量子光学状態変換器
システム及び方法は、量子情報を1つの光子表現又は状態から別の光子表現又は状態に変換又は転送する。これにより、量子情報を、或る符号化から別の符号化へ、及び好都合な表現、効率的な表現、又は所望の操作のために必要とされる表現に変換することが可能になる。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
光子システムは、量子情報のために種々の異なる物理的表現を提供する。1つのタイプの物理的表現は、量子情報を符号化するために、光子の偏光を用いる。具体的には、各光子が1つの偏光状態を有し、その偏光状態は、直交偏光に関連付けられる2つの基底状態(例えば、水平偏光状態|H〉及び垂直偏光状態|V〉又は右回り円偏光状態|R〉及び左回り円偏光状態|L〉)の一次結合として表すことができる。量子情報処理システムは、光子の2つの直交偏光状態を、キュービットの基底状態値|0〉及び|1〉として用いることができる。いくつかの別の物理的表現では、キュービットが、光子の軌道角運動量の直交する固有状態に対応するか、又は単一の空間チャネル又は時間ビン内の光子の存否に対応するか、又は2つの空間チャネルのうちのいずれか一方又は2つの時間ビンのうちのいずれか一方の中に単一の光子が選択的に存在することに対応する基底状態値|0〉及び|1〉を有する。
【0002】
さらに一般的には、量子情報はキュービットには限定されない。例えば、キューディット(qudit)は、d個の離散した基底状態を用いて表される量子情報を指しており、キューナット(qunat)は、連続した範囲の基底状態を用いて表される量子情報を指している。キューディットの1つの光子表現は、d個の異なる空間チャネル又はd個の異なる時間ビンのうちのいずれか1つの中に単一の光子が選択的に存在することを用いる。代案として、一定の数(例えば、0〜d−1)の光子を含むフォック状態(例えば、状態|0〉〜|d−1〉)を、任意の所望の数d個の離散した値を有するキューディットを符号化するための基底状態にすることができ、同様に、1つ又は複数の光子を含む状態の軌道角運動量は、キューディットの3つ以上の離散した値を表すことができる。同様に、キューナットは、位置又は運動量のような演算子のための連続した範囲の固有値を有する光子を用いて物理的に表すことができるか、或いは連続した量子変数αに対応するコヒーレント又はスクイーズド光子状態|α〉を用いて近似的に表すことができる。光子システムを用いて、キュービット、キューディット及びキューナットのような、量子情報の多くの他の表現が実現可能である。光子状態のエンタングルメントは、量子情報の別の一般的な形態であり、それは多くのタイプの光子状態を用いて物理的に表現され得る。
【0003】
量子情報処理は一般的に、量子状態を操作して、量子情報の計算又は通信、格納又は測定のようなタスクを実行する。例えば、量子状態を操作するシステムは、多くの場合に量子ゲートに関連付けられる種々の論理演算を具現化することができる。しかしながら、或る量子ゲートの具現化形態は、量子情報の或る物理的表現に対して効率的であるが、別の量子ゲートは、その物理的表現を得るために具現化するのが難しい。より具体的には、例えば、1つのキュービットに対する第1の量子ゲートは、そのキュービットが1つの周波数の光子で表現される場合には、最も容易に具現化され得るが、第2の量子ゲートは、そのキュービットが異なる周波数を有する光子を用いて表現される場合に、より効率的に具現化され得る。同様に、量子情報を格納又は測定するシステムの特定の具現化形態も、その量子情報の特定の物理的表現を得るために最も効率的に、又は最も容易に具現化することができる。したがって、不変の物理的表現(例えば、量子情報を表すために用いられる光子の周波数及び符号化)を選択することは、量子情報処理システムの利用可能性又は効率を制限する可能性がある。
【0004】
概要
本発明の一態様によれば、システム又は方法が、量子情報を1つの光子表現又は状態から別の光子表現又は状態に変換又は転送する。これにより、量子情報を、好都合な表現、効率的な表現、又は所望の操作のために必要とされる表現に変換することが可能になる。
【0005】
種々の図面において同じ参照符合を使用して、類似又は同一の構成要素を示す。
【0006】
詳細な説明
本発明の一態様によれば、量子情報処理システムが、量子情報を1つの物理的な光子表現から別の光子表現に変換又は転送することができる。一般的な変換は、キュービット、キューディット、キューナット又はエンタングルメント状態のような量子情報を、第1の符号化された光子状態から第2の符号化された光子状態に転送する。その変換は、基礎をなす光子の符号化及び/又は特性を変更することができる。1つの特定の実施形態では、第1の周波数の複数の光子を用いて符号化された情報が、第2の周波数を有する1つ又は複数の光子の符号化された状態に転送される。後にさらに説明されるように、状態変換器のいくつかの別の具現化形態は、スワップゲート、テレポータ、又は量子情報を1つの状態から別の状態に転送する有効ハミルトニアンを与える光学系に基づくことができる。
【0007】
図1Aは、一対の制御(controlled)NOT(又はCNOT)ゲート110及び120を用いて形成されたスワップゲートを含む変換器100を示す。変換器100への入力は、式1に示されるように、変換するためのキュービットを表す状態|φ〉aと既知の状態|0〉cとの積である。変換される状態|φ〉aは、キュービットの第1の光子表現を用いる「aチャネル」内の基底状態|0〉a及び|1〉aの一次結合である。状態|0〉cは、キュービットの第2の光子表現を与える「cチャネル」内の既知の状態である。例えば、基底状態|0〉a及び|1〉aは、角周波数ωaを有する光子の直交偏光状態|H〉a及び|V〉aとすることができ、一方、状態|0〉cは、角周波数ωcを有する光子の2つの直交偏光状態|H〉c及び|V〉cの一方である。式1中の係数C0及びC1は、一般的には複素値であり、状態|φ〉aにおいて符号化され、変換器100がcチャネル内の状態|φ〉cに転送する量子情報を示す。
【0008】
【数1】
【0009】
aチャネル内の状態|φ〉aはCNOTacゲート110を制御し、CNOTacゲート110は、式2に示されるように、初期の積状態を変更する。その後、cチャネル内の状態は、CNOTcaゲート120を制御して、式3に示されるように、CNOTacゲート110から結果として生じる積状態を変更する。CNOTゲート110及び120の演算の結果として、状態|φ〉aの確率振幅C0及びC1によって表される量子情報が、第2のチャネル内の出力状態|φ〉cに転送される。aチャネルから出力される状態|0〉aは不要であり、廃棄されるか、又は他の場所で再使用され得る。
【0010】
【数2】
【0011】
各CNOTゲート110又は120は、図1Aに示されるように、2つのアダマール変換ゲート112及び116又は122及び126、並びに制御位相ゲート114又は124から構成され得る。しかしながら、代案として、CNOTゲート110及び120は、別個の素子112、114、116、122、124及び126を含むことなく、構成されてもよい。
【0012】
図1Bは、状態変換に不要な素子をなくすことによって見出される、変換器100を簡単にしたバージョンの変換器130を示す。変換器130は、2つのアダマール変換ゲート122及び116、並びに2つの制御位相ゲート114及び124から成る。変換器130は、状態変換を実行する際に、完全なスワップを実行するように要求されないので、図1Aの変換器100と比べて少ない素子を含む。具体的には、aチャネル内の出力状態は単に既知の光子状態であり、廃棄され得るので、変換器130は出力アダマール変換126を必要としない。さらに、cチャネル上の入力アダマール変換112は、変換器100のアダマール変換122からの出力状態と同じである、変換器130のcチャネルの入力状態を直に準備することによって、排除され得る。したがって、式4に示される形の変換器130の入力状態が、cチャネルにおける変換された出力状態|φ〉cを与える。変換器130のaチャネル内の出力状態は廃棄され得る。
【0013】
【数3】
【0014】
CNOTゲート110及び120(又はアダマール変換122及び116並びに制御位相ゲート114及び124)の物理的な具現化形態は、変換器100又は130が実行する変換を決定する。1つの特定の実施形態では、aチャネル状態|0〉a及び|1〉aは、角周波数ωaを有する光子の状態(例えば、直交偏光状態又は選択的空間チャネル状態)に対応し、cチャネル状態|0〉c及び|1〉cは、角周波数ωcを有する光子の状態(例えば、直交偏光状態又は選択的空間チャネル状態)に対応し、その際、変換器100又は130は、光学量子情報信号のための周波数変換器として動作する。現在の光ファイバは一般的に1.3〜1.5マイクロメートル(ミクロン)範囲の波長を有する光子を伝送するために設計されており、波長を短くすると(例えば、650nm)、例えば単一の光子検出又は生成のために、さらに良好に利用可能な光学素子の利点を有するので、そのような周波数変換は特に有用である。
【0015】
図2は、光学量子状態変換器200の一例を示しており、入力量子状態|φ〉aの表現では、状態|0〉a及び|1〉aが角周波数ωaを有する光子の直交線形偏光状態|H〉a及び|V〉aであり、出力量子状態|φ〉cは、状態|φ〉aと同じ量子情報を伝達するが、物理的表現では、基底状態|0〉c及び|1〉cが角周波数ωcを有する光子の直交線形偏光状態|H〉c及び|V〉cである。図2の状態変換器200は、2つの制御位相ゲート210及び240、並びに2つのアダマールゲート220及び230を含む。図2の制御位相ゲート210及び240は、電磁誘導透過(electromagnetically induced tranparency:EIT)系を用いて具現化される。代案として、Knill他著「A Scheme for Efficient Quantum Computations with Linear Optics」(Nature, Vol. 409, page 46 (2001))によって記述されるような、条件付き線形光学部品類、又はAlexei Gilchrist、G. J. Milburn、W. J. Munro及びK. Nemoto著「Generating Optical Nonlinearity using Trapped Atoms」(quant-ph/0305167)において記述されるような、捕捉原子とともに巨大光学非線形性を用いるシステム等のデバイスを用いる、制御位相ゲートの他の具現化形態を用いることもできる。
【0016】
制御位相ゲート210は、入力光学部品類(例えば、偏光ビームスプリッタ212)を有し、その入力光学部品類によって、状態|1〉a及び|1〉cに対応する偏光状態が、周波数ωa及びωcの光子間の相互作用を引き起こすことができるエネルギー準位を有する物質系214の中に導かれる。特に、物質系214は、物質系214内における周波数ωaを有する状態|1〉aの光子及び角周波数ωcの光子の同時の組合せによって、−1(又はeiπ)だけ状態|1〉aの位相が変更されるようにする。
【0017】
状態|1〉aの位相に所望の変化を引き起こすための1つの態様は、図3に示されるエネルギー準位のエネルギー固有状態|1〉、|2〉、|3〉及び|4〉を有する原子又は分子を含む4準位物質系を使用する。物質系214では、状態|3〉は、保存則が状態|3〉と|1〉との間の単一光子遷移を禁止するという点で、準安定状態であることが好ましく、状態|4〉からの遷移を引き起こす自然放出は、例えば、周囲にあるフォトニックバンドギャップ結晶によって抑圧されることが好ましい。さらに、状態|1〉と|2〉、状態|2〉と|3〉、及び状態|3〉と|4〉との間のエネルギー差はそれぞれ、
に等しくなる。ただし、離調パラメータνa、νc及びνbは小さくてもよい。「Quantum Information Processing using Electromagnetically Induced Transparency」と題する米国特許出願第10/364,987号においてさらに説明されるように、図3のエネルギー準位を有する物質系、及び説明されたばかりの特性は、電磁誘導透過を示すことになり、角周波数ωa、ωb及びωcの光子に同時に曝露されるときに、入力状態の位相を変更するであろう。制御位相ゲート210は、周波数ωbの光子を与えるレーザ216を含む。離調パラメータνa、νb及びνc、並びに光子と相互作用する4準位原子又は分子の数のようなパラメータを適切に選択する場合、角周波数ωa及びωcの光子が同時に存在することにより、EITが引き起こされ、状態|1〉a|1〉cの位相に所望の変化が生じる。周波数ωa又はωcの光子が存在しないことに起因して、入力状態|0〉a|0〉c、|0〉a|1〉c又は|1〉a|0〉cの場合には、位相の変化は生じない。
【0018】
アダマールゲート220及び230は、分離した偏光状態を回転させる線形光学素子を用いて具現化され得る。偏光回転後に、ビーム結合光学部品類(例えば、偏光ビームスプリッタ218)が、分離した偏光成分を再結合する。制御位相ゲート240は、制御位相ゲート210と同じように具現化され、4準位物質系222を含む。レーザ224が波長ωbの光子を与え、物質系222が、aチャネル光子の|1〉a成分に所望の位相変化を与えることを可能にする。アダマールゲート220及び制御位相ゲート240の動作は、aチャネル及びcチャネル光子状態をエンタングルさせないので、所望のcチャネル状態|φ〉cを出力することが可能になる。
【0019】
本発明の別の態様によれば、代案として、テレポータシステムを用いて、状態変換を具現化することができる。図4Aは、第1の物理的表現を用いる光子状態|φ〉aから、第2の物理的表現を用いて同じ量子情報を表す光子状態|φ〉dに量子情報を転送する変換器400の一例を示す。変換器400は、測定系410と、古典的に切り替えられるNOTゲート420と、古典的に切り替えられるZゲート430とを含む。変換に関して、入力状態は、式5に示されるように、状態|φ〉aと、既知のベル状態、例えば(1/21/2)(|0〉c|0〉d+|1〉c|1〉d)との積である。一実施形態では、ベル状態は最大にエンタングルされた光子対であり、dチャネル内にある一方の光子は出力状態|φ〉dの符号化を有し、cチャネル内にある他方の光子は、測定系410において入力状態|φ〉aと相互作用する。
【0020】
【数4】
【0021】
例示された実施形態において、測定系410は、CNOTacゲート412と、アダマールゲート414と、aチャネル光子のための状態アナライザ416と、cチャネル光子のための状態アナライザ418とを含む。状態|φ〉aがCNOTacゲート412を制御し、そのゲートはcチャネル光子内の光子に作用を及ぼす。その後、アダマールゲート414が、状態|φ〉a、すなわちaチャネル光子に作用する。CNOTacゲート412及びアダマールゲート414の作用によって、式5の入力状態が式6に示される形に変換されるのを明らかにすることができる。
式6:
(1/2)[C0(|0〉a+|1〉a)(|0〉c|0〉d+|1〉c|1〉d)+C1(|0〉a−|1〉a)(|1〉c|0〉d+|0〉c|1〉d)]=
(1/2)[|0〉a|0〉c(C0|0〉d+C1|1〉d)+|0〉a|1〉c(C0|1〉d+C1|0〉d)+|1〉a|0〉c(C0|0〉d−C1|1〉d)+|1〉a|1〉c(C0|1〉d−C1|0〉d)]
【0022】
状態アナライザ416及び418はそれぞれ、aチャネル及びcチャネル内の光子を測定し、ひいては測定された光子が、状態|0〉a|0〉cにあるか、状態|0〉a|1〉cにあるか、状態|1〉a|0〉cにあるか、又は状態|1〉a|1〉cにあるかを判定する。それゆえ、その測定は、cチャネル光子が、状態C0|0〉c+C1|1〉c、状態C0|1〉c+C1|0〉c、状態C0|0〉c−C1|1〉c、又は状態C0|1〉c−C1|0〉cのいずれにあるかを特定する。状態アナライザ416及び418からの古典的な出力信号Ma及びMcが、古典的に切り替えられるNOTゲート420及び古典的に切り替えられるZゲート430を制御する。特に、aチャネル光子が状態|1〉aにあるとき、信号MaがアサートされてZゲート430をイネーブルにし、cチャネル光子が状態|1〉cにあるとき、信号McがアサートされてNOTゲート420をイネーブルにする。この結果、最終的な出力信号|φ〉dは、表1によって示されるように、C0|0〉d+C1|1〉dの形を有する。
【0023】
【表1】
【0024】
テレポーテーション現象は当該技術分野においてよく知られているが、本発明の一態様によれば、テレポーテーションを用いて、量子情報が1つの光子表現から別の光子表現に変換される。例えば、周波数を変換する場合、aチャネル光子が第1の角周波数ωaを有し、cチャネル光子が第2の角周波数ωdを有する。cチャネルは、CNOTゲート412においてaチャネル光子と相互作用することができる周波数ωcを有する光子を含むことができる。1つの特定の実施形態では、cチャネル光子及びdチャネル光子は同じ周波数ωcを有し(図4A)、aチャネル光子は異なる周波数ωaを有する。その際、CNOTゲート412は、図2及び図3に関して上述されたような4準位物質系におけるEITを用いて具現化され得る。
【0025】
図4Bは、量子情報を、偏光基底状態|H〉a及び|V〉aを用いる物理的表現から、フォック状態|0〉d及び|1〉dを用いる物理的表現に変換する、本発明の一実施形態による変換器402を示す。そのため、変換される入力キュービット状態は、C0|H〉+C1|V〉の形を有する。例示的な実施形態では、入力ベル状態はエンタングル状態であり、それはcチャネル又はdチャネル内に光子がない状態|0〉c|0〉dと、cチャネル及びdチャネルのそれぞれの中の1つの光子に対応する状態|1〉c|1〉dとの組合せである。cチャネルは図3の角周波数ωcを有する光子を使用し、aチャネルは図3の角周波数ωaを有する光子を使用する。したがって、CNOTゲート510は、4準位物質系に角周波数ωbの光子を照射するレーザを用いて具現化され得る。aチャネルは、状態|V〉に対応する偏光を物質系の中に導き、状態|H〉に対応する偏光を有する光子をその物質系の周囲に経路指定する偏光スプリッティング光学部品類を有する。基底状態としてフォック状態|0〉c及び|1〉cを用いる物理的表現を用いるcチャネルは偏光光学部品類を必要としない。dチャネルは、入力のエンタングルされた光子状態を生成することができる任意の角周波数ωdを用いることができる。
【0026】
より一般的には、量子テレポーテーションを用いる変換器を使用して、基底状態|0〉c及び|1〉cとエンタングルされ得る基底状態|0〉d及び|1〉dを、基底状態を有する任意の物理的表現に変換することができる。例えば、dチャネルにおいて符号化するための基底状態|0〉d及び|1〉dは、コヒーレント状態|α〉及び|−α〉とすることができる。コヒーレント状態|α〉及び|−α〉は、条件付き論理光学部品類及び線形光学部品類を利用する既知のコヒーレント状態量子コンピューティング技術を用いて、偏光固有状態|H〉c及び|V〉c、又は光子数固有状態とエンタングルされ得る。代案として、フォック状態とコヒーレント状態とのエンタングルメントは、式7において与えられる形式のハミルトニアンを有する系を用いて達成されることができる。ただし、D(α)は、状態|0〉からコヒーレント状態|α〉を生成する「変位」演算子である。この結果、そのハミルトニアンは、エンタングル状態|0〉c|0〉d+|0〉c|1〉dを、エンタングル状態|0〉c|α〉d+|1〉c|−α〉dに変換する。
式7:
H=D(α)|0〉c〈0|d+|0〉d〈0|cD*(α)+D(−α)|1〉c〈1|d+|1〉d〈1|cD*(−α)
【0027】
量子情報のフォック状態表現から量子情報のコヒーレント状態表現への変換は、キュービットのような離散した量子情報を、連続した量子情報の表現に適した表現(すなわち、キューナット)に変換する場合に特に有用である。図5Aは、本発明の一実施形態による変換器500を示しており、キュービットを、デュアルレールフォック状態を用いる表現から、キューナットに適したコヒーレント状態を用いる表現に変換する。したがって、変換器500は、キュービットを、対応するキューナットに変換することができる。
【0028】
変換器500の例示された実施形態では、入力状態|φ〉INが式8において与えられる形式を有する。ただし、状態|0〉IN及び|1〉INはキュービットの入力表現の基底状態である。状態|0〉A及び|1〉Aは第1の空間チャネル又はレールAにおける0光子及び1光子にそれぞれ対応するフォック状態であり、|0〉B及び|1〉Bは、第2の空間チャネル又はレールBにおける0光子及び1光子にそれぞれ対応するフォック状態である。係数C0及びC1は、一般的には複素数であり、入力キュービットが伝達する量子情報である。コヒーレント状態|α〉が第3の空間チャネルに入力される場合、変換器500の点X0における全入力状態は式9において与えられる。
【0029】
【数5】
【0030】
変換器500は、制御位相ゲート510と、50−50ビームスプリッタ520と、光子検出器530及び535と、出力状態補正素子540及び545とを含む。Bレール光子状態は制御位相ゲート510を制御し、そのゲートは入力コヒーレント状態|α〉に作用を及ぼす。図5Aに示されるような制御位相ゲート510は、Bレール状態及びコヒーレント状態|α〉における光子のエネルギーにそれぞれ対応する個々のエネルギー準位遷移を有するEIT物質系を用いて具現化され得るが、代案として、制御位相ゲートの他の具現化形態も利用することができる。光子がBレール内に存在するときだけ、制御位相ゲート510がコヒーレント状態|α〉に作用を及ぼす結果として、制御位相ゲート510後の点X1における全光子状態が式10において与えられる。ただし、χは、制御位相ゲート510が引き起こす位相の変化である。
【0031】
【数6】
【0032】
50−50ビームスプリッタ520は、Aレール状態及びBレール状態を混合して、出力チャネル又はレールC及びDを通じて光子を出力する。ビームスプリッタ520の後に結果として生じる状態は、レールC内の0光子及び1光子にそれぞれ対応するフォック状態である状態|0〉C及び|1〉C、並びにレールD内の0光子及び1光子にそれぞれ対応するフォック状態である状態|0〉D及び|1〉Dを用いて表すことができる。式11は、50−50ビームスプリッタ520の動作の後である、状態を点X1から点X2に変換した後の光子状態を示す。式11の項の相対位相は、50−50ビームスプリッタ520が非対称であるときに得られる相対位相である。対称な50−50ビームスプリッタのような他のタイプのビームスプリッタも同様の結果を与えることになるが、以下に説明される特定の例とは異なる位相補正を必要とする場合もある。
【0033】
【数7】
【0034】
光子検出器530及び535は、入力状態からの光子がCチャネルにあるか、又はDチャネルにあるかを判定する。この目的に適した効率的な単一光子検出器が、例えば、W.J. Munro、R.G. Beausoleil及びT.P. Spiller著「A High Efficiency Quantum Non-demolition Single Photon Number Resolving Detector」(Quant-PH/0310066)において説明される。測定の結果として、Cレールにおいて1つの光子が測定されたが、Dレールにおいて測定されない場合には、その状態は(−C0|α〉+C1|eiχα〉)に崩壊し、Dレールにおいて1つの光子が測定されたが、Cレールにおいて測定されない場合には、(C0|α〉+C1|eiχα〉)に崩壊する。
【0035】
出力状態|φ〉OUTの所望の形式は(C0|α〉+C1|eiχα〉)である。ただし、状態|α〉及び|eiχα〉は、例えば、χがπに等しいときには|α〉及び|−α〉であり、キューナット表現の中のキュービット値に対する基底状態|0〉OUT及び|1〉OUTである。状態補正素子540は、検出器530がCレール内で光子を検出するときにイネーブルにされる古典的に制御されるZゲートである。コヒーレント状態ためのZゲートは、T.C. Ralph、A. Gilchrist、G.J. Milburn、W.J. Munro及びS. Glancy著「Quantum Computation with Optical Coherent States」(Phys. Rev. A 68, 042319 (2003))、又はT.C. Ralph、G.J. Milburn及びW.J. Munro著「Quantum Computation with Coherent State, Linear Interaction and Superposed Resources」(Quant-PH/0110115)において提示される技術を用いて具現化され得る。Dレールにおいて1つの光子が測定される場合、崩壊した状態は所望の形式を有し、Zゲートは何もしない。状態(−C0|α〉+C1|eiχα〉)がCレール内の光子の検出から生じる場合、Zゲート540は相対位相を補正し、最終的な出力状態|φ〉OUTは再び所望の状態(C0|α〉+C1|eiχα〉)になる。必要に応じて、さらなる補正光学部品類545を用いることもできる。
【0036】
図5Bは、量子情報をデュアルレールフォック状態表現からコヒーレント光子状態を用いる表現に変換するための、本発明の別の実施形態による検出器502を示す。検出器502の全入力状態は、入力状態|φ〉INと、2つのコヒーレント状態|α1〉1及び|α2〉2との積である。式12に示されるように、入力状態|φ〉INは、上述のデュアルレール表現を用いてキュービットを表し、検出器502内の点X1における全入力状態は、式12において与えられる形式を有する。
【0037】
【数8】
【0038】
Aレール上の光子状態は制御位相ゲート515を制御し、そのゲート515はコヒーレント状態|α1〉1に作用を及ぼし、Bレール上の光子状態は制御位相ゲート510を制御し、そのゲート510はコヒーレント状態|α2〉2に作用を及ぼす。図5Bにおいて示されるように、制御位相ゲート510及び515はEIT物質系を用いて具現化され得るが、代案として、制御位相ゲートの他の具現化形態も利用することができる。Aレール又はBレール内に光子が選択的に存在する場合に、制御位相ゲート510及び515がコヒーレント状態|α2〉2及び|α1〉1に作用を及ぼす結果として、図5Bの点X1における全光子状態は式13において与えられる。ただし、χ1及びχ2は、制御位相ゲート510及び515がそれぞれ引き起こす位相の変化である。
【0039】
【数9】
【0040】
50−50ビームスプリッタ520は、Aレール状態及びBレール状態を混合して、Cレール及びDレールを通じて光子を出力する。50−50ビームスプリッタ520の後の全光子状態は、レールC上の0光子及び1光子にそれぞれ対応するフォック状態である状態|0〉C及び|1〉C、並びにレールD上の0光子及び1光子にそれぞれ対応するフォック状態である状態|0〉D及び|1〉Dを用いて表すことができる。式14は、50−50ビームスプリッタ520の動作の後である、全光子状態の点X1から点X2への遷移を示す。
【0041】
【数10】
【0042】
検出器530及び535は、Cレール状態及びDレール状態を測定し、そのコヒーレント状態チャネルが、
であるかを判定する。状態補正素子540及び545が、崩壊した状態にある選択された項の位相を補正し、エンタングルされたコヒーレント状態を用いて元の量子情報の表現を与えることができる。より詳細には、補正素子540は無条件補正を実行することができ、図5A及び図5Bの例示された実施形態では不要であるが、他の実施形態においては好都合な場合もある。例えば、非対称ビームスプリッタの代わりに対称ビームスプリッタを用いる一実施形態は、補正素子540を用いて、両方の崩壊した状態を補正することができる。補正545は、その測定によって特定される崩壊した状態に従って条件付き補正を実行する。
【0043】
図5A及び図5Bの変換器500及び502は、少なくとも1つの既知のコヒーレント状態を入力し、量子情報を、基底状態としてコヒーレント状態を用いる表現に転送する。その同じ構造は、同様に、スクイーズド状態のような他のタイプの光子状態を用いる表現に変換することもできる。そのような変換に関して、用いられる既知の状態|S1〉のタイプは、制御位相ゲート510又は515の動作によって、既知の入力状態|S1〉が既知の入力状態に少なくとも近似的に直交しているCNOT出力状態|S2〉に変換されるようなタイプでなければならない。より具体的には、重ね合わせ|〈S2|S1〉|2は近似的に0であり、既知の入力状態|S1〉及びCNOT出力状態|S2〉が、出力表現のための基底状態として用いるのに適しているようにする。一般的には、コヒーレント状態|α〉及び|eiχα〉は、αが大きい場合に、χの値が相対的に小さい場合であっても、この条件を満たす。
【0044】
本発明のさらに別の実施形態では、状態変換器は、量子情報の1つの表現のための基底状態を別の量子情報の基底状態に直に変換する発展演算子を与える光学システムを構成することによって具現化される。式15は、例えば、形式C0|0〉a+C1|1〉aの入力状態|φ〉aを形式C0|0〉b+C1|1〉bの出力状態|φ〉bに変換する発展演算子に対応するハミルトニアン演算子Hを示す。式15では、結合定数θが、相互作用の強さを、それゆえ状態変換プロセスの速さを決定する。
【0045】
【数11】
【0046】
ハミルトニアン演算子H、及び所望の発展を与える相互作用時間δtを有する物理系は、aチャネル内の状態とcチャネル内の状態との間に相互作用を与える一次デバイス、二次デバイス及びさらに高次の非線形デバイスの組み合わせから構成され得る。S. Lloyd及びS. L. Braunstein著「Quantum Computing over Continuous Variables」(P. R. L. 82, 1784 (1999))は、スクイージング及び変位を伴う非線形デバイスを用いて任意のハミルトニアンを生成するための一般的な技術を説明する。この技術は、光子状態|φ〉に適用されるときに、別個のハミルトニアンH1、H2、...、HNを有する一連の光学素子を利用する。その光学素子によって、状態|φ〉は、式16に示されるように発展する。ただし、δtは光学素子毎の相互作用時間であり、HEFFは有効結合ハミルトニアンである。第2のハミルトニアン対−A及び−BとともにハミルトニアンA及びBを有する第1の光学素子対を用いるシステム又はサブシステムは、式17に示されるように、交換子[A,B]に関連する有効ハミルトニアンを与える。X又はPのような線形演算子を有する(X2+P2)2のような非線形多項式演算子の交換子は一般的に、より高次の多項式演算子である(例えば、[(X2+P2),X]はi(X2P+PX2+2P3)/2に等しい)。この原理を用いる際、1つのタイプの光学素子が、より高次の非線形ハミルトニアン演算子を有する場合に、一次ハミルトニアン演算子及び二次ハミルトニアン演算子を有する光学素子の適切な組み合わせを用いて、任意の多項式ハミルトニアン演算子を構成することができる。
【0047】
【数12】
【0048】
式15の所望のハミルトニアンHを与えるために用いられる特定の素子は、入力及び出力の物理的表現の基底状態に依存する。光場の場合には一般的に、一次素子及び二次素子は、ディスプレーサ、位相シフタ、ビームスプリッタ及びスクイーザを含む。より高次の二次素子は、EIT系において生成されるようなカー非線形性を用いて具現化され得る。
【0049】
図6Aは、本発明の一実施形態を示しており、光学システム600として、ビームスプリッタ610及び630と、非線形素子620及び640とを用いて、変換器に適したハミルトニアンを具現化する。システム600の入力状態は、量子情報、すなわち係数C0及びC1を伝達する状態C0|0〉a+C1|1〉aと、既知の状態|1〉bとの積である。情報を伝達する状態C0|0〉a+C1|1〉aの表現では、基底状態|0〉a及び|1〉aが、aチャネル内に0光子及び1光子をそれぞれ含むフォック状態である。既知の状態|1〉bは、bチャネル内の1光子に対応するフォック状態である。
【0050】
aチャネル及びbチャネルを混合するビームスプリッタ610及び630は、それぞれハミルトニアン演算子A及び−Aを有する。ただし、演算子Aは式18において与えられる。1つの特定の実施形態では、ビームスプリッタ610及び630は実質的に同じであるが、光がビームスプリッタ630を横切る方向と反対の方向に、光がビームスプリッタ620を横切るように方向付けされる。EIT系又はbチャネルにおいてカー非線形性を与える任意の別の素子とすることができる非線形素子620及び640はそれぞれ、ハミルトニアン演算子B及び−Bを有する。ただし、演算子Bは式19において与えられる。この結果、システム600の有効ハミルトニアンは式20において与えられる。式18、式19及び式20において、演算子
はそれぞれ、aチャネルのための生成演算子及び消滅演算子であり、演算子
はそれぞれ、bチャネルのための生成演算子及び消滅演算子である。
【0051】
【数13】
【0052】
図6Bは、ビームスプリッタ610及び630並びに非線形素子620及び640を異なる順序で用いて、式20のハミルトニアンを達成する、本発明の代替の実施形態を示す。具体的には、ビームスプリッタ610及び630は、図6Aに示されるように、それぞれの非線形素子620及び640の前に置くことができるか、又は図6Bに示されるように、それぞれの非線形素子620及び640の後に置くことができる。
【0053】
各素子610、620、630及び640は同じ相互作用時間tを有し、入力状態の発展が式21に示されるようになることが好ましい。式22は、真空状態において作用を及ぼす消滅演算子
が0であることから生じる、式21の簡略形である。結合θ及びχ並びに相互作用時間tは、式22内の定数k1及びk2の値を制御し、k1が0であり、大きさ|k2|が1であるように調整され得る。k1が0に等しい場合、出力状態は因数分解することができ、bチャネルにおいて状態|φ〉bを含み、状態|φ〉bは量子情報(C0及びC1)を1つの物理的表現において表す。ただし、基底状態|1〉b及び|2〉bは、bチャネル内の1光子及び2光子にそれぞれ対応するフォック状態である。
【0054】
【数14】
【0055】
上述のように、本発明の特定の実施形態による状態変換器は、量子情報のために1つの物理的表現を用いる光子状態から、その量子情報のために別の物理的表現を用いる光子状態への全般的な変換を実行することができる。全般的な変換は、物理的符号化の変換を含むことができ、この場合、図7に示されるように、量子値を区別する光子数、偏光、時間ビン、又は軌道角運動量のような光子状態の特性は、異なる物理的特性が量子値を区別する別の物理的符号化に変換される。付加的な、又は別の変換は、基礎をなす光子状態の初期の物理的タイプ、例えば特定の周波数の光子の状態を、異なるタイプの光子状態、例えば異なる周波数の光子の状態に転送することができ、同時に、異なる量子値を区別するために用いられる物理的符号化、例えば光子数、偏光、空間チャネル、時間ビン、又は軌道角運動量を変更又は保持することができる。
【0056】
本発明は特定の実施形態に関連して説明されたが、この説明は本発明の応用形態の一例にすぎず、限定するものと解釈されるべきではない。開示された実施形態の特徴の様々な改変及び組み合わせが、添付の特許請求の範囲によって規定されるような本発明の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1A】1つのキュービットを1つの光子表現から別の光子表現に変換するためにCNOTゲートを用いる、本発明の一実施形態による状態変換器のブロック図である。
【図1B】1つのキュービットを1つの光子表現から別の光子表現に変換するために位相ゲート及びアダマール変換を用いる、本発明の一実施形態による状態変換器のブロック図である。
【図2】電磁誘導透過(EIT)を用いて、量子情報を第1の周波数を有する光子から第2の周波数を有する光子に転送する、本発明の一実施形態による状態変換器のブロック図である。
【図3】図2の状態変換器におけるEIT系に適した物質系のエネルギー準位図である。
【図4A】量子情報を1つの光子表現から別の光子表現に変換するためにテレポーテーションを用いる、本発明の一実施形態による状態変換器のブロック図である。
【図4B】量子情報を1つの光子表現から別の光子表現に変換するためにテレポーテーションを用いる、本発明の一実施形態による状態変換器のブロック図である。
【図5A】デュアルレールフォック状態を用いて表されるキュービットを、コヒーレント光子状態を用いて表されるキューナットに変換する、本発明の一実施形態による変換器を示す図である。
【図5B】デュアルレールフォック状態を用いて表されるキュービットを、コヒーレント光子状態を用いて表されるキューナットに変換する、本発明の一実施形態による変換器を示す図である。
【図6A】光学システムが、量子情報を1つの物理的表現から別の物理的表現に変換する有効ハミルトニアンを有する、本発明の一実施形態を示す図である。
【図6B】光学システムが、量子情報を1つの物理的表現から別の物理的表現に変換する有効ハミルトニアンを有する、本発明の一実施形態を示す図である。
【図7】量子情報のための物理的な符号化のいくつかの変換を示す図である。
【背景技術】
【0001】
背景
光子システムは、量子情報のために種々の異なる物理的表現を提供する。1つのタイプの物理的表現は、量子情報を符号化するために、光子の偏光を用いる。具体的には、各光子が1つの偏光状態を有し、その偏光状態は、直交偏光に関連付けられる2つの基底状態(例えば、水平偏光状態|H〉及び垂直偏光状態|V〉又は右回り円偏光状態|R〉及び左回り円偏光状態|L〉)の一次結合として表すことができる。量子情報処理システムは、光子の2つの直交偏光状態を、キュービットの基底状態値|0〉及び|1〉として用いることができる。いくつかの別の物理的表現では、キュービットが、光子の軌道角運動量の直交する固有状態に対応するか、又は単一の空間チャネル又は時間ビン内の光子の存否に対応するか、又は2つの空間チャネルのうちのいずれか一方又は2つの時間ビンのうちのいずれか一方の中に単一の光子が選択的に存在することに対応する基底状態値|0〉及び|1〉を有する。
【0002】
さらに一般的には、量子情報はキュービットには限定されない。例えば、キューディット(qudit)は、d個の離散した基底状態を用いて表される量子情報を指しており、キューナット(qunat)は、連続した範囲の基底状態を用いて表される量子情報を指している。キューディットの1つの光子表現は、d個の異なる空間チャネル又はd個の異なる時間ビンのうちのいずれか1つの中に単一の光子が選択的に存在することを用いる。代案として、一定の数(例えば、0〜d−1)の光子を含むフォック状態(例えば、状態|0〉〜|d−1〉)を、任意の所望の数d個の離散した値を有するキューディットを符号化するための基底状態にすることができ、同様に、1つ又は複数の光子を含む状態の軌道角運動量は、キューディットの3つ以上の離散した値を表すことができる。同様に、キューナットは、位置又は運動量のような演算子のための連続した範囲の固有値を有する光子を用いて物理的に表すことができるか、或いは連続した量子変数αに対応するコヒーレント又はスクイーズド光子状態|α〉を用いて近似的に表すことができる。光子システムを用いて、キュービット、キューディット及びキューナットのような、量子情報の多くの他の表現が実現可能である。光子状態のエンタングルメントは、量子情報の別の一般的な形態であり、それは多くのタイプの光子状態を用いて物理的に表現され得る。
【0003】
量子情報処理は一般的に、量子状態を操作して、量子情報の計算又は通信、格納又は測定のようなタスクを実行する。例えば、量子状態を操作するシステムは、多くの場合に量子ゲートに関連付けられる種々の論理演算を具現化することができる。しかしながら、或る量子ゲートの具現化形態は、量子情報の或る物理的表現に対して効率的であるが、別の量子ゲートは、その物理的表現を得るために具現化するのが難しい。より具体的には、例えば、1つのキュービットに対する第1の量子ゲートは、そのキュービットが1つの周波数の光子で表現される場合には、最も容易に具現化され得るが、第2の量子ゲートは、そのキュービットが異なる周波数を有する光子を用いて表現される場合に、より効率的に具現化され得る。同様に、量子情報を格納又は測定するシステムの特定の具現化形態も、その量子情報の特定の物理的表現を得るために最も効率的に、又は最も容易に具現化することができる。したがって、不変の物理的表現(例えば、量子情報を表すために用いられる光子の周波数及び符号化)を選択することは、量子情報処理システムの利用可能性又は効率を制限する可能性がある。
【0004】
概要
本発明の一態様によれば、システム又は方法が、量子情報を1つの光子表現又は状態から別の光子表現又は状態に変換又は転送する。これにより、量子情報を、好都合な表現、効率的な表現、又は所望の操作のために必要とされる表現に変換することが可能になる。
【0005】
種々の図面において同じ参照符合を使用して、類似又は同一の構成要素を示す。
【0006】
詳細な説明
本発明の一態様によれば、量子情報処理システムが、量子情報を1つの物理的な光子表現から別の光子表現に変換又は転送することができる。一般的な変換は、キュービット、キューディット、キューナット又はエンタングルメント状態のような量子情報を、第1の符号化された光子状態から第2の符号化された光子状態に転送する。その変換は、基礎をなす光子の符号化及び/又は特性を変更することができる。1つの特定の実施形態では、第1の周波数の複数の光子を用いて符号化された情報が、第2の周波数を有する1つ又は複数の光子の符号化された状態に転送される。後にさらに説明されるように、状態変換器のいくつかの別の具現化形態は、スワップゲート、テレポータ、又は量子情報を1つの状態から別の状態に転送する有効ハミルトニアンを与える光学系に基づくことができる。
【0007】
図1Aは、一対の制御(controlled)NOT(又はCNOT)ゲート110及び120を用いて形成されたスワップゲートを含む変換器100を示す。変換器100への入力は、式1に示されるように、変換するためのキュービットを表す状態|φ〉aと既知の状態|0〉cとの積である。変換される状態|φ〉aは、キュービットの第1の光子表現を用いる「aチャネル」内の基底状態|0〉a及び|1〉aの一次結合である。状態|0〉cは、キュービットの第2の光子表現を与える「cチャネル」内の既知の状態である。例えば、基底状態|0〉a及び|1〉aは、角周波数ωaを有する光子の直交偏光状態|H〉a及び|V〉aとすることができ、一方、状態|0〉cは、角周波数ωcを有する光子の2つの直交偏光状態|H〉c及び|V〉cの一方である。式1中の係数C0及びC1は、一般的には複素値であり、状態|φ〉aにおいて符号化され、変換器100がcチャネル内の状態|φ〉cに転送する量子情報を示す。
【0008】
【数1】
【0009】
aチャネル内の状態|φ〉aはCNOTacゲート110を制御し、CNOTacゲート110は、式2に示されるように、初期の積状態を変更する。その後、cチャネル内の状態は、CNOTcaゲート120を制御して、式3に示されるように、CNOTacゲート110から結果として生じる積状態を変更する。CNOTゲート110及び120の演算の結果として、状態|φ〉aの確率振幅C0及びC1によって表される量子情報が、第2のチャネル内の出力状態|φ〉cに転送される。aチャネルから出力される状態|0〉aは不要であり、廃棄されるか、又は他の場所で再使用され得る。
【0010】
【数2】
【0011】
各CNOTゲート110又は120は、図1Aに示されるように、2つのアダマール変換ゲート112及び116又は122及び126、並びに制御位相ゲート114又は124から構成され得る。しかしながら、代案として、CNOTゲート110及び120は、別個の素子112、114、116、122、124及び126を含むことなく、構成されてもよい。
【0012】
図1Bは、状態変換に不要な素子をなくすことによって見出される、変換器100を簡単にしたバージョンの変換器130を示す。変換器130は、2つのアダマール変換ゲート122及び116、並びに2つの制御位相ゲート114及び124から成る。変換器130は、状態変換を実行する際に、完全なスワップを実行するように要求されないので、図1Aの変換器100と比べて少ない素子を含む。具体的には、aチャネル内の出力状態は単に既知の光子状態であり、廃棄され得るので、変換器130は出力アダマール変換126を必要としない。さらに、cチャネル上の入力アダマール変換112は、変換器100のアダマール変換122からの出力状態と同じである、変換器130のcチャネルの入力状態を直に準備することによって、排除され得る。したがって、式4に示される形の変換器130の入力状態が、cチャネルにおける変換された出力状態|φ〉cを与える。変換器130のaチャネル内の出力状態は廃棄され得る。
【0013】
【数3】
【0014】
CNOTゲート110及び120(又はアダマール変換122及び116並びに制御位相ゲート114及び124)の物理的な具現化形態は、変換器100又は130が実行する変換を決定する。1つの特定の実施形態では、aチャネル状態|0〉a及び|1〉aは、角周波数ωaを有する光子の状態(例えば、直交偏光状態又は選択的空間チャネル状態)に対応し、cチャネル状態|0〉c及び|1〉cは、角周波数ωcを有する光子の状態(例えば、直交偏光状態又は選択的空間チャネル状態)に対応し、その際、変換器100又は130は、光学量子情報信号のための周波数変換器として動作する。現在の光ファイバは一般的に1.3〜1.5マイクロメートル(ミクロン)範囲の波長を有する光子を伝送するために設計されており、波長を短くすると(例えば、650nm)、例えば単一の光子検出又は生成のために、さらに良好に利用可能な光学素子の利点を有するので、そのような周波数変換は特に有用である。
【0015】
図2は、光学量子状態変換器200の一例を示しており、入力量子状態|φ〉aの表現では、状態|0〉a及び|1〉aが角周波数ωaを有する光子の直交線形偏光状態|H〉a及び|V〉aであり、出力量子状態|φ〉cは、状態|φ〉aと同じ量子情報を伝達するが、物理的表現では、基底状態|0〉c及び|1〉cが角周波数ωcを有する光子の直交線形偏光状態|H〉c及び|V〉cである。図2の状態変換器200は、2つの制御位相ゲート210及び240、並びに2つのアダマールゲート220及び230を含む。図2の制御位相ゲート210及び240は、電磁誘導透過(electromagnetically induced tranparency:EIT)系を用いて具現化される。代案として、Knill他著「A Scheme for Efficient Quantum Computations with Linear Optics」(Nature, Vol. 409, page 46 (2001))によって記述されるような、条件付き線形光学部品類、又はAlexei Gilchrist、G. J. Milburn、W. J. Munro及びK. Nemoto著「Generating Optical Nonlinearity using Trapped Atoms」(quant-ph/0305167)において記述されるような、捕捉原子とともに巨大光学非線形性を用いるシステム等のデバイスを用いる、制御位相ゲートの他の具現化形態を用いることもできる。
【0016】
制御位相ゲート210は、入力光学部品類(例えば、偏光ビームスプリッタ212)を有し、その入力光学部品類によって、状態|1〉a及び|1〉cに対応する偏光状態が、周波数ωa及びωcの光子間の相互作用を引き起こすことができるエネルギー準位を有する物質系214の中に導かれる。特に、物質系214は、物質系214内における周波数ωaを有する状態|1〉aの光子及び角周波数ωcの光子の同時の組合せによって、−1(又はeiπ)だけ状態|1〉aの位相が変更されるようにする。
【0017】
状態|1〉aの位相に所望の変化を引き起こすための1つの態様は、図3に示されるエネルギー準位のエネルギー固有状態|1〉、|2〉、|3〉及び|4〉を有する原子又は分子を含む4準位物質系を使用する。物質系214では、状態|3〉は、保存則が状態|3〉と|1〉との間の単一光子遷移を禁止するという点で、準安定状態であることが好ましく、状態|4〉からの遷移を引き起こす自然放出は、例えば、周囲にあるフォトニックバンドギャップ結晶によって抑圧されることが好ましい。さらに、状態|1〉と|2〉、状態|2〉と|3〉、及び状態|3〉と|4〉との間のエネルギー差はそれぞれ、
に等しくなる。ただし、離調パラメータνa、νc及びνbは小さくてもよい。「Quantum Information Processing using Electromagnetically Induced Transparency」と題する米国特許出願第10/364,987号においてさらに説明されるように、図3のエネルギー準位を有する物質系、及び説明されたばかりの特性は、電磁誘導透過を示すことになり、角周波数ωa、ωb及びωcの光子に同時に曝露されるときに、入力状態の位相を変更するであろう。制御位相ゲート210は、周波数ωbの光子を与えるレーザ216を含む。離調パラメータνa、νb及びνc、並びに光子と相互作用する4準位原子又は分子の数のようなパラメータを適切に選択する場合、角周波数ωa及びωcの光子が同時に存在することにより、EITが引き起こされ、状態|1〉a|1〉cの位相に所望の変化が生じる。周波数ωa又はωcの光子が存在しないことに起因して、入力状態|0〉a|0〉c、|0〉a|1〉c又は|1〉a|0〉cの場合には、位相の変化は生じない。
【0018】
アダマールゲート220及び230は、分離した偏光状態を回転させる線形光学素子を用いて具現化され得る。偏光回転後に、ビーム結合光学部品類(例えば、偏光ビームスプリッタ218)が、分離した偏光成分を再結合する。制御位相ゲート240は、制御位相ゲート210と同じように具現化され、4準位物質系222を含む。レーザ224が波長ωbの光子を与え、物質系222が、aチャネル光子の|1〉a成分に所望の位相変化を与えることを可能にする。アダマールゲート220及び制御位相ゲート240の動作は、aチャネル及びcチャネル光子状態をエンタングルさせないので、所望のcチャネル状態|φ〉cを出力することが可能になる。
【0019】
本発明の別の態様によれば、代案として、テレポータシステムを用いて、状態変換を具現化することができる。図4Aは、第1の物理的表現を用いる光子状態|φ〉aから、第2の物理的表現を用いて同じ量子情報を表す光子状態|φ〉dに量子情報を転送する変換器400の一例を示す。変換器400は、測定系410と、古典的に切り替えられるNOTゲート420と、古典的に切り替えられるZゲート430とを含む。変換に関して、入力状態は、式5に示されるように、状態|φ〉aと、既知のベル状態、例えば(1/21/2)(|0〉c|0〉d+|1〉c|1〉d)との積である。一実施形態では、ベル状態は最大にエンタングルされた光子対であり、dチャネル内にある一方の光子は出力状態|φ〉dの符号化を有し、cチャネル内にある他方の光子は、測定系410において入力状態|φ〉aと相互作用する。
【0020】
【数4】
【0021】
例示された実施形態において、測定系410は、CNOTacゲート412と、アダマールゲート414と、aチャネル光子のための状態アナライザ416と、cチャネル光子のための状態アナライザ418とを含む。状態|φ〉aがCNOTacゲート412を制御し、そのゲートはcチャネル光子内の光子に作用を及ぼす。その後、アダマールゲート414が、状態|φ〉a、すなわちaチャネル光子に作用する。CNOTacゲート412及びアダマールゲート414の作用によって、式5の入力状態が式6に示される形に変換されるのを明らかにすることができる。
式6:
(1/2)[C0(|0〉a+|1〉a)(|0〉c|0〉d+|1〉c|1〉d)+C1(|0〉a−|1〉a)(|1〉c|0〉d+|0〉c|1〉d)]=
(1/2)[|0〉a|0〉c(C0|0〉d+C1|1〉d)+|0〉a|1〉c(C0|1〉d+C1|0〉d)+|1〉a|0〉c(C0|0〉d−C1|1〉d)+|1〉a|1〉c(C0|1〉d−C1|0〉d)]
【0022】
状態アナライザ416及び418はそれぞれ、aチャネル及びcチャネル内の光子を測定し、ひいては測定された光子が、状態|0〉a|0〉cにあるか、状態|0〉a|1〉cにあるか、状態|1〉a|0〉cにあるか、又は状態|1〉a|1〉cにあるかを判定する。それゆえ、その測定は、cチャネル光子が、状態C0|0〉c+C1|1〉c、状態C0|1〉c+C1|0〉c、状態C0|0〉c−C1|1〉c、又は状態C0|1〉c−C1|0〉cのいずれにあるかを特定する。状態アナライザ416及び418からの古典的な出力信号Ma及びMcが、古典的に切り替えられるNOTゲート420及び古典的に切り替えられるZゲート430を制御する。特に、aチャネル光子が状態|1〉aにあるとき、信号MaがアサートされてZゲート430をイネーブルにし、cチャネル光子が状態|1〉cにあるとき、信号McがアサートされてNOTゲート420をイネーブルにする。この結果、最終的な出力信号|φ〉dは、表1によって示されるように、C0|0〉d+C1|1〉dの形を有する。
【0023】
【表1】
【0024】
テレポーテーション現象は当該技術分野においてよく知られているが、本発明の一態様によれば、テレポーテーションを用いて、量子情報が1つの光子表現から別の光子表現に変換される。例えば、周波数を変換する場合、aチャネル光子が第1の角周波数ωaを有し、cチャネル光子が第2の角周波数ωdを有する。cチャネルは、CNOTゲート412においてaチャネル光子と相互作用することができる周波数ωcを有する光子を含むことができる。1つの特定の実施形態では、cチャネル光子及びdチャネル光子は同じ周波数ωcを有し(図4A)、aチャネル光子は異なる周波数ωaを有する。その際、CNOTゲート412は、図2及び図3に関して上述されたような4準位物質系におけるEITを用いて具現化され得る。
【0025】
図4Bは、量子情報を、偏光基底状態|H〉a及び|V〉aを用いる物理的表現から、フォック状態|0〉d及び|1〉dを用いる物理的表現に変換する、本発明の一実施形態による変換器402を示す。そのため、変換される入力キュービット状態は、C0|H〉+C1|V〉の形を有する。例示的な実施形態では、入力ベル状態はエンタングル状態であり、それはcチャネル又はdチャネル内に光子がない状態|0〉c|0〉dと、cチャネル及びdチャネルのそれぞれの中の1つの光子に対応する状態|1〉c|1〉dとの組合せである。cチャネルは図3の角周波数ωcを有する光子を使用し、aチャネルは図3の角周波数ωaを有する光子を使用する。したがって、CNOTゲート510は、4準位物質系に角周波数ωbの光子を照射するレーザを用いて具現化され得る。aチャネルは、状態|V〉に対応する偏光を物質系の中に導き、状態|H〉に対応する偏光を有する光子をその物質系の周囲に経路指定する偏光スプリッティング光学部品類を有する。基底状態としてフォック状態|0〉c及び|1〉cを用いる物理的表現を用いるcチャネルは偏光光学部品類を必要としない。dチャネルは、入力のエンタングルされた光子状態を生成することができる任意の角周波数ωdを用いることができる。
【0026】
より一般的には、量子テレポーテーションを用いる変換器を使用して、基底状態|0〉c及び|1〉cとエンタングルされ得る基底状態|0〉d及び|1〉dを、基底状態を有する任意の物理的表現に変換することができる。例えば、dチャネルにおいて符号化するための基底状態|0〉d及び|1〉dは、コヒーレント状態|α〉及び|−α〉とすることができる。コヒーレント状態|α〉及び|−α〉は、条件付き論理光学部品類及び線形光学部品類を利用する既知のコヒーレント状態量子コンピューティング技術を用いて、偏光固有状態|H〉c及び|V〉c、又は光子数固有状態とエンタングルされ得る。代案として、フォック状態とコヒーレント状態とのエンタングルメントは、式7において与えられる形式のハミルトニアンを有する系を用いて達成されることができる。ただし、D(α)は、状態|0〉からコヒーレント状態|α〉を生成する「変位」演算子である。この結果、そのハミルトニアンは、エンタングル状態|0〉c|0〉d+|0〉c|1〉dを、エンタングル状態|0〉c|α〉d+|1〉c|−α〉dに変換する。
式7:
H=D(α)|0〉c〈0|d+|0〉d〈0|cD*(α)+D(−α)|1〉c〈1|d+|1〉d〈1|cD*(−α)
【0027】
量子情報のフォック状態表現から量子情報のコヒーレント状態表現への変換は、キュービットのような離散した量子情報を、連続した量子情報の表現に適した表現(すなわち、キューナット)に変換する場合に特に有用である。図5Aは、本発明の一実施形態による変換器500を示しており、キュービットを、デュアルレールフォック状態を用いる表現から、キューナットに適したコヒーレント状態を用いる表現に変換する。したがって、変換器500は、キュービットを、対応するキューナットに変換することができる。
【0028】
変換器500の例示された実施形態では、入力状態|φ〉INが式8において与えられる形式を有する。ただし、状態|0〉IN及び|1〉INはキュービットの入力表現の基底状態である。状態|0〉A及び|1〉Aは第1の空間チャネル又はレールAにおける0光子及び1光子にそれぞれ対応するフォック状態であり、|0〉B及び|1〉Bは、第2の空間チャネル又はレールBにおける0光子及び1光子にそれぞれ対応するフォック状態である。係数C0及びC1は、一般的には複素数であり、入力キュービットが伝達する量子情報である。コヒーレント状態|α〉が第3の空間チャネルに入力される場合、変換器500の点X0における全入力状態は式9において与えられる。
【0029】
【数5】
【0030】
変換器500は、制御位相ゲート510と、50−50ビームスプリッタ520と、光子検出器530及び535と、出力状態補正素子540及び545とを含む。Bレール光子状態は制御位相ゲート510を制御し、そのゲートは入力コヒーレント状態|α〉に作用を及ぼす。図5Aに示されるような制御位相ゲート510は、Bレール状態及びコヒーレント状態|α〉における光子のエネルギーにそれぞれ対応する個々のエネルギー準位遷移を有するEIT物質系を用いて具現化され得るが、代案として、制御位相ゲートの他の具現化形態も利用することができる。光子がBレール内に存在するときだけ、制御位相ゲート510がコヒーレント状態|α〉に作用を及ぼす結果として、制御位相ゲート510後の点X1における全光子状態が式10において与えられる。ただし、χは、制御位相ゲート510が引き起こす位相の変化である。
【0031】
【数6】
【0032】
50−50ビームスプリッタ520は、Aレール状態及びBレール状態を混合して、出力チャネル又はレールC及びDを通じて光子を出力する。ビームスプリッタ520の後に結果として生じる状態は、レールC内の0光子及び1光子にそれぞれ対応するフォック状態である状態|0〉C及び|1〉C、並びにレールD内の0光子及び1光子にそれぞれ対応するフォック状態である状態|0〉D及び|1〉Dを用いて表すことができる。式11は、50−50ビームスプリッタ520の動作の後である、状態を点X1から点X2に変換した後の光子状態を示す。式11の項の相対位相は、50−50ビームスプリッタ520が非対称であるときに得られる相対位相である。対称な50−50ビームスプリッタのような他のタイプのビームスプリッタも同様の結果を与えることになるが、以下に説明される特定の例とは異なる位相補正を必要とする場合もある。
【0033】
【数7】
【0034】
光子検出器530及び535は、入力状態からの光子がCチャネルにあるか、又はDチャネルにあるかを判定する。この目的に適した効率的な単一光子検出器が、例えば、W.J. Munro、R.G. Beausoleil及びT.P. Spiller著「A High Efficiency Quantum Non-demolition Single Photon Number Resolving Detector」(Quant-PH/0310066)において説明される。測定の結果として、Cレールにおいて1つの光子が測定されたが、Dレールにおいて測定されない場合には、その状態は(−C0|α〉+C1|eiχα〉)に崩壊し、Dレールにおいて1つの光子が測定されたが、Cレールにおいて測定されない場合には、(C0|α〉+C1|eiχα〉)に崩壊する。
【0035】
出力状態|φ〉OUTの所望の形式は(C0|α〉+C1|eiχα〉)である。ただし、状態|α〉及び|eiχα〉は、例えば、χがπに等しいときには|α〉及び|−α〉であり、キューナット表現の中のキュービット値に対する基底状態|0〉OUT及び|1〉OUTである。状態補正素子540は、検出器530がCレール内で光子を検出するときにイネーブルにされる古典的に制御されるZゲートである。コヒーレント状態ためのZゲートは、T.C. Ralph、A. Gilchrist、G.J. Milburn、W.J. Munro及びS. Glancy著「Quantum Computation with Optical Coherent States」(Phys. Rev. A 68, 042319 (2003))、又はT.C. Ralph、G.J. Milburn及びW.J. Munro著「Quantum Computation with Coherent State, Linear Interaction and Superposed Resources」(Quant-PH/0110115)において提示される技術を用いて具現化され得る。Dレールにおいて1つの光子が測定される場合、崩壊した状態は所望の形式を有し、Zゲートは何もしない。状態(−C0|α〉+C1|eiχα〉)がCレール内の光子の検出から生じる場合、Zゲート540は相対位相を補正し、最終的な出力状態|φ〉OUTは再び所望の状態(C0|α〉+C1|eiχα〉)になる。必要に応じて、さらなる補正光学部品類545を用いることもできる。
【0036】
図5Bは、量子情報をデュアルレールフォック状態表現からコヒーレント光子状態を用いる表現に変換するための、本発明の別の実施形態による検出器502を示す。検出器502の全入力状態は、入力状態|φ〉INと、2つのコヒーレント状態|α1〉1及び|α2〉2との積である。式12に示されるように、入力状態|φ〉INは、上述のデュアルレール表現を用いてキュービットを表し、検出器502内の点X1における全入力状態は、式12において与えられる形式を有する。
【0037】
【数8】
【0038】
Aレール上の光子状態は制御位相ゲート515を制御し、そのゲート515はコヒーレント状態|α1〉1に作用を及ぼし、Bレール上の光子状態は制御位相ゲート510を制御し、そのゲート510はコヒーレント状態|α2〉2に作用を及ぼす。図5Bにおいて示されるように、制御位相ゲート510及び515はEIT物質系を用いて具現化され得るが、代案として、制御位相ゲートの他の具現化形態も利用することができる。Aレール又はBレール内に光子が選択的に存在する場合に、制御位相ゲート510及び515がコヒーレント状態|α2〉2及び|α1〉1に作用を及ぼす結果として、図5Bの点X1における全光子状態は式13において与えられる。ただし、χ1及びχ2は、制御位相ゲート510及び515がそれぞれ引き起こす位相の変化である。
【0039】
【数9】
【0040】
50−50ビームスプリッタ520は、Aレール状態及びBレール状態を混合して、Cレール及びDレールを通じて光子を出力する。50−50ビームスプリッタ520の後の全光子状態は、レールC上の0光子及び1光子にそれぞれ対応するフォック状態である状態|0〉C及び|1〉C、並びにレールD上の0光子及び1光子にそれぞれ対応するフォック状態である状態|0〉D及び|1〉Dを用いて表すことができる。式14は、50−50ビームスプリッタ520の動作の後である、全光子状態の点X1から点X2への遷移を示す。
【0041】
【数10】
【0042】
検出器530及び535は、Cレール状態及びDレール状態を測定し、そのコヒーレント状態チャネルが、
であるかを判定する。状態補正素子540及び545が、崩壊した状態にある選択された項の位相を補正し、エンタングルされたコヒーレント状態を用いて元の量子情報の表現を与えることができる。より詳細には、補正素子540は無条件補正を実行することができ、図5A及び図5Bの例示された実施形態では不要であるが、他の実施形態においては好都合な場合もある。例えば、非対称ビームスプリッタの代わりに対称ビームスプリッタを用いる一実施形態は、補正素子540を用いて、両方の崩壊した状態を補正することができる。補正545は、その測定によって特定される崩壊した状態に従って条件付き補正を実行する。
【0043】
図5A及び図5Bの変換器500及び502は、少なくとも1つの既知のコヒーレント状態を入力し、量子情報を、基底状態としてコヒーレント状態を用いる表現に転送する。その同じ構造は、同様に、スクイーズド状態のような他のタイプの光子状態を用いる表現に変換することもできる。そのような変換に関して、用いられる既知の状態|S1〉のタイプは、制御位相ゲート510又は515の動作によって、既知の入力状態|S1〉が既知の入力状態に少なくとも近似的に直交しているCNOT出力状態|S2〉に変換されるようなタイプでなければならない。より具体的には、重ね合わせ|〈S2|S1〉|2は近似的に0であり、既知の入力状態|S1〉及びCNOT出力状態|S2〉が、出力表現のための基底状態として用いるのに適しているようにする。一般的には、コヒーレント状態|α〉及び|eiχα〉は、αが大きい場合に、χの値が相対的に小さい場合であっても、この条件を満たす。
【0044】
本発明のさらに別の実施形態では、状態変換器は、量子情報の1つの表現のための基底状態を別の量子情報の基底状態に直に変換する発展演算子を与える光学システムを構成することによって具現化される。式15は、例えば、形式C0|0〉a+C1|1〉aの入力状態|φ〉aを形式C0|0〉b+C1|1〉bの出力状態|φ〉bに変換する発展演算子に対応するハミルトニアン演算子Hを示す。式15では、結合定数θが、相互作用の強さを、それゆえ状態変換プロセスの速さを決定する。
【0045】
【数11】
【0046】
ハミルトニアン演算子H、及び所望の発展を与える相互作用時間δtを有する物理系は、aチャネル内の状態とcチャネル内の状態との間に相互作用を与える一次デバイス、二次デバイス及びさらに高次の非線形デバイスの組み合わせから構成され得る。S. Lloyd及びS. L. Braunstein著「Quantum Computing over Continuous Variables」(P. R. L. 82, 1784 (1999))は、スクイージング及び変位を伴う非線形デバイスを用いて任意のハミルトニアンを生成するための一般的な技術を説明する。この技術は、光子状態|φ〉に適用されるときに、別個のハミルトニアンH1、H2、...、HNを有する一連の光学素子を利用する。その光学素子によって、状態|φ〉は、式16に示されるように発展する。ただし、δtは光学素子毎の相互作用時間であり、HEFFは有効結合ハミルトニアンである。第2のハミルトニアン対−A及び−BとともにハミルトニアンA及びBを有する第1の光学素子対を用いるシステム又はサブシステムは、式17に示されるように、交換子[A,B]に関連する有効ハミルトニアンを与える。X又はPのような線形演算子を有する(X2+P2)2のような非線形多項式演算子の交換子は一般的に、より高次の多項式演算子である(例えば、[(X2+P2),X]はi(X2P+PX2+2P3)/2に等しい)。この原理を用いる際、1つのタイプの光学素子が、より高次の非線形ハミルトニアン演算子を有する場合に、一次ハミルトニアン演算子及び二次ハミルトニアン演算子を有する光学素子の適切な組み合わせを用いて、任意の多項式ハミルトニアン演算子を構成することができる。
【0047】
【数12】
【0048】
式15の所望のハミルトニアンHを与えるために用いられる特定の素子は、入力及び出力の物理的表現の基底状態に依存する。光場の場合には一般的に、一次素子及び二次素子は、ディスプレーサ、位相シフタ、ビームスプリッタ及びスクイーザを含む。より高次の二次素子は、EIT系において生成されるようなカー非線形性を用いて具現化され得る。
【0049】
図6Aは、本発明の一実施形態を示しており、光学システム600として、ビームスプリッタ610及び630と、非線形素子620及び640とを用いて、変換器に適したハミルトニアンを具現化する。システム600の入力状態は、量子情報、すなわち係数C0及びC1を伝達する状態C0|0〉a+C1|1〉aと、既知の状態|1〉bとの積である。情報を伝達する状態C0|0〉a+C1|1〉aの表現では、基底状態|0〉a及び|1〉aが、aチャネル内に0光子及び1光子をそれぞれ含むフォック状態である。既知の状態|1〉bは、bチャネル内の1光子に対応するフォック状態である。
【0050】
aチャネル及びbチャネルを混合するビームスプリッタ610及び630は、それぞれハミルトニアン演算子A及び−Aを有する。ただし、演算子Aは式18において与えられる。1つの特定の実施形態では、ビームスプリッタ610及び630は実質的に同じであるが、光がビームスプリッタ630を横切る方向と反対の方向に、光がビームスプリッタ620を横切るように方向付けされる。EIT系又はbチャネルにおいてカー非線形性を与える任意の別の素子とすることができる非線形素子620及び640はそれぞれ、ハミルトニアン演算子B及び−Bを有する。ただし、演算子Bは式19において与えられる。この結果、システム600の有効ハミルトニアンは式20において与えられる。式18、式19及び式20において、演算子
はそれぞれ、aチャネルのための生成演算子及び消滅演算子であり、演算子
はそれぞれ、bチャネルのための生成演算子及び消滅演算子である。
【0051】
【数13】
【0052】
図6Bは、ビームスプリッタ610及び630並びに非線形素子620及び640を異なる順序で用いて、式20のハミルトニアンを達成する、本発明の代替の実施形態を示す。具体的には、ビームスプリッタ610及び630は、図6Aに示されるように、それぞれの非線形素子620及び640の前に置くことができるか、又は図6Bに示されるように、それぞれの非線形素子620及び640の後に置くことができる。
【0053】
各素子610、620、630及び640は同じ相互作用時間tを有し、入力状態の発展が式21に示されるようになることが好ましい。式22は、真空状態において作用を及ぼす消滅演算子
が0であることから生じる、式21の簡略形である。結合θ及びχ並びに相互作用時間tは、式22内の定数k1及びk2の値を制御し、k1が0であり、大きさ|k2|が1であるように調整され得る。k1が0に等しい場合、出力状態は因数分解することができ、bチャネルにおいて状態|φ〉bを含み、状態|φ〉bは量子情報(C0及びC1)を1つの物理的表現において表す。ただし、基底状態|1〉b及び|2〉bは、bチャネル内の1光子及び2光子にそれぞれ対応するフォック状態である。
【0054】
【数14】
【0055】
上述のように、本発明の特定の実施形態による状態変換器は、量子情報のために1つの物理的表現を用いる光子状態から、その量子情報のために別の物理的表現を用いる光子状態への全般的な変換を実行することができる。全般的な変換は、物理的符号化の変換を含むことができ、この場合、図7に示されるように、量子値を区別する光子数、偏光、時間ビン、又は軌道角運動量のような光子状態の特性は、異なる物理的特性が量子値を区別する別の物理的符号化に変換される。付加的な、又は別の変換は、基礎をなす光子状態の初期の物理的タイプ、例えば特定の周波数の光子の状態を、異なるタイプの光子状態、例えば異なる周波数の光子の状態に転送することができ、同時に、異なる量子値を区別するために用いられる物理的符号化、例えば光子数、偏光、空間チャネル、時間ビン、又は軌道角運動量を変更又は保持することができる。
【0056】
本発明は特定の実施形態に関連して説明されたが、この説明は本発明の応用形態の一例にすぎず、限定するものと解釈されるべきではない。開示された実施形態の特徴の様々な改変及び組み合わせが、添付の特許請求の範囲によって規定されるような本発明の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1A】1つのキュービットを1つの光子表現から別の光子表現に変換するためにCNOTゲートを用いる、本発明の一実施形態による状態変換器のブロック図である。
【図1B】1つのキュービットを1つの光子表現から別の光子表現に変換するために位相ゲート及びアダマール変換を用いる、本発明の一実施形態による状態変換器のブロック図である。
【図2】電磁誘導透過(EIT)を用いて、量子情報を第1の周波数を有する光子から第2の周波数を有する光子に転送する、本発明の一実施形態による状態変換器のブロック図である。
【図3】図2の状態変換器におけるEIT系に適した物質系のエネルギー準位図である。
【図4A】量子情報を1つの光子表現から別の光子表現に変換するためにテレポーテーションを用いる、本発明の一実施形態による状態変換器のブロック図である。
【図4B】量子情報を1つの光子表現から別の光子表現に変換するためにテレポーテーションを用いる、本発明の一実施形態による状態変換器のブロック図である。
【図5A】デュアルレールフォック状態を用いて表されるキュービットを、コヒーレント光子状態を用いて表されるキューナットに変換する、本発明の一実施形態による変換器を示す図である。
【図5B】デュアルレールフォック状態を用いて表されるキュービットを、コヒーレント光子状態を用いて表されるキューナットに変換する、本発明の一実施形態による変換器を示す図である。
【図6A】光学システムが、量子情報を1つの物理的表現から別の物理的表現に変換する有効ハミルトニアンを有する、本発明の一実施形態を示す図である。
【図6B】光学システムが、量子情報を1つの物理的表現から別の物理的表現に変換する有効ハミルトニアンを有する、本発明の一実施形態を示す図である。
【図7】量子情報のための物理的な符号化のいくつかの変換を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子情報のために第1の物理的表現を用いる入力光子状態のためのチャネルと、
前記入力光子状態と相互作用し、前記量子情報のために第2の物理的表現を用いる出力光子状態を生成する光相互作用システム(100)とを含む、システム。
【請求項2】
前記第1の物理的表現が、第1の特性を用いて前記量子情報を符号化し、
前記第2の物理的表現が、第2の特性を用いて前記量子情報を符号化し、前記第2の特性が前記第1の特性とは異なり、
前記第1の特性及び前記第2の特性がそれぞれ、偏光、光子数、時間ビン、及び角運動量から成るグループから選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記入力光子状態が第1の周波数を有する光子に対応し、前記出力光子状態が、前記第1の周波数とは異なる第2の周波数を有する光子に対応する、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記光相互作用システムが、スワップゲート(100)又はテレポータ(400)を含む、請求項1ないし3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記光相互作用システムが、
既知の光子状態が入力される第1の制御位相ゲート(114)であって、前記入力光子状態が前記既知の光子状態に対する前記第1の制御位相ゲート(114)の作用を制御する、第1の制御位相ゲートと、
前記入力光子状態に作用を及ぼす第1のアダマールゲート(122)と、
前記第1の制御位相ゲート(114)が前記既知の光子状態に作用を及ぼすことから生じる状態に作用を及ぼす第2のアダマールゲート(116)と、
第2の制御位相ゲート(124)であって、前記第2のアダマールゲート(116)から出力される光子状態が、前記第1のアダマールゲート(122)から出力される状態に対する前記第2の制御位相ゲート(124)の作用を制御する、第2の制御位相ゲートとを備える、請求項1ないし3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記光相互作用システム(600)が、前記第1の物理的表現の基底状態を前記第2の物理的表現の基底状態に発展させるハミルトニアン演算子を与える、請求項1ないし3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1の物理的表現は、1つの光子が第1のチャネル内にあることに対応する第1の基底状態と、前記光子が第2のチャネル内にあることに対応する第2の基底状態とを使用し、
前記光相互作用システムが、
第1の既知の光子状態が入力される第1の制御位相ゲート(510)であって、前記第1のチャネルの状態が、前記第1の既知の光子状態に対する前記第1の制御位相ゲート(510)の作用を制御する、第1の制御位相ゲートと、
前記第1のチャネル及び前記第2のチャネルから光子を受け取るように配置されたビームスプリッタ(520)であって、前記第1のチャネル及び前記第2のチャネル上の光子状態を混合し、第3のチャネル及び第4のチャネル上に光子状態を与える、ビームスプリッタ(520)と、
前記第1の物理的表現の前記第1の基底状態及び前記第2の基底状態に関連する前記光子が、前記第3のチャネル内にあるか、又は前記第4のチャネル内にあるかを測定する検出器システム(530)と、
前記検出器システム(530)の制御下にある補正システム(540)であって、前記光子が前記第3のチャネル内にあるか、又は前記第4のチャネル内にあるかに応じて、前記第1の制御位相ゲート(510)から出力される状態を変更する、補正システム(540)とを含む、請求項1ないし3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
量子情報の第1の光子表現を用いる入力状態を、第2の光子表現における既知の状態と相互作用させ、
前記相互作用から生じる出力状態を用いて、前記第2の光子表現において前記量子情報を表すことを含む、方法。
【請求項9】
前記第1の光子表現が第1の周波数を有する光子を利用し、前記第2の光子表現が、前記第1の周波数とは異なる第2の周波数を有する光子を利用する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の光子表現が、第1の特性を用いて前記量子情報を符号化し、
前記第2の光子表現が、第2の特性を用いて前記量子情報を符号化し、前記第2の特性が前記第1の特性とは異なり、
前記第1の特性及び前記第2の特性がそれぞれ、偏光、光子数、時間ビン、及び角運動量から成るグループから選択される、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項1】
量子情報のために第1の物理的表現を用いる入力光子状態のためのチャネルと、
前記入力光子状態と相互作用し、前記量子情報のために第2の物理的表現を用いる出力光子状態を生成する光相互作用システム(100)とを含む、システム。
【請求項2】
前記第1の物理的表現が、第1の特性を用いて前記量子情報を符号化し、
前記第2の物理的表現が、第2の特性を用いて前記量子情報を符号化し、前記第2の特性が前記第1の特性とは異なり、
前記第1の特性及び前記第2の特性がそれぞれ、偏光、光子数、時間ビン、及び角運動量から成るグループから選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記入力光子状態が第1の周波数を有する光子に対応し、前記出力光子状態が、前記第1の周波数とは異なる第2の周波数を有する光子に対応する、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記光相互作用システムが、スワップゲート(100)又はテレポータ(400)を含む、請求項1ないし3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記光相互作用システムが、
既知の光子状態が入力される第1の制御位相ゲート(114)であって、前記入力光子状態が前記既知の光子状態に対する前記第1の制御位相ゲート(114)の作用を制御する、第1の制御位相ゲートと、
前記入力光子状態に作用を及ぼす第1のアダマールゲート(122)と、
前記第1の制御位相ゲート(114)が前記既知の光子状態に作用を及ぼすことから生じる状態に作用を及ぼす第2のアダマールゲート(116)と、
第2の制御位相ゲート(124)であって、前記第2のアダマールゲート(116)から出力される光子状態が、前記第1のアダマールゲート(122)から出力される状態に対する前記第2の制御位相ゲート(124)の作用を制御する、第2の制御位相ゲートとを備える、請求項1ないし3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記光相互作用システム(600)が、前記第1の物理的表現の基底状態を前記第2の物理的表現の基底状態に発展させるハミルトニアン演算子を与える、請求項1ないし3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1の物理的表現は、1つの光子が第1のチャネル内にあることに対応する第1の基底状態と、前記光子が第2のチャネル内にあることに対応する第2の基底状態とを使用し、
前記光相互作用システムが、
第1の既知の光子状態が入力される第1の制御位相ゲート(510)であって、前記第1のチャネルの状態が、前記第1の既知の光子状態に対する前記第1の制御位相ゲート(510)の作用を制御する、第1の制御位相ゲートと、
前記第1のチャネル及び前記第2のチャネルから光子を受け取るように配置されたビームスプリッタ(520)であって、前記第1のチャネル及び前記第2のチャネル上の光子状態を混合し、第3のチャネル及び第4のチャネル上に光子状態を与える、ビームスプリッタ(520)と、
前記第1の物理的表現の前記第1の基底状態及び前記第2の基底状態に関連する前記光子が、前記第3のチャネル内にあるか、又は前記第4のチャネル内にあるかを測定する検出器システム(530)と、
前記検出器システム(530)の制御下にある補正システム(540)であって、前記光子が前記第3のチャネル内にあるか、又は前記第4のチャネル内にあるかに応じて、前記第1の制御位相ゲート(510)から出力される状態を変更する、補正システム(540)とを含む、請求項1ないし3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
量子情報の第1の光子表現を用いる入力状態を、第2の光子表現における既知の状態と相互作用させ、
前記相互作用から生じる出力状態を用いて、前記第2の光子表現において前記量子情報を表すことを含む、方法。
【請求項9】
前記第1の光子表現が第1の周波数を有する光子を利用し、前記第2の光子表現が、前記第1の周波数とは異なる第2の周波数を有する光子を利用する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の光子表現が、第1の特性を用いて前記量子情報を符号化し、
前記第2の光子表現が、第2の特性を用いて前記量子情報を符号化し、前記第2の特性が前記第1の特性とは異なり、
前記第1の特性及び前記第2の特性がそれぞれ、偏光、光子数、時間ビン、及び角運動量から成るグループから選択される、請求項8又は9に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【公表番号】特表2007−535711(P2007−535711A)
【公表日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−510997(P2007−510997)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/014758
【国際公開番号】WO2005/109333
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(503003854)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (1,145)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/014758
【国際公開番号】WO2005/109333
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(503003854)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (1,145)
【Fターム(参考)】
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