説明

金属ナノワイヤー含有透明導電膜及びその塗布液

【課題】高温の加熱処理や加圧処理を施すことなく、高い透明性と高い導電性を両立する金属ナノワイヤー含有透明導電膜を提供する。
【解決手段】数平均直径が40nm以上100nm以下及び数平均長さが9μm以上であり、かつ全金属ナノワイヤー数に対する長さ6μm以下の金属ナノワイヤー数の割合が25%以下である金属ナノワイヤーを含み、全光線透過率(全光線透過率が90%以上の透明基材上に該透明導電膜が形成された積層体の全光線透過率(JIS K7136))が75%以上である金属ナノワイヤー含有透明導電膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属ナノワイヤーを用いた透明導電膜及びその製造方法とこの透明導電膜を含む積層体、並びに金属ナノワイヤー含有塗布液及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ディスプレイやタッチパネル用の透明電極等への応用を目的とし、透明導電膜を作製するための材料として、針状の形態をした金属ナノワイヤーが研究されている。金属ナノワイヤーを含む膜は、金属ナノワイヤー同士が交差して網目構造をなし、導電パスが形成されるために導電性を発現し、また、かかる網目構造の空孔部が大きいために透明性を発現する。
【0003】
高い透明性と高い導電性を両立した透明導電膜を作製するため、これまでに様々な検討がなされている。例えば、金属ナノワイヤーを含有する透明導電膜の導電性を高めるために、製膜後に加熱処理や加圧処理を施すことが開示されている。
【0004】
特許文献1では、直径94nm、長さ8.1μmの銀ナノワイヤーを分画分子量0.2μmの限外濾過膜を用いて精製し、得られた銀ナノワイヤーの分散液を塗布乾燥して形成した膜にカレンダー処理により加圧することで、透過率85%、表面抵抗率20〜26Ω/□を示したことが報告されている。
【0005】
特許文献2では、直径70〜80nm、長さ約8μmの銀ナノワイヤーを用いて製膜した結果、この膜の透過率は86.4%、表面抵抗率は700,000Ω/□と高く、導電性が低かったが、加圧することにより、透過率85.6%に対して表面抵抗率は109Ω/□に低下し、導電性が向上したことが報告されている。
【0006】
特許文献3では、直径100〜300nm、長さ3〜30μmの銀ナノワイヤーを孔径0.5μmの中空糸膜を用いてクロスフロー濾過により精製し、0〜6μmの長さの銀ナノワイヤー含有量が39%(特許文献3の図9)である銀ナノワイヤー分散液を用いて塗布製膜し、加圧することにより形成された膜は透過率85.1%、表面抵抗率100Ω/□を示したことが報告されている。
また金属ナノワイヤー含有膜の導電性を高めるために、長い金属ナノワイヤーを用いる方法があり、特許文献3では、実施例と比較例において、長い金属ナノワイヤーを用いた方が表面抵抗率が低い結果が示されている。
【0007】
特許文献4では、銀ナノワイヤーを分画分子量6,000の限外濾過膜を用いて精製し、得られた直径62.4nm、平均長さ34.6μmの銀ナノワイヤーを用いて製膜した結果、かかる膜は透過率0〜75%、表面抵抗率100Ω/□未満となったことが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−129732号公報
【特許文献2】特表2009−505358号公報
【特許文献3】国際公開WO2009/107694号パンフレット
【特許文献4】特開2010−84173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のように、金属ナノワイヤー含有膜に加熱処理や加圧処理を施すことにより、導電性は向上するが、これらの方法では適応可能な基材やその形状が制限されてしまう問題点がある。例えば、プラスチック基材は高温で変形してしまうため、高温での加熱処理が行えず、十分な導電性が発現しないことがある。さらに、金属ナノワイヤー含有膜を他の機能層上に積層させた積層体においては、機能層の耐熱性が低い場合は加熱処理が行えず、十分な導電性が得られないことがある。このため、積層体の層構成や製造工程が制限されることがある。また加圧処理は平面以外の形状の基材には適用が難しく、基材を破損してしまう恐れがある。
【0010】
一方、特許文献3では、長い金属ナノワイヤーを用いることにより、低い表面抵抗率が得られることを示しているが、0〜6μmの短い銀ナノワイヤー含有量が39%と高く、加圧処理したにも関らず、透過率85.1%における表面抵抗率が100Ω/□であり、導電性が十分高くないため、用途が限定される。
【0011】
また、特許文献4では直径50nm以下、長さ5μm以上の金属ナノワイヤーを用いることにより透明性と導電性の両立を図ることを提案しているが、直径が細すぎる場合は金属ナノワイヤー含有膜の表面抵抗率が高くなりやすく、また、金属ナノワイヤーが折れやすくなるため、取り扱いに細心の注意を要する。また、上記したように、直径が50nm以上の金属ナノワイヤーを用いて作製した膜は、透過率が0〜75%であり、透明性が低い。
【0012】
そこで本発明の課題は、高温の加熱処理や加圧処理を施すことなく、高い透明性と高い導電性を両立する金属ナノワイヤー含有透明導電膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは上記課題を解決すべく、金属ナノワイヤーの長さが塗布膜の表面抵抗率に及ぼす影響を見積もるため、以下のシミュレーションを実施した。
所定の塗布量に相当する量の金属ナノワイヤーを所定の表面抵抗率の正方形平坦膜内にランダムに埋め込み、上下の辺に電位差Vを与えたときの電流Iを計算することにより、塗布量の関数として表面抵抗率R=V/Iを求めた。金属ナノワイヤー間が重なる部分の接触抵抗は0とした。正方形平坦膜の表面抵抗率を100000Ω/□とし、金属ナノワイヤーの体積抵抗率を1.6×10−6Ωcm、直径を50nmとした場合に、金属ナノワイヤーの長さを500nmから20μmの範囲で変えたときのシミュレーション結果を図1に示す。図1より同一の塗布量で比較した場合、金属ナノワイヤーの長さが短くなると急速に表面抵抗率が増大することが判明した。
【0014】
この結果より、実際の金属ナノワイヤー含有透明導電膜においては、構成する金属ナノワイヤーの平均長さを長くするのみではなく、金属ナノワイヤーの長さの分布に着目し、短い金属ナノワイヤーの含有量を低下させることにより、高温での加熱処理や加圧処理を施さずとも高い透明性と高い導電性を両立し得ることを見出し、本発明に至った。
【0015】
さらに本発明では、従来の金属ナノワイヤーの濾過精製に用いられていた濾過膜よりも孔径が大きく、孔径又は保留粒子径が1.0μm以上の濾過膜を精製に用いることにより、短い金属ナノワイヤーを選択的に除去することができ、その結果、短い金属ナノワイヤーの含有量が低い金属ナノワイヤー含有塗布液が得られ、この塗布液を用いて製膜することにより、高い透明性と高い導電性を両立する透明導電膜を作製しうることを見出し、本発明に至った。
【0016】
すなわち、本発明は以下を要旨とする。
【0017】
[1] 金属ナノワイヤーを含む透明導電膜であって、全光線透過率が75%以上であり、該金属ナノワイヤーの数平均直径が40nm以上100nm以下及び数平均長さが9μm以上であり、かつ全金属ナノワイヤー数に対する長さ6μm以下の金属ナノワイヤー数の割合が25%以下であることを特徴とする金属ナノワイヤー含有透明導電膜。
(ここで全光線透過率は、全光線透過率が90%以上の透明基材上に該透明導電膜が形成された積層体の全光線透過率であり、JIS K7136の規格による測定装置で測定される。)
【0018】
[2] 該金属ナノワイヤーが銀ナノワイヤーであることを特徴とする[1]に記載の金属ナノワイヤー含有透明導電膜。
【0019】
[3] 金属ナノワイヤー含有塗布液を塗布後、乾燥して形成することを特徴とする[1]又は[2]に記載の金属ナノワイヤー含有透明導電膜の製造方法。
【0020】
[4] [3]に記載の金属ナノワイヤー含有透明導電膜の製造方法で使用される金属ナノワイヤー含有塗布液。
【0021】
[5] 金属ナノワイヤーを含む塗布液であって、該金属ナノワイヤーの数平均直径が40nm以上100nm以下及び数平均長さが9μm以上であり、かつ全金属ナノワイヤー数に対する長さ6μm以下の金属ナノワイヤー数の割合が25%以下であることを特徴とする金属ナノワイヤー含有塗布液。
【0022】
[6] 該塗布液を、塗布面における金属ナノワイヤーが占める面積率が7〜35%となるような条件で塗布した膜の全光線透過率が75%以上である[5]に記載の金属ナノワイヤー含有塗布液。
(ここで全光線透過率は、全光線透過率が90%以上の透明基材上に該膜が形成された積層体の全光線透過率であり、JIS K7136の規格による測定装置で測定される。)
【0023】
[7] 該金属ナノワイヤーが銀ナノワイヤーである[5]又は[6]に記載の金属ナノワイヤー含有塗布液。
【0024】
[8] [5]ないし[7]のいずれかに記載の金属ナノワイヤー含有塗布液を塗布後、乾燥して形成したことを特徴とする金属ナノワイヤー含有透明導電膜。
【0025】
[9] 金属ナノワイヤーを合成後、全金属ナノワイヤー数に対する長さ6μm以下の金属ナノワイヤー数の割合が25%以下であるように精製する工程を含むことを特徴とする[4]ないし[7]のいずれかに記載の金属ナノワイヤー含有塗布液の製造方法。
【0026】
[10] 該精製法が膜濾過法であることを特徴とする[9]に記載の金属ナノワイヤー含有塗布液の製造方法。
【0027】
[11] 孔径又は保留粒子径が1.0μm以上の濾過膜を用いて膜濾過することを特徴とする[10]に記載の金属ナノワイヤー含有塗布液の製造方法。
【0028】
[12] 基材上に[1]又は[2]に記載の金属ナノワイヤー含有透明導電膜を積層した積層体。
【0029】
[13] [1]又は[2]に記載の金属ナノワイヤー含有透明導電膜を透明電極として用いたタッチパネル。
【0030】
[14] [1]又は[2]に記載の金属ナノワイヤー含有透明導電膜を透明電極として用いた太陽電池。
【0031】
[15] [1]又は[2]に記載の金属ナノワイヤー含有透明導電膜を透明電極として用いたディスプレイ。
【0032】
[16] [1]又は[2]に記載の金属ナノワイヤー含有透明導電膜を透明電極として用いた照明。
【0033】
[17] [1]又は[2]に記載の金属ナノワイヤー含有透明導電膜を用いた面状発熱体。
【0034】
[18] [1]又は[2]に記載の金属ナノワイヤー含有透明導電膜を用いた電磁波シールド。
【0035】
[19] [1]又は[2]に記載の金属ナノワイヤー含有透明導電膜を透明電極として用いた調光ガラス。
【0036】
[20] [1]又は[2]に記載の金属ナノワイヤー含有透明導電膜を透明電極として用いた調光フィルム。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、高温での加熱処理や加圧処理をせずとも、高い透明性と高い導電性を両立した金属ナノワイヤー含有透明導電膜とその積層体、さらにその塗布液が提供される。
本発明によれば、金属ナノワイヤー含有透明導電膜を比較的低温の処理で製膜することができるため、組み合わせる材料の制限を受けず、耐熱性の低い材料やプラスチック基材の使用も可能となる。また、積層体とする場合、耐熱性の低い層上に本発明の金属ナノワイヤー含有透明導電膜を積層することもできることから、積層体の層構成や製造プロセスの制限が小さい。
また、加圧処理を必要としないことから、本発明の金属ナノワイヤー含有透明導電膜は非平面状の基材や、加圧により破損する恐れのある基材にも適用可能である。
さらに、溶液の状態で湿式法により製膜可能であることから、非平面状の基材にも容易に本発明の金属ナノワイヤー含有透明導電膜を形成することができ、比較的低い製造コストで大面積化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】シミュレーションにより得られた、金属ナノワイヤー含有透明導電膜の塗布量と表面抵抗率との関係を表すグラフである。
【図2】本発明の積層体の実施の形態の一例を示す模式的な断面図である。
【図3】本発明の積層体の実施の形態の他の例を示す模式的な断面図である。
【図4】本発明の積層体の実施の形態の他の例を示す模式的な断面図である。
【図5】本発明の積層体の実施の形態の他の例を示す模式的な断面図である。
【図6】本発明の積層体の実施の形態の他の例を示す模式的な断面図である。
【図7】本発明の積層体の実施の形態の他の例を示す模式的な断面図である。
【図8】本発明の積層体の実施の形態の他の例を示す模式的な断面図である。
【図9】本発明の積層体の実施の形態の他の例を示す模式的な断面図である。
【図10】実施例10で作製した太陽電池の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に特定はされない。
【0040】
[金属ナノワイヤー含有塗布液]
本発明の金属ナノワイヤー含有塗布液は、後述する本発明の金属ナノワイヤー含有透明導電膜の製造方法で使用されるものとして好適に用いられ、具体的には、塗布液中に含有される該金属ナノワイヤーの数平均直径が40nm以上100nm以下及び数平均長さが9μm以上であり、かつ全金属ナノワイヤー数に対する長さ6μm以下の金属ナノワイヤー数の割合が25%以下であり、通常、金属ナノワイヤーの分散媒としての溶媒と、必要に応じてバインダー樹脂、金属ナノワイヤーの分散剤、その他の添加物を含有する。
【0041】
以下、本発明で用いる金属ナノワイヤーを「本発明の金属ナノワイヤー」と称す場合がある。
【0042】
{金属ナノワイヤー}
<金属ナノワイヤーの直径及び長さ>
金属ナノワイヤーの数平均直径は40nm以上、好ましくは50nm以上、特に好ましくは55nm以上、とりわけ好ましくは60nm以上で、100nm以下、好ましくは90nm以下、特に好ましくは80nm以下である。金属ナノワイヤーの数平均直径が上記下限を下回る場合、導電性が低くなるため好ましくない。一方、金属ナノワイヤーの数平均直径が上記上限を上回る場合、透明性が低下するため好ましくない。
【0043】
ここで、金属ナノワイヤーの数平均直径は、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて金属ナノワイヤーの直径を測定し、その数平均値から求めた値である。電子顕微鏡観察時は、数平均直径の精度を高めるために、観察倍率30000倍以上、視野の大きさ3.1μm×3.9μm以上とし、視野内にあるすべての金属ナノワイヤーの直径を測定する。直径を測定する金属ナノワイヤーの本数は60本以上とする。
【0044】
金属ナノワイヤーの数平均長さは9μm以上、好ましくは10μm以上、さらに好ましくは12μm以上、特に好ましくは15μm以上、とりわけ好ましくは20μm以上で、好ましくは1mm以下、より好ましくは500μm以下、さらに好ましくは200μm以下、特に好ましくは100μm以下、ことさら好ましくは50μm以下である。金属ナノワイヤーの数平均長さが上記下限を下回る場合、導電性が低くなるため好ましくない。一方、金属ナノワイヤーの数平均長さが上記上限を上回る場合、製膜時に金属ナノワイヤーが絡まり合い、金属ナノワイヤーが密集した部分で光が散乱され、透明性が低下する恐れがあるため好ましくない。
【0045】
ここで、金属ナノワイヤーの数平均長さは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて金属ナノワイヤーの長さを測定し、その数平均値から求めた値である。電子顕微鏡観察時は、数平均長さの精度を高めるために、観察倍率1500倍以上、視野の大きさは62.2μm×78.1μm以上とし、端から端まで全て視野内に観察される100本以上の金属ナノワイヤーを測長する。
【0046】
また、全金属ナノワイヤー数に対する長さ6μm以下の金属ナノワイヤー数の割合は、25%以下、好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%以下、特に好ましくは10%以下、とりわけ好ましくは5%以下である。全金属ナノワイヤー数に対する長さ6μm以下の金属ナノワイヤー数が上記上限を上回る場合、高い透明性と高い導電性の両立が困難となるため好ましくない。全金属ナノワイヤー数に対する長さ6μm以下の金属ナノワイヤー数が25%以下となることで、金属ナノワイヤー含有透明導電膜の表面抵抗率が低くなる傾向があるため、好ましい。
【0047】
ここで、全金属ナノワイヤー数に対する長さ6μm以下の金属ナノワイヤー数の割合は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて金属ナノワイヤーの長さを測定し、長さ6μm以下の金属ナノワイヤーの数を測定した金属ナノワイヤーの総数で除して100を乗じた値である。電子顕微鏡観察時は、金属ナノワイヤーの数平均長さの測定時と同様に、測定の精度を高めるために、観察倍率1500倍以上、視野の大きさは62.2μm×78.1μm以上とし、端から端まで全て視野内に観察される100本以上の金属ナノワイヤーを測長する。
【0048】
また、全金属ナノワイヤー数に対する長さ8μm以下の金属ナノワイヤー数の割合は、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは30%以下、特に好ましくは20%以下であることが好ましい。全金属ナノワイヤー数に対する長さ8μm以下の金属ナノワイヤー数が上記上限以下であると、高い透明性と高い導電性をより一層確実に両立することができ、好ましい。
【0049】
ここで、全金属ナノワイヤー数に対する長さ8μm以下の金属ナノワイヤー数の割合は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて金属ナノワイヤーの長さを測定し、長さ8μm以下の金属ナノワイヤーの数を測定した金属ナノワイヤーの総数で除して100を乗じた値である。電子顕微鏡観察時は、金属ナノワイヤーの数平均長さの測定時と同様に、測定の精度を高めるために、観察倍率1500倍以上、視野の大きさは62.2μm×78.1μm以上とし、端から端まで全て視野内に観察される100本以上の金属ナノワイヤーを測長する。
【0050】
また、全金属ナノワイヤー数に対する長さ4μm以下の金属ナノワイヤー数の割合は、好ましくは10%以下、より好ましくは7%以下、さらに好ましくは5%以下、特に好ましくは2%以下で、一方、好ましくは0.001%以上、より好ましくは0.01%以上である。全金属ナノワイヤー数に対する長さ4μm以下の金属ナノワイヤー数が上記上限以下であると、高い透明性と高い導電性をより一層確実に両立することができ、好ましい。
【0051】
ここで、全金属ナノワイヤー数に対する長さ4μm以下の金属ナノワイヤー数の割合は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて金属ナノワイヤーの長さを測定し、長さ4μm以下の金属ナノワイヤーの数を測定した金属ナノワイヤーの総数で除して100を乗じた値である。電子顕微鏡観察時は、金属ナノワイヤーの数平均長さの測定時と同様に、測定の精度を高めるために、観察倍率1500倍以上、視野の大きさは62.2μm×78.1μm以上とし、端から端まで全て視野内に観察される100本以上の金属ナノワイヤーを測長する。
【0052】
本発明において、導電性付与のための導電材料としての金属ナノワイヤーはそれのみ単独で用いてもよく、球状や短冊状、三角形状、六角形状、正六面体、正八面体等の各種形状の金属微粒子と混合して用いてもよい。
【0053】
<金属ナノワイヤーの金属材料の種類>
金属ナノワイヤーを構成する金属材料としては、銀、金、白金、銅、アルミニウム、パラジウム、ロジウム等が挙げられる。なかでも、銀、金、白金、パラジウムが耐酸化性の点で好ましく、銀が導電性の点でより好ましい。
これらの金属を単独で用いても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの金属の2種以上よりなる合金であってもよい。
【0054】
金属ナノワイヤーを構成する金属中に含まれる銀の含有量は好ましくは30重量%以上であり、50重量%以上がより好ましく、80重量%以上がさらに好ましく、90重量%以上が特に好ましく、95重量%以上がとりわけ好ましい。金属中の銀の含有量を、上記下限以上とすることにより、導電性を効果的に高めることができ、好ましい。
【0055】
<金属ナノワイヤーの合成方法>
本発明の金属ナノワイヤーを製造する方法としては、金属塩を還元して得る化学還元法、電解法、光還元法等、公知の手法を用いることができる。
【0056】
化学還元法の場合、金属塩、還元剤、分散剤、ハロゲン化合物及び溶媒の混合物を加熱し、金属塩を還元し、金属ナノワイヤーを合成する。
金属塩としては、金属が銀である場合は硝酸銀、亜硝酸銀、乳酸銀、塩化銀、硫酸銀、酸化銀、酢酸銀、塩素酸銀、硫化銀等の銀塩、金属が金である場合は塩化金酸、塩化金カリウム、塩化金ナトリウム等の金塩、金属が白金である場合は塩化白金酸、塩化白金、酸化白金、塩化白金酸カリウム等の白金塩、金属塩がパラジウムの場合は硝酸パラジウム、酢酸パラジウム、塩化パラジウム等のパラジウム塩、金属がアルミニウムの場合は酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム等のアルミニウム塩等を用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
還元剤としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2,3−プロパントリオール、グルコース等のポリオール、アルコール、アルコールアミン、クエン酸及びクエン酸ナトリウム等のクエン酸塩、リンゴ酸、アスパラ銀酸、アスコルビン酸及びその塩等の有機酸類、アルデヒド、水素、水素化ホウ素アルカリ金属塩、ジボラン、ヒドラジン等を用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
ハロゲン化合物としては、塩化鉄、塩化白金、塩化ナトリウム、塩化亜鉛、塩化ニッケル、塩化コバルト、塩化銅、塩化アンモニウム、4級塩化アンモニウム(テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド等)、ジクロロメタン、塩化銀、ヘキサデシル−トリメチルアンモニウムクロライド等の塩化物、臭化カリウム、ヘキサデシル−トリメチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルピリジニウムブロミド等の臭化物、ヨウ化物、フッ化物等を用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0059】
分散剤としては、N,N−ジメチルドデシルアミン N−オキサイド等の長鎖アルキルアミンオキサイド、酢酸、酪酸等の1価カルボン酸、多価カルボン酸(クエン酸、マロン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、グルコン酸、L−グルタミン酸、L−アスコルビン酸等及びこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、エステル化合物、アミド化合物)及びその誘導体、アニリン及びその誘導体、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、チオフェノール、ドデシル硫酸ナトリウム等のアルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等のイオウ化合物及びそれらの誘導体、リン酸アルキル塩等のリン酸化合物、高分子分散剤(ポリビニルブチラール等のアセタール樹脂;ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリビニルアルコール、部分ベンジル化ポリビニルアルコール又はアルキルアセタール化ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコール;ヒドロキシエチルセルロース又はヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系樹脂;ビニルピロリドンとアクリル酸、ビニルピロリドンとメタアクリル酸等高分子分散剤を構成する単量体からなる共重合体等)等を用いることができる。これらの分散剤は単独あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
【0060】
高分子分散剤は分散剤としてのみでなく、製造された金属ナノワイヤーを用いて調製された金属ナノワイヤー含有塗布液のバインダー樹脂としても機能し、基材と金属ナノワイヤー含有透明導電膜との密着性を向上させる点から好ましい。
【0061】
溶媒としては、水、有機溶媒、又はその混合溶媒であってもよい。有機溶媒として、エチレングリコール、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、N−メチルピロリドン等のアミド類、ジクロロメタン等の1種又は2種以上を用いることができる。
【0062】
金属ナノワイヤー合成時の反応温度は好ましくは180℃以下、より好ましくは160℃以下、さらに好ましくは150℃以下、特に好ましくは140℃以下、とりわけ好ましくは130℃以下で、好ましくは60℃以上、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは100℃以上、特に好ましくは110℃以上、とりわけ好ましくは120℃以上である。反応温度が上記下限を下回る場合、金属ナノワイヤーの数平均長さが短くなり、かかる金属ナノワイヤーを用いて作製した膜は、高い透明性と高い導電性の両立が困難となるため好ましくない。一方、反応温度が上記上限を上回る場合、金属ナノワイヤーの数平均直径が不均一となり、かかる金属ナノワイヤーを用いて作製した膜は、太い金属ナノワイヤーにより透明性が低下する恐れがあるため好ましくない。また、金属ナノワイヤーの数平均長さも不均一となりやすく、短い金属ナノワイヤーが多い場合、かかる金属ナノワイヤーを用いて作製した膜は、高い導電性と高い透明性の両立が困難となるため好ましくない。
【0063】
金属ナノワイヤー合成時の反応時間は好ましくは24時間以下、より好ましくは12時間以下、さらに好ましくは6時間以下、特に好ましくは3時間以下で、好ましくは10分間以上、より好ましくは30分間以上、さらに好ましくは1時間以上である。反応時間が上記上限を上回る場合、反応後期に生成する金属ナノワイヤーが増加するため、金属ナノワイヤーの長さのバラツキが大きくなり、かかる金属ナノワイヤーを用いて作製した膜は、高い導電性と高い透明性の両立が困難となる恐れがあるため好ましくない。さらに、反応時間が上記上限を上回ると、金属ナノワイヤー以外の形状の金属ナノ粒子が増加し、かかる金属ナノ粒子を用いて作製した膜は、着色する恐れがあるため好ましくない。反応時間が上記下限を下回る場合、金属ナノ粒子の成長が不十分となり、かかる金属ナノワイヤーを用いて作製した膜は、高い導電性と高い透明性の両立が困難となる恐れがあるため好ましくない。
【0064】
また、化学還元法のように還元剤を加えるのではなく、可視光、紫外線、電子線、γ線、X線、超音波、マイクロ波、レーザー等を照射して金属塩や金属イオンを還元する方法や、電圧を印加して電気化学的に金属塩や金属イオンを還元する方法(電解法)を用いてもよい。
【0065】
<金属ナノワイヤーの精製方法>
通常、合成した金属ナノワイヤーには未反応の原料や副生成物、及び長さの短い金属ナノワイヤーや金属微粒子等が含まれるため、これらを除去するために精製を行う。
【0066】
本発明の金属ナノワイヤーの精製法として、遠心分離、凝集沈殿、沈降による分離、膜濾過、イオン交換樹脂等公知の手法を用いることができるが、本発明では、前述の如く、数平均直径が40nm以上100nm以下及び数平均長さが9μm以上であり、かつ全金属ナノワイヤー数に対する長さ6μm以下の金属ナノワイヤー数の割合が25%以下である金属ナノワイヤーを必要とすることから、精製によりこのような金属ナノワイヤーを得るために、合成された金属ナノワイヤーを極力損傷せずに、その長さを維持することができるような手段で精製することが好ましい。
【0067】
金属ナノワイヤーを遠心分離により沈降させた後に上澄み液を除去し、溶媒を加えて再分散させる場合、再分散時に超音波を用いると金属ナノワイヤーが屈曲あるいは折損し、短い金属ナノワイヤー量が増加するため、膜とした際に高い透明性と高い導電性の両立が困難となり、好ましくない。また、再分散が完全でない場合は、製膜時に金属ナノワイヤーが密集した部分が生じ、その部分の光散乱により膜の透明性が低下する恐れがあるため、好ましくない。
【0068】
反応溶液に金属ナノワイヤーの分散剤の貧溶媒を添加し、金属ナノワイヤーを凝集沈殿、あるいは反応溶液を長期にわたり静置することにより金属ナノワイヤーを沈降させ、上澄み液を除去し、溶媒を加えて再分散させる場合も、上記と同様に金属ナノワイヤーの折損により、高い導電性と高い透明性を両立した膜を作製することが困難となり、また、再分散が不完全な場合は、膜の透明性の低下の恐れがあるため好ましくない。
また、超音波以外の方法で再分散させたとしても、短い金属ナノワイヤーが多く含まれているため、膜とした際に、高い透明性と高い導電性の両立が困難となり、好ましくない。
【0069】
膜濾過には全量濾過とクロスフロー濾過がある。全量濾過の場合、反応溶液を濾過し、濾過膜上に堆積した金属ナノワイヤーを再分散させる必要があり、上記と同様に、金属ナノワイヤーの折損により、膜とした際に高い透明性と高い導電性の両立が困難となるため好ましくない。また、金属ナノワイヤーの再分散が不完全な場合、かかる分散液から作製した膜の透明性が低下する恐れがあるため好ましくない。さらに全量濾過の場合、濾過膜の目詰まりが起こりやすく、短い金属ナノワイヤーの選択的な除去が難しく、膜とした時に高い透明性と高い導電性を両立することが困難となるため好ましくない。
【0070】
一方、クロスフロー濾過の場合、金属ナノワイヤーが分散した状態で精製を行うことから、再分散の必要が無く、金属ナノワイヤーの折損を防ぎ、数平均長さの長い金属ナノワイヤーが得られることから好ましい。また、全量濾過よりも目詰まりを起こしにくく、短い金属ナノワイヤーを選択的に除去しやすい点からも好ましい。
【0071】
また、円筒濾紙や袋状に成形した濾過膜内に金属ナノワイヤーを含有する液を入れて精製溶媒に浸漬する方法でも、金属ナノワイヤーを過度に凝集させることなく、金属ナノワイヤーを分散した状態で精製することができるため、超音波照射等による再分散の必要が無いことから好ましい。
【0072】
膜濾過で精製する場合は、用いる濾過膜の平均孔径又は保留平均粒子径によって長さの短い金属ナノワイヤーを除去する効果が異なる。膜濾過に用いる膜の平均孔径又は保留平均粒子径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは0.8μm以上、特に好ましくは1.0μm以上、とりわけ好ましくは2.0μm以上、ことさら好ましくは3.0μm以上で、好ましくは15.0μm以下、より好ましくは10.0μm以下、さらに好ましくは9.0μm以下、特に好ましくは8.0μm以下である。濾過膜の平均孔径又は保留平均粒子径が上記上限以下とすることにより、選択的に短い金属ナノワイヤーを分離除去して、金属ナノワイヤー含有塗布液及びその塗布膜に含有される短い金属ナノワイヤーの量を低減し、高い透明性と高い導電性を両立し得る膜を形成することができるようになり、好ましい。また、濾過膜の孔径又は保留粒子径が上記下限以上であると、短い金属ナノワイヤーを選択的に除去することが可能となり、金属ナノワイヤー含有塗布液に含まれる短い金属ナノワイヤー量を低下させることができ、かかる塗布液を用いて作製した膜は高い透明性と高い導電性の両立が可能となるため好ましい。さらに、金属ナノワイヤー合成時に副生成物として生成する微粒子の除去も十分なものとなり、かかる塗布液を用いて作製した膜は着色の恐れがなく好ましい。
【0073】
濾過膜の平均粒子径は、バブルポイント試験、ラテックス粒子チャレンジ試験、シリカ粒子チャレンジ試験等により求めることができる。また、レーザー、イオンビーム、電子ビーム、中性子ビーム、フォトエッチング等で穿孔した濾過膜の平均孔径は、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察した孔の平均値から求めることができる。
濾過膜の保留平均粒子径は、JIS P3801で規定された硫酸バリウム等を自然濾過した時の漏洩粒子径や、メチルアルコール中の標準粒子(ポリスチレンラテックス等)を1.0kL/h・mの濾過速度で濾過した時の保留粒子径等から求めることができる。
【0074】
金属ナノワイヤー合成後の精製法としてイオン交換樹脂を用いて脱塩処理することもできるが、イオン交換樹脂では短い金属ナノワイヤーを除去できないことから、膜濾過等他の精製法を併用する必要がある。
【0075】
{バインダー樹脂}
本発明の金属ナノワイヤー含有塗布液は、バインダー樹脂の含有の有無を用途に応じて適宜選択可能である。
【0076】
金属ナノワイヤー含有透明導電膜を有する積層体を製造する場合、バインダー樹脂を含まない状態で金属ナノワイヤー含有塗布液を基材に塗布し、その上からバインダー層等他の層を積層することができる。塗布液がバインダー樹脂を含む場合、一度の塗布により耐擦傷性の高い膜が得られることから好ましい。一方、塗布液がバインダー樹脂を含まない場合は、積層体とした時に金属ナノワイヤー含有透明導電膜の両面に隣接する層の密着性の向上が期待されることから好ましい。
【0077】
金属ナノワイヤー含有塗布液のバインダー樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂を使用することができる。ここでいう電離線硬化性樹脂とは、電子線、紫外線により硬化する樹脂を指す。形成される金属ナノワイヤー含有透明導電膜の透明性を向上させる観点では、バインダー樹脂は可視光線の波長領域の吸収が小さい性質を有するものが好ましい。
【0078】
熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリビニルアルコール、部分ベンジル化ポリビニルアルコール、アルキルアセタール化ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸メチルの共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エチルの共重合体、導電性高分子(ポリピロール、ポリアニリン、ポリカルバゾール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリポルフィリン、ポリフタロシアニン等)等が挙げられる。熱可塑性樹脂としてはこの他、以下に示すモノマーの重合体を用いることもできる。(ここで、「(メタ)アクリル」は「アクリル」と「メタクリル」の一方又は双方を意味し、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」と「メタクリレート」の一方又は双方を意味する。)
【0079】
該モノマーの具体的な例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、N−アクリロイルモルホリン、ビニルピロリドン、スチレン等が挙げられる。これらのモノマーは単独で用いてもよく、複数のモノマーを混合して用いてもよい。
【0080】
熱可塑性樹脂は1種類のみを単独で用いてもよく、また2種類以上を混合して用いてもよい。
【0081】
熱可塑性樹脂の重量平均分子量は通常2000以上、好ましくは5000以上である。重量平均分子量が上記下限以上であると、形成される金属ナノワイヤー含有透明導電膜の耐候性や耐久性を高く維持することができ好ましい。
【0082】
バインダー樹脂が電離放射線硬化樹脂である場合、分子内に重合性不飽和基を含む重合性モノマーを用いることができる。例えば、上記で示したモノマーを紫外線硬化性樹脂として用いることができる。紫外線硬化性樹脂としてはこの他、モノマー中に重合性不飽和基が複数含有される多官能モノマーを用いることができる。多官能モノマーとしては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサメチレンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリプロピレンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのモノマーは単独で用いてもよく、複数のモノマーを混合して用いてもよい。
【0083】
電離放射線硬化性樹脂としてはこの他、側鎖に重合性不飽和基を含有する重合体を用いることができる。この例として、上記で記した熱可塑性樹脂のカルボキシル基や水酸基等の官能基と重合性不飽和基を含有する単量体を反応せしめることにより、側鎖に重合性不飽和基を導入した紫外線硬化性樹脂が例示される。また、金属ナノワイヤーとの親和性が高く、均一性の高い金属ナノワイヤー含有透明導電膜を作製するという観点では、主鎖となる重合体は水酸基を含有していることが好ましい。かかる重合体の例としては、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、変性セルロース等が挙げられる。
【0084】
熱硬化性樹脂としてはフェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド、ポリウレタン、シリコン樹脂等が挙げられる。また、アルコキシシラン及びその加水分解物や部分縮合物が挙げられる。アルコキシシランの例として、テトラアルコキシシラン(テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等)、アルキルトリアルコキシシラン(メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等)、アリールトリアルコキシシラン(フェニルトリメトキシシラン等)、ジアルキルジアルコキシシラン、ジアリールジアルコキシシラン等が挙げられる。熱硬化性樹脂は単独で又は2種類以上を混合して用いてもよい。
【0085】
バインダー樹脂は熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂をそれぞれ単独で又はこれらを混合して用いてもよい。
【0086】
バインダー樹脂は高い耐熱性を実現するために、架橋可能であることが好ましい。ここでいう架橋とは水素結合による相互作用、双極子間の相互作用、疎水性相互作用、イオン性相互作用を利用した物理的架橋や共有結合による化学的架橋のことである。架橋可能なバインダーの例としては、水素結合形成可能なポリビニルアルコール、重合性不飽和基やエポキシ基、カルボキシル基、アミノ基、イソシアネート基、アルデヒド基、ヒドロキシル基等反応性官能基を有するモノマー由来の構成単位を含む共重合体、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等が挙げられる。
【0087】
好適なバインダー樹脂の選定には、当該金属ナノワイヤー含有塗布液を用いて積層体を構成する際の、隣接層の特性や製造法も加味される。例えば、金属ナノワイヤー含有透明導電膜上に他の層を塗布法で形成する場合、その塗布液によって金属ナノワイヤー含有透明導電膜が溶解せぬよう、塗布液の溶媒ならびに金属ナノワイヤー含有塗布液のバインダー樹脂が選択される。具体的には、隣接層の塗布液として非水系の溶媒を用いる場合、金属ナノワイヤー含有塗布液のバインダー樹脂として使用される熱可塑性樹脂又は硬化前のモノマーあるいはオリゴマーは、かかる非水系の溶媒に不溶であり、水又はアルコール等極性の高い溶媒に可溶なものを用いることが好ましい。ただし、バインダー樹脂が架橋されている場合、隣接層塗布時に溶解しないため、この限りではない。
【0088】
なお、金属ナノワイヤーの合成時の分散剤として高分子分散剤を用いる場合、前述のように、この高分子分散剤がバインダー樹脂として機能する。
【0089】
{溶媒}
金属ナノワイヤー含有塗布液の金属ナノワイヤーの分散媒となる溶媒は、水、有機溶媒、又はその混合溶媒であってもよい。有機溶媒として、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、ブチルアルコール、メチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類、ジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘプタン、ヘキサン、ペンタン、デカン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を用いることができる。
【0090】
{添加物}
金属ナノワイヤー含有塗布液には、上記の金属ナノワイヤー、バインダー樹脂、分散剤及び溶媒の他、必要に応じて腐食防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、着色剤、酸化防止剤、防カビ剤、pH調整剤、難燃剤、結晶核剤、無機粒子、有機粒子、粘度調整剤、滑剤、表面処理剤、レベリング剤、架橋剤、消泡剤等、金属ナノワイヤー含有透明導電膜の耐久性を向上させる目的や、更なる機能付与を目的として、各種添加剤を加えてもよい。
【0091】
上記腐食防止剤は公知のものを用いてよく、特に制限はないが、例えば、複素環部位に窒素原子を含む化合物、フラン及びその誘導体、チオフェン及びその誘導体等複素環化合物が挙げられ、具体的にはピロール又はその誘導体、インドール又はその誘導体、イミダゾール又はその誘導体、ベンゾイミダゾール又はその誘導体、オキサゾール又はその誘導体、ベンゾオキサゾール又はその誘導体、チアゾール又はその誘導体、ベンゾチアゾール又はその誘導体、トリアゾール又はその誘導体、ベンゾトリアゾール又はその誘導体、フェナントロリン又はその誘導体、ピリジン又はその誘導体、キノリン又はその誘導体、ピラジン又はその誘導体、キノキサリン又はその誘導体、ピリミジン又はその誘導体、キナゾリン又はその誘導体、ピリダジン又はその誘導体、トリアジン又はその誘導体等が挙げられる。
【0092】
また、金属ナノワイヤー同士の融着を促進するために無機酸(硝酸、亜硝酸、硫酸等)や有機酸(シュウ酸、クエン酸、ギ酸、酢酸、乳酸、プロピオン酸、酪酸、アクリル酸、ピルビン酸、トリクロル酢酸、トリフルオロ酢酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン(ラウリン)酸、テトラデカン(ミリスチン)酸、ヘキサデカン(パルミチン)酸、オクタデカン(ステアリン)酸、2−エチル酪酸、2−メチルヘキサン酸、2−エチルヘキサン酸、2−プロピルペンタン酸、ピバリン酸、ネオヘプタン酸、ネオノナン酸、ネオデカン酸等)、銀塩(硝酸銀、亜硝酸銀、乳酸銀、塩化銀、硫酸銀、酸化銀、酢酸銀、塩素酸銀、硫化銀等、ギ酸銀、ヘキサン酸銀、オクタン酸銀、デカン酸銀、ドデカン酸銀、テトラデカン酸銀、ヘキサデカン酸銀、オクタデカン酸銀、ペンタン酸銀、ピバリン酸銀、ネオヘプタン酸銀、ネオノナン酸銀、ネオデカン酸銀等)、銀塩を形成しうる元素(塩素、硫素等)を含む化合物(塩化ナトリウム等)等を添加してもよい。
【0093】
これらの添加物は単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
また、無機酸や有機酸等上記の添加剤は、金属ナノワイヤー含有透明導電膜の製膜後に水やアルコールによる洗浄等、その手法に制限はないが、適宜除去することが可能である。
【0094】
{塗布液組成}
本発明の金属ナノワイヤー含有塗布液の固形分濃度は好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上で、好ましくは50重量%以下、より好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下、特に好ましくは5重量%以下である。固形分濃度が上記下限以上であると、金属ナノワイヤー含有塗布液を用いて成膜される金属ナノワイヤー含有透明導電膜の膜厚を確保して、導電性を発現しやすくすることができ好ましい。固形分濃度が上記上限以下であると、膜厚が厚くなりすぎることなく、金属ナノワイヤー含有透明導電膜の透明性を損なうことがなく好ましい。
【0095】
なお、ここで金属ナノワイヤー含有塗布液中の固形分とは、金属ナノワイヤー含有塗布液に含まれる溶媒以外の成分の合計をさす。
【0096】
金属ナノワイヤー含有塗布液の固形分中に含まれる金属ナノワイヤーの含有量は好ましくは1重量%以上、より好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは20重量%、特に好ましくは30重量%以上、とりわけ好ましくは50重量%以上、ことさら好ましくは80重量%以上で、好ましくは99重量%以下である。かかる金属ナノワイヤーの含有量が上記下限以上であると、金属ナノワイヤーによる導電パスの形成が容易となり、形成される金属ナノワイヤー含有透明導電膜の導電性を高めることができ好ましい。かかる金属ナノワイヤーの含有量が上記上限以下であると、金属ナノワイヤー含有塗布液中に含まれる金属ナノワイヤーの分散性が十分となり、形成される金属ナノワイヤー含有透明導電膜が均一となりやすく、膜が不均一となることによる透明性の低下の問題がなく好ましい。
【0097】
金属ナノワイヤー含有塗布液の固形分中に含まれる有機成分の含有量は好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上で、好ましくは99重量%以下、より特に好ましくは90重量%以下、さらに好ましくは80重量%、特に好ましくは70重量%以下、とりわけ好ましくは50重量%以下、ことさら好ましくは20重量%以下である。ここで、有機成分の含有量はバインダー樹脂と分散剤、及びその他の有機成分含有量を合計した値である。かかる有機成分の含有量が上記下限以上であると、金属ナノワイヤー含有塗布液中に含まれる金属ナノワイヤーの分散性が良好となり、形成される金属ナノワイヤー含有透明導電膜において、金属ナノワイヤーの凝集による透明性の低下が抑制されるために、透明性を高めることができ好ましい。かかる有機成分の含有量が上記上限以下であると、金属ナノワイヤーによる導電パスの形成が容易となり、形成される金属ナノワイヤー含有透明導電膜の導電性を高めることができ好ましい。
【0098】
金属ナノワイヤー含有塗布液の固形分中に含有される有機成分の含有量は、示差熱熱重量同時測定(TG−DTA)、熱重量測定(TG)により、かかる塗布液を真空乾燥させた後に、空気中にて室温から600℃までの重量減少値を測定することで評価することができる。またかかる塗布液の固形分中に含まれる金属ナノワイヤーの含有量は、金属ナノワイヤー含有塗布液中に金属ナノワイヤー以外の無機成分を含まない場合は、全固形分から有機成分量を減算することにより求めることができる。
【0099】
金属ナノワイヤー含有塗布液の固形分中に含まれる分散剤の含有量は、通常1重量%以上、好ましくは2重量%以上、より好ましくは3重量%以上で、80重量%以下、好ましくは60重量%以下、より好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは20重量%以下である。かかる分散剤の含有量が上記下限以上であると、金属ナノワイヤー含有塗布液中に含まれる金属ナノワイヤーの分散性が良好となり、形成される金属ナノワイヤー含有透明導電膜において、金属ナノワイヤーの凝集が抑制されるために、透明性を高めることができ好ましい。かかる分散剤の含有量が上記上限以下であると、金属ナノワイヤーによる導電パスの形成が容易となり、形成される金属ナノワイヤー含有透明導電膜の導電性を高めることができ好ましい。
【0100】
金属ナノワイヤー含有塗布液の固形分中に含有される分散剤の含有量は、遠心分離等の方法により、かかる塗布液に含有される金属ナノワイヤーを除去した後に、核磁気共鳴(NMR)分光法や赤外分光法等により評価される。また、かかる塗布液が金属ナノワイヤーと分散剤からなる場合、示差熱熱重量同時測定(TG−DTA)、熱重量測定(TG)により、かかる塗布液を真空乾燥させた後に、空気中にて室温から600℃までの重量減少値を測定することで評価される。
【0101】
金属ナノワイヤー含有塗布液において、球状や短冊状、三角形状、六角形状、正六面体、正八面体等の金属ナノワイヤー以外の形状の金属微粒子と金属ナノワイヤーのうち、金属ナノワイヤー含有量は通常75%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上である。金属ナノワイヤー含有量が上記下限以上であると、形成される金属ナノワイヤー含有透明導電膜において、金属ナノワイヤー以外の形状の金属微粒子による透過光の散乱やプラズモン吸収による着色が抑制され、透明性を高めることができ好ましい。
【0102】
ここで、金属ナノワイヤー含有量は走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて金属ナノワイヤーと金属ナノワイヤー以外の形状の金属微粒子の数を測定し、金属ナノワイヤーの数を金属ナノワイヤーと金属ナノワイヤー以外の形状の金属微粒子の総数で除して100を乗じた値である。SEM観察時は測定の精度を高めるために、観察倍率3750倍以上、視野の大きさは31μm×23μm以上とする。
【0103】
[金属ナノワイヤー含有透明導電膜]
本発明の金属ナノワイヤー含有透明導電膜は、全光線透過率が75%以上の透明導電膜であって、数平均直径が40nm以上100nm以下及び数平均長さが9μm以上であり、かつ全金属ナノワイヤー数に対する長さ6μm以下の金属ナノワイヤー数の割合が25%以下の金属ナノワイヤーを含む。
(ここで金属ナノワイヤー含有透明導電膜の全光線透過率は、全光線透過率が90%以上の透明基材上に該透明導電膜が形成された積層体の全光線透過率であり、JIS K7136の規格による測定装置で測定される。)
【0104】
{含有成分}
本発明の金属ナノワイヤー含有透明導電膜は、上述の本発明の金属ナノワイヤー含有塗布液を用いて製造することができ、本発明の金属ナノワイヤー含有塗布液中の溶媒以外の成分、即ち本発明の金属ナノワイヤー、分散剤、バインダー樹脂、更に必要に応じて金属ナノワイヤー含有塗布液に添加される前述の添加物から構成され、好適な金属ナノワイヤー、分散剤、バインダー樹脂等はそれぞれ金属ナノワイヤー含有塗布液に含有されるものとして記載したものと同様である。
【0105】
{膜構造}
本発明の金属ナノワイヤー含有透明導電膜において、金属ナノワイヤー含有透明導電膜面に対して垂直方向から観察した時に、金属ナノワイヤー同士は交差している状態をとる。導電性を高める観点では、金属ナノワイヤー同士は隣接しているのみでなく、融着した状態であることが好ましい。金属ナノワイヤー同士を融着させる方法としては特に制限はないが、例えば金属ナノワイヤー含有塗布液により形成された膜を加熱処理や加圧処理する方法が挙げられる。ただし、本発明では、金属ナノワイヤーの長さの制御により、過度な加熱処理や加圧処理を行わなくても、高い導電性を実現することができる。
【0106】
透明性を高める観点では、金属ナノワイヤー同士は同じ方向に隣接するのではなく、異なる方向に配置していること(即ち、ランダム配向)が好ましく、また、金属ナノワイヤーからなる網目構造で形成される孔の面積が大きいことが好ましい。かかる空孔部は、その一部もしくは全てが非金属成分によって充填されていてもよいし、あるいは空隙であってもよい。
【0107】
金属ナノワイヤー透明導電膜は、このように金属ナノワイヤー同士が連結した網目構造と、空孔部とを有するため、導電性と透明性を両立することができる。また、本発明では、特に短い金属ナノワイヤーの含有量を少なくすることにより、1本当りの金属ナノワイヤーが他の金属ナノワイヤーと交差する確率が高くなることから、少ない金属ナノワイヤー量で導電性網目構造を形成することができるため、高い導電性と高い透明性を両立することが可能となる。
【0108】
{膜形状}
金属ナノワイヤー含有透明導電膜は基材全面に連続した面状に製膜されていてもよく、その他、線状、帯状、円状、多角形状等のパターンを有する状態で製膜されてもよい。パターンを有する状態で製膜することにより、アンテナとしての機能を付与することができる。
【0109】
{膜処理}
金属ナノワイヤー含有透明導電膜には、前述の金属ナノワイヤー含有塗布液と同様な添加物を用いることができる。この添加物は、膜形成後、洗浄により除去してもよい。
【0110】
また、金属ナノワイヤー同士の融着を促進するために、金属ナノワイヤー含有塗布液の添加物として記載した無機酸や有機酸、及びその蒸気に、金属ナノワイヤー含有塗布液を用いて作製した膜を暴露し、必要に応じて加熱処理してもよい。この場合の加熱処理温度は好ましくは30℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは70℃以上で、特に好ましくは100℃以上で、好ましくは200℃以下、より好ましくは150℃以下、さらに好ましくは120℃以下である。加熱温度が上記下限以上であると、金属ナノワイヤー同士の融着が促進され、好ましい。加熱温度が上記上限以下であると、使用できる基材が耐熱性の高い基材に限定されることがなく、好ましい。
この場合であっても、本発明では、金属ナノワイヤーの長さの制御で、過度な加熱処理を行うことなく、高い導電性を実現することができる。
【0111】
{金属ナノワイヤー含有透明導電膜の製膜方法}
<塗布方法>
金属ナノワイヤー含有塗布膜による金属ナノワイヤー含有透明導電膜の製膜には、各種の塗布方法を採用することができ、例えばスピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ブレードコート法、ロールコート法、エヤナイフコート法、ロッドコート法、ダイコート法、オフセット印刷法等が挙げられる。
中でも、形成される膜の均質性の観点で、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、ダイコート法等が好ましい。
【0112】
例えば、ディップコート法においては、任意の速度で、基材を金属ナノワイヤー含有塗布液に浸漬し引き上げればよい。この際の引き上げ速度に制限は無いが、通常0.01mm/秒以上、好ましくは0.05mm/秒以上、より好ましくは0.1mm/秒以上、また、通常50mm/秒以下、好ましくは30mm/秒以下、より好ましくは20mm/秒以下である。引き上げ速度が遅すぎたり速すぎたりすると、均一に塗布された膜を得ることが困難となり、膜の透明性や導電性が不均一となる恐れがある。一方、基材を金属ナノワイヤー含有塗布液中に浸漬する速度に制限はないが、通常は、引き上げ速度と同程度の速度で基材を金属ナノワイヤー含有塗布液中に浸漬することが好ましい。さらに、基材を金属ナノワイヤー含有塗布液中に浸漬してから引き上げるまでの間、適当な時間浸漬を継続してもよい。この浸漬を継続する時間に制限は無いが、通常1秒以上、好ましくは3秒以上、より好ましくは5秒以上、また、通常48時間以下、好ましくは24時間以下、より好ましくは12時間以下である。この時間が短すぎると膜欠陥の原因になる可能性があり、長すぎると浸漬中に基材表面に金属ナノワイヤーが凝集し、透明性や導電性が不均一な膜となる恐れがある。
【0113】
また、スピンコート法においては、回転速度は、好ましくは10rpm(回転/分)以上、より好ましくは50rpm以上、さらに好ましくは100rpm以上、また、好ましくは100000rpm以下、より好ましくは50000rpm以下、さらに好ましくは10000rpm以下である。回転速度が遅すぎても、速過ぎても、透明性や導電性が不均一な膜となる恐れがある。
【0114】
さらに、スプレーコート法の場合、スプレーノズルの方式も特に制限はなく、各々のスプレーノズルの利点を考慮して選択すればよい。スプレーノズルの代表的な例としては、二流体スプレーノズル(二流体霧化方式)、超音波スプレーノズル(超音波霧化方式)、回転式スプレーノズル(回転霧化方式)等が挙げられる。金属ナノワイヤー含有塗布液の霧化と気体流による霧化粒子の基材への搬送とを独立に制御できる点では、超音波スプレーノズル、及び回転式スプレーノズルが好ましく、かかる塗布液の液性維持の観点では二流体スプレーノズルが好ましい。
【0115】
さらに、塗布液の霧化粒子の搬送に利用する気体流の気流速度は、用いる塗布液の種類等により適宜調整することが好ましいが、好ましくは5m/秒以下、より好ましくは4m/秒以下、さらに好ましくは3m/秒以下である。気流速度が速過ぎると、基材上に形成される膜が不均質になる可能性がある。この際に用いる気体としては特に限定されないが、窒素ガス等の不活性ガスが好ましい。また、スプレーノズルと基材との距離は基材のサイズや形状により、適宜調整することが好ましく、好ましくは3cm以上、より好ましくは6cm以上、さらに好ましくは9cm以上で、好ましくは100cm以下、より好ましくは80cm以下、さらに好ましくは50cm以下である。この範囲を超えると透明性や導電性が不均一な膜となる恐れがある。
【0116】
ロールコート法の場合、流延速度に制限は無いが、好ましくは0.1m/分以上、より好ましくは0.5m/分以上、さらに好ましくは1m/分以上で、好ましくは1000m/分以下、より好ましくは700m/分以下、さらに好ましくは500m/分以下である。流延速度が上記下限を下回る場合は透明性や導電性が不均一な膜となる恐れがあり、上記上限を上回る場合は基材との濡れ性の制御が困難になる恐れがある。
【0117】
<塗布環境>
金属ナノワイヤー含有塗布液の塗布時の相対湿度は、好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上、さらに好ましくは30%以上、特に好ましくは50%以上で、好ましくは85%以下、より好ましくは80%以下、さらに好ましくは75%以下である。相対湿度が上記範囲を外れる場合、透明性や導電性が不均一な膜となる恐れがある。また、塗布時の雰囲気に制限は無い。例えば、空気雰囲気中で塗布を行なっても良く、例えばアルゴンガス等の不活性雰囲気中で塗布を行なってもよい。
【0118】
塗布時の温度に制限は無いが、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上、さらに好ましくは20℃以上で、好ましくは200℃以下、より好ましくは150℃以下、さらに好ましくは120℃以下、特に好ましくは100℃以下、とりわけ好ましくは80℃以下、ことさら好ましくは60℃以下である。塗布する際の温度が上記範囲を外れる場合、溶媒の揮発による膜厚ムラが発生し易くなり、透明性や導電性が不均一な膜となる恐れがある。
【0119】
<塗布量>
本発明の金属ナノワイヤー含有透明導電膜の製膜に当たり、本発明の金属ナノワイヤー含有塗布液の塗布量については特に制限はないが、かかる膜において、金属ナノワイヤーが占める面積率として好ましくは1%以上、より好ましくは5%以上、特に好ましくは10%以上で、好ましくは50%以下、より好ましくは35%以下、特に好ましくは25%以下となるように塗布することが好ましい。
この金属ナノワイヤーが占める面積率が上記下限以上であると導電性が発現され易く、上記上限以下であると高い透明性を得ることができる。
【0120】
ここで金属ナノワイヤーが占める面積率は、基材上に形成された金属ナノワイヤー含有透明導電膜を膜面側から走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、得られる像を画像処理することにより求められる。この画像処理は、観察画像を2値化し、金属ナノワイヤーが占める面積率を計測する。電子顕微鏡観察時は面積率の精度を高めるために、観察倍率3750倍以上、視野の大きさは31μm×23μm以上とする。
【0121】
<乾燥>
金属ナノワイヤー含有塗布液を用いて製膜する場合、上記塗布後、形成された塗膜から溶媒を除去するために、塗膜の乾燥を行う。
乾燥方法としては公知の方法を用いることができ、例えば自然乾燥法、加熱乾燥法(熱風乾燥法、赤外線乾燥法、遠赤外線乾燥法等)が挙げられる。これらは1種を単独で実施してもよく、2種以上を組み合わせて実施してもよい。
【0122】
加熱乾燥法の場合、加熱温度は好ましくは40℃以上、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは70℃以上で、好ましくは300℃以下、より好ましくは200℃以下、さらに好ましくは150℃以下、特に好ましくは120℃以下、ことさら好ましくは100℃以下である。加熱温度が上記下限以上であると、金属ナノワイヤー含有透明導電膜中の溶媒の残留を防止して、耐久性の高い膜とすることができる。加熱温度が上記上限以下であると、金属ナノワイヤー含有透明導電膜中に含有される金属ナノワイヤーの破断や凝集を防止して、導電性を確保することができ、また、使用できる基材や下地、用途が制限されることがなく、好ましくない。
【0123】
乾燥時の加熱時間は好ましくは1秒間以上、より好ましくは10秒間以上、さらに好ましくは30秒間以上、特に好ましくは1分間以上で、好ましくは3時間以下、より好ましくは1時間以下、さらに好ましくは30分間以下、特に好ましくは10分間以下である。加熱時間が上記下限以上であると、乾燥が十分となり金属ナノワイヤー含有透明導電膜中の溶媒の残留を防止して、耐久性の高い膜とすることができる。乾燥時間が上記上限以下であると、基材や下地の熱劣化を防止することができ、また生産性の面からも好ましい。
【0124】
加熱にはオーブン、ホットプレート、IRヒーター、電磁波加熱装置等が使用可能である。
【0125】
加熱乾燥後、金属ナノワイヤー含有透明導電膜は放冷しても冷却してもよい。
乾燥時の雰囲気は大気雰囲気、窒素ガス雰囲気、Arガス雰囲気、Heガス雰囲気、二酸化炭素ガス雰囲気等が挙げられる。
【0126】
<加熱処理条件>
金属ナノワイヤー含有透明導電膜は金属ナノワイヤー同士を連結することにより導電性を向上させるため、乾燥後に加熱処理を行うことができる。
【0127】
加熱処理温度は好ましくは70℃以上、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは120℃以上で、好ましくは300℃以下、より好ましくは210℃以下、さらに好ましくは150℃以下である。加熱処理温度が上記下限以上であると、加熱処理による導電性の向上効果を十分に得ることができ好ましい。加熱処理温度が上記上限以下であると、金属ナノワイヤー含有透明導電膜中に含有される金属ナノワイヤーの破断や凝集を防止して、導電性の低下を防止することができ、また、使用できる基材や下地、用途が制限されることがなく、好ましい。
【0128】
加熱処理時間は好ましくは10秒間以上、より好ましくは30秒間以上、さらに好ましくは1分間以上で、好ましくは3時間以下、より好ましくは2時間以下、さらに好ましくは1時間以下、特に好ましくは30分間以下、とりわけ好ましくは10分間以下である。加熱処理時間が上記下限以上であると、導電性を十分に高めることができ好ましい。加熱処理時間が上記上限以下であると、基材や下地が劣化する恐れがなく、また生産性の面からも好ましい。
【0129】
加熱処理時の雰囲気は大気雰囲気、窒素ガス雰囲気、Arガス雰囲気、Heガス雰囲気、二酸化炭素ガス雰囲気、調湿雰囲気等が挙げられる。
乾燥と加熱処理は一つの工程として同時に行うこともできる。
【0130】
ただし、本発明の金属ナノワイヤー含有透明導電膜は、金属ナノワイヤーの長さの制御により加熱処理を行わなくとも高い導電性を実現し得るものである。
【0131】
<加圧処理条件>
金属ナノワイヤー含有透明導電膜は、導電性向上のため、塗布乾燥後に加圧処理を行うことができる。
加圧方法に特に制限はなく、例えばハンマー等棒状の器具を用いて加圧する方法や、カレンダー処理のように2本のロールの間に金属ナノワイヤー含有透明導電膜を通すことで加圧する方法等が挙げられる。
【0132】
ただし、本発明の金属ナノワイヤー含有透明導電膜は、金属ナノワイヤーの長さの制御により加圧処理を行わなくとも高い導電性を実現し得るものである。
【0133】
{物性}
<表面抵抗率>
金属ナノワイヤー含有透明導電膜の表面抵抗率は、好ましくは0.01Ω/□以上、より好ましくは0.1Ω/□以上、さらに好ましくは0.5Ω/□以上、特に好ましくは1Ω/□以上で、好ましくは500Ω/□以下、より好ましくは100Ω/□以下、さらに好ましくは70Ω/□以下、特に好ましくは50Ω/□以下、とりわけ好ましくは30Ω/□以下、ことさら好ましくは10Ω/□以下である。表面抵抗率が上記下限以上であると、透明性の低下の問題がなく好ましい。表面抵抗率が上記上限以下のものは導電性に優れたものであり、好ましい。
なお、金属ナノワイヤー含有透明導電膜の表面抵抗率は具体的には後掲の実施例の項に記載される方法で測定される。
【0134】
<全光線透過率>
本発明の金属ナノワイヤー含有透明導電膜は、この金属ナノワイヤー含有透明導電膜を全光線透過率が90%以上の透明基材上に形成された積層体について、JIS K7136の規格による測定装置で測定された全光線透過率が75%以上であり、この全光線透過率は好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上である。この全光線透過率が上記下限未満であると、本発明で目的とする透明性に優れた金属ナノワイヤー含有透明導電膜とすることができず、用途が限定されることとなる。全光線透過率の上限については、導電性を確保する点で、99%以下、特に95%以下であることが好ましい。
この全光線透過率は具体的には後掲の実施例の項に記載される方法で測定される。
【0135】
[積層体]
本発明の積層体は、本発明の金属ナノワイヤー含有透明導電膜を基材上に積層したものである。
【0136】
{積層体構成}
本発明の積層体は少なくとも基材と金属ナノワイヤー含有透明導電膜から構成される。
【0137】
この積層体において、基材の上に形成された金属ナノワイヤー含有透明導電膜の上、あるいは、基材と金属ナノワイヤー含有透明導電膜との間、又は基材の下に金属ナノワイヤー含有透明導電膜以外の機能を有する層(以下「機能層」と称す。)が形成されていてもよい。ここで金属ナノワイヤー含有透明導電膜以外の機能層としては、例えば金属ナノワイヤー以外の導電性層、電極層、配線層、光電変換層、発光層、光触媒層、電解質層、p型半導体層、n型半導体層、半導体層、色素増感酸化チタン多孔膜、カラーフィルター層、液晶層、偏光板層、アンチ・ニュートンリング層、下塗り層、スペーサーを有する層、誘電体層、バッファー層、正孔輸送層、電子輸送層、帯電防止層、ガスバリア層、粘着(接着)層、耐指紋層、防汚層、絶縁層、帯電防止層、流滴層、易滑層、ハードコート層、保護層、飛散防止層、耐磨耗性層、反射防止層、電磁波シールド層、紫外線吸収層、可視光線吸収(着色)層、赤外線吸収層、ホログラム層、剥離層、熱線カット層(多層膜、コレステリック液晶層、金属薄膜等)、色補正層、合わせガラスに利用される中間膜層等が挙げられる。これらの機能層の1又は2以上を積層体に用いてもよい。
【0138】
これらの機能層の膜厚は好ましくは0.1nm以上、より好ましくは1nm以上、さらに好ましくは100nm以上、特に好ましくは1μm以上、とりわけ好ましくは10μm以上、ことさら好ましくは30μm以上で、好ましくは1mm以下、より好ましくは500μm以下、さらに好ましくは100μm以下、特に好ましくは50μm以下である。機能層の膜厚が上記下限以上であると、機能の発現が十分となり、好ましい。機能層の膜厚が上記上限以下であると、積層体の透明性の低下が防止され、用途が限定されることがなく、好ましい。但し、中間膜層の膜厚はこの限りではなく、好ましい膜厚範囲は100μm〜3mmである。膜厚が100μmより薄い場合、中間膜としての機能の発現が不十分となる恐れがあるため好ましくない。膜厚が3mmより厚い場合、透明性が低下する恐れがあるため好ましくない。
【0139】
金属ナノワイヤー含有透明導電膜上に保護層を有する場合、基材と金属ナノワイヤー含有透明導電膜との剥離が抑制される点で好ましい。該保護層の材料として、金属ナノワイヤーとの親和性が高く、金属ナノワイヤー含有透明導電膜とその積層体の基材への密着性を向上する点で上述のバインダー樹脂又は高分子分散剤が好ましく、高分子分散剤がより好ましい。透明性と密着性の観点から、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリビニルアルコール、部分ベンジル化ポリビニルアルコール又はアルキルアセタール化ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコール;ヒドロキシエチルセルロース又はヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系樹脂が好ましく、より好ましくは、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリビニルアルコール、部分ベンジル化ポリビニルアルコール又はアルキルアセタール化ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールであり、特に好ましくは、ポリビニルピロリドンである。
【0140】
{具体的構成}
本発明の金属ナノワイヤー含有透明導電膜を基材に積層形成した本発明の積層体の実施の形態を示す図2〜9を参照して、本発明の積層体の具体的な層構成を説明する。
【0141】
図2は、基材1Aの一方の面に金属ナノワイヤー含有透明導電膜2を形成した積層体3Aを示す。
図3は、基材1Aの一方の面に基材1A側から金属ナノワイヤー含有透明導電膜2、保護層4を形成した積層体3Bを示す。
図4は、基材1Aの一方の面に基材1A側から金属ナノワイヤー含有透明導電膜2、スペーサー層5、金属ナノワイヤー含有透明導電膜2、基材1B、偏光板層6を形成した積層体3Cを示す。
図5は、基材1Aの一方の面に基材1A側から粘着層7、保護層4、金属ナノワイヤー含有透明導電膜2、基材1B、金属ナノワイヤー含有透明導電膜2、配線層8、保護層4、粘着層7、偏光板層6を形成した積層体3Dを示す。
図6は、基材1Aの一方の面に基材1A側から金属ナノワイヤー含有透明導電膜2、正孔輸送層12、光電変換層11、電子輸送層10、電極層9、基材1Bを形成した積層体3Eを示す。
図7は、基材1A一方の面に基材1A側から金属ナノワイヤー含有透明導電膜2、半導体層13、電極層9を形成した積層体3Fを示す。
図8は、基材1Aの一方の面に基材1A側から金属ナノワイヤー含有透明導電膜2、電解質層15、色素増感酸化チタン多孔膜14、金属ナノワイヤー含有透明導電膜2、基材1Bを形成した積層体3Gを示す。
図9は、基材1Aの一方の面に基材1A側から電極層9、金属ナノワイヤー含有透明導電膜膜2、n型半導体層17、p型半導体層16、金属ナノワイヤー含有透明導電膜2、電極層8を形成した積層体3Hを示す。
【0142】
なお、図2〜9は本発明の積層体の一例を示すものであって、本発明は何ら図示のものに限定されるものではない。図2〜9で示された層の材料及び製造方法については、公知の材料及び方法を用いることができる。例えば、有機太陽電池等の太陽電池の場合には、公知文献(国際公開第2011/016430号)に記載の材料及び製造方法を適宜用いることができる。
【0143】
{基材}
<基材の材料>
本発明の積層体に使用することができる基材としては、各種樹脂やガラス等を用いることができ、特に制限はない。
【0144】
基材に使用可能な材料の例としては、ガラス、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂等のアクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエーテルサルホン等のポリエーテル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリスルフィド系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、繊維素系樹脂、セラミック、シリコン、ステンレス、チタン、アルミニウム、マイカ等が挙げられる。基材が樹脂の場合、その種類に特に制限はなく、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であってもよい。
【0145】
上記基材のうち、全光線透過率が75%以上のものを透明基材として使用できる。透明基材としては、上記全光線透過率の下限を満たしていれば、材料の種類に特に制限はない。透明基材に使用可能な材料の例としては、ガラス、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂等のアクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエーテルサルホン等のポリエーテル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリスルフィド系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。中でも、透明性の観点では、ガラス、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂が好ましい。このうちガラスは寸法安定性の観点で好ましい。一方、軽量化、形状自由度、耐衝撃性の点ではガラスよりもポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂が好ましい。
【0146】
本発明で使用することができる基材は、押出し、カレンダー、射出、中空、圧縮成形等公知の方法で製造することができる。
【0147】
基材は金属ナノワイヤー含有塗布液を塗布する前に、金属ナノワイヤー含有透明導電膜形成面に表面処理を施してもよい。この表面処理は公知の方法により行うことができ、例えば、プラズマ放電処理、コロナ放電処理、オゾン処理、フレーム処理等の物理的な方法や、シランカップリング剤や樹脂の下塗り等による化学的な方法が挙げられる。
【0148】
<その他の添加物>
基材の材料には、熱安定剤、紫外吸収剤、酸化防止剤、防腐剤防カビ剤、剥離剤、着色剤等、各種添加剤を加えてもよい。
【0149】
<基材の厚み>
基材の厚みは好ましくは10μm以上、より好ましくは100μm以上、さらに好ましくは0.5mm以上で、好ましくは10cm以下、より好ましくは5cm以下、さらに好ましくは1cm以下である。基材の厚みが上記下限以上であると、積層体の機械的強度を十分に確保することができる。また基材の厚みが上記上限以下であると、透明性を十分に高いものとすることができ、また積層体の重量過大を防止して幅広い用途に用いることができるようになる。
【0150】
<透明基材の全光線透過率>
透明基材の全光線透過率は好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上である。全光線透過率が上記下限以上であると、積層体としての透明性が良好となり、好ましい。
【0151】
<形態>
基材の形態は、板、シート、フィルム等任意であり、平面状(平板状)であっても曲面を有していてもよい。また段部を有するものであってもよい。
【0152】
{積層体の全光線透過率}
少なくとも透明基材と金属ナノワイヤー含有透明導電膜から構成される本発明の積層体の全光線透過率は、好ましくは99%以下、より好ましくは95%以下で、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上である。全光線透過率が上記上限を上回る場合、導電性が低い恐れがあるため好ましくない。全光線透過率が上記下限を下回る場合、透明性が不十分となり、用途が限定されるため好ましくない。
【0153】
[用途]
本発明の金属ナノワイヤー含有塗布液、及びこの塗布液から形成した金属ナノワイヤー含有透明導電膜は、高温での加熱処理や加圧処理を施さずとも透明性と導電性を両立できることから、耐熱性の低いプラスチック基材や非平面状の基材、加圧により破損する恐れのあるガラス基材等にも適用することができる。さらには耐熱性や耐圧性が低い機能層上にも本発明の金属ナノワイヤー含有透明導電膜を積層形成することができることから、積層体の層構成や製造プロセスの制限が小さくなる。
以上のことから、本発明の金属ナノワイヤー含有透明導電膜及びその積層体は、太陽電池用透明電極、有機又は無機ELディスプレイ用透明電極、有機又は無機EL照明用透明電極、電子ペーパー用透明電極、フレキシブルディスプレイ用透明電極、液晶ディスプレイ用透明電極、プラズマディスプレイ用透明電極、ディスプレイ用帯電防止、電磁波シールド、タッチパネル、調光ガラス及び調光フィルム等に利用でき、さらに建材用や車両用窓、鏡に面状発熱体としての機能を付与することができる。
また、本発明の金属ナノワイヤー含有塗布液、及びこの塗布液から形成した金属ナノワイヤー含有透明導電膜は短い金属ナノワイヤー含有量が少ないことから偏光板への適用も可能である。
【実施例】
【0154】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0155】
[金属ナノワイヤーの評価]
金属ナノワイヤーの評価は、次の手法で行なった。
反応溶液中と金属ナノワイヤー含有塗布液中それぞれの金属ナノワイヤーの評価は、それぞれの液を基材上に塗布後、乾燥してから評価した。
金属ナノワイヤー含有透明導電膜の積層体の場合は、当該積層体の金属ナノワイヤー含有透明導電膜面に対して評価した。
【0156】
<数平均直径の評価>
金属ナノワイヤーの数平均直径は、走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、S−4500)を用い、検出器upper、加速電圧3kV、倍率30000倍、視野の大きさ3.1μm×3.9μmとして、視野内にあるすべての金属ナノワイヤーの直径を測定し、その数平均値から求めた。この時、金属ナノワイヤーは60本以上測定した。
【0157】
<数平均長さの評価>
金属ナノワイヤーの数平均長さは、走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、S−4500)を用い、検出器upper、加速電圧3kV、倍率1500倍、視野の大きさ62.2μm×78.1μmとして、端から端まで全て視野内に観察される金属ナノワイヤーの100本以上を測長し、その数平均値から求めた。
【0158】
<全金属ナノワイヤー数に対する長さ6μm以下の金属ナノワイヤー数の割合の評価>
全金属ナノワイヤー数に対する長さ6μm以下の金属ナノワイヤー数の割合(以下「CNW6」と略記する。)は、走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、S−4500)を用い、検出器upper、加速電圧3kV、倍率1500倍、視野の大きさ62.2μm×78.1μmとして、端から端まで全て視野内に観察される金属ナノワイヤーを100本以上測定し、長さ6μm以下の金属ナノワイヤーの数を全金属ナノワイヤーの総数で除して100を乗じて求めた。
【0159】
<全金属ナノワイヤー数に対する長さ4μm以下の金属ナノワイヤー数の割合の評価>
CNW6と同様な手順により、全金属ナノワイヤー数に対する長さ4μm以下の金属ナノワイヤー数の割合(以下「CNW4」と略記する。)を求めた。
【0160】
<全金属ナノワイヤー数に対する長さ8μm以下の金属ナノワイヤー数の割合の評価>
CNW6と同様な手順により、全金属ナノワイヤー数に対する長さ8μm以下の金属ナノワイヤー数の割合(以下「CNW8」と略記する。)を求めた。
【0161】
<金属ナノワイヤー含有量の評価>
金属ナノワイヤーと、球状や短冊状、三角形状、六角形状、正六面体、正八面体等の金属ナノワイヤー以外の形状の金属微粒子のうち、金属ナノワイヤー含有量は、走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、S−4500)を用い、検出器upper、加速電圧1kV、倍率3750倍、視野の大きさ31μm×23μmとして、視野内に観察される全ての金属ナノワイヤーと金属ナノワイヤー以外の形状の金属微粒子を100個以上測定し、金属ナノワイヤーの数を金属ナノワイヤーと金属ナノワイヤー以外の形状の金属微粒子の総数で除して100を乗じて求めた。このとき、金属ナノワイヤーのうち、アスペクト比(=長さ/直径)が3以下の場合は、金属ナノワイヤー以外の形状の金属微粒子とした。
【0162】
[金属ナノワイヤー含有塗布液の評価]
金属ナノワイヤー含有塗布液の評価は次の手法で行った。
【0163】
<固形分濃度の評価>
金属ナノワイヤー含有塗布液の固形分濃度は、かかる塗布液を100℃で3時間真空乾燥した後の重量を真空乾燥前の重量で除して100を乗じることで求めた。
【0164】
<組成の評価>
金属ナノワイヤー含有塗布液の固形分中に含まれる有機成分の含有量は、かかる塗布液を100℃で3時間真空乾燥した後の試料の室温から600℃までの重量減少値を示差熱熱重量同時測定(TG/DTA6200、セイコーインスツルメント社製)により測定することにより評価した。また金属ナノワイヤー含有塗布液の固形分中に含まれる金属ナノワイヤーの含有量(重量%)は、100(重量%)から有機成分の含有量(重量%)を減算することにより求めた。
金属ナノワイヤー含有塗布液の固形分中に含まれる分散剤含有量は、金属ナノワイヤーを精製した後の反応溶液(金属ナノワイヤー分散液)を上記と同様に示差熱熱重量同時測定により評価した。
【0165】
[金属ナノワイヤー含有透明導電膜及び積層体の評価]
金属ナノワイヤー含有透明導電膜とその積層体の評価は次の手法で行った。
【0166】
<全光線透過率の評価>
積層体について、全光線透過率を空気を参照とし、ヘーズメーター(スガ試験機株式会社製HZ−2)によりD65光源下で測定した。
【0167】
<表面抵抗率の評価>
表面抵抗率は、低抵抗率計ロレスターGP(株式会社三菱化学アナリテック製)にPSPプローブを取り付けて、積層体の金属ナノワイヤー含有透明導電膜面側表面の表面抵抗率を測定した。
【0168】
<金属ナノワイヤーが占める面積率の評価>
基板上に形成された金属ナノワイヤー含有透明導電膜側から膜面を走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、S−4500)により観察し、得られた像に対し、金属ナノワイヤー部及び金属ナノワイヤー以外の部分を自動閾値により2値化し区別した。かかる2値化画像から、金属ナノワイヤー含有透明導電膜における金属ナノワイヤーが占める面積率を求めた。走査型電子顕微鏡の観察条件は、検出器upper、加速電圧1kV、倍率3750倍、視野の大きさ31μm×23μmとした。画像処理には、Image−Pro(Media Cybernetics社製)を用いた。
【0169】
<剥離性試験>
積層体の金属ナノワイヤー含有透明導電膜形成面表面にセロハン粘着テープ(あっとオフィス社製、幅18mm)を完全に付着させ、直ちにテープの一端を塗布面に直角に保ち、瞬間的に引き離した際に、金属ナノワイヤー含有透明導電膜と、金属ナノワイヤー含有透明導電膜以外の積層体を構成する層が剥離するか否かを目視により確認し、剥離しないものを「○」、剥離するものを「×」とした。
【0170】
[実施例1]
<金属ナノワイヤー含有塗布液の調製>
硝酸銀(和光純薬工業株式会社製)0.6g、1.4重量%ポリビニルピロリドン(PVP、和光純薬工業株式会社製、平均分子量36万)のエチレングリコール(EG、キシダ化学株式会社製)溶液36g、165ppm塩化鉄(III)(キシダ化学株式会社製)のEG溶液4g、及びEG 109gの混合溶液を調製し、反応溶液1とした。反応溶液1をパーソナル合成装置(ChemiStation、PPV−CTRL1、東京理科器械株式会社製)を用いて、室温から130℃まで昇温し、187分間反応させた。
反応溶液1において、全金属ナノワイヤー数に対する長さ6μm以下の金属ナノワイヤー数の割合(CNW6)は57%、全金属ナノワイヤー数に対する長さ4μm以下の金属ナノワイヤー数の割合(CNW4)は52%、全金属ナノワイヤー数に対する長さ8μm以下の金属ナノワイヤー数の割合(CNW8)は60%であった。
反応溶液1を20mL充填した円筒濾紙(No.86R、保留粒子径1μm、20mm×90mm、アドバンテック東洋株式会社製)を300mLビーカー内に入れ、円筒濾紙内の反応溶液と同じ高さになるように円筒濾紙の外側にイソプロピルアルコール(純正化学株式会社製)を入れた。1週間後に、円筒濾紙内の溶液を回収し、金属ナノワイヤー含有塗布液1とした。
【0171】
金属ナノワイヤー含有塗布液1に含有される金属ナノワイヤーの数平均直径は78nm、数平均長さは22μm、全金属ナノワイヤー数に対する長さ6μm以下の金属ナノワイヤー数の割合(CNW6)は6%、全金属ナノワイヤー数に対する長さ4μm以下の金属ナノワイヤー数の割合(CNW4)は2%、全金属ナノワイヤー数に対する長さ8μm以下の金属ナノワイヤー数の割合(CNW8)は11%、固形分濃度は0.2重量%、固形分中の金属ナノワイヤーの含有量は92%、有機成分の含有量は8%であった。
【0172】
<金属ナノワイヤー含有透明導電膜の作製>
金属ナノワイヤー含有塗布液1をスライドグラス(松浪硝子工業株式会社製、S1126 白切放 No.1 76×26mm、厚さ0.8〜1.0mm、全光線透過率92%)にスピンコーター(ミカサ株式会社製1H−D7)により、室温にて、500rpmの条件で塗布した後、70℃で10分間乾燥させ、金属ナノワイヤー含有透明導電膜1Aを得た。ここで、ガラス基材上に金属ナノワイヤー含有透明導電膜1Aが形成された積層体を積層体1Aとした。
【0173】
また、70℃で乾燥させた後に130℃で10分間加熱処理したこと以外は金属ナノワイヤー含有透明導電膜1Aと同様な操作を行い、金属ナノワイヤー含有透明導電膜1Bを得た。ここで、ガラス基材上に金属ナノワイヤー含有透明導電膜1Bが形成された積層体を積層体1Bとした。
【0174】
また、70℃で乾燥させた後に200℃で30分間加熱処理したこと以外は金属ナノワイヤー含有透明導電膜1Aと同様な操作を行い、金属ナノワイヤー含有透明導電膜1Cを得た。ここで、ガラス基材上に金属ナノワイヤー含有透明導電膜1Cが形成された積層体を積層体1Cとした。
【0175】
<金属ナノワイヤー含有透明導電膜の評価>
金属ナノワイヤー含有透明導電膜1Aの表面抵抗率は24Ω/□、金属ナノワイヤーの数平均直径は78nm、数平均長さは22μm、全金属ナノワイヤー数に対する長さ6μm以下の金属ナノワイヤー数の割合(CNW6)は6%、全金属ナノワイヤー数に対する長さ4μm以下の金属ナノワイヤー数の割合(CNW4)は2%、全金属ナノワイヤー数に対する長さ8μm以下の金属ナノワイヤー数の割合(CNW8)は11%であった。
金属ナノワイヤー含有透明導電膜1Bの表面抵抗率は17Ω/□、金属ナノワイヤーの数平均直径は78nm、数平均長さは22μm、全金属ナノワイヤー数に対する長さ6μm以下の金属ナノワイヤー数の割合(CNW6)は6%、全金属ナノワイヤー数に対する長さ4μm以下の金属ナノワイヤー数の割合(CNW4)は2%、全金属ナノワイヤー数に対する長さ8μm以下の金属ナノワイヤー数の割合(CNW8)は11%であった。
金属ナノワイヤー含有透明導電膜1Cの表面抵抗率は12Ω/□、金属ナノワイヤーの数平均直径は78nm、数平均長さは22μm、全金属ナノワイヤー数に対する長さ6μm以下の金属ナノワイヤー数の割合(CNW6)は6%、全金属ナノワイヤー数に対する長さ4μm以下の金属ナノワイヤー数の割合(CNW4)は2%、全金属ナノワイヤー数に対する長さ8μm以下の金属ナノワイヤー数の割合(CNW8)は11%であった。
【0176】
<積層体の評価>
積層体1Aの全光線透過率は85%であった。
積層体1Bの全光線透過率は85%であった。
積層体1Cの全光線透過率は85%であった。
【0177】
反応溶液と金属ナノワイヤー含有塗布液の評価結果を表1,2に、金属ナノワイヤー含有透明導電膜とその積層体の評価結果を表3に示す。
【0178】
[実施例2]
<金属ナノワイヤー含有塗布液の調製>
金属ナノワイヤー合成反応時に、190分間反応させたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、金属ナノワイヤー含有塗布液2を調製し、各評価を行った。
金属ナノワイヤー含有塗布液2の評価結果を表2に示す。
【0179】
<金属ナノワイヤー含有透明導電膜の作製>
金属ナノワイヤー含有塗布液2を使用したこと以外は実施例1の金属ナノワイヤー含有透明導電膜1Aと同様の操作を行い、金属ナノワイヤー含有透明導電膜2Aを作製した。金属ナノワイヤー含有透明導電膜2Aとその積層体2Aの評価結果を表3に示す。
また、70℃で乾燥させた後に200℃で30分間加熱処理したこと以外は金属ナノワイヤー含有透明導電膜2Aと同様な操作を行い、金属ナノワイヤー含有透明導電膜2Cを得た。金属ナノワイヤー含有透明導電膜2Cとその積層体2Cの評価結果を表3に示す。
【0180】
また、0.08重量%PVPのイソプロピルアルコール溶液を金属ナノワイヤー含有透明導電膜2C上にスピンコーターにより500rpm、10秒の条件で7回塗り重ねて表面層を形成したこと以外は同様にして積層体2Dを得た。積層体2Dの評価結果を表3に示す。
【0181】
<剥離性の評価>
積層体2C、2Dについて上述の剥離性試験を行った。その結果、積層体2Cは、基材から金属ナノワイヤー含有透明導電が剥離したが、積層体2Dは剥離しなかった。
【0182】
[実施例3]
<金属ナノワイヤー含有塗布液の調製>
硝酸銀1.2g、1.4重量%ポリビニルピロリドンのEG溶液72g、165ppm塩化鉄(III)のEG溶液8g、EG68gの混合溶液を調製し(なお、使用材料はいずれも実施例1で用いたものと同じである)、反応溶液3とした。反応溶液3をパーソナル合成装置を用いて、室温から130℃まで昇温し、114分間反応させた。
反応溶液3を20mLを充填した円筒濾紙を300mLビーカー内に入れ、円筒濾紙内の反応溶液と同じ高さになるように円筒濾紙の外側にイソプロピルアルコールを入れた。2週間後に、円筒濾紙内の溶液を回収し、金属ナノワイヤー含有塗布液3とし、各評価を行った。
金属ナノワイヤー含有塗布液3の評価結果を表2に示す。
【0183】
<金属ナノワイヤー含有透明導電膜の作製>
金属ナノワイヤー含有塗布液3を使用したこと以外は実施例1の金属ナノワイヤー含有透明導電膜1Aと同様の操作を行い、金属ナノワイヤー含有透明導電膜3Aを作製した。金属ナノワイヤー含有透明導電膜3Aとその積層体3Aの評価結果を表3に示す。
また、70℃で乾燥させた後に200℃で30分間加熱処理したこと以外は金属ナノワイヤー含有透明導電膜3Aと同様な操作を行い、金属ナノワイヤー含有透明導電膜3Cを得た。金属ナノワイヤー含有透明導電膜3Cとその積層体3Cの評価結果を表3に示す。
【0184】
[実施例4]
<金属ナノワイヤー含有塗布液の調製>
硝酸銀0.6g、1.4重量%ポリビニルピロリドンのEG溶液61g、165ppm塩化鉄(III)のEG溶液4g、EG85gの混合溶液を調製し(なお、使用材料はいずれも実施例1で用いたものと同じである)、反応溶液4とした。反応溶液4をパーソナル合成装置を用いて、室温から130℃まで昇温し、175分間反応させた。
300mLビーカーに設置した液体濾過筒(ER−01、アズワン株式会社製)内に、セルロースアセテートタイプメンブレンフィルター(孔径3.00μm、寸法142mmφ、アドバンテック東洋株式会社製)を入れ、その中に反応溶液4を20mLを充填した。メンブレンフィルターの外側にイソプロピルアルコールを入れ、1週間後に、メンブレンフィルター内の溶液を回収し、金属ナノワイヤー含有塗布液4とし、各評価を行った。 金属ナノワイヤー含有塗布液4の評価結果を表2に示す。
【0185】
<金属ナノワイヤー含有透明導電膜の作製>
金属ナノワイヤー含有塗布液4を使用したこと以外は実施例1の金属ナノワイヤー含有透明導電膜1Aと同様の操作を行い、金属ナノワイヤー含有透明導電膜4Aを作製した。金属ナノワイヤー含有透明導電膜4Aとその積層体4Aの評価結果を表3に示す。
また、70℃で乾燥させた後に200℃で30分間加熱処理したこと以外は金属ナノワイヤー含有透明導電膜4Aと同様な操作を行い、金属ナノワイヤー含有透明導電膜4Cを得た。金属ナノワイヤー含有透明導電膜4Cとその積層体4Cの評価結果を表3に示す。
【0186】
[実施例5]
<金属ナノワイヤー含有塗布液の調製>
金属ナノワイヤー合成反応時に、200分間反応させたこと以外は実施例1と同様な操作により反応溶液5を得た。反応溶液5は、セルロースアセテートタイプメンブレンフィルターの代わりにPTFE濾紙(孔径2μm、寸法150mmφ、アドバンテック東洋株式会社製)を用いたこと以外は実施例4と同様な操作により金属ナノワイヤーを精製し、金属ナノワイヤー含有塗布液5を調製し、各評価を行った。
反応溶液5の評価結果を表1に示す。
金属ナノワイヤー含有塗布液5の評価結果を表1、2に示す。
【0187】
<金属ナノワイヤー含有透明導電膜の作製>
金属ナノワイヤー含有塗布液5を使用し、スピンコーターで製膜後、室温で4時間真空乾燥させたこと以外は実施例1の金属ナノワイヤー含有透明導電膜1Aと同様の操作を行い、金属ナノワイヤー含有透明導電膜5A’を作製した。金属ナノワイヤー含有透明導電膜5A’とその積層体5A’の評価結果を表3に示す。
金属ナノワイヤー含有透明導電膜5A’とその積層体5A’を70℃で10分間させることにより、金属ナノワイヤー含有透明導電膜5Aとその積層体5Aを作製した。金属ナノワイヤー含有透明導電膜5Aとその積層体5Aの評価結果を表3に示す。
70℃で乾燥させた後に200℃で10分間加熱処理したこと以外は金属ナノワイヤー含有透明導電膜5Aと同様な操作を行い、金属ナノワイヤー含有透明導電膜5Cを得た。金属ナノワイヤー含有透明導電膜5Cとその積層体5Cの評価結果を表3に示す。
【0188】
[実施例6]
<金属ナノワイヤー含有塗布液の調製>
金属ナノワイヤー合成反応時に、182分間反応させたこと以外は実施例1と同様な操作により反応溶液6を得た。反応溶液6は、円筒濾紙による金属ナノワイヤーの精製を2週間行ったこと以外は実施例1と同様な操作により精製し、金属ナノワイヤー含有塗布液6を調製し、各評価を行った。
反応溶液6の評価結果を表1に示す。
金属ナノワイヤー含有塗布液6の評価結果を表1、2に示す。
【0189】
<金属ナノワイヤー含有透明導電膜の作製>
金属ナノワイヤー含有塗布液6を使用したこと以外は実施例1の金属ナノワイヤー含有透明導電膜1Aと同様の操作を行い、金属ナノワイヤー含有透明導電膜6Aを作製した。金属ナノワイヤー含有透明導電膜6Aとその積層体6Aの評価結果を表3に示す。
70℃で乾燥させた後にハンマーで叩いて加圧したこと以外は金属ナノワイヤー含有透明導電膜6Aと同様な操作を行い、金属ナノワイヤー含有透明導電膜6Eを得た。金属ナノワイヤー含有透明導電膜6Eとその積層体6Eの評価結果を表3に示す。
【0190】
[実施例7]
<金属ナノワイヤー含有塗布液の調製>
金属ナノワイヤー合成反応時に、190分間反応させたこと以外は実施例1と同様に金属ナノワイヤーの合成反応を行い、反応溶液7を得た。反応溶液7は、実施例4と同様な操作により金属ナノワイヤーを精製し、金属ナノワイヤー含有塗布液7を調製した。
反応溶液7の評価結果を表1に示す。
金属ナノワイヤー含有塗布液7の評価結果を表1、2に示す。
【0191】
<金属ナノワイヤー含有透明導電膜の作製>
金属ナノワイヤー含有塗布液7を使用したこと以外は実施例1の金属ナノワイヤー含有透明導電膜1Aと同様の操作を行い、金属ナノワイヤー含有透明導電膜7Aを作製した。金属ナノワイヤー含有透明導電膜7Aとその積層体7Aの評価結果を表3に示す。
また、70℃で乾燥させた後に200℃で30分間加熱処理したこと以外は金属ナノワイヤー含有透明導電膜7Aと同様な操作を行い、金属ナノワイヤー含有透明導電膜7Cを得た。金属ナノワイヤー含有透明導電膜7Cとその積層体7Cの評価結果を表3に示す。
【0192】
[実施例8]
<金属ナノワイヤー含有塗布液の調製>
実施例7と同様に金属ナノワイヤーの合成反応を行い、反応溶液8を得た。反応溶液8は、円筒濾紙の代わりにセルロース円筒濾紙(No.84、保留粒子径8μm、22mm×20mm×90mm、アドバンテック東洋株式会社製)を用いたこと以外は実施例1と同様に金属ナノワイヤーを精製し、金属ナノワイヤー含有塗布液8を調製した。
反応溶液8の評価結果を表1に示す。
金属ナノワイヤー含有塗布液8の評価結果を表1、2に示す。
【0193】
<金属ナノワイヤー含有透明導電膜の作製>
金属ナノワイヤー含有塗布液8を使用したこと以外は実施例1の金属ナノワイヤー含有透明導電膜1Aと同様の操作を行い、金属ナノワイヤー含有透明導電膜8Aを作製した。金属ナノワイヤー含有透明導電膜8Aとその積層体8Aの評価結果を表3に示す。
また、70℃で乾燥させた後に200℃で30分間加熱処理したこと以外は金属ナノワイヤー含有透明導電膜8Aと同様な操作を行い、金属ナノワイヤー含有透明導電膜8Cを得た。金属ナノワイヤー含有透明導電膜8Cとその積層体8Cの評価結果を表3に示す。
【0194】
[実施例9]
<金属ナノワイヤー含有塗布液の調製>
金属ナノワイヤー合成反応時に、196分間反応させたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、反応溶液9を得た。反応溶液9を実施例4と同様にセルロースアセテートタイプメンブレンフィルターを用いて金属ナノワイヤーを精製し、金属ナノワイヤー分散液9を得た。0.5mL金属ナノワイヤー分散液9にイソプロピルアルコール0.5mL、0.35重量%ポリビニルピロリドンのイソプロピルアルコール溶液2.0mLを混合し、金属ナノワイヤー含有塗布液9を調製した。
金属ナノワイヤー含有塗布液9の評価結果を表2に示す。
【0195】
<金属ナノワイヤー含有透明導電膜の作製>
金属ナノワイヤー含有塗布液9を使用したこと以外は実施例1の金属ナノワイヤー含有透明導電膜1Aと同様の操作を行い、金属ナノワイヤー含有透明導電膜9Aを作製した。金属ナノワイヤー含有透明導電膜9Aとその積層体9Aの評価結果を表3に示す。
また、70℃で乾燥させた後に200℃で30分間加熱処理したこと以外は金属ナノワイヤー含有透明導電膜9Aと同様な操作を行い、金属ナノワイヤー含有透明導電膜9Cを得た。金属ナノワイヤー含有透明導電膜9Cとその積層体9Cの評価結果を表3に示す。
【0196】
<剥離性の評価>
積層体9A、9Cについて上述の剥離性試験を行った。その結果、積層体9A及び9Cいずれも剥離しなかった。
【0197】
[比較例1]
<金属ナノワイヤー含有塗布液の調製>
金属ナノワイヤー合成時に反応溶液1をパーソナル合成装置で室温から140℃に昇温し、73分間反応させ、反応終了後は以下に示す濾過法により精製したこと以外は実施例1と同様な操作を行った。
以下、濾過法による精製操作手順を示す。
反応溶液20mLとイソプロピルアルコール50mLをポリカーボネートタイプメンブレンフィルター(孔径0.80μm、47mmφ、アドバンテック東洋株式会社製)を用いて吸引濾過後、さらにイソプロピルアルコール20mLを吸引濾過して金属ナノワイヤーを洗浄することを2回繰り返した。その後、200mLビーカー内にイソプロピルアルコール5gと濾過後のメンブレンフィルターを入れて、超音波洗浄器(US−3A、アズワン株式会社製)により3分間超音波照射し、金属ナノワイヤー含有塗布液10を調製した。
金属ナノワイヤー含有塗布液10の評価結果を表2に示す。
【0198】
<金属ナノワイヤー含有透明導電膜の作製>
金属ナノワイヤー含有塗布液10を使用したこと以外は実施例1の金属ナノワイヤー含有透明導電膜1Aと同様の操作を行い、金属ナノワイヤー含有透明導電膜10Aを作製した。金属ナノワイヤー含有透明導電膜10Aとその積層体10Aの評価結果を表2Bに示す。
また、70℃で乾燥させた後に150℃で30分間加熱処理したこと以外は金属ナノワイヤー含有透明導電膜10Aと同様な操作を行い、金属ナノワイヤー含有透明導電膜10B’を得た。金属ナノワイヤー含有透明導電膜10B’とその積層体10B’の評価結果を表2Bに示す。
【0199】
[比較例2]
<金属ナノワイヤー含有塗布液の調製>
金属ナノワイヤー合成反応時に130℃で163分間反応させたこと以外は実施例1と同様に金属ナノワイヤーの合成反応を行い、反応溶液2’を得た。反応溶液2’は、比較例1と同様な濾過法により金属ナノワイヤーを精製し、金属ナノワイヤー含有塗布液11を調製した。
反応溶液2’の評価結果を表1に示す。
金属ナノワイヤー含有塗布液11の評価結果を表1,2に示す。
【0200】
<金属ナノワイヤー含有透明導電膜の作製>
金属ナノワイヤー含有塗布液11を使用したこと以外は実施例1の金属ナノワイヤー含有透明導電膜1Aと同様の操作を行い、金属ナノワイヤー含有透明導電膜11Aを作製した。金属ナノワイヤー含有透明導電膜11Aとその積層体11Aの評価結果を表3に示す。
また、70℃で乾燥させた後に200℃で30分間加熱処理したこと以外は金属ナノワイヤー含有透明導電膜11Aと同様な操作を行い、金属ナノワイヤー含有透明導電膜11Cを得た。金属ナノワイヤー含有透明導電膜11Cとその積層体11Cの評価結果を表3に示す。
【0201】
[比較例3]
<金属ナノワイヤー含有塗布液の調製>
室温から130℃に昇温して109分間反応させた後に114℃でさらに209分間反応させたこと以外は実施例1と同様に金属ナノワイヤーの合成反応を行い、反応終了後は比較例1と同様な濾過法により精製することにより、金属ナノワイヤー含有塗布液12を調製した。
金属ナノワイヤー含有塗布液12の評価結果を表2に示す。
【0202】
<金属ナノワイヤー含有透明導電膜の作製>
金属ナノワイヤー含有塗布液12を使用したこと以外は実施例1の金属ナノワイヤー含有透明導電膜1Aと同様の操作を行い、金属ナノワイヤー含有透明導電膜12Aを作製した。金属ナノワイヤー含有透明導電膜12Aとその積層体12Aの評価結果を表3に示す。
また、70℃で乾燥させた後に200℃で30分間加熱処理したこと以外は金属ナノワイヤー含有透明導電膜12Aと同様な操作を行い、金属ナノワイヤー含有透明導電膜12Cを得た。金属ナノワイヤー含有透明導電膜12Cとその積層体12Cの評価結果を表3に示す。
【0203】
[比較例4]
<金属ナノワイヤー含有塗布液の調製>
比較例2と同様に金属ナノワイヤーの合成反応を行い、反応終了後はセルロースアセテートタイプメンブレンフィルターの代わりにオムニポアメンブレン(孔径10μm、寸法142mmφ、ミリポア社製)を用いたこと以外は実施例4と同様な操作により金属ナノワイヤーを精製し、金属ナノワイヤー含有塗布液13を調製した。
金属ナノワイヤー含有塗布液13の評価結果を表2に示す。
【0204】
<金属ナノワイヤー含有透明導電膜の作製>
金属ナノワイヤー含有塗布液13を使用したこと以外は実施例1の金属ナノワイヤー含有透明導電膜1Aと同様の操作を行い、金属ナノワイヤー含有透明導電膜13Aを作製した。金属ナノワイヤー含有透明導電膜13Aとその積層体13Aの評価結果を表3に示す。
また、70℃で乾燥させた後に200℃で30分間加熱処理したこと以外は金属ナノワイヤー含有透明導電膜13Aと同様な操作を行い、金属ナノワイヤー含有透明導電膜13Cを得た。金属ナノワイヤー含有透明導電膜13Cとその積層体13Cの評価結果を表3に示す。
【0205】
[比較例5]
<金属ナノワイヤー含有塗布液の調製>
実施例5と同様に金属ナノワイヤーの合成反応を行い、反応終了後は実施例4と同様に金属ナノワイヤーを精製し、金属ナノワイヤー含有塗布液14Aを調製した。金属ナノワイヤー塗布液14A 2.2gと金属ナノワイヤー塗布液10 2.4gを混合し、金属ナノワイヤー塗布液14Bを調製した。
金属ナノワイヤー含有塗布液14Bの評価結果を表2に示す。
【0206】
<金属ナノワイヤー含有透明導電膜の作製>
金属ナノワイヤー含有塗布液14Bを使用したこと以外は実施例1の金属ナノワイヤー含有透明導電膜1Aと同様の操作を行い、金属ナノワイヤー含有透明導電膜14Aを作製した。金属ナノワイヤー含有透明導電膜14Aとその積層体14Aの評価結果を表3に示す。
また、70℃で乾燥させた後に200℃で30分間加熱処理したこと以外は金属ナノワイヤー含有透明導電膜14Aと同様な操作を行い、金属ナノワイヤー含有透明導電膜14Cを得た。金属ナノワイヤー含有透明導電膜14Cとその積層体14Cの評価結果を表3に示す。
【0207】
【表1】

【0208】
【表2】

【0209】
【表3】

【0210】
表3より、実施例1〜9のように金属ナノワイヤーの数平均直径が40nm以上100nm以下及び数平均長さが9μm以上であり、かつ全金属ナノワイヤー数に対する長さ6μm以下の金属ナノワイヤー数の割合(CNW6)が25%以下である場合、70℃で乾燥させた金属ナノワイヤー含有透明導電膜とその積層体は、透過率を84〜86%とした時に表面抵抗率が15〜56Ω/□と低い値を示しており、高い透明性と高い導電性を両立している。
特に、実施例5で作製した金属ナノワイヤー含有透明導電膜5Aとその積層体5Aは、室温で塗布乾燥させた後に全く加熱をしていないにもかかわらず、透過率85%、表面抵抗率20Ω/□と、高い透明性と高い導電性を示した。
実施例9で作製した金属ナノワイヤー含有透明導電膜9Aとその積層体9Aは、70℃で乾燥させたのみであるにもかかわらず、透過率85%、表面抵抗率15Ω/□と、高い透明性と高い導電性を示した。また、かかる膜とその積層体は、基材との高い密着性を示した。
さらに、実施例1〜5,7〜9においては、これらの膜とその積層体を高温で加熱処理することにより、高い透明性を保持したまま表面抵抗率は9〜25Ω/□まで低下し、導電性を向上させることができた。また、実施例6では金属ナノワイヤー含有透明導電膜を加圧することにより、高い透明性を維持したまま導電性を向上させることができた。さらに実施例2では、積層体2Dように金属ナノワイヤー含有透明導電膜を他の層で被覆することにより、高い透明性と高い導電性を維持したまま、金属ナノワイヤー含有透明導電膜とその積層体の密着性を向上させることができた。
【0211】
一方、表3で示す比較例1、2、3のように金属ナノワイヤーの数平均直径は40nm以上100nm以下であるが、数平均長さが9μmより短く、全金属ナノワイヤー数に対する長さ6μm以下の金属ナノワイヤー数の割合(CNW6)が25%を超える場合、70℃で乾燥させた金属ナノワイヤー含有透明導電膜とその積層体は、透過率を85〜87%とした時に表面抵抗率が164〜2096Ω/□と高く、低い導電性を示した。これらの試料を加熱処理することにより、導電性が向上したことから、これらの試料で高い透明性と高い導電性を両立するには加熱処理が必要である。
【0212】
また、表3で示す比較例4、5のように金属ナノワイヤーの数平均直径は40nm以上100nm以下であり、数平均長さが9μm以上であるが、長さ6μm以下の金属ナノワイヤー数が全金属ナノワイヤー数に対して25%以上である場合、70℃で乾燥させた金属ナノワイヤー含有透明導電膜とその積層体は、透過率を85〜86%とした時に表面抵抗率が739〜2899Ω/□と高く、低い導電性を示した。これらの試料を加熱処理することにより、導電性が向上したことから、これらの試料で高い透明性と高い導電性を両立するには、加熱処理が必要である。
【0213】
以上のことから、高温での加熱処理や加圧処理をすることなく、高い透明性と高い導電性を両立した金属ナノワイヤー含有透明導電膜とその積層体を作製するには、該金属ナノワイヤーの数平均直径が40nm以上100nm以下及び数平均長さが9μm以上であり、かつ全金属ナノワイヤー数に対する長さ6μm以下の金属ナノワイヤー数の割合が25%以下であることが好ましいことが分かる。また同様に、高い透明性と高い導電性を両立した金属ナノワイヤー含有透明導電膜を作製するための塗布液としては、かかる塗布液に含有される金属ナノワイヤーの数平均直径が40nm以上100nm以下及び数平均長さが9μm以上であり、かつ全金属ナノワイヤー数に対する長さ6μm以下の金属ナノワイヤー数の割合が25%以下であることが好ましいことが分かる。
【0214】
また、表1、表2に示されるように、実施例1〜9のように平均孔径又は保留平均粒子径が1.0μm以上の濾過膜を用いて金属ナノワイヤーを精製することにより、全金属ナノワイヤー数に対する長さ6μm以下の金属ナノワイヤー数の割合(CNW6)が25%以下と低い塗布液が得られている。その結果、これらの塗布液を用いて作製した金属ナノワイヤー含有透明導電膜は、上記したように高温での加熱処理や加圧処理をせずとも、高い透明性と高い導電性を両立している。一方、比較例1〜3のように平均孔径0.8μmの濾過膜を用いて金属ナノワイヤーを精製した場合、かかる塗布液のCNW6は25%を超え、短い金属ナノワイヤーの含有量が高い塗布液が得られた。そのため、これらの塗布液を用いて作製した金属ナノワイヤー含有透明導電膜は、高温での加熱処理や加圧処理をしない場合は、導電性が低い結果が得られた。
以上のことから、金属ナノワイヤーを膜濾過により精製する場合は、平均孔径又は保留平均粒子径が1.0μm以上の濾過膜を用いることが好ましいことが分かる。
【0215】
[合成例1:C60(Ind)の合成]
【化1】

【0216】
60(Ind)の合成は、国際公開第2008/018931号の記載を参考にして行った。GPCで分取精製することにより、ビス付加体の異性体混合物として取得した。質量分析(APCI法、negative)により、目的物の質量と一致するm/z:952[M]を検出した。
【0217】
[実施例10]
<太陽電池の作製>
以下の方法で、図10に示す太陽電池107を作製した。
Ag/ITO電極(カソード)101がパターニングされたガラス基板106上に、酸化亜鉛(ZnO)の微粒子分散液(ビックケミー社製、NANOBYK(登録商標)−3841)を、プロピレングリコール 1−モノメチルエーテル 2−アセテートにより5倍希釈した液を、スピンコート法により塗布した。塗布後のガラス基板を150℃のホットプレート上で、大気中10分間加熱処理を施した。このようにして得られたZnO層よりなる電子取り出し層102の膜厚は約70nmであった。
【0218】
レジオレギュラーポリ−3−ヘキシルチオフェン(P3HT、Rieke Metals社製)及び合成例1で得られたC60(Ind)を重量比1:1で、3.5重量%の濃度でo−キシレン(和光純薬社製)に溶解させた。得られた溶液を、80℃で窒素雰囲気中、1時間スターラーで攪拌混合した。この溶液を孔径0.45μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターで濾過し、有機活性層塗布液を作製した。次に前述の電子取り出し層102としてZnO層を設けたガラス基板106をグローブボックス中に持ち込み、グローブボックス中でガラス基板上のZnO層102上に有機活性層塗布液をスピンコート法により塗布し、窒素雰囲気下で自然乾燥させ、膜厚約320nmの有機活性層(p型半導体化合物とn型半導体化合物混合層)103を形成した。
【0219】
その後、界面活性剤を1重量%含有させた、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホン酸)水性分散液(エイチ・シー・スタルク社製 商品名「CLEVIOS(登録商標)PVP AI4083」)を、孔径0.45μmのポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルターで濾過してから、前記有機活性層上に大気下でスピンコートした後、窒素雰囲気下、150℃で10分間加熱乾燥することで、膜厚約60nmの正孔取り出し層104を有機活性層103上に形成した。
【0220】
更に、正孔取り出し層104上に、実施例7で調製した金属ナノワイヤー含有塗布液を、大気下、500rpm、10秒、5回の条件でスピンコートした後、大気中、70℃で10分間加熱乾燥を行った。その後、金属ナノワイヤー含有塗布液を塗布乾燥したガラス基板を窒素雰囲気のグローブボックスへ入れて、その中で150℃にて30分間加熱処理を施した。このような工程を経て、正孔取り出し層104上に金属ナノワイヤーを含む透明導電膜よりなる電極(アノード)105を上部電極に用いたバルクヘテロ接合型太陽電池107を作製した。
【0221】
作製した太陽電池107に対して、ガラス基板106とは反対側からソーラシミュレーター(AM1.5G)で100mW/cmの強度の光を照射した。ソースメーター(ケイスレー社製,2400型)にて、Ag/ITO電極101と金属ナノワイヤーによって形成した電極105との間における電流−電圧特性を測定し、結果を表4に示す。
表4中、Voc[V]は開放電圧、Jsc[mJ/cm]は電流密度、FFはフィルファクター、PCE[%]は変換効率を表す。
【0222】
[比較例6]
実施例10において、正孔取り出し層上に金属ナノワイヤー含有塗布液をスピンコートする代わりに、スパッタ法により、140nmの膜厚のIWZO透明電極を正孔取り出し層上に設けたこと以外は、実施例9と同様の工程を経て、太陽電池を作製した。
【0223】
作製した太陽電池に対して、実施例9と同様に、ガラス基板とは反対側からソーラシミュレーター(AM1.5G)で100mW/cmの強度の光を照射した。ソースメーター(ケイスレー社製,2400型)にて、Ag/ITO電極とIWZO透明電極との間における電流−電圧特性を測定し、結果を表4に示す。
【0224】
【表4】

【0225】
表4の通り、本発明の金属ナノワイヤー含有透明導電膜を電極として用いた太陽電池は、透明金属酸化物電極を用いた太陽電池と比べて、電流密度が向上し、変換効率の高い太陽電池であることがわかる。
【符号の説明】
【0226】
1 基材
2 金属ナノワイヤー含有透明導電膜
3A、3B、3C、3D、3E、3F、3G、3H 積層体
4 保護層
5 スペーサー層
6 偏光板層
7 粘着層
8 配線層
9 電極層
10 電子輸送層
11 光電変換層
12 正孔輸送層
13 半導体層
14 色素増感酸化チタン多孔膜
15 電解質層
16 p型半導体層
17 n型半導体層
101 カソード
102 電子取り出し層
103 活性層(p型半導体化合物とn型半導体化合物混合層)
104 正孔取り出し層
105 アノード(金属ナノワイヤー含有透明導電膜)
106 基材(基板)
107 太陽電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ナノワイヤーを含む透明導電膜であって、全光線透過率が75%以上であり、該金属ナノワイヤーの数平均直径が40nm以上100nm以下及び数平均長さが9μm以上であり、かつ全金属ナノワイヤー数に対する長さ6μm以下の金属ナノワイヤー数の割合が25%以下であることを特徴とする金属ナノワイヤー含有透明導電膜。
(ここで全光線透過率は、全光線透過率が90%以上の透明基材上に該透明導電膜が形成された積層体の全光線透過率であり、JIS K7136の規格による測定装置で測定される。)
【請求項2】
該金属ナノワイヤーが銀ナノワイヤーであることを特徴とする請求項1に記載の金属ナノワイヤー含有透明導電膜。
【請求項3】
金属ナノワイヤー含有塗布液を塗布後、乾燥して形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の金属ナノワイヤー含有透明導電膜の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の金属ナノワイヤー含有透明導電膜の製造方法で使用される金属ナノワイヤー含有塗布液。
【請求項5】
金属ナノワイヤーを含む塗布液であって、該金属ナノワイヤーの数平均直径が40nm以上100nm以下及び数平均長さが9μm以上であり、かつ全金属ナノワイヤー数に対する長さ6μm以下の金属ナノワイヤー数の割合が25%以下であることを特徴とする金属ナノワイヤー含有塗布液。
【請求項6】
該塗布液を、塗布面における金属ナノワイヤーが占める面積率が7〜35%となるような条件で塗布した膜の全光線透過率が75%以上である請求項5に記載の金属ナノワイヤー含有塗布液。
(ここで全光線透過率は、全光線透過率が90%以上の透明基材上に該膜が形成された積層体の全光線透過率であり、JIS K7136の規格による測定装置で測定される。)
【請求項7】
該金属ナノワイヤーが銀ナノワイヤーである請求項5又は6に記載の金属ナノワイヤー含有塗布液。
【請求項8】
請求項5ないし7のいずれか1項に記載の金属ナノワイヤー含有塗布液を塗布後、乾燥して形成したことを特徴とする金属ナノワイヤー含有透明導電膜。
【請求項9】
金属ナノワイヤーを合成後、全金属ナノワイヤー数に対する長さ6μm以下の金属ナノワイヤー数の割合が25%以下であるように精製する工程を含むことを特徴とする請求項4ないし7のいずれか1項に記載の金属ナノワイヤー含有塗布液の製造方法。
【請求項10】
該精製法が膜濾過法であることを特徴とする請求項9に記載の金属ナノワイヤー含有塗布液の製造方法。
【請求項11】
孔径又は保留粒子径が1.0μm以上の濾過膜を用いて膜濾過することを特徴とする請求項10に記載の金属ナノワイヤー含有塗布液の製造方法。
【請求項12】
基材上に請求項1又は2に記載の金属ナノワイヤー含有透明導電膜を積層した積層体。
【請求項13】
請求項1又は2に記載の金属ナノワイヤー含有透明導電膜を透明電極として用いたタッチパネル。
【請求項14】
請求項1又は2に記載の金属ナノワイヤー含有透明導電膜を透明電極として用いた太陽電池。
【請求項15】
請求項1又は2に記載の金属ナノワイヤー含有透明導電膜を透明電極として用いたディスプレイ。
【請求項16】
請求項1又は2に記載の金属ナノワイヤー含有透明導電膜を透明電極として用いた照明。
【請求項17】
請求項1又は2に記載の金属ナノワイヤー含有透明導電膜を用いた面状発熱体。
【請求項18】
請求項1又は2に記載の金属ナノワイヤー含有透明導電膜を用いた電磁波シールド。
【請求項19】
請求項1又は2に記載の金属ナノワイヤー含有透明導電膜を透明電極として用いた調光ガラス。
【請求項20】
請求項1又は2に記載の金属ナノワイヤー含有透明導電膜を透明電極として用いた調光フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−216535(P2012−216535A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−76910(P2012−76910)
【出願日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】