説明

野菜類の育成・保存装置

【課題】本発明は、野菜類を畑地において、播種から育成栽培し、その後収穫物を保存するに当たり、省スペース、省エネルギー方式の、しかも、作業性の良い簡便な野菜類の育成・保存装置を提供する。
【解決手段】 複数の連設された略A字型の支柱と、該支柱間を連繋する複数の連結具と、該支柱群と頂部の連結具を内郭として、その外側を全面的に又は部分的に張設した覆い具と、から構成される野菜類の育成・保存装置であって、前記各支柱の両脚又は片脚の上部に回動ジョイントを設け、該回動ジョイントから下方に延在し、かつ、外方へ開くように回動可能な可動アームを設けると共に、該可動アームが該覆い具を担持することを特徴とする野菜類の育成・保存装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜類を畑地において、播種から育成栽培し、その後収穫物を保存するに当たり、省スペース、省エネルギー方式の、しかも、作業性の良い簡便な野菜類の育成・保存装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、野菜類の播種から育成・栽培において、日当たりや気温に左右され難い、また防虫し易い設備として、大は、温室であるビニールハウス等が用いられ、小は、防寒、防暑の対策として畝をポリフィルムで覆うマルチングや、畝の上に逆U字状の支柱を立てて、その上に寒冷紗又はビニールをかけるトンネル等が用いられている。
【特許文献1】特開2003−339254(〔図1〕)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
野菜類の育成・栽培装置の観点からは、ビニールハウスなどの温室は規模が大きくて設備費が掛かり、また、移動ができないという難点がある。一方、マルチングやトンネルは簡単な設備で、どの場所でも設置できるが、手間が掛かることや、規模が小さいという難点があった。
【0004】
本発明はこれらの課題を改善したものであって、播種から育成・栽培段階の適切な保護や収穫後の収穫物の保存において、降雨、高温、低温、強日光、害虫等の障害から野菜類を守り、育て、尚且つ収穫後の保存をすることができる省スペース、省エネルギー方式であって、しかも作業性の良い野菜類の育成・保存装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係る野菜類の育成・保存装置は、複数の連設された略A字型の支柱と、該支柱間を連繋する複数の連結具と、該支柱群と頂部の連結具を内郭として、その外側を全面的に又は部分的に張設した覆い具と、から構成される野菜類の育成・保存装置であって、前記各支柱の両脚又は片脚の上部に回動ジョイントを設け、該回動ジョイントから下方に延在し、かつ、外方へ開くように回動可能な可動アームを設けると共に、該可動アームが該覆い具を担持することを特徴とする。また、請求項2に係る野菜類の育成・保存装置は、請求項1記載の野菜類の育成・保存装置において、前記回動ジョイントが、前記可動アームを脚部に沿った閉の位置から外方へ開くように回動する場合に、二以上の回動位置で固定することができると共に、逆に閉じる方には、可動アームの最大開の位置を越えると閉の位置まで留まることなく戻せる作用を行うラチェット式であることを特徴とする。また、請求項3に係る野菜類の育成・保存装置は、請求項2に記載の野菜類の育成・保存装置において、前記覆い具が、前記可動アームの反回動ジョイント側の端部で切断されて、二又は三分割されていることを特徴とする。
【0006】
本装置は、支柱と連結具と覆い具とからなる部品で構成されているので、畑において、組立、解体又は解体して移動し、組立が簡易であり、規模の拡大又は縮小が連設する支柱の数の増減で可能である。そして、請求項1〜3の構成を採用することにより、野菜類の育苗、育成における防寒、防暑や外気との遮断による防虫、遮光が行え、収穫物の保存等には風通しを良好にして乾燥する等が自由自在に行える装置である。すなわち、回動可能な可動アームを全閉の状態にすれば、本装置は外気と遮断できる温室とすることができ、全開にすれば可動アームと支柱の間において覆い具が畝方向にダクト状の空間を形成し、本装置の端から端までその空間によって風通しを良好にすることができ、装置内を乾燥状態に保ち得るので、野菜類の収穫物の保存に適した条件を創出できる。また、覆い具を可動アームのところで分割すれば、可動アームが開の状態において、換気用の揚げ窓を設けたことと同効となる。また、可動アームが開の時に、可動アームから上部の部分の覆い具を遮光性のものにすれば、本装置内にある野菜類を遮光することが可能となる。
【0007】
また、請求項4に係わる野菜類の育成・保存装置は、請求項1又は2又は3記載の野菜類の育成・保存装置において、前記覆い具が、透明又は不透明の合成樹脂製シート又は合成樹脂製ネット又は寒冷紗のいずれかから選択されたものであること特徴とする。また、請求項5に係わる野菜類の育成・保存装置は、請求項1乃至4のいずれかに記載の野菜類の育成・保存装置において、前記覆い具が、支柱間で支柱に平行な単数又は複数の補強体で裏打ちされて補強されていることを特徴とする。
【0008】
これらの構成により、覆い具の選択により断熱・遮熱、遮光、外気の遮断、風通しの効果が得られるので、野菜類の育成・栽培や保存の条件に適合させることができる。また、合成樹脂製ネットの覆い具の場合には、ネットに蔓ものの野菜を育成することもできる。また、覆い具をワイヤ状又は紐状の高張力の補強体で裏打ちされているので、強風等によって、覆い具の外郭形を損ねることが少なく、また切り裂きにも対抗することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る請求項1から5記載の野菜類の育成・保存装置によれば、支柱と連結具と覆い具とからなる部品で構成されているので、畑において、組立、解体又は解体して移動し、組立が簡易であり、規模の拡大又は縮小が容易であり、労力も少なくてよい。また、設置場所も畝や畦を跨いで設置できるので、設置場所の制約が少ない。野菜類の育苗、育成・栽培、収穫保存の各時期に合わせて、可動アームの開閉及び覆い具の選択と掛け方を調節することにより、温度条件、日射条件、乾湿条件等を適切にすることができる。また、野菜類の育苗から収穫保存まで同じ場所で実施できるから、省力、省スペース、省エネルギー等を達成することが容易である。また、本装置は簡単な部品で構成されているので、設備費用や設置に要する費用が少なく、経済的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施するための最良の形態に係る野菜類の育成・保存装置であって、苗の育成時における模式的全体斜視図である。図2は、本発明の実施するための最良の形態に係る野菜類の育成・保存装置であって、成長時における模式的全体斜視図である。図3は、本発明の実施するための最良の形態に係る野菜類の育成・保存装置であって、保存時における模式的全体斜視図である。図4は、図1における野菜類の育成・保存装置の支柱脚であって、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【0011】
図1,2,3,4に基いて、本発明に係る野菜類の育成・保存装置の最良の実施形態を説明すると、野菜類の育成・保存装置1は、主として、複数の連設された略A字型の支柱2と、支柱同士を軸方向に繋ぐ一本の上部連結具7と、二本の下部連結具8と、支柱2の外郭と上部連結具7を取り囲むようにカマボコ型に張設された覆い具11と、から構成される。支柱2は、略A字型の外形を有し、全部が合成樹脂製又は金属製棒を芯にして外被を合成樹脂製にしたものであって、支柱2の両脚部6を繋ぐ上下の上部横梁3と下部横梁4と一体に成型され、頑丈な構造を呈すると同時に、人力で取り扱い易いように軽量化を図っている。
【0012】
図1に示すように、支柱2は畑の畝を跨ぐように設けられ、脚部6の先端に基礎17を設けているので、基礎17は畝合い16に設置する。支柱2の全高は1〜2mであり、連設の支柱2の間隔は3〜5mである。支柱2の頂部5のところで、支柱2同士をパイプ状又は角筒状の上部連結具7にて繋ぎ、更に上部横梁3のところで、支柱2同士を二本のパイプ状又は角筒状の下部連結具8にて繋ぎ、支柱2同士を連結することにより、構造的に頑丈な本装置1の外郭を形成する。また、この繋ぎは横梁3に嵌め溝を作って結合してもよいし、連結具7,8と横梁3とをクランプ(図示しない)により繋いでもよい。また、二本の下部連結具8は、収穫した野菜類を懸架することにも使われる。 収穫物が玉葱のように重量が大きい場合には、支柱2を四本脚の平面視略X字状(図示していない)にして頑強にすることもできる。また、基礎17も、設置場所が平坦で、設置荷重に耐えれば単に置くだけで支柱2の据付けが可能であるし、設置場所が不適切であれば穴を掘って脚部6を地中に埋設することも可能であるように、基礎17の構築も自由度が高い。
【0013】
図4に示すように、支柱2の脚部6の上部には、ラチェット式の回動ジョイント10が二箇所設けられ、回動ジョイント10の軸端には可動アーム9が軸支されている。可動アーム9は、数十cm長さの腕を有し、回動ジョイント10を中心に外方へ開くように回動可能であり、その回動動作は閉位置9−1、半開位置9−2又は全開位置9−3にラチェット式の回動ジョイント10の働きで固定することができる。ラチェット式の回動ジョイント10は可動アームを閉位置9−1から全開位置9−3まではステップ状に間欠回動し、所望の位置でラチェットにより掛止することができるのに対し、逆に全開位置9−3を過ぎて閉位置9−1まで戻るのはラチェットが外れて一気に回動する機構となっている。可動アーム9は、本図では支柱2の両脚部6に1個づつ計2個設けられているが、片側1個のみでも設置することができる。
【0014】
覆い具11は連設された支柱2群と、上部連結具7とで構成される内郭の外側を通常全面に張りめぐらしている。この場合に覆い具11は支柱2の脚部6及び上部連結具7に紐又はクリップ又は鳩目フックにより係止されて、張設することができる。これらの紐又は鳩目フックは脚部6に螺着されたビス(図示しない)の頭に引掛ければ作業が簡易である。また、本装置1の軸方向の妻面も通常覆い具11を張って温室効果をもたらすことができる。また、覆い具11を可動アーム9の反回動ジョイントの端部で切断して分割すれば、可動アーム9が半開又は全開状態の時には可動アーム9に取り付けた覆い具11と支柱2の脚部6に取り付けられた覆い具11との間が揚げ窓のようになり、更に風通しを良くすることができる。また、覆い具11は支柱2の脚部6で裾上げして開口部を作って留めることも可能である。
【0015】
覆い具11は透明又は不透明の合成樹脂製シート又は合成樹脂製ネット又は寒冷紗のいずれかから選択されるものであって、用途に合わせて適切に選択することができる。例示すると、防寒や温室効果を発揮する場合には透明な合成樹脂製シートが適し、遮光や防暑の目的には不透明な合成樹脂製シート又は寒冷紗が適している。また、蔓ものの野菜を育成するには合成樹脂製ネットが適している場合がある。また、覆い具11は、支柱2間に張設されているが、ワイヤ状又は紐状の高張力の補強体12で裏打ちされていると、強風等によって覆い具11の外郭形を損ねることが少なく、また切り裂きに対して防ぐことができる。補強体12としては針金を使用するのが簡便でよく、その際は支柱2の頂部5に相当する部位にゴム紐のような弾力性のある紐を針金に挿入すれば、覆い具11を頂部5の曲面により適合させることができる。
【0016】
図1は、野菜類の育成・保存装置1において、可動アーム9が閉状態にあって、ビニールシートのような透明の覆い具11を用い、かつ妻面も同様な覆い具11を用いて張設すると、温室として使用することができ、防雨と保温の効果をもたらすので、野菜20の播種から苗の育成時にかけて苗の成長を促進することができる。また、図2は、可動アーム9が半開状態であって、可動アーム9の下で覆い具11が持ち上げられたところと、装置1端部の支柱2の両脚部6に張られた覆い具11との間に、ダクト状の空間を形成し、装置内へ風通しを良くすることができる。また、前述のように、可動アーム9端で覆い具11を分断して揚げ窓にすれば、更に外気の導入や外気との入れ替えを十分に行うことができる。また、妻面の覆い具11を取り外せば、外気の導入はより強くすることができる。また、半開状態の可動アーム9上に、覆い具11を半透明のシートにするとか、又は透明シート上に寒冷紗を掛ければ遮光することもできる。これらの外気導入や遮光の程度を調節することにより、野菜20の最大成長時に適合した条件を作ることができる。また、図3の場合には、可動アーム9を全開にした状態であって、覆い具11の裾上げすること、また、妻面の覆い具11を取り外して、換気も最大にすることができるから、湿度の少ない季節の晩秋や初冬であれば装置1内の乾燥状態をよく保てるので、野菜20の収穫物を保存し易い状態にすることができる。また、全開の可動アーム9間に雨よけシートを被せれば簡易テント小屋となり、畑の中での野菜20の収穫物の保存が可能であるから、運搬コストが節約できるし、出荷時には不要部分を畑にそのまま切り落として、放置して肥料化することで再利用することが可能となる等の利点が多い。
【0017】
また、支柱2の両脚部6間にネットを張れば、胡瓜、トマト、豆類などの蔓性の作物の支えとして、また、支柱2を上部連結具7に繋げれば強固な支えになり、覆い具11が無くても、いろんな野菜にも利用することができるので応用範囲が広い。
【産業上の利用可能性】
【0018】
畑における野菜類の育苗から育成・栽培、収穫の保存までを同一設備で適用することができる。また、園芸部門においても利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施するための最良の形態に係る野菜類の育成・保存装置であって、苗の育成時における模式的全体斜視図である。
【図2】本発明の実施するための最良の形態に係る野菜類の育成・保存装置であって、成長時における模式的全体斜視図である。
【図3】本発明の実施するための最良の形態に係る野菜類の育成・保存装置であって、保存時における模式的全体斜視図である。
【図4】図1における野菜類の育成・保存装置の支柱脚であって、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【符号の説明】
【0020】
1:育成・保存装置 2:支柱 3:上部横梁
4:下部横梁 5:頂部 6:脚部 7:上部連結具
8:下部連結具 9:可動アーム 9−1:閉位置
9−2:半開位置 9−3:全開位置 10:回動ジョイント
11:覆い具 12:補強体
15:畝 16:畝合い 17:基礎
20:野菜



【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の連設された略A字型の支柱と、該支柱間を連繋する複数の連結具と、該支柱群と頂部の連結具を内郭として、その外側を全面的に又は部分的に張設した覆い具と、から構成される野菜類の育成・保存装置であって、前記各支柱の両脚又は片脚の上部に回動ジョイントを設け、該回動ジョイントから下方に延在し、かつ、外方へ開くように回動可能な可動アームを設けると共に、該可動アームが該覆い具を担持することを特徴とする野菜類の育成・保存装置。
【請求項2】
前記回動ジョイントが、前記可動アームを脚部に沿った閉の位置から外方へ開くように回動する場合に、二以上の回動位置で固定することができると共に、逆に閉じる方には、可動アームの最大開の位置を越えると閉の位置まで留まることなく戻せる作用を行うラチェット式であることを特徴とする請求項1記載の野菜類の育成・保存装置。
【請求項3】
前記覆い具が、前記可動アームの反回動ジョイント側の端部で切断されて、二又は三分割されていることを特徴とする請求項1又は2記載の野菜類の育成・保存装置。
【請求項4】
前記覆い具が、透明又は不透明の合成樹脂製シート又は合成樹脂製ネット又は寒冷紗のいずれかから選択されたものであること特徴とする請求項1又は2又は3記載の野菜類の育成・保存装置。
【請求項5】
前記覆い具が、支柱間で支柱に平行な単数又は複数の補強体で裏打ちされて補強されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の野菜類の育成・保存装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−11220(P2009−11220A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−175891(P2007−175891)
【出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【出願人】(500136810)株式会社 大通 (26)
【Fターム(参考)】