説明

野菜類の脱色剤、野菜類の変色防止剤、野菜類の脱色方法、野菜類の変色防止方法及び発酵食品

【課題】変色してしまった野菜や果実、塊根類を脱色して元に戻す野菜類の脱色剤、野菜類の脱色方法、さらに野菜類の変色防止剤、野菜類の変色防止方法及び脱色又は変色防止された発酵食品を提供することができる。
【解決手段】乳酸菌を主成分とし、その発酵処理によって酸化により変色した色を脱色する野菜類の脱色剤であり、また酸化によって変色した野菜類に乳酸菌を作用して発酵することによって、その変色した色を脱色することを特徴とする野菜類の脱色方法である。さらに、乳酸菌を主成分とし、その発酵処理によって酸化による変色を防止する野菜類の変色防止剤であり、また野菜類に乳酸菌を作用して発酵することによって、酸化による変色を防止することを特徴とする野菜類の変色防止方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化によって変色した野菜や果物、塊根などのその変色した色を脱色する野菜類の脱色剤、その変色する前に変色を防止する野菜類の変色防止剤、野菜類の脱色方法、野菜類の変色防止方法及び発酵食品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、野菜や果実類、塊根類等にはポリフェノールが含まれているため、空気中の酸素と接触するとポリフェノールオキシダーゼの働きにより酸化されて黒変・褐変物質を生成することが知られている。また、タンニンやカテキンのように、低分子単量体の重合により黒変・褐変物質を生じる物質も存在する。これらのポリフェノール類は、様々な生理機能を有するため近年注目される一方、食品の変色や苦味の元となるいわゆる灰汁の成分であるため、食品加工の工程において変色防止の処理や、灰汁の除去、苦味のマスキング等の処置が必要である。
【0003】
ところで、野菜や果実類、塊根類の変色を防止する方法としては、従来からの食塩やアスコルビン酸等の酸化防止剤を使用する方法の他に、不活性ガスにより外気から遮断する方法(特許文献1)、酸性電解水を使用する方法(特許文献2)、アルコールを噴霧する方法(特許文献3)、藻類抽出物やエノキタケ抽出物を使用する方法(特許文献4及び5)、レゾルシノール誘導体を使用する方法等が知られている。
【0004】
【特許文献1】特許3595865号公報
【特許文献2】特開平08−131065号公報
【特許文献3】特許2831679号公報
【特許文献4】特開2000−139434号公報
【特許文献5】特開2003−70450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの方法は、野菜や果実類、塊根類等の変色を防止する方法であって、一度変色してしまった物を脱色して元の色に戻すものではない。
【0006】
そこで、本発明は、変色してしまった野菜や果実、塊根類を脱色して元に戻す野菜類の脱色剤、野菜類の脱色方法、さらに野菜類の変色防止剤、野菜類の変色防止方法及び脱色又は変色防止された発酵食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上のような目的を達成するため、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、酸化により変色してしまった野菜類に乳酸菌を作用させて発酵することによって、その変化した色を脱色して元に戻すことができることを見出した。すなわち、本発明は、乳酸菌を主成分とし、その発酵処理によって酸化により変色した色を脱色する野菜類の脱色剤であり、また酸化によって変色した野菜類に乳酸菌を作用して発酵することによって、その変色した色を脱色することを特徴とする野菜類の脱色方法である。
【0008】
さらに、本発明者らは、野菜類に乳酸菌を作用させて発酵することによって、野菜類が酸化により変色するのを防止できることを見出した。すなわち、本発明は、乳酸菌を主成分とし、その発酵処理によって酸化による変色を防止する野菜類の変色防止剤であり、また野菜類に乳酸菌を作用して発酵することによって、酸化による変色を防止することを特徴とする野菜類の変色防止方法である。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明によれば、変色してしまった野菜や果実、塊根類を脱色して元に戻す野菜類の脱色剤、野菜類の脱色方法、さらに野菜類の変色防止剤、野菜類の変色防止方法及び脱色又は変色防止された発酵食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係る野菜類の脱色剤、野菜の変色防止剤、野菜類の脱色方法、野菜の変色防止方法及び発酵食品において、前記乳酸菌には、乳酸菌培養液の培養上清が含まれ、前記乳酸菌は、ラクトバチルス属に属する乳酸菌、ロイコノストック属に属する乳酸菌、ペディオコッカス属に属する乳酸菌、ストレプトコッカス属に属する乳酸菌、エンテロコッカス属に属する乳酸菌及びラクトコッカス属に属する乳酸菌のいずれか1以上であることが好ましい。
【0011】
本発明に係る野菜類の脱色方法、野菜の変色防止方法及び発酵食品において、加える乳酸菌又は乳酸菌発酵液中に含まれる乳酸菌数は、多いほうが脱色または変色防止効果が高い。乳酸菌が少ない発酵液を野菜類に添加して、この状態で発酵させることにより効果を期待しても良いが、増殖に時間を要したり、増殖に適さない条件下になることにより乳酸菌の死滅を引き起こすことがある。増殖に時間がかかりすぎると野菜類の腐敗を引き起こすなどの問題が生じる。よって加える乳酸菌数は、野菜類1kg当たり1×10以上が良い。ただし、加える発酵液の発酵時間が長すぎると乳酸菌が増殖しすぎて逆に乳酸菌の死滅を起こすので適当な乳酸菌数で加えた方がより効果は高い。好ましくは1kg当たり1×10以上、より好ましくは1kg当たり1×10以上、さらに好ましくは1×10以上がよい。
【0012】
本発明に係る野菜類の脱色剤、野菜の変色防止剤、野菜類の脱色方法、野菜の変色防止方法及び発酵食品において、野菜類には、野菜の他に果物や塊根など酸化により黒変・褐変物質を生成させて変色するものが含まれ、例えば、りんご、桃、すもも、なし、かりん、バナナ、ヤーコン、ウメ、ごぼう、れんこん、フキ、うど、くわい、さつまいも、やまいも、アボカド、メロンなどがある。
【0013】
本発明に係る野菜類の脱色剤、野菜の変色防止剤、野菜類の脱色方法、野菜の変色防止方法及び発酵食品において、発酵処理条件は、乳酸菌が増殖可能な条件であれば良く、発酵温度は、0℃〜50℃、発酵pHは、9.0〜3.5、嫌気発酵でも好気発酵でも良い。発酵時に糖質、蛋白質やペプチド、アミノ酸等の栄養素やビタミン、酸化防止剤、乳化剤、塩類、酸、調味液等を添加しても良い。さらに、発酵終了後に調味料や果実や野菜、シロップ、果汁等を添加しても良い。本発明に係る野菜類の脱色剤、野菜類の脱色方法及び発酵食品において、発酵後、殺菌処理をして用いても良く、凍結乾燥やドラムドライ等により乾物にしても良い。乳酸菌が残存する生菌のまま用いても良い。さらに、乳酸菌を培養した後の培養液中に野菜類を浸漬し、脱色処理または変色防止処理を行っても良い。この時の乳酸菌培養液は、乳酸菌が生菌のまま残存しても良く、殺菌等により乳酸菌が死滅していても良く、乳酸菌を除去した後の培養液でも良い。
【0014】
野菜類の形態は、乳酸菌培養液に浸漬可能、またはスプレー等により乳酸菌または乳酸菌培養液を均一に塗布できるようであればどのような形態でも良く、未加工の状態、表皮を剥離した状態、細切状、ペースト状、窄汁した液体、窄汁した残渣固形物、乾物、粉末等でも良い。
【0015】
また、本発明に係る発酵食品としては、例えば野菜類をベースにした飲料、漬物、ソース、ドレッシング、ジャム、フィリング、ゼリー、ムース、惣菜、餡、羊羹、ペースト、佃煮、乾燥野菜、カット野菜、スープ、などがある。
【実施例】
【0016】
次に、本発明に係る食品の脱色剤及び変色防止剤の実施例1乃至16として、それぞれ表1に示す乳酸菌1乃至16を用意した。
【0017】
【表1】

【0018】
乳酸菌1、4、8、10乃至14は、すんき漬から得た。すなわち、すんき漬の一部を乳酸菌用集積培地で集積培養後、滅菌生理食塩水で任意に希釈し、薬剤を添加した乳酸菌分離用寒天培地(GYP白亜寒天培地)で培養して乳酸菌の分離を行った。乳酸菌分離用寒天培地上に検出されたコロニーを個々に純培養し、常法によりグラム染色や顕微鏡による形態観察を行った後、16SrRNAをコードするSSU rDNAのさらに、PCR産物のシークエンスを行い、その塩基配列より乳酸菌の同定を行った。細菌同定検査キット(アピ50CHL(日本ビオメリュー(株))で乳酸菌の発酵特性の確認を行った。
【0019】
また、乳酸菌5と15は、市販のヨーグルトから得た。すなわち、市販のヨーグルト(ヴィリス、ヴァリオ社)を1000000倍希釈し、その100μlをBCP加プレートカウントアガール培地(日水製薬(株))で培養して乳酸菌の分離を行った。乳酸菌分離用寒天培地上に検出されたコロニーを個々に純培養し、常法によりグラム染色や顕微鏡による形態観察を行った後、16SrRNAをコードするSSU rDNAのさらに、PCR産物のシークエンスを行い、その塩基配列より乳酸菌の同定を行った。さらに細菌同定検査キット(アピ50CHL(日本ビオメリュー(株))で乳酸菌の発酵特性の確認を行った。
【0020】
これら食品より分離した乳酸菌以外の乳酸菌は、ATCC、NBRC及び(財)日本乳業技術協会より購入した。
【0021】
以下、これら実施例1乃至16に係る脱色剤をMRS培地(OXIOID)でそれぞれ純培養し、これら培養液を作用した。
【0022】
実験例1(ヤーコン)
先ず、変色したヤーコンの脱色効果について実験を行った。すなわち、洗浄、脱皮後、ペースト状にすり潰し、十分に酸化黒変させたヤーコン100重量部を121℃、15分間滅菌後、滅菌水50重量部を加え混合し、実施例1乃至16に係る脱色剤の培養液をそれぞれ2重量部加え、37℃で24時間発酵させた。発酵液をそれぞれ窄汁し、遠心分離した上清の色を410nmの吸光度で測定した。比較例として脱色剤を加えずに同様に操作したものを使用した。その結果を表2に示す。
【0023】
【表2】

【0024】
表2から明らかなように、黒変したヤーコンを実施例1乃至16に係る脱色剤で発酵させることにより黒変色素が分解され脱色された。
【0025】
実験例2(りんご)
次に、変色したりんごの脱色効果について実験を行った。すなわち、洗浄、脱皮後、ペースト状にすり潰し、十分に酸化褐変させたりんご100重量部を121℃、15分間滅菌後、滅菌水20重量部を加え混合し、実施例1乃至16に係る脱色剤の培養液をそれぞれ2重量部加え、37℃で96時間発酵させた。発酵液をそれぞれ窄汁し、遠心分離した上清の色を470nmの吸光度で測定した。比較例として脱色剤を加えずに同様に操作したものを使用した。その結果を表3に示す。
【0026】
【表3】

【0027】
表3から明らかなように、褐変したりんごを実施例1乃至16に係る脱色剤で発酵させることにより褐変色素が分解され脱色された。
【0028】
実験例3(ごぼう)
次に、変色したごぼうの脱色効果について実験を行った。すなわち、洗浄、脱皮後、ペースト状にすり潰し、十分に酸化黒変させたごぼう100重量部を121℃、15分間滅菌後、滅菌水200重量部を加え混合し、実施例1乃至16に係る脱色剤の培養液をそれぞれ2重量部加え、37℃で48時間発酵させた。発酵液をそれぞれ窄汁し、遠心分離した上清の色を550nmの吸光度で測定した。比較例として脱色剤を加えずに同様に操作したものを使用した。その結果を表4に示す。
【0029】
【表4】

【0030】
表4から明らかなように、黒変したごぼうを実施例1乃至16に係る脱色剤で発酵させることにより黒変色素が分解され脱色された。
【0031】
実験例4(れんこん)
次に、変色したれんこんの脱色効果について実験を行った。すなわち、洗浄、脱皮後、ペースト状にすり潰し、十分に酸化黒変させたれんこん100重量部にグラニュー糖50重量部を加え121℃、15分間滅菌後、滅菌水200重量部を加え混合し、実施例1乃至16に係る脱色剤の培養液をそれぞれ2重量部加え、37℃で48時間発酵させた。発酵液をそれぞれ窄汁し、遠心分離した上清の色を480nmの吸光度で測定した。比較例として脱色剤を加えずに同様に操作したものを使用した。その結果を表5に示す。
【0032】
【表5】

【0033】
表5から明らかなように、黒変したれんこんを実施例1乃至16に係る脱色剤で発酵させることにより黒変色素が分解され脱色された。
【0034】
実験例5(桃)
次に、変色した桃の脱色効果について実験を行った。すなわち、洗浄、脱皮後、ペースト状にすり潰し、十分に酸化褐変させた桃100重量部を121℃、15分間滅菌後、実施例1乃至16に係る脱色剤の培養液をそれぞれ2重量部加え、37℃で24時間発酵させた。発酵液をそれぞれ窄汁し、遠心分離した上清の色を620nmの吸光度で測定した。比較例として脱色剤を加えずに同様に操作したものを使用した。その結果を表6に示す。
【0035】
【表6】

【0036】
表6から明らかなように、褐変した桃を実施例1乃至16に係る脱色剤で発酵させることにより褐変色素が分解され脱色された。
【0037】
実験例6(なす)
次に、変色したなすの脱色効果について実験を行った。すなわち、洗浄後、表皮ごとペースト状にすり潰し、十分に酸化黒変させたなす100重量部に水200重量部を加え圧搾後、搾汁を121℃、15分間滅菌し、実施例1乃至16に係る脱色剤の培養液をそれぞれ2重量部加え、37℃で48時間発酵させた。発酵液をそれぞれ遠心分離し、上清の色を410nmの吸光度で測定した。比較例として脱色剤を加えずに同様に操作したものを使用した。その結果を表7に示す。
【0038】
【表7】

【0039】
表7から明らかなように、黒変したなすを実施例1乃至16に係る脱色剤で発酵させることにより黒変色素が分解され脱色された。
【0040】
実験例7(バナナ)
次に、変色したバナナの脱色効果について実験を行った。すなわち、洗浄、脱皮後、ペースト状にすり潰し、十分に酸化褐変させたバナナ100重量部に水200重量部を加え121℃、15分間滅菌後、実施例1乃至16に係る脱色剤をそれぞれ2重量部加え、37℃で24時間発酵させた。発酵液をそれぞれ窄汁し、遠心分離した上清の色を580nmの吸光度で測定した。比較例として脱色剤を加えずに同様に操作したものを使用した。その結果を表8に示す。
【0041】
【表8】

【0042】
表8から明らかなように、褐変したバナナを実施例1乃至16に係る脱色剤で発酵させることにより褐変色素が分解され脱色された。
【0043】
実験例8(さつまいも)
次に、変色したさつまいもの脱色効果について実験を行った。すなわち、洗浄、脱皮後、ペースト状にすり潰し、十分に酸化黒変させたさつまいも100重量部を121℃、15分間滅菌後、滅菌水500重量部を加え混合し、実施例1乃至16に係る脱色剤をそれぞれ2重量部加え、37℃で24時間発酵させた。発酵液をそれぞれ窄汁し、遠心分離した上清の色を410nmの吸光度で測定した。比較例として脱色剤を加えずに同様に操作したものを使用した。その結果を表9に示す。
【0044】
【表9】

【0045】
表9から明らかなように、黒変したさつまいもを実施例1乃至16に係る脱色剤で発酵させることにより黒変色素が分解され脱色された。
【0046】
実験例9
次に、実施例1乃至16に係る乳酸菌培養液の培養上清の脱色効果及び変色防止効果について実験を行った。すなわち、実施例1乃至16に係る乳酸菌をそれぞれMRS培地で37℃、24時間培養し、その培養液を遠心分離した培養上清を0.2μmのフィルターろ過したものそれぞれ10重量部を、洗浄、脱皮後、ペースト状にすり潰し窄汁後、十分に酸化黒変させ、121℃、15分間滅菌したヤーコンの窄汁液100重量部に添加後、37℃で10日間保存した。24時間後と10日後の保存液の色の変化を410nmの吸光度で測定した。比較例1として脱色剤または変色防止剤を添加していないものを、比較例2としてアスコルビン酸を1%添加したものを同様に試験した。その結果を表10に示す。
【0047】
【表10】

【0048】
表10から明らかなように、実施例1乃至16に係る乳酸菌培養液の培養上清を黒変したヤーコンの窄汁に添加することにより、黒変色素が分解され脱色されると共に、経時的な変色防止効果が得られた。
【0049】
実験例10
次に、ヤーコンの変色防止効果について実験を行った。洗浄、脱皮したヤーコンをすばやくスライスし、約5mm×5mm×50mmのスティック状にした。すぐにスライスしたヤーコン100重量部、滅菌水100重量部を加え、実施例1乃至16に係る変色防止剤の培養液をそれぞれ2重量部加え、37℃で12時間発酵後4℃で3日間保管し変色の度合いを調べた。比較例1として変色防止剤を添加していないものを、比較例2としてアスコルビン酸を0.3%添加したものを同様に試験した。その結果を表11に示す。
【0050】
【表11】

【0051】
表11から明らかなように、実施例1乃至16に係る変色剤は変色防止効果に優れていた。
【0052】
実験例11
次に、変色したヤーコンの脱色効果と乳酸菌数の関係について実験を行った。すなわち、洗浄、脱皮後、ペースト状にすり潰し、十分に酸化黒変させたヤーコン100重量部を121℃、15分間滅菌後、滅菌水50重量部を加え混合した。これとは別に、実施例1乃至16に係る脱色剤をMRS培地(OXIOID)を使用して20℃でそれぞれ72時間(実施例4,12,14は20℃でそれぞれ96時間)純培養し、培養液1mLあたり乳酸菌数約1×10の培養液を得た。この液を生理食塩水にて希釈し、希釈培養液1mLあたり乳酸菌数1×10以下,乳酸菌数1×10以上、1×10未満,乳酸菌数1×10以上、1×10未満,乳酸菌数1×10以上の数になるように調整した。具体的な乳酸菌数は表12に示した。
【0053】
次に、先に作製したヤーコン調整液1kgに、菌数を調整した乳酸菌希釈培養液を1mL加え、37℃で24時間発酵させた。発酵液をそれぞれ搾汁し、遠心分離した上清の色を410nmの吸光度で測定した。比較例として脱色剤を加えずに同様に操作したものを使用した。比較例の吸光度と比較することにより脱色率を算出した。その結果を表12に示す。
【0054】
【表12】

【0055】
表12に示すように乳酸菌数が1×10以上のものは脱色効果が大きいことが分かった。
【0056】
実施例17
次に、本発明に係る脱色剤が含まれた発酵食品の実施例17として、発酵ヤーコンのシロップ漬けを作製した。先ず、原材料となるヤーコンを洗浄し、皮を剥いてから1.5cm角に切断したもの100部及び果糖ぶどう糖液等糖で糖度30に調整したシロップ250部を均一に混合し、90℃、30分間殺菌後、45℃まで冷却し、乳酸菌11に係るペディオコッカス・ペントサセウスのスタータを20部添加し、容器に充填した後、37℃で発酵させた。約72時間後に発酵を終了させ、冷却することによって、実施例17に係る発酵食品を得た。発酵終了時のpHは4.0であり、製造工程で変色したヤーコンが脱色され、変色前の淡色の発酵ヤーコンのシロップ漬けとなった。
【0057】
実施例18
次に、本発明に係る脱色剤が含まれた発酵食品の実施例18として、発酵ヤーコンのジャムを作製した。先ず、原材料となるヤーコンを洗浄し、皮を剥いてからペースト状にしたもの100部及び果糖ぶどう糖液等糖で糖度20に調整したシロップ70部を均一に混合し、90℃、30分間殺菌後、45℃まで冷却し、乳酸菌10に係るロイコノストック・シトレウスのスタータを30部添加し、37℃で発酵させた。約48時間後に発酵を終了させた。発酵終了時のpHは3.7であった。このヤーコン発酵液を加熱し、砂糖130重量部を徐々に添加して糖度54になるまで煮詰め、冷却することによって、実施例18に係る発酵食品を得た。製造工程で変色したヤーコンが脱色され、変色前の淡色の発酵ヤーコンのジャムとなった。
【0058】
実施例19
次に、本発明に係る脱色剤が含まれた発酵食品の実施例19として、発酵ヤーコンのベジタブルソース入りヨーグルトを作製した。先ず、原材料となるヤーコンを洗浄し、皮を剥いてから1.5cm角に切断したもの100部、ペースト状にすり潰したヤーコン100部及び果糖ぶどう糖液糖で糖度35に調整したシロップ150部を均一に混合し、90℃、30分間殺菌後、45℃まで冷却し、乳酸菌4に係るラクトバチルス・フェルメンタムのスタータを20部添加し、容器に充填した後、37℃で発酵させた。約24時間後にpHは3.6で発酵を終了させ、冷却した。その後予め作製したヨーグルト、すなわち生乳600部、脱脂粉乳120部及び水300部を均一に混合し、溶解、殺菌後、乳酸菌3に係るラクトバチルス・アシドフィラス、乳酸菌5に係るラクトコッカス・ラクティス及び乳酸菌7に係るストレプトコッカス・サルバリウス・subsp・サーモフィラスの混合スタータを120部添加し、40℃でpH4.1になるまで発酵させたヨーグルトに、発酵ヤーコンのベジタブルソース及び果糖ぶどう糖液糖80部を混合し、容器に充填することによって、実施例19に係る発酵食品を得た。製造工程で変色したヤーコンが脱色され、変色前の淡色の発酵ヤーコンのベジタブルソース入りヨーグルトとなった。
【0059】
実施例20
次に、本発明に係る脱色剤が含まれた発酵食品の実施例20として、野菜類の発酵酸乳飲料を作製した。先ず、原材料となるりんご、もも、バナナ、ヤーコンを洗浄し、皮を剥き細断したもの100部及び水250部をミキサーにかけペースト状とし、均一に混合後90℃、30分間殺菌後、45℃まで冷却し、牛乳100部及び乳酸菌1に係るラクトバチルス・プランタラムのスタータを30部添加し、容器に充填した後、37℃で発酵させた。約30時間後に発酵を終了させ、冷却することによって、実施例20に係る発酵食品を得た。発酵終了時のpHは3.8であり、製造工程で変色した野菜類が脱色され、変色前の淡色の野菜類の発酵酸乳飲料となった。
【0060】
実施例21
次に、本発明に係る脱色剤が含まれた発酵食品の実施例21として、ゴボウの発酵サラダを作製した。先ず、原材料となるゴボウを洗浄し、皮を剥き、笹がきにしたもの100部及び水150部を均一に混合後90℃、30分間殺菌後、冷却し、乳酸菌13に係るロイコノストック・ガーリカムのスタータを20部添加し、30℃で48時間発酵させることによって実施例21に係る発酵食品を得た。その後、細切りにしたにんじん50重量部とさいの目切りにしたソーセージ30重量部及びマヨネーズ50重量部を加え、混合してゴボウサラダを作製した。発酵終了時のpHは4.2であり、製造工程で変色したゴボウが脱色された。
【0061】
実施例22
次に、本発明に係る脱色剤及び変色防止剤が含まれた発酵食品の実施例22として、れんこんの真空包装されたカット野菜を作製した。先ず、原料となるれんこんを洗浄し、皮を剥き、0.5cmの厚さにスライスし、90℃、30分間殺菌した。この殺菌済みれんこん100重量部に、実施例15に係る乳酸菌ロイコノストック・パラメセンテロイデスの遠心分離とフィルター処理により除菌した培養液の培養上清50重量部を加え真空包装することによって、実施例22に係る発酵食品を得た。製造工程で変色したれんこんが脱色され、また室温保存時においても変色することのないれんこんの真空包装されたカット野菜が得られた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳酸菌を主成分とし、その発酵処理によって酸化により変色した色を脱色する野菜類の脱色剤。
【請求項2】
前記乳酸菌は、ラクトバチルス属に属する乳酸菌、ロイコノストック属に属する乳酸菌、ペディオコッカス属に属する乳酸菌、ストレプトコッカス属に属する乳酸菌、エンテロコッカス属に属する乳酸菌及びラクトコッカス属に属する乳酸菌のいずれか1以上であることを特徴とする請求項1記載の野菜類の脱色剤。
【請求項3】
乳酸菌を主成分とし、その発酵処理によって酸化による変色を防止する野菜類の変色防止剤。
【請求項4】
前記乳酸菌は、ラクトバチルス属に属する乳酸菌、ロイコノストック属に属する乳酸菌、ペディオコッカス属に属する乳酸菌、ストレプトコッカス属に属する乳酸菌、エンテロコッカス属に属する乳酸菌及びラクトコッカス属に属する乳酸菌のいずれか1以上であることを特徴とする請求項3記載の野菜類の変色防止剤。
【請求項5】
酸化によって変色した野菜類に乳酸菌を作用して発酵することによって、その変色した色を脱色することを特徴とする野菜類の脱色方法。
【請求項6】
前記乳酸菌は、ラクトバチルス属に属する乳酸菌、ロイコノストック属に属する乳酸菌、ペディオコッカス属に属する乳酸菌、ストレプトコッカス属に属する乳酸菌、エンテロコッカス属に属する乳酸菌及びラクトコッカス属に属する乳酸菌のいずれか1以上であることを特徴とする請求項5記載の野菜類の脱色方法。
【請求項7】
野菜類に乳酸菌を作用して発酵することによって、酸化による変色を防止することを特徴とする野菜類の変色防止方法。
【請求項8】
前記乳酸菌は、ラクトバチルス属に属する乳酸菌、ロイコノストック属に属する乳酸菌、ペディオコッカス属に属する乳酸菌、ストレプトコッカス属に属する乳酸菌、エンテロコッカス属に属する乳酸菌及びラクトコッカス属に属する乳酸菌のいずれか1以上であることを特徴とする請求項7記載の野菜類の変色防止方法。
【請求項9】
請求項5又は6記載の野菜類の脱色方法によって脱色され、又は請求項7又は8記載の野菜類の変色防止方法によって変色防止処理された発酵食品。

【公開番号】特開2008−259477(P2008−259477A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106281(P2007−106281)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(000118615)伊那食品工業株式会社 (95)
【Fターム(参考)】