説明

金型開閉作動力を用いたバルブ開閉機構

【課題】 駆動例の可動型の移動力と製品突き出し機構を用いて、バルブの開閉を行うことにより、外部のコントローラやエア回路を使わずにバルブ開閉できるようにした金型開閉作動力を用いたバルブ開閉機構の提供。
【解決手段】 固定型1に設けられるキャビティを形成する一方の凹型部14、可動型3の前方に設けられるコアプレート16に、前記凹型部14と係合し、キャビティを形成する他方の凸型部17、固定型1に内設され、常時固定型1の凹型部14に向かって働く押圧力を備えた可動プレート10、可動プレート10に一端を連結されてゲートを開閉するバルブピン9、前記可動型1に設けられてコアプレート10を縦装させた駆動杆15、該駆動杆15を挿込でき、前記可動プレート10に通ずる挿込孔13とより成り、キャビティに通ずるゲート8を射出成形操作の都度、開閉できるようにして成ることを特徴とする金型開閉作動力を用いたバルブ開閉機構。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形装置を対象とする金型開閉作動力を用いたバルブ開閉機構に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、熱可塑性樹脂の射出成形にあっては、金型を開閉する機構と金型のキャビティに通ずるゲートの開閉する機構とは区別しており、ゲートを開閉する機構の多くはバルブピンを用いてエア又は油圧などを用いた作動流体による制御が多い(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、金型を開閉する機構とバルブピンによるゲートの開閉制御を同期させるため、多くは高価なコントローラを付設する必要があった(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3991340号公報
【特許文献2】特開平5−31770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、従来では、通常のバルブシステムは、金型の開閉から信号を取りコントローラによりエアピストンなどの駆動力を用いてバルブピンを働かせてゲートの開閉を行っていた。
【0006】
本発明は叙上の点に着目して成されもので、駆動例の可動型の移動力と製品突き出し機構を用いて、バルブの開閉を行うことにより、外部のコントローラやエア回路を使わずにバルブ開閉できるようにした金型開閉作動力を用いたバルブ開閉機構を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は叙上の課題を解決するために以下の技術的構成を有する。
【0008】
(1)固定型に設けられるキャビティを形成する一方の凹型部、
可動型の前方に設けられるコアプレートに、前記凹型部と係合し、キャビティを形成する他方の凸型部、
固定型に内設され、常時固定型の凹型部に向かって働く押圧力を備えた可動プレート、
可動プレートに一端を連結されてゲートを開閉するバルブピン、
前記可動型に設けられてコアプレートを縦装させた駆動杆、
該駆動杆を挿込でき、前記可動プレートに通ずる挿込孔、
とより成り、キャビティに通ずるゲートを射出成形操作の都度、開閉できるようにして成ることを特徴とする金型開閉作動力を用いたバルブ開閉機構。
【0009】
(2)可動型の前方に設けられるコアプレートは、駆動杆に挿通して設けられ、かつ、コイルバネなどの弾性圧力を付与されて間隔を保持して駆動杆と従動できるようにして成ることを特徴とする前記(1)記載の金型開閉作動力を用いたバルブ開閉機構。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、金型の開閉時に作用する力を利用して、バルブピンを可動させてゲートを開閉して射出成形操作を行うことができ、きわめて簡単な構成で実施できると共に、可動型には前方に配設したコアプレートによりキャビティの一方の凸型部で形成して固定型の他方の凹型部と係合型締めを行っており、かつ可動型の駆動杆により押圧力を備える可動プレートを介してバルブピンによるゲート開閉が確実に行えるなど小規模で有効な射出成形操作を行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るバルブピン開閉機構の一実施例を示す要部構成の縦断説明図で、金型開き、バルブ閉じ状態を示す。
【図2】同上の金型半閉め・バルブ閉じ状態の縦断説明図
【図3】同上の金型完全閉じ・バルブ開き製品充填状態の縦断説明図
【図4】同上の金型開き・バルブ閉じ製品冷却状態の縦断説明図
【図5】同上の金型開き・バルブ閉じ製品の取り出し状態の縦断説明図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の一実施例を図面とともに説明する。
【実施例】
【0013】
1は射出成形機の固定型、2は前記固定型と接続される射出成形機の溶融樹脂射出用ノズル筒、3は前記固定型1と対設される可動型で、射出成形操作の都度、固定型1と接離可動する。
【0014】
前記固定型1において、4はノズル筒2と接合される溶融樹脂の主流通路、5は前記主流通路4と連通するマニホールドで、流通路6が設けられている。7は前記流通路6の両端に直交して形成される分岐路、8は分岐路7の先端に形成されるゲート、9はゲート8を開閉し、前記分岐路7内に縦装されるバルブピン、10は前記バルブピン9の基端を固定した可動プレートで、マニホールド5と隣接して固定型1内の空間室11で軸方向に移動自在に配設される、12は前記可動プレート10をゲート側に押圧してバネなどの弾性加圧体を示し、この弾性加圧体12の張力により可動プレート10を介してバルブピン9を移動させてゲート8を閉じることができる。13は挿込孔で、前記可動プレート10に通じている。14はゲート8に通ずるキャビティを形成する一方の凹型部を示す。
【0015】
次に可動型3について、15は前記挿込孔13に出入して可動プレート10と衝接して移動させることができる駆動杆、16は駆動杆15と連動し、かつ駆動杆15上を間隔wだけ前後方向に移動できるコアプレートを示し、前記固定型1の凹型部14内に係入してキャビティを形成できる凸型部17を備える。
【0016】
そして、図示ではマニホールド5で分流される溶融樹脂に対して上下一対のバルブピン9に対応して、ゲート8及び凹型部14を並設した固定型1を備えると共に、この固定型1に対して可動型3にも駆動杆15を介して凸型部17も上下一対を配設してあるが、必ずしもその構成は特定されない。
【0017】
なお、駆動杆15に挿通させたコアプレート16の前後方向への移動を制御するものとして図示ではコイルバネ18を介在させてある。
【0018】
叙上の構成に基づいて、本発明の作用を図面と共に説明する。
【0019】
図1は射出成形操作前の状態を示し、固定型1に対し、可動型3は離開し、かつコアプレート16も間隔wを置いて離開した状態である。
【0020】
この状態において、固定型1内に射出成形機の溶融樹脂射出用ノズル筒2より予め射出された溶融樹脂が主流通路4、マニホールドの流通路6、及び分岐路7内を経てバルブピンで閉塞されているゲート8まで充満している。
【0021】
この状態より可動型3が固定型1へ移行し、駆動杆15が固定型1の挿込孔13内に侵入し、コアプレート16が固定型1に当接し、凸型部17が凹型部14と係合し、型閉の操作が完了し、図示しないキャビティが形成される(図2の状態)。
【0022】
この状態では可動型3は間隔wを保持して固定型1とは離開しており、ゲート8は未だバルブピン9で閉塞されている(金型半閉め・バルブ閉じ状態)。
【0023】
そして、更に可動型3が前進し、駆動杆15が挿込孔13内を前進して、駆動杆15の先端が可動プレート10に衝接して可動プレート10を空間室11内で加圧体12に抗して移動させると、可動プレート10に接続されているバルブピン9は従動し、ゲート8を開くと同時に可動型3の前端は、既に固定型1と当接しているコアプレート16の後面と当接し、コアプレート16を介して固定型1との接合を強固にして、所謂、型締を完了する(図3の金型完全閉じ・バルブ開き製品充填状態)。
【0024】
この型締操作完了と同時に射出成形機の射出操作が遅滞なく実行される。射出された溶融樹脂は予め固定型1内に充填されている溶融樹脂を押圧し、開かれたゲート8を通り、図示しないキャビティに注入され、射出操作を完了する。
【0025】
ついで、可動型3は固定型1より離開すべく後方へ移動するが、コアプレート10はコイルバネ18の張力が働いているので、現状を維持する状態で駆動杆15の作用力から解放された可動プレート10は加圧体12の張力で空間室11内で旧の状態に帰動し、この可動プレート10に基端を連結させてあるバルブピン9も帰動し、ゲート8を閉じ、キャビティ内の成形された樹脂を確実に保持した儘の状態で冷却固化させることができる(図4の金型開き・バルブ閉じ製品冷却状態)。
【0026】
キャビティ内の成形樹脂が充分に固化された状態の後、可動型3は更に後方に移動させると、コアプレート16も駆動杆15の後方移動と従動して原位置まで帰動する。この帰動の過程で図示しないエジェクタにより凸型部17に吸着状態の製品Aを剥取して得ることができる(図5の金型開き・バルブ閉じ製品取り出し状態)。
【0027】
尚、図において、可動型3の後方に図示した矢符は可動型3の作動方向を示す。
【0028】
以上が射出成形樹脂製品を製出する一サイクルの基本的工程であり、同一操作を反覆継続して、必要数の製品を得ることができる。
【符号の説明】
【0029】
1 固定型
2 ノズル筒
3 可動型
4 溶融樹脂の主流通路
5 マニホールド
6 流通路
7 分岐路
8 ゲート
9 バルブピン
10 可動プレート
11 空間室
12 弾性加圧体
13 挿込孔
14 凹型部
15 駆動杆
16 コアプレート
17 凸型部
18 コイルバネ
A 製品
w 間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定型に設けられるキャビティを形成する一方の凹型部、
可動型の前方に設けられるコアプレートに、前記凹型部と係合し、キャビティを形成する他方の凸型部、
固定型に内設され、常時固定型の凹型部に向かって働く押圧力を備えた可動プレート、
可動プレートに一端を連結されてゲートを開閉するバルブピン、
前記可動型に設けられてコアプレートを縦装させた駆動杆、
該駆動杆を挿込でき、前記可動プレートに通ずる挿込孔、
とより成り、キャビティに通ずるゲートを射出成形操作の都度、開閉できるようにして成ることを特徴とする金型開閉作動力を用いたバルブ開閉機構。
【請求項2】
可動型の前方に設けられるコアプレートは、駆動杆に挿通して設けられ、かつ、コイルバネなどの弾性圧力を付与されて間隔を保持して駆動杆と従動できるようにして成ることを特徴とする請求項1記載の金型開閉作動力を用いたバルブ開閉機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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