説明

金バンプ形成用非シアン系電解金めっき浴、及び金バンプ形成方法

【課題】基板電極との電極接合に適するバンプ硬度とバンプ形状とを備えた金バンプ形成用の非シアン系電解金めっき浴、及び該金めっき浴を用いた金バンプ形成方法を提供する。
【解決手段】亜硫酸金アルカリ塩又は亜硫酸金アンモニウムと、伝導塩と、結晶安定化剤と、結晶調整剤と、緩衝剤と、光沢化剤とを含有し、亜硫酸金アルカリ塩又は亜硫酸金アンモニウムの含有量は、金濃度として1〜20g/Lであり、伝導塩は亜硫酸ナトリウムであって、その含有量が5〜150g/Lであり、光沢化剤の含有量は、0.5〜100mmol/Lである、ことを特徴とする金バンプ形成用非シアン系電解金めっき浴。前記光沢化剤は、スルホキシド及び/又はスルホンから選択される1種又は2種以上の化合物が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハを形成する際に用いる金バンプ形成用非シアン系電解金メッキ浴、及び該金バンプ形成用非シアン系電解金メッキ浴を用いる金バンプ形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板やガラス基板等に対する半導体ウエハの取り付けは、半導体ウエハ上の集積回路に形成される金バンプと、基板上に形成される基板電極とを接続する電極接合方法により行われている(特許文献1、2参照)。
【0003】
具体的な電極接合方法としては、ワイヤボンディング法やフリップチップ法が知られている。ワイヤボンディング法とは、ワイヤを用いて金バンプと基板電極とを接合する接合方法をいう。フリップチップ法とは、基板上に半導体ウエハを載せて、金バンプと基板電極とを異方性導電接着剤で接合する接合方法をいう。
【0004】
基板が、TCP(Tape carrier package)やCOF(Chip on film)等のパッケージ方式に用いられるフィルム状のフレキシブル基板である場合、金バンプと基板電極との接合は、主としてフリップチップ法で行われる。
【0005】
フリップチップ法では、基板電極に形成された錫めっき層または金めっき層と、半導体ウエハ上に形成された金バンプとを、異方性導電接着剤を用いて熱圧着したり、共晶接合したりする。異方性導電接着剤とは、樹脂粒子にNi/Auめっき層を被覆させた導電粒子がエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂に均一に分散された接着剤をいう。共晶接合とは、熱圧着や超音波により共晶を形成させて基板電極と金バンプとを接合させる電極接合をいう。
【0006】
近年は、半導体パッケージの製造工程を簡略にするため、また電極接合を確実に行うため、フィルム状の異方性導電接着剤を用いる電極接合方法が多用されている。
【0007】
図1は、プリント配線基板に半導体チップを取り付けた状態の一例を示す断面図である。
図1によれば、プリント配線基板10において、基板電極13は、硬質基板11の基板配線パターン12が形成された面に形成される。
【0008】
半導体チップ9は、半導体ウエハ1の一面に回路層1’が形成されている。回路層1’が形成されている面には、Al電極2、パッシベーション膜3、TiWスパッタ膜4、Auスパッタ膜5、金バンプ7’が順次積層されている。金バンプ7’は、該積層構造において、Al電極2が配置される領域に形成され、金バンプ7’とAuスパッタ膜5との接合面と反対側の面が、プリント配線基板10の基板電極13との接合面7’aとなる。
【0009】
図1において、半導体チップ9は、金バンプ7’の接合面7’aをプリント配線基板10に向けて、プリント配線基板10に重ねられる。その後、金バンプ7と基板電極13とを、異方性導電接着剤20を用いて電極接合することにより、プリント配線基板10に取付けられる。半導体チップ9とプリント配線基板10との間は、封止材14で封止される。
【0010】
上記の半導体チップ9のプリント配線基板10に対する取付けでは、金バンプ7’と基板電極13との接合面7’aの平坦性の確保および金バンプ7’の硬度調整という課題がある。
【0011】
<接合面の平坦性の確保>
導電性接着剤20を用いて電極接合を行う場合、金バンプ7’と基板電極13との接合力は、金バンプ7’の接合面7’aと基板電極13との電極接合時の接合面積(導電粒子が存在する領域)が大きいほど強くなる。しかし、従来の金バンプ7’の接合面7’aは、平坦性が悪く、十分な接合面積を確保できる形状に形成されていなかった。
【0012】
図2は、半導体チップ9の従来の金バンプ7’が形成されている部分の部分拡大断面図である。図2には、半導体チップが、図1に示される状態とは上下を反対に、すなわち半導体ウエハ1を下に、金バンプ7’の接合面7’aを上にして、金バンプが形成されている部分を拡大して示されている。図2で用いられる符号は図1の符号と共通する。
【0013】
図2では、接合面7’aの中央部が、周縁部よりもAuスパッタ膜5側から突出した形状になっている。図2に示されるような突出形状では、金バンプ7’は突出形状の最先端部でしか基板電極13と接触しない。
【0014】
また、図示しないが、接合面7’aがAuスパッタ膜5側へくぼんだ形状になる場合や、金バンプ7’の周縁部が切欠き形状になる場合もある。このような場合は、異方性導電接着剤20中の導電粒子が、接合面7’aのくぼみや切欠部に落ち込みやすく、導電粒子が接合面7’aの一部に偏在することになる。
【0015】
上記のように、金バンプ7’の接合面7’aが平坦でない場合、接合面7’a全面を電極接合に利用することができない。すなわち、従来は、金バンプ7’の接合面7’aと基板電極13との電極接合時の接合面積が小さい場合が多い。そのため、金バンプ7’と基板電極13との接合力が弱くなり、その後の組み立て工程において断線や接合不良による電気的欠陥をもたらす問題がある。
【0016】
この問題を解決するため、金バンプ7’の接合面7’aを、平坦な形状にして導電粒子を接合面7’aの全面に均一に分布させ、基板電極との接合面積をできるだけ広く確保することが望まれている。
【0017】
近年は、液晶の高機能化に伴い電極数が増加する一方で、パッケージコスト削減からICチップの小型化が進んでいる。そのため、金バンプの形成においても、配置ピッチを狭くし、ICチップのサイズを縮小することが要求されている。このような狭ピッチ対応の金バンプを用いて電極接合を行う場合は、金バンプの接合面を電極接合に最大限利用するため、接合面を平坦な形状にして十分な接合面積を確保することが求められる。
【0018】
<金バンプの硬度調整>
異方性導電接着剤20を用いて電極接合を行う場合、金バンプ7’の硬度が、異方性導電接着剤20中の導電粒子の硬度に対して低すぎると、熱圧着時に導電粒子が金バンプ7’中に埋まる。その場合、電極接合の際に金バンプ7’と基板電極13との間で導電粒子が熱圧着されず、金バンプ7’と基板電極13との電極接合が不十分になる。金バンプ7’の硬度が異方性導電接着剤20中の導電粒子の硬度に対し高すぎると、熱圧着時に導電粒子が金バンプ7’に押しつぶされる。その場合、金バンプ7’と基板電極13とは電極接合しない。
【0019】
共晶接合を行う場合、金バンプ7’の硬度が、共晶を形成する相手金属の硬度に対して高すぎると、金バンプ7’が相手金属にめり込むことができず十分な共晶が形成されない。その場合、断線や接合不良による電気的欠陥が生じる。
【0020】
従って、金バンプ7’の硬度は、電極接合に用いられる異方性導電接着剤中の導電粒子や、金バンプと共晶を形成する相手金属の硬度に応じて適切な硬度で形成されなければならない。
【0021】
共晶接合と、異方性導電接着剤を用いる電極接合とは、金バンプに要求される硬度が異なる。金バンプの適切な硬度は、異方性導電接着剤を用いて電極接合を行う場合、熱処理後の硬度で50〜120HV、共晶接合を行う場合、熱処理後の硬度で35〜60HVである。適切な硬度に幅があるのは、導電粒子の種類や、相手金属の硬度により適切な硬度が異なること、また、導電粒子や相手金属を一義的に決められないことによる。
【0022】
従って、金バンプの硬度を、適宜選択される導電粒子や相手金属の硬度に対応させて簡便に形成する方法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特開2009−62584号公報
【特許文献2】特開2009−57631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明の課題は、共晶接合や、異方性導電接着剤を用いる電極接合において、基板電極との間に十分な接合力を生じる金バンプの形成に適した金バンプ形成用非シアン系電解めっき浴、該金バンプ形成用非シアン系電解めっき浴を用いた金バンプ形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の第一の態様は、亜硫酸金アルカリ塩又は亜硫酸金アンモニウムと、伝導塩と、結晶安定化剤と、結晶調整剤と、緩衝剤と、光沢化剤とを含有し、前記亜硫酸金アルカリ塩又は亜硫酸金アンモニウムの含有量は、金濃度として1〜20g/Lであり、前記伝導塩は亜硫酸ナトリウムであって、その含有量が5〜150g/Lであり、前記光沢化剤の含有量は、0.5〜100mmol/Lである、ことを特徴とする金バンプ形成用非シアン系電解金めっき浴である。
【0026】
本発明の第二の態様は、光沢化剤は、スルホキシド及び/又はスルホンから選択される1種又は2種以上の化合物である、本発明第一の態様の金バンプ形成用非シアン系電解金めっき浴である。
【0027】
本発明の第三の態様は、光沢化剤は、テトラメチレンスルホキシド、プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、スルホラン、3−ヒドロキシスルホラン、4,4−ジオキソ−1,4-オキサチアン、3−スルホレン、3―スルホレン−3−カルボン酸メチル、アセスルファムKから選択される1種又は2種以上の化合物である、本発明第一の態様または第二の態様の金バンプ形成用非シアン系電解金めっき浴である。
【0028】
本発明の第四の態様は、結晶調整剤は、Tl化合物、Pb化合物、又はAs化合物から選択される1種又は2種以上の化合物であって、該結晶調整剤の含有量は、金属濃度として0.1〜100mg/Lである、本発明第一の態様ないし第三のいずれかの態様の金バンプ形成用非シアン系電解金めっき浴である。
【0029】
本発明の第五の態様は、結晶安定化剤は、水溶性アミンであって、該水溶性アミンの含有量は、1〜12g/Lである、本発明第一の態様ないし第四のいずれかの態様の金バンプ形成用非シアン系電解金めっき浴である。
【0030】
本発明の第六の態様は、結晶安定化剤は、1,2−ジアミノエタン、1,2-ジアミノプロパン、又は1,6−ジアミノヘキサンから選択される1種又は2種以上の組み合わせである、本発明第一の態様ないし第五のいずれかの態様の金バンプ形成用非シアン系電解金めっき浴である。
【0031】
本発明の第七の態様は、パターニングされた半導体ウエハに、本発明第一の態様ないし第六のいずれかの態様の金バンプ形成用非シアン系電解金めっき浴を用いて電解金めっきを施す電解金めっき工程と、電解金めっきを施した前記半導体ウエハを、150〜400℃で5分以上熱処理する熱処理工程とを有し、電解金めっき工程後の表面高低差が2μmであって、前記熱処理工程後の硬度が35〜120HVの金バンプを形成する、ことを特徴とする金バンプ形成方法である。
【発明の効果】
【0032】
本発明の金バンプ形成用非シアン系電解金めっき浴を用いて形成される金バンプは、めっき皮膜にムラ、ヤケ等が認められない均一な外観で、基板電極との接合面は平坦である。接合面が平坦であるため、異方性導電接着剤を用いる電極接合では、接合面の全面に導電粒子が均一に分布する。これにより、接合面の全面で基板電極との接合面積を確保しやすくなる。特に狭ピッチ対応の金バンプを形成する場合、本発明は効率的に接合面積を確保できるため、十分な接合力を発生させる。
【0033】
本発明は、金めっき浴中の光沢化剤の含有量を調整することにより、異方性導電接着剤を用いる電極接合に適した硬度の金バンプと、共晶接合に適した硬度の金バンプとを形成することができる。
【0034】
すなわち、本発明の金バンプ形成用非シアン系電解めっき浴により形成される金バンプは、接合面の平坦化と任意の硬度調整により、異方性導電接着剤を用いる電極接合では接合面の全面に導電粒子が均一に配置された状態で熱圧着を行うことができる。また、共晶接合では共晶が十分に形成される。従って本発明により形成される金バンプは、いずれの接合方法においても基板電極との間に十分な接合力を発揮し、断線や接合不良を生じる割合が極めて低い。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】従来のプリント配線基板に半導体チップを取り付けた状態の一例を示す断面図である。
【図2】半導体チップに形成された従来の金バンプ部分の部分拡大断面図である。
【図3】半導体チップに形成された本発明の金バンプ部分の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
<非シアン系電解金めっき浴の成分>
本発明の電解金めっき浴の成分を下記の(1)〜(7)において説明する。(1)〜(6)は必須成分である。
【0037】
(1)亜硫酸金アルカリ塩、亜硫酸金アンモニウム(金源)
本発明は、金源として公知の亜硫酸金アルカリ塩を制限することなく使用できる。公知の亜硫酸金アルカリ塩としては、亜硫酸金(I)ナトリウム、亜硫酸金(I)カリウム等を挙げることができる。これらは、1種を単独で使用することができ、2種以上を併用しても良い。
【0038】
本発明の非シアン系電解金めっき浴における亜硫酸金アルカリ塩又は亜硫酸金アンモニウムの含有量は、金濃度として1〜20g/L、好ましくは8〜15g/Lである。亜硫酸金アルカリ塩又は亜硫酸金アンモニウムの含有量が1g/L未満の場合、めっき皮膜の厚さが不均一になることがある。亜硫酸金アルカリ塩又は亜硫酸金アンモニウムの含有量が20g/Lを超える場合、めっき皮膜の物性等に問題は生じないが、製造コストが高くなる。
【0039】
(2)水溶性アミン(結晶安定化剤)
本発明は、結晶安定化剤として水溶性アミンを使用する。本発明に使用される水溶性アミンとしては、炭素数2以上、好ましくは炭素数2〜6のジアミンが好ましい。炭素数2〜6のジアミンとしては、1,2−ジアミノエタン、1,2-ジアミノプロパン、1,6−ジアミノヘキサン等が好ましい。これらは、1種を単独で使用することができ、2種以上を併用しても良い。
【0040】
本発明の非シアン系電解金めっき浴における水溶性アミンの含有量は、0.1〜30g/Lで、好ましくは1〜12g/Lである。水溶性アミンの含有量が0.1g/L未満の場合、限界電流密度が低下し、ヤケめっきの原因になることがある。水溶性アミンの含有量が30g/Lを超える場合、金錯塩の安定性は増大する。しかし、めっき皮膜が緻密化し過ぎ、基板電極との密着性に不具合が生じる。
【0041】
(3)Tl化合物、Pb化合物、As化合物(結晶調整剤)
本発明は、結晶調整剤としてTl化合物、Pb化合物、As化合物を使用する。本発明に使用されるTl化合物としては、蟻酸タリウム、マロン酸タリウム、硫酸タリウム、硝酸タリウム等を挙げることができる。Pb化合物としては、クエン酸鉛、硝酸鉛、アルカンスルホン酸鉛等を挙げることができる。As化合物としては、三酸化二砒素等を挙げることができる。これらのTl化合物、Pb化合物、As化合物は1種を単独で使用することができ、2種以上を併用してもよい。
【0042】
本発明の非シアン系電解金めっき浴における結晶調整剤の含有量は、金属濃度として0.1〜100mg/L、好ましくは0.5〜50mg/L、特に好ましくは3〜25mg/Lである。この含有量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜設定することができる。結晶調整剤の配合量が0.1mg/L未満の場合、めっき付きまわり、めっき浴安定性及び耐久性が悪化し、めっき浴の成分が分解することがある。結晶調整剤の配合量が100mg/Lを超える場合、めっき付きまわりの悪化、及びめっき皮膜の外観ムラを生じることがある。
【0043】
(4)亜硫酸ナトリウム(伝導塩)
本発明は、伝導塩として亜硫酸ナトリウムを使用する。本発明の非シアン系電解金めっき浴における亜硫酸ナトリウムの含有量は、5〜150g/L、好ましくは10〜80g/Lである。亜硫酸ナトリウムの含有量が5g/L未満の場合、金バンプ形状の膨らみを充分に抑制することができないため、金バンプ表面の平坦化を妨げる。めっき付きまわりの悪化や、めっき浴の安定性の悪化によって、めっき浴構成成分の分解が起きるという問題もある。亜硫酸ナトリウムの含有量が150g/Lを超える場合、限界電流密度が低下してヤケめっきになることがある。
【0044】
(5)無機塩、カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸(緩衝剤)
本発明は、電解金めっき浴に使用される公知の緩衝剤を特に限定することなく使用することができる。公知の緩衝剤としては、リン酸塩やホウ酸塩等の無機酸塩、クエン酸塩、フタル酸塩、エチレンジアミン四酢酸塩等の有機酸(カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸)塩等を挙げることができる。
【0045】
本発明の非シアン系電解金めっき浴における緩衝剤の含有量は、1〜30g/L、好ましくは2〜15g/Lで、より好ましくは2〜10g/Lである。緩衝剤の含有量が1g/L未満の場合、pHが低下するため、めっき浴の安定性が悪化してめっき浴構成成分の分解が起きることがある。緩衝剤の含有量が30g/Lを超える場合、限界電流密度が低下してヤケめっきになることがある。
【0046】
(6)光沢化剤
本発明は光沢化剤を使用する。本発明に使用される光沢化剤は、スルホキシド及び/又はスルホンである。該スルホキシド及び/又はスルホンは、水に溶解する化合物が選択される。そのような化合物として、テトラメチレンスルホキシド等のスルホキシド及びその塩、プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、スルホラン、3−ヒドロキシスルホラン、4,4−ジオキソ−1,4-オキサチアン、3−スルホレン、3―スルホレン−3−カルボン酸メチル、アセスルファムK等のスルホン及びその塩を挙げることができる。これらは、1種を単独で使用することができ、2種以上を併用しても良い。
【0047】
本発明の非シアン系電解金めっき浴における光沢化剤の含有量は、0.5〜150mmol/L、好ましくは1〜100mmol/Lである。
【0048】
光沢化剤は、めっき皮膜を緻密化し、金バンプ表面の平坦化に寄与する。しかし光沢化剤の含有量が0.5mmol/L未満の場合、金バンプの表面を平坦にすることができない。光沢化剤の含有量が200mmol/Lを超える場合、光沢化剤がめっき浴に溶解しない、限界電流密度が低下してヤケめっきになる、又は、めっき皮膜を緻密化し過ぎることにより基板電極との密着性に不具合が生じる等の問題を生じることがある。
【0049】
光沢化剤は、金バンプの熱処理後の硬度の調整にも寄与する。形成される金バンプの熱処理後硬度は、非シアン系電解金めっき浴における光沢化剤の含有量に対応する。光沢化剤の含有量が多い場合には硬い金バンプが形成され、少ない場合には、軟らかい金バンプが形成される。
【0050】
金めっき浴中の金量を全てめっきに消費した状態を「1ターン」という。本発明の金めっき浴は、金源、及び金めっき浴を構成するその他の成分を補充管理することにより、2ターン以上、使用できる。従って、本発明の金めっき浴は、光沢化剤の補充に際し、光沢化剤の配合量を上記範囲内で調整することにより、熱処理後の金バンプの硬度が35〜120HVとなるように形成することができる。
【0051】
(7)他の成分
(1)〜(6)に記載した必須成分の他、適宜使用される成分として、pH調整剤等がある。pH調整剤としては、例えば、酸としては硫酸、亜硫酸水、リン酸等、アルカリとしては水酸化ナトリウム、アンモニア水等を挙げることができる。pH調整剤等は、本発明の目的を損なわない範囲で使用することができる。
【0052】
<金バンプ形成方法>
本発明は、常法のめっき操作を行うことにより、半導体ウエハ上に、金バンプを形成することができる。めっき操作の一例を、図3に基づいて説明する。
図3は、半導体チップにおいて本発明の非シアン系電解金めっき浴を用いて形成された金バンプ部分を示す部分拡大断面図である。以下の記載において、「非シアン系電解金めっき浴」を単に「金めっき浴」ということがある。
【0053】
(1)積層工程
半導体ウエハ1の回路層1’が形成された面にAl電極2を形成する。
回路層1’の表面に、回路層1’およびAl電極2を被覆するパッシベーション膜3を成膜する。パッシベーション膜3にはAl電極2の一部を露出させる位置に開口部3aが設けられる。
【0054】
パッシベーション膜3の表面にTiWスパッタ膜4を成膜する。TiWスパッタ膜4は、パッシベーション膜3およびパッシベーション膜3の開口部3aから露出するAl電極2を被覆する。
【0055】
TiWスパッタ膜4の表面にAuスパッタ膜5を成膜する。TiWスパッタ膜4およびAuスパッタ膜5はUnder Bump Metal(UBM)層6を構成する。
【0056】
UBM層6の表面にレジスト膜8を成膜し、マスキングを行う。レジスト膜8にはAuスパッタ膜5の一部を露出させる開口部8aが設けられる。レジスト膜8の開口部8aは、レジスト膜8の下層においてAl電極2が位置する領域に設けられる。レジスト膜8の材料としては、ノボラック系ポジ型フォトレジスト等を使用することができる。
【0057】
(2)電解金めっき工程
積層構造が形成された半導体ウエハ1を被めっき物として、本発明の非シアン系電解金めっき浴を用いて電解金めっきを行う。本発明の金めっき浴は、素地がメタライズされ、導電性の高いものであれば、被めっき物を選ばない。特に、ノボラック系ポジ型フォトレジストをレジスト膜8に使用してパターンニングしたシリコンウエハの回路上や、GaAsウエハなど化合物ウエハの回路上における金バンプ形成に好適である。
【0058】
本発明の金めっき浴は、光沢化剤を含有するため、めっき皮膜を緻密化し、金バンプ7の基板電極との接合面7aは平坦になる。
【0059】
めっき温度は40〜70℃、好ましくは50〜65℃である。めっき温度が40〜70℃の範囲外の場合、めっき皮膜が析出しにくくなる。あるいは、金めっき浴が不安定となり、金めっき浴の構成成分の分解が起きることがある。
【0060】
めっきする際の設定電流密度は、金めっき浴の組成、温度等により異なるが、金濃度が8〜15g/L、60℃のめっき温度の条件下において、2.0A/dm以下、好ましくは0.2〜1.2A/dmである。設定電流密度がこの範囲を外れると、作業性が悪くなったり、めっき皮膜外観やめっき皮膜特性に異常が生じたりする。著しく金めっき浴が不安定となり、金めっき浴構成成分の分解が生じることもある。
【0061】
金めっき浴のpHは、7.0以上、好ましくは7.2〜10.0である。金めっき浴のpHが7.0未満の場合、著しく金めっき浴が不安定になり、金めっき浴構成成分の分解が生じることがある。金めっき浴のpHが10.0以上の場合、レジスト膜8が溶解し、所望の金バンプを形成できないことがある。
【0062】
電解金めっき後、半導体ウエハ1のレジスト膜8は、溶剤によって溶解除去される。レジスト膜8が除去されることにより、金バンプ7で被覆されていない領域のUBM層6が露出する。露出したUBM層6もエッチング等により除去される。これにより、金バンプ7で被覆されていない領域ではパッシベーション膜3が露出する。金バンプ7で被覆されているUBM層6はこの工程で除去されることなく、積層構造を維持する。
【0063】
(3)熱処理工程
UBM層6とレジスト膜8を除去した後、金バンプ7は、150〜400℃で、好ましくは200〜300℃で熱処理される。熱処理時間は5分以上、好ましくは30〜60分である。熱処理には、ファインオーブン等が使用される。ファインオーブンは、熱処理に必要な時間、チャンバー内部を設定温度に一定時間保持できるため、該熱処理に適している。この熱処理により、所望の硬度で、かつ表面が平坦な金バンプ7を得ることができる。
【実施例】
【0064】
以下実施例により、本発明を更に具体的に説明する。ただし、本発明は、ここで記載される実施例により限定されるものではない。
【0065】
Na3Au(SO32、NaSO、リン酸一ナトリウム、1,2―ジアミノエタン、Tl、光沢化剤を含有する金めっき浴を調整し、電解金めっき工程、熱処理工程を経て、金バンプを形成した(実施例1−46)。実施例1―46について、形成された金バンプの形状、浴安定性、めっき皮膜外観、皮膜硬度、Auスパッタ膜の剥離に伴う金バンプの均一エッチング性を以下の評価方法により評価した。
【0066】
〔金バンプ形状:平坦度(μm)〕
金バンプ表面の平坦度は、図2に示すように、金バンプ表面の最高点Aと最低点Bとの高低差Cを指標として評価した。高低差の値が小さいほど平坦な表面であることを示す。「最高点」とは、金バンプ表面(基板電極との接合面7a)で最も突出した部分をいい、「最低点」とは、最も突出が少ない部分あるいは最もくぼんだ部分をいう。平坦度の計測には、レーザー顕微鏡VK−9710(キーエンス社製)を用いた。
【0067】
〔浴安定性〕
被めっき物に電解金めっきを施した後、金めっき浴の様子を観察し、下記基準にて評価した。表1−7に示される符号は、それぞれ下記の観察結果を意味する。
○:金めっき浴中に金の沈殿は観察されなかった。
×:金めっき浴中に金の沈殿が肉眼で判るレベルで観察された。
【0068】
〔めっき皮膜外観〕
被めっき物に形成された金バンプの表面外観を観察し、下記基準にて評価した。表1−7に示される符号はそれぞれ下記の観察結果を意味する。
○:均一外観である。
×:色調が赤い、デンドライト状析出が見られる、ムラが認められる、又はヤケが発生している。
【0069】
〔皮膜硬度(ビッカース硬さ;HV)〕
被めっき物上に形成された2つの金バンプのうち、一辺が100μmの正方形金バンプを用いて、未熱処理時、200℃で30分間熱処理後、300℃で30分間熱処理後に金バンプの硬度を測定した。測定は、ミツトヨ社製微小硬さ試験機HM−221を用いて行い、測定条件は、測定圧子を25gf荷重で10秒保持とした。
【0070】
〔金バンプの均一エッチング性〕
被めっき物のAuスパッタ膜をヨウ素系エッチャントによりエッチングしたことに伴う、バンプの表面形態のムラを観察した。金属顕微鏡を用い、50〜150倍の倍率で観察した。表1−7に示される符号はそれぞれ下記の観察結果を意味する。
下記の符号の意味において、「ムラ」とは、エッチング時に選択的に溶解した部分と特に溶解が進んだ部分が段差状となった状態をいう。「ムラが観察される」とは、顕微鏡観察で色調の違いが容易に認められる状態をいう。
○:被めっき物上の全バンプの表面に「ムラ」が観察されない。
×:バンプの表面に「ムラ」が観察される。
【0071】
〔総合評価〕
上記の各評価結果から総合評価した。表1−7に示される符号の意味は次のとおりである。
○:形成された金めっき皮膜(金バンプ)及びめっき処理後の金めっき浴に関する上記評価結果が、全て良好な結果であった。
×:形成された金めっき皮膜(金バンプ)及びめっき処理後の金めっき浴に関する上記評価結果に、好ましくない結果が含まれた。
(実施例1―5)
光沢化剤としてテトラメチレンスルホキシドを選択した。実施例1―5における本発明の非シアン系電解金めっき浴の各成分の含有量は以下のとおりである。テトラメチレンスルホキシドの他の成分の含有量は同じである。
【0072】
<金めっき浴の各成分の含有量>
Na3Au(SO32:Au元素につき、10g/L
NaSO:60g/L
リン酸一ナトリウム:5g/L
1、2―ジアミノエタン:10g/L
Tl:15mg/L
テトラメチレンスルホキシド:実施例1:1mmol/L
実施例2:5mmol/L
実施例3:10mmol/L
実施例4:50mmol/L
実施例5:100mmol/L
被めっき物は、素地断面組成がAu/TiW/SiOのシリコンウエハである。該シリコンウエハのレジスト膜8にはノボラック系ポジ型フォトレジストを使用した。該レジスト膜8には、配置ピッチ20μmでパターニングされた開口部8aを2つ設けた。一つの開口部8aは、短辺が20μm、長辺が100μmの長方形である。もう一つの開口部8aは、1辺が100μmの正方形である。
【0073】
電解金めっきは、実施例1―5の金めっき浴1L中に被めっき物を浸漬し、めっき温度50〜60℃、電流密度0.8A/dmの条件で行った。定常のめっき操作条件下では、非シアン系電解金めっき浴の電流効率は、通常100%である。
【0074】
電解金めっき工程により、被めっき物には、膜厚18μmのめっき皮膜が形成された。該めっき皮膜が形成された後、メチルエチルケトンを用いて被めっき物(シリコンウエハ)からレジスト膜8を溶解除去した。レジスト膜8を除去後、常温で十分に撹拌されたヨウ素系エッチャントの中に、被めっき物を90秒浸漬してAuスパッタ膜をエッチングした。その後、被めっき物を、アルコール系リンス液を用いて共洗いし、乾燥空気を吹き付け、乾燥させた。
【0075】
被めっき物を、ファインオーブンを用いて熱処理した。温度条件は200℃で30分間、300℃で30分間とした。
【0076】
実施例1―5の評価結果を表1に示す。表1において、テトラメチレンスルホキシドはスルホキシドAとして表示されている。
【0077】
(実施例6―10)
実施例1で用いた金めっき浴において、テトラメチレンスルホキシドに代えてプロパンスルトンを含有させた金めっき浴を調整し、金バンプを形成した(実施例6―10)。電解金めっき条件および熱処理条件は、実施例1−5と同様とした。実施例6―10におけるプロパンスルトンの各含有量を以下に示す。プロパンスルトンを除く他の成分の含有量は実施例1―5と同じとした。実施例6−10の評価結果を表1に示す。表1において、プロパンスルトンはスルホンBとして表示されている。
<プロパンスルトンの含有量>
実施例6:1mmol/L
実施例7:5mmol/L
実施例8:10mmol/L
実施例9:50mmol/L
実施例10:100mmol/L
【0078】
(実施例11―15)
実施例1で用いた金めっき浴において、テトラメチレンスルホキシドに代えて1,4−ブタンスルトンを含有させた金めっき浴を調整し、金バンプを形成した(実施例11―15)。電解金めっき条件および熱処理条件は、実施例1−5と同様とした。実施例11−15における1,4−ブタンスルトンの各含有量を以下に示す。1,4−ブタンスルトンを除く他の成分の含有量は、1,2―ジアミノエタンを除き、実施例1と同じとした。1,2―ジアミノエタンの含有量は12g/Lとした。実施例11―15の評価結果を表2に示す。表2において、1,4−ブタンスルトンはスルホンCとして表示されている。
<1,4−ブタンスルトンの含有量>
実施例11:1mmol/L
実施例12:5mmol/L
実施例13:10mmol/L
実施例14:50mmol/L
実施例15:100mmol/L
【0079】
(実施例16―20)
実施例11で用いた金めっき浴において、1,4−ブタンスルトンに代えてスルホランを含有させた金めっき浴を調整し、金バンプを形成した(実施例16―20)。電解金めっき条件および熱処理条件は、実施例1−5と同様とした。実施例16―20におけるスルホランの含有量を以下に示す。スルホランを除く他の含有量は実施例11―15と同じとした。実施例16−20の評価結果を表2に示す。表2において、スルホランはスルホンDとして表示されている。
<スルホランの含有量>
実施例16:1mmol/L
実施例17:5mmol/L
実施例18:10mmol/L
実施例19:50mmol/L
実施例20:100mmol/L
【0080】
(実施例21―25)
実施例1で用いた金めっき浴において、テトラメチレンスルホキシドに代えて3−スルホレンを含有させた金めっき浴を調整し、金バンプを形成した(実施例21―25)。電解金めっき条件および熱処理条件は、実施例1−5と同様とした。実施例21―25における3−スルホレンの各含有量を以下に示す。3―スルホレンを除く他の成分の含有量は実施例1―5と同じとした。実施例21−25の評価結果を表3に示す。表3において、3−スルホレンはスルホンEとして表示されている。
<3−スルホレンの含有量>
実施例21:1mmol/L
実施例22:5mmol/L
実施例23:10mmol/L
実施例24:50mmol/L
実施例25:100mmol/L
【0081】
(実施例26―30)
実施例1で用いた金めっき浴において、テトラメチレンスルホキシドに代えて4,4―ジオキソ−1,4―オキサチアンを含有させた金めっき浴を調整し、金バンプを形成した(実施例26―30)。電解金めっき条件および熱処理条件は、実施例1−5と同様とした。実施例26−30における4,4―ジオキソ−1,4―オキサチアンの各含有量を以下に示す。4,4―ジオキソ−1,4―オキサチアンを除く他の成分の含有量は実施例1―5と同じとした。実施例26−30の評価結果を表3に示す。表3において、4,4―ジオキソ−1,4―オキサチアンはスルホンFとして表示されている。
<4,4―ジオキソ−1,4―オキサチアンの含有量>
実施例26:1mmol/L
実施例27:5mmol/L
実施例28:10mmol/L
実施例29:50mmol/L
実施例30:100mmol/L
【0082】
(実施例31―35)
実施例1で用いた金めっき浴において、テトラメチレンスルホキシドに代えてアセスルファムKを含有させた金めっき浴を調整し、金バンプを形成した(実施例31―35)。電解金めっき条件および熱処理条件は、実施例1−5と同様とした。実施例31―35におけるアセスルファムKの各含有量を以下に示す。アセスルファムKを除く他の成分の含有量は実施例1―5と同じとした。実施例31−35の評価結果を表4に示す。表4において、アセスルファムKはスルホンGとして表示されている。
<アセスルファムKの含有量>
実施例31:1mmol/L
実施例32:5mmol/L
実施例33:10mmol/L
実施例34:50mmol/L
実施例35:100mmol/L
【0083】
(実施例36―38)
実施例26―35で用いた金めっき浴において、4,4−ジオキソ−1,4―オキサチアンや、アセスルファムKを単独で使用するのではなく、この2つの光沢化剤を併用する金めっき浴を調整し、金バンプを形成した(実施例36―38)。電解金めっき条件および熱処理条件は、実施例26−35と同様とした。実施例36―38における4,4―ジオキソ−1,4―オキサチアンとアセスルファムKの各含有量を以下に示す。4,4―ジオキソ−1,4―オキサチアンとアセスルファムKを除く他の成分の含有量は実施例26―35と同じとした。実施例36−38の評価結果を表4に示す。表4において、4,4―ジオキソ−1,4―オキサチアンはスルホンF、アセスルファムKはスルホンGとして表示されている。
<4,4―ジオキソ−1,4―オキサチアンの含有量>
実施例36:10mmol/L
実施例37:10mmol/L
実施例38:50mmol/L
<アセスルファムKの含有量>
実施例36:10mmol/L
実施例37:50mmol/L
実施例38:50mmol/L
【0084】
(実施例39―40)
実施例1で用いた金めっき浴において、Na3Au(SO32の含有量を変化させた金めっき浴を調整し、金バンプを形成した(実施例39―40)。電解金めっき条件および熱処理条件は、実施例1と同様とした。実施例39―40におけるNa3Au(SO32のAu元素における各含有量を以下に示す。Na3Au(SO32を除く他の成分の含有量は実施例1と同じとした。実施例39−40の評価結果を表4に示す。表4において、テトラメチレンスルホキシドはスルホキシドAとして表示されている。
<Na3Au(SO32の含有量>
実施例39:Au元素につき8g/L
実施例40:Au元素につき15g/L
【0085】
(実施例41―42)
実施例1で用いた金めっき浴において、1、2―ジアミノエタンの含有量を変化させた金めっき浴を調整し、金バンプを形成した(実施例41―42)。電解金めっき条件および熱処理条件は、実施例1と同様とした。実施例41―42における1、2―ジアミノエタンの各含有量を以下に示す。1、2―ジアミノエタンを除く他の成分の含有量は実施例1と同じとした。実施例41−42の評価結果を表5に示す。表5において、テトラメチレンスルホキシドはスルホキシドAとして表示されている。
<1、2―ジアミノエタンの含有量>
実施例41:8g/L
実施例42:12g/L
【0086】
(実施例43―44)
実施例1で用いた金めっき浴において、Tlの含有量を変化させた金めっき浴を調整し、金バンプを形成した(実施例43―44)。電解金めっき条件および熱処理条件は、実施例1と同様とした。実施例43―44におけるTlの各含有量を以下に示す。Tlを除く他の成分の含有量は実施例1と同じとした。実施例43−44の評価結果を表5に示す。表5において、テトラメチレンスルホキシドはスルホキシドAとして表示されている。
<Tlの含有量>
実施例43:10mg/L
実施例44:20mg/L
【0087】
(実施例45―46)
実施例1で用いた金めっき浴において、NaSOの含有量を変化させた金めっき浴を調整し、金バンプを形成した(実施例45―46)。電解金めっき条件および熱処理条件は、実施例1と同様とした。実施例45―46におけるNaSOの各含有量を以下に示す。NaSOを除く他の成分の含有量は実施例1と同じとした。実施例45−46の評価結果を表5に示す。表5において、テトラメチレンスルホキシドはスルホキシドAとして表示されている。
<NaSOの含有量>
実施例45:40g/L
実施例46:80g/L
【0088】
【表1】

【0089】
【表2】




【0090】
【表3】

【0091】
【表4】




【0092】
【表5】

【0093】
実施例1−35は、それぞれ1種の光沢化剤を異なる濃度で含有させた金めっき浴を用いた実施例である。金バンプ用途に求められる平坦度(高低差)は3μm以下で、望ましくは2μm以下である。表1―5によれば、実施例1−35で形成された金バンプは、表面の高低差がいずれも2μm以下であった。めっき皮膜外観に、色調の赤さ、デンドライト状析出、やけ、むら等が認められず、めっきのつきまわりも良好であった。
【0094】
実施例36―38は、2種の光沢化剤を併用した金めっき浴を用いた実施例である。2種の光沢化剤を併用する場合も、1種の光沢化剤を単独で使用する場合と同様に、平坦度が2μm以下で、めっき皮膜外観や、めっきのつきまわりが良好な金バンプを得ることができた。
【0095】
すなわち本発明に関する金バンプは、電極接合において十分な接合力を発揮するために要求される平坦度を備えている。特に狭ピッチ対応の金バンプとして、本発明に関する金バンプは好適である。
【0096】
金バンプの平坦度は、各光沢化剤の濃度と対応する。その対応関係は、光沢化剤により異なるが、例えば光沢化剤として、テトラメチレンスルホキシド(実施例1−5)や、1,4―ブタンスルトン(実施例11−15)を用いた場合は、光沢化剤の濃度を高くするほど、金バンプの平坦度が小さくなる傾向がある。
【0097】
そのため、本発明は、使用する光沢化剤の濃度を調節することにより、金バンプを所望の平坦度に調節することができる。特に、光沢化剤としてスルホラン(実施例16―20)や、4,4―ジオキソ−1,4―オキサチアン(実施例26−30)を用いる場合は、光沢化剤の濃度を低くするほど、金バンプの平坦度は小さくなる傾向がある。従って本発明は、光沢化剤としてスルホランや、4,4―ジオキソ−1,4−オキサチアンを使用する場合、光沢化剤の含有量を少量にして、平坦度が小さい金バンプを得ることができる。
【0098】
実施例1−38で形成された金バンプは、熱処理後の硬度が概ね35〜120HVに分布している。例えば、実施例28、実施例29には、光沢化剤として4,4―ジオキソ−1,4−オキサチアンを使用し、その濃度が10mmol/Lの場合と、50mmol/Lの場合とが示されている。これらの実施例で形成される金バンプを300℃で熱処理した場合の硬度は、光沢化剤の濃度が10mmol/Lの場合(実施例28)は55HVで、50mmol/Lの場合(実施例29)は、62HVである。
【0099】
実施例33、実施例34は、光沢化剤としてアセスルファムKを使用し、その濃度が10mmol/Lの場合と、50mmol/Lの場合とが示されている。これらの実施例で形成される金バンプを200℃で熱処理した場合の硬度は、光沢化剤の濃度が10mmol/Lの場合(実施例33)は79HVで、50mmol/Lの場合(実施例34)は、110HVである。300℃で熱処理した場合の硬度は、光沢化剤の濃度が10mmol/Lの場合(実施例33)は48HVで、50mmol/Lの場合(実施例34)は、54HVである。
【0100】
このように、金バンプの熱処理後の硬度は、光沢化剤としてのスルホキシドあるいはスルホンの濃度が高くなるほど、高くなる傾向である。従って本発明は、光沢化剤の濃度を高くすることにより、使用する導電性接着剤の導電粒子の種類や共晶接合における相手金属の硬度にあわせて、硬度が高い金バンプを形成することができる。
【0101】
ところで、本発明に用いられる光沢化剤には、4,4―ジオキソ−1,4−オキサチアンのように、濃度を高くするほど平坦度が大きくなる傾向のものがある(実施例26−30)。熱処理後の金バンプの硬度は、光沢化剤の濃度が高くなるほど高くなる傾向であるため、このような光沢化剤を単独で使用すると、熱処理後の硬度が高い金バンプを形成する際に、平坦度が大きくなる場合や、熱処理条件の調整が必要になる場合がある。
【0102】
例えば、上述の実施例28および実施例29によれば、4,4―ジオキソ−1,4−オキサチアンの濃度が10mmol/Lのとき金バンプの平坦度は、1.40μm(実施例28)である。これに対し4,4―ジオキソ−1,4−オキサチアンの濃度が50mmol/Lのとき金バンプの平坦度は1.59μm(実施例29)であり、実施例29で形成される金バンプは、実施例28で形成される金バンプより平坦度が大きい。
【0103】
しかし本発明は、4,4―ジオキソ−1,4−オキサチアンのように、濃度を高くするほど平坦度が大きくなる傾向の光沢化剤を使用して、高い硬度の金バンプを得る場合でも、他の光沢化剤と併用することにより、平坦度が大きくなることを防ぐことができる場合がある。
【0104】
実施例37および実施例38は、光沢化剤として、濃度が10mmol/L(実施例37)、50mmol/L(実施例38)の4,4―ジオキソ−1,4−オキサチアンを、濃度が50mmol/LのアセスルファムKと併用する。
【0105】
これらの実施例で形成される金バンプを200℃で熱処理した場合の硬度は、4,4―ジオキソ−1,4−オキサチアンの濃度が10mmol/Lの場合(実施例37)は108HVで、50mmol/Lの場合(実施例38)は、115HVである。300℃で熱処理した場合の硬度は、4,4―ジオキソ−1,4−オキサチアンの濃度が10mmol/Lの場合(実施例37)は51HVで、50mmol/Lの場合(実施例38)は、57HVである。すなわち熱処理後の硬度は光沢化剤の濃度が高いほど大きい。
【0106】
これらの実施例を金バンプの平坦度で比較すると、実施例37で形成された金バンプは平坦度が1.34μmであるのに対し、実施例38で形成された金バンプは平坦度が1.25μmであり、4,4―ジオキソ−1,4−オキサチアンを単独で使用した場合と異なり、光沢化剤の濃度が高い方が平坦度が小さい。
【0107】
すなわち本発明は、一の光沢化剤を、他の光沢化剤と併用することにより、熱処理条件の調整をすることなく、熱処理後の硬度が高く、平坦度が小さい金バンプを得ることができる場合がある。
【0108】
実施例1および実施例39−46は、光沢化剤の濃度は同じで、光沢化剤以外の他の各成分の濃度を変化させた実施例である。これらの実施例でも、形成された金バンプの平坦度、めっき皮膜外観、めっきのつきまわり及び熱処理後の硬度について、実施例1−38と同様の結果を得られた。すなわち、本発明は、光沢化剤の他の各成分の含有量に拘らず、所望の平坦度や硬度等を得ることができる。
【0109】
(比較例1−6)
実施例1で用いた金めっき浴において、光沢化剤を使用しないで金バンプを形成した (比較例1−6)。電解金めっき条件および熱処理条件は、実施例1−5と同様とした。比較例1−6の評価結果を表6に示す。
【0110】
(比較例7−13)
実施例1で用いた金めっき浴において、光沢化剤としてスルホキシドA、スルホンB−Gから1種選択して200mmol/L含有させて調整し、金バンプを形成した(比較例1−6)。電解金めっき条件および熱処理条件は、実施例1−5と同様とした。比較例7−13の評価結果を表6、表7に示す。
【0111】
(比較例14−20)
実施例1で用いた金めっき浴において、光沢化剤としてスルホキシドA、スルホンB−Gから1種選択して0.1mmol/L含有させて調整し、金バンプを形成した(比較例14−20)。電解金めっき条件および熱処理条件は、実施例1−5と同様とした。比較例14−20の評価結果を表7に示す。
【0112】
【表6】

【0113】
【表7】

【0114】
表6、7によれば、比較例1−20の金バンプは、いずれもめっき皮膜の外観に、色調の赤さ、デンドライト状析出、やけ、むら等が認められた。従って、これらの金バンプのめっきのつきまわりが良好でない。
【0115】
比較例1−20のうち、比較例1―6は、光沢化剤を含有しない金めっき浴で形成された金バンプである。これらの金バンプは、表面の高低差が2μmを超えていた。電極接合において効率的に接合面積を確保する上で、バンプ用途に求められる平坦度(高低差)は2μm以下であるところ、このような金バンプは、平坦度が十分でないため接合面積の確保が困難である。従って、電極接合に十分な接合力を得ることができない。
【0116】
比較例7−20は、光沢化剤を含有させた金めっき浴で形成された金バンプである。しかし、光沢化剤の含有量が適切でないため、めっき皮膜外観に色調の赤さ、デンドライト状析出、ムラが認められたり、ヤケが発生したりしており、めっき付きまわりが良好でない。
【0117】
比較例7−20のうち比較例7−13は、実施例よりも光沢化剤の濃度が高い金めっき浴で形成された金バンプである。これらの金バンプの平坦度(表面高低差)はいずれも2μm以下であった。しかし、光沢化剤としてスルホキシドA、スルホンB−Eを用いた比較例7−10の金バンプは、熱処理後硬度が、35〜60HVを超えていた。従って、これらの金バンプは、共晶接合には適さない。
【0118】
比較例14−20の金バンプは、実施例よりも光沢化剤の濃度が低い金めっき浴で形成された金バンプである。これらの金バンプの平坦度(表面高低差)はいずれも2μmを超えていた。従って、平坦度が十分でなく、接合面積の確保が困難である。従って、電極接合に十分な接合力を得ることができない。金バンプ表面にAuスパッタ膜のエッチングに用いるヨウ素系エッチャントの影響によるムラも認められた。
【符号の説明】
【0119】
1 半導体ウエハ
1’ 回路層
2 Al電極
3 パッシベーション膜
3a パッシベーション膜の開口部
4 TiWスパッタ膜
5 金スパッタ膜
6 UBM層
7 金バンプ
7a 金バンプの接合面
7’ 従来の金バンプ
7’a 従来の金バンプの接合面
8 レジスト膜
8a レジスト膜の開口部
9 半導体チップ
10 プリント配線基板
11 硬質基板
12 基板配線パターン
13 基板電極
14 封止材
A 最高点
B 最低点
C 高低差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜硫酸金アルカリ塩又は亜硫酸金アンモニウムと、伝導塩と、結晶安定化剤と、結晶調整剤と、緩衝剤と、光沢化剤とを含有し、前記亜硫酸金アルカリ塩又は亜硫酸金アンモニウムの含有量は、金濃度として1〜20g/Lであり、前記伝導塩は亜硫酸ナトリウムであって、その含有量が5〜150g/Lであり、前記光沢化剤の含有量は、0.5〜100mmol/Lである、ことを特徴とする金バンプ形成用非シアン系電解金めっき浴。
【請求項2】
前記光沢化剤は、スルホキシド及び/又はスルホンから選択される1種又は2種以上の化合物である、請求項1に記載の金バンプ形成用非シアン系電解金めっき浴。
【請求項3】
前記光沢化剤は、テトラメチレンスルホキシド、プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、スルホラン、3−ヒドロキシスルホラン、4,4−ジオキソ−1,4-オキサチアン、3−スルホレン、3―スルホレン−3−カルボン酸メチル、アセスルファムKから選択される1種又は2種以上の化合物である、請求項1または請求項2に記載の金バンプ形成用非シアン系電解金めっき浴。
【請求項4】
前記結晶調整剤は、Tl化合物、Pb化合物、又はAs化合物から選択される1種又は2種以上の化合物であって、該結晶調整剤の含有量は、金属濃度として0.1〜100mg/Lである、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の金バンプ形成用非シアン系電解金めっき浴。
【請求項5】
前記結晶安定化剤は、水溶性アミンであって、該水溶性アミンの含有量は、1〜12g/Lである、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の金バンプ形成用非シアン系電解金めっき浴。
【請求項6】
前記結晶安定化剤は、1,2−ジアミノエタン、1,2-ジアミノプロパン、又は1,6−ジアミノヘキサンから選択される1種又は2種以上の組み合わせである、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の金バンプ形成用非シアン系電解金めっき浴。
【請求項7】
パターニングされた半導体ウエハに、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の金バンプ形成用非シアン系電解金めっき浴を用いて電解金めっきを施す電解金めっき工程と、
電解金めっきを施した前記半導体ウエハを、150〜400℃で5分以上熱処理する熱処理工程とを有し、
電解金めっき工程後の表面高低差が2μmであって、前記熱処理工程後の硬度が35〜120HVの金バンプを形成する、
ことを特徴とする金バンプ形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−117113(P2012−117113A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268256(P2010−268256)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(511143564)メタローテクノロジーズジャパン株式会社 (2)
【Fターム(参考)】