説明

金属ストリップの表面を処理するための連続的方法

厚さが3μm以下の仕上被覆物を施す、金属ストリップの表面処理のための連続的方法であって、施すために使用される装置は、ストリップの被覆側に面し、反射ジオメトリーに作動し、そしてストリップの走行中に仕上被覆物の被覆厚さを測定するように作用するIRセンサーを少なくとも1個備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ストリップに、厚さが3μm未満の仕上被覆物が施され、仕上被覆物を施すために使用される装置が、ストリップの被覆側に面し、リフレクションジオメトリー(反射構造)に作用し、そしてストリップが移動している間、仕上被覆物の被覆物厚さを測定する作用を有する少なくとも1個のIRセンサーを備えている、金属の表面処理のための連側的方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スチールストリップは、通常、適切な方法によって腐食から保護されている。これは通常、複数工程での操作を含む。第1の工程では、スチールストリップは、一般的には、亜鉛又は亜鉛合金で被覆される。亜鉛の作用は、第1には、亜鉛が鉄よりも卑であり、最初に亜鉛自体が腐食するという事実に由来している。亜鉛で連続的に覆われている限り、スチール(鋼)表面は、損なわれない。更に、大気中の酸素の存在下では、Znの表面に薄い酸化物の層又はその合金が形成され、下部に位置する金属への腐食アタック(corrosive attack)が、外部条件に従い、多かれ少なかれ低減される。
【0003】
この種の酸化物層の保護効果は通常、Zn表面に追加的な不動態化処理を受けさせることによって高められる。このような処理の過程では、保護される金属の幾分かが溶解し、そして少なくとも部分的に金属表面上のフィルムに導入される。「不動態化被覆」という用語の替わりに、「変換被覆」、「後処理被覆」又は「予備処理被覆」という用語も同意語として使用される。
【0004】
亜鉛メッキしたスチール表面を酸性Cr(VI)及び/又はCr(III)溶液で処理することにより、この種の不動態化を行うことが公知である。しかしながら、この目的のために、クロムを使用しない処方物、例えばフォスフェイト処方物又は他に、異なるポリマーを含む処方物も使用されている。
【0005】
不動態化のための処方物中に使用されるポリマーの重要な、あるクラスは、酸性、水溶性ポリマー、例えば、ポリアクリル酸、又はアクリル酸と他のモノマーとのコポリマー、より特定的には、他の酸性モノマー、例えばビニルホスホン酸、マレイン酸又はイタコン酸とのコポリマーである。不動態化のために、この種のポリマーを使用することが、例えば特許文献1(WO2004/074372)、特許文献2(WO2005/042801)、特許文献3(WO2006/021308)、特許文献4(WO2006/021309)、特許文献5(WO2006/134116)、特許文献6(WO2006/134117)又は特許文献7(WO2006/134118)に開示されている。しかしながら、公知のように、N−含有基を含むポリマー、例えば、ビニルイミダゾールを含むポリマーの使用が、例えば特許文献8(WO2004/81128)に開示されている。
【0006】
不動態化被覆物(不動態化被膜)は通常、非常に薄い。不動態化した被覆物の、乾燥した被覆物(被膜)厚さは、3μm以下であり;今日の不動態化工程では、乾燥被覆物の厚さが1μm、例えば0.01〜0.4μmが目的とされている。品質の制御と工程の制御のために、被覆物の厚さを測定する必要がある。
【0007】
この制御は、通常、不連続的に行なわれ:換言すれば、進行する操作で、サンプル(試料)が移動する金属ストリップから切り取られ、そして実験室で、湿式−化学分析又は分光分析にかけられる。この工程(方法)は、不満足で、時間を費やし、ストリップの品質の変化に迅速に対応するのには不十分なものである。
【0008】
更に、公知のように、表面処理を監視するために、X線蛍光分析が使用される。このX線蛍光分析は、監視(モニタリング)を可能にするが、X線蛍光分析は、所定の導体要素(conductive element)を測定するためにのみ使用することができ、そしてそのような要素であっても、(導体要素の濃度が同一であれば)化学的組成の偏差を測定することができない。例えば、X線蛍光分析法は、表面のクロム酸塩化合物(の占有)と、クロム(III)塩(の占有)を見分けることができない。更に、X線蛍光分析法は、有機被覆材料、例えばオイル、及びポリマーを有する薄い被覆物を測定するために使用することができない。この理由は、この方法は、これらの材料には反応しないからである。他の通常の被覆物厚さ測定方法は、1000nm未満の被覆物厚さを、量的に見分ける程の十分な高感度を有していない。
【0009】
金属シート及び金属ストリップの製造過程で、IRスペクトロスコピー法を使用することが、公知である。
【0010】
特許文献9(EP488726A2)には、シリコンスチールシートのための、赤外吸収帯の強度によってシリコンスチールの表面品質を規定する方法が開示されている。しかしながら、この方法は、連続的ではない。
特許文献10(DE19941734)には、スチールストリップの酸洗で工程を制御する連続的な方法が開示されている。酸洗(pickling)は、当業者によって使用されている用語で、金属表面から、酸化物又は他の汚染物質を取り除くことに適用される用語である。反射したIR放射の強度の分析によって、金属表面のスケーリングの程度が測定され、そして酸洗操作が、測定値の関数として制御される。
【0011】
特許文献11(DE19941600C2)には、スチールの熱間圧延の間の工程制御及び工程の最適化を行う方法が開示されており、該方法では、熱い状態の金属によって放射された電磁放射が、スペクトルの状態で、オンラインで捕捉され、そして評価され、そして規定された温度で発生する金属の結晶学的な変化がされる。
【0012】
本出願人の前の特許文献12(出願EP08152645.1)には、フーリエ変換IRスペクトロメーターを使用して、薄い仕上被覆物を有する金属ストリップの表面を連続的に監視する方法が開示されている。フーリエ変換IRスペクトロメーターを使用することにより、(仕上被覆物での)全IRスペクトルを測定することが可能であるが、しかし、スペクトロメーターは移動する(動く)部分を有しており、従って、操作中に如何なる振動も発生させてはならないものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】WO2004/074372
【特許文献2】WO2005/042801
【特許文献3】WO2006/021308
【特許文献4】WO2006/021309
【特許文献5】WO2006/134116
【特許文献6】WO2006/134117
【特許文献7】WO2006/134118
【特許文献8】WO2004/81128
【特許文献9】EP488726A2
【特許文献10】DE19941734
【特許文献11】DE19941600C2
【特許文献12】出願EP08152645.1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、金属ストリップの表面仕上のために、より特定的には、金属ストリップの不動態化のために、金属ストリップが移動している間、連続的な品質制御が行われ、振れと振動に影響されることのない、改良された連続的方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
従って、金属ストリップを液体処方物(F)で、連続的に表面処理する方法であって、
金属ストリップが、長さ方向に、処方物(F)を施すための少なくとも1個のデバイズ(3)を含む、金属ストリップの表面処理用の装置を移動され、
及び処方物(F)が、デバイス(3)によって、金属ストリップに施され、施される処方物の量が、被覆物厚さが、金属表面上で3μm未満になる非金属仕上被覆物を形成するように計算され、
使用される装置が、ストリップの走行方向に見てデバイス(3)の下流側に、ストリップの被覆側に面し、リフレクションジオメトリーに作用する、少なくとも1個のIRセンサー(6)を備え、及び
−少なくとも1個の、広範囲に放射するIR源(9)、及び
−少なくとも1個の、2個以上の測定チャンネルを含み、それぞれの測定チャンネルが、対応する測定チャンネルの上流側に備えられたIRフィルター(11)を備え、及び、少なくとも2個の異なるIRフィルターが使用されるという条件下に、それぞれの測定チャンネルが、IR放射の特定の波長範囲のみを伝達可能である、マルチチャンネルディテクター、
を含み、及びIR源(9)がIR放射を、被覆されたストリップ表面に向けて放射し、放射された放射がストリップ表面から部分的に反射され、及び反射された放射の強度がIRマルチチャンネルディテクター(10)によって測定され、そして強度測定から、算術ユニットを使用して、仕上被覆物の被覆物厚さが計算されることを特徴とする方法が見出された。
【0016】
更に、本発明の一実施の形態として、金属ストリップを液体処方物(F)で、連続的に表面処理する方法であって、
金属ストリップが、長さ方向に、金属ストリップの表面処理用の装置を移動され、該金属ストリップの表面処理用の装置は、少なくとも、
・処方物(F)を施すためのデバイス(3)、及び
・乾燥ステーション(5)、
を含み、
処方物(F)は、少なくとも1種の溶媒、及び被覆物形成成分を含み、処方物(F)は、デバイス(3)を使用して金属ストリップに施され、溶媒が、乾燥ステーションを使用して、少なくとも部分的に除去され、施される処方物の量が、被覆物厚さが金属表面上で3μm未満になる非金属仕上被覆物を形成するように計算され、
使用される装置が、ストリップの走行方向に見て、乾燥ステーション(5)の下流側に、ストリップの被覆側に面し、リフレクションジオメトリーに作用する、少なくとも1個のIRセンサー(6)を備え、及び
−少なくとも1個の、広範囲に放射するIR源(9)、及び
−少なくとも1個の、2個以上の測定チャンネルを含み、それぞれの測定チャンネルが、対応する測定チャンネルの上流側に備えられたIRフィルター(11)を備え、及び、少なくとも2個の異なるIRフィルターが使用されるという条件下に、それぞれの測定チャンネルが、IR放射の特定の波長範囲のみを伝達可能である、マルチチャンネルディテクター、
を含み、及びIR源(9)がIR放射を、被覆されたストリップ表面に向けて放射し、放射された放射がストリップ表面から部分的に反射され、及び反射された放射がIRマルチチャンネルディテクター(10)によって測定され、そして強度測定から、算術ユニットを使用して、仕上被覆物の被覆物厚さが計算される方法が見出された。
【0017】
本発明の好ましい一実施の形態では、表面処理は不動態化である。特に好ましいものは、酸性基を含む少なくとも1種のポリマーが使用される、酸性不動態化である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の主要な要素を概略的に表した図である(片側適用)。
【図2】本発明の主要な要素を概略的に表した図である(片側適用、異なるモード)。
【図3】本発明の主要な要素を概略的に表した図である(両側適用)。
【図4】本発明の主要な要素を概略的に表した図である(片側適用、異なるモード、補助的なサポートローラーを有する)。
【図5】本発明の主要な要素を概略的に表した図である(両側適用、補助的なサポートローラーを有する)。
【図6】8個のIR源(図6a)及び4個のIR源(図6b)を有する、IRセンサー(6)の下側部分を概略的に表した図である。
【図7】IRセンサー(6)を使用した測定操作を説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0020】
金属ストリップの表面を連続的に処理するための本発明の方法で、金属ストリップの表面には、少なくとも1種の溶媒及び被覆物形成成分を含んだ液体処方物(F)が施される。この供給の過程では、乾燥被覆物の厚さが3μm未満である非金属仕上被覆物が、金属表面上に得られる。
【0021】
「仕上被物」という用語は、その特性を変えるために、より特定的には、下流の処理工程例えば、ペイント被覆物又はストリップの形成又はその一部の形成について、その特性を変えるために、適切な処方物を使用して金属ストリップに施されて良い、上述した厚さを有する、薄い非金属被覆物の全ての種類を含むことが意図されている。「非金属」という用語は、仕上被覆物中に、金属イオン又は金属化合物、例えば金属酸化物が存在する可能性を除外するものではなく;むしろ、金属又は金属合金自体でストリップを被覆すること(例えば、ストリップの亜鉛メッキ工程)と境界を付けることが意図されている。仕上被覆は、少なくとも1種の有機成分を含むことが好ましい。仕上被覆物の特性は、これらが金属表面に直接的に施されるということである。
【0022】
非金属仕上被覆物の例は、一時的な、又は永久的な腐食防止、より特定的には、例えば成形性リン酸塩処理、クロメート処理、を改良する目的で施されても良い、不動態化被覆物、タイ被覆物、オイル被覆物、又はワックス被覆物、変換被覆物、又は他にカチオンが金属から溶解してそして被覆物の一部になる反応性被覆物を含む。
【0023】
本発明の方法は、好ましくは不動態化、及び仕上被覆、従って、不動態化被覆が好ましい。
【0024】
本方法のために使用される金属ストリップは、原則として、如何なる種類の金属ストリップであっても良い。想定される最終用途に依存して、使用される金属ストリップは、厚さが0.05mm〜5mm、好ましくは0.3〜3mm、幅が0.5〜2.5m及び長さが数百メートルであって良い。好ましくは、これらは、スチール、鉄、亜鉛、スズ、アルミニウム、銅、又はこれらの合金のストリップであって良く、ストリップは、金属被覆物、例えばスズ、アルミニウム、ニッケル、好ましくは亜鉛、アルミニウム又はこれらの合金の金属被覆物を有することも可能である。
【0025】
本発明の好ましい一実施の形態では、使用される金属ストリップは、スチールストリップ、より好ましくは亜鉛メッキされたスチールストリップである。亜鉛メッキされたスチールストリップは、非常に広い範囲の用途のために、市販されている。当業者は、所望の最終用途に従い、適切なスチールストリップを選択する。
【0026】
「亜鉛メッキされた」という用語は、当然、Zn合金での被覆を含む。スチールを被覆するためのZn合金は、当業者にとって公知である。所望の最終使用に依存して、当業者は、合金成分の性質と量を選択する。亜鉛合金の代表的な成分は、特に、Al、Mg、Pb、Si、Mg、Sn、Cu、又はCd、好ましくはAl又はMgを含む。合金は、AlとZnがおおよそ等しい量で存在する、Al−Zn合金であっても良い。被覆物は、主として均質な被覆物であって良く、又他に、被覆物は、濃度勾配を有していても良い。このような材料は、Zn−Mg合金であることも好ましい。これは、例えば、Zn−Mg合金で被覆されたスチール(スチール−ホットディップ亜鉛メッキスチール)を含んでも良く、又、Mgで追加的に蒸気被覆された、亜鉛メッキスチールを含んでも良い。この意味において、Zn/Mg合金を表面に形成することも可能である。
【0027】
ストリップは、片側又は両側に亜鉛メッキされて良い。両側に亜鉛メッキする場合、本発明の方法を使用して両側、又は他に片側を処理することが可能である。
【0028】
本発明の方法は、ストリップ被覆ラインを使用して行なうことができる。図1〜3は、ストリップ被覆ラインの主要な要素の種々の実施の形態を略図的に示している。コイルから未加工のスチールストリップを巻き戻しのための装置、被覆されたストリップを再度巻き取る装置、及びストリップの駆動装置は図示していない。当然ながらストリップ被覆ラインは、追加的に、代表的な成分、例えばドレッシングステーション又はクリーニングステーションを、当然有していても良い。更に、ストリップ被覆ラインは、例えば、金属ストリップが最初に亜鉛メッキされ、次に、本発明の方法によって仕上被覆が施され、そして次に、所望によりペイント(塗装)される、全体の製造ラインの一部であっても良い。金属ストリップは、例えば20〜300m/s、好ましくは50〜150m/sの速度でラインを移動しても良い。
【0029】
本発明の方法を行うために、処方物(F)は、走行方向(2)に移動する金属ストリップ(1)に、デバイス(3)(装置(3))を使用して施される。処方物は、例えば、スプレーデバイス(図1の符号(3))を使用してストリップに吹き付けられて良い。当然ながら処方物は、供給ロール又は順次処方物をストリップに施す2個以上のロールを組み合わせて施されても良い。供給ロールへの供給(塗装)は、例えばスプレー、浸漬、又は注ぎによって行われても良い。
【0030】
通常、ラインは、過剰の処方物を除去するため、及び/又は金属ストリップ上の被覆物をスムーズにするための装置を含んでも良い。
【0031】
この装置は、例えば、ドクターブレードデバイス、例えばドクターナイフであっても良い。好ましい一実施の形態では、この装置は、互いに対向して設けられた2個のロール(4)及び(4’)であっても良い。間隙が2個のロール(4)及び(4’)の間に残される(この間隙は、その幅に調節可能である)。この目的のために、1個又は両方のロールが、ロール位置を調節するための対応するメカニズムを備えていても良い。本方法を行うために、金属ストリップは、ロール(4)、(4’)間の調節可能な間隙を通って長さ方向に移動される。この場合、ロールは、スチールストリップの走行方向(2)の方向へ回転する。
【0032】
アプリケーターデバイス(3)を使用して、処方物を最初に1個のロール(4)に、又は両方のロール(4)及び(4’)に施し、そしてロールから金属ストリップに移すことによって、金属ストリップへの処方物の供給(施すこと)を、直接的に行なっても良い。任意に、それぞれ適切なドクターブレード装置(7)と(7’)を使用して、過剰の処方物をロール(4)と(4’)から除去することも可能である。この実施の形態は、例えば図2及び図3に例示されている。当然、2個以上のローラーの組み合わせを有する、アプリケーターデバイス(3)の異なる実施の形態も可能である。
【0033】
更に、ラインは、−供給する処方物の特性に依存して−乾燥装置を含んでも良く、該乾燥装置を使用して、処方物(F)中に存在する溶媒を全て、又は部分的に除去しても良い。乾燥装置(5)は、アプリケーターデバイス(3)の、(ストリップの走行方向(2)の)下流側に配置されるか、又は存在する場合には、装置(4)の下流側に設けられた乾燥装置(5)が配置される。アプリケーターデバイス(3)と乾燥装置(5)の間の距離によって、与えられたストリップの速度における、処方物の金属表面での作用時間が決定される。
【0034】
乾燥装置(5)は、例えば、強制空気乾燥機又はIR乾燥機であって良い。乾燥時間は、使用する処方物(F)及び被覆物の所望の特性に従い、当業者によって調節される。それぞれピークメタル温度として測定して、25〜95℃の温度、及び好ましくは30〜80℃の温度が維持される。強制空気乾燥機内の強制空気の温度は、当然、より高い。
【0035】
金属ストリップが乾燥装置(5)を通過した後、金属ストリップには、乾燥した仕上被覆物が残る。ここで、「乾燥した」という用語は、当然、溶媒の少量、より特定的には溶媒の微量が被覆物(層)中に存在し得ることを除外するものではない。
【0036】
本発明に従い、金属表面上の非金属仕上被覆物は、被覆物厚さが3μm未満、好ましくは2μm未満である。この被覆物は、より特定的には、被覆厚さが1nm〜1000nm、好ましくは5nm〜500nm、及びより好ましくは10nm〜300nmである。乾燥した被覆物の場合、これらのデーターは、乾燥被覆物厚さに基づく。
【0037】
被覆物(被膜)の厚さは、当業者によって、原則として公知の手段を使用して、例えば施した処方物(F)の量と濃度によって制御されても良い。更に、装置(4)の適切なセッティング、例えば、装置(4)がロール(4)と(4’)を含む場合、ロール相互間の距離、又は装置(4)がドクターブレードを含む場合、ドクターブレードのストリップ金属の表面からの距離のセッティングによる調節も可能である。選択された被覆物厚さは、それぞれ、被覆物の所望の特性に基づいている。
【0038】
本発明に従い、使用した装置は、−ストリップの走行方向に見て−アプリケーターデバイス(3)の下流又は−存在する場合には−平滑化装置(4)の下流、又は乾燥ステーション(5)の下流に、少なくとも1個のIRセンサー(6)を含む。IRセンサーは、反射配置(reflection geometry)に作用し、そしてストリップの被覆された側に面している。ある可能な配置構成を図2に示す。IRセンサーを使用して、例えば施された仕上被覆物、施された不動態化被覆物、又は施されたオイル被覆物の厚さを連続的に(すなわちストリップが移動している間)検知することができる。
【0039】
この装置は、2個以上のIR装置も備えることができる。ストリップ(1)の上部側と下部側の両方が被覆される場合、センサーは、ストリップの上部側と下部側に配置されて良い。この構成が、図3に例示されている。一方側につき、2個以上のIRセンサーを使用することも可能であり:例えば、金属ストリップの幅に渡って分散配置された2個以上のIRセンサーを使用することも可能である。従って、例えば、3個のIRセンサーを、ストリップの幅に渡って分散配置することも可能であり、従って、ストリップの異なる領域での被覆物の厚さの差異を検知することができる。
【0040】
使用されるIRセンサー(6)は、少なくとも1個の広帯域−放射IR源(9)、及び少なくとも2個の測定チャンネルを含む、少なくとも1個のIRマルチチャンネルディテクター(10)を含む。
【0041】
広帯域−放射IR源は、全てのIRスペクトル又はこれらの少なくとも部分領域、特に中赤外域(MIR、4000cm−1−200cm−1)を放射(照射)する全てのIR−放射源と理解される。黒体のスペクトルを放射するIR放射装置を使用することが可能であり、好ましい。定義された波長のみを放射するレーザーは、本発明を行う上では好ましくない。原則として、通常のIRランプを使用することが可能である。しかし、耐熱性フィルム、例えば適切な支持体上のアモルファスカーボンのフィルムを、IR放射の発生器として使用した放射器(emitter)を使用することが好ましい。この種のIR放射器は市販されており、そして白熱ワイヤーを有するIRランプよりも振動に対して弱くない。
【0042】
本発明に従い使用されるIRセンサー(6)は、通常、1〜16個のIR源を有しており、4から8個のIR源を有しているセンサーが特に適切であることがわかった。一方では、IR源の数は、放射の強度を決定し、そして他方では、多数の放射源は、ストリップ表面の放射をより均一にし、そして結果として、測定結果の品質が良好にする。
【0043】
マルチチャンネルディテクター(10)では、複数のIRディテクターが、コンパクトな測定体(測定統一体)にまとめられ、ディテクターに入射(照射)するIR線が、複数の測定チャンネルによって分析可能である。マルチチャンネルディテクターは、少なくとも2個の測定チャンネル、好ましくは2〜6個の測定チャンネル、及びより好ましくは2〜4個の測定チャンネル、及び極めて好ましくは2又は4個の測定チャンネルを含む。
【0044】
各測定チャンネルには、IRフィルター(11)が設けられており、該IRフィルター(11)は、測定チャンネルの上流側に備えられている。フィルターは、それぞれ特定のIR波長範囲のみを透過させることができる。通常、IR−透過性範囲のFWHM(full width at half-maximum)は、50〜250nmである。IRスペクトルの比較的狭い範囲のみが透過性である、この種のフィルター(narrow band pass filter)は、シリコン又はゲルマニウム基材を基礎にして製造することができ、そして異なる波長範囲のために、市販されている。本発明に従い、ディテクターは、少なくとも2個の異なるIRフィルターを含み、そして各測定フィルターは、異なるフィルターを備えていることが好ましい。
【0045】
本願では、2000〜5000cm−1の範囲、好ましくは2500〜4000cm−1の範囲で測定することが適切であるとわかった。従ってIRフィルターは、当業者によって、個々の測定チャンネルが、上述した合計範囲の異なる部分領域を捕捉するように選ばれる。
【0046】
IR源(9)及びマルチチャンネルディテクター(10)は、センサー(6)内に、以下のように空間的に配置される。すなわち、IR源又は複数のIR源(9)がIR放射を被覆されたストリップ面に放射し、この放射が、仕上被覆物のIR吸収の性質に依存して、部分的にストリップ表面から反射し、そして反射した放射がIRマルチチャンネルディテクター(10)によって測定されるように、IR源(9)及びマルチチャンネルディテクター(10)が、センサー(6)内に配置される。
【0047】
図6は、IRセンサー(6)の好ましい一実施の形態の下側部分を略図的に示している。マルチチャンネルディテクター(10)は、中央部分に配置され、そしてIR源(9)が、マルチチャンネルディテクター(10)を、同心円状に囲んでいる。6aは、8個のIR源及び4個のチャンネルディテクター(10)の配置構成を示し;図6bは、4個のIR源及び2個のチャンネルディテクター(10)の配置構成を示している。
【0048】
図7は、ディテクターを使用した測定を略図的に示している。IR源(9)は、相互の方向に僅かに傾斜しており、そして仕上被覆物(13)が設けられた金属ストリップ(12)へIR放射を放射する(この放射は、個々のIR放射器が、高度に均一な測定個所をストリップ表面上に形成するものである)。ここから、放射線は、マルチチャンネルディテクター(10)に反射される(図7には、2個の異なるIRフィルター(11)を有する2−チャンネルディテクターが示されている)。
【0049】
IRスペクトロメーターとは対照的に、上述したIRセンサーは移動する部分がなく、そして従って、振動に対して抵抗性が非常に強い。
【0050】
ここで、IR源(9)は、仕上被覆物で被覆された金属表面上の測定個所が、通常、数ミリメートル、例えば5〜30mmの直径を有するように調節されるべきである。
【0051】
IRセンサーの金属ストリップからの距離は、揺れ(flapping)動作やストリップ内の溶接シームによって損傷を受けないように、非常に短くするべきではない。IRセンサーからの放射線の出口個所から金属表面までの距離が、20〜250mm、好ましくは25〜200mm、より好ましくは30〜180mm、及び極めて好ましくは30〜120mmであることが適切であるとわかった。ストリップ表面からのIRセンサー(6)の距離が大きい程、IR(9)の数も多くなる。
【0052】
IRマルチチャンネルディテクターによって、反射された放射線の強度を測定することにより、算術ユニット(計算器)を使用して、仕上被覆物の被覆厚さを測定(計測)することができる。上記算術ユニットは、センサー内部に設けられることが好ましいが、分離状態の計算器であっても良い。2個以上のIRセンサー(9)が、ストリップ上の2箇所以上で、被覆物厚さを同時に測定するために使用される場合、個々の被覆物厚さが、各センサーから中央制御装置(中央制御ユニット)に送られて良く、又は個々のセンサーからコンセントレーター装置に送られ、及びそこから中央制御装置に送られても良い。
【0053】
更なる好ましい実施の形態では、金属ストリップは、IR測定の個所またはその近くで、少なくとも1個の追加的なローラー又は偏向ローラー(8)で支持される。ストリップ被覆ラインでの金属ストリップは、IR測定を混乱させる揺れ動作を行い得るものである。サポートローラー(支持ローラー)又は偏向ローラー(8)は、このような揺れ動作を抑制し、又は少なくとも弱めることができる。「サポートローラー」という用語は、直線的に走行する(より特定的には、水平に走行する)金属ストリップを、走行方向を変えることなく支持するローラーを意味し;変更ローラーは、同時に、ストリップの走行方向を大きく又は小さく変化させる。本発明のこの実施の形態は図4と図5に例示されている。サポートローラー又は偏向ローラー(8)は、金属ストリップの、IR測定から離れた側(例えば、IR測定の直下)に配置される。この種の配置構成は必須のものではなく、揺れ動作を効果的に抑制し、又は少なくとも弱めることができるように、ローラーがIR測定の近くに配置されていれば十分である。通常、距離が短くなる程、得られる結果は良好になる。通常、サポートローラー又は偏向ローラー(8)の測定個所からの距離は、4m以下、好ましくは1m以下であるべきである。
【0054】
上述した測定装置を使用することにより、金属ストリップが移動している間、施された被覆物の厚さを測定することが可能になる。施された仕上被覆の厚さが厚くなる程、その吸収の範囲が大きくなり、そしてこれに対応して、IRセンサーによって記録される反射されたIR放射の割合が小さくなる。
【0055】
処方物(F)
使用する処方物(F)は、仕上被覆物を金属ストリップに施すことが可能な如何なる種類の処方物をも含む。
【0056】
これらは、例えば、防食オイル、ローリングオイル、及び/又はフォーミングオイル処方物であって良い。このようなオイルは、一般的な添加剤及び/又は助剤、例えば腐食防止剤を含んで良い。
【0057】
少なくとも1種の溶媒及び被覆物形成成分を含む液体処方物(F)を使用することが好ましい。これらは液体処方物であることが好ましい。
【0058】
溶媒として、処方物(F)は、水のみを含むことが好ましい。少量の水−混和性の有機溶媒を更に含んでも良い。例は、モノアルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、高級アルコール、例えばエチレングリコール、又はポリエーテルポリオール、エーテルアルコール、例えばブチルグリコール又はメトキシプロパノール及びN−メチルピロリドンを含む。しかしながら、水の量は、通常、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、及び極めて好ましくは少なくとも95%である。数値は、それぞれ、全溶媒の合計量に基づいている。
【0059】
被覆物形成成分は、例えば、溶解した金属イオン又は表面上に、例えば酸化物及び/又は水酸化物の状態で体積した金属化合物であって良く、及びより特定的には、元素Zn、Mg、Al、Cr、Ni、Co、Mo、Mn、W、Si、Zr又はTiの化合物であっても良い。被覆物形成成分は、更に、有機成分であっても良い。有機成分の例は、ワックス、又はオイル及び(特に水溶性の、又は少なくとも水分散性の)ポリマーを含む。
【0060】
本発明の一実施の形態では、処方物(F)は、成分の以下の群:
1.ヘキサフルオロメタレート[MF6]2−、(但し、M=Ti、Si、Zr)
2.アルミニウム、モリブデン、クロム、タングステン、及びマンガンのオキソメタレート
3.Ca、Mg、Zn、Ni、Fe、Ni、Crのカチオンを含む塩、
4.NO、NO、PO3−、HPO2−、HPO、SO2−、SO、CO2−、HCO又はCHCOOのアニオンを含む塩、
5.ローリングオイル及び腐食防止オイル、
6.ワックス、
7.有機フィルム形成剤、
8.以下の成分の少なくとも1種から得ることができるポリマー及びコポリマー
・1個又は2個の二重結合を有するC、C又はCカルボン酸、特にアクリル酸
・アクリル酸エステル
・不飽和スルホン酸、ホスホン酸、ホスホン酸エステル;
・ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、ビニルアセテート、アクリルアミド、及び
・エチレンイミン
から選ばれる少なくとも1種の成分を含む。
【0061】
処方物(F)は、例えば、水及び少なくとも1種のオイル、及び/又はワックス、及び腐食防止剤を含む、pH>7の水性金属加工液体(aqueous metalworking fluid)であっても良い。この種の処方物は、例えば、変形の間の摩擦係数を低減させる作用を有する。
【0062】
本発明の好ましい一実施の形態では、表面処理は、不動態化、好ましくは亜鉛メッキしたスチールストリップの不動態化である。不動態化のための処方物は、原則として当業者にとって公知である。
【0063】
本発明の一実施の形態では、処理は、pH<5の水性処方物(F)を使用したフォスフェイト不動態化であって良い(処方物は、水、及び少なくとも1種のリン酸及び/又はフォスフェイト及び少なくとも1種の金属イオンを含む)。金属イオンは、Cr3+、Zn2+、Mg2+、Ca2+又はAl3+、から成る群から選ばれる少なくとも金属イオンであることが好ましい(Cr3+、Zn2+、Mg2+、Ca2+又はAl3+が好ましい)。
【0064】
本発明の好ましい一実施の形態では、少なくとも1種の水溶性又は水分散性ポリマーを含に、pH<5の水性の酸性処方物(F)が不動態化に使用される。水溶性ポリマーを使用することが好ましい。
【0065】
酸性pHを形成して良く、この理由は、ポリマー自体が酸性基十分な量で含み、又は他に、処方物(F)は、水溶性又は水分散性ポリマーだけでなく、無機又は有機酸またはこれらの混合物も含むからである。このような酸の選択は、処方物の他の成分と一緒に不利な影響を及ぼさない限り、制限がない。従って、当業者が(適切に)選択する。適切な酸の例は、リン酸、ホスホン酸、又は有機ホスホン酸、例えば、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸(HEDP)、2−ホスホンブタン−1,2,4−トリカルボン酸(PBTC)、アミノトリ(メチレンホスホン酸)(ATMP)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(EDTMP)又はジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DTPMP)、スルホン酸、例えば、メタンスルホン酸、アミドスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、m−ニトロベンゼンスルホン酸、及びこれらの誘導体、硝酸、ギ酸、及び酢酸を含む。原則として、不飽和酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ビニルホスホン酸、及びアクリルアミドプロピルスルホン酸を使用することも可能である。リンを含む酸、例えばHPO、ホスホン酸、上述した有機ホスホン酸、HNO又はメタンスルホン酸が好ましい。これらの酸については、HPO、又は他のリンを含む酸が好ましい。
【0066】
不動態化のために使用されることが好ましい処方物(F)は、処方物の全成分の量(すなわち溶媒を含む)に対して、通常、10〜35質量%、好ましくは12〜35質量%、より好ましくは14〜32質量%、及び極めて好ましくは16〜28質量%の水溶性ポリマーを含む。
【0067】
不動態化のために使用されることが好ましい処方物(F)は、pHが5以下、より特定的には、pHが0.5〜5、好ましくは0.8〜3.5である。予期されるように、調製物にpHは、使用するポリマーの性質と濃度に依存する。pHは、処方物中の更なる塩基性又は酸性成分によっても影響されて良い。
【0068】
ポリマーの他に、及び使用される場合、不動態化に使用される酸、処方物(F)は、任意に金属イオン又は金属化合物を含んでも良い。
【0069】
金属イオンは、Cr、Zn、Mg、Ca、Al、Mn、Mo、Co、Ni、Fe、Ti、Si、Zrから成る群から選ばれる少なくとも1種の金属のイオンであって良く、Zn、Mg、Ca、又はAlから成る群から選ばれる少なくとも1種の金属のイオンであることが好ましい。これ以外に、調製物は、更なる金属イオンを含まないことが好ましい。イオンは、水和した金属イオンとして存在して良く、又はこの替わりに、溶解した化合物の状態、例えば錯体化合物として存在しても良い。特に、イオンは、ポリマーの酸性基に結合する素性複合体であっても良い。
【0070】
存在する場合、Cr、Zn、Mg、Ca、Al、Mn、Mo、Co、Ni、Fe、Ti、Si、Zrから成る群からの金属のイオンの量は、処方物中の全てのポリマーXの合計量に対して、0.01質量%〜20質量%、好ましくは0.5〜18質量%、及びより好ましくは1〜15質量%である。
【0071】
処方物は、更に、少なくとも1種の溶解したフォスフェイトイオンを含んでも良い。このイオンは、如何なる種類のフォスフェイトイオンであっても良い。このイオンは、例えば、オルトフォスフェイト、又はジフォスフェイトであって良い。当業者にとって、水溶液のpHと濃度に依存して、種々のイオンの解離状態の間で平衡が存在していても良いことが明らかである。処方物は、更に、メタンスルホネートイオンを含んでも良い。
【0072】
フォスフェイトイオンが存在する場合、金属イオンとフォスフェイトイオンは、両イオンを含む溶解性塩の状態で使用されることが好ましい。この種の化合物の例は、Zn(PO、ZnHPO、Mg(PO、又はCa(HPO及び/又はこれらの対応する水和物を含む。
【0073】
この替わりに、金属イオンとフォスフェイトイオンは、相互に別々に加えられても良い。例えば、金属イオンは、対応する硝酸塩、アルカンスルホネート、又はカルボキシレート、アセテートの状態で使用されても良く、及びフォスフェイトは、リン酸の状態で使用されて良い。酸の影響下に溶解される、不溶性又は僅かにしか溶解しない化合物、例えば対応するカーボネート、酸化物、オキシド−ハイドレート、又は水酸化物を使用することも可能である。
【0074】
同様にして、金属イオン及びメタンスルホネートイオンを、一緒に、メタンスルホン酸の金属イオン、例えばZn(CHSOの状態で使用することも可能であり、又は他に、これらを、他の金属塩とメタンスルホン酸の状態で、別々に使用することも可能である。
【0075】
処方物中のフォスフェイトイオン及び/又はメタンスルホネートイオンの量は、処方物の所望の特性に従い、当業者によって設定される。存在する場合、その量は、オルトリン酸として計算して、及び水溶性ポリマーに基づいて、通常、0.01質量%〜20質量%、好ましくは0.5質量%〜25質量%、より好ましくは1〜25質量%である。
【0076】
更に処方物は、任意に、処方物中の分散物中に、少なくとも1種のワックスを含んでも良い。異なるワックスの混合物も使用可能である。ここで、「ワックス(wax)」という用語は、ワックス自体のみならず、ワックス分散物を形成するのに使用して良い助剤をも含む。当業者は、水性分散物に使用するためのワックスを知っており、そして適切に選択する。ワックスは、例えば、モンタンワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンに基づく、フッ素化ポリエチレン、例えばPTFEに基づく、又はC、H及びFに基づくワックスであっても良い。「ポリエチレン」という用語は、追加的に、エチレンと他のモノマー、より特定的には、他のオレフィン、例えばプロピレンとのコポリマーを含むことが意図されている。この種のエチレンコポリマーは、少なくとも65質量%のエチレンを含むことが好ましい。ワックスを加えることによって、表面の、改質のために使用される器具の表面との摩擦を、有利に低下させることができる。
【0077】
任意に使用されるワックスの量は、不動態化層の所望の特性に従って、当業者によって決定される。確立される量は、水溶性ポリマーに対して、通常、0.01〜70質量%、好ましくは0.5〜25質量%、及びより好ましくは1〜10質量%である。
【0078】
処方物のために、任意に使用できる更なる成分は、界面活性成分、腐食防剤、錯化剤、又は一般的な亜鉛メッキ助剤である。
【0079】
原則として可能な任意の成分から、所望の用途に従い、当業者はこれら及びその量を選択する。しかしながら、水溶性ポリマーに加え、任意の成分の量は、ポリマーに対して、通常20質量%以下、好ましくは10質量%以下、及び5質量%以下であるべきである。
【0080】
本発明に従い使用される処方物(F)は、成分を単純に混合することにより得られても良い。ワックスが使用される場合、ワックスは、最初に水に別個に分散され、そして他の成分を有する分散物として混同される。この種のワックス分散物は市販されている。
【0081】
本発明の好ましい一実施の形態では、水溶性ポリマーは、酸性基を含むポリマーX、又は塩基性基を含むポリマーYである。
【0082】
ポリマーXを有する処方物
酸性ポリマーXは、好ましくは少なくとも「0.6モルの酸性基/100gのポリマー」を含むことが好ましい。この数値量は、遊離酸基に基づく。ポリマーは、好ましくは少なくとも「0.9モルの酸性基/100g」、より好ましくは少なくとも「1モルの酸性基/100g」、及び極めて好ましくは少なくとも「1.2モルの酸性基/100g」を含む。
【0083】
ポリマーXの酸性基は、通常、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸又はホスホン酸基から選択される。好ましくは、これらは、カルボキシル基、リン酸又はホスホン酸基である。使用するポリマーXは、少なくともCOOH基を含むことが好ましい。特に好ましくは、使用するポリマーXは、酸性基を含む少なくとも2種の異なるモノマーのコポリマーである。
【0084】
酸性ポリマーXが使用される場合、使用される処方物の酸性は、実質的にポリマーの酸性基の結果としてもたらされるべきである。処方物中のポリマーXの他に、追加的な酸の量は、従って、全ポリマーXの量に対して、通常、50質量%を超えるべきではない。好ましくは、30質量%、より好ましくは20質量%、及び極めて好ましくは10質量%を超えるべきではない。本発明の第2の特に好ましい実施の形態では、追加的な酸は存在しない。
【0085】
ポリマーXの酸性基は、遊離酸基(free acid group)の形態をとるべきである。しかしながら、最小限の範囲で、塩基、例えば、アンモニア、アミン、アミノアルコール、又はアルカリ金属ヒドロキシドを使用して中和されても良い。この種の部分的な中和は、pHの適合を目的として行われても良い。しかしながら、これは、ポリマーの製造(調製)の一部として自動的に行われても良い。当業者は、例えば、この中和は、酸性基を多く有するポリマーの製造過程で、ポリマーにモノマーを(強制的に)導入するために、所定の酸性基の中和に必要であることを知っている。
【0086】
しかしながら、亜鉛表面への酸アタック(acid attack)を効果的にするために、中和の程度は、高くなり過ぎてはならない。従って、通常、ポリマーX中に存在する25モル%以下の酸性基が中和されるべきであり、好ましくは、20モル%以下、より好ましくは12モル%以下の酸性基が中和されるべきである。
【0087】
本発明を行うために、(メト)アクリル酸単位を有する、ホモ−又はコポリマーXを使用することが特に好ましい。
【0088】
本発明の特に好ましい一実施の形態では、ポリマーXは、(メト)アクリル酸単位(A)及び(これとは異なる)酸性基を有するモノエチレン性不飽和モノマー(B)から形成される、1種以上の水溶性コポリマーX1を含む。任意に、OH基を含む(メト)アクリルエステル(C)及び/又は更なるモノマー(D)が、構造単位として存在しても良い。これを超えて、更なるモノマーは存在しない。コポリマーX1中の(メト)アクリル酸(A)の量は、30〜90質量%、好ましくは40〜80質量%、及びより好ましくは50〜70質量%であり、この数量は、ポリマー中の全モノマーの合計に基づいている。
【0089】
モノマー(B)は、(A)とは異なるが(A)と共重合可能であり、そして1種以上の酸性基を含む、少なくとも1種のモノエチレン性不飽和モノマーである。2種以上の異なるモノマー(B)も使用されて良い。モノマー(B)中の酸性基は、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基又はスルホン酸基から成る群から選ばれる基であることが好ましい。好ましくは、この基は、カルボキシル基、リン酸基、又はホスホン酸基の群から選ばれる。この種のモノマーの例は、クロトン酸基、ビニル酢酸、モノエチレン性不飽和ジカルボン酸のC−Cモノエステル、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸(AMPS)、ビニルホスホン酸、モノビニルフォスフェイト、マレイン酸、フマル酸、又はイタコン酸を含む。ポリマーX1中のモノマー(B)の量は、ポリマー中の全モノマーの合計に対して、10質量%〜70質量%、好ましくは20質量%〜60質量%、及びより好ましくは30〜50質量%である。
【0090】
本発明の好ましい一実施の形態では、モノマー(B)は、4〜7個の炭素原子を有するモノエチレン性不飽和ジカルボン酸(B1)及び/又はモノエチレン不飽和リン酸及び/又はホスホン酸(B2)である。
【0091】
モノマー(B1)の例は、マレイン酸、フマール酸、メチルフマール酸、メチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸、メチレンマレイン酸、又はイタコン酸である。所望により、モノマーは、対応する環状無水物の状態で使用されても良い。マレイン酸、フマール酸、及びイタコン酸が好ましく、マレイン酸及び/又は無水マレイン酸が特に好ましい。
【0092】
モノマー(B2)の例は、ビニルホスホン酸、モノビニルフォスフェイト、アリルホスホン酸、モノアリルフォスフェイト、3−ブテニルホスホン酸、モノ−3−ブテニルフォスフェイト、モノ(4−ビニルオキシブチル)フォスフェイト、ホスホンオキシエチルアクリレート、ホスホンオキシエチルメタクリレート、モノ(2−ヒドロキシ−3−ビニルオキシプロピル)フォスフェイト、モノ(1−ホスホンオキシメチル−2−ビニルオキシエチル)フォスフェイト、モノ(3−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)フォスフェイト、モノ(2−アリルオキシ−1−ホスホンオキシメチルエチル)フォスフェイト、2−ヒドロキシ−4−ビニルオキシメチル−1,3,2
−ジオキサホスホール、及び2−ヒドロキシ−4−アリルオキシメチル−1,3,2−ジオキサホスホールを含む。このモノマーは、ビニルホスホン酸、モノビニルフォスフェイト、アリルホスホン酸が好ましく、ビニルホスホン酸がより好ましい。
【0093】
コポリマーX1は、更に任意に、少なくとも1種の、OH基を含む(メト)アクリル酸エステル(C)を含んでも良い。モノヒドロキシ(メト)アクリル酸エステルが好ましい。
【0094】
好ましくは、モノマー(C)は、一般式がHC=CHR−COOR(但し、Rは、原則としてH又はメチルとして公知であり、及びRが、R2a、R2b、又はR2cの群から選ばれる)の、少なくとも1種の(メト)アクリルエステルを含む。
【0095】
2a基は、一般式−(R−O−)−Hの基である。この式では、nは、2〜40の自然数である。好ましくはnは、2〜20、及びより好ましくは2〜10である。基Rは、相互に独立して、2価の、直鎖状の、又は枝分かれした、2〜4個のCを有するアルキル基である。例は、特に、1,2−エチレン基、1,2−プロピレン基、1,2−ブチレン基、及び1,4−ブチレン基を含む。これらは、異なる基の混合物であっても良い。好ましくは、これらは、1,2−エチレン及び/又は1,2−プロピレン基である。特に好ましくは、これらは、もっぱら1,2−エチレン基である。更に、1,2−エチレン及び1,2−プロピレン基の両方を含む基R2a(エチレン基の量は、全基Rの合計数に対して少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、及びより好ましくは少なくとも80%である)が好ましい。基R2aの例は、−CH−CH−O−CH−CH−O−CH−CH、−CH−CH(CH)−O−CH−CH(CH)OH、−CH−CH(CH)−O−CH(CH)−CHOH、CH(CH)−CH−O−CH(CH)−CHOH又は−CH(CH)−CH−O−CH−CH(CH)OHを含む。
【0096】
基R2bは、一般式−R−(OH)の基である。この式で、mは、1〜6の自然数、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜3の自然数及び例えば1又は2である。基Rは、(m+1)価の、直鎖状の、又は枝分かれした、2〜10個のC原子、好ましくは2〜6個のC原子、及びより好ましくは2〜4個のC原子を有するアルキル基である。
【0097】
アルキル基は、基R中に、C原子に当たり、1個以下のOH基Xが存在するという条件で、少なくとも1個のOH基と置換される。OH基を有する適切な基R2bの例は、一般式−(CH−OH、例えば−CH−CH−OH、−CH−CH−CH−OH、−CH−CH−CH−CH−OH、−CH−CH−CH−CH−CH−CH−OHの直鎖状基を含む。
【0098】
本発明を行うための特に好ましい基R2bは、−CH−CH−OH、−CH−CH−CH−OH、−CH−CH−CH−CH−OH、−CH(CH)−CH−OH、又はCH−CH(OH)−CH−OHの群から選ばれる基である。
【0099】
本発明の更なる好ましい実施の形態では、少なくとも1種の基R2bが、一般式−R−CH(R)OHの、枝分かれしたアルキル基である。この式中、R及びRは、それぞれ、R及びRの合計のC原子数が9以下であるという条件で、1〜8個のC原子、好ましくは1〜6個のC原子、より好ましくは1〜4個のC原子を有する、直鎖状又は枝分かれした、アルキル基である。好ましくは、R及びRは、それぞれ、直鎖状のアルキル基である。特に好ましくは、Rは、メチル基である。これは、例えば、−CH−CH(CH)−OHであっても良い。この種の枝分かれした(メト)アクリル酸エステルでは、OH基が、他のCOOH−含有モノマーとエステル結合を形成する傾向が明確に低減される。極めて好ましいものは、−CH−CH(CH)−OH、及び/又は−CH(CH)−CH−OHであり、より特に好ましくは、両方の基の混合物である。この種の基を有する(メト)アクリル酸エステルは、単純な方法、例えば、(メト)アクリル酸を1,2−プロピレングリコールでエステル化することによって得られても良い。
【0100】
基R2cは、モノサッカリド(単糖)又はオリゴサッカリド基、好ましくはモノサッカリド基である。このサッカリドは、原則として、如何なる種のものであっても良い。ペントース及びヘキソースから誘導される基、より特定的には、ヘキソースから誘導される基を使用することが可能であり、好ましい。適切なモノサッカリドの例は、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース又はリボースを含む。グルコースから誘導される基を使用することが好ましい。これらは、サッカリドの誘導体であっても良く、例えば、還元又は酸化を通してサッカリドから由来する生成物であっても良い。この種は、より特定的には、糖酸、例えばグルコン酸であっても良い。
【0101】
コポリマーX1中のモノマー(C)の量は、0質量%〜40質量%、好ましくは1質量%〜30質量%である。
【0102】
モノマー(A)、(B)、(C)及び使用される場合(D)の他に、(A)、(B)及び(C)とは異なる、0〜30質量%の少なくとも1種の更なる不飽和モノマー(D)を任意に使用することができる。これら以外には、モノマーは、使用されない。
【0103】
モノマー(D)の目的は、コポリマーX1の特性を微細に調節することである。当然、2種以上の異なるモノマー(D)を使用することも可能である。これらは、当業者によって、コポリマーの所望の特性に従い、及びモノマー(A)、(B)及び(C)と共重合可能であるという条件で、選択される。
【0104】
好ましくは、これらは、モノエチレン性不飽和モノマーである。しかしながら、特別な場合、2つ以上の重合可能な基を有するモノマーを少量使用することも可能である。これにより、コポリマーを、小範囲で架橋することができる。
【0105】
適切なモノマー(D)の例は、特に、(メト)アクリル酸のエステル、例えばメチル(メト)アクリレート、エチル(メト)アクリレート、ブチル(メト)アクリレート、又は2−エチルヘキシル(メト)アクリレートを含む。更に、適切なものは、ビニル又はアリルエーテル、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ビニルシクロヘキシルエーテル、ビニル−4−ヒドロキシブチルエーテル、デシルビニルエーテル、2−(ジエチルアミノ)エチルビニルエーテル、2−(ジ−n−ブチルアミノ)エチルビニルエーテル又はメチルジグリコールビニルエーテル及び対応するアリル化合物である。ビニルエステル、例えばビニルアセテート又はビニルプリピネートを使用することも可能である。塩基性コモノマー、例えばアクリルアミド及びアルキル−置換されたアクリルアミドを使用することも可能である。
【0106】
架橋モノマーの例は、2つ以上のエチレン性不飽和基を有する分子を含み、例は、ジ(メト)アクリレート、例えば、エチレングリコールジ(メトアクリレート)又はブタン−1,4−ジオールジ(メト)アクリレート、又はポリ(メト)アクリレート、例えば、トリメチロールプロパントリ(メト)アクリレート、又は他に、グリコアルキレン又はポリアルキレングリコールのジ(メト)アクリレート、例えば、ジ−、トリ−、又はテトラエチレングリコールジ(メト)アクリレートである。更なる例は、ビニル(メト)アクリレート又はブタンジオールジビニルエーテルを含む。
【0107】
一緒に使用される全モノマー(D)の量は、使用されるモノマーの合計量に対して、0質量%〜30質量%である。この量は、0質量%〜20質量%が好ましく、0質量%〜10質量%がより好ましい。架橋モノマー(D)が存在する場合、これらの量は、本方法のために使用される全モノマーの合計量に対して、通常、5質量%を超えるべきではなく、好ましくは2質量%を超えるべきではない。この量は、例えば、10質量ppm〜1質量%であっても良い。
【0108】
本発明の好ましい第1の実施の形態では、コポリマーXIは、(A)及び少なくとも1種のモノマー(B)を含む。好ましくは、これらは、モノマー(A)及び(B)の他に、更にモノマー(C)又は(D)を含む。この実施の形態の場合、(A)の量は、60〜90質量%が好ましく、(B)の量は、10〜40質量%が好ましい。この実施の形態で、特に好ましくは、コポリマーX1は、アクリル酸とマレイン酸、又はアクリル酸とイタコン酸の上述した量のコポリマーである。
【0109】
本発明の好ましい第2の実施の形態では、コポリマーX1は、(A)及び少なくとも1種のモノマー(B)、及び少なくとも1種のモノマー(B2)を含む。追加的に、及び特に好ましくは、モノマー(A)、(B1)及び(B2)の他に、更なるモノマー(D)は存在しない。この実施の形態の場合、(A)の量は好ましくは50質量%〜90質量%、(B1)の量は、好ましくは5質量%〜45質量%、(B2)の量は、好ましくは5質量%〜45質量%、及び(D)の量は、好ましくは0〜20質量%である。特に好ましくは、コポリマーX1は、アクリル酸、マレイン酸及びビニルホスホン酸の上述した量でのコポリマーである。
【0110】
本発明の好ましい第3の実施の形態では、コポリマーX1は、(A)及び少なくとも1種のモノマー(B2)及び少なくとも1種のモノマー(C)を含む。この実施の形態の場合、(A)の量は好ましくは20質量%〜60質量%、(B2)の量は、好ましくは20質量%〜60質量%、(C)の量は、好ましくは1質量%〜40質量%、及び(D)の量は好ましくは0質量%〜20質量%である。特に好ましくは、コポリマーX1は、アクリル酸、ビニルホスホン酸、及びヒドロキシエチルアクリレート及び/又はヒドロキシプロピルアクリレートのコポリマーである。
【0111】
ポリマーXは、当業者にとって公知の方法によって製造(調製)しても良い。好ましくは、コポリマーは、上述の成分(A)、(B)及び任意に(C)及び/又は(D)を水溶液中でラジカル重合(free-radical polymerization)させることによって製造される。ラジカル重合を行うことの詳細は、当業者にとって公知である。コポリマーX1の製造方法は、例えばWO2006/021308又はWO2006/134116(9頁38行目〜13頁24行目)に記載されている。
【0112】
合成されたコポリマーX1は、当業者にとって一般的な方法、例えば溶液の蒸発、スプレー乾燥、フリーズ乾燥又は沈澱によって、水溶液から分離されても良い。しかしながら、コポリマーX1は、重合の後、水溶液から分離されず、この替わりに、得られたコポリマー溶液は(所望により次に更に添加剤を加え)、本発明の方法のために、そのものとして使用される。このような直接的な使用を容易化するために、重合のために使用される水性溶媒の量は、溶媒中のポリマーの濃度が使用するのに適切であるように、開始時点から計算されるべきである。第1に濃縮物を製造し、その後現場で、水又は任意に他の溶媒混合物を使用して、所望の濃度に希釈することも可能である。
【0113】
本発明の方法のために使用されるポリマーX及び/又はコポリマーX1の分子量M(質量平均)は、所望の用途に従って、当業者によって設定される。例えば、分子量(モル質量:molecular weight)Mが、3000〜1000000g/molのポリマーを使用することが可能である。使用されるポリマーは、より特定的には、5000g/mol〜500000g/molのポリマー、好ましくは10000g/mol〜250000g/mol、より好ましくは15000〜100000g/mol及び極めて好ましくは20000〜75000g/molのポリマーである。
【0114】
ポリマーYを有する処方物
ポリマーYは、1種以上の異なる塩基性基を含む。
【0115】
塩基性基は、好ましくは、少なくとも、脂肪族及び/又は芳香族アミノ基を含む基であり、及びより好ましくは、5〜6環員(ring member)、及び1〜3個の窒素原子を有するヘテロ環である。
【0116】
本発明の好ましい一実施の形態では、ポリマーYは、ポリエチレンイミン(PEI)又はポリエチレンイミンの誘導体であって良い。誘導体は、より特定的には、N−官能化したポリエチレンイミンの誘導体、より特定的には、>N−(CH−S基(但し、xが、好ましくは1又は2、及びSが、酸性基、より特定的には、カルボキシル基、又はホスホン酸基である)を含む誘導体であって良い。この種のPEI誘導体は、例えば、非官能化PEIをアクリル酸又はビニルホスホン酸と反応させることにより得られても良い。
【0117】
本発明の更なる好ましい実施の形態では、ポリマーYは、対応するビニル化合物に基づいたポリマーであっても良い。このようなポリマーYの合成のための、適切なモノマーの例は、ビニルイミダゾール、ビニルラクタム、例えば、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、又は他のビニルヘテロ環、例えば、ビニルピリジンを含む。このようなポリマーは、ビニルイミダゾールを含むポリマーであることが好ましい。更に、これらは、他のコモノマー、例えばアルキルアクリレート、又は他に、例えば酸性基を含むモノマーを含んでも良い。不動態化のために適切な塩基性ポリマーは、例えばWO2004/081128に開示されている。
【0118】
所望の酸性pHを達成するために、通常、処方物に、追加的な酸が上述したように加えられる。ポリマーYが、塩基性基及び十分な量の追加的な酸性基を含む場合、所望により、酸を加えないことも可能である。
【0119】
被覆物厚さ、及びIRセンサーでのシステムコントロール
本発明の方法を使用して、IRセンサー(6)によって測定されるストリップ表面から反射されるIR放射の強度が、被覆物厚さを測定するために使用される。測定(決定)は、較正プロットとの比較に基づいて行われる。
【0120】
この場合、マルチチャンネルディテクター(10)のIRフィルター(11)が、使用する処方物(F)の性質に適応される。当業者は、成分に従い、適切な選択を行う。測定は、通常、IRを特に良好に吸収する領域で行なわれる。
【0121】
本発明の方法の好ましい一実施の形態では、測定を目的として、仕上被覆物のIRスペクトルから、特に良好に吸収する少なくとも1つの領域が選択され、そして加えて、仕上被覆物がIR吸収しない、少なくとも1つの領域、又は少なくとも僅かにしかIR吸収しな領域が選択され、そしてマルチチャンネルディテクター(10)に、選択した領域に対応するIRフィルター(11)が備えられる。僅かにしかIR吸収しない領域又は全くIR吸収しない領域が、背景効果(background effect)を除外するために使用される。データーの両方のセットを使用して、強く吸収する領域での、吸収の相対的な増加を測定することが可能になる。2つ以上の測定チャンネルの場合、例えば、2つ以上のバンド又は2つ以上のブランク値の測定を実施することが可能である。
【0122】
IRセンサー(6)によって測定されたデーターは、センサー内で、又は外部計算器(外部算術ユニット)内で評価され、そしてこれらのデータから、測定した強度又は計算結果と較正プロットを比較することにより、被覆物の厚さが計算される。較正プロットは、使用する各処方物に特有のものである。較正プロットは、表面処理のために使用される処方物(F)を、金属に、異なる被覆物厚さで施し、各場合においてセンサー(6)を使用してIRデータを測定し、そしてその測定とは独立した方法を使用して被覆物厚さを測定することによって得ることができる。
【0123】
被覆物厚さの同時測定のために、ストリップの2箇所以上で、2個以上のセンサーが使用される場合、個々の被覆物厚さは、各センサーから中央制御装置に伝達されるか、又は個々のセンサーからコンセントレーターに伝達され、そしてそこから中央制御装置に伝達される。
【0124】
測定した被覆物厚さは、施される処方物(F)の量を制御するのに使用される、従って、被覆物厚さの所望の目標値を得るために使用される。
【0125】
本発明の方法は、仕上被覆物が有機成分を含む場合、特に有利に使用することができる。IRセンサー(6)の好ましい操作範囲内で吸収するバンド、2500〜4000cm−1は、特にC−Hバンドであり、及びO−H又はN−Hバンドである。表面処理が不動態化であり、そして不動態化のために使用される処方物が、水溶性又は水分散性ポリマーである場合に、本発明の方法を使用することが極めて有利である。本発明のこの実施の形態で、2500〜3500cm−1で最大値を有するIRセンサーを使用することが可能であり、そして特に好ましい。例えば、2500〜3500cm−1では、ポリマーバックボーンのC−H吸収が存在する。
【0126】
以下に実施例を用いて、本発明を例示的に説明する。
【0127】
以下の処方物が不動態化のために使用された:
処方物I:
処方物に対して、25質量%のポリアクリル酸(M約40000g/mol、1.39molの酸性基/100gのポリマー)及び0.5質量%の硝酸を有する水性処方物。処方物のpHは0.9であった。
【0128】
処方物II:
処方物に対して、20質量%のポリアクリル酸(M約40000g/mol、1.39molの酸性基/100gのポリマー)及び0.5質量%の硝酸を有する水性処方物。処方物のpHは0.9であった。
【0129】
処方物III:
処方物に対して、25質量%のポリアクリル酸(M約40000g/mol、1.39molの酸性基/100gのポリマー)及び2.3質量%の硝酸を有する水性処方物。処方物のpHは0.4であった。
【0130】
不動態化の実施
処方物を、それぞれ、図1のものに類似したストリップ被覆ラインを使用して、亜鉛メッキしたスチールストリップに施した。金属ストリップは、幅が1450mmであり、及びストリップ速度が105m/minであった。
【0131】
4個のIR源及び4−チャンネルディテクターを有するIRセンサーが使用される。IRセンサーは、乾燥器の後方約20m、ストリップスチール上、ストリップ表面から30mmの距離で設けられた。4−チャンネルディテクターは、IR放射を、3400nm(2941cm−1;FWHM120nm)、3950nm(2531cm−1;FWHM90nm)、4450nm(2247cm−1;FWHM60nm)及び4660nm(2145cm−1;FWHM180nm)で選択するためのフィルターを備えていた。測定のために、2941cm−1と2531cm−1でのチャンネルのみを使用した。処方物でのIRスペクトルは、2941cm−1で比較的強い吸収を示し、そして2531cm−1で僅かな吸収しか示さなかった。
【0132】
スプレーにより施された処方物の量は、各場合において同一であった。処方物Iは、厚さが約0.6μmの仕上被覆物を与え、処方物IIは、厚さが約0.3μmの仕上被覆物を与え、そして処方物IIIは、厚さが約0.6μmの仕上被覆物を与えた。
【符号の説明】
【0133】
(1)金属ストリップ
(2)走行方向
(3)デバイス(装置)
(4)ロール(装置)
(4’)ロール(装置)
(5)乾燥ステーション
(6)IRセンサー
(7)ドクターブレード装置
(7’)ドクターブレード装置
(8)サポートローラー又は偏向ローラー
(9)IR源
(10)IRマルチチャンネルディテクター
(11)IRフィルター
(12)金属ストリップ
(13)仕上被覆物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ストリップを液体処方物(F)で、連続的に表面処理する方法であって、
金属ストリップが、長さ方向に、処方物(F)を施すための少なくとも1個のデバイズ(3)を含む、金属ストリップの表面処理用の装置を移動され、
及び処方物(F)が、デバイス(3)によって、金属ストリップに施され、施される処方物の量が、被覆物厚さが、金属表面上で3μm未満になる非金属仕上被覆物を形成するように計算され、
使用される装置が、ストリップの走行方向に見てデバイス(3)の下流側に、ストリップの被覆側に面し、リフレクションジオメトリーに作用する、少なくとも1個のIRセンサー(6)を備え、及び
−少なくとも1個の、広範囲に放射するIR源(9)、及び
−少なくとも1個の、2個以上の測定チャンネルを含み、それぞれの測定チャンネルが、対応する測定チャンネルの上流側に備えられたIRフィルター(11)を備え、及び、少なくとも2個の異なるIRフィルターが使用されるという条件下に、それぞれの測定チャンネルが、IR放射の特定の波長範囲のみを伝達可能である、マルチチャンネルディテクター、
を含み、及びIR源(9)がIR放射を、被覆されたストリップ表面に向けて放射し、放射された放射がストリップ表面から部分的に反射され、及び反射された放射の強度がIRマルチチャンネルディテクター(10)によって測定され、そして強度測定から、算術ユニットを使用して、仕上被覆物の被覆物厚さが計算されることを特徴とする方法。
【請求項2】
金属ストリップを液体処方物(F)で、連続的に表面処理する方法であって、
金属ストリップが、長さ方向に、金属ストリップの表面処理用の装置を移動され、該金属ストリップの表面処理用の装置は、少なくとも、
・処方物(F)を施すためのデバイス(3)、及び
・乾燥ステーション(5)、
を含み、
処方物(F)は、少なくとも1種の溶媒、及び被覆物形成成分を含み、処方物(F)は、デバイス(3)を使用して金属ストリップに施され、溶媒が、乾燥ステーションを使用して、少なくとも部分的に除去され、施される処方物の量が、被覆物厚さが金属表面上で3μm未満になる非金属仕上被覆物を形成するように計算され、
使用される装置が、ストリップの走行方向に見て、乾燥ステーション(5)の下流側に、ストリップの被覆側に面し、リフレクションジオメトリーに作用する、少なくとも1個のIRセンサー(6)を備え、及び
−少なくとも1個の、広範囲に放射するIR源(9)、及び
−少なくとも1個の、2個以上の測定チャンネルを含み、それぞれの測定チャンネルが、対応する測定チャンネルの上流側に備えられたIRフィルター(11)を備え、及び、少なくとも2個の異なるIRフィルターが使用されるという条件下に、それぞれの測定チャンネルが、IR放射の特定の波長範囲のみを伝達可能である、マルチチャンネルディテクター、
を含み、及びIR源(9)がIR放射を、被覆されたストリップ表面に向けて放射し、放射された放射がストリップ表面から部分的に反射され、及び反射された放射がIRマルチチャンネルディテクター(10)によって測定され、そして強度測定から、算術ユニットを使用して、仕上被覆物の被覆物厚さが計算される方法。
【請求項3】
測定された被覆厚さが、施される処方物(F)の量を制御するために使用されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記算術ユニットが、センサー内部に存在することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
IRセンサー(6)が、ディテクターを同軸に囲む少なくとも2個のIR源(9)を含むことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
IRセンサーが、4〜10個のIR供給源(9)を有することを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
IRマルチチャンネルディテクター(10)が、2個〜4個の測定チャンネルを有することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
IRマルチチャンネルディテクター(10)が、2000〜5000cm−1の範囲で作動することを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
金属ストリップが、前記IRセンサーとは反対の側に、IR測定の箇所から4m以下の距離を置いて、サポートローラー又は偏向ローラー(8)を備えていることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
金属ストリップが、スチールストリップ又は亜鉛メッキされたスチールストリップであることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
表面処理が、不動態化であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
処理が、pH≦5であり、水及び少なくとも1種のリン酸及び/又はフォスフェイト及び少なくとも1種の金属イオンを含む酸性、水性処方物を使用した、フォスフェイト不動態化であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記不動態化が、pH≦5であり、水及び少なくとも1種の水溶性又は水分散性ポリマーを含む酸性、水性処方物を使用して行なわれることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリマーが、酸性基を含む、少なくとも1種の水溶性ポリマーXであることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記酸性基が、−COOH−基及び/又はその塩であることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリマーが、塩基性基を含む水溶性ポリマーYであることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記塩基性基が、少なくとも脂肪族及び/又は芳香族アミノ基を有することを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記塩基性基が、5〜6個の環員及び1〜3個の窒素原子を有するヘテロ環であることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
2500〜3500cm−1、及び/又は1400〜2000cm−1に最大値を有するバンドを測定するために、IRセンサー(5)が使用されることを特徴とする請求項13〜18の何れか1項に記載の方法。
【請求項20】
C−Hバンドが測定されることを特徴とする請求項19に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6a−6b】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2011−521100(P2011−521100A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507944(P2011−507944)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【国際出願番号】PCT/EP2009/063140
【国際公開番号】WO2010/046243
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】