説明

金具付エキゾーストマウント

【課題】ばね特性の線形領域を広く確保することができるとともに、熱ヘタリを小さく抑制することができ、また排気系部材における組付部の位置のばらつきによるばね特性への影響を小さく抑制することのできる金具付エキゾーストマウントを提供する。
【解決手段】車体への取付部となる上端側の第1取付部16と、下端側の底部18と、一対の側壁部20とを有する取付金具12、及び自動車の排気系部材への取付部となるインナ側の第2取付部24からハ字状に拡がって下側端で取付金具12に加硫接着された一対のゴム脚34を備えたゴム弾性体14にてエキゾーストマウント10を構成する。その一対のゴム脚34には、内側且つ底部18側の付根部にえぐり部48を設けておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は自動車のエキゾーストパイプ,マフラ等の排気系部材を車体に弾性的に支持させ、同時に排気系部材の振動が車体に伝わるのを防止するエキゾーストマウントに関し、特に取付金具にゴム弾性体を一体に加硫接着して成る金具付エキゾーストマウントに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車において、燃料と空気との混合ガスはシリンダ内部で燃焼して燃焼ガスを発生する。
この燃焼ガスはエキゾーストマニホールド,エキゾーストパイプ,マフラ等排気系部材にて構成された排気系を通じて外部に排出される。
この排気系部材を車体に弾性的に支持させ、同時に排気系部材から車体側に振動が伝達されるのを防止する目的でエキゾーストマウントが用いられている。
このエキゾーストマウントには、取付金具にゴム弾性体を一体に加硫接着して成る金具付きのものと、ゴム弾性体単体から成るものとがあり、要求特性に応じてそれらが使い分けられている。
【0003】
このエキゾーストマウントでは、排気系部材からの振動を車体側にできるだけ伝えないようにするために、上下方向のばね特性が軟らかい方が望ましい。
この点で金具付エキゾーストマウントにおいては、図8(A)に示しているようにゴム弾性体、詳しくは一対のゴム脚を主として剪断変形させるものが有利である。
【0004】
図8(A)のエキゾーストマウント201Aにおいて、200はアウタ部材としての取付金具で、上端側の一対の第1取付部202(以下単に取付部202とすることがある)と、下端側の底部204と、底部204の両端と取付部202とを上下に繋ぐ一対の側壁部206とを有し、全体として略コ字状をなしている。
取付金具200は、上端側の一対の取付部202において車体に取付固定される。
【0005】
208は、自動車の排気系部材に取り付けられるインナ側の第2取付部210(以下単に取付部210とすることがある)と取付金具200とを連結する状態に、取付金具200に一体に加硫接着されたゴム弾性体で、取付部210から互いに離隔する方向にハ字状に拡がる形状の一対のゴム脚212を有しており、それらゴム脚212の下側端が、取付金具200の一対の側壁部206のそれぞれに加硫接着されている。
【0006】
214は取付部210に設けられた貫通の固定孔で、取付部210は、排気系部材から延び出した支持棒をこの固定孔214に嵌入させることでかかる支持棒に、つまり排気系部材に取り付けられる。
【0007】
図8(A)に示すエキゾーストマウント201Aは、このようにして排気系部材を車体に弾性支持させ、ゴム弾性体208の弾性変形に基づいて排気系部材の振動を吸収し、防振作用する。
尚この種のエキゾーストマウントについては、例えば下記特許文献1に開示されている。
【0008】
ところで排気系部材は高温に熱せられており、その近傍に配置されるエキゾーストマウントは、常時排気系部材の荷重が下向きに加わった状態で排気系部材からの輻射熱を受けることから、熱ヘタリを起し易い問題がある。
特にゴム弾性体208を主として剪断変形させて振動吸収する図8(A)に示すエキゾーストマウント201Aにあっては、この熱ヘタリが大きい。
【0009】
一方、図8(B)(イ)に示しているようにゴム弾性体208を圧縮変形させる形式のエキゾーストマウント201Bの場合、上記の熱ヘタリに対しては有利であるものの、ゴム弾性体208に下向きに力が加わったときにゴム弾性体208が、図8(B)(ロ)に示すように上下方向の中間部で座屈を生じ易い問題がある。
而してゴム弾性体208がこのような座屈を生じてしまうと、上下方向のばね特性線図(荷重-撓み線図)が非線形化してしまう。
【0010】
またこの図8(B)に示すエキゾーストマウント201Bの場合、次のような問題も有する。
排気系部材は車両前後方向に長く延びており、車両への組付状態で、エキゾーストマウントとの組付部の位置がばらつきを生じ易く、特に後ろ側の部位ほどその位置のばらつきは大きくなり易い。
而して排気系部材におけるエキゾーストマウントとの組付部の位置が設定された適正な位置からずれると、例えば上記の支持棒の位置が図8(B)において適正な組付位置から左右方向にずれていると、その支持棒を固定孔214に嵌入させて組付けを行ったときに、ゴム弾性体208が図中左右方向に変形した状態となり、この場合ゴム弾性体208の上下方向のばね特性がその変形によって、即ち支持棒の位置のズレによって大きく影響されてしまう。
即ちこの図8(B)に示すエキゾーストマウント201Bの場合、上下方向のばね特性が、相手側の組付部の位置のズレに対して敏感となってしまい、組付状態で予め設計してあるばね特性を安定して発現しにくい。
【0011】
エキゾーストマウントとして、他に、図9に示す形態のものも従来知られている。
図9に示すエキゾーストマウント201Cでは、ゴム弾性体208が一対のゴム脚212を有している。これらゴム脚212は、第2取付部210から下方に移行するに従って互いに離隔する方向にハ字状に拡がる形状をなしており、そしてそれぞれの下側端の一部が取付金具200の底部204に着座して底部204により支持され、また残りの一部が側壁部206に着座して側壁部206により支持される状態に底部204と側壁部206とに跨って加硫接着されている。
尚この種のエキゾーストマウントは、例えば下記特許文献2に開示されている。
【0012】
このエキゾーストマウント201Cの場合、ゴム弾性体208に下向きの力が加わったとき、一対のゴム脚212は剪断変形と圧縮変形との両方との変形を生じる。
詳しくは、図8(A)に示すものに比べてゴム変形における圧縮成分がより大きい。
従ってこのエキゾーストマウント201Cは、図8(A)に示すものに比べてゴム脚212が上下方向中間部で座屈を起すといった問題を生じ難く、またゴム弾性体208が一対のゴム脚212を有し、そしてそれらがハ字状に拡がった形状をなしていることから、上下方向のばね特性に対する、排気系部材の取付部の位置誤差による影響も小さく抑えることができる。
更に図8(A)に示すものに較べてゴム変形における圧縮成分が大きいため、熱ヘタリに対しても有利と考えられる。
【0013】
図9に示すエキゾーストマウント201Cでは、ゴム脚212と底部204との接着界面での接着剥離を防ぐ等の目的で、ゴム脚212内側の、底部204側の付根部216が円弧形状(R形状)に形成される。
この付根部216は、ゴム脚212の他の部分に比べて応力集中し易い個所であり、このためゴム脚212に下向きの力が加わったとき、ゴム脚212がその付根部216で座屈を生じ易い。
【0014】
而してゴム脚212がこの付根部216で座屈を生じると、その座屈によってゴム弾性体208のばね特性が非線形化してしまう。
また付根部216で一旦座屈を生じると、その座屈した個所に荷重が更に集中して座屈部が更に大きく変形し、またそこに排気系部材からの輻射熱が加わることで座屈部分の熱ヘタリが助長される。
そして付根部216で大きな熱ヘタリを生じてゴム脚212が下向きの力で底部204に当たった状態になると、そこでばね特性が急激に硬く変化し、振動吸収性能が悪化してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2001−328441号公報
【特許文献2】特開2010−242606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は以上のような事情を背景とし、ばね特性の線形領域を広く確保することができるとともに、熱ヘタリを小さく抑制することができ、また排気系部材における組付部の位置のばらつきによるばね特性への影響を小さく抑制することのできる金具付エキゾーストマウントを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
而して請求項1のものは、(A)(a)車体への取付部となる上端側の第1取付部と、(b)下端側の底部と、(c)該底部の両端と該第1取付部とを上下に繋ぐ一対の側壁部と、を有するアウタ側の取付金具、及び(B)自動車の排気系部材への取付部となるインナ側の第2取付部から下方に移行するに従って互いに離隔する方向に拡がる形状をなし、下側端で前記取付金具に加硫接着されて、該第2取付部と該取付金具とを連結する一対のゴム脚を備えたゴム弾性体を有し、前記排気系部材を前記車体に弾性支持させる金具付エキゾーストマウントであって、前記一対のゴム脚は、前記車体への取付前の自由形状状態で、前記下側端の少なくとも一部が前記取付金具の前記底部に対して直接又は間接に着座させてあるとともに、該一対のゴム脚のそれぞれには、互いに対向する側の内側の、前記底部側の付根部に、該ゴム脚の内側面で開口し、該開口から該ゴム脚の内部に向うえぐり部が該内側面の全幅に亘って設けてあることを特徴とする。
【0018】
請求項2のものは、請求項1において、前記ゴム脚は、前記下側端の全体が前記取付金具の前記底部に直接又は間接に着座させてあることを特徴とする。
【0019】
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記ゴム脚の下側端と前記取付金具の底部との間には、該ゴム脚と一体に成形された、該ゴム脚の該下側端よりも平面視形状の大きいゴム台座部が設けてあり、該ゴム台座部を介して該下側端が前記底部に間接に着座させてあることを特徴とする。
【0020】
請求項4のものは、請求項3において、該ゴム台座部には、前記ゴム脚の下側位置においてゴムストッパ部が一体に成形してあることを特徴とする。
【0021】
請求項5のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記車体への取付状態で且つ前記排気系部材の支持状態で、前記ゴム脚の下側の一部が前記取付金具の底部に直接又は間接に当る状態となしてあることを特徴とする。
【0022】
請求項6のものは、請求項5において、前記ゴム脚の下側端と前記取付金具の底部との間には、該ゴム脚と一体に成形された、該ゴム脚の下側端よりも平面視形状の大きいゴム台座部が設けてあり、該ゴム台座部を介して該下側端が前記底部に間接に着座させてあることを特徴とする。
【0023】
請求項7のものは、請求項6において、前記ゴム台座部には、前記ゴム脚の下側位置においてゴムストッパ部が一体に成形してあり、前記車体への取付状態且つ前記排気系部材の支持状態で、前記ゴム脚の下側の一部が該ゴムストッパ部を介して前記取付金具の底部に間接に当る状態となしてあることを特徴とする。
【0024】
請求項8のものは、請求項5において、前記取付金具の底部は、前記側壁部側の各端部に対して、該端部と端部との間の部分が低所部となしてあり、該端部に対して前記ゴム脚の下側端が直接に着座する一方、該低所部にはゴムストッパ部が設けてあって、前記車体への取付状態且つ前記排気系部材の支持状態で、前記ゴム脚の下側の一部が該ゴムストッパ部を介して前記取付金具の底部に間接に当る状態となしてあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0025】
以上のように本発明は、金具付エキゾーストマウントにおいて、ゴム脚における下側端の少なくとも一部を取付金具の底部に直接又は間接に着座させ、その下端側の少なくとも一部を取付金具の底部にて支持するようになすとともに、一対のゴム脚の夫々には、互いに対向する側の内側であって取付金具の底部側の付根部に、ゴム脚の内側面で開口し、その開口からゴム脚の内部に向かうえぐり部を内側面の全幅に亘って設けたものである。
【0026】
本発明では、ゴム脚の下側端の少なくとも一部が取付金具の底部にて下側から支持されるため、ゴム脚に対して下向きの力が加わったとき、ゴム脚変形における圧縮成分を大とすることができ、ゴム脚全体に亘る均等な変形を伴った熱ヘタリを小さく抑制することができる。
また下方に進むに連れて互いに離隔する方向に拡がる形状の一対のゴム脚を備えていることから、ゴム脚変形における圧縮成分が大であるのにも拘らず、排気系部材の組付部の位置のばらつきによる上下方向のばね特性への影響を小さく抑制することができる。
【0027】
更にゴム脚の内側の付根部にえぐり部を設けることで、ゴム脚の付根部全体を積極的に変形抵抗の小さい軟らかい部分となしているために、ゴム脚全体の動きの自由度が高まり、ゴム脚が排気系部材の組付部の位置ずれした方向に全体的に移動し易くなり、組付部の位置がばらついた場合であっても、上下方向のばね特性に与える影響を小さく抑制することができる。
【0028】
本発明では、ゴム脚変形における圧縮成分を大としつつ、ゴム脚の内側の付根部にえぐり部を設けることで、後に明らかにされるように撓みゼロの状態から取付金具の底部によるストッパ作用でばね特性が急激に立ち上がるに到るまで、ゴム脚の座屈によるばね特性の非線形化を生ぜしめず、撓みゼロの状態からばね特性が急激に立ち上がるに到るまでの間、ばね特性を線形化することが可能で、広い範囲に亘ってその線形領域を確保することが可能である。
【0029】
本発明では、ゴム脚の内側の付根部にえぐり部を設け、その内側の付根部を積極的に変形抵抗の小さな部分としていることから、エキゾーストマウントを車体に取り付けて排気系部材を支持した状態の下で、排気系部材の支持により変形したゴム脚の下側の一部を、当初から取付金具の底部に当った状態となすこと(請求項5)が可能となる。
この場合、エキゾーストマウントが排気系部材を支持した当初から、ゴム脚の内側の付根部は実質的に排気系部材の荷重支持を担っておらず、排気系部材に対する荷重支持は実質的にゴム脚の、付根部以外の部分が担っている。
【0030】
その状態の下で更にゴム脚に対し下向きの力が加わったとき、そのばね特性は付根部の座屈が原因で非線形化するといったことはなく、線形領域を保つことができる。
また、ゴム脚の内側の付根部に荷重集中して、その付根部が熱による影響で大きく熱ヘタリするといった問題も生じず、耐熱ヘタリ性を高めることができる。
【0031】
本発明では、ゴム脚の下側端の全体を取付金具の底部に直接又は間接に着座させ、ゴム脚の全体を取付金具の底部にて下側から支持するようになしておくことができる(請求項2)。
この場合、ゴム脚変形における圧縮成分を一層大とすることができ、耐熱ヘタリ性を一層高めることができる。
【0032】
またゴム脚全体の、上下方向に対する直角方向の移動の自由度が高まり、排気系部材の組付部の位置のズレによる上下方向のばね特性への影響を更に効果的に小さく抑制することができる。
【0033】
本発明では、ゴム脚の下側端と取付金具の底部との間に、ゴム脚と一体に成形された、ゴム脚の下側端よりも平面視形状の大きいゴム台座部を設け、ごのゴム台座部を介してゴム脚の下側端を取付金具の底部に間接に着座させておくことができる(請求項3,請求項6)。
【0034】
この場合においてゴム台座部には、ゴム脚の下側位置においてゴムストッパ部を一体に成形しておくことができる(請求項4,請求項7)。
このようにすることで、ゴム脚が下向きに大きく変形しようとしたとき、ゴム脚をそのゴムストッパ部を介して取付金具の底部に軟らかく当接させてストッパ作用をさせることができる。
【0035】
次に請求項8は、取付金具の底部を、側壁部側の各端部に対して、端部と端部との間の部分を低所部となし、その端部に対してゴム脚の下側端を直接に着座させる一方、低所部にはゴムストッパ部を設けておき、車体への取付状態且つ排気系部材の支持状態の下で、ゴム脚の下側の一部がゴムストッパ部を介して取付金具の底部に間接に当る状態となしたものである。
【0036】
このように取付金具の底部に低所部を設けて、そこにゴムストッパ部を設けておくことで、ゴム脚の上下方向の変位量即ち可動ストロークを効果的に大きく確保することができる。
尚本発明においては、上記のインナ側の第2取付部をゴム弾性体に一体に備えておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態である金具付エキゾーストマウントを車体取付け前の自由形状状態で示した図である。
【図2】(A)図1の要部拡大図である。(B)変形例の要部拡大図である。
【図3】図1のエキゾーストマウントの荷重-撓み特性線図である。
【図4】エキゾーストマウントに荷重を加えて撓ませたときのゴム脚の変形状態の変化を示した図である。
【図5】図4に続く図である。
【図6】図5に続く図である。
【図7】本発明の他の実施形態の図である。
【図8】剪断タイプ及び圧縮タイプのエキゾーストマウントの一例を示した図である。
【図9】図8とは異なるタイプの従来のエキゾーストマウントの一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて以下に詳しく説明する。
図1において、10は本実施形態の金具付エキゾーストマウント(以下単にエキゾーストマウントとする)で、ここではエキゾーストマウント10を、車体への取り付け前の自由形状状態で示している。
図において、12はアウタ部材をなす取付金具で、その内側にゴム弾性体14が配置されている。
【0039】
取付金具12は、厚みが一様な金属板材を曲げて構成したもので、全体が略コ字形状をなしている。
具体的には、取付金具12は、車体への取付部となる上端側の一対の第1取付部(以下単に取付部16とすることがある)16と、下端側の底部18と、底部18の図中左右方向の両端と取付部16とを上下に繋ぐ一対の側壁部20とを有している。
底部18及び一対の側壁部20は、夫々の内面が平坦面をなしている。
また一対の側壁部20は、底部18に対して直角をなしている。
【0040】
上記一対の取付部16は、これら側壁部20の上端から互いに離隔する方向即ち反対方向に、側壁部20から直角に突き出している。
これら取付部16には円形の固定孔22が設けられており、一対の取付部16は、夫々の固定孔22において車体に固定され、取り付けられる。
尚、取付金具12における取付部16,側壁部20及び底部18は夫々同一幅(図1(B)中紙面と直角方向の幅)で形成されている。
【0041】
24は排気系部材への取付部となるインナ側のゴム製の第2取付部(以下単に取付部24とすることがある)で、ここでは取付部24はゴム弾性体14に一体に備えられている。
この取付部24は、全体として筒状をなしていて、図1(B)中紙面と直角方向に貫通する円形の固定孔26が設けられており、取付部24は、この固定孔26において排気系部材に取り付けられる。詳しくは排気系部材に設けられた組付部としての支持棒をこの固定孔26に嵌入させる状態に、かかる支持棒即ち排気系部材に取り付けられる。
【0042】
この取付部24の上面は、図示を省略する上側のストッパに対して当接する平坦な当接面28をなしており、また左右一対の側面が、それぞれに対向する一対の側壁部20に対して当接する平坦な当接面30をなしている。更に下面の中央部が、底部18の内面(上面)に対して当接する平坦な当接面32をなしている。
【0043】
ゴム弾性体14は、取付部24と取付金具12とを連結する一対のゴム脚34を有しており、取付金具12に対して一体に加硫接着されている。
一対のゴム脚34は、取付部24から下方に移行するに従って互いに離隔する方向にハ字状に拡がる形状をなしており、それぞれの下側端で、後述のゴム台座部36を介し取付金具12の底部18に加硫接着されている。
尚、図1(B)に示しているように一対のゴム脚34における下部の外面(側壁部20側の面)は、各対応する側壁部20と平行に延びる立下り面46とされており、これら立下り面46と側壁部20との間に間隙Sが生ぜしめられている。
【0044】
上記一対のゴム脚34は、それぞれ横断面形状が4角形状をなしており、また上記の取付部24は、ゴム脚34に対し固定孔26における軸線方向の各端部が同方向に突出せしめられている。
一対のゴム脚34の各下側端と取付金具12の底部18との間には、ゴム脚34と一体に成形された、ゴム脚34の下側端よりも平面視形状の大きいゴム台座部36が一様な厚みで設けられている。
一対のゴム脚34のそれぞれの下側端は、これらゴム台座部36を介して、取付金具12の底部18にその全体が着座せしめられている。即ちゴム脚34のそれぞれの下側端が、この底部18によって下側から支持されている。
従って一対のゴム脚34に対して下向きの力が加わったとき、各ゴム脚34は剪断方向と圧縮方向との両方向に弾性変形せしめられる。
この実施形態において、ゴム脚34は全体の変形に占める圧縮成分が図8(A)及び図9に示すものに比べて大きい。
【0045】
上記ゴム台座部36のそれぞれには、ゴムストッパ部38が同じ厚みで一体成形されており、これらゴムストッパ部38が各対応するゴム脚34の下側において取付金具12の底部18上に設けられている。
これら一対のゴムストッパ部38もまた、底部18に対し一体に加硫接着されている。
これらゴムストッパ部38は、ゴム脚34よりも図1(B)中紙面と直角方向に大きな幅を有して、ゴム台座部36からそれぞれ互いに接近する側に延出した大形部40と、大形部40の中央部から更に互いに接近する側、即ち内方側に突き出した突出部42とを有している。
【0046】
尚これら一対のゴムストッパ部38と38とは、それらの間において取付金具12の底部18内面に設けられたゴム膜44にて互いに繋がっている。
【0047】
図2(A)に詳しく示しているように、各一対のゴム脚34のそれぞれには、互いに対向する側の内側であって底部18側の付根部に、ゴム脚34の内側面で開口し、その開口からゴム脚34の内部に向うえぐり部48が、底部18と平行方向に且つゴム脚34内側面の全幅(図1(B)中紙面と直角方向の全幅)に亘って設けられている。図2(A)中50は、そのえぐり部48のゴム脚34内側面における開口を示している。
尚、えぐり部48の奥側端面(図2(A)中右側端面)53は、半円形状の曲面とされている。
【0048】
図4〜図6は、本実施形態のエキゾーストマウント10の取付部24に対して、固定孔26において下向きの力を加えたときのゴム弾性体14の、詳しくはゴム脚34の変形状態の変化を、図9に示すエキゾーストマウントの変形状態の変化と比較して示している。
また図3に、それぞれの荷重-撓み特性(ばね特性)線図を示している。
【0049】
図4(I)は荷重無負荷の状態、即ち自由形状状態を示しており、従って当然ながらゴム脚34及び212の撓み量はゼロである。
図4(II)は、取付部24を下向きに8mm変位させた状態、即ちゴム脚34,212を8mm撓ませたときの状態を示している。
このとき取付部24、即ち各一対のゴム脚34,212に対して下向きに加わる荷重は、図3に示しているように約130N(ニュートン)でほぼ同等である。
つまり取付部24と210とに対して下向きの約130Nの荷重を与えたときに、本実施形態のエキゾーストマウント10及び比較例のエキゾーストマウント201Cの、それぞれの取付部24,210、つまりゴム脚34,212のそれぞれが同じ8mmだけ撓む。
【0050】
別言すれば、本実施形態のエキゾーストマウント10,比較例のエキゾーストマウント201Cともに、排気系部材の支持荷重1W(約100N)が加わったときに、それぞれのゴム脚34,212が同じ量だけ撓むように、それぞれのゴム弾性体14及び208のばね定数がチューニングされており、8mmゴム脚34,212が撓んだときにも荷重がほぼ同等となっている。
尚、図3に示しているように本実施形態のエキゾーストマウント10,比較例のエキゾーストマウント201Cともに、撓み量が8mmに到るまでばね特性が線形を保っている。
【0051】
本実施形態では、排気系部材をエキゾーストマウント10が支持した状態、つまり排気系部材の支持荷重が取付部24、つまりゴム脚34に加わったときに、ゴム脚34における下側の一部がゴムストッパ部38を介して取付金具12の底部18に当った状態となる。そのようにえぐり部48の形状が定められている。
従って図4(II)に示すように取付部24、つまりゴム脚34が8mm撓んだ状態で、ゴム脚34の下側の一部は、ゴムストッパ部38を介して取付金具12の底部18に当った状態にある。
【0052】
この状態で、えぐり部48を設けたゴム脚34の内側の付根部は、実質的に排気系部材の荷重支持を担っておらず、その荷重支持は実質的にゴム脚34における他の部分が担っている。
【0053】
一方比較例のエキゾーストマウント201Cではこのとき、即ち撓み8mmの状態の下で、ゴム脚212(その下側端を除く)は全体的に取付金具200の底部204に当っておらず、ゴム脚212の内側の付根部216は、依然として排気系部材の荷重支持を担っている。
その結果として、内側の付根部216には大きな応力集中が生じている。
【0054】
本実施形態のエキゾーストマウント10では、図5(III),(IV),図6(V)に示しているように、ゴム脚34に対して下向きの荷重を更に大きくしていくと、ゴムストッパ部38を介しての取付金具12の底部18への接触面積を漸次大としながら、ゴム脚34の撓み量が10mm,12mm,14mmと増大していく。この間、図3に示しているようにゴム脚34の荷重-撓み特性線図、即ちばね特性線図は、良好に線形を保っている。
つまりゴム脚34は、撓み量ゼロの状態から撓み量と荷重との関係を線形に保ちながら、荷重の増大とともに撓み量を増大させていき、そしてゴム脚34の全体及び取付部24が、取付金具12の底部18に当接することで、そこでばね特性線図が急激に立ち上がる形となる。
【0055】
一方比較例のエキゾーストマウント201Cでは、図4(II)の状態、即ち撓み量が8mmを超えた辺りから荷重の更なる増大によって上記の付根部216が一層大きく変形して撓み量が増大し、そしてあるところで付根部216が座屈を生じるに到る。
【0056】
而して付根部216が座屈を生じるに到ると、ゴム脚212の撓み量が10mm,12mm,14mmと増大しても荷重支持力は高まらず、図3に示しているようにばね特性線図は、その座屈を生じた辺りから寝た形となる。
そしてその後、ゴム脚212全体が底部204に当たって底部204による強い抵抗が生じたところで、即ち底部204による強いストッパ作用が働いたところで、ばね特性線図が急激に立ち上がる形となる。
【0057】
以上のように本実施形態のエキゾーストマウント10にあっては、ゴム脚34の下側端の全体が取付金具12の底部18にて下側から支持されるため、ゴム脚34に対して下向きの力が加わったとき、ゴム脚変形における圧縮成分を大とすることができ、ゴム脚34全体に亘る均等な変形を伴った熱ヘタリを小さく抑制することができる。
また下方に進むに連れて互いに離隔する方向に拡がる形状の一対のゴム脚34を備えていることから、ゴム脚変形における圧縮成分が大であるのにも拘らず、排気系部材の組付部の位置のばらつきによる上下方向のばね特性への影響を小さく抑制することができる。
【0058】
更にゴム脚34の内側の付根部にえぐり部48を設けることで、ゴム脚34の付根部全体を積極的に変形抵抗の小さい軟らかい部分となしているために、ゴム脚34全体の動きの自由度が高まり、ゴム脚34が排気系部材の組付部(具体的にはここでは支持棒)の位置ずれした方向に全体的に移動し易くなり、組付部の位置がばらついた場合であっても、上下方向のばね特性に与える影響を小さく抑制することができる。
【0059】
また本実施形態では、ゴム脚変形における圧縮成分を大としつつ、ゴム脚34の内側の付根部にえぐり部48を設けることで、撓みゼロの状態から取付金具12の底部18によるストッパ作用でばね特性が急激に立ち上がるに到るまで、ゴム脚34の座屈によるばね特性の非線形化を生ぜしめず、撓みゼロの状態からばね特性が急激に立ち上がるに到るまでの間、ばね特性を線形化することができる。
【0060】
本実施形態では、エキゾーストマウント10を車体に取り付けて排気系部材を支持した状態の下で、排気系部材の支持により変形したゴム脚34の下側の一部を、当初から取付金具12の底部18に当った状態となしている。
この場合、エキゾーストマウント10が排気系部材を支持した当初から、ゴム脚34の内側の付根部は実質的に排気系部材の荷重支持を担っておらず、排気系部材に対する荷重支持は実質的にゴム脚34の、付根部以外の部分が担っている。
【0061】
従ってその状態の下で、更にゴム脚34に対し下向きの力が加わったとき、そのばね特性は付根部52の座屈が原因で非線形化するといったことはなく、線形領域を保つことができる。
また、ゴム脚34の内側の付根部に荷重集中して、その付根部が熱による影響で大きく熱ヘタリするといった問題も生じず、耐熱ヘタリ性を高めることができる。
【0062】
本実施形態では、ゴム脚34の下側端と取付金具12の底部18との間に、ゴム脚34と一体に成形された、ゴム脚34の下側端よりも平面視形状の大きいゴム台座部36を設け、そのゴム台座部36に、ゴム脚34の下側位置においてゴムストッパ部38を一体に成形してあるため、ゴム脚34が下向きに大きく変形しようとしたとき、ゴム脚34をそのゴムストッパ部38を介して取付金具12の底部18に軟らかく当接させてストッパ作用をさせることができる。
【0063】
尚上記実施形態において、えぐり部48のえぐり深さは、図2(B)に示すえぐり部48のように、図2(A)に示すものよりも浅くしたり、或いは逆に深くしたりすることも可能である。
【0064】
図7は本発明の他の実施形態を示している。
この例は、取付金具12における底部18の、側壁部20側の各端部18Aに対して、それら端部18Aと18Aとの間の部分を低所部18Bとなし、そして端部18Aにゴム脚34のそれぞれの下側端を直接着座させるとともに、低所部18Bの内面にゴムストッパ部38を設けた例で、このようになした場合、ゴム脚34の上下方向の撓み量即ち取付部24の上下方向の可動ストロークを大きく確保しつつ、エキゾーストマウント54をコンパクトに構成できる利点が得られる。
【0065】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示であり、例えばえぐり部の形状を上例以外の他の様々な形状とすることが可能であるなど、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0066】
10,54 金具付エキゾーストマウント
12 取付金具
14 ゴム弾性体
16 第1取付部
18 底部
18A 端部
18B 低所部
20 側壁部
24 第2取付部
34 ゴム脚
36 ゴム台座部
38 ゴムストッパ部
48 えぐり部
50 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(a)車体への取付部となる上端側の第1取付部と、(b)下端側の底部と、(c)該底部の両端と該第1取付部とを上下に繋ぐ一対の側壁部と、を有するアウタ側の取付金具、及び(B)自動車の排気系部材への取付部となるインナ側の第2取付部から下方に移行するに従って互いに離隔する方向に拡がる形状をなし、下側端で前記取付金具に加硫接着されて、該第2取付部と該取付金具とを連結する一対のゴム脚を備えたゴム弾性体を有し、前記排気系部材を前記車体に弾性支持させる金具付エキゾーストマウントであって、
前記一対のゴム脚は、前記車体への取付前の自由形状状態で、前記下側端の少なくとも一部が前記取付金具の前記底部に対して直接又は間接に着座させてあるとともに、
該一対のゴム脚のそれぞれには、互いに対向する側の内側の、前記底部側の付根部に、該ゴム脚の内側面で開口し、該開口から該ゴム脚の内部に向うえぐり部が該内側面の全幅に亘って設けてあることを特徴とする金具付エキゾーストマウント。
【請求項2】
請求項1において、前記ゴム脚は、前記下側端の全体が前記取付金具の前記底部に直接又は間接に着座させてあることを特徴とする金具付エキゾーストマウント。
【請求項3】
請求項1,2の何れかにおいて、前記ゴム脚の下側端と前記取付金具の底部との間には、該ゴム脚と一体に成形された、該ゴム脚の該下側端よりも平面視形状の大きいゴム台座部が設けてあり、該ゴム台座部を介して該下側端が前記底部に間接に着座させてあることを特徴とする金具付エキゾーストマウント。
【請求項4】
請求項3において、該ゴム台座部には、前記ゴム脚の下側位置においてゴムストッパ部が一体に成形してあることを特徴とする金具付エキゾーストマウント。
【請求項5】
請求項1,2の何れかにおいて、前記車体への取付状態で且つ前記排気系部材の支持状態で、前記ゴム脚の下側の一部が前記取付金具の底部に直接又は間接に当る状態となしてあることを特徴とする金具付エキゾーストマウント。
【請求項6】
請求項5において、前記ゴム脚の下側端と前記取付金具の底部との間には、該ゴム脚と一体に成形された、該ゴム脚の下側端よりも平面視形状の大きいゴム台座部が設けてあり、該ゴム台座部を介して該下側端が前記底部に間接に着座させてあることを特徴とする金具付エキゾーストマウント。
【請求項7】
請求項6において、前記ゴム台座部には、前記ゴム脚の下側位置においてゴムストッパ部が一体に成形してあり、前記車体への取付状態且つ前記排気系部材の支持状態で、前記ゴム脚の下側の一部が該ゴムストッパ部を介して前記取付金具の底部に間接に当る状態となしてあることを特徴とする金具付エキゾーストマウント。
【請求項8】
請求項5において、前記取付金具の底部は、前記側壁部側の各端部に対して、該端部と端部との間の部分が低所部となしてあり、該端部に対して前記ゴム脚の下側端が直接に着座する一方、該低所部にはゴムストッパ部が設けてあって、前記車体への取付状態且つ前記排気系部材の支持状態で、前記ゴム脚の下側の一部が該ゴムストッパ部を介して前記取付金具の底部に間接に当る状態となしてあることを特徴とする金具付エキゾーストマウント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−68288(P2013−68288A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208053(P2011−208053)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】