説明

量子鍵配送のための光送信機および光受信機

量子鍵配送システムのための光受信機(100)が、基板(122)内に搭載または形成され、かつ基板内に形成された1つ以上の中空コア導波路(105、123)により光学的に結合される複数の光学構成要素(103、104、106、108、110、112、114、116、118)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に量子暗号(QC)の分野に関し、詳細には量子鍵配送(QKD)のための光送信機および光受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえばBB84プロトコル(「Quantum cryptography:public key distribution and coin tossing」、C.H.BennettおよびG.Brassard、Proc.IEEE International Conference on Computers、Systems and Signal Processing、Bangalore、pp175−179、1984年を参照のこと)に基づく光QCシステムでは、一般的光受信機は、それぞれが、1対の直交偏光状態のうちの一方に偏光した光子を検出し、かつ光子の偏光状態を識別することができる2つの受信機チャネルを組み込む。2対の偏光状態(各チャネルと関連づけられた偏光状態)は通常、相互に45°傾けられている。鍵を画定する際、受信される光子を2つの受信機チャネルのうちの一方または他方にランダムに割り当てるための初期ステップがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許第0563065号明細書
【特許文献2】欧州特許第0563068号明細書
【特許文献3】欧州特許第0563084号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種類の光受信機は、光学構成要素を手作業により自由空間内で非常に正確にアライメントさせることが必要であり、したがって、製造するのに時間がかかり、かつ費用がかかる。そのような受信機の構築には、必要なアライメント許容範囲を達成するために、一般に光学機械式マウントの使用を伴う、または光学構成要素を注意深く接着することを伴う。したがって、そのような受信機の製造は、現在1人につき1時間当たり数ユニットに制約され、受信機が機械的堅牢さを欠くために、受信機が実用に適さなくなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、一態様では、量子鍵配送システムのための光受信機を提供し、光受信機は、基板内に搭載または形成され、かつ基板内に形成された1つ以上の中空コア導波路(hollow core waveguide)により光学的に結合された複数の光学構成要素を含む。
【0006】
個々の光学構成要素が基板により支持されるので、本発明の受信機は物理的に強い。光学構成要素は、基板内に形成された中空コア導波路により一緒に光学的に結合される。さらに、基板を使用することにより、光学構成要素が、光学機械式マウントを使用してできるよりも、または光学構成要素が手動でアライメントされ、次に所定の位置に接着されるシステムよりも、はるかにコンパクトな構成で搭載されることができるようになる。これには、個々の光学構成要素に必要とされるアライメント許容範囲を低減するという重要な効果があり、その結果、製造許容範囲が低減されることがあり、生産性およびユニット費用をさらに改善することができるようになる。したがって、本発明は、大量生産の余地があり、機械的に強く、コンパクトで、比較的費用のかからない、量子鍵配送のための光受信機を提供できる。
【0007】
光学構成要素は、アライメントスロット内に保持されることができ、アライメントスロットは、基板内に形成され、前記中空コア導波路のうちの1つを横切り、アライメントスロット内に保持される光学構成要素のアライメントをその中空コア導波路に対して画定する。これにより、たとえば機械加工といった同じ工程により形成される中空コア導波路およびアライメントスロットが提供される。受信機のすべての光学構成要素が、そのようなスロット内に保持されることができ、その結果、受信機の全体配置が、単一の機械工程により作成可能である。次に、受信機の光学構成要素は、手動、または自動化されたピックアンドプレース法により個々のスロットの中に挿入され、同時にアライメントされることができる。光学構成要素が基板内に配置された後に、光学構成要素をアライメントさせる追加のステップは必要ない。光学構成要素のすべてまたは一部が基板内に形成された(すなわち、基板と一体化された)場合、光学構成要素のアライメントが、基板の組立てと同時に達成される。
【0008】
光受信機は、第1の受信機チャネルおよび第2の受信機チャネルを有することができ、各受信機チャネルは、個々の対の直交偏光状態のうちの一方に偏光した光子を検出し、かつその光子の偏光状態を識別するように構成され、偏光状態の個々の対は相互に傾けられている。これにより、たとえばBB84プロトコルに基づくQCおよびQKDでの使用に適した光受信機が提供される。
【0009】
光受信機は、入力光子を受信機チャネルのうちの一方にランダムに向ける手段を組み込むことが好ましい。前記手段は、たとえば、自由空間ビームスプリッタ、または光ファイバ3dB結合器を含むことができるが、前記手段が、光受信機の別の部分と一体化されることがより好ましい。たとえば、前記手段は、基板内に搭載された、または基板と一体化して形成された、適切に設計されたマルチモード干渉(MMI)スプリッタを含むことができる。マルチモード光導波路内の様々な横モードの分散、および様々な横モード間の干渉、ならびに低損失光スプリッタ、再結合器、ルータ、変調器などを提供するためにこれらの効果を利用することが、たとえば欧州特許第0563065号明細書、第0563068号明細書、および第0563084号明細書で説明されている。あるいは、前記手段は、ビームスプリッタと、入力光子を受信し、入力光子をビームスプリッタに導くための入力導波路とを含むことができ、ビームスプリッタの各出力は、個々の接続導波路により個々の受信機チャネルに光学的に結合され、入力導波路および接続導波路は、基板内に形成された中空コア導波路である。ビームスプリッタは、基板内に形成されたアライメントスロット内に保持されることができ、アライメントスロットは、その中に保持されるビームスプリッタのアライメントを入力導波路および接続導波路に対して画定する。
【0010】
光受信機で受信された光子の偏光状態への外乱を補正するために、光受信機は、別個の構成要素デバイスである、またはその代わりに入力ガイドの一部を構成する、または入力ガイドと一体化された、偏光変調器を含むことができる。受信された光子は、たとえば1つ以上の光ファイバを介して受信された、乱された偏光状態を有することがあり得る。
【0011】
第1の受信機チャネルは、第1の偏光ビームスプリッタ(polarising beam splitter)と、2つの単一光子検出器とを含むことができ、偏光ビームスプリッタ(PBS)には、それぞれが、基板内に形成された個々の中空コア導波路により個々の単一光子検出器に光学的に結合される2つの出力がある。PBSの光軸のうちの一方に平行に偏光された光子が、対応する単一光子検出器に100%の確率(吸収損失および散乱損失などを無視する)で渡される。軸に対し45°に偏光した光子には、どちらか一方の単一光子検出器に渡される確率が50%ある。
【0012】
この場合、第2の受信機チャネルは、第2の偏光ビームスプリッタと、2つの単一光子検出器とを含むことができ、第2の偏光ビームスプリッタには、それぞれが、基板内に形成された個々の中空コア導波路により個々の単一光子検出器に光学的に結合される2つの出力があり、第2の受信機チャネルは、基板内に形成された中空コア導波路により第2の偏光ビームスプリッタの入力に光学的に結合された半波長板をさらに含み、第1の偏光ビームスプリッタおよび第2の偏光ビームスプリッタには、実質的に平行な光軸があり、半波長板の光軸は、第2の偏光ビームスプリッタの光軸に対して実質的に22.5°傾けられている。受信機チャネルのこの構成では、2対の直交偏光状態は、相互に45°傾けられている。
【0013】
中空コア導波路は、それらの中に導かれた光子の偏光状態を保存するように構成されることが好ましい。これを達成する便利な方法が、実質的に正方形の断面を有する中空コア導波路を形成することである。
【0014】
本発明の光受信機は、自由空間システムの一部として使用されることができる。あるいは、本発明の光受信機は、光子が、光ファイバ、または光ファイバネットワークを介して受信機に渡されるシステムで使用されることができ、この場合、光受信機には、光ファイバを収容するように適合された入力が提供されることが好ましい。
【0015】
本発明は、第2の態様では、量子鍵配送のための光送信機を提供し、光送信機は、基板内に搭載または形成され、基板内に形成された1つ以上の中空コア導波路により光学的に結合される複数の光学構成要素を含む。本発明の光受信機と同様に、本発明の光送信機が、単一工程で組み立てられ、かつアライメントされることができ、したがって、費用効率の高い大量生産の余地がある。光学構成要素は、中空コア導波路によりリンクされるので、本発明の光送信機が、非常にコンパクトな形で実現されることができ、これにはまた、光学構成要素に求められるアライメント許容範囲を低減するという有利な点がある。前記光学構成要素のうちの少なくとも1つが、アライメントスロット内に保持される搭載された構成要素であり得、アライメントスロットは、基板内に形成され、前記中空コア導波路のうちの1つを横切り、アライメントスロット内に保持される光学構成要素のアライメントをその中空コア導波路に対して画定する。
【0016】
光送信機は、送信される光子の偏光状態により符号化された量子鍵を送信する必要がある場合、光源(たとえば半導体レーザ)と、偏光変調器とを含み、光源、および偏光変調器は、基板内に搭載または形成され、1つ以上の中空コア導波路を介して一緒に光学的に結合される。光源、および/または偏光変調器は、基板内に形成されたアライメントスロット内に搭載された個別構成要素であってもよく、基板自体と一体化、すなわち、基板材料に形成されてもよい。
【0017】
基板内に形成された中空コア導波路はまた、偏光変調器から送信機の出力までのガイド出力に存在し得る。
【0018】
QKDは、単一光子の送信を伴うので、本発明の光送信機は、動作中のときに、光送信機の出力レベルがモニタされることができ、光源が適切に調整され得るように、光送信機内を伝播する光エネルギーの一部を取り出すための何らかの手段を含むことが好ましい。たとえばそのような手段が、中空コア導波路と共に形成されたY型結合器(Y−coupler)であり得る。好ましくはそのような手段は、基板内に形成または搭載され、かつ光源に光学的に結合された入力、および基板内に形成された個々の中空コア導波路により偏光変調器に結合された出力を有するマルチモード干渉(MMI)スプリッタ(対称または非対称)を含む。MMIスプリッタは、基板内部に一体化して形成され、中空コア入力、中空コア出力、およびマルチモード導波路を有することが好ましい。対称MMIスプリッタおよび非対称MMIスプリッタは、たとえば欧州特許第0563065号明細書、第0563068号明細書、および第0563084号明細書に詳細に説明されている。あるいは、MMIスプリッタ(または同等の装置)は、偏光変調器の出力に光学的に結合された入力、および基板内に形成された個々の中空コア導波路により光送信機の出力に結合された出力を有するように配置されることができる。
【0019】
本発明の光送信機は、基板内に形成または搭載され、光送信機の出力強度を制御するように構成される強度変調器を含むことができる。これは、パルスモードで光送信機を動作させ、かつパルス当たりの光子の数を変化させることが望まれる場合に有用である。強度変調器は、MMIスプリッタおよびMMI再結合器と、干渉計の2つのアーム内の放射の相対位相を変調する手段とを含むマッハツェンダ干渉計デバイスでもよい。
【0020】
中空コア導波路は、その内部に導かれる光子の偏光状態を保存するように構成されることが好ましい。これを達成する便利な方法は、実質的に正方形の断面を有する中空コア導波路を形成することである。
【0021】
本発明の光送信機は、量子鍵が光ファイバ、または光ファイバネットワークを介して送信される場合に光ファイバを収容するように適合される出力を含むことができる。
【0022】
本発明の光受信機または光送信機の基板は、シリコンなどの半導体材料を含むことができる。たとえば、基板は、SOIウェーハを含むことができる。好都合なことに、基板は、その中に形成された1つ以上のチャネルを有する基底部、および前記1つ以上の中空コア導波路を形成するように基底部に取り付けられる蓋部分を含む。
【0023】
光受信機/光送信機が、搭載された光学構成要素を含む場合、これらの光学構成要素のうちの1つ以上が、蓋部分に取り付けられることができ、その結果、蓋部分および基底部が接合されたときに、これらの光学構成要素が、中空コア導波路の完成と共に、基底部内の対応するアライメントスロット内に配置される。
【0024】
1つ以上の中空コア導波路の内面は、たとえば金、銀、または銅などの金属被覆といった反射被覆を有し得る。金の屈折率は、500nmから2.2μmの範囲の波長で空気よりも小さく、この範囲は、電気通信範囲1.4μmから1.6μmを包含する。銅および銀は、それぞれ560nmから2,200nmの範囲、および320nmから2,480nmの範囲にわたり1未満の屈折率を有する。
【0025】
あるいは、反射被覆は、全誘電体または金属誘電体のスタックとすることができ、誘電体層の光学的厚さが、被覆の反射特性を決定する干渉効果を決定する。
【0026】
QKD、および一般にQCは、単一光子の生成および受信を伴う。中空コア導波路が(たとえば)基本モードだけをサポートする場合、導波路の中に発射された単一光子は、その導波路内の基本モードの古典的横強度分布に対応する、導波路を横断する様々な横位置に配置される確率を有し、本明細書での「導波路」という用語は、それ相当に解釈されるべきである。本発明の光受信機および光送信機の内部の中空コア導波路は、この種の導波路を提供する寸法に作られ得るが、実際に導波を提供するのではなく、単に光学構成要素間の光通信を提供するための中空チャネルの役割を果たすような寸法とし得ることに留意すべきである。次に、基板は、光学構成要素が導波路により光学的に結合される一体化されたデバイスではなく、自由空間光受信機/光送信機を形成する、光学構成要素のための単なる「光ブレッドボード」の役割を果たす。本明細書での「導波路」という用語は、これらの可能性の両方を含む包括的意味を付与されるべきである。
【0027】
本発明の実施形態が、例示だけのために、また添付の図面を参照して以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の光受信機の概略図である。
【図2】本発明の光受信機の概略図である。
【図3】本発明の光受信機の概略図である。
【図4】本発明の光受信機の概略図である。
【図5】基板内の中空コア導波路の形成、および光学構成要素との一体化を示す図である。
【図6】基板内の中空コア導波路の形成、および光学構成要素との一体化を示す図である。
【図7】本発明の光送信機の概略図である。
【図8】本発明の光送信機の概略図である。
【図9】本発明の第3の例示的光送信機を示している。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1には、本発明の光受信機100が、平面図で概略が示されている。受信機100は、それぞれがシリコン基板122内に形成されたアライメントスロットの内部に保持される複数の光学構成要素および光学デバイスを含み、構成要素/デバイスは、同様にシリコン基板122内に形成された105、123などの中空コア導波路により光学的に結合される。各アライメントスロットは、自分が保持する光学構成要素のアライメントをアライメントスロットにより横断される中空コア導波路に対して画定する。
【0030】
受信機100には、入力光ファイバ99を収容するように適合される入力102がある。ファイバ99からの光を中空コア入力導波路105の中に効果的に結合するように、レンズ103が構成される。波長フィルタ104が、入力導波路105を横断し、かつフィルタ104のアライメントを導波路105に対して画定するアライメントスロット内に保持される。光受信機100は、ビームスプリッタ106と、その光軸を基板の面に対して22.5°傾けられた半波長板120と、それぞれが基板122の面に実質的に垂直な光軸を有する第1の偏光ビームスプリッタ(PBS)108および第2の偏光ビームスプリッタ110と、たとえば単一光子アバランシュダイオード(SPAD)でも、量子ドット検出器でもよい4つの単一光子検出器(SPD)112、114、116、118とをさらに含む。PBS108、およびSPD112、114が、第1の受信機チャネルを構成する。半波長板120、PBS110、SPD116、118が、第2の受信機チャネルを構成する。
【0031】
光受信機122の使用法については、光ファイバ99から入力された単一入力光子が、レンズ103により入力ガイド105の中に結合される。光子が所望の波長であった場合、波長フィルタ104を通ってビームスプリッタ106に進み、光子が基板の面に対して平行または垂直に偏光していようと、基板の面に対して±45°で偏光していようと、スプリッタ106は、第1の受信機チャネルおよび第2の受信機チャネルの一方に光子をランダムに導く。光子が第1の受信機チャネルに進み、基板122の面に対して平行または垂直に直線偏光している場合、その偏光に対応するSPDに進む。すなわち、光子が基板122に対して垂直に偏光している場合、SPD112に進み、基板122の面に平行に偏光している場合、SPD114に進む。光子が、基板122の面に対して±45°で偏光している場合、SPD112またはSPD114のいずれか一方に到達する確率が50%ある。
【0032】
入力光子が、第2の受信機チャネルに導かれた場合、半波長板120を通過し、その後PBS110に遭遇する。光子が、基板122の面に平行または垂直に直線偏光している場合、半波長板120を通過するとき、基板122の面に対して±45°で直線偏光されるようになる。次に、PBS110は、光子を50%の確率でSPD116またはSPD118のいずれかに向ける。光子が、基板122の面に対して±45°で直線偏光している場合、半波長板120を通過するとき、基板122の面に対して平行または垂直のいずれかに直線偏光されるようになり、その偏光状態に従ってSPD116、118のうちの一方に向けられる。光子が、基板122の面に垂直に偏光している場合、SPD118に進み、基板122の面で偏光している場合、SPD116に進む。したがって、光受信機100は、BB84プロトコルを実装する受信機の役割を果たすことができる。
【0033】
図2は、全体を200により示される、本発明の第2の例示的光受信機を示し、ここでは、ある種の光学構成要素および光学デバイスがシリコン基板222内に搭載される。図1の光受信機100の構成要素およびデバイスと同等の構成要素およびデバイスが、図1の同等の部分にラベルを付ける参照符号と100の値だけ異なる参照符号でラベルを付けられている。シリコン基板222は、第1の受信機チャネル内に含まれる構成要素203A、204A、208、212、214を搭載する。構成要素203B、204B、220、210、216、218が、第2の受信機チャネルに含まれる。2つの受信機チャネルの構成要素は、基板内に形成され、かつ実質的に正方形の断面からなる223などの中空コア導波路により光学的に結合される。光受信機200では、入力ファイバ199からの入力光子を導くための手段207が、3dB結合器209を含む光ファイバデバイスである。
【0034】
図2の光受信機200の動作は、図1の光受信機100の動作と事実上同じである。入力光ファイバ199(光受信機200の入力202に取り付けられている)からの入力光子が、光ファイバ3dB結合器209により2つの受信機チャネルのうちの一方にランダムに向けられる。光子は、レンズ203Aにより第1の受信機チャネルに結合されるか、レンズ203Bにより第2の受信機チャネルに結合されるかのいずれかである。2つの受信機チャネルにはそれぞれ、波長フィルタ204A、204Bがある。第2の受信機チャネルには半波長板220がある。
【0035】
本発明の第3の例示的光受信機が、図3で300により示される。光受信機300は、シリコン基板322内に形成されたアライメントスロット内に搭載され、かつ基板322内に形成され実質的に正方形の断面からなる323などの中空コア導波路により一緒に光学的に結合された複数の光学構成要素および光学デバイスを含む。図1の光受信機100の構成要素およびデバイスと同等の構成要素およびデバイスが、図1の同等の部分にラベルを付ける参照符号と200の値だけ異なる参照符号でラベルを付けられている。
【0036】
光受信機300の入力302に取り付けられた入力光ファイバ199からの入力光子が、レンズ303により中空コア導波路の中に結合される。入力光子が、適切な波長からなる場合、波長フィルタ304を通って、基板322内に形成されたアライメントスロット内に保持される偏光変調器311に進む。偏光変調器311を出るとき、光子は、図1の光受信機100および図2の光受信機200に関して上記で説明されたように操作され、検出される。偏光変調器により、受信された光子の偏光状態が、光ファイバ299を通過することにより引き起こされた外乱を補正されることが可能になる。したがって、光受信機300は、光ファイバ、または光ファイバネットワークを通る光子の伝送により、光子の偏光状態の何らかの崩壊が引き起こされる場合に使用されることができる。光受信機100、200、300はまた、単一光子が自由空間を通って受信される場合に使用されることができる。
【0037】
図4には、本発明の第4の例示的光受信機が、全体を400により示される。光受信機400は、シリコン基板422内に形成された個々のアライメントスロット内に保持され、かつ基板422内に形成された実質的に正方形の断面からなる423などの中空コア導波路により光学的に結合される複数の光学デバイスおよび光学構成要素を含む。図1の光受信機100の構成要素およびデバイスと同等の構成要素およびデバイスが、図1の同等の部分にラベルを付ける参照符号と300の値だけ異なる参照符号でラベルを付けられている。光受信機400の入力402に取り付けられた入力光ファイバ299からの入力光子が、レンズ403を介して中空コア導波路の中に結合される。入力光子が、適切な波長からなる場合、光子は、波長フィルタ404を通って、中空コアマルチモード導波路406に進む。マルチモード導波路406はまた、シリコン基板422内に形成された中空コア導波路であり、対称マルチモード干渉(MMI)スプリッタまたは非対称MMIスプリッタとして動作するような長さ、幅、および高さの寸法を有する。MMIスプリッタは、たとえば欧州特許第0563084号明細書で説明されている。マルチモード導波路406に入力された単一光子は、中空コア導波路413A、413Bのうちのいずれか一方に入力される確率が50%ある。したがって、マルチモード導波路406の機能は、受信機200の3dB結合器209の機能と同等であり、受信機100、300のビームスプリッタ106、306と同等である。中空コア導波路413A、413Bは、それぞれ第1の受信機チャネルおよび第2の受信機チャネルのための入力導波路である。これらのチャネルに入射する光子は、受信機100、200、300に関して上記で説明されたように操作され、検出される。
【0038】
図5および図6は、光学構成要素(図示せず)をアライメントして収容するためのアライメントスロット54により横断される中空コア導波路53を形成するために、基板の基底部50および蓋部分55がどのようにして加工され結合され得るかを図示する。基底部50は、チャネル52とアライメントスロット54の両方を形成するために、単一工程で加工されることができる。次に光学構成要素が、アライメントスロット54の中に挿入され、蓋部分55が、中空コア導波路53を形成するために基底部50に付けられることができる。チャネル52に対する(アライメントスロット54内に保持されるときには、結局は、中空コア導波路53に対する)光学構成要素のアライメントは、スロット54がチャネル52を横断する角度により画定される。したがって、光学構成要素がアライメントスロット54内に置かれた場合、チャネル52に対して、また蓋部分55が基底部50に付けられたときには、中空コア導波路53に対して、同時にアライメントされる。あるいは、光学構成要素は、蓋部分に取り付けられることができ、その結果、蓋部分55を基底部50に付けるステップはまた、光学構成要素をアライメントスロット54内に挿入し、それをチャネル52に対してアライメントする。
【0039】
図7は、全体を500により示される、本発明の光送信機を示す。光送信機500は、光源502(たとえば半導体レーザ)と、結合レンズ503と、対称MMIスプリッタまたは非対称MMIスプリッタ504、および偏光変調器506を含む基板520とを含む。光ファイバネットワークを介してたとえば図1から図4の光受信機100、200、300、400のうちの1つといった光受信機に伝送するために、受信機500からの出力が、レンズ516を介して光ファイバ518に結合されることができる。MMIスプリッタ504は、基板520内に形成された中空コアマルチモード導波路であり、同様に基板内に形成された中空コア入力導波路505、および中空コア出力導波路507、509を有する。偏光変調器506は、アライメントスロット内に配置された個別デバイスでもよく、基板520と一体化して形成されてもよい。
【0040】
動作については、光源502からの光が、中空コア導波路505の中に結合され、MMIスプリッタ504に進む。光の一部が導波路507に進み、強度をモニタされることができる。光の残りが、導波路509を介して偏光変調器506に進む。導波路507内の放射の強度をモニタすることにより、光源502の出力は、単一光子を放射するように制御されることができる。偏光変調器は、送信機500からの単一光子出力が、たとえばBB84プロトコルを使用するQKDといったQKDに必要な様々な偏光状態を有するように動作されることができる。あるいは、光源は、基板内に配置され、基板520内に形成された中空コア導波路によりMMIスプリッタ504の入力に結合されることができる。したがって、光源、MMIスプリッタ、および偏光変調器は、単一の完全に一体化された光送信機内に含まれ得る。偏光変調器506は、個々の光子が、光ファイバ、または光ファイバネットワークを通って受信機に進んだ後に、所望の直線偏光状態を有するような程度の軸比を有する偏光状態を付与されるように動作されることができる。別の実施形態では、偏光変調器は、MMIスプリッタの前でなく、それの次に来ることができる。
【0041】
図8は、全体を600により示される、本発明の第2の例示的光送信機を示す。送信機は、パルス光源602と、結合レンズ603と、シリコン基板620とを含み、シリコン基板内には、中空コアMMIスプリッタ604、608、MMI再結合器612、および移相デバイス610が形成される。基板620内に形成または搭載された構成要素/デバイスは、基板620内に形成された中空コア導波路により光学的に結合される。動作については、パルス光源602からの放射が、MMIスプリッタ604の入力導波路の中に結合され、そこで、一部が強度モニタのために取り出される。残りは、MMIスプリッタ608に進み、移相要素610およびMMI再結合器612と一緒に、マッハツェンダ干渉計の形式の強度変調器を形成する。MMIスプリッタ604により取り出された放射の強度レベルが観測されることができ、光源602が単一光子を供給するように調整される。強度変調器は、デコイ(decoy)パルスを伴うQKDを行うある種のモードに必要とされるように、送信機600により出力されるパルス当たりの光子の数を調整するように動作されることができる。あるいは、光源は、完全に一体化された光送信機を提供するために、基板内に搭載または形成されることができる。
【0042】
図9は、本発明の第3の例示的光送信機700を示し、送信機700は、シリコン基板720内に形成または搭載され、基板720内に形成された705、707などの中空コア導波路により光学的に結合される様々な光学デバイス/光学構成要素を含む。光送信機700は、基板720の面に対して垂直に偏光した単一光子を生成する光源702、710と、基板内の面で偏光した単一光子を生成する光源704、708とを含む。偏光ビームスプリッタ706、712は、これらの光子をビームスプリッタ716に結合する。光源708、710から出力された光子は、ビームスプリッタ714に到達する前に±45°で直線偏光するように半波長板714を通過する。ビームスプリッタ716に到達するどの光子も、出力導波路707に進む確率が50%ある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子鍵配送システムのための光受信機であって、基板内に搭載または形成され、基板内に形成された1つ以上の中空コア導波路により光学的に結合された複数の光学構成要素を含む、光受信機。
【請求項2】
前記光学構成要素のうちの少なくとも1つが、アライメントスロット内に保持される搭載された構成要素であり、アライメントスロットが、基板内に形成され、前記中空コア導波路のうちの1つを横切り、アライメントスロット内に保持される光学構成要素のアライメントをその中空コア導波路に対して画定する、請求項1に記載の光受信機。
【請求項3】
第1の受信機チャネルと第2の受信機チャネルとを含み、各受信機チャネルが、個々の1対の直交偏光状態のうちの一方に偏光した光子を検出し、かつその光子の偏光状態を識別するように構成され、個々の対の偏光状態が相互に傾けられる、請求項1または2に記載の光受信機。
【請求項4】
入力光子を受信機チャネルのうちの一方にランダムに向けるための手段を含む、請求項3に記載の光受信機。
【請求項5】
前記手段が、基板に形成または搭載されたマルチモード干渉(MMI)デバイスである、請求項4に記載の光受信機。
【請求項6】
前記手段が、ビームスプリッタと、入力光子を受信し、かつ入力光子をビームスプリッタに導くための入力導波路とを含み、ビームスプリッタの各出力が、個々の接続ガイドにより個々の受信機チャネルに光学的に結合され、入力導波路および接続導波路が、基板内に形成された中空コア導波路である、請求項4に記載の光受信機。
【請求項7】
ビームスプリッタが、基板内に形成されたアライメントスロット内に保持され、アライメントスロットが、その中に保持されたビームスプリッタのアライメントを入力導波路および接続導波路に対して画定する、請求項6に記載の光受信機。
【請求項8】
偏光変調器をさらに含み、偏光変調器が、入力導波路を横断するアライメントスロット内部に保持される、請求項6または7に記載の光受信機。
【請求項9】
入力導波路と一体化された偏光変調器をさらに含む、請求項6または7に記載の光受信機。
【請求項10】
第1の受信機チャネルが、第1の偏光ビームスプリッタと、2つの単一光子検出器とを含み、偏光ビームスプリッタが、それぞれが基板内に形成された個々の中空コア導波路により個々の単一光子検出器に光学的に結合される2つの出力を有する、請求項3から9のいずれか一項に記載の光受信機。
【請求項11】
第2の受信機チャネルが、第2の偏光ビームスプリッタと、2つの単一光子検出器とを含み、第2の偏光ビームスプリッタが、それぞれが基板内に形成された個々の中空コア導波路により個々の単一光子検出器に光学的に結合される2つの出力を有し、第2の受信機チャネルが、基板内に形成された中空コア導波路により第2の偏光ビームスプリッタの入力に光学的に結合される半波長板をさらに含み、第1の偏光ビームスプリッタおよび第2の偏光ビームスプリッタが、実質的に平行な光軸を有し、半波長板の光軸が、第2の偏光ビームスプリッタの光軸に対して実質的に22.5°傾けられる、請求項10に記載の光受信機。
【請求項12】
基板内に形成された中空コア導波路のうちの少なくとも一方が、実質的に正方形の断面からなる、請求項1から11のいずれか一項に記載の光受信機。
【請求項13】
光ファイバを収容するように適合された入力を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の光受信機。
【請求項14】
量子鍵配送システムのための光送信機であって、基板内に搭載または形成され、かつ基板内に形成された1つ以上の中空コア導波路により光学的に結合された複数の光学構成要素を含む、光送信機。
【請求項15】
前記光学構成要素のうちの少なくとも1つが、アライメントスロット内に保持される搭載された構成要素であり、アライメントスロットが、基板内に形成され、前記中空コア導波路のうちの1つを横切り、アライメントスロット内に保持される光学構成要素のアライメントをその中空コア導波路に対して画定する、請求項14に記載の光送信機。
【請求項16】
光源と、偏光変調器とを含み、光源および偏光変調器が、基板内に搭載または形成され、基板内に形成された1つ以上の中空コア導波路により光学的に結合される、請求項14または15に記載の光送信機。
【請求項17】
基板内に形成され、偏光変調器の出力を光送信機の出力に光学的に結合するように構成される1つ以上の中空コア導波路をさらに含む、請求項16に記載の光送信機。
【請求項18】
動作中のときに、光送信機内部を伝播する光エネルギーの一部を取り出すための手段をさらに含む、請求項17に記載の光送信機。
【請求項19】
前記手段が、基板内に搭載または形成され、かつ基板内に形成された個々の中空コア導波路により、光源に光学的に結合された入力、および偏光変調器に光学的に結合された出力を有するマルチモード干渉(MMI)対称スプリッタまたはMMI非対称スプリッタを含む、請求項18に記載の光送信機。
【請求項20】
前記手段が、基板内に搭載または形成され、かつ基板内に形成された個々の中空コア導波路により、偏光変調器の出力に光学的に結合された入力、および光送信機の出力に光学的に結合された出力を有するマルチモード干渉(MMI)対称スプリッタまたはMMI非対称スプリッタを含む、請求項18に記載の光送信機。
【請求項21】
基板内に搭載または形成され、かつ光送信機の出力強度を制御するように構成される強度変調器をさらに含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の光送信機。
【請求項22】
強度変調器が、MMIスプリッタおよびMMI再結合器を含むマッハツェンダ干渉計デバイスである、請求項21に記載の光送信機。
【請求項23】
中空コア導波路のうちの1つ以上が、実質的に正方形の断面からなる、請求項14から22のいずれか一項に記載の光送信機。
【請求項24】
光ファイバを収容するように適合された出力を有する、請求項14から23のいずれか一項に記載の光送信機。
【請求項25】
基板が半導体材料を含む、請求項1から24のいずれか一項に記載の光受信機または光送信機。
【請求項26】
基板がSOIウェーハを含む、請求項25に記載の光受信機または光送信機。
【請求項27】
基板が、その中に形成された1つ以上の正方形断面チャネルを有する基底部を含み、蓋部分が、前記1つ以上の中空コア導波路を形成するために追加で提供される、請求項1から26のいずれか一項に記載の光受信機または光送信機。
【請求項28】
1つ以上の前記光学構成要素が、蓋部分に取り付けられる、請求項27に記載の光受信機。
【請求項29】
前記中空コア導波路のうちの少なくとも1つの内面が、反射被覆を有する、請求項1から28のいずれか一項に記載の光受信機または光送信機。
【請求項30】
反射被覆が、光受信機の動作波長帯内で導波路コアの実効屈折率よりも低い実効屈折率を有する表面を提供する1つ以上の材料層を含む、請求項29に記載の光受信機または光送信機。
【請求項31】
反射被覆が、金、銀、および銅のうちのいずれか1つからなる少なくとも1つの層を含む、請求項30に記載の光受信機または光送信機。
【請求項32】
反射被覆が、誘電体材料からなる少なくとも1つの層を含む、請求項30に記載の光受信機または光送信機。
【請求項33】
反射被覆が、炭化ケイ素からなる少なくとも1つの層を含む、請求項32に記載の光受信機または光送信機。
【請求項34】
0.1μmから20μmまでの波長範囲内の放射で動作するための、請求項1から33のいずれか一項に記載の光受信機または光送信機。
【請求項35】
1.4μmから1.6μmまでの波長範囲内の放射で動作するための、請求項34に記載の光受信機または光送信機。
【請求項36】
請求項1から35のいずれか一項に記載の光受信機または光送信機のための基底部であって、基板内に形成された複数のアライメントスロットと接続中空チャネルとを含み、各アライメントスロットが、光学構成要素をアライメントして収容するように適合される基底部。
【請求項37】
実質的に上記で説明され、図1、図2、図3、および図4のうちのいずれか1つに図示される光受信機。
【請求項38】
実質的に上記で説明され、図7、図8、および図9のうちのいずれか1つに図示される光送信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−511523(P2011−511523A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−543562(P2010−543562)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【国際出願番号】PCT/GB2009/000179
【国際公開番号】WO2009/095644
【国際公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(501352882)キネテイツク・リミテツド (93)
【Fターム(参考)】