説明

金属の腐食抑制剤及び腐食抑制方法

【課題】環境に有害な重金属類やリン系化合物を使用することなく、水と接触する金属の腐食を抑制することができる金属の腐食抑制剤及び腐食抑制方法を提供する。
【解決手段】(A)一般式(1)(M、M、M、Mはそれぞれ独立に水素、カリウム、ナトリウム、アンモニウム、及び炭素数2〜8の1級〜3級アミン。Zは炭素数6〜40の芳香族炭化水素基、あるいは炭素数4〜40の脂環式炭化水素基。)のテトラカルボン酸化合物及びその塩、又は(A)と(B)マレイン酸及び/又は(メタ)アクリル酸を含有する金属の腐食抑制剤、及び水系に(A)、あるいは(A)と(B)を共に添加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水と接触する金属の腐食を抑制する腐食抑制剤、及び腐食抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷却水系、ボイラ、加温水系、洗浄水、水性金属加工油剤、集塵水系、その他の各種工程水等の水と接する金属材料表面は、腐食が発生しやすい環境にある。従来より、鉄系金属の腐食抑制のために、亜鉛塩、クロム酸塩、モリブデン酸塩等の重金属や、無機リン酸塩や有機リン酸塩等の各種リン系化合物を用いた腐食抑制剤が使用されてきた。しかし、これら重金属やリン系化合物を用いた腐食抑制剤は、環境問題を引き起こすことからその使用が制限されつつあり、近年、重金属やリン化合物を用いない腐食抑制剤が、数多く提案されている。
【0003】
例えば、マレイン酸とアミレンとの共重合体を用いる金属腐食抑制剤(例えば特許文献1参照)、無水マレイン酸とアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキルエステル等と、スチレン、スチレンスルホン酸などを加えた三元共重合体を用いるスケールの析出抑制方法及び金属の腐食抑制方法(例えば特許文献2参照)、ポリマレイン酸と脂肪族オキシカルボン酸を有効成分として含有する金属防食剤(例えば特許文献3参照)、無水マレイン酸とモノエチレン系不飽和単量体の共重合体加水分解物を添加するボイラや蒸発缶の金属表面の腐食抑制方法及び析出物生成抑制方法(例えば特許文献4参照)、ビス(4−オキシフェニル)スルファイドジアルキルカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類を必須成分とする防錆剤(例えば特許文献5参照)、カルシウム硬度10〜300mg−CaCO3/Lである開放循環冷却水系において、アルカリ金属水酸化物を循環冷却水に対し20〜300mg/L添加し、かつ当該循環冷却水のリツナー指数(40℃)を4.0〜6.0に維持する開放循環冷却水系の腐食抑制方法(例えば特許文献6参照)等が挙げられる。
【特許文献1】特公昭61−19714号公報
【特許文献2】特開平2−115384号公報
【特許文献3】特開昭57−174471号公報
【特許文献4】特公昭54−29998号公報
【特許文献5】特開昭57−114670号公報
【特許文献6】特開2005−200721号公報しかし、重金属やリン化合物を用いない従来の腐食抑制剤では、腐食抑制効果が十分でなく、また適用される水質条件が制限される等の問題点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、環境に有害な重金属類やリン系化合物を使用しない腐食抑制剤、及び腐食抑制方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者は、上記課題を解決するために多数の有機化合物の分子構造と腐食抑制効果との関係を系統的に調べた結果、特定のテトラカルボン酸化合物及びその塩が優れた腐食抑制効果を有することを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明の腐食抑制剤は、(A)一般式(1)で表されるテトラカルボン酸化合物及びその塩を有効成分として含有することを特徴とする。テトラカルボン酸化合物及びその塩を水系に添加すると、分子中の対となった2組のカルボキシル基は金属表面に対する配位子として働いて、金属表面に配位結合するとともに、芳香族環や脂環式炭化水素の部位は疎水性のため耐水性皮膜となり、腐食を抑制すると考えられる。
【0007】
【化1】

【0008】
一般式(1)において、式中、M、M、M、Mはそれぞれ独立に水素、カリウム、ナトリウム、アンモニウム、及び炭素数2〜8の1級アミン、2級アミン、3級アミンである。Zは炭素数6〜40で1つ以上の芳香族環を含む芳香族炭化水素基、あるいは炭素数4〜40の脂環式炭化水素基であって、複数の−CO−基がZの1つの炭素原子に結合していることはない。好ましいテトラカルボン酸化合物としては、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2′,3,3′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3′,4,4′−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、3,3′,4,4′−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸から選択された1種以上である。テトラカルボン酸化合物及びその塩は、一般には耐熱性イミド樹脂の合成用原料として知られているが、水系における腐食抑制剤として使用した例は知られていない。
【0009】
さらには、本発明の腐食抑制剤は、(A)テトラカルボン酸化合物及びその塩と、(B)マレイン酸及び/又は(メタ)アクリル酸を構成単位として含む重合体を有効成分として含むことを特徴とする。
【0010】
(B)マレイン酸及び/又は(メタ)アクリル酸を構成単位として含む重合体は(A)テトラカルボン酸化合物及びその塩と併用することにより相乗的な腐食抑制効果を示す。(B)マレイン酸及び/又は(メタ)アクリル酸を構成単位として含む重合体としては、好ましくはホモマレイン酸重合体、アクリル酸・2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体、アクリル酸・3−アリロキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸共重合体、アクリル酸・イソプレンスルホン酸共重合体から選択された1種以上である。中でもホモマレイン酸重合体では重量平均分子量300〜20,000が好ましい。また、アクリル酸・2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体、アクリル酸・3−アリロキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸共重合体、アクリル酸・イソプレンスルホン酸共重合体では共重合体組成が、アクリル酸:30〜90重量%、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、又は3−アリロキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸、又はイソプレンスルホン酸:70〜10重量%、重量平均分子量が1,000〜100,000の共重合体が好ましい。
【0011】
本発明の腐食抑制剤では、(A)テトラカルボン酸化合物及びその塩と(B)マレイン酸及び/又は(メタ)アクリル酸を構成単位として含む重合体の配合重量比率が、90:10〜10:90である。
【0012】
本発明の腐食抑制方法は、(A)テトラカルボン酸化合物及びその塩を水系に添加することを特徴とする。さらに、本発明の腐食抑制方法は、(A)テトラカルボン酸化合物及びその塩と、(B)マレイン酸及び/又は(メタ)アクリル酸を構成単位として含む重合体を併用して水系に添加することを特徴とする。本発明の金属の腐食抑制方法において、(A)テトラカルボン酸化合物及びその塩と、(B)マレイン酸及び/又は(メタ)アクリル酸を構成単位として含む重合体の水系に添加する添加比率は重量比で90:10〜10:90である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、特定の(A)テトラカルボン酸化合物及びその塩を含む腐食抑制剤、及び特定の(A)テトラカルボン酸化合物及びその塩と特定の(B)マレイン酸及び/又は(メタ)アクリル酸を構成単位として含む重合体を共に含む腐食抑制剤、また特定の(A)テトラカルボン酸化合物及びその塩を水系に添加する腐食抑制方法、及び特定の(A)テトラカルボン酸化合物及びその塩と特定の(B)マレイン酸及び/又は(メタ)アクリル酸を構成単位として含む重合体を併用して水系に添加する腐食抑制方法である。
【0014】
本発明の対象とする水系は、一過式通水あるいは循環する系であっても良く、また、冷却塔、ボイラ、蒸発缶等で濃縮した水系であっても良い。これらの水系で使用される水の種類は特に限定されないが、水道水、工業用水、井水、イオン交換水、軟化水、有機あるいは無機ブライン、各種プロセス水等が挙げられる。
【0015】
本発明で用いる(A)テトラカルボン酸化合物及びその塩(以下「(A)成分」とする)は、一般式(1)で表されるテトラカルボン酸化合物及びその水溶性塩である。式中、M、M、M、Mはそれぞれ独立に水素、カリウム、ナトリウム、アンモニウム、及び炭素数2〜8の1級アミン、2級アミン、3級アミンである。炭素数2〜8のアミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、さらには、2−エタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジ(2−エタノール)アミン、ジ(2−イソプロパノール)アミンなどがある。Zは炭素数6〜40で1つ以上の芳香族環を含む芳香族炭化水素基、あるいは炭素数4〜40の脂環式炭化水素基であって、複数の−CO−基がZの1つの炭素原子に結合していることはない。また、テトラカルボン酸化合物の水溶性塩としては完全中和塩、4つのカルボキシル基のうち1〜3基を中和した部分中和塩がある。
【0016】
テトラカルボン酸化合物の分子量は、特に限定されるものではないが、通常、分子量150〜2000のものが用いられる。また、工業的に入手しやすいために、一般式(2)で表されるテトラカルボン酸化合物の無水物を用いても良い。式中、Zは炭素数6〜40で1つ以上の芳香族環を含む芳香族炭化水素基、あるいは炭素数4〜40の脂環式炭化水素基であって、複数の−CO−基がZの1つの炭素原子に結合していることはない。テトラカルボン酸化合物の無水物には、2個の酸二無水物基の結合の仕方がトランス型であるものと、シス型であるものとの異性体が存在し得るものが多いが、これらの異性体は特に区別を要する場合を除き、通常は一括して表現され、又、特に単離しないで混合物のまま使用することができる。テトラカルボン酸化合物の無水物は、アルカリ条件下あるいはアミン存在下で容易に加水分解して対応する遊離のテトラカルボン酸化合物あるいは対応するテトラカルボン酸化合物の水溶性塩になる。
【0017】
【化2】

【0018】
テトラカルボン酸化合物として、具体的には3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸(無水物としてMW294)、2,2′,3,3′−ビフェニルテトラカルボン酸、4,4′,5,5′−ビフェニルテトラカルボン酸、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン、3,3′,4,4′−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸(無水物としてMW358)、2,2’,3,3’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、4,4′,5,5′−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、3,3′,4,4′−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸(無水物としてMW390)、2,2′,3,3′−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸(無水物としてMW322)、2,2′,3,3′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、4,4′,5,5′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸(無水物としてMW268)、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン、ピロメリット酸(無水物としてMW218)、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸、4,4−(p−フェニレンジオキシ)ジフタル酸、4,4−(m−フェニレンジオキシ)ジフタル酸、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸化合物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸(無水物としてMW392)、2,2−ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、シクロブタンテトラカルボン酸(無水物としてMW196)、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸(無水物としてMW209)、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸(無水物としてMW222)、シクロヘキサ−1−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸、3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸、1−メチル−3−エチルシクロヘキサン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸、1−メチル−3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸、1−エチルシクロヘキサン−1−(1,2),3,4−テトラカルボン酸、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸、ジシクロヘキシル−3,4,3′,4′−テトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸(無水物としてMW300)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸(無水物としてMW264)等を挙げることができる。
【0019】
より好ましいテトラカルボン酸化合物としては、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2′,3,3′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3′,4,4′−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、3,3′,4,4′−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸等が挙げられる。これらの1種あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
本発明で用いられる(B)マレイン酸及び/又は(メタ)アクリル酸を構成単位として含む重合体(以下「(B)成分」とする)は、マレイン酸及び/又は(メタ)アクリル酸を構成単位として含み、マレイン酸及び/又は(メタ)アクリル酸と共重合可能な不飽和単量体との共重合体、ホモマレイン酸重合体、ホモ(メタ)アクリル酸重合体及びこれらの重合体の水溶性塩である。共重合可能な不飽和単量体としては、モノエチレン性不飽和スルホン酸の2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸;共役ジエンスルホン化物のイソプレンスルホン酸;スチレンスルホン酸;スルホアルキル(メタ)アクリレートエステルのスルホエチル(メタ)アクリレートエステル、スルホプロピル(メタ)アクリレートエステル;スルホアルキル(メタ)アリルエーテルのスルホメチル(メタ)アリルエーテル、スルホエチル(メタ)アリルエーテル、スルホフェニル(メタ)アリルエーテル;(メタ)アリルスルホン酸;(メタ)アクリル酸エステルの(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸プロピルエステル;(メタ)アクリル酸ヒドロキシルアルキルエステルの(メタ)アクリル酸ヒドロキシルエチルエステル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシルプロピルエステル;(メタ)アクリルアミド;N−アルキル置換(メタ)アクリルアミドのN−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、;炭素数2〜8のオレフィンのエチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、ヘキセン、2−エチルヘキセン、ペンテン、イソペンテン、オクテ ン、イソオクテン等;ビニルアルキルエーテルのビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル;マレイン酸アルキルエステルのマレイン酸エチルエステル、マレイン酸プロピルエステルなどが挙げられる。中でも好ましくは、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸、イソプレンスルホン酸である。それらの1種または2種以上が用いられる。
【0021】
マレイン酸及び/又は(メタ)アクリル酸と不飽和単量体との共重合体は、マレイン酸及び/又は(メタ)アクリル酸が30重量%〜90重量%、不飽和単量体が70重量%〜10重量%の比率で得られる共重合体である。マレイン酸及び/又は(メタ)アクリル酸と不飽和単量体との共重合体の重量平均分子量は、通常500〜200,000である。また、ホモマレイン酸重合体の分子量は通常250〜50,000、ホモ(メタ)アクリル酸重合体の分子量は通常250〜50,000である。
【0022】
中でも好ましくは、共重合体組成がアクリル酸30〜90重量%、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸70〜10重量%であるアクリル酸・2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体、共重合体組成がアクリル酸30〜90重量%、3−アリロキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸70〜10重量%であるアクリル酸・3−アリロキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸共重合体、共重合体組成がアクリル酸30〜90重量%、イソプレンスルホン酸70〜10重量%であるアクリル酸・イソプレンスルホン酸共重合体、及び重量平均分子量が300〜20,000であるホモマレイン酸重合体である。それらの1種または2種以上が用いられる。
【0023】
ホモマレイン酸重合体、ホモ(メタ)アクリル酸重合体、及びマレイン酸及び/又は(メタ)アクリル酸と不飽和単量体との共重合体の水溶性塩としては、当該重合体のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、炭素数2〜8のアミン塩の水溶性完全中和塩、水溶性部分中和塩がある。炭素数2〜8のアミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、さらには、2−エタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジ(2−エタノール)アミン、ジ(2−イソプロパノール)アミンなどがある。
【0024】
マレイン酸重合体の製造方法は、有機溶媒中ないし水性溶媒中で無水マレイン酸又はマレイン酸を遊離ラジカル開始剤の存在下で加熱することにより製造することができる。例えば特許2964154号公報、特公平7−49450号公報、特開平6−298874号公報等で開示されている。
【0025】
腐食抑制剤において、(A)成分の配合量は、(A)成分の溶解度、目的とする腐食抑制効果、使用状況等を考慮して適宜決定されれば良いが、通常、1重量%〜70重量%である。
【0026】
また、(A)成分と、(B)成分を併用する時の配合比率は、(A)成分:(B)成分の重量比で95:5〜5:95の範囲であり、好ましくは90:10〜10:90の範囲であり、更に好ましくは50:50〜20:80の範囲である。この腐食抑制剤において、(A)成分と(B)成分の合計量を合せた配合量は、(A)成分と(B)成分の溶解度、目的とする腐食抑制効果、使用状況等を考慮して適宜決定されれば良いが、通常、1重量%〜70重量%である。
【0027】
腐食抑制剤の調製には、溶媒として水、又は、(A)成分、(B)成分の溶解性を考量して親水性有機溶媒が用いられる。通常は水が用いられる。親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジオキサン、メチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、エチレンカーボネート等が挙げられる。
【0028】
腐食抑制剤の調製方法は、特に限定されるものではなく、一般的には、(A)成分を水及び/又は親水性有機溶媒に溶解させる、あるいは、(A)成分と(B)成分を水及び/又は親水性有機溶媒に溶解させて調製する。
【0029】
これらの腐食抑制剤の添加量としては、有効成分である(A)成分、(B)成分、且つ(A)成分と(B)成分の合計量として、通常、1〜5000mg/Lを満たすように添加する。好ましくは5〜500mg/Lを満たすように添加する。この添加量が1mg/L未満では十分な腐食抑制効果を得ることができない場合がある。また、添加量が5000mg/Lを超えると、添加量の増加に伴って腐食抑制効果は増加するが、添加量の増加の割に腐食抑制効果の増加が少なくコストパフォーマンスが高くならない場合がある。また、環境上も好ましくない。
【0030】
腐食抑制剤の添加方法は、薬注ポンプ等を用い、目的とする腐食抑制効果及び状況を考慮して、連続添加、間欠添加のいずれの方法でも構わない。
【0031】
腐食抑制剤の添加場所は特に限定されるものではなく、十分な撹拌が得られ、腐食抑制剤が速やかに分散し拡散する場所であれば構わない。添加場所の例としてはポンプの吸引側、十分な流速がある配管内等が挙げられる。
【0032】
本発明の効果を妨げない範囲で、本発明の腐食抑制剤に既に公知となっている別の腐食抑制効果を有する化合物やスケール抑制剤あるいは微生物障害抑制剤を併用しても良い。例えば、水と接する箇所に銅合金が用いられている場合には、銅合金の腐食抑制剤である芳香族アゾール化合物を併用しても良い。芳香族アゾール化合物の例としては、例えばトリルトリアゾール、ベンゾトリアゾール、ハロ置換ベンゾトリアゾール、ハロ置換トリルトリアゾール、メルカプトベンゾチアゾール等が挙げられる。
【0033】
本発明の腐食抑制方法(以下「腐食抑制方法」とする)は、対象とする水系に(A)成分を添加する腐食抑制方法、あるいは対象とする水系に(A)成分と(B)成分を併用して添加する腐食抑制方法である。
【0034】
対象とする水系に(A)成分を添加する腐食抑制方法において、被処理水系への(A)成分の添加方法は特に限定されるものではないが、(A)成分をそのまま、被処理水系に添加する方法、(A)成分を1〜70重量%溶液として調製して添加する方法の何れを用いても良い。
【0035】
被処理水系内への(A)成分の添加量は、有効成分である(A)成分として1〜5000mg/L、好ましくは5〜500mg/Lである。その添加量が1mg/L未満では十分な腐食抑制効果を得ることができない場合がある。また、添加量が5000mg/Lを超えると、添加量の増加に伴って腐食抑制効果は増加するが、添加量の増加の割に腐食抑制効果の増加が少なくコストパフォーマンスが高くならない場合がある。また、環境上も好ましくない。
【0036】
また、対象とする水系に(A)成分と(B)成分を併用して添加する腐食抑制方法においても、被処理水系への各成分の添加方法は特に限定されるものではなく、(A)成分と(B)成分をそれぞれ別個に、そのまま、被処理水系に添加する方法、(A)成分と(B)成分をそれぞれ別個に、1〜70重量%溶液として調製して添加する方法の何れを用いても良い。
【0037】
被処理水系内への(A)成分と(B)成分の添加は、有効成分である(A)成分、(B)成分、且つ(A)成分と(B)成分の合計量として、通常、1〜5000mg/Lを満たすように添加する。好ましくは5〜500mg/Lを満たすように添加する。且つ、被処理水系内において(A)成分と(B)成分が重量比で95:5〜5:95、好ましくは90:10〜10:90、更に好ましくは50:50〜20:80の範囲に保たれるように(A)成分と(B)成分を添加する。それらの添加量が1mg/L未満では十分な腐食抑制効果を得ることができない場合がある。また、添加量が5000mg/Lを超えると、添加量の増加に伴って腐食抑制効果は増加するが、添加量の増加の割に腐食抑制効果の増加が少なくコストパフォーマンスが高くならない場合がある。また、環境上も好ましくない。
【0038】
上記何れの腐食抑制方法においても、(A)成分及び/又は(B)成分の添加方法は粉体フィーダーや薬注ポンプ等を用い、目的とする腐食抑制効果及び状況を考慮して、連続添加、間欠添加のいずれの方法でも構わない。
【0039】
上記何れの腐食抑制方法においても、(A)成分、(B)成分の添加場所は特に限定されるものではなく、十分な撹拌が得られ、添加物が速やかに分散し拡散する場所であればよい。添加場所の例としてはポンプの吸引側、十分な流速がある配管内等が挙げられる。
【0040】
本発明の効果を妨げない範囲で、本発明の腐食抑制剤に既に公知となっている別の腐食抑制効果を有する化合物やスケール抑制剤あるいは微生物障害抑制剤を併用しても良い。例えば、水と接する箇所に銅合金が用いられている場合には、銅合金の腐食抑制剤である芳香族アゾール化合物を併用しても良い。芳香族アゾール化合物の例としては、例えばトリルトリアゾール、ベンゾトリアゾール、ハロ置換ベンゾトリアゾール、ハロ置換トリルトリアゾール、メルカプトベンゾチアゾール等が挙げられる。
【実施例】
【0041】
以下に本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0042】
〔テトラカルボン酸化合物〕
A−1:3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸
A−2:3,3′,4、4′−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸
A−3:3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸
A−4:ピロメリット酸
A−5:3,3′,4,4′−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸
A−6:1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸
A−7:5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸
A−8:3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸
【0043】
〔マレイン酸重合体〕
B−1:ホモマレイン酸重合体(商品名:BELCLENE200LA、BWA社製)
【0044】
〔(メタ)アクリル酸重合体〕
C−1:アクリル酸・2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体
〔重合比(重量)60:40、重量平均分子量10,000〕
【0045】
〔その他の化合物〕
D−1:ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸
D−2:tert−ブチル安息香酸
D−3:テレフタル酸
D−4:cis−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸
D−5:cis−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸
D−6:trans−1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸
D−7:グルコン酸
D−8:フタル酸
D−9:クエン酸
D−10:酒石酸
【0046】
(腐食試験1)
pH:8.3、Ca硬度:100mg−CaCO3/L、Mアルカリ度:100mg−CaCO3/Lの組成を有する試験液に表1の腐食抑制剤を25mg/L添加し、腐食試験用のフラスコに入れ、予め重量を測定した炭素鋼試験片〔材質JIS G3141−SPCC、寸法(厚さ)1mm×(幅)30mm×(長さ)50mm〕をモータの回転軸と同軸に取り付けられた保持器に取り付け、各試験片をフラスコ内の試験溶液に浸漬した。このフラスコを40℃恒温槽に入れ、各試験片を0.3m/sの回転速度で回転させ、3日間試験を行なった。その後、試験片を保持具から取り外し、試験片に付着した腐食生成物を流水下でブラシにより除去し、乾燥させた後、重量を測定し、次式により腐食速度(mdd)を計算した。
腐食速度(mdd)=α/〔β×(試験日数:日)〕
α:試験前後の試験片の重量減(mg)
β:試験片の表面積(dm
腐食速度(mdd)が10以下であれば、腐食抑制効果が良好と判断した。結果を表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
本発明の実施例1〜5の芳香族テトラカルボン酸化合物ならびに実施例6〜8の脂環式テトラカルボン酸化合物は、比較例1の脂肪族テトラカルボン酸化合物、比較例2の芳香族モノカルボン酸化合物、比較例3の芳香族ジカルボン酸化合物、比較例4、5の脂環式ジカルボン酸化合物、比較例6のアミノテトラカルボン酸化合物、比較例7のヒドロキシカルボン酸化合物と比較して、優れた腐食抑制効果を示していることが分かる。
【0049】
(腐食試験2)
<試験装置>
「JIS G0593−2002:水処理剤の腐食及びスケール防止評価試験方法」のオンサイト試験法に準拠して腐食試験を行った。評価に用いた試験装置の概略を図1に示す。その他の諸条件は以下の通り。
・試験用伝熱管:外径12.7mm、長さ510mmの炭素鋼鋼管STKM11A(JIS G3445)
・水容量:62L(水槽2及び配管を含む系全体の水容量)
・水槽の水温:35℃(水温制御装置9で制御)
・冷却塔入口・出口の循環水の温度差:15℃
・蒸発水量:4.4L/h
・補給水量:5.5L/h
・ブローダウン水量:1.5L/h
・濃縮度:3.9倍
流量調整バルブ5で試験用伝熱管評価部の線流速:0.3m/sとなるような流量210L/hに制御しながら循環ポンプ3で通水し、熱交換器7の熱流束は70kW/m2とした。冷却塔1は冷却能力1.8冷却トンの誘引通風向流接触型のものを使用した。循環水の電気伝導率を電気伝導率測定セル4で連続的に測定し、電気伝導率の入力信号より電気伝導率制御装置11を用いて濃縮度3.9倍に相当する電気伝導率になるようにブローダウンポンプ10を制御した。
【0050】
<試験方法>
上記試験装置において、補給水12として四日市市水を使用し腐食試験を行った。四日市市水の水質は
pH:7、電気伝導率:13mS/m、Ca硬度:40mg−CaCO3/L、Mg硬度:8mg−CaCO3/L、Mアルカリ度:40mg−CaCO3/L、 塩化物イオン:10mg/L、硫酸イオン:11mg/L、シリカ:12mg/Lであった。
水槽に市水を入れ、表2に示す腐食抑制剤を保有水量に対して300mg/L添加して、常温で48時間循環した。その後、熱負荷開始して濃縮度が3.9倍に達した後、直ちにブローダウンを開始して濃縮度を3.9倍に維持した。ブローダウン開始と同時にブローダウン量に対して100mg/Lの前記腐食抑制剤を水処理剤注入装置13により添加し、腐食試験を1ヶ月間実施した。試験終了後、試験用伝熱管を取り外して、腐食速度、最大孔食深さを「JIS G0593−2002:水処理剤の腐食及びスケール防止評価試験方法」に準拠して測定した。結果を表2に示す。
【0051】
〔腐食抑制剤1〕
3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸30重量部に48%水酸化ナトリウム27重量部を加えてナトリウム塩とした後、全量が100重量部になるように水を加えて腐食抑制剤1を調製した。
〔腐食抑制剤2〕
3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸10重量部に48%水酸化ナトリウム28重量部を加えてナトリウム塩とした後、ホモマレイン酸重合体(商品名:BELCLENE200LA、BWA社製)を活性分として20重量部を加え、全量が100重量部になるように水を加えて腐食抑制剤2を調製した。
〔腐食抑制剤3〕
3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸10重量部に48%水酸化ナトリウム28重量部を加えてナトリウム塩とした後、アクリル酸・2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体〔重合比(重量)60:40、重量平均分子量10,000〕の20重量部を加え、全量が100重量部になるように水を加えて腐食抑制剤3を調製した。
〔腐食抑制剤4〕
3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸10重量部に48%水酸化ナトリウム28重量部を加えてナトリウム塩とした後、ホモマレイン酸重合体(商品名:BELCLENE200LA、BWA社製)を活性分として10重量部とアクリル酸・2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体〔重合比(重量)60:40、重量平均分子量10,000〕の10重量部を加え、全量が100重量部になるように水を加えて腐食抑制剤4を調製した。
〔腐食抑制剤5〕
3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸の替わりに3,3′,4,4′−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸を加えた以外は腐食抑制剤4と同一の腐食抑制剤5を調製した。
〔腐食抑制剤6〕
3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸の替わりにピロメリット酸を加えた以外は腐食抑制剤4と同一の腐食抑制剤6を調製した。
〔腐食抑制剤7〕
3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸の替わりに5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸を加えた以外は腐食抑制剤4と同一の腐食抑制剤7を調製した。
〔腐食抑制剤8〕
3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸の替わりに3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸を加えた以外は腐食抑制剤4と同一の腐食抑制剤8を調製した。
〔腐食抑制剤9〕
ホモマレイン酸重合体(商品名:BELCLENE200LA、BWA社製)を活性分として30重量部を加え、全量が100重量部になるように水を加えて腐食抑制剤9を調製した。
〔腐食抑制剤10〕
アクリル酸・2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体〔重合比(重量)60:40、重量平均分子量10,000〕の30重量部を加え、全量が100重量部になるように水を加えて腐食抑制剤10を調製した。
〔腐食抑制剤11〕
ホモマレイン酸重合体(商品名:BELCLENE200LA、BWA社製)を活性分として15重量部とアクリル酸・2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体〔重合比(重量)60:40、重量平均分子量10,000〕の15重量部を加え、全量が100重量部になるように水を加えて腐食抑制剤11を調製した。
〔腐食抑制剤12〕
3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸の替わりにフタル酸を加えた以外は腐食抑制剤4と同一の腐食抑制剤12を調製した。
〔腐食抑制剤13〕
3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸の替わりにクエン酸を加えた以外は腐食抑制剤4と同一の腐食抑制剤13を調製した。
〔腐食抑制剤14〕
3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸の替わりに酒石酸を加えた以外は腐食抑制剤4と同一の腐食抑制剤14を調製した。
【0052】
【表2】

【0053】
本発明の実施例である、テトラカルボン酸化合物を配合した腐食抑制剤1、ならびに、テトラカルボン酸化合物とマレイン酸及び/又は(メタ)アクリル酸を構成単位として含む重合体を配合した腐食抑制剤2〜8は、比較例のマレイン酸及び/又は(メタ)アクリル酸を構成単位として含む重合体を配合した腐食抑制剤9〜11、テトラカルボン酸化合物の替わりに芳香族ジカルボン酸化合物、ヒドロキシトリカルボン酸化合物、ヒドロキシジカルボン酸化合物を配合した腐食抑制剤12〜14と比較して、優れた腐食抑制効果を示していることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施例に使用した試験装置を示す系統図である。
【符号の説明】
【0055】
1 冷却塔
2 水槽
3 循環ポンプ
4 電気伝導率測定セル
5 流量調整バルブ
6 流量計
7 熱交換器
8 試験片保持器
9 水温制御装置
10 ブローダウンポンプ
11 電気伝導率制御装置
12 補給水
13 水処理剤注入装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記の一般式(1)(式中、M、M、M、Mはそれぞれ独立に水素、カリウム、ナトリウム、アンモニウム、及び炭素数2〜8の1級アミン、2級アミン、3級アミンである。Zは炭素数6〜40で1つ以上の芳香族環を含む芳香族炭化水素基、あるいは炭素数4〜40の脂環式炭化水素基であって、複数の−CO−基がZの1つの炭素原子に結合していることはない。)で表されるテトラカルボン酸化合物及びその塩を有効成分として含むことを特徴とする金属の腐食抑制剤。
【化1】

【請求項2】
(B)マレイン酸及び/又は(メタ)アクリル酸を構成単位として含む重合体を含有する請求項1記載の金属の腐食抑制剤。
【請求項3】
(A)テトラカルボン酸化合物が、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2′,3,3′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3′,4,4′−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、3,3′,4,4′−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸から選択された1種以上である請求項1又は2記載の金属の腐食抑制剤。
【請求項4】
(B)成分が、ホモマレイン酸重合体、アクリル酸・2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体、アクリル酸・3−アリロキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸共重合体、アクリル酸・イソプレンスルホン酸共重合体から選択された1種以上である請求項2又は3に記載の金属の腐食抑制剤。
【請求項5】
ホモマレイン酸重合体が、重量平均分子量300〜20,000である請求項2乃至4のいずれかに記載の金属の腐食抑制剤。
【請求項6】
アクリル酸・2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体、アクリル酸・3−アリロキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸共重合体、アクリル酸・イソプレンスルホン酸共重合体において、共重合体組成が、アクリル酸:30〜90重量%、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、又は3−アリロキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸、又はイソプレンスルホン酸:70〜10重量%、共重合体の重量平均分子量が1,000〜100,000である請求項2乃至4のいずれかに記載の金属の腐食抑制剤。
【請求項7】
(A)成分と(B)成分の配合比率が、重量比で90:10〜10:90である請求項2乃至6のいずれかに記載の金属の腐食抑制剤。
【請求項8】
(A)一般式(1)(式中、M、M、M、Mはそれぞれ独立に水素、カリウム、ナトリウム、アンモニウム、及び炭素数2〜8の1級アミン、2級アミン、3級アミンである。Zは炭素数6〜40で1つ以上の芳香族環を含む芳香族炭化水素基、あるいは炭素数4〜40の脂環式炭化水素基であって、複数の−CO−基がZの1つの炭素原子に結合していることはない。)で表されるテトラカルボン酸化合物及びその塩を水系に添加することを特徴とする金属の腐食抑制方法。
【請求項9】
前記(A)成分と(B)マレイン酸及び/又は(メタ)アクリル酸を構成単位として含む重合体を併用して水系に添加することを特徴とする金属の腐食抑制方法。
【請求項10】
(A)テトラカルボン酸化合物が、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2′,3,3′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3′,4,4′−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、3,3′,4,4′−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸、及びその塩から選択された1種以上である請求項8又は9記載の金属の腐食抑制方法。
【請求項11】
(B)成分が、ホモマレイン酸重合体、アクリル酸・2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体、アクリル酸・3−アリロキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸共重合体、アクリル酸・イソプレンスルホン酸共重合体から選択された1種以上である請求項9又は10記載の金属の腐食抑制方法。
【請求項12】
ホモマレイン酸重合体が重量平均分子量300〜20,000である請求項9乃至11のいずれかに記載の金属の腐食抑制方法。
【請求項13】
アクリル酸・2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体、アクリル酸・3−アリロキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸共重合体、アクリル酸・イソプレンスルホン酸共重合体において、共重合体組成が、アクリル酸:30〜90重量%、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、又は3−アリロキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸、又はイソプレンスルホン酸:70〜10重量%、共重合体の重量平均分子量が1,000〜100,000である請求項9乃至11のいずれかに記載の金属の腐食抑制方法。
【請求項14】
(A)成分と(B)成分の添加比率が、重量比で90:10〜10:90である請求項9乃至13のいずれかに記載の金属の腐食抑制方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−138226(P2009−138226A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−315698(P2007−315698)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(000234166)伯東株式会社 (135)
【Fターム(参考)】