説明

金型、金型の排気孔閉鎖部材、及び、発泡成形体の製造方法

【課題】発泡成形時に排気孔からキャビティ内のガスを十分にキャビティ外に排出することが可能であり、且つこの排気孔にキャビティ内の発泡樹脂が侵入することをより確実に防止することが可能であると共に、発泡成形体の意匠性を良好なものとすることが可能な金型、金型の排気孔閉鎖部材、及び発泡成形体の製造方法とを提供する。
【解決手段】排気孔閉鎖部材10は、金型1の排気孔5からキャビティ4内へ進出して該排気孔5を開放した排気孔開放位置と、該排気孔5内に後退して該排気孔5を閉鎖した排気孔閉鎖位置とをとりうるように進退可能な開閉部材11、及び、該開閉部材11を該排気孔開放位置に付勢した付勢部材12を有しており、該付勢部材12は、発泡成形時において、該排気孔開放位置にある該開閉部材11に対し、該キャビティ4内に充満してきた発泡合成樹脂から押圧力が加えられたときに、該開閉部材11が該排気孔閉鎖位置に後退することを許容するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートパッド等の発泡成形体を成形するための金型であって、発泡成形時にキャビティ内のガスを該キャビティの外部に排出するための排気孔が設けられた金型に係り、特に、発泡成形時にこの排気孔にキャビティ内の発泡樹脂が侵入することを防止するように構成された金型に関する。また、本発明は、この金型に設けられる、発泡成形時に該排気孔にキャビティ内の発泡樹脂が侵入することを防止するための排気孔閉鎖部材に関する。さらに、本発明は、この金型を用いた発泡成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートを構成するシートパッドや、車両のドアの内装品等に、ポリウレタンフォーム等の発泡合成樹脂よりなる発泡成形体が用いられている。かかる発泡成形体の製造工程では、成形用金型のキャビティ内面に離型剤を塗布した後、該キャビティ内に、軟質ポリウレタンフォームを形成する発泡樹脂原料を所定量供給する。そして、金型を型締めし、発泡樹脂原料を発泡硬化させる。発泡樹脂原料は、膨張しながらキャビティ内に充満し、該キャビティに対応した形状に成形される。かかる過程において、キャビティ内に存在するエアや、発泡反応により発生した二酸化炭素等のガスがキャビティ外に十分に排出されない場合、成形体に欠肉やボイド等の不具合が発生することがある。
【0003】
そこで、金型に排気孔を設けてキャビティ内のガスを排出することが行われている。しかし、単に排気孔を設けただけでは、キャビティ内に充満した発泡樹脂原料が排気孔からキャビティ外に流出する場合があり、原料ロスが生じると共に、排気孔の清掃作業が必要になるという問題があった。
【0004】
特許文献1(特開2006−192831号公報)には、排気孔を覆いうるように非通気性シートが取り付けられた、通気性板状スラブ又は不織布よりなる通気性部材を金型のキャビティ内に配設することが記載されている。この金型を用いた発泡成形工程においては、キャビティ内に発泡樹脂が充満するまでは、該キャビティ内のガスは、通気性部材を透過し、非通気性シートとキャビティ内面との間を通って排気孔から金型外に流出する。キャビティ内に発泡樹脂が充満してくると、発泡樹脂原料の発泡圧により通気性部材がキャビティ内面に押し付けられ、非通気性シートによって排気孔が閉塞されるようになる。これにより、発泡樹脂が排気孔に入り込むことが防止される。
【0005】
特許文献1の図7〜10の実施の形態では、排気孔の周囲のキャビティ内面に、該キャビティの内方へ突出する突部が設けられている。発泡成形時において、キャビティ内に充満してきた発泡樹脂により通気性部材がキャビティ内面に向かって押されると、該通気性部材は、非通気性シートを介してこの突部に当接する。このとき、該通気性部材が非通気性シートを介して突部に支持され、該非通気性シートとキャビティ内面との間に、排気孔に連通する隙間が残存した状態とすることにより、この隙間を介して排気孔からキャビティ内のガスをキャビティ外へ排出することができる。その後、発泡樹脂原料の発泡硬化が進行し、この発泡樹脂により通気性部材がさらにキャビティ内面に押し付けられると、突部が非通気性シートを介して該通気性部材に食い込み、非通気性シートがさらにキャビティ内面に接近して排気孔を閉塞するようになる。これにより、発泡樹脂が排気孔に入り込むことが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−192831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の図7〜10の実施の形態では、発泡成形工程において、突部が非通気性部材を介して通気性部材に食い込むので、完成した発泡成形体の表面には、この突部に対応する凹部が存在する。そのため、発泡成形体の意匠性が低下するおそれがある。
【0008】
また、特許文献1の図7〜10の実施の形態では、突部は排気孔の周囲に配置されているので、通気性部材のうち排気孔に重なる部分は、突部によって支持されない。そのため、仮に通気性部材が不織布のような柔軟な材質よりなる場合には、この通気性部材が非通気性部材を介して突部に当接したときに、該突部よりも排気孔側において非通気性部材をキャビティ内面から離隔させ、これらの間に、排気孔に連通する隙間を残存させるのが困難になるおそれがある。
【0009】
本発明は、発泡成形時に排気孔からキャビティ内のガスを十分にキャビティ外に排出することが可能であり、且つこの排気孔にキャビティ内の発泡樹脂が侵入することをより確実に防止することが可能であると共に、発泡成形体の意匠性を良好なものとすることが可能な金型と、この金型に設けられる、排気孔にキャビティ内の発泡樹脂が侵入することを防止するための排気孔閉鎖部材と、この金型を用いた発泡成形体の製造方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明(請求項1)の金型は、発泡合成樹脂よりなる発泡成形体を製造するための金型であって、該金型のキャビティ内面に設けられた、該キャビティ内のガスを該キャビティの外部に排出するための排気孔と、発泡成形時に該排気孔に該キャビティ内の発泡合成樹脂が侵入することを防止するための排気孔閉鎖部材とを有した金型において、該排気孔閉鎖部材は、該排気孔から該キャビティ内へ進出して該排気孔を開放した排気孔開放位置と、該排気孔内に後退して該排気孔を閉鎖した排気孔閉鎖位置とをとりうるように進退可能な開閉部材、及び、該開閉部材を該排気孔開放位置に付勢した付勢部材を有しており、該付勢部材は、発泡成形時において、該排気孔開放位置にある該開閉部材に対し、該キャビティ内に充満してきた発泡合成樹脂から前記後退方向へ所定以上の押圧力が加えられたときに、該開閉部材が該排気孔閉鎖位置に後退することを許容するように構成されていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項2の金型は、請求項1において、前記開閉部材は、前記排気孔に挿通された軸部と、該軸部の前記進出方向の先端側から放射方向に張り出すフランジ部とを有しており、該軸部の外径は、該排気孔の内径よりも小さいものとなっており、該開閉部材が前記排気孔開放位置にあるときには、該フランジ部が該排気孔から前記キャビティの内方に離隔しており、該フランジ部及び軸部と該排気孔との間を通して該キャビティ内のガスを該キャビティの外部に排出可能となっており、該開閉部材が前記排気孔閉鎖位置に後退したときには、該フランジ部が該排気孔に係合して該排気孔を閉鎖するように構成されていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3の金型は、請求項2において、前記フランジ部は、前記進出方向の後端側ほど外径が小さくなるテーパ形状となっていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項4の金型は、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記付勢部材は、バネよりなることを特徴とするものである。
【0014】
請求項5の金型は、請求項1ないし4のいずれか1項において、前記排気孔閉鎖部材は、前記金型に取り付けられ、前記開閉部材及び付勢部材を保持した保持部材を有しており、該保持部材は、ねじ止めにより該金型に取り付けられていることを特徴とするものである。
【0015】
本発明(請求項6)の発泡成形体の製造方法は、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の金型を用いて発泡成形体を製造するものである。
【0016】
請求項7の発泡成形体の製造方法は、請求項6において、前記金型のキャビティ内に、前記排気孔を覆うように通気性部材を配置する通気性部材配置工程と、該通気性部材配置工程の後、該キャビティ内で発泡合成樹脂原料を発泡させる発泡成形工程とを行うことを特徴とするものである。
【0017】
請求項8の発泡成形体の製造方法は、請求項7において、前記通気性部材の前記排気孔側に、該排気孔と対向するように非通気性部材を配置することを特徴とするものである。
【0018】
請求項9の発泡成形体の製造方法は、請求項8において、前記非通気性部材は、粘着剤又は接着剤を介して前記通気性部材に貼着されており、該粘着剤又は接着剤は、有機溶剤を含有していないか、又は、該粘着剤又は接着剤中の有機溶剤の含有率が0.5重量%以下であることを特徴とするものである。
【0019】
請求項10の発泡成形体の製造方法は、請求項8又は9において、前記非通気性部材は、パルプ、又は、パルプとSBR樹脂との積層体よりなることを特徴とするものである。
【0020】
請求項11の発泡成形体の製造方法は、請求項8ないし10のいずれか1項において、前記非通気性部材は、前記通気性部材の前記排気孔側の面に沿って延在するシート状のものであり、該非通気性部材は、厚さが0.05〜0.2mmであり、JIS−Z−0237により規定される引張強度が30〜90N/15mmであり、JIS−Z−0237により規定される伸び率が1〜10%であることを特徴とするものである。
【0021】
請求項12の発泡成形体の製造方法は、請求項6ないし11のいずれか1項において、前記発泡成形体はシートパッドであることを特徴とするものである。
【0022】
本発明(請求項13)の金型の排気孔閉鎖部材は、発泡合成樹脂よりなる発泡成形体を製造するための金型のキャビティ内面に設けられた、該キャビティ内のガスを該キャビティの外部に排出するための排気孔に、発泡成形時に該キャビティ内の発泡合成樹脂が侵入することを防止するための排気孔閉鎖部材において、該排気孔閉鎖部材は、該排気孔から該キャビティ内へ進出して該排気孔を開放した排気孔開放位置と、該排気孔内に後退して該排気孔を閉鎖した排気孔閉鎖位置とをとりうるように進退可能な開閉部材、及び、該開閉部材を該排気孔開放位置に付勢した付勢部材を有しており、該付勢部材は、発泡成形時において、該排気孔開放位置にある該開閉部材に対し、該キャビティ内に充満してきた発泡合成樹脂から押圧力が加えられたときに、該開閉部材が該排気孔閉鎖位置に後退することを許容するように構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明(請求項1)の金型にあっては、発泡樹脂がキャビティ内に充満するまでは、排気孔閉鎖部材の開閉部材が排気孔からキャビティ内に進出して排気孔を開放しているので、排気孔からキャビティ内のガスを十分にキャビティ外に排出することが可能である。
【0024】
この金型にあっては、発泡樹脂がキャビティ内に充満し、この発泡樹脂から開閉部材に加えられる後退方向への押圧力が所定以上となると、開閉部材が排気孔内に後退して排気孔を閉鎖するようになる。これにより、発泡樹脂が排気孔に侵入することが防止される。このとき、開閉部材が排気孔内に後退することにより、発泡樹脂が排気孔に侵入する余地がなくなるので、より確実に発泡樹脂の排気孔への侵入を防止することができる。
【0025】
また、このように、排気孔の閉鎖時には開閉部材が該排気孔内に後退することにより、この金型により発泡成形された発泡成形体の表面には、該開閉部材に対応する凹部は形成されない。これにより、発泡成形体の意匠性を良好なものとすることができる。
【0026】
請求項2の態様にあっては、開閉部材が排気孔開放位置にあるときには、この開閉部材のフランジ部及び軸部と排気孔との間を通してキャビティ内のガスを十分に該キャビティの外部に排出可能である。また、開閉部材が排気孔閉鎖位置に後退したときには、フランジ部が排気孔内に係合して該排気孔を閉鎖するので、該排気孔への発泡樹脂の侵入をより確実に防止することができる。
【0027】
請求項3の通り、このフランジ部を、その進出方向の後端側ほど外径が小さくなるテーパ形状とすることにより、排気孔開放状態において、キャビティ内のガスをこのフランジ部の外周面に沿ってスムーズに排気孔(軸部と排気孔との間)に流入させることができる。
【0028】
請求項4の通り、開閉部材を排気孔開放位置に付勢する付勢部材としてバネを用いるのが、簡便であり且つ付勢力の制御が容易であるため、好ましい。
【0029】
請求項5の態様では、ねじ止めにより金型に取り付けられた保持部材に開閉部材及び付勢部材が保持されているので、現行品の金型に大幅な加工を施すことなく、比較的容易に排気孔閉鎖部材を設置することができると共に、メンテナンス時等には、比較的容易に開閉部材及び付勢部材を金型から取り外すことができるので、これらの開閉部材及び付勢部材自体や排気孔等のメンテナンス作業も容易に行うことができる。
【0030】
本発明(請求項6)の発泡成形体の製造方法によれば、かかる本発明の金型を用いて発泡成形体を製造するので、上記の通り、発泡成形時に排気孔からキャビティ内のガスを十分にキャビティ外に排出することが可能であり、且つこの排気孔にキャビティ内の発泡樹脂が侵入することをより確実に防止することが可能である。また、この方法により製造された発泡成形体の表面には、排気孔閉鎖部材の開閉部材に対応する凹部が形成されないため、発泡成形体の意匠性を良好なものとすることができる。
【0031】
請求項7の通り、発泡成形工程に先立ち、金型のキャビティ内に、排気孔を覆うように通気性部材を配置した場合、排気孔開放状態においては、排気孔閉鎖部材の開閉部材は、排気孔からキャビティ内に進出しているので、仮に通気性部材が不織布のような柔軟な材質よりなる場合でも、発泡樹脂が通気性部材に到達してから開閉部材に加えられる後退方向への押圧力が所定以上となるまで、より確実に、この通気性部材を排気孔から離反させ、該通気性部材と金型のキャビティ内面との間に、該排気孔に連通する隙間を確保することができる。これにより、発泡樹脂が通気性部材に到達してから排気孔が閉鎖されるまでの間に十分にキャビティ内のガスを該キャビティ外に排出することができる。
【0032】
請求項8の通り、この通気性部材の排気孔側に、該排気孔と対向するように非通気性部材を配置することにより、発泡成形工程において、キャビティ内のガスが通気性部材を透過して排気孔から流出するのに伴って発泡樹脂が通気性部材に含浸することを効果的に防止することができる。これにより、通気性部材に発泡樹脂が含浸することによって発泡成形体の使用時に生じる擦れ音の防止や、発泡成形体の軽量化等の作用効果が奏される。
【0033】
ホルムアルデヒドやトルエン、キシレンなどの揮発性有機化合物(VOC)は、シックハウス症候群や化学物質過敏症を引き起こす原因になることから、建物や車両等の室内に使用される各種資材には、これらの化合物を極力放散しないことが求められている。この要求に応えるために、本発明では、請求項9の通り、非通気性部材を粘着剤又は接着剤により通気性部材に貼着する場合、この粘着剤又は接着剤として、有機溶剤を含有していないもの、又は、該粘着剤又は接着剤中の有機溶剤の含有率が0.5重量%以下であるものを用いることが好ましい。このような粘着剤又は接着剤を用いることにより、この粘着剤又は接着剤から揮発性有機化合物が実質的に全く又は殆ど発生しないため、該非通気性部材付き通気性部材を用いて製造された発泡成形体からの揮発性有機化合物の放散をより確実に防止ないし抑制することができる。
【0034】
なお、本発明において、粘着剤とは、通気性部材と非通気性部材の間に配置され、実質的に圧力が加えられるだけでこれらを接着するものをいい、接着剤とは、湿気硬化、溶剤の揮発、化学反応等を伴ってこれらを接着するものをいう。
【0035】
請求項10の通り、非通気性部材は、パルプ、又は、パルプとSBR(スチレン・ブタジエンゴム)樹脂との積層体よりなることが好ましい。非通気性部材をこのような材質にて構成することにより、非通気性部材をより柔軟なものとすることができる。これにより、金型のキャビティ内に発泡樹脂が充満したときに、非通気性部材が容易に該キャビティの内面に沿う形状となるため、該キャビティ内で成形される発泡成形体の外形精度、及び、非通気性部材による金型の排気孔の閉鎖性を良好なものとすることができる。
【0036】
請求項11の通り、非通気性部材は、通気性部材の排気孔側の面に沿って延在するシート状のものであり、厚さが0.05〜0.2mmであり、JIS−Z−0237により規定される引張強度及び伸び率が、それぞれ30〜90N/15mm、1〜10%であることが好ましい。非通気性部材をこのようなものとすることにより、非通気性部材は、よりキャビティの内面形状に対する追従性に優れたものとなると共に、該キャビティ内の発泡樹脂からの押圧力に抗してしっかりと金型の排気孔の閉鎖状態を維持することができるので、発泡成形体の外形精度、及び、該非通気性部材による金型の排気孔の閉鎖性を一層良好なものとすることができる。
【0037】
請求項12の通り、本発明は、シートパッドの製造方法に適用するのに好適である。
【0038】
本発明(請求項13)の排気孔閉鎖部材にあっては、発泡樹脂が金型のキャビティ内に充満するまでは、その開閉部材が金型の排気孔からキャビティ内に進出して該排気孔を開放しているので、該排気孔からキャビティ内のガスを十分にキャビティ外に排出することが可能である。
【0039】
この排気孔閉鎖部材にあっては、発泡樹脂が金型のキャビティ内に充満し、この発泡樹脂から開閉部材に加えられる後退方向への押圧力が所定以上となると、開閉部材が金型の排気孔内に後退して該排気孔を閉鎖するようになる。これにより、発泡樹脂が金型の排気孔に侵入することが防止される。このとき、開閉部材が該排気孔内に後退することにより、発泡樹脂が該排気孔に侵入する余地がなくなるので、より確実に発泡樹脂の該排気孔への侵入を防止することができる。
【0040】
また、このように、金型の排気孔の閉鎖時には開閉部材が該排気孔内に後退することにより、この金型により発泡成形された発泡成形体の表面には、該開閉部材に対応する凹部は形成されない。これにより、発泡成形体の意匠性を良好なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】第1の実施の形態に係る金型の断面図である。
【図2】図1の金型に設けられた排気孔閉鎖部材の構成図である。
【図3】図1のIII部分の拡大断面図である。
【図4】発泡成形工程途中時を示す図3と同様部分の断面図である。
【図5】発泡成形工程終了時を示す図3と同様部分の断面図である。
【図6】第2の実施の形態に係る発泡成形体の製造方法による発泡成形工程途中時を示す断面図である。
【図7】図6の発泡成形体の製造方法による発泡成形工程途中時を示す断面図である。
【図8】図6の発泡成形体の製造方法による発泡成形工程終了時を示す断面図である。
【図9】第3の実施の形態に係る排気孔閉鎖部材の構成図である。
【図10】非通気性シート付き補強材の分解断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下に、図面を参照して実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、シートパッドを製造するための金型、この金型の排気孔閉鎖部材、及び、この金型を用いたシートパッドの製造方法への本発明の適用例を示しているが、本発明は、シートパッド以外の発泡成形体を製造するための金型、この金型の排気孔閉鎖部材、及び、この金型を用いた発泡成形体の製造方法にも適用可能である。
【0043】
[第1の実施の形態]
第1図は、第1の実施の形態に係る金型の断面図である。第2図(a)は、この金型に設けられた排気孔閉鎖部材の斜視図である。第2図(b)は、第2図(a)のB−B線に沿う断面図であり、この排気孔閉鎖部材の開閉部材が排気孔開放位置にある状態(排気孔開放状態)を示している。第2図(c)は、この排気孔閉鎖部材の開閉部材が排気孔閉鎖位置にある状態(排気孔閉鎖状態)を示す、第2図(b)と同様部分の断面図である。第3図は、第1図のIII部分の拡大断面図であり、発泡成形工程の途中時であって、発泡樹脂が開閉部材を押圧する前の状態を示している。第4図は、発泡成形工程の途中時であって、発泡樹脂が開閉部材を押圧している状態を示す、第3図と同様部分の断面図である。第5図は、発泡成形工程の終了時を示す、第3図と同様部分の断面図である。
【0044】
この実施の形態では、金型1は、車両用シートを構成するシートパッドを製造するためのものである。このシートパッドは、ポリウレタンフォーム等の発泡合成樹脂よりなる。即ち、このシートパッドは請求項1の発泡成形体に相当する。なお、この実施の形態では、該シートパッドは、車両用シートの腰掛部を構成するクッションパッドであるが、本発明は、車両用シートの背もたれ部を構成するバックパッドにも適用可能である。第1図は、この金型1によって成形されるシートパッド(クッションパッド)の使用時の前後方向(以下、単に前後方向という。)に沿う垂直断面を示している。
【0045】
この実施の形態では、金型1は、第1図の通り、上型2及び下型3と、該上型2及び下型3によって囲まれたキャビティ4内のガスを該キャビティ4の外部に排出するための排気孔5と、発泡成形時に該排気孔5にキャビティ4内の発泡合成樹脂が侵入することを防止するための排気孔閉鎖部材10等を備えている。なお、金型1は、さらに中子型(図示略)を有していてもよい。上型2と下型3とは、それらの周縁部において型合せされている。第1図の符号Pは、上型2と下型3とのパーティングラインを示している。発泡成形時には、このパーティングラインPからもキャビティ4内のガスが排出される。
【0046】
この実施の形態では、パーティングラインPよりも上型2のキャビティ内面の中央側に排気孔5が設けられている。排気孔5は、上型2のキャビティ内面のうち、例えばパーティングラインPよりも高い位置にある部分や、パーティングラインPとの間に該パーティングラインPよりも低くなっている箇所が存在する部分など、発泡成形時にパーティングラインPからだけではガスが抜けにくい部分に配設されている。第1図では、シートパッドの前後方向に間隔をおいて配置された2個の排気孔5が図示されているが、排気孔5の個数や配置はこれに限定されない。なお、排気孔5は、必要に応じ、下型3等にも設けられてもよい。各排気孔5にそれぞれ排気孔閉鎖部材10が設けられている。
【0047】
この金型1のキャビティ4内において、シートパッドは、座面を下向きにして発泡成形される。即ち、下型3のキャビティ内面によりシートパッドの座面が成形され、上型2のキャビティ内面によりシートパッドの該座面と反対側面(以下、裏面という。)が成形される。シートパッドの裏面には、補強材6が設けられる。この実施の形態では、補強材6は、不織布等の通気性材料よりなる。即ち、この実施の形態では、該補強材6が請求項7の通気性部材に相当する。この補強材6は、シートパッドの発泡成形工程に先立ち、上型2のキャビティ内面に沿って配設され、ピンやマグネット等の固定具(図示略)により上型2に固定される。このとき、各排気孔5が補強材6によって覆われる。
【0048】
排気孔閉鎖部材10は、排気孔5からキャビティ4内へ進出して該排気孔5を開放した排気孔開放位置と、排気孔5内に後退して該排気孔5を閉鎖した排気孔閉鎖位置とをとりうるように進退可能な開閉部材11、及び、この開閉部材11を該排気孔開放位置に付勢した付勢部材12等を有している。
【0049】
この実施の形態では、排気孔閉鎖部材10は、さらに、これらの開閉部材11及び付勢部材12を保持した保持部材13を有している。第2図(a)の通り、この実施の形態では、該保持部材13は、内孔13aを有した略円筒形状のものとなっている。この保持部材13の筒軸心線方向の一端側(以下、先端側という。)の外周面に雄ねじ部14が周設されている。第3〜5図の通り、上型2の閉鎖部材取付位置には、この雄ねじ部14が螺合する雌ねじ孔7が設けられており、この雌ねじ孔7に雄ねじ部14が螺じ込まれることにより、保持部材13が上型2に取り付けられている。
【0050】
この実施の形態では、第3〜5図の通り、雌ねじ孔7は上型2を貫通しており、この雌ねじ孔7を介して保持部材13の先端側の端面(以下、先端面という。)がキャビティ4内に臨んでいる。保持部材13は、その先端面が雌ねじ孔7の周囲の上型2のキャビティ内面と略面一状となるように、該雌ねじ孔7に螺じ込まれている。
【0051】
この実施の形態では、保持部材13の内孔13aが該保持部材13の先端面に開放しており、この保持部材13の先端面における内孔13aの開放口が前記排気孔5となっている。保持部材13の筒軸心線方向の他端側(以下、後端側という。)においては、この内孔13aは閉塞されたものとなっている。この実施の形態では、内孔13aの後端側の端面(以下、単に後端面という。)から該内孔13a内に、該内孔13aと略同軸状に、開閉部材11の進退を案内するガイドピン16が突設されている。保持部材13の雄ねじ部14よりも後端側の外周面には、内孔13aと該保持部材13の外部(即ちキャビティ4の外部)とを連通した連通口15が設けられている。この実施の形態では、保持部材13の周方向に間隔をおいて複数個の連通口15が設けられている。キャビティ4内から排気孔5に流入したガスは、保持部材13の内孔13a及び連通口15を通ってキャビティ4の外部に排出される。なお、保持部材13の構成及び排気孔5の形成方法はこれに限定されない。また、保持部材13は、ねじ止め以外の方法(例えば保持部材13と上型2との弾性的な係合等)により上型2に取り付けられてもよい。開閉部材11及び付勢部材12は、保持部材13を介さずに、直接的に金型1に取り付けられてもよい。
【0052】
この実施の形態では、開閉部材11は、排気孔5を介して保持部材13の内孔13aに挿通された軸部11aと、該軸部11aの前記進出方向の先端側(=保持部材13の先端側。以下、単に先端側という。)から放射方向に張り出したフランジ部11bとを有している。この軸部11aの前記進出方向の後端側(=保持部材13の後端側。以下、単に後端側という。)には、ガイドピン16が内嵌したガイド孔11c(第2図(b),(c))が設けられている。軸部11aは、このガイドピン16に沿って進退する。この実施の形態では、付勢部材12はコイルバネよりなり、ガイドピン16を取り巻くように配置され、蓄力状態(圧縮状態)にて、その軸心線方向の一端側が軸部11aの後端面に当接し、他端側が内孔13aの後端面に当接している。
【0053】
この実施の形態では、保持部材13の内孔13aは、その筒軸心線方向と直交方向の断面形状が略円形であり、該筒軸心線方向の全長にわたって(即ち排気孔5まで)内径が略一定となっている。軸部11aは、その軸心線方向と直交方向の断面形状が略円形であり、該軸心線方向の全長にわたって外径が略一定となっている。この軸部11aの外径は、保持部材13の内孔13aの内径よりも小さいものとなっている。この保持部材13の内孔13aの内径(即ち排気孔5の内径)は5〜15mm特に5〜8mmであることが好ましく、軸部11aの外径は3〜10mm特に4〜7mmであることが好ましい。
【0054】
この実施の形態では、開閉部材11が排気孔開放位置にあるときには、第2図(b)及び第3図の通り、フランジ部11bが排気孔5からキャビティ4の内方に離隔しており、該フランジ部11b及び軸部11aと排気孔5との間を通してキャビティ4内のガスを該キャビティ4の外部に排出可能な状態(排気孔開放状態)となっている。
【0055】
この実施の形態では、第2図(b),(c)の通り、フランジ部11bは、その後端側ほど外形が小さくなるテーパ形状となっている。フランジ部11bの先端面は、第2図(a)の通り、排気孔5の開口形状に対応した略円形の平面視形状を有している。この実施の形態では、該フランジ11bの先端面は、排気孔5の周囲の上型2のキャビティ内面と略平行な平坦面となっている。このフランジ部11bの先端面とテーパ状の外周面とのなす角θ(第2図(b))は30〜80°特に55〜75°であることが好ましい。このようにフランジ部11bの外周面をテーパ状とすることにより、上記の排気孔開放状態において、キャビティ4内のガスをこのフランジ部11bの外周面に沿ってスムーズに排気孔5(軸部11aと排気孔5との間)に流入させることができる。
【0056】
この排気孔開放状態において、排気孔5の周囲の上型2のキャビティ内面からフランジ部11bの先端面までの距離(キャビティ内面からの開閉部材11の突出量)T(第2図(b))は1〜10mm特に2〜8mmであることが好ましい。
【0057】
付勢部材12は、第4,5図の通り、発泡成形時において、排気孔開放位置にある開閉部材11(この実施の形態ではフランジ部11bの先端面)に対し、キャビティ4内に充満してきた発泡樹脂から補強材6を介して前記後退方向へ所定以上の押圧力が加えられたときに、該開閉部材11が排気孔閉鎖位置に後退することを許容するように構成されている。即ち、この付勢部材12は、キャビティ4内のガスが補強材6を透過して排気孔5に流入する際のガス圧程度では、開閉部材11の後退を許容しないものとなっている。このように開閉部材11を動作させるための付勢部材12の付勢力は、実験やシミュレーション等により求めることができる。この実施の形態のように、付勢部材12としてコイルバネを用いるのが簡便であり好ましい。このコイルバネのバネ定数を適宜選定することにより、付勢部材12の付勢力を容易に制御することができる。一般的な車両用シートパッドの製造においては、このコイルバネのバネ定数は0.02〜0.40N/mm特に0.05〜0.30N/mmであることが好ましい。なお、付勢部材12は、バネ以外の付勢手段により構成されてもよい。
【0058】
開閉部材11が排気孔閉鎖位置に後退したときには、第2図(c)及び第5図の通り、フランジ部11bが排気孔5内に係合し、排気孔5がこのフランジ部11bによって閉鎖された状態(排気孔閉鎖状態)となる。
【0059】
フランジ部11bが排気孔5内に係合した排気孔閉鎖状態においては、必ずしも排気孔5の内周面とフランジ部11bの外周縁との間が密閉されていなくてもよく、これらの間に若干の(好ましくは、これらの間に発泡樹脂が入り込めない程度の)隙間が空いていてもよい。具体的には、フランジ部11bの先端面の外径は、排気孔5の内径−0.2〜1.0mm特に排気孔5の内径−0.3〜0.6mmであることが好ましい。
【0060】
この実施の形態では、第2図(c)及び第5図の通り、開閉部材11が排気孔閉鎖位置まで後退したときに、フランジ部11bの先端面が、排気孔5の周囲の上型2のキャビティ内面よりも該排気孔5内に後退した(引っ込んだ)状態となるように構成されている。この開閉部材11が排気孔閉鎖位置にあるときのフランジ部11bの先端面と排気孔5の周囲の上型2のキャビティ内面との距離(キャビティ内面からのフランジ部11bの後退量)D(第2図(c))は0.0〜5.0mm特に0.0〜2.0mmであることが好ましい。このように構成することにより、排気孔閉鎖状態における排気孔5とフランジ部11bとの間のシール性を向上させることができる。
【0061】
次に、この金型1を用いてシートパッドを製造する手順について説明する。
【0062】
まず、上型2と下型3とを型開きし、該上型2のキャビティ内面に沿って補強材6を配置し、前記固定具により該上型2に固定する(通気性部材配置工程)。この際、第1,3図の通り、各排気孔閉鎖部材の開閉部材11は、各排気孔5からキャビティ4の内方へ進出した排気孔開放位置にあるので、補強材6のうち各排気孔5及びその周辺部に重なる部分は、それぞれ、各排気孔閉鎖部材10の開閉部材11に押されて上型2のキャビティ内面から離反した状態となる。
【0063】
次に、下型3内に発泡合成樹脂原料を注入し、下型3と上型2とを型締めして該発泡合成樹脂原料を加熱・発泡させる(発泡成形工程)。この原料が発泡してなる発泡樹脂Uは、第1,3〜5図の通り、上型2のキャビティ内面(補強材6)に向かってキャビティ4内を充填していく。これにより、シートパッドが成形されると共に、該シートパッドの裏面に補強材6が一体化される。
【0064】
この発泡成形工程においては、発泡樹脂Uが補強材6に到達する前、及び、発泡樹脂Uが補強材6に到達してから各開閉部材11に加えられる前記後退方向への押圧力が所定以上となるまでは、第3,4図の通り、各排気孔5が開放状態となっている。これにより、キャビティ4内のガスは、補強材6を透過し、開閉部材11のフランジ部11b及び軸部11aと排気孔5(保持部材13の内孔13a)との間及び保持部材13の連通口15を通ってキャビティ4の外部に排出される。また、パーティングラインPからもキャビティ4内のガスが該キャビティ4の外部に排出される。これにより、キャビティ4内のガスが十分にキャビティ4の外部に排出され、シートパッドにボイド等の成形不良が生じることが防止される。
【0065】
第4図から第5図の通り、発泡樹脂Uが補強材6に到達した後、各開閉部材11に加えられる前記後退方向への押圧力が所定以上となると、各開閉部材11が排気孔閉鎖位置まで後退し、各開閉部材11によって各排気孔5が閉鎖されるようになる。これにより、発泡樹脂Uが各排気孔5に入り込むことが防止される。
【0066】
発泡樹脂Uが硬化した後、型開きしてシートパッドを脱型する。その後、必要に応じ、シートパッドの表面の仕上げ処理を行うことにより、シートパッドが完成する。
【0067】
この金型1により以下の作用効果が奏される。
【0068】
この金型1にあっては、発泡樹脂がキャビティ4内に十分に充満するまでは、排気孔閉鎖部材10の開閉部材11が排気孔5からキャビティ4内に進出して排気孔5を開放しているので、排気孔5からキャビティ4内のガスを十分にキャビティ4外に排出することが可能である。
【0069】
この金型1にあっては、排気孔開放状態においては、該開閉部材11は、排気孔5からキャビティ4内に進出しているので、通気性部材としての補強材6が不織布のような柔軟な材質よりなる場合でも、発泡樹脂Uが補強材6に到達してから各開閉部材11に加えられる前記後退方向への押圧力が所定以上となるまで、より確実に、この補強材6を排気孔5から離反させ、この補強材6と上型2のキャビティ内面との間に、排気孔5に連通する隙間を確保することができる。これにより、発泡樹脂Uが補強材6に到達してからもさらに十分にキャビティ4内のガスを該キャビティ4外に排出することができる。
【0070】
この金型1にあっては、発泡樹脂Uが補強材6に到達し、この発泡樹脂から該開閉部材11に加えられる前記後退方向への押圧力が所定以上となると、該開閉部材11が排気孔5内に後退して該排気孔5を閉鎖するので、発泡樹脂Uが排気孔5に侵入する余地をなくすことができ、より確実に発泡樹脂Uの排気孔5への侵入を防止することができる。
【0071】
また、このように、排気孔5の閉鎖時には開閉部材11が該排気孔5内に後退することにより、この金型1により発泡成形されたシートパッドの表面には、該開閉部材11に対応する凹部は形成されない。これにより、シートパッドの意匠性を良好なものとすることができる。
【0072】
[第2の実施の形態]
第6図は、第2の実施の形態に係る発泡成形体の製造方法による発泡成形工程途中時であって、発泡樹脂が開閉部材を押圧する前の状態を示す断面図である。第7図は、この発泡成形体の製造方法による発泡成形工程途中時であって、発泡樹脂が開閉部材を押圧している状態を示す断面図である。第8図は、この発泡成形体の製造方法による発泡成形工程終了時を示す断面図である。なお、第6〜8図は、第3〜5図と同様部分を示している。
【0073】
この実施の形態では、補強材6のうち、各排気孔5及びその周辺の上型2のキャビティ内面と重なる領域の該排気孔5側の面に、非通気性材料よりなる非通気性シート8が設けられている。この非通気性シート8を構成する非通気性材料としては、粘着剤付PETフィルム、粘着剤付紙テープ、粘着剤付PPフィルム等が好適である。この非通気性シート8は、補強材6を、各排気孔5の中心から半径15〜40mm特に20〜30mmの範囲にわたって覆う大きさであることが好ましい。
【0074】
非通気性シート8は、金型1内で膨張した発泡樹脂に押されたときに、該金型1の内面に沿うように比較的柔軟に変形しうる材料よりなることが好ましい。例えば、非通気性シート8はパルプ、又は、パルプとSBR樹脂との積層体よりなることが好ましい。非通気性シート8をパルプ、又は、パルプとSBR樹脂との積層体よりなるものとした場合、この非通気性シート8は、柔軟性に優れる共に、取り扱い性(例えばテープのようにロール状に巻回された状態から所定長さ引き出してカットする際の作業のし易さ等)も良好であり、また、擦れ音がより発生しにくいものとなる。
【0075】
この実施の形態では、非通気性シート8は、第10図の通り、シート状の基材8aと、該基材8aの一方(補強材6側)の面に形成された粘着剤層8bと、該基材8aの他方(排気孔5側)の面に形成された被覆層8cとを有したものとなっている。なお、非通気性シート8の構成はこれに限定されない。例えば、この基材8aがパルプよりなり、被覆層8cがSBR樹脂よりなるものであってもよい。このパルプよりなる基材8aとしては、例えば和紙が好適である。なお、基材8a及び被覆層8cの材質はこれに限定されない。
【0076】
基材8a自体は通気性を有したものであってもよく、この場合、基材8aの表面を覆った粘着剤層8b及び被覆層8cの少なくとも一方によって非通気性が付与されてもよい。粘着剤層8bによって非通気性が付与される場合、被覆層8cは省略されてもよい。基材8a自体が非通気性を有していてもよい。非通気性シート8が、テープのようにロール状に巻回された状態で出荷されるものである場合、被覆層8cは、粘着剤層8bからの剥離性を付与するために設けられたものであってもよい。粘着剤層8bの代わりに接着剤層が形成されてもよい。
【0077】
非通気性シート8を補強材6に貼り付けるための粘着剤又は接着剤としては、有機溶剤を含有していないもの、又は、有機溶剤の含有率が0.5重量%以下のものを用いるのが好ましい。このような粘着剤又は接着剤としては、例えばホットメルト、エマルジョン粘着剤等が好適である。
【0078】
この非通気性シート8の厚さは0.05〜0.20mm特に0.05〜0.15mmであることが好ましい。この非通気性シート8の、JIS−Z−0237により規定される引張強度は、30〜90N/15mm特に40〜60N/15mmであることが好ましい。この非通気性シート8の、JIS−Z−0237により規定される伸び率は、1〜10%特に2〜5%であることが好ましい。
【0079】
この実施の形態における金型1の構成は、第1の実施の形態と同様である。また、金型1を用いたシートパッドの製造方法は、通気性部材配置工程において、第6〜8図の通り、非通気性シート8が各排気孔5及びその周辺の上型2のキャビティ内面に重なるように補強材6を配置すること以外は、第1の実施の形態と同様である。
【0080】
この実施の形態にあっては、補強材6のうち、各排気孔5及びその周辺の上型2のキャビティ内面と重なる領域の該排気孔5側の面に非通気性シート8が設けられているので、発泡成形工程において、キャビティ4内のガスが補強材6を透過して各排気孔5から流出するのに伴って発泡樹脂Uが補強材6に含浸することを効果的に防止することができる。これにより、補強材6に発泡樹脂Uが含浸することによりシートパッド使用時に生じる擦れ音の防止や、シートパッドの軽量化等の作用効果が奏される。
【0081】
この実施の形態では、非通気性シート8は、パルプ、又は、パルプとSBR樹脂との積層体よりなり、柔軟性に優れているため、キャビティ4内に発泡樹脂Uが充満したときに、非通気性シート8が容易に該キャビティ4の内面に沿う形状となる。これにより、該キャビティ4内で成形されるシートパッドの外形精度、及び、非通気性シート8による各排気孔5の閉鎖性を良好なものとすることができる。
【0082】
また、この実施の形態では、非通気性シート8は、補強材6の排気孔5側の面に沿って延在するシート状のものであり、厚さが0.05〜0.2mmであり、JIS−Z−0237により規定される引張強度及び伸び率が、それぞれ30〜90N/15mm、1〜10%であるため、非通気性シート8は、よりキャビティ4の内面形状に対する追従性に優れたものとなると共に、該キャビティ4内の発泡樹脂Uからの押圧力に抗してしっかりと各排気孔5の閉鎖状態を維持することができるので、シートパッドの外形精度、及び、非通気性シート8による各排気孔5の閉鎖性を一層良好なものとすることができる。
【0083】
この実施の形態では、非通気性シート8を補強材6に貼り付けるための粘着剤又は接着剤として、有機溶剤を含有していないもの、又は、有機溶剤の含有率が0.5重量%以下のものを用いているので、この粘着剤又は接着剤から揮発性有機化合物が実質的に全く又は殆ど発生しない。これにより、シートパッドからの揮発性有機化合物の放散をより確実に防止ないし抑制することができる。
【0084】
[第3の実施の形態]
第9図(a),(b)は、第3の実施の形態に係る排気孔閉鎖部材の構成図であり、第9図(a)は排気孔開放状態を示し、第9図(b)排気孔閉鎖状態を示している。なお、第9図(a),(b)は、第2図(b),(c)と同様部分の断面にて図示されている。
【0085】
この実施の形態における排気孔閉鎖部材10Aは、開閉部材11Aが排気孔閉鎖位置にあるときに該開閉部材11Aのフランジ部11b’と排気孔5との間をシールするためのシール部材11dを備えている。
【0086】
この実施の形態では、第9図(a)の通り、フランジ部11b’は排気孔5よりも大径の円盤状となっており、このフランジ部11b’の上面にシール部材11dが配設されている。開閉部材11Aが排気孔閉鎖位置に後退すると、第9図(b)の通り、フランジ部11b’がシール部材11dを介して排気孔5の周縁部に重なり、このシール部材11dによって該フランジ部11b’と排気孔5の周縁部との間がシール(密閉)される。なお、シール部材11dは、排気孔5の周縁部に設けられてもよく、フランジ部11b’の上面と排気孔5の周縁部との双方に設けられてもよい。
【0087】
このシール部材11dとしては、例えばOリングやゴムワッシャ等が簡便であり好ましい。このシール部材11dの材質は、シリコンゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴム、エチレンプロピレンゴム等が好適である。なお、シール部材11dの構成はこれに限定されない。
【0088】
この排気孔閉鎖部材10Aのその他の構成は、第1の実施の形態における排気孔閉鎖部材10と同様であり、第9図(a),(b)において第2図(a)〜(c)と同一符号は同一部分を示している。
【0089】
この排気孔閉鎖部材10Aにあっては、開閉部材11Aが排気孔閉鎖位置に後退すると、該開閉部材11Aのフランジ部11b’と排気孔5との間がシール部材11dによってシールされるため、発泡成形時における該排気孔5内への発泡樹脂の侵入をより確実に防止することができる。
【0090】
上記の各実施の形態はいずれも本発明の一例であり、本発明は図示以外の構成をもとりうる。
【0091】
例えば、上記の各実施の形態は、シートパッドへの本発明の適用例を示しているが、本発明は、シートパッド以外の発泡成形体にも適用可能である。
【符号の説明】
【0092】
1 金型
2 上型
3 下型
4 キャビティ
5 排気孔
6 補強材(通気性部材)
7 雌ねじ孔
8 非通気性シート
8a 基材
8b 粘着剤層(又は接着剤層)
8c 被覆層
10,10A 排気孔閉鎖部材
11,11A 開閉部材
11a 軸部
11b,11b’ フランジ部
11d シール部材
12 付勢部材
13 保持部材
14 雄ねじ部
15 連通口
16 ガイドピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡合成樹脂よりなる発泡成形体を製造するための金型であって、
該金型のキャビティ内面に設けられた、該キャビティ内のガスを該キャビティの外部に排出するための排気孔と、
発泡成形時に該排気孔に該キャビティ内の発泡合成樹脂が侵入することを防止するための排気孔閉鎖部材と
を有した金型において、
該排気孔閉鎖部材は、
該排気孔から該キャビティ内へ進出して該排気孔を開放した排気孔開放位置と、該排気孔内に後退して該排気孔を閉鎖した排気孔閉鎖位置とをとりうるように進退可能な開閉部材、及び、
該開閉部材を該排気孔開放位置に付勢した付勢部材
を有しており、
該付勢部材は、発泡成形時において、該排気孔開放位置にある該開閉部材に対し、該キャビティ内に充満してきた発泡合成樹脂から前記後退方向へ所定以上の押圧力が加えられたときに、該開閉部材が該排気孔閉鎖位置に後退することを許容するように構成されていることを特徴とする金型。
【請求項2】
請求項1において、前記開閉部材は、前記排気孔に挿通された軸部と、該軸部の前記進出方向の先端側から放射方向に張り出すフランジ部とを有しており、
該軸部の外径は、該排気孔の内径よりも小さいものとなっており、
該開閉部材が前記排気孔開放位置にあるときには、該フランジ部が該排気孔から前記キャビティの内方に離隔しており、該フランジ部及び軸部と該排気孔との間を通して該キャビティ内のガスを該キャビティの外部に排出可能となっており、
該開閉部材が前記排気孔閉鎖位置に後退したときには、該フランジ部が該排気孔に係合して該排気孔を閉鎖するように構成されていることを特徴とする金型。
【請求項3】
請求項2において、前記フランジ部は、前記進出方向の後端側ほど外径が小さくなるテーパ形状となっていることを特徴とする金型。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記付勢部材は、バネよりなることを特徴とする金型。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、前記排気孔閉鎖部材は、前記金型に取り付けられ、前記開閉部材及び付勢部材を保持した保持部材を有しており、
該保持部材は、ねじ止めにより該金型に取り付けられていることを特徴とする金型。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の金型を用いて発泡成形体を製造する発泡成形体の製造方法。
【請求項7】
請求項6において、前記金型のキャビティ内に、前記排気孔を覆うように通気性部材を配置する通気性部材配置工程と、
該通気性部材配置工程の後、該キャビティ内で発泡合成樹脂原料を発泡させる発泡成形工程と
を行うことを特徴とする発泡成形体の製造方法。
【請求項8】
請求項7において、前記通気性部材の前記排気孔側に、該排気孔と対向するように非通気性部材を配置することを特徴とする発泡成形体の製造方法。
【請求項9】
請求項8において、前記非通気性部材は、粘着剤又は接着剤を介して前記通気性部材に貼着されており、
該粘着剤又は接着剤は、有機溶剤を含有していないか、又は、該粘着剤又は接着剤中の有機溶剤の含有率が0.5重量%以下であることを特徴とする発泡成形体の製造方法。
【請求項10】
請求項8又は9において、前記非通気性部材は、パルプ、又は、パルプとSBR樹脂との積層体よりなることを特徴とする発泡成形体の製造方法。
【請求項11】
請求項8ないし10のいずれか1項において、前記非通気性部材は、前記通気性部材の前記排気孔側の面に沿って延在するシート状のものであり、
該非通気性部材は、厚さが0.05〜0.2mmであり、JIS−Z−0237により規定される引張強度が30〜90N/15mmであり、JIS−Z−0237により規定される伸び率が1〜10%であることを特徴とする発泡成形体の製造方法。
【請求項12】
請求項6ないし11のいずれか1項において、前記発泡成形体はシートパッドであることを特徴とする発泡成形体の製造方法。
【請求項13】
発泡合成樹脂よりなる発泡成形体を製造するための金型のキャビティ内面に設けられた、該キャビティ内のガスを該キャビティの外部に排出するための排気孔に、発泡成形時に該キャビティ内の発泡合成樹脂が侵入することを防止するための排気孔閉鎖部材において、
該排気孔閉鎖部材は、
該排気孔から該キャビティ内へ進出して該排気孔を開放した排気孔開放位置と、該排気孔内に後退して該排気孔を閉鎖した排気孔閉鎖位置とをとりうるように進退可能な開閉部材、及び、
該開閉部材を該排気孔開放位置に付勢した付勢部材
を有しており、
該付勢部材は、発泡成形時において、該排気孔開放位置にある該開閉部材に対し、該キャビティ内に充満してきた発泡合成樹脂から押圧力が加えられたときに、該開閉部材が該排気孔閉鎖位置に後退することを許容するように構成されていることを特徴とする金型の排気孔閉鎖部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−63630(P2013−63630A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233941(P2011−233941)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】