金型洗浄装置および金型洗浄方法
【課題】 超微細金型の洗浄に適した金型洗浄装置および金型洗浄方法を提供する。
【解決手段】 電解洗浄、水洗、乾燥を順次連続的に行う1つの洗浄槽と、前記洗浄槽内に供給される電解洗浄液内に浸漬させる電解洗浄用の電極と、洗浄される金型を載置して、前記洗浄槽内の電解洗浄液内に浸漬させると共に該洗浄槽より取り出す金属製の保持手段と、前記洗浄槽の上面開口を閉鎖する蓋と、前記洗浄槽内から電解洗浄液を排出する手段と、前記洗浄槽内へ洗浄水を所要圧力で噴射する手段と、前記洗浄槽内へ乾燥用の清浄空気、真空あるいは不活性ガスを供給する手段とを備え、電解洗浄時には、前記電極と金属製の保持手段とを電源のプラス側とマイナス側に接続して、前記電解洗浄液を介して通電して前記金型を電解洗浄する構成としていることを特徴とする一槽式の金型洗浄装置からなる。
【解決手段】 電解洗浄、水洗、乾燥を順次連続的に行う1つの洗浄槽と、前記洗浄槽内に供給される電解洗浄液内に浸漬させる電解洗浄用の電極と、洗浄される金型を載置して、前記洗浄槽内の電解洗浄液内に浸漬させると共に該洗浄槽より取り出す金属製の保持手段と、前記洗浄槽の上面開口を閉鎖する蓋と、前記洗浄槽内から電解洗浄液を排出する手段と、前記洗浄槽内へ洗浄水を所要圧力で噴射する手段と、前記洗浄槽内へ乾燥用の清浄空気、真空あるいは不活性ガスを供給する手段とを備え、電解洗浄時には、前記電極と金属製の保持手段とを電源のプラス側とマイナス側に接続して、前記電解洗浄液を介して通電して前記金型を電解洗浄する構成としていることを特徴とする一槽式の金型洗浄装置からなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂、ゴム、ガラス等の成形用金型に付着する樹脂カス、ゴムカス、ガラスカス、ガス焼け等の付着物を洗浄除去する金型洗浄装置および金型洗浄方法に関し、特に、洗浄装置を一槽式の簡単な構造としながら、微細構造の光学部材用金型の洗浄に好適に用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
近年、樹脂やゴムの成形用材料の改質および成形技術の進歩に伴い、従来プレス加工等により形成されていた金属製やガラス製等の部品も、大量生産が可能な金型で成形される樹脂製部品へと移行しつつある。
例えば、樹脂製品やゴム製品は金属製品やガラス製品と比較すると、強度、耐熱性、耐油性、耐摩耗性が乏しいとされてきたが、樹脂製品やゴム製品の改質により上記物性が付与され、耐熱性、耐油性が要求される自動車のボンネットの中に取り付けるデイストリビュータのケースも金属製品から樹脂製品へと代わっている。
また、超精密成形技術の進歩により、テレビの画面やレンズもガラスから樹脂に変わっている。金型による射出成型で超精密部品、例えば、フラットパネルディスプレイの導光板、携帯電話の超小型精密カメラ用のレンズ、ゴーグルのレンズ、歯車、コネクタ等も樹脂成形で大量生産されている。
【0003】
前記樹脂、ゴム、ガラス等の成形に用いる金型は、成形量に伴ってその内面に樹脂カス、ゴムカス、あるいはガラスカスが付着すると共に、樹脂が溶解された時に発生するガスや樹脂カスが付着する。これらの付着物は、成形ショットを重ねると、ショット回数の増加に伴い金型表面に堆積し、簡単には除去することができない。しかしながら、これらを確実に除去しないと、製品が規定のカンデラ値に達しない等の成形不良につながる等の不都合が生じる。よって、成形用金型は定期的に取り外して洗浄し、上記付着物を除去しなければならない。
【0004】
特に、フラットパネルディスプレイの導光板、携帯電話の超小型精密なカメラレンズ、ゴーグル用レンズ、車両用レフレクター等を射出成型する金型は、鉄或いは真ちゅうの表面に純ニッケルメッキ層やリンやボロンが配合されたニッケル合金メッキ層が設けられた金型、あるいはニッケル板やニッケル合金板が表面に貼り付けられた金型、さらにはニッケルのみ、またはニッケル合金のみで形成された金型(以下、ニッケル金型と総称する)とされている。この種のニッケル金型ではニッケルが物質を吸着しやすい特性を有することから、電解液中で析出する金属微粒子や微小な樹脂片や異物が付着しやすい。これら超微粒子がニッケルメッキ表面に付着した状態で残存すると、該ニッケル金型で成形される導光板、レンズ、車両用のレフレクターの品質を維持できない問題がある。特に、前記導光板では微細で精度が要求されるパターンに、入り込んだ樹脂を取り除いたり、ガスの溜まりやすいパーツ等の汚れをすっきり取り除かなければ、高度化する精度に対応することができない。
【0005】
金型洗浄は、従来、トリクレンや炭化水素系の石油等に浸漬しておき、その後、ブラシや綿棒で擦りとる方法でなされていたが、トリクレンや炭化水素系の有機溶剤は人体に悪影響を与える。
【0006】
上記した問題より、本出願人は、水酸化ナトリウム等の強アルカリ成分が配合された洗浄液を用い、かつ、成形金型用の洗浄装置として、特開平7−214570号公報(特許文献1)において図14に示す電解洗浄装置を提供している。
この洗浄装置は電解洗浄と超音波洗浄とを併用して金型の洗浄を短時間で効率良く行うことができる利点を有するものである。図14中において、1は洗浄槽、2は洗浄槽内に着脱自在に挿入する金型保持カゴ、3は洗浄槽内に吊り下げるプラス側電極であり、マイナス極側となる上記金型保持カゴ2内に保持された金型5との間に電流を流すと共に、洗浄槽1の底面に取り付けた超音波振動子4により洗浄槽内の電解洗浄液に超音波振動を発生させ、よって、電解洗浄と超音波洗浄とを併用して、金型5の洗浄を行っている。
【0007】
また、特開2001−241000号公報(特許文献2)において、図15に示す電解洗浄を行う本洗浄槽1’の前洗浄を行う脱脂槽6と、本洗浄槽1’による本洗浄後に後洗浄を行うリンス槽7を備えた金型洗浄装置が提供されている。該金型洗浄装置は、前記特許文献1の金型洗浄装置と同様の電解洗浄を行う本洗浄装置に、前洗浄を行う脱脂槽と、後洗浄を行いリンス槽を付設した構成とされている。
【0008】
【特許文献1】特開平7−214570号公報
【特許文献2】特開2001−241000号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記特許文献1の金型洗浄装置は電解洗浄と超音波洗浄とを併用しているため、極めて効率良く短時間で金型の付着物を除去でき、洗浄効果が優れた利点を有する。しかしながら、該金型洗浄装置では電解洗浄および超音波洗浄による本洗浄の後は、金型を洗浄槽から取り出して、別の槽に移して水洗いし、更には必要に応じて乾燥槽に移して乾燥を行っている。
前記したように、電解洗浄槽から水洗槽へ、水洗槽から乾燥槽へと順次洗浄した金型を移送すると、移送過程で金型表面の水滴に空気中の塵埃が吸着され、これら乾燥後にウオターマークとしなりやすい問題がある。
かつ、近時はフラットパネルディスプレイの導光板等の超精密成形部品が急増している。これらの超小型精密部品の金型では凹凸も微細になり、前記槽間の移送時に振動等により金型に損傷が発生する恐れもある。
【0010】
本発明を前記問題に鑑みてなされたもので、複数の洗浄槽を配置して順次金型を移送せずに、一槽式とし、1つの洗浄槽内で、電解洗浄による本洗浄、本洗浄後の水洗い、さらに、不活性ガス等を用いた乾燥を行えるようにして、洗浄工程での金型の移送を無くして、金型表面にウオターマークが生じないようにし、かつ、移送工程での損傷の発生を確実に防止することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明は、第一に、金型の電解洗浄、水洗、乾燥を順次連続的に行う1つの洗浄槽と、
前記洗浄槽内に供給される電解洗浄液内に浸漬させる電解洗浄用の電極と、
前記洗浄槽内に挿入する金型と接触させ、前記電極と電解洗浄液および金型を介して通電させて電解洗浄を行わせる給電手段と、
前記洗浄槽の上面開口を閉鎖する蓋と、
前記金型の電解洗浄後に洗浄槽内から電解洗浄液を排出する手段と、
前記洗浄槽内の洗浄後の金型の水洗用として水洗水を給排する手段と、
前記洗浄槽内の水洗後の金型の乾燥用として清浄空気、真空あるいは不活性ガスからなる気体を給排する手段と、
を備えていることを特徴とする一槽式の金型洗浄装置を提供している。
【0012】
前記本発明の一槽式の金型洗浄装置は、1つの洗浄槽内で電解洗浄による本洗浄、水洗、乾燥を順次連続的に行える構成としているため、該洗浄槽から金型を別の槽に移送する必要はなく、移送中に金型表面の水滴に空気中の塵埃が付着してウオターマークとなる恐れがない。また、移送過程で金型に傷等が生じることを確実に防止でき、よって、特に微細な凹凸がある導光板用金型等の光学部材用金型の洗浄には適したものとなる。
また、1つの槽内で本洗浄、水洗、乾燥を行うと、洗浄時間の短縮が図れると共に洗浄装置の設置スペースを大きくとらない。
さらに、本発明では、洗浄槽の上面開口を蓋で覆った状態で洗浄を行う密閉式としているため、洗浄時に空気中の塵埃が微細な金型表面に付着するのを防止でき、かつ、蓋で密閉していることから作業員の安全性を高めることができる。
さらにまた、電解洗浄時、水洗時および乾燥時のいずれも洗浄液、水洗水、乾燥用ガスを常温以上100℃以下として洗浄能力、乾燥能力を高めることが好ましいため、蓋で密閉することで温度制御ができ、洗浄、水洗、乾燥を行うことができる。
特に、本発明では、水洗後の金型に付着した水を、払拭せずに、清浄空気、真空あるいは不活性ガスを吹き付けて乾燥しているため、払拭時に生じる恐れがあるミクロ的な異物の付着も確実に防止できる。
【0013】
詳しくは、前記金型と接触して金型に通電する給電手段として、前記金型を保持して洗浄槽内に挿入する金属製多孔質材からなる保持カゴあるいは、前記洗浄槽内の内面に配置して該洗浄槽内に入れる金型と接触させる導電板を備え、前記保持カゴあるいは導電板を電源のマイナス側、前記電極をプラス側と接続している。
【0014】
また、前記本発明の金型洗浄装置は、前記水洗水の給排手段として、電解洗浄液用タンクと、該電解洗浄液用タンクと前記洗浄槽との間に介設される電解洗浄液給排用配管と、水洗用の一次水洗用水タンクおよび二次水洗用水タンクと、これら一次水洗用水タンクおよび二次水洗用水タンクと前記洗浄槽との間に介設される水洗水給排用配管と、前記水洗水を電解洗浄槽内に噴射する噴射ノズルを備え、
前記乾燥用の気体の給排手段として、前記清浄空気発生手段、真空発生手段、あるいは不活性ガスのボンべと、これらを前記洗浄槽との間に介設する乾燥気体供給用配管を備え、
さらに、前記水洗水を所要温度に加熱するヒータと、前記記清浄空気、あるいは不活性ガスを所要温度に加熱するヒータを備えていることが好ましい。
なお、一次水洗水および二次水洗水を噴射ノズルを用いて金型に噴射する方式に替えて、一次水洗水、二次水洗水を洗浄槽内に貯留し、この一次水洗水、二次水洗水中に金型を浸漬させることで洗浄水を洗い落としてもよい。また、其の際、一次水洗水、二次水洗水をオーバーフローさせて流水とし、あるいは洗浄槽中で撹拌させてバブリングしても水洗能力を高めることができる。
【0015】
前記のように、本発明では、電解洗浄による本洗浄後の水洗い時に、一次水洗用タンクに貯留した水による一次水洗と、二次水洗用タンクに貯留した水による二次水洗を行えるようにして、確実に電解洗浄時に金型に付着する電解洗浄液を除去する構成としている。また、これらの水洗水をヒータで加熱してから洗浄槽に供給して本洗浄後の金型に噴射させていることで、効率の良い水洗を行うことができる。さらに、乾燥用の気体も加熱すると、乾燥時間の短縮を図ることができる。
【0016】
前記水洗水給排用配管は、
前記一次水洗用タンクと二次水洗用タンクに夫々接続する分岐管を合流させて前記洗浄槽の上面開口へと延在させ、該洗浄槽に一次水洗水および二次水洗水を供給する供給側配管と、
使用済み一次水洗水を洗浄槽から排出する排出管と、
使用済み二次水洗水を一次水洗用水タンクヘ送給する循環管とからなり、
前記一次水洗用タンクと接続される供給側配管の分岐管に低圧ポンプを介設すると共に前記二次水洗用タンクと接続される供給側配管の分岐管に高圧ポンプを介設し、
前記噴射ノズルは一次水洗水を低圧噴射すると共に二次水洗水を高圧噴射する構成としている。
【0017】
前記のように、一次水洗水は低圧噴射して金型表面に付着している洗浄水を洗い流し、ついで、二次水洗水を高圧噴射して微細な窪みに付着している洗浄水までも完全に洗い流している。該構成とすると、水洗水を高圧噴射し続ける場合よりもコストの低下を図りながら完全に洗浄水を除去できる。
【0018】
前記のように、使用済みの二次水洗水は一次水洗タンクに循環させて再利用している。
また、使用済み一次水洗水も前記排水管を通して排水タンクに溜め、該排水タンクに蒸留器を接続して、使用済みの一次水洗水を該蒸留器で蒸発させると共に清浄水として取得できる構成とすることが、排水処理上で好ましい。
前記蒸留器は一次水洗水の汚れが酷い場合には、複数の蒸留器を直列配置して蒸留精度を挙げている。また、使用済みの一次水洗水が多い場合には複数の蒸留器は並列配置して一度に複数の蒸留器で処理できるようにすることが好ましい。
前記排水浄化用の蒸留器は本装置内に付設してもよいし、排水管を介して別置きしてもよい。
【0019】
前記一次水洗用タンクと二次水洗用タンクに接続した前記供給側配管は、前記洗浄槽側で分岐し、各分岐管の先端に夫々噴射ノズルを取り付け、
前記噴射ノズルは、前記洗浄槽の周壁内面の上側と下側とに配置して金型に上方から水洗水を噴射する第1噴射ノズルと、金型に下方から上向きに水洗水を噴射する第2噴射ノズルとしていることが好ましい。
【0020】
前記のように金型に水洗水を吹き付ける噴射ノズルを上下に配置すると、金型全体に水洗水を吹きつけることができる。特に、多孔質材の保持カゴに金型を搭載している場合には、下方から上向きに水洗水を噴射することで、金型の下面に付着する電解洗浄液を確実に除去することができる。
【0021】
さらに、前記第1、第2噴射ノズルと対向側の周壁内面に第3噴射ノズルを配置し、該第3噴射ノズルは洗浄槽内面および前記電極の水洗い用として一次水洗水および二次水洗水を噴射させるものとすることが好ましい。
この洗浄槽内面および電極の水洗は、電解洗浄による本洗浄後で、金型に対する水洗の前に行うことが好ましい。これにより、電極や洗浄槽の内面に付着している電解洗浄液が水洗した金型に垂れ落ちて付着することを防止できる。
【0022】
前記洗浄槽には超音波発生装置を付設し、洗浄時に電解洗浄と超音波洗浄とを行う構成とすると、より洗浄力を高めることができる。
該超音波洗浄は、洗浄槽の底面に超音波発生装置を付設し、超音波振動子を2種類以上の周波数に切り替えて超音波を発生させることが好ましい。このように、超音波振動を一定の周波数とせずに、異なる周波数、例えば34KHzと44KHzとに切り替えて交互の超音波振動を発生させると、電解洗浄液に適宜な撹拌作用を発生させることができ、洗浄力を高めることができる。超音波に変えて、30KHz〜100KHzの単波を用いてもよい。
洗浄する金型がフラットパネルディスプレイの導光板、超小型精密なレンズ、自動車のレフレクター等の超整密な成形品用で、金型がニッケル金型である場合、超音波の周波数は30KHz〜100KHz、好ましくは40〜70KHzの範囲が好適である。
【0023】
前記電解洗浄液給排管に循環用ポンプを介設すると共に、前記乾燥気体供給用配管に開閉弁を介設し、
前記循環用ポンプ、開閉弁、さらに、前記低圧ポンプ、高圧ポンプ、ヒータ、電極と保持手段への給電、さらに前記超音波発生手段の動作を自動制御するコントローラを付設していることが好ましい。
【0024】
前記構成とすると、洗浄槽中に金型を挿入して蓋を締めた後は、密閉状態で且つ金型を移動させることなく、全自動で洗浄から乾燥まで行うことができる。よって、洗浄時における空気中の塵埃が金型に付着したり、金型移動時の損傷発生等を確実に防止でき、かつ、省力化も図ることができる。
【0025】
前記蓋に前記電解洗浄用の電極を取り付けていることが好ましい。
即ち、電解洗浄による本洗浄時に洗浄槽内の電解液中に浸漬する電極は、蓋側に取り付けて垂下させていることが好ましい。なお、洗浄側の周壁の上端面に係止して電極を取り付けても良いが、其の場合、蓋を被せると隙間が発生しやすくなるため、蓋側に取り付けることが好ましい。
具体的には、蓋は透明材から形成し、該蓋に複数の電極支持棒を貫通させる貫通穴を間隔をあけて設け、該蓋の上部に給電用金属板からなる電極支持棒固定板を配置し、該電極支持棒固定板を前記蓋の両側部に高さ調節可能に取り付けている。該電極支持棒固定板に対して各電極支持棒も高さ調節可能に取り付け、垂下する電極支持棒を前記蓋の貫通穴に通して洗浄槽中に垂下するように突出させている。
このように、複数の電極支持棒を一体的に高さ調節可能とすると共に個別に高さ調節可能としている。
さらに、電極支持棒の高さ測定用のスケールも蓋側に取り付け、洗浄槽中での電極の高さを外部から正確に測定できるようにしている。
なお、電極を下端に取り付ける電極支持棒は必ずしも蓋に取り付ける必要はなく、洗浄槽の周壁上端面に給電板を装架して、該給電板から電極支持棒を洗浄槽中に垂下してもよい。かつ、該電極支持棒を取り付けた給電板を水洗いおよび乾燥時に、金型上方の洗浄槽の中央部から周壁の一辺側に移動させる構成としてもよい。
さらに、前記蓋には吸気用のダクトを取り付け、密閉空間から空気を吸引すると共に、水洗水の噴射時に噴射されて飛散したミストを吸引して洗浄槽内に跳ね返らないようにすることが好ましい。
前記蓋の形状は、洗浄槽の上面開口を閉鎖できればよく、平板形状、ドーム形状等の任意の形状でよい。
【0026】
前記電解支持棒の先端に取り付ける電極は、プラチナ(白金)、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、金、銀の貴金属、あるいはこれら貴金属の合金のうちの1種または複数種の金属、前記金属で被覆されたものからなることが好ましい。
前記金属の被覆はメッキ、爆着、圧着、連続スポット溶接等により行われる。
【0027】
前記洗浄される金型の保持手段は、少なくとも金型を載置できる底壁と、取り出し時に金型を保持できる側壁と、洗浄槽の周壁上端に配置する給電板と当接させると共に洗浄槽への着脱時に把持できる支持腕を備え、底壁は金属線材からなるメッシュあるいは多孔質金属板からなるカゴ状とすることが好ましい。
該保持手段の底壁上には小型金型であれば複数個数載置され、大型金型であれば1個載置される。また、導光板用金型等の大型金型の場合には、該金型を傾斜保持できる機構を保持手段に設けていることが好ましい。さらにまた、前記洗浄槽内に挿入する金型を把持して、反転、揺動等をできる機構を設けることが好ましい。
また、洗浄槽内に保持カゴで保持せずに金型を直接投入して、洗浄槽の底壁内面に配置する前記導電板と接触させる場合には、洗浄槽自体に金型を所要姿勢で保持できる手段を設けることが好ましい。
【0028】
前記電解洗浄時に前記洗浄槽に供給される洗浄液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムから選択された1以上を含む強アルカリ成分と、EDTA4ナトリウム塩からなるキレート剤と、有機窒素あるいは無機窒素からなる酸化物除去成分と、グルコン酸ナトリウムとを含むものであることが好ましい。
【0029】
前記無機窒素として 硝酸塩あるいはアンモニア塩を用い、
前記有機窒素として、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ペンタエチレンベキサミンから選択されるエチレンジアミン類を用い、
前記キレート剤として、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸ナトリウム塩、ニトリロトリセテック酸ー3ナトリウム(NTA・3Na)、ジカルボキシメチル−グルタミック酸テトラソジウムー4ナトリウム(GLDA・4Na)を用いることが好ましい。
【0030】
本洗浄液は、前記したように、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムから選択された1以上を含む強アルカリ成分と、グルコン酸ナトリウムに、EDTA4ナトリウム塩からなるキレート剤に更に有機窒素あるいは無機窒素を加えた酸化物除去成分を配合することにより、キレート剤単独で用いる場合よりも更に酸化物の除去性能を高めている。
【0031】
さらに、ノニオン系、カチオン系、アニオン系の界面活性剤から選択される1以上の界面活性剤を含めると、さらに洗浄力を高めることができると共に、金型から除去した樹脂カス等の金型への再付着や、ミストの発生を抑制する機能を有する。
【0032】
具体的には、前記本洗浄液は強アルカリ成分を30〜100g/リットル、前記EDTA4ナトリウム塩を30〜100g/リットル、グルコン酸ナトリウムを10〜60g/リットル、有機窒素あるいは無機窒素からなる酸化物除去成分を30〜150g/リットル配合することが好ましい。
また、前記ノニオン系、カチオン系、アニオン系の界面活性剤から選択される1以上の界面活性剤も配合する場合は、1〜3cc/リットル配合していることが好ましい。
前記配合量は、本発明者が実験を繰り返して知見したものである。
【0033】
また、前記本洗浄液は加熱手段を付設して、30℃〜60℃に加熱することが、洗浄能力を高めることができる点から好ましい。
さらに、本洗浄液には水を配合しているが、該水としては、水道水を精製手段を通して不純物を除去した水を配合していることが好ましい。
前記精製手段として、蒸留、イオン交換あるいは/および濾過法を採用した精製手段を用いられる。
【0034】
さらに、本発明の装置においては、電解洗浄中に発生する金属イオンの回収機構を付設しておくことが好ましい。
即ち、前記洗浄槽からオーバーフローする電解洗浄液の回収槽を付設し、該回収槽にオーバーフロー液中の金属イオン吸着用の電極板を配置し、あるいは、
前記洗浄槽内または電解洗浄液用タンク内に、電解洗浄液中の金属イオンを吸着する電極板を配置している。
前記電極板には金型電解洗浄用として給電する電圧以下の低電圧を給電することが好ましい。また、前記金属イオンの回収機構は電解洗浄用として使用する前記マイナス側電極と同一材あるいは鉄、ステンレス等からプラス側給電板とマイナス側給電板とを形成して電解洗浄液中に対向配置で垂設し、マイナス側電極板に金属イオンを吸着させて洗浄液中の金属イオンを回収している。
前記金属イオン回収用の電極板は、前記洗浄槽から電解洗浄液をオーバーフローさせる前記回収槽中に取り付けても良いし、前記洗浄槽内あるいは電解洗浄液用タンク内に配置してもよい。この金属イオンの回収作業は、洗浄作業中、洗浄停止中、液温管理中等の各好適中のどの工程中に行っても良い。
【0035】
本発明の金型洗浄装置は、ニッケルメッキ金型、ニッケル合金メッキ金型、ニッケル板表面貼付金型、ニッケル合金板表面貼付金型あるいはニッケルで形成された金型からなるニッケル金型の洗浄用として用いることが好ましい。
さらに、本発明の金型洗浄装置は、フラットパネルディスプレイの導光板の射出成型用金型、レンズの射出成型用の金型、車両用レフレクターの射出成型用の金型の洗浄用として用いることが好ましい。
更にまた、本発明の金型洗浄装置は、水洗後に払拭せずに乾燥のみを行う鏡面金型の洗浄用として用いることが好ましい。
【0036】
前記した金型は、超微粒子の付着の防止、付着した超微粒子の除去を含め、最もシビアな洗浄が求められることより、密閉した一槽内で自動的に洗浄、水洗、乾燥が行える本発明の金型洗浄装置が好適に用いられる。
【0037】
本発明は、第二に、
前記した一槽式の金型洗浄装置を用いて行う金型洗浄方法であって、
前記洗浄槽内に前記給電手段と接触させて金型を挿入すると共に電解洗浄液を供給し、
洗浄槽に前記蓋でカバーした状態で電解洗浄を行い、
電解洗浄後に電解洗浄液を排出し、
前記一次水洗水を洗浄槽内の電解洗浄後の金型に供給して一次水洗いを行い、
前記使用後の一次水洗水を洗浄槽から排出し、
前記二次水洗水を洗浄槽内の一次水洗後の金型に供給して二次水洗いを行い、
前記使用後の二次水洗水を洗浄槽から排出して前記一次水洗用タンクに循環させ、
清浄空気、真空あるいは不活性ガスを洗浄槽内の二次水洗後の金型に吹き付けて乾燥させている金型洗浄方法を提供している。
【0038】
前記水洗水による金型表面に付着した洗浄液の水洗いは、
一次水洗いは一次水洗水を低圧で金型に噴射し、
前記二次水洗いは二次水洗水を高圧で金型に噴射する方法が好適に用いられる。
【0039】
また、乾燥用として不活性ガスを供給する場合には、乾燥用噴射以外にも、洗浄開始前から少しづつ不活性ガスを洗浄槽中に供給して、洗浄槽中に酸素や発生するガスを追い出すと同時に塵埃の浸入を防ぐことが好ましい。
【0040】
前記金型は、金属製の保持カゴで保持して洗浄槽内に配置し、あるいは洗浄槽の底面に配置した導電板上の金型を乗せて配置することにより、洗浄槽内に給電手段と接触させている。
前記電解洗浄液の排出後で、前記一次水洗水を噴射する前に、
前記洗浄槽の内面および電極を洗浄するため前記一次水洗水を噴射し、該一次水洗水の噴射後に二次水洗水を噴射することが好ましい。
【0041】
また、前記一次水洗水および二次水洗水を常温から80℃、好ましくは50℃の範囲で調節して、前記洗浄槽に供給していることが好ましい。
前記不活性ガスを常温から80℃間で調節して、前記洗浄槽に供給していることが好ましい。
このように、水洗水や乾燥用の不活性ガスを供給していくと酸素を追い出すことができ、金型が鉄系の場合には、錆びの発生を押さえることができる。
前記電解洗浄液を約30℃〜60℃に加熱していることが好ましい。
さらに、前記電解洗浄時に超音波洗浄を併用し、超音波周波数を30KHz〜100KHzの範囲としていることが好ましい。
さらに、電解洗浄用の電極に印加する電圧を2〜5Vの範囲としていることが好ましい。
【発明の効果】
【0042】
上述したように、本発明の金型洗浄装置は、一槽式で、1つの洗浄槽内で電解洗浄による本洗浄、水洗、乾燥を順次連続的に行える構成としているため、洗浄槽から他の槽(水洗槽や乾燥槽)へ金型を移送する必要はなく、移送時に金型に傷等が生じることを防止でき、特に微細な凹凸がある導光板用金型等の光学部材用金型の洗浄には適したものとなる。また、1つの槽内で本洗浄、水洗、乾燥を行うため、洗浄時間の短縮が図れると共に洗浄装置の設置スペースを大きくとらない等の種々の利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図7は第一実施形態を示す。
金型洗浄装置100は図1に示すように、ボックス形状のケース10の内部に、図2に示すように1つの洗浄槽11を備え、該1つの洗浄槽11を蓋50で密閉した状態で電解洗浄液を用いた電解洗浄と超音波洗浄とを併用した本洗浄を行い、続いて、該洗浄槽11で2度の水洗いを行い、最後にガスを用いた乾燥を行う構成としている。また、該金型洗浄装置100にはコントローラ85を付設して、該コントローラ85に取り付けたスイッチを押して設定しておくだけで、全自動で本洗浄→水洗→乾燥が行えるようにし、かつ、ケース10の下端にキャスターを備えて移動可能としている。
【0044】
図2は概略的な構成図、図3は洗浄液、水洗水、乾燥用気体の概略配管図である。
図2に示すように、ケース10の一半側の上部に洗浄槽11を設置し、洗浄槽11の下部に電解洗浄液用タンク12を設置し、洗浄槽11の底面に排水口11aと電解洗浄液用タンク12とは流路切替13および濾過装置14を介設した排水管15を介して接続している。また、該電解洗浄用タンク12から洗浄槽11の上面に配置する電解洗浄液供給用の配管16との間にはポンプ17を介設している。前記電解洗浄液用タンク12の内部にはヒータ18を配置して、電解洗浄液を所要温度に加熱できるようにしている。
【0045】
ケース10の他半側の上部に一次水洗用タンク20と二次水洗用タンク21とを並設し、これらのタンク20、21に接続した供給管22、23を合流し、合流した水洗水供給管25を洗浄槽11側へと配管している。
洗浄槽11には周壁内面の上部より第1噴射ノズル27、下部より第2噴射ノズル28、対向する周壁内面より第3噴射ノズル29を突出させ、これら第1〜第3噴射ノズル27〜29を前記水洗水供給管25の分岐管25a、25b、25cの先端に取り付けている。
【0046】
前記一次水洗用タンク20に接続する供給管22には低圧ポンプ30を介設すると共に、二次水洗用タンク21に接続する供給管23には高圧ポンプ31を介設している。かつ、一次および二次水洗用タンク20、21の内部にはそれぞれヒータ32を設置して、所要温度に水洗水を加熱している。
【0047】
前記一次および二次水洗用タンク20、21の下方には、使用済みの一次水洗水が送給される排水タンク35を配置し、該排水タンク35と前記排水管15から分岐した一次水洗水排水管36を前記流路切替弁13を介して接続している。
さらに、前記排水管15から分岐した二次水洗水排水管38を前記流路切替弁13およびポンプ40を介して前記一次水洗用タンク20に接続し、使用済みの二次水洗水を一次水洗用タンク20内に戻して、再利用する構成としている。
【0048】
また、前記使用済み一次水洗水の排水タンク35の側部にアルゴンガスボンベ42を配置している。該アルゴンガスボンベ42に接続した配管43に開閉弁45を介設すると共に、先端に噴射ノズル44を取り付けている。該噴射ノズル44は、洗浄槽11の上部に被せる蓋50に形成した取付口50aに取り付けている。
【0049】
前記蓋50は図5および図6に示すように、透明樹脂からなる平板形状で、洗浄槽11の周壁上面に当接させて洗浄槽11の上面開口を密閉するものである。該蓋50は洗浄槽11の周壁の一辺にヒンジ付けで開閉自在に連結している。なお、別体としても良い。
蓋50にはブロア300の吸気側に接続されたダクト301を接続し、蓋50により密閉された空間から吸気を図るようにしている。
【0050】
洗浄槽11での金型の本洗浄は電解洗浄と超音波洗浄とを併用した洗浄を行うものとしており、電解洗浄のために洗浄槽11内の電解液中に浸漬する電極55は、蓋50側に取り付けている。
具体的には、蓋50に間隔をあけて電極支持棒貫通の貫通穴50bを設け、各貫通穴50bの導電性を有する電極支持棒60をブッシュ61を介して密嵌状態に貫通させ、該電極支持棒60の下端に夫々円板形状の電極55を取り付けている。
前記電極支持棒60の上端は、蓋50の上方に間隔をあけて配置する給電用金属板62に設けた貫通穴に通し、ナット63で高さ調節自在に固定している。該給電用金属板62は、その左右両端からの突設部62bを、蓋50の左右両側に設けた給電板64から突設した支持棒65に蝶ネジ66で高さ調節自在に固定している。該構成とすることで複数本(本実施形態では8本)の電極55の高さを一括して調節できると共にそれぞれ独立して高さ調節できる構成としている。
さらに、前記支持棒65の上端に連結棒67を架け渡し、該連結棒67にスケール68の上端を固定し、該スケール68を給電用金属板62および蓋50に設けた貫通穴を通して垂下させ、洗浄槽11中での電極55の高さを外部から測定できるようにしている。
【0051】
前記電極55として本実施形態ではプラチナ製の電極を用いている。該電極55は金属棒からなる電極支持棒60を介して給電用金属板62と電気接続され、該給電用金属板62が電解用変換器(図示せず)のプラス側と接続される。
【0052】
金型を保持して洗浄槽11内に配置する金型の保持手段として、図4(B)に示すように、保持カゴ75を用い、該保持カゴ75は底壁75a、周壁75b、該周壁75bの左右両側にそれぞれ架け渡される支持腕75c、該支持腕75cにを設けた給電用嵌合部75dを備えた形状とし、底壁75aはパンチングメタルで形成している。該保持カゴ75の底壁75a、周壁76bは洗浄槽11の底面および内周面に空隙をあけて沿った形状としている。また、該支持腕75cの両側部は洗浄槽11の周壁上面に載置し、給電用嵌合部75dを周壁上面に形成した嵌合溝に嵌合し、該嵌合溝の底面に露出させている給電板77と接触させて電気接続させ、保持カゴ75を電解用変換器のマイナス側と接続している。電解用変換器は交流の電源器と接続し、電流を交流から直流に変換して、電極55と金型の保持カゴ75に電流を供給している。
【0053】
前記電極55はプラス側、保持カゴ75はマスナス側と接続されることにより、図7に示すように、洗浄槽11内に供給される電解洗浄液Q1を介して保持カゴ75に搭載される金型90が電解洗浄されるようにしている。
【0054】
前記電解洗浄液Q1としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムから選択された1以上を含む強アルカリ成分と、EDTA4ナトリウム塩からなるキレート剤と、有機窒素あるいは無機窒素からなる酸化物除去成分と、グルコン酸ナトリウムと、ノニオン系、カチオン系、アニオン系の界面活性剤から選択される1以上の界面活性剤を、水道水を精製手段で精製した純水に配合している。
そのさい、配合量は、強アルカリ成分を30〜100g/リットル、EDTA4ナトリウム塩を30〜100g/リットル、グルコン酸ナトリウムを10〜60g/リットル、前記酸化物除去成分を30〜150g/リットル、前記ノニオン系、カチオン系、アニオン系の界面活性剤から選択される1以上の界面活性剤を1〜3cc/リットルとし、残りを純水として、配合している。
前記洗浄液Q1は前記ヒータ18で30〜60℃に加熱して洗浄槽11内に供給される。
【0055】
さらに、洗浄槽11の底面側には超音波発生装置80を設置し、電解洗浄時に洗浄液Q1に超音波振動を発生させるようにしている。
【0056】
前記した各種ポンプ、開閉弁、流路切替弁、ヒータ、電極と保持手段への給電、さらに前記超音波発生手段の動作を自動制御するコントローラ85を付設し、該コントローラ85に操作スイッチ85aを設けている。
【0057】
次ぎに、前記金型洗浄装置100による自動式の金型洗浄方法について説明する。
洗浄される金型90は、フラットデイスプレイの導光板用金型としており、まず、該金型90を保持カゴ75に載置する。
金型90を保持した保持カゴ75を洗浄槽11内に配置する。この状態で、蓋50側に取り付けた電極55が、蓋50を洗浄槽11の上面を覆うよに閉じた状態で、電極55が金型90、保持カゴ75に接触しないように電極55の高さ調節を行う。
【0058】
ついで、蓋50を閉じて、洗浄槽11に電解洗浄液用タンク12から所要温度に加熱した電解洗浄液を洗浄槽11内に供給する。
供給後に、コントローラ85で洗浄時間、水洗時間、乾燥時間等の各種設定を行い、ついで、スタートスイッチ85aをオンして洗浄を開始する。
【0059】
前記スタートスイッチがオンされると、電極55と保持カゴ75はプラス側とマイナス側に接続され、電解洗浄液Q1、金型90を介して通電され、金型90は電解洗浄される。同時に、超音波振動が発生して電解洗浄液Q1を超音波振動を与え、金型90を超音波洗浄する。該洗浄時には洗浄槽11、排水管15、電解洗浄液用タンク12、ポンプ17、配管16を通して電解洗浄液を循環させている。
本洗浄装置では、電解方式と超音波方式の洗浄方法を併用しているため、超音波方式の洗浄で金型90の外部より樹脂カス等の付着物に振動を与えて付着物を破壊すると共に、電解洗浄で金属製の金型表面より発生する水素ガスにより金型90から付着物を浮き上がらせ、付着物を金型90より剥離して除去する。かつ、其の際、洗浄液Q1を所要加熱しているため、強い洗浄力を発揮させることができる。
【0060】
設定時間が終了すると、洗浄液の排水管15に介設した流路切替弁13をタンク12側への流路を開いて、洗浄槽11内の使用済みの電解洗浄液を濾過装置14で濾過した後に、電解洗浄液用タンク12に戻している。
【0061】
ついで、一次水洗用タンク20に接続した供給管22の低圧ポンプ30を駆動して、洗浄槽11内に第3噴射ノズル25cより一次水洗水を洗浄槽11の内面と電極55に向けて吹き付け、洗浄槽11の内面の水洗いと電極55の水洗いを行う。ついで、低圧ポンプ30の駆動を停止して高圧ポンプ31を駆動して二次水洗水を第3噴射ノズル25cより噴射して、洗浄槽11の内面と電極55の仕上げ水洗を行う。
【0062】
前記一次水洗水の使用時には流路切替弁13を切り替えて一次水洗水排水管36と連通し、使用済みの一次水洗水を排水タンク35にためる。二次水洗水の使用時には流路切替弁13を切り替えて二次水洗水排水管39に導入し、ポンプ40を駆動して一次水洗用タンク20内に戻している。
【0063】
前記洗浄槽11および電極55の洗浄を終了した後、第1噴射ノズル25aと第2噴射ノズル25bとから金型90に対して上方と下方とから水洗水を噴射して水洗を行う。
該金型90の水洗いは、前記洗浄槽11および電極55の水洗いと同様に、まず、一次水洗水を低圧で噴射し、次ぎに二次水洗水を高圧で噴射して行う。
其の際、使用済みの一次水洗水は排水タンク35に溜める一方、使用済みの二次水洗水は一次水洗用タンク20に戻して、再利用している。
【0064】
前記のように金型90を一次水洗、二次水洗した後、アルゴンガスボンべ42に接続した配管43の開閉弁45を開き、噴射ノズル44からアルゴンガスを金型90に向けて噴射している。なお、乾燥時だけでなく、洗浄時からアルゴンガスを噴射ノズル44から少量づつ噴射し、蓋50により密閉された洗浄空間の空気を少しずつ追い出してアルゴンガス雰囲気としてもよい。
【0065】
アルゴンガスを金型90に向けて噴射して、金型90を乾燥させた後、蓋50を開き、保持カゴ75を洗浄槽11より取り出して、洗浄後の金型90を取り出している。
【0066】
図8は第一実施形態の変形例を示し、金型の保持カゴ75には、金型90’を傾斜保持するための置き台78a、78bを底面に付設している。
なお、洗浄槽の底面に配置したシリンダ(図示せず)を配置し、電解洗浄中にはシリンダを作動させずに、保持カゴの底面を水平に保持しておき、水洗および乾燥時に前記シリンダを上昇させて保持カゴを傾斜させてもよい。さらに、シリンダの昇降を繰り返して、傾斜姿勢と水平姿勢とを交互に繰り返すように揺動させてもよい。
さらに、洗浄槽の底面にモータで回転駆動される回転板を配置し、該回転板上に保持カゴを載置し、水洗時および乾燥時に回転板で保持カゴを回転させてもよい。
【0067】
図9は第二実施形態を示す。該第二実施形態では、洗浄層11の底壁内面に導電板200を配置し、金型90を保持カゴで保持せずに、直接に洗浄槽11内に挿入し導電板200上に載置している。該構成とすると、導電板200を介して金型にマイナス側を接続することができる。他の構成は第一実施形態と同様であるため、同一符号を付して説明を省略する。
なお、保持カゴで保持せずに金型を洗浄槽内に直接挿入する場合には、金型を所要姿勢で保持するガイド台を洗浄槽内に着脱自在に挿入配置することが好ましい。洗浄装置を特定の金型専用の洗浄装置とする場合には、該金型に適した形状のガイド台を洗浄槽内に一体的に設けておいてもよい。
【0068】
さらに、乾燥時にアルゴンガスを噴射する変わりに、ブロアで吸い込んだエアをフィルターを通した清浄空気を蓋50で密閉された洗浄空間内の金型に噴射してもよい。さらにまた、清浄空気に変えて、前記密閉空間内の空気を吸引して真空としてもよい。
【0069】
図10は第三実施形態を示し、前記使用済みの第一水洗水が溜められる排水タンク35に更に配管250を接続して蒸留器251を接続している。該蒸留器251により排水された使用済みの一次水洗水を蒸留して、含有されるアルカリ成分を蒸発させると共に残留した水を清浄水として再利用できるようにしている。
【0070】
図11(A)(B)は第三実施形態の変形例を示し、(A)が蒸留器251を直列に接続して、一度で清浄な蒸留水とできない場合に複数の蒸留器に通して清浄水を得るようにしている。
(B)は排水される使用済みの一次水洗水が多い場合に、並列させた複数の蒸留器251に分散させて通して、清浄な蒸留水を得るようにしている。
勿論、並設させた蒸留器にそれぞれ複数の蒸留器を直列接続してもよい。
【0071】
図12は第四実施形態を示し、ケース11内には、洗浄槽11の側部から該洗浄槽11からオーバーフローする使用済みの電解洗浄液Q1を受容するオーバーフロー槽290を配置している。該オーバーフロー槽には、洗浄液中の金属イオン回収用のプラス側電極板292Aとマイナス側電極板292Bとを近接対向配置して吊り下げ、これら電極板292Aと292Bとの洗浄槽11内の電解洗浄用電極55に導通する電圧よりも低い電圧を印加している。これら電極板292A、292Bは鉄あるいはステンレスより形成している。
該構成とすることにより、電解洗浄液Q1に含まれる金属イオンをマイナス側の電極板292Bに吸着して回収している。
【0072】
図13は第四実施形態の変形例を示し、本洗浄装置の洗浄層11と配管290を介してオーバーフロー槽290を別置きしている。該オーバーフロー槽290の内面にはプラス側給電板292Aとマイナス側給電板292Bとを対向して取り付けて、前記洗浄槽の金型に供給する電圧よりも低電圧を導通させ、オーバーフローする電解洗浄液中の金属イオンを前記給電板292に付着させて回収できる構成としている。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明に係わる洗浄装置および洗浄方法は、実施形態に記載の合成樹脂用金型に限定されず、ゴム成形用、ガラス成形用等の金型の洗浄にも好適に用いることができる。
また、フラットディスプレイの導光板等の精密成形品を成形するためのニッケル金型の洗浄に用いた場合において、高精度の洗浄能力を発揮できるものである。よって、高度化する精密品、例えば、CD−ROM、DVD−ROM、スパーマルチドライブRAM、HDDVDピックアップレンズ、ブルーレイディスクピックアップレンズ、液状デイスプレイホログラム・プリズム、デジタルカメラ液状ホログラム・プリズム、携帯電話CCDカメラレンズ、各種導光板等を成形するための精密部品成形用金型の洗浄に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第一実施形態の全体斜視図である。
【図2】全体概略構成図である。
【図3】配管系を示す図面である。
【図4】(A)は洗浄槽を示す斜視図、(B)洗浄槽に金型の保持カゴを取り付けた状態を示す斜視図である。
【図5】蓋を示す斜視図である。
【図6】蓋を開いた状態を示す斜視図である。
【図7】金型洗浄状態を示す概略図である。
【図8】第一実施形態の変形例を示す図面である。
【図9】第二実施形態を示す概略図である。
【図10】第三実施形態を示す概略図である。
【図11】(A)(B)は第三実施形態の変形例を示す図面である。
【図12】第四実施形態を示す概略平面図である。
【図13】第四実施形態の変形例を示す概略図である。
【図14】従来例を示す図面である。
【図15】他の従来例を示す図面である。
【符号の説明】
【0075】
10 ケース
11 洗浄槽
12 電解洗浄水用タンク
20 一次水洗用タンク
21 二次水洗用タンク
27〜29 噴射ノズル
30 低圧ポンプ
31 高圧ポンプ
35 排水タンク
42 アルゴンガスボンペ
50 蓋
55 電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂、ゴム、ガラス等の成形用金型に付着する樹脂カス、ゴムカス、ガラスカス、ガス焼け等の付着物を洗浄除去する金型洗浄装置および金型洗浄方法に関し、特に、洗浄装置を一槽式の簡単な構造としながら、微細構造の光学部材用金型の洗浄に好適に用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
近年、樹脂やゴムの成形用材料の改質および成形技術の進歩に伴い、従来プレス加工等により形成されていた金属製やガラス製等の部品も、大量生産が可能な金型で成形される樹脂製部品へと移行しつつある。
例えば、樹脂製品やゴム製品は金属製品やガラス製品と比較すると、強度、耐熱性、耐油性、耐摩耗性が乏しいとされてきたが、樹脂製品やゴム製品の改質により上記物性が付与され、耐熱性、耐油性が要求される自動車のボンネットの中に取り付けるデイストリビュータのケースも金属製品から樹脂製品へと代わっている。
また、超精密成形技術の進歩により、テレビの画面やレンズもガラスから樹脂に変わっている。金型による射出成型で超精密部品、例えば、フラットパネルディスプレイの導光板、携帯電話の超小型精密カメラ用のレンズ、ゴーグルのレンズ、歯車、コネクタ等も樹脂成形で大量生産されている。
【0003】
前記樹脂、ゴム、ガラス等の成形に用いる金型は、成形量に伴ってその内面に樹脂カス、ゴムカス、あるいはガラスカスが付着すると共に、樹脂が溶解された時に発生するガスや樹脂カスが付着する。これらの付着物は、成形ショットを重ねると、ショット回数の増加に伴い金型表面に堆積し、簡単には除去することができない。しかしながら、これらを確実に除去しないと、製品が規定のカンデラ値に達しない等の成形不良につながる等の不都合が生じる。よって、成形用金型は定期的に取り外して洗浄し、上記付着物を除去しなければならない。
【0004】
特に、フラットパネルディスプレイの導光板、携帯電話の超小型精密なカメラレンズ、ゴーグル用レンズ、車両用レフレクター等を射出成型する金型は、鉄或いは真ちゅうの表面に純ニッケルメッキ層やリンやボロンが配合されたニッケル合金メッキ層が設けられた金型、あるいはニッケル板やニッケル合金板が表面に貼り付けられた金型、さらにはニッケルのみ、またはニッケル合金のみで形成された金型(以下、ニッケル金型と総称する)とされている。この種のニッケル金型ではニッケルが物質を吸着しやすい特性を有することから、電解液中で析出する金属微粒子や微小な樹脂片や異物が付着しやすい。これら超微粒子がニッケルメッキ表面に付着した状態で残存すると、該ニッケル金型で成形される導光板、レンズ、車両用のレフレクターの品質を維持できない問題がある。特に、前記導光板では微細で精度が要求されるパターンに、入り込んだ樹脂を取り除いたり、ガスの溜まりやすいパーツ等の汚れをすっきり取り除かなければ、高度化する精度に対応することができない。
【0005】
金型洗浄は、従来、トリクレンや炭化水素系の石油等に浸漬しておき、その後、ブラシや綿棒で擦りとる方法でなされていたが、トリクレンや炭化水素系の有機溶剤は人体に悪影響を与える。
【0006】
上記した問題より、本出願人は、水酸化ナトリウム等の強アルカリ成分が配合された洗浄液を用い、かつ、成形金型用の洗浄装置として、特開平7−214570号公報(特許文献1)において図14に示す電解洗浄装置を提供している。
この洗浄装置は電解洗浄と超音波洗浄とを併用して金型の洗浄を短時間で効率良く行うことができる利点を有するものである。図14中において、1は洗浄槽、2は洗浄槽内に着脱自在に挿入する金型保持カゴ、3は洗浄槽内に吊り下げるプラス側電極であり、マイナス極側となる上記金型保持カゴ2内に保持された金型5との間に電流を流すと共に、洗浄槽1の底面に取り付けた超音波振動子4により洗浄槽内の電解洗浄液に超音波振動を発生させ、よって、電解洗浄と超音波洗浄とを併用して、金型5の洗浄を行っている。
【0007】
また、特開2001−241000号公報(特許文献2)において、図15に示す電解洗浄を行う本洗浄槽1’の前洗浄を行う脱脂槽6と、本洗浄槽1’による本洗浄後に後洗浄を行うリンス槽7を備えた金型洗浄装置が提供されている。該金型洗浄装置は、前記特許文献1の金型洗浄装置と同様の電解洗浄を行う本洗浄装置に、前洗浄を行う脱脂槽と、後洗浄を行いリンス槽を付設した構成とされている。
【0008】
【特許文献1】特開平7−214570号公報
【特許文献2】特開2001−241000号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記特許文献1の金型洗浄装置は電解洗浄と超音波洗浄とを併用しているため、極めて効率良く短時間で金型の付着物を除去でき、洗浄効果が優れた利点を有する。しかしながら、該金型洗浄装置では電解洗浄および超音波洗浄による本洗浄の後は、金型を洗浄槽から取り出して、別の槽に移して水洗いし、更には必要に応じて乾燥槽に移して乾燥を行っている。
前記したように、電解洗浄槽から水洗槽へ、水洗槽から乾燥槽へと順次洗浄した金型を移送すると、移送過程で金型表面の水滴に空気中の塵埃が吸着され、これら乾燥後にウオターマークとしなりやすい問題がある。
かつ、近時はフラットパネルディスプレイの導光板等の超精密成形部品が急増している。これらの超小型精密部品の金型では凹凸も微細になり、前記槽間の移送時に振動等により金型に損傷が発生する恐れもある。
【0010】
本発明を前記問題に鑑みてなされたもので、複数の洗浄槽を配置して順次金型を移送せずに、一槽式とし、1つの洗浄槽内で、電解洗浄による本洗浄、本洗浄後の水洗い、さらに、不活性ガス等を用いた乾燥を行えるようにして、洗浄工程での金型の移送を無くして、金型表面にウオターマークが生じないようにし、かつ、移送工程での損傷の発生を確実に防止することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明は、第一に、金型の電解洗浄、水洗、乾燥を順次連続的に行う1つの洗浄槽と、
前記洗浄槽内に供給される電解洗浄液内に浸漬させる電解洗浄用の電極と、
前記洗浄槽内に挿入する金型と接触させ、前記電極と電解洗浄液および金型を介して通電させて電解洗浄を行わせる給電手段と、
前記洗浄槽の上面開口を閉鎖する蓋と、
前記金型の電解洗浄後に洗浄槽内から電解洗浄液を排出する手段と、
前記洗浄槽内の洗浄後の金型の水洗用として水洗水を給排する手段と、
前記洗浄槽内の水洗後の金型の乾燥用として清浄空気、真空あるいは不活性ガスからなる気体を給排する手段と、
を備えていることを特徴とする一槽式の金型洗浄装置を提供している。
【0012】
前記本発明の一槽式の金型洗浄装置は、1つの洗浄槽内で電解洗浄による本洗浄、水洗、乾燥を順次連続的に行える構成としているため、該洗浄槽から金型を別の槽に移送する必要はなく、移送中に金型表面の水滴に空気中の塵埃が付着してウオターマークとなる恐れがない。また、移送過程で金型に傷等が生じることを確実に防止でき、よって、特に微細な凹凸がある導光板用金型等の光学部材用金型の洗浄には適したものとなる。
また、1つの槽内で本洗浄、水洗、乾燥を行うと、洗浄時間の短縮が図れると共に洗浄装置の設置スペースを大きくとらない。
さらに、本発明では、洗浄槽の上面開口を蓋で覆った状態で洗浄を行う密閉式としているため、洗浄時に空気中の塵埃が微細な金型表面に付着するのを防止でき、かつ、蓋で密閉していることから作業員の安全性を高めることができる。
さらにまた、電解洗浄時、水洗時および乾燥時のいずれも洗浄液、水洗水、乾燥用ガスを常温以上100℃以下として洗浄能力、乾燥能力を高めることが好ましいため、蓋で密閉することで温度制御ができ、洗浄、水洗、乾燥を行うことができる。
特に、本発明では、水洗後の金型に付着した水を、払拭せずに、清浄空気、真空あるいは不活性ガスを吹き付けて乾燥しているため、払拭時に生じる恐れがあるミクロ的な異物の付着も確実に防止できる。
【0013】
詳しくは、前記金型と接触して金型に通電する給電手段として、前記金型を保持して洗浄槽内に挿入する金属製多孔質材からなる保持カゴあるいは、前記洗浄槽内の内面に配置して該洗浄槽内に入れる金型と接触させる導電板を備え、前記保持カゴあるいは導電板を電源のマイナス側、前記電極をプラス側と接続している。
【0014】
また、前記本発明の金型洗浄装置は、前記水洗水の給排手段として、電解洗浄液用タンクと、該電解洗浄液用タンクと前記洗浄槽との間に介設される電解洗浄液給排用配管と、水洗用の一次水洗用水タンクおよび二次水洗用水タンクと、これら一次水洗用水タンクおよび二次水洗用水タンクと前記洗浄槽との間に介設される水洗水給排用配管と、前記水洗水を電解洗浄槽内に噴射する噴射ノズルを備え、
前記乾燥用の気体の給排手段として、前記清浄空気発生手段、真空発生手段、あるいは不活性ガスのボンべと、これらを前記洗浄槽との間に介設する乾燥気体供給用配管を備え、
さらに、前記水洗水を所要温度に加熱するヒータと、前記記清浄空気、あるいは不活性ガスを所要温度に加熱するヒータを備えていることが好ましい。
なお、一次水洗水および二次水洗水を噴射ノズルを用いて金型に噴射する方式に替えて、一次水洗水、二次水洗水を洗浄槽内に貯留し、この一次水洗水、二次水洗水中に金型を浸漬させることで洗浄水を洗い落としてもよい。また、其の際、一次水洗水、二次水洗水をオーバーフローさせて流水とし、あるいは洗浄槽中で撹拌させてバブリングしても水洗能力を高めることができる。
【0015】
前記のように、本発明では、電解洗浄による本洗浄後の水洗い時に、一次水洗用タンクに貯留した水による一次水洗と、二次水洗用タンクに貯留した水による二次水洗を行えるようにして、確実に電解洗浄時に金型に付着する電解洗浄液を除去する構成としている。また、これらの水洗水をヒータで加熱してから洗浄槽に供給して本洗浄後の金型に噴射させていることで、効率の良い水洗を行うことができる。さらに、乾燥用の気体も加熱すると、乾燥時間の短縮を図ることができる。
【0016】
前記水洗水給排用配管は、
前記一次水洗用タンクと二次水洗用タンクに夫々接続する分岐管を合流させて前記洗浄槽の上面開口へと延在させ、該洗浄槽に一次水洗水および二次水洗水を供給する供給側配管と、
使用済み一次水洗水を洗浄槽から排出する排出管と、
使用済み二次水洗水を一次水洗用水タンクヘ送給する循環管とからなり、
前記一次水洗用タンクと接続される供給側配管の分岐管に低圧ポンプを介設すると共に前記二次水洗用タンクと接続される供給側配管の分岐管に高圧ポンプを介設し、
前記噴射ノズルは一次水洗水を低圧噴射すると共に二次水洗水を高圧噴射する構成としている。
【0017】
前記のように、一次水洗水は低圧噴射して金型表面に付着している洗浄水を洗い流し、ついで、二次水洗水を高圧噴射して微細な窪みに付着している洗浄水までも完全に洗い流している。該構成とすると、水洗水を高圧噴射し続ける場合よりもコストの低下を図りながら完全に洗浄水を除去できる。
【0018】
前記のように、使用済みの二次水洗水は一次水洗タンクに循環させて再利用している。
また、使用済み一次水洗水も前記排水管を通して排水タンクに溜め、該排水タンクに蒸留器を接続して、使用済みの一次水洗水を該蒸留器で蒸発させると共に清浄水として取得できる構成とすることが、排水処理上で好ましい。
前記蒸留器は一次水洗水の汚れが酷い場合には、複数の蒸留器を直列配置して蒸留精度を挙げている。また、使用済みの一次水洗水が多い場合には複数の蒸留器は並列配置して一度に複数の蒸留器で処理できるようにすることが好ましい。
前記排水浄化用の蒸留器は本装置内に付設してもよいし、排水管を介して別置きしてもよい。
【0019】
前記一次水洗用タンクと二次水洗用タンクに接続した前記供給側配管は、前記洗浄槽側で分岐し、各分岐管の先端に夫々噴射ノズルを取り付け、
前記噴射ノズルは、前記洗浄槽の周壁内面の上側と下側とに配置して金型に上方から水洗水を噴射する第1噴射ノズルと、金型に下方から上向きに水洗水を噴射する第2噴射ノズルとしていることが好ましい。
【0020】
前記のように金型に水洗水を吹き付ける噴射ノズルを上下に配置すると、金型全体に水洗水を吹きつけることができる。特に、多孔質材の保持カゴに金型を搭載している場合には、下方から上向きに水洗水を噴射することで、金型の下面に付着する電解洗浄液を確実に除去することができる。
【0021】
さらに、前記第1、第2噴射ノズルと対向側の周壁内面に第3噴射ノズルを配置し、該第3噴射ノズルは洗浄槽内面および前記電極の水洗い用として一次水洗水および二次水洗水を噴射させるものとすることが好ましい。
この洗浄槽内面および電極の水洗は、電解洗浄による本洗浄後で、金型に対する水洗の前に行うことが好ましい。これにより、電極や洗浄槽の内面に付着している電解洗浄液が水洗した金型に垂れ落ちて付着することを防止できる。
【0022】
前記洗浄槽には超音波発生装置を付設し、洗浄時に電解洗浄と超音波洗浄とを行う構成とすると、より洗浄力を高めることができる。
該超音波洗浄は、洗浄槽の底面に超音波発生装置を付設し、超音波振動子を2種類以上の周波数に切り替えて超音波を発生させることが好ましい。このように、超音波振動を一定の周波数とせずに、異なる周波数、例えば34KHzと44KHzとに切り替えて交互の超音波振動を発生させると、電解洗浄液に適宜な撹拌作用を発生させることができ、洗浄力を高めることができる。超音波に変えて、30KHz〜100KHzの単波を用いてもよい。
洗浄する金型がフラットパネルディスプレイの導光板、超小型精密なレンズ、自動車のレフレクター等の超整密な成形品用で、金型がニッケル金型である場合、超音波の周波数は30KHz〜100KHz、好ましくは40〜70KHzの範囲が好適である。
【0023】
前記電解洗浄液給排管に循環用ポンプを介設すると共に、前記乾燥気体供給用配管に開閉弁を介設し、
前記循環用ポンプ、開閉弁、さらに、前記低圧ポンプ、高圧ポンプ、ヒータ、電極と保持手段への給電、さらに前記超音波発生手段の動作を自動制御するコントローラを付設していることが好ましい。
【0024】
前記構成とすると、洗浄槽中に金型を挿入して蓋を締めた後は、密閉状態で且つ金型を移動させることなく、全自動で洗浄から乾燥まで行うことができる。よって、洗浄時における空気中の塵埃が金型に付着したり、金型移動時の損傷発生等を確実に防止でき、かつ、省力化も図ることができる。
【0025】
前記蓋に前記電解洗浄用の電極を取り付けていることが好ましい。
即ち、電解洗浄による本洗浄時に洗浄槽内の電解液中に浸漬する電極は、蓋側に取り付けて垂下させていることが好ましい。なお、洗浄側の周壁の上端面に係止して電極を取り付けても良いが、其の場合、蓋を被せると隙間が発生しやすくなるため、蓋側に取り付けることが好ましい。
具体的には、蓋は透明材から形成し、該蓋に複数の電極支持棒を貫通させる貫通穴を間隔をあけて設け、該蓋の上部に給電用金属板からなる電極支持棒固定板を配置し、該電極支持棒固定板を前記蓋の両側部に高さ調節可能に取り付けている。該電極支持棒固定板に対して各電極支持棒も高さ調節可能に取り付け、垂下する電極支持棒を前記蓋の貫通穴に通して洗浄槽中に垂下するように突出させている。
このように、複数の電極支持棒を一体的に高さ調節可能とすると共に個別に高さ調節可能としている。
さらに、電極支持棒の高さ測定用のスケールも蓋側に取り付け、洗浄槽中での電極の高さを外部から正確に測定できるようにしている。
なお、電極を下端に取り付ける電極支持棒は必ずしも蓋に取り付ける必要はなく、洗浄槽の周壁上端面に給電板を装架して、該給電板から電極支持棒を洗浄槽中に垂下してもよい。かつ、該電極支持棒を取り付けた給電板を水洗いおよび乾燥時に、金型上方の洗浄槽の中央部から周壁の一辺側に移動させる構成としてもよい。
さらに、前記蓋には吸気用のダクトを取り付け、密閉空間から空気を吸引すると共に、水洗水の噴射時に噴射されて飛散したミストを吸引して洗浄槽内に跳ね返らないようにすることが好ましい。
前記蓋の形状は、洗浄槽の上面開口を閉鎖できればよく、平板形状、ドーム形状等の任意の形状でよい。
【0026】
前記電解支持棒の先端に取り付ける電極は、プラチナ(白金)、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、金、銀の貴金属、あるいはこれら貴金属の合金のうちの1種または複数種の金属、前記金属で被覆されたものからなることが好ましい。
前記金属の被覆はメッキ、爆着、圧着、連続スポット溶接等により行われる。
【0027】
前記洗浄される金型の保持手段は、少なくとも金型を載置できる底壁と、取り出し時に金型を保持できる側壁と、洗浄槽の周壁上端に配置する給電板と当接させると共に洗浄槽への着脱時に把持できる支持腕を備え、底壁は金属線材からなるメッシュあるいは多孔質金属板からなるカゴ状とすることが好ましい。
該保持手段の底壁上には小型金型であれば複数個数載置され、大型金型であれば1個載置される。また、導光板用金型等の大型金型の場合には、該金型を傾斜保持できる機構を保持手段に設けていることが好ましい。さらにまた、前記洗浄槽内に挿入する金型を把持して、反転、揺動等をできる機構を設けることが好ましい。
また、洗浄槽内に保持カゴで保持せずに金型を直接投入して、洗浄槽の底壁内面に配置する前記導電板と接触させる場合には、洗浄槽自体に金型を所要姿勢で保持できる手段を設けることが好ましい。
【0028】
前記電解洗浄時に前記洗浄槽に供給される洗浄液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムから選択された1以上を含む強アルカリ成分と、EDTA4ナトリウム塩からなるキレート剤と、有機窒素あるいは無機窒素からなる酸化物除去成分と、グルコン酸ナトリウムとを含むものであることが好ましい。
【0029】
前記無機窒素として 硝酸塩あるいはアンモニア塩を用い、
前記有機窒素として、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ペンタエチレンベキサミンから選択されるエチレンジアミン類を用い、
前記キレート剤として、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸ナトリウム塩、ニトリロトリセテック酸ー3ナトリウム(NTA・3Na)、ジカルボキシメチル−グルタミック酸テトラソジウムー4ナトリウム(GLDA・4Na)を用いることが好ましい。
【0030】
本洗浄液は、前記したように、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムから選択された1以上を含む強アルカリ成分と、グルコン酸ナトリウムに、EDTA4ナトリウム塩からなるキレート剤に更に有機窒素あるいは無機窒素を加えた酸化物除去成分を配合することにより、キレート剤単独で用いる場合よりも更に酸化物の除去性能を高めている。
【0031】
さらに、ノニオン系、カチオン系、アニオン系の界面活性剤から選択される1以上の界面活性剤を含めると、さらに洗浄力を高めることができると共に、金型から除去した樹脂カス等の金型への再付着や、ミストの発生を抑制する機能を有する。
【0032】
具体的には、前記本洗浄液は強アルカリ成分を30〜100g/リットル、前記EDTA4ナトリウム塩を30〜100g/リットル、グルコン酸ナトリウムを10〜60g/リットル、有機窒素あるいは無機窒素からなる酸化物除去成分を30〜150g/リットル配合することが好ましい。
また、前記ノニオン系、カチオン系、アニオン系の界面活性剤から選択される1以上の界面活性剤も配合する場合は、1〜3cc/リットル配合していることが好ましい。
前記配合量は、本発明者が実験を繰り返して知見したものである。
【0033】
また、前記本洗浄液は加熱手段を付設して、30℃〜60℃に加熱することが、洗浄能力を高めることができる点から好ましい。
さらに、本洗浄液には水を配合しているが、該水としては、水道水を精製手段を通して不純物を除去した水を配合していることが好ましい。
前記精製手段として、蒸留、イオン交換あるいは/および濾過法を採用した精製手段を用いられる。
【0034】
さらに、本発明の装置においては、電解洗浄中に発生する金属イオンの回収機構を付設しておくことが好ましい。
即ち、前記洗浄槽からオーバーフローする電解洗浄液の回収槽を付設し、該回収槽にオーバーフロー液中の金属イオン吸着用の電極板を配置し、あるいは、
前記洗浄槽内または電解洗浄液用タンク内に、電解洗浄液中の金属イオンを吸着する電極板を配置している。
前記電極板には金型電解洗浄用として給電する電圧以下の低電圧を給電することが好ましい。また、前記金属イオンの回収機構は電解洗浄用として使用する前記マイナス側電極と同一材あるいは鉄、ステンレス等からプラス側給電板とマイナス側給電板とを形成して電解洗浄液中に対向配置で垂設し、マイナス側電極板に金属イオンを吸着させて洗浄液中の金属イオンを回収している。
前記金属イオン回収用の電極板は、前記洗浄槽から電解洗浄液をオーバーフローさせる前記回収槽中に取り付けても良いし、前記洗浄槽内あるいは電解洗浄液用タンク内に配置してもよい。この金属イオンの回収作業は、洗浄作業中、洗浄停止中、液温管理中等の各好適中のどの工程中に行っても良い。
【0035】
本発明の金型洗浄装置は、ニッケルメッキ金型、ニッケル合金メッキ金型、ニッケル板表面貼付金型、ニッケル合金板表面貼付金型あるいはニッケルで形成された金型からなるニッケル金型の洗浄用として用いることが好ましい。
さらに、本発明の金型洗浄装置は、フラットパネルディスプレイの導光板の射出成型用金型、レンズの射出成型用の金型、車両用レフレクターの射出成型用の金型の洗浄用として用いることが好ましい。
更にまた、本発明の金型洗浄装置は、水洗後に払拭せずに乾燥のみを行う鏡面金型の洗浄用として用いることが好ましい。
【0036】
前記した金型は、超微粒子の付着の防止、付着した超微粒子の除去を含め、最もシビアな洗浄が求められることより、密閉した一槽内で自動的に洗浄、水洗、乾燥が行える本発明の金型洗浄装置が好適に用いられる。
【0037】
本発明は、第二に、
前記した一槽式の金型洗浄装置を用いて行う金型洗浄方法であって、
前記洗浄槽内に前記給電手段と接触させて金型を挿入すると共に電解洗浄液を供給し、
洗浄槽に前記蓋でカバーした状態で電解洗浄を行い、
電解洗浄後に電解洗浄液を排出し、
前記一次水洗水を洗浄槽内の電解洗浄後の金型に供給して一次水洗いを行い、
前記使用後の一次水洗水を洗浄槽から排出し、
前記二次水洗水を洗浄槽内の一次水洗後の金型に供給して二次水洗いを行い、
前記使用後の二次水洗水を洗浄槽から排出して前記一次水洗用タンクに循環させ、
清浄空気、真空あるいは不活性ガスを洗浄槽内の二次水洗後の金型に吹き付けて乾燥させている金型洗浄方法を提供している。
【0038】
前記水洗水による金型表面に付着した洗浄液の水洗いは、
一次水洗いは一次水洗水を低圧で金型に噴射し、
前記二次水洗いは二次水洗水を高圧で金型に噴射する方法が好適に用いられる。
【0039】
また、乾燥用として不活性ガスを供給する場合には、乾燥用噴射以外にも、洗浄開始前から少しづつ不活性ガスを洗浄槽中に供給して、洗浄槽中に酸素や発生するガスを追い出すと同時に塵埃の浸入を防ぐことが好ましい。
【0040】
前記金型は、金属製の保持カゴで保持して洗浄槽内に配置し、あるいは洗浄槽の底面に配置した導電板上の金型を乗せて配置することにより、洗浄槽内に給電手段と接触させている。
前記電解洗浄液の排出後で、前記一次水洗水を噴射する前に、
前記洗浄槽の内面および電極を洗浄するため前記一次水洗水を噴射し、該一次水洗水の噴射後に二次水洗水を噴射することが好ましい。
【0041】
また、前記一次水洗水および二次水洗水を常温から80℃、好ましくは50℃の範囲で調節して、前記洗浄槽に供給していることが好ましい。
前記不活性ガスを常温から80℃間で調節して、前記洗浄槽に供給していることが好ましい。
このように、水洗水や乾燥用の不活性ガスを供給していくと酸素を追い出すことができ、金型が鉄系の場合には、錆びの発生を押さえることができる。
前記電解洗浄液を約30℃〜60℃に加熱していることが好ましい。
さらに、前記電解洗浄時に超音波洗浄を併用し、超音波周波数を30KHz〜100KHzの範囲としていることが好ましい。
さらに、電解洗浄用の電極に印加する電圧を2〜5Vの範囲としていることが好ましい。
【発明の効果】
【0042】
上述したように、本発明の金型洗浄装置は、一槽式で、1つの洗浄槽内で電解洗浄による本洗浄、水洗、乾燥を順次連続的に行える構成としているため、洗浄槽から他の槽(水洗槽や乾燥槽)へ金型を移送する必要はなく、移送時に金型に傷等が生じることを防止でき、特に微細な凹凸がある導光板用金型等の光学部材用金型の洗浄には適したものとなる。また、1つの槽内で本洗浄、水洗、乾燥を行うため、洗浄時間の短縮が図れると共に洗浄装置の設置スペースを大きくとらない等の種々の利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図7は第一実施形態を示す。
金型洗浄装置100は図1に示すように、ボックス形状のケース10の内部に、図2に示すように1つの洗浄槽11を備え、該1つの洗浄槽11を蓋50で密閉した状態で電解洗浄液を用いた電解洗浄と超音波洗浄とを併用した本洗浄を行い、続いて、該洗浄槽11で2度の水洗いを行い、最後にガスを用いた乾燥を行う構成としている。また、該金型洗浄装置100にはコントローラ85を付設して、該コントローラ85に取り付けたスイッチを押して設定しておくだけで、全自動で本洗浄→水洗→乾燥が行えるようにし、かつ、ケース10の下端にキャスターを備えて移動可能としている。
【0044】
図2は概略的な構成図、図3は洗浄液、水洗水、乾燥用気体の概略配管図である。
図2に示すように、ケース10の一半側の上部に洗浄槽11を設置し、洗浄槽11の下部に電解洗浄液用タンク12を設置し、洗浄槽11の底面に排水口11aと電解洗浄液用タンク12とは流路切替13および濾過装置14を介設した排水管15を介して接続している。また、該電解洗浄用タンク12から洗浄槽11の上面に配置する電解洗浄液供給用の配管16との間にはポンプ17を介設している。前記電解洗浄液用タンク12の内部にはヒータ18を配置して、電解洗浄液を所要温度に加熱できるようにしている。
【0045】
ケース10の他半側の上部に一次水洗用タンク20と二次水洗用タンク21とを並設し、これらのタンク20、21に接続した供給管22、23を合流し、合流した水洗水供給管25を洗浄槽11側へと配管している。
洗浄槽11には周壁内面の上部より第1噴射ノズル27、下部より第2噴射ノズル28、対向する周壁内面より第3噴射ノズル29を突出させ、これら第1〜第3噴射ノズル27〜29を前記水洗水供給管25の分岐管25a、25b、25cの先端に取り付けている。
【0046】
前記一次水洗用タンク20に接続する供給管22には低圧ポンプ30を介設すると共に、二次水洗用タンク21に接続する供給管23には高圧ポンプ31を介設している。かつ、一次および二次水洗用タンク20、21の内部にはそれぞれヒータ32を設置して、所要温度に水洗水を加熱している。
【0047】
前記一次および二次水洗用タンク20、21の下方には、使用済みの一次水洗水が送給される排水タンク35を配置し、該排水タンク35と前記排水管15から分岐した一次水洗水排水管36を前記流路切替弁13を介して接続している。
さらに、前記排水管15から分岐した二次水洗水排水管38を前記流路切替弁13およびポンプ40を介して前記一次水洗用タンク20に接続し、使用済みの二次水洗水を一次水洗用タンク20内に戻して、再利用する構成としている。
【0048】
また、前記使用済み一次水洗水の排水タンク35の側部にアルゴンガスボンベ42を配置している。該アルゴンガスボンベ42に接続した配管43に開閉弁45を介設すると共に、先端に噴射ノズル44を取り付けている。該噴射ノズル44は、洗浄槽11の上部に被せる蓋50に形成した取付口50aに取り付けている。
【0049】
前記蓋50は図5および図6に示すように、透明樹脂からなる平板形状で、洗浄槽11の周壁上面に当接させて洗浄槽11の上面開口を密閉するものである。該蓋50は洗浄槽11の周壁の一辺にヒンジ付けで開閉自在に連結している。なお、別体としても良い。
蓋50にはブロア300の吸気側に接続されたダクト301を接続し、蓋50により密閉された空間から吸気を図るようにしている。
【0050】
洗浄槽11での金型の本洗浄は電解洗浄と超音波洗浄とを併用した洗浄を行うものとしており、電解洗浄のために洗浄槽11内の電解液中に浸漬する電極55は、蓋50側に取り付けている。
具体的には、蓋50に間隔をあけて電極支持棒貫通の貫通穴50bを設け、各貫通穴50bの導電性を有する電極支持棒60をブッシュ61を介して密嵌状態に貫通させ、該電極支持棒60の下端に夫々円板形状の電極55を取り付けている。
前記電極支持棒60の上端は、蓋50の上方に間隔をあけて配置する給電用金属板62に設けた貫通穴に通し、ナット63で高さ調節自在に固定している。該給電用金属板62は、その左右両端からの突設部62bを、蓋50の左右両側に設けた給電板64から突設した支持棒65に蝶ネジ66で高さ調節自在に固定している。該構成とすることで複数本(本実施形態では8本)の電極55の高さを一括して調節できると共にそれぞれ独立して高さ調節できる構成としている。
さらに、前記支持棒65の上端に連結棒67を架け渡し、該連結棒67にスケール68の上端を固定し、該スケール68を給電用金属板62および蓋50に設けた貫通穴を通して垂下させ、洗浄槽11中での電極55の高さを外部から測定できるようにしている。
【0051】
前記電極55として本実施形態ではプラチナ製の電極を用いている。該電極55は金属棒からなる電極支持棒60を介して給電用金属板62と電気接続され、該給電用金属板62が電解用変換器(図示せず)のプラス側と接続される。
【0052】
金型を保持して洗浄槽11内に配置する金型の保持手段として、図4(B)に示すように、保持カゴ75を用い、該保持カゴ75は底壁75a、周壁75b、該周壁75bの左右両側にそれぞれ架け渡される支持腕75c、該支持腕75cにを設けた給電用嵌合部75dを備えた形状とし、底壁75aはパンチングメタルで形成している。該保持カゴ75の底壁75a、周壁76bは洗浄槽11の底面および内周面に空隙をあけて沿った形状としている。また、該支持腕75cの両側部は洗浄槽11の周壁上面に載置し、給電用嵌合部75dを周壁上面に形成した嵌合溝に嵌合し、該嵌合溝の底面に露出させている給電板77と接触させて電気接続させ、保持カゴ75を電解用変換器のマイナス側と接続している。電解用変換器は交流の電源器と接続し、電流を交流から直流に変換して、電極55と金型の保持カゴ75に電流を供給している。
【0053】
前記電極55はプラス側、保持カゴ75はマスナス側と接続されることにより、図7に示すように、洗浄槽11内に供給される電解洗浄液Q1を介して保持カゴ75に搭載される金型90が電解洗浄されるようにしている。
【0054】
前記電解洗浄液Q1としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムから選択された1以上を含む強アルカリ成分と、EDTA4ナトリウム塩からなるキレート剤と、有機窒素あるいは無機窒素からなる酸化物除去成分と、グルコン酸ナトリウムと、ノニオン系、カチオン系、アニオン系の界面活性剤から選択される1以上の界面活性剤を、水道水を精製手段で精製した純水に配合している。
そのさい、配合量は、強アルカリ成分を30〜100g/リットル、EDTA4ナトリウム塩を30〜100g/リットル、グルコン酸ナトリウムを10〜60g/リットル、前記酸化物除去成分を30〜150g/リットル、前記ノニオン系、カチオン系、アニオン系の界面活性剤から選択される1以上の界面活性剤を1〜3cc/リットルとし、残りを純水として、配合している。
前記洗浄液Q1は前記ヒータ18で30〜60℃に加熱して洗浄槽11内に供給される。
【0055】
さらに、洗浄槽11の底面側には超音波発生装置80を設置し、電解洗浄時に洗浄液Q1に超音波振動を発生させるようにしている。
【0056】
前記した各種ポンプ、開閉弁、流路切替弁、ヒータ、電極と保持手段への給電、さらに前記超音波発生手段の動作を自動制御するコントローラ85を付設し、該コントローラ85に操作スイッチ85aを設けている。
【0057】
次ぎに、前記金型洗浄装置100による自動式の金型洗浄方法について説明する。
洗浄される金型90は、フラットデイスプレイの導光板用金型としており、まず、該金型90を保持カゴ75に載置する。
金型90を保持した保持カゴ75を洗浄槽11内に配置する。この状態で、蓋50側に取り付けた電極55が、蓋50を洗浄槽11の上面を覆うよに閉じた状態で、電極55が金型90、保持カゴ75に接触しないように電極55の高さ調節を行う。
【0058】
ついで、蓋50を閉じて、洗浄槽11に電解洗浄液用タンク12から所要温度に加熱した電解洗浄液を洗浄槽11内に供給する。
供給後に、コントローラ85で洗浄時間、水洗時間、乾燥時間等の各種設定を行い、ついで、スタートスイッチ85aをオンして洗浄を開始する。
【0059】
前記スタートスイッチがオンされると、電極55と保持カゴ75はプラス側とマイナス側に接続され、電解洗浄液Q1、金型90を介して通電され、金型90は電解洗浄される。同時に、超音波振動が発生して電解洗浄液Q1を超音波振動を与え、金型90を超音波洗浄する。該洗浄時には洗浄槽11、排水管15、電解洗浄液用タンク12、ポンプ17、配管16を通して電解洗浄液を循環させている。
本洗浄装置では、電解方式と超音波方式の洗浄方法を併用しているため、超音波方式の洗浄で金型90の外部より樹脂カス等の付着物に振動を与えて付着物を破壊すると共に、電解洗浄で金属製の金型表面より発生する水素ガスにより金型90から付着物を浮き上がらせ、付着物を金型90より剥離して除去する。かつ、其の際、洗浄液Q1を所要加熱しているため、強い洗浄力を発揮させることができる。
【0060】
設定時間が終了すると、洗浄液の排水管15に介設した流路切替弁13をタンク12側への流路を開いて、洗浄槽11内の使用済みの電解洗浄液を濾過装置14で濾過した後に、電解洗浄液用タンク12に戻している。
【0061】
ついで、一次水洗用タンク20に接続した供給管22の低圧ポンプ30を駆動して、洗浄槽11内に第3噴射ノズル25cより一次水洗水を洗浄槽11の内面と電極55に向けて吹き付け、洗浄槽11の内面の水洗いと電極55の水洗いを行う。ついで、低圧ポンプ30の駆動を停止して高圧ポンプ31を駆動して二次水洗水を第3噴射ノズル25cより噴射して、洗浄槽11の内面と電極55の仕上げ水洗を行う。
【0062】
前記一次水洗水の使用時には流路切替弁13を切り替えて一次水洗水排水管36と連通し、使用済みの一次水洗水を排水タンク35にためる。二次水洗水の使用時には流路切替弁13を切り替えて二次水洗水排水管39に導入し、ポンプ40を駆動して一次水洗用タンク20内に戻している。
【0063】
前記洗浄槽11および電極55の洗浄を終了した後、第1噴射ノズル25aと第2噴射ノズル25bとから金型90に対して上方と下方とから水洗水を噴射して水洗を行う。
該金型90の水洗いは、前記洗浄槽11および電極55の水洗いと同様に、まず、一次水洗水を低圧で噴射し、次ぎに二次水洗水を高圧で噴射して行う。
其の際、使用済みの一次水洗水は排水タンク35に溜める一方、使用済みの二次水洗水は一次水洗用タンク20に戻して、再利用している。
【0064】
前記のように金型90を一次水洗、二次水洗した後、アルゴンガスボンべ42に接続した配管43の開閉弁45を開き、噴射ノズル44からアルゴンガスを金型90に向けて噴射している。なお、乾燥時だけでなく、洗浄時からアルゴンガスを噴射ノズル44から少量づつ噴射し、蓋50により密閉された洗浄空間の空気を少しずつ追い出してアルゴンガス雰囲気としてもよい。
【0065】
アルゴンガスを金型90に向けて噴射して、金型90を乾燥させた後、蓋50を開き、保持カゴ75を洗浄槽11より取り出して、洗浄後の金型90を取り出している。
【0066】
図8は第一実施形態の変形例を示し、金型の保持カゴ75には、金型90’を傾斜保持するための置き台78a、78bを底面に付設している。
なお、洗浄槽の底面に配置したシリンダ(図示せず)を配置し、電解洗浄中にはシリンダを作動させずに、保持カゴの底面を水平に保持しておき、水洗および乾燥時に前記シリンダを上昇させて保持カゴを傾斜させてもよい。さらに、シリンダの昇降を繰り返して、傾斜姿勢と水平姿勢とを交互に繰り返すように揺動させてもよい。
さらに、洗浄槽の底面にモータで回転駆動される回転板を配置し、該回転板上に保持カゴを載置し、水洗時および乾燥時に回転板で保持カゴを回転させてもよい。
【0067】
図9は第二実施形態を示す。該第二実施形態では、洗浄層11の底壁内面に導電板200を配置し、金型90を保持カゴで保持せずに、直接に洗浄槽11内に挿入し導電板200上に載置している。該構成とすると、導電板200を介して金型にマイナス側を接続することができる。他の構成は第一実施形態と同様であるため、同一符号を付して説明を省略する。
なお、保持カゴで保持せずに金型を洗浄槽内に直接挿入する場合には、金型を所要姿勢で保持するガイド台を洗浄槽内に着脱自在に挿入配置することが好ましい。洗浄装置を特定の金型専用の洗浄装置とする場合には、該金型に適した形状のガイド台を洗浄槽内に一体的に設けておいてもよい。
【0068】
さらに、乾燥時にアルゴンガスを噴射する変わりに、ブロアで吸い込んだエアをフィルターを通した清浄空気を蓋50で密閉された洗浄空間内の金型に噴射してもよい。さらにまた、清浄空気に変えて、前記密閉空間内の空気を吸引して真空としてもよい。
【0069】
図10は第三実施形態を示し、前記使用済みの第一水洗水が溜められる排水タンク35に更に配管250を接続して蒸留器251を接続している。該蒸留器251により排水された使用済みの一次水洗水を蒸留して、含有されるアルカリ成分を蒸発させると共に残留した水を清浄水として再利用できるようにしている。
【0070】
図11(A)(B)は第三実施形態の変形例を示し、(A)が蒸留器251を直列に接続して、一度で清浄な蒸留水とできない場合に複数の蒸留器に通して清浄水を得るようにしている。
(B)は排水される使用済みの一次水洗水が多い場合に、並列させた複数の蒸留器251に分散させて通して、清浄な蒸留水を得るようにしている。
勿論、並設させた蒸留器にそれぞれ複数の蒸留器を直列接続してもよい。
【0071】
図12は第四実施形態を示し、ケース11内には、洗浄槽11の側部から該洗浄槽11からオーバーフローする使用済みの電解洗浄液Q1を受容するオーバーフロー槽290を配置している。該オーバーフロー槽には、洗浄液中の金属イオン回収用のプラス側電極板292Aとマイナス側電極板292Bとを近接対向配置して吊り下げ、これら電極板292Aと292Bとの洗浄槽11内の電解洗浄用電極55に導通する電圧よりも低い電圧を印加している。これら電極板292A、292Bは鉄あるいはステンレスより形成している。
該構成とすることにより、電解洗浄液Q1に含まれる金属イオンをマイナス側の電極板292Bに吸着して回収している。
【0072】
図13は第四実施形態の変形例を示し、本洗浄装置の洗浄層11と配管290を介してオーバーフロー槽290を別置きしている。該オーバーフロー槽290の内面にはプラス側給電板292Aとマイナス側給電板292Bとを対向して取り付けて、前記洗浄槽の金型に供給する電圧よりも低電圧を導通させ、オーバーフローする電解洗浄液中の金属イオンを前記給電板292に付着させて回収できる構成としている。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明に係わる洗浄装置および洗浄方法は、実施形態に記載の合成樹脂用金型に限定されず、ゴム成形用、ガラス成形用等の金型の洗浄にも好適に用いることができる。
また、フラットディスプレイの導光板等の精密成形品を成形するためのニッケル金型の洗浄に用いた場合において、高精度の洗浄能力を発揮できるものである。よって、高度化する精密品、例えば、CD−ROM、DVD−ROM、スパーマルチドライブRAM、HDDVDピックアップレンズ、ブルーレイディスクピックアップレンズ、液状デイスプレイホログラム・プリズム、デジタルカメラ液状ホログラム・プリズム、携帯電話CCDカメラレンズ、各種導光板等を成形するための精密部品成形用金型の洗浄に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第一実施形態の全体斜視図である。
【図2】全体概略構成図である。
【図3】配管系を示す図面である。
【図4】(A)は洗浄槽を示す斜視図、(B)洗浄槽に金型の保持カゴを取り付けた状態を示す斜視図である。
【図5】蓋を示す斜視図である。
【図6】蓋を開いた状態を示す斜視図である。
【図7】金型洗浄状態を示す概略図である。
【図8】第一実施形態の変形例を示す図面である。
【図9】第二実施形態を示す概略図である。
【図10】第三実施形態を示す概略図である。
【図11】(A)(B)は第三実施形態の変形例を示す図面である。
【図12】第四実施形態を示す概略平面図である。
【図13】第四実施形態の変形例を示す概略図である。
【図14】従来例を示す図面である。
【図15】他の従来例を示す図面である。
【符号の説明】
【0075】
10 ケース
11 洗浄槽
12 電解洗浄水用タンク
20 一次水洗用タンク
21 二次水洗用タンク
27〜29 噴射ノズル
30 低圧ポンプ
31 高圧ポンプ
35 排水タンク
42 アルゴンガスボンペ
50 蓋
55 電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型の電解洗浄、水洗、乾燥を順次連続的に行う1つの洗浄槽と、
前記洗浄槽内に供給される電解洗浄液内に浸漬させる電解洗浄用の電極と、
前記洗浄槽内に挿入する金型と接触させ、前記電極と電解洗浄液および金型を介して通電させて電解洗浄を行わせる給電手段と、
前記洗浄槽の上面開口を閉鎖する蓋と、
前記金型の電解洗浄後に洗浄槽内から電解洗浄液を排出する手段と、
前記洗浄槽内の洗浄後の金型の水洗用として水洗水を給排する手段と、
前記洗浄槽内の水洗後の金型の乾燥用として清浄空気、真空あるいは不活性ガスからなる気体を給排する手段と、
を備えていることを特徴とする一槽式の金型洗浄装置。
【請求項2】
前記金型と接触して金型に通電する給電手段として、前記金型を保持して洗浄槽内に挿入する金属製多孔質材からなる保持カゴあるいは、前記洗浄槽内の内面に配置して該洗浄槽内に入れる金型と接触させる導電板を備え、
前記保持カゴあるいは導電板を電源のマイナス側、前記電極をプラス側と接続している請求項1に記載の一槽式の金型洗浄装置。
【請求項3】
前記水洗水の給排手段として、電解洗浄液用タンクと、該電解洗浄液用タンクと前記洗浄槽との間に介設される電解洗浄液給排用配管と、水洗用の一次水洗用水タンクおよび二次水洗用水タンクと、これら一次水洗用水タンクおよび二次水洗用水タンクと前記洗浄槽との間に介設される水洗水給排用配管と、前記水洗水を電解洗浄槽内に噴射する噴射ノズルを備え、
前記乾燥用の気体の給排手段として、前記清浄空気発生手段、真空発生手段、あるいは不活性ガスのボンべと、これらを前記洗浄槽との間に介設する乾燥気体供給用配管を備え、
さらに、前記水洗水を所要温度に加熱するヒータと、前記清浄空気、あるいは不活性ガスを所要温度に加熱するヒータを備えている請求項1または請求項2に記載の一槽式の金型洗浄装置。
【請求項4】
前記水洗水給排用配管は、
前記一次水洗用タンクと二次水洗用タンクに夫々接続する分岐管を合流させて前記洗浄槽の上面開口へと延在させ、該洗浄槽に一次水洗水および二次水洗水を供給する供給側配管と、
使用済み一次水洗水を洗浄槽から排出する排水管と、
使用済み二次水洗水を一次水洗用水タンクヘ送給する循環管とからなり、
前記一次水洗用タンクと接続される供給側配管の分岐管に低圧ポンプを介設すると共に前記二次水洗用タンクと接続される供給側配管の分岐管に高圧ポンプを介設し、
前記噴射ノズルは一次水洗水を低圧噴射すると共に二次水洗水を高圧噴射する構成としている請求項3に記載の一槽式の金型洗浄装置。
【請求項5】
前記排水管から送給される前記使用済み一次水洗水用の排水タンクと、該排水タンクに接続される蒸留器を備え、前記使用済み一次水洗水を該蒸留器で蒸発させると共に清浄水として取得できる構成としている請求項4に記載の一槽式の金型洗浄装置。
【請求項6】
前記一次水洗用タンクと二次水洗用タンクに接続した前記供給側配管は、前記洗浄槽側で分岐し、各分岐管の先端に夫々噴射ノズルを取り付け、
前記噴射ノズルは、前記洗浄槽の周壁内面の上側と下側とに配置して金型に上方から水洗水を噴射する第1噴射ノズルと、金型に下方から上向きに水洗水を噴射する第2噴射ノズルからなる請求項3乃至請求項5のいずれか1項に記載の一槽式の金型洗浄装置。
【請求項7】
前記第1、第2噴射ノズルと対向側の周壁内面に第3噴射ノズルを配置し、該第3噴射ノズルは洗浄槽内面および前記電極の洗浄用として前記一次水洗水および二次水洗水を噴射させるものとしている請求項6に記載の一槽式の金型洗浄装置。
【請求項8】
前記洗浄槽からオーバーフローする電解洗浄液の回収槽を付設し、該回収槽にオーバーフロー液中の金属イオン吸着用の電極板を配置し、あるいは、
前記洗浄槽内または前記電解洗浄液用タンク内に、電解洗浄液中の金属イオンを吸着する電極板を配置している請求項2乃至請求項7のいずれか1項に記載の一槽式の金型洗浄装置。
【請求項9】
前記洗浄槽には超音波発生装置を付設し、洗浄時に電解洗浄と超音波洗浄とを行う構成としている請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の一槽式の金型洗浄装置。
【請求項10】
前記電解洗浄液給排管に循環用ポンプを介設すると共に、前記乾燥気体供給用配管に開閉弁を介設し、
前記循環用ポンプ、開閉弁、さらに、前記低圧ポンプ、高圧ポンプ、ヒータ、電極と保持手段への給電、さらに前記超音波発生手段の動作を自動制御するコントローラを付設している請求項3乃至請求項9のいずれか1項に記載の一槽式の金型洗浄装置。
【請求項11】
前記蓋に前記電解洗浄用の電極を取り付けている請求項1乃至請求項10のいずれか1項の記載の一槽式の金型洗浄装置。
【請求項12】
前記洗浄される金型の保持カゴあるいは前記洗浄槽の内部に、金型を傾斜姿勢等の所要の姿勢で保持できる機構を、揺動、回転可能に設けている請求項2乃至請求項11のいずれか1項に記載の一槽式の金型洗浄装置。
【請求項13】
ニッケルメッキ金型、ニッケル合金メッキ金型、ニッケル板表面貼付金型、ニッケル合金板表面貼付金型あるいはニッケルで形成された金型からなるニッケル金型、
フラットパネルディスプレイの導光板の射出成型用金型、レンズの射出成型用の金型、車両用レフレクターの射出成型用の金型、あるいは/および
水洗後に払拭せずに乾燥のみを行う鏡面金型、
の洗浄用である請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載の一槽式の金型洗浄装置。
【請求項14】
前記電解洗浄用の電極は、プラチナ(白金)、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、金、銀の貴金属、あるいはこれら貴金属の合金のうちの1種または複数種の金属、前記金属で被覆されたものからなる請求項1乃至請求項13のいずれか1項に記載の一槽式の金型洗浄装置。
【請求項15】
前記電解洗浄時に前記洗浄槽に供給される洗浄液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムから選択された1以上を含む強アルカリ成分と、EDTA4ナトリウム塩からなるキレート剤と、有機窒素あるいは無機窒素からなる酸化物除去成分と、グルコン酸ナトリウムとを含むものである請求項1乃至請求項14のいずれか1項に記載の一槽式の金型洗浄装置。
【請求項16】
請求項1乃至請求項15のいずれか1項に記載の一槽式の金型洗浄装置で行う金型洗浄方法であって、
前記洗浄槽内に前記給電手段と接触させて金型を挿入すると共に電解洗浄液を供給し、
洗浄槽に前記蓋でカバーした状態で電解洗浄を行い、
電解洗浄後に電解洗浄液を排出し、
前記一次水洗水を洗浄槽内の電解洗浄後の金型に供給して一次水洗いを行い、
前記使用後の一次水洗水を洗浄槽から排出し、
前記二次水洗水を洗浄槽内の一次水洗後の金型に供給して二次水洗いを行い、
前記使用後の二次水洗水を洗浄槽から排出して前記一次水洗用タンクに循環させ、
清浄空気、真空あるいは不活性ガスを洗浄槽内の二次水洗後の金型に吹き付けて乾燥させている金型洗浄方法。
【請求項17】
前記一次水洗いは一次水洗水を低圧で金型に噴射し、
前記二次水洗いは二次水洗水を高圧で金型に噴射している請求項16に記載の金型洗浄方法。
【請求項18】
前記電解洗浄液の排出後で、前記一次水洗水を噴射する前に、
前記洗浄槽の内面および電極を洗浄するため前記一次水洗水を噴射し、該一次水洗水の噴射後に二次水洗水を噴射している請求項16および請求項17に記載の金型洗浄方法。
【請求項19】
前記一次水洗水および二次水洗水を常温から80℃の範囲で調節して、前記洗浄槽に供給している請求項16乃至請求項18のいずれか1項に記載の金型洗浄方法。
【請求項20】
前記不活性ガスを常温から80℃の範囲で調節して、前記洗浄槽に供給している請求項16乃至請求項19のいずれか1項に記載の金型洗浄方法。
【請求項21】
前記電解洗浄液を約30℃〜60℃に加熱している請求項16乃至請求項20のいずれか1項に記載の金型洗浄方法。
【請求項22】
前記電解洗浄時に超音波洗浄を併用し、超音波周波数を30KHz〜100KHzの範囲としている請求項16乃至請求項21のいずれか1項に記載の金型洗浄方法。
【請求項1】
金型の電解洗浄、水洗、乾燥を順次連続的に行う1つの洗浄槽と、
前記洗浄槽内に供給される電解洗浄液内に浸漬させる電解洗浄用の電極と、
前記洗浄槽内に挿入する金型と接触させ、前記電極と電解洗浄液および金型を介して通電させて電解洗浄を行わせる給電手段と、
前記洗浄槽の上面開口を閉鎖する蓋と、
前記金型の電解洗浄後に洗浄槽内から電解洗浄液を排出する手段と、
前記洗浄槽内の洗浄後の金型の水洗用として水洗水を給排する手段と、
前記洗浄槽内の水洗後の金型の乾燥用として清浄空気、真空あるいは不活性ガスからなる気体を給排する手段と、
を備えていることを特徴とする一槽式の金型洗浄装置。
【請求項2】
前記金型と接触して金型に通電する給電手段として、前記金型を保持して洗浄槽内に挿入する金属製多孔質材からなる保持カゴあるいは、前記洗浄槽内の内面に配置して該洗浄槽内に入れる金型と接触させる導電板を備え、
前記保持カゴあるいは導電板を電源のマイナス側、前記電極をプラス側と接続している請求項1に記載の一槽式の金型洗浄装置。
【請求項3】
前記水洗水の給排手段として、電解洗浄液用タンクと、該電解洗浄液用タンクと前記洗浄槽との間に介設される電解洗浄液給排用配管と、水洗用の一次水洗用水タンクおよび二次水洗用水タンクと、これら一次水洗用水タンクおよび二次水洗用水タンクと前記洗浄槽との間に介設される水洗水給排用配管と、前記水洗水を電解洗浄槽内に噴射する噴射ノズルを備え、
前記乾燥用の気体の給排手段として、前記清浄空気発生手段、真空発生手段、あるいは不活性ガスのボンべと、これらを前記洗浄槽との間に介設する乾燥気体供給用配管を備え、
さらに、前記水洗水を所要温度に加熱するヒータと、前記清浄空気、あるいは不活性ガスを所要温度に加熱するヒータを備えている請求項1または請求項2に記載の一槽式の金型洗浄装置。
【請求項4】
前記水洗水給排用配管は、
前記一次水洗用タンクと二次水洗用タンクに夫々接続する分岐管を合流させて前記洗浄槽の上面開口へと延在させ、該洗浄槽に一次水洗水および二次水洗水を供給する供給側配管と、
使用済み一次水洗水を洗浄槽から排出する排水管と、
使用済み二次水洗水を一次水洗用水タンクヘ送給する循環管とからなり、
前記一次水洗用タンクと接続される供給側配管の分岐管に低圧ポンプを介設すると共に前記二次水洗用タンクと接続される供給側配管の分岐管に高圧ポンプを介設し、
前記噴射ノズルは一次水洗水を低圧噴射すると共に二次水洗水を高圧噴射する構成としている請求項3に記載の一槽式の金型洗浄装置。
【請求項5】
前記排水管から送給される前記使用済み一次水洗水用の排水タンクと、該排水タンクに接続される蒸留器を備え、前記使用済み一次水洗水を該蒸留器で蒸発させると共に清浄水として取得できる構成としている請求項4に記載の一槽式の金型洗浄装置。
【請求項6】
前記一次水洗用タンクと二次水洗用タンクに接続した前記供給側配管は、前記洗浄槽側で分岐し、各分岐管の先端に夫々噴射ノズルを取り付け、
前記噴射ノズルは、前記洗浄槽の周壁内面の上側と下側とに配置して金型に上方から水洗水を噴射する第1噴射ノズルと、金型に下方から上向きに水洗水を噴射する第2噴射ノズルからなる請求項3乃至請求項5のいずれか1項に記載の一槽式の金型洗浄装置。
【請求項7】
前記第1、第2噴射ノズルと対向側の周壁内面に第3噴射ノズルを配置し、該第3噴射ノズルは洗浄槽内面および前記電極の洗浄用として前記一次水洗水および二次水洗水を噴射させるものとしている請求項6に記載の一槽式の金型洗浄装置。
【請求項8】
前記洗浄槽からオーバーフローする電解洗浄液の回収槽を付設し、該回収槽にオーバーフロー液中の金属イオン吸着用の電極板を配置し、あるいは、
前記洗浄槽内または前記電解洗浄液用タンク内に、電解洗浄液中の金属イオンを吸着する電極板を配置している請求項2乃至請求項7のいずれか1項に記載の一槽式の金型洗浄装置。
【請求項9】
前記洗浄槽には超音波発生装置を付設し、洗浄時に電解洗浄と超音波洗浄とを行う構成としている請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の一槽式の金型洗浄装置。
【請求項10】
前記電解洗浄液給排管に循環用ポンプを介設すると共に、前記乾燥気体供給用配管に開閉弁を介設し、
前記循環用ポンプ、開閉弁、さらに、前記低圧ポンプ、高圧ポンプ、ヒータ、電極と保持手段への給電、さらに前記超音波発生手段の動作を自動制御するコントローラを付設している請求項3乃至請求項9のいずれか1項に記載の一槽式の金型洗浄装置。
【請求項11】
前記蓋に前記電解洗浄用の電極を取り付けている請求項1乃至請求項10のいずれか1項の記載の一槽式の金型洗浄装置。
【請求項12】
前記洗浄される金型の保持カゴあるいは前記洗浄槽の内部に、金型を傾斜姿勢等の所要の姿勢で保持できる機構を、揺動、回転可能に設けている請求項2乃至請求項11のいずれか1項に記載の一槽式の金型洗浄装置。
【請求項13】
ニッケルメッキ金型、ニッケル合金メッキ金型、ニッケル板表面貼付金型、ニッケル合金板表面貼付金型あるいはニッケルで形成された金型からなるニッケル金型、
フラットパネルディスプレイの導光板の射出成型用金型、レンズの射出成型用の金型、車両用レフレクターの射出成型用の金型、あるいは/および
水洗後に払拭せずに乾燥のみを行う鏡面金型、
の洗浄用である請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載の一槽式の金型洗浄装置。
【請求項14】
前記電解洗浄用の電極は、プラチナ(白金)、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、金、銀の貴金属、あるいはこれら貴金属の合金のうちの1種または複数種の金属、前記金属で被覆されたものからなる請求項1乃至請求項13のいずれか1項に記載の一槽式の金型洗浄装置。
【請求項15】
前記電解洗浄時に前記洗浄槽に供給される洗浄液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムから選択された1以上を含む強アルカリ成分と、EDTA4ナトリウム塩からなるキレート剤と、有機窒素あるいは無機窒素からなる酸化物除去成分と、グルコン酸ナトリウムとを含むものである請求項1乃至請求項14のいずれか1項に記載の一槽式の金型洗浄装置。
【請求項16】
請求項1乃至請求項15のいずれか1項に記載の一槽式の金型洗浄装置で行う金型洗浄方法であって、
前記洗浄槽内に前記給電手段と接触させて金型を挿入すると共に電解洗浄液を供給し、
洗浄槽に前記蓋でカバーした状態で電解洗浄を行い、
電解洗浄後に電解洗浄液を排出し、
前記一次水洗水を洗浄槽内の電解洗浄後の金型に供給して一次水洗いを行い、
前記使用後の一次水洗水を洗浄槽から排出し、
前記二次水洗水を洗浄槽内の一次水洗後の金型に供給して二次水洗いを行い、
前記使用後の二次水洗水を洗浄槽から排出して前記一次水洗用タンクに循環させ、
清浄空気、真空あるいは不活性ガスを洗浄槽内の二次水洗後の金型に吹き付けて乾燥させている金型洗浄方法。
【請求項17】
前記一次水洗いは一次水洗水を低圧で金型に噴射し、
前記二次水洗いは二次水洗水を高圧で金型に噴射している請求項16に記載の金型洗浄方法。
【請求項18】
前記電解洗浄液の排出後で、前記一次水洗水を噴射する前に、
前記洗浄槽の内面および電極を洗浄するため前記一次水洗水を噴射し、該一次水洗水の噴射後に二次水洗水を噴射している請求項16および請求項17に記載の金型洗浄方法。
【請求項19】
前記一次水洗水および二次水洗水を常温から80℃の範囲で調節して、前記洗浄槽に供給している請求項16乃至請求項18のいずれか1項に記載の金型洗浄方法。
【請求項20】
前記不活性ガスを常温から80℃の範囲で調節して、前記洗浄槽に供給している請求項16乃至請求項19のいずれか1項に記載の金型洗浄方法。
【請求項21】
前記電解洗浄液を約30℃〜60℃に加熱している請求項16乃至請求項20のいずれか1項に記載の金型洗浄方法。
【請求項22】
前記電解洗浄時に超音波洗浄を併用し、超音波周波数を30KHz〜100KHzの範囲としている請求項16乃至請求項21のいずれか1項に記載の金型洗浄方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−15229(P2007−15229A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−199449(P2005−199449)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(593047415)ソマックス株式会社 (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(593047415)ソマックス株式会社 (8)
【Fターム(参考)】
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