説明

金属ガスケットによるシール構造

【課題】金属ガスケットおよび筐体間に塩水が溜まるような間隙を形成しにくい構造であり、もって塩水の滞留による筐体の腐食が発生するのを抑制し、シール機能が長期間に亙って維持される金属ガスケットによるシール構造を提供する。
【解決手段】一対の筐体間に配置される金属ガスケットを備える。金属ガスケットは、平面状の外周部の内周側にビード部、外周側に曲げ加工部を備える。一対の筐体によって金属ガスケットが挟圧されたとき、ビード部はその高さを減じるように弾性変形するとともにこれに伴って外周部も弾性変形し、このとき外周部はその外周端部が一方の筐体に接触し、これにより一方の筐体および外周部間に塩水が溜まるような間隙を形成せず、曲げ加工部は他方の筐体に接触し、これにより他方の筐体および外周部間に塩水が溜まるような間隙を形成しない構造を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ガスケットによるシール構造に関する。本発明のシール構造は例えば自動車関連の分野で用いられ、またはその他の分野で用いられる。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車向けの金属ガスケットでは、自動車が海浜地帯や寒冷地で融雪剤が散布された地帯を走行する状況などに備え、スペック評価項目として、塩水噴霧試験が実施される場合がある。この場合、金属ガスケットを装着する相手側の筐体がアルミ材質(アルミ合金を含む、以下同じ)であると、金属ガスケットおよび筐体間の隙間に塩水が堆積(付着)し、乾燥および湿潤を繰り返すことにより、塩水(イオン濃度の差)によるアルミ材質の腐食(隙間腐食)が発生する。金属ガスケットは、筐体に接触する部分の反力でシール機能を発揮するが、筐体の腐食部分がシールラインを貫通すると、シール機能が損なわれることになる。
【0003】
尚、筐体は鉄系の材質であっても腐食が発生するが、アルミ(Al)は鉄系(Fe)等よりイオン化傾向が大きい金属であるため、特に腐食しやすいものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−224938号公報
【特許文献2】特開平11−241769号公報
【特許文献3】特開2008−164156号公報
【特許文献4】特開2009−156382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上の点に鑑みて、金属ガスケットおよび筐体間に塩水が溜まるような間隙を形成しにくい構造であり、もって塩水の滞留による筐体の腐食が発生するのを抑制し、シール機能が長期間に亙って維持される金属ガスケットによるシール構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1によるシール構造は、一対の筐体間に配置される金属ガスケットを備え、前記金属ガスケットは、平面状の外周部と、前記外周部の内周端部からガスケット厚み方向の一方へ立ち上げ形成されたビード部と、前記外周部の外周端部からガスケット厚み方向の他方へ折り曲げ形成された曲げ加工部とを備え、前記一対の筐体によって前記金属ガスケットが挟圧される前の初期配置において前記ビード部は一方の筐体のほうを向くとともに前記曲げ加工部は他方の筐体のほうを向くように配置され、前記一対の筐体によって前記金属ガスケットが挟圧されたとき、前記ビード部はその高さを減じるように弾性変形するとともにこれに伴って前記外周部も弾性変形し、このとき前記外周部はその外周端部が前記一方の筐体に接触し、これにより前記一方の筐体および前記外周部間に塩水が溜まるような間隙を形成せず、前記曲げ加工部は前記他方の筐体に接触し、これにより前記他方の筐体および前記外周部間に塩水が溜まるような間隙を形成しない構造を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の請求項2によるシール構造は、上記した請求項1記載のシール構造において、前記一対の筐体によって前記金属ガスケットが挟圧されたとき、前記曲げ加工部はその厚み方向の一面が前記他方の筐体の平面縁部に接触する構造またはその先端が前記他方の筐体の平面部に接触する構造を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項3によるシール構造は、上記した請求項1または2記載のシール構造において、前記金属ガスケットは金属基板の表面にゴム層を被着した積層タイプの金属ガスケットであって、前記金属基板は前記筐体に接触せず前記ゴム層が前記筐体に接触する構造を備えることを特徴とする。
【0009】
上記構成を備える本発明のシール構造は、一対の筐体間に金属ガスケットを装着する構造であって、金属ガスケットは、平面状の外周部と、外周部の内周端部からガスケット厚み方向の一方へ立ち上げ形成されたビード部と、外周部の外周端部からガスケット厚み方向の他方へ折り曲げ形成された曲げ加工部とを備え、挟圧前の初期配置においてビード部が一方の筐体のほうを向き、曲げ加工部が他方の筐体のほうを向くように配置される。そして、一対の筐体によって金属ガスケットがその厚み方向に挟圧されると、ビード部がその高さを減じるように弾性変形するとともにこれに伴って外周部も弾性変形し、このとき外周部はその外周端部が一方の筐体に接触し、曲げ加工部は他方の筐体に接触する。したがって一方の筐体および外周部間の間隙ならびに他方の筐体および外周部間の間隙がそれぞれ前記接触により閉塞されることになって、ここに塩水が溜まるような外部開放された間隙が形成されなくなるため、塩水の滞留による筐体の腐食が発生するのを抑制することが可能となる。
【0010】
曲げ加工部は、ガスケット外周部の外周端部に一体成形された斜面状ないしスカート状のシール片であり、このような曲げ加工部が他方の筐体に接触する態様としては、曲げ加工部の厚み方向の一面が他方の筐体の平面縁部に接触する態様と、曲げ加工部の先端が他方の筐体の平面部に接触する態様とが考えられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0012】
すなわち上記構成を備える本発明によれば、一方の筐体および外周部間ならびに他方の筐体および外周部間にそれぞれ塩水が溜まるような間隙が形成されないため、塩水の滞留による筐体の腐食が発生するのを抑制することができ、よって金属ガスケットによるシール機能を長期間に亙って維持することができる。また、金属ガスケットは1枚仕様であるにもかかわらずその厚み方向両面でそれぞれ塩水が溜まるような間隙が形成されないため、コンパクトで低コストのシール構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1(A)は本発明の第一実施例に係るシール構造に用いる金属ガスケットの要部断面図、図1(B)は同シール構造の締結状態を示す要部断面図
【図2】図2(A)は本発明の第二実施例に係るシール構造に用いる金属ガスケットの要部断面図、図2(B)は同シール構造の締結状態を示す要部断面図
【図3】図3(A)は本発明の第三実施例に係るシール構造に用いる金属ガスケットの要部断面図、図3(B)は同シール構造の締結状態を示す要部断面図
【図4】図4(A)は本発明の第四実施例に係るシール構造に用いる金属ガスケットの要部断面図、図4(B)は同シール構造の締結状態を示す要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明には、以下の実施形態が含まれる。
(1)ガスケットと筐体の外周部隙間への塩水の付着を防止することで、塩水噴霧試験等での腐食によるシール機能低下を延命することを特徴とする。
(2)ステンレス、冷延鋼板、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム合板をガスケット基材としていることを特徴とする。
(3)ガスケットゴムを形成するゴム配合物は、ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、シリコンゴムのうちの少なくとも一種を含む合成ゴムシートとする。
(4)塩水によるアルミ筐体の腐食を低減する、ひいては腐食の進行によるガスケットシール機能の喪失を遅らせること、かつ2枚積層対応より低コストなガスケットを提供することを目的として、製品外周側に塩水侵入を防止するための曲げ加工部を設け、筐体−ガスケット間隙間をなくす、または、現行より小さくすることとした。
(5)上記(1)〜(4)の構成によれば、隙間をなくす、または、隙間が小さくなることによって塩水が堆積(付着)しにくくなり、腐食進行を遅延させることができる。よって1枚仕様にて、塩水によるガスケットシール機能喪失を遅らせることができる。
【実施例】
【0015】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0016】
第一実施例・・・
図1(A)は、本発明の第一実施例に係るシール構造に用いる金属ガスケット11の要部断面を示しており、この金属ガスケット11が一対の筐体(ハウジングまたはフランジ)31,41間に配置されてガスケット厚み方向(図では上下方向)に挟圧(ボルト締め)されると、図1(B)に示す締結状態となる。各図の左側がガスケット11の外側(外周側)すなわち塩水などの密封流体側、右側がガスケット11の内側(内周側)である。また図1(B)に示すように一対の筐体31,41は、図上上側の一方の筐体31と図上下側の他方の筐体41との組み合わせよりなり、互いに対向する平面部31a,41aの間に金属ガスケット11が装着される。筐体31,41は塩水によって腐食しやすいアルミ材質であるが、鉄系などその他の材質であっても良い。筐体31,41間には1枚の金属ガスケット11が装着される。
【0017】
図1(A)に示すように、金属ガスケット11は、平面状の外周部11aと、この外周部11aの内周端部(図では右端部)からガスケット厚み方向の一方(図では上方向)へ向けて立ち上げ形成されたビード部11dと、外周部11aの外周端部(図では左端部)からガスケット厚み方向の他方(図では下方向)へ向けて折り曲げ形成された曲げ加工部11eとを一体に備えている。
【0018】
すなわち金属ガスケット11は、平面状の外周部11aを備え、この外周部11aの内周端部から斜め上方へ向けて斜面部11bが一体成形されるとともに斜面部11bの内周端部に平面状の内周部11cが一体成形されている。したがって平面状の外周部11aをガスケット基板部として、斜面部11bおよび内周部11cの組み合わせよりなるハーフビード形状のビード部11dが設定されている。一方、曲げ加工部11eは外周部11aの外周端部から斜め下方へ向けて斜面状ないしスカート状に一体成形されている。
【0019】
また、金属ガスケット11は、金属基板(鋼板層)12を備え、この金属基板12の厚み方向両面にそれぞれゴム層(表面ゴム層)13,14が全面に亙って被着されている。したがって金属ガスケット11は、金属基板12の表面にゴム層13,14が被着された金属基板12およびゴム層13,14の組み合わせよりなる積層タイプの金属ガスケット(ラバーコーティングメタルガスケット)とされている。
【0020】
上記構成の金属ガスケット11は、一対の筐体31,41により挟圧される前の初期配置において、ビード部11dが一方の筐体31のほうを向くとともに曲げ加工部11eが他方の筐体41のほうを向くように配置され、その後一対の筐体31,41によってガスケット厚み方向に挟圧されると図1(B)に示す締結状態となり、すなわちハーフビード形状よりなるビード部11dがその高さを減じるように弾性変形するとともにこれに伴って平面状の外周部11aが斜めに弾性変形し、このとき外周部11aは、外周部11aおよびビード部11d間の角部11fを梃子作用の支点として、その外周端部(外周部11aおよび曲げ加工部11e間の角部)11gが上向きに跳ね上がってこの外周端部11gが上面ゴム層13によって上側の一方の筐体31の下面(平面部)31aに接触する。また、曲げ加工部11eは下側の他方の筐体41に接触し、すなわち曲げ加工部11eはその一部(殆どの部位)が一対の筐体31,41間から外側へ食み出した状態とされて、その厚み方向の一面11hが下面ゴム層14によって他方の筐体41の上面角部(平面縁部)41bに接触する。したがって一方の筐体31および外周部11a間の間隙c1ならびに他方の筐体41および外周部11a間の間隙c2がそれぞれ上記の接触により閉塞されて、ここに塩水が溜まるような外部開放された間隙が形成されないため、塩水の滞留による筐体31,41の腐食が発生するのを抑制することができる。
【0021】
尚、上記したように金属ガスケット11は、平面状の外周部11aの内側に斜面部11bおよび内周部11cの組み合わせよりなるハーフビード形状のビード部11dを一体成形するとともに外周部11aの外側に曲げ加工部11eを一体成形したものであるので、これが締結されると図1(B)に示したように、ビード部11dの角部11iおよび外周部11aの外周端部11gがそれぞれ上面ゴム層13によって上側の一方の筐体31の下面31aに密接し、外周部11aおよびビード部11d間の角部11fが下面ゴム層14によって下側の他方の筐体41の上面(平面部)41aに密接し、更に曲げ加工部11eが下面ゴム層14によって下側の他方の筐体41の上面角部41bに密接する。したがって金属ガスケット11の厚み方向両面にそれぞれ2本のシールラインが設定されることになる。
【0022】
第二実施例・・・
上記第一実施例において、金属ガスケット11が備えるビード部11dは、斜面部11bおよび内周部11cの組み合わせよりなるハーフビード形状とされているが、ビード部11dの形状はとくに限定されるものではなく、例えば断面円弧形もしくは断面台形のフルビード形状などであっても良い。以下、その例を説明する。
【0023】
図2(A)は、本発明の第二実施例に係るシール構造に用いる金属ガスケット11の要部断面を示しており、この金属ガスケット11が一対の筐体(ハウジングまたはフランジ)31,41間に配置されてガスケット厚み方向(図では上下方向)に挟圧(ボルト締め)されると、図2(B)に示す締結状態となる。各図の左側がガスケット11の外側(外周側)すなわち塩水などの密封流体側、右側がガスケット11の内側(内周側)である。また図2(B)に示すように一対の筐体31,41は、図上上側の一方の筐体31と図上下側の他方の筐体41との組み合わせよりなり、互いに対向する平面部31a,41aの間に金属ガスケット11が装着される。筐体31,41は塩水によって腐食しやすいアルミ材質であるが、鉄系などその他の材質であっても良い。筐体31,41間には1枚の金属ガスケット11が装着される。
【0024】
図2(A)に示すように、金属ガスケット11は、平面状の外周部11aと、この外周部11aの内周端部(図では右端部)からガスケット厚み方向の一方(図では上方向)へ向けて立ち上げ形成されたビード部11dと、外周部11aの外周端部(図では左端部)からガスケット厚み方向の他方(図では下方向)へ向けて折り曲げ形成された曲げ加工部11eとを一体に備えている。
【0025】
すなわち金属ガスケット11は、平面状の外周部11aを備え、この外周部11aをガスケット基板部として、外周部11aの内周端部に断面円弧形のフルビード形状のビード部11dが一体成形されている。一方、曲げ加工部11eは外周部11aの外周端部から斜め下方へ向けて斜面状ないしスカート状に一体成形されている。
【0026】
また、金属ガスケット11は、金属基板(鋼板層)12を備え、この金属基板12の厚み方向両面にそれぞれゴム層(表面ゴム層)13,14が全面に亙って被着されている。したがって金属ガスケット11は、金属基板12の表面にゴム層13,14が被着された金属基板12およびゴム層13,14の組み合わせよりなる積層タイプの金属ガスケット(ラバーコーティングメタルガスケット)とされている。
【0027】
上記構成の金属ガスケット11は、一対の筐体31,41により挟圧される前の初期配置において、ビード部11dが一方の筐体31のほうを向くとともに曲げ加工部11eが他方の筐体41のほうを向くように配置され、その後一対の筐体31,41によってガスケット厚み方向に挟圧されると図2(B)に示す締結状態となり、すなわち断面円弧形のフルビード形状よりなるビード部11dがその高さを減じるように弾性変形するとともにこれに伴って平面状の外周部11aが斜めに弾性変形し、このとき外周部11aは、外周部11aおよびビード部11d間の角部11fを梃子作用の支点として、その外周端部(外周部11aおよび曲げ加工部11e間の角部)11gが上向きに跳ね上がってこの外周端部11gが上面ゴム層13によって上側の一方の筐体31の下面(平面部)31aに接触する。また、曲げ加工部11eは下側の他方の筐体41に接触し、すなわち曲げ加工部11eはその一部(殆どの部位)が一対の筐体31,41間から外側へ食み出した状態とされて、その厚み方向の一面11hが下面ゴム層14によって他方の筐体41の上面角部(平面縁部)41bに接触する。したがって一方の筐体31および外周部11a間の間隙c1ならびに他方の筐体41および外周部11a間の間隙c2がそれぞれ上記の接触により閉塞されて、ここに塩水が溜まるような外部開放された間隙が形成されないため、塩水の滞留による筐体31,41の腐食が発生するのを抑制することができる。
【0028】
尚、上記したように金属ガスケット11は、平面状の外周部11aの内側に断面円弧形のフルビード形状のビード部11dを一体成形するとともに外周部11aの外側に曲げ加工部11eを一体成形したものであるので、これが締結されると図2(B)に示したように、ビード部11dの頂部11jおよび外周部11aの外周端部11gがそれぞれ上面ゴム層13によって上側の一方の筐体31の下面31aに密接し、外周部11aおよびビード部11d間の角部11fが下面ゴム層14によって下側の他方の筐体41の上面(平面部)41aに密接し、更に曲げ加工部11eが下面ゴム層14によって下側の他方の筐体41の上面角部41bに密接する。したがって金属ガスケット11の厚み方向両面にそれぞれ2本のシールラインが設定されることになる。
【0029】
第三実施例・・・
上記第一実施例において、金属ガスケット11は、曲げ加工部11eの厚み方向の一面11hが他方の筐体41の上面角部(平面縁部)41bに接触する態様されているが、これに代えて、曲げ加工部11eの先端11kが他方の筐体41の上面(平面部)41aに接触する態様であっても良い。以下、その例を説明する。
【0030】
図3(A)は、本発明の第三実施例に係るシール構造に用いる金属ガスケット11の要部断面を示しており、この金属ガスケット11が一対の筐体(ハウジングまたはフランジ)31,41間に配置されてガスケット厚み方向(図では上下方向)に挟圧(ボルト締め)されると、図3(B)に示す締結状態となる。各図の左側がガスケット11の外側(外周側)すなわち塩水などの密封流体側、右側がガスケット11の内側(内周側)である。また図3(B)に示すように一対の筐体31,41は、図上上側の一方の筐体31と図上下側の他方の筐体41との組み合わせよりなり、互いに対向する平面部31a,41aの間に金属ガスケット11が装着される。筐体31,41は塩水によって腐食しやすいアルミ材質であるが、鉄系などその他の材質であっても良い。筐体31,41間には1枚の金属ガスケット11が装着される。
【0031】
図3(A)に示すように、金属ガスケット11は、平面状の外周部11aと、この外周部11aの内周端部(図では右端部)からガスケット厚み方向の一方(図では上方向)へ向けて立ち上げ形成されたビード部11dと、外周部11aの外周端部(図では左端部)からガスケット厚み方向の他方(図では下方向)へ向けて折り曲げ形成された曲げ加工部11eとを一体に備えている。
【0032】
すなわち金属ガスケット11は、平面状の外周部11aを備え、この外周部11aの内周端部から斜め上方へ向けて斜面部11bが一体成形されるとともに斜面部11bの内周端部に平面状の内周部11cが一体成形されている。したがって平面状の外周部11aをガスケット基板部として、斜面部11bおよび内周部11cの組み合わせよりなるハーフビード形状のビード部11dが設定されている。一方、曲げ加工部11eは外周部11aの外周端部から斜め下方へ向けて斜面状ないしスカート状に一体成形されている。また、曲げ加工部11eは上記第一または第二実施例の曲げ加工部11eと比較して、その長さが短めに形成されている。
【0033】
また、金属ガスケット11は、金属基板(鋼板層)12を備え、この金属基板12の厚み方向両面にそれぞれゴム層(表面ゴム層)13,14が全面に亙って被着されている。したがって金属ガスケット11は、金属基板12の表面にゴム層13,14が被着された金属基板12およびゴム層13,14の組み合わせよりなる積層タイプの金属ガスケット(ラバーコーティングメタルガスケット)とされている。
【0034】
上記構成の金属ガスケット11は、一対の筐体31,41により挟圧される前の初期配置において、ビード部11dが一方の筐体31のほうを向くとともに曲げ加工部11eが他方の筐体41のほうを向くように配置され、その後一対の筐体31,41によってガスケット厚み方向に挟圧されると図3(B)に示す締結状態となり、すなわちハーフビード形状よりなるビード部11dがその高さを減じるように弾性変形するとともにこれに伴って平面状の外周部11aが斜めに弾性変形し、このとき外周部11aは、外周部11aおよびビード部11d間の角部11fを梃子作用の支点として、その外周端部(外周部11aおよび曲げ加工部11e間の角部)11gが上向きに跳ね上がってこの外周端部11gが上面ゴム層13によって上側の一方の筐体31の下面(平面部)31aに接触する。また、曲げ加工部11eは下側の他方の筐体41に接触し、すなわち曲げ加工部11eはその殆どの部位が一対の筐体31,41間に配置された状態とされて、その先端(外周端部)11kが下面ゴム層14によって他方の筐体41の上面(平面部)41aに接触する。したがって一方の筐体31および外周部11a間の間隙c1ならびに他方の筐体41および外周部11a間の間隙c2がそれぞれ上記の接触により閉塞されて、ここに塩水が溜まるような外部開放された間隙が形成されないため、塩水の滞留による筐体31,41の腐食が発生するのを抑制することができる。
【0035】
尚、上記したように金属ガスケット11は、平面状の外周部11aの内側に斜面部11bおよび内周部11cの組み合わせよりなるハーフビード形状のビード部11dを一体成形するとともに外周部11aの外側に曲げ加工部11eを一体成形したものであるので、これが締結されると図3(B)に示したように、ビード部11dの角部11iおよび外周部11aの外周端部11gがそれぞれ上面ゴム層13によって上側の一方の筐体31の下面31aに密接し、外周部11aおよびビード部11d間の角部11fならびに曲げ加工部11eの先端11kがそれぞれ下面ゴム層14によって下側の他方の筐体41の上面(平面部)41aに密接する。したがって金属ガスケット11の厚み方向両面にそれぞれ2本のシールラインが設定されることになる。
【0036】
また、この第三実施例によると、一方の筐体31および曲げ加工部11e間に新たに、外部開放された間隙c3が形成されるので、ここに塩水が溜まる可能性があるが、この一方の筐体31および曲げ加工部11e間の間隙c3は一方の筐体31および外周部11a間の間隙c1または他方の筐体41および外周部11a間の間隙c2と比較して容積が随分と小さなものである。したがって間隙の容積が減じる範囲において腐食の発生を抑制することができる。
【0037】
第四実施例・・・
上記第二実施例および第三実施例は、これらを組み合わせることができる。以下、その例を説明する。
【0038】
図4(A)は、本発明の第四実施例に係るシール構造に用いる金属ガスケット11の要部断面を示しており、この金属ガスケット11が一対の筐体(ハウジングまたはフランジ)31,41間に配置されてガスケット厚み方向(図では上下方向)に挟圧(ボルト締め)されると、図4(B)に示す締結状態となる。各図の左側がガスケット11の外側(外周側)すなわち塩水などの密封流体側、右側がガスケット11の内側(内周側)である。また図4(B)に示すように一対の筐体31,41は、図上上側の一方の筐体31と図上下側の他方の筐体41との組み合わせよりなり、互いに対向する平面部31a,41aの間に金属ガスケット11が装着される。筐体31,41は塩水によって腐食しやすいアルミ材質であるが、鉄系などその他の材質であっても良い。筐体31,41間には1枚の金属ガスケット11が装着される。
【0039】
図4(A)に示すように、金属ガスケット11は、平面状の外周部11aと、この外周部11aの内周端部(図では右端部)からガスケット厚み方向の一方(図では上方向)へ向けて立ち上げ形成されたビード部11dと、外周部11aの外周端部(図では左端部)からガスケット厚み方向の他方(図では下方向)へ向けて折り曲げ形成された曲げ加工部11eとを一体に備えている。
【0040】
すなわち金属ガスケット11は、平面状の外周部11aを備え、この外周部11aをガスケット基板部として、外周部11aの内周端部に断面円弧形のフルビード形状のビード部11dが一体成形されている。一方、曲げ加工部11eは外周部11aの外周端部から斜め下方へ向けて斜面状ないしスカート状に一体成形されている。また、曲げ加工部11eは上記第一または第二実施例の曲げ加工部11eと比較して、その長さが短めに形成されている。
【0041】
また、金属ガスケット11は、金属基板(鋼板層)12を備え、この金属基板12の厚み方向両面にそれぞれゴム層(表面ゴム層)13,14が全面に亙って被着されている。したがって金属ガスケット11は、金属基板12の表面にゴム層13,14が被着された金属基板12およびゴム層13,14の組み合わせよりなる積層タイプの金属ガスケット(ラバーコーティングメタルガスケット)とされている。
【0042】
上記構成の金属ガスケット11は、一対の筐体31,41により挟圧される前の初期配置において、ビード部11dが一方の筐体31のほうを向くとともに曲げ加工部11eが他方の筐体41のほうを向くように配置され、その後一対の筐体31,41によってガスケット厚み方向に挟圧されると図4(B)に示す締結状態となり、すなわち断面円弧形のフルビード形状よりなるビード部11dがその高さを減じるように弾性変形するとともにこれに伴って平面状の外周部11aが斜めに弾性変形し、このとき外周部11aは、外周部11aおよびビード部11d間の角部11fを梃子作用の支点として、その外周端部(外周部11aおよび曲げ加工部11e間の角部)11gが上向きに跳ね上がってこの外周端部11gが上面ゴム層13によって上側の一方の筐体31の下面(平面部)31aに接触する。また、曲げ加工部11eは下側の他方の筐体41に接触し、すなわち曲げ加工部11eはその殆どの部位が一対の筐体31,41間に配置された状態とされて、その先端(外周端部)11kが下面ゴム層14によって他方の筐体41の上面(平面部)41aに接触する。したがって一方の筐体31および外周部11a間の間隙c1ならびに他方の筐体41および外周部11a間の間隙c2がそれぞれ上記の接触により閉塞されて、ここに塩水が溜まるような外部開放された間隙が形成されないため、塩水の滞留による筐体31,41の腐食が発生するのを抑制することができる。
【0043】
尚、上記したように金属ガスケット11は、平面状の外周部11aの内側に断面円弧形のフルビード形状のビード部11dを一体成形するとともに外周部11aの外側に曲げ加工部11eを一体成形したものであるので、これが締結されると図4(B)に示したように、ビード部11dの頂部11jおよび外周部11aの外周端部11gがそれぞれ上面ゴム層13によって上側の一方の筐体31の下面31aに密接し、外周部11aおよびビード部11d間の角部11fならびに曲げ加工部11eの先端11kがそれぞれ下面ゴム層14によって下側の他方の筐体41の上面(平面部)41aに密接する。したがって金属ガスケット11の厚み方向両面にそれぞれ2本のシールラインが設定されることになる。
【0044】
また、この第四実施例によると、一方の筐体31および曲げ加工部11e間に新たに、外部開放された間隙c3が形成されるので、ここに塩水が溜まる可能性があるが、この一方の筐体31および曲げ加工部11e間の間隙c3は一方の筐体31および外周部11a間の間隙c1または他方の筐体41および外周部11a間の間隙c2と比較して容積が随分と小さなものである。したがって間隙の容積が減じる範囲において腐食の発生を抑制することができる。
【符号の説明】
【0045】
11 金属ガスケット
11a 外周部
11b 斜面部
11c 内周部
11d ビード部
11e 曲げ加工部
11f 外周部およびビード部間の角部
11g 外周部の外周端部
11h 曲げ加工部の一面
11i ビード部の角部
11j ビード部の頂部
11k 曲げ加工部の先端
12 金属基板
13,14 ゴム層
31,41 筐体
31a,41a 筐体の平面部
41b 筐体の平面縁部
c1,c2,c3 間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の筐体間に配置される金属ガスケットを備え、前記金属ガスケットは、平面状の外周部と、前記外周部の内周端部からガスケット厚み方向の一方へ立ち上げ形成されたビード部と、前記外周部の外周端部からガスケット厚み方向の他方へ折り曲げ形成された曲げ加工部とを備え、前記一対の筐体によって前記金属ガスケットが挟圧される前の初期配置において前記ビード部は一方の筐体のほうを向くとともに前記曲げ加工部は他方の筐体のほうを向くように配置され、
前記一対の筐体によって前記金属ガスケットが挟圧されたとき、前記ビード部はその高さを減じるように弾性変形するとともにこれに伴って前記外周部も弾性変形し、このとき前記外周部はその外周端部が前記一方の筐体に接触し、これにより前記一方の筐体および前記外周部間に塩水が溜まるような間隙を形成せず、前記曲げ加工部は前記他方の筐体に接触し、これにより前記他方の筐体および前記外周部間に塩水が溜まるような間隙を形成しない構造を備えることを特徴とする金属ガスケットによるシール構造。
【請求項2】
請求項1記載のシール構造において、
前記一対の筐体によって前記金属ガスケットが挟圧されたとき、前記曲げ加工部はその厚み方向の一面が前記他方の筐体の平面縁部に接触する構造またはその先端が前記他方の筐体の平面部に接触する構造を備えることを特徴とする金属ガスケットによるシール構造。
【請求項3】
請求項1または2記載のシール構造において、
前記金属ガスケットは金属基板の表面にゴム層を被着した積層タイプの金属ガスケットであって、前記金属基板は前記筐体に接触せず前記ゴム層が前記筐体に接触する構造を備えることを特徴とする金属ガスケットによるシール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−61002(P2013−61002A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199234(P2011−199234)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】