説明

金属をドープした沈降シリカ材料を含む空気ろ過材

本発明は、全般的に、有害ガス(例えばアンモニア)の極めて有効なろ過を提供する空気処理システムに使用するための環境制御ユニットに関する。このようなろ過システムは、新規の金属をドープした沈降シリカ材料を利用して、上述のような望ましくないガスを捕獲し、閉鎖された環境からそれらを除去することができる。このようなシリカは、特定の多孔性の要件および密度の測定値を示す。その上、適切な金属ドーピングを起こすためには、このような沈降シリカは、湿潤状態にある間に処理しなければならない。これらの具体的な特性と金属ドーパントとを組み合わせるすることによって極めて有効な有害ガスのろ過が可能になり、具体的には、従来の沈降シリカ製のろ過製品と比較して、取り込みおよび破過点の結果が達成されるようになる。さらに使用方法および特定のフィルター装置も本発明の範囲に包含される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、全般的に、有害ガス(例えばアンモニア)の極めて有効なろ過を提供する空気処理システムに使用するための環境制御に関する。このようなろ過システムは、新規の金属をドープした沈降シリカを利用して、上述のような望ましくないガスを捕獲し、閉鎖された環境からそれらを除去することができる。このようなシリカは、特定の多孔性の要件および密度の測定値を示す。さらに、最も有効な金属ドーピングを起こすためには、このような沈降シリカ材料が、湿潤状態である間に処理されることが好ましい。これらの具体的な特性と金属ドーパントとを組み合わせることによって極めて有効な有害ガスのろ過が可能になり、具体的には、従来のろ過材製品と比較して優れた取り込みおよび破過点の結果が達成されるようになる。さらに使用方法および特定のフィルター装置も本発明の範囲に包含される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
閉鎖空間の近くで放出された空気中に浮遊する有害物質から閉鎖空間を保護するように配置することができる空気ろ過システムを含む空気処理システムへの必要性が増加の一途をたどっている。毎年、建築物に入り込んで疾患を引き起こす有毒ガスや、事故等の原因による破壊で生じる有毒ガスによる事件が多数起こっている。また現在のところ、テロリストが起こし得る活動の一環として放出される空気中に浮遊する毒性物質に対する意識も高くなっている。加えて、戦闘地域にいる軍事関係者にとって、敵が空気中に浮遊する有害物質を閉鎖空間の内外両方に放出することから保護する必要性があり得る。民間の環境か軍隊の環境かにかかわらず、典型的な空気ろ過システムは、一般的に、ほとんどの有害ガスおよび物質に対して効果がない。例えば、厚紙で縁取ったガラス繊維製のマットフィルターのような標準的なダストフィルターは、ミクロサイズの粒子およびガスに対して極めて低い除去性能しか示さない。市販の静電繊維フィルターは、標準的なダストフィルターよりも高い効率を有し、花粉などの小さい固形微粒子を除去することができるが、これは、ガスを遮断して除去することはできない。HEPA(「高性能微粒子空気」)フィルターは、超微細な固体および液状の微粒子、例えばほこりや花粉、放射性粒子汚染物質、および、エアロゾルなどの空気中に浮遊する分散体を高効率でろ過するのに用いられることが知られている。しかしながら、脅威が、極小サイズ(すなわち0.001ミクロン未満)のガス状の化学物質またはガス状の粒子である場合、従来の市販のHEPAフィルターはこのようなタイプの空気中に浮遊する物質を遮断して制御することができない。
【0003】
空気流からガス状物質および材料を除去するのに用いられる最もよく見られるフィルター技術は、活性炭ベースものである。このようなガスのろ過は、これまでに、ガスマスクまたは工業的なプロセスのような所定の用途で、フィルターを通過させた空気またはガスストリームから極めて毒性の高い化学物質の蒸気およびガスを超高性能ろ過するための活性化された含浸炭素またはその他の吸着性のろ床を用いることによって実施されている。この種の市販のフィルターは、一般的に、活性炭を包含した不織布を含み、このような場合、活性炭は不織布の繊維マットに接着させている。有毒化学物質からの保護に用いられる炭素フィルターは、典型的には、空気中に浮遊する微粒子の少なくとも99.999%の除去効率が維持されるように設計される。活性炭フィルターは、典型的には、分子が炭素の顆粒の孔内に捕捉される吸着作用によって空気ストリームから分子を除去することによって機能する。
【0004】
活性炭は、呼吸マスク、集塵フィルター(collective filter)などの用途において有用であり、含浸されていない活性炭の使用では除去されないガスを除去するための特殊な含浸の使用を伴うことが多い。このような毒性のガスおよび/または蒸気を除去するための含浸活性炭による吸着が知られており、長年にわたって用いられている。従来技術の製品は、銅、クロムおよび銀を活性炭に含浸させて含むことが多い。これらの吸着剤は、シアニドベースのガスおよび蒸気のような多数の毒性物質の除去に有効である。
【0005】
活性炭に含浸させた多数のその他の無機物質に加えて、様々な有機性含浸が、軍事用途において塩化シアンの除去のために有用であることが見出されている。これらの例としては、トリエチレンジアミン(TEDA)、および、ピリジン−4−カルボン酸が挙げられる。
【0006】
建築物保護のために、広範囲の毒性化学物質の蒸気およびガスをろ過するために、銅−銀−亜鉛−モリブデン−トリエチレンジアミン含浸炭素を用いた商業的なシステムと軍事システム両方の様々なタイプの高性能フィルターシステムが提唱されている。しかしながら、このような炭素ベースのフィルターは、アンモニア、エチレンオキシド、ホルムアルデヒド、および、二硫化炭素のようなその他のガスには効果がないことが証明されている。これらのその他のガスは、産業面で極めて突出しており、所定量で存在すると(特に閉鎖された空間内で)人間に効果的に害を与え、さらに、これまでにその他のフィルター装置は環境を配慮した処理および/または除去に不適切であることが証明されていることから、これらの欠陥を改善するためのフィルターメカニズムへの明確な必要性がある。その上、このような特定のタイプのろ過材は、標的環境の相対湿度が高すぎる場合、要求されるレベルのガス除去に効果がないことが証明されている。これまで、このようなガス、具体的にはアンモニアを、許容できる効率レベルにみあった取り込みおよび破過点で、すなわち適切なコストでの適切な性能で長い持続時間で効果的に除去し、加えて、50%より高い相対湿度レベルで効果的な有害ガス除去を示す比較的少量のろ過材を含む適切なろ過システムは提供されていない。
【0007】
シリカベースの組成物が、優れたガスろ過材を提供することが認識されている。しかしながら、関連する従来技術の範囲内で、このようなろ過材によって、恒久的に、且つ大規模な使用に許容できるレベルで取り込みおよび破過点レベルを提供する能力はほとんど提供されていない。基本的には、取り込みは、ろ過材が所定体積の対象ガスを捕獲する能力の尺度であり、破過点は、捕獲に関するろ過材の飽和点の指標である。従って、高い取り込み(従って、大量の有害ガスの迅速な捕獲)、および、長い破過時間(従って、取り込みに加えて、迅速な捕獲を引き起こす能力だけでなく、飽和に達する時間までの時間が長いこと)を示す適切なろ過材を見出すことは極めて望ましい。現在使用されている標準的なフィルターは、アンモニアのような有害ガスの場合、取り込みが遅いこと、および、破過点に達するまでの時間が比較的迅速であることといった限定がある。取り込みを減少させ、破過点を長くし、これらをより経済的なシリカ基材を用いて行う新しいろ過材を開発するする必要がある。
【0008】
金属ドープされた可能性のあるシリカベースの化合物を利用したアンモニアのようなガスの除去に関する最も近い技術分野は、Kemira Agro OyのWO00/40324で教示されている。しかしながら、このようなシステムは、主として、回収されたガスの再生が可能なろ過材を提供することに関連しており、これは恐らく、空気からの永続的な除去というよりもさらなる利用のためである。このような、温度を高めたり、または、圧力を変化させたりすることによってこのような毒性ガスを容易に再生する(すなわち、捕捉されたガスの放出を可能にする)能力は、遺憾ながら対象となる環境への危険が生じる。それとは反対に、現在提唱されているシステムの利点は、効果的な長時間の破過点を提供することである(従って、長期にわたって対象となる空間から、十分且つ効果的に不要なガスを実質的にそれら全体として除去すること、加えて、取り込み測定で示されたように、このようなガスを実質的に全て、十分且つ効果的に取り込むことを示す)。Kemiraの参考文献は、具体的にはシリカおよび金属(具体的には銅(I)塩であり、これが最良である)の乾式混合物を提供することにも関しており、この組成物は、参考文献で述べられているように、効果的な取り込みを提供しており、対象となる環境からの永続的な、且つ効果的なガス(例えばアンモニア)除去というよりも再生能力が求められている。本発明のろ過材の詳細を、以下でより詳細に考察する。
【発明の開示】
【0009】
発明の簡単な説明
本発明の一形態によれば、多価金属をドープした沈降シリカ材料を含むろ過材であり、前記材料は、約30〜350m/gのBET表面積;窒素ポロシメトリーで測定した場合、0.25cc/g〜2.0cc/gより大きい孔容積;約100Åより大きく300Å以下の平均孔径;を示し、ここで、前記沈降シリカ材料上およびその内部にドープされた多価金属は、沈降シリカ材料総量の5〜25重量%の量で存在する。好ましくは、前記多価金属は、約8〜約20%の量で存在する。
【0010】
本発明のその他の形態によれば、多価金属をドープした沈降シリカのろ過材であって、本ろ過材は、アンモニアガス/空気の組成物について、a)直径4.1cmのフラスコ内で高さ1cmのろ床としてとして存在させた場合、b)一定のアンモニアガス濃度(1000mg/mのアンモニアガス)に周囲温度および圧力で晒した場合、および、c)同時に少なくとも15%の相対湿度に晒した場合に、少なくとも50分間の破過点測定値を示し;さらに、前記ろ過材は、35mg/mの破過濃度に達した後に、前記破過濃度を超過するアンモニアガスの溶出を示さない。好ましくは、破過時間は、少なくとも100分間である。さらに本発明のその他の形態は、上記で列挙した条件と同じ条件に晒した場合、および、同じ試験プロトコールで(ただし、相対湿度が80%であることを除く)少なくとも50分間の破過時間を示す多価金属をドープした沈降シリカ材料に関する。好ましくは、このような高い相対湿度への曝露試験の実施例の破過時間は、同様に少なくとも100分間である。
【0011】
本発明のさらにその他の形態によれば、金属をドープした沈降シリカ粒子の製造方法が提供され、前記方法は、以下の連続工程を含む:
a)沈降シリカ材料を提供すること;
b)前記沈降シリカ材料を少なくとも1種の多価金属塩と湿式反応させ、金属をドープした沈降シリカ材料を生産すること;および、
c)前記多価金属をドープした沈降シリカ材料を乾燥させること。
【0012】
あるいは、工程「a」は、前記沈降シリカ材料を生成するための生産工程を含んでいてもよい。
本発明の一つの明確な利点は、比較的少量で、閉鎖された空間に典型的な圧力下で、且つ多様な相対湿度で存在する場合、極めて有効なアンモニアの取り込みおよび破過特性を示すろ過材を提供することである。本発明のその他の利点のなかでも特に、アンモニアガスの場合、安定した、且つ効果的な取り込みおよび破過点の結果を示し、さらに、このような有害ガスを、人間への曝露をダメージレベル未満に低減させるのに適切な速度で閉鎖された空間から除去する、閉鎖された空間内で利用するためのフィルターシステムを提供することが挙げられる。さらにその他の利点は、標準状態下で一度吸着した有害ガスの放出を不可逆的に予防する本発明の能力である。加えて、沈降シリカ材料は、その他の吸着剤の選択肢よりも費用効率が高い。
【0013】
また、本発明は、このようなろ過材が少なくとも15重量%導入されたフィルターシステムを包含する。さらに、金属塩の反応が、好ましくは沈降シリカ粒子が湿潤状態である間に行われる上記金属をドープした沈降シリカ粒子の製造方法が、対象となるシリカ材料の微小孔内にこのような金属種を取り込む最も効率的な方法、従って最良の方法を提供することにおいて極めて重要であることが見出された。そのようなものとして、このような湿式でのシリカへのドーピング工程が、このような有害ガス(一例を挙げれば、アンモニア)のための最も効率的なろ過材、および、総体的なフィルターシステムを提供するのに必要であることが決定された。
【0014】
発明の詳細な説明
本発明の目的において、用語「沈降シリカ」は、金属ケイ酸塩(例えば、ケイ酸ナトリウム)と酸(例えば、硫酸)とを反応させ、無定形の固形シリカ材料を形成することによって得られる材料を包含することとする。一般的には、沈降シリカは、より高いpH(例えば6を超えるpH)、典型的には350m/g未満のより低い表面積(窒素ポロシメトリーによって測定)、および、100Åを超えるより大きい中央孔径を有するために、シリカゲルと区別される。このような材料は、二酸化ケイ素、沈降シリカ、ケイ酸、コロイド状二酸化ケイ素、無定形沈降シリカ、または、歯科用グレードのシリカと分類される場合もある。これらの分類間の差は、厳密に言えば、命名と使用目的の差である。いずれの場合においても、上述したように、用語「沈降シリカ」は、これらのタイプのありとあらゆる材料を包含することとする。結果的に約8.0未満のpHを示す沈降シリカは、20Å未満のサイズ、および、約100〜300Åの中央孔径を有する微小孔を一定の割合で含むことが見出された。理論に拘束されることは望まないが、アンモニアのような毒性ガスの捕獲は、金属をドープした沈降シリカの孔内で、二種の別個の(同時の可能性もあるが)現象:酸−塩基反応、および、錯化反応が起こることによって達成されると考えられる。従って沈降シリカは、迅速にガスを取り込み、その大部分を輸送するための大きい孔と、このような金属が堆積されている可能性がある大きい孔に連結したそれより小さい孔との組み合わせを含む。基本的には、いかなる特定の科学的な理論に縛られないが、このような適切なサイズを有するより小さい孔は、金属(例えば銅)を捕獲するのに利用できるため、より多くの錯化および酸−塩基反応に利用可能な金属を有すると考えられる。所定量の沈降シリカによるガス(例えばアンモニア)の捕捉と保持は、これらの2つの手段の組み合わせに起因すると考えられる。従って、本発明の特に関心のある主題は、孔内に金属が最もよく堆積するように孔径を調整する能力である。アンモニアのようなガスは、孔に入るとそこで液化する可能性があり、続いて金属種と接触して、アンモニアの捕獲を起こすのに必要とされる複合体を形成することができる。
【0015】
沈降シリカは、水性媒体中でアルカリ金属ケイ酸塩と鉱酸とを反応させることによって生産することができる。ケイ酸塩と反応する酸の大部分が、反応混合物の最終pHがアルカリ性になるようであれば、得られた生成物は沈降シリカとみなされる。最も一般的に使用される酸は硫酸であるが、その他の鉱酸、例えば塩酸、硝酸またはリン酸も用いることができる。アルカリ金属ケイ酸塩としては、例えばケイ酸ナトリウムまたはケイ酸カリウムが使用可能である。好ましくはケイ酸ナトリウムであり、なぜならケイ酸ナトリウムは、最も安価であり、最も容易に入手できるためである。酸性水溶液の濃度は、一般的に、約5〜約70重量パーセントであり、ケイ酸塩水溶液は、一般的に、約6〜約25重量パーセントのSiO含量、および、約1:1〜約3.4:1のSiOのNaOに対するモル比を有する。
【0016】
金属ケイ酸塩溶液に鉱酸を添加して、沈降シリカを形成する。あるいは、まず、反応媒体として利用するために反応装置に金属ケイ酸塩の一部を添加し、続いて、この媒体に残りの金属ケイ酸塩と鉱酸を同時に添加する。一般的には、連続的なプロセシングを用いることができ、鉱酸は、量って別々に高速ミキサーに入れる。この反応は、あらゆる都合のよい温度(例えば約15〜約100℃)で行ってもよく、一般的には60〜90℃の温度で行われる。
【0017】
上記シリカは、一般的に、反応物混合剤から直接沈殿すると予想され、続いて、水または酸性水溶液で洗浄して反応中に形成される残留したアルカリ金属塩を除去してもよい。例えば、反応物として硫酸とケイ酸ナトリウムが用いられる場合、沈降シリカの湿潤した集合体に硫酸ナトリウムが捕捉される。洗浄の前に、望ましい最終pHを達成するのに必要であれば、この集合体を追加の鉱酸でさらに調節してもよい。この集合体は、鉱酸、例えば硫酸、塩酸、硝酸またはリン酸、または、中程度の強度の酸、例えばギ酸、酢酸またはプロピオン酸の水溶液で洗浄してもよい。
【0018】
一般的に、洗浄用の媒体の温度は、約27℃〜約93℃である。好ましくは、洗浄用の水は、約50℃〜約93℃の温度である。シリカの湿潤した集合体は、塩の総含量を約5重量パーセント未満に減少させるのに十分な時間洗浄する。この集合体は、例えば、沈降シリカの乾燥重量に基づき、約0.05〜約3重量パーセントのNaO含量、および、約0.05〜約3重量パーセントのSO含量を有していてもよい。このような塩の除去を達成するのに必要な時間は、洗浄用の媒体の流速、および、洗浄装置の立体配置に応じて様々である。一般的に、望ましい塩の除去を達成するに必要な時間は、約0.05〜約3時間である。従って、沈降シリカの集合体を、水で、約50℃〜約93℃の温度で約0.05〜約3時間洗浄することが好ましい。一つの可能性のある実施態様において、所定量の塩(例えば、硫酸ナトリウム)をシリカ材料の表面上や孔内に存在させるために、洗浄を制限してもよい。いかなる特定の科学的な理論に限定されることは望まないが、所定レベルの水和が、それに続く金属ドーピング処理を効果的に起こすのにこのような塩が役立つ可能性があると考えられる。
【0019】
本発明のろ過材に使用するのに適した含水沈降シリカを製造するために、洗浄が完了した際の最終的なシリカのpHは、シリカの5重量パーセント水性スラリーで測定した場合、約6〜約8の範囲であり得る。
【0020】
洗浄した沈降シリカの集合体は、一般的に、オーブンで105℃で約16時間乾燥させて測定した場合、10〜約60重量パーセントの含水量を有し、約1ミクロン〜約50ミリメートルの範囲の粒度を有する。あるいは、続いて沈降シリカを脱水して、約20〜約90重量パーセント、好ましくは約50〜約85重量パーセントの望ましい含水量にする。そこに含まれる水の量を減少させるために、または逆に言えばそれらの固体含量を増加させるために、あらゆる既知の脱水法を用いてもよい。例えば、洗浄した沈降シリカの集合体は、フィルター、回転乾燥機、噴霧乾燥機、トンネル乾燥機、フラッシュ乾燥機、ノズル乾燥機、流動層乾燥機、カスケード乾燥機などで脱水してもよい。
【0021】
本明細書中で言及される平均粒度は、MICROTRAC(R)粒度測定装置で測定される。沈降シリカの含水量が約20重量パーセントより大きい場合、取り扱い、プロセシング、および、それに続く金属ドーピングを容易にするために、あらゆる適切な乾燥機で、沈降シリカの含水量を約50重量パーセント未満に減少させるのに十分な温度および時間で沈降シリカを予備乾燥させてもよい。
【0022】
沈降シリカ粒子は、ドーピング中に同時に、または、ドーピング工程の後に、比較的均一な粒度に粉砕してもよい。一つの選択肢は、金属ドーピング処理中に、沈降シリカ材料を高剪断混合することである。このような工程において、適切なフィルターを利用するのに必要なサイズに粒度を減少させることができる。このような代替法において、全体の生産方法によって、ろ過材として利用する際に最も効果的に有害ガスを除去するために望ましい均一な金属の含浸を生じさせることができる。
【0023】
従って、一つの可能性のある実施態様において、沈降シリカをミルで湿式粉砕して、さらなる金属ドーパントとの反応、および、それに続いて最も効果的にアンモニアガスを捕獲して、ろ過材中に存在している間はそれらを保持するのに十分に小さい孔径の生産に適した望ましい平均粒度を提供することができる。例えば、沈降シリカは、一つの非限定的な実施例として、ハンマーミルのようなあらゆる標準的な機械的粉砕装置で同時に粉砕し、乾燥させてもよい。金属を含浸させた(ドープした)沈降シリカ材料の最終的な粒度は、それから製造されるろ過材を提供する望ましい方法に依存する。従って、充填式のろ過材の場合、より大きい粒度(例えば、100ミクロン〜5ミリメートル)を必要とすると予想され、それに対して、フィルムまたは繊維内の押出し物の場合、比較的小さい粒度(例えば、1〜100ミクロン)が利用される場合もある。しかしながら、重要な問題は、概して粒度ではなく、対象となる沈降シリカそれ自身の孔内に施された均一な金属ドーピングの程度である。
【0024】
粉砕後の含水沈降シリカ生成物は、ろ過材内で効果的にアンモニアを捕獲して保持する能力を提供するために、好ましくは、それに続く多価金属塩とのドーピングのために湿潤状態のままである(ただし、乾燥および粉砕が別々または同時に施される場合、これらの材料は、金属ドーパントとのさらなる反応のために高い含水量の状態のままであることが好ましい)。このような目的に利用することができる金属としては、上記でもいくらか言及したが、あらゆる多価金属が挙げられ、例えば、これらに限定されないが、コバルト、鉄、マンガン、亜鉛、アルミニウム、クロム、銅、スズ、アンチモン、インジウム、タングステン、銀、金、白金、水銀、パラジウム、カドミウム、ニッケル、および、それらのあらゆる組み合わせである。コスト面での理由のために、銅および亜鉛が好ましい場合があり、銅が最も好ましい。上記の列挙は、対象となる沈降シリカ材料の孔内におけるドーピング工程中で生産が可能な金属を示す。金属塩は、好ましくは水溶性の性質を有し、シリカベースの材料と反応させた場合にアニオンからの金属の解離が容易なものである。従って、アニオンとして、硫酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩などが可能であり、金属ドーピングのための塩としては、硫酸塩、すなわち硫酸銅が最も好ましい(また、塩化銅(II)も、特定の化合物として好ましい可能性があるが、このような化合物の酸性の性質は、工業レベルでの使用に対して不利になる可能性がある)。いかなる特定の科学的な理論に限定されることは望まないが、硫酸銅は、ある種の形態で沈降シリカ構造への銅[銅(II)分子として]のドーピングを容易にし、一方で、移動した銅分子は、十分な量のアンモニアガスへ曝露されると、ろ過材中でアンモニウムイオンと錯化し、さらに、ガス除去の有効性とその結果起こるろ過材の飽和の確認を容易にするための色の変化を起こす銅分子の能力を維持すると考えられる。湿潤状態でのドーピング処理は、所定の望ましいフィルター効率の結果を提供するのに重要であることが証明されている。湿潤状態でのドーピングは、沈降シリカが湿潤した集合体のままの場合に起こるか、または、金属ドーパントを溶液中で提供することによって起こる可能性があり、従って、代替法の一つとして、望ましい金属塩と反応させた予め乾燥させた沈降シリカ材料のスラリーの生産を含む方法も可能である。乾燥した金属塩と沈降シリカの乾式混合において、アンモニアの捕獲と保持に必要なシリカの孔内において含浸は同じ程度にならない。このような湿式反応が行われないと、捕獲は達成されるが、捕獲されたアンモニアを保持する能力(この状況では、アンモニアは、実際には捕獲の際に、または、対象となる環境中で水酸化アンモニウムに改変されている可能性があり、同時に一部がアンモニアガスとして残留している)は大きく減少する。上記したKemiraの参考文献で記載されているように、乾式混合処理は、永続的な捕獲と保持のためのろ過材ではなく再生できるろ過材を生産している。具体的な湿式反応は、以下の実施例でより明確に考察されるが、その最も広い意味で、このような反応は、沈降シリカと、導入された水(シリカおよび金属塩材料の少なくとも50重量%の量で存在する)との反応を伴う。水の量は比較的高いことが好ましく、例えば少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも85%である。このような反応物が乾燥しすぎていると、金属塩が沈降シリカ材料の孔に移動するのに水の添加が必要になるため、適切な金属ドーピングが起こらないと予想される。このような孔内に十分な量の金属がないと、それによって生じるろ過材のガスの除去性能が減少すると予想される。用語「添加された」または「導入された」水は、様々な形態の水、例えば、これらに限定されないが、シリカ中で金属塩の溶液中に存在する水、金属塩の水和した形態、残留したシリカと反応物との塩(例えば硫酸ナトリウム)の水和した形態、湿気、および、相対湿度を含むこととし、すなわち、基本的には、シリカまたは金属塩のいずれかそれ自身の構成要素の一部として存在しない、または、ドーピングが起こった後に、材料の孔に移行していないあらゆる形態を含む。従って、さらなる非限定的な例として、この目的のために、シリカ材料の生産とそれに続く乾燥、その後、最初に湿式工程(例えば、一つの非限定的な例として、水溶液中でスラリー化すること)、続いて多価金属塩との反応を用いてもよく、加えて、シリカ材料を湿潤状態で保持し、続いてその後、多価金属塩と反応させる方法が好ましい場合もある。
【0025】
しかしながら、水は、シリカ孔内での金属と対象となる有害ガスとの錯化を促進するためにも重要である。いかなる特定の科学的な理論に限定されることは望まないが、ドーピングの際に、金属塩は、実際には、それらの孔内で金属カチオンを介して沈降シリカに錯体化すると考えられ(そのうちの一部がシリカ表面上で実際の複合体になる可能性があるが、より容易に脱錯体化(de−complexed)されると予想され、従って長期にわたり除去される)、このような金属との複合体は比較的強いため、分解し難い。この時点における水の存在は、錯体化した塩分子のアニオン性部分を水和物で置き換ることによってそのアニオン性部分の除去を促進する。これらの水和物は、続いて、それ自身が一例としてアンモニアガス(またはアンモニウムイオン)で置き換えられる可能性があり、それによって、強く会合しており分解が極めて難しい総体的なシリカ/金属/アンモニウム複合体が生産され、最終的には、効果的なアンモニアガスの捕獲メカニズムだけでなく、このようなアンモニアガスを実質的に不可逆的に保持する方法が提供されると考えられる。このような錯化の促進物質として利用される水としては、上記の金属ドーピング工程から残留した水、または、シリカ表面上(またはシリカの孔内)で、または、金属塩との反応物それ自身から水和した形態として存在する水が可能である。その上、さらに一つの可能性のある好ましい実施態様において、このような水は、潤滑剤(例えば、一つの非限定的な例として、グリセロール)の存在によって提供される可能性もある。
【0026】
本発明のろ過材において、多価金属をドープした沈降シリカは、ろ過材組成物総量の約1〜約90重量パーセント、好ましくは約5〜約70重量パーセントの量で用いられる。
また本発明のろ過材、任意の成分として、ケイ酸塩、粘土、タルク、アルミナ、炭素、ポリマー、例えば、これらに限定されないが、多糖類、ゴム類、または、接着充填剤として用いられるその他の物質をさらに含んでいてもよい。これらはろ過材の一般的な成分であり、この目的に適した材料は当業者周知であるため列挙するまでもない。さらに、このような本発明の金属をドープした沈降シリカ材料はまた、ろ過材として利用するための高分子フィルム、複合材料、または、その他のタイプの高分子固体を提供するポリマー組成物中に(含浸によって、または、押出しによって)導入してもよい。加えて、不織布は、このような発明の材料で含浸したり、被覆したり、またはその他の方法で処理したりしてもよいし、または、個々の糸またはフィラメントをこのような材料と共に押出し、不織布、織物または編物のウェブに成形してもよく、このようなウェブはいずれもろ過材のベースを提供することができる。加えて、本発明のろ過材は、その他のタイプのろ過材(例えば、カーボンブラック材料の層)がそれらが存在するフィルターキャニスター内で層を形成していてもよいし、またあるいは、本ろ過材は、同じキャニスター内に散在していてもよい。このようなフィルムおよび/または織物はさらに、上述したように、独立したろ過材の領域、または、同じタイプの散在した材料(表面上で混合されたカーボンブラック、または、単なる例として、同一の織物またはフィルム内での共押出し)を含んでいてもよい。
【0027】
ろ過材の実行可能性を試験するのに利用されるフィルターシステムは、典型的には、直径4.1cmのフラスコ内に、厚さが約1cm〜約3cm、好ましくは約1cm〜約2cmの厚さのろ床を含む。これらに限定されないが、実際にこのようなろ過材を含む可能性がある例えば工業用および/または、個人使用のための典型的なフィルターは、このようなろ過材をより厚い厚さ(すなわち量)で含むと予想され、例えば個人用キャニスターフィルタータイプの場合、厚さ約1〜15cm、および、直径約10cmであり、工業的な使用の場合、少なくとも厚さ100cm以下、および、直径50cmである。これらもまた、このような最終用途のための概算を示すことのみを目的とする;ろ床および/または容器のあらゆる厚さ、直径、幅、高さ等は、現実では、フィルターが使用される時間の長さ、および、対象の環境が示す可能性があるガスによる汚染の可能性に応じて利用することができる。フィルターシステム内に導入することができるろ過材の量は、容器が構造的に内部にろ過材を保持するのに十分であり、さらに、ろ過材を適切に標的のガスと接触させるために適度な空気流が許容されるのであれば、どのような量でもよい。
【0028】
重要なことは、ここで考察されている本発明のろ過材による除去の試験対象はアンモニアガスであるが、このようなろ過材は、所定の環境からその他の有害ガスを除去するのにも同様に有効である可能性があることに留意すべきことであり、ここで、その他の有害ガスとしては、単なる例として、ホルムアルデヒド、亜酸化窒素、および、二硫化炭素などが挙げられる。
【0029】
上述したように、本ろ過材は、工業的な環境(例えば、工業用建物全体の保護、または、マスクによって個々の作業者の保護)、軍事的な環境(例えば、乗り物もしくは建築物のためのフィルター、または、個々の隊のためのマスク)、商業的/公共的な環境(オフィスビル、ショッピングセンター、美術館、行政機関のある区域、および、軍事施設など)においてろ過用途で用いることができる。具体例としては、これらに限定されないが、一例として鶏舎内のような動物の排泄物によって大量のアンモニアガスが生成する可能性がある農業環境における作業者の保護が挙げられる。従って、このような場において、大規模なフィルターを利用してもよいし、または、個人がこのような目的のための個人用フィルター装置を利用してもよい。さらにこのようなフィルターは、所定の有害ガスが発生する可能性がある変換装置で、またはその周りで利用することもできる。一般的に、このような本発明のろ過材は、あらゆるタイプの環境で発生し得る有害ガスの除去に必要であり、且つ有用なあらゆるタイプのフィルターシステムに含まれ得る。
【0030】
図面の簡単な説明
あるグラフ表示は、注釈による本発明の説明が記載されている。それらは本発明の範囲を制限するものとみなされないこととする。
【0031】
図1は、以下の表3に記載された、本発明による、および、比較例のろ過材の素材による、長期にわたるアンモニア取り込み濃度に関する情報のグラフ表示である。
本発明の好ましい実施態様
銅含量は、パーキンエルマー(PerkinElmer Corporation,シェルトン,コネチカット州)より入手可能なICP−OESモデル・オプティマ(Optima)3000を利用して測定した。
【0032】
吸着剤の湿潤ケーキの固体含量(%)を、CEM910700マイクロ波天秤(microwave balance)の平皿上に代表的な2gのサンプルを載せ、そのサンプルを一定重量まで乾燥させることによって測定した。その重量差を用いて、固体含量(%)を計算した。
【0033】
充填またはタップ密度は、プラスチック製の250mL平底メスシリンダーに100.0グラムの生成物を量って入れることによって測定された。ゴムストッパーでシリンダーを閉じて、タップ密度測定器に置き、15分間稼働させた。タップ密度測定器は、従来のカムを60rpmで運転させるモーター式の歯車減速機の駆動装置である。カムは、一秒毎に2.25インチ(5.715cm)の距離でシリンダーを上下させるように切断されるか、または、設計される。シリンダーは、ガイドブラケットによって所定位置にホールドされている。タッピング後に生成物が占める体積を記録し、充填密度を計算し、g/mlで示した。
【0034】
ろ過物の伝導率は、温度補正装置を備えたオリオン(Orion)モデル140導電率計を利用して、回収したろ過物、または、ろ過物ストリーム中に電極のエポキシ製伝導率セル(014010)を浸漬することによって測定した。測定は、典型的には15〜20℃の温度でなされた。
【0035】
表面積は、Brunaur等,J.Am.Chem.Soc.,60,309(1938)のBET窒素吸着法によって測定した。
窒素吸脱着等温線測定を用いて入手可能な多孔率を得た。BJH(Barrett−Joiner−Halender)モデルの平均孔径を、マイクロメトリクス・インスツルメント社(Micromeritics Instrument Corporation,ノークロス,ジョージア州)より入手可能な高速比表面積/細孔分布測定装置(Accelerated Surface Area and Porosimetry System;ASAP2010)を利用して脱着ブランチに基づき測定した。真空圧が水銀柱が約5μmの圧力になるまで、サンプルを150〜200℃で脱気した。これは、77°Kでの自動の容量式解析装置である。孔容積は、P/P=0.99の圧力で得られた。平均孔径は孔容積から誘導し、表面積は円柱型の孔と仮定した。孔径の範囲内で孔容積が得られるBJH法を用いて孔の粒度分布(ΔV/ΔD)を計算した。ハルシー(Halsey)の厚さ曲線のタイプを、直径1.7〜300.0nmの範囲の孔径を用い、両端が開口している孔をゼロ分画として用いた。
【0036】
沈降シリカに存在する孔の形状および相関性を説明するために、N吸脱着等温線を、1985年のIUPAC分類に従って、例えばヒステリシスの分類などの一般的な等温線の型に関して分類した。
【0037】
吸着性の微小孔領域(Smicro)は、t−プロットの作製で用いられるハルシーの等温線の方程式から誘導した。t−プロットは、吸着剤層の厚さと理想的な参照値とを比較することによって、吸着剤によって吸着された窒素の体積のグラフを比較する。t−プロットの形状を用いて、微小孔の表面積を推測することができる。続いて、総BET表面積から外部表面積を差し引くことによって微小孔構造のパーセントが推測され、この場合、Smicro=SBET−Sextである。従って、微小孔構造のBJH(%)=Smicro/SBET×100である。
【0038】
金属の含浸レベルは、元素の%に基づき示される。約5重量%の銅で含浸させたサンプルとは、沈降シリカに添加されたCuのパーセントが、吸着剤重量に対するCuが約5重量%になるような塩化銅のレベルを示す。塩化銅(II)二水和物(CuCl・2HO)の場合、100gの乾燥吸着剤が、乾燥した113.65gの塩化銅(II)で含浸されていると予想される。従って、このような計算は、基本的には、%金属=金属塩の形態の元素金属の重量/(乾燥沈降シリカの重量+乾燥した金属塩の総重量)のようになされる。
【実施例】
【0039】
実施例1〜5
実施例1〜5において、沈降シリカの吸着性粒子を、撹拌容器に、12,865リットルの13.3%のケイ酸ナトリウム溶液(2.65モルのSiO:NaO)を添加することによって製造した。この混合物を80℃に加熱した。次に、45分間かけて、11.4%の硫酸を161.2LPMの速度で添加し、それと同時に15.4%の硫酸アルミニウム水溶液を11.5LPMの速度で添加した。続いて、反応液全体を80℃に維持しながら、10分間かけて13.3%のケイ酸ナトリウムを301.7LPMの速度で添加した。次に、11.4%の硫酸を161.2LPMの速度で添加することによって反応液全体をpH6.5に調節し、最終的に手動でpH5.4に調節した。その後、反応混合物を93℃に加熱し、この温度で10分間保持した。得られた沈殿した無定形シリカ生成物をろ過し、水で洗浄して、ろ過物の伝導率を3600μmhosにして、続いて、回転式のアトマイザー噴霧乾燥機を用いて乾燥させ、粉砕して、細粒化したシリカ粉末を得た。この粉砕した未処理のベース材料を、実施例1〜5を製造するためのベース材料として用いた。
【0040】
実施例1は、造粒された金属が全く添加されていない沈降シリカのコントロールサンプルであった。実施例2〜5の銅含浸シリカを、上記で製造された既知重量のベースシリカと塩化銅(II)溶液とをブレンドすることによって製造した。まず、塩化銅(II)溶液を、既定量のCuCl・2HOと、既定量の水とを混合し、続いて、高剪断ブレンダーで上記で形成された既定量の乾燥沈降シリカを塩化銅(II)溶液に添加することによって形成した。得られた混合物のpHを指定通りに10%のHCl溶液で調節した。塩化銅(II)溶液をコーヒーミルで力強く混合しながら添加して、シリカと銅塩との均一なブレンドを得て、最終サンプルにおいて望ましいCuレベルを達成することによって、吸着性粒子を製造した。得られた未精製の湿潤した顆粒は、200〜1600μmのサイズであった。粒状の湿潤した集合体を回収し、オーブン中で16時間乾燥させた。乾燥した材料を、スクリーンサイズが20メッシュおよび40メッシュの2種の米国標準メッシュのスタックで篩にかけ、850μm〜425μmの粒子サイズを有する吸着剤を回収した。この方法で得られた目的の粒子の顆粒は、約0.4g/mlのかさ密度を有する。表1に、銅含浸に関するプロセス変数を要約する。
【0041】
【表1】

【0042】
上述の方法に従って実施例1〜5の物理特性を測定し、以下の表2に結果を要約した。
実施例6〜9
425リットルの水に、78リットルの13.3%のケイ酸ナトリウム溶液(3.3モルのSiO:NaO)を添加し、この混合物を45℃に加熱した。次に、5分間かけて11.4%の硫酸を7.15LPMの速度で添加し、続いて、7.15LPMの速度で11.4%の硫酸を、および、12.8LPMの速度で13.3%のケイ酸ナトリウムを同時に添加し、35℃で24分間続けた。その後、反応混合物を94℃に加熱し、この温度で10分間保持した。得られた沈殿した無定形シリカ生成物をろ過し、水で洗浄して、ろ過物の伝導率を3600μmhosにし、続いて、回転式のアトマイザー噴霧乾燥機を用いて乾燥させ、細粒化したシリカ粉末を回収した。このコントロールの未処理のベース材料を、実施例6と指定した。
【0043】
実施例7を、高剪断ブレンダーで、15gの実施例6のシリカと、6.1gのCuCl・2HOおよび29.6gの脱イオン水とをブレンドすることによって製造した。粒状の湿潤した集合体を回収し、60℃に設定したオーブン中で16時間乾燥させ、スクリーンサイズが20メッシュおよび40メッシュの2種の米国標準メッシュのスタックで篩にかけ、850μm〜425μmの粒子サイズを有する吸着剤を回収した。得られた材料において、8.36重量%の銅がそこに含まれることが示された。
【0044】
実施例8を、高剪断ブレンダーで、15gの実施例6のシリカと、10.2gのCuCl・2HOおよび29.6gの脱イオン水とをブレンドすることによって製造した。粒状の湿潤した集合体を回収し、60℃に設定したオーブン中で16時間乾燥させ、上述のようにして篩にかけ、850μm〜425μmの粒子サイズを有する吸着剤を回収した。得られた材料において、12.34重量%の銅がそこに含まれることが示された。
【0045】
実施例9を、高剪断ブレンダーで、15gの実施例6のシリカと、18.0gのCuCl・2HOおよび29.6gの脱イオン水とをブレンドすることによって製造した。粒状の湿潤した集合体を回収し、60℃に設定したオーブン中で16時間乾燥させ、上述のようにして篩にかけ、850μm〜425μmの粒子サイズを有する吸着剤を回収した。得られた材料において、15.34重量%の銅がそこに含まれることが示された。上述の方法に従って実施例6〜9の物理特性を測定し、以下の表2に結果を要約した。
【0046】
実施例10
CUISINART(R)モデルDFP14BWタイプ33高剪断ミキサー/かきまぜ機に、150gの実施例1の乾燥沈降シリカベース材料、および、215gのCuSO・5HOと612gの水とを混合することによって形成された硫酸銅溶液を添加することによって、実施例10を銅で含浸させた。湿潤した集合体を均質になるまで撹拌し、続いて、105℃に設定したオーブン中に、ろ過せずに直接置き、一晩(16時間)乾燥させ、再び均質の粉末になるまで粉砕した。この材料を、実施例10Aと指定した。
【0047】
次に、280gの実施例10AをCUISINART高剪断ミキサー/かきまぜ機に添加して戻し、撹拌を始めた。この撹拌されたシリカに、329gの脱イオン水を添加した。形成された顆粒を回収し、105℃で16時間乾燥させ、これを実施例10Bと指定した。上述の方法に従って実施例10Aおよび実施例10Bの物理特性を測定し、以下の表2に結果を要約した。
【0048】
実施例11
CUISINARTモデルDFP14BWタイプ33高剪断ミキサー/かきまぜ機に150gの実施例1の乾燥沈降シリカベース材料、および、172gのCuSO・5HOと600gの水とを混合することによって形成された硫酸銅溶液を添加することによって、実施例11を銅で含浸させた。湿潤した集合体を均質になるまで撹拌し、続いて、105℃に設定したオーブン中に、ろ過せずに直接置き、一晩(16時間)乾燥させ、再び均質の粉末になるまで粉砕した。この材料を、実施例11Aと指定した。
【0049】
次に、260gの実施例11AをCUISINART高剪断ミキサー/かきまぜ機に添加して戻し、撹拌を始めた。この撹拌されたシリカに、270gの脱イオン水を添加した。形成された顆粒を回収し、105℃で16時間乾燥させ、これを実施例11Bと指定した。上述の方法に従って実施例11Aおよび実施例11Bの物理特性を測定し、以下の表2に結果を要約した。
【0050】
実施例12
銅含浸シリカの顆粒を、ライトニン・ミキサーを備えた容器に3000gの実施例1のベース材料を添加することによって製造した。次に、12,240gの脱イオン水、および、4300gのCuSO・5HOを添加した。この混合物を、中身が容器から飛び跳ねないようにできるだけ高速で30分間撹拌した。得られた生成物を回収し、105℃で16時間乾燥させた。顆粒を形成し、生成物の密度を高めるために、上記で製造された乾燥粒子1kgを、ローラー式の圧縮機(モデルWP50N/75,アレキサンダーワークス社(Alexanderwerks GmbH,ドイツ)より入手可能)で50barの押圧を用いて圧縮したクレヨン型の凝集体を形成し、次にこれを歯付きのディスクローラー(アレキサンダーワークス)を用いた予備粉砕による粉砕工程で粉状にした。得られた未精製の顆粒は、約0.7kgの400〜1600μmサイズの顆粒であった。続いてこの顆粒を上述のような篩い分けで大きさにより分類し、850μm〜425μmの大きさの顆粒を回収した。最後に、この顆粒を、それらを36℃および50%のRHに設定された制御された温度/湿度チャンバーに18時間置くことによって再度水和した。上述の方法に従って実施例12の物理特性を測定し、以下の表2に結果を要約した。
【0051】
実施例13
実施例13を、高剪断コウルズ(Cowles)ブレンダーで、7530gの実施例6のシリカの湿潤ケーキ(ろ過して固形分を15%にしたが、乾燥させなかった)を6000PMでブレンドすることによって均質になるまで製造した。これに、1640gの乾燥CuSO・5HO結晶を添加した。ちょうど流動性のスラリーが得られるまで水を添加し、続いて撹拌速度を4000RPMに低めた。得られた材料が最終サンプル中で15重量%の銅を示すように、このシリカ−硫酸銅混合物を4000PMで30分間徹底的に混合して、シリカと銅塩との均一なブレンドを得た。この湿潤した集合体を回収し、125℃に設定したオーブン中で40時間乾燥させた。
【0052】
顆粒を形成し、生成物の密度を高めるために、上記で製造された約0.50g/mlのかさ密度を有する乾燥粒子1kgを、ローラー式の圧縮機(モデルWP50N/75,アレキサンダーワークス社(ドイツ)より入手可能)で200〜500kP(40〜70bar)の押圧を用いて圧縮したクレヨン型の凝集体を形成し、次にこれを歯付きのディスクローラー(アレキサンダーワークス)を用いた予備粉砕による粉砕工程で粉状にした。得られた未精製の顆粒は、約0.7kgの400〜1600μmサイズの顆粒であった。続いてこの顆粒を上述のような篩い分けで大きさにより分類し、850μm〜425μmの大きさの顆粒を回収した。この方法で得られた目的の粒子の顆粒は、約0.7g/ccのかさ密度を有していた。上述の方法に従って実施例13の物理特性を測定し、以下の表2に結果を要約した。
【0053】
比較例1
W.R.グレース&カンパニー(W.R.Grace&Company,コロンビア,メリーランド州)より入手可能な市販のシリカゲル408タイプRDの乾燥させたグレードのシリカゲルの粒子を、上述したようにして篩い分けで大きさにより分類し、850μm〜425μmのサイズを有する粒子を回収した。上述の方法に従って比較例1の物理特性を測定し、以下の表2に結果を要約した。
【0054】
比較例2
市販の沈降シリカ、ゼオシル(ZEOSYL(R))177(J.M.フーバー社(J.M.Huber Corporation))の粒子を、乾式混合によって、200gの比較例1の粒子、および、450gの乾式粉砕した硫酸銅、CuSO・5HOと共に銅と混合した(水和した形態に存在する水や、反応装置の湿度によって提供されるような水を除いて、水は導入しなかった)。得られた銅で処理した粒子を解凝集させ、50barでローラー圧縮し、その後、上述のような篩い分けで大きさによって分類し、850μm〜425μmのサイズを有する粒子を回収した。比較例2は、15%のCuを含んでいた。上述の方法に従って比較例2の物理特性を測定し、以下の表2に結果を要約した。
【0055】
比較例3
カルゴン社(Calgon Corporation,ピッツバーグ,ペンシルベニア州)より入手可能な市販のASZM−TEDA含浸炭素粒子の粒子を上述のような篩い分けで大きさにより分類し、850μm〜425μmの大きさの顆粒を回収した。上述の方法に従って比較例3の物理特性を測定し、以下の表2に結果を要約した。
【0056】
【表2】

【0057】
上記で製造された数種の実施例において、それらの空気からアンモニアを吸着する能力を取り込みと破過点の両方に関して評価した。取り込みの測定は、所定期間内で、試験システム内から有害ガス(この場合、試験対象はアンモニアガス)を除去して捕獲する吸着性ろ過材の有効性を示す証拠を提供する。破過点は、このようなろ過材が飽和に達するまでの時間を測定する。従って、高い取り込みと長い破過点の組み合わせが、適切なろ過材の目標である。
【0058】
アンモニアの取り込み試験に関しては、以下のプロトコールに従っており、基本的にはMahle,J.,Buettner,L.およびFriday,D.K.,“Measurement and Correlation of the Adsorption Equilibria of Refrigerant Vapors on Activated Carbon”,Ind.Eng.Chem.Res.,33,346〜354(1994)に記載のプロトコールに従った。沈降シリカの吸着剤サンプルを、閉ループシステムにおいてセルを通って一定体積の空気流が再利用できるような15μmの底がフリット製の金属セルにローディングした。100mgの吸着剤(ろ過材)を添加した後に、ろ床の高さを記録した。このシステムは、典型的には乾式であるが、システムに既知量の水を注入して相対湿度を高めることによってシステムの相対湿度を(湿式に)調節することもできる。目標のアンモニア濃度は、25℃で平衡化した閉ループシステム中で1100mg/mとし、赤外線分析器(ミラン(MIRAN)、フォックスボロ社(Foxboro Company),フォックスボロ,マサチューセッツ州)を用いて空気ストリーム中の実際のアンモニア濃度をモニターした。このシステムに、循環ポンプの注入口に位置する隔壁(低圧側)を通してアンモニアを注入した。
【0059】
バッチ式の取り込み試験を、吸着床を用いてバイパスモードで開始した。このシステムにアンモニアを注入し、平衡化させた。注入されたアンモニアの質量を、気密シリンジの体積によって測定した。赤外線分析値は、最初のうちは、注入されたNH質量の冗長な測定値であった。アンモニア濃度が安定した後、ろ床のバイパスのバルブを変更して、吸着剤(ろ過材)の上にアンモニアで汚染された空気を送った。続いて、赤外線分析器で、気相の濃度変化を時間の関数として測定した。
【0060】
ろ床の外側における濃度の減少は、吸着剤による空気ストリームからのアンモニア除去の指標であった。厳密な既知量の対象となるガスのアンモニアの取り込みを同様に測定した。その時点までに捕捉されたアンモニアが、沈降シリカ材料の表面上にあるのか、または、孔内に残存しているのかを決定するために、100分後にシステムの温度を25℃から75℃に高めた(システムの上部空間における濃度の測定値が増加していれば、ろ過材からアンモニアが放出されたことが示される)。このような温度増加の際に観察されたシリカ材料からのアンモニアの放出は、このようなガスの捕獲が、シリカ材料の表面上で起こったことの指標であり、なぜなら、金属複合体によって孔内に捕捉されたものはいずれも、このような比較的低い温度増加では容易に放出しないと予想されるためである。
【0061】
取り込みデータを用いて様々なサンプルの性能を比較するために、様々な主要タイムポイントにおけるアンモニア濃度を測定した。本発明の沈降シリカのアンモニアを迅速に除去する能力を評価するために、アンモニア濃度がほぼ安定してからろ床温度を25℃から75℃に高める前後に吸着されたアンモニアの取り込み濃度を、mg/mで示した。本発明の沈降シリカ吸着剤の強化された性能を示すために、湿潤した状態で試験を行った。
【0062】
アンモニア濃度が25℃で400mg/m未満に減少することを、アンモニア除去の有効性を示す目標とした。
【0063】
【表3】

【0064】
取り込みシステムは容量式であるため、蒸気中の化学物質の量は、吸着させた化学物質の量、および/または、吸着剤で反応した化学物質の量に反比例する。表3および図1に、4種の吸着剤、すなわち2種の含浸吸着剤、および、2種の含浸されていない吸着剤に関するアンモニアの取り込みプロファイルをまとめた。これらのプロットは温度の作用を示しており、より正確に言えば、含浸させたサンプルは、不可逆的に、または、ほぼ不可逆的にアンモニアを除去できることが示される。またこれらのプロットは、各吸着剤に関する初期のアンモニア取り込み速度も示す。これらのデータから、所定の吸着剤が、適度な速度でフィルター中において効果を示すのに十分な速度での内部物質移動速度を示すかどうか明らかである。すなわち、所定の吸着剤が、平衡に達するまで長時間かければ大量のアンモニアを除去できるとしても、その吸着剤は配置されたフィルター中において有用ではない可能性がある。表は、最初の60分間の測定時間に限られるが、図は、サンプルろ過材によって提供される長期にわたる作用を示すためにその時間を180分間に延長して示される。
【0065】
プロットは、各サンプルに関するアンモニア吸着挙動に対する温度の作用を示す。これらのデータは明らかに、化学反応の存在を示す。比較例1のデータを考察する。約135分間で、吸着剤の温度は75℃に変化している。その結果として、アンモニアの蒸気相の濃度は、約630mg/mから約670mg/mに増加する。この結果から、吸着平衡のために、温度が高くなると吸着されるアンモニアはより少なくなると予想されることがわかる。アンモニア濃度の差は、脱着させたアンモニアの量に正比例する。約140分後、アンモニア濃度は安定し、その時点を過ぎても有意な変化は観察されなかった。これは、可逆的な吸着平衡の観察が期待できる事象の理想的な例である。実施例1の含浸されていない沈降シリカで同じ挙動が観察される。温度を75℃に高めると、アンモニア濃度が522mg/mから757mg/mに増加したことが観察される。一方で、2種の含浸させたサンプルは、75℃で典型的な吸着の平衡挙動を示さない。実施例4に関して、約68分間で温度が75℃に高められると、吸着させたアンモニアの一部が表面から排出されるために、アンモニア濃度が上昇する。ただし、約90分間で達成された最大濃度の増加は、比較例1で観察された濃度増加の約半分でしかない。吸着剤に結合したアンモニアがより多く存在するにもかかわらず、温度変化の間に排出されるアンモニアはより少ない。加えて、約95分から開始すると、濃度は、180分で268mg/mの濃度に減少し始める。これは、明らかに化学反応の証拠である。より高い含浸レベルの実施例5では、不可逆性はさらにより劇的である。約68分で温度を75℃に変化させると、吸着させたアンモニアの一部が表面から排出されるために、アンモニア濃度が上昇し、続いて、180分で140mg/mの濃度に低下する。
【0066】
さらに、各吸着剤の初期の取り込み速度の比較は、稼働しているフィルターにおけるろ過材の有用性を確立する優れた方法である。比較例1は、多くの工業用フィルターシステムで用いられている既知の吸着剤である。提唱された吸着剤の初期の取り込み速度が比較例1よりも速い場合、物質移動が見込まれるために、我々は、その吸着剤は工業用フィルター中で適切に機能することができると言うことができる。両方の含浸させたサンプルの初期の取り込み速度は、最初の約15分間、比較例1の速度よりも劇的に速い。20分後、実施例4および5の速度は遅くなるが、その濃度は比較例1の濃度よりも低いままである。最初の80分間ずっと、実施例4および5によって除去されたアンモニアの量は、比較例1および実施例1のコントロールの含浸されていないシリカによって除去されたアンモニアの量よりも多い。これらのデータによれば、本発明の実施例4および実施例5の材料はいずれも、物質移動速度に基づく使用に関して有利であると予想されることが示される。
【0067】
破過点測定に用いられる一般的なプロトコールは、2つの異なる赤外線検出器、それに続いて2つの質量流量制御器に連結された2つの別個の吸着床(本ろ過材を含む)に導かれる2つの別個のバルブを有する2つの平行なフローシステムの使用を含む。このシステム全体は、基本的には、いずれかの吸着床へ移動させるための同じパイプライン内でのアンモニアと空気の混合が可能であるか、または、同じガスクロマトグラフまでずっと連続している。このような方式で、2種の吸着床内でのろ過材の性能を、ガスクロマトグラフによる解析によって、所定期間後のアンモニア濃度に関して、同時に生産されたろ過されていないアンモニア/空気混合物と比較した。システムの最後で真空を利用し、アンモニア/空気混合物を、0−50SLPM質量流量制御器を用いて制御されたフローと共に、2つの平行なフローシステム、加えてろ過されないパイプラインを通過させた。
【0068】
アンモニア/空気混合物を生成するために、2つの質量流量制御器によって目標のアンモニア濃度を生じさせ、そのうち一方は、0〜100SLPMの範囲を有する目標の空気の質量流量制御器であり、他方は、0〜100sccmの範囲を有するアンモニアの質量流量制御器である。第三の空気流制御器を用いて、熱した水のスパージャーを介してフローを制御し、目標の空気の相対湿度(RH)を制御した。2個の露点分析器(一方はろ床上の目標の送気管に位置し、他方は、2つのろ床のうち1つから流れてくる流出物のRHを測定する)を利用して、それらのRHを測定した(様々なレベルに応じて改変した)。
【0069】
ろ床は、吸着剤を保持するためのバッフル付きスクリーンを備えた4.1のcmガラスチューブとした。このガラスチューブに充填塔を用いて吸着剤を導入したところ、毎回、最良且つ最も均一な充填を得た。次に、熱伝導度検出器(TCD)を備えたHP5890ガスクロマトグラフを用いて目標の化学物質濃度を測定した。予め特定の波長でアンモニアに関して較正された赤外線分析器(ミラン)を用いて、アンモニアの流出濃度を測定した。
【0070】
40メッシュ未満の粒子全てを篩い分けることによって試験用に吸着剤を製造した。最も大きい粒子は、典型的には約25メッシュ以下であった。
最初のうちは、2つのろ床の上のバルブを閉じた。希釈した空気流と水スパージャーの空気流とを送り始め、このシステムを望ましい温度およびRHで平衡化させた。次に、ろ床上のバルブを変えて、同時に化学物質のフローを流し始め、4.75SLPMの速度を維持した。望ましい目標の化学物質濃度が達成されるように化学物質のフローを設定した。フィードされる化学物質濃度をGCを用いて絶えずモニターした。予め較正された赤外線検出器を用いて2つの吸着床(ろ過材)からの流出濃度を連続的に測定した。破過時間を、流出した化学物質濃度が目標の破過濃度に等しくなるまでの時間と定義した。アンモニアの試験に関して、目標の濃度は、25℃で1,000mg/mであり、破過濃度は、25℃で35mg/mであった。
【0071】
続いて、別個のろ過材サンプルのアンモニアの破過点を測定し、ここで、異なる条件下でのろ過材の有効性が測定されるように、このようなサンプルろ床深さを指定通りに変更し、相対湿度を調節し、アンモニアガスのフロー単位を変更した。60分間を超える破過時間を目標とした。表4に、その結果を示す。
【0072】
【表4】

【0073】
本発明の生成物は明らかに、極めて高い破過点レベル、具体的には50分間を超える限界地を大差で示し、これは、このような材料にとって予想を超える優れた結果であることを示す。本発明の材料は、比較例に比べて、類似の相対湿度で長い破過時間を示す。同じ条件下で(ただし、相対湿度が70%に至ることを除く)実施例12を試験した。上記の表4から、本発明の銅含浸シリカは高いアンモニア吸収能を有し、さらに、相対湿度の増加に伴って破過時間が増加していることがわかる。
【0074】
好ましい特定の実施態様および実施例を参照しながら本発明を説明し、開示したが、本発明をこれらの特定の実施態様に限定することは全く意図しておらず、添付の請求項およびそれらに等しいものの範囲によって定義され得るような等価な構造、構造的に同等なもの、および、あらゆる代替の実施態様、ならびに改変を包含することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明による、および、比較例のろ過材の素材による、長期にわたるアンモニア取り込み濃度に関する情報のグラフ表示である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価金属をドープした沈降シリカ材料を含むろ過材であって、該材料は、約30〜350m/gのBET表面積;窒素ポロシメトリーで測定した場合、0.25cc/g〜2.0cc/gより大きい孔容積;約100Åより大きく300Å以下の平均孔径;を示し、ここで、該沈降シリカ材料上およびその内部にドープされた多価金属は、沈降シリカ材料総量の5〜25重量%の量で存在する、上記ろ過材。
【請求項2】
前記多価金属が、約8〜約20%の量で存在する、請求項1に記載のろ過材。
【請求項3】
前記多価金属が、コバルト、鉄、マンガン、亜鉛、アルミニウム、クロム、銅、スズ、アンチモン、タングステン、インジウム、銀、金、白金、水銀、パラジウム、カドミウム、ニッケル、および、それらのあらゆる組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載のろ過材。
【請求項4】
前記多価金属が、銅である、請求項3に記載のろ過材。
【請求項5】
請求項1に記載のろ過材を含むフィルターシステム。
【請求項6】
請求項2に記載のろ過材を含むフィルターシステム。
【請求項7】
請求項3に記載のろ過材を含むフィルターシステム。
【請求項8】
請求項4に記載のろ過材を含むフィルターシステム。
【請求項9】
金属をドープした沈降シリカ粒子の製造方法であって、以下の連続工程:
a)沈降シリカ材料を提供すること;
b)前記沈降シリカ材料を少なくとも1種の多価金属塩と湿式反応させ、金属をドープした沈降シリカ材料を生産すること;および、
c)前記多価金属をドープした沈降シリカ材料を乾燥させること、
を含む、上記方法。
【請求項10】
前記多価金属塩が、コバルト、鉄、マンガン、亜鉛、アルミニウム、クロム、銅、スズ、アンチモン、インジウム、タングステン、銀、金、白金、水銀、パラジウム、カドミウム、ニッケル、および、それらのあらゆる組み合わせからなる群より選択される金属を有する塩である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記多価金属が、銅である、請求項10に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−514658(P2009−514658A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−522919(P2008−522919)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【国際出願番号】PCT/US2006/027992
【国際公開番号】WO2007/013909
【国際公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(596129189)ジェイ・エム・ヒューバー・コーポレーション (22)
【Fターム(参考)】