説明

金型を使う成形品の製造方法および金型装置

本発明は、金型を使用して成形品を製造する方法および金型装置を対象とする。本発明に係る方式は、耐圧性の高いフレーム(1)、およびフレーム内に配置される加圧筐体(6)を含み、加圧筐体において金型が高い圧力および温度に囲繞される。高温を利用することで、オートクレーブを使った後処理を行わなくてすむ。本製造技術に適した複数の下部分を加圧筐体(6)の下部分として配設可能であり、この場合、本発明に係る方式を用いて、プラスチック成形技術として知られ真空成形金型や射出成形金型などに用いられる技術を、圧縮成形技術によって製造される成形品および金型に適用する。

【発明の詳細な説明】
【詳細な説明】
【0001】
本発明は、請求項1の前段および請求項10の前段にそれぞれ示す、金型を使用して成形品を製造する方法および金型装置に関するものである。
【0002】
本発明に係る方法および金型装置、すなわち本発明の方式は、用途が幅広いため、金型でのさまざまな製品の製造に適用できる。製造においては、多様な従来技術およびこれらの技術の優れた面を組み合わせることで、製造する製品を小さくしたり非常に大きくしたりでき、また肥料、ワラ、おがくずまたは木屑、紙、プラスチック、ゴム、金属などのさまざまな原材料から製造することも可能である。さらに、本発明に係る方式は、まったく異なる複合材料を短時間で製造する場合にも適用できる。
【0003】
異なる材料からなる成形品は、形状や大きさ、その他の点で異なっていて、従来技術に係る方式によって、例えば積層、プレス、真空形成、射出、発泡、および注入成形、ならびにこれらの方法の組合せによる方法など、さまざまな異なる方法を用いて、金型を使って製作される。目的に合わせて、ある成形品は手作業で製作され、またある成形品は機械で作製される。大きな成形品は一般的に手作業で積層成形され、小さな成形品はいろいろな方法でプレス成形または鋳造される。
【0004】
種々の強化プラスチック品、すなわちプラスチック複合物は、従来技術に従って、例えば手作業で強化材層と樹脂層とを鋳枠上に交互に重ね合わせる。この方法はオープンモールド式積層と呼ばれ、その利点の1つとして、例えばボートのような非常に大きな成形品も製造できることが挙げられるが、オープンモールド式積層はとくに専門的な技術を要するという問題点があり、出来上がった製品の品質は、積層作業者によって大きなばらつきがでる。また、オープンモールド式積層は、かなり時間がかかる。成形品の大きさによって、製品の製造にかかる時間は、2〜3時間から数週間にまで及ぶ。スプレーアップ成形法および真空バッグ法に基づく成形法はオープンモールド式積層によく似た方法であり、オープンモールド法よりいくぶん製造が早いが、高い専門的技術が必要なため品質にばらつきがあり、また依然として大きな成形品の製造には時間がかかるという問題がある。
【0005】
シート成形コンパウンド(SMC)法は多く用いられる方法であり、とくに自動車産業においてプラスチック複合物の製造に用いられる。この方法では、圧縮成形として行われる加熱加圧成形法を用い、厚さ数ミリメートルの可撓性SMC材を金型に押し入れて所定の形状に押圧した予備成形物を、温度を利用して硬化させる。SMC法は、主にシート型の成形品の製造に適している。製造時間は数秒〜数分で、形成品の大きさによって決まる。従来の方式で使用される金型は非常に高価なため、経済的に採算がとれる一連の量は一般に、少なくとも10,000単位である。他の問題点は、SMC法で製造される成形品の強度はあまり高くないことである。
【0006】
また、バルク成形コンパウンド(BMC)法も加熱加圧成形法である。充填剤が充填され入念に調整した量の強化成形材料を圧縮成形法に従って金型に押し入れて、より高い温度で硬化させる。この方法もまた、金型が高価であるという問題があり、使用する装置がこの方法にしか適さないというのが現実である。
【0007】
樹脂トランスファー成形(RTM)法は、強化材料を乾燥状態で気密性両面金型に配する方法であり、金型の他方の側は、例えば真空バッグである。負圧または過圧をかけて樹脂を強化材を通して金型間の空間に注入する。この方法を用いることで大きな成形品を製造することも可能だが、この場合も、使用する装置はこの目的にしか適さない。また、樹脂の硬化に長時間かかる。
【0008】
さらに別の積層技術としてプレプレッグ積層があり、例えば、航空産業でよく用いられる。プレプレッグ法では、樹脂は積層開始前でも硬化し始めるものの、硬化にかかる時間は長くなる。製造済みの積層シートを少なくとも−18℃の温度で保存すれば、樹脂の硬化が速すぎることはない。そのため、製造済みのプレプレッグ積層シートは搬送および保管が困難である。また、プレプレッグ法で用いるエポキシ樹脂を硬化させるには的確で管理された状態におく必要があり、例えば約100kg/cm2の圧力範囲で、約120〜180℃の温度にする。積層物は真空バッグを使用して密封し、後硬化処理はオートクレーブで約30〜60分、上述の温度範囲で行う必要がある。
【0009】
例えば、とりわけ射出成形に関連して、圧縮成形は一般的に、積層させるプラスチック製品とは別のプラスチック製品用または他の材料からなる製品用の金型を使用して行われる製造に用いられる。しかしながら、概して真空成形または他の成形技術を圧縮成形装置に結びつけるのは経済的見地から不可能であるという問題があり、そのため、各装置を個々に作製しなければならない。さらに、適切な加熱処理を圧縮成形装置に結びつけて、製造される成形品を硬化させることは不可能であったため、この圧縮成形装置を使用して作製できるのは硬化反応が不要な特定の種類の成形品だけであった。
【0010】
いわゆる「ハイドロフォーミング」技術も公知の技術であるが、この技術では、液圧および弾性膜を使って、例えば金属板を常温でメス金型またはオス金型に、またはこれらを組み合わせたものに押し込む。ハイドロフォーミング技術は、現在では、例えば自動車産業などで多く用いられている。しかし、現在使われているハイドロフォーミング技術は、高温かつ高圧下で使用するのに適していないため、例えば硬化処理が必要なプラスチック複合構造体をこの金型で作製することは不可能である。またこの方式においても、固定成形品の金型は非常に高価である。
【0011】
1つの問題として、とくに、大きな表面を有する成形品を製造する装置であって、圧縮に必要な圧力を発生するとともにこの圧力に耐え、しかも硬化に必要な熱も1台で発生する仕組みを含むようなものが存在しないという問題がある。この場合、従来技術に係る方式における問題点は、一般的に金型が高価なうえに、金型内で加圧または積層される製品は圧縮または積層処理後すぐに使用できるわけではなく、むしろ圧縮または積層処理後に、通例、数時間にわたる乾燥および/または硬化が行われることである。手作業で行われるオープンモールド式積層では、加熱処理は適用されず、成形品を金型から取り出せるのは積層処理が完了した翌日のみであるうえに、分離剤が高額である。また、硬化処理に必要なオートクレーブも高価であり、大きな装置であるため場所をとる。熱可塑性プラスチック製品および熱硬化性プラスチック製品の製造に関連して、種々の金属、およびネジなどの金属製インサート、さまざまな取付け具または補強材をプラスチック製品に一体化できる装置は、まったく存在しない。また別の問題点として、従来技術に係る、例えば圧縮成形および射出成形による加圧方法では、経済的に製造可能なのは比較的小さい成形品だけであり、そのため、しばしば大規模な連続製造のみとなってしまう。
【0012】
本発明は、上述の問題を解消して、とりわけ、加圧チャンバの下半体が交換可能なために安価であり、さまざまな用途に適して効果を発揮する金型を使用して、成形品を製造する方法および金型装置を実現することを目的とする。また、本発明は、金型が簡易構造で安価であるにもかかわらず、高品質の完成品を得られる方式を実現することを目的とする。さらに、加圧チャンバの下半体が交換可能なため、大きさの異なるいろいろな成形品の製造において、とくに従来技術に係る製造技術の特性および優れた面を容易かつ有利に組み合わせることを可能とし、大型の成形品も小型の成形品も、また、現在、例えば積層成形、圧縮成形、真空成形、発泡成形、および注入成形といった異なる技術を用いて製造されている成形品も、同一方式を用いて製造できる方式の実現を目的とする。
【0013】
また、金型で製造されるさまざまな成形品の製造を従来技術による製造より速く行える方式を実現することを目的とする。さらに、別途にオートクレーブ処理を行わずにすむようにすることで、費用を節約して、時間を短縮することを目的とする。加えて、例えば従来の真空技術の代わりに、射出成形技術と圧入技術の組合せを可能にする圧縮成形を用いることを目的とする。本発明に係る方法は、請求項1の特徴段に開示される事項を特徴とする。同様に、本発明に係る金型装置は、請求項10の特徴段に開示される事項を特徴とする。本発明によるその他の実施例は、その他の請求項に開示される事項を特徴とする。
【0014】
本発明に係る方式の利点の1つは、とくに、成形品の製造が短時間で安価にできることである。可撓性膜を利用して多数の異なる成形品を複数の異なる金型で同時に加圧できるため、小さい成形品を金型ですぐに製造できる。別の利点は、金型が安価なため、小規模の連続製造を経済的に行えることである。また安価な金型によって大きな成形品の機械化製造が可能となり、また、加熱処理を適用するため、大型の積層成形品さえも短時間に低コストで製造できる。費用のかさむオートクレーブでの別途の硬化処理も不要である。
【0015】
別の利点は、本方式を用いることにより、とりわけ加圧チャンバの下半体を交換することで、例えば木材、金属、プラスチック、ゴムなどの異なる材料から作られる実にさまざまなタイプの製品を製造できることである。加熱処理および圧縮処理を行うことで、とくに木製材料に含まれるリグニンが結合剤として使用でき、この場合、外用の結合剤は必ずしも必要でない。また、別の利点として、例えば電子機器回路、ネジ要素などの金属製インサート、および種々の固定部品の他に、補強材なども複合材料から作成される製品に結合させることができる。さらに別の利点は、同じ装置を使用して必要な金型を製造できることであり、この金型は安価、かつ軽量であり、簡単に与圧空間に取り付けられる。さらには、本発明に係る方式により、現今、真空技術によって製造される成形品を、製造される軽量の金型構体を使って、有利には圧縮成形技術を利用して生産できるという利点もある。この場合、従来、真空技術を用いて製造されてきた製品の製造においても、従来の圧縮成形技術における製造と同様のかなり短い製造時間を達成できる。同様に、本発明に係る方式でも、圧縮成形によって、また手作業で積層金型を使用すれば射出成形や射出成形技術を用いて、広表面の大型成形品を製造できる。
【0016】
以下に、添付図面を参照していくつかの実施例を挙げて本発明について詳細に述べる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る一装置を上から見た簡略斜視正面図である。
【図2】本発明に係る別の装置を上から見た簡略斜視正面図である。
【図3】図2の装置の簡略部分断面側面図である。
【図4】本発明に係る装置の簡略液圧系統図である。
【図5】本発明に係る一装置の断面を示す簡略側面図であり、加圧チャンバの両半体を意図的に互いに分離させた状態を示す。
【図6】本発明に係る一装置の断面を示す簡略側面図であり、加圧チャンバの両半体を結合させた状態を示す。
【図7】本発明に係る二層金型を備えた一装置の断面を示す簡略側面図であり、加圧チャンバの両半体を意図的に互いに分離させた状態を示す。
【図8】本発明に係る一装置の断面を示す簡略側面図であり、加圧チャンバの両半体を意図的に互いに分離させてあり、加圧チャンバの下チャンバ部が設けられ、下チャンバ部が真空配管を備えている様子を示す。
【図9】本発明に係る一装置の断面を示す簡略側面図であり、加圧チャンバの両半体を結合させてあり、加圧チャンバの下チャンバ部が設けられ、下チャンバ部が射出成形装置を備えている様子を示す。
【図10】本発明に係る複合構造の成形品を製造する一装置の断面を示す簡略側面図であり、加圧チャンバの両半体を意図的に互いに分離させてあり、加圧チャンバの下チャンバ部が設けられ、加圧チャンバの上チャンバ部に送られるプロセス圧と同じプロセス圧を下チャンバ部にも送る様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
液圧プレス機構は、例えば1種類の材料からなる製品や種々の複合材料からなる製品および積層製品などの色々な製品を、例えば圧縮成形法、真空成形法、および射出成形法などのさまざまな圧縮方法で製造する際に使用される。本発明に係る方式は、高耐圧性フレーム1およびフレーム内に配設される加圧チャンバ6を含み、加圧チャンバ6内では金型が高圧、高温の環境下におかれ、加圧チャンバ6の下チャンバ部8はその時の用途に応じて交換できる。また本方式は高温状態を利用するので、製造する製品のオートクレーブでの後処理が不要となる。本発明に係る方式では、とりわけプラスチック成形技術として知られ射出成形用金型などに用いられる技術が適用される。
【0019】
図1は、本発明に係る一装置を上方から見た簡略斜視正面図である。本装置を完全には図示していないが、これは図を簡略にするためであり、とくに液圧系の大部分を省略してある。図1は本装置の強度の高いフレーム構体1を示していて、このフレーム構体は、少なくとも第1の部分、すなわち上部分2、および第2の部分、すなわち下部分3、ならびに両部分を連結させ液圧ナットを備えたボルトなどの締結手段4を含んでいる。液圧ナットを使用して、上部分2と下部分3の間には必要な予固定を施す。第1のチャンバ部、すなわち上部チャンバ7と、第2のチャンバ部、すなわち下部チャンバ8とからなる実質的に複式の加圧チャンバが上部分2と下部分3の間の収容空間1aに配設され、上部チャンバ7および下部チャンバ8は、製品の製造中に、フレーム構体の上部分2および下部分3、ならびに締結手段4によって同時に強く加圧される。
【0020】
また、本装置はフレーム部1の上部分2と上部チャンバ7との間に液圧式圧縮手段を含んでいるが、図1にはその液圧式コネクタ5のみを示す。圧縮手段が上部チャンバ7および下部チャンバ8を互いにぴったりと押し付ける役目を果たし、圧力コネクタ9を介して加圧チャンバ6に伝わり製品の製造に用いられるプロセス圧が上部チャンバ7と下部チャンバ8の間から漏出しないようにしている。加えて、本装置は必要に応じて、前述の液圧式圧縮手段に実質的に相当する圧縮手段を加圧チャンバ6の一方または両方の側部の一端または両端に備えて、加圧チャンバ6の各半体7、8の側部および端部を支持し、さらには各半体の相対的動きを制限する。側部および端部が支持されることで、加圧チャンバの側壁および端部は、どんな状況でも使用される圧力で生じる応力に耐えることができる。これらの圧縮手段は図示しない。
【0021】
図2は、本発明に係る別の装置を上方から見た簡略斜視前面図である。同図も本装置の基本的なフレーム構体1しか示していないが、本代案構体では、堅固に構成された枠組みタイプの複数のフレーム要素1bが含まれていて、要素1bは、互いに対して水平方向に一定の間隔をあけて連続的に1つずつ配設されて、例えば支持手段1dで各位置にて補強されている。フレーム要素1bの中央部分は開口部1cであり、その断面積は上部チャンバ7と下部チャンバ8の合計断面積より大きい。フレーム要素1bを連続的に次々と配設することで、各開口部1cは実質的に相互に一直線に並んで、一体となって加圧チャンバ6を収容する空間1aを形成する。
【0022】
図3は、図2に係る装置のフレーム構体1の簡略的な部分断面を示す側面図である。本図では、図1に関する説明において言及した液圧式コネクタ5を備えた液圧式圧縮手段16が収容空間の上部面に見られる。液圧式圧縮手段16については、図5に関連してより詳細に述べる。図3に示す方式では、加圧チャンバ6の上部チャンバ7および下部チャンバ8の構造が、図1に示した構造と若干異なっている。図3の方式において、上部チャンバ7および下部チャンバ8の長辺部が傾斜していて、ともにV字角を形成している。この場合、上部チャンバ7の第1端部は第2端部よりも高くなっていて、これに対応して、下部チャンバ8の第1端部は第2端部よりも幅が狭い。上部チャンバ7および下部チャンバ8の長辺のV字角は、互いに実質的に同じ大きさである。図3では、V字角の大きさを誇張して描いている。
【0023】
また、V字形状の原理を適用して、収容空間1aの上部面または底面が互いに対してV字状の空間を形成するようにしてもよい。この場合、例えば、収容空間1aの後方端に向かって進むと、収容空間1aの高さが線形に減少する。横から見ると、本例における収容空間1aは、その底部が実質的に水平面上にあるが、前方から後方端に向かって進むと、上部面は下降する。あるいは、前方から後方端に向かって進むと、底面が傾斜するのに対し、上部面は実質的にそのまま水平面上にある。また第3の選択肢として、前方から後方端に向かって進むと、上部面が下降し、底面は上昇する。これに対応して、上部チャンバ7および下部チャンバ8が向かい合って上下に重なる加圧チャンバ6も、横から見ると収容空間1aと実質的に同じ形状を有している。本例では、加圧チャンバ6の前方端からその後方端に向かって進むと、上部チャンバ部7の上部面が下降して下部チャンバ部8の底部は変わらず水平面上に位置するか、もしくは下部チャンバ部8の底部が上昇して上部チャンバ部7の上部面はそのまま水平面上に位置するか、さらには、上部チャンバ部7の上部面が下降するとともに下部チャンバ部8の底部が上昇するかする。これに関連して、加圧チャンバ6の前方端は、加圧チャンバが収容空間1a内に押し込まれたり、引き出されたりする端部をなしている。
【0024】
徐々に大きくなる加圧チャンバ6のV字形状を収容空間1aの浅くなっていくV字形状に押し込むと、加圧チャンバ6は最終的に収容空間1aの上部面と底面との間にしっかりと押し込まれる。以下に言及する圧縮手段16によって、両圧縮半体は確実に一体となる。
【0025】
加圧チャンバ6は次のようにしてフレーム構体1の収容空間1a内に収容される。例えば、まず下部チャンバ8が目的に適した何らかの押し手段1eによって収容空間1aの第1の端部から収容空間1a内に押し込まれ、ついには下部チャンバ8が収容空間1a内の最終的な位置に達する。その後、上部チャンバ7の第2端部が下部チャンバ8の第1端部の上に配され、上部チャンバ7は押し手段1eによって矢印Aの方向に上下チャンバ間のV字面に沿って摺動して、下部チャンバ8上の定位置へと動く。収容空間1aの高さと上部チャンバ7と下部チャンバ8の合計高さとは、次のように決める。すなわち、上部チャンバの上部面と収容空間1aの上部面との間には当初、隙間があり、上部チャンバ7が定位置に収まるとこの隙間がなくなって上部チャンバ8の上部面が収容空間1aの上部面にぴったりと押し付けられる。液圧式圧縮手段16によって上部チャンバ7および下部チャンバ8が最終的に互いに対して押し付けられる。圧縮手段は、作動圧力を液圧系または別の液圧集合体から得ているが、ここでは図示しない。
【0026】
図4は、本発明に係る装置の液圧系統を概略的に図示している。液圧系10は少なくとも、圧力媒体貯蔵槽11、圧力配管10a、循環ポンプ12、圧力媒体用の加熱手段13、プロセス圧を加圧チャンバ6へ作用させるアクチュエータ14、およびアクチュエータの圧力媒体貯蔵槽15を含み、さらに複数のバルブ10bを含んでいる。圧縮手段16およびアクチュエータ14によって加圧チャンバ6に発生する圧力の大きさを相互に決めて、圧縮手段16に行き渡る圧縮圧力が常に加圧チャンバ6内のプロセス圧より大きくなるようにする。
【0027】
圧力媒体は、高温高圧に耐え圧縮性が低い液体である。圧力媒体は、例えば温度−40℃〜+450℃の範囲で使用可能なものとすべきである。このような圧力媒体の一例として、例えば低温で溶解する金属がある。この金属は、溶けると加圧チャンバ6に送られる。上述の温度にする必要はないが例えば約+250℃の温度で十分な場合には、別の種類の圧力媒体を使用してもよく、例えば、圧縮性の非常に低いエチレングリコールまたはそれに相当する物質でよい。
【0028】
圧力媒体は加熱手段13を使って加熱し、加熱手段13は、図4に示すように加圧チャンバ6の外側に設けてもよい。この場合、別の容器内で、例えば電磁誘導装置またはマイクロ波方式で動作する装置を使って電気抵抗を利用して圧力媒体中に熱を発生させて、この容器から圧力媒体を介して熱を加圧チャンバ6の第1の、つまり上部のチャンバ部7の与圧空間17に伝達させ、また方式によっては、加圧チャンバ6の第2の、すなわち下部のチャンバ部8の与圧空間17aにも伝熱させる。必要な熱は、加圧チャンバ6内の、例えばセラミック金型の上部面付近または本発明で使用されている薄い金属製金型の後部面に発生させてもよく、これらの箇所に加熱手段の役割を果たす熱要素を配設することができる。熱要素は、例えば電磁誘導方式または電気抵抗方式のいずれかに基づいて動作する。重要な点は、圧力媒体および/または金型を加熱して製品の製造工程で必要な温度にすることであり、そうすることで製造に使用する原材料を適切な温度にでき、なおかつ/または積層製品の製造の際、圧縮した製品を速やかに硬化させることができる。
【0029】
循環ポンプ12は圧力媒体を循環させるものであり、製品を金型に押し込むプロセス圧は、手動によって、または機械作動アクチュエータ14を用いて行う。これにより、大きな圧力が加圧チャンバ6に発生し、製造すべき成形品を金型に押し込んで実質的に最終形状にする。
【0030】
図5は本発明に係る一装置の断面を示す簡略側面図であり、加圧チャンバ6の各半体7、8を意図的に互いから分離させた状態で示している。フレーム構体1の上部分2の底面には液圧式圧縮手段16が含まれていて、圧縮手段16は、圧力流体が充填された与圧空間16aと、与圧空間を下から閉じる弾性膜要素16bとを含み、膜要素は与圧空間16aに行き渡る圧力に耐えうる寸法である。膜要素16bの縁部は、漏れを防止する方法で上部分2の底面に固着されている。与圧空間16aは、本装置の液圧式コネクタ5を介して圧力系10に接続されている。圧縮手段16の膜要素16bは、加圧チャンバの上部チャンバの外面、すなわち上部面に接して取り付けられて、加圧チャンバ内に広がるプロセス圧より大きい圧力で、加圧チャンバの上部チャンバ、すなわち上半体7を、下部チャンバ、すなわち下半体8に押し付ける。
【0031】
加圧チャンバ6の各半体7、8内には与圧空間17、17aがあり、各空間は圧力コネクタ9を通じて本装置の液圧系10につながっている。上半体7の与圧空間17は、圧力や熱に対する耐性を持つシリコーン膜またはテフロン膜などの弾性膜18によって、耐圧状態で与圧空間の底部、すなわち下半体8側から遮断されている。これに対して、下半体8の与圧空間17aは、用途に応じて例えば鋳物砂またはセラミックから作られたいくつかの異なる要素17bを含み、要素17bは、実質的に与圧空間17a全体を満たし、与圧空間17aの底部に載ることができる。金型要素17bは、例えば鋳物砂を使って作るか、またはセラミックから作り、その上部面には、鋳枠を使って金型パターンを1つ以上作製するか、または上部面の金型パターン上に、金型要素19に相当する金型パターンの実質的に薄い金型要素を設けることができる。鋳物砂への金型パターンの形成および鋳物砂の封止は、上半体7および弾性膜18を利用するとともにプロセス圧および鋳枠も利用して、弾性膜18を圧縮することで鋳枠を鋳物砂内に押圧して、行う。
【0032】
要素17bは、例えばそのまま、金型の機能、または複数の金型を含む金型要素の機能を果たすものでよく、あるいは図5〜図8に示すように個々の金型または個々の金型要素19を要素17bの上に配設してもよい。以下では、金型要素とは、1個の大型製品用の金型か、または同一要素内に同時に製造される小型の製品用の複数の金型を含む構成要素のことを指す。
【0033】
用途に応じて与圧空間17aも圧力流体で満たしてもよく、その場合、基本的に薄い金型を与圧空間の上半体7と下半体8の間に用いる。本例では、与圧空間17aを与圧空間の上部、すなわち上半体7の側部から遮断するが、その際、実質的に薄い金型要素19、例えば1個の大型成形品用の金型形状または一度に複数作製される小型成形品用の金型形状に形成され金属板、プラスチックシートもしくはプラスチック複合材シート、またはその他の適切な材料からなる薄い金型要素を使用する。したがって、1個の金型要素19は、一度に数個の製品を加圧する同様のまたは異なった金型枠を多数含んでいてよい。薄い金型を使用する場合、加圧チャンバ6の下半体8は、金型充填の際または製品製造の際に金型要素19を定位置に保持する手段を含む。好ましくは、これらの手段は下半体8が上半体に当接する縁部である。本例では、金型要素19の縁部は、加圧チャンバ6の下半体8の外縁の外側へと水平方向に延びていて、この場合、成形品を製造する際に金型要素19の縁部が加圧チャンバ6の両半体7、8の間で押圧される。
【0034】
加圧チャンバ6の両半体7、8の間の隙間は、例えば弾性密閉手段9cによって密閉され、密閉面の裏側は、圧力ダクト9b、増圧器9aおよび圧力コネクタ9を介して本装置の液圧系10に接続される。このように、増圧器9aはプロセス圧に接続され、大きさの異なる数種のピストンで実現される増倍率によって、密閉手段9cには常に、その時点で加圧チャンバ6の与圧空間17、17aに広がっているプロセス圧より高い圧力が発生する。そのため、プロセス圧が与圧空間17、17aから漏出することはない。
【0035】
金型として機能する要素17b、19の上に位置する充填用空間には、圧縮して製品となる材料20が収容され、この材料は、好ましくは加圧チャンバ6の下半体8がまだフレーム構体1の収容空間1aの外側で遊離状態にある時、金型要素17b、19の上でいずれかの任意の位置に配される。この場合、製品製造に要する材料すべてを容易に金型に入れることができる。
【0036】
図6は図5に係る装置を示していて、金型要素17b、19に入れた材料20を加圧して最終製品に仕上げる状態である。本図の状態では、プロセス圧はまだ発生せず、その場合、弾性膜18はまだ金型要素17b、19の金型パターンに押圧されていない。プロセス圧がアクチュエータ14によって本装置にかかると、与圧空間17内の圧力媒体の圧力が大きくなり、弾性膜18が材料20にしっかりと押し付けられて、これを金型要素17b、19の金型パターンに対して薄層状態で押圧する。要素17bの代わりに下部チャンバ部8の与圧空間17aを本装置の液圧系10に接続し、与圧空間17aが圧力媒体を含んでいる場合には、弾性膜18に囲まれている上半体7の与圧空間17内の圧力媒体に作用する圧力とまったく同じ圧力が、金型要素19の下、すなわち後部側にある下半体8の与圧空間17a内の圧力媒体に作用するので、実質的に薄い金型要素19はその形状が変わることなく高いプロセス圧に耐えられる。
【0037】
図7は、本発明に係る二層金型を備えた一装置の断面を示す簡略側面図であり、本図では、加圧チャンバ6の各半体7、8を意図的に互いから分離させた状態で示している。本装置は図6に示し上述した例と基本的に同じであるが、ここでは、同じ金型要素19の他に、第2の金型要素19aも加圧チャンバ6に配設されていて、第2の金型要素19aは下部金型要素19の上に取り付けられている。下部金型要素19の縁部は、加圧チャンバ6の両半体7、8の間を先へと延び、あるいは両半体7、8の縁部の外側まで延びているが、上部金型要素19aは下部金型要素19よりサイズが小さく、加圧チャンバ6の両半体7、8の間まで延びていない。下部金型要素19を設ける必要はまったくなく、代わりに、与圧空間17aを埋める金型要素17bの上に上部金型要素19aを直接載置してもよい。
【0038】
上部金型要素19aも基本的に薄く、その材質や構造は実質的に下部金型要素19と同じでよいが、下部金型要素19または17bとは異なる金型パターンを備えることも可能である。この場合、製造される製品の厚みは必ずしも同じとならない。本方式では、プロセス圧が発生すると、弾性膜18は上部金型要素19aの裏面に押し付けられ、製品が金型の下半体と金型の上半体の間で仕上がる。
【0039】
金型要素19、19aはそれぞれ、上半体と下半体で材質が異なるように構成可能である。その場合、例えば、金型要素19、19aの裏側を全面的に金属製にし、前側を複合材で形成してもよく、またその逆も可能である。
【0040】
図7に係る方式では、他の図における加圧チャンバより壁が薄い加圧チャンバを示している。図7では側壁を視認できないが、側壁も実質的に上部壁および底壁などと同じ薄さである。加圧チャンバ6の壁は、例えば金属板の溶接によってさらに薄くもできる。この場合、より大きな加圧チャンバでも安い費用で作成できる。重要なことは、加圧チャンバ6の壁が外側で上、下および両横から保持されていることであり、また必要に応じて、最終的に加圧チャンバの壁が湾曲したり外側に膨張したりしないようにすることである。この保持は、例えば、上述の液圧式圧縮手段16やそれに相当する手段を用いて行う。
【0041】
図8は、真空技術に適用可能な加圧チャンバの下チャンバ部8を備えた本発明に係る一装置を簡略に示している。下チャンバ部8は、上記図5〜図7では構造的に一体であったが、本例では別の下チャンバ部8に置き換わり、このチャンバ部は、下チャンバ部8および要素17bに嵌め込まれて、金型要素19を介して、または金型として機能する金型要素17bの表面から直接、空気および液体を吸引する真空配管24を含む。ここから真空配管24は本装置の真空機構に接続されているが、真空機構は図示していない。製造用原料20が真空配管24に入り込むのを防止する薄い遮蔽板19cが金型表面と製品の製造用原料20との間に配されている。空気の除去方法は一般的に真空技術に用いられるものであり、本発明に係る方式でも、空気除去方法を用いるのに必要な分離膜などの従来の構成要素を図示してはいないが、そのような除去方法を用いている。
【0042】
図9は、射出成形技術に適用可能な加圧チャンバの下チャンバ部8を備えた本発明に係る一装置を簡略に示している。下チャンバ部8は、上記図5〜図7では構造的に一体であったが、本例では別の下チャンバ部8に置き換わり、このチャンバ部は、圧縮成形配管25、および下チャンバ部8および要素17bに嵌め込まれネジ26を備えた圧縮成形装置を含んでいて、成形装置を使用して、製品の原料を圧縮成形配管25を通じて要素17bの上部面の金型に押し込む。金型は、与圧空間17のプロセス圧によって、加圧チャンバ6の上チャンバ部7の側部から圧縮される。本例では、製造工程が以下の点において従来の射出成形技術、つまりダイカスト技術の工程と異なっている。すなわち、金型の第2の下位部分に固定式金型を使わず、液圧技術を使って加圧される与圧空間17および弾性膜18を使用している。
【0043】
図10は、本発明に係る加圧チャンバ6の第4の異なる下チャンバ部8を示している。本実施例では、下チャンバ部8はチャンバの与圧空間17aを満たす要素17bを備えていず、代わりにチャンバ部8の与圧空間17aには、製品の製造に関連して本装置の液圧系10の圧力媒体が充填されている。本例では、製品を圧縮する際、プロセス圧が各半体7、8の与圧空間17、17aに送られ、増大されて密閉手段9cに送られる。図10に示す方式は、例えば複合構体の成形品の製造に適している。
【0044】
しかしながら、図10に係る構造においても、固定式金型要素17bを加圧チャンバ6の下半体8の与圧空間17aに配してもよい。この場合、製品を加圧する際に、プロセス圧は上半体7の与圧空間17のみに送られ、次いで増倍されて密閉手段9cに送られる。
【0045】
図10に係る状況では、複合構体の第1の層21がすでに金型に押し込まれていて、次の層22が層21の上に配されている。この2番目の層は、例えば強化繊維、導電性要素、またはその他の要素23からなり、この繊維または要素は第1の層21と結合するためのものである。プロセス圧が本装置にかかると、弾性膜18が第2の層22を付加要素23とともに第1の層21にきつく押し付ける。大きな圧力と適切な温度によって最終的に、製造が迅速で耐久性のある複合製品が1または複数個得られる。
【0046】
本装置は調節手段も含み、調節手段を用いて圧縮速度および加圧チャンバ内に行き渡る圧力の増加、ならびに加圧チャンバ内の温度を、必要に応じて加圧中に調節する。同様に、本装置は、加圧周期のタイミングを調節する調節手段を含んでいる。この調節手段は、図示していない。例えば射出成形技術などで知られる従来の技術を用いて、空気を金型要素17b、19から除去する。
【0047】
本発明に係る方式の特徴は、とりわけ、液体加熱もしくは他の適切な加熱によってもたらされる金型要素17b、19、19aまたは被圧縮材料の加熱および/または硬化、ならびに実質的に薄い金型要素19、19aを使用する際にその薄い金型要素19、19aの真後ろに液圧を発生させることである。製品の表面を形成する金型要素17b、19、19aの側部の特性を選択的に決めることで、側部が圧力および温度の変化に耐えられるようにする。この場合、金型要素17b、19、19aの表面は、例えば金属または複合構造であるのが好ましい。
【0048】
さらに、本発明に係る方式は、金型装置が複数の下部分、すなわち第2のチャンバ部8を含んでいることを特徴とし、下チャンバ部には、種々の製品の製造に必要ないろいろな製造方法に応じて、さまざまな特性を持たせる。本例では、異なるチャンバ部8をそれぞれの用途に合わせて適切に設計可能であり、その場合、金型装置は例えば複数の異なる下チャンバ部8を含んでいてもよく、下チャンバ部は、例えば積層成形、プレス成形、真空成形、射出成形、発泡成形、および注入成形、ならびにこれらの方法の組合せや、その他の関連となる製造方法による製品の製造に使用するように適合させる。
【0049】
複数の金型要素19を使用するので、製品の製造処理速度を高めることができる。この場合、先行する金型要素19が加圧チャンバ6内で加熱段階、プレス段階、または乾燥/硬化段階にあれば、これと並行して次の金型要素19を充填しておくことができる。先の金型要素19を加圧チャンバ6から取り出して冷却すれば、すでに充填済みの次の金型要素19をすぐに加圧チャンバ6に入れることができ、新たなプレス工程を開始できる。
【0050】
本発明に係る方法を使って、製品にする材料を第1チャンバ部7および第2チャンバ部8を備える加圧チャンバ6内で押圧することで種々の製品を製造し、第2チャンバ部8は製造される各製品固有の性質に合わせて交換する。この場合、それぞれ異なる種類の複数のチャンバ部8を一度に1つずつ配設して、これを第1のチャンバ部7と対になる第2のチャンバ部8にする。チャンバ部8はそれぞれ、そのチャンバ部8を使って製造する製品固有の性質に応じて、装備および/または構造が互いに異なっている。
【0051】
本発明に係る方法では、1または複数の金型要素17b、19、19aおよび金型の充填物、つまり製造する成形品の材料を加圧チャンバ6内に配する。次に、成形品の製造に要する圧力に耐性のあるフレーム構体1内に加圧チャンバ6を押し手段1eによって押し込む。その後、液状の圧力媒体を用いて、製品の製造に要するプロセス圧を加圧チャンバ6の金型の少なくとも一方の側部に作用させる。圧縮圧力を作用させる他、製造する成形品の材料および/または製造する成形品を製造工程で必要な加圧チャンバ6の温度にする。この温度は、圧力媒体を媒介として、あるいは金型要素17b、19、19aに接する加熱手段を使って、発生させる。
【0052】
一好適実施例において、実質的に同じ大きさのプロセス圧を液状の圧力媒体によって、加圧チャンバ6の基本的に薄い構造の金型要素19、19aの両側にかける。
【0053】
加圧チャンバ6の上半体7および下半体8は、好ましくは、フレーム構体1と加圧チャンバ6の間にある液圧式圧縮手段16によって互いに対して押圧される。さらに、加圧チャンバ6の上半体7と下半体8の側部、および必要に応じて端部を圧縮手段16に相当する圧縮手段で保持し、また、密閉を確実にするために、プロセス圧を増大させて得た圧力を加圧チャンバ6の上半体7と下半体8の結合面上の密閉手段9cに送る。増大された圧力は、加圧チャンバ6内のプロセス圧より大きい。例えば、低温で溶解する液状の金属または合金を圧力媒体として加圧チャンバ6に送る。
【0054】
加圧チャンバ6に配設された1または複数の金型要素17b、19、19aへ必要な製造用材料を1回の製造段階で同時に入れて、必要なプレス処理および加熱処理を一回の段階で一度に行うことによって、金型要素17b、19、19a内で複合構体を製造する。この材料は、例えばプラスチックおよび強化剤を含み、また必要に応じて電子部品、ネジ要素やさまざまな固定用部品などの金属製インサート、さらには補強材およびその他の完成品に必要な要素を含んでいる。
【0055】
当業者に明白なことであるが、本発明に係るさまざまな実施例は上述の例に限られるのもではなく、本願特許請求の範囲内において変更可能である。したがって、例えば、本装置のフレーム構体や他の構造は、上に例示したものと異なっていてもよい。ただし、加圧チャンバの上下半体が互いから分離できないように担持する堅固な支持フレーム構体とすることが重要である。この場合、例えば岩盤窟などもフレーム構体の役割を果たすことができる。
【0056】
また、加圧チャンバを上記の例と異なる構造にできることも、当業者に明白であろう。加圧チャンバの下半体を、例えば上半体より浅くしてもよく、また金型要素の下の与圧空間を、弾性膜の上の上半体の与圧空間より狭くしてもよい。
【0057】
さらに、これも当業者に明らかであるが、金型要素の材料は、上述の金属、セラミック、プラスチックまたはプラスチック複合材の他に、例えばゴム、木材、コンクリートまたはその他の形成が容易で必要な圧力および温度に耐えうる適切な材料であれば、どのようなものでもよい。金型要素は、例えば、ローズ合金、スズ箔、共晶はんだなどの低融点合金から製造できる。前述の合金を加圧チャンバ内の鋳枠の上または中で成形し、その際の温度は当該合金の融点より高い。合金は、その時に必要な温度に応じて選択すればよい。ただし、圧力および温度の変化によって金型に変化が起きてはいけないので、適用される温度で金型が溶けてはならないことに留意されたい。
【0058】
成形シリコーンを例えば次の段階を踏んで加圧チャンバの鋳枠内に、もしくはその上に成形して金型を鋳造できることも、当業者に明白である。すなわち、一定量の、例えばRTVシリコーンを与圧空間に供給して、真空排気する。加圧することで精密な金型が得られ、その金型から同じ原理で複製がとれる。二液型シリコーン・エラストマを1または複数の金型の周りに成形して、有利には金型要素に関連して利用する。この場合、シリコーン層のおかげで他方の半体の金型が安価ですむ。同様に、シリコーン層によって、密閉部からの漏れを防ぐことができ、しかもプロセス圧および動作圧力を高くでき、温度も高くできる。
【0059】
また、本装置は、本装置の液圧系に接続された圧力媒体用の別な加熱タンクや冷却タンクを含んでいてもよいことも、当業者に明白なことである。
【0060】
さらには、空気および余分な材料を排出する経路が金型要素に連結されていることも、また真空処理用の真空接続部も連結されていることも、当業者に明白である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1チャンバ部(7)および第2チャンバ部(8)を備える加圧チャンバ(6)で製造用材料を加圧し、製造する成形品を液状の圧力媒体によって金型内で圧縮する、金型を使う成形品の製造方法において、互いに異なるチャンバ部(8)が一度に1つずつ第1チャンバ部(7)と対になる第2チャンバ部(8)の位置を占め、該チャンバ部(8)はそれぞれ、各チャンバ部を使って製造される製品固有の性質に応じて外見および/または構造が互いに異なることを特徴とする金型を使う成形品の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、チャンバ部(8)が一度に1つずつ第1チャンバ部(7)と対になる第2チャンバ部(8)の位置を占め、第2チャンバ部(8)は、積層成形技術、プレス成形技術、真空成形技術、発泡成形技術もしくは注入成形技術、またはこれらの組合せのいずれかを、製造する成形品の製造処理に適用するのに適した手段を備えていることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、前記製造する成形品の材料および1または複数の金型要素(17b、19、19a)を前記加圧チャンバ(6)に入れた後、該加圧チャンバ(6)を成形品の製造に必要な圧力に耐えうるフレーム構体(1)内に嵌め込み、該加圧チャンバ(6)を液状の圧力媒体によって加圧することを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1、2または3に記載の方法において、前記製造する成形品の材料および/または該製造する成形品に作用する圧縮圧力の他に、該製造する成形品の材料および/または該製造する成形品には製造工程で必要な前記加圧チャンバ(6)の温度も適用し、該温度は、圧力媒体によって、または前記金型要素(17b、19、19a)に連結された加熱手段のいずれかによって発生させることを特徴とする方法。
【請求項5】
前記請求項のいずれかに記載の方法において、前記加圧チャンバ(6)の上半体(7)および下半体(8)を前記フレーム構体(1)と加圧チャンバ(6)との間にある液圧式圧縮手段(16)によって互いに対して押圧し、該手段によって生ずる圧力は前記加圧チャンバ(6)内のプロセス圧より大きく、また、密閉を確実にするために、該プロセス圧からの強化圧力を前記加圧チャンバ(6)の上半体(7)と下半体(8)の結合面上の密閉手段(9c)に送り、該強化圧力は、前記加圧チャンバ(6)内のプロセス圧より大きいことを特徴とする方法。
【請求項6】
前記請求項のいずれかに記載の方法において、低温で溶解する液状の金属または合金を前記圧力媒体として前記加圧チャンバ(6)に送ることを特徴とする方法。
【請求項7】
前記請求項のいずれかに記載の方法において、前記加圧チャンバ(6)に配設された1または複数の金型要素(17b、19、19a)に製造用材料を入れて、必要なプレスまたは吸引および加熱1回の製造工程で一度に行うことによって、前記1または複数の金型要素(17b、19、19a)内で1回の製造工程で一度に複数の複合構体を製造し、該製造用材料は、例えばプラスチックおよび強化剤を含み、また必要に応じて電子部品、ネジ要素やさまざまな固定用部品などの金属製インサート、さらには補強材およびその他の完成品に必要な要素を含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
前記請求項のいずれかに記載の方法において、前記製造する成形品の材料および実質的に薄い構造を有する1または複数の金型要素(19、19a)を前記加圧チャンバ(6)に入れた後、該加圧チャンバ(6)を前記成形品の製造に必要な圧力に耐えうるフレーム構体(1)内に嵌め込み、その後、前記実質的に薄い構造の金型要素(19、19a)の両側に液状の圧力媒体によって実質的に同じ大きさの圧力を作用させることを特徴とする方法。
【請求項9】
少なくともフレーム構体(1)と、少なくとも第1チャンバ部(7)および第2チャンバ部(8)を備えた加圧チャンバ(6)とを含み、金型を使用して成形品を製造する金型装置であって、該装置に必要な液圧を発生させる液圧系(10)を含む金型装置において、前記フレーム構体(1)は収容空間(1a)を含み、該収容空間には、加圧チャンバ(6)の第1チャンバ部(7)および少なくとも1つの金型要素(17b、19、19a)が設けられた第2チャンバ部(8)を互いに対向するように配設でき、第2チャンバ部(8)は複数のそれぞれ異なるチャンバ部(8)の1つであり、該チャンバ部はそれぞれ、各チャンバ部を使用して製造される製品固有の性質に応じて、外見および/または構造が互いに異なっていることを特徴とする金型装置。
【請求項10】
請求項9に記載の金型装置において、前記加圧チャンバ(6)には、1回につき1つの第2チャンバ部(8)が第1チャンバ部(7)と対をなして含まれ、第2チャンバ部は、積層成形技術、プレス成形技術、真空成形技術、発泡成形技術もしくは注入成形技術、またはこれらの組合せのいずれかを、製造する成形品の製造処理に適用するのに適した手段(17a、17b、24、25、26)を備えていることを特徴とする金型装置。
【請求項11】
請求項9または10に記載の金型装置において、該装置は、前記加圧チャンバ(6)の第1チャンバ部(7)および第2チャンバ部(8)を前記フレーム構体(1)の収容空間(1a)に押し込んだり該収容空間から引き出したりする手段(1e)と、製品の製造時に前記加圧チャンバ(6)内に作用するプロセス圧がもたらす力より大きな力とともに第1チャンバ部(7)および第2チャンバ部(8)を加圧する手段(4、16)とを含んでいることを特徴とする金型装置。
【請求項12】
請求項9、10または11に記載の金型装置において、第1チャンバ部(7)および第2チャンバ部(8)のインタフェースは、プロセス圧に接続された圧力増倍器(9a)を備えた密閉手段(9c)を含み、該密閉手段に作用する密閉圧力は常に、その時点で前記加圧チャンバ(6)の与圧空間(17、17a)に行き渡るプロセス圧より高いことを特徴とする金型装置。
【請求項13】
請求項9ないし12のいずれかに記載の金型装置において、第1チャンバ部(7)内には弾性膜(18)で囲まれた与圧空間(17)があり、第2チャンバ部(8)内には、実質的に固定された金型要素(17b)、または前記製品の製造に使用される実質的に薄い金型要素(19、19a)で囲まれる与圧空間(17a)のいずれかがあり、該与圧空間(17)または与圧空間(17、17a)は、該装置の前記液圧系(10)に連結されて、前記与圧空間(17、17a)の金型要素(17b)の一方の側部または前記金型要素(19、19a)の両側部に前記製品の製造に必要なプロセス圧を送ることを特徴とする金型装置。
【請求項14】
請求項9ないし13のいずれかに記載の金型装置において、第2チャンバ部(8)は、前記金型の充填中および前記製品の製造中、実質的に薄い金型要素(19)を定位置に担持する手段を含み、該実質的に薄い金型要素(19、19a)は、金属、プラスチック、プラスチック複合材、その他の適した材料、あるいは前記材料を2つ以上組み合わせて作られ、該実質的に薄い金型要素(19、19a)は、同時に製品を製造するための金型を少なくとも1つ以上含んでいることを特徴とする金型装置。
【請求項15】
請求項9ないし14のいずれかに記載の金型装置において、該装置は、前記圧力媒体および/または前記金型要素(17b、19、19a)を加熱して製造工程で必要な温度を前記製造する製品の材料および/または前記加圧チャンバ(6)内で製造される製品に伝える加熱手段(13)を含み、該加熱手段(13)はその一部または全部が前記加圧チャンバ(6)の内側または外側に配されていることを特徴とする金型装置。
【請求項16】
請求項9ないし15のいずれかに記載の金型装置おいて、該装置の液圧系(10)で使用される圧力媒体は、低温で溶解する液状の金属または合金であることを特徴とする金型装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公表番号】特表2012−526679(P2012−526679A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510324(P2012−510324)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【国際出願番号】PCT/FI2010/050383
【国際公開番号】WO2010/130880
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(511277294)
【氏名又は名称原語表記】Silex Comp Oy
【Fターム(参考)】