説明

金属コロイド溶液及びそれを用いた塗料

【課題】高い濃度の金属コロイド粒子を含み、高い導電性等を付与することができる、優れた分散安定性を長期間保持することができる金属コロイド溶液を提供する。
【解決手段】メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、メルカプトエタノールから選ばれる少なくとも一種の硫黄化合物を粒子表面に有する金属コロイド粒子と分散媒とを少なくとも含み、前記金属コロイド粒子を1重量%以上含み、溶液のpHが8〜14の範囲であることを特徴とする金属コロイド溶液である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属コロイド粒子を分散している溶液及びその金属コロイド溶液を用いた塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
ブラウン管、液晶ディスプレイ等の表示機器の表示面、クリーンルームの窓材、電子部品の包装材として用いられるプラスチックスやガラス、あるいはオーバーヘッドディスプレイや写真に用いられるフィルムのような各種の透明性基材は、一般的に絶縁体であり静電気を帯び易い。このため、基材表面に埃やゴミが付着し易く、電子機器等は誤作動を引き起こす場合もある。また、近年パーソナルコンピューターやテレビの画面から発生する電磁波の人体に与える影響が問題になっている。
【0003】
そこで、帯電防止や電磁波遮蔽のために、導電性材料を配合したコーティング剤や塗料を基材に塗布したり、基材と導電性材料を配合して成形したりすることが、通常行われており、このような導電性材料としては金属粒子が一般に用いられている。金属粒子として、特に金属コロイド粒子と呼ばれる平均粒子径が1〜100nm程度のものは、可視光線を透過する性質を有しているので、前述のような透明性基材に用いるのに適しており、高い導電性を要求される電磁波遮蔽には最適の導電性材料である。このような金属コロイド粒子は分散媒に分散させ金属コロイド溶液の形態として用いるのが一般的である。しかしながら、金属コロイド粒子は粒子径が微細であることに起因し、表面エネルギーが大きいため凝集し易く、水や有機溶剤等の分散媒中で安定に分散させることが困難であった。このため、保護コロイドと呼ばれる安定化剤で金属コロイド粒子の表面を保護し、分散させる方法が知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】American Journal of Science,Vol.37,P476−491,1889
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−195505号公報
【0006】
例えば、American Journal of Science,Vol.37,P476−491,1889,M Carey Leaには、金属塩の水溶液に、保護コロイドとしてクエン酸またはその塩を加え、第一鉄イオン等の還元剤を添加した後、脱塩、濃縮することによって、金属コロイド溶液を得る方法が開示されている。この方法では金属コロイド粒子を安定して分散させるために、多量の保護コロイドが必要となり、金属コロイド粒子の導電性を低下させるという問題があった。また、保護コロイドによって分散安定化されているので、金属コロイド粒子を再凝集化させ難く、金属コロイド溶液から塩類を除去したり、金属コロイド粒子を濃縮するには、遠心分離、限外濾過、脱イオン等の操作を行うが、そのための大掛かりな装置が必要となり、大量生産には不向きであった。
【0007】
特開平10−195505号公報には金属塩とアミンとを含む溶液を還元し、この溶液にチオールを加えることによって表面がチオールで保護された金属コロイド粒子粉体を得る方法が開示されている。しかし、この方法では、金属コロイド粒子を含む溶液をロータリーエバポレーターで濃縮して金属コロイド粒子を粉体として分離するので、脱塩や生産性に係わる問題点は解決されておらず、充分に分散した金属コロイド溶液とすることが困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、従来の金属コロイド溶液は分散安定性や工業的な濃縮技術の問題により、金属コロイド粒子の濃度を1重量%以上にできなかった。そこで、本発明は、高い導電性等を付与することができる、優れた分散安定性を長期間保持する金属コロイド溶液並びにその金属コロイド溶液を用いた塗料を提供するものである。また、遠心分離機やロータリーエバポレーターを用いることなく、金属コロイド粒子の濃度を適宜設定することができる、金属コロイド溶液の製造方法を工業的、経済的に有利に提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、低分子量の硫黄化合物を保護コロイドとして用い、pHをアルカリ性の領域に調整したものは、金属コロイド粒子が長期間安定に分散した金属コロイド溶液であること、また、低分子量の硫黄化合物は少量でも優れた保護コロイド作用を有し、熱分解または揮発し易いので、基材上に固定する際に除去し易く、優れた導電性等を付与することができることなどを見出した。そして、このような金属コロイド溶液を製造するには、低分子量の硫黄化合物を粒子表面に有する金属コロイド粒子を溶液中で製造した後、溶液のpHを酸性の領域に調整すると金属コロイド粒子が凝集するため、塩類や溶媒を容易に除去することができること、凝集した金属コロイド粒子は、低分子量の硫黄化合物を粒子表面に有するため、溶液のpHをアルカリ性の領域に調整することにより、容易に再分散し、分散安定性に優れた金属コロイド溶液が得られることなどを見出した。さらに、金属コロイド粒子を基材に固定するには、前記の金属コロイド溶液を少なくとも含む第一液と硬化性樹脂成分を含む第二液とからなる二液性塗料とし、第一液の分散媒が水が主成分である場合、高比誘電率で高沸点の非水溶媒を添加すると、塗膜に優れた透明性と導電性等とを付与することができることなどを見出した。これらの知見に基づきさらに検討して本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は低分子量の硫黄化合物を粒子表面に有する金属コロイド粒子と分散媒とを少なくとも含み、前記金属コロイド粒子を1重量%以上含み、溶液のpHが8〜14の範囲であることを特徴とする金属コロイド溶液であり、低分子量の硫黄化合物を粒子表面に有する金属コロイド粒子を溶液中で生成させる第一の工程、溶液のpHを5以下にして金属コロイド粒子を凝集させ、濾別する第二の工程、濾別した金属コロイド粒子をpHが8〜14の範囲の分散媒中に分散させる第三の工程を含んでいることを特徴とする金属コロイド溶液の製造方法である。また本発明は、前記金属コロイドと硬化性樹脂成分を少なくとも含んでいることを特徴とする塗料であり、好ましくは前記の金属コロイド溶液を少なくとも含んでいる第一液、硬化性樹脂成分を少なくとも含んでいる第二液からなることを特徴とする二液性塗料である。さらに本発明は、かかる二液性塗料を用いた塗膜の形成方法及びかかる塗膜を有する物品の製造方法にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の金属コロイド溶液は金属コロイド粒子が分散した溶液であり、保護コロイドとして低分子量の硫黄化合物を粒子表面に有する金属コロイド粒子と分散媒とを少なくとも含み、前記金属コロイド粒子を1重量%以上、好ましくは2〜50重量%、更に好ましくは5〜50重量%含み、溶液のpHが8〜14、好ましくは8〜13、更に好ましくは8〜12のものである。従来の金属コロイド溶液は分散安定性や工業的濃縮技術の問題により、金属コロイド粒子の濃度を最大でも1重量%にできず、これを用いる組成物は配合や特性の設計が著しく制限された。
【0012】
金属コロイド粒子を構成する金属には特に制限は無いが、周期表8族(鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金)及び1B族(銅、銀、金)からなる金属群から選ばれる少なくとも一種が多くの用途に用いることができ、特に、金、銀、白金、パラジウム、銅が導電性等に優れているのでより好ましい。さらに、金属コロイド粒子は、上記金属の二種以上からなる合金であってもよく、二種以上の金属コロイド粒子を混合して用いてもよい。金属コロイド粒子は平均粒子径が1〜100nm程度のものであり、優れた透明性を有することから5〜50nmの範囲の平均粒子径を有する金属コロイド粒子が好ましい。分散媒としては水溶媒やアルコール等の有機溶媒の一種または二種以上を用いることができる。金属コロイド溶液のpHが8〜14の範囲であれば、金属コロイド粒子が高濃度で安定して分散するので好ましい。金属コロイド溶液のpHが8より低いと長期間安定に分散した金属コロイド溶液が得られない。pHを13より低くするとpH調整剤として用いる塩基性物質が導電性に影響を与え難いので好ましい。
【0013】
前記の金属コロイド粒子の表面には保護コロイドとして低分子量の硫黄化合物を含有させる。その含有量は、金属コロイド粒子1重量部に対して0.05〜1.5重量部の範囲であれば、保護コロイドとしての安定化効果が十分に得られるので好ましい範囲である。低分子量の硫黄化合物は少量の配合量でも保護コロイド作用に優れている。また、熱硬化型組成物に配合した場合、250℃より低い温度で分解または揮発し易いので、基材に大きな熱負荷をかけずに除去することができる。
【0014】
低分子量の硫黄化合物とは具体的には分子量が34〜200の範囲のものがより好ましく、分子量48〜180の範囲のものがもっとも好ましい。このような化合物として、例えばメルカプト酢酸(分子量92、沸点110〜112℃)、メルカプトプロピオン酸(分子量106、沸点111〜112℃/2.0×10Pa)、チオジプロピオン酸(分子量178)、メルカプトコハク酸(分子量150)、メルカプトエタノール(分子量78、沸点157℃/99.7×10Pa)、チオジエチレングリコール(分子量122、沸点164〜166℃/2.7×10Pa)、チオジグリコール酸(分子量150)、アミノエチルメルカプタン(分子量77)、チオジエチルアミン(分子量120、231〜233℃/101.0×10Pa)、チオウレタン(分子量105、150℃で分解)、チオ炭酸(分子量110)、チオ尿素(分子量76)、チオフェノール(分子量110、沸点169℃)、チオホルムアミド(分子量61)、硫化水素(分子量34、沸点−61℃)、メチルメルカプタン(分子量48、沸点6℃)、エチルメルカプタン(分子量62、沸点35℃)、チオ酢酸(分子量76、沸点87℃)、プロピルメルカプタン(分子量72、沸点68℃)、イソプロピルメルカプタン(分子量76、沸点58℃)、n−ブチルメルカプタン(分子量90、沸点98℃)、アリルメルカプタン(分子量74、沸点67〜69℃)、ベンジルメルカプタン(分子量124、沸点195℃)及びこれらの塩や誘導体などが挙げられ、これらの硫黄化合物から選ばれる少なくとも一種を用いることができる。これらの硫黄化合物の中でもチオール系(すなわち、脂肪族炭化水素の水素原子をSH基で置換した化合物であって、一般式RSHで表される化合物である(Rはアルキル基等)。)のものが金属コロイド粒子との親和性が高く、保護コロイド作用に優れているので好ましく、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、メルカプトエタノールであれば特に好ましい。
【0015】
また、本発明は金属コロイド溶液の製造方法であり、低分子量の硫黄化合物を粒子表面に有する金属コロイド粒子を溶液中で生成させる第一の工程、溶液の
pHを5以下にして金属コロイド粒子を凝集させ、濾別する第二の工程、濾別した金属コロイド粒子をpHが8〜14の範囲の分散媒中に分散させる第三の工程を含んでいる金属コロイド溶液の製造方法である。
【0016】
第一の工程は、低分子量の硫黄化合物を粒子表面に有する金属コロイド粒子を溶液中で生成させる工程であって、そのためには、低分子量の硫黄化合物の存在下、金属コロイド粒子を構成する金属を含む化合物を含む溶液のpHを8〜14の範囲に調整し、金属化合物を還元したり、あるいは、前記金属化合物を含んでいる溶液のpHが8〜14の範囲に調整して、低分子量の硫黄化合物を添加し、金属化合物を還元する。溶液のpHが8よりも低いと金属化合物の一部が沈降し、還元されないで残留する。金属化合物を含んでいる溶液のpHは8〜13の範囲が好ましく、8〜12の範囲がより好ましい。
【0017】
低分子量の硫黄化合物としては前述の硫黄化合物を用いることができ、具体的には分子量が34〜200の範囲のものが好ましく、分子量48〜180の範囲のものがより好ましく、チオール系であれば更に好ましく、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、メルカプトエタノールから選ばれる少なくとも一種を用いるのが最も好ましい。硫黄化合物の使用量は、金属コロイド粒子1重量部に対して0.05〜1.5重量部の範囲用いるのが好ましい。低分子量の硫黄化合物が存在しない状況で金属化合物の還元反応を行うと、生成した金属コロイド粒子が直ちに沈降し、その後に硫黄化合物を添加しても金属コロイド粒子の表面が十分に保護されないので再分散が困難になるため、硫黄化合物の存在下で金属化合物を還元する必要がある。
【0018】
また、金属化合物としては、還元されて金属コロイド粒子となる金属の化合物であって、例えば金属塩化物、金属硫酸塩、金属硝酸塩、金属炭酸塩等を用いることができる。金属化合物の溶液中の濃度は、化合物が溶解する範囲であれば特に制約は無いが、工業的には5ミリモル/l以上とするのが好ましい。金属化合物を溶解する溶媒としては水溶媒やアルコール等の有機溶媒の一種または二種以上を用いることができる。水性の金属コロイド溶液を製造するには、金属化合物が水溶性のものが好ましいが、水に難溶であっても、金属成分と可溶性の錯体を形成する塩素イオンやアンモニア等を含む化合物を加えて用いることもできる。
【0019】
還元反応は、前記の金属化合物の溶液に還元剤を添加したり、光照射したりして行うことができる。還元剤としては、例えば亜リン酸、次亜リン酸、クエン酸およびそれらの塩、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン、アルデヒド類、アミン類、アルコール類等を挙げることができ、特に限定されない。還元反応は任意の温度で行うことができるが、水溶液中で行うには5〜90℃の温度であれば反応が進み易いので好ましい。還元剤の添加量は、反応を十分に進行させ、また、生成した金属コロイド粒子を安定して分散させるには金属化合物1モルに対して、0.2〜50モルの範囲であることが好ましい。光照射による方法は一般に光デポジション法といわれる方法であり、金属化合物に適当な波長の光を照射して金属に還元する方法である。
【0020】
次の第二の工程は、前記の第一の工程で得られた金属コロイド粒子を含んだ溶液のpHを酸性化合物を用いるなどして5以下、好ましくは0〜5の範囲にして、金属コロイド粒子を凝集させた後、濾別する工程である。低分子量の硫黄化合物を保護コロイドとして金属コロイド粒子表面に有しているため、溶液のpHを5以下にすることで、金属コロイド粒子を容易に凝集させることができ、吸引濾過、沈降分離等の比較的簡単な操作で金属コロイド粒子を濾別できる。また、濾別した金属コロイド粒子は通常の方法を用いて洗浄することができ、可溶性塩類を十分に除去できるので、導電性等の特性上好ましいものとなる。
【0021】
次の第三の工程は、濾別して、必要に応じて洗浄等の工程を経た金属コロイド粒子をpHが8〜14の範囲、好ましくは8〜13の範囲、より好ましくは8〜12の範囲の分散媒中に分散させる工程である。表面に低分子量の硫黄化合物を有しているため、金属コロイド粒子はpHを8〜14の範囲の分散媒に調製すると、容易に再分散する。金属コロイド粒子は通常湿ケーキとして濾別されるので、この湿ケーキに分散媒を加え、撹拌して再分散させるが、必要に応じて、ラインミル、コロイドミル等の分散機を用いてもよい。金属コロイド粒子を分散させる分散媒としては水溶媒やアルコール等の有機溶媒の一種または二種以上を用いることができる。本発明では再分散させる際に、金属コロイド粒子の濃度を任意に設定でき、濃縮などしなくても、例えば金属コロイド粒子を1〜50重量%含む高濃度の金属コロイド溶液が得られる。
【0022】
以上に述べた本発明では、pH調整に用いる塩基性化合物としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア等のアンモニウム化合物、アミン類等が挙げられ、酸性化合物としては、例えば塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸が挙げられ、いずれも特に限定されない。本発明の金属コロイド溶液は導電材料として有用であり、また抗菌剤、着色剤、触媒等に用いることもできる。
【0023】
また、本発明は、前記の金属コロイド溶液と硬化性樹脂成分を少なくとも含んでいる塗料に関し、金属コロイド溶液を、アルキルシリケート、アルキルチタネート等の無機系樹脂やアクリル、アルキド、ポリエステル、ウレタン、エポキシ、メラミン等の有機系樹脂等の硬化性樹脂成分に配合すると、金属コロイド粒子が有するこれらの機能を付与するための塗料とすることができる。硬化性樹脂成分としては常温硬化型、焼付硬化型、紫外線硬化型等いずれも用いることができ、特に低温の焼付硬化型であれば、基材に熱負荷を掛けないような低い温度の加熱により、保護コロイドとして用いる低分子量の硫黄化合物を分解または揮発させることができるので好ましい。硬化性樹脂成分の配合量は適宜設定することができる。また、金属コロイド粒子を再分散させる分散媒を適宜選択することで、有機溶剤系、水系のいずれにも対応できる。本発明では、高濃度の金属コロイド溶液を製造することができるので、これを用いた塗料は固形分の濃度が高く、塗膜の製膜性等に優れたものとなる。このような塗料はセラミックス、金属等や、特にガラス、プラスチックス、フィルム等の透明性基材に金属コロイド粒子を固定して導電性材料、帯電防止材、電磁波遮蔽材、抗菌材、着色材、触媒等としても用いることができる。
【0024】
また、本発明の塗料は、好ましくは、前記の金属コロイド溶液を少なくとも含んでいる第一液、硬化性樹脂成分を少なくとも含んでいる第二液からなる二液性塗料である。二液性塗料とすると、第一液には硬化性樹脂成分を含まないため、第一液を塗布した後、第二液を塗布して、硬化させると、金属コロイド粒子と基材との接点に絶縁性の硬化性樹脂成分が介在せず、電磁波遮蔽用に好適な特に高い導電性が得られるため、導電性塗料として特に有用である。このような二液性塗料の第一液の分散媒は通常水を主成分としている。第一液の分散媒として水を使用する場合には、高比誘電率で高沸点の非水溶媒を配合しておくことが好ましい。本発明の金属コロイド溶液は保護コロイドとして低分子量の硫黄化合物を用いるので、立体障害作用が生じ難く、加熱・乾燥して硬化するまでに、水の表面張力が大きいので、水が蒸発する際に、金属コロイド粒子が凝集し易いが、高比誘電率で高沸点の非水溶媒を配合することで、金属コロイドの凝集を抑え、所望の導電性や透明性が得られる。なお、界面活性剤等の一般の分散剤は、金属コロイド粒子の表面に強く吸着され、導電性を阻害する要因となる場合があるので、目的によっては、使用しない方が好ましい。さらに、この非水溶媒の表面張力が小さければ、塗膜に色ムラが生じ難く、シワやチヂミの少ない平滑性が優れたものとなるのでより好ましい。
【0025】
具体的には比誘電率としては35以上を有するものが好ましく、35〜200の範囲のものがより好ましい。沸点としては100℃以上の温度の沸点を有する化合物が好ましく、100℃〜250℃程度の範囲のものがより好ましい。このような非水溶媒としてはN−メチルホルムアミド(比誘電率190、沸点197℃)、ジメチルスルホキシド(比誘電率45、沸点189℃)、エチレングリコール(比誘電率38、沸点226℃)、4−ブチロラクトン(比誘電率39、沸点204℃)、アセトアミド(比誘電率65、沸点222℃)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(比誘電率38、沸点226℃)、ホルムアミド(比誘電率111、沸点210℃)、N−メチルアセトアミド(比誘電率175、沸点205℃)、フルフラール(比誘電率40、沸点161℃)等が挙げられ、これらの一種または二種以上を用いることができる。また、非水溶媒の表面張力としては50×10−3N/m以下の表面張力を有するものが更に好ましく、10×10−3〜50×10−3N/mの範囲のものがより好ましい。このようなものとしてはN−メチルホルムアミド(表面張力38×10−3N/m)、ジメチルスルホキシド(表面張力43×10−3N/m)、エチレングリコール(表面張力48×10−3N/m)、4−ブチロラクトン(表面張力44×10−3N/m)、アセトアミド(表面張力39×10−3N/m)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(表面張力41×10−3N/m)等が挙げられる。非水溶媒の含有量は、第一液に含まれる水100重量部に対して15〜900重量部の範囲が好ましく、更には15〜50重量部がより好ましい。
【0026】
本発明の二液性塗料を構成する第二液には硬化性樹脂成分を少なくとも配合する。硬化性樹脂成分は、アルキルシリケート、アルキルチタネート等の無機系樹脂やアクリル、アルキド、ポリエステル、ウレタン、エポキシ、メラミン等の有機系樹脂を用いることができ、常温硬化型、焼付硬化型、紫外線硬化型等いずれでもよい。特に低温の焼付硬化型であれば、基材に熱負荷を掛けないような低い温度の加熱により、保護コロイドとして用いる低分子量の硫黄化合物を分解または蒸発させることができるので好ましい。硬化性樹脂成分の配合量は適宜設定することができる。
【0027】
第一液や第二液には、前記の成分以外に、コロイダルシリカ、微粒子酸化チタン、微粒子酸化スズ等の充填剤、種々の添加剤、種々の着色剤など、アルコール類、ケトン類、エステル類、芳香族類、脂肪族類等の溶媒や種々の分散剤などを含んでいてもよい。この二液性塗料は、ガラス、プラスチックス、フィルム等の基材の導電性付与材、帯電防止材、電磁波遮蔽材等として用いることができる。
【0028】
本発明の二液性塗料を用いて塗膜を形成するには、第一液を基材に塗布し金属コロイド粒子を含む層を形成させた後、その上に第二液を塗布し硬化性樹脂成分を硬化させる。より具体的には、まず、低分子量の硫黄化合物を粒子表面に有する金属コロイド粒子を配合した第一液を基材にスピンコート、ディップコート、バーコート、スプレーコート等の方法で塗布し、基材の表面に金属コロイド粒子を含む層を形成させた後、第二液を同様の方法で塗布し、加熱・乾燥するなどして硬化性樹脂成分を硬化させ金属コロイド粒子を固定して、基材の表面に塗膜を形成する。このようにして得られた塗膜は、導電性、帯電防止性、電磁波遮蔽性等を有し、例えば表面抵抗を単位面積当たりの抵抗値で表して好ましくは1×10Ω/Square以下という優れた導電性を有するものである。第一液及び第二液の塗布時の膜厚には特に制限は無いが、作業性やレベリング性を考慮すると、いずれも0.01〜10μmの範囲とするのが好ましい。このような形成方法を用いて、金属コロイド粒子を含有した塗膜を表面に有する物品を製造することができる。物品としては種々のものを対象とすることができ、例えば、プラスチック製品、フィルム状製品、紙製品、ガラス製品、セラミック製品などであり、具体的には、ブラウン管、液晶ディスプレイ等の表示機器、クリーンルーム等の窓材、電子部品等の包装材、オーバーヘッドディスプレイや写真等に用いられるフィルムなどが挙げられる。
実施例
【0029】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。
【0030】
[実施例1]
1.第一の工程
50ミリモル/lの濃度の硝酸銀水溶液1000mlを撹拌しながら、低分子量の硫黄化合物としてメルカプト酢酸3.0gを添加した後、アンモニア水(26%)にて水溶液のpHを10.0に調整した。室温下、この水溶液に還元剤として400ミリモル/lの濃度の水素化ホウ素ナトリウム水溶液50mlを急速に添加することにより還元反応を行いメルカプト酢酸を粒子表面に有する銀コロイド粒子を溶液中で生成させた。
2.第二の工程
第一の工程で得られた溶液を硝酸(20%)を用いてpHを3.0に調整し、銀コロイド粒子を沈降させた後、真空濾過器で濾別し、濾液の電気伝導度が10.0μS/cm以下になるまで水洗して、銀コロイド粒子の湿ケーキを得た。
3.第三の工程
第二の工程で濾別した銀コロイド粒子の湿ケーキを濃度が10%になるように水に添加し、撹拌しながらアンモニア水(26%)にてpHを9.0に調整して再分散させ、本発明の銀コロイド溶液(試料A)を得た。
【0031】
[実施例2]
実施例1の第一の工程において、還元剤として用いた水素化ホウ素ナトリウム水溶液を800ミリモル/lの濃度のヒドラジン水溶液50mlに代えたこと以外は実施例1と同様にして本発明の銀コロイド溶液(試料B)を得た。
【0032】
[実施例3]
実施例1の第一の工程において、低分子量の硫黄化合物として用いたメルカプト酢酸を3−メルカプトプロピオン酸3.0gに代えたこと以外は実施例1と同様にして本発明の銀コロイド溶液(試料C)を得た。
【0033】
[実施例4]
実施例1の第一の工程において、低分子量の硫黄化合物として用いたメルカプト酢酸を2−メルカプトエタノール3.0gに代えたこと以外は実施例1と同様にして本発明の銀コロイド溶液(試料D)を得た。
【0034】
[実施例5]
実施例1の第三の工程において、pH調整剤の塩基性物質として用いたアンモニア水を2−アミノエタノールに代えたこと以外は実施例1と同様にして本発明の銀コロイド溶液(試料E)を得た。
【0035】
[実施例6]
実施例1の第三の工程において、pH調整剤の塩基性物質として用いたアンモニア水を水酸化ナトリウム水溶液(10%)に代えたこと以外は実施例1と同様にして本発明の銀コロイド溶液(試料F)を得た。
【0036】
[実施例7]
実施例1の第三の工程において、分散媒として用いた水をエタノール(25%)と水の混合液に代えたこと以外は実施例1と同様にして本発明の銀コロイド溶液(試料G)を得た。
【0037】
[実施例8]
実施例1の第三の工程において、分散媒として用いた水を2−プロパノール(25%)と水の混合液に代えたこと以外は実施例1と同様にして本発明の銀コロイド溶液(試料H)を得た。
【0038】
[実施例9]
1.第一の工程
50ミリモル/lの濃度の塩化パラジウム水溶液1000mlを撹拌しながら、低分子量の硫黄化合物として3−メルカプトプロピオン酸3.0gを添加した後、アンモニア水(26%)にて水溶液のpHを10.0に調整した。室温下、この水溶液に還元剤として800ミリモル/lの濃度のヒドラジン水溶液50mlを急速に添加することにより還元反応を行い3−メルカプトプロピオン酸を粒子表面に有するパラジウムコロイド粒子を溶液中で生成させた。尚、塩化パラジウム水溶液は、塩化パラジウム1重量部に対し、0.8重量部の塩化ナトリウムを加えて水に溶解させた。
2.第二の工程
第一の工程で得られた溶液を塩酸(20%)を用いてpHを3.0に調整し、パラジウムコロイド粒子を沈降させた後、真空濾過器で濾別し、濾液の電気伝導度が10.0μS/cm以下になるまで水洗して、パラジウムコロイド粒子の湿ケーキを得た。
3.第三の工程
第二の工程で濾別したパラジウムコロイド粒子の湿ケーキを、濃度が10%になるように水に添加し、撹拌しながらアンモニア水(26%)にてpHを9.0に調整して再分散させ、本発明のパラジウムコロイド溶液(試料I)を得た。
【0039】
[実施例10]
1.第一の工程
25ミリモル/lの濃度の塩化白金酸水溶液1000mlを撹拌しながら、低分子量の硫黄化合物として3−メルカプトプロピオン酸1.5gを添加した後、アンモニア水(26%)にて水溶液のpHを10.0に調整した。室温下、この水溶液に還元剤として1600ミリモル/lの濃度のヒドラジン水溶液50mlを急速に添加することにより還元反応を行い3−メルカプトプロピオン酸を粒子表面に有する白金コロイド粒子を溶液中で生成させた。
2.第二の工程
第一の工程で得られた溶液を塩酸(20%)を用いてpHを3.0に調整し、白金コロイド粒子を沈降させた後、真空濾過器で濾別し、濾液の電気伝導度が10.0μS/cm以下になるまで水洗して、白金コロイド粒子の湿ケーキを得た。
3.第三の工程
第二の工程で濾別した白金コロイド粒子の湿ケーキを、濃度が10%になるように水に添加し、撹拌しながらアンモニア水(26%)にてpHを9.0に調整して再分散させ、本発明の白金コロイド溶液(試料J)を得た。
【0040】
[実施例11]
1.第一の工程
25ミリモル/lの濃度の塩化金酸水溶液1000mlを撹拌しながら、低分子量の硫黄化合物として3−メルカプトプロピオン酸1.5gを添加した後、アンモニア水(26%)にて水溶液のpHを10.0に調整した。室温下、この水溶液に還元剤として1200ミリモル/lの濃度のヒドラジン水溶液50mlを急速に添加することにより還元反応を行い3−メルカプトプロピオン酸を粒子表面に有する金コロイド粒子を溶液中で生成させた。
2.第二の工程
第一の工程で得られた溶液を塩酸(20%)を用いてpHを3.0に調整し、金コロイド粒子を沈降させた後、真空濾過器で濾別し、濾液の電気伝導度が10.0μS/cm以下になるまで水洗して、金コロイド粒子の湿ケーキを得た。
3.第三の工程
第二の工程で濾別した金コロイド粒子の湿ケーキを、濃度が10%になるように水に添加し、撹拌しながらアンモニア水(26%)にてpHを9.0に調整して再分散させ、本発明の金コロイド溶液(試料K)を得た。
【0041】
[実施例12]
1.第一の工程
50ミリモル/lの濃度の酢酸銅水溶液1000mlを撹拌しながら、低分子量の硫黄化合物としてメルカプト酢酸3.0gを添加した後、アンモニア水(26%)にて水溶液のpHを10.0に調整した。室温下、この水溶液に還元剤として800ミリモル/lの濃度の水素化ホウ素ナトリウム水溶液50mlを急速に添加することにより還元反応を行いメルカプト酢酸を粒子表面に有する銅コロイド粒子を溶液中で生成させた。
2.第二の工程
第一の工程で得られた溶液を硝酸(20%)を用いてpHを3.0に調整し、銅コロイド粒子を沈降させた後、真空濾過器で濾別し、濾液の電気伝導度が10.0μS/cm以下になるまで水洗して、銅コロイド粒子の湿ケーキを得た。
3.第三の工程
第二の工程で濾別した銅コロイド粒子の湿ケーキを、濃度が10%になるように水に添加し、撹拌しながらアンモニア水(26%)にてpHを9.0に調整して再分散させ、本発明の銅コロイド溶液(試料L)を得た。
【0042】
[実施例13]
1.第一の工程
還元剤として水素化ホウ素ナトリウム3.8gを水3000mlに溶解させ、アンモニア水(26%)にて水溶液のpHを11.0に調整した後、低分子量の硫黄化合物としてメルカプト酢酸2.5gを添加し、還元剤と低分子量の硫黄化合物との混合水溶液を調製した。硝酸銀20.0gを水2000mlに溶解し、アンモニア水(26%)にて水溶液のpHを11.0に調整した後、室温下、前記の混合水溶液を撹拌しながら30分間かけ全量を添加することにより還元反応を行いメルカプト酢酸を粒子表面に有する銀コロイド粒子を溶液中で生成させた。還元剤の硝酸銀に対するモル比は0.85である。
2.第二の工程
第一の工程で得られた溶液を硝酸(20%)を用いてpHを3.0に調整し、銀コロイド粒子を沈降させた後、真空濾過器で濾別し、濾液の電気伝導度が10.0μS/cm以下になるまで水洗して、銀コロイド粒子の湿ケーキを得た。
3.第三の工程
第二の工程で濾別した銀コロイド粒子の湿ケーキを、濃度が10%になるように水に添加し、撹拌しながらアンモニア水(26%)にてpHを9.0に調整して再分散させ、本発明の銀コロイド溶液(試料M)を得た。
【0043】
[実施例14]
1.第一の工程
還元剤として80%の濃度のヒドラジン一水和物12.5gを水3000mlに溶解させ、アンモニア水(26%)にて水溶液のpHを10.0に調整して、還元剤の水溶液を調製した。塩化パラジウム20.8gを、塩化ナトリウム6.6gと共に、水3000mlに溶解し、低分子量の硫黄化合物として3−メチルメルカプトプロピオン酸2.5gを添加し、アンモニア水(26%)にて水溶液のpHを10.0に調整した後、室温下、前記の水溶液を撹拌しながら30分間かけ全量を添加することにより還元反応を行い3−メチルメルカプトプロピオン酸を粒子表面に有するパラジウムコロイド粒子を溶液中で生成させた。還元剤の塩化パラジウムに対するモル比は1.70である。
2.第二の工程
第一の工程で得られた溶液を塩酸(20%)を用いてpHを3.0に調整し、パラジウムコロイド粒子を沈降させた後、真空濾過器で濾別し、濾液の電気伝導度が10.0μS/cm以下になるまで水洗して、パラジウムコロイド粒子の湿ケーキを得た。
3.第三の工程
第二の工程で濾別したパラジウムコロイド粒子の湿ケーキを、濃度が10%になるように水に添加し、撹拌しながらアンモニア水(26%)にてpHを9.0に調整して再分散させ、本発明のパラジウムコロイド溶液(試料N)を得た。
【0044】
[実施例15]
実施例1の第一の工程において、水素化ホウ素ナトリウムを添加することに代え、SHL−100UV型高圧水銀ランプ(東芝製)を用いて3時間光照射し、還元反応を行った以外は実施例1と同様にして本発明の銀コロイド溶液(試料O)を得た。
【0045】
[実施例16]
1.第一の工程
還元剤として水素化ホウ素ナトリウム10.0gを水1500mlに溶解させ、アンモニア水(26%)にて水溶液のpHを11.0に調整して、還元剤の水溶液を調製した。硝酸銀170.0gを水2000mlに溶解し、低分子量の硫黄化合物として3−メルカプトプロピオン酸10.8gを添加し、アンモニア水(26%)にて水溶液のpHを13.0に調整した後、室温下、前記の還元剤水溶液を撹拌しながら60分間かけ全量を添加することにより還元反応を行い3−メルカプトプロピオン酸を粒子表面に有する銀コロイド粒子を溶液中で生成させた。還元剤の硝酸銀に対するモル比は0.26である。
2.第二の工程
第一の工程で得られた溶液を硝酸(20%)を用いてpHを3.0に調整し、銀コロイド粒子を沈降させた後、真空濾過器で濾別し、濾液の電気伝導度が10.0μS/cm以下になるまで水洗して、銀コロイド粒子の湿ケーキを得た。
3.第三の工程
第二の工程で濾別した銀コロイド粒子の湿ケーキを、濃度が10%になるように水に添加し、撹拌しながらn−ブチルアミンにてpHを9.0に調整して再分散させ、本発明の銀コロイド溶液(試料P)を得た。
【0046】
[実施例17]
1.第一の工程
還元剤として水素化ホウ素ナトリウム20.0gを水1500mlに溶解させ、アンモニア水(26%)にて水溶液のpHを11.0に調整して、還元剤の水溶液を調製した。塩化パラジウム177.3gを水2000mlに溶解し、低分子量の硫黄化合物として3−メルカプトプロピオン酸10.6gを添加し、アンモニア水(26%)にて水溶液のpHを13.0に調整した後、室温下、前記の還元剤水溶液を撹拌しながら60分間かけ全量を添加することにより還元反応を行い3−メルカプトプロピオン酸を粒子表面に有するパラジウムコロイド粒子を溶液中で生成させた。還元剤の塩化パラジウムに対するモル比は0.53である。
2.第二の工程
第一の工程で得られた溶液を硝酸(20%)を用いてpHを3.0に調整し、パラジウムコロイド粒子を沈降させた後、真空濾過器で濾別し、濾液の電気伝導度が10.0μS/cm以下になるまで水洗して、パラジウムコロイド粒子の湿ケーキを得た。
3.第三の工程
第二の工程で濾別したパラジウムコロイド粒子の湿ケーキを、濃度が10%になるように水に添加し、撹拌しながらn−ブチルアミンにてpHを9.0に調整して再分散させ、本発明のパラジウムコロイド溶液(試料Q)を得た。
【0047】
[実施例18]
1.第一の工程
還元剤として水素化ホウ素ナトリウム30.0gを水1500mlに溶解させ、アンモニア水(26%)にて水溶液のpHを11.0に調整して、還元剤の水溶液を調製した。塩化金酸4水和物412.0gを水2000mlに溶解し、低分子量の硫黄化合物としてメルカプト酢酸19.7gを添加し、アンモニア水(26%)にて水溶液のpHを13.0に調整した後、室温下、前記の還元剤水溶液を撹拌しながら60分間かけ全量を添加することにより還元反応を行いメルカプト酢酸を粒子表面に有する金コロイド粒子を溶液中で生成させた。還元剤の塩化金酸に対するモル比は0.79である。
2.第二の工程
第一の工程で得られた溶液を硝酸(20%)を用いてpHを3.0に調整し、金コロイド粒子を沈降させた後、真空濾過器で濾別し、濾液の電気伝導度が10.0μS/cm以下になるまで水洗して、金コロイド粒子の湿ケーキを得た。
3.第三の工程
第二の工程で濾別した金コロイド粒子の湿ケーキを、濃度が10%になるように水に添加し、撹拌しながらn−ブチルアミンにてpHを9.0に調整して再分散させ、本発明の金コロイド溶液(試料R)を得た。
【0048】
[実施例19]
1.第一の工程
還元剤として水素化ホウ素ナトリウム40.0gを水1500mlに溶解させ、アンモニア水(26%)にて水溶液のpHを11.0に調整して、還元剤の水溶液を調製した。塩化白金酸6水和物518.0gを水2000mlに溶解し、低分子量の硫黄化合物としてメルカプト酢酸19.5gを添加し、アンモニア水(26%)にて水溶液のpHを13.0に調整した後、室温下、前記の還元剤水溶液を撹拌しながら60分間かけ全量を添加することにより還元反応を行いメルカプト酢酸を粒子表面に有する白金コロイド粒子を溶液中で生成させた。還元剤の塩化白金酸に対するモル比は1.06である。
2.第二の工程
第一の工程で得られた溶液を硝酸(20%)を用いてpHを3.0に調整し、白金コロイド粒子を沈降させた後、真空濾過器で濾別し、濾液の電気伝導度が10.0μS/cm以下になるまで水洗して、白金コロイド粒子の湿ケーキを得た。
3.第三の工程
第二の工程で濾別した白金コロイド粒子の湿ケーキを、濃度が10%になるように水に添加し、撹拌しながらn−ブチルアミンにてpHを9.0に調整して再分散させ、本発明の白金コロイド溶液(試料S)を得た。
【0049】
[比較例1]
実施例1の第一の工程において、メルカプト酢酸を用いなかったこと以外は実施例1と同様に処理したところ、水素化ホウ素ナトリウム水溶液を加えると、黒色の沈殿物が生成したが、この沈殿物は再分散させることができず銀コロイド溶液は得られなかった。
【0050】
[比較例2]
実施例1の第一の工程において、メルカプト酢酸に代え酢酸3.0gを用いたこと以外は実施例1と同様に処理したところ、水素化ホウ素ナトリウム水溶液を加えると、黒色の沈殿物が生成したが、この沈殿物は再分散せず銀コロイド溶液は得られなかった。
【0051】
[比較例3]
実施例1の第一の工程において、メルカプト酢酸に代えクエン酸一水和物3.0gを用いたところ、水素化ホウ素ナトリウム水溶液を加えると、銀コロイド溶液が得られたが、この溶液には黒色の沈殿物も生成していた。得られた溶液から沈殿物を濾別し、硝酸(20%)にてpHを3.0に調整したが、銀コロイド粒子は沈殿せず、濾別できなかった。
【0052】
[比較例4]
比較例3において、クエン酸一水和物の添加量を50gにしたところ、水素化ホウ素ナトリウム水溶液を加えると、銀コロイド溶液が得られた。この溶液を硝酸(20%)にてpHを3.0に調整したが、銀コロイド粒子は沈殿せず、濾別できなかった。
【0053】
[比較例5]
実施例9の第一の工程において、3−メルカプトプロピオン酸を用いなかったこと以外は実施例9と同様に処理したところ、ヒドラジン水溶液を加えると、黒色の沈殿物が生成したが、この沈殿物は再分散せずパラジウムコロイド溶液は得られなかった。
【0054】
[比較例6]
実施例10の第一の工程において、3−メルカプトプロピオン酸を用いなかったこと以外は実施例10と同様に処理したところ、ヒドラジン水溶液を加えると、黒色の沈殿物が生成したが、この沈殿物は再分散せず白金コロイド溶液は得られなかった。
【0055】
[比較例7]
実施例11の第一の工程において、3−メルカプトプロピオン酸を用いなかったこと以外は実施例11と同様に処理したところ、ヒドラジン水溶液を加えると、黒色の沈殿物が生成したが、この沈殿物は再分散せず金コロイド溶液は得られなかった。
【0056】
[比較例8]
実施例12の第一の工程において、メルカプト酢酸を用いなかったこと以外は実施例12と同様に処理したところ、水素化ホウ素ナトリウム水溶液を加えると、黒色の沈殿物が生成したが、この沈殿物は再分散せず銅コロイド溶液は得られなかった。
【0057】
[比較例9]
実施例1の第一の工程において、アンモニア水をモノエタノールアミンに代えて用いたこと、メルカプト酢酸を用いなかったこと以外は実施例1と同様に処理したところ、水素化ホウ素ナトリウム水溶液を加えると、黒色の沈殿物が生成したが、この沈殿物は再分散させることができず銀コロイド溶液は得られなかった。
【0058】
[比較例10]
実施例1の第三の工程において、pH調整を行わなかったこと以外は実施例1と同様に処理したところ、溶液のpHは6.5となり、銀コロイド粒子は再分散せずコロイド溶液が得られなかった。
評価1
実施例1〜19で得られた金属コロイド溶液(試料A〜S)の分散安定性を評価した。評価は金属コロイド溶液中の金属コロイド粒子の初期と、室温にて3ヶ月間貯蔵した後の粒子径を、マイクロトラックUPA9340型粒度分布測定装置(日機装製)を用いて測定することで行った。粒子径は50%個数基準による平均粒子径として表した。また、目視により外観状の変化や沈降物の生成を合わせて確認した。
結果を表1に示す。本発明の金属コロイド溶液は、貯蔵前後でも金属コロイド粒子の分散状態が変わらず、分散安定性に優れたものであることがわかった。また、3ヵ月間貯蔵した後でも、いずれの試料も外観上の変化や沈降物の生成は認められなかった。
【0059】
【表1】

【0060】
(二液性導電性塗料の調製)
【0061】
[実施例20]
実施例16で得られた試料Pを用い、以下の処方をディスパーにより混合して、第一液と第二液からなる本発明の二液性導電性塗料(試料a)を得た。尚、第一液中の水100重量部に対し、アセトアミドの配合量は24重量部である。
第一液
試料P 4.0 g
水 25.0 g
エチレングリコールモノブチルエーテル 5.0 g
アセトアミド 6.0 g
第二液
メチルシリケート51(コルコート社製) 4.6 g
エタノール 9.0 g
2−プロパノール 46.8 g
1−メトキシ−2−プロパノール 173.0 g
水 1.0 g
20%塩酸 0.03g
【0062】
[実施例21]
実施例20において、アセトアミドをジメチルスルホキシドに代えたこと以外は実施例20と同様にして本発明の二液性導電性塗料(試料b)を得た。
【0063】
[実施例22]
実施例20において、アセトアミドをN−メチルホルムアミドに代えたこと以外は実施例20と同様にして本発明の二液性導電性塗料(試料c)を得た。
【0064】
[実施例23]
実施例20において、アセトアミドをエチレングリコールに代えたこと以外は実施例20と同様にして本発明の二液性導電性塗料(試料d)を得た。
【0065】
[実施例24]
実施例20において、アセトアミドを1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンに代えたこと以外は実施例20と同様にして本発明の二液性導電性塗料(試料e)を得た。
【0066】
[実施例25]
実施例20において、アセトアミドを4−ブチロラクトンに代えたこと以外は実施例20と同様にして本発明の二液性導電性塗料(試料f)を得た。
【0067】
[実施例26]
実施例20において、試料Pを実施例17で得られた試料Qに代えたこと以外は実施例20と同様にして本発明の二液性導電性塗料(試料g)を得た。
【0068】
[実施例27]
実施例20において、試料Pを実施例18で得られた試料Rに代えたこと以外は実施例20と同様にして本発明の二液性導電性塗料(試料h)を得た。
【0069】
[実施例28]
実施例20において、試料Pを実施例19で得られた試料Sに代えたこと以外は実施例20と同様にして本発明の二液性導電性塗料(試料i)を得た。
【0070】
[実施例29]
実施例20において、試料Pを試料P3.84gと試料Q0.16gとの混合液に代えたこと以外は実施例20と同様にして本発明の二液性導電性塗料(試料j)を得た。
【0071】
[実施例30]
実施例20において、試料Pを試料P3.84gと試料R0.16gとの混合液に代えたこと以外は実施例20と同様にして本発明の二液性導電性塗料(試料k)を得た。
【0072】
[実施例31]
実施例20において、第一液の処方を下記のものに代えたこと以外は実施例20と同様にして本発明の二液性導電性塗料(試料l)を得た。尚、第一液中の水100重量部に対し、アセトアミドの配合量は24.5重量部である。
第一液
試料P 3.2 g
水 25.4 g
スノーテックスN
(日産化学社製、SiO20%含有コロイダルシリカ) 0.4 g
エチレングリコールモノブチルエーテル 5.0 g
アセトアミド 6.0 g
【0073】
[実施例32]
実施例20において、第一液の処方を下記のものに代えたこと以外は実施例20と同様にして本発明の二液性導電性塗料(試料m)を得た。尚、第一液中の水100重量部に対し、アセトアミドの配合量は23.7重量部である。
第一液
試料P 3.2 g
水 25.33g
SN−100S
(石原産業社製、アンチモンドープ酸化錫水分散体) 0.47g
エチレングリコールモノブチルエーテル 5.0 g
アセトアミド 6.0 g
【0074】
[実施例33]
実施例20において、アセトアミドをホルムアミド(表面張力:57×10−3N/m)に代えたこと以外は実施例20と同様にして本発明の二液性導電性塗料(試料n)を得た。
【0075】
[比較例11]
実施例20においてアセトアミドを1−ブタノール(比誘電率:18、表面張力:25×10−3N/m)に代えたこと以外は実施例20と同様にしたところ、第一液に黒色の凝集物が生成し、導電性塗料は得られなかった。
評価2
1片75mm、厚さ3mmの正方形のガラス基板を、50℃の大気中にてスピンコーターにセットし、実施例20〜33で得られた二液性導電性塗料(試料a〜n)の第一液1mlを滴下した後、120rpmで100秒間回転させることで、導電層を塗工した。その後、第二液を同じ条件でスピンコートし、オーブンで大気雰囲気下120℃、30分間で加熱して透明導電性塗膜を得た。得られた塗膜の表面抵抗を表面抵抗計(ロレスタGP型、三菱化学社製)を用い、ヘーズおよび透過率をヘーズメーター(DH−300A型、日本電色工業社製)を用いて計測した。また、塗膜の外観を色ムラにより目視評価した。
表面抵抗、ヘーズ、透過率、塗膜外観の評価結果を表2に示す。得られた塗膜はいずれも導電性が優れ、透明性の高い塗膜であることがわかった。また、塗膜の外観もほぼ良好であり、表面張力が50×10−3N/m以下の非水溶媒を用いると色ムラの認められない良好な外観となることがわかった。
【0076】
【表2】

【0077】
本発明の好ましい態様は下記のとおりである。
1. 低分子量の硫黄化合物を粒子表面に有する金属コロイド粒子と分散媒とを少なくとも含み、前記金属コロイド粒子を1重量%以上含み、溶液のpHが8〜14の範囲であることを特徴とする金属コロイド溶液。
2. 2〜50重量%の範囲の金属コロイド粒子を含有していることを特徴とする1記載の金属コロイド溶液。
3. 金属コロイド粒子を構成する金属が周期表8族及び1B族に属する金属群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする1記載の金属コロイド溶液。
4. 金属コロイド粒子を構成する金属が金、銀、白金、パラジウム、銅から選ばれる少なくとも一種の金属であることを特徴とする1記載の金属コロイド溶液。
5. 金属コロイド粒子1重量部に対して0.05〜1.5重量部の範囲の硫黄化合物を有していることを特徴とする1記載の金属コロイド溶液。
6. 硫黄化合物が34〜200の範囲の分子量を有する化合物であることを特徴とする1記載の金属コロイド溶液。
7. 硫黄化合物がチオール系化合物であることを特徴とする1記載の金属コロイド溶液。
8. 硫黄化合物がメルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、メルカプトエタノールから選ばれる少なくとも一種の化合物であることを特徴とする1記載の金属コロイド溶液。
9. 低分子量の硫黄化合物を粒子表面に有する金属コロイド粒子を溶液中で生成させる第一の工程、溶液のpHを5以下にして金属コロイド粒子を凝集させ、濾別する第二の工程、濾別した金属コロイド粒子をpHが8〜14の範囲の分散媒中に分散させる第三の工程を含んでいることを特徴とする金属コロイド溶液の製造方法。
10. 第一の工程が、金属化合物を含んでいる溶液のpHが8〜14の範囲で、低分子量の硫黄化合物の存在下、金属化合物を還元して、金属コロイド粒子を生成する工程であることを特徴とする9記載の金属コロイド溶液の製造方法。
11. 第一の工程が、金属化合物を含んでいる溶液のpHが8〜14の範囲で、低分子量の硫黄化合物を添加し、金属化合物を還元して、金属コロイド粒子を生成する工程であることを特徴とする9記載の金属コロイド溶液の製造方法。
12. 金属コロイド粒子1重量部に対して0.05〜1.5重量部の範囲の硫黄化合物を用いることを特徴とする9〜11のいずれか一項に記載の金属コロイド溶液の製造方法。
13. 還元剤を用いて、金属化合物を還元することを特徴とする9〜11のいずれか一項に記載の金属コロイド溶液の製造方法。
14. 金属化合物1モルに対して0.2〜50モルの範囲の還元剤を用いることを特徴とする13記載の金属コロイド溶液の製造方法。
15. 金属化合物に光照射して、還元することを特徴とする9〜11のいずれか一項に記載の金属コロイド溶液の製造方法。
16. 34〜200の範囲の分子量を有する硫黄化合物を用いることを特徴とする9〜11のいずれか一項に記載の金属コロイド溶液の製造方法。
17. 硫黄化合物としてチオール系化合物を用いることを特徴とする9〜11のいずれか一項に記載の金属コロイド溶液の製造方法。
18. 硫黄化合物としてメルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、メルカプトエタノールから選ばれる少なくとも一種を用いることを特徴とする9〜11のいずれか一項に記載の金属コロイド溶液の製造方法。
19. 1〜8のいずれか一項に記載の金属コロイド溶液と硬化性樹脂成分を少なくとも含んでいることを特徴とする塗料。
20. 1〜8のいずれか一項に記載の金属コロイド溶液を少なくとも含んでいる第一液、硬化性樹脂成分を少なくとも含んでいる第二液からなることを特徴とする二液性塗料。
21. 第一液が、水及び35以上の比誘電率を有し、100℃以上の沸点を有する非水溶媒を含んでいることを特徴とする20記載の二液性塗料。
22. 非水溶媒が、50×10−3N/m以下の表面張力を有する化合物であることを特徴とする21記載の二液性塗料。
23. 非水溶媒が、N−メチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、4−ブチロラクトン、アセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンから選ばれる少なくとも一種の化合物であることを特徴とする21記載の二液性塗料。
24. 第一液に含まれる水100重量部に対して15〜900重量部の範囲の非水溶媒を含んでいることを特徴とする21記載の二液性塗料。
25. 20〜24のいずれか一項に記載の二液性塗料の第一液を基材に塗付し金属コロイド粒子を含む層を形成させた後、その上に第二液を塗布し硬化性樹脂成分を硬化させることを特徴とする塗膜の形成方法。
26. 20〜24のいずれか一項に記載の二液性塗料の第一液を物品の表面に塗付し金属コロイド粒子を含む層を形成させた後、その上に第二液を塗布し硬化性樹脂成分を硬化させることを特徴とする塗膜を有する物品の製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、低分子量の硫黄化合物を粒子表面に有する金属コロイド粒子と分散媒とを少なくとも含み、前記金属コロイド粒子を1重量%以上含み、溶液のpHが8〜14の範囲である金属コロイド溶液であって、分散安定性に優れ、長期間保管しても凝集し難いため、金属コロイド粒子を固定するコーティング剤、処理剤として用いることができる。本発明の金属コロイド溶液を用いて金属コロイド粒子をセラミックス、金属等の、特にガラス、プラスチックス、フィルム等の透明性基材に固定したものは、工業用、一般家庭用の導電性材料、帯電防止材、電磁波遮蔽材、抗菌材、着色材、触媒等に有用である。特に、本発明の金属コロイド溶液は、保護コロイドとしての硫黄化合物の含有量が少ないにもかかわらず分散安定性に優れており、金属コロイド粒子が本来有している優れた導電性を損なうことがないので、導電性付与材として有用である。しかも、金属コロイド粒子を高濃度で含有しているため、組成物に配合するにも有利である。
【0079】
また、本発明の金属コロイド溶液の製造方法は、低分子量の硫黄化合物を粒子表面に有する金属コロイド粒子を溶液中で生成させる第一の工程、溶液のpHを5以下にして金属コロイド粒子を凝集させ、濾別する第二の工程、濾別した金属コロイド粒子をpHが8〜14の範囲の分散媒中に分散させる第三の工程を含んでいる金属コロイド溶液の製造方法であって、遠心分離、限外濾過等の大掛かりな装置を必要としないので、上記金属コロイド溶液を工業的有利に製造することができる。また、本発明の方法では、金属コロイド粒子の濃度を任意に設定でき、濃縮しなくても高濃度の金属コロイド溶液を製造することができる。
【0080】
また、本発明は、前記の金属コロイド溶液を少なくとも含んでいる第一液、硬化性樹脂成分を少なくとも含有している第二液からなる二液性塗料であって、第一液を塗布した後、第二液を塗布して、硬化させると、金属コロイド粒子と基材との接点に絶縁性の硬化性樹脂成分が介在しないため、高い導電性等を付与することができ、導電性塗料として特に有用である。本発明の二液性塗料を用いて金属コロイド粒子をセラミックス、金属等の、特にガラス、プラスチックス、フィルム等の透明性基材に固定したものは、工業用、一般家庭用の導電性材料、帯電防止材、電磁波遮蔽材、抗菌材、着色材、触媒等に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、メルカプトエタノールから選ばれる少なくとも一種の硫黄化合物を粒子表面に有する金属コロイド粒子と分散媒とを少なくとも含み、前記金属コロイド粒子を1重量%以上含み、溶液のpHが8〜14の範囲であることを特徴とする金属コロイド溶液。
【請求項2】
2〜50重量%の範囲の金属コロイド粒子を含有していることを特徴とする請求項1記載の金属コロイド溶液。
【請求項3】
金属コロイド粒子を構成する金属が周期表8族及び1B族に属する金属群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1記載の金属コロイド溶液。
【請求項4】
金属コロイド粒子を構成する金属が金、銀、白金、パラジウム、銅から選ばれる少なくとも一種の金属であることを特徴とする請求項1記載の金属コロイド溶液。
【請求項5】
金属コロイド粒子1重量部に対して0.05〜1.5重量部の範囲の硫黄化合物を有していることを特徴とする請求項1記載の金属コロイド溶液。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の金属コロイド溶液と硬化性樹脂成分を少なくとも含んでいることを特徴とする塗料。

【公開番号】特開2011−179002(P2011−179002A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75172(P2011−75172)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【分割の表示】特願2002−519125(P2002−519125)の分割
【原出願日】平成13年8月6日(2001.8.6)
【出願人】(000000354)石原産業株式会社 (289)
【Fターム(参考)】