説明

金属と配位結合する被膜形成材料

被膜形成樹脂に対して反応性の少なくとも2つの官能基と、非イオン性金属配位構造を有する少なくとも1つのペンダント基とを有するアルキル化合物又は芳香族化合物を含む被膜形成材料を重合するための架橋剤。コーティング組成物は、被膜形成材料及び上記の架橋剤を含み得る。コーティング組成物は、被膜形成材料及び架橋剤を含み得る。このコーティング組成物は、金属基板などの基材をコーティングするために用いることができる。基材上に塗装されたコーティング層は、コーティング被膜を形成するために硬化させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
コーティング組成物は、基材の保護などの目的において様々な基材をコーティングしたり、後のコーティング層の接着性を向上させるためなど、様々な用途において用いられている。一般的なコーティングとしては、電着塗装、プライマー、シーラー、ベースコート、クリアコート、及び1層トップコートなどが挙げられる。コーティング組成物は、ポリマー性、オリゴマー性、及び/又はモノマー性材料であってもよい1種以上の樹脂を含む被膜形成材料を含み、電解析出法(すなわち電着塗装)、スプレーコーティング、ディップコーティング、ローラーコーティング、ナイフコーティング、及びカーテンコーティングなどの様々な方法により基材に塗装される。本明細書で使用される場合、「樹脂」とは、1種以上のポリマー性、オリゴマー性、及び/又はモノマー性の材料を意味し、ポリマーは、繰り返しモノマー単位を含み、オリゴマーは、通常は10以下の少ない数の繰り返しモノマー単位を含む。様々なタイプの被膜形成材料としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリシロキサン樹脂、アミノプラスト樹脂、及びポリエステル樹脂などが知られている。
【0002】
コーティング組成物には、顔料分散樹脂もしくは粉砕樹脂、及び、一般的にコーティング被膜の主要なポリマー性部分を構成する主要な樹脂が含まれ得る。粉砕樹脂は、通常、被膜形成材料を含み、顔料ペーストは、粉砕樹脂を顔料、充填剤、及び触媒(例えば、金属触媒など)と共に湿潤させて製造される。その場合、この粉砕樹脂は、例えば、サンドミル、ボールミル、アトライタ、又は他の装置において粉砕され、他の材料とブレンド又は混合される。顔料ペーストは、主要な樹脂及び、通常は硬化剤と組み合わされる。粉砕樹脂及び主要な樹脂は、様々な同じ又は異なる被膜形成材料あるいはその混合物を含み得る。
【0003】
塗装した比較的柔らかいコーティング組成物の被膜は、架橋剤又は硬化剤をそのコーティング組成物に組み込んで、その被膜を硬化又は架橋させることにより、硬くすることができる。架橋剤は、コーティング組成中のポリマー、オリゴマー、及び/又は樹脂のモノマー性化合物に対して、化学的に反応し得るものであり、その結果、被膜形成単位を架橋された被膜中に共有結合させることができる。典型的な架橋剤は、硬化段階中に加熱することにより及び/又は化学線を放射することにより、活性化(例えば、非ブロック化)される。触媒(例えば、金属触媒など)を使用して、架橋剤の熱活性化及び架橋剤と樹脂との反応を促進することができる。例えば、金属触媒などの触媒を加えることによって、必要な硬化温度を下げたり、及び/又はより完璧な硬化を得ることができる。
【0004】
コーティング組成物は、有機溶媒ベース、又は水ベースのパウダーであってもよい。しかしながら、多くの場合、有機溶剤の放出を抑えるために水性ベースのコーティングを用いることが望ましい。そのような水性コーティング組成物としては、カチオン性、アニオン性、又は非イオン性樹脂のエマルジョン及び分散液が挙げられ、これらは、樹脂自身の分散特性又は界面活性剤の添加により形成することができる。
【0005】
エポキシ−ベースのコーティングは、エポキシ基を有する材料と、カルボキシル基、ヒドロキシル基、及びアミン基などの官能基を有する材料との反応によって製造されたポリマー、オリゴマー、及び/又はモノマーを含む。エポキシは、含まれる官能基に応じて様々な架橋剤を用いることにより、硬化又は架橋させて、硬いコーティングを形成することができる。例えば、ヒドロキシ官能性樹脂は、イソシアネート化合物を用いて硬化させることができる。このようなコーティング組成物は、米国特許第6,852,824号、同第5,817,733号、及び同第4,761,337号などの文献において公知である。
【0006】
電解析出法は、陽極又は陰極において実施することができ、通常、コーティングする物品を陰極として処理を行う。電解析出法は、基材へのコーティング樹脂の移動効率が高く、また、有機溶剤を用いた場合でも低濃度で済むことなどから、経済的にも環境面においても有利である。電着塗装組成物及び電着塗装法の別の利点は、基材の形状及び配置に関係なく、塗装されるコーティング組成物が、様々な金属性基材上に均一かつ連続した層を形成することである。これは、不規則な表面を有する基材(例えば、自動車の車体上など)の防食コーティングとして塗装される場合に特に有利である。金属性基材の全ての部分に対して平坦で連続的なコーティング層が形成することにより、最大の防食効果が得られる。
【0007】
電着塗装浴は、イオン安定性を有する被膜形成材料(例えば、エポキシ樹脂)の水性分散液又はエマルジョンから成る。分散液は、通常、連続液体媒体中(例えば、水、又は水と有機共溶剤との混合物など)における、1種以上の微粉砕固体、液体、又はそれらの組み合わせの二相系である。エマルジョンは、液体媒体(好ましくは、水、又は水と様々な共溶媒との混合物)中における液体小敵の分散液である。従って、エマルジョンは、一種の分散液である。
【0008】
自動車又は工業用の用途において、電着塗装組成物は、架橋剤を含有することによる硬化性組成物として配合される。電解析出処理では、電荷を有する樹脂を分散させた電着塗装浴中に基材を浸漬し、基材と相対する極性の電極(例えば、ステンレス鋼の電極)との間に電圧を印加することにより、イオン電荷を有する樹脂を含有するコーティング組成物を導電性の基材上に析出させる。帯電したコーティング粒子が、導電性基材上に付着又は析出する。次に、コーティングされた基材を加熱して、コーティングを硬化させる。
【0009】
コーティング組成物の性能を高めることは望ましい。特に、多くの用途において、硬化させたコーティング被膜の接着強度を向上させることは有益であろう。さらに、コーティング被膜を架橋させるための硬化温度を低くすることにより、処理に必要なエネルギーと費用が少なくて済むため、コーティング工程を簡易化することができるであろう。その上、低い温度での硬化は、熱に弱い基材材料にコーティングを適用する際に有利であろう。最後に、時間と費用を減らすような、コーティング組成物合成及び製造における簡素化は、さらなる利点をもたらすであろう。
【0010】
したがって、より優れた基材接着性及び低い硬化温度を有し、より簡単に製造できるようなコーティング組成物が必要とされている。
【0011】
本開示は、1つの実施形態において、非イオン性金属配位構造を含む少なくとも1つのペンダント基と、少なくとも1種の架橋可能な基とを有する樹脂を含む被膜形成材料を提供する。この架橋可能な基は、架橋剤に対して反応可能であるか、自己縮合性であるか、樹脂の他の基に対して反応可能であるか、あるいは付加重合可能であってもよい。また、この樹脂は、任意のフィルム形成樹脂(例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリシロキサン樹脂、アミノプラスト樹脂、又はポリエステル樹脂など)であってもよく、並びにホモポリマー又はコポリマーであってもよい。
【0012】
ある特定の実施形態において、非イオン性金属配位構造を含むペンダント基は、エーテル結合を介して樹脂に結合し得る。架橋剤に対して反応性の基は、エポキシド、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバメート、又はアミン基であってもよい。
【0013】
様々な実施形態において、非イオン性金属配位構造は、第一の電子リッチな基を有する。第一の電子リッチな基は、窒素、酸素、リン、硫黄、ケイ素、及び炭素などの原子を有していてもよく、また、エステル、ケトン、エーテル、不飽和炭素、及びヒドロキシル基などの基を有していてもよい。非イオン性金属配位構造はさらに、第一の電子リッチな官能基に対してα位又はβ位に第二の電子リッチな官能基を有していてもよい。被膜形成材料におけるこの非イオン性金属配位構造は、金属及び金属化合物を含む材料(例えば、金属基材及び金属触媒)の金属原子に配位結合することができる。
【0014】
いくつかの実施形態において、被膜形成材料を重合するための架橋剤は、フィルム形成樹脂に対して反応性の少なくとも2つの官能基と、非イオン性金属配位構造を有する少なくとも1つのペンダント基とを含む有機化合物(例えば、アルキル化合物又は芳香族化合物など)を含む。
【0015】
さらに、実施形態は、硬化性被膜形成材料の製造方法、並びに樹脂と、非イオン性金属配位構造を有する配位子との反応によって生成された被膜形成材料を含む。例えば、被膜形成材料は、求核試薬に対して反応性の少なくとも1つの基を有する樹脂と求核性配位子との反応による生成物であってもよい。また、被膜形成材料は、求電子性試薬に対して反応性の少なくとも1つの基と求電子性配位子との反応による生成物であってもよい。
【0016】
様々な他の実施形態では、コーティングされた基材を製造する方法を提供する。コーティングされた基材を製造する方法は、架橋剤及び被膜形成材料を含むコーティング組成物を製造する工程(ここで、架橋剤及び被膜形成材料の1つは非イオン性金属配位構造を含む)と、コーティング組成物を基材上に塗装する工程とを含む。
【0017】
本開示のいくつかの実施形態は、コーティング組成物の製造方法を含む。コーティング組成物は、ペンダント型非イオン性金属配位構造及び架橋性基を有する被膜形成材料を含む。被膜形成材料は、樹脂と非イオン性金属配位構造を有する配位子とを含む反応混合物によって形成してもよい。被膜形成材料が自己架橋性でない場合、コーティング組成物は、架橋剤を含み得て、この架橋剤を被膜形成材料と組み合わせることにより、コーティング組成物を製造する。様々な実施形態は、さらに被膜形成材料上にイオン化基を形成しているコーティング組成物を含む。また、電解析出のための方法及びコーティング組成物も開示する。
【0018】
他の実施形態では、コーティングされた基材を製造する方法を提供する。コーティング組成物は、非イオン性金属配位構造を有する配位子と架橋剤とを含む架橋可能な被膜形成材料を含んで製造される。コーティング組成物は、基材に塗装することができ、いくつかの実施形態では、電気伝導性基材へのコーティング組成物の塗装は、電解析出法によって行われる。塗装されたコーティングは硬化処理を施される。
【0019】
本開示により、非イオン性金属配位基の樹脂への付加、及び/又は非イオン性金属配位基の架橋剤への組み込みなどの様々な恩恵が得られる。本明細書に記載された技術により、非イオン性金属配位配位子を、樹脂のポリマー主鎖に沿って1つ以上の部位に組み込むこと、及び/又は金属配位性基を樹脂の1つ又は複数の末端位置に組み込むことが可能となり、その結果、金属及び金属化合物に配位結合する基を含む被膜形成材料を形成することができる。この方法により、金属又は金属含有化合物と相互作用する金属配位部位を提供する被膜形成材料を含むコーティング組成物が得られる。
【0020】
本開示の被膜形成材料は、金属触媒に被膜形成材料が配位結合することにより、コーティング組成物の硬化に必要な硬化温度が低下し、及び/又は完全な硬化を得ることが可能となるといった利点を提供する。例えば、本開示の実施形態では、液体有機金属塩を水性コーティング組成物に直接加えて、樹脂及び金属触媒の錯体を形成することができるため、金属触媒又は有機金属物質(例えば、金属カルボキシラート錯体など)を電解析出浴に加える必要がない。電解析出浴に添加された金属化合物は、コーティング組成との親和性が問題となる場合があり、例えば、金属カルボキシラートの加水分解が原因で、コーティング欠陥が生じる可能性がある。あるいは、金属酸化触媒の場合、本方法では、粉砕処理によって金属酸化物をコーティング組成物に組み込む必要がなくなるという利点を有する。
【0021】
本発明の被膜形成材料における他の利点は、用いる金属配位構造が非イオン性金属配位構造であることである。その結果、本開示の被膜形成材料を用いて形成された水性電解析出性コーティング組成物は、塩形成剤との親和性の問題が減じられるか、又は実質的に問題が無い。逆に、イオン性金属配位基を有する樹脂は、電着組成物形成における塩形成剤の効果に悪影響を及ぼす可能性があり、一方、塩形成剤は金属触媒の配位結合に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0022】
また、本発明の被膜形成材料は、金属基材へのより優れた接着性及び金属基材の保護を提供することができる。理論によって束縛されることは望まないが、被膜形成材料中の非イオン性金属配位構造は、金属基材表面と相互作用し、金属基材表面へのポリマー性被膜の接着性を向上させ得ると考えられる。その上、本開示のコーティング組成物配合では、いくらかの金属配位構造は金属触媒と共に錯化して硬化を向上させ、一方、他の金属配位構造は、束縛無く金属基材と相互作用して、接着性を向上させるようにすることができる。
【0023】
「a」及び「an」は、本明細書において使用される場合、その要素の「少なくとも1つ」が存在することを示すものであり、すなわち、可能であれば、複数のそのような要素が存在してもよい。「約」は値に対して使用される場合、計算又は測定が、その値において僅かな不正確さを許容することを示す(精密な値に対してある程度接近していること、値に対しておおよそ又は合理的に近いことを意味する:ほとんどの意味)。幾つかの理由から、「約」による不明瞭さが、この通常の意味とは別の他の意味で当業者に理解されなければ、本明細書で使用する場合、「約」は、通常の測定方法又はそのようなパラメーターの使用から生じ得る最小限の変化を示す。
【0024】
本明細書に記載の図は、単に例示する目的のためであり、決して本開示の範囲を制限することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本開示に従って金属配位材料及び被膜形成材料を含む例示的なコーティング組成物でコーティングされた金属基材を用いた腐食試験による引掻き傷クリープのグラフを示す図である。
【0026】
本発明の適用可能性と利点のさらなる領域は、以下の説明から明らかにされる。説明及び特定の実施例は、本発明の様々な実施形態を例示するものであるが、例示目的に意図するものであって、発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0027】
第一の実施形態において、被膜形成材料は架橋性樹脂を含み得、この樹脂は、非イオン性金属配位構造と、架橋剤に対して反応性の少なくとも1つの基、少なくとも1つの自己縮合する基、及び化学線によって硬化可能な少なくとも1つの基から選択される架橋性官能基とを有する少なくとも1つのペンダント基を有する。この被膜形成材料は、求核試薬に対して反応性の少なくとも1つの基を有する樹脂を求核性配位子と反応させるか、又は求電子試薬に対して反応性の少なくとも1つの基を有する樹脂を求電子性配位子と反応させることによって製造することができる。この求核性配位子及び求電子性配位子は、それぞれ、金属配位構造を有する。コーティング組成物は、この開示で説明された被膜形成材料を含み、基材をコーティングする方法は、これらの被膜形成材料を含むコーティング組成物で塗装する工程を含み、コーティングされた基材は、そのようなコーティング組成物から製造された塗装膜を含む。
【0028】
1つの実施形態において、被膜形成材料は、非イオン性金属配位構造を含む少なくとも1つのペンダント基と、架橋剤に対して反応性の少なくとも1つの基とを含有する樹脂を含む。この樹脂は、1つ以上のポリマー性、オリゴマー性、及び/又はモノマー性の材料を含んでもよい。この被膜形成材料は、様々な樹脂、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリシロキサン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリエーテル樹脂、アミノプラスト樹脂、及びポリエステル樹脂など、並びにそれらの混合物を含んでもよい。これらの実施形態において、樹脂がポリマーの場合、このポリマーはホモポリマー又はコポリマーであってもよい。コポリマーは、2種類以上の繰り返し単位を有する。
【0029】
いくつかの実施形態において、非イオン性金属配位構造を含むペンダント基は、様々な官能基の反応から生じた様々な結合を介して樹脂に結合している。これらの様々な結合としては、特にエステル結合、アミン結合、ウレタン結合、及びエーテル結合が挙げられる。これらの結合を生じる官能基の反応例としては、エポキシドが酸と反応して生じるエステル結合、エポキシドがアミンと反応して生じるアミン結合、ヒドロキシルがイソシアネートと反応して生じるウレタン結合、ヒドロキシルが無水物と反応して生じるエステル結合、エポキシドがヒドロキシルと反応して生じるエーテル結合、並びにコーティング樹脂を形成する際に一般的に用いられる他の種類の結合などが挙げられる。架橋剤に対して反応性の少なくとも1つの基は、エポキシ基、ヒドロキシル基、カルボニル基、又はアミノ基であり得る。
【0030】
いくつかの実施形態において、被膜形成材料は、式:
【化1】

[式中、X1及びX2は、独立して、水素、ヒドロキシル、エポキシド、又はアミンの一価の官能基であり、各R1及びR2は、独立して、アルキレン又はアリーレンの二価の基であり、R3は、非イオン性金属配位構造を含むアルキレン又はアリーレンの二価の基であり、nは1〜約12の数であり、mは0〜約12の数であり、並びに、pは1〜約12の数である]を有するエポキシ樹脂を含む。
【0031】
いくつかの実施形態において、R1及び2によって示されるアルキル又は芳香族の二価の基は、2,2−ジフェニルプロピレンの二価の基であってもよい。非イオン性金属配位構造を含むR3のアルキレン又はアリーレンの二価の基の例としては、エチル−2−ヒドロキシベンゾアート、4−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン−2−オン、及び1−(2−ヒドロキシ−6−メトキシフェニル)エタノンの二価の基(この場合、2つの結合した水素原子は除去される)が挙げられる。
【0032】
さらに、n>1及び/又はm>1の場合、2つ以上の2,2−ジフェニルプロピレン基は、お互いに共有結合していてもよい。例えば、n及び/又はm>1の場合のいくつかの実施形態において、樹脂のR1及びR2は、式−G−B−の繰り返しを生じる、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(「G」)とビスフェノールA(「B」)との反応によって形成された生成物を部分的に含み得る。実施例としてはさらに、n及び/又はmが1〜約12の数の場合、−G−B−G−、−G−B−G−B−、−G−B−G−B−G−などのような繰り返し単位を生じる順列を含む。
【0033】
いくつかの実施形態において、X1及びX2は、独立して、水素、ヒドロキシル、エポキシド、又はアミンの一価の官能基である。X1及び/又はX2がアミンの一価の基の場合の樹脂の実施形態は、例えばアミン含有化合物とエポキシド基の反応によって得られる、アミンでキャップされたエポキシ樹脂を含んでもよい。キャッピング化合物の例としては、アンモニア又はアミン、例えば、ジメチルエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチレントリアミンのジケタミン誘導体、及びそれらの混合物が挙げられる。陰極電着塗装組成物は、樹脂に塩を形成させて、それを水に分散させることによって製造する。
【0034】
いくつかの実施形態において、例えば、液体エポキシコーティング組成物などの被膜形成材料の全体的な分子量が、液体層の特性、例えばコーティング組成物の粘度などに影響を及ぼすことについて注意すべきである。したがって、樹脂の分子量(及びそれに対応する粘度)は、必要に応じて、上記の式のn、m、及びpの値を変えることにより、樹脂中の繰り返し部分の数を変えて調整することができる。例えば、被膜形成材料は、nとpの両方によって示される1〜約12の単位と、mによって示される0〜約12の単位を含み得る。
【0035】
いくつかの実施形態において、樹脂は、メチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレートなどのモノマーから製造することができるアクリルポリマーである。アクリルポリマーは、硬化剤(すなわち、架橋剤)に対して反応性のヒドロキシル基、アミノ基、又はエポキシ基である官能基を有する。この官能基は、アクリルポリマーのエステル部分に組み込むことができる。例えば、ヒドロキシル官能性アクリルコポリマーは、これに限定されるものではないが、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、又はヒドロキシプロピルアクリレートなどの様々なアクリレートモノマー及びメタクリレートモノマーを用いた重合によって形成してもよく、アミノ官能性アクリルコポリマーの場合は、t−ブチルアミノエチルメタクリレート及びt−ブチルアミノエチルアクリレートの重合によって形成してもよく、並びにエポキシ官能性アクリルコポリマーの場合は、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、又はアリルグリシジルエーテルの反応によって形成してもよい。
【0036】
反応性官能基を有するアクリルコポリマー形成に用いることができる他のエチレン性不飽和モノマーとしては、3〜5個の炭素原子を有するα−及びβ−エチレン性不飽和モノカルボン酸のエステル又は硝酸化合物又はアミド、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン、ビニルアミド、及び芳香族もしくは複素環のビニル化合物が挙げられる。代表的な例としては、アクリル酸及びメタクリル酸のアミド及びアミノアルキルアミド;アクリロニトリル及びメタクリロニトリル;1〜20個の炭素原子を有する飽和脂肪族アルコール及び脂環式アルコールのアクリル酸及びメタクリル酸のエステル、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、2−エチルヘキシル、イソブチル、イソプロピル、シクロヘキシル、テトラヒドロフルフリル、及びイソボルニルのアクリレート及びメタクリレート;フマル酸、マレイン酸及びイタコン酸のエステル、例えばマレイン酸ジメチルエステルよびマレイン酸モノヘキシルエステルなど;ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルエチルエーテル、及びビニルエチルケトン;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、及び2−ビニルピロリドン、が挙げられる。
【0037】
アクリルコポリマーは、従来の技術、例えばフリーラジカル重合、カチオン重合、又はアニオン重合などを用いて、例えば、バッチ方式、半バッチ方式、又は連続供給方式により製造することができる。例えば、この重合は、フリーラジカル発生源(例えば有機ペルオキシド又はアゾ化合物)の存在下にて、並びに場合により連鎖移動剤の存在下で、バッチ方式又は連続供給方式の反応器において、バルクもしくは有機溶剤中でエチレン性不飽和モノマーを加熱することによって実施してもよい。あるいは、モノマー及び開始剤を、半バッチ方式において、制御された供給速度で加熱反応器中に供給してもよい。反応が溶液重合法によって実施される場合、溶媒は、好ましくは重合反応が完了した後に除去されるべきである。好ましくは、重合は、溶媒の非存在下で実施される。
【0038】
一般的なフリーラジカル発生源としては、有機過酸化物(例えば、ジアルキルペルオキシド、ペルオキシエステル、ペルオキシジカーボネート、ジアシルペルオキシド、ヒドロペルオキシド、及びペルオキシケタール、並びにアゾ化合物(例えば、2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)、及び1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)が挙げられる。一般的な連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、n−もしくはt−ドデシルメルカプタン、チオサリチル酸、メルカプト酢酸、及びメルカプトエタノール、ハロゲン化化合物、並びにα−メチルスチレン二量体が挙げられる。フリーラジカル重合は、通常、約20℃〜250℃の温度、好ましくは90℃〜170℃の温度で実施される。この反応は、従来法に従って実施され、固体アクリルコポリマーが得られる。
【0039】
アクリル樹脂は、20〜120のヒドロキシル価、好ましくは50〜100のヒドロキシル価、及び3,000〜35,000の数平均分子量、好ましくは10,000〜20,000の間の数平均分子量を有し得る。一般的なアクリルポリマーは、ヒドロキシ官能性アクリルポリオールである。いくつかの実施形態では、アクリル樹脂を用いて電着塗装組成物を形成することができる。陰極での電着塗装組成物は、アミン−官能基を有するエチレン性不飽和モノマー共重合することによって形成してもよい。アミンは、塩を形成させて、水に分散させる。
【0040】
いくつかの実施形態において、樹脂はポリエステル樹脂である。多官能性の酸化合物又は無水化合物は、多官能性のアルコールと反応してポリエステルを形成することができ、アルキル化合物、アルキレン化合物、アラルキレン化合物、及び芳香族化合物を含み得る。一般的な化合物としては、ジカルボン酸及び無水物が挙げられるが、より高い官能価の酸及び無水物を使用してもよい。三官能性化合物又はより高い官能価の化合物を使用する場合、これらを、単官能性カルボン酸又はモノカルボン酸の無水物(例えば、バーサチック酸、脂肪酸、又はネオデカン酸)との混合物において使用してもよい。ポリエステル基又はそのような化合物の無水物形成に好適な酸官能性化合物又は無水物官能性化合物の具体的な例としては、フタル酸、フタル酸無水物、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラクロロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、ピロメリト酸無水物、コハク酸、アゼライン酸、アジピン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、クエン酸、及びトリメリト酸無水物が挙げられる。
【0041】
ポリエステル樹脂の合成に用いられるポリオール成分は、少なくとも2であるヒドロキシル官能価を有する。このポリオール成分は、単官能性、二官能性、及び三官能性のアルコール、並びにより高い官能価のアルコールを含んでもよい。ジオールは、典型的なポリオール成分である。ポリエステルをいくぶん分岐させたい場合、より高い官能価を有するアルコールを使用してもよく、ジオール及びトリオールの混合物をポリオール成分として用いてもよい。しかしながら、例えば、流動性の減少などのコーティング処理への影響や、耐衝撃性及び平滑性の低下など、硬化フィルムへの望ましくない影響から、高度に分岐したポリエステルが望ましくない場合もある。
【0042】
有用なポリオールの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリトリトール、ネオペンチルグリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA、及びエトキシ化ビスフェノールが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0043】
ポリエステル樹脂を作製する方法は周知である。ポリエステルは通常、反応を完了させるために副産物の水を除去しながら、触媒を用いて、又は用いずに、ポリオール及び多官能性酸性成分を共に加熱することによって形成する。共沸により水を除去するために、例えばトルエンなどの少量の溶媒を添加してもよい。そのような溶媒を添加した場合、通常は、コーティングを配合する前にそのような溶媒はポリエステル生成物から除去される。
【0044】
いくつかの実施形態において、樹脂はポリウレタン樹脂であってもよい。ポリウレタンは、2つの成分から形成することができ、その場合、第一の成分は、イソシアネート付加反応のために少なくとも二官能性の、イソシアネートに対して反応性の基(好ましくは、ヒドロキシル基)を有する化合物を含む。第二の成分は、少なくとも1つのポリイソシアネート化合物を含む。
【0045】
ポリオール成分は、重合反応のために少なくとも二官能性でなければならない。これらの化合物は、一般的に、約2〜8、好ましくは約2〜4の平均官能価を有する。これらの化合物は、一般的に、約60〜約10,000、好ましくは400〜約8,000の分子量を有する。しかしながら、分子量が400未満の低分子量の化合物を用いることも可能である。唯一の要件は、用いられる化合物が、組成物を硬化させる加熱条件下において揮発性ではないということである。
【0046】
イソシアネート反応性水素原子を含有する好ましいマクロモノマー化合物は、公知のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリヒドロキシポリアクリラート、及びヒドロキシ基を含有するポリカーボネートである。これらのポリヒドロキシル化合物に加えて、ポリヒドロキシポリアセタール、ポリヒドロキシポリエステルアミド、末端ヒドロキシル基又はスルフィドリル基を含有するポリチオエーテル、あるいは、アミノ基、チオール基、又はカルボキシル基を含有する少なくとも二官能性の化合物が使用可能である。イソシアネート−反応性水素原子を含有する化合物の混合物も使用してもよい。他の例示的なヒドロキシル含有化合物としては、1984年3月27日に発行された米国特許第4,439,593号(参照により本明細書に組み込まれるものとする)が挙げられる。
【0047】
第一の実施形態による被膜形成材料は、非イオン性金属配位構造を含む。非イオン性金属配位構造は、芳香族基及び/又はアルキル基を含んでもよく、また、電子リッチではあるが正味の電荷を有していない(すなわち、非イオン性の)原子又は原子団を含んでもよい。例えば、この非イオン性金属配位構造は、高い電子密度を有し電子リッチな官能基を含有する1つ以上の原子又は原子団を有し得る。電子リッチな官能基の例は、不飽和結合を有する一つ以上の窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子、ケイ素原子、及び炭素原子;エステル;ケトン;エーテル;ヒドロキシル;カルボキシレート;アルコール性ケトン;及び環状エステルを含み得る。他の例示的な非イオン性金属配位構造は、2つの電子リッチな官能基を含み得、この官能基は、一方が他方に対してα位又はβ位にある、ヒドロキシル、カルボニル、エステル、エーテル、及びそれらの組み合わせから選択される。2つの電子リッチな官能基を有する非イオン性金属配位構造の例としては、β−ヒドロキシエステルが挙げることができる。
【0048】
いくつかの実施形態において、被膜形成材料は、さらに、非イオン性金属配位構造によって配位結合された1つ以上の金属又は金属含有化合物を含む。したがって、被膜形成材料は、コーティング組成物に用いた場合、被膜形成材料の硬化反応性を向上させる金属触媒などの1つ以上の金属に配位結合し得る。金属材料は、M、MO、M23、M(OH)n、RxMO、及びそれらの組み合わせから成る群から選択され、その場合のnはMの原子価を満たす整数であり、Rはアルキル基又は芳香族基であり、xは1〜6の整数である。いくつかの好ましい実施形態において、Mは、Al、Bi、Ce、Cu、Fe、Pb、Sn、Sb、Ti、Y、Zn、及びZrから成る群から選択される。金属触媒の例としては、ジブチル酸化スズ、ジブチルスズジーラウレート、酸化亜鉛、酸化ビスマス、酸化スズ、酸化イットリウム、酸化銅、及びそれの組み合わせを挙げることができる。
【0049】
本開示の実施形態は、非イオン性金属配位構造を有する架橋剤(すなわち、硬化剤)化合物を含む。例えば、いくつかの実施形態において、被膜形成材料のための架橋剤は、フィルム形成樹脂に対して反応性の少なくとも2つの官能基と、非イオン性金属配位構造を有する少なくとも1つのペンダント基とを有するアルキル化合物又は芳香族化合物を含む。フィルム形成樹脂に対して反応性の官能基としては、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、ウレトジオン基、エポキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルバメート基、アルデヒド基、アミド基、及びアミノ基が挙げられる。非イオン性金属配位構造を有する架橋剤は、金属又は金属化合物(例えば、金属触媒など)に配位結合することができる。さらに、これらの架橋剤は、本開示の被膜形成材料及び/又は他の樹脂と混合して、基材をコーティングするために用いられるコーティング組成物を形成することができる。例えば、コーティングされた基材を製造する方法は、架橋剤と被膜形成材料とを含むコーティング組成物を製造する工程(その場合、架橋剤及び被膜形成材料の1つは非イオン性金属配位構造を含む)と、そのコーティング組成物を基材に塗装する工程とを包含する。
【0050】
様々な実施形態において、被膜形成材料の非イオン性金属配位構造は、樹脂の合成中にin situにて形成することができる。これらの実施形態は、被膜形成材料、及びポリマーの主鎖上(すなわち、ポリマーの繰り返し単位が点在している)及び/又は樹脂分子の末端に金属配位部位を有する様々な被膜形成材料を含む。本開示の被膜形成材料は、様々な反応スキームによって合成され、樹脂の主鎖の合成工程中に非イオン性金属配位構造を樹脂中に組み入れることができる。例えば、様々な実施形態は、求核性の反応スキームを含み、他の様々な実施形態は求電子性の反応スキームを含む。
【0051】
樹脂又は架橋剤は、非イオン性金属配位構造を含み得る配位子を用いて官能基化されている。例えば、様々な求核性配位子は、求核試薬に対して反応性の少なくとも1つの基を有する樹脂と反応することができ、又は様々な求電子性配位子は、求電子試薬に対して反応性の少なくとも1つの基を有する樹脂と反応することができる。非イオン性金属配位構造を含有する配位子は、芳香族又は非芳香族であってもよく、かつ反応性部位(求核性又は求電子性のいずれか)及び1つ以上の電子リッチな部位(すなわち、非イオン性金属配位構造)を有していてもよい。
【0052】
他の様々な実施形態において、被膜形成材料は、多官能性エポキシドと求核性配位子の反応による生成物を含む。そのような実施形態は、以下の、ビスフェノールAの生成物とビスフェノールAのジグリシジルエーテルとを主成分とするエポキシ樹脂を用いた例示的反応スキームによる生成物を含む。
【0053】
【化2】

【0054】
様々な実施形態において、被膜形成材料は、求核試薬に対して反応性の少なくとも1つの基を有する樹脂と、以下の式:
3−R4−X4
[式中、特に、X3及びX4の少なくとも1つが、樹脂に対して反応性を有しており、X3は、ヒドロキシル又はカルボキシルの一価の基であり、R4は、約90g/mol〜約5,000g/molの分子量、及び非イオン性金属配位構造を有するアルキル又は芳香族の二価の基であり、並びにX4は、水素、ヒドロキシル又はカルボキシルの一価の基である]の求核試薬との反応による生成物を含む。
【0055】
したがって、求核性配位子は、1つ又は2つの求核性反応部位を有し得る。例えば、X3は、ヒドロキシル基又はカルボキシル基の形態において第一の求核性反応部位を提供することができ、一方で、X4は、水素であるか、ヒドロキシル基、又はカルボキシル基の形態において第二の求核性反応部位を提供し得る。そのようなものとして、求核性配位子の実施形態は、末端付加のみに対して用いることができるし(すなわち、その場合、X4は水素)、あるいは末端付加及び/又は他の基(例えば、別のエポキシ基、イソシアネート基、ヒドロキシル基、無水物、及びヒドロキシル基もしくはカルボキシル基に対して反応性の他の基など)との反応に対して用いることができる(すなわち、その場合、X4はヒドロキシル基又はカルボキシル基)。したがって、この反応から生成される被膜形成材料は、樹脂内に、末端及び/又はペンダント型の非イオン性金属配位構造を有し得る。いくつかの実施形態において、求核性配位子は、サリチル酸エチル、エチルパラベン、4−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン−2−オン、1−(2−ヒドロキシ−6−メトキシフェニル)エタノン、1,5−ジヒドロキシアントラキノン;アピゲニン;バイカレイン;2,2’−ビピリジン−3,3’−ジオール;N,N’−ビス(サリチリデン)エチレンジアミン;4−(tert−ブチルジメチルシロキシ)フェノール;2−カルベトキシ−5,7−ジヒドロキシ−4’−メトキシイソフラボン;1,8−ジヒドロキシアントラキノン;6,7−ジヒドロキシフラボン;クリソファン酸;5,7−ジヒドロキシフェニルクマリン;エラグ酸;エモジン;2,3−ジニトロフェノール;2,4−ジニトロフェノール;フィセチン;7−ヒドロキシ−4−メチル−8−ニトロクマリン;及びそれらの組み合わせから成る群から選択される。
【0056】
この反応の実施形態は、さらに、例えば、他の求核試薬、キャッピング剤、停止剤、金属触媒、及びそれらの組み合わせなどの他の反応物質を含み得る。例示的な分子としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ジオール、アミン、フェノール、及び金属もしくは金属触媒が挙げられる。いくつかの実施形態において、樹脂は、例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルなどの多官能性エポキシドであってもよい。他の実施形態において、樹脂は、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリシロキサン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリエーテル樹脂、アミノプラスト樹脂、又はポリエステル樹脂であってもよい。また、異なる樹脂の混合物も含まれる。
【0057】
いくつかの実施形態において、求核性配位子以外に、他の求核試薬を反応に加えることができる。これにより、求核性配位子及び他の求核試薬が樹脂と反応して、被膜形成材料の様々な混合物を形成することが可能となる。例えば、そのような反応により、被膜形成材料の混合群が得られる。例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールA、及び求核性配位子を反応させて、様々な被膜形成材料を形成することが可能であり、この場合、配位子が、得られたポリマーの様々な位置に組み込まれ、被膜形成材料は多くの様々なポリマー長を含み得る。
【0058】
さらに、いくつかの実施形態において、この反応は、例えば、樹脂(例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル)と他の求核試薬(例えば、ビスフェノールA)を最初に反応させ、次いで、求核性配位子を加えたり、又はその逆など、複数の段階によって実施することができる。したがって、これらの実施形態により、長さ、複数の異なる領域、及び配位子を被膜形成材料に組み込む度合いを調節することが可能になる。
【0059】
他の様々な実施形態において、被膜形成材料は、求電子試薬に対して反応性の少なくとも1つの基を有する樹脂と、求電子性配位子との反応による生成物を含む。そのような実施形態としては、以下の例示的な反応スキームの生産物が挙げられる。
【0060】
【化3】

【0061】
いくつかの実施形態において、被膜形成材料は、求電子試薬に対して反応性の少なくとも1つの基を有する樹脂と、以下の式:
5−R5−X6
[式中、X5は、エポキシド又はハライドの一価の基であり、R5は、アルキレン又はアリーレンの二価の基であり、好ましくは約90g/mol〜約5,000g/molの分子量、及び非イオン性金属配位構造を有し、並びにX6は、水素、エポキシド、又はハライドの一価の基である]の求電子試薬との反応による生成物を含む。
【0062】
したがって、求電子性配位子は、1つ又は2つの求電子性反応部位を有し得る。例えば、X5は、エポキシ基又はハロゲン基という形態で第一の電子性反応部位を提供することができ、一方で、X6は、水素、あるいはエポキシ基又はハロゲン基という形態で第二の求電子性反応部位を提供することもできる。そのようなものとして,求電子性配位子の実施形態は、末端付加のみに対して(すなわち、その場合、X6は水素)、あるいは末端付加及び/又は他の基との反応に対して用いることができる。樹脂形成において樹脂又は反応物質上に存在し得る配位子のエポキシド又はハロゲン化物に対して反応性の基としては、第一級及び第二級アミン並びにカルボキシル基及びヒドロキシル基が挙げられるが、これに限定されるものではない。したがって、この反応から生成される被膜形成材料は、樹脂内に、末端及び/又はペンダント型の非イオン性金属配位構造を有し得る。いくつかの実施形態において、求電子性配位子は、3−メチル−1−(オキシラン−2−イル)ブタ−3−エン−2−オン、フェニルグリシド酸エチル、tert−ブチルジメチルシリルグリシジルエーテル;ジエトキシ(3−グリシジルオキシプロピル)メチルシラン;ジグリシジル−1,2−シクロヘキサンジカルボキシレート;3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート;3,4−エポキシテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド;エチル−2,3−エポキシプロパナート;3−グリシドプロピルジメトキシメチルシラン;グリシジルメタクリレート;グリシジル−3−ニトロベンゼンスルホネート;グリシジル−4−ニトロベンゾアート;(3−グリロキシプロピル)トリメトキシシラン;グリシジルトシレート;及びそれらの組み合わせから成る群から選択される。
【0063】
この反応の実施形態は、さらに、例えば、他の求電子試薬、キャッピング剤、停止剤、金属触媒、及びそれらの組み合わせなどの他の反応物質を含み得る。例示的な分子としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ポリオール、ポリアミン、ポリカルボキシ酸、フェノール、及び本明細書のいずれかに記載の金属もしくは金属触媒が挙げられる。いくつかの実施形態において、樹脂は、多官能性アルコール、例えば、ビスフェノールAなどであってもよい。他の実施形態において、樹脂は、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリシロキサン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリエーテル樹脂、アミノプラスト樹脂、又はポリエステル樹脂であってもよい。また、異なる樹脂の混合物も包含される。
【0064】
いくつかの実施形態において、求電子性配位子以外に、他の求電子試薬が反応に含まれていてもよい。これにより、求電子性配位子及び他の求電子試薬が樹脂と反応して、被膜形成材料の様々な混合物を形成することが可能となる。例えば、そのような反応により、被膜形成材料の混合群を得ることができる。例えば、エポキシを形成する場合、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールA、及び求電子性配位子を反応させて、様々な被膜形成材料を形成することが可能であり、この場合、配位子は、得られたポリマーの様々な位置に組み込まれ、被膜形成材料は多くの様々なポリマー長を含み得る。
【0065】
さらに、この反応は、例えば、樹脂(例えば、ビスフェノールA)と他の求電子試薬(例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル)を最初に反応させ、次いで、求電子性配位子を加えたり、又はその逆など、複数の段階によって実施することができる。したがって、これらの実施形態により、長さ、様々な官能性の複数のモノマー、及び被膜形成材料に組み込むモノマー単位の数を調節することが可能となる。
【0066】
求核的及び求電子的な付加技術に加えて、本開示は、求核性配位子又は求電子性配位子が、重合反応において連鎖停止剤又は連鎖成長剤あるいはそれらの組み合わせであってもよい様々な実施形態を含む。これは、単官能性分子(連鎖停止用)及び/又は多官能性分子(連鎖成長反応用)を用いることによって達成され得る。
【0067】
また、反応における求核性配位子又は求電子性配位子の量は、特定の性能特性に対して最適化することができる。いくつかの実施形態において、被膜形成材料の主鎖全体に配位子を組み込む必要はない。実際に、いくつかの実施形態において、ポリマー主鎖中のほとんどの単位は、配位子を含んでいない。十分な硬化結果及び/又は所望する接着特性が実現されるように、組み込まれる配位子の量を調整して、金属及び/又は金属触媒に配位結合するために十分な非イオン性金属配位構造を有する配位子を得ることができる。
【0068】
いくつかの実施形態では、被膜形成材料を形成するために反応中に用いられる様々な成分を調整して、組み込まれる配位子の量及び/又は樹脂ポリマー中の繰り返し単位の数を変えている。実施形態は、末端反応剤(すなわち、ポリマー連鎖停止反応剤)又はキャップ基、あるいは成長基(すなわち、ポリマー連鎖成長反応剤)の1%等量以下から実質的に全ての代わりに配位子を用いることを含む。いくつかの実施形態は、末端反応剤又は成長基の約1%〜約50%等量を配位子で置き換えることを含み、他の実施形態では、約5%〜約15%等量が置き換えられる。
【0069】
反応において使用される配位子の量は、末端付加生成物を所望しているかどうか、又はポリマー連鎖成長配位子を反応生成物全体に組み込むかどうかに応じて変わり得る。反応において末端反応剤又は成長基の少量(例えば、約5%)を置き換える事により、非イオン性金属配位構造を有する配位子(例えば、求核性配位子又は求電子性配位子)を十分に組み込むことができ、その結果、被膜形成材料は十分に金属触媒と配位結合することができる。例えば、例示的な求核的反応スキームに示されているように、いくらかのキャッピングフェノールを、重合される樹脂の全組成物の約5%等量の求核性配位子と置き換えてもよく、この場合、反応物の残りは、フェノール、多官能性エポキシド、及びビスフェノールAを含み得る。様々な他の実施形態において、末端基又は成長基を15%等量を超えて置換することで、被膜形成材料により多くの数の非イオン性金属配位構造を組み込むことができ、それによって、金属基材に対するコーティングの接着性及び/又は金属触媒との配位結合を向上させることができる。
【0070】
いくつかの反応の実施形態では、配位子を過剰量において用いることにより、得られる被膜形成材料の配位子反応性基(例えば、末端基など)の全て又は実質的に全てに、配位子分子を含ませることができる。他の場合では、配位子を被膜形成材料の主鎖全体に組み込んでもよい。このような被膜形成材料は、多くの非イオン性金属配位構造を含有し、金属触媒に配位結合することができ、及び/又は樹脂の金属基材への接着性を向上させることができる。
【0071】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載された反応の生成物を含む被膜形成材料は、樹脂分子の混合群を含み得る。例えば、これらの反応により、n、m、及びpの異なる値の様々な被膜形成材料の部分から成る被膜形成材料生成物を得ることができる。これらの被膜形成材料は、反応における連鎖成長及び連鎖停止の比率を変えることにより、及び/又は反応段階において様々な反応剤を加えることによって得ることができる。
【0072】
本明細書に記載の様々な反応の生成物を含む被膜形成材料は、2006年3月30日に出願された米国特許出願第11/278,030号に記載されているように、重合段階後に無水物を添加することによってイオン性金属配位構造を有する配位子が樹脂の主鎖にグラフト化されているような他の樹脂及び方法と異なる。第一に、本開示は、一段階合成によって実施することができ、2段階グラフト反応を必要としない。第二に、本開示の非イオン性金属配位構造は、イオン性金属配位基と異なり、正味の電荷を有していない。
【0073】
本開示の被膜形成材料は、樹脂(この樹脂は求核試薬に対して反応性の少なくとも1つの基を有する)と求核性配位子を含む反応混合物によって形成された被膜形成材料とを含み、かつ架橋剤とこの被膜形成材料とを組み合わせたコーティング組成物の製造、あるいは樹脂(この樹脂は求電子試薬に対して反応性の少なくとも1つの基を有する)及び求電子性配位子を含む反応混合物によって形成された被膜形成材料を含み、かつ架橋剤とこの被膜形成材料とを組み合わせたコーティング組成物の製造に用いることができる。これらの実施形態は、様々な多官能性エポキシド、求核性配位子、多官能性アルコール、及びエポキシベースの樹脂について説明したような求電子性配位子を含み得る。例えば、求核性配位子及び求電子性配位子並びに被膜形成材料は、本明細書に記載されるように、様々な非イオン性金属配位構造を含む。
【0074】
また、コーティング組成物は、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリシロキサン樹脂、アミノプラスト樹脂、及び/又はポリエステル樹脂を用いて製造することができる。これら様々な樹脂は、当技術分野で公知であるように、樹脂結合を生成するために適切な官能基の反応により形成することができる。そのような反応物質としては、酸と反応してエステル結合を形成するエポキシド;アミンと反応してアミン結合を形成するエポキシド;イソシアネートと反応してウレタン結合を形成するヒドロキシル;無水物と反応してエステル結合を形成するヒドロキシル;ヒドロキシルと反応してエーテル結合を形成するエポキシド;並びにコーティング樹脂形成において一般的に用いられる他の種類の結合が挙げられる。非イオン性金属配位構造を有する配位子は、これらの反応性官能基の結合形成を用いてこれらの樹脂中に組み込まれる。結果として得られるフィルム形成樹脂は、架橋剤に対して反応性の基であり得る架橋性官能基、自己縮合性の基、及び/又は化学線によって硬化し得る基を含む。フィルム形成樹脂に対して反応性の官能基の例としては、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、ウレトジオン基、エポキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルバメート基、アルデヒド基、アミド基、及びアミノ基が挙げられる。
【0075】
いくつかの実施形態において、被膜形成材料は、ビニル樹脂又はアクリル樹脂を含み、この場合、ビニル樹脂は、非イオン性金属配位構造を含む少なくとも1つのペンダント基と、架橋剤に対して反応性の少なくとも1つの基を有する。非イオン性金属配位構造を有するビニル樹脂は、不飽和炭素結合と非イオン性金属配位構造とを有する化合物を樹脂合成に加えることによって形成することができる。付加重合中の組み込みに好適な化合物としては、4−アリル−1,2−ジメトキシベンゼン;2−アリル−2−メチル−1,3−シクロペンタンジオン;2−アリルオキシテトラヒドロピラン;アリルフェニルカーボネート;3−アリルロダニン;アリルトリメトキシシラン;イタコン酸無水物;及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0076】
コーティング組成物の製造についての様々な実施形態において、本開示の被膜形成材料は、単一の樹脂であってもよいし、複数の樹脂から形成されていてもよく、又はさらなる樹脂と組み合わせてもよい。言及したように、被膜形成材料は、粉砕樹脂及び/又は主要樹脂及び/又は架橋剤として使用することができる。顔料分散物及び主要樹脂の製造において、同じ樹脂を使用してもよいし、あるいは様々な樹脂の混合物を使用してコーティング組成物を形成してもよい。着色組成物では、本開示の被膜形成材料を含有するコーティング組成物形成において、粉砕樹脂及び主要樹脂を組み合わせてもよい。
【0077】
本開示の被膜形成材料と共に、さらなる樹脂が含まれていてもよい。例えば、好適なさらなる樹脂としては、エポキシオリゴマー及びエポキシポリマー(例えば、ビスフェノールAのような多価フェノールのポリグリシジルエーテルのポリマー及びオリゴマーなど)が挙げられる。これらは、アルカリの存在下にて、エピハロヒドリン又はジハロヒドリン(例えば、エビクロロヒドリン又はジクロロヒドリンなど)によるポリフェノールのエーテル化によって製造ことができる。好適な多価フェノールとしては、ビス−2,2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス−1,1−(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタンなどが挙げられる。ポリグリシジルエーテル及び多価フェノールは、共に縮合してオリゴマー又はポリマーを形成し得る。他の有用な多官能性エポキシド化合物は、ノボラック樹脂又は同様のポリヒドロキシフェノール樹脂から生成されたものである。また、好適であるのは、多価アルコールのポリグリシジルエーテル、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、及びトリエチレングリコールなどである。また、有用であるのは、エピクロロヒドリン又は同様のエポキシ化合物と、脂肪族又は芳香族のポリカルゴン酸(例えば、コハク酸又はテレフタル酸など)との反応によって製造されたポリカルボン酸のポリグリシジルエーテルである。
【0078】
いくつかの実施形態において、これらのさらなる樹脂は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルとビスフェノールAとの反応生成物である液体エポキシであってもよい。例としては、約100〜1,200以上のエポキシ等量を有する改変された高級化エポキシ樹脂が挙げられる。好適な液体エポキシは、Huntsman社から市販されているGY2600や、Hexion Specialty Chemicals, Inc社から市販されているEpon(登録商標)828である。例えば、エポキシ基含有化合物は、ヒドロキシル基含有化合物(例えば、ビスフェノールA、エトキシ化ビスフェノールA、フェノール、ポリオール、又は置換ポリオールなど)と反応し得る。
【0079】
非イオン性金属配位構造を有する様々な被膜形成材料を含むこれらのさらなる樹脂は、陰極電着塗装での使用のために、アミン含有化合物(例えば、メチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、又はジエチレントリアミンのジケタミン誘導体など)とさらに反応して、樹脂上の塩形成部位を提供し得る。あるいは、第四級アンモニウム、スルホニウム、又はホスホニウム部位を組み込むことができる。あるいは、反応生成物は、陽極電着塗装組成物を作製するために、反応によって酸性官能基を提供することができる。
【0080】
また、様々な実施形態において、コーティング組成物は、硬化剤に対して反応性の基を有する樹脂化合物の混合物を含んでもよい。化合物の混合物としては、硬化剤に対して反応性の2種以上の樹脂、1種以上のコモノマーを含む樹脂混合物、及び少なくとも1種のコモノマーを含む2種以上の樹脂などであってもよい。
【0081】
また、いくつかの実施形態において、本開示は、金属、又は金属原子を有する化合物と被膜形成材料を組み合わせて、樹脂と金属の錯体を形成する工程を含む。このような金属としては、既に言及してある金属及び金属触媒が挙げられる。この金属は、例えば、非イオン性金属配位構造を有する求核性配位子又は求電子性配位子との反応混合物に加えてもよく、又は被膜形成材料群反応に先立って配位子と既に配位結合させてもよい。そのような実施形態において、樹脂と架橋剤とを硬化させるより前に、金属触媒を配位子と組み合わせて、硬化性コーティングを形成することができる。あるいは、金属触媒をコーティング組成物の副成分として被膜形成材料と組み合わせることができる。すなわち、例えば、粉砕樹脂として使用される被膜形成材料に加えてもよい。
【0082】
また、金属触媒は、被膜形成材料の製造における他の様々な段階において、組み入れることができる。いくつかの実施形態では、この金属触媒は、被膜形成材料を形成する段階と同時に、すなわち、被膜形成材料が本明細書に記載の様々な反応混合物によって形成されるときに、求核性配位子又は求電子性配位子と組み合わせることができる。あるいは、樹脂が形成された後、樹脂と架橋剤とを反応させる前に、金属触媒を被膜形成材料と組み合わせて、硬化性コーティングを形成してもよい。例えば、いくつかの実施形態において、顔料含有組成物は、樹脂と架橋剤の反応(すなわち、硬化反応)の段階の前に混合することができる。コーティング組成物は、一般的に、そのような顔料含有組成物を含む。この金属触媒を、金属触媒と被膜形成材料との錯体を形成するために顔料含有組成物中に組み入れてもよい。
【0083】
実施形態では、1種の金属触媒を含み得るが、いくつかの実施形態では、金属触媒の組み合わせを用いることができる。金属触媒(例えば、様々な金属酸化物など)は、金属触媒を被膜形成材料又は配位子と効率的に組み合わせる目的で金属触媒の粒径を小さくするためのさらなる粉砕を必要としないように、低粒径(例えば、20ミクロン未満、より一般的には10ミクロン未満)の粉砕された状態で供給してもよい。
【0084】
コーティング組成物を製造する方法の様々な実施形態は、被膜形成材料に対して反応性のポリイソシアネート架橋剤(すなわち、硬化剤)を含む。ポリイソシアネート架橋剤は、脂肪族、脂環式、アラリファティック、及び/又は芳香族構造に結合した遊離イソシアネート基を有する任意の望ましい有機ポリイソシアネートを含み得る。ポリイソシアネートは、1分子当たり2〜5個のイソシアネート基を有することができる。例示的イソシアネートは、「Methoden der organischen Chemie」(Methods of Organic Chemistry),Houben−Weyl, volume 14/2,4th Edition,Georg Thieme Verlag,Stuttgart 1963,p61〜70、及びW.Siefken,Liebigs Ann.Chem.562,p75〜136に記載されている。好適な例としては、1,2−エチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−及び2,4,4−トリメチル−1,−6ヘキサメチレンジイソシアネート、1,12−ドデカンジイソシアネート、ω,ω’−ジイソシアナートジプロピルエーテル、シクロブタン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−及び1,4−ジイソシアネート、2,2−及び2,6−ジイソシアナート−1−メチルシクロヘキサン、3−イソシアナートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート("イソホロンジイソシアネート")、2,5−及び3,5−ビス(イソシアナートメチル)−8−メチル−1,4−メタノ−デカヒドロナフタレン、1,5−、2,5−、1,6−、及び2,6−ビス(イソシアナートメチル)−4,7−メタノヘキサヒドロインダン、1,5−、2,5−、1,6−、及び2,6−ビス(イソシアナート)−4,7−メチルヘキサヒドロインダン、ジシクロヘキシル−2,4’−及び4,4’−ジイソシアネート、2,4−及び2,6−ヘキサヒドロトリレンジイソシアネート、ペルヒドロ−2,4’−及び4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ω,ω’−ジイソシアナート−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−及び1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナートビフェニル、4,4’−ジイソシアナート−3,3’−ジクロロビフェニル、4,4’−ジイソシアナート−3,3’−ジメトキシビフェニル、4,4’−ジイソシアナート−3,3’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジイソシアナート−3,3’−ジフェニルビフェニル、2,4’−及び4,4’−ジイソシアナートジフェニルメタン、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(例えば、2,4−及び2,6−トリレンジイソシアネート)、N,N’−(4,4’−ジメチル−3,3’−ジイソシアナートジフェニル)ウレトジオン、m−キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、並びにトリイソシアネート(例えば、2,4,4’−トリイソシアナートジフェニルエーテル、4,4’,4’’−トリイソシアナートトリフェニルメタン)である。また、ポリイソシアネートは、イソシアヌレート基及び/又はビウレット基及び/又はアロファネート基及び/又はウレタン基及び/又は尿素基を有していてもよい。例えば、ウレタン基を有するポリイソシアネートは、いくぶんかのイソシアネート基とポリオール(例えば、トリメチロールプロパン及びグリセロール)とを反応させて得ることができる。好適な架橋剤の例としては、非ブロック化ポリイソシアネート化合物及びブロック化ポリイソシアネート化合物、例えば、自己ブロック化ウレトジオン化合物など;カプロラクタムポリイソシアネート及びオキシム−ブロック化ポリイソシアネート;ジイソシアネートのイソシアヌレート;ポリオールによって半ブロック化されたジイソシアネート;及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0085】
さらなるポリイソシアネート架橋剤としては、ポリマー性MDI、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートのオリゴマー、又はエチレングリコールエーテル又はプロピレングリコールエーテルでブロック化した他のポリイソシアネートなどが挙げられる。ウレタン基を含有するそのような架橋剤は、例えば、Lupranate(登録商標) M20Sや、又は他の同様の市販されている材料から製造することができる。ポリイソシアネート化合物は、特に、BASF AG社、Degussa AG社、及びBayer Polymers,LLC社から市販されている。
【0086】
いくつかの実施形態において、熱硬化は、イソシアネート(遊離又はブロック化)と活性水素官能基(例えば、ヒドロキシル又は第一級もしくは第二級アミンなど)との反応;又はアミノプラストと活性水素物質(例えば、カルバマート基、尿素基、アミド基、又はヒドロキシル基など)との反応;エポキシと活性水素物質(例えば、酸、フェノール、又はアミン)との反応;環状カルボナートと、第一級又は第二級アミンなどの活性水素物質との反応;シラン(すなわち、Si−O−R、ここでR=H、アルキル基、又は芳香族基、あるいはエステルである)と活性水素物質との反応が挙げられ、並びに活性水素物質がSi−OHの場合、これらの架橋剤の組み合わせの混合物も含まれる。
【0087】
また、本開示は、架橋剤又は硬化剤が、非イオン性金属配位構造を有し、この非イオン性金属配位構造が本明細書に記載された様々な実施形態を含むような、様々な実施形態を包含する。いくつかの実施形態において、コーティング組成物の製造方法は、本明細書に記載された様々な反応混合物によって被膜形成材料を形成する工程、及び非イオン性金属配位構造を有する架橋剤と被膜形成材料とを組み合わせる工程を包含する。例えば、これらのコーティング組成物を硬化させる場合、結果として得られる硬化フィルムは、被膜形成材料から組み込まれた非イオン性金属配位構造及び/又は架橋剤から組み込まれた非イオン性金属配位構造を含み得る。この非イオン性金属配位基は、上記の組成物から形成された塗装膜による金属への接着性を向上させるために用いることができる。いくつかの実施形態において、コーティング組成物を形成する前に、非イオン性金属配位構造を含むこの架橋剤と1種以上の金属触媒との錯体を形成させることができるし、あるいは、架橋剤と被膜形成材料とを組み合わせた後で金属触媒を加えることもできる。
【0088】
いくつかの実施形態において、コーティング組成物の製造方法は、さらに、被膜形成材料上に塩形成部位を形成する工程を含み得る。被膜形成材料はさらに、アミン含有化合物(例えば、メチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、又はジエチレントリアミンのジケタミン誘導体など)と反応して、陰極における電着塗装に用いるために、樹脂上に塩形成部位を提供し得る。あるいは、第四級アンモニウム、スルホニウム、又はホスホニウム部位を組み込むことができる。又は、反応生成物は、酸性官能基と反応して、陽極電着塗装組成物又はアニオン性水性コーティング組成物を作製することができる。
【0089】
これらの塩形成部位は、例えば電解析出性コーティング組成物又は他の水性コーティング組成物を形成する際の水性分散液形成において、反応するか又は塩を形成する。この被膜形成材料は、陰極電着塗装組成物に用いるための、酸と共に塩を形成する塩基性基を有し得る。この反応は、「中和」又は「酸性塩形成」と呼ばれ、特に、樹脂に水分散性を付与するための、塩基性アミノ基の中和に十分な量でのペンダント型アミノ基又は第四級アミノ基と酸性化合物との反応を意味する。具体例としての酸性化合物としては、リン酸、プロピオン酸、酢酸、乳酸、ギ酸、スルファミン酸、アルキルスルホン酸、及びクエン酸が挙げられる。あるいは、酸性樹脂は、塩基と共に塩を形成して、陽極電着塗装組成物を形成し得る。例えば、アンモニア又はアミン(例えば、ジメチルエタノールアミン、トリエチルアミン、アミノメチルプロパノール、メチルエタノールアミン、及びジエタノールアミンなど)を用いて、陽極電着塗装組成物を形成することができる。
【0090】
また、いくつかの実施形態において、コーティング組成物は、少なくとも1種の添加剤を含むことができる。電着塗装組成物を含むコーティング組成物に有用な多くのタイプの添加剤が公知である。そのような添加剤としては、有機溶媒、界面活性剤、分散剤、光沢を増したり減らしたりするための添加剤、触媒、顔料、充填剤、及び塩形成剤などが挙げられる。さらなる添加剤としては、さらに、ヒンダードアミン光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、安定化剤、湿潤剤、レオロジー制御剤、接着促進剤、及び可塑剤が挙げられる。このような添加剤は周知であり、コーティング組成物に対して一般的に用いられる量において含有され得る。
【0091】
いくつかの実施形態において、水性コーティング組成物の製造方法において、この被膜形成材料を用いることができる。コーティング組成物の水性媒体は、一般的に、排他的に水であるが、少量の有機溶媒を使用することもできる。有用な溶媒の例としては、エチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、キシレン、N−メチルピロリドン、メチルイソブチルケトン、ミネラルスピリット、ブタノール、ブチルアセタート、トリブチルホスファート、ジブチルフタラートなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。しかしながら、コーティング工程からの有機揮発物の放出を最小限にするために、有機溶媒の使用を避けることができる。
【0092】
好適な界面活性剤の例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸のジメチルエタノールアミン塩、ナトリウムジオクチルスルホスクシナート、エトキシ化ノニルフェノール、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート、界面活性剤のSurfynol(登録商標)シリーズ(Air Products and Chemicals, Inc.社)、及びAmine−C (Huntsman社)が挙げられるが、これに限定されるものではない。一般的に、イオン性及び非イオン性の両方の界面活性剤を共に用いてもよく、並びに、例えば、電着塗装組成物における界面活性剤の量は、固形分の総量に対して0〜2%であってもよい。界面活性剤の選択は、コーティング方法に応じて変わり得る。例えば、イオン性界面活性剤は、特定の電着塗装組成物に対して、それが陰極性又は陽極性であっても、適合しなければならない。
【0093】
コーティング組成物がプライマー組成物又は顔料添加トップコート組成物(例えば、ベースコート組成物など)の場合、1種類以上の顔料及び/又は充填剤を含有していてもよい。顔料及び充填剤は、コーティング組成物の総質量に対して、通常約40質量%までの量で用いることができる。使用する顔料は、金属酸化物、クロム酸塩、モリブデン酸塩、リン酸塩、及びケイ酸塩などの無機顔料であってもよい。使用できる無機顔料及び充填剤の例としては、二酸化チタン、硫酸バリウム、カーボンブラック、黄土、シエナ土、アンバー、赤鉄鉱、褐鉄鉱、赤色酸化鉄、透明赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、褐色酸化鉄、酸化クロムグリーン、クロム酸ストロンチウム、リン酸亜鉛、シリカ、例えば、ヒュームドシリカ、炭酸カルシウム、タルク、バライト、アンモニウムヘキサシアノ酸鉄(II)(プルシアンブルー)、ウルトラマリン、クロム酸鉛、モリブデン酸鉛、及びマイカフレーク顔料が挙げられる。また、有機顔料も使用してもよい。有用な有機顔料の例としては、金属化及び非金属化アゾレッド、キナクリドンレッド及びバイオレット、ペリレンレッド、銅フタロシアニンブルー及びグリーン、カルバゾールバイオレット、モノアリリドイエロー及びジアリリドイエロー、ベンズイミダゾロンイエロー、トリルオレンジ、ナフトールオレンジなどが挙げられる。
【0094】
本明細書に記載の方法に従って形成されたコーティング組成物は、当技術分野において公知の任意の技術によって基材上にコーティングすることができる。これらの技術としては、例えば、スプレーコーティング、ディップコーティング、ローラーコーティング、カーテンコーティング、ナイフコーティング、コイルコーティングなどが挙げられる。いくつかの実施形態において、本発明のコーティング組成物は、電解析出可能であり、電解析出により基材上に塗装することができる。電解析出された、又は塗装されたコーティング層は、樹脂と架橋剤の反応により基材上で硬化させることができる。
【0095】
コーティング組成物は、当技術分野において通常実施されているように電解析出することができる。電解析出法は、電気伝導性の物品を本発明のコーティング組成物を含む電着塗装浴に浸漬する工程、その物品を陰極又は陽極として(好ましくは陰極として)接続する工程、直流を用いてコーティング組成物フィルムを物品上に析出させる工程、コーティングされた物品を電着塗装浴から取り出す工程、及び析出された電着塗装材料フィルムに対してベーク処理などの従来の熱硬化処理を施す工程を包含する。
【0096】
また、本発明のコーティング組成物は、コイルコーティングとしても有用である。コイルコーティングは、経済的で高速の処理方法において、コイル状薄板金属材(例えば、鉄鋼又はアルミなど)に対して塗工される。コイルコーティング法は、他のコーティング方法(例えば、コーティング組成物のスプレー塗工など)と比較してコーティング材の浪費が少なく及び有機物の放出があまり生じずに、高品質で均一なコーティングが得られる。
【0097】
ポリエステル樹脂は、コイルコーティング組成物として用いることができ、分岐鎖状のポリエステル及び/又は実質的に直鎖状のポリエステル、並びに架橋剤を含んでもよい。非イオン性金属配位構造を有する配位子は、ポリエステル及び/又は架橋剤に組み込むことができる。分岐鎖状ポリエステルは、ポリオール成分とポリ酸成分の縮合によって製造することができ、ポリオール成分及びポリ酸成分のいずれかがさらに配位子を含み得るか又は配位子に対して反応可能であり得る。ポリエステル合成は、好適な公知の条件下、例えば、約150℃〜約250℃の温度において、触媒(例えば、ジブチル酸化スズ、塩化スズ、二水酸化ブチルクロロスズ、又はテトラブトキシチタネート)を使用して、もしくは使用せずに、通常、反応を完了へと進めるために副生成物の水を除去しながら(例えば簡単な蒸留、共沸蒸留、真空蒸留によって)実施してもよい。架橋剤は、ポリエステルのヒドロキシル官能基に対して反応性の基を有する。好適な架橋剤としては、アミノプラスト及びイソシアネート架橋剤が挙げられるが、これに限定されるものではない。コイルコーティング組成物はさらに、通常は顔料を含み、並びに他の添加剤及び充填剤を含んでもよい。
【0098】
コイルコーティングは、1つのコイルの終わりが後続のコイルの始まりに連結される(例えば、ステープル留め)連続供給作業である。コイルは、最初にアキュムレーター塔に供給され、コーティング剤は出口アキュムレーター塔に供給される。コイルの取り入れが遅れた場合でも、アキュムレーター塔によりコーティング作業を一定速度で継続することが可能となる。例えば、1ロールが完了し、新規のロールを開始するために鉄鋼を切断するなどの場合に、新規のロールの開始又は鉄鋼の巻き取りのために、コイル送りを遅らせることができる。コイルは、一般的に、オイル又は破片を除去するために清浄され、前処理され、両面をプライマーで下塗りされ、ベーク処理によりプライマーを硬化させ、急冷により金属を冷却し、次いで少なくとも片面をトップコートで被覆される。別個の裏材料又は異なるトップコートを他方の面に適用してよい。トップコートはベーク処理され、急冷されて、出口アキュムレーター塔に供給され、そこで再巻き取りされる。
【0099】
コーティング組成物は、例えば、金属基材(例えば、未処理鉄鋼、リン酸処理鉄鋼、亜鉛メッキ鋼、金、又はアルミなど)、及び非金属基材(例えば、プラスチック及び電気伝導性有機層など)などの多くの様々な基材上に塗工することができる。電着塗装(例えば、電解析出)又は電気スプレーでは、電気伝導性の基材のみ用いることができる。また、この基材は、既にその上に硬化又は硬化されていない他のコーティングの層(例えば、電解析出されたプライマー、プライマーサーフェーサー、及び/又はベースコートの層など)を有する任意のこのような材料であってもよい。基材が金属の場合、配位子を有する被膜形成材料は、基材へのフィルム接着性を改善する役割を果たし得る。
【0100】
硬化のための様々な方法を用いてもよいが、いくつかの実施形態では、熱硬化を用いることができる。一般的に、熱硬化は、反応剤(すなわち、被膜形成材料及び架橋剤)が不溶性の高分子網目構造を形成するのに十分な温度と期間において加熱することにより実施される。硬化温度は、電着塗装組成物に対して約150℃〜約200℃であってもよく、また硬化時間は約15分間〜約60分間であってもよい。硬化温度はより低い温度であってもよく、例えば、いくつかの実施形態では、被膜形成材料において非イオン性金属配位構造に対して金属触媒が錯体を形成する160℃以下であってもよい。したがって、場合によっては、より低いベーク処理温度を用いることができる。加熱処理は、赤外線式及び/又は対流式オーブンにおいて実施することができる。
【0101】
コイルコーティング組成物は、所定の最高到達板温で硬化する。最高到達板温は、オーブン温度が高いと、より迅速に到達し得る。コイルコーティングのためのオーブン温度は、一般的に、180℃〜約250℃の間の最高到達板温を得るために約220℃〜約500℃の範囲であり、オーブンでの滞在時間は約15秒〜約80秒の範囲である。オーブン温度、最高到達板温、及び滞在時間は、コーティング組成物、基材、所望する硬化レベルに従って調整される。コイルコーティング法の例は、これらは参考として本明細書で援用される、米国特許第6,897,265号、同第5,380,816号、同第4,968,775号、及び同第4,734,467号において開示されている。
【0102】
本開示の被膜形成材料、コーティング組成物、及び方法は、いくつかの利点を提供する。例えば、本開示に従って製造されたコーティング組成物では接着性及び腐食性能が向上するため、金属表面の前処理(例えば、リン酸処理など)を省くことができる。接着性の向上は、被膜形成材料に組み込まれた非イオン性金属配位部位と金属基材が錯体を形成するためであり得る。鉄鋼基材のコーティングおいてリン酸処理工程を省くことにより、時間とコストを節約することができる。さらに、金属触媒が被膜形成材料(又は樹脂形成に用いられた配位子)と共に錯体を形成することにより、塗工されたコーティング組成物の硬化応答性及び触媒効率が向上し得る。これらの向上は、架橋マトリックス中において反応性の官能基に金属触媒を近接させることにより実施することができる。
本技術は、さらに以下の実施例において説明する。実施例は単に例示するためのものであり、記載されかつ特許請求される本技術の範囲を決して限定するものではない。全ての構成要素は、特記しない限り質量部である。適用可能であれば、本技術の実施形態を実施するのに好適な商標名の化合物が含まれてもよい。
【0103】
実施例1A〜1D
実施例1Aから1Dは、記載のように、それぞれの表に示されているように製造する。実施例1Aは、連鎖停止配位子としてフェノールを用いており、この配位子は、ポリマーの総組成物の5質量%未満において添加される。実施例1Bでは、同じ配位子分子を用いており、この場合、末端基の代わりにエチルフェニルグリシデートを用いており、ビスフェノールAの量を増やして、アミンキャップ工程前のポリマーの高級化反応の完了後の未反応のエポキシの同等量が残るようにした。実施例1Cでは、キャップ基の半量の代わりにエチルフェニルグリシデートを用い、残りの半量の代わりに4−ヒドロキシ安息香酸エチルを用いる。もう一度、ポリマーの高級化反応の完了後に、ビスフェノールA及び液体エポキシを調整して、未反応エポキシの同等量が残るようにした。実施例1Dでは、キャップ基の代わりに、4−ヒドロキシ安息香酸エチルを用いる。
【0104】
エマルジョン1A〜1Dとして、反応生成物を水中に乳化させる。さらに、顔料ペーストとしても知られる顔料含有組成物を用いる。これらの実施形態において、金属触媒をこの顔料ペースト中に混合し、この金属触媒を含有する顔料ペーストをエマルジョンに混合して、電着塗装浴とし、この際、金属触媒は、ヒドロキシ官能性被膜形成材料と共に錯体を形成する。
【0105】
エマルジョン例1A
以下の材料を、マントルヒーターを備えた5Lフラスコ中で混合する:
ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA)、(652.05g、6.4エポキシ当量)
ビスフェノールA(BPA)、(148.27g、2.0OH当量)
フェノール
エチルフェニルグリシデート(34.14g、0.3当量)、及び
ブトキシプロパノール(25.16g)
攪拌中、温度は125℃まで上昇した。続いて、トリフェニルホスフィン(1.16g)を加え、発熱を記録した(189℃)。次に、混合物を132℃まで降温させ、エポキシ当量(WPE)の定量(目標=525±25)を行ったところ、550であった。82℃まで冷却しマントルヒーターをオフにした後、Synfac 8009(可塑剤)92.24gを加え、第二級アミンの混合物1.10N当量を導入し、発熱を記録した(105℃)。この混合物が発熱に達した後、さらに30分間攪拌した。30分間攪拌した後、105℃にて3−ジメチルアミノプロピルアミン(30.46g、0.55当量)を加え、発熱を記録した(145℃)。この混合物を、さらに1時間攪拌した。架橋剤(491.40g)を加えた。この架橋剤は、ポリマー性MDIと単官能性アルコールを主成分とするブロック化イソシアネートである。
【0106】
均一に混合した後、樹脂及び架橋剤の混合物を、脱イオン水(1152g)及びギ酸(88%)(15.57g)の酸/水混合液に攪拌しながら加えた。金属スパチュラを用いて全成分を十分に混合した後、さらに水(1142g)を加えて固体を減じた。流動−添加剤パッケージ(94g)を酸混合物に加えた。上記で用いた様々な溶媒を含む全ての原材料は工業用であり、さらなる精製は行っていない。
【0107】
エマルジョン例1B
以下の材料を、マントルヒーターを備えた5Lフラスコ中で混合する:
ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA)、(619.45g、6.4エポキシ当量)、
ビスフェノールA(BPA)、(258.24g、2.2OH当量)、
エチルフェニルグリシデート(108.12g、1.0当量)、及び
ブトキシプロパノール(23.90g)
攪拌中、温度は125℃まで上昇した。続いて、トリフェニルホスフィン(1.16g)を加え、発熱を記録した(189℃)。次に、混合物を132℃まで降温させ、WPEの定量(目標=620±25)を行ったところ、605であった。82℃まで冷却しマントルヒーターをオフにした後、Synfac 8009(可塑剤)87.63gを加え、第二級アミンの混合物1.10N当量を導入し、発熱を記録した(105℃)。この混合物が発熱に達した後、さらに30分間攪拌した。30分間攪拌した後、107℃にて3−ジメチルアミノプロピルアミン(28.93g、0.55当量)を加え、発熱を記録した(145℃)。この混合物を、さらに1時間攪拌した。そして、架橋剤(466.83)を加えた。この架橋剤は、ポリマー性MDIと単官能性アルコール(例えば、ジエチレングリコールブチルエーテルなど)を主成分とするブロック化イソシアネートである。均一に混合した後、樹脂及び架橋剤の混合物を、脱イオン水(1152g)及びギ酸(88%)(28.93g)の酸/水混合液に攪拌しながら加えた。金属スパチュラを用いて全成分を十分に混合した後、さらに水(1085g)を加えて固体を減じた。流動−添加剤パッケージ(89.3g)を酸混合物に加えた。上記で用いた様々な溶媒を含む全ての原材料は工業用であり、さらなる精製は行っていない。
【0108】
エマルジョン例1C
以下の材料を、マントルヒーターを備えた5Lフラスコ中で混合する:
ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA)、(619.45g、6.4エポキシ当量)、
ビスフェノールA(BPA)、(258.24g、2.2OH当量)、
エチルフェニルグリシデート(54.06g、0.5当量)
4−ヒドロキシ安息香酸エチル(42.73g、0.5当量)、及び
ブトキシプロパノール(23.90g)
攪拌中、温度は125℃まで上昇した。続いて、トリフェニルホスフィン(1.16g)を加え、発熱を記録した(183℃)。次に、混合物を132℃まで降温させ、WPEの定量(目標=600±25)を行ったところ、605であった。82℃まで冷却してマントルヒーターをオフにした後、Synfac 8009(可塑剤)87.63gを加え、第二級アミンの混合物1.10N当量を導入し、発熱を記録した(105℃)。この混合物が発熱に達した後、さらに30分間攪拌した。30分間攪拌した後、107℃にて3−ジメチルアミノプロピルアミン(28.93g、0.55当量)を加え、発熱を記録した(145℃)。この混合物を、さらに1時間攪拌した。架橋剤(466.83)を加えた。この架橋剤は、ポリマー性MDIと単官能性アルコール(例えば、ジエチレングリコールブチルエーテルなど)を主成分とするブロック化イソシアネートである。均一に混合した後、樹脂及び架橋剤の混合物を、脱イオン水(1152g)及びギ酸(88%)(28.93g)の酸/水混合液に攪拌しながら加えた。金属スパチュラを用いて全成分を十分に混合した後、さらに水(1085g)を加えて固体を減じた。流動−添加剤パッケージ(89.3g)を酸混合物に加えた。上記で用いた様々な溶媒を含む全ての原材料は工業用であり、さらなる精製は行っていない。
【0109】
エマルジョン例1D
以下の材料を、マントルヒーターを備えた5Lフラスコ中で混合する:
ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA)、(619.45g、6.4エポキシ当量)、
ビスフェノールA(BPA)、(140.86g、1.2OH当量)、
4−ヒドロキシ安息香酸エチル(85.46g、0.5当量)、及び
ブトキシプロパノール(23.90g)
攪拌中、温度は125℃まで上昇した。続いて、トリフェニルホスフィン(1.10g)を加え、発熱を記録した(185℃)。次に、混合物を132℃まで降温させ、WPEの定量(目標=560±25)を行ったところ、550であった。82℃まで冷却しマントルヒーターをオフにした後、Synfac 8009(可塑剤)87.63gを加え、第二級アミンの混合物1.10N当量を導入すると、発熱を記録した(107℃)。この混合物が発熱に達した後、さらに30分間攪拌した。30分間攪拌した後、107℃にて3−ジメチルアミノプロピルアミン(28.93g、0.55当量)を加え、発熱を記録した(145℃)。この混合物を、さらに1時間攪拌した。架橋剤(466.83)を加えた。この架橋剤は、ポリマー性MDIと単官能性アルコール(例えば、ジエチレングリコールブチルエーテルなど)を主成分とするブロック化イソシアネートである。均一に混合した後、樹脂及び架橋剤の混合物を、脱イオン水(1152g)及びギ酸(88%)(28.93g)の酸/水混合液に攪拌しながら加えた。金属スパチュラを用いて全成分を十分に混合した後、さらに水(1085g)を加えて固体を減じた。流動−添加剤パッケージ(89.3g)を酸混合物に加えた。上記で用いた様々な溶媒を含む全ての原材料は工業用であり、さらなる精製は行っていない。
【0110】
電解析出配合実施例1A〜1Dにおいて用いたペーストは、参考として本明細書で援用される、Reuterらによる米国特許第6,951,602号に記載されているように製造した。
【0111】
顔料ペーストの製造
第三級アンモニウム基を有する粉砕樹脂溶液の製造:欧州特許第0505445号明細書の実施例1.3により、第1工程において、ビスフェノール−A−ジグリシジルエーテル(エポキシ当量(EEW)188g/eq)2598部、ビスフェノールA787部、ドデシルフェノール603部、及びブチルグリコール206部を、ステンレススチール反応器中において、トリフェニルホスフィン4部の存在下130℃で、EEWが865g/eqに達するまで反応させて、水性有機粉砕樹脂溶液を製造した。冷却中に、このバッチを、ブチルグリコール849部及びD.E.R.(登録商標)732(ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、DOW Chemical、USA)1534部によって希釈し、さらに90℃で2,2’−アミノエトキシエタノール266部及びN、N−ジメチルアミノプロピルアミン212部と反応させた。2時間後、この樹脂溶液の粘度は一定であった(5.3dPa・s;Solvenon(登録商標)PM(メトキシプロパノール、BASF/ドイツ)中40%濃度;23℃で円錐平板粘度計)。この樹脂溶液をブチルグリコール1512部で希釈し、塩基性基を氷酢酸201部で部分的に中和して、その生成物をさらに脱イオン水1228部で希釈して、フラスコから取り出す。これにより、その10%希釈物がpH6.0の、60%濃度の水性有機樹脂溶液が得られた。この樹脂溶液を、そのままの形でペースト製造に使用した。
【0112】
顔料ペーストの製造:この目的のために、最初に水1897部及び上記の粉砕樹脂溶液1750部を予め混合しておいた。次いで、Disperbyk(登録商標)110(Byk−Chemie GmbH/ドイツ)21部、Lanco Wax(登録商標)PE W 1555(Langer&Co./ドイツ)14部、カーボンブラック42部、含水ケイ酸アルミニウム ASP 200(Langer&Co./ドイツ)420部、二酸化チタンTI−PURE(登録商標)R 900(DuPont、USA)2667部、及びジ−n−ブチルスズオキシド189部を加えた。この混合物を、高速溶解攪拌機により30分間予備分散させた。続いて、この混合物を小型実験用ミル(Motor Mini Mill、Eiger Engineering Ltd.、イギリス)中で、Hegmann微粉度12μm以下まで1〜1.5時間かけて分散させ、さらに水を加えて固体含有量を調節した。これにより、分離安定性顔料ペーストP1が得られた。固体含有量:60.0%(180℃で1/2時間)。
【0113】
実施例1Aの電解析出配合組成
第1表 実施例1Aの変数
【表1】

【0114】
1ガロンのバケット中において、このエマルション及び水を一定に攪拌しながら混合した。攪拌しながら、ペーストを加えた。
【0115】
実施例1Bの電解析出配合組成
第2表 実施例1Bの変数
【表2】

【0116】
1ガロンのバケット中において、このエマルション及び水を、一定に攪拌しながら混合した。攪拌しながら、ペーストを加えた。
【0117】
実施例1Cの電解析出配合組成
第3表 実施例1Cの変数
【表3】

【0118】
1ガロンのバケット中において、このエマルション及び水を、一定に攪拌しながら混合した。攪拌しながら、ペーストを加えた。
【0119】
実施例1Dの電解析出配合組成
第4表 実施例1Dの変数
【表4】

【0120】
1ガロンのバケット中において、このエマルション及び水を、一定に攪拌しながら混合した。攪拌しながら、ペーストを加えた。
【0121】
実施例1A〜1Dから製造されたコーティングの特性を検証するために、形成された実施例1A〜1Dの水性コーティング組成物により、試験パネルを製造した(詳細は下記に記載)。試験には、MEKダブルラビング耐溶剤性試験及び腐食試験などが含まれる。これらの試験の詳細については、下記においてさらに説明する。2種類のパネル基材(すなわちリン酸処理した冷間圧延鋼(CRS)パネル及び未処理のCRS)を用いた。すべてのパネルは、4インチ×6インチのサイズであり、ACTから購入した。特定の試験に応じて、パネルに電着塗装して、膜厚約0.40ミル及び0.80ミルの塗膜を作製した。
【0122】
段階的に電圧を変えて、3つの異なるベーク処理温度において2つの異なる基材に対し塗膜を形成し、電圧がどのように塗膜に影響するかを観察し、結果を集計した。
【0123】
第5表 実施例1A、リン酸処理CRSパネル
【表5】

【0124】
第6表 実施例1A、未処理CRSパネル
【表6】

【0125】
第7表 実施例1B、リン酸処理CRSパネル
【表7】

【0126】
第8表 実施例1B、未処理CRSパネル
【表8】

【0127】
第9表 実施例1C、リン酸処理CRSパネル
【表9】

【0128】
第10表 実施例1C、未処理CRSパネル
【表10】

【0129】
第11表 実施例1D、リン酸処理CRSパネル
【表11】

【0130】
第12表 実施例1D、未処理CRSパネル
【表12】

【0131】
MEKダブルラビング耐溶剤性試験:
硬化を評価するための一次スクリーニングツールとして、メチルエチルケトン(MEK)による二重摩擦を実施した。パネルは、亜鉛リン酸処理の有無のCRSを用い、コーティング組成物でコーティングし、様々な時間及び温度で硬化させて、硬化コーティングを形成した。
【0132】
1枚のMEKに浸したチーズクロスを用い、人差し指に巻き付け、合計25回及び50回、わずかに圧力をかけながらダブルラビング試験を実施した。ダブルラビング試験後に、パネルを評価した:0(変更なし)、1(わずかに変化)、3(中程度の変化)、5(重度の変化−金属が露出、破損)。
【0133】
実施例1A〜1DのMEKダブルラビング耐溶剤性試験の全データを第13表〜第20表に示す。比較として市販のコーティング組成物CathoGuard(登録商標) 500 (BASF Corp.)のデータは第21表に示す。また、表には、MEKデータに加えて、角度60°で測定した光沢データも示してある。
【0134】
第13表 実施例1A、リン酸処理CRSパネル
【表13】

【0135】
第14表 実施例1A、未処理CRSパネル
【表14】

【0136】
第15表 実施例1B、リン酸処理CRSパネル
【表15】

【0137】
第16表 実施例1B、未処理CRSパネル
【表16】

【0138】
第17表 実施例1C、リン酸処理CRSパネル
【表17】

【0139】
第18表 実施例1C、未処理CRSパネル
【表18】

【0140】
第19表 実施例1D、リン酸処理CRSパネル
【表19】

【0141】
第20表 実施例1D、未処理CRSパネル
【表20】

【0142】
第21表 対照標準としてのCathogard 500、リン酸処理CRSパネル
【表21】

【0143】
腐食試験(ダブルスキャブ):
未被覆CRSパネルを実施例1A〜1Dのウレタンコーティング組成物でコーティングして約0.4ミルのウレタン被膜を形成した。なお、3つのパネルは、それぞれの実施例のそれぞれの温度でコーティングした。これらのパネルを、約300°F、325°F、及び350°Fにて、約20分間硬化させた。
【0144】
コーティング後、各パネルに「X」状の引掻き傷をつけた。初期接着とショットブラストは、腐食試験では省く。1日の試験シーケンスと試験サイクルは、火曜日から金曜日の間の任意の週日にパネルに対して実施した。合計25回の試験サイクルでは、各サイクルについて同じ1日分の処理を施して実施した。このサイクルは、最初に各パネルをオーブン温度60℃で60分間ベーク処理し、30分間徐々に室温まで冷却した。塩への浸漬試験及び湿度試験については、最初に各パネルを5%(質量)NaCl水溶液中に15分間浸漬し、その後周囲温度で75分間乾燥することによって実施した。これは1週間に1回実施した。浸漬後、パネルを、60℃に設定された湿度キャビネット(湿度85%)セットに22.5時間置いた。週末も、パネルを湿度キャビネット中に保持した。36日、25サイクル後、パネルを試験から取り出し、十分に洗浄して、金属スパチュラで全ての剥がれそうになった塗料を擦り取った。次いで、キャリパーを用いてスキャブの各辺にそってランダムに測定して、平均腐食幅を測定した。これを、3つの異なるパネル全てについて同一条件下で実施した。
【0145】
腐食試験の結果は、図1にまとめて示す。
【0146】
実施例2
非イオン性金属配位構造を含む電解析出可能なアクリル性コーティング組成物
カチオン化樹脂の製造(成分A):(1)撹拌機、温度計、窒素導入口、及び還流冷却器を備えたフラスコに、ブチルセロソルブ541部を入れ、攪拌しながら120℃まで加熱した。温度を維持しながら、以下の化合物:スチレン(484部);2−アリルオキシテトラヒドロピラン(26部);2−ヒドロキシエチルメタクリレート(340部);n−ブチルアクリレート(114部);「FM−3」(113部)(FM−3は、ダイセル化学工業の製品であり、ε−カプロラクトンを2−ヒドロキシルエチルメタクリレートに付加させることにより製造したヒドロキシル基含有の重合性不飽和化合物である);アクリル酸(57部);及び、アゾイソブチロニトリル(68部)、の混合物を3時間かけて滴下して加えた。
【0147】
滴下添加の完了後、得られた混合物を1時間同じ温度に維持した。アゾイソブチロニトリル11.3部及びブチルセロソルブ85部の混合溶液を1時間かけて滴下して加えた。この混合物を1時間同じ温度に維持し、カルボキシル基及びヒドロキシル基を含有するアクリルポリマー溶液(固形分63%)を得た。このポリマーは、約40mgKOH/gの酸価、約140mgKOH/gのヒドロキシル価、及び約13,000の数平均分子量を有する。
【0148】
(2)撹拌機、温度計、窒素導入口、及び還流冷却器を備えたフラスコに、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート1,000部を入れ、50℃で溶解させた。同じ温度で、ジエチレングリコールモノエチルエーテル750部を加えて、固体のイソシアネート含有量が5.76%になるまで反応を進行させ、これにより、部分的にブロック化されたイソシアネート化合物を得た。
【0149】
(3)撹拌機、温度計、窒素導入口、及び還流冷却器を備えたフラスコに、ビスフェノールA272部、ビスフェノールAジグリシジルエーテルタイプのエポキシ樹脂(エポキシ当量は185)815部、及びテトラエチルアンモニウムブロミド0.25部を入れた。反応生成物のエポキシ当量が570になるまで、150℃で反応を進行させた。反応混合物を120℃まで冷却した後、(2)で得た部分的にブロック化イソシアネート化合物440部を加え、110℃で2時間反応を進行させた。続いて、ブチルセロソルブ200部、上記のアクリルポリマー溶液(固形分63%)650部、及びジエタノールアミン160部を加えた。エポキシ基が無くなるまで、110℃で反応を進行させた。この混合物を、ブチルセロソルブ375部で希釈して、ヒドロキシル基及びアミノ基を含有するアクリル樹脂溶液(固形分72%)を得た。カチオン基の導入の前の樹脂は、約700のエポキシ当量、約80mgKOH/gのヒドロキシル価、及び約2,500の数平均分子量を有した。
【0150】
アクリル樹脂の製造(成分B):ブチルセロソルブ(登録商標)(n−ブトキシエタノール)(184部)を130℃まで加熱し、以下の化合物:スチレン(296部);2−アリルオキシテトラヒドロピラン(16部);2−ヒドロキシエチルメタクリレート(216部);「FM−3」(192部);ジメチルアミノエチルメタクリレート(80部);及び、アゾイソブチロニトリル(40部)、の混合物を3時間かけて滴下して加えた。
【0151】
反応混合物を同じ温度で1時間熟成させ、アゾビスジメチルバレロニトリル8部及びメチルイソブチルケトン56部の混合溶液を、同じ温度で1時間かけて滴下して加えた。この反応混合物をさらに1時間同じ温度で熟成させ、ブチルセロソルブ(登録商標)で希釈して、ヒドロキシル基及びアミノ含有アクリル樹脂溶液(固形分70%)を得た。得られた樹脂は、約15,000の数平均分子量、約145mgKOH/gのヒドロキシル価、及び約36mgKOH/gのアミン価を有する。
【0152】
イソシアネート架橋剤(成分C)の製造:ジエチレングリコールモノエチルエーテル268部を、50℃にて4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート250部に滴下して加え、遊離イソシアネート基が無くなるまで80℃で反応を進行させた。その結果、完全にブロック化したポリイソシアネート化合物が得られた。
【0153】
カチオン性電解析出コーティング組成物は、カチオン化樹脂(成分A)(88部);アクリル樹脂(成分B)(12部);及びイソシアネート架橋剤(成分C)(7部)を混合することによって製造した。この混合物を、0.3当量の酢酸で中和し、水で希釈して、固形分20%のカチオン性電解析出コーティング組成物を得た。
【0154】
カチオン性電解析出コーティング組成物により、28℃の浴でリン酸亜鉛冷間圧延鋼パネル上にコーティングして、硬化した際に約20〜25μmの膜厚を有する電解析出コーティングフィルムを形成した。塗装被膜を、10分間160℃で加熱して硬化させた。
【0155】
本技術の説明は本質的に単に例示的なものであり、したがって、本開示の主旨から逸脱しない変形例はこの発明の範囲内であることが意図される。このような変形例は、この発明の趣旨及び範囲から逸脱するものと理解されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被膜形成樹脂に対して反応性の少なくとも2つの官能基と、非イオン性金属配位構造を有する少なくとも1つのペンダント基とを有するアルキル化合物又は芳香族化合物を含む被膜形成材料を重合するための架橋剤。
【請求項2】
被膜形成樹脂に対して反応性の前記少なくと2つの官能基が、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、ウレトジオン基、エポキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルバメート基、及びアミン基を含む、請求項1に記載の架橋剤。
【請求項3】
前記非イオン性金属配位構造が第一の電子リッチな官能基を有する、請求項1に記載の架橋剤。
【請求項4】
前記第一の電子リッチな官能基が、窒素、酸素、リン、硫黄、ケイ素、及び炭素から成る群から選択される原子を含む、請求項3に記載の架橋剤。
【請求項5】
前記第一の電子リッチな官能基が、エステル、ケトン、エーテル、およびヒドロキシルから成る群から選択される基である、請求項3に記載の架橋剤。
【請求項6】
前記非イオン性金属配位構造がさらに、前記第一の電子リッチな官能基に対してα位又はβ位にある第二の電子リッチな官能基を有する、請求項3に記載の架橋剤。
【請求項7】
さらに、前記非イオン性金属配位構造によって配位結合された金属又は金属化合物を含有する、請求項1に記載の架橋剤。
【請求項8】
前記金属又は金属化合物が、M、MO、M23、M(OH)n、RxMO、及びそれらの組み合わせから成る群から選択され、ここで、Mは、Al、Bi、Ce、Cu、Fe、Pb、Sn、Sb、Ti、Y、Zn、及びZrから成る群から選択される金属であり、nはMの原子価を満たす整数であり、Rはアルキル基又は芳香族基であり、xは1〜6の整数である、請求項7に記載の架橋剤。
【請求項9】
前記金属又は金属化合物が、ジブチル酸化スズ、ジラウリン酸ジブチルスズ、酸化亜鉛、酸化ビスマス、酸化スズ、酸化イットリウム、酸化銅、及びそれの組み合わせから成る群から選択される金属触媒を含む、請求項7に記載の架橋剤。

【図1】
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【公表番号】特表2010−508397(P2010−508397A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−534731(P2009−534731)
【出願日】平成19年8月13日(2007.8.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/075765
【国際公開番号】WO2008/057643
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(591020700)ビー・エイ・エス・エフ、コーポレーション (53)
【氏名又は名称原語表記】BASF Corporation
【住所又は居所原語表記】100 Campus Drive, Florham Park, New Jersey 07932, USA
【Fターム(参考)】