説明

金属インキ組成物及びこれを用いる金属配線形成方法並びに該金属インキ組成物で形成される導電性パターン

【課題】本発明は、組成物及びこれを用いる金属配線形成方法、並びに該金属インキ組成物で形成される導電性パターンを提供する。
【解決手段】金属インキ組成物は、金属ナノ粒子20〜80重量部と、非水系有機溶媒10〜70重量部と、金属配線の形成時、塗布された金属インキの乾燥速度を調節するための乾燥剤2〜20重量部とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属インキ組成物及びこれを用いる金属配線形成方法並びに該金属インキ組成物で形成される導電性パターンに関するもので、より詳しくは、金属配線のクラックの発生を防止するための金属インキ組成物及びこれを用いて金属配線を形成する方法、並びに該金属インキ組成物で形成される導電性パターンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンティングによる非接触式直接印刷技術(noncontact direct printing technology)は、印刷しようとする位置に定量のインキを精密に吐出することができ、最近、印刷回路基板(Printed Circuit Board:PCB)のような回路基板上に微細線幅の金属配線を形成するための技術に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】韓国特許出願第2005−72478号公報
【特許文献2】韓国特許出願第2005−66936号公報
【特許文献3】韓国特許出願第2006−64481号公報
【特許文献4】韓国特許出願第2006−98315号公報
【特許文献5】韓国特許出願第2006−127697号公報
【特許文献6】韓国公開特許第10−2007−0042340号公報
【特許文献7】韓国公開特許第10−2008−0056772号公報
【特許文献8】韓国公開特許第10−2006−0060725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このインクジェットプリンティング方式で金属配線を形成する工程は、金属インキの材料特性が金属配線の形成効率に大きい影響を及ぼす。例えば、最近回路基板の金属配線は、配線としての特性と共に極めて微細な線幅、例えば100μm以下の線幅が要求されるため、これに応じるためには該金属インキの材料特性の改善が要求される。
また、現在微細線幅の金属配線の場合、配線特性を満たすために、回路基板の同一領域に数回反復して金属インキ組成物を積層する方式で、金属配線を形成する。しかしながら、このような反復印刷方式で金属配線を形成する場合、該金属配線にクラック(crack)が発生したり、線幅の均一性が低下する等の問題が生じる。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みて成されたものであって、その目的は、微細線幅の配線を効果よく形成することができる金属インキ組成物及びこれを用いて形成される導電性パターンを提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、金属配線の形成時にクラックの発生を防止可能な金属インキ組成物及びこれを用いて形成される導電性パターンを提供することにある。
【0007】
本発明のさらに他の目的は、微細線幅の配線を効果よく形成することができる金属インキ組成物の製造方法を提供することにある。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、金属配線の形成時にクラックの発生を防止可能な金属インキ組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を解決するために、本発明による金属インキ組成物は、金属ナノ粒子20〜80重量部と、非水系有機溶媒10〜70重量部と、前記金属配線の形成時に、塗布された金属インキの乾燥速度を調節するための乾燥剤2〜20重量部とを含むことができる。
【0010】
本発明の実施形態によれば、前記乾燥剤は、脂肪酸と2価金属イオンとが結合された金属化合物を含むことができる。
【0011】
本発明の実施形態によれば、前記乾燥剤は、2価金属イオンと2−エチルヘキサン酸(2−ethyl hexanoic acid)、ナフテン酸(Naphthenic acid)、ネオデカン酸(neodecanoic acid)及びトール油脂肪酸(Tall oil Fatty acid)のうちの少なくともいずれか一つの化合物を含むことができる。
【0012】
本発明の実施形態によれば、前記乾燥剤は、ナフテン酸銅(Copper(II) naphthenate)、2−エチルヘキサン酸銅(Copper(II) 2−ethylhexanate)、ナフテン酸銅(Copper(II) naphthenate)、ナフテン酸コバルト(Co(II)−naphthenate)、ネオデカン酸コバルト(Co−neodecanate)及び2−エチルヘキサン酸コバルト(Co−2−ethylhexanate)のうちの少なくともいずれか一つを含むことができる。
【0013】
本発明の実施形態によれば、前記乾燥剤は、レジネート(resinate)を含むことができる。
【0014】
本発明の実施形態によれば、前記金属ナノ粒子は、粒子表面が脂肪酸(fatty acid)及び脂肪アミン(fatty amine)より選ばれるいずれか一つの分散剤によってキャッピングされることができる。
【0015】
本発明の実施形態によれば、前記金属ナノ粒子は、金(Au)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、銅(Cu)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、白金(Pt)、鉄(Fe)及びコバルト(Co)のうちの少なくともいずれか一つを含むことができる。
【0016】
本発明の実施形態によれば、前記非水系有機溶媒は、ヘキサン(hexane)、オクタン(octane)、デカン(decane)、ウンデカン(undecane)、テトラデカン(tetradecane)、ヘキサデカン(hexadecane)、1−ヘキサデセン(l−hexadecene)、1−オクタデセン(l−octadecene)、ヘキシルアミン(hexylamine)及びビス−2−エチルヘキシルアミン(bis−2−ethylhexylamine)のうちの少なくともいずれか一つを含むことができる。
【0017】
また、上記目的を解決するために、本発明の実施形態による金属配線形成方法は、金属インキ組成物を準備するステップと、前記金属インキ組成物をインクジェットノズルを用いて回路基板上に塗布するステップと、前記回路基板上の前記金属インキ組成物を熱処理するステップとを含み、前記金属インキ組成物を準備するステップは、銅ナノ粒子を合成するステップと、前記銅ナノ粒子を非水系有機溶媒に混合して混合液を製造するステップと、前記混合液に、前記金属配線の形成時、塗布された金属インキの乾燥速度を調節するための乾燥剤を添加するステップとを備えることができる。
【0018】
本発明の実施形態によれば、前記乾燥剤を添加するステップは、脂肪酸と2価金属イオンとを結合して金属化合物を形成するステップと、前記金属化合物を前記混合液に注入するステップとを備えることができる。
【0019】
本発明の実施形態によれば、前記金属インキ組成物を準備するステップは、前記銅ナノ粒子20〜80重量部、前記非水系有機溶媒10〜70重量部及び前記添加剤2〜20重量部を含む前記金属インキ組成物を製造するステップを備えることができる。
【0020】
本発明の実施形態によれば、前記金属インキ組成物をインクジェットノズルを用いて回路基板上に塗布するステップは、前記回路基板上の回路配線を形成しようとする領域に対して前記金属インキ組成物を反復積層して行われることができる。
【0021】
本発明の実施形態によれば、前記金属インキ組成物を熱処理するステップは、前記金属インキ組成物を200℃以下の温度にて焼結するステップを備えることができる。
【0022】
本発明の実施形態によれば、前記乾燥剤を添加するステップは、2価金属イオンと2−エチルヘキサン酸(2−ethylhexanoic acid)、ナフテン酸(Naphthenic acid)、ネオデカン酸(neodecanoic acid)及びトール油脂肪酸(Tall oil Fatty acid)のうちの少なくともいずれか一つの化合物を前記混合液に添加するステップを備えることができる。
【0023】
本発明の実施形態によれば、前記乾燥剤を添加するステップは、ナフテン酸銅(Copper(II) naphthenate)、2−エチルヘキサン酸銅(Copper(II) 2−ethylhexanate)、ナフテン酸銅(Copper(II) naphthenate)、ナフテン酸コバルト(Co(II)−naphthenate)、ネオデカン酸コバルト(Co−neodecanate)及び2−エチルヘキサン酸コバルト(Co−2−ethylhexanate)のうちの少なくともいずれか一つを前記混合液に添加するステップを備えることができる。
【0024】
本発明の実施形態による導電性パターンは、前記回路基板の同一領域上に前記導電性インキ組成物を反復塗布して形成され、前記導電性パターンは、酸化膜を介して互いに積層された金属インキ組成物の積層構造を有することができる。
【0025】
本発明の実施形態によれば、前記導電性インキ組成物は、金属ナノ粒子20〜80重量部と、非水系有機溶媒10〜70重量部と、乾燥剤2〜20重量部とを含み、前記金属ナノ粒子は、粒子表面が脂肪酸(fatty acid)及び脂肪アミン(fatty amine)より選ばれる少なくとも1つの分散剤によってキャッピングされることができる。
【0026】
本発明の実施形態によれば、前記乾燥剤は、前記脂肪酸と2価金属イオンとが結合された金属化合物を含むことができる。
【0027】
本発明の実施形態によれば、前記乾燥剤は、2価金属イオンと2−エチルヘキサン(2−ethylhexanoic acid)、ナフテン酸(Naphthenic acid)、ネオデカン酸(neodecanoic acid)及びトール油脂肪酸(Tall oil Fatty acid)のうちの少なくともいずれか一つの化合物を含むことができる。
【0028】
本発明の実施形態によれば、前記乾燥剤は、ナフテン酸銅(Copper(II) naphthenate)、2−エチルヘキサン酸銅(Copper(II) 2−ethylhexanate)、ナフテン酸銅(Copper(II) naphthenate)、ナフテン酸コバルト(Copper(II)−naphthenate)、ネオデカン酸コバルト(Co−neodecanate)及び2−エチルヘキサン酸コバルト(Co−2−ethylhexanate)のうちの少なくともいずれか一つを含むことができる。
【0029】
本発明の実施形態によれば、前記乾燥剤は、レジネート(resinate)を含むことができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明による金属インキ組成物は、分散剤でキャッピングされた金属ナノ粒子、有機溶媒及び該金属インキ組成物の乾燥特性を向上させるための添加剤を含むことができる。該添加剤は、前記金属インキ組成物の乾燥速度を調節することによって、前記金属配線の形成時に金属配線にクラックが発生するのを防止することができる。これにより、本発明による金属インキ組成物は、クラック発生のない金属配線を形成することができる。
【0031】
本発明による金属配線形成方法は、乾燥特性を向上させる添加剤を含む金属インキ組成物を用いて金属配線を形成することによって、該金属配線の形成時、金属インキ組成物の乾燥特性を向上させてクラック発生のない金属配線を形成することができる。
【0032】
本発明による金属インキ組成物で形成される導電性パターンは、回路基板の同一領域上に前記導電性インキ組成物を反復塗布して形成され、該導電性パターンは、酸化膜を介して互いに積層された金属インキ組成物の積層構造を有することができる。前記酸化膜は、前記回路基板上に塗布された前記金属インキ組成物の形状を維持する膜として用いられることができる。これにより、本発明による金属インキ組成物は、クラックの発生を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。次に示される各実施の形態は当業者にとって本発明の思想が十分に伝達されることができるようにするために例として挙げられるものである。従って、本発明は以下に示している各実施の形態に限定されることなく他の形態で具体化されることができる。
【0034】
本明細書で使われた用語は、実施形態を説明するためのものであって、本発明を制限するものではない。本明細書において、単数形は文句で特別に言及しない限り複数形も含む。明細書で使われる「含む」とは、言及された構成要素、ステップ、動作及び/又は素子が、一つ以上の他の構成要素、ステップ、動作及び/又は素子の存在または追加を排除しないことに理解されたい。
【0035】
以下、本発明の好適な実施形態による金属インキ組成物及びこれを用いる金属配線形成方法に対して詳細に説明する。
【0036】
本発明の実施形態による金属インキ組成物は、所定の金属配線を形成するための材料である。例えば、該金属インキ組成物は、印刷回路基板(Printed Circuit Board:PCB)のような回路基板上にインクジェットプリンティング方式で微細線幅の回路配線を形成するための材料であってもよい。前記金属インキ組成物は、親油性ナノインキであってもよい。
【0037】
前記金属インキ組成物は、金属ナノ粒子、分散剤、非水系有機溶媒及び添加剤を含むことができる。
【0038】
前記金属ナノ粒子には、多様な種類の金属が用いられることができる。例えば、該金属ナノ粒子は、金(Au)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、銅(Cu)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、白金(Pt)、鉄(Fe)及びコバルト(Co)のうちの少なくともいずれか一つを含むことができる。ここで、前記金属ナノ粒子の大きさが小さいほど、インクジェットノズルからのインキの吐出が容易になる。例えば、前記金属ナノ粒子の大きさは、略50nm以下に調節されてもよい。
【0039】
また、本発明では、非水系有機溶媒を使用するため、有機溶媒との相容性のために、非水系溶液で合成される金属ナノ粒子を使用することができる。一例として、該金属ナノ粒子は、前記脂肪酸でキャッピングされた親油性金属ナノ粒子の組成を有することができる。前記脂肪酸のようなキャッピング材料は、前記分散剤として用いられることができる。このようなキャッピングされた金属ナノ粒子は、本出願人の先出願した多様な製造方法によって製造されることができる。
【0040】
一例として、韓国特許出願第2005−72478号によれば、還元剤の役割をする銅化合物を用いてアルカン酸、すなわちラウリン酸(lauric acid)、オレイン酸(oleic acid)、デカン酸、パルミチン酸のような脂肪酸によってキャッピングさせた金属ナノ粒子を得ることができる。
【0041】
他の例として、韓国特許出願第2005−66936号によれば、金属アルカノエート(alkanoate)を熱処理することによって金属ナノ粒子の周囲に脂肪酸をキャッピングさせることができる。
【0042】
さらに他の例として、韓国特許出願第2006−64481号によれば、金属前駆体を脂肪酸に解離させた後、スズ、マグネシウム、鉄のような金属の金属塩を金属触媒として用いて、脂肪酸によってキャッピングさせた金属ナノ粒子を得ることができる。
【0043】
さらに他の例として、韓国特許出願第2006−98315号によれば、銅前駆体材料を脂肪酸に入れて解離させた後、加熱させたり、還元剤をさらに投入して脂肪酸によってキャッピングされた銅ナノ粒子を得ることができる。
【0044】
さらに他の例として、脂肪アミンによってキャッピングされた金属ナノ粒子を使用してもよい。この場合、韓国特許出願第2006−127697号のように2つの分散剤、すなわち脂肪酸と脂肪アミンとを共に有する粒子を使用することができる。
【0045】
これらの方法は、例示であってこれに限定するものではなく、脂肪酸によってキャッピングされた金属ナノ粒子を準備するために多様な方法を使用してもよい。
【0046】
前記有機溶媒には、非水系溶媒が挙げられる。例えば、前記有機溶媒は、ヘキサン(hexane)、オクタン(octane)、デカン(decane)、ウンデカン(undecane)、テトラデカン(tetradecane)、ヘキサデカン(hexadecane)、1−ヘキサデセン(l−hexadecene)、1−オクタデセン(l−octadecene)、ヘキシルアミン(hexylamine)及びビス−2−エチルヘキシルアミン(bis−2−ethylhexylamine)のうちの少なくともいずれか一つを含むことができる。
【0047】
前記有機溶媒は、基板からの吐出されたインキ配線の乾燥速度に影響を及ぼすので、溶媒の沸点(BP)と露点(FP)との差を用いてインクジェットに適合な乾燥特性を有するように配合されてもよい。例えば、インキの乾燥特性を調節するにあって、1−オクタデセン(l−octadecene)のように沸点の高い溶媒は、乾燥速度を遅延させることができ、ビス−2−エチルヘキシルアミン(bis−2−ethylhexylamine)などのように沸点の低い溶媒は、乾燥速度を速やかにできる。
【0048】
前記添加剤は、前記金属インキ組成物を用いて金属配線を形成する時、塗布された金属インキ組成物の乾燥特性を向上させるためのものであってもよい。前記金属インキの乾燥速度を調節するための添加剤は、多様な種類の金属化合物が挙げられる。
【0049】
例えば、産業で用いられる乾燥剤(drier)は、米国材料試験協会(American Society of Testing Materials:ASTM)によれば、下記の通り略6種類に分類される。
液相ペイント乾燥剤(liquid paint drier)
クラスA(class A):2‐エチルヘキサン酸(2-ethyl haznoic acid)
クラスB(class B):ナフテン酸(Naphthenic acid)
クラスC(class C):ネオデカン酸(Neodecanoic acid)

クラスD(class D):トール油脂肪酸(Tall oil Fatty acid)
クラスE(class E):上述の付加的な添加物のいずれか(any of above plus additives)
クラスF(class F):他の未同定の酸及び酸の混合物(Other Unidentified acids and Acid blends)
【0050】
前述のような液相ペイント乾燥剤は、鉛(Pb)、コバルト(Co)、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、セリウム(Ce)、パナジウム(V)、銅(Cu)及びビスマス(Bi)のうちの少なくともいずれか一つの2価以上の金属イオンと、前記各クラス(Class A〜F)の脂肪酸とが結合された有機化合物であってもよい。
【0051】
これにより、前述のような乾燥剤の機能のために用いられる金属は、2価以上のイオンのものが望ましい。もし、乾燥機能のために用いられる金属が1価の金属イオンの場合、分散剤に含まれている二重結合に反応するのが難しく、その効果が制限されることになる。
【0052】
前述のような点を考慮して、前記乾燥剤としては次のような材料が用いられることができる。
【0053】
一例として、前記乾燥剤としては、2価金属イオンと2−エチルヘキサン酸(2−ethylhexanoic acid)、ナフテン酸(Naphthenic acid)、ネオデカン酸(neodecanoic acid)及びトール油脂肪酸(Tall oil Fatty acid)のうちの少なくともいずれか一つが結合された金属化合物が用いられることができる。
【0054】
他の例として、前記乾燥剤としては、ナフテン酸銅(Copper(II) naphthenate)、2−エチルヘキサン酸銅(Copper(II) 2−ethylhexanate)、ナフテン酸コバルト(Co−naphthenate)、ネオデカン酸コバルト(Co−neodecanate)及び2−エチルヘキサン酸コバルト(Co−2−ethylhexanate)のうちの少なくともいずれか一つが用いられることができる。
【0055】
さらに他の例として、前記乾燥剤としては、レジネート(resinate)が用いられることができる。
【0056】
前述のような乾燥剤は互いに単独に用いられるか、または少なくとも2つ以上が混合されて用いられてもよい。
【0057】
一方、前述のような金属インキ組成物において、前記金属ナノ粒子、前記有機溶媒及び前記添加剤の含量は、次のように調節されてもよい。
【0058】
前記金属ナノ粒子の含量は、略20〜85重量部に調節されてもよい。前記金属ナノ粒子の含量が20重量部未満の場合、金属含量が不足して配線としての特性が不足することになる。これに対し、前記金属ナノ粒子の含量が85重量部を超える場合、金属インキの粘度が高く、インキの吐出性が良くなくなる。より望ましくは、前記金属ナノ粒子の含量は、略50〜70重量部を満足するように調節されてもよい。この場合、前記金属インキ組成物は、高濃度の金属含量を維持すると共にインキの流れ性も良くなる。
【0059】
前記有機溶媒の含量は、10〜70重量部に調節されてもよい。この時、前記有機溶媒は、前記金属インキで形成しようとする金属配線内の金属の濃度を高めるため、最大限少量が含まれるように調節されてもよい。例えば、前記有機溶媒の含量が10重量部以下の場合、インクジェットヘッドの乾燥速度が速く、ノズル詰まり現象が発生し、粒子の分散安定性が確保されなくなる。これに対し、前記有機溶媒の含量が70重量部以上の場合、形成しようとする金属配線の電気伝導性の信頼性が低くなることになる。
【0060】
前記添加剤の含量は、2〜7重量部に調節されてもよい。前記添加剤の含量が2重量部末満の場合、該添加剤の含量が少なくて乾燥剤としての特性を発揮するに難しくなる。これに対し、該添加剤の含量が7重量部を超える場合、該乾燥剤の特性が過度に増加して、金属配線の形成時に金属インキ組成物の乾燥速度が過度に速くなる。
【0061】
前述のように、本発明による金属インキ組成物は、分散剤によってキャッピングされた金属ナノ粒子、有機溶媒及び前記金属インキ組成物の乾燥特性を向上させるための添加剤を含むことができる。該添加剤は、前記金属インキ組成物の乾燥速度を調節することによって、前記金属配線の形成時に金属配線にクラックが発生するのを防止することができる。これにより、本発明による金属インキ組成物は、クラックの発生なしに金属配線を形成することができる。
【0062】
続いて、本発明の実施形態による金属インキ組成物の製造方法及びその製造された金属インキ組成物を用いて金属配線を形成する方法に対して詳細に説明する。ここで、前述の金属インキ組成物に対して重複する内容は、省略または簡略にする。
<製造例>
【0063】
a)銅(Cu)ナノ粒子の製造例
【0064】
Cu(NO) 0.5molをオレイン酸2molに入れて混合液を製造した後、該混合液に該Cu(NO)の解離のためのブチルアミン1molを追加に入れた。この時、該混合液の色は、概ね透明な緑色系列の色に変わった。この混合液を略200℃に加熱及び撹拌して、反応させた。この時、該混合液内には還元反応が進行され、混合液の色が順次褐色に変わった。また、ガラス反応器の壁面に金属ナノ粒子が形成された。略2時間以上、このような反応過程を行った後、極性溶媒であるアセトン及びメタノールの混合物を用いて、再沈殿させた。その後、遠心分離機を用いて該混合液から銅ナノ粒子を回収した。
【0065】
b)銀(Ag)ナノ粒子の製造例
【0066】
トルエン溶媒300gに硝酸銀(AgNO)170gとアセチルアセトン銅(Cu(acac))との化合物20gを混合して、混合液を形成する。該混合液にブチルアミン100gを添加した後撹拌した。続いて、該混合液にパルミチン酸(palmitic acid)50gをさらに添加した。これらの混合液を110℃温度に上げた後、2時間間撹拌して維持させ、室温(28℃)に温度を落とした。形成される銀ナノ粒子をメタノールを入れて遠心分離して銀ナノ粒子のみ選択的に沈殿させて分離した。このようにして、均一な大きさの粒子分布を有する4nm金属ナノ粒子90gを得た。
【0067】
c)金属インキの製造例及びこれを用いる金属配線形成方法。
【0068】
前述の製造法により製造された金属ナノ粒子、有機溶媒、乾燥剤を下記の<表1>に示された含量によって混合して金属インキ組成物を製造した。そして、前述の方法で製造された金属インキ組成物を用いて、インクジェットプリンティング方式で金属配線を形成した。例えば、前述のような方法で製造された金属インキ組成物を吐出するインクジェットノズルを準備し、該インクジェットノズルを用いて、印刷回路基板の金属配線を形成しようとする領域に対して、前記金属インキ組成物をプリンティングした。ここで、前記金属配線を形成しようとする領域に対して、<表1>に示された回数分反復印刷して、金属配線としての特性を向上させた。その後、反復プリントされて形成される金属配線構造物に対して熱処理(焼結処理)して、金属配線を形成した。
【0069】
具体的な金属インキ製造方法及び金属配線形成方法は、下記の<表1>の通りである。
【0070】
【表1】

【0071】
前述のように、本発明の実施形態によれば、ナフテン酸コバルト(Co−naphthenate)、ネオデカン酸銅(Cu−neodecanoic acid)、オクタン酸コバルト(Co−octonate)の添加剤を含む金属インキで金属配線を形成する場合、該添加剤を含まない金属インキで金属配線を形成する場合に比べて、金属配線にクラックが発生しないことが認められた。これは、前記乾燥剤が前記金属インキの乾燥特性を向上させることによって、吐出された金属インキのクラックを防止するためである。
【0072】
d)金属インキの他の製造例及びこれを用いる金属配線形成方法。
【0073】
前述の製造法により製造された銅ナノ粒子、有機溶媒、乾燥剤を下記の<表2>に示された含量によって混合して金属インキ組成物を製造した。ここで、前記銅インキ組成物であってもよい。そして、前述の方法で製造された金属インキ組成物を用いて、インクジェットプリンティング方式で金属配線を形成することができる。例えば、前述のような方法で製造された金属インキ組成物を吐出するインクジェットノズルを準備し、該インクジェットノズルを用いて、印刷回路基板の金属配線を形成しようとする領域に対して、前記金属インキ組成物をプリンティングすることができる。ここで、前記金属配線を形成しようとする領域に対して、下記<表2>に示された回数分反復印刷して、金属配線としての特性を向上させることができる。その後、反復プリントされて形成される金属配線構造物に対して熱処理(焼結処理)して、金属配線を形成した。
【0074】
具体的な金属インキ製造方法及び金属配線形成方法は、下の<表2>の通りである。
【0075】
【表2】

【0076】
前述のように、本発明の実施形態によれば、銅ナノ粒子、分散剤(オレイン酸)、テトラデカン(またはオクタデセン)及びネオデカン酸(neodecanoic acid)及びナフテン酸(naphthenoic acid)のうちのいずれか一つの添加剤を含む金属インキ組成物で金属配線を形成する場合、前記添加剤を含まない金属インキ組成物で金属配線を形成する場合に比べて、金属配線にクラックが発生しないことが認められた。これは、前記乾燥剤が前記金属インキ組成物の乾燥特性を向上させることによって、吐出されて形成される金属配線のクラックを防止するためである。
【0077】
一方、前述のインクジェットノズルを用いて反復印刷する過程において、回路基板上に塗布された金属インキの表面には所定の被膜が形成されることができる。例えば、外部に露出された金属インキの表面には、外部空気内の酸素(O)と反応して、フィルム形態の金属酸化膜が形成されることができる。このような金属酸化膜は、前記インクジェットノズルにより反復塗布される各金属インキ組成物の表面に形成されることができる。したがって、金属インキ組成物の反復印刷によって形成された金属配線は、酸化膜を介して互いに積層された金属インキ組成物の積層構造を有することができる。これらの酸化膜は、前記金属インキのクラック(crack)の発生を抑制する機能をする。
【0078】
前述のように、本発明による金属インキ組成物は、金属ナノ粒子に二重結合付き分散剤を用いて、該二重結合に選択的に反応する乾燥剤を含み、該乾燥剤の含量を調節することによって、前記金属配線の形成時、金属インキの乾燥速度を調節することができる。これにより、本発明による金属配線の形成方法は、乾燥剤の反応性を向上させて、金属配線にクラック(crack)が発生することをより一層減少させることができる。
【0079】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、前記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性パターンを形成するための金属インキ組成物において、
金属ナノ粒子20〜80重量部と、
非水系有機溶媒10〜70重量部と、
前記金属配線の形成時に、塗布された金属インキの乾燥速度を調節するための乾燥剤2〜20重量部と、
を含む金属インキ組成物。
【請求項2】
前記乾燥剤は、脂肪酸と2価金属イオンとが結合された金属化合物を含む請求項1に記載の金属インキ組成物。
【請求項3】
前記乾燥剤は、2価金属イオンと2−エチルヘキサン酸(2−ethyl hexanoic acid)、ナフテン酸(Naphthenic acid)、ネオデカン酸(neodecanoic acid)及びトール油脂肪酸(Tall oil Fatty acid)のうちの少なくともいずれか一つの化合物を含む請求項1または2に記載の金属インキ組成物。
【請求項4】
前記乾燥剤は、ナフテン酸銅(Copper(II) naphthenate)、2−エチルヘキサン酸銅(Copper(II) 2−ethylhexanate)、ナフテン酸銅(Copper(II) naphthenate)、ナフテン酸コバルト(Co(II)−naphthenate)、ネオデカン酸コバルト(Co−neodecanate)及び2−エチルヘキサン酸コバルト(Co−2−ethylhexanate)のうちの少なくともいずれか一つを含む請求項1から3のいずれか一つに記載の金属インキ組成物。
【請求項5】
前記乾燥剤は、レジネート(resinate)を含む請求項1から4のいずれか一つに記載の金属インキ組成物。
【請求項6】
前記金属ナノ粒子は、粒子表面が脂肪酸(fatty acid)及び脂肪アミン(fatty amine)より選ばれるいずれか一つの分散剤によってキャッピングされる請求項1から5のいずれか一つに記載の金属インキ組成物。
【請求項7】
前記金属ナノ粒子は、金(Au)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、銅(Cu)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、白金(Pt)、鉄(Fe)及びコバルト(Co)のうちの少なくともいずれか一つを含む請求項1から6のいずれか一つに記載の金属インキ組成物。
【請求項8】
前記非水系有機溶媒は、ヘキサン(hexane)、オクタン(octane)、デカン(decane)、ウンデカン(undecane)、テトラデカン(tetradecane)、ヘキサデカン(hexadecane)、1−ヘキサデセン(l−hexadecene)、1−オクタデセン(l−octadecene)、ヘキシルアミン(hexylamine)及びビス−2−エチルヘキシルアミン(bis−2−ethylhexylamine)のうちの少なくともいずれか一つを含む請求項1から7のいずれか一つに記載の金属インキ組成物。
【請求項9】
導電性パターンを形成する方法において、
金属インキ組成物を準備するステップと、
前記金属インキ組成物をインクジェットノズルを用いて回路基板上に塗布するステップと、
前記回路基板上の前記金属インキ組成物を熱処理するステップとを含み、
前記金属インキ組成物を準備するステップは、
銅ナノ粒子を合成するステップと、
前記銅ナノ粒子を非水系有機溶媒に混合して混合液を製造するステップと、
前記混合液に、前記金属配線の形成時、塗布された金属インキの乾燥速度を調節するための乾燥剤を添加するステップと、
を備える金属配線形成方法。
【請求項10】
前記乾燥剤を添加するステップは、
脂肪酸と2価金属イオンとを結合して金属化合物を形成するステップと、
前記金属化合物を前記混合液に注入するステップと、
を備える請求項9に記載の金属配線形成方法。
【請求項11】
前記金属インキ組成物を準備するステップは、
前記銅ナノ粒子20〜80重量部、前記非水系有機溶媒10〜70重量部及び前記添加剤2〜20重量部を含む前記金属インキ組成物を製造するステップを備える請求項9または10に記載の金属配線形成方法。
【請求項12】
前記金属インキ組成物をインクジェットノズルを用いて回路基板上に塗布するステップは、
前記回路基板上の回路配線を形成しようとする領域に対して前記金属インキ組成物を反復積層して行われる請求項9から11のいずれか一つに記載の金属配線形成方法。
【請求項13】
前記金属インキ組成物を熱処理するステップは、
前記金属インキ組成物を200℃以下の温度にて焼結するステップを備える請求項9から12のいずれか一つに記載の金属配線形成方法。
【請求項14】
前記乾燥剤を添加するステップは、
2価金属イオンと2−エチルヘキサン酸(2−ethylhexanoic acid)、ナフテン酸(Naphthenic acid)、ネオデカン酸(neodecanoic acid)及びトール油脂肪酸(Tall oil Fatty acid)のうちの少なくともいずれか一つの化合物を前記混合液に添加するステップを備える請求項9から13のいずれか一つに記載の金属配線形成方法。
【請求項15】
前記乾燥剤を添加するステップは、
ナフテン酸銅(Copper(II) naphthenate)、2−エチルヘキサン酸銅(Copper(II) 2−ethylhexanate)、ナフテン酸銅(Copper(II) naphthenate)、ナフテン酸コバルト(Copper(II)−naphthenate)、ネオデカン酸コバルト(Co−neodecanate)及び2−エチルヘキサン酸コバルト(Co−2−ethylhexanate)のうちの少なくともいずれか一つを前記混合液に添加するステップを備える請求項9から14のいずれか一つに記載の金属配線形成方法。
【請求項16】
基板に導電性インキ組成物を塗布して形成される導電性パターンにおいて、
前記導電性パターンは、前記回路基板の同一領域上に前記導電性インキ組成物を反復塗布して形成され、
前記導電性パターンは、酸化膜を介して互いに積層された金属インキ組成物の積層構造を有する導電性パターン。
【請求項17】
前記導電性インキ組成物は、
金属ナノ粒子20〜80重量部と、
非水系有機溶媒10〜70重量部と、
乾燥剤2〜20重量部とを含み、
前記金属ナノ粒子は、粒子表面が脂肪酸(fatty acid)及び脂肪アミン(fatty amine)より選ばれる少なくとも1つの分散剤によってキャッピングされる請求項16に記載の導電性パターン。
【請求項18】
前記乾燥剤は、前記脂肪酸と2価金属イオンとが結合された金属化合物を含む請求項17に記載の導電性パターン。
【請求項19】
前記乾燥剤は、2価金属イオンと2−エチルヘキサン酸(2−ethylhexanoic acid)、ナフテン酸(Naphthenic acid)、ネオデカン酸(neodecanoic acid)及びトール油脂肪酸(Tall oil Fatty acid)のうちの少なくともいずれか一つの化合物を含む請求項17に記載の導電性パターン。
【請求項20】
前記乾燥剤は、ナフテン酸銅(Copper(II) naphthenate)、2−エチルヘキサン酸銅(Copper(II) 2−ethylhexanate)、ナフテン酸銅(Copper(II) naphthenate)、ナフテン酸コバルト(Co(II)−naphthenate)、ネオデカン酸コバルト(Co−neodecanate)及び2−エチルヘキサン酸コバルト(Co−2−ethylhexanate)のうちの少なくともいずれか一つを含む請求項17に記載の導電性パターン。
【請求項21】
前記乾燥剤は、レジネート(resinate)を含む請求項17に記載の導電性パターン。

【公開番号】特開2012−7140(P2012−7140A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231279(P2010−231279)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】