説明

野菜のおろし器

【課題】 本発明は、基板に対して斜めの長孔を設けたおろし器であって、野菜を往復させるときにおろし歯に接触している部分が内側あるいは外側に一様になびくことのないおろし器を提供することを目的とする。さらに、本発明は歯間距離及びおろし歯の高さを考慮して、さらに効率良くおろすことができるおろし器を提供することを目的とする。
【解決手段】 食材をおろすときに食材を基板の手元側と先方側の間で往復移動させながらおろすおろし器であって、基板は、V字形をなすように曲がる複数の孔と、その孔の周囲に沿って形成された複数のおろし歯を含み、V字形の曲がった頂部が手元側に向いている孔と先方側に向いている孔を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大根等の野菜のおろし器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のおろし器の中には、基板の両側から中央方向に斜めに延びる多数の長孔を左右交互に設け、長孔の周囲におろし歯を形成したものが存在する(例えば、特許文献1参照。)。また、横方向に並ぶおろし歯の歯間距離をランダムに設定したものも存在する(例えば、特許文献2参照。)
【特許文献1】実公昭57−59074号公報
【特許文献2】特公昭59−22611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、野菜を効率良くおろすことを課題とする。前記特許文献1に示されたおろし器は、基板の両側から中央方向に斜めに延びる多数の長孔を左右交互に設けたものであって、左側の長孔も右側の長孔もすべておろし器の先方向に斜めに延びている。したがって、野菜を手元からおろし器の先方にむけておろすと、野菜のおろし歯に接触している部分が基板の内側に一様になびき、野菜を手元方向に引いたときには基板の外側に一様になびくのである。すなわち、野菜を往復させると野菜は一様に内側あるいは外側になびくので、野菜のおろし歯に接触している部分の動きは単調であり、おろし歯に対する野菜の引っ掛かりが悪くなって効率良くおろすことができないのである。そこで本発明は、基板に対して斜めの長孔を設けたおろし器であって、野菜を往復させるときにおろし歯に接触している部分が内側あるいは外側に一様になびくことのないおろし器を提供することを目的とする。
【0004】
また、前記特許文献2は横方向に並ぶおろし歯の歯間距離をランダムに設定したので、おろし器の縦方向の直線上に必ずおろし歯が存在することになる。したがって、歯間距離を一定にしたおろし器に比べて効率良く野菜をおろすことができることは確かであるが、各歯間距離の相互関係あるいはおろし歯の高さについては定められていない。そこで、本発明は歯間距離及びおろし歯の高さを考慮して、さらに効率良くおろすことができるおろし器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1は、食材をおろすときに食材を基板の手元側と先方側の間で往復移動させながらおろすおろし器であって、基板は、V字形をなすように曲がる複数の孔と、その孔の周囲に沿って形成された複数のおろし歯を含み、V字形の曲がった頂部が手元側に向いている孔と、先方側に向いている孔とを含む構成である。
【0006】
請求項2は、基板の中央長さ方向に沿って頂部が同じ側を向くV字形の複数の孔が設けられ、その中央の孔の両側に沿って頂部が中央の孔と反対側を向くV字形の複数の孔が設けられ、両側の孔であって、中央寄りの斜辺が基板の中心を越えて延びている孔が両側に少なくとも1つずつ存在する要素が請求項1に限定的に付加された構成である。
【0007】
請求項3は、両側の孔であって、中央寄りの斜辺が外側の斜辺よりも長く形成された孔を含み、その長い斜辺は中央の孔のV字形で囲まれた部分まで延び、中央の各孔に対しその両側方の孔の斜辺が交互に延びている要素が請求項2に限定的に付加された構成である。
【0008】
請求項4は、基板に多数のおろし歯を有するおろし器において、高さが異なる少なくとも2種類のおろし歯が混在する構成である。請求項5は、3個以上のおろし歯が直線状に一列に並んだ歯列が多数形成され、各歯列のすべてのおろし歯が隣り合うおろし歯と高さが異なる要素が請求項5に限定的に付加された構成である。
【0009】
請求項6は、3個以上のおろし歯が直線状に一列に並んだ歯列が多数形成され、それらの歯列の全部又は一部は、同じ高さのおろし歯が並ぶ歯列要素を少なくとも1つ有している要素が請求項5に限定的に付加された構成である。
【0010】
請求項7は、3種類の高さのおろし歯を有し、一番高いおろし歯と三番目の高さのおろし歯の間に二番目の高さのおろし歯が2個並ぶ歯列要素を少なくとも1つ有している要素が請求項6に限定的に付加された構成である。
【0011】
請求項8は、基板に孔を有し、この孔は直線状の縁を有し、その直線状の縁に沿って3個以上のおろし歯が直線状に一列に並んだ歯列が形成されているおろし器において、歯列の少なくとも一方の端のおろし歯とその隣のおろし歯の歯間距離が、その歯列における最大の歯間距離に形成されている歯列を含んでいる構成である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1は、基板が、V字形をなすように曲がる複数の孔と、その孔の周囲に沿って形成された複数のおろし歯を含み、V字形の曲がった頂部が手元側に向いている孔と、先方側に向いている孔とを含んでいる。したがって、野菜を手元から先方へ移動させるときに、頂部が手元側に向いた孔については野菜のおろし歯に接触している部分はV字形の外側になびき、頂部が先方側に向いた孔について野菜はV字形の内側になびくのである。また、野菜を逆方向に移動しておろすときは、野菜はこの逆方向になびくのである。この結果、野菜を一方向に移動させるときに、野菜のおろし歯に接触している部分は内側になびいたり外側になびいたりするので、野菜に対するおろし歯の引っ掛かりが良くなり、効率良く野菜をおろすことができる。
【0013】
請求項2は、基板の中央長さ方向に沿って頂部が同じ側を向くV字形の複数の孔が設けられ、その中央の孔の両側に沿って頂部が中央の孔と反対側を向くV字形の複数の孔が設けられ、両側の孔であって、中央寄りの斜辺が基板の中心を越えて延びている孔が両側に少なくとも1つずつ存在する。したがって、特に基板の中央付近で野菜のおろし歯に接触している部分が内側になびいたり外側になびいたりすることになる。例えば、大根は円形であるから大根をおろすときには大根の中央付近を効率的におろす必要がある。請求項2は基板の中央付近が特に野菜に対するおろし歯の引っ掛かりが良いので効率的におろすことができるのである。
【0014】
請求項3は、両側の孔であって、中央寄りの斜辺が外側の斜辺よりも長く形成された孔を含み、その長い斜辺は中央の孔のV字形で囲まれた部分まで延び、中央の各孔に対しその両側方の孔の斜辺が交互に延びている。したがって、中央の孔の斜辺と側方の孔の斜辺の重なりが長くなるので、野菜に対するおろし歯の引っ掛かりが良い部分の幅が広くなり、大きな野菜でも効率的におろすことができる。
【0015】
請求項4は、基板に多数のおろし歯を有するおろし器において、高さが異なる少なくとも2種類のおろし歯が混在している。おろし歯の高さをすべて比較的高く設定すると野菜が荒くおろされ、おろし歯の高さをすべて比較的低く設定すると野菜は細かくおろされるのであるが非常に効率が悪く長時間作業をしなければならない。請求項4は、高さが異なる少なくとも2種類のおろし歯が混在しているので効率をそれほど落とさずに野菜を比較的細かくおろすことができる。また、すべてのおろし歯を中程度の同じ高さとしたときは、野菜がおろし歯の高さに応じて削られるのでおろし歯を低くした分だけおろす効率が悪くなる。しかし、高いおろし歯と低いおろし歯を混在させたときは高いおろし歯が野菜を深く削るので、すべてのおろし歯を中程度の高さに設定した場合に比較して効率の落ち方を少なくすることができる。
【0016】
請求項5は、3個以上のおろし歯が直線状に一列に並んだ歯列が多数形成され、各歯列のすべてのおろし歯が隣り合うおろし歯と高さが異なっている。したがって、すべてのおろし歯を高く設定した場合と低く設定した場合の中間の細かさで野菜をおろすことができる。また、高いおろし歯が存在するためにおろす効率の落ち方を少なくすることができる。
【0017】
請求項6は、3個以上のおろし歯が直線状に一列に並んだ歯列が多数形成され、それらの歯列の全部又は一部は、同じ高さのおろし歯が並ぶ歯列要素を少なくとも1つ有している。したがって、高さの高い歯列要素を形成したときは、野菜はやや荒いが効率よくおろすことができる。また、高さの低い歯列要素を形成したときは野菜をやや細かくおろすことができ、効率もそれほど落ちることがない。さらに、歯列要素の高さや個数を変えて、例えば大根は高さの高いおろし歯が並ぶ歯列を多くし、山芋やにんにくは高さの低いおろし歯が並ぶ歯列要素を多くするなどして、野菜の種類に応じて最適のおろし器を提供することができる。
【0018】
請求項7は、3種類の高さのおろし歯を有し、一番高いおろし歯と三番目の高さのおろし歯の間に二番目の高さのおろし歯が2個並ぶ歯列要素を少なくとも1つ有している。したがって、一番高いおろし歯によっておろし作業の効率が良くなり、三番目の高さのおろし歯によって野菜を細かくおろすことができ、二番目の2つのおろし歯によって野菜を荒くもなく細かくもなくおろすので、これら3種類のおろし歯によっておろされた野菜は荒すぎることもなく細かすぎることもない口当たりを得ることができる。
【0019】
請求項8は、基板に孔を有し、この孔は直線状の縁を有し、その直線状の縁に沿って3個以上のおろし歯が直線状に一列に並んだ歯列が形成されているおろし器において、歯列の少なくとも一方の端のおろし歯とその隣のおろし歯の歯間距離が、その歯列における最大の歯間距離に形成されている歯列を含んでいる。大根などをおろすときに、孔の端でのおろし歯の間隔が密であると、その場所で削られる大根の量が多くなるので孔の隅に溜まってしまうのである。したがって、孔の端あるいは孔の曲がり角で歯間距離を広くすることにより、削られた大根が孔の隅に溜まることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に本発明を実施するための最良の形態について説明する。基板1に多数の孔が設けられ、各孔の周囲におろし歯が形成されている。基板1の中央に、V字形に形成された5つの中央孔2が並んでいる。各中央孔2はその5字形の頂部3が把持部4方向である手元側を向くように並んでおり、5字形の頂部の角度は90度をなしている。基板1は、耐熱性ABS樹脂などのプラスチックを材料として射出成形で一体に形成されるが、材料及び製法はこれに限定されるものではない。
【0021】
中央孔2の両側には、斜辺の長さの異なる5字形に形成された側方孔5,6,7,8が並んでおり、これら側方孔の5字形の頂部は中央孔2と逆の先方側を向いている。しかし、頂部の角度は中央孔2と同じ90度をなしている。図1において基板1の右側に2種類の4つの側方孔5,6が設けられ、一方の側方孔5の中央寄り斜辺9は他方の斜辺よりも長く形成されている。これとは反対に、他方の側方孔6の中央寄り斜辺10は他方の斜辺よりも短く形成されている。一方の側方孔5と他方の側方孔6は交互に並べられており、一方の側方孔5の中央寄り斜辺9は、基板1の中心を越えて延びている。また、各側方孔5,6の外側寄りの斜辺を挟むように5つの長孔11が設けられている。
【0022】
図1において基板1の左側に2種類の4つの側方孔7,8が設けられ、一方の側方孔8の中央寄り斜辺12は他方の斜辺よりも長く形成されている。これとは反対に、他方の側方孔7の中央寄り斜辺13は他方の斜辺よりも短く形成されている。一方の側方孔8と他方の側方孔7は交互に並べられており、一方の側方孔8の中央寄り斜辺12は、基板1の中心を越えて延びている。また、各側方孔7,8の外側寄りの斜辺を挟むように5つの長孔14が設けられている。
【0023】
次に、おろし歯の構成について説明する。図2は側方孔6とその周囲に形成されたおろし歯を示すものである。野菜をおろすときに、図2においては野菜を左右に移動することによっておろすことができる。図2及び図3から明らかなようにおろし歯は三角錐の形状であって、側方孔6の方向に傾斜して立ち上がっている。また、図3のW、Wに示すように、側方孔6の幅は下方に行くに従って徐々に広くなるように形成されている。他のすべての孔及びおろし歯はこのように形成されているが、異なる構成の孔及びおろし歯が含まれていてもよいことは勿論である。
【0024】
図3に示すおろし歯の高さhは3種類のものが存在し、図2の各おろし歯に付けられたa,b,cの各符号はおろし歯の高さを示している。aは高さが0.8mm、bは1.0mm、cは1.2mmである。さらに、図3に示す側方孔6の下部の幅Wは8.6mm、上部の幅Wは7.0mm、対向するおろし歯の先端の間隔Sは6.58mmである。また、おろし歯の傾斜角Aは75°であって側方孔6の内面の傾斜角と等しい。基板1の板厚は3.0mmである。なお、本発明はこれらの数値に限定されるものではない。
【0025】
図2は、おろし歯の配置の一例を示すものである。歯列15は9個のおろし歯から成り、野菜が図2の左から右方向に移動するときに野菜を削る歯列である。右端のおろし歯16とその隣のおろし歯17の歯間距離tがこの歯列15の中で最大になるようにおろし歯は配置されている。このように歯列の端部で歯間距離を大きくした理由は、歯列15でおろされた野菜が側方孔6の頂部18の方向に流れて隅に野菜が溜まってしまうので、歯間距離を大きくして野菜が隅に行く前にこの歯間から野菜を流し、野菜が溜まることを防止するためである。歯列19は8個のおろし歯から成り、野菜が図2の右から左に移動するときに野菜を削る歯列である。ここでは、歯列19でおろされた野菜が側方孔6の端部の隅20方向に流れるので、左端のおろし歯21とその隣のおろし歯22との歯間距離tを大きくして、この間から野菜を流して隅20に溜まることを防止する。なお、側方孔6及び他の孔のそれぞれの両端に2つのおろし歯が歯間距離を置かずに並べて形成されている。しかし、すべての歯列についてこれらのような構成にしなくてもよいことは勿論である。
【0026】
歯列15における各おろし歯の歯間距離について説明すると、歯列15において右端のおろし歯16とその左隣のおろし歯17との歯間距離tは4.9mmでこの歯列では最大である。そこから左方向に順次3.0mm、3.2mm、3.6mm、3.6mm、3.5mm、2.6mm、2.1mmの順に並んでいる。また、歯列19における歯間距離については、左端のおろし歯21とその右隣のおろし歯22との歯間距離tは3.9mmでこの歯列では最大である。そこから右方向に順次2.4mm、2.8mm、2.7mm、2.4mm、2.7mm、2.6mmの順に並んでいる。なお、本発明はこれらの数値に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の正面図
【図2】側方孔の拡大正面図
【図3】孔とおろし歯の断面図
【符号の説明】
【0028】
1 基板
2 中央孔
3 頂部
4 把持部
5 側方孔
6 側方孔
7 側方孔
8 側方孔
9 斜辺
10 斜辺
11 長孔
12 斜辺
13 斜辺
14 長孔
15 歯列
16 おろし歯
17 おろし歯
18 頂部
19 歯列
20 隅
21 おろし歯
22 おろし歯


【特許請求の範囲】
【請求項1】
食材をおろすときに食材を基板の手元側と先方側の間で往復移動させながらおろすおろし器であって、基板は、V字形をなすように曲がる複数の孔と、その孔の周囲に沿って形成された複数のおろし歯を含み、V字形の曲がった頂部が手元側に向いている孔と、先方側に向いている孔とを含んでいることを特徴とするおろし器
【請求項2】
基板の中央長さ方向に沿って頂部が同じ側を向くV字形の複数の孔が設けられ、その中央の孔の両側に沿って頂部が中央の孔と反対側を向くV字形の複数の孔が設けられ、両側の孔であって、中央寄りの斜辺が基板の中心を越えて延びている孔が両側に少なくとも1つずつ存在する請求項1記載のおろし器
【請求項3】
両側の孔であって、中央寄りの斜辺が外側の斜辺よりも長く形成された孔を含み、その長い斜辺は中央の孔のV字形で囲まれた部分まで延び、中央の各孔に対しその両側方の孔の斜辺が交互に延びている請求項2記載のおろし器
【請求項4】
基板に多数のおろし歯を有するおろし器において、高さが異なる少なくとも2種類のおろし歯が混在することを特徴とするおろし器
【請求項5】
3個以上のおろし歯が直線状に一列に並んだ歯列が多数形成され、各歯列のすべてのおろし歯が隣り合うおろし歯と高さが異なる請求項4記載のおろし器
【請求項6】
3個以上のおろし歯が直線状に一列に並んだ歯列が多数形成され、それらの歯列の全部又は一部は、同じ高さのおろし歯が並ぶ歯列要素を少なくとも1つ有している請求項4記載のおろし器
【請求項7】
3種類の高さのおろし歯を有し、一番高いおろし歯と三番目の高さのおろし歯の間に二番目の高さのおろし歯が2個並ぶ歯列要素を少なくとも1つ有している請求項6記載のおろし器
【請求項8】
基板に孔を有し、この孔は直線状の縁を有し、その直線状の縁に沿って3個以上のおろし歯が直線状に一列に並んだ歯列が形成されているおろし器において、歯列の少なくとも一方の端のおろし歯とその隣のおろし歯の歯間距離が、その歯列における最大の歯間距離に形成されている歯列を含んでいることを特徴とするおろし器

【図1】
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【図2】
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【図3】
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