説明

金型装置

【課題】固定型に形成された二個のゲート口は、ゲート跡が楕円形状に形成されている。その結果、ゲートが弾性筒体から切り離される際、楕円形状の口縁部側のゲート口によって切断されるため、切断方向のせん断力がゲート中心方向に向くため、局部的な残留応力過多を生じてしまう危険性があったので、ゲート跡周辺にひずみが生じない金型装置を提供する。
【解決手段】製品の外面を形成するキャビティーと、製品の内面を形成するコアピン14とからなる金型装置であって、そのコアピンにゲート溝21とゲート口を連続して形成すると共に、前記キャビティーとコアピンとが相対的に移動することによって成形品とゲートとが切断される金型装置において、前記ゲート口を略四角形状とし、そのゲート口の各稜線であって、ゲートが切断される方向と直交する方向の稜線24を直線状に形成した金型装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具、化粧品などの筒状の成形品の外形部を形成するキャビティーと成形品の内形部を形成するコアピンからなる金型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、弾性材料からなる筒状の筆記具用の軸用外装体の成形方法において、成形用金型は、弾性筒体の内周面の先端側を形取った凸部を有する固定型、弾性筒体の外周面を形取った割型の可動型、同弾性筒体の内周面の後端側を形取ったコアピン型等が組み合わされることで、その内部に筒状のキャビティーを形成し、前記固定型の凸部内には、二個の先細のサブランナー通路が、主ランナー通路に連続して形成され、これらサブランナー通路の各先端部には、前記キャビティーへ臨むゲート口が形成され、前記成形用金型の内部に形成された筒状の前記キャビティー内に、前記固定型の前記ゲート口から溶融弾性材料を射出することで、前記キャビティー内で成形された弾性筒体の内周面に、ランナーのサブランナー部分を延出させてこのサブランナーのゲート部分を位置させ、そして、射出成形された前記弾性筒体を、前記固定型、前記可動型、前記コアピン型の順序で型抜きし、この際における前記固定型の型抜きのときに、前記固定型を、前記弾性筒体の軸方向に沿って前記主ランナー通路側へ型抜きし、前記ゲート口の口縁部により前記ランナーのゲート部分を切離するよう筆記具用の軸用外装体の成形方法が知られている。
【特許文献1】特許第3519997号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の技術にあっては、固定型に形成された二個のゲート口は、ゲート跡が楕円形状に形成されている。その結果、ゲートが弾性筒体から切り離される際、楕円形状の口縁部側のゲート口によって切断されるため、切断方向のせん断力がゲート中心方向に向くため(図11参照)、ゲート跡周辺にひずみが生じてしまい、局部的(ゲートの中心)な残留応力過多を生じてしまう危険性があった。
そして、局部的な残留応力過多を生じた状態の筒体を、例えば、筆記具のねじや圧入などで固定される軸として使用した場合には、ゲート跡部の局部的な残留応力過多により発生した微細なクラックが大きなクラックへと成長し、割れにつながる危険性があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで、本発明は、製品の外面を形成するキャビティーと、製品の内面を形成するコアピンとからなる金型装置であって、そのコアピンにゲート溝とゲート口を連続して形成すると共に、前記キャビティーとコアピンとが相対的に移動することによって成形品とゲートとが切断される金型装置において、前記ゲート口を略四角形状とし、そのゲート口の各稜線であって、ゲートが切断される方向と直交する方向の稜線を直線状に形成したことを要旨とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、製品の外面を形成するキャビティーと、製品の内面を形成するコアピンとからなる金型装置であって、そのコアピンにゲート溝とゲート口を連続して形成すると共に、前記キャビティーとコアピンとが相対的に移動することによって成形品とゲートとが切断される金型装置において、前記ゲート口を略四角形状とし、そのゲート口の各稜線であって、ゲートが切断される方向と直交する方向の稜線を直線状に形成したので、ゲート切断時に稜線を切断開始点としているため、ひずみの方向が一定となり、局部的な残留応力過多を極力防止することができる。これにより、クラックなどが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の使用例を示す縦断面図。
【図2】図1の要部拡大図。
【図3】後軸の要部拡大図。
【図4】成形動作を示す縦断面図。
【図5】図4の要部拡大図。
【図6】コアピンの要部拡大図。
【図7】図6のA−A断面図。
【図8】成形動作を示す縦断面図。
【図9】成形動作を示す縦断面図。
【図10】成形動作を示す縦断面図。
【図11】従来例のゲート切断面拡大図。
【図12】本発明のゲート切断面拡大図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、具体的な構成を図1〜図3に示し説明する。ボールペンリフィル1が出没可能に配置されたボールペン2である。射出成型によって成形された樹脂材料からなる筒状の後軸3の前部には、前軸4が螺合の手段によって着脱自在に取り付けられているが、圧入構造を利用した固定手段であっても良い。前記樹脂材料の一例としては、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、アクリロニトリルスチレン共重合体、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリプロピレンなどが挙げられる。
また、前記後軸3の内孔5の前端には、その内孔5の領域で最も大径な大径筒部6が形成されている。
【0008】
ここで、前記後軸3の大径筒部6には、射出成型の際に形成されるゲート切断面7が位置している。本例においては、そのゲート切断面7が2箇所となっているが、1箇所であっても良い。しかし、射出成型における樹脂の流入安定性を考慮すれば、ゲート切断面7を2個所や3箇所と等間隔な位置に形成するのが好ましい。
尚、前軸4の後軸3に対する螺合部は、中径筒部8に位置している。つまり、万が一、微細な突状のゲート切断面7が大径筒部6に残存してしまった場合においても、螺合部よりも大径な部分に微細な突状のゲート切断面7が位置するため、螺合作用に影響が出ないものとなっている。
また、本例では後軸3の螺合部分のねじの開始位置を、後軸3の前端面9から極力離間した位置に配置しているため、後軸3の前端面9への応力集中を避けることができ、割れの発生を防止している。
【0009】
次に、後軸3を成形する金型装置を図4〜図7に示し説明する。この金型装置は、可動側型板郡10と固定側型板郡11とから構成されている。前記可動側型板郡10にはキャビティープレート12が位置しており、そのキャビティープレート12には後軸3の外形を形成するキャビティーブロック13が配置されている。また、そのキャビティーブロック13には後軸3の内形を形成するコアピン14が挿入している。そのコアピン14と前記キャビティーブロック13とによって後軸3が成形されるキャビティー15が構成される。
一方、固定側型板郡11には、成形品排出プレート16とランナー排出プレート17、並びに、コアピンプレート18などが位置している。成形品排出プレート16には、ランナーブロック19が前記コアピン14に対して摺動自在に配置されており、そのランナーブロック19内面には、ランナー溝20が形成されている。
ここで、前記コアピン14の中間部の側面には、ランナーブロック19のランナー溝20と連通するゲート溝21が形成されている。そのゲート溝21は、前記キャビティー15とも連通しており、その連結部がゲート口23となっている。即ち、ゲート溝21は後軸内孔5と成形品排出プレート16に跨った状態で配置されている。これにより、ランナー22とゲート口23は成形品排出プレート16とランナー排出プレート17の間から取り出しが可能となり、前記後軸3とランナー22、並びに、ゲート口23は別々に取り出すことが出来る。
前記ゲート溝21はコアピン14を側面から見たときに略長方形状となるように彫りこまれている(図6参照)。その長方形状のゲート溝21を構成する穴の内辺は、略直線状を成しているが、角部においては円弧状を成している。ここで、そのゲート溝21を構成する稜線(内辺)の内、ゲート切断方向と直交する稜線(内辺)24と、直交しない稜線(内辺)25とのなす角度αを90度以下としている。稜線24と稜線25とのなす角度を90度以下にすることによって、ゲート切断時に直行しない稜線25からのひずみが発生せず、直行する稜線24だけを起点としてゲート切断が開始されるのである。
そして、ゲート溝21の縦断面形状においては、ゲート口23に向かい徐々に溝が深く形成されているが、その底部は複数の角度からなる直線状の底部(21a、21b)と円弧部(21c)とから形成されている(図5参照)。さらに、ゲート溝21の横断面形状においても台形状を成しており、その各内辺は直線状を成している(図7参照)。ゲート溝21の横断面形状も台形状にすることによって、ランナー排出時にゲート口23がゲート溝21から抵抗なく離型できる。
更には、ランナー溝20においてもゲート溝21と同様に離型性の向上のため、縦断面形状が台形となっている。本例においては離型性の向上のため、ゲート溝21、及びランナー溝20の断面形状は台形状となるように彫りこまれているが、本例に限らず、断面形状は正方形や長方形、或いは、円弧状であっても良い。
【0010】
次に動作について説明する。図4に示す状態で、キャビティー15内に樹脂を流入させ、後軸3を成形するが、この時、ランナー溝20、並びにゲート溝21でもランナー22、ゲート口23として成形される。
ここで、可動側型板群10と固定側型板郡11を拡開させるとコアピン14に後軸3が抱き付いた状態で露出する。
さらに、可動側型板郡10を拡開させると、その拡開動作の過程で成形品排出プレート16が移動される。即ち、後軸3の移動が阻止されるが、コアピン14は後軸3から離隔することになる。このとき、ランナー22やゲート23も移動しようとするが、コアピン14への圧着力とランナーロックピンの固定によって、移動が規制され、コアピン14のゲート溝21の切断方向と直行する稜線24とランナーブロック19の貫通孔の内面角部26によって剪断応力が発生し、その結果、ゲート口23が切断される(図9参照)。
さらに、可動側型板郡10を拡開させると、その拡開動作の過程でランナー排出プレート17が移動される。即ち、ランナー22やゲート口23が移動され、コアピン14はランナー22などから離隔することになる。これによって、ランナー22やゲート口23がコアピン14から離脱する(図10参照)。
【0011】
次にゲート切断時にゲート口23にかかる応力について説明する。図11は背景技術で説明したゲート切断面11aの拡大図である。そのゲート切断面7は楕円形状をなしており、ゲートを切断する際、そのゲートの切断方向のせん断応力はゲートの中心方向へ向いてしまう。その結果、中心方向へ向いたせん断応力はゲート中心付近にひずみとして残存し、局部的(ゲートの中心)な残留応力過多が生じてしまう。
これに対し、本願発明におけるゲート切断面7は略四角形状をなしており(図12参照;本願発明のゲート切断面7の拡大図。)、ゲートの切断方向のせん断応力は、ゲート切断面稜線の内、切断方向と直行する稜線24を起点として、ゲート切断方向のみにせん断応力が発生し、応力過多を生じずに、即ち、せん断応力が略均一に発生することになり綺麗に切断させることになる。
【0012】
こうして得られた後軸3のゲート口23が位置していたゲート切断面7は、応力過多を生じずに切断される。よって、筆記具のねじや圧入などで固定される軸として使用した場合に、残留応力過多を原因とする割れが防止される。
【符号の説明】
【0013】
1 ボールペンリフィル
2 ボールペン
3 後軸
4 前軸
5 内孔
6 大径筒部
7 ゲート切断面
8 中径筒部
9 前端面
10 可動側型板郡
11 固定側型板郡
12 キャビティープレート
13 キャビティーブロック
14 コアピン
15 キャビティー
16 成形品排出プレート
17 ランナー排出プレート
18 コアピンプレート
19 ランナーブロック
20 ランナー溝
21 ゲート溝
22 ランナー
23 ゲート口
24 ゲート切断方向と直行する稜線
25 ゲート切断方向と直行しない稜線
26 内面角部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品の外面を形成するキャビティーと、製品の内面を形成するコアピンとからなる金型装置であって、そのコアピンにゲート溝とゲート口を連続して形成すると共に、前記キャビティーとコアピンとが相対的に移動することによって成形品とゲートとが切断される金型装置において、前記ゲート口を略四角形状とし、そのゲート口の各稜線であって、ゲートが切断される方向と直交する方向の稜線を直線状に形成したことを特徴とする金型装置。
【請求項2】
前記ゲート口であって、切断方向と直交する稜線と、直交しない稜線とのなす角度を90度以下としたことを特徴とする、請求項1記載の金型装置。
【請求項3】
前記ゲート口をコアピンに対して離型方向に傾斜させたことを特徴とする請求項1、或いは、請求項2に記載の金型装置。
【請求項4】
前記ランナー溝の断面を台形形状とした請求項1〜請求項3の何れかに記載の金型装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−111889(P2013−111889A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261193(P2011−261193)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】