説明

金属クリップ

【課題】 全方向からのコジリ荷重に対応できる金属クリップの提供。
【解決手段】 自動車内装材を固定する固定部2を有する基板1と、該基板1の両側縁から車体パネルの取付孔方向に向かって延びる一対の支持脚3と、該各支持脚3の両側においてその先端部から基板1方向に向かって折り返された二対の係止脚4とを備え、該各係止脚4は、車体パネルの取付孔の孔縁に係止する傾斜肩6を有する金属クリップであって、上記二対の係止脚4の板厚端面に、その傾斜肩6と近接して該傾斜肩6の突出方向と直交する方向に突出する突起7を設けることにより、傾斜肩6が係止している方向からのコジリ荷重に対しては、車体パネルの取付孔の孔縁に対する各傾斜肩6の係止により対応し、逆に、これと直交する方向からのコジリ荷重に対しては、車体パネルの取付孔の孔縁に対する各突起7の当接により対応できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ガーニッシュ等の自動車内装材を車体パネルに取り付ける金属クリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種金属クリップは、具体的には図示しないが、全体が金属薄板の打ち抜き加工により一体に成形されて、自動車内装材をネジ止めするネジ受け孔を有する基板と、該基板から車体パネルの取付孔方向に向かってV字状に延びる一対の支持脚と、該各支持脚の両側においてその先端部から逆に基板方向に向かって上外方へ折り返される二対の係止脚とを備え、該各係止脚は、その自由端部をくの字状に折曲して、車体パネルに穿設された取付孔に係止する傾斜肩を形成する構成となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、斯かる従来の金属クリップを用いて、自動車内装材を車体パネルに取り付ける場合には、まず、自動車内装材をタッピングネジを介して基板側にネジ止めした状態を得て、金属クリップの支持脚と係止脚とを車体パネルの取付孔内に差し込めば、二対の係止脚が内側に撓みながら取付孔の孔縁を通過して、各自の傾斜肩を取付孔の孔縁に裏側から弾性的に係止するので、これにより、自動車内装材が車体パネル側にワンタッチで取り付けられる。
【特許文献1】特開2001−206127号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、従来の金属クリップにあっては、車体パネルの板厚に多少のバラツキがあっても、係止脚の傾斜肩でそのバラツキを効果的に吸収できる利点を有するが、反面、自動車内装材の取り付け状態にあって、特に、各係止脚の傾斜肩が係止している方向と直交する方向からのコジリ荷重が加わると、逆に、この各係止脚の傾斜肩が禍して、取付孔の孔縁が当該傾斜肩上を微少に滑ってしまうので、これにより、不用なガタツキが生じる恐れがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、斯かる従来の金属クリップが抱える課題を有効に解決するために開発されたもので、請求項1記載の発明は、自動車内装材を固定する固定部を有する基板と、該基板の両側縁から車体パネルの取付孔方向に向かって延びる一対の支持脚と、該各支持脚の両側においてその先端部から基板方向に向かって折り返された二対の係止脚とを備え、該各係止脚は、車体パネルの取付孔の孔縁に係止する傾斜肩を有する金属クリップであって、上記二対の係止脚の板厚端面に、その傾斜肩と近接して該傾斜肩の突出方向と直交する方向に突出する突起を設けたことを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1を前提として、各係止脚の上端は自由端をなして、支持脚との間には巾方向の空隙が存在することを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1乃至請求項2を前提として、各係止脚の傾斜肩は、車体パネルの取付孔の孔縁と常に当接し、各係止脚の突起は、車体パネルの取付孔の孔縁と小さな隙間を介在させて対峙していることを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3を前提として、各係止脚の突起は、傾斜肩の側方に位置して、傾斜肩と同一向きに傾いていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
依って、請求項1記載の発明にあっては、二対の係止脚の板厚端面に、その傾斜肩と近接して該傾斜肩の突出方向と直交する方向に突出する突起を設けた関係で、傾斜肩が係止している方向からのコジリ荷重に対しては、車体パネルの取付孔の孔縁に対する各傾斜肩の係止により対応し、逆に、これと直交する方向からのコジリ荷重に対しては、車体パネルの取付孔の孔縁に対する各突起の当接により対応できるので、全方向からのコジリ荷重に対して強化されて、不用のガタツキを生じる恐れがなくなる。
【0010】
請求項2記載の発明にあっては、各係止脚の上端は自由端をなして、支持脚との間に空隙を存在させている関係で、突起が車体パネルの取付孔内に差し込まれてその孔縁を乗り越える際には、各係止脚が空隙を利用して突起とは逆方向に撓んで逃げれるので、支持脚と係止脚を車体パネルの取付孔内に差し込む時に、突起が邪魔となることがない。
【0011】
請求項3記載の発明にあっては、各係止脚の傾斜肩は車体パネルの取付孔の孔縁と常に当接し、各係止脚の突起は車体パネルの取付孔の孔縁とは小さな隙間を介在させて対峙している関係で、支持脚と係止脚とを車体パネルの取付孔に差し込んで、係止脚の傾斜肩が取付孔の孔縁に係止した時には、係止脚の突起は必ず取付孔の孔縁を乗り越え済みとなり、組み付け不良の発生を防止できると共に、コジリ荷重が加わった時には、今度は、各突起が取付孔の孔縁に当接して、不用なガタツキが生じることを防止する。
【0012】
請求項4記載の発明にあっては、各係止脚の突起は、傾斜肩の側方に位置して、傾斜肩と同一向きに傾いている関係で、コジリ荷重が加わり、傾斜肩と取付孔の孔縁が微少に滑り、一旦、突起の外側エッジが取付孔の孔縁に当接すると、最早、滑りが生じ難くなり、
不用なガタツキを一層効果的に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、二対の係止脚の板厚端面に、その傾斜肩と近接して該傾斜肩の突出方向と直交する方向に突出する突起を設けることにより、傾斜肩が係止している方向からのコジリ荷重に対しては、車体パネルの取付孔の孔縁に対する各傾斜肩の係止により対応し、逆に、これと直交する方向からのコジリ荷重に対しては、車体パネルの取付孔の孔縁に対する各突起の当接により対応して、全方向からのコジリ荷重に対して強化させ、不用のガタツキが生じることを有効に防止せんとするものである。
【実施例】
【0014】
以下、本発明を図示する好適な実施例に基づいて詳述すれば、該実施例に係る金属クリップも、ガーニッシュ等の自動車内装材を車体パネルに取り付けることを目的として開発されたもので、全体は、従来のものと同様に、金属薄板の打ち抜き加工により一体に成形されている。
【0015】
そして、当該金属クリップは、図1乃至図4に示す如く、自動車内装材をネジ止めする固定部たるネジ受け孔2を有する基板1と、該基板1の両側縁から車体パネルの取付孔方向に向かってV字状に延びる一対の支持脚3と、該各支持脚3の両側においてその先端部から逆に基板1方向に向かって上外方に折り返された二対の係止脚4と、基板1の両端から支持脚3と同一方向に延びる短寸な一対のガタ防止片5とを備えるものである。
【0016】
具体的には、一対の支持脚3は、基板1の対向する両側縁中央から連続して延設されるものであるが、基板1寄りの部分3aは車体パネル面に対して直交する角度をもって直線状に垂下し、先端部3b側は徐々に距離を狭めて接触する構成となっている。
【0017】
二対の係止脚4は、上記各支持脚3の先端部両側縁から上外方に傾斜する状態に連続して延設されるものであるが、その自由端部をくの字状に折曲して、車体パネルの取付孔の孔縁に弾性的に係止する傾斜肩6を突出形成すると共に、当該各傾斜肩6の側方の板厚端面に傾斜肩6の突出方向と直交する方向に突出する突起7を個々に設ける構成となっている。従って、基板1の対向する各側においては、1本の支持脚3が中央に位置し、2本の係止脚4が該支持脚3の両側に巾方向の空隙8を介在させて位置することとなる。
【0018】
尚、上記の各突起7は、対応する傾斜肩6の側方に位置している関係で、当該傾斜肩6と同一向きに傾くこととなるので、コジリ荷重が加わると、その外側エッジが車体パネルの取付孔の孔縁に当接することとなるが、支持脚3と係止脚4とが車体パネルの取付孔内に差し込まれた状態にあっては、係止脚4の傾斜肩6は同取付孔の孔縁と常に当接するが、係止脚4の突起7は車体パネルの取付孔とは小さな隙間を介在させて対峙することとなる。
【0019】
一対のガタ防止片5は、支持脚3が延設されていない基板1の対向する両端縁中央から車体パネル面に対して直交する角度をもって垂下し、上記した支持脚3の基板1寄りの直線状部分3aと共働して、車体パネルの取付孔の4辺に接触することにより、クリップ自体のガタツキ防止を補助すると同時に、支持脚3や係止脚4が撓んで変形することを防止せんとするものである。
【0020】
依って、斯かる構成の金属クリップを用いて、自動車内装材11を車体パネル13に取り付ける場合には、まず、自動車内装材11に予め穿設されている通孔12と金属クリップのネジ受け孔2とを一致させる状態を得て、自動車内装材11の通孔12からタッピングネジ15を挿入しながら、当該タッピングネジ15の先端部を上記ネジ受け孔2に螺合させると、これにより、図5に示す如く、金属クリップが自動車内装材11側に先付けされる。
【0021】
従って、後は、上記した先付け状態のまま、金属クリップ側の支持脚3と係止脚4とを車体パネル13に予め穿設されている角孔状の取付孔14内に差し込めば、図6に示す如く、二対の係止脚4が内側に撓みながら取付孔14の孔縁を通過して、各自の傾斜肩6を取付孔14の孔縁に弾性的に係止するので、これにより、自動車内装材11が車体パネル13側にワンタッチで取り付けられることとなる。
【0022】
尚、この取付孔14内への差し込みに際しては、各係止脚4の上端は自由端をなして、支持脚3との間に空隙8を存在させている関係で、突起7が車体パネル13の取付孔14内に差し込まれてその孔縁を乗り越える際には、各係止脚4が当該空隙8を利用して突起7とは逆方向に撓んで逃げれるので、支持脚3と係止脚4を車体パネル13の取付孔14に差し込む時に、4個の突起7が邪魔となることがない。又、この状態にあっては、各突起7は、車体パネル13の取付孔14の孔縁と小さな隙間を介在させて対峙することとなる。
【0023】
そして、斯かる自動車内装材11の取り付け状態において、今仮に、図7示す如く、傾斜肩6が係止している方向からのコジリ荷重P1が加わった場合には、車体パネル13の取付孔14の孔縁に対する4個の傾斜肩6の係止により対応し、逆に、これと直交する方向からのコジリ荷重P2が加わった場合には、車体パネル13の取付孔14の孔縁と対峙する4個の突起7の孔縁に対する当接により対応できるので、全方向からのコジリ荷重P1・P2に対して強化されて、不用のガタツキを生じる恐れがなくなる。
【0024】
特に、後者の場合には、コジリ荷重P2が加わり、傾斜肩6と取付孔14の孔縁が微少に滑り、一旦、突起7の外側エッジが取付孔14の孔縁に当接すると、最早、滑りが生じ難くなり、不用なガタツキを更に一層効果的に防止できることとなる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明に係る金属クリップは、全方向のコジリ荷重に対して強化されて、金属クリップ自体が不用にガタツクことを有効に防止できるので、ガーニッシュ等の自動車内装材を車体パネルに取り付ける場合には、頗る好都合なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(A)は本発明の実施例に係る金属クリップを上面側から示す斜視図、(B)は同金属クリップを下面側から示す斜視図である。
【図2】(A)は同金属クリップを示す正面図、(B)は同金属クリップを示す側面図である。
【図3】(A)は図1AのA−A線端面図、(B)は図1AのB−B線端面図である。
【図4】同金属クリップの展開状態を示す平面図である。
【図5】自動車内装材に同金属クリップを先付けした状態を示す断面図である。
【図6】自動車内装材を同金属クリップを用いて車体パネルに取り付けた状態を示す断面図である。
【図7】コジリ荷重との関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0027】
1 基板
2 ネジ受け孔(固定部)
3 支持脚
3a 直線状部分
3b 先端部
4 係止脚
5 ガタ防止片
6 傾斜肩
7 突起
8 空隙
11 自動車内装材
12 通孔
13 車体パネル
14 取付孔
15 タッピングネジ
P1 コジリ荷重
P2 コジリ荷重

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車内装材を固定する固定部を有する基板と、該基板の両側縁から車体パネルの取付孔方向に向かって延びる一対の支持脚と、該各支持脚の両側においてその先端部から基板方向に向かって折り返された二対の係止脚とを備え、該各係止脚は、車体パネルの取付孔の孔縁に係止する傾斜肩を有する金属クリップであって、上記二対の係止脚の板厚端面に、その傾斜肩と近接して該傾斜肩の突出方向と直交する方向に突出する突起を設けたことを特徴とする金属クリップ。
【請求項2】
各係止脚の上端は自由端をなして、支持脚との間には巾方向の空隙が存在することを特徴とする請求項1記載の金属クリップ。
【請求項3】
各係止脚の傾斜肩は、車体パネルの取付孔の孔縁と常に当接し、各係止脚の突起は、車体パネルの取付孔の孔縁と小さな隙間を介在させて対峙していることを特徴とする請求項1乃至請求項2のいずれかに記載の金属クリップ。
【請求項4】
各係止脚の突起は、傾斜肩の側方に位置して、傾斜肩と同一向きに傾いていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の金属クリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−161872(P2006−161872A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−351002(P2004−351002)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(000124096)株式会社パイオラックス (331)
【Fターム(参考)】