10.0±3.3、10.7±2.1で示され、皮膚塗布群(野菊1%及び2%)でそれぞれ10.3±2.0、10.3±2.8で示され、まだ野菊抽出物の効果が発揮されなかったことを確認することができた。
【0104】
アトピー皮膚炎誘導後4週目、すなわち、薬物を2週間投与した後の臨床評価スコアは、対照群はで7.3±0.8であり、経口投与群(野菊100mg/kg及び400mg/kg)でそれぞれ4.7±1.3、5.2±1.3で示され、野菊抽出物の効果が発揮され始めて、アトピー皮膚炎が改善されていることが有意に認められた。臨床評価スコアは、皮膚塗布群(野菊1%及び2%)でそれぞれ7.5±1.5及び8.3±1.9でアトピー皮膚炎が改善されなかったことを示した。
【0105】
アトピー皮膚炎誘導後6週目、すなわち、薬物を4週間投与した後の臨床評価スコアは、対照群で7.3±0.8であり、経口投与群(野菊100mg/kg及び400mg/kg)でそれぞれ3.4±2.1及び3.3±0.5、皮膚塗布群(野菊1%及び2%)でそれぞれ4.5±2.1及び6.3±1.0でそれぞれ示され、アトピー皮膚炎が野菊抽出物によって改善されたことを示した。
【0106】
本実験結果を介して、正常群の皮膚はきれいだったし、アトピー誘導対照群では紅斑、浮腫、角化、外被形成、及び苔癬化のような様々なアトピー症状が明らかに示された。サンプル経口投与群とサンプル皮膚塗布群で、いずれもアトピー皮膚炎誘導された対照群に比べてアトピー症状が著しく抑制されることを確認した。しかし、アトピー皮膚炎誘導後の4週目に、アトピー皮膚炎の改善は経口投与群で観察され、アトピー皮膚炎誘導後の6週目に、アトピー皮膚炎の改善は皮膚塗布群で観察され、これは皮膚塗布群より経口投与群でアトピー皮膚炎がより速く緩和されることを示す(図8)。言い換えれば、経口投与群が皮膚塗布群よりアトピー皮膚炎をより効果的に改善することを示した。
【0107】
下記の表で、NORは正常群、CONは対照群、CBP1は経口投与群(野菊抽出物100mg/kg)、CBP4は経口投与群(野菊抽出物400mg/kg)、CBS1は皮膚塗布群(野菊の1%抽出物200μl)、CBS2は皮膚塗布群(野菊の2%抽出物200μl)を示す。表4は、アトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの臨床評価結果を示したものである。
【0108】
【表4】
【0109】
すべてのデータは、平均±SD(N=5)で表された。
##:p<0.01、正常群と比較
*:p<0.05、**:p<0.01、対照群と比較。
【0110】
B.掻く行動
マウスの掻く行動は、対照群では30分当り63.0±2.9回、経口投与群(野菊100mg/kgと400mg/kg)でそれぞれ30分当り30.4±1.4回と21.8±2.9回、皮膚塗布群(野菊1%と2%)でそれぞれ45.4±2.7回と45.0±3.4回の掻く行動が観察された。
【0111】
すなわち、すべての処理群で掻く行動の減少が観察され、掻く行動は、経口投与群と皮膚塗布群で約51〜65%と28〜29%程度に抑制された(図9)。表5は、アトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの掻く行動測定結果を示したものである。
【0112】
【表5】
【0113】
すべてのデータは、平均±SD(N=5)で表された。
##:p<0.01、正常群と比較
*:p<0.05、**:p<0.01、対照群と比較。
【0114】
C.アトピー皮膚炎誘導された組織表皮厚さ測定結果−耳浮腫に対する効果
浮腫を測定するために、マウスの耳厚さを実験開始から終了まで毎週測定した。正常群では耳の厚さは変化がなかったが、アトピー皮膚炎誘発対照群では耳の厚さが著しく増加した。耳浮腫の抑制は、野菊の経口投与群と皮膚塗布群で観察された。特に、耳浮腫の著しい抑制は経口投与群で観察された。表6(上端及び下端)は、アトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの耳厚さを測定した結果を示したものであるm(図10と11)。
【0115】
【表6】
【0116】
すべてのデータは、平均±SD(N=5)で表された。
##:p<0.01、正常群と比較
*:p<0.05、**:p<0.01、対照群と比較。
【0117】
D.血清IgE、IFN−γ及びIL−4測定結果
表7は、DNCB感作と攻撃によってアトピー皮膚炎誘導されたマウスで血清IgE、IFN−γ及びIL−4の濃度を測定するためのELISAの結果を示す。
【0118】
<1>血清IgE濃度測定
経口投与実験において、対照群で106.8±13.4ng/mlであり、経口投与群(野菊100mg/kg及び400mg/kg)ではそれぞれ63.5±16.9ng/mlと47.6±8.9ng/mlであって、これは有意味した減少を示す(P≦0.001)(図12a)。皮膚塗布実験で、血清IgEの濃度は対照群で61.6±9.3ng/mlであり、皮膚塗布群(野菊1%と2%)ではそれぞれ37.2±6.6ng/mlと46.7±7.1ng/mlであり、これは濃度の減少を示す(図12b)。
【0119】
<2>血清IFN−γ濃度測定
血清IFN−γ濃度は対照群で46.7±21.5pg/mlであり、経口投与群(野菊100mg/kg及び400mg/kg)ではそれぞれ3.3±0.4pg/mlと3.5±0.5ng/ml、皮膚塗布群(野菊1%と2%)ではそれぞれ3.5±0.4pg/mlと3.6±0.4pg/mlで、これは有意味した減少を示す(図13)。
【0120】
<3>血清IL−4濃度測定結果
血清中IL−4濃度は対照群で5.4±0.7pg/mlであり、経口投与群(野菊100mg/kg及び400mg/kg)ではそれぞれ1.8±1.0pg/mlと2.3±1.0pg/ml、皮膚塗布群(野菊1%と2%)では1.7±0.5pg/mlと1.8±1.1pg/mlで、これは有意味した減少を示す(図14)。表7は、血清IgE、IFN−γ、及びIL−4の濃度測定結果を示したものである。
【0121】
【表7】
【0122】
すべてのデータは、平均±SD(N=5)で表された。
##:p<0.01、正常群と比較
*:p<0.05、**:p<0.01、対照群と比較。
【0123】
E.組織の観察
実験に使用されたマウスは、実験終了後に犠牲させ、その後、耳組織を取り外して10%ホルマリン溶液で固定させた。その組織をパラフィン包埋し、3〜4μmの厚さで切断し、H&E(Hematoxylin & Eosin)方法で染色した。潰瘍、アトピー皮膚炎誘導された組織の表皮厚さ、肥満細胞浸潤、好酸球浸潤、好中球とリンパ球浸潤、及び線維芽細胞増殖とコラーゲン層異常増殖を調査した。
【0124】
正常群の耳組織写真で耳軟骨組織が均一に配列されており、皮下層、真皮、及び表皮のすべてが均一に配列されており、潰瘍、出血または炎症は観察されなかった(図15)。
【0125】
対照群の耳組織写真で、深刻な重症の潰瘍と出血が観察され、好中球浸潤による炎症が組織に散在されており、耳軟骨組織は好中球浸潤による炎症によって一部が破壊され、皮膚の中まで好中球浸潤による炎症が拡散していることも観察された。深刻な重症の線維芽細胞増殖とコラーゲン層異常増殖が観察され、バクテリア群集による化膿性炎症も観察された(図15)。
【0126】
皮膚塗布群の耳組織写真(野菊1%)で皮膚の中に好中球浸潤による軽微な出血及び軽微な炎症が観察され、コラーゲン層異常増殖も観察されたが、対照群に比べてはその症状が改善された(図15)。
【0127】
皮膚塗布群の耳組織写真(野菊2%)で軽微な好中球浸潤が観察され、一部の個体では軽微な潰瘍及び出血が観察されたが、対照群に比べてはその症状が改善された(図15)。
【0128】
経口投与群(野菊100mg/kg)の耳組織写真で、潰瘍及び出血が観察されなかったし、一部の個体でコラーゲン層の異常増殖による皮膚層の炎症及び線維芽細胞増殖が観察されたが、対照群に比べてはその症状が改善された(図15)。
【0129】
経口投与群(野菊400mg/kg)の耳組織写真で、潰瘍と出血、及びコラーゲン層の異常増殖による炎症及び線維芽細胞増殖が観察されなかったし、これはその症状が対照群に比べてかなり改善されたことを示した(図15)。
【0130】
結論的に、正常群では潰瘍が観察されなかったが、対照群では深刻な潰瘍が観察された。大部分の経口投与群(野菊100mg/kgと400mg/kg)及び皮膚塗布群(野菊1%と2%)では潰瘍が観察されなかった。
【0131】
好中球とリンパ球浸潤は正常群では観察されなかったし、対照群では激しい好中球とリンパ球浸潤が観察された。大部分の経口投与群(野菊100mg/kg及び400mg/kg)と皮膚塗布群(野菊1%及び2%)では軽微な好中球とリンパ球の浸潤が観察されたが、対照群に比べては改善された。
【0132】
線維芽細胞増殖とコラーゲン層異常増殖は正常群では観察されなかったし、対照群では深刻な重症の線維芽細胞増殖とコラーゲン層異常増殖が観察された。経口投与群(400mg/kg)と皮膚塗布群(2%野菊)では線維芽細胞増殖とコラーゲン層異常増殖が観察されなかったが、経口投与群(野菊100mg/kg)と皮膚塗布群(1%野菊)の一部の個体では様々な線維芽細胞増殖とコラーゲン層異常の段階が観察されたが、その症状は対照群に比べては改善された。
【0133】
また、400倍の比率で顕微鏡の一視野中に入って来た肥満細胞個数を確認した場合に、正常群では2.35個が観察され、アトピー皮膚炎誘導された群では7.65個が観察され、対照群で肥満細胞の数が増加したことを確認した。皮膚塗布群(野菊1%)では8.5個肥満細胞、皮膚塗布群(野菊2%)では8.85個肥満細胞、経口投与群(野菊100mg/kg)では7.15個肥満細胞、経口投与群(野菊400mg/kg)では6.265個肥満細胞が観察され、経口投与群(野菊400mg/kg)で肥満細胞の数が対照群より改善されたことを示した。
【0134】
実施例3.細胞性炎症因子の測定
3−1.実験方法
(1)実験方法
A.細胞の培養
本実験では、ミューリン大食細胞RAW264.7細胞株を韓国細胞株銀行から分譲受けて実験を行ったた。RAW264.7細胞をDMEM。RAW264.7細胞で育ち、2×105細胞/mlの濃度でT−フラスコに接種してじめじめするCO2培養器(5%CO2、95%空気)で37℃の条件で24時間培養した。その後、細胞をFBSが入っていない培地に希釈されたLPS(10μg/ml)で24時間処理し、FBSが入っていない培地に希釈された薬物(1mg/ml)で再び処理した。24時間後に、前記細胞を実験に使用した。
【0135】
B.亜硝酸塩の測定
誘導型酸化窒素合成剤(iNOS)の活性をNO(酸化窒素)の生成量を測定することによって決定した。RAW264.7細胞でNO生成を測定するために、硝酸塩/亜硝酸塩色度分析法キット(Nitrate/Nitrite Colorimetric assay kit)を細胞質NO2−を測定するのに使用した。実験方法は、グリース溶液を用いて製造者の指示(Cayman Chemical Company)に従って行った。
【0136】
C.iNOS(誘導型酸化窒素合成剤) 発現のウエスタンブロット分析
RAW264.7細胞でiNOS(誘導型酸化窒素合成剤) 発現に対する野菊抽出物及びこの分画物の効果を確認するためにウエスタンブロットを行った。
【0137】
野菊抽出物及びこの分画物を処理した細胞及び対照群を採取してPBSで2回洗浄した。Pro−prepTM(イントロン、韓国)試薬100μlを加えて−20℃で10分間放置した。その後、4℃で12、000rpmで10分遠心分離して上澄液を取得した。取得したタンパク質溶液をPro−measureTM(イントロン、韓国)試薬を使用して測定し、50μgのタンパク質を取ってサンプル緩衝液と混合した。混合物を95℃で5分間加熱した後、−20℃で保管した。準備したサンプルは、12%のSDS−アクリルアミドゲルに電気泳動させた後、PVDF膜でタンパク質を移動させた。移動が終わった膜を5%のスキムミルク溶液に室温で1時間ブロックさせた後、iNOS1次抗体を5%スキムミルク溶液に決められた比率で希釈して4℃で一晩置いた。翌日、TBSTで5分ずつ3回洗浄した後、抗−マウス2次抗体を1時間室温で培養させた。その後、TBSTで10分ずつ3回洗浄した後、ECLウエスタン基質(ピアス、#3216)溶液と1分間反応させた後、X−線フィルム(コダック)で現像した。
【0138】
D.COX−2抑制のウエスタンブロット分析
PGE2を生成するCOX−2の発現に対する野菊抽出物及びこの分画物の効果を調査するために、ウエスタンブロット分析を実施した。野菊抽出物を処理した細胞及び対照群を採取してPBSで2回洗浄した。Pro−prepTM試薬100μlを加えて−20℃で10分間放置した。その後、4℃で12、000rpmで10分遠心分離して上澄液を取得した。取得されたタンパク質溶液をPro−measureTM試薬を使用してタンパク質濃度を測定し、50μgのタンパク質を取ってサンプル緩衝液と混合した。混合物を95℃で5分間加熱した後、−20℃で保管した。完成されたサンプルは、12%のSDS−アクリルアミドゲルに電気泳動させた後、PVDF膜でタンパク質を移動させた。その後、移動が終わった膜を5%のスキムミルク溶液に室温で1時間ブロックさせ、COX−2の1次抗体を5%スキムミルク溶液に決められた比率で希釈して4℃で一晩中培養した。翌日、TBSTで5分ずつ3回洗浄し、抗−マウスとヤギ2次抗体を1時間室温で培養させた。その後、膜をTBSTで10分ずつ3回洗浄し、ECLウエスタン基質(ピアス、#3216)溶液と1分間反応させた後、X−線フィルム(コダック)に露出させて現像した。
【0139】
E.PGE2生成測定
野菊抽出物及びこの分画物によるCOX−2の活性を調査するために、細胞内PGE2の濃度を測定した。実験は、NO分析(亜硝酸塩分析法)と同様な方法で行い、細胞質溶液を取って遊離されたPGE2の量をPGE2 EIAシステム(アマシャム、RPN222)のプロトコルに従って測定した。
【0140】
F.IκBタンパク質のリン酸化及び分解(ウエスタンブロット)
LPS誘導されたIκBタンパク質のリン酸化及び分解に対する野菊抽出物及びこの分画物の効果を調査するためにウエスタンブロットを実施した。
【0141】
それぞれのサンプルを処理した細胞及び対照群を採取してPBSで2回洗浄した後、Pro−prepTM(イントロン)試薬100μlを加えて−20℃で10分間放置した後、4℃で12、000rpmで10分遠心分離して上澄液を取得した。取得された細胞内タンパク質溶液をPro−measureTM試薬(イントロン)を使用してタンパク質濃度を測定し、50μgのタンパク質を取ってサンプル緩衝液と混合した。混合物を95℃で5分間加熱した後、−20℃で保管した。準備したサンプルを12%のSDS−アクリルアミドゲルに電気泳動させた後、PVDF膜でタンパク質を移動させた。その後、移動が終わった膜を5%のスキムミルク溶液に室温で1時間ブロックさせ、IκBα一次抗体を5%スキムミルク溶液に決められた比率で希釈して4℃で一晩置いた。翌日、TBSTで5分ずつ3回洗浄した後、抗−マウス2次抗体を1時間室温で反応させた。その後、TBSTで10分ずつ3回洗浄した後、BCIP−NBT溶液(ナカライテスク、日本)で発色させた。
【0142】
G.細胞質及び核内のNF−κB発現
LPS誘導されたNF−κBタンパク質の核内移動に対する野菊抽出物及びこの分画物の効果を調査するために、細胞質及び核内NF−κBを分離(p50、p65)してウエスタンブロットを実施した。
【0143】
それぞれのサンプルを処理した実験群及び対照群を採取してPBSで2回洗浄した。0.4ml細胞溶解緩衝液(10mMのHEPES(pH7.9)、10mMのKCl、0.1mMのEDTA、0.1mMのEGTA、1mMのDTT、0.5mMのPMSF、2.0μg/μlアプロチニン)を添加し、それを15分間4℃で放置した。10%NP40の25μlを添加し、ボルテックスで10秒間激しく混合した。反応液を4℃で1、300rpmで2分間遠心分離して細胞質内タンパク質である上澄液を取得した。上層液を除去した沈殿物に50μlのアイス−コールド核抽出緩衝液(20mMのHEPES(pH7.9)、0.4MのNaCl、1mMのEDTA、1mMのEGTA、1mMのDTT、1mMのPMSF、2.0μg/μlのロイペプチン、そして、2.0μg/μlのアプロチニン含有)を添加し、間歇的に振ってながら15分間4℃で培養した。その後、サンプルを4℃で1、300rpmで2分間遠心分離して核蛋白質である上澄液を取得した。取得された細胞質及び核溶液をPro−measureTM試薬を使用してタンパク質濃度を測定し、30μgのタンパク質を取ってサンプル緩衝液と混合した。混合物を95℃で5分間加熱した後、−20℃で保管した。準備したサンプルを12%のSDS−アクリルアミドゲルに電気泳動させた後、PVDF膜でタンパク質を移動させた。移動が終わった後、膜を5%のスキムミルク溶液に室温で1時間ブロックさせた後、NF−κBp651次抗体を5%スキムミルク溶液に決められた比率で希釈して4℃で一晩置いた。翌日TBSTで5分ずつ3回洗浄した後、抗−マウス2次抗体を1時間室温で反応させた。その後、TBSTで10分ずつ3回洗浄した後、BCIP−NBT溶液(ナカライテスク、日本)で発色させた。
【0144】
(2)試薬及び器機
−DMEM培地(Gibco BRL Co., 米国)
−RPMI1604培地((Gibco BRL Co., 米国)
−牛胎児血清(Fetal bovine serum,FBS,Gibco BRL Co.,米国)
−ペニシリン(Gibco BRL Co., 米国)
−ストレプトマイシン(Gibco BRL Co., 米国)
−硝酸塩/亜硝酸塩色度分析法キット(Cayman Chemical Co.,米国)
−脂質多糖類(Sigma Co.,米国)
−Pro−prepTMタンパク質抽出溶液(Intron Biotechnology Co.,韓国)
−Pro−measureTMタンパク質測定溶液(Intron Biotechnology Co.,韓国)
−COX−2単一クローン抗体(Santa Cruz Biotechnology Co.,米国)
−アンチ−ヤギアンチボディー(Zymed Co.,米国)
−メタノール(MeOH)(徳山工業(株)、韓国)
−クロロホルム(徳山工業(株)、韓国)
−ELISAリーダー:バルサマックス(Molecular Devices Co.,米国)
−FT−03(Grass,米国)。
【0145】
3−2.実験結果
A.亜硝酸塩の測定結果
LPS誘導されたRAW264.7細胞で生成されたNOの量を測定するために、硝酸塩/亜硝酸塩色度分析法キットを用いて細胞質に存在する亜硝酸塩の形態として測定した。実験方法は、グリース試薬を使用して製造者(Cayman Chemical Company)の指示に従って行った。その結果、5μg/mlの濃度で亜硝酸塩の生成が対照群に比べてメタノール(MeOH)抽出物、クロロホルム(CHCl3)分画物、酢酸エチル(EtOAc)分画物でそれぞれ約38%、78%、30%減少した(図16)。表8は、RAW264.7細胞内LPS−誘導された亜硝酸塩生成に対する野菊抽出物及びこの分画物の効果を示したものである。
【0146】
【表8】
【0147】
B.iNOS(誘導型酸化窒素合成剤) 発現のウエスタンブロット分析
野菊がRAW264.7細胞でiNOS(誘導型酸化窒素合成剤) 発現に対する効果をウエスタンブロット分析を介して確認した。その結果、iNOS(誘導型酸化窒素合成剤)発現が対照群に比べてメタノール(MeOH)抽出物、クロロホルム(CHCl3)分画物、酢酸エチル(EtOAc)分画物でそれぞれ、約19%、約98%、約0.5%が減少した(図17)。表9は、RAW264.7細胞内LPS−誘導されたiNOS(誘導型酸化窒素合成剤) 発現に対する野菊抽出物及び分画物の効果を示したものである。
【0148】
【表9】
【0149】
C.PGE2測定結果
野菊抽出物によるCOX−2の活性を調査するために、細胞内PGE2量を測定した。その結果、各PGE2の生成が対照群に比べてメタノール抽出物、クロロホルム(CHCl3)分画物、酢酸エチル(EtOAC)分画物でそれぞれ約24%、88%、及び10%減少した(図18)。表10は、RAW264.7細胞内LPS−誘導されたPGE2発現に対する野菊抽出物及びこの分画物の効果を示したものである。
【0150】
【表10】
【0151】
D.COX−2発現のウエスタンブロット分析
RAW264.7細胞でCOX−2発現に対する野菊抽出物の効果をウエスタンブロットを介して確認した。その結果、COX−2の発現が対照群に比べてCHCl3分画物、EtOAc分画物ではそれぞれ約37%、23%が減少したが、MeOH抽出物では約26%増加した(図19)。表11は、RAW264.7細胞内COX−2発現に対する野菊抽出物及びこの分画物の効果を示したものである。
【0152】
【表11】
【0153】
E.IκB発現のウエスタンブロット分析
野菊抽出物によるP50/P65の活性を調査するために、P50/P65の抑制子であるIκBの量を測定した。その結果、対照群に比べて、MeOH抽出物、CHCl3分画物、及びEtOAc分画物でその量がそれぞれ約61%、65%、及び39.6%減少した(図20)。表12は、RAW264.7細胞内LPS−誘導されたIκB発現に対する野菊抽出物及びこの分画物の効果を示したものである。
【0154】
【表12】
【0155】
F.NF−κB(P50、P65)発現のウエスタンブロット分析
P50/P65活性に対する野菊抽出物の効果を確認した。その結果、P50発現が、対照群に比べて、MeOH抽出物、CHCl3分画物、及びEtOAc分画物でそれぞれ約28%、42%、及び36%減少し(図21)、P65発現が、対照群に比べて、MeOH抽出物、CHCl3分画物、及びEtOAc分画物でそれぞれ約18%、22%、及び20%減少した(図22)。表13は、RAW264.7細胞内LPS−誘導されたNF−Κb(P50、P65)発現に対する野菊抽出物及びこの分画物の効果を示したものである。
【0156】
【表13】
【0157】
3−3.比較例−甘菊
(1)サンプルの抽出
1)材料
本実験で使用された甘菊(学名:Chrysanthemi Indici Flos)は、小菊類の花で、雪菊、黄菊、または金菊と呼ばれ、韓国の慶尚北道永川で栽培され、2007年10月3日に採取した。サンプルで使用された薬剤の一部は韓国の慶煕大学校漢方医科大学本草学教室に保管した。
【0158】
2)サンプルの抽出と分画
<1>サンプルの抽出
甘菊100gを100%メタノール(MeOH)を溶媒として110℃抽出器で3時間ずつ3回繰り返し抽出し、回転濃縮蒸発機を用いて減圧濃縮して100%メタノール抽出物32.5gを取得した。
【0159】
<2>分画
上で取得した甘菊メタノール抽出物32.5gを蒸溜水に溶かした後、クロロホルム(CHCl3)を用いて分画し、水(H2O)分画物12.9gとクロロホルム分画物2.9gを取得した。
【0160】
3)試薬及び器機
−DMEM培地(Hyclone,米国)
−牛胎児血清(Fetal bovine serum,FBS,Gibco BRL Co.,米国)
−ペニシリン(Gibco BRL Co.,米国)
−ストレプトマイシン(Gibco BRL Co.,米国)
−細胞Titer96(Promega Co.,米国)
−硝酸塩/亜硝酸塩色度分析法キット(Cayman Chemical Co.,米国)
−脂質多糖類(Sigma Co.,米国)
−Pro−prepTMタンパク質抽出溶液(Intron Biotechnology Co.,韓国)
−Pro−measureTMタンパク質測定溶液(Intron Biotechnology Co.,韓国)
−COX−2単一クローン抗体(BD Bioscience Pharmingen Co.,米国)
−iNOS単一クローン抗体(BD Bioscience Pharmingen Co.,米国)
−アンチ−マウスアンチボディー(cell Signalling Co.,米国)
−プロスタグランジンE2biotrak ELISAシステム(BD Bioscience Pharmingen Co.,米国)
−ECLウエスタン基質(ピアス、#3216、Rockford、 米国。)
−RayBio mouse Inflammation Antibody Array I(AAM-INF-1-8,RayBiotech,Norcross,GA,米国)
−ELISAリーダー:バルサマックス(Molecular Devices Co.,米国)
−UV/VIS分光光度計(Spectrophotometer)(Gilson Co.,米国)。
【0161】
(2)実験方法
1)亜硝酸塩の測定
NO(酸化窒素)の生成を測定することによってiNOS(誘導型酸化窒素合成剤)の活性を測定した。RAW264.7細胞内でNO生成は、硝酸塩/亜硝酸塩色度分析法キットを用いて細胞質に存在する亜硝酸塩の形態として測定した。実験方法は、製造者(Cayman Chemical Company)の指示に従って測定した。すべての測定値は、平均±SD(標準偏差)で表された。有意性判定のためにスチューデントT−テストを使用した。すべての実験は3回繰り返し実験した。
【0162】
2)iNOS発現測定
NOの生成を誘導する酵素であるiNOS発現に対する甘菊抽出物及びこの分画物の効果を調査するためにウエスタンブロットを行った。
【0163】
甘菊抽出物を処理した細胞及び対照群を採取してPBSで2回洗浄した。Pro−prepTM(イントロン、韓国)試薬100μlを加えて−20℃で10分間放置した。4℃で12、000rpmで10分遠心分離して上澄液を取得した。取得されたタンパク質溶液をPro−measureTM(イントロン、韓国)試薬を使用して測定し、50μgのタンパク質を取ってサンプル緩衝液と混合した。95℃で5分間加熱した後、−20℃で保管した。準備したサンプルを12%のSDS−アクリルアミドゲルに電気泳動させた後、PVDF膜でタンパク質を移動させた。移動が終わった膜を5%のスキムミルク溶液に室温で1時間ブロックさせた後、iNOS一次抗体を5%スキムミルク溶液に決められた比率で希釈して4℃で一晩置いた。翌日、TBSTで5分ずつ3回洗浄した後、抗−マウス2次抗体を1時間室温で培養させた。再びTBSTで10分ずつ3回洗浄し、ECLウエスタン基質(ピアス、#3216)溶液と1分間反応させた後、X−線フィルム(コダック)で現像した。
【0164】
3)PGE2生成測定
甘菊抽出物及びこの分画物によるCOX−2の活性を調査するために、細胞内PGE2(プロスタグランジンE2)の量を測定した。実験は、NO分析と同様の方法で行い、細胞質溶液を取って放出されたPGE2の量をプロスタグランジンE2酵素免疫分析Biotrak(EIA)システム(アマシャム、RPN222)の実験法に従って測定した。
【0165】
4)COX−2発現測定
PGE2を生成するCOX−2の発現に対する甘菊抽出物及びこの分画物の効果を調査するためにウエスタンブロットを行った。
【0166】
それぞれのサンプルを処理した細胞及び対照群を採取してPBSで2回洗浄した。Pro−prepTM試薬100μlを加えて−20℃で10分間放置した後、4℃で12、000rpmで10分遠心分離して上澄液を取得した。取得されたタンパク質溶液をPro−measureTM試薬を使用してタンパク質濃度を測定し、50μgのタンパク質を取ってサンプル緩衝液と混合した。混合物を95℃で5分間加熱した後、−20℃で保管した。準備したサンプルを12%のSDS−アクリルアミドゲルに電気泳動させた後、PVDF膜でタンパク質を移動させた。移動が終わった膜を5%のスキムミルク溶液に室温で1時間ブロックさせた後、COX−2の1次抗体を5%スキムミルク溶液に決められた比率で希釈して4℃で一晩置いた。翌日、TBSTで5分ずつ3回洗浄した後、抗−マウス2次抗体を1時間室温で培養させた。その後、TBSTで10分ずつ3回洗浄し、ECLウエスタン基質(ピアス、#3216)溶液と1分間反応させた後、X−線フィルム(コダック)で現像した。
【0167】
5)IκBタンパク質のリン酸化及び分解測定
LPS誘導されたIκBリン酸化及び分解に対する甘菊抽出物及びこの分画物の効果を調査するために、ウエスタンブロットを行った。
【0168】
それぞれのサンプルを処理した細胞及び対照群を採取してPBSで2回洗浄した。Pro−prepTM試薬100μlを加えて−20℃で10分間放置した後、4℃で12、000rpmで10分遠心分離して上澄液を取得した。取得されたタンパク質溶液をPro−measureTM試薬(イントロン)を使用してタンパク質濃度を測定し、50μgのタンパク質を取ってサンプル緩衝液と混合した。混合物を95℃で5分間加熱した後、−20℃で保管した。準備したサンプルを12%のSDS−アクリルアミドゲルに電気泳動させた後、PVDF膜でタンパク質を移動させた。移動が終わった膜を5%のスキムミルク溶液に室温で1時間ブロックさせた後、IκBα一次抗体を5%スキムミルク溶液に決められた比率で希釈して4℃で一晩置いた。翌日、TBSTで5分ずつ3回洗浄した後、抗−マウス2次抗体を1時間室温で反応させた。その後、TBSTで10分ずつ3回洗浄し、BCIP−NBT溶液(ナカライテスク、日本)で発色させた。
【0169】
6)細胞質及び核内のNF−κB発現測定
LPS誘導されたNF−κB核内の移動に対する甘菊抽出物及びこの分画物の効果を調査するために、細胞質及び核タンパク質を分離してウエスタンブロット分析を行った。
【0170】
それぞれのサンプルを処理した実験群及び対照群を採取してPBSで2回洗浄した。0.4ml細胞溶解緩衝液(10mMのHEPES(pH7.9)、10mMのKCl、0.1mMのEDTA、0.1mMのEGTA、1mMのDTT、0.5mMのPMSF、2.0μg/μlのアプロチニン)を添加した。その後、15分間4℃で放置し、25μl10%NP40を添加した後、ボルテックスで10秒間激しく混合した。反応液を4℃で1、300rpmで2分間遠心分離して細胞質内タンパク質を含む上澄液を取得した。上層液を除去した沈殿物に50μlアイス−コールド核抽出物緩衝液(20mMのHEPES(pH7.9)、0.4MのNaCl、1mMのEDTA、1mMのEGTA、1mMのDTT、1mMのPMSF、2.0μg/μlのロイペプチン、そして、2.0μg/μlのアプロチニン含有)を添加して間歇的に振ってながら15分間4℃で培養した。その後、反応液を4℃で1、300rpmで2分間遠心分離して核蛋白質上澄液を取得した。取得された細胞質及び核溶液をPro−measureTM試薬を使用してタンパク質濃度を測定し、30μgのタンパク質を取ってサンプル緩衝液と混合した。混合物を95℃で5分間加熱した後、−20℃で保管した。準備したサンプルを12%のSDS−アクリルアミドゲルに電気泳動させた後、PVDF膜でタンパク質を移動させた。移動が終わった後、膜を5%のスキムミルク溶液に室温で1時間ブロックさせた後、NF−κBp651次抗体を5%スキムミルク溶液に決められた比率で希釈して4℃で一晩置いた。翌日、TBSTで5分ずつ3回洗浄した後、抗−マウス2次抗体を1時間室温で反応させた。その後、TBSTで10分ずつ3回洗浄し、BCIP−NBT溶液(ナカライテスク、日本)で発色させた。
【0171】
(3)実験結果
1)亜硝酸塩の測定結果
亜硝酸塩発現を測定した結果、それぞれの亜硝酸塩生成は、サンプル12.5μg/ml、25μg/ml、50μg/ml、及び100μg/mlの濃度で、対照群に比べて、メタノール抽出物ではそれぞれ97.9%、89.0%、37.3%、17.8%、クロロホルム分画物ではそれぞれ50.6%、19.2%、16.6%、7.5%で示された。すなわち、メタノール分画物50μg/ml以上とクロロホルム分画物25μg/ml以上の濃度で50%以上亜硝酸塩生成を抑制されたこととして示された。表14は、264.7細胞内LPS−誘導されたRAW亜硝酸塩生成に対する甘菊抽出物及びこの分画物の効果を示したものである(図23)。
【0172】
【表14】
【0173】
#:p<0.05、正常群と比較
*:p<0.05、**:p<0.01、対照群と比較
すべてのデータは、平均±SD(N=3)で表された。
【0174】
総合すれば、甘菊抽出物は、メタノール抽出物50μg/ml以上とクロロホルム分画物25μg/ml以上の濃度で50%以上亜硝酸塩生成を抑制するが、野菊抽出物は、(実施例3−2)メタノール抽出物10μg/ml以上、クロロホルム分画物1.25μg/ml以上及び酢酸エチル分画物10μg/ml以上の濃度で50%以上亜硝酸塩生成を抑制したところ、これは著しく低い濃度の野菊抽出物及びこの分画物が、甘菊抽出物及びこの分画物と比較して、同等またはそれ以上の亜硝酸塩生成抑制効果を示す。
【0175】
2)iNOS発現測定結果
甘菊抽出物及びこの分画物の細胞毒性結果及び亜硝酸塩生成結果を参考して25μg/ml濃度でiNOS発現を測定した。iNOS発現は、ウエスタンブロットを介してRAW264.7細胞で確認した。
【0176】
それぞれのiNOS発現量がメタノール抽出物及びクロロホルム抽出物で74.9%及び0.0%であり、25.1%及び100.0%の減少率を示し、水分画物では69.7%で示され、30.3%の減少率を示した(図24)。表15は、RAW264.7細胞内LPS−誘導されたiNOS発現量に対する甘菊抽出物及びこの分画物の効果を示したものである。
【0177】
【表15】
【0178】
3)PGE2測定結果
甘菊抽出物によるCOX−2の活性を調査するために、細胞内PGE2の量を測定した。
【0179】
PGE2の生成は、サンプル25μg/ml濃度でメタノール抽出物では3250.3±22.8pg/mlで、対照群の3425.1±239.6pg/mlに比べて5.1%の減少率を示した。PGE2の生成は、水分画物では3439.5±159.3pg/mlで示されたが、クロロホルム分画物では612.0±85.4pg/mlで82.1%の減少率を示した(図25)。表16は、RAW264.7細胞内LPS−誘導されたPGE2発現に対する甘菊抽出物及びこの分画物の効果を示したものである。
【0180】
【表16】
【0181】
4)COX−2測定結果
RAW264.7細胞内でCOX−2発現に対する甘菊抽出物の効果をウエスタンブロットを介して確認した。実験は、25μg/ml濃度の甘菊抽出物で行った。対照群と比較する時、それぞれのCOX−2発現はメタノール抽出物では127.0%で示されて27.0%の増加率を示し、クロロホルム分画物では94.7%で示されて5.3%の減少率を示し、水分画物では136.3%で示されて36.3%の増加率を示した(図26)。表17は、RAW264.7細胞内LPS−誘導されたCOX−2発現に対する甘菊抽出物及びこの分画物の効果を示したものである。
【0182】
【表17】
【0183】
5)IκBリン酸化及び分解測定の結果
RAW264.7大食細胞株でLPSに誘導されたIκBリン酸化及び分解に対する甘菊抽出物の抑制効果を確認した。実験は、25μg/ml濃度の甘菊抽出物で行った。それぞれのIκBの発現は、メタノール抽出物では12.6%で示されて87.4%の減少率を示し、クロロホルム分画物では49.6%で示されて50.4%の減少率を示し、水分画物では28.9%で示されて71.1%の減少率を示し、これはLPSに誘導されたIκBタンパク質のリン酸化及び分解に対する甘菊抽出物の抑制効果を示す(図27)。表18は、RAW264.7細胞内LPS−誘導されたIκBタンパク質のリン酸化及び分解に対する甘菊抽出物及びこの分画物の効果を示したものである。
【0184】
【表18】
【0185】
6)細胞質及び核内でのNF−κB発現
RAW264.7大食細胞株でLPSに誘導されたIκBから放出された後細胞質から核内へNF−κBタンパク質の移動に対する甘菊抽出物の抑制効果を確認した。
【0186】
25μg/ml濃度の甘菊抽出物で、それぞれのp65発現量は、対照群に比べてメタノール抽出物及びクロロホルム分画物で71.6%及び87.9%で示されてそれぞれ28.4%及び12.1%の減少率を示し、水分画物では86.1%で示されて13.9%の減少率を示した。このように、甘菊抽出物はNF−κBタンパク質の核内移動において抑制効果が示された。すなわち、NF−κB核移動に対する抑制効果を示した(図28)。表19は、RAW264.7細胞内LPS−誘導された細胞質及び核NF−κBタンパク質発現に対する甘菊抽出物及びこの分画物の効果を示したものである。
【0187】
【表19】
【0188】
実施例4.MTS分析の結果
野菊抽出物及びこの分画物の細胞毒性を確認するために、RAW264.7細胞でMTS/PMS(Cell Titer 96TM Aqueous Non-Radioactive Cell Proliferation Assay, Cat. G5421-Promega)を用いてMTS分析を行った。RAW264.7細胞を96ウェルプレートに5×104細胞/mLに接種し、24時間培養した。前記細胞を1.25μg/mL、2.50μg/mL、5.00μg/mLの濃度の野菊抽出物を含む、血清が添加されないDMEMで24時間培養した。24時間後、MTSとPMSを20:1の比率でよく混合し、3時間培養した。その後、ELISAリーダーer(Versamax, Molecular Devices Co., 米国) を用いて490nmで吸光度を測定した。
【0189】
図29に示されたように、メタノール抽出物、酢酸エチル分画物、及びクロロホルム分画物は、すべての濃度でRAW264.7の細胞生存力にほとんど影響を与えないことを確認することができ、これは野菊抽出物及びこの分画物が毒性がないことを示す(図29)。
【0190】
〔産業上利用の可能性〕
本発明による組成物は、抗炎症活性を持つので、アトピー皮膚炎のような炎症疾患の予防または治療の用途として使用されることができ、また、医薬外品、化粧品、食品、及び軟水器を含む、様々な分野に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0191】
【図1】図1は野菊抽出物とこの分画物取得過程を示したフローチャートである;
【図2】図2はDNCB処理されたNC/Ngaマウスの感作スケジュールを示したものである;
【図3】図3は薬物処理前及び薬物処理後のスコアによるNC/Nga マウスモデルの変化を示す写真である。
【図4】図4は野菊、タンポポ、黄伯、石菖蒲、ヒイラギモチ、及びソメイヨシノ抽出物処理後のアトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの掻く行動変動値を示すものである;
【図5】図5は野菊、タンポポ、黄伯、石菖蒲、ヒイラギモチ、及びソメイヨシノ抽出物処理後のアトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの臨床評価結果を示すものである;
【図6】図6は野菊、タンポポ、黄伯、石菖蒲、ヒイラギモチ、及びソメイヨシノ抽出物処理後のアトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの血清IgE濃度変化を示したものである;
【図7】図7は薬物処理前及び野菊抽出物処理後のスコアによるNC/Ngaマウスモデルのアトピー症状の変化過程を示す写真である;
【図8】図8は野菊抽出物処理後のアトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの臨床評価結果を示すものである;
【図9】図9は野菊抽出物処理後のアトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの掻く行動結果を示すものである;
【図10】図10は野菊抽出物処理後のアトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの耳厚さを長さ(mm)で測定した結果を示すものである;
【図11】図11は野菊抽出物処理後のアトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの耳厚さを体積(%)で測定した結果を示すものである;
【図12】図12は(a)野菊抽出物の経口投与後のアトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの血清中のIgE濃度を測定した結果を示すものである;(b)野菊抽出物の皮膚塗布後のアトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの血清中のIgE濃度を測定した結果を示すものである;
【図13】図13は野菊抽出物処理後のアトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの血清中のIFN−γ濃度を測定した結果を示すものである;
【図14】図14は野菊抽出物処理後のアトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの血清中のIL−4濃度を測定した結果を示すものである;
【図15】図15は野菊抽出物処理後のアトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの耳組織断面を撮影したものである;
【図16】図16は野菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内酸化窒素生成を測定したものである;
【図17】図17は野菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内iNOS(誘導型酸化窒素合成剤) 生成を測定したものである;
【図18】図18は野菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内PGE2生成を測定したものである;
【図19】図19は野菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内COX−2生成を測定したものである;
【図20】図20は野菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内IκB生成を測定したものである;
【図21】図21は野菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内P50生成を測定したものである;
【図22】図22は野菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内P65生成を測定したものである;
【図23】図23は甘菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内酸化窒素生成を測定したものである;
【図24】図24は甘菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内iNOS(誘導型酸化窒素合成剤) 発生量を測定したものである;
【図25】図25は甘菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内PGE2生成を測定したものである;
【図26】図26は甘菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内COX−2生成を測定したものである;
【図27】図27は甘菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内IκB生成を測定したものある;
【図28】図28は甘菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内P65生成を測定したものである;
【図29】図29はMTS分析方法による野菊抽出物及びこの分画物の細胞毒性を測定したものである。
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、野菊(Chrysanthemum boreale Makino)抽出物またはこの分画物を含む抗炎症活性を持つ組成物に関する。
【0002】
〔背景技術〕
人の皮膚は、老化が進行されるに応じて様々な内的及び外的要因による変化を経験する。内的には、新陳代謝を調節する各種ホルモンの分泌が減少し、兔疫細胞の機能及び細胞の活性が減少し、従って、生体及び生体タンパク質に必要な免疫タンパク質の生合成が減る。外的には、環境汚染及び紫外線がシワの増加、弾力減少、皮膚乾燥を含む、様々な変化を起こし、肝斑、そばかす、及び黒い斑点(age spot)などを増加させて皮膚悪化に至るようにする。現在は、ほとんどの人々が若くて美しく見えることを望むので、内的要因だけでなく、紫外線及びストレスのような、外的要因に起因した皮膚老化を予防または、改善しようとする強い欲求を持つ。
【0003】
皮膚疾患中の一つであるアトピー皮膚炎(AD)は、免疫学的、遺伝的、薬理的、生理学的、及び環境的など複合因子的要因によって発病されるが、特に、感染、ストレス、季節と気候変化、刺激、及びアレルギー抗原などによって発病される。アトピー皮膚炎は、幼児から大人まで、すべての年齢層に発生する皮膚の慢性的な炎症である。
【0004】
一般的に、アトピー皮膚炎の中で約80%程度がIgEと関連付けられてあり、これは、外因性形態(IgE−媒介された)及び内因性形態(非−IgE−媒介された)の2つの形態で分類され得る。増加されたIgE反応及び好酸球増加がアトピー皮膚炎患者で観察され、これは、Th1サイトカインである、インターフェロン−γ生産の減少が隋伴する、IL−4、IL−5のようなTh2サイトカインの増加された反応を反映する。これに係って、ピメクロリムス(pimecrolimus)、タクロリムス(tacrolimus)のような様々な免疫治療剤などの使用が試みされた。特に、免疫反応を直接的に抑制することができるCD4+CD25+調節T細胞(Treg cells)の存在が最近知られた。Treg細胞は胸腺から起源し、様々なTリンパ球の活性を制御する能力を持っている。更に、Treg細胞はそれらの表面にCTLA4、GITR、CD25及びLAG3の発現による大食細胞及びB細胞のような兔疫細胞などの間に免疫抑制信号を伝達するとか相互作用を抑制する。Treg細胞はIL−10の外にTGF−β、IL−35のようなサイトカインを介して免疫抑制反応を誘導する。アトピー皮膚炎において、IL−4及びIL−5のようなTh2サイトカインはTh2細胞発達の欠陷によって過量生産される一方、IFN−γのようなTh1サイトカインの生産は抑制される。最近、TARC/CCL17、MDC/CCL22、及びCTACK/CCL2に代表される、Th2ケモカインがTh2細胞発達に直接的な影響を及ぼすということが知られた。
【0005】
サイトカインなどは、様々な細胞によって作られ、多くの互いに異なる作用をする。特に、同一のサイトカインが互いに異なる機能ができるから、サイトカインなどは分類するのに非常に難しい。T細胞が大食細胞が提示した抗原を認識して活性化されて免疫反応を誘導する場合、多数のサイトカインなどがこの過程に関与する。先天免疫と適応免疫の各段階、抗原認識からエフェクター段階まで関与し、一部サのイトカインなどはリンパ球やその他の血球の生成にも関与している。核心的サイトカインの作用は下記の通りである。
【0006】
IL−1(インターロイキン1)は、活性化された単核食菌細胞 、上皮細胞、または血管内皮細胞などによって作られ、炎症反応を媒介するサイトカインである。IL−1には、IL−1αとIL−1βの2つの類型がある。少量のIL−1は、CD4−T細胞とB細胞を活性化し、炎症細胞を刺激することができる。しかし、過量のIL−1は、ホルモンとして作用して発熱及び急性期反応を誘導する。
【0007】
IL−4(インターロイキン4)は、約20kDaのサイズを持ったタンパク質であって、CD4T細胞及び活性化された肥満細胞によって作られ、B細胞成長因子として作用する。IL−4は、またB細胞の兔疫グロブリンのクラススィッチに関与する分化因子として作用し、CD4T細胞、肥満細胞、大食細胞などをまた活性化することができる。
【0008】
IL−10(インターロイキン10)は、IL−2と相乗作用によって活性化されたT細胞のCTLsへの分化を誘導し、またNK細胞とLAK細胞、及び活性化されたT細胞の増殖を誘導する。
【0009】
IFN−γ(インターフェロン−γ、またII型インターフェロンとして公知される)は、CD4T細胞またはCD8T細胞によって作られて免疫反応を調節するので、従って免疫インターフェロンとも呼ぶ。IFN−γはT細胞、B細胞、好中性NK細胞、血管内皮細胞に作用してそれらを活性化させることができ、大食細胞活性化因子として作用して1種と2種MHCの発現を増加させる。IFN−γは、また他のインターフェロンのように、ウイルスの増殖を抑制することができる。
【0010】
NOは、生理的状態下で血管拡張剤として機能する。しかし、大食細胞が炎症サイトカインによって刺激された場合、iNOS(誘導型酸化窒素合成剤) によって生成されたNOは、病理的状態下で炎症反応を誘導してCOX−2(シクロオキシゲナーゼ−2)の活性を増加させ、アラキドン酸カスケードを介した炎症反応を増幅させる。
【0011】
COX−2は、アラキドン酸からプロスタグランジンを生産するようにする核心的な調節子である。COX−2は、アラキドン酸をPGG2に転換する。酵素によってPGG2はPGE2、PGD2、PGF2、PGI2、またはTXA2に転換され、これらは体内で互いに異なる作用をする。代表的なCOX−2阻害剤としてはアスピリンである。
【0012】
最近の研究傾向は、免疫調節によるIgE生産の上向及び下向調節に焦点を合わせており、またアトピー皮膚炎を持った患者に対する臨床的に活用可能な、漢方薬の効果が活発に研究されている。しかし、野菊のアトピー皮膚炎に対する効果に対しては全然報告されたところがない。
【0013】
〔発明の開示〕
〔技術的課題〕
従って、本発明者などは野菊抽出物及びこの分画物に血清IgE濃度減少効果を含めて炎症疾患で炎症−関連の因子に対する抑制効果を持つことを証明した。この研究を基礎にして、本発明者らは野菊抽出物及びこの分画物が各種炎症疾患、特に、アトピー皮膚炎の予防的及び治療的効果を奏することを見つけ、これによって本発明を完成した。
【0014】
〔課題解決方法〕
本発明の目的は、野菊抽出物またはこの分画物を含む、抗炎症活性を持つ組成物を提供することである。
【0015】
本発明のまた他の目的は、野菊抽出物またはこの分画物を含む組成物を有効成分として含む、炎症疾患の予防または治療用薬学組成物、及び化粧品組成物、食品組成物、炎症疾患の予防または改善用医薬外品組成物を提供することである。
【0016】
本発明のまた他の目的は、野菊抽出物またはこの分画物を含む組成物を有効成分として含むフィルター充填剤を含む、炎症疾患の予防または改善用軟水器を提供することである。
【0017】
本発明のまた他の目的は、野菊抽出物またはこの分画物を含む組成物を炎症疾患が発病した、または発病可能性のある患者に投与して炎症疾患を予防または治療する方法を提供することである。
【0018】
〔発明の効果〕
本発明による組成物は、抗炎症活性を持つので、アトピー皮膚炎のような炎症疾患の予防または治療に使用することができ、また医薬外品、化粧品、食品、及び軟水器を含む、様々な用途に適用され得る。
【0019】
〔図面の簡単な説明〕
<図1> 図1は野菊抽出物とこの分画物取得過程を示したフローチャートである;
<図2> 図2はDNCB処理されたNC/Ngaマウスの感作スケジュールを示したものである;
<図3> 図3は薬物処理前及び薬物処理後のスコアによるNC/Nga マウスモデルの変化を示す写真である。
【0020】
<図4> 図4は野菊、タンポポ、黄伯、石菖蒲、ヒイラギモチ、及びソメイヨシノ抽出物処理後のアトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの掻く行動変動値を示すものである;
<図5> 図5は野菊、タンポポ、黄伯、石菖蒲、ヒイラギモチ、及びソメイヨシノ抽出物処理後のアトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの臨床評価結果を示すものである;
<図6> 図6は野菊、タンポポ、黄伯、石菖蒲、ヒイラギモチ、及びソメイヨシノ抽出物処理後のアトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの血清IgE濃度変化を示したものである;
<図7> 図7は薬物処理前及び野菊抽出物処理後のスコアによるNC/Ngaマウスモデルのアトピー症状の変化過程を示す写真である;
<図8> 図8は野菊抽出物処理後のアトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの臨床評価結果を示すものである;
<図9> 図9は野菊抽出物処理後のアトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの掻く行動結果を示すものである;
<図10> 図10は野菊抽出物処理後のアトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの耳厚さを長さ(mm)で測定した結果を示すものである;
<図11> 図11は野菊抽出物処理後のアトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの耳厚さを体積(%)で測定した結果を示すものである;
<図12> 図12は(a)野菊抽出物の経口投与後のアトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの血清中のIgE濃度を測定した結果を示すものである;(b)野菊抽出物の皮膚塗布後のアトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの血清中のIgE濃度を測定した結果を示すものである;
<図13> 図13は野菊抽出物処理後のアトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの血清中のIFN−γ濃度を測定した結果を示すものである;
<図14> 図14は野菊抽出物処理後のアトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの血清中のIL−4濃度を測定した結果を示すものである;
<図15> 図15は野菊抽出物処理後のアトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの耳組織断面を撮影したものである;
<図16> 図16は野菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内酸化窒素生成を測定したものである;
<図17> 図17は野菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内iNOS(誘導型酸化窒素合成剤) 生成を測定したものである;
<図18> 図18は野菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内PGE2生成を測定したものである;
<図19> 図19は野菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内COX−2生成を測定したものである;
<図20> 図20は野菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内IκB生成を測定したものである;
<図21> 図21は野菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内P50生成を測定したものである;
<図22> 図22は野菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内P65生成を測定したものである;
<図23> 図23は甘菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内酸化窒素生成を測定したものである;
<図24> 図24は甘菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内iNOS(誘導型酸化窒素合成剤) 発生量を測定したものである;
<図25> 図25は甘菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内PGE2生成を測定したものである;
<図26> 図26は甘菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内COX−2生成を測定したものである;
<図27> 図27は甘菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内IκB生成を測定したものある;
<図28> 図28は甘菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内P65生成を測定したものである;
<図29> 図29はMTS分析方法による野菊抽出物及びこの分画物の細胞毒性を測定したものである。
【0021】
〔発明を実施するための最良の形態〕
前記目的を達成するための一態様として、本発明は、野菊抽出物またはこの分画物を含む、抗炎症活性を持つ組成物を提供する。
【0022】
本発明者らは野菊、タンポポ、黄伯、石菖蒲、ヒイラギモチ及びソメイヨシノの抽出物を選択し、炎症疾患に対するこれらの効果を試した。その結果、野菊が最も優れた効果を奏することを確認した。具体的な実験例(実施例1)によれば、アトピー皮膚炎誘導モデルに野菊、タンポポ、黄伯、石菖蒲、ヒイラギモチ及びソメイヨシノの抽出物を処理し、その後、臨床評価を行った場合、野菊抽出物が紅斑、浮腫、血腫(excoriation)、掻痒、皮膚乾燥症、糜爛及び苔癬化で低い点数を記録し(表1と2、及び図4と5)、血中兔疫グロブリンE濃度が他の植物に比べて、著しく低いことを確認することができた(表3及び図6)。
【0023】
野菊はキキョウ目に属する菊科の一種で宿根性多年草であり、韓国、日本、中国北部、シベリアに分布し、主に谷または野で見られる。全体の高さは1−1.5mである。葉は互生し、下部の物は花が咲く時に倒れる。中央部の物は長い楕円状の卵形であり、長さ5−7m、幅4−6cmである。基部が少し心臟底であるとか截底であり、羽状で裂け、裂片はサイズがほとんど類似し、長い楕円形であり、鈍頭であり、端に鋭い欠刻状の鋸歯がある。葉柄は、長さ1−2cmである。側裂片は2対であって、裂片の間が広く、表面に毛が少しあり、裏面の中間に付く毛がある。花は9−10月に咲いて、直径1.5cmとして枝の端と主茎の端に山状のように垂れ下がる。総苞の長さは4mm、直径が8mmである。苞片は3−4行に配列され、外片は線形または長い楕円形であって表に毛があり、内片は長い楕円形で端が膜質である。舌状花冠は長さ5−7mmであって黄色であり、筒状花冠は端が5つに裂ける。痩果は倒卵形で長さ1mm程度であり、5−6行があり、冠毛が無く、10−11月に実る。茎の高さは1−1.5mで枝が多く裂けて、全体に短い白色毛がある。この植物は四方に多くの根が伸びている。どのような土壌でもよく育ち、特に肥沃な所でよく育ち、じめじめする所よりも乾燥した所が好きである。
【0024】
本発明での野菊は、学名Chrysanthemum boreale Makinoをいい、商業的に販売されるものを購入して使用するとか、自然から採取、または栽培されたものを使用することができる。さらに、本発明による野菊抽出物は、天然、雑種、または変種植物の様々な器官から抽出されることができ、例えば、根、茎、葉、花、実の果肉及び皮だけでなく植物組織培養物から抽出可能であるが、野菊の花から抽出するのが最も好ましい。
【0025】
本発明による野菊抽出物は、水、有機溶媒またはこれらの混合溶媒を用いて抽出することによって取得することができる。好ましくは、野菊を一定時間乾燥させて粉砕し、続いて熱水抽出、冷浸抽出、加熱抽出、超音波抽出、及び冷却抽出のような当業界に公知された通常的な方法によって抽出する。抽出方法は特に制限されず、有効成分が破壊されないとか最小化された条件で室温または加温して抽出することができる。好ましくは、洗浄及び乾燥で異物が除去された野菊を粉砕して取得した野菊乾燥物を水、低級C1〜C4のアルコール、またはこれらの混合溶媒で抽出することができ、より好ましくは、水またはメタノールを使用して抽出することができる。
【0026】
前記野菊の熱水抽出は、野菊を水に入れて沸かした後、野菊をフィルタリングする段階、ろ過液を濃縮させた後、賦形剤で粉末化させる段階、及び粉末化された野菊抽出物を結合剤と共に混合して打錠する段階からなることができる。
【0027】
前記賦形剤は、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロース、ラクトース、またはゼラチンであり得る。
【0028】
また、前記結合剤は、例えば、デキストリン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、予備ゼラチン化澱粉、ポビドン(ポリビニルピロリドン)、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、またはエチルセルロースであり得る。
【0029】
抽出時間は特に限定はないが、約2〜5時間程度であることができ、熱水抽出時の温度は70〜100℃、好ましくは80〜100℃であり得る。野菊重量の10〜30体積倍、好ましくは15体積倍〜25体積倍、より好ましくは約20体積倍の水を用いて野菊熱水抽出物を製造するのに使用することができる。
【0030】
一方、本発明で野菊分画物は、前記野菊抽出物から分画して得ることができる。分画物を得るために、当業界に公知された様々な溶媒が使用されることができ、好ましくは有機溶媒が使用され得る。例えば、ペンタン、ヘキサン、2、2、4−トリメチルペンタン、ジカイン、シクロヘキサン、二硫化炭素、四塩化炭素、クロロブタン、ジイソプロピルエテル、クロロホルム、アセトン、ニトロプロパン、ブタノン、ジクロロエタン、ピリジン、プロパノール、メタノール、及び酢酸エチルが含まれる。前記有機溶媒としては、非極性有機溶媒が好ましく、特に好ましいものとして、クロロホルム、エタノール、酢酸エチルまたはこれらの混合溶媒などがあるが、これに限定されない。本発明の具体的な実施例でクロロホルム、エタノールまたはこれらの混合溶媒を使用してそれぞれの分画物を得り、すべての分画物が活性を示した。これらのうち、クロロホルム分画物が最高の抗炎症活性を示した(表8、9及び10)。
【0031】
本願における用語‘‘抗炎症活性’’は、炎症を抑制することをいい、前記炎症はどのような刺激に対する身体の内部防御メカニズムの一つであって、3つを併発する複雑な病変をいう:組織変質、循環障害と滲出、組織増殖。より具体的に、炎症は先天性免疫の一部であり、他の動物でのように人間の先天性免疫は、病原体に特異的に存在する細胞表面のパターンを認識する。貪食細胞はそのような表面を持つ細胞を非自己として認識する。もし、病源菌が身体の物理的な障壁を破って入って来たら炎症反応が生じる。炎症反応は、傷部位に侵入した微生物などに対する敵対環境を作る非特異的な防御作用である。炎症反応で、傷がつくとか外部感染体が体内に入って来た時、初期段階免疫反応に関与する白血球などが寄り集まってサイトカインを放出する。従って、細胞内サイトカインの発現量が炎症反応活性化の指標になる。
【0032】
本発明者らは、野菊を対象に実験を行い、野菊抽出物及びこの分画物に抗炎症活性があることを見つけた。本発明の具体的な実験例(実施例3)で、本発明者らは野菊抽出物またはこの分画物を処理した後の炎症疾患動物モデルで血清IgE(兔疫グロブリンE)、IFN−γ(インターフェロン−γ)、IL−4(インターロイキン4)の濃度の減少(それぞれ図12、13、14);細胞内NO(酸化窒素)の発現量の減少(図15);iNOS(誘導型酸化窒素合成剤) 発現の減少(図17);細胞内PGE2(プロスタグランジンE2)発現量の減少(図18);細胞内COX−2タンパク質発現量の減少(図18);及びIκBのリン酸化抑制、NF−κBの細胞核内移動の減少(図20、図21、図22)を示すことを確認した。これら物質は、すべて炎症反応またはアレルギー反応で特異的に発現量が増加される物質であるので、これら物質の発現量減少は、野菊抽出物が抗炎症活性を持つことを示す。
【0033】
特に、菊科の多年草で高さ60〜90cmであり、茎は普通赤黒い色を帯び、葉は筋違いに出て羽状で深く裂けてあり、10〜11月に茎の端に香ばしい黄色い花が咲く特性を持つ甘菊と比較した時、野菊(5ug/ml)のメタノール(MeOH)抽出物、クロロホルム(CHCl3)抽出物、及びエタノール(EtOAc)抽出物が炎症疾患動物モデルで細胞内酸化窒素(NO)の量をそれぞれ約38%、78%、30%減少することを確認し(実施例3−2)、一方、それぞれの濃度2.5μg/ml、25μg/ml、50μg/ml、100μg/mlの甘菊のメタノール抽出物は97.9%、89.0%、37.3%、及び17.8%に減少することを確認し、甘菊のクロロホルム分画物では50.6%、19.2%、16.6%、7.5%に減少することを確認した(表14)。このような結果は、野菊抽出物はより少量で甘菊抽出物と同等なまたは上昇された効果を示すことが分かった。また、iNOS(誘導型酸化窒素合成剤) 量の減少(図24);細胞内PGE2(プロスタグランジンE2)量の減少(図25);細胞内COX−2タンパク質発現量の減少(図26);及びIκBのリン酸化抑制及びNF−κBの細胞質から細胞核への移動の減少(図27及び図28)を比較した時、野菊抽出物及びこの分画物が甘菊抽出物及びこの分画物に比べて少ない含量でもより効果的に示された。
【0034】
酸化窒素(NO)は、生理的状態で拡張剤として機能する。しかし、大食細胞が炎症サイトカインによって刺激された場合、iNOSによって生成された酸化窒素は、病理的状態で炎症反応を起こして、COX−2(シクロシクロオキシゲナーゼ−2)の活性を増強させ、アラキドン酸カスケードを介した炎症反応を増幅させる。
【0035】
IFN−γは、タイプIIインターフェロンとも呼ばれ、CD4T細胞またはCD8T細胞によって作られて免疫反応を調節し、従って、免疫インターフェロンとも呼ぶ。IFN−γはT細胞、B細胞、NK細胞、及び内皮細胞に作用してそれらを活性化させ、大食細胞活性因子として作用して1種と2種MHC発現を増加させる。IFN−γは、また他のインターフェロンのようにウイルスの増殖を抑制することができる。
【0036】
IL−4は、約20kDaサイズを持つタンパク質であり、CD4T細胞及び活性化された肥満細胞によって作られ、B細胞成長因子として作用する。IL−4は、またB細胞で兔疫グロブリンのクラススイチングに関与する分化因子として作用することができ、CD4T細胞、肥満細胞、及び大食細胞をまた活性化することができる。
【0037】
前記の結果などによって、本発明による野菊抽出物またはこの分画物は、炎症疾患、特にアレルギー性炎症疾患に対する優秀な予防及び治療活性を持つ。
【0038】
前記野菊抽出物及びこの分画物は、人工的に合成された化合物ではなく、天然抽出物から獲得した成分を基盤にする。従って、これらは安全で、非毒性であり、副作用がなくて長期間の服用が可能である。また、前記組成物は、人間だけでなく、炎症疾患を持った猿、犬、猫、ウサギ、モルモット、ラット、マウス、牛、羊、豚、ヤギを含む、炎症性疾患を持った動物に使用されることもできる。
【0039】
従って、本発明は、野菊抽出物またはこの分画物を有効成分として含む炎症疾患予防及び治療用薬学組成物の製造に適用されることができ、この組成物を投与して炎症疾患を予防または治療することができる。
【0040】
本発明のまた他の態様として、本発明は、野菊抽出物またはこの分画物を有効成分として含む炎症疾患の予防または治療用薬学組成物、及びこの分画物を含む組成物を炎症疾患が発病したまたは発病する可能性がある患者に投与して炎症疾患を予防または治療する方法に関する。
【0041】
前記炎症疾患は、アレルギー性炎症疾患であることができ、前記アレルギー性炎症疾患には、慢性閉鎖性肺疾患(COPD)、喘息、リウマチ関節炎、アトピー皮膚炎、及び炎症性腸疾患が含まれることができる。しかし、炎症反応及びアレルギー反応によって誘導される疾病は制限なく含まれることができ、好ましくはアトピー皮膚炎である。
【0042】
本願における用語‘‘予防’’は、本発明による野菊抽出物またはこの分画物を含む組成物の投与で前記疾患の発病を抑制または遅延させるすべての行為を意味する。
【0043】
本願における用語‘‘治療’’は、本発明による野菊抽出物またはこの分画物を含む組成物の投与で前記疾患の症状が好転するとか良いに変更するすべての行為をいう。
【0044】
本発明の具体的な実験例(実施例2)によれば、本発明者らは野菊抽出物を処理した後の炎症疾患動物モデルで、1)紅斑、浮腫、血腫、掻痒、皮膚乾燥症、糜爛及び苔癬化の減少(図7及び図8);2)耳浮腫の減少(図10及び図11);3)掻く行動の減少(図9)及び4)線維芽細胞増殖、コラーゲン層異常増殖、及び潰瘍の抑制、肥満細胞の浸潤の減少、及び好中球とリンパ球の浸潤による炎症減少(図15)が示されることを確認し、これは炎症疾患、特に、アトピー皮膚炎に対する治療学的効果を示すものである。
【0045】
本発明による野菊抽出物またはこの分画物を含む炎症疾患予防及び治療用薬学組成物は、ラット、マウス、家畜、人間を含む哺乳動物に様々な経路で投与され得る。投与のすべての方式は予想されることができ、例えば、経口、直腸または静脈、筋肉、皮下、子宮内硬膜または脳血管内注射によって投与され得る。好ましくは、前記組成物は皮膚などに塗布することができ、経口投与が最も好ましい。
【0046】
本発明の炎症疾患予防及び治療用薬学組成物は、薬学的に有効な量で投与される。本願における用語‘‘薬学的に有効な量’’は、医学的治療に適用可能である合理的な受益/危険の比率で疾患を治療するに十分な量を意味する。本組成物の有効用量水準は、個体及び重症度、年齢、性別、感染されたウイルス種類、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路、排出比率、治療期間、同時使用される薬物、及びその他に医学分野によく知られた要因に応じて決定され得る。前記有効な量は、当業者に認識されたように、投与の経路、賦形剤の使用及び他の薬剤との同時使用に応じて異なることができる。
【0047】
本発明の炎症疾患予防及び治療用薬学的組成物は、これらの薬学的に許容される塩の形態、及びまた単独でまたは他の薬学的に活性化合物と組み合わせて使用され得る。
【0048】
本発明の炎症疾患予防及び治療用薬学組成物は、哺乳動物に投与された後、活性成分の迅速、持続または遅延された放出を提供するように当業界によく知られた方法を使用して薬学的剤形に製造され得る。剤形の製造において、活性成分を担体とともに混合または希釈するとか、容器形態の担体内に封入させることが好ましい。
【0049】
従って、本発明の炎症疾患予防及び治療用薬学組成物は、通常の方法によって散剤、 顆粒剤、 錠剤、 カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾルなどの経口型剤形、外用剤、坐剤及び滅菌注射溶液の形態に剤形化して使用され得る。組成物の製造に通常的に使用する適切な担体、賦形剤及び希釈剤をさらに含むことができる。
【0050】
例えば、本発明の薬学組成物に含まれることができる担体、賦形剤及び希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルジネート、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱油を持つことができる。剤形化する場合には、普通使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用して調製される。
【0051】
経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれる。このような固形製剤は、前記抽出物に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロース、ラクトース、ゼラチンなどを混ぜて調製される。また、賦形剤の以外にステアリン酸マグネシウム及びタルクのような潤滑剤も使用され得る。
【0052】
経口のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが含まれる。よく使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれ得る。
【0053】
非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、 凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどが含まれ得る。坐剤の基剤としては、ウィテップゾール、マクロゴ−ル、ツイン61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが使用され得る。
【0054】
また他の態様として、本発明は、野菊抽出物またはこの分画物を有効成分として含む炎症疾患改善用食品組成物を提供する。
【0055】
本発明の食品組成物は、丸剤、散剤、顆粒剤、注射剤、錠剤、カプセル剤または液剤の形態で製造されることができ、様々な食品など、例えば、飲み物、ガム、茶、ビタミン複合剤、健康補助食品類などに添加され得る。
【0056】
本発明の食品組成物で含むことができる必須成分として、前記野菊抽出物またはこの分画物を含む組成物の他には、他の成分には特別な制限がなく、通常の食品のように様々な生薬抽出物、食品補助添加剤または天然炭水化物などを追加成分として含むことができる。
【0057】
前記食品組成物は、野菊、タンポポ、黄伯、石菖蒲、ヒイラギモチ、及びソメイヨシノからなる群から選択された1種以上の生薬抽出物を更に含むことができる。
【0058】
また、食品補助添加剤を更に含むことができるが、食品補助添加剤は、当業界に通常的に知られた、香味剤、風味剤、着色剤、充填剤、安定化剤などを含む。
【0059】
前記天然炭水化物の例は、モノサッカライド(例えば、ブドウ糖、果糖など)、ジサッカライド(例えば、マルトス、スクロースなど)、及びポリサッカライド (例えば、デキストリン、シクロデキストリンなど)のような通常的な糖、及びキシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどを含む。また、香味制として、タウマチン、ステビア抽出物(例えば、レバウジオシドA、グリチルリチンなど)のような天然香味剤及びサッカリン、アスパルテームなどのような合成香味剤を適切に使用することができる。
【0060】
さらに、本発明の食品組成物は、様々な営養剤、ビタミン、鉱物(電解質)、風味剤(合成風味剤及び天然風味剤などのような)、着色剤、増進剤(チーズ、チョコレートなど)、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などを含むことができる。また、本発明の食品組成物は、天然フルーツジュース、フルーツジュース飲料、及び野菜飲料の製造のために使用され得る果肉を含むことができる。前記のこのような成分のそれぞれは、独立、またはこれらのどのような組み合わせでも使用することができる。
【0061】
さらに、適用可能な飲食物には、いかなる制限もなく、例えば、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンデー類、スナック類、クッキー類、ピザ、ラーメン、ガム類、アイスクリーム類、スープ、飲料、茶、機能水、ドリンク剤、アルコール飲物、及びビタミン複合剤である。
【0062】
また他の態様として、本発明は、野菊抽出物またはこの分画物を有効成分として含む組成物を含む化粧品組成物に関する。
【0063】
本発明による化粧品組成物には、pH調節物質、香料、乳化剤、及び防腐剤などを通常的な方法を使用して付加し、化粧水、ゲル、水溶性パウダー、脂溶性パウダー、水溶性リキッド、クリームまたはエッセンスなどで剤形化され得る。
【0064】
また他の態様として、本発明は、野菊抽出物またはこの分画物を有効成分として含む組成物を含む医薬外品組成物に関する。すなわち、本発明の組成物は、炎症疾患の予防または改善を目的に医薬外品組成物に添加され得る。
【0065】
本発明の野菊抽出物またはこの分画物を医薬外品添加物として使用する場合、前記抽出物またはこの分画物をそのまま添加するとか、または通常的な方法によって他の医薬外品または医薬外品成分とともに使用され得る。有効成分の混合量は、使用目的(予防、健康または治療的処理)によって適合に決定され得る。好ましくは、前記医薬外品組成物は、消毒清潔剤、シャワーフォーム、口腔洗浄薬、ウェットティッシュ、洗剤石鹸、ハンドウォッシュ、加湿器充填剤、マスク、軟膏剤、コーティング剤またはフィルター充填剤の製造に使用され得る。本発明によるフィルター充填剤を含むフィルターは、様々な領域に使用されることができ、当業界に公知されたすべてのフィルタリング機器に使用され得る。
【0066】
従って、また他の態様として、本発明は、前記フィルター充填剤を含む炎症疾患の予防または改善用軟水器を提供する。
【0067】
本願における用語‘‘軟水器’’は、硬水に入っているカルシウムとマグネシウムのような陽イオンを除去して軟水を作る器具であって、硬水軟化機ともいうことで、軟水製造機能の他に空気清浄機能、浄水機能などを含むことができる。本軟水器は、この分画物を含む組成物を有効成分として含むフィルター充填剤を含むので、炎症疾患、特に、アトピー皮膚炎予防及び改善に効果的である。本軟水器は、その目的に応じて野菊抽出物またはこの分画物外に漢方薬を含んだ様々な成分を含むことができる。
【0068】
〔発明の実施のための形態〕
以下、本発明を実施例によってより詳細に説明する。ただし、下記実施例は、本発明を例示するというだけ、本発明の内容が下記実施例によって限定されるのではない。
【0069】
実施例1.サンプル抽出及びスクリーニング
(1)候補薬剤サンプル抽出
野菊、タンポポ、黄伯、石菖蒲、ヒイラギモチ、及びソメイヨシノをそれぞれ100gを100%メタノール(MeOH)を溶媒として110℃抽出器で3回繰り返し抽出し、ロータリー蒸発器を用いて減圧濃縮し、その後、凍結乾燥してそれぞれの100%メタノール抽出物を取得した。
【0070】
(2)NC/Ngaマウスモデル導入
NC/Ngaマウスは、JAK3キナーゼの過リン酸化によるIgEの生成の亢進によってもたらされた、自発的アトピー皮膚炎マウスモデルとしてよく知られている。最近、IgEとTh2サイトカイン生成に必須なSTAT6ノックアウトNC/Ngaマウスを作って試した結果、皮膚炎も自発的に誘導されたところ、これは皮膚炎が他の予想外のメカニズムによって誘導されることを示唆する(J.I.1999,162:1056−63)。このような長所にもかかわらず、自発的な皮膚炎誘導比率が低く、誘導された皮膚炎の深刻性に大きい差がある。事実上、前記マウスモデルは、評価のための信頼できるモデルではない。従って、日本ではハプテン、ピクリルクロライドを用いて皮膚炎を人為的に誘導してこのような問題を解決している。しかし、ピクリルクロライドの場合、韓国内搬入が禁止されているので、本願では、構造的にピクリルクロライドと類似する、DNCB(1−クロロ2、4−ジニトロベンゼン、シグマ23732−9)を用いて試験を進行して類似の結果を得ることができた。
【0071】
このモデルによれば、アトピー皮膚炎の主な症状など(掻痒、IgE生成増加、皮膚炎症)がすべて観察され、さらには、アトピー皮膚炎の治療剤としてよく知られている、局所ステロイドまたは経口用シクロスポリンによって症状が完全に癒された。従って、アトピー皮膚炎治療剤の効能を評価するための生体内モデルとしてNC/Ngaマウスモデルを導入した。
【0072】
(3)NC/Ngaマウスを用いたスクリーニング方法
自発的アトピー皮膚炎マウスモデルとして知られたNC/Ngaマウスを用いてアトピー皮膚炎を誘導し、その後、次のような方法を行って最も有用な薬剤を選定した。薬物選定は、次の実験群を用いて行った:DNCB溶液を処理しないアトピー皮膚炎が誘導されない正常群、DNCB溶液を処理してアトピー皮膚炎を誘導させた対照群、野菊抽出物を処理した経口投与群(100mg/kg、400mg/kg)、及び野菊抽出物(200μl;1%希釈、2%希釈)を処理した皮膚塗布群。
【0073】
A.臨床評価
臨床評価は、DNCB(シグマ23732−9)処理後、及び治療薬物(野菊、ヒイラギモチ、黄伯、タンポポ、石菖蒲、及びソメイヨシノの各100mg/kg、400mg/kg)の処理後、それぞれ2回実施した。アトピー皮膚炎の臨床評価は、実験有経験者2人以上がそれぞれ実施し、協議して決定した。特に、薬物処置が終わった後には写真を撮って保管した。目視評価結果は、次の5つの項目をそれぞれ評価したスコアの総合として示した。評価項目は、紅斑、掻痒と皮膚乾燥症、浮腫と血腫、糜爛、そして、苔癬化に分け、このそれぞれの項目を次のように採点した:無し(0)、僅か(1)、重症度(2)、及び激しい(3):従って、スコアは、最小0点から最高15点範囲であった。薬物処理の前と後のスコアを比較して減少した比率を決定し、運搬体を処理した群の減少比率と比較して有意性を検証した。
【0074】
B.掻く行動評価
薬物投与後、即時、掻痒症を意味する掻く行動を30分間観察した。後肢で掻く行動は、掻く行動1回として記録し、1秒以内に急速で頻繁に掻く行動も掻く行動1回として記録した。
【0075】
C.血清IgE濃度
血清IgE濃度は、DNCB(シグマ23732−9)を処理して皮膚炎症を誘導した後、候補者治療薬物(野菊、ヒイラギモチ、黄伯、タンポポ、石菖蒲、及びソメイヨシノの各100mg/kg及び400mg/kg)を処理した後、ELISAを用いて決定した。薬物処理の前及び後の血清IgE濃度を比較して減少した比率を求めた後、運搬体を処理した群の減少比率と比較して有意性を検証した。
【0076】
A.薬物処理群:[処理前IgE(薬物)−処理後IgE(薬物)]/処理前IgE(薬物)
B.運搬体処理群:[処理前IgE(運搬体)−処理後IgE(運搬体)]/処理前IgE(運搬体)。
【0077】
(4)結果
A.評価結果
臨床評価結果、野菊は、他の候補者薬物に比べて低いスコアを記録し、そのスコアは正常群に近接した。さらに、表1は、アトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの臨床評価を示したものである(図5)。
【0078】
【表1】
【0079】
B.掻く行動評価結果
表2は、アトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの掻く行動の変動値を示したものである。掻痒症を意味する掻く行動を示すのか調査した結果、それぞれ野菊100(mg/kg)及び野菊400(mg/kg)を処理した時、30.4±1.1(点)、21.8±2.8(点)を記録した。この結果は、他の薬物のスコアと比較する際に低い(図4)。
【0080】
【表2】
【0081】
C.血清IgE濃度測定結果
血清IgE濃度で、他の候補者薬物と比較する時、野菊が低いスコアを記録した。野菊100(mg/kg)及び野菊400(mg/kg)をそれぞれ処理した時、63.46±16.92(ng/ml)、46.99±8.88(ng/ml)を記録した。表3は、アトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの血清中のIgE濃度変化を示したものである(図6)。
【0082】
【表3】
【0083】
実施例2.アトピー皮膚炎に対する実験:NC/Ngaマウス実験
2−1.実験方法
(1)NC/Ngaマウスモデル導入
NC/Ngaマウスをアトピー皮膚炎の主な症状など(掻痒、IgE増加など)に対する野菊抽出物及びこの分画物の効果を試すために使用した。
【0084】
(2)野菊の抽出及び分画
野菊100gを100%メタノール(MeOH)を溶媒として110℃抽出器で3回繰り返し抽出し、ロータリー蒸発器を用いて減圧濃縮した後、凍結乾燥してそれぞれの100%メタノール抽出物を取得した。前記で取得した野菊の100%メタノール抽出物のうち、32.3gを熱水に溶かした後、クロロホルムと酢酸エチルを用いて分画した。その後、各分画物を濃縮して水分画物4.3g、クロロホルム分画物2.7g、及び酢酸エチル分画物0.56gをそれぞれ取得した(図1)。
【0085】
(3)試薬及び器機
1)試薬
−DNCB(Sigma 23732-9)
−オリーブオイル(Shinyo Chemical 912193)
−NC/Ngaマウス(Central Lab.animal Inc., 韓国)
−マウスIgEマウス用ELISAキット(SHIBAYAGI Co., Ltd,日本)
−IL−4(R&D systems,Quantikine Immunoassay Kit,MN.米国)
−IFN−γ(R&D systems,Quantikine Immunoassay Kit,MN.米国)
−退行性染色(Harris’hematoxylin,MUTO,日本)
−エオシン(MUTO,日本)
−カナダバルサム(JUNSEI,日本)。
【0086】
2)器機
−ELISAプレートリーダー:Versamax(Molecular Devices Co., 米国)
−プレートシェーカ:REO ROTOR(Hoefer Pharmacia Biotech Inc.)
−マイクロメータ(IP65 coolant proof,#293-240,mitutoyo,日本)
−マイクロトーム(HM325)
−クリッパ(JC-4005,JOAS Elec.CO., 韓国)。
【0087】
(4)皮膚炎誘導及びサンプル処理
1)実験動物
5週齢のNC/Ngaマウスを中央実験動物(株)から供給されて実験動物として使用し、飼育場で1週間適応させた後、体重を測定(22±3g)した。1群当り6〜8匹を実験に使用した。実験期間中、固形飼料と水は自由に攝取させ、飼育室の温度(21±1℃)、湿度(50±5%)は、一定に維持した。実験開始の一日前、実験動物の耳の下端部分から尾の上端部分まで背中部位全体をマウス除毛用クリッパー(JC-4005,JOAS Elec.CO., 韓国)できれいに毛を除去した。すべての動物実験手続きは、韓国の慶煕大学校実験動物倫理委員会の事前審議を受けて動物実験倫理委員会の規定によって行われた。
【0088】
2)アトピー皮膚炎の誘導及びサンプル処理
アトピー皮膚炎誘導のためにNc/Ngaマウスの背中部位を除毛した後、24時間目に、免疫化のために0.5%DNCB(シグマ23732−9)溶液(アセトン:オリーブオイル=3:1)200μlを2週間毎日背中部位に塗布した。サンプル投与開始後3週目からは、1週間に3回ずつ0.5%DNCB溶液200μlを除毛された背中部位に塗布してアトピー皮膚炎を誘導した。各マウスの除毛された背中部位は、2週間DNCB処理してアトピーを誘導した後、4週間毎日サンプルを投与した(経口と皮膚塗布)。経口では100mg/kg及び400mg/kgをそれぞれ投与し、外用では1%及び2%に希釈して200μlずつをそれぞれ塗布した。DNCB処理されたNC/Ngaマウスを用いたアトピー皮膚炎の誘導及びサンプル処理実験の過程は、図2に示した。
【0089】
(5)評価方法
A.臨床評価
NC/Ngaマウスのアトピー皮膚炎は、一般的に使用される臨床的目視評価法を用いた。臨床評価は、DNCB処理直前、処理中間、薬物処理直前、薬物処理中間と薬物処理が終わる時にそれぞれ実施した。アトピー皮膚炎の臨床評価は、実験有経験者2人以上がそれぞれ実施し、協議して決定した。特に、薬物処理が終了した後には写真を撮って保管した。目視評価結果は、次の5つの項目をそれぞれ評価したスコアの総合として示した。評価項目は、紅斑、掻痒と皮膚乾燥症、浮腫と血腫、糜爛、そして、苔癬化を含み、これはそれぞれ次のように記録される:無し(0)、僅か(1)、重症度(2)、及び激しい(3)。従って、前記スコアは、最小0点から最高15点の間の範囲である。アトピー皮膚炎のスコアリングは、実験有経験者2人以上がそれぞれ実施し、協議して決定した。特に、薬物処理が終了した後には写真を撮って保管した。
【0090】
B.掻く行動評価
薬物投与直後、掻痒症を意味する掻く行動評価を30分間観察した。後肢で掻く行動は、掻く行動1回として記録し、また1秒以内に急速で頻繁に掻く行動も掻く行動1回として記録した。
【0091】
C.耳の厚さ測定
右耳の中央の厚さをマイクロメーター(IP65 coolant proof,#293-240,mitutoyo,日本)を用いて測定した。
【0092】
D.血清IgE、IFN−γ、及びIL−4濃度の測定
実験終了日に、マウスの心臓から採血した後、5、000rpm、4℃で3分間遠心分離して血清を分離した。実験に使用する前まで−70℃冷凍庫で保管し、使用する前に溶かして実験に使用した。Nc/Ngaマウスの血清IgE、IL−4、及びIFN−γ濃度は、それぞれマウス用ELISAキット(SHIBAYAGI Co., Ltd,日本)、IL−4(R&D systems,Quantikine Immunoassay Kit,MN.米国)、IFN−γ(R&D systems,Quantikine Immunoassay Kit,MN.米国)を使用して測定した。
【0093】
IgE濃度は、IgEマウス用ELISAキット(SHIBAYAGI Co., Ltd,日本)の手続きによって測定した。すべての試薬は、室温で準備し、その後、直ちに使用した。
【0094】
プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄した後、IgE標準溶液またはサンプル溶液(サンプル5μl+バッファ45μl)を50μlずつ各ウェルに分注し、マイクロプレートシェーカで軽く混合した。プレートを2時間室温(20−25℃)で培養させて反応させた後、緩衝溶液でプレートを3回洗浄した。ビオチン−コンジュゲートされた抗−IgE抗体50μlを各ウェルに分注し、マイクロプレートシェーカで軽く混合した。プレートを2時間室温で培養させて反応させた後、洗浄緩衝液でプレートを3回洗浄した。各ウェルにHRP−アビジン溶液50μlを入れ、マイクロプレートシェーカで軽く混合した。前記プレートを1時間室温で培養させて反応させた。その後にクロマジェニック基質溶液50μlを入れ、マイクロプレートシェーカで軽く混合した。プレートを20分間室温で培養させて反応させた。その後、各ウェルに反応中断剤50μlを入れて追加の色発現が止めるようによく混合した後、30分内に450nmで吸光度を測定した。
【0095】
IL−4とIFN−γ濃度は、IL−4(R&D systems,Quantikine Immunoassay Kit,MN.米国)とIFN−γ(R&D systems,Quantikine Immunoassay Kit,MN.米国)の方法に従って測定した。
【0096】
指示に従って、すべての試薬とサンプルを準備し、すべての試薬溶液は、室温で維持させ、2回繰り返し実験した。各ウェルにAssay Diluent RD1−18(IL−4)またはRD1−21(IFN−γ)50μlを入れた。正常群、対照群及びサンプルを各ウェル当り50μlずつ入れ、1分間負域をゆっくり軽くたたいて混合した。プレートを覆って、2時間室温で培養した。各ウェルの溶液をアスピレータで完壁に除去して洗浄した。この手続きを5回繰り返した。IL−4(マウスIL−4コンジュゲート)またはIFN−γ(IFN−γコンジュゲート)100μlを各ウェルに入れた。プレートを新しい接着カバーで覆って、2時間室温で培養した後、再び5回繰り返して洗浄した。 各ウェルに基質溶液100μlを入れ、遮光状態で30分間室温で培養した。終結溶液100μlを各ウェルに入れ、プレートを軽くたたいて完全に混合した。30分内に、各ウェルの吸光度は、450nmで測定した値を540nm(または570nm)で測定した値で差し引いて補正した。
【0097】
E.組織染色及び評価
実験終了後、マウスを犠牲させて背中と耳の組織を取り外して10%中性ホルマリンで固定させた。その組織をパラフィンで包埋してパラフィン包埋ブロックを製作した。パラフィンブロックは、マイクロトーム(Microm−HM325)を用いてトリミングの薄切厚さを10μm程度に整えた後、切断時3〜4μmの厚さで組織切片を得る。得られた組織切片は、キシレンで脱パラフィン化させ、浸水段階[100%アルコール(3分)→90%アルコール(3分)→80%アルコール(3分)→70%アルコール(3分)→D.W(3分)]を経って、その後、染色[ハリスヘマトキシリン(4分)→洗浄→1%HClアルコール(1回)→洗浄(10分)→エオシン(10−20秒)]させた後、脱水段階[70%アルコール(ディッピング)→80%アルコール(ディッピング)→95%アルコール(ディッピング)→100%アルコール(ディッピング)→100%アルコール(ディッピング)]と脱染色段階[キシレン(3分)→キシレン(3分)]を経って続いて密封した。
【0098】
また、炎症の程度を評価するために、アトピー皮膚炎誘導皮膚の表皮厚さ、肥満細胞浸潤、好酸球浸潤、好中球とリンパ球浸潤、及び線維芽細胞増殖及びコラーゲン層異常増殖で組織学実験を行った。組織中の肥満細胞は、アルシアンブルーで染色して観察した。
【0099】
F.統計分析
測定結果は、実験前後の平均を比較する時、対応t検定(paired t-test)で検定した。統計的有意性は、P<0.05、すなわち、5%未満にした。
【0100】
2−2.実験結果
A.臨床評価結果
正常群、DNCB誘導されたアトピー皮膚炎対照群、経口投与群(野菊抽出物100mg/mL及び400mg/mL)、皮膚塗布群(1%及び2%の野菊抽出物200μl)の総6群でマウスの背中皮膚と耳で生じされたアトピー症状を1週間間隔で総5回繰り返し観察した。臨床評価では、図3を参考インデックスにした。
【0101】
正常群の皮膚はきれいだったし、対照群では紅斑、浮腫、角化、外被形成、及び苔癬化のような明白なアトピー症状が示された。サンプル経口投与群と皮膚塗布群で、いずれも対照群に比べてアトピー症状が著しく抑制されることを確認することができたが、経口投与群が皮膚塗布群より目視で観察する時、速く皮膚炎改善症状を示すことを観察することができた(図7)。
【0102】
アトピー皮膚炎誘導1週間目の臨床評価スコアは、対照群で6.2±O.8、経口投与群(野菊100mg/kg及び400mg/kg)でそれぞれ5.5±2.1、5.5±1.1であり、皮膚塗布群(野菊1%及び2%)でそれぞれ5.2±1.0、5.5±1.4で示され、アトピー皮膚炎がすべての群で誘導されることを示す。
【0103】
アトピー皮膚炎誘導後2週目の臨床評価スコアは、対照群で11.3±1.5、経口投与群(野菊100mg/kg及び400mg/kg)でそれぞれ10.0±3.3、10.7±2.1で示され、皮膚塗布群(野菊1%及び2%)でそれぞれ10.3±2.0、10.3±2.8で示され、まだ野菊抽出物の効果が発揮されなかったことを確認することができた。
【0104】
アトピー皮膚炎誘導後4週目、すなわち、薬物を2週間投与した後の臨床評価スコアは、対照群はで7.3±0.8であり、経口投与群(野菊100mg/kg及び400mg/kg)でそれぞれ4.7±1.3、5.2±1.3で示され、野菊抽出物の効果が発揮され始めて、アトピー皮膚炎が改善されていることが有意に認められた。臨床評価スコアは、皮膚塗布群(野菊1%及び2%)でそれぞれ7.5±1.5及び8.3±1.9でアトピー皮膚炎が改善されなかったことを示した。
【0105】
アトピー皮膚炎誘導後6週目、すなわち、薬物を4週間投与した後の臨床評価スコアは、対照群で7.3±0.8であり、経口投与群(野菊100mg/kg及び400mg/kg)でそれぞれ3.4±2.1及び3.3±0.5、皮膚塗布群(野菊1%及び2%)でそれぞれ4.5±2.1及び6.3±1.0でそれぞれ示され、アトピー皮膚炎が野菊抽出物によって改善されたことを示した。
【0106】
本実験結果を介して、正常群の皮膚はきれいだったし、アトピー誘導対照群では紅斑、浮腫、角化、外被形成、及び苔癬化のような様々なアトピー症状が明らかに示された。サンプル経口投与群とサンプル皮膚塗布群で、いずれもアトピー皮膚炎誘導された対照群に比べてアトピー症状が著しく抑制されることを確認した。しかし、アトピー皮膚炎誘導後の4週目に、アトピー皮膚炎の改善は経口投与群で観察され、アトピー皮膚炎誘導後の6週目に、アトピー皮膚炎の改善は皮膚塗布群で観察され、これは皮膚塗布群より経口投与群でアトピー皮膚炎がより速く緩和されることを示す(図8)。言い換えれば、経口投与群が皮膚塗布群よりアトピー皮膚炎をより効果的に改善することを示した。
【0107】
下記の表で、NORは正常群、CONは対照群、CBP1は経口投与群(野菊抽出物100mg/kg)、CBP4は経口投与群(野菊抽出物400mg/kg)、CBS1は皮膚塗布群(野菊の1%抽出物200μl)、CBS2は皮膚塗布群(野菊の2%抽出物200μl)を示す。表4は、アトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの臨床評価結果を示したものである。
【0108】
【表4】
【0109】
すべてのデータは、平均±SD(N=5)で表された。
##:p<0.01、正常群と比較
*:p<0.05、**:p<0.01、対照群と比較。
【0110】
B.掻く行動
マウスの掻く行動は、対照群では30分当り63.0±2.9回、経口投与群(野菊100mg/kgと400mg/kg)でそれぞれ30分当り30.4±1.4回と21.8±2.9回、皮膚塗布群(野菊1%と2%)でそれぞれ45.4±2.7回と45.0±3.4回の掻く行動が観察された。
【0111】
すなわち、すべての処理群で掻く行動の減少が観察され、掻く行動は、経口投与群と皮膚塗布群で約51〜65%と28〜29%程度に抑制された(図9)。表5は、アトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの掻く行動測定結果を示したものである。
【0112】
【表5】
【0113】
すべてのデータは、平均±SD(N=5)で表された。
##:p<0.01、正常群と比較
*:p<0.05、**:p<0.01、対照群と比較。
【0114】
C.アトピー皮膚炎誘導された組織表皮厚さ測定結果−耳浮腫に対する効果
浮腫を測定するために、マウスの耳厚さを実験開始から終了まで毎週測定した。正常群では耳の厚さは変化がなかったが、アトピー皮膚炎誘発対照群では耳の厚さが著しく増加した。耳浮腫の抑制は、野菊の経口投与群と皮膚塗布群で観察された。特に、耳浮腫の著しい抑制は経口投与群で観察された。表6(上端及び下端)は、アトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの耳厚さを測定した結果を示したものであるm(図10と11)。
【0115】
【表6】
【0116】
すべてのデータは、平均±SD(N=5)で表された。
##:p<0.01、正常群と比較
*:p<0.05、**:p<0.01、対照群と比較。
【0117】
D.血清IgE、IFN−γ及びIL−4測定結果
表7は、DNCB感作と攻撃によってアトピー皮膚炎誘導されたマウスで血清IgE、IFN−γ及びIL−4の濃度を測定するためのELISAの結果を示す。
【0118】
<1>血清IgE濃度測定
経口投与実験において、対照群で106.8±13.4ng/mlであり、経口投与群(野菊100mg/kg及び400mg/kg)ではそれぞれ63.5±16.9ng/mlと47.6±8.9ng/mlであって、これは有意味した減少を示す(P≦0.001)(図12a)。皮膚塗布実験で、血清IgEの濃度は対照群で61.6±9.3ng/mlであり、皮膚塗布群(野菊1%と2%)ではそれぞれ37.2±6.6ng/mlと46.7±7.1ng/mlであり、これは濃度の減少を示す(図12b)。
【0119】
<2>血清IFN−γ濃度測定
血清IFN−γ濃度は対照群で46.7±21.5pg/mlであり、経口投与群(野菊100mg/kg及び400mg/kg)ではそれぞれ3.3±0.4pg/mlと3.5±0.5ng/ml、皮膚塗布群(野菊1%と2%)ではそれぞれ3.5±0.4pg/mlと3.6±0.4pg/mlで、これは有意味した減少を示す(図13)。
【0120】
<3>血清IL−4濃度測定結果
血清中IL−4濃度は対照群で5.4±0.7pg/mlであり、経口投与群(野菊100mg/kg及び400mg/kg)ではそれぞれ1.8±1.0pg/mlと2.3±1.0pg/ml、皮膚塗布群(野菊1%と2%)では1.7±0.5pg/mlと1.8±1.1pg/mlで、これは有意味した減少を示す(図14)。表7は、血清IgE、IFN−γ、及びIL−4の濃度測定結果を示したものである。
【0121】
【表7】
【0122】
すべてのデータは、平均±SD(N=5)で表された。
##:p<0.01、正常群と比較
*:p<0.05、**:p<0.01、対照群と比較。
【0123】
E.組織の観察
実験に使用されたマウスは、実験終了後に犠牲させ、その後、耳組織を取り外して10%ホルマリン溶液で固定させた。その組織をパラフィン包埋し、3〜4μmの厚さで切断し、H&E(Hematoxylin & Eosin)方法で染色した。潰瘍、アトピー皮膚炎誘導された組織の表皮厚さ、肥満細胞浸潤、好酸球浸潤、好中球とリンパ球浸潤、及び線維芽細胞増殖とコラーゲン層異常増殖を調査した。
【0124】
正常群の耳組織写真で耳軟骨組織が均一に配列されており、皮下層、真皮、及び表皮のすべてが均一に配列されており、潰瘍、出血または炎症は観察されなかった(図15)。
【0125】
対照群の耳組織写真で、深刻な重症の潰瘍と出血が観察され、好中球浸潤による炎症が組織に散在されており、耳軟骨組織は好中球浸潤による炎症によって一部が破壊され、皮膚の中まで好中球浸潤による炎症が拡散していることも観察された。深刻な重症の線維芽細胞増殖とコラーゲン層異常増殖が観察され、バクテリア群集による化膿性炎症も観察された(図15)。
【0126】
皮膚塗布群の耳組織写真(野菊1%)で皮膚の中に好中球浸潤による軽微な出血及び軽微な炎症が観察され、コラーゲン層異常増殖も観察されたが、対照群に比べてはその症状が改善された(図15)。
【0127】
皮膚塗布群の耳組織写真(野菊2%)で軽微な好中球浸潤が観察され、一部の個体では軽微な潰瘍及び出血が観察されたが、対照群に比べてはその症状が改善された(図15)。
【0128】
経口投与群(野菊100mg/kg)の耳組織写真で、潰瘍及び出血が観察されなかったし、一部の個体でコラーゲン層の異常増殖による皮膚層の炎症及び線維芽細胞増殖が観察されたが、対照群に比べてはその症状が改善された(図15)。
【0129】
経口投与群(野菊400mg/kg)の耳組織写真で、潰瘍と出血、及びコラーゲン層の異常増殖による炎症及び線維芽細胞増殖が観察されなかったし、これはその症状が対照群に比べてかなり改善されたことを示した(図15)。
【0130】
結論的に、正常群では潰瘍が観察されなかったが、対照群では深刻な潰瘍が観察された。大部分の経口投与群(野菊100mg/kgと400mg/kg)及び皮膚塗布群(野菊1%と2%)では潰瘍が観察されなかった。
【0131】
好中球とリンパ球浸潤は正常群では観察されなかったし、対照群では激しい好中球とリンパ球浸潤が観察された。大部分の経口投与群(野菊100mg/kg及び400mg/kg)と皮膚塗布群(野菊1%及び2%)では軽微な好中球とリンパ球の浸潤が観察されたが、対照群に比べては改善された。
【0132】
線維芽細胞増殖とコラーゲン層異常増殖は正常群では観察されなかったし、対照群では深刻な重症の線維芽細胞増殖とコラーゲン層異常増殖が観察された。経口投与群(400mg/kg)と皮膚塗布群(2%野菊)では線維芽細胞増殖とコラーゲン層異常増殖が観察されなかったが、経口投与群(野菊100mg/kg)と皮膚塗布群(1%野菊)の一部の個体では様々な線維芽細胞増殖とコラーゲン層異常の段階が観察されたが、その症状は対照群に比べては改善された。
【0133】
また、400倍の比率で顕微鏡の一視野中に入って来た肥満細胞個数を確認した場合に、正常群では2.35個が観察され、アトピー皮膚炎誘導された群では7.65個が観察され、対照群で肥満細胞の数が増加したことを確認した。皮膚塗布群(野菊1%)では8.5個肥満細胞、皮膚塗布群(野菊2%)では8.85個肥満細胞、経口投与群(野菊100mg/kg)では7.15個肥満細胞、経口投与群(野菊400mg/kg)では6.265個肥満細胞が観察され、経口投与群(野菊400mg/kg)で肥満細胞の数が対照群より改善されたことを示した。
【0134】
実施例3.細胞性炎症因子の測定
3−1.実験方法
(1)実験方法
A.細胞の培養
本実験では、ミューリン大食細胞RAW264.7細胞株を韓国細胞株銀行から分譲受けて実験を行ったた。RAW264.7細胞をDMEM。RAW264.7細胞で育ち、2×105細胞/mlの濃度でT−フラスコに接種してじめじめするCO2培養器(5%CO2、95%空気)で37℃の条件で24時間培養した。その後、細胞をFBSが入っていない培地に希釈されたLPS(10μg/ml)で24時間処理し、FBSが入っていない培地に希釈された薬物(1mg/ml)で再び処理した。24時間後に、前記細胞を実験に使用した。
【0135】
B.亜硝酸塩の測定
誘導型酸化窒素合成剤(iNOS)の活性をNO(酸化窒素)の生成量を測定することによって決定した。RAW264.7細胞でNO生成を測定するために、硝酸塩/亜硝酸塩色度分析法キット(Nitrate/Nitrite Colorimetric assay kit)を細胞質NO2−を測定するのに使用した。実験方法は、グリース溶液を用いて製造者の指示(Cayman Chemical Company)に従って行った。
【0136】
C.iNOS(誘導型酸化窒素合成剤) 発現のウエスタンブロット分析
RAW264.7細胞でiNOS(誘導型酸化窒素合成剤) 発現に対する野菊抽出物及びこの分画物の効果を確認するためにウエスタンブロットを行った。
【0137】
野菊抽出物及びこの分画物を処理した細胞及び対照群を採取してPBSで2回洗浄した。Pro−prepTM(イントロン、韓国)試薬100μlを加えて−20℃で10分間放置した。その後、4℃で12、000rpmで10分遠心分離して上澄液を取得した。取得したタンパク質溶液をPro−measureTM(イントロン、韓国)試薬を使用して測定し、50μgのタンパク質を取ってサンプル緩衝液と混合した。混合物を95℃で5分間加熱した後、−20℃で保管した。準備したサンプルは、12%のSDS−アクリルアミドゲルに電気泳動させた後、PVDF膜でタンパク質を移動させた。移動が終わった膜を5%のスキムミルク溶液に室温で1時間ブロックさせた後、iNOS1次抗体を5%スキムミルク溶液に決められた比率で希釈して4℃で一晩置いた。翌日、TBSTで5分ずつ3回洗浄した後、抗−マウス2次抗体を1時間室温で培養させた。その後、TBSTで10分ずつ3回洗浄した後、ECLウエスタン基質(ピアス、#3216)溶液と1分間反応させた後、X−線フィルム(コダック)で現像した。
【0138】
D.COX−2抑制のウエスタンブロット分析
PGE2を生成するCOX−2の発現に対する野菊抽出物及びこの分画物の効果を調査するために、ウエスタンブロット分析を実施した。野菊抽出物を処理した細胞及び対照群を採取してPBSで2回洗浄した。Pro−prepTM試薬100μlを加えて−20℃で10分間放置した。その後、4℃で12、000rpmで10分遠心分離して上澄液を取得した。取得されたタンパク質溶液をPro−measureTM試薬を使用してタンパク質濃度を測定し、50μgのタンパク質を取ってサンプル緩衝液と混合した。混合物を95℃で5分間加熱した後、−20℃で保管した。完成されたサンプルは、12%のSDS−アクリルアミドゲルに電気泳動させた後、PVDF膜でタンパク質を移動させた。その後、移動が終わった膜を5%のスキムミルク溶液に室温で1時間ブロックさせ、COX−2の1次抗体を5%スキムミルク溶液に決められた比率で希釈して4℃で一晩中培養した。翌日、TBSTで5分ずつ3回洗浄し、抗−マウスとヤギ2次抗体を1時間室温で培養させた。その後、膜をTBSTで10分ずつ3回洗浄し、ECLウエスタン基質(ピアス、#3216)溶液と1分間反応させた後、X−線フィルム(コダック)に露出させて現像した。
【0139】
E.PGE2生成測定
野菊抽出物及びこの分画物によるCOX−2の活性を調査するために、細胞内PGE2の濃度を測定した。実験は、NO分析(亜硝酸塩分析法)と同様な方法で行い、細胞質溶液を取って遊離されたPGE2の量をPGE2 EIAシステム(アマシャム、RPN222)のプロトコルに従って測定した。
【0140】
F.IκBタンパク質のリン酸化及び分解(ウエスタンブロット)
LPS誘導されたIκBタンパク質のリン酸化及び分解に対する野菊抽出物及びこの分画物の効果を調査するためにウエスタンブロットを実施した。
【0141】
それぞれのサンプルを処理した細胞及び対照群を採取してPBSで2回洗浄した後、Pro−prepTM(イントロン)試薬100μlを加えて−20℃で10分間放置した後、4℃で12、000rpmで10分遠心分離して上澄液を取得した。取得された細胞内タンパク質溶液をPro−measureTM試薬(イントロン)を使用してタンパク質濃度を測定し、50μgのタンパク質を取ってサンプル緩衝液と混合した。混合物を95℃で5分間加熱した後、−20℃で保管した。準備したサンプルを12%のSDS−アクリルアミドゲルに電気泳動させた後、PVDF膜でタンパク質を移動させた。その後、移動が終わった膜を5%のスキムミルク溶液に室温で1時間ブロックさせ、IκBα一次抗体を5%スキムミルク溶液に決められた比率で希釈して4℃で一晩置いた。翌日、TBSTで5分ずつ3回洗浄した後、抗−マウス2次抗体を1時間室温で反応させた。その後、TBSTで10分ずつ3回洗浄した後、BCIP−NBT溶液(ナカライテスク、日本)で発色させた。
【0142】
G.細胞質及び核内のNF−κB発現
LPS誘導されたNF−κBタンパク質の核内移動に対する野菊抽出物及びこの分画物の効果を調査するために、細胞質及び核内NF−κBを分離(p50、p65)してウエスタンブロットを実施した。
【0143】
それぞれのサンプルを処理した実験群及び対照群を採取してPBSで2回洗浄した。0.4ml細胞溶解緩衝液(10mMのHEPES(pH7.9)、10mMのKCl、0.1mMのEDTA、0.1mMのEGTA、1mMのDTT、0.5mMのPMSF、2.0μg/μlアプロチニン)を添加し、それを15分間4℃で放置した。10%NP40の25μlを添加し、ボルテックスで10秒間激しく混合した。反応液を4℃で1、300rpmで2分間遠心分離して細胞質内タンパク質である上澄液を取得した。上層液を除去した沈殿物に50μlのアイス−コールド核抽出緩衝液(20mMのHEPES(pH7.9)、0.4MのNaCl、1mMのEDTA、1mMのEGTA、1mMのDTT、1mMのPMSF、2.0μg/μlのロイペプチン、そして、2.0μg/μlのアプロチニン含有)を添加し、間歇的に振ってながら15分間4℃で培養した。その後、サンプルを4℃で1、300rpmで2分間遠心分離して核蛋白質である上澄液を取得した。取得された細胞質及び核溶液をPro−measureTM試薬を使用してタンパク質濃度を測定し、30μgのタンパク質を取ってサンプル緩衝液と混合した。混合物を95℃で5分間加熱した後、−20℃で保管した。準備したサンプルを12%のSDS−アクリルアミドゲルに電気泳動させた後、PVDF膜でタンパク質を移動させた。移動が終わった後、膜を5%のスキムミルク溶液に室温で1時間ブロックさせた後、NF−κBp651次抗体を5%スキムミルク溶液に決められた比率で希釈して4℃で一晩置いた。翌日TBSTで5分ずつ3回洗浄した後、抗−マウス2次抗体を1時間室温で反応させた。その後、TBSTで10分ずつ3回洗浄した後、BCIP−NBT溶液(ナカライテスク、日本)で発色させた。
【0144】
(2)試薬及び器機
−DMEM培地(Gibco BRL Co., 米国)
−RPMI1604培地((Gibco BRL Co., 米国)
−牛胎児血清(Fetal bovine serum,FBS,Gibco BRL Co.,米国)
−ペニシリン(Gibco BRL Co., 米国)
−ストレプトマイシン(Gibco BRL Co., 米国)
−硝酸塩/亜硝酸塩色度分析法キット(Cayman Chemical Co.,米国)
−脂質多糖類(Sigma Co.,米国)
−Pro−prepTMタンパク質抽出溶液(Intron Biotechnology Co.,韓国)
−Pro−measureTMタンパク質測定溶液(Intron Biotechnology Co.,韓国)
−COX−2単一クローン抗体(Santa Cruz Biotechnology Co.,米国)
−アンチ−ヤギアンチボディー(Zymed Co.,米国)
−メタノール(MeOH)(徳山工業(株)、韓国)
−クロロホルム(徳山工業(株)、韓国)
−ELISAリーダー:バルサマックス(Molecular Devices Co.,米国)
−FT−03(Grass,米国)。
【0145】
3−2.実験結果
A.亜硝酸塩の測定結果
LPS誘導されたRAW264.7細胞で生成されたNOの量を測定するために、硝酸塩/亜硝酸塩色度分析法キットを用いて細胞質に存在する亜硝酸塩の形態として測定した。実験方法は、グリース試薬を使用して製造者(Cayman Chemical Company)の指示に従って行った。その結果、5μg/mlの濃度で亜硝酸塩の生成が対照群に比べてメタノール(MeOH)抽出物、クロロホルム(CHCl3)分画物、酢酸エチル(EtOAc)分画物でそれぞれ約38%、78%、30%減少した(図16)。表8は、RAW264.7細胞内LPS−誘導された亜硝酸塩生成に対する野菊抽出物及びこの分画物の効果を示したものである。
【0146】
【表8】
【0147】
B.iNOS(誘導型酸化窒素合成剤) 発現のウエスタンブロット分析
野菊がRAW264.7細胞でiNOS(誘導型酸化窒素合成剤) 発現に対する効果をウエスタンブロット分析を介して確認した。その結果、iNOS(誘導型酸化窒素合成剤)発現が対照群に比べてメタノール(MeOH)抽出物、クロロホルム(CHCl3)分画物、酢酸エチル(EtOAc)分画物でそれぞれ、約19%、約98%、約0.5%が減少した(図17)。表9は、RAW264.7細胞内LPS−誘導されたiNOS(誘導型酸化窒素合成剤) 発現に対する野菊抽出物及び分画物の効果を示したものである。
【0148】
【表9】
【0149】
C.PGE2測定結果
野菊抽出物によるCOX−2の活性を調査するために、細胞内PGE2量を測定した。その結果、各PGE2の生成が対照群に比べてメタノール抽出物、クロロホルム(CHCl3)分画物、酢酸エチル(EtOAC)分画物でそれぞれ約24%、88%、及び10%減少した(図18)。表10は、RAW264.7細胞内LPS−誘導されたPGE2発現に対する野菊抽出物及びこの分画物の効果を示したものである。
【0150】
【表10】
【0151】
D.COX−2発現のウエスタンブロット分析
RAW264.7細胞でCOX−2発現に対する野菊抽出物の効果をウエスタンブロットを介して確認した。その結果、COX−2の発現が対照群に比べてCHCl3分画物、EtOAc分画物ではそれぞれ約37%、23%が減少したが、MeOH抽出物では約26%増加した(図19)。表11は、RAW264.7細胞内COX−2発現に対する野菊抽出物及びこの分画物の効果を示したものである。
【0152】
【表11】
【0153】
E.IκB発現のウエスタンブロット分析
野菊抽出物によるP50/P65の活性を調査するために、P50/P65の抑制子であるIκBの量を測定した。その結果、対照群に比べて、MeOH抽出物、CHCl3分画物、及びEtOAc分画物でその量がそれぞれ約61%、65%、及び39.6%減少した(図20)。表12は、RAW264.7細胞内LPS−誘導されたIκB発現に対する野菊抽出物及びこの分画物の効果を示したものである。
【0154】
【表12】
【0155】
F.NF−κB(P50、P65)発現のウエスタンブロット分析
P50/P65活性に対する野菊抽出物の効果を確認した。その結果、P50発現が、対照群に比べて、MeOH抽出物、CHCl3分画物、及びEtOAc分画物でそれぞれ約28%、42%、及び36%減少し(図21)、P65発現が、対照群に比べて、MeOH抽出物、CHCl3分画物、及びEtOAc分画物でそれぞれ約18%、22%、及び20%減少した(図22)。表13は、RAW264.7細胞内LPS−誘導されたNF−Κb(P50、P65)発現に対する野菊抽出物及びこの分画物の効果を示したものである。
【0156】
【表13】
【0157】
3−3.比較例−甘菊
(1)サンプルの抽出
1)材料
本実験で使用された甘菊(学名:Chrysanthemi Indici Flos)は、小菊類の花で、雪菊、黄菊、または金菊と呼ばれ、韓国の慶尚北道永川で栽培され、2007年10月3日に採取した。サンプルで使用された薬剤の一部は韓国の慶煕大学校漢方医科大学本草学教室に保管した。
【0158】
2)サンプルの抽出と分画
<1>サンプルの抽出
甘菊100gを100%メタノール(MeOH)を溶媒として110℃抽出器で3時間ずつ3回繰り返し抽出し、回転濃縮蒸発機を用いて減圧濃縮して100%メタノール抽出物32.5gを取得した。
【0159】
<2>分画
上で取得した甘菊メタノール抽出物32.5gを蒸溜水に溶かした後、クロロホルム(CHCl3)を用いて分画し、水(H2O)分画物12.9gとクロロホルム分画物2.9gを取得した。
【0160】
3)試薬及び器機
−DMEM培地(Hyclone,米国)
−牛胎児血清(Fetal bovine serum,FBS,Gibco BRL Co.,米国)
−ペニシリン(Gibco BRL Co.,米国)
−ストレプトマイシン(Gibco BRL Co.,米国)
−細胞Titer96(Promega Co.,米国)
−硝酸塩/亜硝酸塩色度分析法キット(Cayman Chemical Co.,米国)
−脂質多糖類(Sigma Co.,米国)
−Pro−prepTMタンパク質抽出溶液(Intron Biotechnology Co.,韓国)
−Pro−measureTMタンパク質測定溶液(Intron Biotechnology Co.,韓国)
−COX−2単一クローン抗体(BD Bioscience Pharmingen Co.,米国)
−iNOS単一クローン抗体(BD Bioscience Pharmingen Co.,米国)
−アンチ−マウスアンチボディー(cell Signalling Co.,米国)
−プロスタグランジンE2biotrak ELISAシステム(BD Bioscience Pharmingen Co.,米国)
−ECLウエスタン基質(ピアス、#3216、Rockford、 米国。)
−RayBio mouse Inflammation Antibody Array I(AAM-INF-1-8,RayBiotech,Norcross,GA,米国)
−ELISAリーダー:バルサマックス(Molecular Devices Co.,米国)
−UV/VIS分光光度計(Spectrophotometer)(Gilson Co.,米国)。
【0161】
(2)実験方法
1)亜硝酸塩の測定
NO(酸化窒素)の生成を測定することによってiNOS(誘導型酸化窒素合成剤)の活性を測定した。RAW264.7細胞内でNO生成は、硝酸塩/亜硝酸塩色度分析法キットを用いて細胞質に存在する亜硝酸塩の形態として測定した。実験方法は、製造者(Cayman Chemical Company)の指示に従って測定した。すべての測定値は、平均±SD(標準偏差)で表された。有意性判定のためにスチューデントT−テストを使用した。すべての実験は3回繰り返し実験した。
【0162】
2)iNOS発現測定
NOの生成を誘導する酵素であるiNOS発現に対する甘菊抽出物及びこの分画物の効果を調査するためにウエスタンブロットを行った。
【0163】
甘菊抽出物を処理した細胞及び対照群を採取してPBSで2回洗浄した。Pro−prepTM(イントロン、韓国)試薬100μlを加えて−20℃で10分間放置した。4℃で12、000rpmで10分遠心分離して上澄液を取得した。取得されたタンパク質溶液をPro−measureTM(イントロン、韓国)試薬を使用して測定し、50μgのタンパク質を取ってサンプル緩衝液と混合した。95℃で5分間加熱した後、−20℃で保管した。準備したサンプルを12%のSDS−アクリルアミドゲルに電気泳動させた後、PVDF膜でタンパク質を移動させた。移動が終わった膜を5%のスキムミルク溶液に室温で1時間ブロックさせた後、iNOS一次抗体を5%スキムミルク溶液に決められた比率で希釈して4℃で一晩置いた。翌日、TBSTで5分ずつ3回洗浄した後、抗−マウス2次抗体を1時間室温で培養させた。再びTBSTで10分ずつ3回洗浄し、ECLウエスタン基質(ピアス、#3216)溶液と1分間反応させた後、X−線フィルム(コダック)で現像した。
【0164】
3)PGE2生成測定
甘菊抽出物及びこの分画物によるCOX−2の活性を調査するために、細胞内PGE2(プロスタグランジンE2)の量を測定した。実験は、NO分析と同様の方法で行い、細胞質溶液を取って放出されたPGE2の量をプロスタグランジンE2酵素免疫分析Biotrak(EIA)システム(アマシャム、RPN222)の実験法に従って測定した。
【0165】
4)COX−2発現測定
PGE2を生成するCOX−2の発現に対する甘菊抽出物及びこの分画物の効果を調査するためにウエスタンブロットを行った。
【0166】
それぞれのサンプルを処理した細胞及び対照群を採取してPBSで2回洗浄した。Pro−prepTM試薬100μlを加えて−20℃で10分間放置した後、4℃で12、000rpmで10分遠心分離して上澄液を取得した。取得されたタンパク質溶液をPro−measureTM試薬を使用してタンパク質濃度を測定し、50μgのタンパク質を取ってサンプル緩衝液と混合した。混合物を95℃で5分間加熱した後、−20℃で保管した。準備したサンプルを12%のSDS−アクリルアミドゲルに電気泳動させた後、PVDF膜でタンパク質を移動させた。移動が終わった膜を5%のスキムミルク溶液に室温で1時間ブロックさせた後、COX−2の1次抗体を5%スキムミルク溶液に決められた比率で希釈して4℃で一晩置いた。翌日、TBSTで5分ずつ3回洗浄した後、抗−マウス2次抗体を1時間室温で培養させた。その後、TBSTで10分ずつ3回洗浄し、ECLウエスタン基質(ピアス、#3216)溶液と1分間反応させた後、X−線フィルム(コダック)で現像した。
【0167】
5)IκBタンパク質のリン酸化及び分解測定
LPS誘導されたIκBリン酸化及び分解に対する甘菊抽出物及びこの分画物の効果を調査するために、ウエスタンブロットを行った。
【0168】
それぞれのサンプルを処理した細胞及び対照群を採取してPBSで2回洗浄した。Pro−prepTM試薬100μlを加えて−20℃で10分間放置した後、4℃で12、000rpmで10分遠心分離して上澄液を取得した。取得されたタンパク質溶液をPro−measureTM試薬(イントロン)を使用してタンパク質濃度を測定し、50μgのタンパク質を取ってサンプル緩衝液と混合した。混合物を95℃で5分間加熱した後、−20℃で保管した。準備したサンプルを12%のSDS−アクリルアミドゲルに電気泳動させた後、PVDF膜でタンパク質を移動させた。移動が終わった膜を5%のスキムミルク溶液に室温で1時間ブロックさせた後、IκBα一次抗体を5%スキムミルク溶液に決められた比率で希釈して4℃で一晩置いた。翌日、TBSTで5分ずつ3回洗浄した後、抗−マウス2次抗体を1時間室温で反応させた。その後、TBSTで10分ずつ3回洗浄し、BCIP−NBT溶液(ナカライテスク、日本)で発色させた。
【0169】
6)細胞質及び核内のNF−κB発現測定
LPS誘導されたNF−κB核内の移動に対する甘菊抽出物及びこの分画物の効果を調査するために、細胞質及び核タンパク質を分離してウエスタンブロット分析を行った。
【0170】
それぞれのサンプルを処理した実験群及び対照群を採取してPBSで2回洗浄した。0.4ml細胞溶解緩衝液(10mMのHEPES(pH7.9)、10mMのKCl、0.1mMのEDTA、0.1mMのEGTA、1mMのDTT、0.5mMのPMSF、2.0μg/μlのアプロチニン)を添加した。その後、15分間4℃で放置し、25μl10%NP40を添加した後、ボルテックスで10秒間激しく混合した。反応液を4℃で1、300rpmで2分間遠心分離して細胞質内タンパク質を含む上澄液を取得した。上層液を除去した沈殿物に50μlアイス−コールド核抽出物緩衝液(20mMのHEPES(pH7.9)、0.4MのNaCl、1mMのEDTA、1mMのEGTA、1mMのDTT、1mMのPMSF、2.0μg/μlのロイペプチン、そして、2.0μg/μlのアプロチニン含有)を添加して間歇的に振ってながら15分間4℃で培養した。その後、反応液を4℃で1、300rpmで2分間遠心分離して核蛋白質上澄液を取得した。取得された細胞質及び核溶液をPro−measureTM試薬を使用してタンパク質濃度を測定し、30μgのタンパク質を取ってサンプル緩衝液と混合した。混合物を95℃で5分間加熱した後、−20℃で保管した。準備したサンプルを12%のSDS−アクリルアミドゲルに電気泳動させた後、PVDF膜でタンパク質を移動させた。移動が終わった後、膜を5%のスキムミルク溶液に室温で1時間ブロックさせた後、NF−κBp651次抗体を5%スキムミルク溶液に決められた比率で希釈して4℃で一晩置いた。翌日、TBSTで5分ずつ3回洗浄した後、抗−マウス2次抗体を1時間室温で反応させた。その後、TBSTで10分ずつ3回洗浄し、BCIP−NBT溶液(ナカライテスク、日本)で発色させた。
【0171】
(3)実験結果
1)亜硝酸塩の測定結果
亜硝酸塩発現を測定した結果、それぞれの亜硝酸塩生成は、サンプル12.5μg/ml、25μg/ml、50μg/ml、及び100μg/mlの濃度で、対照群に比べて、メタノール抽出物ではそれぞれ97.9%、89.0%、37.3%、17.8%、クロロホルム分画物ではそれぞれ50.6%、19.2%、16.6%、7.5%で示された。すなわち、メタノール分画物50μg/ml以上とクロロホルム分画物25μg/ml以上の濃度で50%以上亜硝酸塩生成を抑制されたこととして示された。表14は、264.7細胞内LPS−誘導されたRAW亜硝酸塩生成に対する甘菊抽出物及びこの分画物の効果を示したものである(図23)。
【0172】
【表14】
【0173】
#:p<0.05、正常群と比較
*:p<0.05、**:p<0.01、対照群と比較
すべてのデータは、平均±SD(N=3)で表された。
【0174】
総合すれば、甘菊抽出物は、メタノール抽出物50μg/ml以上とクロロホルム分画物25μg/ml以上の濃度で50%以上亜硝酸塩生成を抑制するが、野菊抽出物は、(実施例3−2)メタノール抽出物10μg/ml以上、クロロホルム分画物1.25μg/ml以上及び酢酸エチル分画物10μg/ml以上の濃度で50%以上亜硝酸塩生成を抑制したところ、これは著しく低い濃度の野菊抽出物及びこの分画物が、甘菊抽出物及びこの分画物と比較して、同等またはそれ以上の亜硝酸塩生成抑制効果を示す。
【0175】
2)iNOS発現測定結果
甘菊抽出物及びこの分画物の細胞毒性結果及び亜硝酸塩生成結果を参考して25μg/ml濃度でiNOS発現を測定した。iNOS発現は、ウエスタンブロットを介してRAW264.7細胞で確認した。
【0176】
それぞれのiNOS発現量がメタノール抽出物及びクロロホルム抽出物で74.9%及び0.0%であり、25.1%及び100.0%の減少率を示し、水分画物では69.7%で示され、30.3%の減少率を示した(図24)。表15は、RAW264.7細胞内LPS−誘導されたiNOS発現量に対する甘菊抽出物及びこの分画物の効果を示したものである。
【0177】
【表15】
【0178】
3)PGE2測定結果
甘菊抽出物によるCOX−2の活性を調査するために、細胞内PGE2の量を測定した。
【0179】
PGE2の生成は、サンプル25μg/ml濃度でメタノール抽出物では3250.3±22.8pg/mlで、対照群の3425.1±239.6pg/mlに比べて5.1%の減少率を示した。PGE2の生成は、水分画物では3439.5±159.3pg/mlで示されたが、クロロホルム分画物では612.0±85.4pg/mlで82.1%の減少率を示した(図25)。表16は、RAW264.7細胞内LPS−誘導されたPGE2発現に対する甘菊抽出物及びこの分画物の効果を示したものである。
【0180】
【表16】
【0181】
4)COX−2測定結果
RAW264.7細胞内でCOX−2発現に対する甘菊抽出物の効果をウエスタンブロットを介して確認した。実験は、25μg/ml濃度の甘菊抽出物で行った。対照群と比較する時、それぞれのCOX−2発現はメタノール抽出物では127.0%で示されて27.0%の増加率を示し、クロロホルム分画物では94.7%で示されて5.3%の減少率を示し、水分画物では136.3%で示されて36.3%の増加率を示した(図26)。表17は、RAW264.7細胞内LPS−誘導されたCOX−2発現に対する甘菊抽出物及びこの分画物の効果を示したものである。
【0182】
【表17】
【0183】
5)IκBリン酸化及び分解測定の結果
RAW264.7大食細胞株でLPSに誘導されたIκBリン酸化及び分解に対する甘菊抽出物の抑制効果を確認した。実験は、25μg/ml濃度の甘菊抽出物で行った。それぞれのIκBの発現は、メタノール抽出物では12.6%で示されて87.4%の減少率を示し、クロロホルム分画物では49.6%で示されて50.4%の減少率を示し、水分画物では28.9%で示されて71.1%の減少率を示し、これはLPSに誘導されたIκBタンパク質のリン酸化及び分解に対する甘菊抽出物の抑制効果を示す(図27)。表18は、RAW264.7細胞内LPS−誘導されたIκBタンパク質のリン酸化及び分解に対する甘菊抽出物及びこの分画物の効果を示したものである。
【0184】
【表18】
【0185】
6)細胞質及び核内でのNF−κB発現
RAW264.7大食細胞株でLPSに誘導されたIκBから放出された後細胞質から核内へNF−κBタンパク質の移動に対する甘菊抽出物の抑制効果を確認した。
【0186】
25μg/ml濃度の甘菊抽出物で、それぞれのp65発現量は、対照群に比べてメタノール抽出物及びクロロホルム分画物で71.6%及び87.9%で示されてそれぞれ28.4%及び12.1%の減少率を示し、水分画物では86.1%で示されて13.9%の減少率を示した。このように、甘菊抽出物はNF−κBタンパク質の核内移動において抑制効果が示された。すなわち、NF−κB核移動に対する抑制効果を示した(図28)。表19は、RAW264.7細胞内LPS−誘導された細胞質及び核NF−κBタンパク質発現に対する甘菊抽出物及びこの分画物の効果を示したものである。
【0187】
【表19】
【0188】
実施例4.MTS分析の結果
野菊抽出物及びこの分画物の細胞毒性を確認するために、RAW264.7細胞でMTS/PMS(Cell Titer 96TM Aqueous Non-Radioactive Cell Proliferation Assay, Cat. G5421-Promega)を用いてMTS分析を行った。RAW264.7細胞を96ウェルプレートに5×104細胞/mLに接種し、24時間培養した。前記細胞を1.25μg/mL、2.50μg/mL、5.00μg/mLの濃度の野菊抽出物を含む、血清が添加されないDMEMで24時間培養した。24時間後、MTSとPMSを20:1の比率でよく混合し、3時間培養した。その後、ELISAリーダーer(Versamax, Molecular Devices Co., 米国) を用いて490nmで吸光度を測定した。
【0189】
図29に示されたように、メタノール抽出物、酢酸エチル分画物、及びクロロホルム分画物は、すべての濃度でRAW264.7の細胞生存力にほとんど影響を与えないことを確認することができ、これは野菊抽出物及びこの分画物が毒性がないことを示す(図29)。
【0190】
〔産業上利用の可能性〕
本発明による組成物は、抗炎症活性を持つので、アトピー皮膚炎のような炎症疾患の予防または治療の用途として使用されることができ、また、医薬外品、化粧品、食品、及び軟水器を含む、様々な分野に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0191】
【図1】図1は野菊抽出物とこの分画物取得過程を示したフローチャートである;
【図2】図2はDNCB処理されたNC/Ngaマウスの感作スケジュールを示したものである;
【図3】図3は薬物処理前及び薬物処理後のスコアによるNC/Nga マウスモデルの変化を示す写真である。
【図4】図4は野菊、タンポポ、黄伯、石菖蒲、ヒイラギモチ、及びソメイヨシノ抽出物処理後のアトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの掻く行動変動値を示すものである;
【図5】図5は野菊、タンポポ、黄伯、石菖蒲、ヒイラギモチ、及びソメイヨシノ抽出物処理後のアトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの臨床評価結果を示すものである;
【図6】図6は野菊、タンポポ、黄伯、石菖蒲、ヒイラギモチ、及びソメイヨシノ抽出物処理後のアトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの血清IgE濃度変化を示したものである;
【図7】図7は薬物処理前及び野菊抽出物処理後のスコアによるNC/Ngaマウスモデルのアトピー症状の変化過程を示す写真である;
【図8】図8は野菊抽出物処理後のアトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの臨床評価結果を示すものである;
【図9】図9は野菊抽出物処理後のアトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの掻く行動結果を示すものである;
【図10】図10は野菊抽出物処理後のアトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの耳厚さを長さ(mm)で測定した結果を示すものである;
【図11】図11は野菊抽出物処理後のアトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの耳厚さを体積(%)で測定した結果を示すものである;
【図12】図12は(a)野菊抽出物の経口投与後のアトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの血清中のIgE濃度を測定した結果を示すものである;(b)野菊抽出物の皮膚塗布後のアトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの血清中のIgE濃度を測定した結果を示すものである;
【図13】図13は野菊抽出物処理後のアトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの血清中のIFN−γ濃度を測定した結果を示すものである;
【図14】図14は野菊抽出物処理後のアトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの血清中のIL−4濃度を測定した結果を示すものである;
【図15】図15は野菊抽出物処理後のアトピー皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスモデルの耳組織断面を撮影したものである;
【図16】図16は野菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内酸化窒素生成を測定したものである;
【図17】図17は野菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内iNOS(誘導型酸化窒素合成剤) 生成を測定したものである;
【図18】図18は野菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内PGE2生成を測定したものである;
【図19】図19は野菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内COX−2生成を測定したものである;
【図20】図20は野菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内IκB生成を測定したものである;
【図21】図21は野菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内P50生成を測定したものである;
【図22】図22は野菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内P65生成を測定したものである;
【図23】図23は甘菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内酸化窒素生成を測定したものである;
【図24】図24は甘菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内iNOS(誘導型酸化窒素合成剤) 発生量を測定したものである;
【図25】図25は甘菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内PGE2生成を測定したものである;
【図26】図26は甘菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内COX−2生成を測定したものである;
【図27】図27は甘菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内IκB生成を測定したものある;
【図28】図28は甘菊抽出物の分画物処理後のLPS−誘導されたRAW264.7細胞内P65生成を測定したものである;
【図29】図29はMTS分析方法による野菊抽出物及びこの分画物の細胞毒性を測定したものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
野菊(Chrysanthemum boreale Makino)抽出物またはこの分画物を含む、抗炎症活性を持つ組成物。
【請求項2】
前記野菊抽出物は、野菊の水抽出物または野菊のメタノール抽出物である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記野菊の抽出物は、熱水抽出方法によって抽出されたものである請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記分画物は、クロロホルム、エタノール、酢酸エチルまたはこれらの混合溶媒のうち、いずれか一つの溶媒を用いた分画物である請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物は、下記特性中の一つ以上を持つ請求項1に記載の組成物:
1)紅斑、浮腫、血腫、掻痒、皮膚乾燥症、糜爛及び苔癬化の減少;
2)耳浮腫の減少;
3)掻く行動の減少;
4)血清免疫グロブリンE(IgE)、インターフェロン−γ(IFN−γ)またはインターロイキン4(IL−4)濃度の減少;
5)細胞内酸化窒素(NO)発現の減少;
6)細胞内酸化窒素合成剤(iNOS)の発現の減少;
7)細胞内プロスタグランジンE2(PGE2)生成の減少;
8)細胞内COX−2発現の減少;
9)IκBリン酸化抑制及びNF−κBの細胞質から核への移動減少;及び
10)線維芽細胞増殖、コラーゲン層異常増殖、及び潰瘍の抑制、肥満細胞の浸潤の減少、及び好中球及びリンパ球の浸潤による炎症の減少。
【請求項6】
請求項1〜5のうち、いずれか一項の組成物を有効成分として含む、炎症疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項7】
前記炎症疾患は、アレルギー性炎症疾患である請求項6に記載の炎症疾患の予防または治療用薬学組成物
【請求項8】
前記アレルギー性炎症疾患は、アトピー皮膚炎である請求項7に記載の炎症疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項9】
前記炎症疾患の予防または治療用薬学組成物は、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤、滅菌された水溶液、非水性溶剤、凍結乾燥製剤及び坐剤からなる群から選択されるいずれか一つの剤形を持つことを特徴とする請求項6に記載の炎症疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項10】
請求項1〜5のうち、いずれか一項の組成物を有効成分として含む、炎症疾患の予防または改善用化粧品組成物。
【請求項11】
請求項1〜5のうち、いずれか一項の組成物を有効成分として含む、炎症疾患の予防または改善用食品組成物。
【請求項12】
前記食品組成物は、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンディー類、 スナック類、クッキ類、ピザ、ラーメン、ガム類、アイスクリーム類、スープ、飲料水、茶、機能水、ドリンク剤、アルコール飲料及びビタミン複合剤からなる群から選択されるいずれか一つであることを特徴とする請求項11に記載の炎症疾患の予防または改善用食品組成物。
【請求項13】
請求項1〜5のうち、いずれか一項の組成物を有効成分として含む、炎症疾患の予防または改善用医薬外品組成物。
【請求項14】
前記医薬外品組成物は、消毒清潔剤、シャワーフォーム、口腔洗浄薬、ウェットティッシュ、洗剤石鹸、ハンドウォッシュ、加湿器充填剤、マスク、軟膏剤、コーティング剤またはフィルター充填剤からなる群から選択されるいずれか一つであることを特徴とする請求項13に記載の炎症疾患の予防または改善用医薬外品組成物。
【請求項15】
請求項1〜5のうち、いずれか一項の組成物を有効成分として含むフィルター充填剤を含む、炎症疾患の予防または改善用軟水器。
【請求項16】
請求項1〜5のうち、いずれか一項の組成物を炎症疾患が発病したまたは発病可能性のある患者に投与して炎症疾患を予防または治療する方法。
【請求項17】
前記組成物を経口投与または皮膚塗布投与する請求項16に記載の炎症疾患を予防または治療する方法。
【請求項18】
前記炎症疾患は、アレルギー性炎症疾患である請求項16に記載の炎症疾患を予防または治療する方法。
【請求項19】
前記アレルギー性炎症疾患は、アトピー皮膚炎である請求項18に記載の炎症疾患を予防または治療する方法。
【請求項1】
野菊(Chrysanthemum boreale Makino)抽出物またはこの分画物を含む、抗炎症活性を持つ組成物。
【請求項2】
前記野菊抽出物は、野菊の水抽出物または野菊のメタノール抽出物である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記野菊の抽出物は、熱水抽出方法によって抽出されたものである請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記分画物は、クロロホルム、エタノール、酢酸エチルまたはこれらの混合溶媒のうち、いずれか一つの溶媒を用いた分画物である請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物は、下記特性中の一つ以上を持つ請求項1に記載の組成物:
1)紅斑、浮腫、血腫、掻痒、皮膚乾燥症、糜爛及び苔癬化の減少;
2)耳浮腫の減少;
3)掻く行動の減少;
4)血清免疫グロブリンE(IgE)、インターフェロン−γ(IFN−γ)またはインターロイキン4(IL−4)濃度の減少;
5)細胞内酸化窒素(NO)発現の減少;
6)細胞内酸化窒素合成剤(iNOS)の発現の減少;
7)細胞内プロスタグランジンE2(PGE2)生成の減少;
8)細胞内COX−2発現の減少;
9)IκBリン酸化抑制及びNF−κBの細胞質から核への移動減少;及び
10)線維芽細胞増殖、コラーゲン層異常増殖、及び潰瘍の抑制、肥満細胞の浸潤の減少、及び好中球及びリンパ球の浸潤による炎症の減少。
【請求項6】
請求項1〜5のうち、いずれか一項の組成物を有効成分として含む、炎症疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項7】
前記炎症疾患は、アレルギー性炎症疾患である請求項6に記載の炎症疾患の予防または治療用薬学組成物
【請求項8】
前記アレルギー性炎症疾患は、アトピー皮膚炎である請求項7に記載の炎症疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項9】
前記炎症疾患の予防または治療用薬学組成物は、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤、滅菌された水溶液、非水性溶剤、凍結乾燥製剤及び坐剤からなる群から選択されるいずれか一つの剤形を持つことを特徴とする請求項6に記載の炎症疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項10】
請求項1〜5のうち、いずれか一項の組成物を有効成分として含む、炎症疾患の予防または改善用化粧品組成物。
【請求項11】
請求項1〜5のうち、いずれか一項の組成物を有効成分として含む、炎症疾患の予防または改善用食品組成物。
【請求項12】
前記食品組成物は、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンディー類、 スナック類、クッキ類、ピザ、ラーメン、ガム類、アイスクリーム類、スープ、飲料水、茶、機能水、ドリンク剤、アルコール飲料及びビタミン複合剤からなる群から選択されるいずれか一つであることを特徴とする請求項11に記載の炎症疾患の予防または改善用食品組成物。
【請求項13】
請求項1〜5のうち、いずれか一項の組成物を有効成分として含む、炎症疾患の予防または改善用医薬外品組成物。
【請求項14】
前記医薬外品組成物は、消毒清潔剤、シャワーフォーム、口腔洗浄薬、ウェットティッシュ、洗剤石鹸、ハンドウォッシュ、加湿器充填剤、マスク、軟膏剤、コーティング剤またはフィルター充填剤からなる群から選択されるいずれか一つであることを特徴とする請求項13に記載の炎症疾患の予防または改善用医薬外品組成物。
【請求項15】
請求項1〜5のうち、いずれか一項の組成物を有効成分として含むフィルター充填剤を含む、炎症疾患の予防または改善用軟水器。
【請求項16】
請求項1〜5のうち、いずれか一項の組成物を炎症疾患が発病したまたは発病可能性のある患者に投与して炎症疾患を予防または治療する方法。
【請求項17】
前記組成物を経口投与または皮膚塗布投与する請求項16に記載の炎症疾患を予防または治療する方法。
【請求項18】
前記炎症疾患は、アレルギー性炎症疾患である請求項16に記載の炎症疾患を予防または治療する方法。
【請求項19】
前記アレルギー性炎症疾患は、アトピー皮膚炎である請求項18に記載の炎症疾患を予防または治療する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
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【図28】
【図29】
【公表番号】特表2013−512235(P2013−512235A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540999(P2012−540999)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際出願番号】PCT/KR2010/006651
【国際公開番号】WO2011/065657
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(508179431)ウンジン コーウェイ カンパニー リミテッド (23)
【氏名又は名称原語表記】WOONGJIN COWAY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】658,Yugu−ri,Yugu−eup,Gongju−si,Chungcheongnam−do 314−895,Republic of Korea
【出願人】(512139102)ユニバーシティ−インダストリー コーオペレイション グループ オブ キョンヒ ユニバーシティ (1)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY−INDUSTRY COOPERATION GROUP OF KYUNG HEE UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】Kyunghee Univ.Global Campus,Seocheon−dong,Giheung−gu,Yongin−si,Gyeonggi−do,446−701,Republic of Korea
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際出願番号】PCT/KR2010/006651
【国際公開番号】WO2011/065657
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(508179431)ウンジン コーウェイ カンパニー リミテッド (23)
【氏名又は名称原語表記】WOONGJIN COWAY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】658,Yugu−ri,Yugu−eup,Gongju−si,Chungcheongnam−do 314−895,Republic of Korea
【出願人】(512139102)ユニバーシティ−インダストリー コーオペレイション グループ オブ キョンヒ ユニバーシティ (1)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY−INDUSTRY COOPERATION GROUP OF KYUNG HEE UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】Kyunghee Univ.Global Campus,Seocheon−dong,Giheung−gu,Yongin−si,Gyeonggi−do,446−701,Republic of Korea
【Fターム(参考)】
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