説明

量子ドットナノワイヤーアレイを有する太陽電池及びその製造方法

【課題】量子ドットナノワイヤーアレイを備えた太陽電池及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明による太陽電池は、媒質及び半導体量子ドットからなる異質構造の量子ドットナノワイヤーアレイ、量子ドットナノワイヤーにそれぞれ接触するp型、n型半導体及び電極を含んで構成され、半導体量子ドットのバンドギャップエネルギーの調節が容易であり、半導体量子ドットが互いに異なる様々なバンドギャップエネルギーを有するため、可視光から赤外線の広いスペクトルで光電変換が可能であり、高密度の量子ドットナノワイヤーアレイの内部に量子ドットが埋め込まれている構造を有するため、光吸収が極大化され、量子ドットナノワイヤーがp型、n型半導体の広い面積で接して電子及び正孔の伝導効率が高いという長所を有し、本発明による製造方法は、数ナノ厚さの媒質層及び半導体層が積層された積層薄膜を形成した後、これをエッチングすることにより、半導体量子ドットを備えた量子ドットナノワイヤーアレイを製造して簡単で経済的な工程により高効率の太陽電池を製造でき、積層薄膜の半導体層の厚さ、媒質の種類、量子ドットナノワイヤーの短軸径などを調節して吸収可能な光の波長を容易に調節でき、赤外線から可視光の広い領域の光を吸収して電子/正孔対を生成できるという長所がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、量子ドットナノワイヤーアレイを備えた太陽電池及びその製造方法に関するものであって、詳細には、半導体量子ドットが内部に埋め込まれている量子ドットナノワイヤーアレイを備えた太陽電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化の主犯である二酸化炭素の排出を規制するために、1997年12月に京都議定書が採択され、その後、膨大な二酸化炭素の排出量を調節するために、太陽エネルギー、風力、水力のようなリサイクル可能で、清浄な代替エネルギー源に対する研究が盛んである。
【0003】
清浄代替エネルギーとして注目を浴びている太陽光素子(太陽電池)は、半導体が光を吸収して電子と正孔が発生されるという光起電効果を用いて電流−電圧を生成する素子を意味する。
【0004】
太陽電池の半導体としては、高安定性及び高効率のシリコンやガリウムヒ素(GaAs)のような無機物半導体のn−pダイオードが主に用いられたが、その製造コストが高くて太陽電池への実質的活用が困難である。
【0005】
より低コストの太陽電池を開発するために、染料感応物質、有機/高分子物質を用いた太陽電池に対する研究が活発に行われているが、シリコン基盤の太陽電池に比べてその効率が非常に低く、劣化による寿命が短いため、実際の市場占有率は3%内外の微々たるものである。
【0006】
上述したように、大部分の太陽電池は、シリコン単結晶、シリコン多結晶を用いるが、太陽光システムの構築時、シリコン素材及びウェハーが占める費用が全体構築費用の40%を超えており、これに対する現実的解決策として、構造的(morphology)/物理化学的(Eg engineering)接近により、単位電力生産に必要なシリコン量を低減する努力と薄膜型素子によりシリコンの消耗を最小化する努力が図られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、可視光から赤外線の広いスペクトルで光電変換が可能で、高い比表面積により光吸収が極大化され、光を吸収して生成された電子及び正孔の伝導効率が高い太陽電池を提供することにその目的があり、また、半導体エネルギーバンドギャップの調節が容易であり、光電変換が発生する光吸収層が高い比表面積を有し、簡単で経済的な工程により高効率の太陽電池を製造する方法を提供することに他の目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による太陽電池の製造方法は、a)p型またはn型不純物がドーピングされた半導体基板の上部に半導体窒化物または半導体酸化物の媒質層(matrix layers)と半導体層を繰り返し積層して複合積層層を製造するステップと、b)上記複合積層層を上記半導体基板の垂直方向に部分エッチング(etching)して上記半導体基板に一端が固定され、互いに離隔されて垂直配列された量子ドットナノワイヤーアレイを製造するステップと、c)上記量子ドットナノワイヤーアレイが形成された半導体基板の上部に上記半導体基板に対して相補的不純物がドーピングされた半導体を蒸着して、少なくとも上記量子ドットナノワイヤーの他端と上記半導体基板との間の空間を相補的不純物がドーピングされた半導体で満たすステップと、d)上記半導体基板の下部に下部電極を形成し、上記下部電極に対応するように、上記量子ドットナノワイヤーアレイ及び相補的不純物がドーピングされた半導体の表面上部または相補的不純物がドーピングされた半導体の上部に上部電極を形成するステップと、を含んで行われる特徴がある。
【0009】
上記a)ステップの上記複合積層層は、PVDまたはCVDを用いた蒸着工程により製造され、上記複合積層層を構成する上記半導体層及び上記媒質層は、互いに独立して10nm以下の厚さであることが好ましく、上記量子ドット複合積層層を構成する複数の上記半導体層は互いに異なる厚さを有することが好ましく、各半導体層の厚さは互いに独立して10nm以下であることが好ましい。
【0010】
上記b)ステップは、b1−1)上記量子ドット複合積層層の上部にAg、Auまたは遷移金属の触媒金属を網状(mesh)に蒸着するステップと、b1−2)フッ酸及び過酸化水素を含有する混合水溶液を用いて湿式エッチングをするステップと、を含んで行われることが好ましい。
【0011】
上記b)ステップは、b2−1)上記量子ドット複合積層層の上部に円形の金属ナノドットアレイを形成するステップと、b2−2)上記金属ナノドットをマスクとしてイオンビームエッチング(RIE)するステップと、を含んで行われることが好ましい。
【0012】
このとき、上記b)ステップのエッチング(湿式エッチングまたはイオンビームエッチング)によりナノディスク状の媒質及びナノディスク状の半導体が順次繰り返し結合されている複合ナノワイヤーの形状が製造され、上記エッチング工程中またはその後、上記ナノディスク状の半導体表面を自然酸化させる特徴がある。
【0013】
上記b)ステップのエッチングにより媒質内に半導体量子ドットが埋め込まれた量子ドットナノワイヤーが製造され、上記半導体量子ドットの大きさは上記量子ドット複合積層層を構成するそれぞれの半導体層の厚さにより制御され、上記媒質の種類、上記量子ドットナノワイヤーを構成する上記半導体量子ドットの大きさまたはこれらの組み合わせにより光吸収波長が制御される特徴がある。
【0014】
上記c)ステップはCVDまたはPVDを用いた蒸着であることが好ましい。
【0015】
好ましくは、上記半導体基板はp型(またはn型)シリコン基板であり、上記相補的不純物がドーピングされた半導体はn型(またはp型)シリコンであり、上記媒質はシリコン酸化物またはシリコン窒化物であり、上記複合積層層の半導体はシリコンである。
【0016】
上述した製造方法で製造された本発明による太陽電池は、下部電極と、上記下部電極上に形成されたn型またはp型不純物がドーピングされた第1半導体層と、上記第1半導体層上に形成され、上記第1半導体層に対して相補的不純物がドーピングされた第2半導体層と、上記第2半導体層上に形成された上部電極と、上記第2半導体層内に、互いに離隔されて垂直配列された量子ドットナノワイヤーアレイと、を含んで構成され、上記量子ドットナノワイヤーは、一端が上記第1半導体層に接触され、媒質と上記媒質に囲まれた1つ以上の半導体量子ドットからなる特徴がある。
【0017】
このとき、上記量子ドットナノワイヤーの他端が上記第2半導体層の表面上に存在して上記他端が上記上部電極に接触されてもよく、上記量子ドットナノワイヤーの他端が上記第2半導体層内に存在して上記量子ドットナノワイヤーが上記第2半導体層に組み込まれて(embedded)いてもよい。
【0018】
上記第1半導体層及び上記第2半導体層は、同一の半導体物質に互いに異なる性質(p型またはn型)の不純物がドーピングされたものが好ましく、上記媒質は半導体窒化物、半導体酸化物またはこれらの混合物であることが好ましい。さらに好ましくは、上記半導体窒化物または上記半導体酸化物は、上記第1半導体層及び上記第2半導体層を構成する半導体物質と同一の半導体の酸化物または窒化物である。
【0019】
上記量子ドットナノワイヤーは、2つ以上の上記半導体量子ドットが上記量子ドットナノワイヤーの長手方向に配列される特徴があり、上記量子ドットナノワイヤーに含まれた上記半導体量子ドットは、大きさを同一または異なるように製作してもよい。
【0020】
上記量子ドットナノワイヤーは、直径が10nm以下の半導体量子ドットで構成されることが好ましい。
【0021】
本発明による太陽電池は、上記媒質の種類、上記半導体量子ドットの大きさまたはこれらの組み合わせにより光吸収波長が制御される特徴がある。
【0022】
好ましくは、上記第1半導体層は、p型シリコン層であり、上記第2半導体層はn型シリコン層であり、上記媒質はシリコン酸化物、シリコン窒化物またはこれらの混合物であり、上記半導体量子ドットはシリコン量子ドットである。
【発明の効果】
【0023】
本発明による太陽電池は、媒質及び半導体量子ドットからなる異質構造の量子ドットナノワイヤーアレイ、上記量子ドットナノワイヤーにそれぞれ接触するp型、n型半導体及び電極を含んで構成され、半導体量子ドットのバンドギャップエネルギーの調節が容易であり、半導体量子ドットが互いに異なる多様なバンドギャップエネルギーを有するため、可視光から赤外線の広いスペクトルで光電変換が可能であり、高密度の量子ドットナノワイヤーアレイの内部に量子ドットが埋め込まれている構造を有するため、光吸収が極大化され、上記量子ドットナノワイヤーがp型、n型半導体の広い面積で接して電子及び正孔の伝導効率が高いという長所を有し、本発明による製造方法は、数ナノの厚さを有する媒質層及び半導体層が積層された積層薄膜を形成した後、これをエッチングすることにより、半導体量子ドットを備えた量子ドットナノワイヤーアレイを製造して簡単で経済的な工程により高効率の太陽電池を製造でき、積層薄膜の半導体層の厚さ、媒質種類、量子ドットナノワイヤーの短軸径などを調節して吸収可能な光の波長を容易に調節でき、赤外線から可視光の広い領域の光を吸収して電子/正孔対を生成できるという長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による太陽電池の製造方法の工程図を示す一例である。
【図2】本発明による太陽電池の製造方法において、量子ドットナノワイヤーアレイを製造する工程図を示す一例である。
【図3】本発明による太陽電池の製造方法において、量子ドットナノワイヤーアレイを製造する工程図を示す他の例である。
【図4】本発明による太陽電池の製造方法において、RIEによる凹凸形成ステップを示す工程図の一例である。
【図5】本発明による太陽電池の製造方法において、量子ドットナノワイヤーアレイを製造する工程図を示すまた他の例である。
【図6】本発明による太陽電池の構造を示す一例である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付した図面を参照して本発明の太陽電池及びその製造方法を詳細に説明する。添付した図面は、当業者に本発明の思想を十分に伝達するために提供される一例である。したがって、本発明は、以下に提示する図面に限定されず、他の形態として具体化されてもよい。また、明細書全般にわたって同一の参照番号は同一の構成要素を示す。
【0026】
また、使用される技術用語及び科学用語は、別途の定義がない限り、この発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が通常的に理解する意味を有し、下記の説明及び添付図面で本発明の要旨をかえって不明にする公知機能及び構成に対する説明は省略する。
【0027】
図1は、本発明による製造方法を示す一工程図であり、p型半導体層110の上部に、蒸着工程を用いて媒質薄膜(媒質層)121と半導体薄膜(半導体層)122を交互に蒸着して多層薄膜構造の複合積層層120を製造した後、製造された複合積層層120をp型半導体層110の表面に対して垂直方向に部分エッチングするトップ−ダウン(top-down)方式で量子ドットナノワイヤー130のアレイを製造する。
【0028】
蒸着時、上記媒質薄膜121及び半導体薄膜122の厚さを、それぞれナノメートルオーダー(order)になるように蒸着することが好ましく、媒質薄膜121及び半導体薄膜122の厚さが互いに独立して10nm以下になるように蒸着することがさらに好ましい。
【0029】
上記媒質薄膜121は、半導体酸化物、半導体窒化物またはこれらの混合物であり、上記複合積層層120を構成する複数の媒質薄膜121は、膜ごとに互いに異なる物質(半導体酸化物、半導体窒化物、半導体酸化物と半導体窒化物の混合物)及び互いに異なる厚さを有してもよい。
【0030】
本発明による量子ドットナノワイヤー130は、複合積層層120を部分エッチングして製造されるため、複合積層層120を構成する結晶質または非晶質の媒質131及び結晶質または非晶質の半導体132が互いに異種界面(interphase interface)をもって混合されており、結晶質または非晶質の半導体132が量子ドット状でナノワイヤー内に組み込まれて(embedded)いる構造を有する。
【0031】
具体的には、上記量子ドットナノワイヤー130のアレイを製造するための上記エッチング過程中またはエッチング過程後に、エッチングにより表面に露出される半導体132の表面自然酸化を誘導することにより、上記量子ドットナノワイヤー130を構成する半導体が量子ドット状でナノワイヤー内に組み込まれる。
【0032】
上述したように、本発明の量子ドットナノワイヤー130のアレイは、貴金属触媒を用いたVLS成長法のようなボトムアップ(bottom-up)方式ではなく、複合積層層120の部分エッチング(etching)によるトップ−ダウン(top-down)方式で量子ドットナノワイヤー130のアレイを製造し、これによって、ナノワイヤーが付着されるp型半導体層110の物質、結晶性、表面の結晶学的方向などに関らず、p型半導体層110に垂直配向するように量子ドットナノワイヤー130を形成でき、複数の量子ドットナノワイヤー130が規則的で、高密度に配列される特徴を有する。
【0033】
複合積層層120の部分エッチング(etching)により量子ドットナノワイヤー130が製造されるため、上記量子ドットナノワイヤー130は、2つ以上の埋め込まれた量子ドット132がナノワイヤーの長軸の長手方向に配列されている構造を有し、図1には同一の厚さを有する半導体膜122を示しているが、複合積層層120を構成する半導体膜122の厚さをそれぞれ異なるように制御することにより、上記量子ドットナノワイヤー130の長軸の長手方向に配列された量子ドット132の大きさを互いに異なるように制御することができる。
【0034】
詳細には、エッチングによるトップ−ダウン(top-down)方式により、量子ドットナノワイヤー130及びそのアレイが製造されるため、上記複合積層層120を構成する媒質薄膜121と半導体薄膜122のそれぞれの厚さ及び繰り返し蒸着回数を制御して、量子ドットナノワイヤー130の長軸の長さを制御でき、複合積層層120を構成する半導体薄膜122の膜数を制御して、上記量子ドットナノワイヤー130に埋め込まれた半導体量子ドット132の数を制御でき、複合積層層120を構成する半導体薄膜122の厚さを制御して、半導体量子ドット132の大きさを制御できる特徴がある。
【0035】
また、上記複合積層層120内の半導体薄膜122の位置を制御して、上記量子ドットナノワイヤー130内の半導体量子ドット132の位置を制御できる特徴がある。
【0036】
また、上記複合積層層120の厚さを数ナノメートル〜数百ナノメートルで製造して、複合積層層120のエッチングにより製造される量子ドットナノワイヤーの長軸の長さが数ナノメートル〜数百ナノメートルの長さを有するように制御することが好ましい。
【0037】
数〜数十ナノメートルオーダーの短軸径を有する量子ドットナノワイヤー及び高密度の量子ドットナノワイヤーアレイを製造するために、上記部分エッチングは、金属を触媒として用いた化学的エッチング(metal-assisted chemical etching)またはイオンビームエッチング(RIE;Reactive Ion Etching)であることが好ましい。
【0038】
図1は、金属触媒を用いた化学的エッチング方法による製造方法を示している。上記媒質薄膜121及び半導体薄膜122の厚さをそれぞれナノメートルオーダー(order)になるように繰り返し蒸着して複合積層層120を製造した後、上記複合積層層120の上部にAg、Auまたは遷移金属の触媒金属200を網状(mesh)に蒸着する。製造される量子ドットナノワイヤー130の短軸径は、上記網状の触媒金属200のキャビティの大きさにより決定される。好ましくは、上記触媒金属の形状は、直径が数〜数十ナノメートルオーダーである円形のキャビティが規則的に互いに離隔配列されている網状である。
【0039】
エッチングに触媒作用をする網状の触媒金属200が形成された後、化学的湿式エッチングを行い、図1に示すように、p型半導体層110に一端が接触/固定されており、均一な大きさで規則的に密集配列されている量子ドットナノワイヤー130のアレイを製造する。
【0040】
その後、上記p型半導体層110に対して相補的不純物がドーピングされたn型半導体を蒸着する工程が行われる。
【0041】
上記蒸着時、上記p型半導体層110の上部に、上記複合積層層120の部分エッチングにより形成された空間を全てn型半導体140で満たすが(filling)、好ましくは、上記量子ドットナノワイヤー130のアレイを完全に覆い、表面にn型半導体140だけ存在するように蒸着する。これは光を吸収して、上記半導体量子ドット130から生成された電子−正孔の分離及び移動を円滑にして外部への抽出効率を増加させるためである。
【0042】
その後、上記p型半導体層110の下部及び上記n型半導体140の表面にそれぞれ対向するように電極を形成し、本発明による太陽電池を製造する。
【0043】
図2は、図1の製造方法において、網状の触媒金属の形成ステップ及びエッチングステップの平面図である。上記複合積層層120の最上部に形成された媒質層121の上部に、直径が数〜数十ナノメートルオーダーである円形のキャビティが規則的に互いに離隔配列されている網状の触媒金属200が形成された後、上記金属200を触媒にした化学的湿式エッチングが行われてp型半導体層110に垂直に配列された規則的密集構造を有する量子ドットナノワイヤーアレイが製造される。
【0044】
図3は、本発明による製造方法において、触媒金属を用いた化学的エッチングを行って量子ドットナノワイヤーアレイを製造するステップをより詳細に示した工程断面図である。図3は、様々な大きさの半導体量子ドットがナノワイヤーの長手方向に組み込み配列された量子ドットナノワイヤーを製造するために、半導体薄膜122が互いに異なる厚さを有するように蒸着された例である。
【0045】
高比表面積を有するように量子ドットナノワイヤー130を高密度に製造し、上記量子ドットナノワイヤー130の短軸径を数〜数十ナノメートルオーダーに製造するために、上記網状の触媒金属200は、ナノ多孔性アルミナ(AAO;anodic alumina oxide)300をマスクとして用いて製造されることが好ましい。
【0046】
上記ナノ多孔性アルミナは、数ナノメートルの貫通気孔が形成されたアルミナであって、アルミニウムを硫酸、シュウ酸またはリン酸を電解質として陽極酸化させて製造することができる。詳細なナノ多孔性アルミナの製造方法は、本出願人の論文(W.Lee et al.Nature Nanotech.3,402(2008))に記載されている。
【0047】
詳細には、図3及び図4に示すように、上記ナノ多孔性アルミナ300をマスクとして複合積層層120を部分的にイオンビームエッチング(RIE)して上記複合積層層120の表面に表面凹凸を形成する。
【0048】
したがって、上記複合積層層120が、上記ナノ多孔性アルミナ300の気孔(図4のpore)の形状に対応して一定の深さエッチング(図4のetched)されて表面凹凸が形成される。
【0049】
その後、上記表面凹凸が形成された複合積層層120’の上部に触媒金属を蒸着するが、触媒金属の蒸着時、複合積層層120’の表面段差により凸領域(RIEによりエッチングされていない領域)に選択的に触媒金属が蒸着され、ナノ多孔性アルミナ300とほぼ同様の大きさ及び配列を有するキャビティが形成された網状金属200が製造される。
【0050】
化学的エッチング時、触媒作用をする上記金属200は、Ag、Auまたは遷移金属の触媒金属が好ましく、上記遷移金属はFeまたはNiが好ましい。
【0051】
上記金属触媒を用いた湿式エッチングにおいて、エッチング液としてフッ酸及び過酸化水素水が混合された混合水溶液が好ましい。
【0052】
好ましくは、上記エッチング液は、フッ酸:過酸化水素:水の体積比が1:0.3〜0.7:3〜4で混合された溶液である。これは、金属触媒下で上記複合積層層120を構成する半導体薄膜122及び媒質薄膜121を効果的にエッチングする物質及び比率であり、長さに関らず、均一な表面を有する量子ドットナノワイヤー130を製造するための条件である。
【0053】
湿式エッチングの進行につれて、ナノディスク状の媒質及びナノディスク状の半導体が順次繰り返し結合されている量子ドットナノワイヤーの形状が製造されるが、上記エッチング工程において、上記ナノディスク状の半導体の表面が、エッチング液に含まれている酸素(過酸化水素水、水)と反応してその表面が自然酸化される。これによって、上記ナノディスク状の半導体(量子ドットナノワイヤーを構成する半導体)は、表面がエッチング液により自然酸化され、結果的に量子ドットの形状で量子ドットナノワイヤーの内部に埋め込まれた構造を有するようになる。
【0054】
上述したナノ多孔性アルミナ(AAO)を用いた金属網200及び金属触媒を用いた化学的エッチングにより、量子ドットナノワイヤーの短軸径は5nm〜25nmの非常に微細なナノワイヤーを約2×1010〜3×1010個/cmの水準に高密度で製造することができる(本出願人の論文Nano Lett.8、accepted for publication、2008.参考)。
【0055】
図5は、本発明による製造方法において、イオンビームエッチングを行って量子ドットナノワイヤーアレイを製造するステップを示した工程断面図である。
【0056】
蒸着工程により複合積層層120が形成された後、上述した金属触媒を用いた化学的湿式エッチングにより量子ドットナノワイヤーアレイを製造できるが、図5に示すように、ナノ多孔性アルミナ(AAO)及びイオンビームエッチング(RIE)を用いて量子ドットナノワイヤーアレイを製造することができる。
【0057】
図5に示すように、複合積層層120の上部にナノ多孔性アルミナ(AAO、300)をマスクとして金属を蒸着する。このとき、上記金属は、ナノ多孔性アルミナの気孔の大きさ及び配列とほぼ同様の大きさ及び配列をもって上記複合積層層120の上部に蒸着される。上記金属蒸着工程により製造された円形の金属点(ナノ大きさを有する円形ディスク状の金属)210をエッチングマスクとして、p型半導体層110に垂直方向にイオンビームエッチング(RIE)して量子ドットナノワイヤー130のアレイを製造する。このとき、上記イオンビームエッチング後、空気に露出された酸素により半導体表面の自然酸化が起こり、化学的湿式エッチングと同様に、量子ドットナノワイヤー130の内部に埋め込まれた半導体量子ドットの形状を有するようになる。
【0058】
図5の上述した方法は、上記化学的湿式エッチングに比べて工程時間が少し長くかかるが、数ナノメートル厚さの微細なナノワイヤーを高密度に製造できる方法である。RIE工程では、SF/Oプラズマ(40sccm、10mTorr、200W)が好ましく、得られた量子ドットナノワイヤーの長さはRIE時間を調節して制御できるという長所がある。
【0059】
図1から図5に示した本発明の製造方法によれば、光素子のp−n接合(junction)において、p型半導体またはn型半導体の上部に数ナノメートル厚さの媒質層及び半導体層を順次蒸着した後、ナノ多孔性アルミナ及び触媒金属を用いた化学的湿式エッチングやナノ多孔性アルミナ及びイオンビームエッチングを用いた乾式エッチングのトップ−ダウン方式により、微細で、高密度の量子ドットナノワイヤーアレイを製造し、
【0060】
エッチング時のエッチング剤またはエッチング後の酸素雰囲気に露出させて量子ドットナノワイヤーを構成する半導体表面を自然酸化することにより、量子ドットナノワイヤー内に半導体量子ドットの形状で埋め込まれた構造を有するようにし、
【0061】
量子ドットナノ線間のエッチングにより生成された空間に、相補的不純物がドーピングされた半導体物質で蒸着することにより、電子/正孔の移動効率の高いp−n接合(junction)を形成し、
【0062】
複合積層層の蒸着工程において、半導体薄膜の厚さ、媒質薄膜の物質種類を制御することにより、最終的に量子ドットナノワイヤー内の半導体量子ドットのバンドギャップエネルギーを制御し、
【0063】
複合積層層の蒸着工程において、互いに異なる厚さを有する半導体薄膜と媒質薄膜とを交互に蒸着して多様な範囲のバンドギャップエネルギーを有するようにして、赤外線から可視光線の広い波長領域の光を吸収できるようにする。
【0064】
上記複合積層層は、PVDまたはCVDを用いた通常の半導体蒸着工程で行われてもよい。上記相補的不純物がドーピングされた半導体物質の蒸着は、PVDまたはCVDを用いた通常の半導体工程で行われてもよく、好ましくはCVDを用いた蒸着である。
【0065】
上記電極層151,152は、導電性金属ペーストを用いたスクリーン印刷、ステンシル印刷などの通常の印刷方法またはPVD/CVDを用いた蒸着により製造される。
【0066】
本発明の製造方法は、上記媒質の種類、量子ドットナノワイヤーを構成する半導体量子ドットの大きさまたはこれらの組み合わせにより光吸収波長(半導体量子ドットのバンドギャップ)を容易に制御でき、低次元ナノ構造物形態の光活性層をトップ−ダウン方式により低コストで容易に製造できる長所がある。
【0067】
本発明の製造方法は、半導体量子ドットにより光を吸収して電子−正孔対を生成する半導性物質、p型半導体としてp型不純物がドーピングされた半導性物質、n型半導体としてn型不純物がドープされた半導性物質、媒質として半導性物質の窒化物または酸化物を用いて太陽電池を製造できるが、本発明を用いて効果的に太陽電池を製造するために、上記半導体基板はp型シリコン基板であり、上記相補的不純物がドーピングされた半導体はn型シリコンであり、上記媒質はシリコン酸化物またはシリコン窒化物であり、上記複合積層層の半導体はシリコンであることが好ましい。
【0068】
図6は、本発明の製造方法で製造された太陽電池の断面構造を示す図であり、下部電極152と、上記下部電極上に形成されたn型またはp型不純物がドーピングされた第1半導体層110と、上記第1半導体層上に形成され、上記第1半導体層110に対して相補的不純物がーピングされた第2半導体層140と、上記第2半導体層140上に形成された上部電極151と、上記第2半導体層140内に互いに離隔されて垂直配列された量子ドットナノワイヤー130のアレイと、を含んで構成され、上記量子ドットナノワイヤー130は、一端が上記第1半導体層110に接触し、媒質131と上記媒質に囲まれた1つ以上の半導体量子ドット132からなる。
【0069】
このとき、上記量子ドットナノワイヤー130の他端が上記第2半導体層140の表面上に存在して上記他端が上記上部電極151に接触してもよく、上記量子ドットナノワイヤー130の他端が上記第2半導体層140内に存在して上記量子ドットナノワイヤー130が上記第2半導体層140に組み込まれて(embedded)いる構造であってもよい。
【0070】
上記媒質131は、半導体窒化物、半導体酸化物またはこれらの混合物である。
【0071】
好ましくは、上記第1半導体層110と上記第2半導体層140は、同一の半導性物質に、相補的である不純物がそれぞれドーピングされているものであり、上記媒質は、上記第1または第2半導体層110,140の半導性物質の窒化物、半導体酸化物またはこれらの混合物である。
【0072】
上記量子ドットナノワイヤー130は、2つ以上の上記半導体量子ドット132が上記量子ドットナノワイヤー130の長手方向に配列されており、上記量子ドットナノワイヤー130に備えられた半導体量子ドット132は互いに異なる大きさを有する。このとき、上記量子ドットナノワイヤーに備えられた上記半導体量子ドットの直径は1nm〜10nmであり、上記量子ドットナノワイヤーの短軸径は5nm〜10nmであり、上記量子ドットナノワイヤーの密度は2×1010〜3×1010個/cmである。
【0073】
本発明による太陽電池は、半導体量子ドットの大きさ及び媒質の種類を制御して半導体量子ドットのバンドギャップエネルギーを容易に調節でき、互いに異なる大きさの半導体量子ドットが量子ドットナノワイヤー内に備えられて可視光から赤外線の広いスペクトルで光電変換が可能であり、光電変換が起こる光活性部が高密度の量子ドットナノワイヤーアレイの低次元ナノ構造物の形態であるため、光吸収が極大化され、上記量子ドットナノワイヤーがp型、n型半導体と広い面積で接して電子及び正孔の伝導効率が高いという長所を有する。
【0074】
詳細には、本発明による太陽電池は、シリコン量子ドットのバンドギャップエネルギーを制御して太陽光の全領域の波長に対して光電変換が可能であるため、内部の光生成効率を極大化させ、高比表面積を有する低次元ナノ構造物の形態で光活性部を構成して光吸収率及び光電変換効率を極大化させ、それぞれの量子ドットナノワイヤーがn型半導体で囲まれた構造を有し、p型半導体に接する構造を有するため、光により生成された電子−正孔の伝導効率が向上するという長所がある。
【0075】
好ましくは、上記第1半導体層はp型シリコン層であり、上記n型半導体層はn型シリコン層であり、上記媒質はシリコン酸化物、シリコン窒化物またはこれらの混合物であり、上記半導体量子ドットはシリコン量子ドットである。
【0076】
本発明の思想は、上述した実施例に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲だけではなく、この特許請求の範囲と均等なあるいは等価的な変形のある全てのものは、本発明の思想の範疇に属するといえる。
【符号の説明】
【0077】
110 p型半導体
120 複合積層層
121 媒質層
122 半導体層
120’ 表面凹凸が形成された複合積層層
130 量子ドットナノワイヤー
131 媒質
132 半導体量子ドット
140 n型半導体
151,152 電極
200 金属網
210 円形の金属点
300 ナノ多孔性アルミナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)p型またはn型不純物がドーピングされた半導体基板の上部に、半導体窒化物または半導体酸化物の媒質層と半導体層とを繰り返し積層して複合積層層を製造するステップと、
b)前記複合積層層を前記半導体基板の垂直方向に部分エッチング(etching)することによって、前記半導体基板に一端が固定され且つ互いに離隔されて垂直配列された複数の量子ドットナノワイヤーからなる量子ドットナノワイヤーアレイを製造するステップと、
c)前記量子ドットナノワイヤーアレイが形成された半導体基板の上部に前記半導体基板に対して相補的不純物がドーピングされた半導体を蒸着して、少なくとも前記複数の量子ドットナノワイヤーの他端と前記半導体基板との間の空間を相補的不純物がドーピングされた半導体で満たすステップと、
d)前記半導体基板の下部に下部電極を形成し、前記量子ドットナノワイヤーアレイ及び相補的不純物がドーピングされた半導体の表面上部または相補的不純物がドーピングされた半導体の表面上部に、前記下部電極に対応するように上部電極を形成するステップと、
を含んで製造される量子ドットナノワイヤーアレイを有する太陽電池の製造方法。
【請求項2】
前記a)ステップの前記複合積層層は、PVDまたはCVDを用いた蒸着工程により製造され、前記複合積層層を構成する複数の前記半導体層の厚さが互いに異なることを特徴とする請求項1に記載の量子ドットナノワイヤーアレイを有する太陽電池の製造方法。
【請求項3】
前記複合積層層を構成する前記半導体層及び前記媒質層は、互いに独立して10nm以下の厚さであることを特徴とする請求項1または2に記載の量子ドットナノワイヤーアレイを有する太陽電池の製造方法。
【請求項4】
前記b)ステップは、
b1−1)前記複合積層層の上部にAg、Auまたは遷移金属の触媒金属を網状(mesh)に蒸着するステップと、
b1−2)フッ酸及び過酸化水素を含有する混合水溶液を用いて湿式エッチングをするステップと、
を含んで行われることを特徴とする請求項1に記載の量子ドットナノワイヤーアレイを有する太陽電池の製造方法。
【請求項5】
前記b)ステップは、
b2−1)前記複合積層層の上部に円形の金属ナノドットアレイを形成するステップと、
b2−2)前記金属ナノドットをマスクとしてイオンビームエッチング(RIE)するステップと、
を含んで行われることを特徴とする請求項1に記載の量子ドットナノワイヤーアレイを有する太陽電池の製造方法。
【請求項6】
前記b)ステップのエッチングにより媒質内に半導体量子ドットが埋め込まれた複数の量子ドットナノワイヤーが製造され、前記半導体量子ドットの大きさは前記複合積層層を構成するそれぞれの半導体層の厚さにより制御されることを特徴とする請求項4または5に記載の量子ドットナノワイヤーアレイを有する太陽電池の製造方法。
【請求項7】
前記媒質の種類、前記量子ドットナノワイヤーを構成する前記半導体量子ドットの大きさまたはこれらの組み合わせにより光吸収波長が制御されることを特徴とする請求項6に記載の量子ドットナノワイヤーアレイを有する太陽電池の製造方法
【請求項8】
前記c)ステップは、CVDまたはPVDを用いた蒸着であることを特徴とする請求項3に記載の量子ドットナノワイヤーアレイを有する太陽電池の製造方法。
【請求項9】
前記半導体基板がp型またはn型シリコン基板であり、前記相補的不純物がドーピングされた半導体はそれぞれn型またはp型シリコンであり、前記媒質はシリコン酸化物またはシリコン窒化物であり、前記複合積層層の半導体はシリコンであることを特徴とする請求項1,2,4,5または7に記載の量子ドットナノワイヤーアレイを有する太陽電池の製造方法。
【請求項10】
請求項1,2,4,5,7または8の何れか1項に記載の製造方法で製造された量子ドットナノワイヤーアレイを有する太陽電池であって、
下部電極と、
前記下部電極上に形成されたn型またはp型不純物がドーピングされた第1半導体層と、
前記第1半導体層上に形成され、前記第1半導体層に対して相補的不純物がドーピングされた第2半導体層と、
前記第2半導体層上に形成された上部電極と、
前記第2半導体層内に、互いに離隔されて垂直配列された複数の量子ドットナノワイヤーからなる量子ドットナノワイヤーアレイと、を含んで構成され、
前記量子ドットナノワイヤーは、一端が前記第1半導体層に接触され、媒質と前記媒質に囲まれた1つ以上の半導体量子ドットからなることを特徴とする量子ドットナノワイヤーアレイを有する太陽電池。
【請求項11】
前記媒質は、半導体窒化物、半導体酸化物またはこれらの混合物であることを特徴とする請求項10に記載の量子ドットナノワイヤーアレイを有する太陽電池。
【請求項12】
前記量子ドットナノワイヤーは、2つ以上の前記半導体量子ドットが前記量子ドットナノワイヤーの長手方向に配列されたものであることを特徴とする請求項10に記載の量子ドットナノワイヤーアレイを有する太陽電池。
【請求項13】
前記量子ドットナノワイヤーは、互いに異なる大きさの前記半導体量子ドットで構成されていることを特徴とする請求項12に記載の量子ドットナノワイヤーアレイを有する太陽電池。
【請求項14】
前記量子ドットナノワイヤー内の半導体量子ドットの直径が10nm以下であることを特徴とする請求項10,12または13の何れか1項に記載の量子ドットナノワイヤーアレイを有する太陽電池。
【請求項15】
前記媒質の種類、前記半導体量子ドットの大きさまたはこれらの組み合わせにより光吸収波長が制御されていることを特徴とする請求項10,11,12または13の何れか1項に記載の量子ドットナノワイヤーアレイを有する太陽電池。
【請求項16】
前記第1半導体層はp型シリコン層であり、前記第2半導体層はn型シリコン層であり、前記媒質はシリコン酸化物、シリコン窒化物またはこれらの混合物であり、前記半導体量子ドットはシリコン量子ドットであることを特徴とする請求項15に記載の量子ドットナノワイヤーアレイを有する太陽電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−530829(P2011−530829A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522889(P2011−522889)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【国際出願番号】PCT/KR2008/006618
【国際公開番号】WO2010/018893
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(595027240)コリア リサーチ インスティチュート オブ スタンダーズ アンド サイエンス (19)
【Fターム(参考)】