説明

金属と樹脂の複合体及びその製造方法

【課題】 複合体が金属部品の表面から樹脂成形体を突出させた形態の場合でも、金属部品と樹脂成形体とを強固に固着させる。
【解決手段】 放熱板22(金属部品)の表面におけるボス42A,42B(樹脂成形体)の突出領域に、凹部を有する密着部26A,26Bを形成し、金型50内への溶融樹脂の射出により成形されるボス42A,42Bの基端部43A,43Bが密着部26A,26Bに密着している。これにより、放熱板22とボス42A,42Bとの密着面積が、放熱板の平坦な表面にボスの基端面を密着させたものに比べて広くなり、その分、放熱板22Aとボス42A,42Bとの固着強度が高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属部品の表面に樹脂成形体を突出させた形態の金属と樹脂の複合体、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属部品の表面に樹脂成形体を突出させた形態の複合体は、車両、車載ハーネス、電気部品等の種々の分野にわたって使用されているが、かかる複合体を製造する方法として、金属部品の表面に成形済みの樹脂成形体を接着剤によって固着する方法が広く採用されており、その一例が、特許文献1に開示されている。しかし、接着剤によって固着する方法では、樹脂成形体に過大な外力(機械的な負荷)が作用する環境下では、接着部分において樹脂成形体が金属部品から剥がれてしまうことが懸念される。
【0003】
このような場合、金属部品と樹脂成形体の固着強度の向上を図った手段として、インサート成形により金属部品と樹脂成形体を一体化させる方法を用いることができる。インサート成形による固着方法としては、特許文献2に開示されているものが知られている。
【特許文献1】特開2000−170615公報
【特許文献2】特開2001−204567公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インサート成形による固着方法の場合、複合体の一部に樹脂成形体が金属部品を包み込む部分が存在していれば、高い固着強度を確保することが可能である。しかし、複合体が、金属部品の表面を露出させ、その露出した金属面から樹脂成形体が突出する形態である場合には、樹脂成形体が金属部品を包み込む部分が存在しないため、十分に高い固着強度を得ることは困難である。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、複合体が金属部品の表面から樹脂成形体を突出させた形態の場合でも、金属部品と樹脂成形体とを強固に固着させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、金属部品の表面から樹脂成形体を突出させた形態の複合体であって、前記金属部品の表面における前記樹脂成形体の突出領域には、凹部又は凸部を有する密着部が形成され、前記樹脂成形体が金型内への溶融樹脂の射出により成形されているとともに、その樹脂成形体の基端部が前記密着部に密着されているところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記密着部が前記金属部品を貫通する貫通孔とされており、この貫通孔内に前記樹脂成形体の基端部が埋設されているところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のものにおいて、前記密着部が、径寸法の異なる複数の異径部を有する形態とされているところに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明は、金属部品の表面から樹脂成形体を突出させた形態の複合体を製造する方法であって、前記金属部品の表面における前記樹脂成形体の突出領域に、凹部又は凸部を有する密着部を形成し、金型を、そのキャビティが前記密着部と対応するように配置し、前記キャビティ内へ溶融樹脂を射出することで、前記樹脂成形体を成形するとともに、その成形工程において前記樹脂成形体の基端部を前記密着部に密着させることで、前記金属部品と前記樹脂成形体とを固着するところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0010】
<請求項1及び請求項4の発明>
金属部品の表面における樹脂成形体の突出領域に凹部又は凸部を有する密着部を形成し、その密着部に樹脂成形体の基端部を密着させるようにしたので、金属部品の表面に沿った剪断力が作用しても凹部又は凸部が引っ掛かりとなるため、樹脂成形体が金属部品から離脱する虞はない。また、密着部が凸部を有するものである場合及び密着部が非貫通の凹部を有するものである場合には、金属部品と樹脂成形体との密着面積が、金属部品の平坦な表面に樹脂成形体の基端面を密着させたものに比べて広くなるため、その分、金属部品と樹脂成形体との固着強度が高い。
【0011】
<請求項2の発明>
金属部品に非貫通形態の凹部を切削する加工に比べると、金属部品を貫通させるように穿孔する加工は、過去効率やコストの点で有利である。
【0012】
<請求項3の発明>
密着部が、径寸法の互いに異なる複数の異径部を有する形態とされているので、この密着部と樹脂成形体との密着部分では、貫通方向に機械的な引っ掛かりができ、高い固着強度が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1乃至図9を参照して説明する。
【0014】
本実施形態では、金属部品と樹脂成形体の複合体を電気接続箱に適用した例を説明する。電気接続箱は、回路構成体10を放熱機能を有するケース20内に収容し、ケース20の金属製の放熱板22(本発明の構成要件である金属部品)と回路構成体10とを電気的に絶縁した状態で結合した形態であり、放熱板22の表面からは、複数のボス42A,42B(本発明の構成要件である樹脂成形体)が突出した形態となっている。
【0015】
回路構成体10は、制御回路基板11と、制御回路基板11の表面(上面)側に実装されて制御回路基板11によって制御されるスイッチング部材12(例えば機械式リレースイッチ、半導体スイッチング素子など)と、制御回路基板11の裏面(下面)に沿って配されて電源に接続される金属板材からなるバスバー13(電力用導電路)とから構成される。
【0016】
制御回路基板11とバスバー13は、制御回路基板11にスイッチング部材12を実装する前の工程で、絶縁性を有する薄い粘着シート14を介して一体化されている。このとき、スイッチング部材12は実装されていないので、制御回路基板11の表面のほぼ全域に亘って均一にプレス機等で押圧することにより、粘着シート14を制御回路基板11の下面(裏面)とバスバー13の上面(表面)に対して強固に接着させることができ、この全面押圧によって制御回路基板11とバスバー13が強固に結合されている。かかる回路構成体10には、制御回路基板11とバスバー13を同軸状に上下方向(制御回路基板11の板面と直角な方向)に貫通する円形の係止孔11H,13Hが、適宜位置(スイッチング部材12が配置されていない位置)に複数形成されている。
【0017】
ケース20は、合成樹脂製の枠体21と、熱伝導率の高い金属製(例えば、アルミニウム合金)の放熱板22とから構成されている。枠体21は、制御回路基板11の外形に沿った形状であって、全周に亘って切れ目無く連続して制御回路基板11を包囲するようになっている。放熱板22は、枠体21の外形と概ね同じ形状とされ、枠体21に対してその下面側から組み付けられるようになっている。枠体21と放熱板22との間にはシール層23が形成されている。シール層23は枠体21の下面側の放熱板22との対向面の全周に亘ってシール材を塗布してから放熱板22で挟み込んで硬化させることで形成され、枠体21と放熱板22との間の全周を切れ目無く連続して密着するように形成される。枠体21の下面にシール層23を挟みこむように放熱板22を配し、下から放熱板22を貫通させたビスを枠体21の下面に螺合して締め付けると、枠体21と放熱板22とがシール層23を介して一体化されてケース20が構成される。ケース20の内部には、放熱板22の外周に沿って立ち上がる形態の枠体21とにより、上面側に開放された収容空間24が形成される。また、枠体21と放熱板22との隙間はシール層23によって液密状にシールされるため、外部からの水等の侵入が規制されると共に、収容空間24内の液体が放熱板22と枠体21との隙間を通ってケース20の外部へ流出することが規制される。
【0018】
ケース20の組付けは、ケース20に対する回路構成体10の組付けと平行して行われる。即ち、組付けに際しては、まず、枠体21に対して上から回路構成体10が嵌め込まれ、ビス止めにより回路構成体10と枠体21とが固着(合体)される。その後、枠体21の下面にシール層23を形成し、ビスにより放熱板22と枠体21を固着する。このようにしてケース20と回路構成体10を組み付けた状態では、バスバー13のうち制御回路基板11の下面側に配されている部分が、ケース20の収容空間24内に収容された状態となる。そして、この収容空間24内には防水手段としてポッティング剤25が充填され、このポッティング剤25の内部にバスバー13が埋設された状態となる。
【0019】
また、枠体21には上からカバー30が組み付けられ、このカバー30によって回路構成体10の上面側が覆い隠される。さらに、カバー30の前端部には、バスバー13のうちカバー30の前縁から前方へ突出する端子部を包囲する前部コネクタハウジング31が組み付けられ、カバー30の後端縁部にはヒューズボックス32が組み付けられ、このヒューズボックス32には、カバー30の後端縁から上方へ突出する端子部を収容する後部コネクタハウジング33が組み付けられている。
【0020】
放熱板22は、回路構成体10に通電したときにスイッチング部材12などで発生する熱をバスバー13を介して外部に放出する手段として設けられている。放熱効率を高めるためには、バスバー13と放熱板22とを接触させればよいのであるが、放熱板22は金属製であるため、放熱板22は、バスバー13から電気的に絶縁した状態、即ちバスバー13とは接触しない状態を保たなければならない。つまり、放熱効率と絶縁性を両立させるために、放熱板22とバスバー13を非接触であり且つ広い面積に亘って極力接近した位置関係にする必要がある。
【0021】
そこで本実施形態では、バスバー13の下面と放熱板22の上面との間に、電気的絶縁性を有する薄い絶縁シート40が挟み込むことで、放熱板22とバスバー13との間が電気的に絶縁された状態に保たれるようにしている。
【0022】
さらに、放熱板22とバスバー13との間隔を極力狭める手段として、放熱板22とバスバー13が離間規制状態に保持する複数のボス42Aが設けられている。このボス42Aは、合成樹脂製であって、円柱形をなし、放熱板22の上面(収容空間24に臨む面)に対し上方へ突出する形態で一体化されている。ボス42Aの位置としては、枠体21(シール層23)よりも内側の位置(制御回路基板11におけるスイッチング部材12やプリント配線が配置されていない領域)が設定されている。
【0023】
かかるボス42Aは、型内融着により放熱板22に固着されている。即ち、ボス42Aを金型成型するのと同時に放熱板22に一体化されている。固着の構造及び工程について説明すると、まず前処理として、放熱板22に円形の凹部からなる密着部26Aが切削加工により形成されている。この密着部26Aの内周面は下方に向かって縮径するテーパ状をなしており、また、密着部26Aの底面は放熱板22の表面と平行な円形の平坦面となっている。尚、この密着部26Aの内周面には、微細や凹凸や爪を形成するための表面処理を施しておくことが好ましい。
【0024】
密着部26Aが形成された放熱板22は図示しない下型に載置され、放熱板22の上面には、密着部26Aと整合する円形のキャビティ51を有する上型50(本発明の構成要件である金型)が載置される。そして、ゲート52からキャビティ51内及び密着部26A内に溶融樹脂を高圧で射出する。射出された溶融樹脂が硬化すると、ボス42Aが成形されるとともにその基端部43Aが密着部26A内に充填されてその内周面と底面とに密着した状態となり、硬化後に型開きすれば、放熱板22に対しボス42Aが上方へ突出した形態で一体化される。
【0025】
尚、ボス42Aのうち放熱板22から上方へ突出した部分は、上方に向かって縮径するようにテーパ状をなしているが、これは、キャビティ51からの型抜きが円滑に行われるようにするための手段として講じられた形状である。
【0026】
このように基端部43Aにおいて放熱板22と一体化されたボス42Aは、回路構成体10に係止されるのであるが、制御回路基板11における各ボス42Aと対応する位置は、夫々、上下方向に貫通する円形の係止孔11H,13Hが形成されている。貫通孔の形成位置にバスバー13が存在している場合には、バスバー13にも係止孔11H,13Hが貫通して形成されている。回路構成体10を放熱板22に対して上から組み付けつつ、各係止孔11H,13Hをボス42Aに嵌合させる。この嵌合により回路構成体10が放熱板22に対して水平方向に位置決めされる。
【0027】
そして、回路構成体10を放熱板22側へ押圧しつつ、係止孔11H,13Hから上方に突出したボス42Aの上端の係止部44Aをプレスにより伏椀形(球面形)に拡径変形させる。この係止部44Aを拡径変形させるプレス工程に際しては、ボス42Aの材質に応じて温度管理される。例えば、ボス42Aの材質がポリプロピレン(PP)等の場合には常温下で拡径変形が行われ、ボス42Aの材質がポリブチレナテレフタレート(PBT)等の場合にはボス42Aを加熱した状態で拡径変形が行われる。また、係止部44Aを拡径変形させる際には、制御回路基板11を放熱板22側(下方)へ押圧する。このプレス工程によって形成された拡径部44aが、制御回路基板11の上面における係止孔11Hの孔縁に係止する状態、いわゆるリベットカシメ状態となって回路構成体10に固着される。尚、本実施形態では、PBTにガラスを30〜40%含有させることで、耐熱性を向上させた保持体42が用いられている。
【0028】
このボス42Aの係止部44Aによる係止作用により、回路構成体10が放熱板22に対して上方へ相対変位することが規制される。これにより、回路構成体10と放熱板22とが、絶縁シート40の厚さ分に相当する僅かな間隔を空け、且つ上下方向への離間を規制された状態に結合される。
【0029】
尚、図3〜図5においては、便宜上、枠体21とシール層23の図示を省略しているが、回路構成体10は枠体21と合体した状態で放熱板22に固着される。また、放熱板22と枠体21とを結合させる工程は、回路構成体10と放熱板22の合体工程の前に行ってもよく、後に行ってもよい。また、本実施形態とは異なり、枠体21が回路構成体10に対して上から被せるように組み付けられる形態である場合には、回路構成体10と放熱板22とを結合した後に、枠体21を回路構成体10に組み付けるようにしてもよい。
【0030】
また、前部コネクタハウジング31をケース20に固着する手段として、放熱板22と回路構成体10との組付け手段と同様、放熱板22にボス42Bを固着した形態の複合体が用いられている。ボス42Bと放熱板22の密着部26Bの形態及びボス42Bを放熱板22に一体化させる手段については、上記回路構成体10の組付けの場合と同じであるため、説明は省略する。さて、ケース20の枠体21の前縁部には、上下方向に貫通する円形の位置決め孔21Hが左右一対形成されている。また、前部コネクタハウジング31の左右両端部には、位置決め孔21Hと対応する円形の係止孔31Hが左右一対形成されている。そして、放熱板22の表面における位置決め孔21H及び係止孔31Hと対応する位置に、夫々、ボス42Bが突出されている。
【0031】
組付けに際しては、放熱板22の表面に枠体21を載置することにより、ボス42Bに位置決め孔21Hを嵌合させる。これにより、放熱板22に対して枠体21が水平方向に位置決めされる。そして、回路構成体10を放熱板22に固着した後、前部コネクタハウジング31を前方から枠体21にセットし、係止孔31Hを位置決め孔21Hに対応させつつボス42Bに嵌合させる。この後、前部コネクタハウジング31を放熱板22側へ押圧しつつ、係止孔31Hから上方に突出したボス42Bの上端の係止部44Bをプレスにより伏椀形(球面形)に拡径変形させる。この係止部44Bを拡径変形させるプレス工程に際しては、回路構成体10の組付けと同様にボス42Bの材質に応じて温度管理される。そして、このボス42Bの係止部44Bの拡径部44bによる係止作用により、前部コネクタハウジング31と枠体21が放熱板22に対して上方へ相対変位することが規制された状態で固定される。
【0032】
上述のように本実施形態においては、放熱板22(金属部品)の表面におけるボス42A,42B(樹脂成形体)の突出領域に凹部を有する密着部26A,26Bを形成し、その密着部26A,26Bにボス42A,42Bの基端部43A,43Bを密着させるようにしたので、放熱板22の表面に沿った剪断力が作用しても凹部(密着部26A,26Bの内周面)が引っ掛かりとなるため、ボス42A,42Bが放熱板22から離脱する虞はない。
【0033】
また、密着部26A,26Bは、放熱板22を貫通しない形態の凹部からなるため、ボス42A,42Bの基端部43A,43Bは、基端部43A,43Bの下端面と外周面において密着部26A,26Bに密着している。したがって、放熱板22とボス42A,42Bとの密着面積は、放熱板の平坦な表面にボスの基端面を密着させたものに比べて広くなるため、その分、放熱板22とボス42A,42Bとの固着強度も高くなっている。
【0034】
<実施形態2>
次に、本発明を具体化した実施形態2を図10及び図11を参照して説明する。本実施形態2は、放熱板22(本発明の構成要件である金属部品)に対するボス60(本発明の構成要件である樹脂成形体)の固着手段(一体化手段)を上記実施形態1とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施形態1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0035】
本実施形態2では、放熱板22にその表裏両面間を上下に貫通する形態の密着部61が形成されている。この密着部61の上端部(ケース20の収容空間24側の端部)には、上方(収容空間24側)に向かって拡径するすり鉢状(円錐状)をなす円形のテーパ孔62(本発明の構成要件である異径部)が形成され、密着部61の下端部には、テーパ孔62よりも大径で且つテーパ孔62と同心の円形をなす大径孔63(本発明の構成要件である異径部)が形成され、テーパ孔62と大径孔63との間には、大径孔63よりも小径で且つテーパ孔62の最小径と同径の小径孔64(本発明の構成要件である異径部)がテーパ孔62及び大径孔63と同心の円形状に形成されている。
【0036】
密着部61が形成された放熱板22は図示しない下型に載置され、放熱板22の上面には、密着部61と整合する円形のキャビティ66が形成された上型65(本発明の構成要件である金型)が載置される。そして、ゲート67からキャビティ66内及び密着部61内に溶融樹脂を高圧で射出する。射出された溶融樹脂が硬化すると、ボス60が成形されるとともにその基端部68が密着部61内に充填された状態となり、硬化後に型開きすれば、放熱板22に対しボス60が上方へ突出した形態で固着される。密着部61内の基端部68は小径孔64において絞られた形態となっているので、上下いずれの方向へボス60が引っ張られても、基端部68におけるテーパ孔62への充填部と大径部63への充填部が引っ掛かりとなり、ボス60は放熱板22に対して上下方向へ相対変位することはない。
【0037】
また、射出成形の際には、射出圧によって溶融樹脂が密着部61の内周面に隙間なく密着するので、基端部68の外周面と密着部61の内周面と間に隙間が生じることはなく、別途シール手段を設けなくても、信頼性の高い防水機能が得られる。尚、ボス60のうち放熱板22から上方へ突出した部分は、上方に向かって縮径するようにテーパ状をなしているが、これは、キャビティ66からの型抜きが円滑に行われるようにするための手段として講じられた形状である。また、密着部61内では、ボス60の基端部68がキャビティ66の小径孔64において機械的に引っ掛かる形状を呈しているため、密着部61の内周面に微細な凹凸や爪形状を形成するための表面処理は不要である。
【0038】
ボス60の上端の係止部69は、上記実施形態1と同様に、回路構成体10の係止孔11Hに貫通され、その貫通部分をプレスにより拡径変形させることで、図14に示すように、拡径部69aが制御回路基板11の上面における係止孔11Hの孔縁に係止する。これにより、係止部69が回路構成体10に固着される。同様に、ボス60には、枠体21の位置決め孔21Hが嵌合されるとともに前部コネクタハウジング31の係止孔31Hが嵌合され、ボス60の上端部を拡径変形させて係止孔31Hの係止させることで、前部コネクタハウジング31が放熱板22に固着される。
【0039】
<実施形態3>
次に、本発明を具体化した実施形態3を図12及び図13を参照して説明する。本実施形態3は、放熱板22(本発明の構成要件である金属部品)に対するボス70(本発明の構成要件である樹脂成形体)の固着手段(一体化手段)を上記実施形態1とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施形態1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0040】
本実施形態3では、実施形態1及び2と同様に、ボス70を型内融着により放熱板22に固着したものであり、前処理として、放熱板22にその表裏両面間を上下に貫通した形態の密着部71が形成されている。この密着部71は上下方向(貫通方向)において、内径が一定の円形をなしている。尚、この密着部71の内周面には、微細や凹凸や爪を形成するための表面処理を施しておくことが好ましい。
【0041】
密着部71が形成された放熱板22は図示しない下型に載置され、放熱板22の上面には、密着部71と整合する円形のキャビティ73が形成された上型72(本発明の構成要件である金型)が載置される。このキャビティ73の内径は密着部71よりも径が小さい。ゲート74からキャビティ73内及び密着部71内に溶融樹脂が高圧で射出され、射出された溶融樹脂が硬化すると、ボス70が成形されるとともにその基端部75が密着部71内に充填されてその内周に密着する。この後、硬化後に型開きすれば、放熱板22に対しボス70が上方へ突出した形態で固着される。
【0042】
密着部71の内周面にはボス70の基端部75が強固に密着するため、ボス70が放熱板22に対して上下方向へ相対変位することはない。また、射出成形の際には、射出圧によって溶融樹脂が密着部71の内周面に隙間なく密着するので、基端部75の外周面と密着部71の内周面と間に隙間が生じることはなく、別途シール手段を設けなくても、信頼性の高い防水機能が得られる。
【0043】
ボス70のうち放熱板22から上方へ突出した部分76は、基端部75よりも小径で且つ基端部75と同心状の略円柱形(詳細には、上方に向かって縮径するようにテーパ状)をなす。つまり、基端部75と基端部75よりも上方の部分76(放熱板22の上面から突出した部分)との境界では段差状に径寸法が変位する形態とされている。そして、この段差形状により形成された基端部75の円環状をなす上面は、放熱板22の上面に対して面一状に連続する絶縁面77となっている。
【0044】
一方、放熱板22の上面と回路構成体10のバスバー13の下面との間に挟み込まれる絶縁シート40には、バスバー13や制御回路基板11の係止孔11H,13Hと対応する係止孔40Hが形成されているのであるが、上記した絶縁面77は、図16に示すように、絶縁シート40の係止孔40Hの内径寸法がバスバー13の係止孔13Hの内径よりも大きくなった場合に有効に作用する。即ち、絶縁シート40の係止孔40Hの内径が大きい場合、バスバー13における係止孔13Hの孔縁部が、絶縁シート40の係止孔40Hの孔縁よりも内側へ張り出して放熱板22と接触することが懸念される。
【0045】
しかし、本実施形態では、放熱板22の密着部71の内径が絶縁シート40の係止孔40Hよりも大きくなるようにして、密着部71の内側では、絶縁シート40における係止孔40Hの孔縁部とバスバー13における係止孔13Hの孔縁部が、ボス70の基端部75の絶縁面77と対応するようにしている。これにより、絶縁シート40の係止孔40Hがバスバー13の係止孔13Hよりも径が大きい場合でも、バスバー13における係止孔13Hの孔縁部が、放熱板22とは直接対応せずに、樹脂製の絶縁面77と対応するようになり、バスバー13と放熱板22との接触を確実に回避することができるようになっている。
【0046】
尚、ボス70の上端の係止部78は、上記実施形態1及び2と同様に、回路構成体10の係止孔11H,13Hから上方に貫通され、その貫通部分をプレスにより拡径変形させることで、図13に示すように、拡径部78aが制御回路基板11の上面における係止孔11Hの孔縁に係止し、これにより、係止部78が回路構成体10に固着される。また、同様にして前部コネクタハウジング31が放熱板22に固着される。
【0047】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施態様も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0048】
(1)上記実施形態では車両に搭載されて車載バッテリから各電子ユニットに電力を分配するために用いられる電気接続箱に適用した例を示したが、本発明は、これ以外にも、車両のボディ、車載ハーネスを構成するコネクタ、電気自動車におけるモータやインバータなどの電力機器、家庭電化製品、その他産業用機器などにも広く適用できる。
【0049】
(2)本発明は、上記実施形態においてバスバーに樹脂成形体を突出させる形態として適用することもできる。
【0050】
(3)上記実施形態では樹脂成形体を金属部品(放熱板)に対して他の部品を固定する手段として用いたが、本発明は、樹脂成形体が金属部品に対して他の部品を位置決めする手段として使用される場合にも適用できる。
【0051】
(4)上記実施形態1においては密着部が凹部のみから構成されているが、本発明によれば、密着部が凸部のみ、または凸部と凹部が混在する形態であってもよい。
【0052】
(5)上記実施形態2、3においては密着部が貫通孔(貫通した形態の凹部)とされているが、本発明によれば、実施形態2、3において密着部を非貫通の形態としてもよい。
【0053】
(6)上記実施形態では金属部品の密着部及び樹脂成形体の基端部(密着部との密着領域)の外周面が円形とされているが、本発明によれば、密着部の内周に凹凸を形成し、密着領域の外周面に凹凸が形成されるようにしてもよい。
【0054】
(7)上記実施形態では切削によって密着部を形成したが、本発明によれば、プレスにより金属部品を曲げ加工(叩き出し加工)することで密着部を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施形態1の組付け完了状態をあらわす斜視図
【図2】分解斜視図
【図3】放熱板と回路構成体を離間させた状態をあらわす斜視図
【図4】放熱板のボスに回路構成体の係止孔を嵌合した状態をあらわす斜視図
【図5】放熱板に回路構成体を組み付けた状態をあらわす斜視図
【図6】断面図
【図7】放熱板のボスと回路構成体の係止孔との嵌合状態をあらわす部分拡大断面図
【図8】放熱板に回路構成体を組み付けた状態をあらわす部分拡大断面図
【図9】放熱板にボスを一体化させた状態をあらわす部分拡大断面図
【図10】実施形態2の放熱板にボスを一体化させた状態をあらわす部分拡大断面図
【図11】放熱板にボスを固着した状態をあらわす部分拡大断面図
【図12】実施形態3の放熱板にボスを一体化させた状態をあらわす部分拡大断面図
【図13】放熱板にボスを固着した状態をあらわす部分拡大断面図
【符号の説明】
【0056】
22…放熱板(金属部品)
26A,26B…密着部
42A,42B…ボス(樹脂成形体)
43A,43B…ボスの基端部
50…上型(金型)
51…キャビティ
60,70…ボス(樹脂成形体)
61,71…密着部
62…テーパ孔(異径部)
63…大径孔(異径部)
64…小径孔(異径部)
68,75…ボスの基端部
65,72…上型(金型)
66,73…キャビティ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属部品の表面から樹脂成形体を突出させた形態の複合体であって、
前記金属部品の表面における前記樹脂成形体の突出領域には、凹部又は凸部を有する密着部が形成され、
前記樹脂成形体が金型内への溶融樹脂の射出により成形されているとともに、その樹脂成形体の基端部が前記密着部に密着されていることを特徴とする金属と樹脂の複合体。
【請求項2】
前記密着部が前記金属部品を貫通する貫通孔とされており、この貫通孔内に前記樹脂成形体の基端部が埋設されていることを特徴とする請求項1記載の金属と樹脂の複合体。
【請求項3】
前記密着部が、径寸法の異なる複数の異径部を有する形態とされていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の金属と樹脂の複合体。
【請求項4】
金属部品の表面から樹脂成形体を突出させた形態の複合体を製造する方法であって、
前記金属部品の表面における前記樹脂成形体の突出領域に、凹部又は凸部を有する密着部を形成し、
金型を、そのキャビティが前記密着部と対応するように配置し、
前記キャビティ内へ溶融樹脂を射出することで、前記樹脂成形体を成形するとともに、その成形工程において前記樹脂成形体の基端部を前記密着部に密着させることで、前記金属部品と前記樹脂成形体とを固着することを特徴とする金属と樹脂の複合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−27183(P2006−27183A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−211982(P2004−211982)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】