金属ドープされた半導体ナノ結晶およびその製造方法
ドープされた半導体ナノ結晶およびそれを製造する方法が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連する出願データ>
本願は、35 U.S.C. §119(e)に拠り、2009年7月1日に出願された米国暫定特許出願シリアル番号61/222,229に優先権主張し、引用することによりその全部が取り込まれる。
<発明の分野>
本発明は、ナノ結晶物質、特にドープされたナノ結晶物質およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
コロイド状半導体ナノ結晶もしくは量子ドットは、進歩した光学物質の開発におけるそれらの有望性について重大な関心を生じさせた。寸法依存性発光は、種々の波長依存性用途においてそれらの使用を可能にする、半導体ナノ結晶の魅力ある特性である。
【0003】
例えば生物学的ラベリングは、半導体ナノ結晶の重大な用途であることを期待される。特に、電磁スペクトルの近赤外(NIR)領域(700〜1400nm)における発光を有する光ルミネッセンス(PL)量子ドットは、それらの大きい吸収断面および狭い発光帯域のゆえに、in-vivo画像化のための生物学的ラベルとして望ましい。さらには、半導体ナノ結晶はまた、ディスプレー技術、サーモエレクトロニクス、テレコミュニケーションおよび信号発信、光通信および光起電装置において重大な用途を見出すことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
それにもかかわらず、ドープされたナノ結晶を含む半導体ナノ結晶の合成化学は、種々の用途で使用するために高性能ナノ結晶の開発に挑戦を続け、努力し続けている。概して言えば、これらの物質の今日の限界は、低い発光効率、低いドーパント発光特性、ナノ結晶格子からドーパントの放出、広いスペクトル幅、乏しい色制御および/または乏しい安定性を包含する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前述の限界を考慮して、ドープされた半導体ナノ結晶について本明細書において説明し、幾つかの実施態様において、有利な特性を明らかにする。
1つの態様において、本発明は、ドーパントを含む半導体ナノ結晶を提供し、この半導体ナノ結晶は約610nmより大きい波長でドーパント光ルミネッセンス(PL)もしくは発光を有する。別の実施態様において、ドープされた半導体ナノ結晶は、約620nmより大きい波長でドーパント光ルミネッセンスもしくは発光を有する。幾つかの実施態様において、本明細書に記載されるドープされた半導体ナノ結晶は、約620nm〜約1150nmの範囲の波長でドーパント光ルミネッセンスもしくは発光を有する。
【0006】
幾つかの実施態様において、ドープされた半導体ナノ結晶のドーパントは、複数の光ルミネッセンスもしくは発光帯域を提供する。さらには、幾つかの実施態様において、本明細書に記載されるドープされた半導体ナノ結晶は、ホスト物質によるドーパント光ルミネッセンスもしくは発光の吸収による自己-消光を示さないか、または実質的に示さない。
【0007】
約620nm〜約1150nmの範囲でドーパント光ルミネッセンスを有するので、本明細書に記載されるドープされた半導体ナノ結晶は、幾つかの実施態様において、限定されないが、生物学的画像化、テレコミュニケーションおよび信号発信、光通信および光起電装置を包含するNIR用途において使用することができる。
【0008】
幾つかの実施態様において、約610nmより大きい波長でドーパント光ルミネッセンスを有するドープされた半導体ナノ結晶は、II/VI化合物またはIII/V化合物を含むホスト半導体物質を含有する。本明細書において使用されるII、III、VおよびVI族は、American CAS designationに従う周期律表のIIB、IIIA、VAおよびVIA族をいう。例えばIIB族は亜鉛属に相当し、IIIA族はホウ素属に相当し、VA族は窒素属に相当し、VIA族はカルコゲンに相当する。
【0009】
さらに、幾つかの実施態様において、半導体ナノ結晶のドーパントは、1種以上の遷移金属を包含する金属を含む。他の実施態様において、ドーパントは非金属を含む。
さらに、幾つかの実施態様において、本明細書に記載されるドープされた半導体ナノ結晶からの全部または実質的に全部の光ルミネッセンスは、ドーパント発光に由来する。1つの実施態様において、例えば本明細書に記載されるドープされた半導体ナノ結晶の少なくとも約90%の光ルミネッセンスはドーパント発光に由来する。別の実施態様において、ドープされたナノ結晶の少なくとも約95%の光ルミネッセンスはドーパント発光に由来する。幾つかの実施態様において、ドープされたナノ結晶の少なくとも約99%の光ルミネッセンスはドーパント発光に由来する。幾つかの実施態様において、本明細書に記載されるドープされた半導体ナノ結晶は、II/VIもしくはIII/Vホスト半導体物質からのバンドギャップ発光を全く示さないか、または実質的に示さない。
【0010】
幾つかの実施態様において、本明細書に記載されるドープされた半導体ナノ結晶は、約40%までの光ルミネッセンス量子収率(PL QY)を有する。ドープされた半導体ナノ結晶は、幾つかの実施態様において、少なくとも約10%のPL QYを有する。幾つかの実施態様において、ドープされた半導体ナノ結晶は、約1%〜約40%の範囲のPL QYを有する。幾つかの実施態様において、ドープされた半導体ナノ結晶は、約5%〜約20%の範囲の量子収率を有する。
【0011】
別の態様において、本発明は、その中に配置されたドーパントを有する第1の半導体物質および、ドープされた半導体物質を少なくとも部分的に囲んでいる拡散バリアを含むナノ結晶を提供する。幾つかの実施態様において、第1の半導体物質は、ナノ結晶のコアを提供する。さらに、幾つかの実施態様において、拡散バリアは、ドーパントが第1の半導体物質から拡散するのを抑制するか、または妨げる。ドーパントは、幾つかの実施態様において、遷移金属を包含する金属を含む。他の実施態様において、ドーパントは非金属を含む。
【0012】
第1のホスト半導体物質は、幾つかの実施態様において、II/VI化合物、III/V化合物またはIV族物質を含む。
さらには、幾つかの実施態様において、拡散バリアは、第2の半導体物質を含む。第2の半導体物質は、幾つかの実施態様において、II/VI化合物またはIII/V化合物を含む。しかも、幾つかの実施態様において、拡散バリアは、複数の単層のII/VI化合物またはIII/V化合物を含む。幾つかの実施態様において、例えば拡散バリアは、2〜20層の単層のII/VI化合物またはIII/V化合物を含む。
【0013】
幾つかの実施態様において、第1の半導体物質および第2の半導体物質は異なる。他の実施態様において、第1の半導体物質および第2の半導体物質は同じである。
その中に配置されたドーパントを有する第1の半導体物質および、ドープされた半導体物質を少なくとも部分的に囲んでいる拡散バリアを含むナノ結晶は、幾つかの実施態様において、任意の本明細書に記載される光ルミネッセンス特性を有することができる。
【0014】
さらなる態様において、ドープされた半導体ナノ結晶を製造する方法が提供される。1つの実施態様において、ドープされた半導体ナノ結晶を製造する方法は、(a)反応容器中で、金属前駆体、リガンドおよび溶媒を合わせて、金属-リガンド錯体を形成すること、(b)ホスト半導体ナノ結晶を形成するのに十分な第1の温度で、アニオン前駆体と金属-リガンド錯体とを混合すること、(c)ドーパントとホスト半導体ナノ結晶とを混合して、反応混合物を提供すること、ならびに(d)反応混合物を、その中に配置されたドーパントを有するホスト半導体ナノ結晶を提供する第2の温度まで加熱することを含む。半導体ナノ結晶中に配置されているので、ドーパントは、幾つかの実施態様において、ナノ結晶の表面に存在しないか、または実質的に存在しない。幾つかの実施態様において、例えばドーパントは、ホストII/VIもしくはIII/V半導体物質の格子内に組み込まれているか、または存在する。
【0015】
幾つかの実施態様において、金属前駆体は、II族金属、III族金属またはIV族金属を含む。さらに、幾つかの実施態様において、アニオン前駆体は、V族元素またはVI族元素を含む。したがって、幾つかの実施態様において、ホスト半導体ナノ結晶は、II/VI化合物、III/V化合物またはIV族物質を含む。
【0016】
幾つかの実施態様において、第2の温度は、第1の温度未満または第1の温度より上である。第2の温度は、幾つかの実施態様において、例えば約180〜約240℃の範囲にある。幾つかの実施態様において、反応混合物は、少なくとも2℃/分の速度で、第2の温度まで加熱される。
【0017】
ドープされた半導体ナノ結晶を製造する方法は、幾つかの実施態様において、少なくとも1個のドープされた半導体ナノ結晶上に物質M1X1を含有する拡散バリアを形成することをさらに含み、ここでM1はカチオンであり、X1はアニオンである。幾つかの実施態様において、拡散バリアを形成する方法は、ドープされた半導体ナノ結晶を、交互に、カチオンの単層を形成する量のカチオン(M1)前駆体溶液と、及び、アニオンの単層を形成する量のアニオン前駆体(X1)と接触させることによって、少なくとも1個のドープされた半導体ナノ結晶上に物質M1X1の少なくとも1層の単層を形成することを含み、ここでM1X1は、II/VI化合物またはIII/V化合物から選択される、安定なナノメートルの大きさの無機固体を含む。幾つかの実施態様において、拡散バリアは、20層までの単層のM1X1を含む。幾つかの実施態様において、拡散バリアは、20層より多い単層のM1X1を含む。
【0018】
幾つかの実施態様において、ドープされた半導体ナノ結晶は、まずカチオン前駆体溶液と接触されて、カチオンの単層を有するドープされた半導体ナノ結晶を提供する。他の実施態様において、ドープされた半導体ナノ結晶は、まずアニオン前駆体溶液と接触されて、アニオンの単層を有するドープされた半導体ナノ結晶を提供する。幾つかの実施態様において、交互の、カチオン前駆体溶液およびアニオン前駆体溶液の、ドープされた半導体ナノ結晶の溶液への添加は、拡散バリアを含むドープされた半導体ナノ結晶を含有する溶液を生じ、この溶液はまた、カチオン前駆体溶液およびアニオン前駆体溶液を含有する。
【0019】
幾つかの実施態様において、交互に、カチオン前駆体およびアニオン前駆体を、ドープされた半導体ナノ結晶を含む反応容器へ添加することによって、ドープされた半導体ナノ結晶は、カチオンおよびアニオン前駆体溶液の交互的添加の間に洗浄されないか、さもなければ精製されない。
これらおよび他の実施態様は、以下の詳細な説明においてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、(a) Cu-ドープされたバルクInPのエネルギー図の概略説明図ならびに、(b)本発明の1つの実施態様に従う4nmのCu:InPドープされたナノ結晶のUV-可視、PLおよびPLEスペクトルを表す。
【図2】図2は、異なる大きさにされたInP量子ドットおよび本発明の1つの実施態様に従うCu:InPドープされたナノ結晶の(a) PLスペクトルおよび(b) PLピーク位置を表す。
【図3】図3は、本発明の1つの実施態様に従う、異なる反応温度でのCu:InPドープされたナノ結晶の(a) UV-可視、(b) PLスペクトル、(c) InPバンドギャップPL量子収率、(d) CuドーパントPL量子収率および(e) CuドーパントPLピーク位置を表す。
【図4】図4は、本発明の1つの実施態様に従う、(a)異なる銅濃度を有するCu:InPドープされたナノ結晶のUV-可視吸収スペクトル、(b) (a)における対応する試料のドーパントPL QYおよびピーク位置ならびに、(c)ドーピング濃度20%を有するCu:InPドープされたナノ結晶のXRDパターンを表す。
【図5】図5は、本発明の1つの実施態様に従う、(a) InPコアおよび(b) Cu:InP /ZnSeドープされたコア/拡散バリアナノ結晶のTEM画像ならびに、(c) (b)と関連する試料の電子回折パターンを提供する。
【図6】図6は、本発明の幾つかの実施態様に従う、(a)異なる厚さのZnSe拡散バリアを有するCu:InPドープされたナノ結晶(5%のCu:P前駆体比で形成された)のPLスペクトル、(b) Cu:InPコアについて異なるCu:P前駆体比で形成されたCu:InP /ZnSeコア/拡散バリアドープされたナノ結晶(ZnSe拡散バリアについて3層の単層)のPLスペクトル、(c)異なる初期Cu:P前駆体濃度を有する、 ZnSe拡散バリア厚みに対するCu:InPドープされたナノ結晶のドーパントPL QY、ならびに(d)異なる初期Cu:P前駆体濃度を有する、 ZnSeシェル厚みに対するCu:InPドープされたコア/拡散バリアナノ結晶中のCu濃度を表す。
【図7】図7は、本発明の幾つかの実施態様に従う、(a)視覚による観察および(b)分光学的定量化により示される、InP /ZnSeコア/シェルナノ結晶と比べた、Cu:InP /ZnSeコア/拡散バリアドープされたナノ結晶のPLに対する温度の効果を表す。
【図8】図8は、本発明の1つの実施態様に従う、(A)温度50℃にて異なる時間間隔で5%ドーピングを有するCu:InPドープされたナノ結晶のPLスペクトル、(B)および(C)異なる温度での試料(A)のPLスペクトル、ならびに(D)対応する量子効率を表す。
【図9】図9は、本発明の1つの実施態様に従う、5%ドーピングを有するCu:InP/ZnSeドープされたコア/拡散バリアナノ結晶のUV-可視-近赤外(NIR)、PLおよびPLEスペクトルを表す。
【図10】図10は、本発明の1つの実施態様に従う、Cu:InP/ZnSeドープされたコア/拡散バリアナノ結晶の加熱中に撮られたデジタル写真を表す。
【図11】図11は、本発明の1つの実施態様に従う、Cu:InPドープされたナノ結晶のPLスペクトル、量子収率およびPLピーク位置を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の詳細な説明、実施例および図面ならびにそれらの先の説明および後の説明を参考にすることによって、本発明を容易に理解することができる。しかしながら本発明の要素、装置および方法は、詳細な説明、実施例および図面に示される特定の実施態様に限定されない。これらの実施態様は、本発明の原理を単に説明するものと認識すべきである。多くの変更および適応形は、本発明の意図および範囲から離れることなく、当業者には容易に明らかであろう。
【0022】
1つの態様において、本発明は、ドーパントを含む半導体ナノ結晶を提供し、この半導体ナノ結晶は、約610nmより大きい波長でドーパント光ルミネッセンスもしくは発光を有する。別の実施態様において、ドープされた半導体ナノ結晶は、620nmより大きい波長でドーパント光ルミネッセンスもしくは発光を有する。幾つかの実施態様において、本明細書に記載されるドープされた半導体ナノ結晶は、約620nm〜約1150nmの範囲の波長でドーパント光ルミネッセンスもしくは発光を有する。
【0023】
幾つかの実施態様において、ドープされた半導体ナノ結晶のドーパントは、複数の光ルミネッセンスもしくは発光帯域を提供する。幾つかの実施態様において、2つ以上のドーパント発光帯域が重なり合う。幾つかの実施態様において、2つ以上のドーパント発光帯域が重なり合わない。その上、幾つかの実施態様において、本明細書に記載されるドープされた半導体ナノ結晶は、ホスト物質によるドーパント光ルミネッセンスもしくは発光の吸収による自己消光を示さないか、または実質的に示さない。幾つかの実施態様において、例えばホストII/VIもしくはIII/V半導体物質は、ドーパントの発光帯域より大きいバンドギャップを有し、それによって、ホスト半導体物質によるドーパント発光の消光を減らすか、または妨げる。
【0024】
約620nm〜約1150nmの範囲のドーパント光ルミネッセンスを有するので、本明細書に記載されるドープされた半導体ナノ結晶は、幾つかの実施態様において、NIR用途、限定されないが生物学的画像化、テレコミュニケーションおよび信号発信、光通信および光起電装置を包含する用途において使用することができる。
【0025】
幾つかの実施態様において、約610nmより大きい波長でドーパント光ルミネッセンスもしくは発光を有するドープされた半導体ナノ結晶は、II/VI化合物もしくはIII/V化合物を含有するホスト半導体物質を含む。1つの実施態様において、例えばドープされた半導体ナノ結晶は、InPホスト物質を含む。幾つかの実施態様において、ホスト半導体物質は、II/VI物質を含まない。幾つかの実施態様において、ホスト半導体物質は、カドミウムを含まないか、または実質的に含まない。
【0026】
さらに、幾つかの実施態様において、半導体ナノ結晶のドーパントは、1種以上の遷移金属を包含する金属を含む。幾つかの実施態様において、遷移金属は、Ti, Zr, Hf, V, Nb, Ta, Cr, Mo, W, Mn, Tc, Re, Fe, Ru, Os, Co, Rh, Ir, Ni, Pd, Pt, Cu, AgもしくはAuまたはそれらの組合せを含む。他の実施態様において、ドーパントは非金属を含む。
【0027】
ドーパントは、幾つかの実施態様において、約50重量%(原子)までの量で半導体ナノ結晶中に存在する。別の実施態様において、ドーパントは、約1重量%〜約30重量%の範囲の量で半導体ナノ結晶中に存在する。幾つかの実施態様において、ドーパントは、約5重量%〜約20重量%の範囲の量で半導体ナノ結晶中に存在する。
【0028】
その上、幾つかの実施態様において、本明細書に記載されるドープされた半導体ナノ結晶からの全て、または実質的に全ての光ルミネッセンスは、ドーパント発光に由来する。1つの実施態様において、例えば少なくとも約90%の、本明細書に記載されるドープされた半導体ナノ結晶の光ルミネッセンスは、ドーパント発光に由来する。別の実施態様において、少なくとも約95%の、ドープされたナノ結晶の光ルミネッセンスは、ドーパント発光に由来する。幾つかの実施態様において、少なくとも約99%の、ドープされたナノ結晶の光ルミネッセンスは、ドーパント発光に由来する。幾つかの実施態様において、ドープされた半導体ナノ結晶は、II/VIもしくはIII/Vホスト半導体物質からのバンドギャップ発光を全く示さないか、または実質的に示さない。
【0029】
幾つかの実施態様において、本明細書に記載されるドープされた半導体ナノ結晶は、約40%までのPL QYを有する。ドープされた半導体ナノ結晶は、幾つかの実施態様において、少なくとも約10%のPL QYを有する。幾つかの実施態様において、ドープされた半導体ナノ結晶は、約1%〜約40%の範囲のPL QYを有する。幾つかの実施態様において、ドープされた半導体ナノ結晶は、約5%〜約20%の範囲の量子収率を有する。
【0030】
別の態様において、本発明は、その中に配置されたドーパントを有する第1の半導体物質および、ドープされた半導体物質を少なくとも部分的に囲んでいる拡散バリアを含むナノ結晶を提供する。幾つかの実施態様において、第1の半導体物質は、ナノ結晶のコアを提供する。さらに、幾つかの実施態様において、拡散バリアは、ドーパントが第1の半導体ホスト物質から拡散するのを抑制するか、または妨げる。ドーパントは、幾つかの実施態様において、遷移金属を包含する金属を含む。他の実施態様において、ドーパントは非金属を含む。
【0031】
第1の半導体ホスト物質は、幾つかの実施態様において、II/VI化合物、III/V化合物またはIV族物質を含む。本明細書において提供されるように、幾つかの実施態様において、第1の半導体物質は、II/VI化合物を含まない。幾つかの実施態様において、その中に配置されたドーパントを有する第1の半導体物質および、ドープされた半導体物質を少なくとも部分的に囲んでいる拡散バリアを含むナノ結晶は、カドミウムを全く含まないか、または実質的に含まない。
【0032】
さらには、幾つかの実施態様において、拡散バリアは、第2の半導体物質を含む。第2の半導体物質は、幾つかの実施態様において、II/VI化合物またはIII/V化合物を含む。しかも、幾つかの実施態様において、拡散バリアは、複数の単層のII/VI化合物またはIII/V化合物を含む。拡散バリアは、任意の所望の数の単層のII/VI化合物またはIII/V化合物を含むことができ、これは本発明の目的と相反しない。幾つかの実施態様において、例えば拡散バリアは、2〜20層の単層のII/VI化合物またはIII/V化合物を含む。他の実施態様において、拡散バリアは、15層までの単層のII/VI化合物またはIII/V化合物を含む。
【0033】
幾つかの実施態様において、第1の半導体物質および第2の半導体物質は異なる。他の実施態様において、第1の半導体物質および第2の半導体物質は同じである。幾つかの実施態様において、例えばドーパントに対してホストとして役立つ第1の半導体物質はIII/V物質を含み、拡散バリアの第2の半導体物質はII/VI物質を含む。幾つかの実施態様において、第1の半導体物質は、CuドープされたInPを含み、拡散バリアの第2の半導体物質はZnSeを含む。
【0034】
その中に配置されたドーパントを有する第1の半導体物質および、ドープされた半導体物質を少なくとも部分的に囲んでいる拡散バリアを含むナノ結晶は、幾つかの実施態様において、任意の本明細書に記載される光ルミネッセンス特性を有することができる。その上、幾つかの実施態様において、拡散バリアを含むナノ結晶物質は、本明細書に示される任意の量でドーパントを含むことができる。
【0035】
幾つかの実施態様において、本明細書に記載されるドープされた半導体ナノ結晶は、本発明の目的に相反することなく、任意の所望の大きさを有することができる。幾つかの実施態様において、ドープされた半導体ナノ結晶は、約10nm未満の平均寸法を有する。別の実施態様において、ドープされた半導体ナノ結晶は、約5nm未満の平均寸法を有する。幾つかの実施態様において、ドープされた半導体ナノ結晶は、約1nm〜約5nmの範囲の平均寸法を有する。ドープされた半導体ナノ結晶は、幾つかの実施態様において、約1nm未満または約10nmより大きい平均寸法を有する。
【0036】
幾つかの実施態様において、本明細書に記載されるドープされた半導体ナノ結晶は、単分散または実質的に単分散である。ドープされた半導体ナノ結晶は、幾つかの実施態様において、調製されたままの状態(as-prepared state)にある。幾つかの実施態様において、調製されたままの状態にあるので、ドープされた半導体ナノ結晶は、精製手順および/または寸法選択手順に供されない。幾つかの実施態様において、調製された、ドープされた半導体ナノ結晶は、ドープされた半導体ナノ結晶について本明細書に記載される任意の特性を有することができる。
【0037】
さらなる態様において、ドープされた半導体ナノ結晶の製造方法が提供される。1つの実施態様において、ドープされた半導体ナノ結晶の製造方法は、(a)反応容器中で、金属前駆体、リガンドおよび溶媒を合わせて、金属-リガンド錯体を形成すること、(b)ホスト半導体ナノ結晶を形成するのに十分な第1の温度で、アニオン前駆体と金属-リガンド錯体とを混合すること、(c)ドーパントとホスト半導体ナノ結晶とを混合して、反応混合物を提供すること、ならびに(d)反応混合物を、その中に配置されたドーパントを有するホスト半導体ナノ結晶を提供する第2の温度まで加熱することを含む。半導体ナノ結晶中に配置されているので、ドーパントは、幾つかの実施態様において、ナノ結晶の表面に存在しないか、または実質的に存在しない。幾つかの実施態様において、例えばドーパントは、ホストII/VIもしくはIII/VI物質の格子内に組み込まれているか、または存在する。
幾つかの実施態様において、金属は、II族金属、III族金属またはIV族金属を含む。さらに、幾つかの実施態様において、アニオン前駆体は、V族元素またはVI族元素を含む。したがって、幾つかの実施態様において、ホスト半導体ナノ結晶は、II/VI化合物、III/V化合物またはIV族物質を含む。
【0038】
金属前駆体は、幾つかの実施態様において、金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属窒化物、金属アンモニア錯体、金属アミン、金属アミド、金属イミド、金属カルボキシレート、金属アセチルアセトネート、金属ジチオレート、金属カルボニル、金属シアニド、金属イソシアニド、金属ニトリル、金属過酸化物、金属水酸化物、金属水素化物、金属エーテル錯体、金属ジエーテル錯体、金属トリエーテル錯体、金属炭酸塩、金属リン酸塩、金属硝酸塩、金属亜硝酸塩、金属硫酸塩、金属アルコキシド、金属シロキシド、金属チオレート、金属ジチオレート、金属ジサルファイド、金属カルバメート、金属ジアルキルカルバメート、金属ピリジン錯体、金属ビピリジン錯体、金属フェナントロリン錯体、金属ターピリジン錯体、金属ジアミン錯体、金属トリアミン錯体、金属ジイミン、金属ピリジンジイミン、金属ピラゾリルボレート、金属ビス(ピラゾリル)ボレート、金属トリス(ピラゾリル)ボレート、金属ニトロシル、金属チオカルバメート、金属ジアザブタジエン、金属ジチオカルバメート、金属ジアルキルアセトアミド、金属ジアルキルホルムアミド、金属ホルムアミジネート、金属ホスフィン錯体、金属アルシン錯体、金属ジホスフィン錯体、金属ジアルシン錯体、金属オキザレート、金属イミダゾール、金属ピラゾレート、金属-シッフ塩基錯体、金属ポルフィリン、金属フタロシアニン、金属サブフタロシアニン、金属ピコリネート、金属ピペリジン錯体、金属ピラゾリル、金属サリチルアルデヒド、金属エチレンジアミン、金属トリフレート化合物またはそれらの任意の組合せを含むことができる。
さらに、本明細書に記載される方法において使用するのに適当なリガンドは、幾つかの実施態様において、脂肪酸、脂肪アミン、ホスフィン、ホスフィンオキシド、ホスホン酸、ホスフィン酸、スルホン酸またはそれらの任意の組合せを含む。幾つかの実施態様において、リガンドは、約30個までの炭素原子を含む。別の実施態様において、リガンドは、約45個までの炭素原子を含む。
【0039】
幾つかの実施態様において、金属前駆体およびリガンドが配置される溶媒は、配位結合溶媒である。他の実施態様において、金属前駆体およびリガンドが配置される溶媒は、非配位結合溶媒である。1つの実施態様において、適当な非配位結合溶媒は、オクタデセン(ODE)を含む。さらなる適当な非配位結合溶媒は、一般に以下の指針を用いて選択することができる。適当な非配位結合溶媒は、幾つかの実施態様において、約25℃未満の融点および約250℃より大きい沸点を有していなければならない。その上、反応体および生成物は同様に、幾つかの実施態様において、選択された溶媒中に可溶性であり、かつ安定でなければならない。
【0040】
幾つかの実施態様において、第2の温度は、第1の温度未満または第1の温度より上である。第2の温度は、幾つかの実施態様において、例えば約170〜約240℃の範囲にある。第2の温度は、幾つかの実施態様において、約175〜約230℃または約180〜約220℃の範囲にある。別の実施態様において、第2の温度は約185〜約200℃の範囲にある。
幾つかの実施態様において、反応混合物は、少なくとも2℃/分の速度で、第2の温度まで加熱される。
【0041】
ドープされた半導体ナノ結晶を製造する方法は、幾つかの実施態様において、少なくとも1個のドープされた半導体ナノ結晶上に物質M1X1を含有する拡散バリアを形成することをさらに含み、ここでM1はカチオンであり、X1はアニオンである。幾つかの実施態様において、拡散バリアを形成する方法は、ドープされた半導体ナノ結晶を、交互に、カチオンの単層を形成する量のカチオン(M1)前駆体溶液と、かつアニオンの単層を形成する量のアニオン前駆体(X1)と接触させることによって、少なくとも1個のドープされた半導体ナノ結晶上に物質M1X1の少なくとも1層の単層を形成することを含み、ここでM1X1は、II/VI化合物またはIII/V化合物から選択される、安定なナノメートルの大きさの無機固体を含む。幾つかの実施態様において、拡散バリアは、15層までの単層のM1X1を含む。幾つかの実施態様において、拡散バリアは、15層より多い単層のM1X1を含む。その上、幾つかの実施態様において、カチオン前駆体は、本明細書に記載される金属前駆体を含む。
【0042】
幾つかの実施態様において、ドープされた半導体ナノ結晶は、まずカチオン前駆体溶液と接触されて、カチオンの単層を有するドープされた半導体ナノ結晶を提供する。他の実施態様において、ドープされた半導体ナノ結晶は、まずアニオン前駆体溶液と接触されて、アニオンの単層を有するドープされた半導体ナノ結晶を提供する。幾つかの実施態様において、交互の、カチオン前駆体溶液およびアニオン前駆体溶液の、ドープされた半導体ナノ結晶の溶液への添加は、拡散バリアを含むドープされた半導体ナノ結晶を含有する溶液を生じ、この溶液はまた、カチオン前駆体溶液およびアニオン前駆体溶液を含有する。
【0043】
幾つかの実施態様において、交互に、カチオン前駆体およびアニオン前駆体を、ドープされた半導体ナノ結晶を含む反応容器へ添加することによって、ドープされた半導体ナノ結晶は、カチオンおよびアニオン前駆体溶液の交互的添加の間に洗浄されないか、さもなければ精製されない。
【0044】
幾つかの実施態様において、拡散バリアの単層は、米国特許出願シリアル番号10/763,068号に記載される方法(引用することにより、その全部が組み込まれる)に従って、ドープされたコアナノ結晶上に堆積されることができる。
【0045】
その上、幾つかの実施態様において、少なくとも1つのドープされた半導体ナノ結晶上に拡散バリアを形成することはさらに、少なくとも1つの半導体ナノ結晶からドーパントの一部を拡散させるか、または排出させることを含む。
【0046】
幾つかの実施態様において、本明細書に記載されるドープされた半導体ナノ結晶(拡散バリアを含むドープされた半導体ナノ結晶を包含する)は、合成段階の間、精製、洗浄または分離することなく、単一の反応容器中で製造され、1反応器(one-pot)合成手順という結果になる。
【0047】
<実施例>
本発明の実施態様を以下の限定されない実施例においてさらに説明する。
[実施例1]
ドープされた半導体ナノ結晶の製造および特性決定
I. CuドープされたInP半導体ナノ結晶の合成
物質:工業技術等級(90%)のオクタデセン(ODE)、酢酸インジウム(In(Ac)3、99.99%)、トリ-n-オクチルホスフィン(TOP、97%)、ステアリン酸(SA、98%)、オレイン酸(90%)、ステアリン酸亜鉛(12.5-14%)、トリス-トリメチルシリルホスフィン(P(TMS)3、95%)、1-オクチルアミン(99%)をアルファ(Alfa)から購入した。オレイルアミン(97%)は、アドリッチ(Adrich)から購入した。ステアリン酸銅は、実験室で製造した。全ての化学品は、さらに精製することなく使用した。
0.2ミリモルのトリス-トリメチルシリルホスフィンおよび2.4ミリモルのODE(全部で1.5ml)をグローブボックス中で混合することによって、P前駆体の注入溶液を製造した。酢酸インジウム(0.4mM)、ミリスチン酸(1.4mM)および4gの1-オクタデセン(ODE)を三ツ口フラスコに入れた。得られた混合物をアルゴン流下で188℃に加熱し、P前駆体溶液を、三ツ口フラスコ中の反応混合物に注入し、これは、反応温度を10分間で178℃に下げた。反応混合物をさらに130℃に冷却し、銅前駆体溶液(ODE中0.02ミリモルのステアリン酸銅)を反応混合物に添加した。InPナノ結晶のCuイオンでのドーピングのために、反応混合物をさらに210℃に加熱し、加熱速度は約2℃/分であった。
与えられた時間/温度で反応混合物から一定量の標本を取り、トルエンに溶かすことにより、UV-可視およびPL測定によって、プロセスを監視した。幾つかの選択された標本はさらに、TEM、EDXおよび電子回折を用いて試験された。EDXは、標本をエタノールにより精製した後に行った。同じ精製手順を、ドープされたコア/拡散バリア試料について、EDX測定のために行った。Cu:InP/ZnSeドープされたコア/拡散バリアナノ結晶の成長のために、反応混合物を、分離することなく直接使用した(以下の詳細参照)。XRD測定のために、反応混合物を室温まで冷却し、溶液にエタノールを添加することによって精製し、固体生成物を最後に、遠心分離、デカンテーションおよびAr流下での乾燥によって分離した。
【0048】
II. Cu:InP/ZnSeドープされたコア/拡散バリアナノ結晶の合成
CuドープされたInPナノ結晶上でのZnSe拡散バリアのエピタキシャル成長のために、上記(I)で作られたCuドープされたInPナノ結晶を含む反応混合物を150℃に冷却した。ステアリン酸亜鉛(ODE中0.1M)およびセレン(TOP中0.1M)前駆体溶液(それぞれ1.2ml)を、150℃にて2回の注入間に10分の間隔をあけて、別々に、かつ交互に三ツ口反応フラスコに添加した。得られた反応混合物の温度を30分間で220℃に上げて、CuドープされたInPナノ結晶上にZnSe拡散バリアを成長させた。カチオンおよびアニオン前駆体溶液(SILARの第2ランのためにそれぞれ1.65ml)の交互の添加のために、反応混合物を再び150℃に冷却し、30分間で220℃に加熱して、ZnSe拡散バリアの追加の単層を成長させた。同様に、ZnSe拡散バリアの第3(2.1mlのそれぞれの前駆体溶液)、第4(2.8mlのそれぞれの前駆体溶液)および第5(3.5mlのそれぞれの前駆体溶液)の施与のために、同じ「温度周期」設定に従って(前駆体溶液の交互の添加のためには150℃および拡散バリアの単層の成長のためには220℃)、温度を調節した。全体の拡散バリア成長プロセスは、UV-可視、PL、TEM、電子回折およびEDX測定のために標本を取ることによって監視した。拡散バリアの合成が完了したとき、反応を室温に冷却した。
精製のために、10mLのヘキサンを反応溶液に添加し、未反応の出発物質および副生成物を、連続メタノール抽出によって、メタノール相が透明になるまで除去した。Cu:InP/ZnSeドープされたコア/拡散バリア半導体ナノ結晶の固体形態を、精製ヘキサン/ODE溶液中へのアセトンの添加、遠心分離、デカンテーションおよびAr流下での乾燥によって、分離した。
【0049】
III. Cu:InPドープされたナノ結晶およびCu:InP/ZnSeドープされたコア/拡散バリアナノ結晶の特性決定
Cu:InPドープされたナノ結晶およびCu:InP/ZnSeドープされたコア/拡散バリアナノ結晶を、次のようにして特性決定した。
【0050】
ドーパント濃度の効果:該効果を、UV-可視およびPL測定のために、180℃にて異なる量のCu前駆体を反応溶液に添加した以外は前節に記載したのと同じ手順を使用して研究した。
【0051】
ドープされた半導体ナノ結晶およびドープされない半導体ナノ結晶の熱安定性:精製したCu:InP/ZnSeおよびInP/ZnSeナノ結晶をODE中に分散させ、溶液を、室温から種々の温度に、300℃まで、アルゴン下で加熱した。フラスコ中の与えられた試料について、固定された位置および除去条件でデジタル写真を撮った。Spex Fluorolog-3蛍光光度計に付けた温度制御ユニット(80℃まで)を使用して、異なる温度でのPLスペクトルを、in situでとった。
【0052】
透過電子顕微鏡(TEM)および高分解能TEM(HR-TEM): JEOL 100CX透過電子顕微鏡にて、加速電圧100kVで、低分解能TEM画像を撮った。炭素-コーティングされた銅グリッドをヘキサンもしくはトルエン溶液に浸漬して、ナノ結晶を膜上に堆積させた。Taitan顕微鏡を用いて、加速電圧300kVで、高分解能TEM(HR-TEM)写真を撮った。
【0053】
ドープされた半導体ナノ結晶のPL QY測定:異常に大きいストークスシフト(Stokes shift)のゆえに、ドープされた半導体ナノ結晶について、対照色素(reference dye)はなかった。したがって、中間対照として、InAs量子ドットを使用した。Cu:InP半導体ナノ結晶のPL QYを、励起波長での同じ光学密度および同様の蛍光波長を有するInAs QDとの蛍光強度の比較によって計算した。
【0054】
他の測定:Philips PW 1830 X-線回折計を用いて、X-線粉末回折(XRD)パターンを得た。電界放出銃を備え、10kVで運転される、Philips ESEM XL30走査電子顕微鏡を用いて、元素分析のためにエネルギー分散型分光法(EDS)を使用した。UV-可視スペクトルは、HP8453 UV-可視分光光度計で記録した。光ルミネッセンス(PL)スペクトルは、Spex Fluorolog-3蛍光光度計を用いて得た。
【0055】
図1(a)は、ドーパント発光の種々の経路を示す、CuドープされたバルクInPのエネルギー図を説明する。図1(b)は、180℃で成長させたCu:InPナノ結晶(〜4nmの大きさ)のUV-可視、PLおよびPL励起(PLE)スペクトルを表す。InPバンドギャップPLは減少し、PLスペクトルは950nmに集まった帯域により支配された。InPのバルクバンドギャップは1.43eVである[図1(a)]か、または867nmであることに注意すべきであり、これは、図1bにおけるPLピークが固有のInPナノ結晶のバンドギャップ発光であり得ないことを意味する。図1(b)における吸収ピークとPLピークとの間の実質的エネルギーギャップはさらに、PLがCuドーパントPLでなければならないことを支持する。実際には、この大きいエネルギーギャップは、Cu:InPナノ結晶のゼロ自己-消光の根拠である。というのは、無視できる再吸収が、ナノ結晶について生じ得るからである。
【0056】
PLE測定[図1(b)]は、広い帯域における異なる波長でのPLは同様の励起スペクトルを有することを示し、これは、この広い帯域がナノ結晶の寸法分布によるものでは全くないことを意味する。これはさらに、Cu:InP ナノ結晶のPLスペクトルにおけるCuAおよびCuB帯域の両方の共存による広域化を支持する。
【0057】
これと矛盾なくまた、図2(b)におけるPLスペクトルの半値全幅(0.24eV)は、CuAおよびCuBエネルギーレベル間のエネルギー差(0.21eV)に近かった。この証拠から、固有のInPナノ結晶(量子ドット)試料と同じくらい狭いPL帯域を有するCu:InPドープされたナノ結晶を合成することが困難であり得ると結論が下されるであろう。
【0058】
これらの結果に従い、Cu:InPドープされたナノ結晶の広いPL帯域[図1(a)]および図2、上部パネル]が、180℃において、CuAおよびCuBの両方の帯域 [図1(a)]]が活性化されたことを意味すると思われる。この温度は、CuドーパントPL(CuA帯域のみ)を観察するための300℃より、かつバルクInPにおけるCuAおよびCuBの両方の帯域を得るための600℃より実質的に低い。
【0059】
Cu:InPドープされたナノ結晶の赤およびNIR領域(ウィンドウ)における、色-調整可能なCuドーパントPLは、InPホストナノ結晶の大きさを変えることによって実現された(図2)。この光学領域は、630〜1100nmで、現在存在する高性能非カドミウムドープ半導体ナノ結晶エミッターの見えない発光波長(610nmで終わる)を補正する。さらには、Cu:InPドープされたナノ結晶の波長領域はまた、種々の生物医学用途におけるin vivo画像化のために興味をもたれるNIR領域全体を包含する。そのような用途のために、より良い物理的浸透性のために、ナノ結晶の比較的小さい物理的寸法(<10nm)を有することが理想であり、これは、幾つかの実施態様において、これらの比較的小さいCu:InPドープされたナノ結晶を用いて容易に達成可能である(図2、下部)。
【0060】
比較のために、CuドープされたInPナノ結晶と同じ大きさ範囲での固有のInP量子ドットのPLスペクトルがまた、図2(a)に示される。図2(a)の2組のPLスペクトルは、CuドープされたInPナノ結晶およびドープされていないInPの量子ドットエミッター間のピーク位置および幅の差を説明するだけでなく、約450〜1100nmで、InPに基づくナノ結晶により、ほとんど全部の可視およびNIR光学領域を包含する可能性を示す。
【0061】
図3(a)および(b)は、Cuドープ反応についてのUV-可視およびPLスペクトルの一時放出を説明し、固有のInPホストナノ結晶の平均寸法は、約1.8nmであり、UVピークは約470nmである。反応が進行するにつれて、固有のInPホストナノ結晶の第1の励起子吸収ピークは、ピーク位置は変わらないが、徐々に消滅して、あまり明白でなくなった。同時に、第1の励起子ピークの長波長側の末端が出現した。
【0062】
TEM測定は、大きいInPナノ結晶を用いるようなプロセスにおいて、有意の寸法の変化および寸法分布の変化はないことを示した。さらには、銅前駆体をInPホストナノ結晶溶液に添加すると、室温においてさえ、同様の分光学的変化が再現可能に検出され、再び、ナノ結晶の寸法分布は変化しなかった。そのような分光学的変化は、電子的ドーピング半導体ナノ結晶と矛盾しない。かくして、そのような分光学的変化の1つの可能な仮の説明は、2価銅イオンによる3価インジウムイオンの交換の結果である。
【0063】
先の段落で挙げられたUV-可視吸収スペクトルにおける全ての変化は、PLピーク位置およびピーク幅を変えることなく、バンドギャップPLの強度の減少を伴っていた[図3(b)]。本明細書においてさらに議論される図8における結果と矛盾せず、広いドーパントPLピークは、ホストInPナノ結晶のバンドギャップPLの減少が低下するにつれてその強度を増加し始め、ドーパントPLの劇的な強度の増加が生じた[図3(d)]。図11は、InPバンドギャップ発光の消滅およびCuからのドーパント発光の出現をさらに証明する。
【0064】
図8に示された結果は、CuイオンのInPホストナノ結晶上への表面吸着が、現行の系において、室温で生じたことを示す。図8に示された実験において、表面吸着は50℃にて50分以内に完了し、これは、InPバンドギャップPLの完全な消光により示された。しかしながら、格子組み込みは温度が約110℃より高くなるまで起こらず(図8)、CuドーパントPLの徐々の出現を生じた。175〜200℃の温度において、ドーパントPL強度の劇的な増加が観察され、これは、対応する固有のInPナノ結晶の元のバンドギャップPLより約1〜2倍高いことがわかった[定量的比較のために図3(c)および3(d)参照]。
【0065】
強度の急な増加の後、ドーパントPLは温度が約255℃に達するまでに安定になった。255℃にて(データは示されない)、ドーパントPL強度は低下し始め、ピーク位置は赤にシフトし、UV-可視吸収スペクトルは特徴がなくなり、これら全ての事は、この高い温度範囲でオストワルド成熟が生じたことを示した。
【0066】
上記の段落で議論した結果は、比較的高いPL明度(元のInPホストナノ結晶のバンドギャップPLより約45倍明るい[図3(c)および3(d)])を有するCu:InPドープされたナノ結晶を提供しただけでなく、175〜200℃で劇的なドーパントPL増加を示した。このことはさらに、この段階は固有の段階であり、表面吸着および格子組み込みの段階とは切り離され得ることを示す。この段階が、仮にドーパントイオンの格子拡散であるなら、それはまた、Cu:InPドープされたナノ結晶系についての格子拡散の臨界温度が約180〜190℃であることを意味し、これは、Cu:ZnSeおよびMn:ZnSe d-ドット系の両方についての格子拡散の臨界温度である220〜260℃の範囲より大幅に低い。
【0067】
ドープされたナノ結晶の光学特性へのドーパント濃度の効果を、同じ反応条件下で体系的に研究した(図4)。図4(a)は、180℃にてCu:P前駆体比を変えることによって形成された、Cu:InPドープされたナノ結晶のUV-可視スペクトルを説明する。溶液中のCu前駆体の相対的濃度を増加することによって、固有のInPホスト量子ドットの第1の励起子吸収ピーク[図5(a)の黒線]は、増加された汚れを示した。同時に、図3(a)に現れた長波長側の長い尾は、さらに明白になった。これらの傾向は、先に議論した半導体ナノ結晶の電子ドーピングと関連する特徴と矛盾しないと認められる[図3(a)参照]。
【0068】
ドーパントPLピーク位置およびスペクトル外形は、溶液中のCu前駆体濃度と無関係であることがわかったが、PL QYは、図4(b)に示されるように、約10%のCu濃度で最大を示した(InPホストナノ結晶の形成のための系における限定試薬である、P前駆体の初期濃度に対して)。エネルギー分散型分光法(EDS)測定は、得られるCu:InPドープされたナノ結晶の原子組成が、前駆体の比と同様の値を有することを示した。この組の実験に使用されたInPホストナノ結晶の寸法は、約1.8mmの大きさであり、これは、各ナノ結晶中約55個のInP構造単位を有する。10%のドーパント濃度は、平均して、ナノ結晶当たり約5〜6個のドーパントイオンを意味する。
【0069】
高濃度のドーパントは通常到達するのが困難であり、ホスト物質の格子構造を変え得る。InPホストナノ結晶のそのままの結晶格子を確認するために、比較的高いドーピング濃度20%を有する、本明細書において記載されるように製造されたCu:InPドープされたナノ結晶試料のXRDパターンを図5(c)に示す。比較のために、バルクInP結晶の回折ピークを図5(c)において実線として印をつけた。Cu:InPドープされたナノ結晶の回折パターンは、バルクInPのものとよく合っており、これは、高濃度のCuドーピングがホストInPナノ結晶の格子構造を変えないことを示した。異なるドーパント濃度について、電子回折パターンを定法通りに試験し、得られた回折パターンはまた、立法晶系のInP結晶格子と矛盾しないことがわかった。
【0070】
Cu:InP/ZnSeドープされたコア/拡散バリアナノ結晶の光学特性は、最初のCu:InPドープされたナノ結晶中のCuドーパント濃度に強く依存することが分かった。ZnSeドーパント拡散バリアの成長に対する、比較的低いCu:P比について(図6(a))、ドーパントPL強度は初めは増加したが、ZnSe拡散バリアの単層が2層より多くなった後は着実に減少し始めた。同時に、固有のInPバンドギャップ発光が出現し始めた(図6(a))。InPバンドギャップPLの出現は、ありそうもないことだが、新たなInPホストナノ結晶の形成であったことが指摘されるべきである。図9に示されるように、PLE測定は、1つの試料のPLピークは皆ほぼ同一のPLEスペクトルを与えたことを示し、バンドギャップPLおよびドーパントPLの両方が同じ組のInPホストナノ結晶に由来したことを示す。これらの結果は、ZnSe拡散バリアの成長中、幾らかのCu:InPドープされたナノ結晶は、それらの格子からCuを排除するか、またはCuイオンを排出することによってInP量子ドットになったことを示唆する。このことは、得られるドープされたコア/拡散バリアナノ結晶中の最終的なCu濃度を調べることによって確認された[図6(d)および以下でのさらなる議論]。
【0071】
InP格子からのCuの排除もしくは排出は、幾つかの実施態様において、ドーパント拡散バリアエピタキシャル成長の前に、より多いCuドーパントイオンをCu:InPコアホストナノ結晶中に導入することによって解決することができる。図6(b)は、同じ反応条件下でZnSe拡散バリアの3層の単層を成長後、Cu:InP/ZnSeドープされたコア/拡散バリアナノ結晶のPLスペクトルが、ホストInPナノ結晶中のCu濃度を増加するとInPバンドギャップ寄与の体系的減少を示したことを示す。重要なことには、Cu濃度が15%に増加したときに、バンドギャップInP PLが完全に除去された。
【0072】
Cu:InP/ZnSeドープされたコア/拡散バリアナノ結晶のPL特性についてのさらに体系的かつ定量的な研究を図6(c)および6(d)にまとめる。高いCu濃度(コアの全カチオンの20%)では、ドーパントPL QYは、ZnSe拡散バリアの厚さを増加させると、この特異的反応について、約3%から約35%に着実に増加した。中間のCu濃度のもの(コアの全カチオンの10%)のドーパントPL QYは、2層のZnSe拡散バリア単層がドープInPナノ結晶上に成長した後、平坦部(〜20%PL QY)を示した。低いCu濃度(コアの全カチオンの5%)での反応については、ドーパントPL QYは実際に、ZnSe拡散バリアが2層の単層より厚くなった後に下落する有意の傾向を示した。図6(b)に示されるように、中間および低いCu濃度での2つの反応は、高められた温度下で3層の単層のZnSeシェルの成長を有するドープされたコア/拡散バリアナノ結晶について、有意のバンドギャップPLを示し始めた。
【0073】
図6(d)の結果は、全ての3つの反応について、反応混合物から注意深く精製した(実験参照)後に得られるCu:InPドープされたナノ結晶に見出されるCu濃度は、拡散バリアの厚さが増加するにつれて、着実に低下することを示した。これは、得られるドープされたコア/拡散バリアナノ結晶からのCuドーパントイオンの排除を定量的に確かめた。平均して5層の単層のZnSeを成長させたなら、Cu濃度は約50%下落した。
【0074】
図6の結果をまとめると、ZnSe拡散バリアが成長すると、CuドーパントイオンはInPナノ結晶格子から排除された。この排除は、避けることができない。というのは、拡散バリア物質のしかるべき厚さを達成するために、拡散バリア成長温度220℃および長い反応時間の両方が必要とされたからである。反応温度は、Cu:InPについての格子拡散の臨界温度と先に議論したCu:ZnSeドープナノ結晶系の臨界温度との間である。これは、ZnSe層が拡散バリアとして機能してCuドーパントのドープInPナノ結晶からの排除を減速させることができるが、この問題を完全に解決するためにいくらか追加の技術が必要とされたことを意味する。図6の結果は、この挑戦が、高いドーパントイオン濃度を有するドープされたナノ結晶を使用することによって解決できることを示した。最初のドーパントPL QYは、高いドーパント濃度では比較的低い[図4(b)および図6c]が、最終的なドーパントPL QYは、いくらかのドーパントイオンがドープナノ結晶から除去されると、最適になった。
【0075】
Cu:InP/ZnSeドープされたコア/拡散バリアナノ結晶のCuドーパントPLの熱安定性を、対照としてInP/ZnSeコア/シェル量子ドットを用いて調べた(図7)。本明細書に記載されるように、ドーパントPLについての発光レベルの1つは、Cu原子濃度と関連し[図1(a)]、かくして、InP量子ドットの励起子PLに比べて格子振動とあまり結び付けるべきでない。
視覚的に、Cu:InP/ZnSeドープされたコア/拡散バリアナノ結晶は、150℃まで加熱してもそのドーパントPLに有意の変化を示さなかったが、対照InP/ZnSe量子ドットは、そのバンドギャップPLのほぼ完全な消光を示した[図7(a)]。2つの試料の発光色はまた、有意の差を示し、InP/ZnSe量子ドットPLの色は赤にシフトし、Cu:InP/ZnSeドープされたコア/拡散バリアナノ結晶のPLは、加熱しても顕著な変化を示さなかった。300℃に加熱した後、Cu:InP/ZnSeドープされたコア/拡散バリアナノ結晶の発光強度はまた、いくらか顕著な減少を示したが、発光色は変化しなかった(図10)。比較的低い温度で示されたInP/ZnSe量子ドットおよび、高い温度で示されたCu:InP/ZnSeドープされたコア/拡散バリアナノ結晶の両方の全ての変化は、可逆であることが分かった。試料を室温に冷却したとき、両方の試料についての発光色および強度は回復された。
【0076】
これらの視覚による観察をさらに定量的なやり方で検証するために、両方の溶液試料のPLスペクトルをまた、室温および75℃で記録した。図7(b)に示されるように、Cu:InP/ZnSeドープされたコア/拡散バリアナノ結晶のPLスペクトルは、両方の温度について有意の差を示さなかった。逆に言えば、InP/ZnSe量子ドットのPLスペクトルは、著しい赤-シフトと、PL強度の実質的減少とを示した。
【0077】
図7の結果は、Cu:InP/ZnSeドープされたコア/拡散バリアナノ結晶の光ルミネッセンスは、ドーピング中心に由来することを確認した。上記結果は、そのような系はなお、温度依存性によるバンドギャップ発光の代わりに、むしろ純粋なドーパント発光に近いようにふるまうことを示した。Cu:InP/ZnSeドープされたコア/拡散バリアナノ結晶の顕著な熱安定性はさらに、これらのナノ結晶が、対応するドープされていない量子ドットより幾つかの特定の技術用途について有能であり、それは、高温が避けられない用途、例えば固体状態採光、レーザー、光発光ダイオード等の用途である。
【0078】
本発明の種々の実施態様を、本発明の種々の目的を達成することにおいて、記載した。これらの実施態様は本発明の原理を単に説明するものと認識されるべきである。多くのそれらの変更および適用は、本発明の意図および範囲から離れることなく、当業者に容易に明らかであろう。
【技術分野】
【0001】
<関連する出願データ>
本願は、35 U.S.C. §119(e)に拠り、2009年7月1日に出願された米国暫定特許出願シリアル番号61/222,229に優先権主張し、引用することによりその全部が取り込まれる。
<発明の分野>
本発明は、ナノ結晶物質、特にドープされたナノ結晶物質およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
コロイド状半導体ナノ結晶もしくは量子ドットは、進歩した光学物質の開発におけるそれらの有望性について重大な関心を生じさせた。寸法依存性発光は、種々の波長依存性用途においてそれらの使用を可能にする、半導体ナノ結晶の魅力ある特性である。
【0003】
例えば生物学的ラベリングは、半導体ナノ結晶の重大な用途であることを期待される。特に、電磁スペクトルの近赤外(NIR)領域(700〜1400nm)における発光を有する光ルミネッセンス(PL)量子ドットは、それらの大きい吸収断面および狭い発光帯域のゆえに、in-vivo画像化のための生物学的ラベルとして望ましい。さらには、半導体ナノ結晶はまた、ディスプレー技術、サーモエレクトロニクス、テレコミュニケーションおよび信号発信、光通信および光起電装置において重大な用途を見出すことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
それにもかかわらず、ドープされたナノ結晶を含む半導体ナノ結晶の合成化学は、種々の用途で使用するために高性能ナノ結晶の開発に挑戦を続け、努力し続けている。概して言えば、これらの物質の今日の限界は、低い発光効率、低いドーパント発光特性、ナノ結晶格子からドーパントの放出、広いスペクトル幅、乏しい色制御および/または乏しい安定性を包含する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前述の限界を考慮して、ドープされた半導体ナノ結晶について本明細書において説明し、幾つかの実施態様において、有利な特性を明らかにする。
1つの態様において、本発明は、ドーパントを含む半導体ナノ結晶を提供し、この半導体ナノ結晶は約610nmより大きい波長でドーパント光ルミネッセンス(PL)もしくは発光を有する。別の実施態様において、ドープされた半導体ナノ結晶は、約620nmより大きい波長でドーパント光ルミネッセンスもしくは発光を有する。幾つかの実施態様において、本明細書に記載されるドープされた半導体ナノ結晶は、約620nm〜約1150nmの範囲の波長でドーパント光ルミネッセンスもしくは発光を有する。
【0006】
幾つかの実施態様において、ドープされた半導体ナノ結晶のドーパントは、複数の光ルミネッセンスもしくは発光帯域を提供する。さらには、幾つかの実施態様において、本明細書に記載されるドープされた半導体ナノ結晶は、ホスト物質によるドーパント光ルミネッセンスもしくは発光の吸収による自己-消光を示さないか、または実質的に示さない。
【0007】
約620nm〜約1150nmの範囲でドーパント光ルミネッセンスを有するので、本明細書に記載されるドープされた半導体ナノ結晶は、幾つかの実施態様において、限定されないが、生物学的画像化、テレコミュニケーションおよび信号発信、光通信および光起電装置を包含するNIR用途において使用することができる。
【0008】
幾つかの実施態様において、約610nmより大きい波長でドーパント光ルミネッセンスを有するドープされた半導体ナノ結晶は、II/VI化合物またはIII/V化合物を含むホスト半導体物質を含有する。本明細書において使用されるII、III、VおよびVI族は、American CAS designationに従う周期律表のIIB、IIIA、VAおよびVIA族をいう。例えばIIB族は亜鉛属に相当し、IIIA族はホウ素属に相当し、VA族は窒素属に相当し、VIA族はカルコゲンに相当する。
【0009】
さらに、幾つかの実施態様において、半導体ナノ結晶のドーパントは、1種以上の遷移金属を包含する金属を含む。他の実施態様において、ドーパントは非金属を含む。
さらに、幾つかの実施態様において、本明細書に記載されるドープされた半導体ナノ結晶からの全部または実質的に全部の光ルミネッセンスは、ドーパント発光に由来する。1つの実施態様において、例えば本明細書に記載されるドープされた半導体ナノ結晶の少なくとも約90%の光ルミネッセンスはドーパント発光に由来する。別の実施態様において、ドープされたナノ結晶の少なくとも約95%の光ルミネッセンスはドーパント発光に由来する。幾つかの実施態様において、ドープされたナノ結晶の少なくとも約99%の光ルミネッセンスはドーパント発光に由来する。幾つかの実施態様において、本明細書に記載されるドープされた半導体ナノ結晶は、II/VIもしくはIII/Vホスト半導体物質からのバンドギャップ発光を全く示さないか、または実質的に示さない。
【0010】
幾つかの実施態様において、本明細書に記載されるドープされた半導体ナノ結晶は、約40%までの光ルミネッセンス量子収率(PL QY)を有する。ドープされた半導体ナノ結晶は、幾つかの実施態様において、少なくとも約10%のPL QYを有する。幾つかの実施態様において、ドープされた半導体ナノ結晶は、約1%〜約40%の範囲のPL QYを有する。幾つかの実施態様において、ドープされた半導体ナノ結晶は、約5%〜約20%の範囲の量子収率を有する。
【0011】
別の態様において、本発明は、その中に配置されたドーパントを有する第1の半導体物質および、ドープされた半導体物質を少なくとも部分的に囲んでいる拡散バリアを含むナノ結晶を提供する。幾つかの実施態様において、第1の半導体物質は、ナノ結晶のコアを提供する。さらに、幾つかの実施態様において、拡散バリアは、ドーパントが第1の半導体物質から拡散するのを抑制するか、または妨げる。ドーパントは、幾つかの実施態様において、遷移金属を包含する金属を含む。他の実施態様において、ドーパントは非金属を含む。
【0012】
第1のホスト半導体物質は、幾つかの実施態様において、II/VI化合物、III/V化合物またはIV族物質を含む。
さらには、幾つかの実施態様において、拡散バリアは、第2の半導体物質を含む。第2の半導体物質は、幾つかの実施態様において、II/VI化合物またはIII/V化合物を含む。しかも、幾つかの実施態様において、拡散バリアは、複数の単層のII/VI化合物またはIII/V化合物を含む。幾つかの実施態様において、例えば拡散バリアは、2〜20層の単層のII/VI化合物またはIII/V化合物を含む。
【0013】
幾つかの実施態様において、第1の半導体物質および第2の半導体物質は異なる。他の実施態様において、第1の半導体物質および第2の半導体物質は同じである。
その中に配置されたドーパントを有する第1の半導体物質および、ドープされた半導体物質を少なくとも部分的に囲んでいる拡散バリアを含むナノ結晶は、幾つかの実施態様において、任意の本明細書に記載される光ルミネッセンス特性を有することができる。
【0014】
さらなる態様において、ドープされた半導体ナノ結晶を製造する方法が提供される。1つの実施態様において、ドープされた半導体ナノ結晶を製造する方法は、(a)反応容器中で、金属前駆体、リガンドおよび溶媒を合わせて、金属-リガンド錯体を形成すること、(b)ホスト半導体ナノ結晶を形成するのに十分な第1の温度で、アニオン前駆体と金属-リガンド錯体とを混合すること、(c)ドーパントとホスト半導体ナノ結晶とを混合して、反応混合物を提供すること、ならびに(d)反応混合物を、その中に配置されたドーパントを有するホスト半導体ナノ結晶を提供する第2の温度まで加熱することを含む。半導体ナノ結晶中に配置されているので、ドーパントは、幾つかの実施態様において、ナノ結晶の表面に存在しないか、または実質的に存在しない。幾つかの実施態様において、例えばドーパントは、ホストII/VIもしくはIII/V半導体物質の格子内に組み込まれているか、または存在する。
【0015】
幾つかの実施態様において、金属前駆体は、II族金属、III族金属またはIV族金属を含む。さらに、幾つかの実施態様において、アニオン前駆体は、V族元素またはVI族元素を含む。したがって、幾つかの実施態様において、ホスト半導体ナノ結晶は、II/VI化合物、III/V化合物またはIV族物質を含む。
【0016】
幾つかの実施態様において、第2の温度は、第1の温度未満または第1の温度より上である。第2の温度は、幾つかの実施態様において、例えば約180〜約240℃の範囲にある。幾つかの実施態様において、反応混合物は、少なくとも2℃/分の速度で、第2の温度まで加熱される。
【0017】
ドープされた半導体ナノ結晶を製造する方法は、幾つかの実施態様において、少なくとも1個のドープされた半導体ナノ結晶上に物質M1X1を含有する拡散バリアを形成することをさらに含み、ここでM1はカチオンであり、X1はアニオンである。幾つかの実施態様において、拡散バリアを形成する方法は、ドープされた半導体ナノ結晶を、交互に、カチオンの単層を形成する量のカチオン(M1)前駆体溶液と、及び、アニオンの単層を形成する量のアニオン前駆体(X1)と接触させることによって、少なくとも1個のドープされた半導体ナノ結晶上に物質M1X1の少なくとも1層の単層を形成することを含み、ここでM1X1は、II/VI化合物またはIII/V化合物から選択される、安定なナノメートルの大きさの無機固体を含む。幾つかの実施態様において、拡散バリアは、20層までの単層のM1X1を含む。幾つかの実施態様において、拡散バリアは、20層より多い単層のM1X1を含む。
【0018】
幾つかの実施態様において、ドープされた半導体ナノ結晶は、まずカチオン前駆体溶液と接触されて、カチオンの単層を有するドープされた半導体ナノ結晶を提供する。他の実施態様において、ドープされた半導体ナノ結晶は、まずアニオン前駆体溶液と接触されて、アニオンの単層を有するドープされた半導体ナノ結晶を提供する。幾つかの実施態様において、交互の、カチオン前駆体溶液およびアニオン前駆体溶液の、ドープされた半導体ナノ結晶の溶液への添加は、拡散バリアを含むドープされた半導体ナノ結晶を含有する溶液を生じ、この溶液はまた、カチオン前駆体溶液およびアニオン前駆体溶液を含有する。
【0019】
幾つかの実施態様において、交互に、カチオン前駆体およびアニオン前駆体を、ドープされた半導体ナノ結晶を含む反応容器へ添加することによって、ドープされた半導体ナノ結晶は、カチオンおよびアニオン前駆体溶液の交互的添加の間に洗浄されないか、さもなければ精製されない。
これらおよび他の実施態様は、以下の詳細な説明においてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、(a) Cu-ドープされたバルクInPのエネルギー図の概略説明図ならびに、(b)本発明の1つの実施態様に従う4nmのCu:InPドープされたナノ結晶のUV-可視、PLおよびPLEスペクトルを表す。
【図2】図2は、異なる大きさにされたInP量子ドットおよび本発明の1つの実施態様に従うCu:InPドープされたナノ結晶の(a) PLスペクトルおよび(b) PLピーク位置を表す。
【図3】図3は、本発明の1つの実施態様に従う、異なる反応温度でのCu:InPドープされたナノ結晶の(a) UV-可視、(b) PLスペクトル、(c) InPバンドギャップPL量子収率、(d) CuドーパントPL量子収率および(e) CuドーパントPLピーク位置を表す。
【図4】図4は、本発明の1つの実施態様に従う、(a)異なる銅濃度を有するCu:InPドープされたナノ結晶のUV-可視吸収スペクトル、(b) (a)における対応する試料のドーパントPL QYおよびピーク位置ならびに、(c)ドーピング濃度20%を有するCu:InPドープされたナノ結晶のXRDパターンを表す。
【図5】図5は、本発明の1つの実施態様に従う、(a) InPコアおよび(b) Cu:InP /ZnSeドープされたコア/拡散バリアナノ結晶のTEM画像ならびに、(c) (b)と関連する試料の電子回折パターンを提供する。
【図6】図6は、本発明の幾つかの実施態様に従う、(a)異なる厚さのZnSe拡散バリアを有するCu:InPドープされたナノ結晶(5%のCu:P前駆体比で形成された)のPLスペクトル、(b) Cu:InPコアについて異なるCu:P前駆体比で形成されたCu:InP /ZnSeコア/拡散バリアドープされたナノ結晶(ZnSe拡散バリアについて3層の単層)のPLスペクトル、(c)異なる初期Cu:P前駆体濃度を有する、 ZnSe拡散バリア厚みに対するCu:InPドープされたナノ結晶のドーパントPL QY、ならびに(d)異なる初期Cu:P前駆体濃度を有する、 ZnSeシェル厚みに対するCu:InPドープされたコア/拡散バリアナノ結晶中のCu濃度を表す。
【図7】図7は、本発明の幾つかの実施態様に従う、(a)視覚による観察および(b)分光学的定量化により示される、InP /ZnSeコア/シェルナノ結晶と比べた、Cu:InP /ZnSeコア/拡散バリアドープされたナノ結晶のPLに対する温度の効果を表す。
【図8】図8は、本発明の1つの実施態様に従う、(A)温度50℃にて異なる時間間隔で5%ドーピングを有するCu:InPドープされたナノ結晶のPLスペクトル、(B)および(C)異なる温度での試料(A)のPLスペクトル、ならびに(D)対応する量子効率を表す。
【図9】図9は、本発明の1つの実施態様に従う、5%ドーピングを有するCu:InP/ZnSeドープされたコア/拡散バリアナノ結晶のUV-可視-近赤外(NIR)、PLおよびPLEスペクトルを表す。
【図10】図10は、本発明の1つの実施態様に従う、Cu:InP/ZnSeドープされたコア/拡散バリアナノ結晶の加熱中に撮られたデジタル写真を表す。
【図11】図11は、本発明の1つの実施態様に従う、Cu:InPドープされたナノ結晶のPLスペクトル、量子収率およびPLピーク位置を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の詳細な説明、実施例および図面ならびにそれらの先の説明および後の説明を参考にすることによって、本発明を容易に理解することができる。しかしながら本発明の要素、装置および方法は、詳細な説明、実施例および図面に示される特定の実施態様に限定されない。これらの実施態様は、本発明の原理を単に説明するものと認識すべきである。多くの変更および適応形は、本発明の意図および範囲から離れることなく、当業者には容易に明らかであろう。
【0022】
1つの態様において、本発明は、ドーパントを含む半導体ナノ結晶を提供し、この半導体ナノ結晶は、約610nmより大きい波長でドーパント光ルミネッセンスもしくは発光を有する。別の実施態様において、ドープされた半導体ナノ結晶は、620nmより大きい波長でドーパント光ルミネッセンスもしくは発光を有する。幾つかの実施態様において、本明細書に記載されるドープされた半導体ナノ結晶は、約620nm〜約1150nmの範囲の波長でドーパント光ルミネッセンスもしくは発光を有する。
【0023】
幾つかの実施態様において、ドープされた半導体ナノ結晶のドーパントは、複数の光ルミネッセンスもしくは発光帯域を提供する。幾つかの実施態様において、2つ以上のドーパント発光帯域が重なり合う。幾つかの実施態様において、2つ以上のドーパント発光帯域が重なり合わない。その上、幾つかの実施態様において、本明細書に記載されるドープされた半導体ナノ結晶は、ホスト物質によるドーパント光ルミネッセンスもしくは発光の吸収による自己消光を示さないか、または実質的に示さない。幾つかの実施態様において、例えばホストII/VIもしくはIII/V半導体物質は、ドーパントの発光帯域より大きいバンドギャップを有し、それによって、ホスト半導体物質によるドーパント発光の消光を減らすか、または妨げる。
【0024】
約620nm〜約1150nmの範囲のドーパント光ルミネッセンスを有するので、本明細書に記載されるドープされた半導体ナノ結晶は、幾つかの実施態様において、NIR用途、限定されないが生物学的画像化、テレコミュニケーションおよび信号発信、光通信および光起電装置を包含する用途において使用することができる。
【0025】
幾つかの実施態様において、約610nmより大きい波長でドーパント光ルミネッセンスもしくは発光を有するドープされた半導体ナノ結晶は、II/VI化合物もしくはIII/V化合物を含有するホスト半導体物質を含む。1つの実施態様において、例えばドープされた半導体ナノ結晶は、InPホスト物質を含む。幾つかの実施態様において、ホスト半導体物質は、II/VI物質を含まない。幾つかの実施態様において、ホスト半導体物質は、カドミウムを含まないか、または実質的に含まない。
【0026】
さらに、幾つかの実施態様において、半導体ナノ結晶のドーパントは、1種以上の遷移金属を包含する金属を含む。幾つかの実施態様において、遷移金属は、Ti, Zr, Hf, V, Nb, Ta, Cr, Mo, W, Mn, Tc, Re, Fe, Ru, Os, Co, Rh, Ir, Ni, Pd, Pt, Cu, AgもしくはAuまたはそれらの組合せを含む。他の実施態様において、ドーパントは非金属を含む。
【0027】
ドーパントは、幾つかの実施態様において、約50重量%(原子)までの量で半導体ナノ結晶中に存在する。別の実施態様において、ドーパントは、約1重量%〜約30重量%の範囲の量で半導体ナノ結晶中に存在する。幾つかの実施態様において、ドーパントは、約5重量%〜約20重量%の範囲の量で半導体ナノ結晶中に存在する。
【0028】
その上、幾つかの実施態様において、本明細書に記載されるドープされた半導体ナノ結晶からの全て、または実質的に全ての光ルミネッセンスは、ドーパント発光に由来する。1つの実施態様において、例えば少なくとも約90%の、本明細書に記載されるドープされた半導体ナノ結晶の光ルミネッセンスは、ドーパント発光に由来する。別の実施態様において、少なくとも約95%の、ドープされたナノ結晶の光ルミネッセンスは、ドーパント発光に由来する。幾つかの実施態様において、少なくとも約99%の、ドープされたナノ結晶の光ルミネッセンスは、ドーパント発光に由来する。幾つかの実施態様において、ドープされた半導体ナノ結晶は、II/VIもしくはIII/Vホスト半導体物質からのバンドギャップ発光を全く示さないか、または実質的に示さない。
【0029】
幾つかの実施態様において、本明細書に記載されるドープされた半導体ナノ結晶は、約40%までのPL QYを有する。ドープされた半導体ナノ結晶は、幾つかの実施態様において、少なくとも約10%のPL QYを有する。幾つかの実施態様において、ドープされた半導体ナノ結晶は、約1%〜約40%の範囲のPL QYを有する。幾つかの実施態様において、ドープされた半導体ナノ結晶は、約5%〜約20%の範囲の量子収率を有する。
【0030】
別の態様において、本発明は、その中に配置されたドーパントを有する第1の半導体物質および、ドープされた半導体物質を少なくとも部分的に囲んでいる拡散バリアを含むナノ結晶を提供する。幾つかの実施態様において、第1の半導体物質は、ナノ結晶のコアを提供する。さらに、幾つかの実施態様において、拡散バリアは、ドーパントが第1の半導体ホスト物質から拡散するのを抑制するか、または妨げる。ドーパントは、幾つかの実施態様において、遷移金属を包含する金属を含む。他の実施態様において、ドーパントは非金属を含む。
【0031】
第1の半導体ホスト物質は、幾つかの実施態様において、II/VI化合物、III/V化合物またはIV族物質を含む。本明細書において提供されるように、幾つかの実施態様において、第1の半導体物質は、II/VI化合物を含まない。幾つかの実施態様において、その中に配置されたドーパントを有する第1の半導体物質および、ドープされた半導体物質を少なくとも部分的に囲んでいる拡散バリアを含むナノ結晶は、カドミウムを全く含まないか、または実質的に含まない。
【0032】
さらには、幾つかの実施態様において、拡散バリアは、第2の半導体物質を含む。第2の半導体物質は、幾つかの実施態様において、II/VI化合物またはIII/V化合物を含む。しかも、幾つかの実施態様において、拡散バリアは、複数の単層のII/VI化合物またはIII/V化合物を含む。拡散バリアは、任意の所望の数の単層のII/VI化合物またはIII/V化合物を含むことができ、これは本発明の目的と相反しない。幾つかの実施態様において、例えば拡散バリアは、2〜20層の単層のII/VI化合物またはIII/V化合物を含む。他の実施態様において、拡散バリアは、15層までの単層のII/VI化合物またはIII/V化合物を含む。
【0033】
幾つかの実施態様において、第1の半導体物質および第2の半導体物質は異なる。他の実施態様において、第1の半導体物質および第2の半導体物質は同じである。幾つかの実施態様において、例えばドーパントに対してホストとして役立つ第1の半導体物質はIII/V物質を含み、拡散バリアの第2の半導体物質はII/VI物質を含む。幾つかの実施態様において、第1の半導体物質は、CuドープされたInPを含み、拡散バリアの第2の半導体物質はZnSeを含む。
【0034】
その中に配置されたドーパントを有する第1の半導体物質および、ドープされた半導体物質を少なくとも部分的に囲んでいる拡散バリアを含むナノ結晶は、幾つかの実施態様において、任意の本明細書に記載される光ルミネッセンス特性を有することができる。その上、幾つかの実施態様において、拡散バリアを含むナノ結晶物質は、本明細書に示される任意の量でドーパントを含むことができる。
【0035】
幾つかの実施態様において、本明細書に記載されるドープされた半導体ナノ結晶は、本発明の目的に相反することなく、任意の所望の大きさを有することができる。幾つかの実施態様において、ドープされた半導体ナノ結晶は、約10nm未満の平均寸法を有する。別の実施態様において、ドープされた半導体ナノ結晶は、約5nm未満の平均寸法を有する。幾つかの実施態様において、ドープされた半導体ナノ結晶は、約1nm〜約5nmの範囲の平均寸法を有する。ドープされた半導体ナノ結晶は、幾つかの実施態様において、約1nm未満または約10nmより大きい平均寸法を有する。
【0036】
幾つかの実施態様において、本明細書に記載されるドープされた半導体ナノ結晶は、単分散または実質的に単分散である。ドープされた半導体ナノ結晶は、幾つかの実施態様において、調製されたままの状態(as-prepared state)にある。幾つかの実施態様において、調製されたままの状態にあるので、ドープされた半導体ナノ結晶は、精製手順および/または寸法選択手順に供されない。幾つかの実施態様において、調製された、ドープされた半導体ナノ結晶は、ドープされた半導体ナノ結晶について本明細書に記載される任意の特性を有することができる。
【0037】
さらなる態様において、ドープされた半導体ナノ結晶の製造方法が提供される。1つの実施態様において、ドープされた半導体ナノ結晶の製造方法は、(a)反応容器中で、金属前駆体、リガンドおよび溶媒を合わせて、金属-リガンド錯体を形成すること、(b)ホスト半導体ナノ結晶を形成するのに十分な第1の温度で、アニオン前駆体と金属-リガンド錯体とを混合すること、(c)ドーパントとホスト半導体ナノ結晶とを混合して、反応混合物を提供すること、ならびに(d)反応混合物を、その中に配置されたドーパントを有するホスト半導体ナノ結晶を提供する第2の温度まで加熱することを含む。半導体ナノ結晶中に配置されているので、ドーパントは、幾つかの実施態様において、ナノ結晶の表面に存在しないか、または実質的に存在しない。幾つかの実施態様において、例えばドーパントは、ホストII/VIもしくはIII/VI物質の格子内に組み込まれているか、または存在する。
幾つかの実施態様において、金属は、II族金属、III族金属またはIV族金属を含む。さらに、幾つかの実施態様において、アニオン前駆体は、V族元素またはVI族元素を含む。したがって、幾つかの実施態様において、ホスト半導体ナノ結晶は、II/VI化合物、III/V化合物またはIV族物質を含む。
【0038】
金属前駆体は、幾つかの実施態様において、金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属窒化物、金属アンモニア錯体、金属アミン、金属アミド、金属イミド、金属カルボキシレート、金属アセチルアセトネート、金属ジチオレート、金属カルボニル、金属シアニド、金属イソシアニド、金属ニトリル、金属過酸化物、金属水酸化物、金属水素化物、金属エーテル錯体、金属ジエーテル錯体、金属トリエーテル錯体、金属炭酸塩、金属リン酸塩、金属硝酸塩、金属亜硝酸塩、金属硫酸塩、金属アルコキシド、金属シロキシド、金属チオレート、金属ジチオレート、金属ジサルファイド、金属カルバメート、金属ジアルキルカルバメート、金属ピリジン錯体、金属ビピリジン錯体、金属フェナントロリン錯体、金属ターピリジン錯体、金属ジアミン錯体、金属トリアミン錯体、金属ジイミン、金属ピリジンジイミン、金属ピラゾリルボレート、金属ビス(ピラゾリル)ボレート、金属トリス(ピラゾリル)ボレート、金属ニトロシル、金属チオカルバメート、金属ジアザブタジエン、金属ジチオカルバメート、金属ジアルキルアセトアミド、金属ジアルキルホルムアミド、金属ホルムアミジネート、金属ホスフィン錯体、金属アルシン錯体、金属ジホスフィン錯体、金属ジアルシン錯体、金属オキザレート、金属イミダゾール、金属ピラゾレート、金属-シッフ塩基錯体、金属ポルフィリン、金属フタロシアニン、金属サブフタロシアニン、金属ピコリネート、金属ピペリジン錯体、金属ピラゾリル、金属サリチルアルデヒド、金属エチレンジアミン、金属トリフレート化合物またはそれらの任意の組合せを含むことができる。
さらに、本明細書に記載される方法において使用するのに適当なリガンドは、幾つかの実施態様において、脂肪酸、脂肪アミン、ホスフィン、ホスフィンオキシド、ホスホン酸、ホスフィン酸、スルホン酸またはそれらの任意の組合せを含む。幾つかの実施態様において、リガンドは、約30個までの炭素原子を含む。別の実施態様において、リガンドは、約45個までの炭素原子を含む。
【0039】
幾つかの実施態様において、金属前駆体およびリガンドが配置される溶媒は、配位結合溶媒である。他の実施態様において、金属前駆体およびリガンドが配置される溶媒は、非配位結合溶媒である。1つの実施態様において、適当な非配位結合溶媒は、オクタデセン(ODE)を含む。さらなる適当な非配位結合溶媒は、一般に以下の指針を用いて選択することができる。適当な非配位結合溶媒は、幾つかの実施態様において、約25℃未満の融点および約250℃より大きい沸点を有していなければならない。その上、反応体および生成物は同様に、幾つかの実施態様において、選択された溶媒中に可溶性であり、かつ安定でなければならない。
【0040】
幾つかの実施態様において、第2の温度は、第1の温度未満または第1の温度より上である。第2の温度は、幾つかの実施態様において、例えば約170〜約240℃の範囲にある。第2の温度は、幾つかの実施態様において、約175〜約230℃または約180〜約220℃の範囲にある。別の実施態様において、第2の温度は約185〜約200℃の範囲にある。
幾つかの実施態様において、反応混合物は、少なくとも2℃/分の速度で、第2の温度まで加熱される。
【0041】
ドープされた半導体ナノ結晶を製造する方法は、幾つかの実施態様において、少なくとも1個のドープされた半導体ナノ結晶上に物質M1X1を含有する拡散バリアを形成することをさらに含み、ここでM1はカチオンであり、X1はアニオンである。幾つかの実施態様において、拡散バリアを形成する方法は、ドープされた半導体ナノ結晶を、交互に、カチオンの単層を形成する量のカチオン(M1)前駆体溶液と、かつアニオンの単層を形成する量のアニオン前駆体(X1)と接触させることによって、少なくとも1個のドープされた半導体ナノ結晶上に物質M1X1の少なくとも1層の単層を形成することを含み、ここでM1X1は、II/VI化合物またはIII/V化合物から選択される、安定なナノメートルの大きさの無機固体を含む。幾つかの実施態様において、拡散バリアは、15層までの単層のM1X1を含む。幾つかの実施態様において、拡散バリアは、15層より多い単層のM1X1を含む。その上、幾つかの実施態様において、カチオン前駆体は、本明細書に記載される金属前駆体を含む。
【0042】
幾つかの実施態様において、ドープされた半導体ナノ結晶は、まずカチオン前駆体溶液と接触されて、カチオンの単層を有するドープされた半導体ナノ結晶を提供する。他の実施態様において、ドープされた半導体ナノ結晶は、まずアニオン前駆体溶液と接触されて、アニオンの単層を有するドープされた半導体ナノ結晶を提供する。幾つかの実施態様において、交互の、カチオン前駆体溶液およびアニオン前駆体溶液の、ドープされた半導体ナノ結晶の溶液への添加は、拡散バリアを含むドープされた半導体ナノ結晶を含有する溶液を生じ、この溶液はまた、カチオン前駆体溶液およびアニオン前駆体溶液を含有する。
【0043】
幾つかの実施態様において、交互に、カチオン前駆体およびアニオン前駆体を、ドープされた半導体ナノ結晶を含む反応容器へ添加することによって、ドープされた半導体ナノ結晶は、カチオンおよびアニオン前駆体溶液の交互的添加の間に洗浄されないか、さもなければ精製されない。
【0044】
幾つかの実施態様において、拡散バリアの単層は、米国特許出願シリアル番号10/763,068号に記載される方法(引用することにより、その全部が組み込まれる)に従って、ドープされたコアナノ結晶上に堆積されることができる。
【0045】
その上、幾つかの実施態様において、少なくとも1つのドープされた半導体ナノ結晶上に拡散バリアを形成することはさらに、少なくとも1つの半導体ナノ結晶からドーパントの一部を拡散させるか、または排出させることを含む。
【0046】
幾つかの実施態様において、本明細書に記載されるドープされた半導体ナノ結晶(拡散バリアを含むドープされた半導体ナノ結晶を包含する)は、合成段階の間、精製、洗浄または分離することなく、単一の反応容器中で製造され、1反応器(one-pot)合成手順という結果になる。
【0047】
<実施例>
本発明の実施態様を以下の限定されない実施例においてさらに説明する。
[実施例1]
ドープされた半導体ナノ結晶の製造および特性決定
I. CuドープされたInP半導体ナノ結晶の合成
物質:工業技術等級(90%)のオクタデセン(ODE)、酢酸インジウム(In(Ac)3、99.99%)、トリ-n-オクチルホスフィン(TOP、97%)、ステアリン酸(SA、98%)、オレイン酸(90%)、ステアリン酸亜鉛(12.5-14%)、トリス-トリメチルシリルホスフィン(P(TMS)3、95%)、1-オクチルアミン(99%)をアルファ(Alfa)から購入した。オレイルアミン(97%)は、アドリッチ(Adrich)から購入した。ステアリン酸銅は、実験室で製造した。全ての化学品は、さらに精製することなく使用した。
0.2ミリモルのトリス-トリメチルシリルホスフィンおよび2.4ミリモルのODE(全部で1.5ml)をグローブボックス中で混合することによって、P前駆体の注入溶液を製造した。酢酸インジウム(0.4mM)、ミリスチン酸(1.4mM)および4gの1-オクタデセン(ODE)を三ツ口フラスコに入れた。得られた混合物をアルゴン流下で188℃に加熱し、P前駆体溶液を、三ツ口フラスコ中の反応混合物に注入し、これは、反応温度を10分間で178℃に下げた。反応混合物をさらに130℃に冷却し、銅前駆体溶液(ODE中0.02ミリモルのステアリン酸銅)を反応混合物に添加した。InPナノ結晶のCuイオンでのドーピングのために、反応混合物をさらに210℃に加熱し、加熱速度は約2℃/分であった。
与えられた時間/温度で反応混合物から一定量の標本を取り、トルエンに溶かすことにより、UV-可視およびPL測定によって、プロセスを監視した。幾つかの選択された標本はさらに、TEM、EDXおよび電子回折を用いて試験された。EDXは、標本をエタノールにより精製した後に行った。同じ精製手順を、ドープされたコア/拡散バリア試料について、EDX測定のために行った。Cu:InP/ZnSeドープされたコア/拡散バリアナノ結晶の成長のために、反応混合物を、分離することなく直接使用した(以下の詳細参照)。XRD測定のために、反応混合物を室温まで冷却し、溶液にエタノールを添加することによって精製し、固体生成物を最後に、遠心分離、デカンテーションおよびAr流下での乾燥によって分離した。
【0048】
II. Cu:InP/ZnSeドープされたコア/拡散バリアナノ結晶の合成
CuドープされたInPナノ結晶上でのZnSe拡散バリアのエピタキシャル成長のために、上記(I)で作られたCuドープされたInPナノ結晶を含む反応混合物を150℃に冷却した。ステアリン酸亜鉛(ODE中0.1M)およびセレン(TOP中0.1M)前駆体溶液(それぞれ1.2ml)を、150℃にて2回の注入間に10分の間隔をあけて、別々に、かつ交互に三ツ口反応フラスコに添加した。得られた反応混合物の温度を30分間で220℃に上げて、CuドープされたInPナノ結晶上にZnSe拡散バリアを成長させた。カチオンおよびアニオン前駆体溶液(SILARの第2ランのためにそれぞれ1.65ml)の交互の添加のために、反応混合物を再び150℃に冷却し、30分間で220℃に加熱して、ZnSe拡散バリアの追加の単層を成長させた。同様に、ZnSe拡散バリアの第3(2.1mlのそれぞれの前駆体溶液)、第4(2.8mlのそれぞれの前駆体溶液)および第5(3.5mlのそれぞれの前駆体溶液)の施与のために、同じ「温度周期」設定に従って(前駆体溶液の交互の添加のためには150℃および拡散バリアの単層の成長のためには220℃)、温度を調節した。全体の拡散バリア成長プロセスは、UV-可視、PL、TEM、電子回折およびEDX測定のために標本を取ることによって監視した。拡散バリアの合成が完了したとき、反応を室温に冷却した。
精製のために、10mLのヘキサンを反応溶液に添加し、未反応の出発物質および副生成物を、連続メタノール抽出によって、メタノール相が透明になるまで除去した。Cu:InP/ZnSeドープされたコア/拡散バリア半導体ナノ結晶の固体形態を、精製ヘキサン/ODE溶液中へのアセトンの添加、遠心分離、デカンテーションおよびAr流下での乾燥によって、分離した。
【0049】
III. Cu:InPドープされたナノ結晶およびCu:InP/ZnSeドープされたコア/拡散バリアナノ結晶の特性決定
Cu:InPドープされたナノ結晶およびCu:InP/ZnSeドープされたコア/拡散バリアナノ結晶を、次のようにして特性決定した。
【0050】
ドーパント濃度の効果:該効果を、UV-可視およびPL測定のために、180℃にて異なる量のCu前駆体を反応溶液に添加した以外は前節に記載したのと同じ手順を使用して研究した。
【0051】
ドープされた半導体ナノ結晶およびドープされない半導体ナノ結晶の熱安定性:精製したCu:InP/ZnSeおよびInP/ZnSeナノ結晶をODE中に分散させ、溶液を、室温から種々の温度に、300℃まで、アルゴン下で加熱した。フラスコ中の与えられた試料について、固定された位置および除去条件でデジタル写真を撮った。Spex Fluorolog-3蛍光光度計に付けた温度制御ユニット(80℃まで)を使用して、異なる温度でのPLスペクトルを、in situでとった。
【0052】
透過電子顕微鏡(TEM)および高分解能TEM(HR-TEM): JEOL 100CX透過電子顕微鏡にて、加速電圧100kVで、低分解能TEM画像を撮った。炭素-コーティングされた銅グリッドをヘキサンもしくはトルエン溶液に浸漬して、ナノ結晶を膜上に堆積させた。Taitan顕微鏡を用いて、加速電圧300kVで、高分解能TEM(HR-TEM)写真を撮った。
【0053】
ドープされた半導体ナノ結晶のPL QY測定:異常に大きいストークスシフト(Stokes shift)のゆえに、ドープされた半導体ナノ結晶について、対照色素(reference dye)はなかった。したがって、中間対照として、InAs量子ドットを使用した。Cu:InP半導体ナノ結晶のPL QYを、励起波長での同じ光学密度および同様の蛍光波長を有するInAs QDとの蛍光強度の比較によって計算した。
【0054】
他の測定:Philips PW 1830 X-線回折計を用いて、X-線粉末回折(XRD)パターンを得た。電界放出銃を備え、10kVで運転される、Philips ESEM XL30走査電子顕微鏡を用いて、元素分析のためにエネルギー分散型分光法(EDS)を使用した。UV-可視スペクトルは、HP8453 UV-可視分光光度計で記録した。光ルミネッセンス(PL)スペクトルは、Spex Fluorolog-3蛍光光度計を用いて得た。
【0055】
図1(a)は、ドーパント発光の種々の経路を示す、CuドープされたバルクInPのエネルギー図を説明する。図1(b)は、180℃で成長させたCu:InPナノ結晶(〜4nmの大きさ)のUV-可視、PLおよびPL励起(PLE)スペクトルを表す。InPバンドギャップPLは減少し、PLスペクトルは950nmに集まった帯域により支配された。InPのバルクバンドギャップは1.43eVである[図1(a)]か、または867nmであることに注意すべきであり、これは、図1bにおけるPLピークが固有のInPナノ結晶のバンドギャップ発光であり得ないことを意味する。図1(b)における吸収ピークとPLピークとの間の実質的エネルギーギャップはさらに、PLがCuドーパントPLでなければならないことを支持する。実際には、この大きいエネルギーギャップは、Cu:InPナノ結晶のゼロ自己-消光の根拠である。というのは、無視できる再吸収が、ナノ結晶について生じ得るからである。
【0056】
PLE測定[図1(b)]は、広い帯域における異なる波長でのPLは同様の励起スペクトルを有することを示し、これは、この広い帯域がナノ結晶の寸法分布によるものでは全くないことを意味する。これはさらに、Cu:InP ナノ結晶のPLスペクトルにおけるCuAおよびCuB帯域の両方の共存による広域化を支持する。
【0057】
これと矛盾なくまた、図2(b)におけるPLスペクトルの半値全幅(0.24eV)は、CuAおよびCuBエネルギーレベル間のエネルギー差(0.21eV)に近かった。この証拠から、固有のInPナノ結晶(量子ドット)試料と同じくらい狭いPL帯域を有するCu:InPドープされたナノ結晶を合成することが困難であり得ると結論が下されるであろう。
【0058】
これらの結果に従い、Cu:InPドープされたナノ結晶の広いPL帯域[図1(a)]および図2、上部パネル]が、180℃において、CuAおよびCuBの両方の帯域 [図1(a)]]が活性化されたことを意味すると思われる。この温度は、CuドーパントPL(CuA帯域のみ)を観察するための300℃より、かつバルクInPにおけるCuAおよびCuBの両方の帯域を得るための600℃より実質的に低い。
【0059】
Cu:InPドープされたナノ結晶の赤およびNIR領域(ウィンドウ)における、色-調整可能なCuドーパントPLは、InPホストナノ結晶の大きさを変えることによって実現された(図2)。この光学領域は、630〜1100nmで、現在存在する高性能非カドミウムドープ半導体ナノ結晶エミッターの見えない発光波長(610nmで終わる)を補正する。さらには、Cu:InPドープされたナノ結晶の波長領域はまた、種々の生物医学用途におけるin vivo画像化のために興味をもたれるNIR領域全体を包含する。そのような用途のために、より良い物理的浸透性のために、ナノ結晶の比較的小さい物理的寸法(<10nm)を有することが理想であり、これは、幾つかの実施態様において、これらの比較的小さいCu:InPドープされたナノ結晶を用いて容易に達成可能である(図2、下部)。
【0060】
比較のために、CuドープされたInPナノ結晶と同じ大きさ範囲での固有のInP量子ドットのPLスペクトルがまた、図2(a)に示される。図2(a)の2組のPLスペクトルは、CuドープされたInPナノ結晶およびドープされていないInPの量子ドットエミッター間のピーク位置および幅の差を説明するだけでなく、約450〜1100nmで、InPに基づくナノ結晶により、ほとんど全部の可視およびNIR光学領域を包含する可能性を示す。
【0061】
図3(a)および(b)は、Cuドープ反応についてのUV-可視およびPLスペクトルの一時放出を説明し、固有のInPホストナノ結晶の平均寸法は、約1.8nmであり、UVピークは約470nmである。反応が進行するにつれて、固有のInPホストナノ結晶の第1の励起子吸収ピークは、ピーク位置は変わらないが、徐々に消滅して、あまり明白でなくなった。同時に、第1の励起子ピークの長波長側の末端が出現した。
【0062】
TEM測定は、大きいInPナノ結晶を用いるようなプロセスにおいて、有意の寸法の変化および寸法分布の変化はないことを示した。さらには、銅前駆体をInPホストナノ結晶溶液に添加すると、室温においてさえ、同様の分光学的変化が再現可能に検出され、再び、ナノ結晶の寸法分布は変化しなかった。そのような分光学的変化は、電子的ドーピング半導体ナノ結晶と矛盾しない。かくして、そのような分光学的変化の1つの可能な仮の説明は、2価銅イオンによる3価インジウムイオンの交換の結果である。
【0063】
先の段落で挙げられたUV-可視吸収スペクトルにおける全ての変化は、PLピーク位置およびピーク幅を変えることなく、バンドギャップPLの強度の減少を伴っていた[図3(b)]。本明細書においてさらに議論される図8における結果と矛盾せず、広いドーパントPLピークは、ホストInPナノ結晶のバンドギャップPLの減少が低下するにつれてその強度を増加し始め、ドーパントPLの劇的な強度の増加が生じた[図3(d)]。図11は、InPバンドギャップ発光の消滅およびCuからのドーパント発光の出現をさらに証明する。
【0064】
図8に示された結果は、CuイオンのInPホストナノ結晶上への表面吸着が、現行の系において、室温で生じたことを示す。図8に示された実験において、表面吸着は50℃にて50分以内に完了し、これは、InPバンドギャップPLの完全な消光により示された。しかしながら、格子組み込みは温度が約110℃より高くなるまで起こらず(図8)、CuドーパントPLの徐々の出現を生じた。175〜200℃の温度において、ドーパントPL強度の劇的な増加が観察され、これは、対応する固有のInPナノ結晶の元のバンドギャップPLより約1〜2倍高いことがわかった[定量的比較のために図3(c)および3(d)参照]。
【0065】
強度の急な増加の後、ドーパントPLは温度が約255℃に達するまでに安定になった。255℃にて(データは示されない)、ドーパントPL強度は低下し始め、ピーク位置は赤にシフトし、UV-可視吸収スペクトルは特徴がなくなり、これら全ての事は、この高い温度範囲でオストワルド成熟が生じたことを示した。
【0066】
上記の段落で議論した結果は、比較的高いPL明度(元のInPホストナノ結晶のバンドギャップPLより約45倍明るい[図3(c)および3(d)])を有するCu:InPドープされたナノ結晶を提供しただけでなく、175〜200℃で劇的なドーパントPL増加を示した。このことはさらに、この段階は固有の段階であり、表面吸着および格子組み込みの段階とは切り離され得ることを示す。この段階が、仮にドーパントイオンの格子拡散であるなら、それはまた、Cu:InPドープされたナノ結晶系についての格子拡散の臨界温度が約180〜190℃であることを意味し、これは、Cu:ZnSeおよびMn:ZnSe d-ドット系の両方についての格子拡散の臨界温度である220〜260℃の範囲より大幅に低い。
【0067】
ドープされたナノ結晶の光学特性へのドーパント濃度の効果を、同じ反応条件下で体系的に研究した(図4)。図4(a)は、180℃にてCu:P前駆体比を変えることによって形成された、Cu:InPドープされたナノ結晶のUV-可視スペクトルを説明する。溶液中のCu前駆体の相対的濃度を増加することによって、固有のInPホスト量子ドットの第1の励起子吸収ピーク[図5(a)の黒線]は、増加された汚れを示した。同時に、図3(a)に現れた長波長側の長い尾は、さらに明白になった。これらの傾向は、先に議論した半導体ナノ結晶の電子ドーピングと関連する特徴と矛盾しないと認められる[図3(a)参照]。
【0068】
ドーパントPLピーク位置およびスペクトル外形は、溶液中のCu前駆体濃度と無関係であることがわかったが、PL QYは、図4(b)に示されるように、約10%のCu濃度で最大を示した(InPホストナノ結晶の形成のための系における限定試薬である、P前駆体の初期濃度に対して)。エネルギー分散型分光法(EDS)測定は、得られるCu:InPドープされたナノ結晶の原子組成が、前駆体の比と同様の値を有することを示した。この組の実験に使用されたInPホストナノ結晶の寸法は、約1.8mmの大きさであり、これは、各ナノ結晶中約55個のInP構造単位を有する。10%のドーパント濃度は、平均して、ナノ結晶当たり約5〜6個のドーパントイオンを意味する。
【0069】
高濃度のドーパントは通常到達するのが困難であり、ホスト物質の格子構造を変え得る。InPホストナノ結晶のそのままの結晶格子を確認するために、比較的高いドーピング濃度20%を有する、本明細書において記載されるように製造されたCu:InPドープされたナノ結晶試料のXRDパターンを図5(c)に示す。比較のために、バルクInP結晶の回折ピークを図5(c)において実線として印をつけた。Cu:InPドープされたナノ結晶の回折パターンは、バルクInPのものとよく合っており、これは、高濃度のCuドーピングがホストInPナノ結晶の格子構造を変えないことを示した。異なるドーパント濃度について、電子回折パターンを定法通りに試験し、得られた回折パターンはまた、立法晶系のInP結晶格子と矛盾しないことがわかった。
【0070】
Cu:InP/ZnSeドープされたコア/拡散バリアナノ結晶の光学特性は、最初のCu:InPドープされたナノ結晶中のCuドーパント濃度に強く依存することが分かった。ZnSeドーパント拡散バリアの成長に対する、比較的低いCu:P比について(図6(a))、ドーパントPL強度は初めは増加したが、ZnSe拡散バリアの単層が2層より多くなった後は着実に減少し始めた。同時に、固有のInPバンドギャップ発光が出現し始めた(図6(a))。InPバンドギャップPLの出現は、ありそうもないことだが、新たなInPホストナノ結晶の形成であったことが指摘されるべきである。図9に示されるように、PLE測定は、1つの試料のPLピークは皆ほぼ同一のPLEスペクトルを与えたことを示し、バンドギャップPLおよびドーパントPLの両方が同じ組のInPホストナノ結晶に由来したことを示す。これらの結果は、ZnSe拡散バリアの成長中、幾らかのCu:InPドープされたナノ結晶は、それらの格子からCuを排除するか、またはCuイオンを排出することによってInP量子ドットになったことを示唆する。このことは、得られるドープされたコア/拡散バリアナノ結晶中の最終的なCu濃度を調べることによって確認された[図6(d)および以下でのさらなる議論]。
【0071】
InP格子からのCuの排除もしくは排出は、幾つかの実施態様において、ドーパント拡散バリアエピタキシャル成長の前に、より多いCuドーパントイオンをCu:InPコアホストナノ結晶中に導入することによって解決することができる。図6(b)は、同じ反応条件下でZnSe拡散バリアの3層の単層を成長後、Cu:InP/ZnSeドープされたコア/拡散バリアナノ結晶のPLスペクトルが、ホストInPナノ結晶中のCu濃度を増加するとInPバンドギャップ寄与の体系的減少を示したことを示す。重要なことには、Cu濃度が15%に増加したときに、バンドギャップInP PLが完全に除去された。
【0072】
Cu:InP/ZnSeドープされたコア/拡散バリアナノ結晶のPL特性についてのさらに体系的かつ定量的な研究を図6(c)および6(d)にまとめる。高いCu濃度(コアの全カチオンの20%)では、ドーパントPL QYは、ZnSe拡散バリアの厚さを増加させると、この特異的反応について、約3%から約35%に着実に増加した。中間のCu濃度のもの(コアの全カチオンの10%)のドーパントPL QYは、2層のZnSe拡散バリア単層がドープInPナノ結晶上に成長した後、平坦部(〜20%PL QY)を示した。低いCu濃度(コアの全カチオンの5%)での反応については、ドーパントPL QYは実際に、ZnSe拡散バリアが2層の単層より厚くなった後に下落する有意の傾向を示した。図6(b)に示されるように、中間および低いCu濃度での2つの反応は、高められた温度下で3層の単層のZnSeシェルの成長を有するドープされたコア/拡散バリアナノ結晶について、有意のバンドギャップPLを示し始めた。
【0073】
図6(d)の結果は、全ての3つの反応について、反応混合物から注意深く精製した(実験参照)後に得られるCu:InPドープされたナノ結晶に見出されるCu濃度は、拡散バリアの厚さが増加するにつれて、着実に低下することを示した。これは、得られるドープされたコア/拡散バリアナノ結晶からのCuドーパントイオンの排除を定量的に確かめた。平均して5層の単層のZnSeを成長させたなら、Cu濃度は約50%下落した。
【0074】
図6の結果をまとめると、ZnSe拡散バリアが成長すると、CuドーパントイオンはInPナノ結晶格子から排除された。この排除は、避けることができない。というのは、拡散バリア物質のしかるべき厚さを達成するために、拡散バリア成長温度220℃および長い反応時間の両方が必要とされたからである。反応温度は、Cu:InPについての格子拡散の臨界温度と先に議論したCu:ZnSeドープナノ結晶系の臨界温度との間である。これは、ZnSe層が拡散バリアとして機能してCuドーパントのドープInPナノ結晶からの排除を減速させることができるが、この問題を完全に解決するためにいくらか追加の技術が必要とされたことを意味する。図6の結果は、この挑戦が、高いドーパントイオン濃度を有するドープされたナノ結晶を使用することによって解決できることを示した。最初のドーパントPL QYは、高いドーパント濃度では比較的低い[図4(b)および図6c]が、最終的なドーパントPL QYは、いくらかのドーパントイオンがドープナノ結晶から除去されると、最適になった。
【0075】
Cu:InP/ZnSeドープされたコア/拡散バリアナノ結晶のCuドーパントPLの熱安定性を、対照としてInP/ZnSeコア/シェル量子ドットを用いて調べた(図7)。本明細書に記載されるように、ドーパントPLについての発光レベルの1つは、Cu原子濃度と関連し[図1(a)]、かくして、InP量子ドットの励起子PLに比べて格子振動とあまり結び付けるべきでない。
視覚的に、Cu:InP/ZnSeドープされたコア/拡散バリアナノ結晶は、150℃まで加熱してもそのドーパントPLに有意の変化を示さなかったが、対照InP/ZnSe量子ドットは、そのバンドギャップPLのほぼ完全な消光を示した[図7(a)]。2つの試料の発光色はまた、有意の差を示し、InP/ZnSe量子ドットPLの色は赤にシフトし、Cu:InP/ZnSeドープされたコア/拡散バリアナノ結晶のPLは、加熱しても顕著な変化を示さなかった。300℃に加熱した後、Cu:InP/ZnSeドープされたコア/拡散バリアナノ結晶の発光強度はまた、いくらか顕著な減少を示したが、発光色は変化しなかった(図10)。比較的低い温度で示されたInP/ZnSe量子ドットおよび、高い温度で示されたCu:InP/ZnSeドープされたコア/拡散バリアナノ結晶の両方の全ての変化は、可逆であることが分かった。試料を室温に冷却したとき、両方の試料についての発光色および強度は回復された。
【0076】
これらの視覚による観察をさらに定量的なやり方で検証するために、両方の溶液試料のPLスペクトルをまた、室温および75℃で記録した。図7(b)に示されるように、Cu:InP/ZnSeドープされたコア/拡散バリアナノ結晶のPLスペクトルは、両方の温度について有意の差を示さなかった。逆に言えば、InP/ZnSe量子ドットのPLスペクトルは、著しい赤-シフトと、PL強度の実質的減少とを示した。
【0077】
図7の結果は、Cu:InP/ZnSeドープされたコア/拡散バリアナノ結晶の光ルミネッセンスは、ドーピング中心に由来することを確認した。上記結果は、そのような系はなお、温度依存性によるバンドギャップ発光の代わりに、むしろ純粋なドーパント発光に近いようにふるまうことを示した。Cu:InP/ZnSeドープされたコア/拡散バリアナノ結晶の顕著な熱安定性はさらに、これらのナノ結晶が、対応するドープされていない量子ドットより幾つかの特定の技術用途について有能であり、それは、高温が避けられない用途、例えば固体状態採光、レーザー、光発光ダイオード等の用途である。
【0078】
本発明の種々の実施態様を、本発明の種々の目的を達成することにおいて、記載した。これらの実施態様は本発明の原理を単に説明するものと認識されるべきである。多くのそれらの変更および適用は、本発明の意図および範囲から離れることなく、当業者に容易に明らかであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
III/Vホスト半導体物質;および
金属ドーパント
を含むドープされた半導体ナノ結晶であって、半導体ナノ結晶が約620nmより大きいドーパント発光を有するドープされた半導体ナノ結晶。
【請求項2】
ドーパント発光が約1150nmまでである請求項1記載のドープされた半導体ナノ結晶。
【請求項3】
約40%までの光ルミネッセンス量子収率を有する請求項1記載のドープされた半導体ナノ結晶。
【請求項4】
少なくとも約5%の光ルミネッセンス量子収率を有する請求項3記載のドープされた半導体ナノ結晶。
【請求項5】
少なくとも約10%の光ルミネッセンス量子収率を有する請求項1記載のドープされた半導体ナノ結晶。
【請求項6】
III/Vホスト半導体物質からのバンドギャップ発光を実質的に有していない請求項1記載のドープされた半導体ナノ結晶。
【請求項7】
金属ドーパントが、III/Vホスト半導体物質の格子中に組み込まれている請求項1記載のドープされた半導体ナノ結晶。
【請求項8】
金属ドーパントが、少なくとも約1原子重量%の量で存在する請求項1記載のドープされた半導体ナノ結晶。
【請求項9】
金属ドーパントが、約5原子重量%〜約20原子重量%の範囲の量で存在する請求項1記載のドープされた半導体ナノ結晶。
【請求項10】
ドープされた半導体ナノ結晶が約10nmまでの寸法を有する請求項1記載のドープされた半導体ナノ結晶。
【請求項11】
ドープされた半導体ナノ結晶が、約1nm〜約5nmの範囲の寸法を有する請求項1記載のドープされた半導体ナノ結晶。
【請求項12】
金属ドーパントが複数の発光帯域を有する請求項1記載のドープされた半導体ナノ結晶。
【請求項13】
III/Vホスト半導体物質がInPを含む請求項1記載のドープされた半導体ナノ結晶。
【請求項14】
金属ドーパントが銅を含む請求項13記載のドープされた半導体ナノ結晶。
【請求項15】
III/Vホスト半導体物質を少なくとも部分的に囲んでいる拡散バリアをさらに含む請求項1記載のドープされた半導体ナノ結晶。
【請求項16】
拡散バリアが第2の半導体物質を含む請求項15記載のドープされた半導体ナノ結晶。
【請求項17】
第2の半導体物質が、II/VI化合物またはIII/V化合物を含む請求項16記載のドープされた半導体ナノ結晶。
【請求項18】
第2の半導体物質が、2〜20層の単層のII/VI化合物もしくはIII/V化合物を含む請求項16記載のドープされた半導体ナノ結晶。
【請求項19】
第2の半導体物質がII/VI化合物を含む請求項16記載のドープされた半導体ナノ結晶。
【請求項20】
少なくとも約5%の光ルミネッセンス量子収率を有する請求項15記載のドープされた半導体ナノ結晶。
【請求項21】
少なくとも約10%の光ルミネッセンス量子収率を有する請求項15記載のドープされた半導体ナノ結晶。
【請求項22】
ドープされた半導体ナノ結晶が約10nm未満の寸法を有する請求項15記載のドープされた半導体ナノ結晶。
【請求項23】
II/VI化合物がZnSeを含む請求項19記載のドープされた半導体ナノ結晶。
【請求項24】
III/Vホスト半導体物質および拡散バリアのII/VI第2の半導体物質からのバンドギャップ発光を実質的に有していない請求項19記載のドープされた半導体ナノ結晶。
【請求項25】
約150℃までの温度で安定な光ルミネッセンスを有する請求項19記載のドープされた半導体ナノ結晶。
【請求項26】
ドープされた半導体ナノ結晶を製造する方法であって、
(a)反応容器中で、III族金属前駆体、リガンドおよび溶媒を合わせて、金属-リガンド錯体を形成すること、
(b) III/V半導体物質を含むホスト半導体ナノ結晶を形成するのに十分な第1の温度で、V族元素を含むアニオン前駆体と金属-リガンド錯体とを混合すること、
(c)ドーパントとホスト半導体ナノ結晶とを混合して、反応混合物を提供すること、ならびに
(d)反応混合物を、その中に配置されたドーパントを有するホスト半導体ナノ結晶を提供する第2の温度まで加熱すること
を含む方法。
【請求項27】
第1の温度が約180〜約190℃の範囲にある請求項26記載の方法。
【請求項28】
第2の温度が約175〜約240℃の範囲にある請求項26記載の方法。
【請求項29】
反応混合物が、少なくとも約2℃/分の速度で加熱される請求項28記載の方法。
【請求項30】
ドープされた半導体ナノ結晶が実質的に単分散型である請求項26記載の方法。
【請求項31】
ドープされた半導体ナノ結晶が、約620nmより大きいドーパント発光を有する請求項26記載の方法。
【請求項32】
ドープされた半導体ナノ結晶が、約1150nmまでのドーパント発光を有する請求項31記載の方法。
【請求項33】
ドープされた半導体ナノ結晶が少なくとも約5%の光ルミネッセンス量子収率を有する請求項31記載の方法。
【請求項34】
ドープされた半導体ナノ結晶が約40%までの光ルミネッセンス量子収率を有する請求項33記載の方法。
【請求項35】
ドープされた半導体ナノ結晶が、III/Vホスト半導体物質からのバンドギャップ発光を実質的に有していない請求項26記載の方法。
【請求項36】
金属ドーパントが、III/Vホスト半導体物質の格子中に組み込まれる請求項26記載の方法。
【請求項37】
ホストナノ結晶がInPを含む請求項26記載の方法。
【請求項38】
ドーパントが銅を含む請求項37記載の方法。
【請求項39】
少なくとも1個のドープされた半導体ナノ結晶上に物質M1X1を含む拡散バリアを形成することをさらに含む請求項26記載の方法。
【請求項40】
少なくとも1個のドープされた半導体ナノ結晶上に物質M1X1を含む拡散バリアを形成することが、ドープされた半導体ナノ結晶を、交互に、カチオンの単層を形成する量のカチオン(M1)前駆体溶液と、及び、アニオンの単層を形成する量のアニオン前駆体(X1)と接触させることによって、少なくとも1個のドープされた半導体ナノ結晶上に物質M1X1の少なくとも1層の単層を形成することを含み、M1X1は、II/VI族化合物またはIII/V族化合物から選択される無機固体を含む請求項39記載の方法。
【請求項41】
拡散バリアが15層までの単層のM1X1を含む請求項40記載の方法。
【請求項42】
ドープされた半導体ナノ結晶が少なくとも約5%の光ルミネッセンス量子収率を有する請求項39記載の方法。
【請求項43】
ドープされた半導体ナノ結晶が約40%までの光ルミネッセンス量子収率を有する請求項39記載の方法。
【請求項44】
ドープされた半導体ナノ結晶が、III/Vホスト半導体物質または拡散バリアからのバンドギャップ発光を実質的に有していない請求項39記載の方法。
【請求項45】
M1X1がII/VI化合物を含む請求項39記載の方法。
【請求項46】
II/VI化合物がZnSeを含む請求項45記載の方法。
【請求項47】
拡散バリアを形成することが、少なくとも1つの半導体ナノ結晶からいくらかの金属ドーパントを排出することをさらに含む請求項40記載の方法。
【請求項1】
III/Vホスト半導体物質;および
金属ドーパント
を含むドープされた半導体ナノ結晶であって、半導体ナノ結晶が約620nmより大きいドーパント発光を有するドープされた半導体ナノ結晶。
【請求項2】
ドーパント発光が約1150nmまでである請求項1記載のドープされた半導体ナノ結晶。
【請求項3】
約40%までの光ルミネッセンス量子収率を有する請求項1記載のドープされた半導体ナノ結晶。
【請求項4】
少なくとも約5%の光ルミネッセンス量子収率を有する請求項3記載のドープされた半導体ナノ結晶。
【請求項5】
少なくとも約10%の光ルミネッセンス量子収率を有する請求項1記載のドープされた半導体ナノ結晶。
【請求項6】
III/Vホスト半導体物質からのバンドギャップ発光を実質的に有していない請求項1記載のドープされた半導体ナノ結晶。
【請求項7】
金属ドーパントが、III/Vホスト半導体物質の格子中に組み込まれている請求項1記載のドープされた半導体ナノ結晶。
【請求項8】
金属ドーパントが、少なくとも約1原子重量%の量で存在する請求項1記載のドープされた半導体ナノ結晶。
【請求項9】
金属ドーパントが、約5原子重量%〜約20原子重量%の範囲の量で存在する請求項1記載のドープされた半導体ナノ結晶。
【請求項10】
ドープされた半導体ナノ結晶が約10nmまでの寸法を有する請求項1記載のドープされた半導体ナノ結晶。
【請求項11】
ドープされた半導体ナノ結晶が、約1nm〜約5nmの範囲の寸法を有する請求項1記載のドープされた半導体ナノ結晶。
【請求項12】
金属ドーパントが複数の発光帯域を有する請求項1記載のドープされた半導体ナノ結晶。
【請求項13】
III/Vホスト半導体物質がInPを含む請求項1記載のドープされた半導体ナノ結晶。
【請求項14】
金属ドーパントが銅を含む請求項13記載のドープされた半導体ナノ結晶。
【請求項15】
III/Vホスト半導体物質を少なくとも部分的に囲んでいる拡散バリアをさらに含む請求項1記載のドープされた半導体ナノ結晶。
【請求項16】
拡散バリアが第2の半導体物質を含む請求項15記載のドープされた半導体ナノ結晶。
【請求項17】
第2の半導体物質が、II/VI化合物またはIII/V化合物を含む請求項16記載のドープされた半導体ナノ結晶。
【請求項18】
第2の半導体物質が、2〜20層の単層のII/VI化合物もしくはIII/V化合物を含む請求項16記載のドープされた半導体ナノ結晶。
【請求項19】
第2の半導体物質がII/VI化合物を含む請求項16記載のドープされた半導体ナノ結晶。
【請求項20】
少なくとも約5%の光ルミネッセンス量子収率を有する請求項15記載のドープされた半導体ナノ結晶。
【請求項21】
少なくとも約10%の光ルミネッセンス量子収率を有する請求項15記載のドープされた半導体ナノ結晶。
【請求項22】
ドープされた半導体ナノ結晶が約10nm未満の寸法を有する請求項15記載のドープされた半導体ナノ結晶。
【請求項23】
II/VI化合物がZnSeを含む請求項19記載のドープされた半導体ナノ結晶。
【請求項24】
III/Vホスト半導体物質および拡散バリアのII/VI第2の半導体物質からのバンドギャップ発光を実質的に有していない請求項19記載のドープされた半導体ナノ結晶。
【請求項25】
約150℃までの温度で安定な光ルミネッセンスを有する請求項19記載のドープされた半導体ナノ結晶。
【請求項26】
ドープされた半導体ナノ結晶を製造する方法であって、
(a)反応容器中で、III族金属前駆体、リガンドおよび溶媒を合わせて、金属-リガンド錯体を形成すること、
(b) III/V半導体物質を含むホスト半導体ナノ結晶を形成するのに十分な第1の温度で、V族元素を含むアニオン前駆体と金属-リガンド錯体とを混合すること、
(c)ドーパントとホスト半導体ナノ結晶とを混合して、反応混合物を提供すること、ならびに
(d)反応混合物を、その中に配置されたドーパントを有するホスト半導体ナノ結晶を提供する第2の温度まで加熱すること
を含む方法。
【請求項27】
第1の温度が約180〜約190℃の範囲にある請求項26記載の方法。
【請求項28】
第2の温度が約175〜約240℃の範囲にある請求項26記載の方法。
【請求項29】
反応混合物が、少なくとも約2℃/分の速度で加熱される請求項28記載の方法。
【請求項30】
ドープされた半導体ナノ結晶が実質的に単分散型である請求項26記載の方法。
【請求項31】
ドープされた半導体ナノ結晶が、約620nmより大きいドーパント発光を有する請求項26記載の方法。
【請求項32】
ドープされた半導体ナノ結晶が、約1150nmまでのドーパント発光を有する請求項31記載の方法。
【請求項33】
ドープされた半導体ナノ結晶が少なくとも約5%の光ルミネッセンス量子収率を有する請求項31記載の方法。
【請求項34】
ドープされた半導体ナノ結晶が約40%までの光ルミネッセンス量子収率を有する請求項33記載の方法。
【請求項35】
ドープされた半導体ナノ結晶が、III/Vホスト半導体物質からのバンドギャップ発光を実質的に有していない請求項26記載の方法。
【請求項36】
金属ドーパントが、III/Vホスト半導体物質の格子中に組み込まれる請求項26記載の方法。
【請求項37】
ホストナノ結晶がInPを含む請求項26記載の方法。
【請求項38】
ドーパントが銅を含む請求項37記載の方法。
【請求項39】
少なくとも1個のドープされた半導体ナノ結晶上に物質M1X1を含む拡散バリアを形成することをさらに含む請求項26記載の方法。
【請求項40】
少なくとも1個のドープされた半導体ナノ結晶上に物質M1X1を含む拡散バリアを形成することが、ドープされた半導体ナノ結晶を、交互に、カチオンの単層を形成する量のカチオン(M1)前駆体溶液と、及び、アニオンの単層を形成する量のアニオン前駆体(X1)と接触させることによって、少なくとも1個のドープされた半導体ナノ結晶上に物質M1X1の少なくとも1層の単層を形成することを含み、M1X1は、II/VI族化合物またはIII/V族化合物から選択される無機固体を含む請求項39記載の方法。
【請求項41】
拡散バリアが15層までの単層のM1X1を含む請求項40記載の方法。
【請求項42】
ドープされた半導体ナノ結晶が少なくとも約5%の光ルミネッセンス量子収率を有する請求項39記載の方法。
【請求項43】
ドープされた半導体ナノ結晶が約40%までの光ルミネッセンス量子収率を有する請求項39記載の方法。
【請求項44】
ドープされた半導体ナノ結晶が、III/Vホスト半導体物質または拡散バリアからのバンドギャップ発光を実質的に有していない請求項39記載の方法。
【請求項45】
M1X1がII/VI化合物を含む請求項39記載の方法。
【請求項46】
II/VI化合物がZnSeを含む請求項45記載の方法。
【請求項47】
拡散バリアを形成することが、少なくとも1つの半導体ナノ結晶からいくらかの金属ドーパントを排出することをさらに含む請求項40記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2012−532232(P2012−532232A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518608(P2012−518608)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/040798
【国際公開番号】WO2011/003003
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(500517271)ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ ユニヴァーシティー オブ アーカンソー システム (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/040798
【国際公開番号】WO2011/003003
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(500517271)ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ ユニヴァーシティー オブ アーカンソー システム (4)
【Fターム(参考)】
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