量子ビットを制御する量子ロジックコンポーネント及び方法
【課題】量子ドットにおいて励起子状態を操作し重ね合わせの状態を制御することにより、量子情報システムに関する状態を適切に利用する。
【解決手段】コンポーネントは、量子ビットと、前記量子ビットに関するコントローラとを具備し、前記コンポーネントは、量子ドットと、前記量子ビットを形成するために前記量子ドットに中性の励起子状態を生成する励起部とを具備し、前記コンポーネントは、前記状態の方向に関する光学的な測定を行う測定部をさらに具備し、前記コントローラは前記量子ドットに変調された電場を印加する電気的なコンタクトに結合している電気的な接続電源を具備し、変調は前記中性の励起子状態の崩壊時間よりも高速である。
【解決手段】コンポーネントは、量子ビットと、前記量子ビットに関するコントローラとを具備し、前記コンポーネントは、量子ドットと、前記量子ビットを形成するために前記量子ドットに中性の励起子状態を生成する励起部とを具備し、前記コンポーネントは、前記状態の方向に関する光学的な測定を行う測定部をさらに具備し、前記コントローラは前記量子ドットに変調された電場を印加する電気的なコンタクトに結合している電気的な接続電源を具備し、変調は前記中性の励起子状態の崩壊時間よりも高速である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、量子ビットを制御する、量子情報コンポーネント及び方法に関する。より詳しくは、本発明は、量子ドットにおいて励起子(exciton)状態を操作するようなコンポーネント及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
量子暗号、量子イメージング、及び量子計算の分野において、複数の光子対を生成する必要がある。2つの電子及び2つの正孔で最初に満たされた単一の量子ドット(「2励起子状態」)でのカスケード放射過程から、上記の光子を生成することができる。この状態は、1つの電子及び1つの正孔が「(電荷中性の)励起子」状態のままである「2励起子光子」を放射することができる。この電子と正孔はその後、再結合してドットを空にしておく「励起子」光子を放射する。励起子状態の特性の制御を通じて、これら2つの光子をエンタングルすることができる。
【0003】
量子ドットが1個の電子及び1つの正孔のみを含んでいる場合、これらの粒子のスピンは以下のように配置される。すなわち、それらの崩壊から放射される光子を確定することは、微細構造分裂として知られているエネルギー分離を有する2つの直交する線形偏光のうちの1つを有することができる。あるいは、量子ビットと考えられ得る、これらの状態の重ね合わせでキャリヤを配置することができる。小さな微細構造分裂を持った量子ドットを、エンタングルされた光子ペアを生成するか、またはこの構造に量子ビットを記憶するために用いることができる。微細構造分裂がゼロである場合に、キャリヤが再結合し光子が放射されるまで、いったん用意されたこの重ね合わせは持続する。しかし、微細構造分裂が有限の場合、重ね合せは時間発展する。
【発明の概要】
【0004】
本発明の発明者らは、上記の概念が量子に基づく情報システムに関するコンポーネントの基準を形成することができる。
【0005】
微細構造分裂に動的な変化を提供することによって、重ね合わせの状態を制御することが可能になり、量子情報システムに関する上記の状態を適切に利用することが可能になる。ある特徴は、物理的な実装にかかわらず、量子計算のすべての提案に共通である。これらは十分に定義された状態に量子ビットを初期化する技術である。さらなる要件は、量子ビットはそれ上で実行される可能な操作数のために十分に長い間コヒーレントのままでなければならないということである。その後、量子ビットの最終状態は高い確実性で読出されなければならない。
【0006】
第1の態様では、本発明は、量子ビットと、記量子ビットに関するコントローラと、を具備するコンポーネントを提供し、前記コンポーネントは、量子ドットと、前記量子ビットを形成するために前記量子ドットにおいて中性の励起子状態を生成する励起部と、を具備し、コンポーネントは、前記状態の向きに関する光学的な測定を行う測定部さらに具備し、前記コントローラは、前記量子ドットに渡って変調された電場を適用するように構成された電気的なコンタクトに結合している電源を具備し、変調は、前記中性の励起子状態の崩壊時間よりも高速である。
【0007】
上記のコンポーネントは固体量子コンピューターにおいてコンポーネントになりえる。それは制御NOTゲート及び制御された回転ゲートとして用いることができる。またそれは、テレポテーション及び量子の中継器における応用に関する量子ドットエンタングル光子ペア源によって放射されたベル状態を制御するために用いられうる。
【0008】
本発明における制御は100ピコセカンド以下の時間フレームで作動しうる。一実施形態において、コンポーネントは、全て電気的であり、したがって小型化に適している。また、本発明はスケーラブルであり、分離したコンタクトによって、複数の量子ドットを扱うことができる。複数の状態間のコヒーレント相互作用は、(80Kまでの)温度には依存せず、高励起電力に影響されない。従って、本発明のコンポーネントはロバストである。
【0009】
好ましい動作モードでは、前記コントローラは前記状態に所定の位相変化を適用するように構成される。前記変調の振幅は、前記位相変化が前記励起子状態の崩壊時間よりも速いまたは短い時間スケールで発生するように選択されている。一実施形態において、明るい光学ビームは、単一の空の量子ドットを2つの励起子状態の所定の重ね合せに励起させるために用いられる。その後、励起子状態の2つのコンポーネント間のエネルギー差への動的な変化は、重ね合せを操作するためになされる。量子ビットは単一の量子ドット内にある。
【0010】
好ましくは、微細構造分裂は、重ね合せが生成される時の励起子状態の放射帯域幅未満である。
【0011】
微細構造分裂は励起子状態が生成される時の10μeV未満でもよい。この大きさまたはより低い微細構造分裂は、エンタングルメントが高速の検出器を用いて時間選択を通じて観測されることを可能にする。遅い検出器が用いられる場合は、好ましい実施形態では、ドットからドットまで変わる微細構造分裂は励起子線幅に相当する。
【0012】
一実施形態において、電圧変調器は量子ドットの微細構造分裂の大きさが変調され、かつ量子ドットの複数の固有状態が時間に関して一定であるような振幅でバイアスを加えるように構成される。微細構造分裂の高い値では、複数の固有状態のさらなる回転は禁じられる。さらなる実施形態では、電圧変調器は量子ドットの微細構造分裂の大きさが変調され、かつ複数の励起子固有状態が回転されるような振幅でバイアスを加えるように構成される。
【0013】
上記では、複数の状態の重ね合せである励起子状態が説明された。しかし、さらなる実施形態では、前記励起部は純粋な固有状態を生成するように構成され、前記コントローラは前記量子ドットの複数の固有状態を回転させることによって状態を変化させる。
【0014】
好ましくは、光励起(optical excitation)は複数の励起子状態と同じエネルギーにある。励起はまた電気的な励起でもよい。例えば、電気的な励起において、キャリヤは外部電流源への接触を行なうことを通じて供給される。
【0015】
システムの読出しを行なう測定部は、偏光に感度が良い測定を行なうように配置された偏光子を具備してもよい。別の配置では、前記測定部は、励起子状態と共鳴し、前記量子ドットに向けられるレーザー光線と、レーザーが量子ドットの影響を受けていたかどうかを判定する光検出器と、を具備している。
【0016】
特に有用なタイプのエンタングルされた光子源は、2励起子崩壊を使用して作用する量子ドットに基づく源である。半導体量子ドットの利点は、それらの製造技術が既存の商業生産技術と互換性をもつということである。したがって、コンポーネントは放射されたエンタングル光子の状態を制御するように構成されてもよい。
【0017】
別の実施形態では、量子ドットは、2つの電子と2つの正孔の構造に励起され、その後、それは2励起子光子の放射によって励起子状態に崩壊する。前記2励起子光子の偏光は、励起子状態が与えられる状態を判定するために測定される。動的な変化は、重ね合せを操作して、励起子状態の微細構造分裂になされる。第2の光子は、前記励起子状態の崩壊によって最終的に放射され、その状態の偏光状態は、放射された2励起子光子の状態及び励起子状態に格納される重ね合わせに適用される操作によって判定される。
【0018】
2励起子崩壊によりエンタングルされた光子を放射する量子ドットでは、エンタングル状態は、2励起子崩壊によって放射された光子と媒介励起子の崩壊から放射された光子との間の崩壊時間から判定されてもよい。あるいは、2励起子崩壊時間は、励起子崩壊時間と比較して、極めて短くなりえるので、タイマは2励起子崩壊に続く励起子崩壊によって放射される光子の放射時間を測定するだけで構成されてもよい。したがって、前記測定部は光子検出器とタイマとを具備してもよい。
【0019】
電圧変調が、状態が放射して結合するためにかかる時間より速く発生する。InAs/GaAs量子ドットについては、この放射寿命は、任意のキャビティ効果がない場合、1ナノ秒かもしれない。したがって、微細構造分裂(以後、sで示される)の大きさの変調は、理想的に500ピコセカンド未満の時間スケールにおいて起こる。より速い時間スケールで起こる操作は、それらによって多くの操作が寿命内で起こることが可能になるので、好ましい。
【0020】
以下において、単一パルスまたは時に複数のパルスを用いて励起子状態において格納された量子ビット上で実行されうる単純な操作が説明される。複数のパルスはより複雑な演算が記憶された量子ビットに行なわれることを可能にするために物理的な実現において用いることができる。
【0021】
光子が放射されうる光モードを削減するように設計された光結晶内にドットを配置することによって、この要件を緩めることができる。光子放射の上記のフラストレーションは、放射寿命における1−2桁の増加に結びつくと示されている。したがって、量子ドットは、放射寿命を増加させる光結晶内に好ましくは設置される。
【0022】
さらなる要件は、場での変化が、キャリヤが操作期間にドット内に保存されることである。
【0023】
ドットが、GaAsだけに囲まれる装置内に配置される場合には、約50KVcm−1の場は装置からの複数のキャリヤのトンネリングをもたらす。したがって、(AlGaAs合金のような)より高いバンドギャップ材料からなるドットの片側または両側でのトンネリング障壁を設置することは、有利であるかもしれない。参照することによって本明細書に組み込まれる未公開の特許出願番号GB 0919532.2は、ドットからトンネリングするキャリヤなしに、500KVcm−1までの電圧に耐える装置に関する好ましい設計を開示している。
【0024】
一般に、量子ドットは、複数のレイヤを具備する構造で提供され、電圧変調器は前記複数のレイヤの平面に垂直である垂直電場を適用するように構成される。さらなる実施形態では、水平電場は微細構造分裂を変化させるためにドットの面に適用される。一定の面内場とsを交換するいくつかの実証は明示されている(Kowalik, K., et al Appl. Phys. Lett. 86, 041907 (2005), Gerardot, B. D.et al, Appl.Phys. Lett. 90, 041101 (2007), Vogel, M. M., et al, Appl. Phys. Lett. 91, 051904 (2007))。微細構造分裂は複数の励起子状態の異なる面内閉じ込めから発生すると広く信じられているように、この面内場が他以上に1状態を乱すことが期待される。
【0025】
コントローラは、また前記量子ドットの微細構造分裂を操作するように構成された垂直磁場を適用するように構成された磁場発生器を具備してもよい。
【0026】
実施形態では、本発明は、量子状態のテレポテーションのために構成されてもよく、コンポーネントは光子を生成するように構成された独立した光子源をさらに具備し、励起部は前記量子状態で2励起子を励起するように構成されていて、コンポーネントは、ベル状態測定が2つの光子に行なわれるように、独立した源からの光子を2励起子崩壊からの放射される光子と混合する光子混合部をさらに具備し、前記光子混合部は、信号を、ベル状態を示す前記コントローラに出力する出力部をさらに具備し、前記コントローラは、光子混合部から受信した信号に基づいて、前記中性の励起子の状態を前記独立した光子の状態に変化させるように構成されている。
【0027】
実施形態において、本発明はCNOTゲートとして構成されてもよく、励起子光子の偏光状態は放射時間でエンタングルされ励起子光子の時間及び偏光の測定は2励起子光子の偏光を決定するように、前記励起部は前記量子ドットでの2励起子を励起するように構成され、前記コントローラはπの位相変化を施す変調パルスを中性励起子状態に適用するように構成される。
【0028】
第2の態様において、本発明は、量子ドットでの量子ビットを制御する方法を提供し、前記方法は、中性励起子状態を提供することによって量子ビットを形成し、前記量子ドットに渡り変調された電場を適用することによって前記量子ビットを制御し、ここで変調は前記中性励起子状態の崩壊時間よりも高速であり、前記状態の方向に関する光学的な測定を行うことを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明はここで、以下の好ましい限定されない実施形態を参照して説明される。
【図1】本発明の実施形態に従うコンポーネントの概略図である。
【図2】量子ドットでのエネルギー準位の概略図である。
【図3】ある実験室軸に関して測定された適切な検出と励起の角度を示す概略図である。
【図4】(a)は、初期の分裂がゼロである場合に時間と共に変化した量子ドットの微細構造分裂のプロットであり、(b)と(c)は重ね合わせ状態が、図3の対角及び反対角の軸上にそれぞれ射影された分裂と共にどのように変化するかを示す。
【図5】(a)は、初期の分裂がゼロでない場合に時間と共に変化した量子ドットの微細構造分裂のプロットであり、(b)と(c)は重ね合わせ状態が、図3の対角及び反対角の軸上にそれぞれ射影された分裂と共にどのように変化するかを示す。
【図6】2.5μeVの微細構造分裂を持った1ドットに関して時間の関数としてドットによって放射される、(XHX2H+XVX2V)エンタングル状態を有するエンタングル状態のフィデリティf+を示すプロットである。
【図7】(a)は、印加された垂直電場に対して微細構造分裂の実験結果を示し、(b)は、印加された垂直電場に関する複数の状態の回転角を示す。
【図8】(a)は、初期の分裂がゼロでない場合に時間と共に変化する量子ドットの微細構造分裂のプロットであり、(b)及び(c)は、純粋な固有状態として形成された状態が、それぞれ図3の水平及び垂直な軸の上に射影された分裂と共にどのように変化するかを示す。
【図9】(a)は、初期の分裂がゼロでない場合に時間と共に変化する量子ドットの微細構造分裂のプロットであり、(b)及び(c)は、純粋な固有状態として形成された状態が、それぞれ図3の対角及び反対角の軸の上に射影された分裂と共にどのように変化するかを示す。
【図10】(a)は、2励起子状態に励起されている、時間と共に変化する量子ドットの微細構造分裂のプロットであり、(b)及び(c)は、エンタングル状態のフィデリティが時間と共にどのように変化するかを示す。
【図11】Bloch球によって表わされる一般的な量子ビットの概略図である。
【図12】複数の基底において微細構造分裂の制御を可能にする本発明の好ましい実施形態に従うコンポーネントの概略図である。
【図13】テレポテーション演算のために構成された本発明のコンポーネントの概略図である。
【図14】量子制御NOT(CNOT)ゲートとして構成された本発明の実施形態に従うコンポーネントの概略図である。
【図15】明るい光学ビームが量子ドットの状態によって乱される場合での本発明の実施形態に従うコンポーネントを示す。
【図16】ドットが、2励起子状態に励起され、1対の偏光高感度検出器によって検出される2つの光子の放射を介して崩壊する場合に、本発明の実施形態に従うコンポーネントを示す。
【図17】(a)は、本発明の実施形態に従うコンポーネントで使用されるレイヤ構造であり、(b)は対応するバンド図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は本発明の実施形態に従うコンポーネントを示す。
【0031】
コンポーネントは基板上に形成され、量子ドット3を具備する。「より上」及び「より下」の用語は、レイヤの成長の順序に関して定義され、量子ドットより下にあるレイヤは量子ドットの基板側面に提供され、量子ドットより上のレイヤは基板に対して量子ドットの反対側にある。前記量子ドットは内在領域17に位置する。前記内在領域17は前記n及びp型レイヤ19及び21の間に位置するように、p型ドープレイヤ19は前記内在領域17より下に位置し、n型ドープレイヤ21は前記内在領域より上に位置する。もちろん、nとp型レイヤの順序は逆にされてもよい。
【0032】
電気コンタクト13及び15は、垂直場が量子ドット3を横切って印加されうるように、n及びp型レイヤ21及び19に接続される。電圧変調器9は、変調された電圧が量子ドット3を横切るように印加されてもよいように、コンタクト13及び15に接続される。
【0033】
この実施形態では、量子ドット3は、前記内在領域17によって垂直に伸びるエッチングされた孔11の規則的なアレイを具備する光結晶において形成される。光結晶は、ドットの放射再結合速度を減少させるように振る舞う。
【0034】
図1のコンポーネントを作り上げるために、量子ドット3はGaAs 17の100−200nm厚のレイヤの真中に成長される。x=0.9−1.0の構成を有してもよい100−1000nmのAlxGa1−xAsから成る犠牲レイヤとして働くAlGaAsのレイヤは、GaAsの基礎にある。後の光結晶はGaAsレイヤにおいて、結晶パターンを規定する電子線リソグラフィ及びGaAsにパターンを転送するエッチングのような標準技術を使用して規定される。このエッチングは、GaAsレイヤと少なくとも同じくらい深くなり、AlGaAsレイヤに達する。その後、AlGaAsレイヤは、例えばGaAsをエッチングしない希塩酸にさらすことによって、結晶の下方に選択的にエッチングされてもよい。結晶から離れて、AlGaAsレイヤはエッチングされず、結晶をサポートする。したがって、結晶はつるされる。
【0035】
コンポーネントは、線形の偏光子5及び波長板7を通って、前記量子ドットに向かって導かれ、量子ドット3を励起するために使用される明るいレーザー1をさらに具備する。一実施形態において、量子ドットは、中性の複数の励起子状態の重ね合わせに励起される。前記重ね合わせは、線形偏光器5及び波長板7で制御されうる、レーザーの線形偏光によって決定される。これがどのように実現されるかは、図4、5、8及び9を参照して後に説明される。
【0036】
これは、複数の励起子状態のエネルギーに等しいエネルギーを有する明るいレーザーを使用して実現される。ここで、レーザーからの1つの光子は、直接、励起子状態での1つの電子−陽電子ペアを生成することができる。レーザーの偏光は初期状態の偏光を設定する。
【0037】
あるいは、レーザーは、励起子状態のエネルギーと整数のフォノンエネルギー(フォノンは半導体格子において振動である)との和に等しいエネルギーであってもよい。GaAsについては、(縦の光学的な)フォノンエネルギーは、4Kで36meVでありInAsではそれが28meVであり、またどちらかがここで用いられうる。量子ドットは、(励起子とフォノンとの和)のエネルギーに調整されるレーザーを用いることによって、即座に励起されうる。したがって、レーザーからの光子が吸収され、半導体でのフォノンが破壊された場合、ドットに励起子が生成され、全エネルギーが保存される。また、ドットの励起のために用いられたレーザーの偏光の制御を通じて、生成された初期状態は制御することができる。
【0038】
一旦、電荷が量子ドットに格納されると、電圧変調器9は、図2,4,5,8、及び9を参照して説明されるように、量子ドットの微細構造を操作するために使用される。
【0039】
励起子が崩壊する時、光子が放射される。励起子の状態は、放射される光子の偏光測定から判定されてもよい。この実施形態では、コンポーネントは偏光の感知可能な検出システムをさらに具備し、これは波長板23、偏光子25及び検出器27を具備する。前記波長板23、偏光子及び検出器27は、放射された光子が波長板23を通り過ぎてその後偏光子25に入りその後検出器27に入るように、配置される。
【0040】
図2は、量子ドットの適切なエネルギー準位を示す。ドットが2個の電子及び2つの正孔を含んでいる場合、それは2励起子、X2状態にある。1つの2励起子光子29の放射の後、それは、スピンが2つの(一般性を失うことなく異なるエネルギーで直交に偏光されている)固有状態に配置される中性の励起子(X)に1個の電子及び1つの正孔を含む。この励起子状態が再結合する場合に、光子31は、放射時刻でのX状態によって与えられる偏光で放射される。
【0041】
GaAs上で成長した自己構築されたInAs量子ドットのしばしば研究されたシステムでは、中性の励起子状態XH及びXVは線形に偏光され、半導体の結晶軸に平行及び垂直に典型的には偏光される。また、ドットのサイズ、形状及び構成における異方性、及半導体の物理的性質のために、これらの2つの固有状態は異なるエネルギーを持つ。それらの間のエネルギー差は微細構造分裂と呼ばれ、sと示される。
【0042】
励起子状態はXA及びXBの重ね合せでありえ、それは次のように表わすことができる。
【数1】
【0043】
状態の各コンポーネントの前の係数は特性sin2(θ)+cos2(θ)=1を有する。角度θの制御は、(図3での水平及び垂直の実験室軸に関して方向付けられた)ドット33を励起させるために使用される明るいレーザー光線の偏光を回転させることによって達成されうる。一般に、ドットの軸はいかなる角度Ω35で整列されてもよい。この重ね合せで励起されるドットにおいて、励起子状態の2つのコンポーネントは異なる、位相差を獲得する(sによって分離された)エネルギーである。ここで、定数Cは最終状態の正規化を保証する。
【数2】
【0044】
より一般的には、s(τ)が、微細構造分裂が時間の関数としてどのように変化するかを記述し、式(3)は得られる。
【数3】
【0045】
したがって、s(τ)を制御することによって、時間tでの重ね合せの最終状態を制御することができる。より正確には、後の時間tでの最終状態は、τに対するs(τ)のプロットでの面積によって決定される。この位相を測定することは可能である。
【0046】
垂直方向に沿った最終状態の測定は、時間tにXVである状態であるシステムの確率(PV)を決定する。これは、その複素共役によって乗算された式(3)での|XV〉状態の前にある係数によって与えられる。
【数4】
【0047】
これは、状態の位相に関する情報を明らかにせず、時間に依存しない。変換するのはXVとXHとの間での位相すぎない。
【0048】
角度φ37(図3に示された)に沿って、時間tで、最終状態の測定がなされる場合を検討する。この式(3)を行うことは、代入をすることによって書き直さなければならない、
【数5】
【0049】
その結果、以下を得る。
【数6】
【0050】
これから、我々は角度φに沿ってある状態を測定する確率(Pφ(t))を引き出す。
【数7】
【0051】
そして定義によって、以下が成り立つ。
【数8】
【0052】
このように、励起子状態の両方のコンポーネントのコヒーレント励起を通じて、例えば複数の状態偏光に対するある角度である偏光の明るいレーザーで励起されることによって、重ね合わせ状態は用意されてもよい。さらに、励起子状態のこれらのコンポーネントの両方ともを同時に測定する測定が行なわれる場合、例えば、固有状態偏光に対する角度で測定することによって、重ね合せ状態の最終位相を測定することができる。
【0053】
上記のものはここでより詳細に説明される。図4の(a)、(b)及び(c)において示されるデータを得るために、重ね合せ状態は、励起角度θを用いて、レーザーで量子ドットを励起することにより形成される。この発明はここで、いくつかの好ましい実施形態を参照して示される。この発明を制限せずに、我々はここで、励起がドットの(図3のH及びVに沿って整列する)複数の固有状態に対してθ=45度の角度にある場合に注目する。これは、XHとXVの等しい成分を持った重ね合せを用意する。測定は、PD(t)及びPA(t)によって与えられる確率をもたらす、時間tでφ=対角D及び反対角(antidiagonal)Aの角度での最終状態でできている。この実施形態では、最終状態は、中性の励起子の崩壊によって放射される光子の偏光を測定することによって読み出される。図1に示されるように、AまたはDに沿って整列される検出器の前にある偏光子は、励起子状態から放射される光子がその方向にそって整列されるかどうかを測定するために使用される。
【0054】
図4aでは、重ね合せは、微細構造分裂s=0であるドット内に、時間ゼロ41で用意される。状態の寿命より小さいが、好ましくは時間ゼロに近いその後の時間では、電圧変調器はゼロでない値のs値を変化させるために使用される。
【0055】
式(3)から、sの非ゼロ値が時間にわたって発展する状態をもたらすことを理解することができる。図4上のグレー領域43は、電圧が変調される時間を強調する。この間、複数の状態は、1からゼロに下降する図4の(b)に示されるPD、及びゼロから1に上昇する図4の(c)に示されるPAによって発展する。電圧パルス変調の長さ及び(または)高さを変化させることによって、任意の位相変化を実現してもよい。一旦電圧パルスが分裂をゼロに戻せば、複数の状態は時間発展を停止する。
【0056】
50psまたはそれ以上の長さのパルスを供給できる商用のパルス発生器を使用して、上記の電圧変調を達成することができる。図4の(a)での曲線の面積が保存されるとすれば、2倍の時間長及び半分の高さで電圧変調を使用して、同一の変化を達成することができる。
【0057】
図5の(a)、(b)及び(c)は、図4の(a)、(b)及び(c)のそれとは異なる状況を示す。図5の(a)、(b)及び(c)では、量子ドットは元々、微細構造分裂sの小さな値を持っている。(図5の(a)49では2.5μeVであると仮定されて)sの固定値については、重ね合せは、一定の割合で、予想通りに、pD=(1+cos(2πst/h))/2及びpA=(1−cos(2πst/h))/2をもたらす位相を取得する。したがって、1.6nsの固定された時間でのシステムの測定は、pD=1、pA=0を与える。
【0058】
図4の(b)において用いられたそれと同一の電圧変調がs=2.5μeVの固定値(49)に加えて微細構造分裂を変化させるために用いられた場合、図5の(b)及び(c)にそれぞれ示されるpD(51)及びpA(53)での変化がわかる。後の1.6nsの固定時間55での状態の測定は、pD=0、pA=1を与えるように反転していることを再び示す。
【0059】
このシステムの位相における時間による変化の実験測定は、s=2.5μeVの一定値に関して図6に示される。次式の最大にエンタングルされた状態と比較して、図6は時間依存のエンタングル状態のフィデリティのプロットを示す。
【数9】
【0060】
結果は2励起子光子と励起子光子との間での遅延(τ)の関数としてプロットされる。この実験データはStevenson et al. Physical Review Letters 101, 170501 (2008)からである。
【0061】
図7の(a)は、単一の自己構築されたInAs/GaAs量子ドットに関する垂直電場の関数として微細構造分裂における変化についての実験データを示す。実験的に、s=0から離れると垂直電場の適用がs 71における線形の変化となることがわかった。これは、940nmで放射しているGaAs上で成長した量子ドットの特定タイプに関して、0.285μeV kV−1cmの勾配を有する。形状、サイズ及び閉じ込めポテンシャルの変更によって、この値を変更することができる。
【0062】
sの大きな値では、2つの励起子ダイポールは、結晶軸に沿って(Ω=0(73))向けられる傾向がある。微細構造分裂の大きさが最小に落ち込むと共に、2つの状態75のエネルギーでの反交差(anticrossing)によって引き起こされる有限の分裂が図7の(a)に示されることが観測される。sの最小値では、これらの状態は、Ω=45度(77)で向けられる2つの直交状態を生成して最大に混成されるようになる。図7の(b)におけるプロットは、角度Ωによって定義される混成の程度が反交差に近づくにつれてどのように変化するかを示している。この挙動は、垂直電場におけるInAs/GaAs量子ドットの共通の特徴であるが、sの最小値は0から40μeVまでのドット間で変化する。
【0063】
図7における点線79は、sのゼロ最小値を持った量子ドットの挙動を示す。
【0064】
このように2状態の混成を制御する能力は、初期状態と最終状態との間で行なうことができる、より完全な制御操作を可能にする。図4及び5に示されるデータは、2つの固有状態の重ね合せである状態に関する。図8及び9では、励起子状態はただ1つの固有状態で励起され、それは複数の状態の重ね合せではなく純粋状態である。したがって、量子ドットにおける固有の分裂があるころでさえ、状態は発展しない。
【0065】
上記のものを用いて、励起子状態を励起してsのある有限値で固有状態にし、この状態上で操作をまだ行うことは可能である。
【0066】
図8は、はじめに形成される「純粋状態」が時間と共に発展することができる重ね合わせに変化させることが可能にするために、ある時間(グレー領域)に、微細構造分裂の大きさ及び複数の固有状態の方向をどのように変化させるかを示す。
【0067】
図8に示されるデータを得るために、1つのドットをsのある有限値で励起し、時間ゼロ(81)でθ=0で励起することによって純粋状態XHにする。その後、印加される電圧はs 83を最小化してもよく、そこでは、小さな反交差が残っている。図7の(b)において示されるように、これらの条件の下では、ドットの複数の固有状態は45度で回転される。
【0068】
sのこの最小値では、最初に用意される(Hに沿って整列した)励起子は、45度を介して回転されていて、かつDとAに沿って整列する、2つの適切な固有状態の重ね合せにある。所定時間だけシステムをこの状態にしておくことは、sが図8の(b)及び(c)の斜線部分において示されるような非ゼロである場合に、重ね合せがこれらのコンポーネント間でのある位相変化を得ることを可能にする。その後、電圧を初期値に戻すことができ、最終状態は測定される。最小のsでの時間及び最小のsの値を制御することによって、最終状態は(固定位相を持った)線形基底での任意の重ね合わせになりえ、したがって、回転が行われている。
【0069】
図8では、電圧変調は、はじめに水平に偏光された状態が垂直に偏光された状態に切り替わるように適用される。バイアスが、sが大きな値を有するようなその元々の値に戻されるときは、状態は安定である。図8において0.9nsを越える時間での新しい状態は、状態が垂直であり複数の固有状態がV/Hであるので、安定している。従って、H−固有状態に状態の成分はなくまた、HとVとの間の相対的な位相を測定することは可能ではない。複数の固有状態が例えば60度の回転であり、かつ状態が「V」に沿って整列している場合には、「V」は時間と共に発展する複数の固有状態、60度と150度との重ね合わせである。
【0070】
図9の(a)、(b)及び(c)は、時間ゼロ91で純粋状態XAに取り入れられる、励起子状態に関するデータ(1ドットがsの最小値で用意されている)を示す。プロットは、はじめに形成される「純粋状態」が時間と共に発展することができる重ね合わせに変化させることが可能にするために、ある時間(グレー領域)に、微細構造分裂の大きさ及び複数の固有状態の方向をどのように変化させるかを示す。
【0071】
印加される電圧はs(93)を増加させることができ、ドットの複数の固有状態は、HとVに沿って整列されるように、Ω=90度に回転される。sのこのより大きな値では、(Dに沿って整列された)最初に用意された励起子は、(HとVに沿って整列された)2つの適切な固有状態の重ね合せにある。所定時間だけシステムをこの状態にしておくことは、重ね合せがこれらのコンポーネント間でのある位相変化を得ることを可能にする。その後、電圧を初期値に戻すことができ、最終状態は測定される。sの各値でドットが保持される時間及びsの値を制御することによって、最終状態は線形基底での任意の重ね合わせになりえ、したがって、回転が行われている。
【0072】
図10の(a)、(b)及び(c)は、本発明の実施形態にしたがうコンポーネントでの量子ドットからのデータを示し、それは励起子−2励起子カスケードを介して放射される1つのエンタングルペアの2光子状態を制御するために使用されうる。
【0073】
複数のエンタングル光子ペアは、量子暗号及び光量子計算のための必要なリソースである。2励起子から励起子、その後、空へのカスケードを介して放射される複数の量子ドットは、遷移の線幅と比較して微細構造分裂が小さい場合、エンタングル状態XHX2H+XVX2Vにおける複数の光子を自然に放射する。量子鍵配布及び量子計算における応用について、光子が放射される状態を制御することができることは有利である。Xの複数の光子のみを回転させる源の前で偏光回転子を用いて、これを実現することができる。しかし、上記の機械的な回転は、ミリ秒から秒の典型的な時間スケールであり、遅い。複数の量子状態の高速回転は、量子テレポテーション及び量子中継器におけるフィードフォワードのための必要である。これは図13を参照して説明される。
【0074】
本発明の実施形態に従うコンポーネントでは、光子が放射される状態は制御される。この実施形態では、ドットは、2励起子状態に励起され、時間ゼロ(101)で2励起子光子(X2)を放射する。なおここでsは最小である。図10の(b)がベル状態XHX2H+XVX2Vを有する放射された2光子状態のフィデリティf+をプロットし、図10の(c)がベル状態XHX2V+XVX2Hを有する放射された2光子状態のフィデリティf−をプロットする。
【0075】
微細構造分裂に変更がなされない場合、ドットは、ベル状態XHX2H+XVX2V(つまりf+=1及びf−=0)で自然に放射する。sの値の適切な操作がなされ、Xの重ね合わせの回転に導くとき103、システムはXHX2V+XVX2H状態に発展する。一般に、状態の任意の操作は、2励起子及び励起子の光子放射の(sに関して行われた操作によって決定されるベル状態を生成する)間になされる。
【0076】
図11は、任意の量子ビット状態を任意の他の量子ビット状態に変換するために本発明をどのように使用すればよいかを示す。量子ビットは、2状態の量子重ね合せであり、通常直交状態である|0〉及び|1〉によって示される。
【0077】
現在のスキームでは、計算上の基底となる状態|0〉及び|1〉は、例えばXH及びXVのような直交して偏光されている励起子状態である。
【0078】
任意の量子ビットは、図11に示されるように、Bloch球上に点111によって表されてもよい。基底となる状態|0〉及び|1〉は球の北113及び南115の極によって表され、重ね合わせ|0〉+eiφ|1〉は赤道117上にある。したがって、直線偏光計算の複数の基底を使用すると、対角及び円偏光された状態もまた赤道上にある。
【0079】
一般的な量子ビットはΨ=a|0>+b|1>によって表わされてもよい。ここで、a=cos(θ/2)、b=eiφsin(θ/2)、及びθ及びφは図11に示されるような緯度と経度を示す。したがって、任意の他のものからの任意の量子ビット状態を用意することは、少なくとも2つの軸に関する量子ビットを回転させる手段を必要とする。異なる軸に関する回転は、異なる偏光基盤(polarisation bases)での分裂の変調によって実現されうる。
【0080】
例えば、計算上の基底が直線偏光基底である場合には、直線{H,V}基底での有限の分裂によって、位相差が|0〉と|1〉の間で発展し、垂直軸119に関する回転、及び経度の角度φでの変化になる。代わりに、分裂が対角基底にあれば、複数の対角基底状態121を含む軸に関する回転があり、その状態はこの例では図11に示された点(|0〉±|1〉)√2によって表される。これは例えば、状態Hをこの例では|1〉及び(|0>±i|1>)√2で表わされたV、LまたはRに変換するために、緯度の角度θを変化させることができる。同様に円{L,R}基底での分裂は、この例では点(|0>±i|1>)√2を含む軸123に関する回転になる。
【0081】
一連の制御バルスを分裂することを使用すれば、任意の状態は用意することができる。例えば、状態|H〉から状態|D〉=(|H〉+|V〉)/√2を用意するために、最初の電圧パルスは、対角基底での分裂を生成するために、状態が|R〉=(|H〉+i|V>)/√2に発展するために十分な時間で印加されてもよい。その後、第2の電圧パルスは、直線基底(rectilinear basis)での分裂を生成するために、状態が|D〉=(|H〉+|V〉)/√2にさらに発展するために十分な時間で印加されてもよい。
【0082】
あるいは、単一パルスは用いられてもよいが、しかし分裂基底は、基底となる複数の状態が、ベクトルを初期から最終の量子ビット状態に交差させる軸を形成するように選ばれる。
【0083】
分裂基底を選択する場合の別の利点は、量子ビットの用意後に、用意された量子ビットが基底となる状態であるように分裂基底を選択するために、制御電圧が印加されてもよい点である。この場合、光子が放射される前に、量子ビットのさらなる発展は起こらない。
【0084】
直線基底での分裂の制御は、HまたはV偏光に対応する(通常実質的に[110]及び[1−10]と等しい)方向に沿っての試料の平面、または試料の垂直方向での電場の変調によって達成されてもよい。対角基底での分裂の制御は、有限な最小の分裂を有する量子ドットを使用して達成されてもよい。ここで、基底となる複数の状態は大部分は対角である。例えば垂直方向での電場の変調を使用して分裂を増加させることによって、直線基底での分裂が支配的になる。あるいは、対角基底での分裂は、偏光状態DまたはAに対応する軸に沿って、試料の平面での電場の変調によって達成されてもよい。最終的に、円基底(circular basis)での分裂の制御は、例えば外部コイルを介して電流を流して量子ドットに垂直な磁場を印加することによって適用されてもよい。
【0085】
図12は本発明のさらなる実施形態に従うコンポーネントである。図12は、ちょうど表面以下に提供される量子ドット126を持ったコンポーネントの表面を示す。例えば、量子ドットはGaAsレイヤにおけるInAs量子ドットであってもよい。
【0086】
2つのペアの表面コンタクトが形成される。コンタクトは、例えばショットキーコンタクトでもよい。第1のペアのコンタクト125及び127は、前記量子ドットを有する直線を形成するために配置され、前記量子ドット126のどちらかに形成される。コンタクトの第2の部分129及び131も、前記量子ドット126を持った直線において形成され、前記量子ドットのどちらか側に形成される。第1のペアのコンタクトの直線は、第2のペアのコンタクトによって形成された直線に垂直である。両方のペアのコンタクトは前記量子ドット126に側面の領域を提供する。
【0087】
図12に示されるコンポーネントでは、装置の表面での電気的なコンタクトの配列によって、電圧変調を用いる1つよりも多くの基底での分裂の制御を可能にする。上記の制御は、任意の量子ビット回転が実現されることを可能にする。
【0088】
上記のものは一例であり、コンタクトのさらなるセットは、図1を参照して説明されたタイプの垂直場を適用するために、提供されてもよい。
【0089】
円基底での分裂を実現するために、磁場は試料表面に垂直な量子ドットに印加されてもよい。磁場は、ゼーマン分裂として知られている、複数の励起子状態のスピン依存エネルギー分裂を引き起こし、逆円偏光された複数の励起子状態の間で微細構造分裂を増加させる。同じような複数の量子ドットに関して以前に測定された典型的なゼーマン分裂は、オーダーが|s|〜200μeVT−1である。したがって、〜2μeVの顕著な分裂を実現することは、0.01Tの場を必要とする。これは、外部コイルを介する通過電流によって通常実現されうる小さな磁場である。
【0090】
直線及び対角基底での分裂を達成するために、図12は、好ましい実施形態を示している。ここで2つのペアのコンタクトは、電場が試料の面での任意の方向に印加されてもよいように、装置の表面上での量子ドットの周りに配置される。例えば、下部コンタクトB127に対して、上部コンタクトT125に正電圧を印加することは、上部コンタクトT125と下部コンタクトB127との間での電場を引き起こす。電子及び正孔の波動関数は、電場の反対方向に沿って量子ドットにおいて空間的に分離する。これは、直交する面内方向に比較して、場の方向において垂直電子正孔オーバーラップでのより強い変更をもたらす。それは、(上部コンタクトT125及び下部コンタクトB127がHまたはV偏光方向にそって整列されていると仮定して)直線偏光基底での微細構造分裂|s|を変化させる。上部コンタクトT125及び右コンタクトR129に電圧を等しく印加し、下部コンタクトB127及び左コンタクトL131に等しく第2電圧を印加することによって、電場は、DまたはAの偏光方向に対応して、以前の例に比較して方向45度に生成される可能性がある。上記の場は、対角基底において微細構造分裂を生成するだろう。従って、任意の強さかつ面内方向の場は、4つのコンタクトのそれぞれに印加される相対的な電圧を制御し、任意の基底での微細構造分裂をもたらすことによって印加されてもよい。
【0091】
少なくとも1つのコンタクトに電圧パルスを印加し、さらに他のコンタクトに電圧パルスまたは固定電圧を印加することによって、図12に表されるコンタクト配置を使用して任意の線形基底での微細構造分裂を生成することが可能になる。完全に任意の基底で分裂することは、装置表面に垂直な磁場を誘導するために、外部のワイヤコイルを介して電流を流すことによって実現されてもよい。
【0092】
図13は、入力光子(量子ビット)133から出力光子(量子ビット)135の状態のテレポテーションのために構成された本発明のさらなる実施形態に従うコンポーネントの概略図である。
【0093】
ゲートの結果が成功であると決定された後、入力状態を確率的な量子論理ゲートに提供するために、テレポテーションを使用することができる線形光量子計算を含む様々な量子情報応用に、テレポテーションを使用することができる。
【0094】
テレポテーションシステムの演算は以下のように説明される。
【0095】
システムは、本発明の実施形態に従って図1を参照して説明されるようにコンポーネントによって、提供される量子ドット光子対源を必要とする。コンポーネント内の量子ドットは、光学のレーザパルス137を用いて、中性の2励起子状態に励起される。2励起子(XX)状態は、コンポーネントからの第1の2励起子(XX)光子139を放射する励起子(X)状態に崩壊する。放射された2励起子(XX)光子139は、量子ドットのままである励起子(X)141状態とエンタングルする。
【0096】
共同の測定は、前記2励起子(XX)139光子及び(その偏光は入力量子ビット状態を表わす)追加入力光子133の状態に行なわれる。この共同の測定は、ベル状態測定143として知られ、4つのよく知られているエンタングルされたベル状態を区別することができる。測定は、ベル測定に依存する信号を電圧変調器145に出力する混合ユニット143で行なわれる。
【0097】
ベル状態測定の後に、コンポーネントのままである励起子X141は、4つのベル状態のどれが検出されたかに依存して、入力光子133との固定した関係を有している。励起子(X)量子ビットの回転は、1以上の方向でドットに渡って電場を変化させる電圧変調器145からの1以上の電圧パルスによって実現されうる。これは、励起子(X)量子ビット141の直交して偏光されたコンポーネント間の位相差を蓄積する(accrue)ために、微細構造分裂を変化させる効果を有する。4つのベル状態測定の各々は、励起子(X)量子ビットが入力光子量子ビットの状態を最大に表わすことを確実にするように、異なる電圧パルスまたはパルスシーケンスをトリガーする。
【0098】
例えば、入力光子がHとVの重ね合せで、エンタングルされた状態がXHX2H+XVX2Vである場合である。入力光子及び2励起子光子は、(実際にそれらがHまたはVであるかどうかを決定することなしに)それらが同一か異なっているかを確かめるために、混合ユニットによって行なわれた「ベル状態測定」において比較される。入力光子及び2励起子光子が同じである場合、混合ユニットは、電圧変調器に、記憶されたX状態に何も行う必要がなくしたがって2励起子と同様な偏光の光子を放射させることを示す。従って、入力及び励起子の光子は同じである。しかし、入力及び2励起子が反対であることをベル状態測定が示し、混合ユニットは、HをVに及びVをHに変化させるために、パルスが記憶された励起子状態に適用されるべきであることを、電圧変調器に示す場合、これによって励起子光子が入力光子と同様に放射される。
【0099】
励起子(X)量子ビット回転に続いて、励起子(X)141は再結合して出力励起子光子135を放射する。この出力光子量子ビット135は入力光子量子ビット133として実質的に同じである量子状態を持っている。したがって、入力光子133の状態は、出力光子135の状態上にテレポテーションされる。
【0100】
2励起子(XX)寿命が短いこと、励起子(X)寿命が長いことは有利であることに注意すること。これは、図1、15、及び16を参照して説明されるように、キャビティ量子電気力学、及びXX光子と共鳴する強い光学モードによって実現されうる。この実施形態での変更は、電流を用いる励起を含んでもよい。
【0101】
図14は、制御NOTの論理演算が実現されうる本発明の実施形態に従うコンポーネントを示す。CNOTゲートでは、さらなる量子ビット(制御量子ビット)が1である場合かつその場合に限り、入出力量子ビットは反転する。
【0102】
量子ドットは、時間ゼロ151での2励起子(XX)状態に励起され、量子ドットで残りの電子正孔ペアが射影される励起子状態とその偏光とが相関している2励起子XX光子の放射を介して崩壊する。したがって、(直線の{H、V}偏光基底で記述される)上記のXX光子放射イベントに続く初期状態Ψαは以下である。
【0103】
Ψα=(|HXXXH>+|VXXXV>)/√2
ここで、HXX及びVXXは水平及び垂直に偏光された2励起子XX光子を示し、XH及びXVは崩壊して水平及び垂直に偏光された光子を放出する励起子X状態を示す。
【0104】
垂直線153によって図14の(a)で示される時間Tmの後、電圧変調は、図14の(b)に概略的に示されるように、短い時間155で微細構造分裂|s|を偏光するために、装置に印加される。ここで我々は、他の構成は可能であるが、微細構造分裂がH及びV偏光された固有状態をもたらす典型的な場合を仮定する。電圧変調パルスの間に、位相差ΦはXHとXVの間で得られる。好ましくは、位相差Φはほぼπであるべきである。それは電圧変調の適切な振幅及び継続期間を選ぶことにより実現されうる。電圧変調に続いて、取得した位相は、システムを次式によって与えられる状態Ψ159に射影する。
【0105】
Ψβ=(|HXXXH>+eiΦ|VXXXV>)/√2
Ψβ=(|HXXXH>−|VXXXV>)/√2
上記の式は、エンタングルメントの本質が、励起子光子がいつ放出されるかに依存して、異なっていることを明らかにする。例えば、励起子時間測定が領域157内にある場合、対称なベル状態Ψ+=Ψ157は形成される。しかし、測定時刻が領域159内にある場合、我々は反対称なベル状態Ψ−=Ψ159を持っている。この状態はΨ+に直交し、それは、Ψ+への励起子光子システムのフィデリティf+が、電圧変調161の適用に続いて、1の最大値から0の最小値に落ち込むことを意味している。これは、図14cにおいて概略的に示される。
【0106】
電圧変調に先立って放射される光子の確率が、変調後に放射される光子の確率に等しいことが好ましい。単一の放射崩壊時間Tを有する状態にとって、これは、−Tln(1/2)と等しい時間Tm153での変調を適用することが好ましいことを意味している。キャビティ内でない典型的なInAs/GaAs QDにとっては、T=1nsであり、つまり変調は0.69nsで適用されるべきである。
【0107】
励起子光子の発光時間が不確定であるので、システム状態Ψは変調前後の状態、Ψα及びΨβの以下に示す重ね合わせによって記述される。
【0108】
Ψ=Ψα|α〉+Ψβ|β〉/√2
Ψ=(|HXXHXα〉+|VXXVXα〉+|HXXHXβ〉−|VXXVXβ〉)/2
ここで|α〉及び|β〉は、水平及び垂直に偏光された励起子光子HX及びVXの放射に関する時間領域を示す。好ましいTm153の選択は、重ね合せが等しく平衡を保つことを保証する。上記の式は|H>=(|D>+|A>)/√2及び|V>=(|D>−|A>)/√2の代入を使用して、対角偏光基底{D、A}で以下のように書き換えられ得る。
【0109】
Ψ=(|DXXDXα>+|AXXAXα>+|DXXAXβ>+|AXXDXβ>)/2
上記の式の検査は、放射される2励起子XX光子に作用する量子論理演算を行うために、励起子光子の時間及び偏光の測定を使用することができることを明らかにする。これは、2励起子XX光子の偏光が、X光子の測定時間に依存する励起子X光子の偏光に同じまたは反対であるという事実に起因する。
【0110】
論理0=α、1=βを有する制御量子ビットを表現するために、励起子X光子の放射(検出)時間測定を考慮し、論理0=H、1=Vを有する入力量子ビットを表現するために、励起子光子の偏光測定を考慮すること。同様に、2励起子光子は、また論理的0=H、1=Vをも有する出力量子ビットを表現する。したがって、システムは、制御ビットの状態上での条件付きの入力量子ビットの状態を反転させ、出力量子ビットに結果を出力する。そして、制御量子ビット=|0〉に関して、出力量子ビットは入力量子ビットに等しい。しかしながら、制御量子ビット=|1〉に関しては、入力|0〉に関して出力は|1〉であり、入力|1〉に関して出力は|0〉である。
【0111】
この量子論理演算の挙動はCNOTゲートに同様である。
【0112】
実際的な条件では、多くの2励起子崩壊が測定され、後にデータは、時間アルファで放射した光子が1つの状態にあり、時間ベータで放射した光子が別の状態にあることを判定するために、ソートされる。
【0113】
またCNOTゲートのように、入力、制御及び出力の量子ビットは、論理的な|0〉及び|1〉の重ね合せである状態になりえる。偏光符号化された量子ビットに関しては、これはHまたはV以外の偏光を意味し、時間符号化された量子ビットに関しては、干渉計は2つの放射時間の重ね合わせを測定するために使用されてもよい。
【0114】
ここで説明された論理ゲートのタイプは、入力量子ビットは、直接的に選ばれず、励起子光子の偏光と時間の測定が望ましい結果を生む時に選択されるという意味で、確率的である。また従来のCNOTゲートと異なり、制御量子ビットは、論理演算の間に破壊され、従って続いて再使用または測定することができない。言いかえれば、それは、放射の時間が量子力学的に不確定であり、測定がその時に波動関数を押し縮め、それを破壊する。この点では、それはもはや2つの時間の重ね合わせではなく、検出が発生し量子ビットが破壊されたことは明確である。これは、論理演算が成功するために測定される必要のない出力量子ビットには真実ではない。
【0115】
図15は本発明の実施形態に従うコンポーネントを示す。この実施形態では、量子ビットの状態は、コンポーネントを介して伝送する読み出しビームの伝送での変調をモニタリングすることによって読み出される。
【0116】
装置の構造は図1を参照して説明された構造と同一である。したがって、不必要な繰り返しを避けるために、同様な参照番号は同様な特徴を示すことに使用される。
【0117】
図1でのように、複数の光子は、まず偏光子5を次に波長板7を介して量子ドットに向けるレーザー1を使用して、量子ドット3で励起される。波長板は、偏光面が回転することを可能にする。
【0118】
システムの読み出し部分はユニット167を具備する。ユニット167は、波長板166を通り、その後第2の偏光子168を通るレーザー164を具備する。
【0119】
この実施形態では、波長板は読み取りシステムでの偏光子の前に配置される。これは標準的技法である。ドットがH光子を放射し、波長板がそれを回転しなければ、偏光子は、それがH光子を透過させるように構成されていればこれを検出器へ通過させる。源によって放射される任意のV光子はブロックされる。しかし、(半)波長板が45度回転されているならば、それは、V光子をHへ回転する。ここでは、それは偏光子を通過し、検出される。ドットによって放射されたH光子は、Vに回転され、偏光子によってブロックされる。したがって、適切な値に波長板を回転させることによって任意の偏光を測定することは簡単である。
【0120】
レーザー167は、励起子状態のエネルギーに等しいエネルギーで放射する励起子状態の線幅以下の線幅を持った明るいコヒーレントレーザーである。レーザーは、量子ドット3に導かれ、構造を通って検出器171に至る。
【0121】
検出器171は強度検出器である。
【0122】
レーザーが試料を通過する時間での状態に平行にレーザーが偏光される場合、レーザーは励起子によって散乱される可能性がある。これは、検出器171によって検出された信号を乱す。励起子が明るいレーザー偏光に直交する別の場合では、171によって検出される信号は乱されない。したがって、測定は励起子状態で行われ、それは励起子状態重ね合わせを「押し縮め」、状態はレーザーの方向に射影される。この測定技術では、励起子は(光子放射でのように)破壊されない。
【0123】
図16は本発明のさらなる実施形態に従うコンポーネントを示す。コンポーネントの半導体構造は図1を参照して説明され構造と同じである。従って、同様な参照数字は同様な特徴を示すために用いられる。
【0124】
しかし電圧変調器は、量子ドット3での中性励起子崩壊よりも速い時間スケールに渡って変調を適用し、かつ光子を量子ドットに励起する。これは、nまたはp型領域からキャリヤが量子ドットに供給されるように、より大きなバイアスを適用することによって達成されうる。
【0125】
電流注入による2励起子レベルへのドット3の励起に際して、放射された第1の光子は、偏光された検出システムに向かって2色性のビームスプリッターまたは別のタイプの波長依存装置を使用して導かれる。偏光された検出システム177では、偏光測定に関する測定基底を選択するのに役に立つ波長板178、特別な偏光を有する光子を通過させるだけの偏光子180、及び検出器182がある。
【0126】
第2の光子は、2色性のビームスプリッター175によって第2の検波システム179に導かれる。第2の検波システム179は、波長板186、偏光子188及び検出器190を具備する。これらは、第1の検出システム177に関して説明される同じ方法で動作する。
【0127】
図17の(a)及びその対応するバンドダイヤグラムである図17の(b)は、本発明のさらなる実施形態に従うコンポーネントのレイヤ構造を示す。複数のコンタクト、励起部及び測定単位は示されていない。
【0128】
図17の(a)及び図17の(b)では、障壁レイヤは、提供され、再結合の前に量子ドットからのキャリヤのトンネリングを防ぐように構成される。この構造は、より高い場が前記量子ドットにわたって提供されることを可能にすることができる。
【0129】
図17の(a)及び図17の(b)の実施形態では、複数の量子ドット221は、下部のガリウム砒素レイヤ283と上部のガリウム砒素レイヤ289の間のインターフェース281で形成される。上部の289及び下部の283ガリウム砒素レイヤは上部291及び下部285の障壁レイヤにそれぞれ接している。上部及び下部の障壁レイヤ285及び291は、例えばAlGaAsでもよいより高いバンドギャップレイヤである。上部及び下部の障壁レイヤ291と285との間に挟まれた上部及び下部のガリウム砒素レイヤ289及び283の配列は、量子井戸を形成するガリウム砒素レイヤをもたらす。
【0130】
障壁レイヤは、インターフェース281に十分近づいて提供される。ここで、複数の量子ドットはそれらが障壁レイヤがない場合よりもさらなる程度の電気的な閉じこめを提供するように形成される。障壁レイヤ間のGaAsレイヤは量子井戸を形成する。
【0131】
対応するバンドダイヤグラムは図17の(b)において示される。ここで、量子ドット295は、上部及び下部のGaAsレイヤ289及び283によって形成される量子井戸297に位置する。その後これは、量子ドットからのトンネリングを抑制するのに役立つ上部及び下部障壁レイヤ291及び285の間に形成される。
【0132】
上記の設計における量子ドットがGaAsにおいて形成される結果、量子ドットの特性は、これが量子ドットを形成する典型的な材料であるので、よく理解されている。
【0133】
障壁材料を用いることによって、トンネリングは、光子放射体の放射効率を向上させる量子ドットからしばらくの間抑制される。これは結果として、400kV/cm以上の場が放射効率を破壊することなく適用されてもよいように、14nm以上の波長領域に渡って調整することになりうる。
【0134】
図17の(a)及び17の(b)では、構造は、装置の片側がp型であり他の側がn型でありドープされていない領域にドットを位置しているp−i−n構造である。しかし、もし量子ドット及び障壁が同じやり方で構成されれば、同じような結果は、n−i−p、n−i−n、p−i−pまたはオーム−i−ショットキー装置で得られる。
【0135】
図17に示される実施形態では、複数の障壁が等しく、それらの間隔は「量子井戸」内で電子状態の量子化を導くのに十分小さい、特別な場合が示されている。これは、キャリヤが十分に強いポテンシャル内で粒子のドブロイ波長に相当する領域に閉じ込められるときに、発生する。
【0136】
図17は、ドットからキャリヤのトンネリングを抑制するために、ドットのどちらか一方の側での障壁を示す。これらの障壁の1つまたは両方の高さ、位置、または厚さは、キャリヤがトンネルしドットから離れる障壁の縁で障壁の閉じ込められた状態がない位ドットから障壁への距離が十分に小さくなるように、選択されるならば、好ましい。(異なる有効質量が有する)複数の電子及び複数の正孔は、ドットの一方の側で障壁の等しくない高さに関して等しいトンネリングレートを有する。さらなる配置では、1つの障壁だけが提供される。1つの障壁が提供される場合、電子トンネリングを防ぐことが好ましくは提供される。
【0137】
上記の構造で用いられうる製造技術の例はGB2380605において教えられる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、量子ビットを制御する、量子情報コンポーネント及び方法に関する。より詳しくは、本発明は、量子ドットにおいて励起子(exciton)状態を操作するようなコンポーネント及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
量子暗号、量子イメージング、及び量子計算の分野において、複数の光子対を生成する必要がある。2つの電子及び2つの正孔で最初に満たされた単一の量子ドット(「2励起子状態」)でのカスケード放射過程から、上記の光子を生成することができる。この状態は、1つの電子及び1つの正孔が「(電荷中性の)励起子」状態のままである「2励起子光子」を放射することができる。この電子と正孔はその後、再結合してドットを空にしておく「励起子」光子を放射する。励起子状態の特性の制御を通じて、これら2つの光子をエンタングルすることができる。
【0003】
量子ドットが1個の電子及び1つの正孔のみを含んでいる場合、これらの粒子のスピンは以下のように配置される。すなわち、それらの崩壊から放射される光子を確定することは、微細構造分裂として知られているエネルギー分離を有する2つの直交する線形偏光のうちの1つを有することができる。あるいは、量子ビットと考えられ得る、これらの状態の重ね合わせでキャリヤを配置することができる。小さな微細構造分裂を持った量子ドットを、エンタングルされた光子ペアを生成するか、またはこの構造に量子ビットを記憶するために用いることができる。微細構造分裂がゼロである場合に、キャリヤが再結合し光子が放射されるまで、いったん用意されたこの重ね合わせは持続する。しかし、微細構造分裂が有限の場合、重ね合せは時間発展する。
【発明の概要】
【0004】
本発明の発明者らは、上記の概念が量子に基づく情報システムに関するコンポーネントの基準を形成することができる。
【0005】
微細構造分裂に動的な変化を提供することによって、重ね合わせの状態を制御することが可能になり、量子情報システムに関する上記の状態を適切に利用することが可能になる。ある特徴は、物理的な実装にかかわらず、量子計算のすべての提案に共通である。これらは十分に定義された状態に量子ビットを初期化する技術である。さらなる要件は、量子ビットはそれ上で実行される可能な操作数のために十分に長い間コヒーレントのままでなければならないということである。その後、量子ビットの最終状態は高い確実性で読出されなければならない。
【0006】
第1の態様では、本発明は、量子ビットと、記量子ビットに関するコントローラと、を具備するコンポーネントを提供し、前記コンポーネントは、量子ドットと、前記量子ビットを形成するために前記量子ドットにおいて中性の励起子状態を生成する励起部と、を具備し、コンポーネントは、前記状態の向きに関する光学的な測定を行う測定部さらに具備し、前記コントローラは、前記量子ドットに渡って変調された電場を適用するように構成された電気的なコンタクトに結合している電源を具備し、変調は、前記中性の励起子状態の崩壊時間よりも高速である。
【0007】
上記のコンポーネントは固体量子コンピューターにおいてコンポーネントになりえる。それは制御NOTゲート及び制御された回転ゲートとして用いることができる。またそれは、テレポテーション及び量子の中継器における応用に関する量子ドットエンタングル光子ペア源によって放射されたベル状態を制御するために用いられうる。
【0008】
本発明における制御は100ピコセカンド以下の時間フレームで作動しうる。一実施形態において、コンポーネントは、全て電気的であり、したがって小型化に適している。また、本発明はスケーラブルであり、分離したコンタクトによって、複数の量子ドットを扱うことができる。複数の状態間のコヒーレント相互作用は、(80Kまでの)温度には依存せず、高励起電力に影響されない。従って、本発明のコンポーネントはロバストである。
【0009】
好ましい動作モードでは、前記コントローラは前記状態に所定の位相変化を適用するように構成される。前記変調の振幅は、前記位相変化が前記励起子状態の崩壊時間よりも速いまたは短い時間スケールで発生するように選択されている。一実施形態において、明るい光学ビームは、単一の空の量子ドットを2つの励起子状態の所定の重ね合せに励起させるために用いられる。その後、励起子状態の2つのコンポーネント間のエネルギー差への動的な変化は、重ね合せを操作するためになされる。量子ビットは単一の量子ドット内にある。
【0010】
好ましくは、微細構造分裂は、重ね合せが生成される時の励起子状態の放射帯域幅未満である。
【0011】
微細構造分裂は励起子状態が生成される時の10μeV未満でもよい。この大きさまたはより低い微細構造分裂は、エンタングルメントが高速の検出器を用いて時間選択を通じて観測されることを可能にする。遅い検出器が用いられる場合は、好ましい実施形態では、ドットからドットまで変わる微細構造分裂は励起子線幅に相当する。
【0012】
一実施形態において、電圧変調器は量子ドットの微細構造分裂の大きさが変調され、かつ量子ドットの複数の固有状態が時間に関して一定であるような振幅でバイアスを加えるように構成される。微細構造分裂の高い値では、複数の固有状態のさらなる回転は禁じられる。さらなる実施形態では、電圧変調器は量子ドットの微細構造分裂の大きさが変調され、かつ複数の励起子固有状態が回転されるような振幅でバイアスを加えるように構成される。
【0013】
上記では、複数の状態の重ね合せである励起子状態が説明された。しかし、さらなる実施形態では、前記励起部は純粋な固有状態を生成するように構成され、前記コントローラは前記量子ドットの複数の固有状態を回転させることによって状態を変化させる。
【0014】
好ましくは、光励起(optical excitation)は複数の励起子状態と同じエネルギーにある。励起はまた電気的な励起でもよい。例えば、電気的な励起において、キャリヤは外部電流源への接触を行なうことを通じて供給される。
【0015】
システムの読出しを行なう測定部は、偏光に感度が良い測定を行なうように配置された偏光子を具備してもよい。別の配置では、前記測定部は、励起子状態と共鳴し、前記量子ドットに向けられるレーザー光線と、レーザーが量子ドットの影響を受けていたかどうかを判定する光検出器と、を具備している。
【0016】
特に有用なタイプのエンタングルされた光子源は、2励起子崩壊を使用して作用する量子ドットに基づく源である。半導体量子ドットの利点は、それらの製造技術が既存の商業生産技術と互換性をもつということである。したがって、コンポーネントは放射されたエンタングル光子の状態を制御するように構成されてもよい。
【0017】
別の実施形態では、量子ドットは、2つの電子と2つの正孔の構造に励起され、その後、それは2励起子光子の放射によって励起子状態に崩壊する。前記2励起子光子の偏光は、励起子状態が与えられる状態を判定するために測定される。動的な変化は、重ね合せを操作して、励起子状態の微細構造分裂になされる。第2の光子は、前記励起子状態の崩壊によって最終的に放射され、その状態の偏光状態は、放射された2励起子光子の状態及び励起子状態に格納される重ね合わせに適用される操作によって判定される。
【0018】
2励起子崩壊によりエンタングルされた光子を放射する量子ドットでは、エンタングル状態は、2励起子崩壊によって放射された光子と媒介励起子の崩壊から放射された光子との間の崩壊時間から判定されてもよい。あるいは、2励起子崩壊時間は、励起子崩壊時間と比較して、極めて短くなりえるので、タイマは2励起子崩壊に続く励起子崩壊によって放射される光子の放射時間を測定するだけで構成されてもよい。したがって、前記測定部は光子検出器とタイマとを具備してもよい。
【0019】
電圧変調が、状態が放射して結合するためにかかる時間より速く発生する。InAs/GaAs量子ドットについては、この放射寿命は、任意のキャビティ効果がない場合、1ナノ秒かもしれない。したがって、微細構造分裂(以後、sで示される)の大きさの変調は、理想的に500ピコセカンド未満の時間スケールにおいて起こる。より速い時間スケールで起こる操作は、それらによって多くの操作が寿命内で起こることが可能になるので、好ましい。
【0020】
以下において、単一パルスまたは時に複数のパルスを用いて励起子状態において格納された量子ビット上で実行されうる単純な操作が説明される。複数のパルスはより複雑な演算が記憶された量子ビットに行なわれることを可能にするために物理的な実現において用いることができる。
【0021】
光子が放射されうる光モードを削減するように設計された光結晶内にドットを配置することによって、この要件を緩めることができる。光子放射の上記のフラストレーションは、放射寿命における1−2桁の増加に結びつくと示されている。したがって、量子ドットは、放射寿命を増加させる光結晶内に好ましくは設置される。
【0022】
さらなる要件は、場での変化が、キャリヤが操作期間にドット内に保存されることである。
【0023】
ドットが、GaAsだけに囲まれる装置内に配置される場合には、約50KVcm−1の場は装置からの複数のキャリヤのトンネリングをもたらす。したがって、(AlGaAs合金のような)より高いバンドギャップ材料からなるドットの片側または両側でのトンネリング障壁を設置することは、有利であるかもしれない。参照することによって本明細書に組み込まれる未公開の特許出願番号GB 0919532.2は、ドットからトンネリングするキャリヤなしに、500KVcm−1までの電圧に耐える装置に関する好ましい設計を開示している。
【0024】
一般に、量子ドットは、複数のレイヤを具備する構造で提供され、電圧変調器は前記複数のレイヤの平面に垂直である垂直電場を適用するように構成される。さらなる実施形態では、水平電場は微細構造分裂を変化させるためにドットの面に適用される。一定の面内場とsを交換するいくつかの実証は明示されている(Kowalik, K., et al Appl. Phys. Lett. 86, 041907 (2005), Gerardot, B. D.et al, Appl.Phys. Lett. 90, 041101 (2007), Vogel, M. M., et al, Appl. Phys. Lett. 91, 051904 (2007))。微細構造分裂は複数の励起子状態の異なる面内閉じ込めから発生すると広く信じられているように、この面内場が他以上に1状態を乱すことが期待される。
【0025】
コントローラは、また前記量子ドットの微細構造分裂を操作するように構成された垂直磁場を適用するように構成された磁場発生器を具備してもよい。
【0026】
実施形態では、本発明は、量子状態のテレポテーションのために構成されてもよく、コンポーネントは光子を生成するように構成された独立した光子源をさらに具備し、励起部は前記量子状態で2励起子を励起するように構成されていて、コンポーネントは、ベル状態測定が2つの光子に行なわれるように、独立した源からの光子を2励起子崩壊からの放射される光子と混合する光子混合部をさらに具備し、前記光子混合部は、信号を、ベル状態を示す前記コントローラに出力する出力部をさらに具備し、前記コントローラは、光子混合部から受信した信号に基づいて、前記中性の励起子の状態を前記独立した光子の状態に変化させるように構成されている。
【0027】
実施形態において、本発明はCNOTゲートとして構成されてもよく、励起子光子の偏光状態は放射時間でエンタングルされ励起子光子の時間及び偏光の測定は2励起子光子の偏光を決定するように、前記励起部は前記量子ドットでの2励起子を励起するように構成され、前記コントローラはπの位相変化を施す変調パルスを中性励起子状態に適用するように構成される。
【0028】
第2の態様において、本発明は、量子ドットでの量子ビットを制御する方法を提供し、前記方法は、中性励起子状態を提供することによって量子ビットを形成し、前記量子ドットに渡り変調された電場を適用することによって前記量子ビットを制御し、ここで変調は前記中性励起子状態の崩壊時間よりも高速であり、前記状態の方向に関する光学的な測定を行うことを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明はここで、以下の好ましい限定されない実施形態を参照して説明される。
【図1】本発明の実施形態に従うコンポーネントの概略図である。
【図2】量子ドットでのエネルギー準位の概略図である。
【図3】ある実験室軸に関して測定された適切な検出と励起の角度を示す概略図である。
【図4】(a)は、初期の分裂がゼロである場合に時間と共に変化した量子ドットの微細構造分裂のプロットであり、(b)と(c)は重ね合わせ状態が、図3の対角及び反対角の軸上にそれぞれ射影された分裂と共にどのように変化するかを示す。
【図5】(a)は、初期の分裂がゼロでない場合に時間と共に変化した量子ドットの微細構造分裂のプロットであり、(b)と(c)は重ね合わせ状態が、図3の対角及び反対角の軸上にそれぞれ射影された分裂と共にどのように変化するかを示す。
【図6】2.5μeVの微細構造分裂を持った1ドットに関して時間の関数としてドットによって放射される、(XHX2H+XVX2V)エンタングル状態を有するエンタングル状態のフィデリティf+を示すプロットである。
【図7】(a)は、印加された垂直電場に対して微細構造分裂の実験結果を示し、(b)は、印加された垂直電場に関する複数の状態の回転角を示す。
【図8】(a)は、初期の分裂がゼロでない場合に時間と共に変化する量子ドットの微細構造分裂のプロットであり、(b)及び(c)は、純粋な固有状態として形成された状態が、それぞれ図3の水平及び垂直な軸の上に射影された分裂と共にどのように変化するかを示す。
【図9】(a)は、初期の分裂がゼロでない場合に時間と共に変化する量子ドットの微細構造分裂のプロットであり、(b)及び(c)は、純粋な固有状態として形成された状態が、それぞれ図3の対角及び反対角の軸の上に射影された分裂と共にどのように変化するかを示す。
【図10】(a)は、2励起子状態に励起されている、時間と共に変化する量子ドットの微細構造分裂のプロットであり、(b)及び(c)は、エンタングル状態のフィデリティが時間と共にどのように変化するかを示す。
【図11】Bloch球によって表わされる一般的な量子ビットの概略図である。
【図12】複数の基底において微細構造分裂の制御を可能にする本発明の好ましい実施形態に従うコンポーネントの概略図である。
【図13】テレポテーション演算のために構成された本発明のコンポーネントの概略図である。
【図14】量子制御NOT(CNOT)ゲートとして構成された本発明の実施形態に従うコンポーネントの概略図である。
【図15】明るい光学ビームが量子ドットの状態によって乱される場合での本発明の実施形態に従うコンポーネントを示す。
【図16】ドットが、2励起子状態に励起され、1対の偏光高感度検出器によって検出される2つの光子の放射を介して崩壊する場合に、本発明の実施形態に従うコンポーネントを示す。
【図17】(a)は、本発明の実施形態に従うコンポーネントで使用されるレイヤ構造であり、(b)は対応するバンド図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は本発明の実施形態に従うコンポーネントを示す。
【0031】
コンポーネントは基板上に形成され、量子ドット3を具備する。「より上」及び「より下」の用語は、レイヤの成長の順序に関して定義され、量子ドットより下にあるレイヤは量子ドットの基板側面に提供され、量子ドットより上のレイヤは基板に対して量子ドットの反対側にある。前記量子ドットは内在領域17に位置する。前記内在領域17は前記n及びp型レイヤ19及び21の間に位置するように、p型ドープレイヤ19は前記内在領域17より下に位置し、n型ドープレイヤ21は前記内在領域より上に位置する。もちろん、nとp型レイヤの順序は逆にされてもよい。
【0032】
電気コンタクト13及び15は、垂直場が量子ドット3を横切って印加されうるように、n及びp型レイヤ21及び19に接続される。電圧変調器9は、変調された電圧が量子ドット3を横切るように印加されてもよいように、コンタクト13及び15に接続される。
【0033】
この実施形態では、量子ドット3は、前記内在領域17によって垂直に伸びるエッチングされた孔11の規則的なアレイを具備する光結晶において形成される。光結晶は、ドットの放射再結合速度を減少させるように振る舞う。
【0034】
図1のコンポーネントを作り上げるために、量子ドット3はGaAs 17の100−200nm厚のレイヤの真中に成長される。x=0.9−1.0の構成を有してもよい100−1000nmのAlxGa1−xAsから成る犠牲レイヤとして働くAlGaAsのレイヤは、GaAsの基礎にある。後の光結晶はGaAsレイヤにおいて、結晶パターンを規定する電子線リソグラフィ及びGaAsにパターンを転送するエッチングのような標準技術を使用して規定される。このエッチングは、GaAsレイヤと少なくとも同じくらい深くなり、AlGaAsレイヤに達する。その後、AlGaAsレイヤは、例えばGaAsをエッチングしない希塩酸にさらすことによって、結晶の下方に選択的にエッチングされてもよい。結晶から離れて、AlGaAsレイヤはエッチングされず、結晶をサポートする。したがって、結晶はつるされる。
【0035】
コンポーネントは、線形の偏光子5及び波長板7を通って、前記量子ドットに向かって導かれ、量子ドット3を励起するために使用される明るいレーザー1をさらに具備する。一実施形態において、量子ドットは、中性の複数の励起子状態の重ね合わせに励起される。前記重ね合わせは、線形偏光器5及び波長板7で制御されうる、レーザーの線形偏光によって決定される。これがどのように実現されるかは、図4、5、8及び9を参照して後に説明される。
【0036】
これは、複数の励起子状態のエネルギーに等しいエネルギーを有する明るいレーザーを使用して実現される。ここで、レーザーからの1つの光子は、直接、励起子状態での1つの電子−陽電子ペアを生成することができる。レーザーの偏光は初期状態の偏光を設定する。
【0037】
あるいは、レーザーは、励起子状態のエネルギーと整数のフォノンエネルギー(フォノンは半導体格子において振動である)との和に等しいエネルギーであってもよい。GaAsについては、(縦の光学的な)フォノンエネルギーは、4Kで36meVでありInAsではそれが28meVであり、またどちらかがここで用いられうる。量子ドットは、(励起子とフォノンとの和)のエネルギーに調整されるレーザーを用いることによって、即座に励起されうる。したがって、レーザーからの光子が吸収され、半導体でのフォノンが破壊された場合、ドットに励起子が生成され、全エネルギーが保存される。また、ドットの励起のために用いられたレーザーの偏光の制御を通じて、生成された初期状態は制御することができる。
【0038】
一旦、電荷が量子ドットに格納されると、電圧変調器9は、図2,4,5,8、及び9を参照して説明されるように、量子ドットの微細構造を操作するために使用される。
【0039】
励起子が崩壊する時、光子が放射される。励起子の状態は、放射される光子の偏光測定から判定されてもよい。この実施形態では、コンポーネントは偏光の感知可能な検出システムをさらに具備し、これは波長板23、偏光子25及び検出器27を具備する。前記波長板23、偏光子及び検出器27は、放射された光子が波長板23を通り過ぎてその後偏光子25に入りその後検出器27に入るように、配置される。
【0040】
図2は、量子ドットの適切なエネルギー準位を示す。ドットが2個の電子及び2つの正孔を含んでいる場合、それは2励起子、X2状態にある。1つの2励起子光子29の放射の後、それは、スピンが2つの(一般性を失うことなく異なるエネルギーで直交に偏光されている)固有状態に配置される中性の励起子(X)に1個の電子及び1つの正孔を含む。この励起子状態が再結合する場合に、光子31は、放射時刻でのX状態によって与えられる偏光で放射される。
【0041】
GaAs上で成長した自己構築されたInAs量子ドットのしばしば研究されたシステムでは、中性の励起子状態XH及びXVは線形に偏光され、半導体の結晶軸に平行及び垂直に典型的には偏光される。また、ドットのサイズ、形状及び構成における異方性、及半導体の物理的性質のために、これらの2つの固有状態は異なるエネルギーを持つ。それらの間のエネルギー差は微細構造分裂と呼ばれ、sと示される。
【0042】
励起子状態はXA及びXBの重ね合せでありえ、それは次のように表わすことができる。
【数1】
【0043】
状態の各コンポーネントの前の係数は特性sin2(θ)+cos2(θ)=1を有する。角度θの制御は、(図3での水平及び垂直の実験室軸に関して方向付けられた)ドット33を励起させるために使用される明るいレーザー光線の偏光を回転させることによって達成されうる。一般に、ドットの軸はいかなる角度Ω35で整列されてもよい。この重ね合せで励起されるドットにおいて、励起子状態の2つのコンポーネントは異なる、位相差を獲得する(sによって分離された)エネルギーである。ここで、定数Cは最終状態の正規化を保証する。
【数2】
【0044】
より一般的には、s(τ)が、微細構造分裂が時間の関数としてどのように変化するかを記述し、式(3)は得られる。
【数3】
【0045】
したがって、s(τ)を制御することによって、時間tでの重ね合せの最終状態を制御することができる。より正確には、後の時間tでの最終状態は、τに対するs(τ)のプロットでの面積によって決定される。この位相を測定することは可能である。
【0046】
垂直方向に沿った最終状態の測定は、時間tにXVである状態であるシステムの確率(PV)を決定する。これは、その複素共役によって乗算された式(3)での|XV〉状態の前にある係数によって与えられる。
【数4】
【0047】
これは、状態の位相に関する情報を明らかにせず、時間に依存しない。変換するのはXVとXHとの間での位相すぎない。
【0048】
角度φ37(図3に示された)に沿って、時間tで、最終状態の測定がなされる場合を検討する。この式(3)を行うことは、代入をすることによって書き直さなければならない、
【数5】
【0049】
その結果、以下を得る。
【数6】
【0050】
これから、我々は角度φに沿ってある状態を測定する確率(Pφ(t))を引き出す。
【数7】
【0051】
そして定義によって、以下が成り立つ。
【数8】
【0052】
このように、励起子状態の両方のコンポーネントのコヒーレント励起を通じて、例えば複数の状態偏光に対するある角度である偏光の明るいレーザーで励起されることによって、重ね合わせ状態は用意されてもよい。さらに、励起子状態のこれらのコンポーネントの両方ともを同時に測定する測定が行なわれる場合、例えば、固有状態偏光に対する角度で測定することによって、重ね合せ状態の最終位相を測定することができる。
【0053】
上記のものはここでより詳細に説明される。図4の(a)、(b)及び(c)において示されるデータを得るために、重ね合せ状態は、励起角度θを用いて、レーザーで量子ドットを励起することにより形成される。この発明はここで、いくつかの好ましい実施形態を参照して示される。この発明を制限せずに、我々はここで、励起がドットの(図3のH及びVに沿って整列する)複数の固有状態に対してθ=45度の角度にある場合に注目する。これは、XHとXVの等しい成分を持った重ね合せを用意する。測定は、PD(t)及びPA(t)によって与えられる確率をもたらす、時間tでφ=対角D及び反対角(antidiagonal)Aの角度での最終状態でできている。この実施形態では、最終状態は、中性の励起子の崩壊によって放射される光子の偏光を測定することによって読み出される。図1に示されるように、AまたはDに沿って整列される検出器の前にある偏光子は、励起子状態から放射される光子がその方向にそって整列されるかどうかを測定するために使用される。
【0054】
図4aでは、重ね合せは、微細構造分裂s=0であるドット内に、時間ゼロ41で用意される。状態の寿命より小さいが、好ましくは時間ゼロに近いその後の時間では、電圧変調器はゼロでない値のs値を変化させるために使用される。
【0055】
式(3)から、sの非ゼロ値が時間にわたって発展する状態をもたらすことを理解することができる。図4上のグレー領域43は、電圧が変調される時間を強調する。この間、複数の状態は、1からゼロに下降する図4の(b)に示されるPD、及びゼロから1に上昇する図4の(c)に示されるPAによって発展する。電圧パルス変調の長さ及び(または)高さを変化させることによって、任意の位相変化を実現してもよい。一旦電圧パルスが分裂をゼロに戻せば、複数の状態は時間発展を停止する。
【0056】
50psまたはそれ以上の長さのパルスを供給できる商用のパルス発生器を使用して、上記の電圧変調を達成することができる。図4の(a)での曲線の面積が保存されるとすれば、2倍の時間長及び半分の高さで電圧変調を使用して、同一の変化を達成することができる。
【0057】
図5の(a)、(b)及び(c)は、図4の(a)、(b)及び(c)のそれとは異なる状況を示す。図5の(a)、(b)及び(c)では、量子ドットは元々、微細構造分裂sの小さな値を持っている。(図5の(a)49では2.5μeVであると仮定されて)sの固定値については、重ね合せは、一定の割合で、予想通りに、pD=(1+cos(2πst/h))/2及びpA=(1−cos(2πst/h))/2をもたらす位相を取得する。したがって、1.6nsの固定された時間でのシステムの測定は、pD=1、pA=0を与える。
【0058】
図4の(b)において用いられたそれと同一の電圧変調がs=2.5μeVの固定値(49)に加えて微細構造分裂を変化させるために用いられた場合、図5の(b)及び(c)にそれぞれ示されるpD(51)及びpA(53)での変化がわかる。後の1.6nsの固定時間55での状態の測定は、pD=0、pA=1を与えるように反転していることを再び示す。
【0059】
このシステムの位相における時間による変化の実験測定は、s=2.5μeVの一定値に関して図6に示される。次式の最大にエンタングルされた状態と比較して、図6は時間依存のエンタングル状態のフィデリティのプロットを示す。
【数9】
【0060】
結果は2励起子光子と励起子光子との間での遅延(τ)の関数としてプロットされる。この実験データはStevenson et al. Physical Review Letters 101, 170501 (2008)からである。
【0061】
図7の(a)は、単一の自己構築されたInAs/GaAs量子ドットに関する垂直電場の関数として微細構造分裂における変化についての実験データを示す。実験的に、s=0から離れると垂直電場の適用がs 71における線形の変化となることがわかった。これは、940nmで放射しているGaAs上で成長した量子ドットの特定タイプに関して、0.285μeV kV−1cmの勾配を有する。形状、サイズ及び閉じ込めポテンシャルの変更によって、この値を変更することができる。
【0062】
sの大きな値では、2つの励起子ダイポールは、結晶軸に沿って(Ω=0(73))向けられる傾向がある。微細構造分裂の大きさが最小に落ち込むと共に、2つの状態75のエネルギーでの反交差(anticrossing)によって引き起こされる有限の分裂が図7の(a)に示されることが観測される。sの最小値では、これらの状態は、Ω=45度(77)で向けられる2つの直交状態を生成して最大に混成されるようになる。図7の(b)におけるプロットは、角度Ωによって定義される混成の程度が反交差に近づくにつれてどのように変化するかを示している。この挙動は、垂直電場におけるInAs/GaAs量子ドットの共通の特徴であるが、sの最小値は0から40μeVまでのドット間で変化する。
【0063】
図7における点線79は、sのゼロ最小値を持った量子ドットの挙動を示す。
【0064】
このように2状態の混成を制御する能力は、初期状態と最終状態との間で行なうことができる、より完全な制御操作を可能にする。図4及び5に示されるデータは、2つの固有状態の重ね合せである状態に関する。図8及び9では、励起子状態はただ1つの固有状態で励起され、それは複数の状態の重ね合せではなく純粋状態である。したがって、量子ドットにおける固有の分裂があるころでさえ、状態は発展しない。
【0065】
上記のものを用いて、励起子状態を励起してsのある有限値で固有状態にし、この状態上で操作をまだ行うことは可能である。
【0066】
図8は、はじめに形成される「純粋状態」が時間と共に発展することができる重ね合わせに変化させることが可能にするために、ある時間(グレー領域)に、微細構造分裂の大きさ及び複数の固有状態の方向をどのように変化させるかを示す。
【0067】
図8に示されるデータを得るために、1つのドットをsのある有限値で励起し、時間ゼロ(81)でθ=0で励起することによって純粋状態XHにする。その後、印加される電圧はs 83を最小化してもよく、そこでは、小さな反交差が残っている。図7の(b)において示されるように、これらの条件の下では、ドットの複数の固有状態は45度で回転される。
【0068】
sのこの最小値では、最初に用意される(Hに沿って整列した)励起子は、45度を介して回転されていて、かつDとAに沿って整列する、2つの適切な固有状態の重ね合せにある。所定時間だけシステムをこの状態にしておくことは、sが図8の(b)及び(c)の斜線部分において示されるような非ゼロである場合に、重ね合せがこれらのコンポーネント間でのある位相変化を得ることを可能にする。その後、電圧を初期値に戻すことができ、最終状態は測定される。最小のsでの時間及び最小のsの値を制御することによって、最終状態は(固定位相を持った)線形基底での任意の重ね合わせになりえ、したがって、回転が行われている。
【0069】
図8では、電圧変調は、はじめに水平に偏光された状態が垂直に偏光された状態に切り替わるように適用される。バイアスが、sが大きな値を有するようなその元々の値に戻されるときは、状態は安定である。図8において0.9nsを越える時間での新しい状態は、状態が垂直であり複数の固有状態がV/Hであるので、安定している。従って、H−固有状態に状態の成分はなくまた、HとVとの間の相対的な位相を測定することは可能ではない。複数の固有状態が例えば60度の回転であり、かつ状態が「V」に沿って整列している場合には、「V」は時間と共に発展する複数の固有状態、60度と150度との重ね合わせである。
【0070】
図9の(a)、(b)及び(c)は、時間ゼロ91で純粋状態XAに取り入れられる、励起子状態に関するデータ(1ドットがsの最小値で用意されている)を示す。プロットは、はじめに形成される「純粋状態」が時間と共に発展することができる重ね合わせに変化させることが可能にするために、ある時間(グレー領域)に、微細構造分裂の大きさ及び複数の固有状態の方向をどのように変化させるかを示す。
【0071】
印加される電圧はs(93)を増加させることができ、ドットの複数の固有状態は、HとVに沿って整列されるように、Ω=90度に回転される。sのこのより大きな値では、(Dに沿って整列された)最初に用意された励起子は、(HとVに沿って整列された)2つの適切な固有状態の重ね合せにある。所定時間だけシステムをこの状態にしておくことは、重ね合せがこれらのコンポーネント間でのある位相変化を得ることを可能にする。その後、電圧を初期値に戻すことができ、最終状態は測定される。sの各値でドットが保持される時間及びsの値を制御することによって、最終状態は線形基底での任意の重ね合わせになりえ、したがって、回転が行われている。
【0072】
図10の(a)、(b)及び(c)は、本発明の実施形態にしたがうコンポーネントでの量子ドットからのデータを示し、それは励起子−2励起子カスケードを介して放射される1つのエンタングルペアの2光子状態を制御するために使用されうる。
【0073】
複数のエンタングル光子ペアは、量子暗号及び光量子計算のための必要なリソースである。2励起子から励起子、その後、空へのカスケードを介して放射される複数の量子ドットは、遷移の線幅と比較して微細構造分裂が小さい場合、エンタングル状態XHX2H+XVX2Vにおける複数の光子を自然に放射する。量子鍵配布及び量子計算における応用について、光子が放射される状態を制御することができることは有利である。Xの複数の光子のみを回転させる源の前で偏光回転子を用いて、これを実現することができる。しかし、上記の機械的な回転は、ミリ秒から秒の典型的な時間スケールであり、遅い。複数の量子状態の高速回転は、量子テレポテーション及び量子中継器におけるフィードフォワードのための必要である。これは図13を参照して説明される。
【0074】
本発明の実施形態に従うコンポーネントでは、光子が放射される状態は制御される。この実施形態では、ドットは、2励起子状態に励起され、時間ゼロ(101)で2励起子光子(X2)を放射する。なおここでsは最小である。図10の(b)がベル状態XHX2H+XVX2Vを有する放射された2光子状態のフィデリティf+をプロットし、図10の(c)がベル状態XHX2V+XVX2Hを有する放射された2光子状態のフィデリティf−をプロットする。
【0075】
微細構造分裂に変更がなされない場合、ドットは、ベル状態XHX2H+XVX2V(つまりf+=1及びf−=0)で自然に放射する。sの値の適切な操作がなされ、Xの重ね合わせの回転に導くとき103、システムはXHX2V+XVX2H状態に発展する。一般に、状態の任意の操作は、2励起子及び励起子の光子放射の(sに関して行われた操作によって決定されるベル状態を生成する)間になされる。
【0076】
図11は、任意の量子ビット状態を任意の他の量子ビット状態に変換するために本発明をどのように使用すればよいかを示す。量子ビットは、2状態の量子重ね合せであり、通常直交状態である|0〉及び|1〉によって示される。
【0077】
現在のスキームでは、計算上の基底となる状態|0〉及び|1〉は、例えばXH及びXVのような直交して偏光されている励起子状態である。
【0078】
任意の量子ビットは、図11に示されるように、Bloch球上に点111によって表されてもよい。基底となる状態|0〉及び|1〉は球の北113及び南115の極によって表され、重ね合わせ|0〉+eiφ|1〉は赤道117上にある。したがって、直線偏光計算の複数の基底を使用すると、対角及び円偏光された状態もまた赤道上にある。
【0079】
一般的な量子ビットはΨ=a|0>+b|1>によって表わされてもよい。ここで、a=cos(θ/2)、b=eiφsin(θ/2)、及びθ及びφは図11に示されるような緯度と経度を示す。したがって、任意の他のものからの任意の量子ビット状態を用意することは、少なくとも2つの軸に関する量子ビットを回転させる手段を必要とする。異なる軸に関する回転は、異なる偏光基盤(polarisation bases)での分裂の変調によって実現されうる。
【0080】
例えば、計算上の基底が直線偏光基底である場合には、直線{H,V}基底での有限の分裂によって、位相差が|0〉と|1〉の間で発展し、垂直軸119に関する回転、及び経度の角度φでの変化になる。代わりに、分裂が対角基底にあれば、複数の対角基底状態121を含む軸に関する回転があり、その状態はこの例では図11に示された点(|0〉±|1〉)√2によって表される。これは例えば、状態Hをこの例では|1〉及び(|0>±i|1>)√2で表わされたV、LまたはRに変換するために、緯度の角度θを変化させることができる。同様に円{L,R}基底での分裂は、この例では点(|0>±i|1>)√2を含む軸123に関する回転になる。
【0081】
一連の制御バルスを分裂することを使用すれば、任意の状態は用意することができる。例えば、状態|H〉から状態|D〉=(|H〉+|V〉)/√2を用意するために、最初の電圧パルスは、対角基底での分裂を生成するために、状態が|R〉=(|H〉+i|V>)/√2に発展するために十分な時間で印加されてもよい。その後、第2の電圧パルスは、直線基底(rectilinear basis)での分裂を生成するために、状態が|D〉=(|H〉+|V〉)/√2にさらに発展するために十分な時間で印加されてもよい。
【0082】
あるいは、単一パルスは用いられてもよいが、しかし分裂基底は、基底となる複数の状態が、ベクトルを初期から最終の量子ビット状態に交差させる軸を形成するように選ばれる。
【0083】
分裂基底を選択する場合の別の利点は、量子ビットの用意後に、用意された量子ビットが基底となる状態であるように分裂基底を選択するために、制御電圧が印加されてもよい点である。この場合、光子が放射される前に、量子ビットのさらなる発展は起こらない。
【0084】
直線基底での分裂の制御は、HまたはV偏光に対応する(通常実質的に[110]及び[1−10]と等しい)方向に沿っての試料の平面、または試料の垂直方向での電場の変調によって達成されてもよい。対角基底での分裂の制御は、有限な最小の分裂を有する量子ドットを使用して達成されてもよい。ここで、基底となる複数の状態は大部分は対角である。例えば垂直方向での電場の変調を使用して分裂を増加させることによって、直線基底での分裂が支配的になる。あるいは、対角基底での分裂は、偏光状態DまたはAに対応する軸に沿って、試料の平面での電場の変調によって達成されてもよい。最終的に、円基底(circular basis)での分裂の制御は、例えば外部コイルを介して電流を流して量子ドットに垂直な磁場を印加することによって適用されてもよい。
【0085】
図12は本発明のさらなる実施形態に従うコンポーネントである。図12は、ちょうど表面以下に提供される量子ドット126を持ったコンポーネントの表面を示す。例えば、量子ドットはGaAsレイヤにおけるInAs量子ドットであってもよい。
【0086】
2つのペアの表面コンタクトが形成される。コンタクトは、例えばショットキーコンタクトでもよい。第1のペアのコンタクト125及び127は、前記量子ドットを有する直線を形成するために配置され、前記量子ドット126のどちらかに形成される。コンタクトの第2の部分129及び131も、前記量子ドット126を持った直線において形成され、前記量子ドットのどちらか側に形成される。第1のペアのコンタクトの直線は、第2のペアのコンタクトによって形成された直線に垂直である。両方のペアのコンタクトは前記量子ドット126に側面の領域を提供する。
【0087】
図12に示されるコンポーネントでは、装置の表面での電気的なコンタクトの配列によって、電圧変調を用いる1つよりも多くの基底での分裂の制御を可能にする。上記の制御は、任意の量子ビット回転が実現されることを可能にする。
【0088】
上記のものは一例であり、コンタクトのさらなるセットは、図1を参照して説明されたタイプの垂直場を適用するために、提供されてもよい。
【0089】
円基底での分裂を実現するために、磁場は試料表面に垂直な量子ドットに印加されてもよい。磁場は、ゼーマン分裂として知られている、複数の励起子状態のスピン依存エネルギー分裂を引き起こし、逆円偏光された複数の励起子状態の間で微細構造分裂を増加させる。同じような複数の量子ドットに関して以前に測定された典型的なゼーマン分裂は、オーダーが|s|〜200μeVT−1である。したがって、〜2μeVの顕著な分裂を実現することは、0.01Tの場を必要とする。これは、外部コイルを介する通過電流によって通常実現されうる小さな磁場である。
【0090】
直線及び対角基底での分裂を達成するために、図12は、好ましい実施形態を示している。ここで2つのペアのコンタクトは、電場が試料の面での任意の方向に印加されてもよいように、装置の表面上での量子ドットの周りに配置される。例えば、下部コンタクトB127に対して、上部コンタクトT125に正電圧を印加することは、上部コンタクトT125と下部コンタクトB127との間での電場を引き起こす。電子及び正孔の波動関数は、電場の反対方向に沿って量子ドットにおいて空間的に分離する。これは、直交する面内方向に比較して、場の方向において垂直電子正孔オーバーラップでのより強い変更をもたらす。それは、(上部コンタクトT125及び下部コンタクトB127がHまたはV偏光方向にそって整列されていると仮定して)直線偏光基底での微細構造分裂|s|を変化させる。上部コンタクトT125及び右コンタクトR129に電圧を等しく印加し、下部コンタクトB127及び左コンタクトL131に等しく第2電圧を印加することによって、電場は、DまたはAの偏光方向に対応して、以前の例に比較して方向45度に生成される可能性がある。上記の場は、対角基底において微細構造分裂を生成するだろう。従って、任意の強さかつ面内方向の場は、4つのコンタクトのそれぞれに印加される相対的な電圧を制御し、任意の基底での微細構造分裂をもたらすことによって印加されてもよい。
【0091】
少なくとも1つのコンタクトに電圧パルスを印加し、さらに他のコンタクトに電圧パルスまたは固定電圧を印加することによって、図12に表されるコンタクト配置を使用して任意の線形基底での微細構造分裂を生成することが可能になる。完全に任意の基底で分裂することは、装置表面に垂直な磁場を誘導するために、外部のワイヤコイルを介して電流を流すことによって実現されてもよい。
【0092】
図13は、入力光子(量子ビット)133から出力光子(量子ビット)135の状態のテレポテーションのために構成された本発明のさらなる実施形態に従うコンポーネントの概略図である。
【0093】
ゲートの結果が成功であると決定された後、入力状態を確率的な量子論理ゲートに提供するために、テレポテーションを使用することができる線形光量子計算を含む様々な量子情報応用に、テレポテーションを使用することができる。
【0094】
テレポテーションシステムの演算は以下のように説明される。
【0095】
システムは、本発明の実施形態に従って図1を参照して説明されるようにコンポーネントによって、提供される量子ドット光子対源を必要とする。コンポーネント内の量子ドットは、光学のレーザパルス137を用いて、中性の2励起子状態に励起される。2励起子(XX)状態は、コンポーネントからの第1の2励起子(XX)光子139を放射する励起子(X)状態に崩壊する。放射された2励起子(XX)光子139は、量子ドットのままである励起子(X)141状態とエンタングルする。
【0096】
共同の測定は、前記2励起子(XX)139光子及び(その偏光は入力量子ビット状態を表わす)追加入力光子133の状態に行なわれる。この共同の測定は、ベル状態測定143として知られ、4つのよく知られているエンタングルされたベル状態を区別することができる。測定は、ベル測定に依存する信号を電圧変調器145に出力する混合ユニット143で行なわれる。
【0097】
ベル状態測定の後に、コンポーネントのままである励起子X141は、4つのベル状態のどれが検出されたかに依存して、入力光子133との固定した関係を有している。励起子(X)量子ビットの回転は、1以上の方向でドットに渡って電場を変化させる電圧変調器145からの1以上の電圧パルスによって実現されうる。これは、励起子(X)量子ビット141の直交して偏光されたコンポーネント間の位相差を蓄積する(accrue)ために、微細構造分裂を変化させる効果を有する。4つのベル状態測定の各々は、励起子(X)量子ビットが入力光子量子ビットの状態を最大に表わすことを確実にするように、異なる電圧パルスまたはパルスシーケンスをトリガーする。
【0098】
例えば、入力光子がHとVの重ね合せで、エンタングルされた状態がXHX2H+XVX2Vである場合である。入力光子及び2励起子光子は、(実際にそれらがHまたはVであるかどうかを決定することなしに)それらが同一か異なっているかを確かめるために、混合ユニットによって行なわれた「ベル状態測定」において比較される。入力光子及び2励起子光子が同じである場合、混合ユニットは、電圧変調器に、記憶されたX状態に何も行う必要がなくしたがって2励起子と同様な偏光の光子を放射させることを示す。従って、入力及び励起子の光子は同じである。しかし、入力及び2励起子が反対であることをベル状態測定が示し、混合ユニットは、HをVに及びVをHに変化させるために、パルスが記憶された励起子状態に適用されるべきであることを、電圧変調器に示す場合、これによって励起子光子が入力光子と同様に放射される。
【0099】
励起子(X)量子ビット回転に続いて、励起子(X)141は再結合して出力励起子光子135を放射する。この出力光子量子ビット135は入力光子量子ビット133として実質的に同じである量子状態を持っている。したがって、入力光子133の状態は、出力光子135の状態上にテレポテーションされる。
【0100】
2励起子(XX)寿命が短いこと、励起子(X)寿命が長いことは有利であることに注意すること。これは、図1、15、及び16を参照して説明されるように、キャビティ量子電気力学、及びXX光子と共鳴する強い光学モードによって実現されうる。この実施形態での変更は、電流を用いる励起を含んでもよい。
【0101】
図14は、制御NOTの論理演算が実現されうる本発明の実施形態に従うコンポーネントを示す。CNOTゲートでは、さらなる量子ビット(制御量子ビット)が1である場合かつその場合に限り、入出力量子ビットは反転する。
【0102】
量子ドットは、時間ゼロ151での2励起子(XX)状態に励起され、量子ドットで残りの電子正孔ペアが射影される励起子状態とその偏光とが相関している2励起子XX光子の放射を介して崩壊する。したがって、(直線の{H、V}偏光基底で記述される)上記のXX光子放射イベントに続く初期状態Ψαは以下である。
【0103】
Ψα=(|HXXXH>+|VXXXV>)/√2
ここで、HXX及びVXXは水平及び垂直に偏光された2励起子XX光子を示し、XH及びXVは崩壊して水平及び垂直に偏光された光子を放出する励起子X状態を示す。
【0104】
垂直線153によって図14の(a)で示される時間Tmの後、電圧変調は、図14の(b)に概略的に示されるように、短い時間155で微細構造分裂|s|を偏光するために、装置に印加される。ここで我々は、他の構成は可能であるが、微細構造分裂がH及びV偏光された固有状態をもたらす典型的な場合を仮定する。電圧変調パルスの間に、位相差ΦはXHとXVの間で得られる。好ましくは、位相差Φはほぼπであるべきである。それは電圧変調の適切な振幅及び継続期間を選ぶことにより実現されうる。電圧変調に続いて、取得した位相は、システムを次式によって与えられる状態Ψ159に射影する。
【0105】
Ψβ=(|HXXXH>+eiΦ|VXXXV>)/√2
Ψβ=(|HXXXH>−|VXXXV>)/√2
上記の式は、エンタングルメントの本質が、励起子光子がいつ放出されるかに依存して、異なっていることを明らかにする。例えば、励起子時間測定が領域157内にある場合、対称なベル状態Ψ+=Ψ157は形成される。しかし、測定時刻が領域159内にある場合、我々は反対称なベル状態Ψ−=Ψ159を持っている。この状態はΨ+に直交し、それは、Ψ+への励起子光子システムのフィデリティf+が、電圧変調161の適用に続いて、1の最大値から0の最小値に落ち込むことを意味している。これは、図14cにおいて概略的に示される。
【0106】
電圧変調に先立って放射される光子の確率が、変調後に放射される光子の確率に等しいことが好ましい。単一の放射崩壊時間Tを有する状態にとって、これは、−Tln(1/2)と等しい時間Tm153での変調を適用することが好ましいことを意味している。キャビティ内でない典型的なInAs/GaAs QDにとっては、T=1nsであり、つまり変調は0.69nsで適用されるべきである。
【0107】
励起子光子の発光時間が不確定であるので、システム状態Ψは変調前後の状態、Ψα及びΨβの以下に示す重ね合わせによって記述される。
【0108】
Ψ=Ψα|α〉+Ψβ|β〉/√2
Ψ=(|HXXHXα〉+|VXXVXα〉+|HXXHXβ〉−|VXXVXβ〉)/2
ここで|α〉及び|β〉は、水平及び垂直に偏光された励起子光子HX及びVXの放射に関する時間領域を示す。好ましいTm153の選択は、重ね合せが等しく平衡を保つことを保証する。上記の式は|H>=(|D>+|A>)/√2及び|V>=(|D>−|A>)/√2の代入を使用して、対角偏光基底{D、A}で以下のように書き換えられ得る。
【0109】
Ψ=(|DXXDXα>+|AXXAXα>+|DXXAXβ>+|AXXDXβ>)/2
上記の式の検査は、放射される2励起子XX光子に作用する量子論理演算を行うために、励起子光子の時間及び偏光の測定を使用することができることを明らかにする。これは、2励起子XX光子の偏光が、X光子の測定時間に依存する励起子X光子の偏光に同じまたは反対であるという事実に起因する。
【0110】
論理0=α、1=βを有する制御量子ビットを表現するために、励起子X光子の放射(検出)時間測定を考慮し、論理0=H、1=Vを有する入力量子ビットを表現するために、励起子光子の偏光測定を考慮すること。同様に、2励起子光子は、また論理的0=H、1=Vをも有する出力量子ビットを表現する。したがって、システムは、制御ビットの状態上での条件付きの入力量子ビットの状態を反転させ、出力量子ビットに結果を出力する。そして、制御量子ビット=|0〉に関して、出力量子ビットは入力量子ビットに等しい。しかしながら、制御量子ビット=|1〉に関しては、入力|0〉に関して出力は|1〉であり、入力|1〉に関して出力は|0〉である。
【0111】
この量子論理演算の挙動はCNOTゲートに同様である。
【0112】
実際的な条件では、多くの2励起子崩壊が測定され、後にデータは、時間アルファで放射した光子が1つの状態にあり、時間ベータで放射した光子が別の状態にあることを判定するために、ソートされる。
【0113】
またCNOTゲートのように、入力、制御及び出力の量子ビットは、論理的な|0〉及び|1〉の重ね合せである状態になりえる。偏光符号化された量子ビットに関しては、これはHまたはV以外の偏光を意味し、時間符号化された量子ビットに関しては、干渉計は2つの放射時間の重ね合わせを測定するために使用されてもよい。
【0114】
ここで説明された論理ゲートのタイプは、入力量子ビットは、直接的に選ばれず、励起子光子の偏光と時間の測定が望ましい結果を生む時に選択されるという意味で、確率的である。また従来のCNOTゲートと異なり、制御量子ビットは、論理演算の間に破壊され、従って続いて再使用または測定することができない。言いかえれば、それは、放射の時間が量子力学的に不確定であり、測定がその時に波動関数を押し縮め、それを破壊する。この点では、それはもはや2つの時間の重ね合わせではなく、検出が発生し量子ビットが破壊されたことは明確である。これは、論理演算が成功するために測定される必要のない出力量子ビットには真実ではない。
【0115】
図15は本発明の実施形態に従うコンポーネントを示す。この実施形態では、量子ビットの状態は、コンポーネントを介して伝送する読み出しビームの伝送での変調をモニタリングすることによって読み出される。
【0116】
装置の構造は図1を参照して説明された構造と同一である。したがって、不必要な繰り返しを避けるために、同様な参照番号は同様な特徴を示すことに使用される。
【0117】
図1でのように、複数の光子は、まず偏光子5を次に波長板7を介して量子ドットに向けるレーザー1を使用して、量子ドット3で励起される。波長板は、偏光面が回転することを可能にする。
【0118】
システムの読み出し部分はユニット167を具備する。ユニット167は、波長板166を通り、その後第2の偏光子168を通るレーザー164を具備する。
【0119】
この実施形態では、波長板は読み取りシステムでの偏光子の前に配置される。これは標準的技法である。ドットがH光子を放射し、波長板がそれを回転しなければ、偏光子は、それがH光子を透過させるように構成されていればこれを検出器へ通過させる。源によって放射される任意のV光子はブロックされる。しかし、(半)波長板が45度回転されているならば、それは、V光子をHへ回転する。ここでは、それは偏光子を通過し、検出される。ドットによって放射されたH光子は、Vに回転され、偏光子によってブロックされる。したがって、適切な値に波長板を回転させることによって任意の偏光を測定することは簡単である。
【0120】
レーザー167は、励起子状態のエネルギーに等しいエネルギーで放射する励起子状態の線幅以下の線幅を持った明るいコヒーレントレーザーである。レーザーは、量子ドット3に導かれ、構造を通って検出器171に至る。
【0121】
検出器171は強度検出器である。
【0122】
レーザーが試料を通過する時間での状態に平行にレーザーが偏光される場合、レーザーは励起子によって散乱される可能性がある。これは、検出器171によって検出された信号を乱す。励起子が明るいレーザー偏光に直交する別の場合では、171によって検出される信号は乱されない。したがって、測定は励起子状態で行われ、それは励起子状態重ね合わせを「押し縮め」、状態はレーザーの方向に射影される。この測定技術では、励起子は(光子放射でのように)破壊されない。
【0123】
図16は本発明のさらなる実施形態に従うコンポーネントを示す。コンポーネントの半導体構造は図1を参照して説明され構造と同じである。従って、同様な参照数字は同様な特徴を示すために用いられる。
【0124】
しかし電圧変調器は、量子ドット3での中性励起子崩壊よりも速い時間スケールに渡って変調を適用し、かつ光子を量子ドットに励起する。これは、nまたはp型領域からキャリヤが量子ドットに供給されるように、より大きなバイアスを適用することによって達成されうる。
【0125】
電流注入による2励起子レベルへのドット3の励起に際して、放射された第1の光子は、偏光された検出システムに向かって2色性のビームスプリッターまたは別のタイプの波長依存装置を使用して導かれる。偏光された検出システム177では、偏光測定に関する測定基底を選択するのに役に立つ波長板178、特別な偏光を有する光子を通過させるだけの偏光子180、及び検出器182がある。
【0126】
第2の光子は、2色性のビームスプリッター175によって第2の検波システム179に導かれる。第2の検波システム179は、波長板186、偏光子188及び検出器190を具備する。これらは、第1の検出システム177に関して説明される同じ方法で動作する。
【0127】
図17の(a)及びその対応するバンドダイヤグラムである図17の(b)は、本発明のさらなる実施形態に従うコンポーネントのレイヤ構造を示す。複数のコンタクト、励起部及び測定単位は示されていない。
【0128】
図17の(a)及び図17の(b)では、障壁レイヤは、提供され、再結合の前に量子ドットからのキャリヤのトンネリングを防ぐように構成される。この構造は、より高い場が前記量子ドットにわたって提供されることを可能にすることができる。
【0129】
図17の(a)及び図17の(b)の実施形態では、複数の量子ドット221は、下部のガリウム砒素レイヤ283と上部のガリウム砒素レイヤ289の間のインターフェース281で形成される。上部の289及び下部の283ガリウム砒素レイヤは上部291及び下部285の障壁レイヤにそれぞれ接している。上部及び下部の障壁レイヤ285及び291は、例えばAlGaAsでもよいより高いバンドギャップレイヤである。上部及び下部の障壁レイヤ291と285との間に挟まれた上部及び下部のガリウム砒素レイヤ289及び283の配列は、量子井戸を形成するガリウム砒素レイヤをもたらす。
【0130】
障壁レイヤは、インターフェース281に十分近づいて提供される。ここで、複数の量子ドットはそれらが障壁レイヤがない場合よりもさらなる程度の電気的な閉じこめを提供するように形成される。障壁レイヤ間のGaAsレイヤは量子井戸を形成する。
【0131】
対応するバンドダイヤグラムは図17の(b)において示される。ここで、量子ドット295は、上部及び下部のGaAsレイヤ289及び283によって形成される量子井戸297に位置する。その後これは、量子ドットからのトンネリングを抑制するのに役立つ上部及び下部障壁レイヤ291及び285の間に形成される。
【0132】
上記の設計における量子ドットがGaAsにおいて形成される結果、量子ドットの特性は、これが量子ドットを形成する典型的な材料であるので、よく理解されている。
【0133】
障壁材料を用いることによって、トンネリングは、光子放射体の放射効率を向上させる量子ドットからしばらくの間抑制される。これは結果として、400kV/cm以上の場が放射効率を破壊することなく適用されてもよいように、14nm以上の波長領域に渡って調整することになりうる。
【0134】
図17の(a)及び17の(b)では、構造は、装置の片側がp型であり他の側がn型でありドープされていない領域にドットを位置しているp−i−n構造である。しかし、もし量子ドット及び障壁が同じやり方で構成されれば、同じような結果は、n−i−p、n−i−n、p−i−pまたはオーム−i−ショットキー装置で得られる。
【0135】
図17に示される実施形態では、複数の障壁が等しく、それらの間隔は「量子井戸」内で電子状態の量子化を導くのに十分小さい、特別な場合が示されている。これは、キャリヤが十分に強いポテンシャル内で粒子のドブロイ波長に相当する領域に閉じ込められるときに、発生する。
【0136】
図17は、ドットからキャリヤのトンネリングを抑制するために、ドットのどちらか一方の側での障壁を示す。これらの障壁の1つまたは両方の高さ、位置、または厚さは、キャリヤがトンネルしドットから離れる障壁の縁で障壁の閉じ込められた状態がない位ドットから障壁への距離が十分に小さくなるように、選択されるならば、好ましい。(異なる有効質量が有する)複数の電子及び複数の正孔は、ドットの一方の側で障壁の等しくない高さに関して等しいトンネリングレートを有する。さらなる配置では、1つの障壁だけが提供される。1つの障壁が提供される場合、電子トンネリングを防ぐことが好ましくは提供される。
【0137】
上記の構造で用いられうる製造技術の例はGB2380605において教えられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子ビットと、
前記量子ビットのためのコントローラと、
量子ドットと、
前記量子ビットを形成するために前記量子ドットにおいて中性の励起子状態を生成する励起部と、
前記状態の向きに関する光学的な測定を行う測定部と、
を具備し、
前記コントローラは、前記量子ドットに渡って変調された電場を適用するように構成された電気的なコンタクトに結合している電源を具備し、
変調は、前記中性の励起子状態の崩壊時間よりも高速であるコンポーネント。
【請求項2】
前記コントローラは、前記状態に所定の位相変化を適用し、前記位相変化が前記励起子状態の崩壊時間よりも速い時間スケールで発生するように前記変調の振幅は選択される請求項1のコンポーネント。
【請求項3】
前記励起部は複数の状態の重ね合わせを有する中性の励起子状態を生成し、前記コントローラは前記量子ドットの微細構造分裂を変化させることによって前状態を変化させる請求項1または請求項2のコンポーネント。
【請求項4】
前記微細構造分裂は、前記重ね合わせが生成される時に前記励起子状態の放射帯域幅未満である請求項3のコンポーネント。
【請求項5】
前記微細構造分裂が10μeV未満である時点で、前記励起子状態が生成される請求項3に記載のコンポーネント。
【請求項6】
前記励起部は純粋な固有状態を生成し、前記コントローラは前記量子ドットの複数の固有状態を回転させることによって前記状態を変化させる請求項1または請求項2のコンポーネント。
【請求項7】
前記量子ドットは、前記状態の放射寿命を増加させる光結晶内に位置している前出のいずれか1の請求項のコンポーネント。
【請求項8】
前記励起部は光励起子を提供し、光励起は前記励起子状態のエネルギーよりも大きい、整数のフォノンエネルギーである前出のいずれか1の請求項のコンポーネント。
【請求項9】
前記励起部は光励起を提供し、前記光励起は複数の前記励起子状態と同様のエネルギーである請求項1から請求項7のいずれか1項のコンポーネント。
【請求項10】
前記電圧変調器は、前記量子ドットの微細構造分裂の大きさが変調され前記量子ドットの複数の固有状態が時間に関して一定であるように、振幅を有するバイアスを加える前出のいずれか1の請求項のコンポーネント。
【請求項11】
前記電圧変調器は、前記量子ドットの微細構造分裂の大きさが変調され複数の励起子固有状態が回転されるように、振幅を有するバイアスを加える前出のいずれか1の請求項のコンポーネント。
【請求項12】
前記励起部は前記量子ドットで2励起子状態を励起し、前記中性の励起子は前記2励起子の崩壊によって形成される前出のいずれか1の請求項のコンポーネント。
【請求項13】
前記量子ドットは複数のレイヤと電圧変調器とを具備する構造において提供され、前記電圧変調器は前記レイヤの面に垂直である垂直電場を印加する前出のいずれか1の請求項のコンポーネント。
【請求項14】
前記量子ドットは複数のレイヤと電圧変調器とを具備する構造において提供され、前記電圧変調器は前記レイヤの面に平行である水平電場を印加する前出のいずれか1の請求項のコンポーネント。
【請求項15】
前記量子ドットは複数のレイヤとコントローラとを具備する構造において提供され、前記コントローラは垂直磁場を印加し前記量子ドットの微細構造分裂を操作する磁場生成器を具備する前出のいずれか1の請求項のコンポーネント。
【請求項16】
前記測定部は、偏光感応測定を行うように配置された偏光子を具備する前出のいずれか1の請求項のコンポーネント。
【請求項17】
前記測定部は、前記励起子状態に共鳴し前記量子ドットに導かれるレーザービームと、前記レーザーが量子ドットによって影響を受けていたかどうかを判定する光検出器を具備する前出のいずれか1の請求項のコンポーネント。
【請求項18】
光子を生成する独立な光子源と、
ベル状態測定が2つの光子で実行されるように前記独立な光子源からの光子を2励起子崩壊から放射される光子と混合する光子混合部と、を具備し、
前記励起部は前記量子ドットに2励起子を励起し、
前記光子混合部は、信号を、前記ベル状態を示す前記コントローラに出力する出力部を具備し、
前記コントローラは、前記光子混合部から受け取った信号に基づいて、前記中性の励起子の状態を前記独立した光子の状態に変化させる、量子状態のテレポテーションに関する前出のいずれか1の請求項のコンポーネント。
【請求項19】
前記励起部は前記量子ドットで2励起子を励起し、前記コントローラは、前記励起子光子の前記偏光状態が放射時間でエンタングルされ、励起子光子の時間及び偏光の測定が2励起子光子の偏光を判定するように、πの位相変化を中性の励起状態に適用するために変調パルスを印加する、CNOTゲートとして構成される請求項1から請求項17のいずれか1項のコンポーネント。
【請求項20】
中性の励起子状態を提供することによって量子ビットを形成し、
前記量子ドットに変調された電場を印加することによって前記量子ビットを制御し、
前記状態の方向に関する光学的な測定を行うことを具備し、
変調は前記中性の量子ドットの崩壊時間よりも速い、量子ドットでの量子ビットを制御する方法。
【請求項1】
量子ビットと、
前記量子ビットのためのコントローラと、
量子ドットと、
前記量子ビットを形成するために前記量子ドットにおいて中性の励起子状態を生成する励起部と、
前記状態の向きに関する光学的な測定を行う測定部と、
を具備し、
前記コントローラは、前記量子ドットに渡って変調された電場を適用するように構成された電気的なコンタクトに結合している電源を具備し、
変調は、前記中性の励起子状態の崩壊時間よりも高速であるコンポーネント。
【請求項2】
前記コントローラは、前記状態に所定の位相変化を適用し、前記位相変化が前記励起子状態の崩壊時間よりも速い時間スケールで発生するように前記変調の振幅は選択される請求項1のコンポーネント。
【請求項3】
前記励起部は複数の状態の重ね合わせを有する中性の励起子状態を生成し、前記コントローラは前記量子ドットの微細構造分裂を変化させることによって前状態を変化させる請求項1または請求項2のコンポーネント。
【請求項4】
前記微細構造分裂は、前記重ね合わせが生成される時に前記励起子状態の放射帯域幅未満である請求項3のコンポーネント。
【請求項5】
前記微細構造分裂が10μeV未満である時点で、前記励起子状態が生成される請求項3に記載のコンポーネント。
【請求項6】
前記励起部は純粋な固有状態を生成し、前記コントローラは前記量子ドットの複数の固有状態を回転させることによって前記状態を変化させる請求項1または請求項2のコンポーネント。
【請求項7】
前記量子ドットは、前記状態の放射寿命を増加させる光結晶内に位置している前出のいずれか1の請求項のコンポーネント。
【請求項8】
前記励起部は光励起子を提供し、光励起は前記励起子状態のエネルギーよりも大きい、整数のフォノンエネルギーである前出のいずれか1の請求項のコンポーネント。
【請求項9】
前記励起部は光励起を提供し、前記光励起は複数の前記励起子状態と同様のエネルギーである請求項1から請求項7のいずれか1項のコンポーネント。
【請求項10】
前記電圧変調器は、前記量子ドットの微細構造分裂の大きさが変調され前記量子ドットの複数の固有状態が時間に関して一定であるように、振幅を有するバイアスを加える前出のいずれか1の請求項のコンポーネント。
【請求項11】
前記電圧変調器は、前記量子ドットの微細構造分裂の大きさが変調され複数の励起子固有状態が回転されるように、振幅を有するバイアスを加える前出のいずれか1の請求項のコンポーネント。
【請求項12】
前記励起部は前記量子ドットで2励起子状態を励起し、前記中性の励起子は前記2励起子の崩壊によって形成される前出のいずれか1の請求項のコンポーネント。
【請求項13】
前記量子ドットは複数のレイヤと電圧変調器とを具備する構造において提供され、前記電圧変調器は前記レイヤの面に垂直である垂直電場を印加する前出のいずれか1の請求項のコンポーネント。
【請求項14】
前記量子ドットは複数のレイヤと電圧変調器とを具備する構造において提供され、前記電圧変調器は前記レイヤの面に平行である水平電場を印加する前出のいずれか1の請求項のコンポーネント。
【請求項15】
前記量子ドットは複数のレイヤとコントローラとを具備する構造において提供され、前記コントローラは垂直磁場を印加し前記量子ドットの微細構造分裂を操作する磁場生成器を具備する前出のいずれか1の請求項のコンポーネント。
【請求項16】
前記測定部は、偏光感応測定を行うように配置された偏光子を具備する前出のいずれか1の請求項のコンポーネント。
【請求項17】
前記測定部は、前記励起子状態に共鳴し前記量子ドットに導かれるレーザービームと、前記レーザーが量子ドットによって影響を受けていたかどうかを判定する光検出器を具備する前出のいずれか1の請求項のコンポーネント。
【請求項18】
光子を生成する独立な光子源と、
ベル状態測定が2つの光子で実行されるように前記独立な光子源からの光子を2励起子崩壊から放射される光子と混合する光子混合部と、を具備し、
前記励起部は前記量子ドットに2励起子を励起し、
前記光子混合部は、信号を、前記ベル状態を示す前記コントローラに出力する出力部を具備し、
前記コントローラは、前記光子混合部から受け取った信号に基づいて、前記中性の励起子の状態を前記独立した光子の状態に変化させる、量子状態のテレポテーションに関する前出のいずれか1の請求項のコンポーネント。
【請求項19】
前記励起部は前記量子ドットで2励起子を励起し、前記コントローラは、前記励起子光子の前記偏光状態が放射時間でエンタングルされ、励起子光子の時間及び偏光の測定が2励起子光子の偏光を判定するように、πの位相変化を中性の励起状態に適用するために変調パルスを印加する、CNOTゲートとして構成される請求項1から請求項17のいずれか1項のコンポーネント。
【請求項20】
中性の励起子状態を提供することによって量子ビットを形成し、
前記量子ドットに変調された電場を印加することによって前記量子ビットを制御し、
前記状態の方向に関する光学的な測定を行うことを具備し、
変調は前記中性の量子ドットの崩壊時間よりも速い、量子ドットでの量子ビットを制御する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−209725(P2011−209725A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−67269(P2011−67269)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67269(P2011−67269)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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