説明

金属めっき用熱可塑性基材のコンディショニングおよびエッチングのクロムフリー法

溶媒に溶解した硫酸を用いて、金属めっき用の熱可塑性基材を同時にコンディショニングおよびエッチングするための改善された方法を記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
金属めっき用熱可塑性基材を同時にコンディショニングおよびエッチングするための改良されたクロム(VI)フリー方法。
【背景技術】
【0002】
金属によって熱可塑性ポリマー(TP)を被覆することは、当業界でよく知られており商業的に実施されている。このような被覆は、ポリマー基材の機械的性質を改良し、また、電磁遮蔽などの他の性質を提供するために、美観目的(すなわちクロムめっき)に利用される。金属は、無電解めっきまたは電解めっき、真空金属被覆、種々のスパッタリング法、熱可塑体上への金属箔の積層などの種々の方法を用いてTP上に乗せることができる。
【0003】
これらの方法のいずれかを用いて、得られる製品は、有用となる一定の性質を有する必要がある。一般的に云うと、金属被覆は、使用中に熱可塑性基材から分離しないように十分な接着性を有する必要がある。製品が室温以上および/または以下の反復的な加熱と冷却である温度サイクルを受けなければならない場合、このことは特に難しいかもしれない。たいていの熱可塑性組成物は、たいていの金属とは熱膨張率が異なり、反復的な加熱と冷却のサイクルは金属とTPとの間の界面に応力を加え、TPと金属被覆との間の結合を弱める結果となり、最終的にはTPと金属層との分離に至り得る。したがって、特に熱サイクル環境下でのTP類と金属コーティングとの接着を改良するための製造法および/または組成物が求められている。
【0004】
基材への接着は、被覆前に基材のコンディショニングおよび/またはエッチングを用いることによって改良することができる。当業界に知られている標準的なエッチング材料はスルホクロム酸である。しかし、これは環境に有害なクロムVIという欠点を有する。好適な溶媒中でクロムVIを含有しない硫酸を使用することにより、TP基材のコンディショニングとエッチングを同時に行うことができ、接着の改良に至ることが判明している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
熱可塑性ポリマー基材の表面を、好適な溶媒中に硫酸を含む溶液に接触させることを含む、金属めっき用の熱可塑性ポリマー基材の表面の少なくとも一部または全部を同時にコンディショニングとエッチングするための方法を本明細書に記載する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
熱可塑性ポリマー基材の表面を、好適な溶媒中の硫酸を含む溶液に接触させることを含む、めっき用の熱可塑性ポリマー基材の表面を同時にコンディショニングとエッチングするための方法を本明細書に記載する。方法は、基材表面の全部または一部において実施することができる。
【0007】
「熱可塑性ポリマー」(TP)は、架橋されておらず、30℃以上のガラス転移温度(Tg)および/または融点(Tm)を有する有機ポリマー材料である。本明細書において、TmおよびTgは、25℃/分の加熱速度を用い、ASTM法D3418−82を用いて測定される。測定は二次熱上で行われる。Tmは融解吸熱のピークとし、Tgは転移の屈曲点とする。Tmを考慮すると、任意の融点での融解熱は少なくとも約1.0J/gでなければならない。
【0008】
有用なTPとしては、2種以上の半結晶質もしくは非晶質のポリマーの混合物、または半結晶質ならびに非晶質の熱可塑材を含有する混合物など、熱可塑性ポリマーの混合物を挙げることができる。好ましい非晶質TPはABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)ポリマーである。
【0009】
「半結晶質熱可塑性ポリマー」とは、少なくとも約2.0J/g、より好ましくは、少なくとも約5.0J/gの融解熱で、30℃以上の融点を有する熱可塑材を意味する。
【0010】
半結晶質TPが好ましく、これには、ポリ(オキシメチレン)などのポリマー類およびそのコポリマー類;ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)、ポリ(1,4−シクロヘキシルジメチレンテレフタレート)、およびポリ(1,3−ポロピレンテレフタレート)などのポリエステル類;ナイロン−6,6、ナイロン−6、ナイロン−12、ナイロン−11、ナイロン−10、および部分的芳香族(コ)ポリアミド類などのポリアミド類;ポリエチレン(すなわち、低密度、線低密度、高密度など全ての形態)、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類が含まれるが、これらに限定されない。
【0011】
好ましいTPはポリアミドであり、典型的には部分的芳香族ポリアミドである。ポリアミドは、脂肪族ポリアミドと部分的芳香族ポリアミドを含むこともできる。
【0012】
「部分的芳香族ポリアミド」(PAP)とは、部分的に1種または複数種の芳香族ジカルボン酸から誘導されたポリアミドを意味し、ポリアミドが誘導された全芳香族ジカルボン酸が少なくとも50モルパーセント、好ましくは、少なくとも80モルパーセント、より好ましくは、ほとんど全てのジカルボン酸が芳香族ジカルボン酸である。好ましい芳香族ジカルボン酸はテレフタル酸およびイソフタル酸、ならびにそれらの組み合わせである。
【0013】
「脂肪族ポリアミド」(AP)とは、存在する全ジカルボン酸誘導単位のうち、60モルパーセント未満、より好ましくは、20モルパーセント未満、特に好ましくは、芳香族ジカルボン酸から誘導された単位がほとんど存在しないという条件で、1種または複数種の脂肪族ジアミンならびに1種または複数種のジカルボン酸、および/または1種または複数種の脂肪族ラクタムから誘導されたポリアミドを意味する。
【0014】
「脂肪族ジアミン」とは、アミノ基の各々が脂肪族炭素原子に結合している化合物を意味する。有用な脂肪族ジアミンとしては、式H2N(CH2nNH2(nは4〜12)のジアミン類、および2−メチル−1,5−ペンタンジアミンが挙げられる。
【0015】
「芳香族ジカルボン酸」とは、カルボキシル基の各々が芳香環の一部である炭素原子に結合している化合物である。有用なジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、4,4‘−ビフェニルジカルボン酸、および2,6−ナフタレンジカルボン酸が挙げられる。
【0016】
好ましいPAPは、ジカルボン酸イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸のうちの1種または複数種、および式H2N(CH2nNH2(nは4〜12)のジアミン類の1種または複数種、ならびに2−メチルペンタンジアミンから誘導された反復単位を含むPAPである。当然のことながら、好ましいPAPを形成するために、これらの反復単位の任意の組み合わせを形成し得る。
【0017】
好ましいAPは、mが2〜12である式HO2C(CH2mCO2Hの1種または複数種のジカルボン酸、イソフタル酸、およびテレフタル酸から誘導された反復単位を含むAPである。特に好ましいジカルボン酸には、アジピン酸(m=4)がある。これらの好ましいAPのうち、ジアミンからの好ましい反復単位は、nが4〜12であるH2N(CH2nNH2、および2−メチルペンタンジアミンから誘導され、nが6であるジアミンが特に好ましい。当然のことながら、好ましいAPを形成するために、これらの反復単位の任意の組み合わせを形成し得る。特に好ましい特定のAPは、ポリアミド−6,6およびポリアミド−6[ポリ(ε−カプロラクタム)]ならびにポリアミド10である。
【0018】
好ましいPAPにおいて、TPは、約90℃以上、好ましくは、約140℃以上、特に好ましくは、約200℃以上のTgおよび/またはTmを有する。TPは、全組成物の少なくとも30重量パーセント、より好ましくは、全組成物の少なくとも50重量パーセントである。当然のことながら、組成物中、1種または複数種のTPが存在でき、存在するTPの量は存在するTPの総量と考えられる。
【0019】
金属めっきするTP組成物は、熱可塑性TP組成物に通常見られるグラスファイバー、カーボンファイバー、アラミドファイバー、ミルドグラス、フラットグラス、およびウォラストナイトなどの補強剤;粘土、雲母、カーボンブラック、珪土、および他の珪酸鉱物などの充填剤;難燃剤;顔料;発色剤;安定化剤(光学的および/または熱的);抗酸化剤;滑剤および/または離型剤;接着促進(特にTP組成物と金属コーティングとの間)剤;ポリマー強化剤などの強化剤;ポリエステル類および非晶質ポリアミド類などの他のポリマー(これらの特定の材料のいくつかの分類はかなり恣意的であり、これらの材料は時々1つ以上の機能を果す)などの他の材料を通常の量で含有することもできる。好ましい材料は補強剤、特にグラスファイバーおよびカーボンファイバーである。当然のことながら、これらの材料の各タイプの1種以上が存在してもよいし、上記材料の1タイプ以上が存在してもよい。
【0020】
TPは、エッチング可能な充填剤を含有することもできる。「エッチング可能な充填剤」とは、少なくとも部分的に除去され、および/または、ポリマー基材に有意に悪影響を与えない条件下で、その表面が適切な(酸、塩基、熱、溶媒など)処理によって変化する充填剤を意味する。これは、充填剤が適用される処理によってポリマー部分の表面から、一部または全部除去されることを意味する。例えば、充填剤は、塩酸によって除去(エッチング)できる炭酸カルシウムまたは酸化亜鉛などの材料、または水性塩基によって除去できる酸化亜鉛またはクエン酸などの材料、または高温で解重合および除去できるポリ(メチルメタクリレート)などの材料、または水などの溶媒によって除去できるクエン酸または塩化ナトリウムであり得る。ポリマーマトリックスは、処理によって通常は大きな影響を受けないため、ポリマー部分の表面近くのエッチング可能な充填剤のみが影響を受ける(完全に、または部分的に除去される)。何らかの特定の状況においてどんな材料がエッチング可能であるかは、エッチング剤(熱的、溶媒、化学的)などの物を含むエッチングに用いられる条件によって、また、エッチングが実施される物理的条件によって決定される。例えば、何らかの特定のポリマーでは、エッチングはマトリックスポリマーの広範な熱的分解を引き起こすのに十分高い温度で実施すべきではないし、および/またはマトリックスポリマーを、ポリマーのマトリックスを広範に攻撃する化学剤、および/またはポリマーのマトリックスを容易に分解する溶媒に曝露すべきではない。ポリマーのマトリックスに対するいくらかのきわめて小さな「損傷」は許容することができ、実際、ポリマー自体上への「攻撃」によるポリマーマトリックス表面自体の少量のエッチングは、ポリマー表面上へ(後に)被覆されるあらゆるものの接着性の改良に有用であり得る。
【0021】
エッチング可能な充填剤は、金属被覆が、特に無電解被覆および/または電解被覆によって行われる場合は好ましい成分である。TPは、約0.5重量パーセント〜約30重量パーセントのエッチング可能な充填剤を含有し得る。好ましいエッチング可能な充填剤は、アルカリ金属の炭酸塩およびアルカリ土類金属(IUPAC表記法で2族の元素)であり、炭酸カルシウムが特に好ましい。エッチング可能な充填剤の最少量は、好ましくは、0.5重量パーセント以上、より好ましくは、約1.0重量パーセント以上、きわめて好ましくは、約2.0重量パーセント以上、特に好ましくは、約5.0重量パーセント以上である。エッチング可能な充填剤の好ましい最多量は約30重量パーセント以下、より好ましくは、約15重量パーセント以下、特に好ましくは、約10重量パーセント以下である。これらの重量パーセントは全TP組成物を基準にしている。当然のことながら、エッチング可能な充填剤の好ましい重量範囲を形成するために、これらの最少重量パーセントのいずれかを最多重量パーセントのいずれかと組み合わせることができる。エッチング可能な充填剤の1種以上が存在してもよく、1種以上が存在する場合は、エッチング可能な充填剤の量は、存在するエッチング可能な充填剤の総計と見なされる。
【0022】
TP組成物は、一般にTP組成物を作製する当業界で用いられ、よく知られている方法によって作製できる。最も一般的には、TP自体を一軸スクリュー押出機もしくは二軸スクリュー押出機または混練機などの好適な装置において、種々の成分と溶融混合する。フラット補強ファイバー長の広範な分解を防ぐために、ファイバーが押出機全長の高せん断に晒されないように、二軸スクリュー押出機内などに「サイドフィード」することが好ましいと考えられる。
【0023】
部分は、射出成形、押出し、ブロー成形、熱成形、ロト成形などのTP組成物に関する通常の形成方法によって形成できる。これらの方法もまた当業界によく知られている。
【0024】
本明細書に記載された方法において、酸食エッチングを好適な溶媒に溶解させる。好適な溶媒は、TP基材に対して有害ではなく、酸食エッチングを溶解でき、室温以上かつTPの融点以下と考えられる温度範囲で、TPを部分的に溶解でき、および/または膨潤させることができる溶媒である。ポリアミドにとっての典型的な好適な溶媒としては、限定はしないが、クレゾール(メチルフェノール)およびメタクレゾール、ならびにエチレングリコールなどのフェノール類が挙げられ;また、ギ酸、酢酸などのいくつかの酸が挙げられる。酸食エッチングは、硫酸、リン酸、ホスホラス酸、ホスフィン酸またはそれらの組み合わせであり得る。
【0025】
酸食エッチングまたは酸食エッチングの水溶液を、公称80℃以下、または別の安全温度以下に溶液温度を保持しながら、溶媒中の酸の濃度が、溶媒容量に添加した酸水溶液の容量および濃度により判定して約180gr/リットル〜約700gr/リットル、または好ましくは、約200g/リットル〜約550g/リットルに達するまで、換気フード中、溶媒に徐々に添加し得る。攪拌後、酸の最終濃度は、水酸化ナトリウムを用いる滴定による測定で、典型的には、約90gr/リットル〜約350gr/リットル、好ましくは、約100gr/リットル〜約275gr/リットルである。
【0026】
TP基材の表面を調製し、攪拌下、表面の少なくとも一部または全部を、このようにして調製した酸食エッチング溶液に接触させることによってエッチングする。接触時の溶液温度は、典型的には約50℃〜約100℃、または約70℃〜約90℃、または約75℃〜約85℃である。
【0027】
接触は典型的には、約3分間〜約25分間、または約5分間〜約20分間、または約10分間行われる。
【0028】
この方法はまた、TP基材の一部または全部を「触媒」、典型的にはパラジウム化合物、引き続いてTPの表面上にニッケルまたは銅などの金属の層を蒸着させる無電解めっき溶液による処理によって活性化できる。より厚い、および/または追加の金属層が望まれる場合、この方法は、無電解、電解、またはそれらの組み合わせなどの当業界に知られている任意の方法を用いて表面の一部または全部をめっきするステップをさらに含むことができる。TP基材に金属被覆を適用するための好適な触媒および他の方法は、よく知られており、例えば、米国特許第5,762,777号明細書、米国特許第6,299,942号明細書および米国特許第6,570,085号明細書を参照されたい。同一組成物または異なる組成物の多層の金属を適用することができる。
【0029】
TP上に被覆できる有用な金属としては、銅、マンガン、スズ、ニッケル、鉄、亜鉛、金、白金、コバルト、およびリン、ならびにこれら金属の合金が挙げられる。これらの金属は無電解被覆法および/または電解被覆法を用いて容易に被覆でき、一方、アルミニウムは真空金属被覆において一般に用いられる。被覆は種々の被覆法によって達成できる任意の厚さであり得るが、典型的には、約1μm〜約300μmの厚さ、好ましくは、約1μm〜約100μmの厚さである。蒸着される金属の平均粒径は、1nm〜約15,000nmの範囲であり得る。好ましい平均粒径範囲の1つは、1nm〜100nmである。金属被覆の効果は、例えば、美観の改良、機械的性質の改良、電磁シールドの増加、腐食環境および/または熱と急速冷却サイクルの反復的曝露からのTPの保護改良のうちの1つ以上であり得る。
【0030】
これらの金属被覆された組成物は、ハンドヘルド装置、玩具、家庭電化製品、電動工具、工業用機械などのエレクトロニクスにおいて、特に任意の加熱と冷却サイクル要件を有する高温環境における自動車部品などの種々の製品において有用である。
【実施例】
【0031】
本実施例における全ての部は重量部である。
使用される材料は以下のとおりである:
【0032】
ポリアミド組成物1
ポリマーA 55%
充填剤1 40%
強化剤 5%
【0033】
ポリアミド組成物2
ポリマーA 47.32%
ポリマーB 2%
GF 40%
充填剤2 10%
添加剤1(HS7:1:1) 0.43%これは熱安定化剤である(Joel記載)
添加剤2(Licowax OP) 0.25%これは潤滑剤である
【0034】
ポリアミド組成物3
ポリマーA 34.32%
GF 25%
充填剤3 40%
添加剤1(HS7:1:1) 0.43%これは熱安定化剤である(Joel記載)
添加剤2(Licowax OP) 0.25%これは潤滑剤である
【0035】
ポリマーA テレフタル酸から作製されたPAP、50モルパーセント(存在する全ジアミンのうち)の1,6−ヘキサンジアミン、および50モルパーセントの2−メチル−1,5−ペンタンジアミン。
【0036】
ポリマーB 脂肪族ポリアミド、低分子量ポリアミド−6,6,Elvamid(登録商標)8061(E.I.DuPont de Nemours & Co.,Inc.(Wilmington,DE 19899 USA)から入手)。
【0037】
充填剤1 焼成表面処理カオリン、Translink(登録商標)445(BASF(Florham Park、N.J)から入手)。
【0038】
充填剤2 炭酸カルシウム、Super−Pflex(登録商標)200(Specialty Mineral Inc.(New York 10174 USA)から入手)。
【0039】
充填剤3 珪灰石Nyad(登録商標)G10012(NYCO(Willsboro, New York 12996 USA)から入手)。
【0040】
強化剤 EPDM(E.I.DuPont de Nemours & Co.,Inc.(Wilmington,DE 19899)から入手)。
【0041】
GF チョップトグラスファイバー、PPG(登録商標)3660(PPG Industries(Pittsburgh、PA 15272、USA)から入手)。
【0042】
実施例の部分的芳香族ポリアミド(PAP)組成物1、2、3は、それらの全表面をエチレングリコール中の硫酸溶液に80℃の温度で10分間接触させることによりエッチングを施した。このエチレングリコール中の硫酸溶液は、10リットルノエチレングリコールに対して3リットルの98%水性硫酸を徐々に添加することにより調製した。このように表面を調製したPAP類を引き続き、表1に記載された方法によって活性化、およびNiによる無電解めっきを行い、その後、やはり表1に記載された方法によってCuによる電気めっきを行った。表2もまた、可塑性表面と電気めっきされたCu層との間に十分な剥離強度を生じさせる働きがある方法を記載しており、エッチングはやはり、上記のとおりエチレングリコール中の硫酸により達成されるが、引き続く活性化およびNiめっきのステップは異なっており、Cuの電気めっきは同じである。
【0043】
陽性比較例は、表3の方法により調製し、エッチング溶液はスルホクロム酸であり、引き続くステップは、表2の方法と同じであった。
【0044】
陰性比較例は、表4に示された方法により調製し、エッチング溶液は、エチレングリコール中の塩酸を含んでなり、引き続くステップは、表1に記載された方法と同じである。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
【表3】

【0048】
【表4】

【0049】
実施例中の3種のPAP組成物は、30mmのWerner&Pfleiderer二軸スクリュー押出機で成分を混合することによって作製した。PAP類を後部セクションに送り込み、グラスファイバーと充填剤を溶融ポリアミド中の下流に送り込んだ。バレルは、310℃の公称温度に維持した。ストランドダイを通って押出機を出ると、これらの組成物は造粒された。引き続きポリアミド組成物を、6cm×6cm×0.2cmのプラークに射出成形した。射出成形条件は、除湿エア中100℃で6〜8時間の乾燥、320〜330℃の溶融温度、140〜160℃の成形温度であった。
【0050】
剥離強度は、ISO試験方法34−1を用い、2.5kNのロードセルを備えたZwick(登録商標)(または等価装置)Z005引張り試験機により接着性を測定した。熱可塑性組成物のプラークに、引張り試験機の一端に取り付けられている滑りテーブル上に固定された20〜25μmの金属(銅)の標準的ガルバニ電池により電気めっきを施した。熱可塑性表面上に1cm幅の金属バンドが作製されるように、1cm離れた2つの平行カットを金属表面に作製した。テーブルは、これらのカットと平行方向にスライドした。1cm幅の銅ストリップを、この機械の他端に取り付けて、金属ストリップを、50mm/分の試験速度(温度23℃、相対湿度50%)で(直角に)剥離させた。次いで剥離強度を算出し、それを表4に示す。
【0051】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属めっき用熱可塑性ポリマー基材の表面の少なくとも一部または全部を同時にコンディショニングおよびエッチングするための方法であって、前記基材の表面を、好適な溶媒中に硫酸を含む溶液に接触させることを含む方法。
【請求項2】
前記熱可塑性基材が、ポリアミドである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリアミドが、部分的芳香族ポリアミドであるか、または脂肪族ポリアミドと組み合わせた部分的芳香族ポリアミドである請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリアミドが、ジカルボン酸であるイソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸の1種または複数種、ならびにH2N(CH2)nNH2(nは4〜12)であるジアミン類、および2−メチルペンタンジアミンの1種または複数種から誘導された反復単位を含む請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記好適な溶媒がエチレングリコールである請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記溶液の温度が約50℃〜約100℃である請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記接触が約3分間〜約25分間実施される請求項1に記載の方法。
【請求項8】
触媒の存在下での1つまたは複数の活性化ステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
金属めっきのステップをさらに含み、前記金属めっきが無電解、電解、またはそれらの組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法により作製された金属めっき製品。
【請求項11】
前記金属が、銅、マンガン、スズ、ニッケル、鉄、亜鉛、金、白金、コバルト、リン、アルミニウム、およびこれらの金属の合金からなる群から選択される請求項1に記載の方法から作製された金属めっき製品。
【請求項12】
高温用途、自動車部品、電子装置、玩具、家庭電化製品、電動工具、または工業用機械における使用に好適である請求項10に記載の金属めっき製品。

【公表番号】特表2012−513500(P2012−513500A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542589(P2011−542589)
【出願日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【国際出願番号】PCT/US2009/069357
【国際公開番号】WO2010/075484
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】