説明

金切り鋏

【課題】角波板の凹凸の間隔や深さにかかわらず、折れ目を横切って自由に切断することができる金切り鋏を提供する。
【解決手段】静刃片11が静刃ハンドル22の先端部に静刃固定部21を有し、静刃固定部21に静刃21cを設けて成る。動刃片12が動刃ハンドル32の先端部に動刃固定部31を有し、動刃固定部31に動刃31cを設けて成る。静刃片11および動刃片12は静刃ハンドル22の中間部および動刃ハンドル32の中間部で支軸13を中心として回転可能に取り付けられ、静刃21cと動刃31cとの間で切断可能である。静刃ハンドル22は、先端部の静刃固定部21が静刃21cの刃線21fおよび刃線21fの延長線より峰側に配置され、支軸13と静刃21cとの間で刃線21fの延長線より峰側を通って後端部が静刃21cの裏スキ面21hの延長面より反対側となる動刃片12の側に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金切り鋏に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の金切り鋏として、容易に切り進めることができるよう、切断時に親指をかけるための親指掛や、切断しやすくするための切欠部を有するものがある(例えば、特許文献1参照)。また、波板や折板を切断するために、刃線の形状を、板の波の形状に合わせて成形したものがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3116357号公報
【特許文献2】特開2000−84269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建築現場などでは、金切り鋏により、断面が曲面状に波打った波板だけでなく、断面が角張った凹凸状の角波板を、凹凸を横切る方向に切断しなければならないことがある。このとき、特許文献1に記載のような金切り鋏では、角張った折れ目のところで真っ直ぐ切断できないという課題があった。無理に真っ直ぐ切断しようとすると、切断面にバリができたり、角波板の塗装面をひっかいて傷つけたりして、角波板が使い物にならなくなる。また、刃線の形状を、角波板の波の形状に合わせて成形した金切り鋏では、凹凸の間隔や深さ等が異なる場合や、凹凸に対して切断方向が変わる場合には使用できないという課題があった。
【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、角波板の凹凸の間隔や深さにかかわらず、折れ目を横切って自由に切断することができる金切り鋏を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る金切り鋏は、静刃片と動刃片とを有し、前記静刃片は静刃ハンドルの先端部に静刃を設けて成り、前記動刃片は動刃ハンドルの先端部に前記静刃との間で切断可能な動刃を設けて成り、前記静刃片および前記動刃片は前記静刃ハンドルの中間部および前記動刃ハンドルの中間部で支軸を中心として回転可能に取り付けられ、前記静刃ハンドルは、先端部が前記静刃の刃線および刃線延長線より峰側に配置され、前記支軸と前記静刃との間で前記刃線延長線より峰側を通って後端部が前記静刃の裏スキ面の延長面より動刃片側に配置されていることを、特徴とする。
【0007】
本発明に係る金切り鋏は、角波板の折れ目を横切って切断するとき、折れ目の山部を上側にした状態で、静刃を角波板の下側に、動刃を角波板の上側に配置して、まず、折れ目の位置まで切断する。次に、静刃と動刃とを開いて静刃の刃元を折れ目を越えた谷部に位置付ける。静刃ハンドルおよび動刃ハンドルの後端部を握って静刃および動刃を開閉し、折れ目の位置から折れ目を越えた位置まで連続して切断することができる。このとき、静刃ハンドルの先端部は静刃の刃線および刃線延長線より峰側に配置され、支軸と静刃との間で刃線延長線より峰側を通って後端部が裏スキ面延長面より動刃片側に配置されているので、静刃ハンドルが角波板と干渉しにくく、切断しやすい。本発明に係る金切り鋏は、角波板の凹凸の間隔や深さにかかわらず、折れ目を横切って自由に切断することができる。本発明に係る金切り鋏は、角波板のほか、平板や折板、波板を切断するのに用いてもよい。
【0008】
本発明に係る金切り鋏は、前記静刃片の刃線の延長方向に対し前記支軸が傾斜していることが好ましい。
この場合、直線状に切断するとき、静刃片の刃線の延長方向に対し支軸が直角な場合に比べて、切断箇所から静刃ハンドルおよび動刃ハンドルの後端部がより離れるので、それらの後端部および後端部を握った手が切断箇所と干渉しにくく、切断しやすい。
【0009】
本発明に係る金切り鋏は、前記静刃ハンドルの前記裏スキ面延長面との交差部分が前記静刃片の刃線の延長方向に対し傾斜し、前記交差部分の厚みが前記静刃の峰側から刃線側にかけて薄くなっていることが好ましい。
この場合、角波板の折れ目を横切って切断するとき、静刃ハンドルの裏スキ面延長面との交差部分の厚みが切断箇所で狭く、切断箇所から離れた位置ほど広くなる切れ目に対応するので、切断箇所に無理な力がかからず、切断しやすい。
【0010】
本発明に係る金切り鋏で、前記静刃および前記動刃は厚さ方向に貫通孔を有し、前記貫通孔を貫通する固定ネジにより前記静刃ハンドルの先端部および前記動刃ハンドルの先端部にそれぞれ取り付けられ、前記静刃および前記静刃ハンドルの先端部ならびに前記動刃および前記動刃ハンドルの先端部にはそれぞれ互いに係合して前記固定ネジの軸線中心の前記静刃および前記動刃の回転を止める係合部を有することが好ましい。
この場合、1個の固定ネジのみで前記静刃および前記動刃を動かないよう固定することができる。静刃および動刃は、それぞれ1個の固定ネジのみで固定できるため、切断対象などに応じて交換を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、角波板の凹凸の間隔や深さにかかわらず、折れ目を横切って自由に切断することができる金切り鋏を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態の金切り鋏を示す(a)平面図、(b)正面図である。
【図2】図1に示す金切り鋏の(a)左側面図、(b)背面図である。
【図3】図1に示す金切り鋏の角波板を切断する使用状態を示す正面図である。
【図4】図1に示す金切り鋏の角波板を切断する使用状態を示す左側面図である。
【図5】本発明の実施の形態の金切り鋏の切断刃の変形例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。
図1乃至図5は、本発明の実施の形態の金切り鋏を示している。
図1および図2に示すように、金切り鋏10は、静刃片11と動刃片12とを有している。静刃片11は、静刃ハンドル22の先端部に静刃固定部21を一体的に有し、静刃固定部21に静刃21cを設けて成っている。動刃片12は、動刃ハンドル32の先端部に動刃固定部31を一体的に有し、動刃固定部31に動刃31cを設けて成っている。静刃片11および動刃片12は、静刃ハンドル22の中間部および動刃ハンドル32の中間部で支軸13を中心として回転可能に取り付けられ、静刃21cと動刃31cとの間で切断可能である。
【0014】
静刃ハンドル22は、細長く、ゆるやかなS字状に湾曲した形状を有している。動刃ハンドル32は、静刃ハンドル22とほぼ同じ長さを有し、細長く、ゆるやかなS字状に湾曲した形状を有している。静刃ハンドル22および動刃ハンドル32は、支軸13が取り付けられた中間部が細い板状で、後部が握りやすい楕円形状の断面である。その後部には、周囲に沿って滑り止めの多数の溝が形成されている。静刃固定部21は、取付面21aと係合凸部21bとを有している。動刃固定部31は、取付面31aと係合凸部31bとを有している。
【0015】
静刃固定部21の取付面21aと動刃固定部31の取付面31aは、互いに平坦で、閉じたときずれた位置で互いに対向する側に設けられている。係合凸部21bは、取付面21aの後端部に動刃片12側に突出するよう設けられている。係合凸部31bは、取付面31aの後端部に静刃片11側に突出するよう設けられている。取付面21aは、雄ネジから成る固定ネジ21dと螺合し、取付面21aの反対面21eに貫通する雌ネジ孔を有している。取付面31aは、雄ネジから成る固定ネジ31dと螺合し、取付面31aの反対面31eに貫通する雌ネジ孔を有している。取付面21aおよび取付面31aの開閉方向外側縁には、側壁が設けられている。
【0016】
静刃21cおよび動刃31cは、鋼鉄製で薄い矩形板状を成し、それぞれ刃線21fおよび刃線31fを有している。静刃21cは、厚さ方向に固定ネジ21dの軸を貫通させる貫通孔を有し、縁部に係合凹部21gを有している。静刃21cは、刃面を取付面21aに当て、峰部を側壁に当て、係合凹部21gを係合凸部21bに係合させて、貫通孔を貫通して雌ネジ孔と螺合する固定ネジ21dにより静刃固定部21に着脱可能に固定されている。係合凹部21gと係合凸部21bとの係合により、固定ネジ21dの軸線中心の動刃21cの回転が止められている。
【0017】
動刃31cは、厚さ方向に固定ネジ31dの軸を貫通させる貫通孔を有し、縁部に係合凹部31gを有している。動刃31cは、刃面を取付面31aに当て、峰部を側壁に当て、係合凹部31gを係合凸部31bに係合させて、貫通孔を貫通して雌ネジ孔と螺合する固定ネジ31dにより動刃固定部31に着脱可能に固定されている。係合凹部31gと係合凸部31bとの係合により、固定ネジ31dの軸線中心の動刃31cの回転が止められている。
【0018】
静刃ハンドル22は、静刃固定部21と支軸13との間に傾斜部23を有している。静刃ハンドル22は、傾斜部23の位置でクランク状に折れ曲がっている、静刃ハンドル22は、先端部の静刃固定部21が静刃21cの刃線21fおよび刃線21fの延長線より峰側に配置され、支軸13と静刃21cとの間で刃線21fの延長線より峰側を通って後端部が静刃21cの裏スキ面21hの延長面より反対側となる動刃片12の側に配置されている。
【0019】
支軸13は、静刃片11の刃線21fの延長方向に対し傾斜している。静刃ハンドル22の裏スキ面21hの延長面との交差部分は傾斜部23に位置し、動刃片12と反対側の傾斜面23aは静刃片11の刃線21fの延長方向に対し傾斜している。傾斜部23の厚みは、静刃21cの峰側から刃線21fの側にかけて薄くなっている。傾斜部23は、傾斜面23aの刃線21f付近の角23bが、裏スキ面21hのほぼ延長面上に位置付けられている。
【0020】
静刃片11および動刃片12は、開閉するとき、静刃21cの刃線21fと動刃31cの刃線31fとが互いに交差するよう設けられている。静刃片11および動刃片12は、閉じたとき、静刃ハンドル22の後端と動刃ハンドル32の後端とが当って止まる。静刃片11および動刃片12は、閉じたとき、静刃21cの裏スキ面21hと動刃31cの裏スキ面31hが重なり合う。こうして、静刃21cおよび動刃31cで切断可能である。
【0021】
次に、作用について説明する。
図3および図4に示すように、金切り鋏10は、角波板1の折れ目1aを横切って切断するとき、折れ目1aの山部を上側にした状態で、静刃21cを角波板1の下側に、動刃31cを角波板1の上側に配置して、まず、折れ目1aの位置まで切断する。次に、静刃21cと動刃31cとを開いて静刃21cの刃元を折れ目1aを越えた谷部で切断箇所1cに位置付ける。静刃ハンドル22および動刃ハンドル32の後端部を握って静刃21cおよび動刃31cを開閉し、折れ目1aの位置から折れ目1aを越えた位置まで連続して切断することができる。
【0022】
このとき、静刃ハンドル22の先端部の静刃固定部21は静刃21cの刃線21fおよび刃線延長線より峰側に配置され、支軸13と静刃21cとの間で刃線延長線より峰側を通って静刃ハンドル22の後端部が裏スキ面21hの延長面より反対側の動刃片12の側に配置されているので、静刃ハンドル22が角波板1と干渉しにくく、切断しやすい。また、角波板1の折れ目1aを横切って切断するとき、静刃ハンドル22の裏スキ面21hの延長面との交差部分である傾斜部23の厚みが切断箇所1cで狭く、切断箇所1cから離れた位置ほど広くなる切れ目1bに対応するので、切断箇所1cに無理な力がかからず、切断しやすい。
【0023】
折れ目1aの谷部が上側となるときには、普通に切り進めることができる。金切り鋏10は、角波板1の凹凸の間隔や深さにかかわらず、折れ目1aを横切って自由に切断することができる。金切り鋏10は、角波板1のほか、平板や折板、波板を切断するのに用いてもよく、自由な形状に切断することができる。
【0024】
金切り鋏10は、静刃片11の刃線21fの延長方向に対し支軸13が傾斜しているので、直線状に切断するとき、静刃片11の刃線21fの延長方向に対し支軸が直角な場合に比べて、切断箇所から静刃ハンドル22および動刃ハンドル32の後端部がより離れるので、それらの後端部および後端部を握った手が切断箇所と干渉しにくく、切断しやすい。
【0025】
金切り鋏10は、静刃21cおよび動刃31cが係合凹部21g、31gを係合凸部21b、31bに係合させて取り付けられているので、それぞれ1個の固定ネジ21d、31dのみで固定することができる。このため、図5に示すように、静刃21cおよび動刃31cを、切断対象などに応じて容易に交換することができる。図5に示す例では、平板を切断するのに適した、刃線21f、31fの長い静刃21cおよび動刃31cが取り付けられている。
【符号の説明】
【0026】
1 角波板
1a 折れ目
10 金切り鋏
11 静刃片
21 静刃固定部
21a 取付面
21b 係合凸部
21c 静刃
21d 固定ネジ
21e 取付面の反対面
21f 刃線
21g 係合凹部
21h 裏スキ面
22 静刃ハンドル
23 傾斜部
23a 傾斜面
12 動刃片
31 動刃固定部
31a 取付面
31b 係合凸部
31c 動刃
31d 固定ネジ
31e 取付面の反対面
31f 刃線
31g 係合凹部
31h 裏スキ面
32 動刃ハンドル
13 支軸


【特許請求の範囲】
【請求項1】
静刃片と動刃片とを有し、
前記静刃片は静刃ハンドルの先端部に静刃を設けて成り、
前記動刃片は動刃ハンドルの先端部に前記静刃との間で切断可能な動刃を設けて成り、
前記静刃片および前記動刃片は前記静刃ハンドルの中間部および前記動刃ハンドルの中間部で支軸を中心として回転可能に取り付けられ、
前記静刃ハンドルは、先端部が前記静刃の刃線および刃線延長線より峰側に配置され、前記支軸と前記静刃との間で前記刃線延長線より峰側を通って後端部が前記静刃の裏スキ面の延長面より動刃片側に配置されていることを、
特徴とする金切り鋏。
【請求項2】
前記静刃片の刃線の延長方向に対し前記支軸が傾斜していることを、特徴とする請求項1記載の金切り鋏。
【請求項3】
前記静刃ハンドルの前記裏スキ面延長面との交差部分が前記静刃片の刃線の延長方向に対し傾斜し、前記交差部分の厚みが前記静刃の峰側から刃線側にかけて薄くなっていることを、特徴とする請求項1または2記載の金切り鋏。
【請求項4】
前記静刃および前記動刃は厚さ方向に貫通孔を有し、前記貫通孔を貫通する固定ネジにより前記静刃ハンドルの先端部および前記動刃ハンドルの先端部にそれぞれ取り付けられ、前記静刃および前記静刃ハンドルの先端部ならびに前記動刃および前記動刃ハンドルの先端部にはそれぞれ互いに係合して前記固定ネジの軸線中心の前記静刃および前記動刃の回転を止める係合部を有することを、特徴とする請求項1、2または3記載の金切り鋏。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−105889(P2012−105889A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258390(P2010−258390)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(391012903)有限会社東北エスパル (1)
【Fターム(参考)】