説明

金属ガスケット

【課題】耐久性及び組み付け特性に優れるとともに、積み重ねて梱包しても表面を傷つけ合うことがなく扱いやすい複数の金属基板を積層させてなる金属ガスケットを提供する。
【解決手段】一対の金属基板12,12と、前記一対の金属基板12,12の間に介装される中間板14とを備える金属ガスケット10において、少なくとも一方の一対の金属基板12,12が、中間板14側へ突出する凹部30を有し、凹部30の底部32が溶着されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の金属基板を積層させてなる金属ガスケットに関し、特に、エンジンのシリンダヘッドとシリンダブロックとの接合面に介装される金属ガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンを構成するシリンダブロックとシリンダヘッドの接合部に介装される金属ガスケットは、シリンダ内で発生する高圧の燃焼ガスやシリンダブロックとシリンダヘッドとの間を流通する冷却水や潤滑油等、要求される多様なシール性能を満たすため、複数枚の金属基板を重ね合わせたメタルシリンダヘッドガスケットが用いられている。
【0003】
このような金属ガスケットでは、各金属基板を所定位置に位置決めして固定するため、例えば、ポンチ・ダイを用いた打ち抜きプレス加工により凹部を形成した後にプレス加圧することでカシメ結合したり、あるいは、スポット溶接により積層された複数枚の金属基板を結合している(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0004】
しかしながら、カシメ結合の場合、金属基板を部分的に切断しなければならず、エンジン動作時に発生する振動等によって疲労しやすくなり、この切断部からクラックが発生しやすいという問題がある。また、カシメ結合により金属ガスケット表面には突部が生じるため、梱包する際に金属ガスケットを積み重ねると、該突部が金属ガスケットの表面と接触し傷つけ合ってしまうおそれがあるとともに、かさ張り搬送しづらくなる。しかも、金属ガスケットの表面に突部が生じるため、シリンダブロック及びシリンダヘッドと干渉しない位置にカシメ結合位置を設定しなければならず、金属ガスケットのレイアウトが制約されることになる。
【0005】
また、スポット溶接による結合の場合、金属基板を部分的に切断する必要が無く、金属疲労による劣化は起こしにくくなるが、溶接によって金属ガスケットが反りやすくシリンダブロック及びシリンダヘッドとの組み付け特性が悪化するおそれがあるとともに、金属ガスケット表面に溶接痕が残り表面に突部が生じるため、カシメ結合の場合と同様、シリンダブロック及びシリンダヘッドと干渉しない位置に溶接位置を設定しなければならない問題がある。
【特許文献1】特開平8−42696号
【特許文献2】特開2001−336638号
【特許文献3】特開平8−200504号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、複数枚の積層金属基板を結合してなる金属ガスケットにおいて、金属基板上における結合位置のレイアウトがしやすく、積み重ねて梱包しても表面を傷つけ合うことがなく、しかも、耐久性及び組み付け特性に優れた金属ガスケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の金属ガスケットは、一対の金属基板と、前記一対の金属基板の間に介装される中間板とを備える金属ガスケットにおいて、前記一対の金属基板は、少なくとも一方の金属基板が前記中間板側へ突出する凹部を有し、前記凹部の底部において溶着されていることを特徴とする。
【0008】
上記した本発明において、前記凹部の底部は、前記中間板に設けられた貫通孔を介して対向する金属基板と当接してもよく、また、前記溶着がスポット溶接であってもよい。
【0009】
本発明によれば、一対の金属基板に設けた凹部の底部同士を溶着するため、金属疲労による劣化が生じにくいことに加え、溶着により溶接痕が生じても金属基板表面より突出することが無く、レイアウトの自由度が高まり、また、積み重ねて梱包しても表面を傷つけ合うことがない。しかも、溶着時に生じる歪みを凹部が緩和するため、金属ガスケット自体が反りにくくなり、金属ガスケットの組み付け特性に優れている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、金属基板上における結合位置のレイアウトがしやすく、積み重ねて梱包しても表面を傷つけ合うことがなく、しかも、耐久性及び組み付け特性に優れた金属ガスケットを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
図1は本発明の一実施形態にかかる金属ガスケット10の平面図であり、図2は同金属ガスケット10をシリンダヘッド2とシリンダブロック3との間に介在させた状態における図1のA−A断面に相当する断面図、図3は図1のB−B断面図である。
【0013】
本実施形態の金属ガスケット10は、図1及び図2に示すように、多気筒エンジンにおけるシリンダヘッド2及びシリンダブロック3の接合面に介装され、該接合面をシールするシリンダヘッドガスケットであって、一対のビード板12,12とこれらの間に介装される中間板14を備える。
【0014】
一対のビード板12,12は、例えば、SUS301やSUS304等の金属材料を打ち抜いて必要に応じて折返し加工やビード加工や熱処理等を行った後、表面に耐熱性ゴム等のコーティング層16が後述する凹部30を除いて形成されている。
【0015】
一対のビード板12,12には、シリンダヘッド2及びシリンダブロック3に形成された各シリンダボア4に対応してそれぞれシリンダ孔18が形成され、シリンダヘッド2及びシリンダブロック3に形成された不図示のウォータジャケットに対応した位置に複数の冷却水孔20が設けられ、更に、締め付けボルトが挿通されるボルト孔22と潤滑油を通す潤滑油孔24等が設けられている。
【0016】
ビード板12の各シリンダ孔18のそれぞれ周囲には、中間板14より離隔するように隆起している環状ビード部26が形成されており、これら各環状ビード部26と冷却水孔20を取り囲むように外周ビード部28が形成されている。
【0017】
中間板14は、外周ビード部28の内側の領域に介装される第1中間板14aと、シリンダ孔18の周囲近傍に介装される第2中間板14bと、を備え、例えば、SUS301やSUS304やSECC等からなる金属材料を打ち抜いて所定形状に成形し必要に応じて折返し加工や熱処理や耐熱性ゴムのコーティング処理等を施されている。
【0018】
このような金属ガスケット10を構成する一対のビード板12,12及び中間板14は、一対のビード板12,12に形成された凹部30が溶着されることで積層された状態で結合固定される。
【0019】
詳細には、一対のビード板12,12には互いに対向する位置において中間板14側へ突出し金属ガスケット10の内側に向かって陥没する凹部30がそれぞれ形成されている。
【0020】
図2に示すように、金属ガスケット10の周縁部などの一対のビード板12,12の間に第1中間板14a及び第2中間板14bが介在していない領域に形成された凹部30aでは、凹部30aの底部32が直接当接し、スポット溶接等の溶接法により溶着されている。一方、図3に示すように、金属ガスケット10の周縁部などの一対のビード板12,12の間に第1中間板14a及び第2中間板14bが介在する領域に形成された凹部30bでは、凹部30bに対応して中間板14aに設けられた貫通孔34を介して中間板14bと凹部30bの底部32が当接し、スポット溶接等の溶接法により溶着されている。
【0021】
以上のように、本実施形態に係る金属ガスケット10では、一対のビード板12,12に形成された凹部30の底部32において溶着されているため、溶着時に生じる歪みを凹部30において緩和することができ、金属ガスケット10自体が反りにくくなりシリンダヘッド2及びシリンダブロック3の接合面に介装する際の組み付け特性に優れている。
【0022】
また、凹部30は、金属ガスケット10の内側に向かって陥没しているため、溶着により溶接痕が生じてもシリンダヘッド2及びシリンダブロック3の接合面に影響を及ぼすことがなく溶着位置の自由度が高まるとともに、積み重ねて梱包しても表面を傷つけ合うことがない。
【0023】
なお、本実施形態の金属ガスケット10では、一対のビード板12,12の間に第1中間板14a及び第2中間板14bが介在する領域に形成された凹部30bでは、中間板14aのみに貫通孔34を設け底部32と中間板14bとを一体に溶着したが、本発明はこれに限定されず、例えば、図4(a)に示すように、両中間板14a,14bに貫通孔を設けて、底部32同士を直接当接させ溶着してもよい。
【0024】
また、一対のビード板12,12のそれぞれに凹部30を設けたが、図4(b)(c)に示すように、いずれか一方のビード板12のみに凹部30を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る金属ガスケットの平面図である。
【図2】シリンダヘッドとシリンダブロックとの間に介在させた状態における図1のA−A断面に相当する図である。
【図3】図1のB−B断面図である。
【図4】(a)〜(c)は本発明の変更例に係る金属ガスケットの部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0026】
10…金属ガスケット
12…ビード板
14…中間板
16…コーティング層
18…シリンダ孔
20…冷却水孔
22…ボルト孔
24…潤滑油孔
26…環状ビード部
28…外周ビード部
30…凹部
32…底部
34…貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の金属基板と、前記一対の金属基板の間に介装される中間板とを備える金属ガスケットにおいて、
前記一対の金属基板は、少なくとも一方の金属基板が前記中間板側へ突出する凹部を有し、前記凹部の底部において溶着されていることを特徴とする金属ガスケット。
【請求項2】
前記凹部の底部は、前記中間板に設けられた貫通孔を介して対向する金属基板と当接していることを特徴とする請求項1に記載の金属ガスケット。
【請求項3】
前記溶着がスポット溶接であることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属ガスケット。
【請求項4】
前記一対の金属基板は、シリンダボアに対応するシリンダ孔と該シリンダ孔を取り囲むビードとを有するビード板であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属ガスケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−223917(P2008−223917A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−64208(P2007−64208)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(000228383)日本ガスケット株式会社 (43)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】