量子ドットブロック共重合体ハイブリッドを含む発光素子及びその製造方法
【課題】結合安定性が良く分散が容易な量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドを含む発光素子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】発光素子は、基板とその上に形成される量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッド層を有する。量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドは、量子ドットを形成し、イオウを含む官能基を有するブロック共重合体を形成した後、量子ドットとブロック共重合体を混合し、混合物にエネルギーを加えて量子ドットに官能基を化学結合させて製造する。量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドは、ハイブリッドとマトリックス高分子をトルエンの様な溶媒に溶解させ、溶液を攪拌することにより量子ドットをマトリックス高分子内に分散させる。量子ドットは、スピンコーティング、ドロップキャスティング、又はドクターブレード法で基板上に形成される。
【解決手段】発光素子は、基板とその上に形成される量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッド層を有する。量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドは、量子ドットを形成し、イオウを含む官能基を有するブロック共重合体を形成した後、量子ドットとブロック共重合体を混合し、混合物にエネルギーを加えて量子ドットに官能基を化学結合させて製造する。量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドは、ハイブリッドとマトリックス高分子をトルエンの様な溶媒に溶解させ、溶液を攪拌することにより量子ドットをマトリックス高分子内に分散させる。量子ドットは、スピンコーティング、ドロップキャスティング、又はドクターブレード法で基板上に形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、量子ドットブロック共重合体ハイブリッドを含む発光素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
量子ドットは、ナノ結晶の構造を有する物質として、数百から数千個の原子からなる。量子ドットは大きさがとても小さいので量子拘束(quantum confinement)効果が現れる。量子拘束効果は、物体がナノ以下の大きさである場合、その物体のエネルギーバンドギャップが大きくなる現象を言う。量子ドットにバンドギャップよりエネルギーが高い波長の光が入射する場合、量子ドットは、その光を吸収して励起状態になり、特定波長の光を放出しながら基底状態に遷移する。放出された波長の光はバンドギャップに相当する値を有する。
【0003】
量子ドットは、その大きさと組成等を調節すると、量子拘束効果による発光特性を調節できるので様々な発光素子に利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】韓国公開特許2009−0033947号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、結合安定性が良く分散が容易な量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドを含む発光素子を提供することにある。
本発明の他の目的は、分散された量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドを含む発光素子を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた本発明の一特徴による発光素子は、基板と、前記基板上に形成される量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッド層と、を有する発光素子であって、前記量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッド層は、量子ドットと、前記量子ドットを囲むブロック共重合体と、を含み、前記ブロック共重合体は前記量子ドットと化学結合を成すイオウを含む官能基を有する。
前記化学結合は前記量子ドットを中心とする配位結合である。
前記量子ドットは、単一コア構造、コア−単一シェル構造、又はコア−多重シェル構造の中の何れか1つの構造を有する。
前記量子ドットは、II−VI族元素、III−V族元素、IV族元素、IV−VI族元素の中の少なくとも1つである。前記II族元素は亜鉛、カドミウム、水銀からなる群から選択される少なくとも何れか1つであり、前記III族元素はアルミニウム、ガリウム、インジウムからなる群から選択される少なくとも何れか1つであり、前記IV族元素はシリコン、ゲルマニウム、錫、鉛からなる群から選択される少なくとも何れか1つであり、前記V族元素は窒素、燐、砒素からなる群から選択される少なくとも何れか1つであり、前記VI族元素はイオウ、セレニウム、テルルからなる群から選択される少なくとも何れか1つである。
前記官能基はアルキルチオール(alkylthiol)、アルキルキサントゲン酸塩(alkylxanthate)、ジアルキルチオカルバメート(dialkylthiocarbamate)、ジアルキルジスルフィド(dialkyldisulfide)、ジアルキルスルフィド(dialkylsulfide)の中の何れか1つである。ここで、アルキル基の炭素数は1個以上から22個以下である。
前記発光素子は、前記基板と前記ハイブリッド層との間に形成される発光ダイオードを更に含み、前記発光ダイオードは、光を放出し、前記量子ドットが前記光を吸収して該量子ドットの励起状態と基底状態との間のエネルギーバンドギャップに対応する可視光線を放出するバンドギャップを有する。
【0007】
上記の他の目的を達成するためになされた本発明の一特徴による発光素子製造方法は、基板を準備する段階と、前記基板上に該基板上に形成される量子ドット−ブロック共重合体を含む薄膜を配置する段階と、を有する発光素子の製造方法であって、前記量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドを製造する方法は、量子ドットを形成する段階と、イオウを含む官能基を有するブロック共重合体を形成する段階と、前記量子ドットと前記ブロック共重合体とを混合する段階と、前記量子ドットに前記官能基を化学結合させる段階と、を含む。
前記官能基を化学結合させる段階は、前記量子ドットと前記ブロック共重合体混合物にエネルギーを加える。
前記方法で製造した量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドは、前記ハイブリッドとマトリックス高分子をともに溶かすことができる溶媒に溶解させ、前記溶液を攪拌することによって量子ドットをマトリックス高分子内に分散させる。
前記マトリックス高分子は、ビニル樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、又はこれらの樹脂のハイブリッド樹脂であり、例えば、ポリスチレン高分子を用いる。
前記方法で分散された量子ドットは、スピンコーティング、ドロップキャスティング、又はドクターブレード法で前記基板上に形成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、量子ドットと、量子ドットを囲むブロック共重合体高分子との間に化学結合が形成され、量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドのコロイド安定性が増加する。従って、量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドの分散が容易である。また、ハイブリッドは量子ドットの凝集体の形成を減らすことができるのでパターンの形成が容易である。分散されたハイブリッドは基板上に容易に形成できるので発光素子を容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態による発光素子を示す断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態による発光素子を示す断面図である。
【図3】ハイブリッドコロイド溶液に362nmの紫外線を2mW/cm2で照射したときの吸光度変化を示すグラフである。
【図4】量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドの分散程度を示すTEM写真である。
【図5】量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドの分散程度を示すTEM写真である。
【図6】量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドの分散程度を示すTEM写真である。
【図7】量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドの分散程度を示すTEM写真である。
【図8】量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドの分散程度を示すTEM写真である。
【図9】量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドの分散程度を示すTEM写真である。
【図10】量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドの分散程度を示すTEM写真である。
【図11】量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドの分散程度を示すTEM写真である。
【図12】量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドの分散程度を示すTEM写真である。
【図13】量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドの分散程度を示すTEM写真である。
【図14】従来の量子ドットを高分子に分散させて形成した薄膜の上部から見た光学顕微鏡写真である。
【図15】従来の量子ドットを高分子に分散させて形成した薄膜の上部から見た蛍光顕微鏡写真である。
【図16】従来の量子ドットを高分子に分散させて形成した薄膜断面の走査電子顕微鏡写真である。
【図17】本発明の一実施形態による量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドをマトリックス高分子に分散させて形成した薄膜の上部から見た光学顕微鏡写真である。
【図18】本発明の一実施形態による量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドをマトリックス高分子に分散させて形成した薄膜の上部から見た蛍光顕微鏡写真である。
【図19】本発明の一実施形態による量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドをマトリックス高分子に分散させて形成した薄膜断面の走査電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドを含む発光素子及びその製造方法を実施するための形態の具体例を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
本発明の一実施形態による量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドは、量子ドットと、量子ドットを囲むブロック共重合体を含む。
【0012】
量子ドットはナノ物質である。量子ドットは量子拘束効果(quantum confinement effect)が発生する。量子拘束効果の特徴はバンドギャップが大きくなることである。量子拘束効果によって、量子ドットはバルク(bulk)の結晶とは異なって、まるで個別的な原子のように不連続的なバンドギャップの構造を有する。量子ドットはその大きさによって不連続的なバンドギャップの間隔を調節できる。
【0013】
量子ドットの組成はII−VI族元素等、III−V族元素等、IV族元素等、又はIV−VI族元素等からなる。
【0014】
II族元素は、亜鉛、カドミウム、及び水銀からなる群から選択される少なくとも何れか1つである。III族元素は、アルミニウム、ガリウム、インジウムからなる群から選択される少なくとも何れか1つである。IV族元素は、シリコン、ゲルマニウム、錫、鉛からなる群から選択される少なくとも何れか1つである。V族元素は、窒素、燐、及び砒素からなる群から選択される少なくとも何れか1つである。VI族は、イオウ、セレニウム、テルルからなる群から選択される何れか1つである。
【0015】
量子ドットは、構造において、特別に限定されないが、コアだけからなる単一構造、コアと単一層のシェルからなるコア−単一シェル構造、又はコアと多重層のシェルからなるコア−多重シェル構造の中の何れか1つである。
【0016】
ブロック共重合体は、量子ドットを囲むリガンド(ligand)として、量子ドットと化学結合する。特に、化学結合は配位結合である。
【0017】
ブロック共重合体は二重以上の多重ブロックの共重合体である。ブロック共重合体は量子ドットと配位結合を成す官能基(functional group)を含む。官能基は、ブロック共重合体の主鎖に含まれたり、主鎖に結合される側鎖に含まれたり、主鎖及び側鎖に無作為に分布されたりする。
【0018】
官能基は量子ドットと配位結合の化学結合するものなら何でも良い。例えば、イオウを含む官能基を利用できる。イオウを含む官能基は、炭素数が1個〜22個のアルキルチオール、アルキルキサントゲン酸塩、ジアルキルチオカルバメートの中の何れか1つである。
【0019】
官能基は量子ドットをなす中心元素と化学結合する。化学結合は、ファンデルワールス力又は双極子力等による物理的な結合より更に強い化学結合(strong chemical bond)を意味する。化学結合は、イオン結合、共有結合、配位結合等を含む様々な結合があり、イオン結合、共有結合、配位結合の他に類似な結合強度を有する化学結合を含む。
【0020】
ハイブリッドはマトリックス高分子内に分散される。マトリックス高分子はハイブリッドを固定できるジェル形又は固体状の物質を称する。マトリックス高分子として使用される物質は、透明性、熱安定性、防湿性、低い気体透過度等を満足するものであれば何でも良い。マトリックスは、ビニル樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、又はこれらの樹脂等のハイブリッド系列の樹脂を用いる。
【0021】
量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドは発光素子に利用できる。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態による発光素子を示す断面図である。
【0023】
図1を参照すると、本発明の一実施形態による発光素子は、基板110と基板110上に形成される量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッド層120からなる。
【0024】
基板110は、その上に量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッド層120を形成できる高分子樹脂基板、シリコン基板、又はガラス基板から構成される。
【0025】
量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッド層120はマトリックス高分子と量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドを含む。量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドはマトリックス高分子に分散された形態からなる。
【0026】
量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッド層120内に形成された量子ドットは、量子拘束効果により、所定のバンドギャップを有するので、本実施形態による発光素子は特定波長の光を放出する。例えば、量子ドットに所定範囲のエネルギーを加えた場合、量子ドットが励起状態になり、量子ドットが励起状態から基底状態に遷移しながら特定波長の光を放出する。
【0027】
図2は、本発明の他の実施形態による発光素子を示す断面図である。
【0028】
図2を参照すると、本実施形態による発光素子は、基板210と、基板210上に形成される発光ダイオード230、及び発光ダイオード230上に形成される量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッド層220を含む。
【0029】
基板210は、プラスチックの様な絶縁性の高分子、ガラス、セラミック等の物質から形成される。例えば、ポリフタルアミド(Polyphthalamide、PPA)で形成できる。
【0030】
発光ダイオード230は、量子ドットを励起させる光を提供し、基板210上に実装される。
【0031】
発光ダイオード230上には量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッド層220が形成される。量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッド層220は量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドを含み、量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドはマトリックス樹脂内に散布されている。マトリックス樹脂は絶縁性高分子から形成される。例えば、ビニル樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、又はこれらの樹脂等のハイブリッド系列の樹脂等を用いる。
【0032】
ハイブリッド層内に含まれる量子ドットは発光ダイオード230から照射された光を吸収して励起状態になる。続いて、量子ドットは、励起状態から基底状態に遷移し、発光ダイオード230から照射された光の波長と異なる波長を有する光を放出する。このような原理を利用して量子ドットのバンドギャップによって様々な色を有する可視光線領域の波長を調節できる。特に、発光ダイオード230の発光波長は量子ドットの光励起原理によって量子ドットが光を吸収できる領域内から多様に選択され、量子ドットは、光を吸収した後、吸収した光より大きい波長の光を放出する。この場合、1つの素子内で様々な色の光放出が可能であるので2つ以上の色の組み合わせを通じて可視光の領域内にある様々な色彩の光を具現できるだけでなく白色光も具現できる。
【0033】
上記構造の量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドは次のような方法で製造される。
【0034】
先ず、量子ドットを形成する。量子ドットは様々な方法で製造できる。
【0035】
量子ドットの組成は、II−VI族元素等、III−V族元素等、IV族元素等、又はIV−VI族元素等からなり、これに制限されるものではない。
【0036】
II族元素は、亜鉛、カドミウム、及び水銀からなる群から選択される少なくとも何れか1つである。III族元素は、アルミニウム、ガリウム、インジウムからなる群から選択される少なくとも何れか1つである。IV族元素は、シリコン、ゲルマニウム、錫、鉛からなる群から選択される少なくとも何れか1つである。V族元素は、窒素、燐、及び砒素からなる群から選択される少なくとも何れか1つである。VI族は、イオウ、セレニウム、テルルからなる群から選択される何れか1つである。
【0037】
量子ドットは、その構造において、コアだけからなる単一構造、コアと単一層のシェルからなるコア−単一シェル構造、又はコアと多重層のシェルからなるコア−多重シェル構造の中の何れか1つで構成される。
【0038】
続いて、イオウを含む官能基を有するブロック共重合体を形成する。ブロック共重合体は連鎖重合法(chain−growth polymerization)、段階重合法(step−growth polymerization)を包含する様々な方式から合成可能である。連鎖重合法は、RAFT(reversible addition−fragmentation chain transfer)、NMP(nitroxide−mediated polymerization)、ATRP(atomic transfer radical polymerization)、陽イオン(cationic polymerization)及び陰イオン重合法(anionic polymerization)、ラジカル重合(radical polymerization)等がある。段階重合法は、脱水縮合反応(condensation)がある。
【0039】
続いて、量子ドットとブロック共重合体を混合する。
【0040】
その後、混合物にエネルギーを加えて量子ドットに官能基を化学結合させて量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドを形成する。例えば、エネルギーは量子ドットと官能基が結合反応するようにする。エネルギーは、熱を加えたり、熱を加えながら攪拌したり、超音波を加える等の処理によって供給される。
【0041】
ここで、量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドを形成する段階は、ブロック共重合体を合成した後、量子ドットに結合させる方式(grafting−to method)の他に、例えば、量子ドットに化学結合が可能な官能基を有する単分子及び高分子を結合させ、重合開始剤と単量体をともに添加して量子ドット或いはハイブリッドにブロック共重合体を追加して成長させる方式(grafting−from method)も可能である。
【0042】
官能基は、量子ドットと配位結合し、イオウを含む。官能基は炭素数が1個〜22個のアルキルチオール(alkylthiol)、アルキルキサントゲン酸塩(alkylxanthate)、ジアルキルチオカルバメート(dialkylthiocarbamate)の中の何れか1つである。
【0043】
量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドの合成が完了した後、ハイブリッドが溶解されない溶媒(non−solvent)を合成完了した溶液に注入して溶液から量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドを沈殿させる。続いて、沈殿物は遠心分離機を利用して分離し、ハイブリッドを分散させるための溶媒を注入してハイブリッドを再分散させる。沈殿と分離及び再分散を数回繰り返して目標とする純度の量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドを得る。
【0044】
量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドはマトリックス高分子内に分散させて発光素子等に利用できる。ここで、ハイブリッドを利用する素子として発光素子を例に挙げたがこれに限定されるものではない。
【0045】
ハイブリッドをマトリックス高分子に分散する方法は、ハイブリッドとマトリックス高分子を先に形成し、ハイブリッドとマトリックス高分子を溶媒に溶解させる方法を利用する。
【0046】
ハイブリッドをマトリックス高分子内に分散させる際、ハイブリッドの分散度及び凝集度を調節する一番目の方法は、ハイブリッド内のブロック共重合体のグラフト密度(grafting density)を調節することである。ハイブリッドの分散度及び凝集度を調節する二番目の方法は、ハイブリッド内のブロック共重合体に対するマトリックス高分子の分子量を調節することである。ハイブリッドの分散度及び凝集度を調節する三番目の方法は、ハイブリッド内のブロック共重合体の分子量を調節することである。グラフト密度は量子ドットに結合されている高分子数の平均を意味する用語である。
【0047】
マトリックス高分子は、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、又はこれらの樹脂等のハイブリッド樹脂等であり、1つの例としてポリスチレンを使用できる。ポリスチレンをマトリックス高分子に使用する場合、溶媒にはトルエンを用いる。
【0048】
発光素子は、先ず基板を準備し、基板上に分散されたハイブリッドを含む薄膜を形成することによって製造される。
【0049】
分散されたハイブリッドは、流体状であるので、スピンコーティング、ドロップキャスティング、又はドクターブレード法等を利用して基板上に薄膜の形態で形成される。しかし、ハイブリッド薄膜を形成する方法はこの方法に限定されるものではない。
【0050】
<実施形態1>(ブロック共重合体形成)
【0051】
ブロック共重合体であるポリ(スチレン−b−システアミンアクリルアミド)(poly(styrene−b−cysteamine acrylamide)をRAFT方法で合成した。先ず、連鎖移動剤(chaintranferagent)である2−フェニルプロパン−2−イルベンゾジチオエート(2−phenylpropan−2−ylbenzodithioate)0.06mgとα、α’−アゾイソブチロニトリル(α、α’−azoisobutyronitrile、AIBN)0.006mg及びスチレン単分子(styrene monomer)9.2mmolをジオキサン(dioxane)4mmolに溶かした。
【0052】
続いて、この溶液を窒素乾燥及び90℃で24時間反応させてポリスチレン炭化水素鎖を有する高分子Aを重合した。重合反応の反応式は以下の化学式1のようになる。
【0053】
【化1】
【0054】
[高分子A]
高分子Aは、重合の後、メタノールを利用して洗滌して精製した。
【0055】
高分子Aの合成の後、異なる官能基に置換可能なペンタフルオロアクリレート(pentafluoroacrylate)0.12mmolと高分子Aをジオキサン3mLに溶かし、窒素乾燥及び90℃で3日間反応させてポリ(スチレン−b−ペンタフルオロアクリレート)(Poly(styrene−b−pentafluoroacrylate))を合成した。反応式は以下の化学式2のようになる。
【0056】
【化2】
【0057】
ポリ(スチレン−b−ペンタフルオロアクリレート)はメタノールを利用して洗滌して精製した。
【0058】
続いて、ポリ(スチレン−b−ペンタフルオロアクリレート)をテトラヒドロフランに溶かして、テトラヒドロフランに溶解されたシステアミンアクリルアミド(cysteamine acrylamide)を反応基に徐々に加える。その後、この溶液を24時間ほど攪拌してポリ(スチレン−b−システアミンアクリルアミド)(Poly(styrene−b−cysteamine acrylamide))を得る。反応式は以下の化学式3のようになる。
【0059】
【化3】
【0060】
続いて、ポリ(スチレン−b−システアミンアクリルアミド)を濾過して精製する。
【0061】
<実施形態2>(量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッド製造)
【0062】
上記方法で製造したポリ(スチレン−b−システアミンアクリルアミド)3mgをトルエンに溶かした後、量子ドット10mgを混合して2時間ほど超音波を与えて量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドを形成した。反応後の残り残余物はメタノールとトルエンを利用して数回沈殿と分散を繰り返して精製した。
【0063】
<実施形態3>(量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドの安定性)
【0064】
図3は、紫外線照射のもとで測定した量子ドット及び量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドの吸光度を表したグラフである。グラフにおいて、G1はオレイン酸(oleic acid)が表面に結合した量子ドットの吸光度であり、G2はアルキルチオールが表面に結合した量子ドットの吸光度であり、G3は上記実施形態2により製造した量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドの吸光度である。
【0065】
紫外線の照射乾燥は、362nmの波長と2mW/cm2のエネルギーに設定し、時間によって採取した試料を遠心分離して沈殿物を除去した後、エクシトンピークを基準として任意単位の相対的吸光度を測定した。
【0066】
図3を参照すると、紫外線の照射時間が増加するほどオレイン酸及びアルキルチオールが表面に結合している量子ドットのコロイド安定性が低下して沈殿物が形成され、吸光度が減少する(G1及びG2参照)。一方、本発明の実施形態による量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドのコロイド溶液は、長期間にわたって沈殿物が形成されず、吸光度が維持される結果を得た。これは量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドが高いコロイド安定性を有することを意味する。
【0067】
<実施形態4>(ブロック共重合体のグラフト密度による分散特性比較)
【0068】
量子ドットとブロック共重合体を夫々(a)10mg:1mg、(b)10mg:2mg、(c)10mg:3mgとして混合して上記実施形態1及び実施形態2と同じ方法で量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドを製造した。ハイブリッドをポリスチレンマトリックス高分子に分散させる。このとき、ブロック共重合体数の平均分子量は10k、ポリスチレンマトリックス高分子数の平均分子量は20kだった。
【0069】
図4〜図6は、夫々(a)、(b)、及び(c)による量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドの分散程度を示したTEM(transmission electron microscopy)写真である。ここで、棒の長さは400nmである。
【0070】
図4〜図6に示した様に各量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドの分散度は夫々異なる。
【0071】
TEMイメージ分析を通じて量子ドットの分散度を分散指数(Polydispersity index、PDI)で定義すると下記の数式1の関係が成立する。ここで、凝集体当たりの平均量子ドット数はMn、凝集体当たりの加重平均量子ドット数はMw、分散指数はPDIと表した。凝集体は約2nm以下の距離内で量子ドットと結合した場合の量子ドット等の集合を言う。
【0072】
量子ドットの凝集体が大きくなることにより、量子ドットが上下に重畳して位置する現象が現れ、凝集体が均一にならないのでTEM写真による定量化において誤差が生じる。
【0073】
変数iは凝集体内の量子ドットの数であり、Niは量子ドットの数がiである凝集体の数である。
【0074】
【数1】
【0075】
Mnは全体凝集体当たりに含まれる量子ドットの数を示すもので、値が1に近いほど分散特性が良い。Mwは凝集体内に含まれる量子ドットの数に加重値をおいて平均を出したものであり、値が1に近いほど分散特性が良い。この数値は多い量子ドットを有する凝集体の数が多いほど大きくなるので、この数値を通じて多い量子ドットを有する凝集体がどのぐらいあるかを間接的に確認できる。
【0076】
表1は、図4〜図6に示した量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドの分散指数(PDI)を示す。
【0077】
【表1】
【0078】
表1からわかる様に、(a)の場合、TEM写真によると、殆どの量子ドットが巨大な5個内外の凝集体に集中している。なお、凝集体の形成がひどいので、(a)のデータが有意味とはいえない。
【0079】
但し、表1を通じて確認できることは、量子ドットの分散には一定水準以上のブロック共重合体の量が確保されなければならないことである。
【0080】
<実施形態5>(量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッド対比マトリックス分子量による分散特性比較)
【0081】
上記実施形態1及び実施形態2と同じ方法で量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドを製造し、ハイブリッドとマトリックス高分子の重量を10mg:3mgとしてハイブリッドをポリスチレンマトリックス高分子に分散させた。このとき、マトリックス高分子の平均分子量を(a)2k、(b)20k、(c)200k、(d)2000kとして同じ方式で分散させた。
【0082】
図7〜図10は、各々(a)、(b)、(c)、及び(d)による量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドの分散程度を示すTEM写真である。ここで、写真に表示した棒の長さは400nmである。
【0083】
図7〜図10に示した様に、マトリックス高分子の平均分子量によって各量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドの分散度が夫々異なるように形成された。
【0084】
表2は、図7〜図10に示した量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドの分散指数(PDI)を示す。
【0085】
【表2】
【0086】
表2からわかる様に、マトリックス高分子の分子量が増えるほど量子ドットの凝集が段階的に深化される。
【0087】
<実施形態6>(ブロック共重合体の分子量による分散特性比較)
【0088】
上記実施形態1及び実施形態2と同じ方法で量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドを製造し、ハイブリッドとマトリックス高分子の重量を10mg:3mgとしてハイブリッドをポリスチレンマトリックス高分子に分散させた。このとき、ブロック共重合体の平均分子量を(a)5.7k、(b)7.8k、(c)10kとして量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドを製造した。
【0089】
図11〜図13は、各々(a)、(b)、及び(c)による量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドの分散程度を示すTEM写真である。ここで、写真に表示した棒長さは400nmである。
【0090】
図11〜図13に示した様に、ブロック共重合体の平均分子量によって各量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドの分散度が夫々異なるように形成された。
【0091】
表3は、図11〜図13に示した量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドの分散指数を示す。
【0092】
【表3】
【0093】
表3に示した様に、量子ドットとハイブリッドを形成するブロック共重合体の平均分子量を変化させたときには、ブロック共重合体の分子量が増えるほど分散特性が向上した。
【0094】
上記実施形態3〜実施形態5からわかる様に、ブロック共重合体のグラフト密度、量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドに対するマトリックスの平均分子量、量子ドットとハイブリッドを形成するブロック共重合体の平均分子量を変化させることによって量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドの分散特性を調節できる。
【0095】
<実施形態7>(従来の量子ドット−高分子の単純混合物と本発明の一実施形態によるブロック共重合体の薄膜の比較)
【0096】
図14〜図16は、ハイブリッド化されない従来の量子ドットを高分子マトリックスに混合させて薄膜を形成した際、(a)薄膜の上部から見た光学顕微鏡写真、(b)薄膜の上部から見た蛍光顕微鏡写真、及び(c)薄膜断面の走査電子顕微鏡写真である。
【0097】
図17〜図19は、本発明の一実施形態による量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドをマトリックス高分子に分散させて薄膜を形成した際、(d)薄膜の上部から見た光学顕微鏡写真、(e)薄膜の上部から見た蛍光顕微鏡写真、及び(f)薄膜断面の走査電子顕微鏡写真である。
【0098】
図14〜図16と、図17〜図19を比べて見ると、本発明の一実施形態による量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドを含む薄膜の分散度が高いことがわかる。
【0099】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲から逸脱しない範囲内で多様に変更実施することが可能である。
【符号の説明】
【0100】
110、210 基板
120、220 量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッド層
230 発光ダイオード
【技術分野】
【0001】
本発明は、量子ドットブロック共重合体ハイブリッドを含む発光素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
量子ドットは、ナノ結晶の構造を有する物質として、数百から数千個の原子からなる。量子ドットは大きさがとても小さいので量子拘束(quantum confinement)効果が現れる。量子拘束効果は、物体がナノ以下の大きさである場合、その物体のエネルギーバンドギャップが大きくなる現象を言う。量子ドットにバンドギャップよりエネルギーが高い波長の光が入射する場合、量子ドットは、その光を吸収して励起状態になり、特定波長の光を放出しながら基底状態に遷移する。放出された波長の光はバンドギャップに相当する値を有する。
【0003】
量子ドットは、その大きさと組成等を調節すると、量子拘束効果による発光特性を調節できるので様々な発光素子に利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】韓国公開特許2009−0033947号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、結合安定性が良く分散が容易な量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドを含む発光素子を提供することにある。
本発明の他の目的は、分散された量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドを含む発光素子を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた本発明の一特徴による発光素子は、基板と、前記基板上に形成される量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッド層と、を有する発光素子であって、前記量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッド層は、量子ドットと、前記量子ドットを囲むブロック共重合体と、を含み、前記ブロック共重合体は前記量子ドットと化学結合を成すイオウを含む官能基を有する。
前記化学結合は前記量子ドットを中心とする配位結合である。
前記量子ドットは、単一コア構造、コア−単一シェル構造、又はコア−多重シェル構造の中の何れか1つの構造を有する。
前記量子ドットは、II−VI族元素、III−V族元素、IV族元素、IV−VI族元素の中の少なくとも1つである。前記II族元素は亜鉛、カドミウム、水銀からなる群から選択される少なくとも何れか1つであり、前記III族元素はアルミニウム、ガリウム、インジウムからなる群から選択される少なくとも何れか1つであり、前記IV族元素はシリコン、ゲルマニウム、錫、鉛からなる群から選択される少なくとも何れか1つであり、前記V族元素は窒素、燐、砒素からなる群から選択される少なくとも何れか1つであり、前記VI族元素はイオウ、セレニウム、テルルからなる群から選択される少なくとも何れか1つである。
前記官能基はアルキルチオール(alkylthiol)、アルキルキサントゲン酸塩(alkylxanthate)、ジアルキルチオカルバメート(dialkylthiocarbamate)、ジアルキルジスルフィド(dialkyldisulfide)、ジアルキルスルフィド(dialkylsulfide)の中の何れか1つである。ここで、アルキル基の炭素数は1個以上から22個以下である。
前記発光素子は、前記基板と前記ハイブリッド層との間に形成される発光ダイオードを更に含み、前記発光ダイオードは、光を放出し、前記量子ドットが前記光を吸収して該量子ドットの励起状態と基底状態との間のエネルギーバンドギャップに対応する可視光線を放出するバンドギャップを有する。
【0007】
上記の他の目的を達成するためになされた本発明の一特徴による発光素子製造方法は、基板を準備する段階と、前記基板上に該基板上に形成される量子ドット−ブロック共重合体を含む薄膜を配置する段階と、を有する発光素子の製造方法であって、前記量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドを製造する方法は、量子ドットを形成する段階と、イオウを含む官能基を有するブロック共重合体を形成する段階と、前記量子ドットと前記ブロック共重合体とを混合する段階と、前記量子ドットに前記官能基を化学結合させる段階と、を含む。
前記官能基を化学結合させる段階は、前記量子ドットと前記ブロック共重合体混合物にエネルギーを加える。
前記方法で製造した量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドは、前記ハイブリッドとマトリックス高分子をともに溶かすことができる溶媒に溶解させ、前記溶液を攪拌することによって量子ドットをマトリックス高分子内に分散させる。
前記マトリックス高分子は、ビニル樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、又はこれらの樹脂のハイブリッド樹脂であり、例えば、ポリスチレン高分子を用いる。
前記方法で分散された量子ドットは、スピンコーティング、ドロップキャスティング、又はドクターブレード法で前記基板上に形成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、量子ドットと、量子ドットを囲むブロック共重合体高分子との間に化学結合が形成され、量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドのコロイド安定性が増加する。従って、量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドの分散が容易である。また、ハイブリッドは量子ドットの凝集体の形成を減らすことができるのでパターンの形成が容易である。分散されたハイブリッドは基板上に容易に形成できるので発光素子を容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態による発光素子を示す断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態による発光素子を示す断面図である。
【図3】ハイブリッドコロイド溶液に362nmの紫外線を2mW/cm2で照射したときの吸光度変化を示すグラフである。
【図4】量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドの分散程度を示すTEM写真である。
【図5】量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドの分散程度を示すTEM写真である。
【図6】量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドの分散程度を示すTEM写真である。
【図7】量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドの分散程度を示すTEM写真である。
【図8】量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドの分散程度を示すTEM写真である。
【図9】量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドの分散程度を示すTEM写真である。
【図10】量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドの分散程度を示すTEM写真である。
【図11】量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドの分散程度を示すTEM写真である。
【図12】量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドの分散程度を示すTEM写真である。
【図13】量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドの分散程度を示すTEM写真である。
【図14】従来の量子ドットを高分子に分散させて形成した薄膜の上部から見た光学顕微鏡写真である。
【図15】従来の量子ドットを高分子に分散させて形成した薄膜の上部から見た蛍光顕微鏡写真である。
【図16】従来の量子ドットを高分子に分散させて形成した薄膜断面の走査電子顕微鏡写真である。
【図17】本発明の一実施形態による量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドをマトリックス高分子に分散させて形成した薄膜の上部から見た光学顕微鏡写真である。
【図18】本発明の一実施形態による量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドをマトリックス高分子に分散させて形成した薄膜の上部から見た蛍光顕微鏡写真である。
【図19】本発明の一実施形態による量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドをマトリックス高分子に分散させて形成した薄膜断面の走査電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドを含む発光素子及びその製造方法を実施するための形態の具体例を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
本発明の一実施形態による量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドは、量子ドットと、量子ドットを囲むブロック共重合体を含む。
【0012】
量子ドットはナノ物質である。量子ドットは量子拘束効果(quantum confinement effect)が発生する。量子拘束効果の特徴はバンドギャップが大きくなることである。量子拘束効果によって、量子ドットはバルク(bulk)の結晶とは異なって、まるで個別的な原子のように不連続的なバンドギャップの構造を有する。量子ドットはその大きさによって不連続的なバンドギャップの間隔を調節できる。
【0013】
量子ドットの組成はII−VI族元素等、III−V族元素等、IV族元素等、又はIV−VI族元素等からなる。
【0014】
II族元素は、亜鉛、カドミウム、及び水銀からなる群から選択される少なくとも何れか1つである。III族元素は、アルミニウム、ガリウム、インジウムからなる群から選択される少なくとも何れか1つである。IV族元素は、シリコン、ゲルマニウム、錫、鉛からなる群から選択される少なくとも何れか1つである。V族元素は、窒素、燐、及び砒素からなる群から選択される少なくとも何れか1つである。VI族は、イオウ、セレニウム、テルルからなる群から選択される何れか1つである。
【0015】
量子ドットは、構造において、特別に限定されないが、コアだけからなる単一構造、コアと単一層のシェルからなるコア−単一シェル構造、又はコアと多重層のシェルからなるコア−多重シェル構造の中の何れか1つである。
【0016】
ブロック共重合体は、量子ドットを囲むリガンド(ligand)として、量子ドットと化学結合する。特に、化学結合は配位結合である。
【0017】
ブロック共重合体は二重以上の多重ブロックの共重合体である。ブロック共重合体は量子ドットと配位結合を成す官能基(functional group)を含む。官能基は、ブロック共重合体の主鎖に含まれたり、主鎖に結合される側鎖に含まれたり、主鎖及び側鎖に無作為に分布されたりする。
【0018】
官能基は量子ドットと配位結合の化学結合するものなら何でも良い。例えば、イオウを含む官能基を利用できる。イオウを含む官能基は、炭素数が1個〜22個のアルキルチオール、アルキルキサントゲン酸塩、ジアルキルチオカルバメートの中の何れか1つである。
【0019】
官能基は量子ドットをなす中心元素と化学結合する。化学結合は、ファンデルワールス力又は双極子力等による物理的な結合より更に強い化学結合(strong chemical bond)を意味する。化学結合は、イオン結合、共有結合、配位結合等を含む様々な結合があり、イオン結合、共有結合、配位結合の他に類似な結合強度を有する化学結合を含む。
【0020】
ハイブリッドはマトリックス高分子内に分散される。マトリックス高分子はハイブリッドを固定できるジェル形又は固体状の物質を称する。マトリックス高分子として使用される物質は、透明性、熱安定性、防湿性、低い気体透過度等を満足するものであれば何でも良い。マトリックスは、ビニル樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、又はこれらの樹脂等のハイブリッド系列の樹脂を用いる。
【0021】
量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドは発光素子に利用できる。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態による発光素子を示す断面図である。
【0023】
図1を参照すると、本発明の一実施形態による発光素子は、基板110と基板110上に形成される量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッド層120からなる。
【0024】
基板110は、その上に量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッド層120を形成できる高分子樹脂基板、シリコン基板、又はガラス基板から構成される。
【0025】
量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッド層120はマトリックス高分子と量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドを含む。量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドはマトリックス高分子に分散された形態からなる。
【0026】
量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッド層120内に形成された量子ドットは、量子拘束効果により、所定のバンドギャップを有するので、本実施形態による発光素子は特定波長の光を放出する。例えば、量子ドットに所定範囲のエネルギーを加えた場合、量子ドットが励起状態になり、量子ドットが励起状態から基底状態に遷移しながら特定波長の光を放出する。
【0027】
図2は、本発明の他の実施形態による発光素子を示す断面図である。
【0028】
図2を参照すると、本実施形態による発光素子は、基板210と、基板210上に形成される発光ダイオード230、及び発光ダイオード230上に形成される量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッド層220を含む。
【0029】
基板210は、プラスチックの様な絶縁性の高分子、ガラス、セラミック等の物質から形成される。例えば、ポリフタルアミド(Polyphthalamide、PPA)で形成できる。
【0030】
発光ダイオード230は、量子ドットを励起させる光を提供し、基板210上に実装される。
【0031】
発光ダイオード230上には量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッド層220が形成される。量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッド層220は量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドを含み、量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドはマトリックス樹脂内に散布されている。マトリックス樹脂は絶縁性高分子から形成される。例えば、ビニル樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、又はこれらの樹脂等のハイブリッド系列の樹脂等を用いる。
【0032】
ハイブリッド層内に含まれる量子ドットは発光ダイオード230から照射された光を吸収して励起状態になる。続いて、量子ドットは、励起状態から基底状態に遷移し、発光ダイオード230から照射された光の波長と異なる波長を有する光を放出する。このような原理を利用して量子ドットのバンドギャップによって様々な色を有する可視光線領域の波長を調節できる。特に、発光ダイオード230の発光波長は量子ドットの光励起原理によって量子ドットが光を吸収できる領域内から多様に選択され、量子ドットは、光を吸収した後、吸収した光より大きい波長の光を放出する。この場合、1つの素子内で様々な色の光放出が可能であるので2つ以上の色の組み合わせを通じて可視光の領域内にある様々な色彩の光を具現できるだけでなく白色光も具現できる。
【0033】
上記構造の量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドは次のような方法で製造される。
【0034】
先ず、量子ドットを形成する。量子ドットは様々な方法で製造できる。
【0035】
量子ドットの組成は、II−VI族元素等、III−V族元素等、IV族元素等、又はIV−VI族元素等からなり、これに制限されるものではない。
【0036】
II族元素は、亜鉛、カドミウム、及び水銀からなる群から選択される少なくとも何れか1つである。III族元素は、アルミニウム、ガリウム、インジウムからなる群から選択される少なくとも何れか1つである。IV族元素は、シリコン、ゲルマニウム、錫、鉛からなる群から選択される少なくとも何れか1つである。V族元素は、窒素、燐、及び砒素からなる群から選択される少なくとも何れか1つである。VI族は、イオウ、セレニウム、テルルからなる群から選択される何れか1つである。
【0037】
量子ドットは、その構造において、コアだけからなる単一構造、コアと単一層のシェルからなるコア−単一シェル構造、又はコアと多重層のシェルからなるコア−多重シェル構造の中の何れか1つで構成される。
【0038】
続いて、イオウを含む官能基を有するブロック共重合体を形成する。ブロック共重合体は連鎖重合法(chain−growth polymerization)、段階重合法(step−growth polymerization)を包含する様々な方式から合成可能である。連鎖重合法は、RAFT(reversible addition−fragmentation chain transfer)、NMP(nitroxide−mediated polymerization)、ATRP(atomic transfer radical polymerization)、陽イオン(cationic polymerization)及び陰イオン重合法(anionic polymerization)、ラジカル重合(radical polymerization)等がある。段階重合法は、脱水縮合反応(condensation)がある。
【0039】
続いて、量子ドットとブロック共重合体を混合する。
【0040】
その後、混合物にエネルギーを加えて量子ドットに官能基を化学結合させて量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドを形成する。例えば、エネルギーは量子ドットと官能基が結合反応するようにする。エネルギーは、熱を加えたり、熱を加えながら攪拌したり、超音波を加える等の処理によって供給される。
【0041】
ここで、量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドを形成する段階は、ブロック共重合体を合成した後、量子ドットに結合させる方式(grafting−to method)の他に、例えば、量子ドットに化学結合が可能な官能基を有する単分子及び高分子を結合させ、重合開始剤と単量体をともに添加して量子ドット或いはハイブリッドにブロック共重合体を追加して成長させる方式(grafting−from method)も可能である。
【0042】
官能基は、量子ドットと配位結合し、イオウを含む。官能基は炭素数が1個〜22個のアルキルチオール(alkylthiol)、アルキルキサントゲン酸塩(alkylxanthate)、ジアルキルチオカルバメート(dialkylthiocarbamate)の中の何れか1つである。
【0043】
量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドの合成が完了した後、ハイブリッドが溶解されない溶媒(non−solvent)を合成完了した溶液に注入して溶液から量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドを沈殿させる。続いて、沈殿物は遠心分離機を利用して分離し、ハイブリッドを分散させるための溶媒を注入してハイブリッドを再分散させる。沈殿と分離及び再分散を数回繰り返して目標とする純度の量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドを得る。
【0044】
量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドはマトリックス高分子内に分散させて発光素子等に利用できる。ここで、ハイブリッドを利用する素子として発光素子を例に挙げたがこれに限定されるものではない。
【0045】
ハイブリッドをマトリックス高分子に分散する方法は、ハイブリッドとマトリックス高分子を先に形成し、ハイブリッドとマトリックス高分子を溶媒に溶解させる方法を利用する。
【0046】
ハイブリッドをマトリックス高分子内に分散させる際、ハイブリッドの分散度及び凝集度を調節する一番目の方法は、ハイブリッド内のブロック共重合体のグラフト密度(grafting density)を調節することである。ハイブリッドの分散度及び凝集度を調節する二番目の方法は、ハイブリッド内のブロック共重合体に対するマトリックス高分子の分子量を調節することである。ハイブリッドの分散度及び凝集度を調節する三番目の方法は、ハイブリッド内のブロック共重合体の分子量を調節することである。グラフト密度は量子ドットに結合されている高分子数の平均を意味する用語である。
【0047】
マトリックス高分子は、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、又はこれらの樹脂等のハイブリッド樹脂等であり、1つの例としてポリスチレンを使用できる。ポリスチレンをマトリックス高分子に使用する場合、溶媒にはトルエンを用いる。
【0048】
発光素子は、先ず基板を準備し、基板上に分散されたハイブリッドを含む薄膜を形成することによって製造される。
【0049】
分散されたハイブリッドは、流体状であるので、スピンコーティング、ドロップキャスティング、又はドクターブレード法等を利用して基板上に薄膜の形態で形成される。しかし、ハイブリッド薄膜を形成する方法はこの方法に限定されるものではない。
【0050】
<実施形態1>(ブロック共重合体形成)
【0051】
ブロック共重合体であるポリ(スチレン−b−システアミンアクリルアミド)(poly(styrene−b−cysteamine acrylamide)をRAFT方法で合成した。先ず、連鎖移動剤(chaintranferagent)である2−フェニルプロパン−2−イルベンゾジチオエート(2−phenylpropan−2−ylbenzodithioate)0.06mgとα、α’−アゾイソブチロニトリル(α、α’−azoisobutyronitrile、AIBN)0.006mg及びスチレン単分子(styrene monomer)9.2mmolをジオキサン(dioxane)4mmolに溶かした。
【0052】
続いて、この溶液を窒素乾燥及び90℃で24時間反応させてポリスチレン炭化水素鎖を有する高分子Aを重合した。重合反応の反応式は以下の化学式1のようになる。
【0053】
【化1】
【0054】
[高分子A]
高分子Aは、重合の後、メタノールを利用して洗滌して精製した。
【0055】
高分子Aの合成の後、異なる官能基に置換可能なペンタフルオロアクリレート(pentafluoroacrylate)0.12mmolと高分子Aをジオキサン3mLに溶かし、窒素乾燥及び90℃で3日間反応させてポリ(スチレン−b−ペンタフルオロアクリレート)(Poly(styrene−b−pentafluoroacrylate))を合成した。反応式は以下の化学式2のようになる。
【0056】
【化2】
【0057】
ポリ(スチレン−b−ペンタフルオロアクリレート)はメタノールを利用して洗滌して精製した。
【0058】
続いて、ポリ(スチレン−b−ペンタフルオロアクリレート)をテトラヒドロフランに溶かして、テトラヒドロフランに溶解されたシステアミンアクリルアミド(cysteamine acrylamide)を反応基に徐々に加える。その後、この溶液を24時間ほど攪拌してポリ(スチレン−b−システアミンアクリルアミド)(Poly(styrene−b−cysteamine acrylamide))を得る。反応式は以下の化学式3のようになる。
【0059】
【化3】
【0060】
続いて、ポリ(スチレン−b−システアミンアクリルアミド)を濾過して精製する。
【0061】
<実施形態2>(量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッド製造)
【0062】
上記方法で製造したポリ(スチレン−b−システアミンアクリルアミド)3mgをトルエンに溶かした後、量子ドット10mgを混合して2時間ほど超音波を与えて量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドを形成した。反応後の残り残余物はメタノールとトルエンを利用して数回沈殿と分散を繰り返して精製した。
【0063】
<実施形態3>(量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドの安定性)
【0064】
図3は、紫外線照射のもとで測定した量子ドット及び量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドの吸光度を表したグラフである。グラフにおいて、G1はオレイン酸(oleic acid)が表面に結合した量子ドットの吸光度であり、G2はアルキルチオールが表面に結合した量子ドットの吸光度であり、G3は上記実施形態2により製造した量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドの吸光度である。
【0065】
紫外線の照射乾燥は、362nmの波長と2mW/cm2のエネルギーに設定し、時間によって採取した試料を遠心分離して沈殿物を除去した後、エクシトンピークを基準として任意単位の相対的吸光度を測定した。
【0066】
図3を参照すると、紫外線の照射時間が増加するほどオレイン酸及びアルキルチオールが表面に結合している量子ドットのコロイド安定性が低下して沈殿物が形成され、吸光度が減少する(G1及びG2参照)。一方、本発明の実施形態による量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドのコロイド溶液は、長期間にわたって沈殿物が形成されず、吸光度が維持される結果を得た。これは量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドが高いコロイド安定性を有することを意味する。
【0067】
<実施形態4>(ブロック共重合体のグラフト密度による分散特性比較)
【0068】
量子ドットとブロック共重合体を夫々(a)10mg:1mg、(b)10mg:2mg、(c)10mg:3mgとして混合して上記実施形態1及び実施形態2と同じ方法で量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドを製造した。ハイブリッドをポリスチレンマトリックス高分子に分散させる。このとき、ブロック共重合体数の平均分子量は10k、ポリスチレンマトリックス高分子数の平均分子量は20kだった。
【0069】
図4〜図6は、夫々(a)、(b)、及び(c)による量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドの分散程度を示したTEM(transmission electron microscopy)写真である。ここで、棒の長さは400nmである。
【0070】
図4〜図6に示した様に各量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドの分散度は夫々異なる。
【0071】
TEMイメージ分析を通じて量子ドットの分散度を分散指数(Polydispersity index、PDI)で定義すると下記の数式1の関係が成立する。ここで、凝集体当たりの平均量子ドット数はMn、凝集体当たりの加重平均量子ドット数はMw、分散指数はPDIと表した。凝集体は約2nm以下の距離内で量子ドットと結合した場合の量子ドット等の集合を言う。
【0072】
量子ドットの凝集体が大きくなることにより、量子ドットが上下に重畳して位置する現象が現れ、凝集体が均一にならないのでTEM写真による定量化において誤差が生じる。
【0073】
変数iは凝集体内の量子ドットの数であり、Niは量子ドットの数がiである凝集体の数である。
【0074】
【数1】
【0075】
Mnは全体凝集体当たりに含まれる量子ドットの数を示すもので、値が1に近いほど分散特性が良い。Mwは凝集体内に含まれる量子ドットの数に加重値をおいて平均を出したものであり、値が1に近いほど分散特性が良い。この数値は多い量子ドットを有する凝集体の数が多いほど大きくなるので、この数値を通じて多い量子ドットを有する凝集体がどのぐらいあるかを間接的に確認できる。
【0076】
表1は、図4〜図6に示した量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドの分散指数(PDI)を示す。
【0077】
【表1】
【0078】
表1からわかる様に、(a)の場合、TEM写真によると、殆どの量子ドットが巨大な5個内外の凝集体に集中している。なお、凝集体の形成がひどいので、(a)のデータが有意味とはいえない。
【0079】
但し、表1を通じて確認できることは、量子ドットの分散には一定水準以上のブロック共重合体の量が確保されなければならないことである。
【0080】
<実施形態5>(量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッド対比マトリックス分子量による分散特性比較)
【0081】
上記実施形態1及び実施形態2と同じ方法で量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドを製造し、ハイブリッドとマトリックス高分子の重量を10mg:3mgとしてハイブリッドをポリスチレンマトリックス高分子に分散させた。このとき、マトリックス高分子の平均分子量を(a)2k、(b)20k、(c)200k、(d)2000kとして同じ方式で分散させた。
【0082】
図7〜図10は、各々(a)、(b)、(c)、及び(d)による量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドの分散程度を示すTEM写真である。ここで、写真に表示した棒の長さは400nmである。
【0083】
図7〜図10に示した様に、マトリックス高分子の平均分子量によって各量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドの分散度が夫々異なるように形成された。
【0084】
表2は、図7〜図10に示した量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドの分散指数(PDI)を示す。
【0085】
【表2】
【0086】
表2からわかる様に、マトリックス高分子の分子量が増えるほど量子ドットの凝集が段階的に深化される。
【0087】
<実施形態6>(ブロック共重合体の分子量による分散特性比較)
【0088】
上記実施形態1及び実施形態2と同じ方法で量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドを製造し、ハイブリッドとマトリックス高分子の重量を10mg:3mgとしてハイブリッドをポリスチレンマトリックス高分子に分散させた。このとき、ブロック共重合体の平均分子量を(a)5.7k、(b)7.8k、(c)10kとして量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドを製造した。
【0089】
図11〜図13は、各々(a)、(b)、及び(c)による量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドの分散程度を示すTEM写真である。ここで、写真に表示した棒長さは400nmである。
【0090】
図11〜図13に示した様に、ブロック共重合体の平均分子量によって各量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドの分散度が夫々異なるように形成された。
【0091】
表3は、図11〜図13に示した量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドの分散指数を示す。
【0092】
【表3】
【0093】
表3に示した様に、量子ドットとハイブリッドを形成するブロック共重合体の平均分子量を変化させたときには、ブロック共重合体の分子量が増えるほど分散特性が向上した。
【0094】
上記実施形態3〜実施形態5からわかる様に、ブロック共重合体のグラフト密度、量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドに対するマトリックスの平均分子量、量子ドットとハイブリッドを形成するブロック共重合体の平均分子量を変化させることによって量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドの分散特性を調節できる。
【0095】
<実施形態7>(従来の量子ドット−高分子の単純混合物と本発明の一実施形態によるブロック共重合体の薄膜の比較)
【0096】
図14〜図16は、ハイブリッド化されない従来の量子ドットを高分子マトリックスに混合させて薄膜を形成した際、(a)薄膜の上部から見た光学顕微鏡写真、(b)薄膜の上部から見た蛍光顕微鏡写真、及び(c)薄膜断面の走査電子顕微鏡写真である。
【0097】
図17〜図19は、本発明の一実施形態による量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドをマトリックス高分子に分散させて薄膜を形成した際、(d)薄膜の上部から見た光学顕微鏡写真、(e)薄膜の上部から見た蛍光顕微鏡写真、及び(f)薄膜断面の走査電子顕微鏡写真である。
【0098】
図14〜図16と、図17〜図19を比べて見ると、本発明の一実施形態による量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドを含む薄膜の分散度が高いことがわかる。
【0099】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲から逸脱しない範囲内で多様に変更実施することが可能である。
【符号の説明】
【0100】
110、210 基板
120、220 量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッド層
230 発光ダイオード
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成される量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッド層と、を有する発光素子であって、
前記量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッド層は、
量子ドットと、
前記量子ドットを囲むブロック共重合体と、を含み、
前記ブロック共重合体は前記量子ドットと化学結合をなすイオウを含む官能基を有することを特徴とする発光素子。
【請求項2】
前記官能基は、アルキルチオール、アルキルキサントゲン酸塩、ジアルキルチオカルバメートの中の何れか1つであることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記量子ドットは、II−VI族元素、III−V族元素、IV族元素、IV−VI族元素の中の少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項4】
前記量子ドットは、単一コア構造、コア−単一シェル構造、コア−多重シェル構造の中の何れか1つの構造を有することを特徴とする請求項3に記載の発光素子。
【請求項5】
前記II族元素は亜鉛、カドミウム、水銀からなる群から選択される少なくとも何れか1つであり、前記III族元素はアルミニウム、ガリウム、インジウムからなる群から選択される少なくとも何れか1つであり、前記IV族元素はシリコン、ゲルマニウム、錫、鉛からなる群から選択される少なくとも何れか1つであり、前記V族元素は窒素、燐、砒素からなる群から選択される少なくとも何れか1つであり、前記VI族元素はイオウ、セレニウム、テルルからなる群から選択される少なくとも何れか1つであることを特徴とする請求項3に記載の発光素子。
【請求項6】
前記基板と前記ハイブリッド層との間に形成される発光ダイオードを更に含むことを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項7】
前記発光ダイオードは、光を放出し、前記量子ドットが前記光を吸収して該量子ドットの励起状態と基底状態との間のエネルギーバンドギャップに対応する可視光線を放出するバンドギャップを有することを特徴とする請求項6に記載の発光素子。
【請求項8】
基板を準備する段階と、
前記基板上に、該基板上に形成される量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドを含む薄膜を配置する段階と、を有する発光素子の製造方法であって、
前記量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドを製造する方法は、
量子ドットを形成する段階と、
イオウを含む官能基を有するブロック共重合体を形成する段階と、
前記量子ドットと前記ブロック共重合体とを混合する段階と、
前記量子ドットに前記官能基を化学結合させる段階と、を含むことを特徴とする発光素子製造方法。
【請求項9】
前記官能基を化学結合させる段階は、前記量子ドットと前記ブロック共重合体混合物にエネルギーを加えることを特徴とする請求項8に記載の発光素子製造方法。
【請求項10】
前記官能基は、アルキルチオール、アルキルキサントゲン酸塩、ジアルキルチオカルバメートの中の何れか1つであることを特徴とする請求項8に記載の発光素子製造方法。
【請求項11】
前記量子ドットは、II−VI族元素、III−V族元素、IV族元素、IV−VI族元素からなることを特徴とする請求項9に記載の発光素子製造方法。
【請求項12】
前記量子ドットは、単一コア構造、コア−単一シェル構造、コア−多重シェル構造の中の何れか1つの構造を有することを特徴とする請求項11に記載の発光素子製造方法。
【請求項13】
前記II族元素は亜鉛、カドミウム、水銀からなる群から選択される少なくとも何れか1つであり、前記III族元素はアルミニウム、ガリウム、インジウムからなる群から選択される少なくとも何れか1つであり、前記IV族元素はシリコン、ゲルマニウム、錫、鉛からなる群から選択される少なくとも何れか1つであり、前記V族元素は窒素、燐、砒素からなる群から選択される少なくとも何れか1つであり、前記VI族元素はイオウ、セレニウム、テルルからなる群から選択される少なくとも何れか1つであることを特徴とする請求項10に記載の発光素子製造方法。
【請求項14】
前記薄膜は、前記分散された量子ドットをスピンコーティング、ドロップキャスティング、又はドクターブレード法で前記基板上に形成されることを特徴とする請求項8に記載の発光素子製造方法。
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成される量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッド層と、を有する発光素子であって、
前記量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッド層は、
量子ドットと、
前記量子ドットを囲むブロック共重合体と、を含み、
前記ブロック共重合体は前記量子ドットと化学結合をなすイオウを含む官能基を有することを特徴とする発光素子。
【請求項2】
前記官能基は、アルキルチオール、アルキルキサントゲン酸塩、ジアルキルチオカルバメートの中の何れか1つであることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記量子ドットは、II−VI族元素、III−V族元素、IV族元素、IV−VI族元素の中の少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項4】
前記量子ドットは、単一コア構造、コア−単一シェル構造、コア−多重シェル構造の中の何れか1つの構造を有することを特徴とする請求項3に記載の発光素子。
【請求項5】
前記II族元素は亜鉛、カドミウム、水銀からなる群から選択される少なくとも何れか1つであり、前記III族元素はアルミニウム、ガリウム、インジウムからなる群から選択される少なくとも何れか1つであり、前記IV族元素はシリコン、ゲルマニウム、錫、鉛からなる群から選択される少なくとも何れか1つであり、前記V族元素は窒素、燐、砒素からなる群から選択される少なくとも何れか1つであり、前記VI族元素はイオウ、セレニウム、テルルからなる群から選択される少なくとも何れか1つであることを特徴とする請求項3に記載の発光素子。
【請求項6】
前記基板と前記ハイブリッド層との間に形成される発光ダイオードを更に含むことを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項7】
前記発光ダイオードは、光を放出し、前記量子ドットが前記光を吸収して該量子ドットの励起状態と基底状態との間のエネルギーバンドギャップに対応する可視光線を放出するバンドギャップを有することを特徴とする請求項6に記載の発光素子。
【請求項8】
基板を準備する段階と、
前記基板上に、該基板上に形成される量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドを含む薄膜を配置する段階と、を有する発光素子の製造方法であって、
前記量子ドット−ブロック共重合体ハイブリッドを製造する方法は、
量子ドットを形成する段階と、
イオウを含む官能基を有するブロック共重合体を形成する段階と、
前記量子ドットと前記ブロック共重合体とを混合する段階と、
前記量子ドットに前記官能基を化学結合させる段階と、を含むことを特徴とする発光素子製造方法。
【請求項9】
前記官能基を化学結合させる段階は、前記量子ドットと前記ブロック共重合体混合物にエネルギーを加えることを特徴とする請求項8に記載の発光素子製造方法。
【請求項10】
前記官能基は、アルキルチオール、アルキルキサントゲン酸塩、ジアルキルチオカルバメートの中の何れか1つであることを特徴とする請求項8に記載の発光素子製造方法。
【請求項11】
前記量子ドットは、II−VI族元素、III−V族元素、IV族元素、IV−VI族元素からなることを特徴とする請求項9に記載の発光素子製造方法。
【請求項12】
前記量子ドットは、単一コア構造、コア−単一シェル構造、コア−多重シェル構造の中の何れか1つの構造を有することを特徴とする請求項11に記載の発光素子製造方法。
【請求項13】
前記II族元素は亜鉛、カドミウム、水銀からなる群から選択される少なくとも何れか1つであり、前記III族元素はアルミニウム、ガリウム、インジウムからなる群から選択される少なくとも何れか1つであり、前記IV族元素はシリコン、ゲルマニウム、錫、鉛からなる群から選択される少なくとも何れか1つであり、前記V族元素は窒素、燐、砒素からなる群から選択される少なくとも何れか1つであり、前記VI族元素はイオウ、セレニウム、テルルからなる群から選択される少なくとも何れか1つであることを特徴とする請求項10に記載の発光素子製造方法。
【請求項14】
前記薄膜は、前記分散された量子ドットをスピンコーティング、ドロップキャスティング、又はドクターブレード法で前記基板上に形成されることを特徴とする請求項8に記載の発光素子製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2011−195810(P2011−195810A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286127(P2010−286127)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do,Republic of Korea
【出願人】(508298075)ソウル大学校産学協力団 (27)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do,Republic of Korea
【出願人】(508298075)ソウル大学校産学協力団 (27)
【Fターム(参考)】
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