説明

金属のイオン物理蒸着におけるスパッタリングソース

プラズマを用いて基板を処理するための処理システム(10)は、両端が開口した円筒型のターゲット(32)と、中空陰極マグネトロン(HCM)を形成する米国特許5,482,611に開示されたタイプのマグネットアレイ(34)とを用いて提供される。その円筒型ターゲットの開口端部の1つには、米国特許6,080,287や6,287,435に記載されているように誘導結合RFエネルギーソース(40)が配置される。その円筒型ターゲットの一端の誘電体窓(41)は、外気と処理システムの間にシールを形成するように作用し、真空空間内に位置する蒸着バッフルシールド(44)によって蒸着から保護され、チャンバー内にコイルからのRFエネルギーの供給を可能にするように設計される。RFソースに対向するその円筒型のターゲットの開口端部(13)は、真空チャンバー(11)内の処理空間に面する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハプロセスのようなプロセスに有用な高密度プラズマの生成に係り、特に半導体基板上における金属のイオン物理蒸着に有用な高密度プラズマの生成に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン物理蒸着(iPVD)は、半導体ウェハ基板上に薄膜を堆積するために提案され、特に、高いアスペクト比を有するサブミクロン形態の側壁または底部を被覆する。そのiPVDプロセスは、タンタルや銅のような金属の堆積のために提案される。そのような用途におけるiPVDにおいて、異なる高電位プラズマによって形成され、ターゲットのプラズマシースを横切って加速されたイオンによってターゲットからスパッタされたスパッタ材料、典型的には金属に電圧を加えるために、高密度低電位プラズマは、スパッタ処理チャンバー内で生成される。その高密度低電位プラズマは、イオン化されたスパッタ材料の高いイオンフラクションあるいは高い割合を得るために用いられるので、そのコーティング材料のイオンは電気的に基板表面に対して略直角に基板に引き付けられる。
【0003】
DCエネルギーは、ターゲットの材料をスパッタリングするために用いられる高電位プラズマにおける主要なエネルギー源である。誘導結合プラズマ(ICP)は、スパッタされる材料をイオン化するために用いられる高密度低電位プラズマに電圧を加えるためのiPVDにおいて有用であることが分かっている。特に、iPVD装置やiPVDプロセスは、ターゲットの中央に位置されたRFエネルギー源を有する環状のスパッタリングターゲットからなるイオン化されたスパッタ材料源を有することが提案されている。そのようなエネルギー源は、米国特許6,080,287や6,287,435に開示されており、これらは共に参照することによりここに明示的に本書に含まれる。
【0004】
これらのiPVD装置やiPVD方法のソースは、従来文献の他のソースに比べて多くの優れた点がある。約13.56MHzの周波数で動作する5.5kWのRF電力供給部を用いて作製されたそのようなソースは、比較的コンパクトで、それほど高価ではない。そのようなソースが供給する出力より強い出力が、より多くのエネルギーをプラズマに供給するために要求され、それによってプラズマ中のイオンフラクションが増加する。より大きなRF電力供給器、例えば、10kWの電力供給器を用いてそのような大きな電力を供給することによって、要求されるマッチング回路や増加された冷却器に関する付加的なコストを伴って、そのモジュールの費用を1万ドル高くするだろう。さらに、現在、5kWのRF供給部は固体状態の構成物で作られるが、より大きいRF供給部は、より大きくて非常に重い真空チューブをしばしば必要とする。
【0005】
さらに、上述の特許によるiPVDソースは、高い圧力(60mTorr以上)で効率的に動作する。用途によるが、高圧の使用は、気相核形成を避けるためのケアを要求し、気相核形成はプラズマ中で粒子を発生させ、暗部の許容差を臨界以上に形成する。ある時点で、圧力を増加することは、潜在的にターゲットが近接する構造物へアークを発生することを引き起こし、結果として大きな損傷を与え、処理されるウェハを汚染する莫大な量の粒子を生成する。
【0006】
したがって、上記の特許のiPVD装置におけるプラズマに供給されるエネルギーを効率的に増加させることは有益である。そのような装置の他の利点を維持したまま、低圧で動作することができるそのような装置を備えることも有益である。
【0007】
多くのスパッタリングソースは、半導体ウェハプロセス用に考案されており、それぞれは独自の特徴を有する。以下に記述された発明の特徴を有するそのようなソースの1つは、中空陰極マグネトロン(HCM)と呼ばれ、米国特許5,482,611に記載されている。この特許の装置は、高密度プラズマを生成するスパッターマグネトロンイオンソースであり、そのプラズマは、円筒型の陰極キャビティの中で生成する。ターゲット材料のイオンは、その陰極キャビティの開口端に近接した空領域にあるマグネトロンマグネットを用いたカスプ配置の磁場を作り出すことによって、そのキャビティから取り出されてビームになる。HCMソースはiPVD用に提案され、現在使用されている。
【0008】
HCMソースに対する主要な欠点の1つは、提案された配置のターゲットが非常に高価であるという点である。特にタンタルのような金属用の場合は、これに当てはまる。大きなバケット型のHCM陰極は組み立てるのが困難であり、非常に高価なターゲット材料を使用する。さらに、使用中に、そのターゲットの円筒型のキャビティの閉端部の材料はほとんど侵食しない。あるHCMターゲットでは、ターゲットの閉端部には網状の堆積が発生し、乏しいターゲットの利用率に加えて、粒子問題を引き起こす。そのような問題を避けるために、回転する小さな永久磁石は、そのキャビティの閉端部にあるターゲットの後部のHCM装置に付けられており、それが機器費用を増大させ、装置を複雑にする。陰極の直径が増加するにつれて、そのHCMは、高いイオンフラクションを得るために非常に高いDC電源を使用する。これは、そのシステムの全費用と所有費を増加させる。さらに、プラズマ密度を向上させるためにマグネトロンソースにDC電源を用いることは、堆積速度とイオン化フラクションが密接不可分であることを意味し、より高いDC電源は、高い堆積速度とイオンフラクションを与える。陰極に出力を供給する問題よりも大きなHCMに関する問題は、熱を除去することである。そのHCMの発明者は、それらの特許の中で、HCMを動作するために要求される電力がその直径の3乗に比例して増加し、冷却器はその直径の2乗に比例して増加するということを指摘している。したがって、小さいバージョンで得られるのと同じイオンフラクションを維持したまま、HCMソースをより大きな直径を有するように大型化することは、大量のDC電源を必要とし、十分にターゲットを冷却することが難しいため困難である。
【0009】
したがって、HCMはiPVDシステムにおいて高エネルギーのプラズマを生成するために有用であるが、HCMの特徴がICPソースの性能を高めるために用いることができかどうか検討されていないし、もし、それが検討されているとしても、HCMとICPの特徴との結合方法は従来文献では検討されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、環状のターゲットを有するタイプのiPVD装置の高密度誘導結合プラズマへのエネルギーの結合を増加することである。本発明のさらなる目的は、低い動作圧力でのICP−iPVD装置の使用を容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、中空陰極マグネトロン(HCM)の原理は、その中央にRFエネルギーソースを有する環状のターゲットのICPを有するタイプのiPVDソースの原理と組み合わせることである。その組み合わせは、HCMターゲットの閉端部をそのようなiPVD環状ターゲットソースのRFICPエネルギーソースに置き換えることによって行われる。任意に、平らな、または円錐状のリング形の環状ターゲットマグネトロン陰極は、HCMを囲うように、例えばHCMの開口を囲うように提供され、すなわち、RFエネルギーソースの円筒型のHCMターゲットの反対側の端部に提供される。
【0012】
本発明の図示された形態の1つによれば、HCM配置の陰極は、除去された閉端部を有して供給されるので、その陰極は2つの開口端部を有する円筒型のターゲットを含む。その円筒型のターゲット開口端部の1つには、ここでは便宜上RFソース端と呼ぶが、RFエネルギーソースが配置されている。そのRFエネルギーソースは、チャンバーの外側に外部のRFコイルを有するICPソースでありえ、そのチャンバーは、チャンバー壁の一部を形成する誘電体窓を通してRFエネルギーが供給される。蒸着シールドは、窓やシールドを通してチャンバー内にそのコイルからのRFエネルギーの供給を可能にする一方で、蒸着からその窓を保護するためにチャンバーの内部に位置されてもよい。
【0013】
本発明の別の形態では、iPVDソースは2つのターゲットで構成され、それらは円筒型のターゲットと、平らな、又は円錐台形状の環状ターゲットである。その円筒型のターゲットは、一端が誘電体窓に配置され、バッフルシールドによって保護され、真空チャンバーの外側に位置するアンテナからのRFエネルギーが供給され、他端には平らな又は円錐台形状の環状ターゲットがあり、基板に対向し、円筒型ターゲットの開口端部と同一平面または下部に位置する。すなわち、平らな、又は円錐台形状の環状ターゲットは、RFエネルギーの円筒型ターゲットの反対側の端部に位置する。2つのターゲットは、電気的に分離されており、それぞれが有する独立したマグネトロンマグネットを用いて、それぞれ電力供給される。そのような配置は、より複雑であるけれども、薄膜の厚さの均一性を改善したり、薄膜の蒸着速度を増加したりするために用いられ、所謂“銅シード”蒸着プロセスにおいては特に重要である。
【0014】
さらに他の形態では、円筒型のターゲットは、一端あるいは両端に小さな枠またはフランジを有して提供される。これは、都合よく円筒型のターゲットの剛性を増加させ、実装において構造的な支持体となる。しかしながら、プラズマは、基板に近接するその円筒物の開口端部にあるそのようなフランジ領域を通常スパッタせず、蒸着物は通常この領域上に積み上がる。そのような蒸着物が粉砕されたり、工程チャンバーを粒子で汚染したりすることを防止するために、ターゲットのフランジは、折り目加工されたり、粗くされたりするべきである。
【0015】
RFソースに対向する円筒型のターゲットの開口端部は、便宜上プロセス端部と称されるが、真空チャンバー内のプロセス空間に面している。そのターゲットの後部のマグネトロンマグネットは、その円筒型のターゲットの内表面に近接したスパッタリングプラズマを支持し、円筒型のターゲットとRFエネルギーソースを有するスパッタリング材料のソースをiPVDプロセスにおいて半導体ウェハが支持されるプロセス空間から分離する磁場鏡面を定義するカスプ磁場を作り出す。そのHCMのマグネトロンマグネットは、その鏡面からプロセス空間まで延び、プラズマソース空間からプロセス空間までイオンの抽出を容易にするために機能する空領域を形成する。
【0016】
本発明のiPVDソースは、ICPソースまたはHCMソースのどちらかの使用による初期費用の小幅な増加と複雑さしか伴わないで本発明の目的を成し遂げる。費用面でのこの増加は、HCMターゲットの閉端部のコストにおける節約によるオフセットよりも大きい。特に、もし、Ta/TaNのような蒸着材料におけるターゲットの費用を考慮した場合、本発明のソースは、単独のHCMデザインのTa/TaNソースよりも安い。さらに、本発明は、蒸着とエッチングプロセスの両方に見合うプロセスパラメータを有するので、本発明の原理によるソースは、同一チャンバー内で行われる蒸着とエッチングプロセスに理想的に適している。
【0017】
本発明のソースにおける円筒型の陰極の製造は、一般に知られるHCMソースに特有のバケットタイプの陰極よりも容易である。バケットタイプのHCMの閉端部は本発明の陰極には無いので、そのターゲットを製造するためには高価なターゲット材料は用いられない。さらに、ターゲットの一部から材料をスパッタするために、そのターゲットの閉端部の後部に回転マグネトロンは必要ではない。
【0018】
本発明のソースを有するその窓を覆うために用いられるその蒸着バッフルシールドは、蒸着物を堆積するが、良好な接着を得、粒子が剥れ落ちるのを最小化するためにビードブラストされる。さらに、その蒸着バッフルは、何度も繰り返し使用され、HCMターゲットの閉端部の使用されなかったターゲット材料は、可能な限り再利用される。
【0019】
タンタル(Ta)または窒化タンタル(TaN)の蒸着プロセスにおいて、タンタルと同様の膨張係数を有し、低い抵抗値を有するモリブデンや他の材料の蒸着バッフルは用いられる。銅(Cu)やアルミニウム(Al)ターゲットを用いることによって、蒸着バッフルは、銅やアルミニウムやそれらの合金で製造される。ICPソースからのRFは、HCMを単独で用いることによって、DCのみの場合に比べてより効率的にプラズマを加熱し、本発明のソースは、HCMソース単独よりも大きな直径を有することは容易である。
【0020】
HCMターゲットの円筒部の端部を通してRFを追加することは、プラズマを加熱するためにより効率的な方法であり、HCMのDCソースを単独で用いて同様のプラズマ濃度を達成させる場合に要求される冷却に比べて、ターゲットの付加的な冷却は要求されない。さらに、蒸着速度とイオンフラクションは、本発明によって独立して制御され、ここで、HCMを用いることで、両方は、陰極へのDC電源を調節することのみによって制御可能である。イオンフラクションを増加するためにRF電源を増加することは、本発明では全体の蒸着速度を増加する必要はなく、DC電源は、本発明ではイオンフラクションを増加するために増加させたり維持させたりする必要はなく、同一のチャンバーで蒸着とエッチングプロセスを切り替えることを現実的にする。
【0021】
その中央にRFソースを有する環状のターゲットを有するiPVDソースでは(例えば、米国特許6,080,287、6,287,435のソースを有する)、環状のターゲットに電力を供給するDC電力供給器は、高密度プラズマの電力密度を増加することはほとんどない。もし、環状のターゲット配置の代わりにHCMを用いた場合、円筒型ターゲットに供給するDC電力は、ソース内の高密度低エネルギープラズマの体積を増加する働きをする。これは、金属被覆材料の高いイオンフラクションを生成する。
【0022】
マグネトロン陰極のDC電力を高密度プラズマに供給することによって、高レベルのDC電力は、実質的にプラズマの加熱に寄与し、高価な高電力RF供給器やマッチング回路の必要性を減少する。RFICPプラズマソースと環状のターゲットを用いて達成される本発明を用いてこの方式でプラズマ体積を増加することは、気相核形成のリスクを減少し、暗部構成物の緩和された許容差を許容し、低圧で同じイオン化フラクションを達成することを可能にする。さらに、陽極リングは、円筒型の陰極の開口端部でターゲットが蒸着バッフルにアークする可能性を減少させるために用いられることができる。さらに、繰り返しスパッタされ、他の環状のICP−iPVDソースに比べてターゲットの使用を増加することによって、イオン化されていないスパッタされた材料は、その円筒型の陰極の反対側の壁に蒸着されるだろう。
【0023】
本発明のソースは、HCMとICP−iPVDソースのどちらかのソースに関するさらなる複雑さを招くが、それは単独であると考えられる。HCMターゲットの高コストを考慮すると、そのターゲットの費用、特にタンタルターゲットの費用は、本発明に関しては安い。イオンPVD用途において、ターゲットの費用は所有費への大きな寄与の1つであるので、本発明に関してターゲット費用の節約は特に重要である。既存のRFICPソースに使用される平らな、又は円錐台形状のリング形の環状ターゲットを本発明による円筒型ターゲットのHCMに置換することによってほとんど又は全く追加のコストを招来しない。
【0024】
本発明のソースは、平らな、又は円錐台形状のリング形の環状ターゲットの圧力より低い圧力で効率的で効果的に動作する。これは、時間のかかる圧力循環なしに、同一チャンバー内で蒸着とエッチングプロセスの両方を遂行することを容易にし、組み合わされたプロセスにおいて改善された均一性をもたらすだろう。その蒸着とエッチングは、約1〜40mTorrで実行され、好ましくは約10mTorrで実行される。
【0025】
これまでの記載や本発明の他の目的や利点は、以下の詳細の説明によってより明らかになるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1は、チャンバー壁12で囲まれた真空プロセスチャンバー11を有するイオン物理蒸着装置10を示し、チャンバー壁12は、チャンバー11内に真空プロセス空間を有する。イオン化被覆材料のソース20またはiPVDソースは、チャンバー壁12の上部の開口部13に配置されており、チャンバー壁12の開口部13の周囲に対してイオン化材料のソース20の下端部21付近を電気絶縁体22を用いて真空密閉シールを形成する。基板支持部14は、半導体ウェハ16を支持するためにチャンバー11の底部にある昇降機15上の中心に位置しており、処理のためのプロセス空間の向こう側のイオン化材料のソース20に対向している。チャンバー11は、一般的に試用されるポンプ(不図示)によって真空状態に維持されている。チャンバー壁12は、チャンバー11の外部の清浄な外気雰囲気17からチャンバー11内の真空を分離する。
【0027】
イオン化材料のソース20は、円筒型の被覆材料のソース、またはイオン化材料のソース20の下端部21からその頂部の内側の円形開口部31まで延びた円筒型のターゲット32を含む。また、そのイオン化材料のソース20は、コーティングするターゲット32の開口部31に載置されたRFエネルギー源40を含む。
【0028】
円筒型のターゲット32は、中空陰極マグネトロンまたは米国特許番号5,482,611に記載されたHCMタイプであり、その円筒型ターゲット32の両端に2つの開口端部を有する。その円筒型のターゲット32は、好ましくは、チャンバー11の内部の真空と外部の外気雰囲気17とを分離するチャンバー壁12の一部を形成する。その円筒型のターゲット32は、チャンバー11の内部に円筒型のプラズマ源(プラズマソース)の空間33を囲み、そのプラズマ源の空間33に面する内部円筒スパッタリング表面を有する。そのプラズマ源の空間33は、チャンバー11内のプロセス空間と通じている。
【0029】
その円筒型のターゲット32は、円筒型のターゲット32の内部スパッタリング表面に近接したプラズマ源の空間33の内部の周囲に閉環状の磁気トンネル35を形成する定常磁場を発生させるために配置されたターゲット32の後部に配置されたマグネトロンマグネットまたはマグネットアレイ34を有するスパッタリング陰極の一部である。そのマグネットアレイ34は、開口部13に平行で、その下部にあるチャンバー11の内部に磁場鏡面36を定義するカスプ磁場を生成するために配置されている。マグネットアレイ34によって生成された磁場は、磁場鏡面36からチャンバー11内のプロセス空間の中央まで延びる損失コーン37を定義する。DCソース39は、チャンバー壁に対して負である円筒型のターゲット32に電位を供給するために円筒型のターゲット32に電気的に接続されている。この電位は、電子の発生と、磁気トンネル中の電子に衝突するガス原子から生成されるガスイオンのターゲットのスパッタリング表面への誘引とを促進する。冷却液は、冷却システム38によってターゲット32の後部で循環されており、円筒型のターゲット32のスパッタリング中に発生する熱を取り除く。
【0030】
イオン化材料のソース20は、前述のように、米国特許番号5,482,611で検討されたものと完全に同一であり、上記に参照することによって本願に含まれており、ここではHCMソースとして称される。イオン化材料のソース20は、その特許のHCMソースとは異なり、開口端を1つしか有しないスパッタリング材料のキャビティを形成する円筒型のターゲット32ではなく、本発明による円筒型のターゲット32は、両端に開口を有する円筒形状であり、RFソース40によって一端が塞がれている。
【0031】
イオン化材料のソース20は、円筒型の被覆材料のソースまたは円筒型のターゲット32に加えて、図2に示されているように追加的にターゲット32を囲う環状のターゲット30をさらに含む。そのターゲット30は、米国特許6,080,287や6,287,435に記載されている型でありえ、上述に参照することによって本願に含まれている。そのターゲット32と30は互いに絶縁体22aによって絶縁されており、接地されたチャンバー壁12から絶縁体22bによって絶縁されている。陽極リング(不図示)は、ターゲット32と30の間に配置されることもでき、両方のターゲット30、32と接地されたチャンバー壁12とから絶縁される。両方のターゲット32、30は、それぞれ2つの異なるDC電源39、39aから負のDC電位が印加される。ターゲット30、32は互いに絶縁されているので、DC電源39、39aの異なる出力から独立して制御されることができる。ターゲット30は、図2では、平らなリング形状を有する環状ターゲットとして記載されている。あるいは、その環状ターゲットは、円錐台形状であってもよく、それは、図3に示されるターゲット30aのように配置されている。そのような追加のターゲット30、30aは、基板に形成される被覆材料の均一性を改善したり、蒸着速度を増加させたりするために、ある形態では要求される。
【0032】
図1、2及び3を参照すると、RFソース40は誘電体窓41を含み、それは円形や平面形で図示され、円筒型のターゲット32の上部の開口部31の周辺に付けられた円形の枠の周囲をシールする。チャンバー11内の空間33に窓41を通してRFエネルギーを供給するために、RFソース40は、チャンバー11の外部に位置し、窓41に近接するRFコイルまたはアンテナ42を含む。そのコイル42は、マッチング回路(不図示)を介してRF発生器43に接続される。窓41の内部には、被覆材料の堆積物から窓41を保護する蒸着バッフルまたは蒸着シールド44がある。そのシールド44は、そのコイル42からその空間33に供給する磁気エネルギーを減衰するシールド上に形成するシールドやコーティング内の電流の誘導を防止するために、コイル42に対して設定されて位置合わせされたスロット45を有する。RFエネルギーソース40の詳細や操作方法は、米国特許6,080,287や6,287,435に完全に記載されており、上記に参照することによって本願に含まれている。本発明におけるiPVDでは、蒸着シールドは、好ましくは、銅、モリブデン、またはアルミニウムで製造されたり、被覆されたりする。
【0033】
RF電力発生器43からコイル42によって連結されたRFエネルギーは、DC電力供給部39からのエネルギーと合わさって、空間33内に高密度プラズマを生成する。電源43、39は共に、プラズマに供給される総エネルギーに実質的に寄与する能力を有し、それぞれ高密度プラズマの総エネルギーの少なくとも20%に寄与することが一般的に期待され、そのプロセスにおいて要求される。中空陰極マグネトロンを有するRFソース40の円筒型ターゲット32との結合は、上記の如何なる特許のソースが単独で生成するよりも高いプラズマ密度を生成する。それは、米国特許5,482,611に記載の中空陰極マグネトロンで必要な費用よりも実質的に安い費用のターゲットを用いる。
【0034】
以上の記述及び添付した図面は本発明の様々な形態を説明しているが、本発明の思想から離れることなく追加や修正ができることは当業者にとって明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の原理に従うiPVD装置におけるハイブリッドHCM−ICPソースの概略断面図である。
【図2】図1と同様に、本発明の原理に従うiPVD装置におけるハイブリッドHCM−ICPソースの他の形態の概略断面図である。
【図3】図1、図2と同様に、本発明の原理に従うiPVD装置におけるハイブリッドHCM−ICPソースの他の形態の概略断面図である。
【符号の説明】
【0036】
10 イオン物理蒸着装置
11 真空プロセスチャンバー
12 チャンバー壁
13 開口部
14 基板支持部
15 昇降機
16 半導体ウェハ
17 外気雰囲気
20 イオン化被覆材料のソース
21 下端部
22 電気絶縁体
22a、22b 絶縁体
30、30a ターゲット
31 開口部
32 ターゲット
35 磁気トンネル
34 マグネットアレイ
36 磁場鏡面
37 損失コーン
38 冷却システム
39、39a DC電源
40 RFエネルギーソース
41 誘電体窓
42 コイル
43 RF発生器
44 蒸着シールド
45 スロット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバー壁に囲われた真空チャンバーであって、その中にプラズマ処理空間と該処理空間に面する半導体基板を支持するために構成された基板支持部とを有する真空チャンバーと、
前記チャンバー内に連通しているスパッタリング表面を有する中空円筒型スパッタリングターゲットと、前記ターゲットに電気的に接続されたチャンバーの外側にあるDC電源と、前記ターゲットの後部にあるマグネットアセンブリと、を含むマグネトロンスパッタリング陰極と、
前記チャンバー内の円筒型のプラズマソース空間を囲い、前記処理空間に近接するスパッタリングターゲットであって、前記円筒型の空間の両側に2つの開口端を有するスパッタリングターゲットと、
前記プラズマソース空間の外側に配置され、前記チャンバー内に磁場を発生するように構成されたマグネットアセンブリであって、前記磁場は、前記ターゲットのスパッタリング表面付近に電子を閉じ込めるために前記ターゲットのスパッタリング表面に近接した閉磁気トンネルと、前記プラズマソース空間と前記処理空間との間に磁場鏡面を定義するカスプ磁場と、前記カスプ磁場から前記処理空間まで延びる空磁場と、を含むマグネットアセンブリと、
前記チャンバー壁の一部を形成し、前記処理空間の反対側にある前記ターゲットの開口端部にある誘電体窓と、
前記チャンバーの外側にあるRF電源と、
前記RF電源に電気的に接続され、前記窓の外側であって前記チャンバーの外側にあるRFコイルであって、前記RF電源からのRFエネルギーを前記プラズマソース空間に前記窓を通して供給するように構成されたRFコイルと、を備え、
前記ターゲットと前記マグネトロンマグネットと前記RFコイルは、前記ターゲットからスパッタされた材料のイオンを含む前記空間内に高密度プラズマを共同して生成するために構成され、前記DC電源と前記RF電源のそれぞれによって実質的に電圧が印加されている、半導体基板を処理するためのイオン物理蒸着装置。
【請求項2】
前記処理空間端部にある前記円筒型のスパッタリングターゲットの開口端部を囲う環状のスパッタリングターゲットであって、その中に基板支持部を有する処理空間に面するリング形状のスパッタリング表面を有する前記環状型のスパッタリングターゲットをさらに含む請求項1に記載のイオン物理蒸着装置。
【請求項3】
前記アンテナ側からみて前記窓の反対側の前記円筒型のスパッタリングターゲットの前記RF電源側端部上のチャンバー内で前記窓に近接離間し、かつ平行に配置された蒸着シールドであって、スパッタされた材料の堆積物から前記窓を保護するように構成され、前記アンテナから前記プラズマソース空間にRFエネルギーの誘導結合を可能にする前記シールドをさらに含む請求項1に記載のイオン物理蒸着装置。
【請求項4】
中空円筒型スパッタリングターゲットと、前記円筒型スパッタリングターゲットに電気的に接続されたチャンバーの外側にある第1DC電源と、前記ターゲットの後部にあるマグネットアセンブリと、を含むマグネトロンスパッタリング陰極と、
前記チャンバー内に円筒型のプラズマソース空間を囲み、前記プラズマソース空間に連通する円筒型スパッタリング表面を有し、前記空間の両端にRF電源側端部と処理側端部とを含む2つの開口端部を有する円筒型スパッタリングターゲットと、
前記プラズマソース空間の外側にあり、前記プラズマソース空間内に磁界を発生するように構成されたマグネットアセンブリであって、前記磁場は、前記ターゲットの表面付近に電子を閉じ込めるために前記ターゲットのスパッタリング表面に近接した閉磁気トンネルと、前記円筒型スパッタリングターゲットの処理側端部に平行な磁場鏡面を定義するカスプ磁場と、前記磁場鏡面まで拡大して延びる空磁場と、を含むマグネットアセンブリと、
前記円筒型スパッタリングターゲットのRF電源側端部にある誘電体窓と、
前記RF電源に電気的に接続され、前記プラズマソース空間からみた窓の反対側にRFアンテナを有するRF電源であって、前記RFアンテナは、前記RF電源から前記窓を通してプラズマソース空間にRFエネルギーを供給するように構成されている前記RF電源と、を備え、
前記ターゲットと前記マグネトロンマグネットと前記RFアンテナは、前記ターゲットからスパッタされた材料のイオンを含む前記プラズマソース空間内に高密度プラズマを共同して生成するために構成され、前記DC電源と前記RF電源のそれぞれによって電圧が印加されている、イオン化されたスパッタ材料のiPVDソース。
【請求項5】
処理空間に面する前記円筒型スパッタリングターゲットの前記開口処理端部に近接して囲う環状のスパッタリングターゲットをさらに含む請求項4に記載のiPVDソース。
【請求項6】
前記環状のスパッタリングターゲットは、平面的なリング形状の環状のスパッタリングターゲットである請求項5に記載のiPVDソース。
【請求項7】
前記環状のスパッタリングターゲットは、円錐台形状のスパッタリングターゲットである請求項5に記載のiPVDソース。
【請求項8】
前記環状のスパッタリングターゲットの後部に配置された環状の永久磁石を含む請求項5に記載のiPVDソース。
【請求項9】
前記環状のスパッタリングターゲットに接続された第2DC電源と、前記円筒型のスパッタリングターゲットから電気的に絶縁された前記環状のスパッタリングターゲットとを含む請求項5に記載のiPVDソース。
【請求項10】
前記第1DC電源と第2DC電源は、前記円筒型のスパッタリングターゲットと前記環状のスパッタリングターゲットのスパッタリングをそれぞれ制御可能である請求項9に記載のiPVDソース。
【請求項11】
前記アンテナ側からみて反対側の前記窓に近接離間し、かつ平行に配置された蒸着シールドであり、スパッタされた材料の堆積物から前記窓を保護するように構成され、前記アンテナから前記プラズマソース空間にRFエネルギーの誘導結合を可能にする前記シールドをさらに含む請求項4に記載のiPVDソース。
【請求項12】
前記蒸着シールドは、本質的に金属の銅、モリブデン、アルミニウム、及びそれらの合金からなる群から選択される請求項11に記載のiPVDソース。
【請求項13】
前記蒸着シールドは、本質的に銅、モリブデン、アルミニウム、及びそれらの合金からなる群から選択される金属を用いて被覆される請求項11に記載のiPVDソース。
【請求項14】
前記円筒型のスパッタリングターゲットは、少なくともその開口端の1つに一体的に形成された環状のフランジを有する請求項4に記載のiPVDソース。
【請求項15】
前記円筒型のスパッタリングターゲットは、蒸着材料の接着力を増加するように構成された少なくともその開口端の1つに一体的に形成された環状のフランジを有する請求項4に記載のiPVDソース。
【請求項16】
真空チャンバーと、前記真空チャンバーの一端に位置する被覆材料ソースと、前記被覆材料ソースに面する前記真空チャンバー内に位置する基板支持部と、を有する真空処理装置を用意し、
前記処理チャンバーに面する開口処理端部と、前記円筒型のマグネトロンスパッタリングターゲットによって囲われたプラズマソース空間内に前記窓を通してRFエネルギーを供給するためにその外側にあるRFアンテナを有する誘電体窓によって覆われたRF電源側開口端部と、を有する中空円筒型マグネトロンスパッタリングターゲットを有する前記被覆材料ソースを用意し、
スパッタリングターゲットにDC電位を印加して材料をスパッタリングして前記空間に供給し、
前記DC電位と前記RF電源のそれぞれによって実質的に電圧が印加された前記ターゲットからのスパッタされた材料のイオンを有する前記プラズマソース空間に高密度プラズマを生成するために前記RFアンテナからのエネルギーと前記DC電位からのエネルギーを用いて前記スパッタリングターゲットからスパッタされた前記材料を前記空間内でイオン化し、
前記真空チャンバー内でプラズマソース空間からのイオン化されたスパッタ材料を前記基板上に蒸着することによって基板を処理することを含むiPVD方法。
【請求項17】
前記真空チャンバー内において、交互に前記イオン化された材料を前記基板上に蒸着し、前記基板をエッチングする請求項16に記載のiPVD方法。
【請求項18】
複数回の蒸着とエッチングサイクルとを経て前記基板を処理する請求項16に記載のiPVD方法。
【請求項19】
前記蒸着と前記エッチングは約1mTorr〜40mTorrで行う請求項16に記載のiPVD方法。
【請求項20】
前記基板に材料を蒸着したり、基板をエッチングしたりするために、前記円筒型スパッタリングターゲットにDC電位を交互に断続して繰り返し印加する請求項16に記載のiPVD方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2007−516346(P2007−516346A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533079(P2006−533079)
【出願日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【国際出願番号】PCT/US2004/015187
【国際公開番号】WO2005/001156
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【出願人】(598133768)トーキョー エレクトロン アリゾナ インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】