説明

量子ドット型ウルトラキャパシタ及び電子バッテリー

【課題】キャパシタよりもエネルギー密度を大きくし、バッテリーよりも充電/放電を速くし、かつ/またはバッテリーよりも寿命をずっと長くしたエネルギー貯蔵装置を提供する。
【解決手段】本発明は、少なくとも1つの量子閉じ込め系(QCS)を有するソリッドステート・エネルギー貯蔵装置を提供する。ここで、QCS(102)は、量子ドット(QD)、量子井戸またはナノ細線を含み得る。本発明は、少なくとも1つのQCSが組み込まれた少なくとも1つの誘電材料(104)層と、少なくとも1つの誘電材料層の上面に配置された第1導電電極(106)及び下面に配置された第2導電電極(108)とをさらに含み、両電極は、少なくとも1つのQCSに電荷を移動させるように配置されており、両電極間に電圧を与えるように電気回路が配置されたとき、該電圧により、移動した電荷が少なくとも1つのQCSから電気回路へ放電されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー貯蔵装置に関する。詳細には、本発明は、ソリッドステート・キャパシタ及びバッテリーに関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー貯蔵装置は、特に携帯機器及び自動車向けの、多数の様々な電子装置の部品の中でも、極めて重要な役割を担っている。エネルギー貯蔵装置には、電荷を貯蔵し、回路を介して放電するキャパシタ(コンデンサ)と、イオン及び化学反応を利用してエネルギーを貯蔵及び放出するバッテリー(蓄電池)とが含まれる。既存のエネルギー貯蔵装置には、エネルギー貯蔵密度が低い、充電/放電動作が遅い、劣化が早いなどの数々の欠点がある。例えば、既存のバッテリーは貯蔵密度が小さいので、通常、十分な量のエネルギーを貯蔵するためには、バッテリーのサイズ及び重量を大きく設計する必要がある。
【0003】
このようなサイズ及び重量の要件は、例えばハイブリッド車や電気自動車などにおいて、バッテリーで動く装置の性能低下につながる。バッテリーの貯蔵密度が小さいのは、バッテリー内に貯蔵されているイオンのサイズ及び重量が大きいからである。既存のバッテリーではイオンが電極間を移動することにより充放電が行われるが、このことも充電及び放電動作を遅くする要因の1つである。さらに、既存のバッテリー内でのイオンの移動は、バッテリーの劣化を早めることになる。エネルギー貯蔵装置は、多種多様の物理的効果に基づいており、例えば、キャパシタには電界を用いてエネルギーを貯蔵することができ、バッテリーには化学反応(イオン運動を含む)を用いてエネルギーを貯蔵することができる。しかしながら、キャパシタ内のエネルギー貯蔵は、装置の幾何学構造(例えば、面積が小さい2次元キャパシタプレート)によって制限され、バッテリーは、電気化学反応に固有のイオンの動きのせいで応答時間が遅いという欠点もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、キャパシタよりもエネルギー密度を大きくし、バッテリーよりも充電/放電を速くし、かつ/またはバッテリーよりも寿命をずっと長くしたエネルギー貯蔵装置を提供することができれば、当分野において進展をもたらすであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、少なくとも1つの量子閉じ込め系(quantum confinement species:QCS)と、少なくとも1つのQCSが組み込まれた少なくとも1つの誘電材料層と、少なくとも1つの誘電材料層の上面に配置された第1導電電極と、少なくとも1つの誘電材料層の下面に配置された第2導電電極とを有し、両電極は、少なくとも1つのQCSに電荷を移動させるように配置されており、両電極間に電圧を与えるように電気回路が配置されたとき、該電圧により、移動した電荷が少なくとも1つのQCSから電気回路へ放電されるようにしたソリッドステート・エネルギー貯蔵装置を提供する。
【0006】
本発明の一態様によれば、QCSは、量子ドット(QD)、量子井戸またはナノ細線を含み得る。
【0007】
別の態様では、ソリッドステート・エネルギー貯蔵装置の充電速度は、少なくとも2つのQCS間の間隔を維持することができる構造の厚さ、少なくとも1つのQCSと1つの電極との間隔の厚さ、QCSと誘電層との間のエネルギー障壁、または少なくとも1つの誘電材料層の誘電率に従って規定される。
【0008】
本発明のさらなる態様では、ソリッドステート・エネルギー貯蔵装置の放電速度は、少なくとも2つのQCS間の間隔を維持することができる構造の厚さ、少なくとも1つのQCSと1つの電極との間隔の厚さ、QCSと誘電層との間のエネルギー障壁、または少なくとも1つの誘電材料層の誘電率に従って規定される。
【0009】
本発明の別の態様では、複数のQCSが、第1導電電極と第2導電電極との間において、QCSのサイズまたはQCSの材料を含み得る特性に従って勾配を形成するようにして配列されている。さらに、上記勾配における相対的に大きいサイズのQCSは、量子ドット、量子井戸、ナノ細線及びバルク材料を含み得る。この態様によれば、上記勾配における相対的に大きいサイズのQCSは第1仕事関数を有する材料を含み、上記勾配における相対的に小さいQCSは第2仕事関数を有する材料を含む。
【0010】
本発明の一態様によれば、複数のQCSがサイズに従って配置され、ここで、相対的に小さいサイズの少なくとも1つのQCSが、相対的に小さいサイズのQCSアレイによって取り囲まれている。この態様では、相対的に大きいサイズのQCSは、量子ドット、量子井戸、ナノ細線またはバルク材料であり得る。さらに、相対的に大きいサイズのQCSは第1仕事関数を有する材料を含み、相対的に小さいサイズのQCSは第2仕事関数を有する材料を含む。
【0011】
本発明の別の態様では、QCSが材料によって配置され、ここで、仕事関数が大きい材料が、相対的に仕事関数が小さいQCSアレイによって取り囲まれている。
【0012】
本発明の別の態様では、QCSが材料によって配置され、ここで、仕事関数が小さい材料が、相対的に仕事関数が大きいQCSアレイによって取り囲まれている。
【0013】
本発明の別の態様では、複数のQCSが、仕事関数の勾配を有するように配置されている。
【0014】
本発明の別の態様では、複数のQCSがサイズに従って配置され、ここで、相対的に小さいサイズのQCSが相対的に大きいサイズのQCSアレイによって取り囲まれている。この態様では、相対的に大きいサイズのQCSは、量子ドット、量子井戸、ナノ細線またはバルク材料を含むことができる。
【0015】
本発明のさらなる態様では、ソリッドステート・エネルギー貯蔵装置は、電気出力部を有しかつ直列または並列に配列された少なくとも2つのソリッドステート・エネルギー貯蔵装置を含む。
【0016】
さらに別の態様では、少なくとも1つのQCSアレイは、少なくとも1つの誘電材料層の表面上に少なくとも1つの機能層を形成する。この態様では、機能層は、互いに異なる仕事関数を有する異なる材料を含み得、機能層は、第1電極と第2電極との間にポテンシャル勾配を形成するように配列されている。ここで、機能層は、誘電層内に配列された量子ドット(QD)アレイ、誘電層内に配列された量子井戸アレイ、誘電層内に配列されたナノ細線レイ、または誘電層内に配列されたバルク材料、あるいはこれらの組合せを含むことができる。さらに、機能層は、少なくとも1つの誘電材料層の電子親和力よりも大きい電子親和力を有する材料を含み得る。本態様によれば、少なくとも1つの機能層を別の機能層上に配置することができる。さらに、少なくとも1つの機能層を第1誘電材料層に配置することができ、少なくとも1つの他の機能層を少なくとも第2誘電材料層に配置することができる。ここで、機能層間に障壁層を配置することができる。この態様では、QCSを、サイズ勾配または材料勾配を形成するように配列することができる。
【0017】
本発明のさらなる態様によれば、QCSの少なくとも1つのアレイが、少なくとも1つの誘電材料層間に少なくとも1つの機能層を形成する。
【0018】
本発明の一態様では、ソリッドステート・エネルギー貯蔵装置であって、少なくとも1つの誘電材料層に組み込まれた少なくとも1つの量子閉じ込め系(QCS)と、誘電材料の上面に配置された第1導電電極及び誘電材料の下面に配置された第2導電電極とを含み、第1電極及び第2電極が、誘電材料及びQCSに分極を生じさせるように配置されているソリッドステート・エネルギー貯蔵装置が提供される。
【0019】
本発明の目的及び利点については、図面とともに以下の詳細な説明を読むことで理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に従うソリッドステート・エネルギー装置の概略図を示す。
【図2】図2(a)〜図2(c)は、本発明に従う互いに異なる量子閉じ込め系を示す。
【図3】図3(a)〜図3(b)は、本発明に従いQCSが埋め込まれたソリッドステート・エネルギー装置を示す。
【図4】図4(a)〜図4(d)は、本発明に従いサイズに従って配置されたQCSの実施形態を示す。
【図5】図5(a)〜図5(b)は、本発明に従いサイズに従って直列及び並列に配置されたソリッドステート・エネルギー装置の回路図を示す。
【図6】本発明に従って或る勾配を形成するようにして配置されたQCSを有する2つの機能層と、障壁層とを備えたソリッドステート・エネルギー貯蔵装置を示す。
【図7】本発明に従う繰り返しスタック型ソリッドステート・エネルギー装置を示す。
【図8】図8(a)〜図8(j)は、本発明に従うソリッドステート・エネルギー装置の製造ステップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の詳細な説明には、説明のために数多くの具体例が含まれるが、以下の例示的な詳細に対する数多くの変形形態及び修正形態が本発明の範囲内に含まれることは、当業者であれば容易に理解されるであろう。従って、以下に示す本発明の好適実施形態は、本発明に対する一般性を喪失するものではなく、本発明に対して制限を課すものでもない。
【0022】
本発明は、既存のエネルギー貯蔵装置の上記欠点を克服することができるソリッドステート・エネルギー貯蔵装置を対象にしている。本発明の装置は、誘電材料内に埋め込まれているかまたは誘電材料の表面上に配列されている1若しくは複数の量子閉じ込め構造(QCS)を含み、複数の導電電極、例えば2つ以上の金属電極などに挟まれたり取り囲まれたりしている。電極が充電されると、電荷の少なくとも一部がQCSに移動する。さらに、電極の充電は、誘電材料及びQCS内の分極を誘導する。電極が充電回路から電気的に切り離されたとき、電荷の一部はQCS内にとどまり、後々の放電のために貯蔵されることができる。電極間に適切な電圧を印加することによって、QCSが放電されて電流が流れるようにすることができる。
【0023】
本発明は、非常に高い貯蔵密度を有するキャパシタ及び電子バッテリーを対象にしていることに注意することが重要である。本発明のエネルギー貯蔵装置は、複数の量子ドット(QD)を用いてイオンの代わりに電子を貯蔵するので、貯蔵容量の大きな小型・軽量装置が提供される。さらに、電子の移動によって、迅速な充電及び放電が可能になる。本発明のソリッドステート装置はまた、既存のエネルギー貯蔵装置よりも改善された劣化特性を有する。本発明では、エネルギー貯蔵には、表面電荷(例えばキャパシタ)またはイオン(例えばバッテリー)とは対照的に、バルク内の電子が用いられる。
【0024】
本発明の実施形態では、装置の充放電速度及び貯蔵容量は調節可能である。充放電速度は、QD間の間隔及び誘電材料の誘電率によって決まるので、QD間の距離、誘電率、またはそれらの組合せを変えることによって、充放電速度を変えることができる。充放電速度はさらに、誘電材料及びQDの電子親和力によって決まる。
【0025】
一実施形態では、エネルギー貯蔵装置は様々なサイズのQCSを有する。大きいQCSが一方の電極の近くに配置され、より小さいQCSが反対側の電極の近くに配置されることが好ましい。電荷は、より大きいQCSに貯蔵されることが好ましい。このようなサイズ分布の勾配は、たとえセルが中性である場合でも、QCSの分極を可能にする。すなわち、より大きいQCSは、より小さいQCSに近接しているが故に分極される。装置を充電すると、過剰電荷は好適にはより大きいドット内に収容され、それによって貯蔵される電荷を増加させる。別の実施形態では、より小さいQCSのアレイが、より大きいQCSの周りに配置されている。あるいは、より小さいQCSが、より大きいQCSのアレイによって取り囲まれる場合もある。QCSは広範囲のサイズを有し得ることに留意されたい。具体的には、或る実施形態では、より大きいQCSをナノ細線または量子井戸に置き換えることができ、かつ/またはより小さいQCSを個々の原子程度に小さくすることができる。
【0026】
別の好適実施形態では、エネルギー貯蔵装置は、例えばユニットを積み重ねるなどして互いに接続された複数の繰り返しユニットを含み得る。各ユニットは、単独で或る量の電荷を貯蔵することができるので、複数の繰り返しユニットを備えた装置は、より多くの量の電荷を貯蔵することができる。直列に積み重ねられたこれらのユニットの電圧は加算され、エネルギー密度は電圧の2乗に比例して大きくなるので、本実施形態において、ずっと大きなエネルギー密度を達成することができる。
【0027】
別の実施形態では、複数のQDは異なる材料で製造される。さらに、第1QDを、第2QDより大きな仕事関数を持つ材料から製造することができる。電子移動は、近接する材料間のフェルミ準位の差によって生じるので、フェルミ準位の差を大きくして、より大きな分極を達成することができる。
【0028】
本発明のさらなる実施形態によれば、絶縁マトリクスの両側に導電電極を堆積させることによって、エネルギー貯蔵を向上させることができる。絶縁マトリクス内に1若しくは複数の機能層が配置されており、トンネル現象(トンネリング)が発生し得るような薄い(約1nmないし25nm)絶縁層によって、または電流に高い抵抗性を有する薄い(約10nmないし700nm)絶縁層によって、互いから分離されている。機能層は、ポテンシャル勾配を与えるために異なるフェルミ準位を有するQCSを含み得る。さらに、機能層には、量子井戸、ナノ細線または量子ドットと同様に、量子閉じ込めが起こり得る。そのような量子閉じ込めは、機能層のフェルミ準位を調整する方法を提供することができる。機能層は、金属または半導体であってよく、絶縁マトリクスの電子親和力よりも大きい電子親和力を有する埋め込みQCSを含むことができる。絶縁マトリクス材料は、高い降伏電圧を有するはずである。幾つかの機能層を積み重ねることもできる。
【0029】
電子トンネリングは、電気化学ポテンシャルが平衡状態で一定であるように平衡ポテンシャル勾配を生じさせる。或る極性の電圧を装置に印加すると、それによって平衡ポテンシャルが無効にされ、電子をより高いフェルミ準位材料に送り込む(すなわち充電電流が流れる)ようにすることができる。電圧を取り去ったとき、一部の電荷は機能層内にとどまることができる。これが、装置の充電された状態である。装置から放電電流が流れ出ると、電極の電圧が低下し、貯蔵された電荷は、より低いフェルミエネルギーを有する材料へ流れることになる。これが放電サイクルであり、機能層間及び機能層から電極へと流れる電子は、電流を提供することになる。
【0030】
本発明の用途には、電気自動車用エネルギー貯蔵装置(EVまたはPHEV用バッテリー)、携帯用電子機器(ラップトップ、携帯電話など)及び軍用装備/兵器が含まれ、本発明の利点には、エネルギー貯蔵密度が大きいこと(場合により250Whr/kg以上)、電力貯蔵密度が大きいこと(〜10W/kg)、充電/放電速度が高速であること、及び化学反応がないので経時的な劣化が小さいことが含まれる。さらなる利点として、原子/イオンが動かないこと、壊滅的で危険な故障のリスクがないことも含まれる。
【0031】
図面を参照すると、図1は、本発明に従うソリッドステート・エネルギー貯蔵装置100の概略図を示している。図のように、ソリッドステート・エネルギー貯蔵装置100は、少なくとも1つの量子閉じ込め系(QCS)102と、少なくとも1つのQCS102が組み込まれた少なくとも1つの誘電材料層104と、少なくとも1つの誘電材料層104の上面に配置された第1導電電極106と、少なくとも1つの誘電材料層104の下面に配置された第2導電電極108とを含み、第1電極106及び第2電極108は、少なくとも1つのQCS102に電荷を移動させるように配置されており、第1電極106と第2電極108の間に電圧を与えるように電気回路が配置されたとき、該電圧により、少なくとも1つのQCS102に移動した電荷がQCS102から電気回路へ放電される。
【0032】
図2(a)〜図2(c)は、本発明に従う互いに異なる量子閉じ込め系200を示しており、図2(a)は量子ドット(QD)202、図2(b)は量子井戸204、図2(c)はナノ細線206をそれぞれ示している。
【0033】
本発明によれば、ソリッドステート・エネルギー貯蔵装置100の充電速度または放電速度は装置構造に従って規定され、そのような装置構造には、少なくとも2つのQCS102間の間隔、少なくとも1つのQCS102と1つの電極106/108との間の間隔、QCS102と誘電層104との間のエネルギー障壁、または少なくとも1つの誘電材料層104の誘電率が含まれ得る。
【0034】
本発明の一実施形態では、図3(a)〜図3(b)は、少なくとも1つの誘電材料304/308層のうちの少なくとも1つの層の表面上において、ソリッドステート・エネルギー装置300に埋め込まれたQCSを示している。この態様では、それぞれQCS302/306を含む互いに異なる層に、互いに異なる仕事関数を有する異なる材料が含まれており、QCS層302/306は、第1電極310と第2電極312との間にポテンシャル勾配を形成するように配置されている。少なくとも1つのQCS層302を第1誘電材料層304に配置することができ、少なくとも1つの他のQCS層306を少なくとも第2誘電材料層308に配置することができることを理解されたい。本発明によれば、QCS層302/306は、i)誘電層内に配列された量子ドット(QD)アレイ、ii)誘電層内に配列された量子井戸アレイ、iii)誘電層内に配列されたナノ細線レイ、及びiv)誘電層内に配列されたバルク材料、またはこれらの任意の組合せを含み得る。さらに、QCS層302/306は、少なくとも1つの誘電層304/308の電子親和力よりも大きな電子親和力を持つ材料を含むことができ、ここで、少なくとも1つの誘電層304/308のバンドギャップは、約2eV以上、好適には約3eV以上であり得る。本態様によれば、図3(b)に示されているように少なくとも1つのQCS層302/306を別のQCS層上に配置することができる。この態様では、図6に示されているように、QCSを、サイズ勾配または材料勾配を形成するように配列することができる。
【0035】
QCSは、材料別に配置されることができ、ここで、仕事関数が大きい材料が、仕事関数が相対的に小さいQCSのアレイによって取り囲まれるか、あるいは、仕事関数が小さい材料が、仕事関数が相対的に大きいQCSのアレイによって取り囲まれるようにすることもできる。また、複数のQCSは、仕事関数の勾配を有するように配置されることができる。本発明の別の実施形態によれば、図4(a)〜図4(b)は、サイズ400に従って配置されたQCSの実施形態を示しており、図4(a)は、相対的に大きいサイズのQCS402が相対的に小さいサイズのQCS404のアレイによって取り囲まれていることを示している。相対的に大きいサイズのQCS402には、第1仕事関数φを有する材料が含まれ、相対的に小さいサイズのQCS404には、第2仕事関数φを有する材料が含まれ、ここで、一実施形態によれば、第1仕事関数φは第2仕事関数φより大きい。図4(b)に示すように、本発明の別の実施形態には、相対的に大きいサイズのQCS401のアレイによって取り囲まれた相対的に小さいサイズのQCS404が含まれる。図4(a)及び図4(b)に示した実施形態では、相対的に大きいサイズのQCS402は、量子ドット404、量子井戸402、または図4(c)及び図4(d)に示されるようなバルク材料406またはナノ細線408を含み得る。
【0036】
図5(a)〜図5(b)は、それぞれ直列及び並列に配置されたソリッドステート・エネルギー装置の回路図を示している。本発明の一実施形態では、ソリッドステート・エネルギー貯蔵装置は、電気出力部502を有しかつ図5(a)に示すように直列に配列されるかまたは図5(b)に示すように並列に配列された少なくとも2つのソリッドステート・エネルギー貯蔵装置100を含む。
【0037】
本発明の一実施形態では、複数のQCSが、第1導電電極と第2導電電極との間において、QCSのサイズまたはQCSの材料を含み得る特性に従って勾配を形成するようにして配列されており、両電極間の勾配全体を通して電荷の分極が存在する。図6は、本発明に従う例示的なサイズ勾配パターンで(すなわち、サイズが段階的に変化するようにして)QCSが配列されたソリッドステート・エネルギー貯蔵装置600を示しており、この例において、相対的に薄い誘電層604/608内に配置された機能層602/606におけるQDサイズ勾配が示されており、誘電層604/608におけるQD勾配は、3Åないし300μmの範囲の厚さを有する機能層を形成する。機能層内のQCSは、QD、量子井戸、ナノ細線またはバルク材料であり得ることを理解されたい。図6はさらに、1nmないし500μmの厚さを有しかつ相対的に高い電子親和力、相対的に高いバンドギャップ及び相対的に高い降伏電圧を有する相対的に厚い絶縁層610を示している。層610は、0.3nmないし300μmの厚さを有する2つの相対的に薄い誘電層304/308間に配置されている。絶縁層610は、ソリッドステート・エネルギー貯蔵装置600にあってもなくてもよい層である。層610のバンドギャップは、1eV超であり得、4eV超であることが好ましい。破壊電界は、好ましくは1MV/cm超、より好ましくは3MV/cm超である。第1電極612は、相対的に小さい仕事関数φを有し、第1相対的に薄い誘電層604の上面に配置されている。ここで、相対的に小さい仕事関数φは、4eV未満であり得、3eV未満であることが好ましい。相対的に小さい仕事関数φを有する第1電極612に有用ないくつかの例示的な材料には、例を挙げると、Zn、Li、Na、Mg、K、Ca、Rb、Sr、Ba、Cs、ドープされたダイアモンド及びYが含まれ得る。第2電極614は、相対的に大きい仕事関数φを有し、第2相対的に薄い誘電層606の下面に配置されている。ここで、相対的に大きい仕事関数φは4.5eV超であり得、5.5eV超であることが好ましい。相対的に大きい仕事関数φを有する第2電極312に有用ないくつかの例示的な材料には、例を挙げると、Au、Pt、W、Al、Cu、Ag、Ti、Se、Ge、Pd、Ni、Co、Rh、Ir及びOsが含まれ得る。量子閉じ込め活性層のサイズ勾配は、例を挙げると、Ni、Pt、Cu、Ag、Au及びIrなどの高状態密度(DOS)材料を用いて、高度に分極可能である。本発明は、マトリクス材料において化学的に安定な(例えば、マトリクス材料が酸化物であれば酸化しない)QCSを提供する。誘電層に有用な材料のいくつかの例には、Al、Si、TiO、窒化チタン、酸窒化チタン、Ge、ZnO、ZrO、HfO、SiO、Si、Y、BaTiO、SrO、SrTiO、及びこれらの組合せが含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明によれば、QCSに有用な材料の例には、Pt、Au、Ni、Ag、W、Ti、Al、Cu、Pd、Cs、Li、Na、K、Y、Sr及びBaなどの金属が含まれ得る。QCSに有用な材料のさらなる例には、PbSe、PbS、ZnS、CdSe、CdS、ZnSe、Ge、Si、Snなどの低バンドギャップ半導体及びRuOなどの導電性酸化物が含まれ得る。相対的に高いバンドギャップ及び相対的に高い降伏電圧を有する相対的に厚い絶縁層610は、例を挙げると、ZnS、TiO、Al、ZrO、Y、HfO、Si、SiO、他の酸化物、窒化物、硫化物、セレン化物などの材料から製造され得る。本実施形態によれば、サイズ勾配602/606全体を通して仕事関数が連続的に変化する。さらに、上記勾配における相対的に大きいサイズのQCS616は、量子井戸、ナノ細線及びバルク材料を含み得る。ここで、相対的に大きいサイズのQCS616は、効果的にはバルク材料程度の大きさの最小寸法、例えば金属に対しては3nmないし10nm超、一部の半導体に対しては40nm超の最小寸法を有し得るか、あるいは、一実施形態によれば、少なくとも相対的に小さいQCSより大きい。この態様によれば、勾配602/606における相対的に大きいサイズのQCS616には、第1仕事関数を有する材料が含まれ、勾配602/606における相対的に小さいQCS618には、第2仕事関数を有する材料が含まれ、相対的に小さいQCS618は、一実施形態によれば、金属に対して1原子(atom)ないし3〜10nmの最小寸法、半導体に対して40nmの最大寸法を有し得る。
【0038】
本発明の別の実施形態では、図7は、繰り返しスタック型の、すなわち複数のスタック部分が繰り返し積み重ねられるような、ソリッドステート・エネルギー装置700を示している。ここで、ソリッドステート・エネルギー装置のスタック部分702は、誘電層704と、誘電層704上に配置された量子井戸層706と、量子井戸層706上に配置された相対的に薄い誘電層708と、相対的に薄い誘電層708上に配置された相対的に極小のQD710のアレイとを含み得る。ここで、2つのスタック部分702が示されているが、電極712/714間でスタック部分を任意に何度も繰り返すことができることを理解されたい。
【0039】
本発明の別の実施形態では、図8(a)〜図8(j)は、ソリッドステート・エネルギー装置800を製造するための可能な一連のステップを示している。当業者にとって明らかであるように、ステップ及び方法の多くのバリエーションが可能であるが、ここでは以下の例示的な手順が提供される。図8(a)に示すように、ガラスなどの基板802を洗浄し、基板上に、スパッタコーティング、蒸着またはスピンコーティングを用いて裏面電極804を堆積させる。あるいは、基板として金属箔を用いることもできる。図8(b)に示すように、アセンブリを洗浄し、原子層堆積(ALD)を用いてQCS構造808の10nmないし200nmの活性層806を堆積させる。図8(c)は、その次のステップ、すなわち、活性層806上にマスク層810を提供し、活性層808を所望の形状またはパターンにエッチングするステップを示しており、図8(d)に示すように、マスク層810を除去し、構造を洗浄する。図8(e)は、CVDまたはPVDを用いて100nmないし500nmの絶縁層812を堆積させるステップを示しており、絶縁層812を洗浄し、任意選択で平坦化する。図8(f)は、ALDを用いて絶縁層812b上に別の10nmないし200nmの活性層814を堆積させるステップを示している。この構造に、図8(g)に示すように別のマスキング層816を提供し、エッチングする。その後、次のステップのためにマスク層を除去し、構造を洗浄する。図8(h)に示すように金属リフトオフマスク層818を構造の底部から頂部まで堆積させ、図8(i)に示すように、スパッタリング、蒸着またはスピンコーティングを用いて上部電極820を堆積させる。図8(j)に示すように、金属リフトオフ層818を除去し、ダイシング及びワイヤボンディングのために最終的な構造821を洗浄する。
【0040】
ここまで、本発明についていくつかの例示的な実施形態に従って説明してきたが、これらの実施形態は、制限的なものではなく、全ての態様において例示のためのものである。それゆえ、本発明は、詳細な実施にあたり、当業者によって本明細書中の説明から導かれ得る多くの変形形態が可能である。例えば、サイズ勾配を有するQCSを、或る材料勾配を有する材料と組み合わせることができ、これらを任意の形態で配置することができる。第2の例として、QCSは、球形、円錐形、角錐形などの任意の形状をとることができ、あるいは三角形や円形などのほぼ2次元形状をとることができる。
【0041】
そのような変形形態は全て、以下の特許請求の範囲及びそれと法的に等価なものによって画定される本発明の範囲及び趣旨に含まれるものと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソリッドステート・エネルギー貯蔵装置であって、
a.少なくとも1つの量子閉じ込め系(QCS)と、
b.前記少なくとも1つのQCSが組み込まれた少なくとも1つの誘電材料層と、
c.前記少なくとも1つの誘電材料層の上面に配置された第1導電電極及び前記少なくとも1つの誘電材料層の下面に配置された第2導電電極とを含み、
前記両電極が、前記少なくとも1つのQCSに電荷を移動させるように配置されており、
前記両電極間に電圧を与えるように電気回路が配置されたとき、前記電圧により、前記移動した電荷が前記少なくとも1つのQCSから前記電気回路へ放電されるようにしたことを特徴とするソリッドステート・エネルギー貯蔵装置。
【請求項2】
前記QCSが、量子ドット(QD)、量子井戸及びナノ細線からなる群から選択されたものであることを特徴とする請求項1に記載のソリッドステート・エネルギー貯蔵装置。
【請求項3】
前記ソリッドステート・エネルギー貯蔵装置の充電速度が、少なくとも2つの前記QCS間の間隔の厚さ、前記少なくとも1つの前記QCSと1つの前記電極との間隔の厚さ、前記QCSと前記誘電層との間のエネルギー障壁、及び前記少なくとも1つの誘電材料層の誘電率からなる群から選択される基準に従って規定されるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のソリッドステート・エネルギー貯蔵装置。
【請求項4】
前記ソリッドステート・エネルギー貯蔵装置の放電速度が、少なくとも2つの前記QCS間の間隔の厚さ、前記少なくとも1つの前記QCSと1つの前記電極との間隔の厚さ、前記QCSと前記誘電層との間のエネルギー障壁、及び前記少なくとも1つの誘電材料層の誘電率からなる群から選択される基準に従って規定されるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のソリッドステート・エネルギー貯蔵装置。
【請求項5】
複数の前記QCSが、前記第1導電電極と前記第2導電電極との間において、前記QCSのサイズ及び前記QCSの材料からなる群から選択される特性に従って勾配を形成するようにして配列されていることを特徴とする請求項1に記載のソリッドステート・エネルギー貯蔵装置。
【請求項6】
前記サイズ勾配全体を通して仕事関数が連続的に変化するようにしたことを特徴とする請求項5に記載のソリッドステート・エネルギー貯蔵装置。
【請求項7】
前記勾配における相対的に大きいサイズの前記QCSが、量子ドット、量子井戸、ナノ細線及びバルク材料からなる群から選択されたものであることを特徴とする請求項5に記載のソリッドステート・エネルギー貯蔵装置。
【請求項8】
前記勾配における相対的に大きいサイズの前記QCSが、第1仕事関数を有する材料を含み、前記勾配における相対的に小さいサイズの前記QCSが、第2仕事関数を有する材料を含むことを特徴とする請求項5に記載のソリッドステート・エネルギー貯蔵装置。
【請求項9】
複数の前記QCSがサイズに従って配置され、相対的に大きいサイズの少なくとも1つの前記QCSが、相対的に小さいサイズの前記QCSのアレイによって取り囲まれるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のソリッドステート・エネルギー貯蔵装置。
【請求項10】
前記相対的に大きいサイズの前記QCSが、量子ドット、量子井戸、ナノ細線及びバルク材料からなる群から選択されたものであることを特徴とする請求項9に記載のソリッドステート・エネルギー貯蔵装置。
【請求項11】
前記相対的に大きいサイズの前記QCSが、第1仕事関数を有する材料を含み、前記相対的に小さいサイズのQCSが、第2仕事関数を有する材料を含むことを特徴とする請求項9に記載のソリッドステート・エネルギー貯蔵装置。
【請求項12】
複数の前記QCSがサイズに従って配置され、相対的に小さいサイズの少なくとも1つの前記QCSが、相対的に大きいサイズの前記QCSのアレイによって取り囲まれるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のソリッドステート・エネルギー貯蔵装置。
【請求項13】
前記相対的に大きいサイズのQCSが、量子ドット、量子井戸、ナノ細線及びバルク材料からなる群から選択されたものであることを特徴とする請求項12に記載のソリッドステート・エネルギー貯蔵装置。
【請求項14】
前記ソリッドステート・エネルギー貯蔵装置が、電気出力部を有しかつ直列または並列に配列された少なくとも2つの前記ソリッドステート・エネルギー貯蔵装置を含むことを特徴とする請求項1に記載のソリッドステート・エネルギー貯蔵装置。
【請求項15】
少なくとも1つの前記QCSアレイが、前記少なくとも1つの誘電材料層の表面上に少なくとも1つの機能層を形成していることを特徴とする請求項1に記載のソリッドステート・エネルギー貯蔵装置。
【請求項16】
前記機能層が、互いに異なる仕事関数を有する異なる材料を含み、
前記機能層が、前記第1導電電極と前記第2導電電極との間にポテンシャル勾配を形成するように配置されていることを特徴とする請求項15に記載のソリッドステート・エネルギー貯蔵装置。
【請求項17】
前記機能層が、前記誘電層内に配列された量子ドット(QD)アレイ、前記誘電層内に配列された量子井戸アレイ、前記誘電層内に配列されたナノ細線レイ、及び前記誘電層内に配列されたバルク材料からなる群から選択されたものであることを特徴とする請求項15に記載のソリッドステート・エネルギー貯蔵装置。
【請求項18】
前記機能層が、前記少なくとも1つの誘電材料層の電子親和力よりも小さい電子親和力を有する材料を含むことを特徴とする請求項15に記載のソリッドステート・エネルギー貯蔵装置。
【請求項19】
少なくとも1つの前記機能層が、別の前記機能層上に配置されていることを特徴とする請求項15に記載のソリッドステート・エネルギー貯蔵装置。
【請求項20】
少なくとも1つの前記機能層が第1誘電材料層上に配置され、少なくとも1つの他の前記機能層が少なくとも第2誘電材料層に配置されていることを特徴とする請求項15に記載のソリッドステート・エネルギー貯蔵装置。
【請求項21】
前記機能層間に、障壁層が配置されていることを特徴とする請求項15に記載のソリッドステート・エネルギー貯蔵装置。
【請求項22】
前記QCSが、サイズ勾配または材料勾配を形成するように配列されていることを特徴とする請求項15に記載のソリッドステート・エネルギー貯蔵装置。
【請求項23】
少なくとも1つの前記QCSアレイが、前記少なくとも1つの誘電材料層間に少なくとも1つの機能層を形成していることを特徴とする請求項1に記載のソリッドステート・エネルギー貯蔵装置。
【請求項24】
ソリッドステート・エネルギー貯蔵装置であって、
a.少なくとも1つの量子閉じ込め系(QCS)と、
b.前記少なくとも1つのQCSが組み込まれた少なくとも1つの誘電材料層と、
c.前記少なくとも1つの誘電材料層の上面に配置された第1導電電極及び前記少なくとも1つの誘電材料層の下面に配置された第2導電電極とを含み、
前記両電極が、前記誘電材料及び前記QCSに分極を生じさせるように配置されていることを特徴とするソリッドステート・エネルギー貯蔵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−515448(P2012−515448A)
【公表日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546267(P2011−546267)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/000113
【国際公開番号】WO2010/083055
【国際公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(503115205)ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティ (69)
【Fターム(参考)】