金属ナノ微粒子表面の有機分子の解析方法
【課題】金属ナノ微粒子表面の自己組織化有機分子単層膜の解析方法を提供する。
【解決手段】自己組織化有機分子単層膜を表面に有する基板に金ナノ微粒子などの金属ナノ微粒子を分散配置させ、この金属ナノ微粒子上に自己組織化有機分子単層膜を形成し、これをレーザー光を照射して有機分子を金化合物としてイオン化し、イオン化した有機分子金化合物を飛行時間型質量分析することにより金属ナノ微粒子表面に結合した有機分子の解析を行う。
【解決手段】自己組織化有機分子単層膜を表面に有する基板に金ナノ微粒子などの金属ナノ微粒子を分散配置させ、この金属ナノ微粒子上に自己組織化有機分子単層膜を形成し、これをレーザー光を照射して有機分子を金化合物としてイオン化し、イオン化した有機分子金化合物を飛行時間型質量分析することにより金属ナノ微粒子表面に結合した有機分子の解析を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー脱離イオン化法を用いる、飛行時間型質量分析法(Laser Desorption/Ionization−Mass Spectrometry:LDI−TOF−MS)による金属ナノ微粒子表面の自己組織化有機分子の解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の金属表面における有機分子の自己組織化の研究は、従来から広く行われている(例えば、非特許文献1参照)。形成された有機分子単層膜は、金属表面の酸化・腐食からの保護や、特に金属ナノ微粒子であれば、光学応答性の制御や凝集保護のために利用することができる。この金属表面における自己組織化のために用いられる有機化合物としては、アルコール類、アミン類、カルボン酸類、チオールなどの硫黄含有化合物、リン含有化合物、アジド基、エチレン基、アセチレン基などの不飽和基含有化合物、ケイ素含有化合物など種々の化合物が知られている。一方、基材金属としては、平板状あるいは微粒子状の金属、例えば金、銀、銅、パラジウム、白金、水銀、鉄、ケイ素、カドミウム、亜鉛、チタン、ニッケル、ジルコニウム、アルミニウム、タンタル、テルル、セレンやそれらの合金、酸化物、硫化物など種々の金属、金属酸化物、硫化物などが利用可能である。これらの中、金ナノ微粒子などの金属ナノ微粒子を用いての有機分子の自己組織化の研究は、世界的に研究が集中し、急激に発展する方向にあり、有機化合物としては、アルカンチオールを用いての研究が活発に行われている。従来、これら微粒子表面上の分子集合体の確認方法は、電子顕微鏡や原子間力顕微鏡では困難であることから、解析方法がなかったのが現状である。
【0003】
一方、質量分析法は、分析化学において利用されるだけではなく、医学、生物学、生化学など多岐の分野において利用されており、その中でもレーザー脱離−質量分析法(Laser Desorption/Ionization Mass Spectrometry:LDI−MS)は、主に金属や半導体などの表面分析に用いられてきた。レーザーを用いているため、レンズを用いて容易に集光することが可能であり、微小領域の分析が可能である。また、試料を容易にイオン化することが可能であり、広範囲の試料種に対応することが可能である。特に、マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization−Mass Spectrometry:MALDI−MS)は、照射するレーザーエネルギーを試料分子に効率的に与えることができることから、非常に有用な方法として利用されている。しかし、MALDI−MS法はマトリックス分子を大過剰に添加する方法であり、上記金属ナノ微粒子を使った自己組織化膜における有機分子の解析にこの方法を利用することはできない。
【0004】
マトリックス分子ではなくイオン化基板表面を用いて効率的なエネルギー供給を目指した表面支援LDI−MS法(SALDI−MS法)も開発され、様々なイオン化基板が提案されている。
【0005】
例えば、表面プラズモン共鳴法を質量分析に利用したものがある(下記特許文献1参照)。この文献に記載された発明においては、金属基板に裏側から全反射条件を満たしつつ表面プラズモンを励起し、表面に吸着した分析物などの影響により変化する反射光強度をモニタリングするものである。その強度変化と励起光の入射角度との間に一定の相関関係を得ることができる。この場合、用いる基板は平滑な基板を用いる必要がある。その理由は、平滑でない基板を用いると角度依存性が得られないからである。このため金属ナノ微粒子を使った有機分子の自己組織化における、金属ナノ微粒子表面の単層膜の解析にこの方法を適用することはできない。
【0006】
一方、本願発明者は、表面プラズモン励起による金ナノ微粒子表面を用いたSALDI−MS法(SP−SALDI−MS法)を開発した(特許文献2及び3参照)。このSP−SALDI−MS法は、シリコン基板などの平滑基板上に金ナノ微粒子を分散あるいは2次元最密充填固着させ、金の表面に励起される表面プラズモン励起を利用するものである。この方法は、金属ナノ微粒子表面に分析対象となる有機分子を堆積させ、励起された表面プラズモン励起のエネルギーにより金属ナノ微粒子上の有機分子のイオン化を行うもので、金属ナノ微粒子と反応している有機分子を対象とするものではないし、単分子膜を対象とするものでもない。また、n−アルカンなどは、この方法で容易にイオン化することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表平11−512518号公報
【特許文献2】特開2008−70187号公報
【特許文献3】特開2009−81055号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Chem. Rev. 2005, Vol.105, No.4, pp.1103-1169
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来解析できなかった、上記した金属ナノ微粒子表面の自己組織化有機分子単層膜の解析方法を提供することを目的とするものである。
【0010】
本発明者らは、鋭意研究、検討を行ったところ、レーザー脱離イオン化法を用いる飛行時間型質量分析法(Laser Desorption/Ionization−Mass Spectrometry:LDI−TOF−MS)を用いることにより、金属と反応して金属ナノ微粒子表面において単分子層を形成している有機分子の質量分析を正確に且つ感度良く行うことができ、金属微粒子上に自己組織化した有機分子解析を簡単に行うことができることを見出して、本発明を成したものである。SP−SALDI−MS法は、金属ナノ微粒子と結合している自己組織化単分子層に適用すると、金属に結合した分子の開裂が起こることが予測されることからすると、上記方法により、金属ナノ微粒子表面と結合した分子の解析が行えることは、驚くべきことである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明は、次の(1)〜(6)に記載の金属ナノ微粒子表面の有機分子の解析法に関する。
【0012】
(1)自己組織化有機分子単分子層を表面に有する金属ナノ微粒子が分散配置された基板にレーザー光を照射することにより、有機分子を金化合物としてイオン化し、質量分析することを特徴とするレーザー脱離イオン化質量分析法を用いる金属ナノ微粒子表面結合分子の解析方法。
【0013】
(2)上記金属が金であることを特徴とする上記(1)に記載の金属ナノ微粒子表面結合分子の解析方法。
【0014】
(3)金属ナノ微粒子の粒径が3nm以上であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の金属ナノ微粒子表面結合分子の解析方法。
【0015】
(4)上記金属ナノ微粒子の配置が、ランダム分散配置または2次元最密充填配置であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の金属ナノ微粒子表面結合分子の解析方法。
【0016】
(5)上記有機分子が、チオール基、アセチル保護チオール基、あるいはジスルフィド結合等の金属表面と結合可能な置換基を有する化合物であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の金属ナノ微粒子表面結合分子の解析方法。
【0017】
(6)上記質量分析が、飛行時間型質量分析法により行われることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の金属ナノ微粒子表面結合分子の解析方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、自己組織化により金属ナノ微粒子表面に結合された有機分子の質量分析を行うことができるようになったことから、従来行うことのできなかった金属ナノ微粒子表面に結合した有機分子の解析を行うことができるようになった。
【0019】
また、質量分析も従来知られた飛行時間型質量分析装置を用いて正確且つ簡単に行うことができ、自己組織化有機分子膜の解析が容易に行えることから、有機分子の選択により抗原抗体反応分析などにおける利用が可能である。さらには、表面修飾分子の末端(金属と結合していない方)を適当な官能基に置換することで、例えば、インフルエンザウイルスのレセプターとして知られるシアル酸などを捕捉して、質量分析することも本発明によって可能であると考えられる。通常では、測定困難な物質を化学修飾(例えば、分子の一部をチオール基にするなど)することで測定可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】金ナノ微粒子が基板上に分散配置した状態とレーザー照射視野との関係を示す模式的平面図である。
【図2】金ナノ微粒子が基板上に2次元最密充填されている状態とレーザー照射視野との関係を示す模式的平面図である。
【図3】シリコン基板上に金ナノ微粒子が均一に配置されている状況を示す図2の模式的断面図である。
【図4】図面代用写真であり、金ナノ微粒子が基板上に最密充填されている状態を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】質量分析装置の概念図である。
【図6】チオール化合物で修飾された金ナノ微粒子にレーザー照射を行い、イオン化した状態を示す模式図である。
【図7】平均粒径20nmの金ナノ微粒子修飾1−ヘキサデカンチオールのLDI質量分析結果を示すマススペクトル図である。
【図8】平均粒径60nmの金ナノ微粒子修飾1−ヘキサデカンチオールのLDI質量分析結果を示すマススペクトル図である。
【図9】平均粒径100nmの金ナノ微粒子修飾1−ヘキサデカンチオールのLDI質量分析結果を示すマススペクトル図である。
【図10】平均粒径60nmの金ナノ微粒子修飾1−オクタデカンチオールのLDI質量分析結果を示すマススペクトル図である。
【図11】平均粒径60nmの金ナノ微粒子修飾11−メルカプト−1−ウンデカノールのLDI質量分析結果を示すマススペクトル図である。
【発明を実施するための態様】
【0021】
本発明は、上記するように、自己組織化有機分子単分子層を表面に有する金属ナノ微粒子が分散配置された基板にレーザー光を照射して、有機分子を金化合物としてイオン化し、質量分析することを特徴とするレーザー脱離イオン化質量分析法を用いる金属ナノ微粒子表面結合分子の解析方法に関する。以下、本発明の解析方法を、まずその上に金属ナノ微粒子が分散配置された基板およびその形成方法から説明する。
【0022】
(金属ナノ微粒子を分散配置する基板)
本発明においては、金属ナノ微粒子を分散配置した基板が作製され、この基板上に配置された金属ナノ微粒子表面に、自己組織化単分子膜が形成される。まず、下地の基材としては、金属ナノ微粒子をその上に分散配置することができ、レーザー脱離イオン化質量分析法の際に試料のイオン化を阻害しないものであればいずれのものが用いられてもよい。好ましい下地の基材としては、例えば平滑なシリコン基板が挙げられる。大きさは、任意でよいが、市販の飛行時間型質量分析装置を利用することから、この試料台に取り付けられる程度の大きさ、例えば5mm×5mm×0.5mm程度のものが挙げられる。
【0023】
金属ナノ微粒子の粒径は、特に限定されるものではないが、本発明においてはレーザー離脱イオン化質量分析法(LDI−MS)により解析が行われることから、レーザー照射により表面プラズモンを励起する粒径であることが好ましく、金属によってその好ましい粒径は異なるものの、一般に粒径が数nm以上、例えば3nm〜300nm程度のものが好ましい。金属ナノ微粒子は単一粒径であるものが好ましいが、これは、粒径が異なると表面プラズモン励起エネルギーに差が出ることによる分析精度の問題、後述するように、金属ナノ微粒子は、基板上に2次元最密充填することが好ましいことによる。金ナノ微粒子の場合を例示すると、例えば、2次元最密充填する場合、粒径が20nm以上であるものが好ましい。
【0024】
また、金属ナノ微粒子を構成する金属としては、従来自己組織化単分子膜(SAM)形成の基板あるいは金属ナノ微粒子の基材として用いられていたもので、微粒子とすることのできるものであればいずれのものも用いることができる。このようなSAM形成の基材として用いられている金属としては、Au、Ag、Cu、Pd、AuAg、Pt、Co、Ir、Ru、Si、AuAg、AuCu、FePt、GaAs、CdSe、CdTeなど広範な材料が知られており、このような金属からナノ粒子を形成することのできるものが使用される。そして、上記するように、本発明においてはLDI−MS法により解析が行われることから、レーザー照射により表面プラズモン励起が起こる金属が好ましいことをも勘案すると、Au、Ag、Cu、Ptなどが好ましい金属として挙げられる。
【0025】
また、金属ナノ微粒子は、図1に示されるように、基板上にランダムに配置されていてもよい。しかし、図1に示されるように、金属ナノ微粒子が存在する場所と存在しない場所があると、共鳴的に高まった場所とそうでない場所が存在するため、質量分析測定において再現性を損なわせることとなる。また、基板としてシリコンなどを用いる場合、シリコンは熱伝導率が低いことから、レーザー照射により発生した熱が逃げにくく、これにより過剰なエネルギー供給となってしまう恐れもある。
【0026】
このようなことから、金属ナノ微粒子は、図2、図3に模式的に示されるように、基板上に2次元最密充填されたものが好ましい。図2は60nm金ナノ微粒子が2次元最密充填された状態を示す平面図であり、図3はその断面図である。最密充填されていると、図2に示すように、レーザー光で基板上のいずれの場所が照射された場合にも同じ結果が得られ、分析再現性が高くなるし、Au、Ag、Cu、Ptなどは熱伝導率が高いことから、発生した熱を速やかに隣接する他の粒子を通して逃がすことが可能となり、過剰の熱による弊害、例えば、測定分子の解裂、マススペクトル分解能の低下を防止することができる。
【0027】
金属ナノ微粒子の2次元最密充填基板作製法としては、公知方法のいずれの方法が用いられてもよい。60nmの金ナノ微粒子による2次元最密充填基板作製法の一例を挙げると、60nm金ナノ微粒子水溶液(BBI社製、2.6×1010個/ml)をサンプル管等の容器に入れ、水と相分離する有機溶媒(1)を加える。次に、水及び該有機溶媒のいずれにも混和する有機溶媒(2)を加える。その後、静置させると、水溶液と有機溶媒に相分離し、その界面に金ナノ微粒子により形成された薄膜が生成する。なお、使用する有機溶媒の組み合わせ例としては、有機溶媒(1)にシクロヘキサン、有機溶媒(2)にメタノールという組み合わせが望ましい。
【0028】
この状態で、シリコン基板を管底に静かに沈め、上記水相及び有機相を静かに抜き取ることで、金ナノ微粒子薄膜がシリコン基板上に移し取られ、最密充填基板が作製される。図4に、この方法で作製された基板の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。
【0029】
上記例では、金属として60nmの金ナノ微粒子による場合を示したが、表面プラズモン励起を誘起し得るどの粒子径の金属ナノ微粒子でも作製することが可能である。例えば、実施例に20nmおよび100nmの金ナノ微粒子を最密充填した基板が挙げられているが、これら粒径の金ナノ微粒子の場合も上記と同様の方法で最密充填基板を作製することができた。また金以外の例えば銀、銅、白金などでも、同様の方法で最密充填基板を作製することができる。
【0030】
(測定試料の作製)
一方、前記金属ナノ微粒子表面には、測定試料である有機分子の自己組織化膜が形成される。試料膜である、この自己組織化膜に用いられる有機分子としては、金属ナノ微粒子に化学的に結合し、有機単分子膜を形成する(金属ナノ微粒子を修飾する)ものであればいずれのものでもよい。このような化合物の例は、例えば上記非特許文献1にも記載されているように、アルコール類、アミン類、カルボン酸類、チオールなどの硫黄含有化合物、リン含有化合物、アジド基、エチレン基、アセチレン基などの不飽和基含有化合物、ケイ素含有化合物など多数のものが知られている。チオールなどの硫黄含有化合物としては、チオール基、アセチル保護チオール基、あるいはジスルフィド結合を有する化合物が代表的なものとして挙げられる。「分子−金属」の組み合わせについてみると、例えば、チオール(SH)基を持つものであれば、金属としてAu、Ag、Cu、Pd、AuAg、Pt、Ir、Ru、AuAg、AuCu、FePt、GaAsとの組み合わせが挙げられる。
【0031】
チオール基を持つ化合物としては、n−アルカンチオール類(例えば炭素数が4以上のn−アルカンチオール類)、芳香族チオール類などが挙げられる。これらのチオール化合物は置換基によって置換されていてもよい。置換基としては、アルキル基、置換されていてもよいフェニル基、水酸基、ニトロ基、アルキルカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルオキシカルボニル基など任意の置換基であってよい。例えば、水酸基で置換されたアルカンチオール類を例示すると、例えば、HS(CH2)11OH、HS(CH2)21OHなど末端炭素原子に水酸基が置換したものが代表的なものとして挙げられる。また、芳香族チオール類としては、下記に例示するようなものが代表的なものとして挙げられる。
【0032】
【化1】
【0033】
測定試料の作製は、具体的には、次のように行われる。金属ナノ微粒子を担持した基板の金属ナノ微粒子表面に修飾する分子を溶媒に適当な濃度で溶解する。次いで、金属ナノ微粒子を担持する基板をその溶液中に一定時間浸漬させた後、基板を取り出し、上記の溶媒で洗浄して、金ナノ微粒子に結合していない分子を洗い流す。こうして作製された表面修飾金属ナノ微粒子担持基板を乾燥し、測定試料が完成する。
【0034】
上記の試料作製法において、基板を浸漬させる溶液中の表面修飾分子の濃度は特に限定されるものではないが、低濃度であることが好ましく、例えば、通常数mmol/リットル程度とされる。浸漬時間は、使用される溶液の修飾分子濃度と関係し、濃度が高ければ浸漬時間は短くてよく、一方濃度が低ければ浸漬時間は長くする必要がある。このように浸漬時間は溶液濃度等種々の条件により変動することから一義的に定められるものではないが、通常12時間〜2日程度とされる。また、浸漬中の温度は適宜の温度でよいが、25℃以上であることが浸漬時間の短縮の観点から好ましい。溶媒も修飾分子を溶解できるものであればいずれのものであってもよい。例えば、修飾分子としてアルカンチオールが用いられる場合には、エタノール,メタノール,トルエン、テトラヒドロフラン、ヂメチルホルムアミド、アセトニトリル、シクロオクタン等が好ましいものとして挙げられ、コスト、取り扱いの点などから、エタノールが特に好ましい。
【0035】
(解析)
上記で作製された分子修飾金属ナノ微粒子担持基板は、レーザー脱離イオン化法を用いる飛行時間型質量分析装置(LDI−TOF−MS)を用いて、修飾分子の質量分析が行われる。より具体的には、該試料は、例えば図5に示されるような測定装置(TOF−MS)の試料台にセットされ、マススペクトルが測定される。励起光は、Nd/YAGレーザーおよびN2レーザーであり、測定装置の左下から斜めに照射され、プリズムで反射され、中央部の試料台を照射する。その後、試料台から反射された光をプリズムを通し外へ導く。金属ナノ微粒子の励起により、図6に模式的に示すように、修飾分子は金とともにイオン化される。イオン化した試料をパルス状に加速し、検出器に到達するまでの時間差が線形型飛行時間型質量分析計により測定される。これにより質量の測定がなされる。
【0036】
励起光は、金属の表面プラズモン励起が起こる波長近傍の波長が好ましく用いられる。質量分析の際には、例えば、Nd/YAGレーザーによる266nm、355nm、532nm、1064nm、N2レーザーによる337nmなどが適宜選択される。金ナノ微粒子に対しては、金ナノ微粒子の吸収波長と金ナノ微粒子が基板上に2次元最密充填されていることを考慮すると、Nd/YAGレーザーの532nmや1064nmが好ましい。Nd/YAGレーザーの266nm、355nmやN2レーザーの337nmなどでも上記のレーザー波長よりレーザーフルエンスを高く設定すれば、測定を行うことはできる。同一レーザーフルエンスで266nm、532nmおよび1064nmで測定した場合、532nmおよび1064nmではピークが検出され、266nmでは検出されない場合もある。測定条件は、従来知られたレーザー脱離イオン化法を用いる飛行時間型質量分析装置の測定条件の中から最適の条件を選択して行えばよい。また、レーザー強度(パワー)は弱いとイオンの離脱がないか弱く、強すぎると分子の分解が起こり、分析を行うことが難しい。レーザーパワー(レーザーフルエンス)は、投入レーザーパワーやレンズなどによる集光条件(照射面積のコントロール)によって変わることから、特に限定されるものではないが、本発明の実施例の金ナノ微粒子粒径、測定試料、測定装置などの場合においては、レンズを用いて焦点付近に集光する条件で、レーザーパワーを3.3μJ、より好ましくは7.5μJとすることにより、良好な結果が得られた。なお、レーザーパワーは、装置の検出系・光学系にも依存する。
【実施例】
【0037】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。
【0038】
実施例1
(20nm金ナノ微粒子最密充填基板の作製)
平均粒径20nmの金ナノ微粒子水溶液(BBI社製、2.6×1010個/ml)1mlを口径15mm、高さ45mmのサンプル管に入れ、シクロヘキサン1mlを加えた。次に、メタノール2mlを加え、静置させると、水溶液と有機溶媒に相分離し、その界面に金ナノ微粒子により形成された薄膜が生成した。そこに、5mm×5mm×0.5mmのシリコン基板を入れ、管底に静かに沈め、上記水相及び有機相を管底から静かに抜き取った。これにより、図4と同様の最密充填基板が作製された。
【0039】
(測定試料の作製)
1−ヘキサデカンチオール(C16H33SH)32μlをエタノール100mlに溶解して1mmol/lエタノール溶液を作製した。この溶液に20nm金ナノ微粒子が表面に配列されたシリコン基板を浸漬し、12時間後に取り出し、エタノールで表面を十分に洗浄して余分なチオール分子を除去して、試料とした。
【0040】
(質量分析)
上記で作製した試料を飛行時間型質量分析計の試料台にセットし、次の条件で測定を行った。結果(マススペクトル)を図7に示す。
【0041】
<測定条件>
レーザー:Nd/YAG 532nm/4Hz
加速電圧(二段加速型):1段目;4.5kV、2段目;3.8kV
遅延時間:1.0μs
加速時間:3.0μs
その他の条件:
検出器:MCP
MCP電圧:1.90kV
飛行距離:450mm
真空度:1×10-4Pa order
【0042】
レーザーパワーを7.5、3.3、1.0μJとして測定したところ、図7に示されるように、レーザーパワー7.5μJにおいて、m/z712に[Au(S−R)2]-、1166に[Au2(S−R)3]-、1621に[Au3(S−R)4]-の明確なピークが得られた(式中、RはC16H33−を示す。)。このことから、チオールは、あまり解離することなく、チオールの金化合物としてイオン化され、高強度で検出されることが明らかとなった。
【0043】
実施例2
金ナノ微粒子の粒径を60nmとすることを除き、実施例1と同様にしてヘキサデカンチオールで修飾された金ナノ微粒子の飛行時間型質量分析計による質量分析を行った。結果を図8に示す。
【0044】
図8のマススペクトル図から、金ナノ微粒子の粒径が60nmである場合も、金ナノ微粒子の粒径が20nmである場合と同様に、レーザーパワー7.5μJにおいて、m/z480、712、1166、1621に鋭く高いピークを示した。そして、金ナノ微粒子粒径60nmの場合、これらのピークの高さは、粒径20nmの場合と比べより高くなった。
【0045】
実施例3
金ナノ微粒子の粒径を100nmとすることを除き、実施例1と同様にしてヘキサデカンチオールで修飾された金ナノ微粒子の飛行時間型質量分析を行った。結果を図9に示す。
【0046】
図9から、金ナノ微粒子の粒径が100nmである場合も、金ナノ微粒子の粒径が20nmである場合と同様に、レーザーパワーを7.5μJにおいて、m/z480、712、1166、1621に明確なピークを示した。
【0047】
実施例4
アルカンチオールとして1−オクタデカンチオールを用いることを除き実施例2と同様にして飛行時間型質量分析計による試料の質量分析を行った。結果を図10に示す。図10から明らかなように、m/z768に[Au(S−R)2]-、1251に[Au2(S−R)3]-、1733に[Au3(S−R)4]-の明確なピークが出現した(RはC18H37−を示す。)。
なお、比較のため、図10中に実施例2の結果を記載した。
【0048】
実施例5
アルカンチオールとして1−ドデカンチオールを用いることを除き実施例2と同様にして飛行時間型質量分析計による試料の質量分析を行った。m/z600に[Au(S−R)2]-、998に[Au2(S−R)3]-、1396に[Au3(S−R)4]-の鋭いピークが出現した。
【0049】
実施例6
レーザー発振器としてN2レーザーを用い、レーザー波長を337nmとすることを除き実施例2と同様にして飛行時間型質量分析計による試料の質量分析を行った。図8と同様の結果が得られた。
【0050】
実施例7
アルカンチオールとして1−ドデカンチオールを用いることを除き実施例6と同様にして飛行時間型質量分析計による試料の質量分析を行った。実施例5と同様の結果が得られた。
【0051】
実施例8
レーザー波長を266nmとすることを除き実施例2と同様にして飛行時間型質量分析計による試料の質量分析を行った。図8と同様の結果が得られた。
【0052】
実施例9
レーザー波長を266nmとすることを除き実施例5と同様にして飛行時間型質量分析計による試料の質量分析を行った。実施例5と同様の結果が得られた。
【0053】
実施例10
レーザー波長を1064nmとすることを除き実施例2と同様にして飛行時間型質量分析計による試料の質量分析を行った。図8と同様の結果が得られた。
【0054】
実施例11
レーザー波長を1064nmとすることを除き実施例5と同様にして飛行時間型質量分析計による試料の質量分析を行った。実施例5と同様の結果が得られた。
【0055】
実施例12
アルカンチオールとして11−メルカプト−1−ウンデカノール(HS(CH2)11OH)を用いることを除き実施例2と同様にして飛行時間型質量分析計による試料の質量分析を行った(レーザーパワーは10mJ/cm2)。結果を図11に示す。図11から明らかなように、m/z604に[Au(S−R)2]-、1004に[Au2(S−R)3]-、1404に[Au3(S−R)4]-の明確なピークが出現した(RはHO−C11H22−を示す。)。このことから、置換アルカンチオールも、あまり解離することなく、チオールの金化合物としてイオン化され、高強度で検出されることが明らかになった。
【0056】
上記各実施例から明らかなように、本発明の解析方法により、自己組織化有機分子単分子層を構成する有機分子の質量分析を簡単かつ正確に行うことができるようになり、従来行うことのできなかった金属ナノ微粒子表面に結合した有機分子の解析が可能となった。
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー脱離イオン化法を用いる、飛行時間型質量分析法(Laser Desorption/Ionization−Mass Spectrometry:LDI−TOF−MS)による金属ナノ微粒子表面の自己組織化有機分子の解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の金属表面における有機分子の自己組織化の研究は、従来から広く行われている(例えば、非特許文献1参照)。形成された有機分子単層膜は、金属表面の酸化・腐食からの保護や、特に金属ナノ微粒子であれば、光学応答性の制御や凝集保護のために利用することができる。この金属表面における自己組織化のために用いられる有機化合物としては、アルコール類、アミン類、カルボン酸類、チオールなどの硫黄含有化合物、リン含有化合物、アジド基、エチレン基、アセチレン基などの不飽和基含有化合物、ケイ素含有化合物など種々の化合物が知られている。一方、基材金属としては、平板状あるいは微粒子状の金属、例えば金、銀、銅、パラジウム、白金、水銀、鉄、ケイ素、カドミウム、亜鉛、チタン、ニッケル、ジルコニウム、アルミニウム、タンタル、テルル、セレンやそれらの合金、酸化物、硫化物など種々の金属、金属酸化物、硫化物などが利用可能である。これらの中、金ナノ微粒子などの金属ナノ微粒子を用いての有機分子の自己組織化の研究は、世界的に研究が集中し、急激に発展する方向にあり、有機化合物としては、アルカンチオールを用いての研究が活発に行われている。従来、これら微粒子表面上の分子集合体の確認方法は、電子顕微鏡や原子間力顕微鏡では困難であることから、解析方法がなかったのが現状である。
【0003】
一方、質量分析法は、分析化学において利用されるだけではなく、医学、生物学、生化学など多岐の分野において利用されており、その中でもレーザー脱離−質量分析法(Laser Desorption/Ionization Mass Spectrometry:LDI−MS)は、主に金属や半導体などの表面分析に用いられてきた。レーザーを用いているため、レンズを用いて容易に集光することが可能であり、微小領域の分析が可能である。また、試料を容易にイオン化することが可能であり、広範囲の試料種に対応することが可能である。特に、マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization−Mass Spectrometry:MALDI−MS)は、照射するレーザーエネルギーを試料分子に効率的に与えることができることから、非常に有用な方法として利用されている。しかし、MALDI−MS法はマトリックス分子を大過剰に添加する方法であり、上記金属ナノ微粒子を使った自己組織化膜における有機分子の解析にこの方法を利用することはできない。
【0004】
マトリックス分子ではなくイオン化基板表面を用いて効率的なエネルギー供給を目指した表面支援LDI−MS法(SALDI−MS法)も開発され、様々なイオン化基板が提案されている。
【0005】
例えば、表面プラズモン共鳴法を質量分析に利用したものがある(下記特許文献1参照)。この文献に記載された発明においては、金属基板に裏側から全反射条件を満たしつつ表面プラズモンを励起し、表面に吸着した分析物などの影響により変化する反射光強度をモニタリングするものである。その強度変化と励起光の入射角度との間に一定の相関関係を得ることができる。この場合、用いる基板は平滑な基板を用いる必要がある。その理由は、平滑でない基板を用いると角度依存性が得られないからである。このため金属ナノ微粒子を使った有機分子の自己組織化における、金属ナノ微粒子表面の単層膜の解析にこの方法を適用することはできない。
【0006】
一方、本願発明者は、表面プラズモン励起による金ナノ微粒子表面を用いたSALDI−MS法(SP−SALDI−MS法)を開発した(特許文献2及び3参照)。このSP−SALDI−MS法は、シリコン基板などの平滑基板上に金ナノ微粒子を分散あるいは2次元最密充填固着させ、金の表面に励起される表面プラズモン励起を利用するものである。この方法は、金属ナノ微粒子表面に分析対象となる有機分子を堆積させ、励起された表面プラズモン励起のエネルギーにより金属ナノ微粒子上の有機分子のイオン化を行うもので、金属ナノ微粒子と反応している有機分子を対象とするものではないし、単分子膜を対象とするものでもない。また、n−アルカンなどは、この方法で容易にイオン化することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表平11−512518号公報
【特許文献2】特開2008−70187号公報
【特許文献3】特開2009−81055号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Chem. Rev. 2005, Vol.105, No.4, pp.1103-1169
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来解析できなかった、上記した金属ナノ微粒子表面の自己組織化有機分子単層膜の解析方法を提供することを目的とするものである。
【0010】
本発明者らは、鋭意研究、検討を行ったところ、レーザー脱離イオン化法を用いる飛行時間型質量分析法(Laser Desorption/Ionization−Mass Spectrometry:LDI−TOF−MS)を用いることにより、金属と反応して金属ナノ微粒子表面において単分子層を形成している有機分子の質量分析を正確に且つ感度良く行うことができ、金属微粒子上に自己組織化した有機分子解析を簡単に行うことができることを見出して、本発明を成したものである。SP−SALDI−MS法は、金属ナノ微粒子と結合している自己組織化単分子層に適用すると、金属に結合した分子の開裂が起こることが予測されることからすると、上記方法により、金属ナノ微粒子表面と結合した分子の解析が行えることは、驚くべきことである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明は、次の(1)〜(6)に記載の金属ナノ微粒子表面の有機分子の解析法に関する。
【0012】
(1)自己組織化有機分子単分子層を表面に有する金属ナノ微粒子が分散配置された基板にレーザー光を照射することにより、有機分子を金化合物としてイオン化し、質量分析することを特徴とするレーザー脱離イオン化質量分析法を用いる金属ナノ微粒子表面結合分子の解析方法。
【0013】
(2)上記金属が金であることを特徴とする上記(1)に記載の金属ナノ微粒子表面結合分子の解析方法。
【0014】
(3)金属ナノ微粒子の粒径が3nm以上であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の金属ナノ微粒子表面結合分子の解析方法。
【0015】
(4)上記金属ナノ微粒子の配置が、ランダム分散配置または2次元最密充填配置であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の金属ナノ微粒子表面結合分子の解析方法。
【0016】
(5)上記有機分子が、チオール基、アセチル保護チオール基、あるいはジスルフィド結合等の金属表面と結合可能な置換基を有する化合物であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の金属ナノ微粒子表面結合分子の解析方法。
【0017】
(6)上記質量分析が、飛行時間型質量分析法により行われることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の金属ナノ微粒子表面結合分子の解析方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、自己組織化により金属ナノ微粒子表面に結合された有機分子の質量分析を行うことができるようになったことから、従来行うことのできなかった金属ナノ微粒子表面に結合した有機分子の解析を行うことができるようになった。
【0019】
また、質量分析も従来知られた飛行時間型質量分析装置を用いて正確且つ簡単に行うことができ、自己組織化有機分子膜の解析が容易に行えることから、有機分子の選択により抗原抗体反応分析などにおける利用が可能である。さらには、表面修飾分子の末端(金属と結合していない方)を適当な官能基に置換することで、例えば、インフルエンザウイルスのレセプターとして知られるシアル酸などを捕捉して、質量分析することも本発明によって可能であると考えられる。通常では、測定困難な物質を化学修飾(例えば、分子の一部をチオール基にするなど)することで測定可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】金ナノ微粒子が基板上に分散配置した状態とレーザー照射視野との関係を示す模式的平面図である。
【図2】金ナノ微粒子が基板上に2次元最密充填されている状態とレーザー照射視野との関係を示す模式的平面図である。
【図3】シリコン基板上に金ナノ微粒子が均一に配置されている状況を示す図2の模式的断面図である。
【図4】図面代用写真であり、金ナノ微粒子が基板上に最密充填されている状態を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】質量分析装置の概念図である。
【図6】チオール化合物で修飾された金ナノ微粒子にレーザー照射を行い、イオン化した状態を示す模式図である。
【図7】平均粒径20nmの金ナノ微粒子修飾1−ヘキサデカンチオールのLDI質量分析結果を示すマススペクトル図である。
【図8】平均粒径60nmの金ナノ微粒子修飾1−ヘキサデカンチオールのLDI質量分析結果を示すマススペクトル図である。
【図9】平均粒径100nmの金ナノ微粒子修飾1−ヘキサデカンチオールのLDI質量分析結果を示すマススペクトル図である。
【図10】平均粒径60nmの金ナノ微粒子修飾1−オクタデカンチオールのLDI質量分析結果を示すマススペクトル図である。
【図11】平均粒径60nmの金ナノ微粒子修飾11−メルカプト−1−ウンデカノールのLDI質量分析結果を示すマススペクトル図である。
【発明を実施するための態様】
【0021】
本発明は、上記するように、自己組織化有機分子単分子層を表面に有する金属ナノ微粒子が分散配置された基板にレーザー光を照射して、有機分子を金化合物としてイオン化し、質量分析することを特徴とするレーザー脱離イオン化質量分析法を用いる金属ナノ微粒子表面結合分子の解析方法に関する。以下、本発明の解析方法を、まずその上に金属ナノ微粒子が分散配置された基板およびその形成方法から説明する。
【0022】
(金属ナノ微粒子を分散配置する基板)
本発明においては、金属ナノ微粒子を分散配置した基板が作製され、この基板上に配置された金属ナノ微粒子表面に、自己組織化単分子膜が形成される。まず、下地の基材としては、金属ナノ微粒子をその上に分散配置することができ、レーザー脱離イオン化質量分析法の際に試料のイオン化を阻害しないものであればいずれのものが用いられてもよい。好ましい下地の基材としては、例えば平滑なシリコン基板が挙げられる。大きさは、任意でよいが、市販の飛行時間型質量分析装置を利用することから、この試料台に取り付けられる程度の大きさ、例えば5mm×5mm×0.5mm程度のものが挙げられる。
【0023】
金属ナノ微粒子の粒径は、特に限定されるものではないが、本発明においてはレーザー離脱イオン化質量分析法(LDI−MS)により解析が行われることから、レーザー照射により表面プラズモンを励起する粒径であることが好ましく、金属によってその好ましい粒径は異なるものの、一般に粒径が数nm以上、例えば3nm〜300nm程度のものが好ましい。金属ナノ微粒子は単一粒径であるものが好ましいが、これは、粒径が異なると表面プラズモン励起エネルギーに差が出ることによる分析精度の問題、後述するように、金属ナノ微粒子は、基板上に2次元最密充填することが好ましいことによる。金ナノ微粒子の場合を例示すると、例えば、2次元最密充填する場合、粒径が20nm以上であるものが好ましい。
【0024】
また、金属ナノ微粒子を構成する金属としては、従来自己組織化単分子膜(SAM)形成の基板あるいは金属ナノ微粒子の基材として用いられていたもので、微粒子とすることのできるものであればいずれのものも用いることができる。このようなSAM形成の基材として用いられている金属としては、Au、Ag、Cu、Pd、AuAg、Pt、Co、Ir、Ru、Si、AuAg、AuCu、FePt、GaAs、CdSe、CdTeなど広範な材料が知られており、このような金属からナノ粒子を形成することのできるものが使用される。そして、上記するように、本発明においてはLDI−MS法により解析が行われることから、レーザー照射により表面プラズモン励起が起こる金属が好ましいことをも勘案すると、Au、Ag、Cu、Ptなどが好ましい金属として挙げられる。
【0025】
また、金属ナノ微粒子は、図1に示されるように、基板上にランダムに配置されていてもよい。しかし、図1に示されるように、金属ナノ微粒子が存在する場所と存在しない場所があると、共鳴的に高まった場所とそうでない場所が存在するため、質量分析測定において再現性を損なわせることとなる。また、基板としてシリコンなどを用いる場合、シリコンは熱伝導率が低いことから、レーザー照射により発生した熱が逃げにくく、これにより過剰なエネルギー供給となってしまう恐れもある。
【0026】
このようなことから、金属ナノ微粒子は、図2、図3に模式的に示されるように、基板上に2次元最密充填されたものが好ましい。図2は60nm金ナノ微粒子が2次元最密充填された状態を示す平面図であり、図3はその断面図である。最密充填されていると、図2に示すように、レーザー光で基板上のいずれの場所が照射された場合にも同じ結果が得られ、分析再現性が高くなるし、Au、Ag、Cu、Ptなどは熱伝導率が高いことから、発生した熱を速やかに隣接する他の粒子を通して逃がすことが可能となり、過剰の熱による弊害、例えば、測定分子の解裂、マススペクトル分解能の低下を防止することができる。
【0027】
金属ナノ微粒子の2次元最密充填基板作製法としては、公知方法のいずれの方法が用いられてもよい。60nmの金ナノ微粒子による2次元最密充填基板作製法の一例を挙げると、60nm金ナノ微粒子水溶液(BBI社製、2.6×1010個/ml)をサンプル管等の容器に入れ、水と相分離する有機溶媒(1)を加える。次に、水及び該有機溶媒のいずれにも混和する有機溶媒(2)を加える。その後、静置させると、水溶液と有機溶媒に相分離し、その界面に金ナノ微粒子により形成された薄膜が生成する。なお、使用する有機溶媒の組み合わせ例としては、有機溶媒(1)にシクロヘキサン、有機溶媒(2)にメタノールという組み合わせが望ましい。
【0028】
この状態で、シリコン基板を管底に静かに沈め、上記水相及び有機相を静かに抜き取ることで、金ナノ微粒子薄膜がシリコン基板上に移し取られ、最密充填基板が作製される。図4に、この方法で作製された基板の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。
【0029】
上記例では、金属として60nmの金ナノ微粒子による場合を示したが、表面プラズモン励起を誘起し得るどの粒子径の金属ナノ微粒子でも作製することが可能である。例えば、実施例に20nmおよび100nmの金ナノ微粒子を最密充填した基板が挙げられているが、これら粒径の金ナノ微粒子の場合も上記と同様の方法で最密充填基板を作製することができた。また金以外の例えば銀、銅、白金などでも、同様の方法で最密充填基板を作製することができる。
【0030】
(測定試料の作製)
一方、前記金属ナノ微粒子表面には、測定試料である有機分子の自己組織化膜が形成される。試料膜である、この自己組織化膜に用いられる有機分子としては、金属ナノ微粒子に化学的に結合し、有機単分子膜を形成する(金属ナノ微粒子を修飾する)ものであればいずれのものでもよい。このような化合物の例は、例えば上記非特許文献1にも記載されているように、アルコール類、アミン類、カルボン酸類、チオールなどの硫黄含有化合物、リン含有化合物、アジド基、エチレン基、アセチレン基などの不飽和基含有化合物、ケイ素含有化合物など多数のものが知られている。チオールなどの硫黄含有化合物としては、チオール基、アセチル保護チオール基、あるいはジスルフィド結合を有する化合物が代表的なものとして挙げられる。「分子−金属」の組み合わせについてみると、例えば、チオール(SH)基を持つものであれば、金属としてAu、Ag、Cu、Pd、AuAg、Pt、Ir、Ru、AuAg、AuCu、FePt、GaAsとの組み合わせが挙げられる。
【0031】
チオール基を持つ化合物としては、n−アルカンチオール類(例えば炭素数が4以上のn−アルカンチオール類)、芳香族チオール類などが挙げられる。これらのチオール化合物は置換基によって置換されていてもよい。置換基としては、アルキル基、置換されていてもよいフェニル基、水酸基、ニトロ基、アルキルカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルオキシカルボニル基など任意の置換基であってよい。例えば、水酸基で置換されたアルカンチオール類を例示すると、例えば、HS(CH2)11OH、HS(CH2)21OHなど末端炭素原子に水酸基が置換したものが代表的なものとして挙げられる。また、芳香族チオール類としては、下記に例示するようなものが代表的なものとして挙げられる。
【0032】
【化1】
【0033】
測定試料の作製は、具体的には、次のように行われる。金属ナノ微粒子を担持した基板の金属ナノ微粒子表面に修飾する分子を溶媒に適当な濃度で溶解する。次いで、金属ナノ微粒子を担持する基板をその溶液中に一定時間浸漬させた後、基板を取り出し、上記の溶媒で洗浄して、金ナノ微粒子に結合していない分子を洗い流す。こうして作製された表面修飾金属ナノ微粒子担持基板を乾燥し、測定試料が完成する。
【0034】
上記の試料作製法において、基板を浸漬させる溶液中の表面修飾分子の濃度は特に限定されるものではないが、低濃度であることが好ましく、例えば、通常数mmol/リットル程度とされる。浸漬時間は、使用される溶液の修飾分子濃度と関係し、濃度が高ければ浸漬時間は短くてよく、一方濃度が低ければ浸漬時間は長くする必要がある。このように浸漬時間は溶液濃度等種々の条件により変動することから一義的に定められるものではないが、通常12時間〜2日程度とされる。また、浸漬中の温度は適宜の温度でよいが、25℃以上であることが浸漬時間の短縮の観点から好ましい。溶媒も修飾分子を溶解できるものであればいずれのものであってもよい。例えば、修飾分子としてアルカンチオールが用いられる場合には、エタノール,メタノール,トルエン、テトラヒドロフラン、ヂメチルホルムアミド、アセトニトリル、シクロオクタン等が好ましいものとして挙げられ、コスト、取り扱いの点などから、エタノールが特に好ましい。
【0035】
(解析)
上記で作製された分子修飾金属ナノ微粒子担持基板は、レーザー脱離イオン化法を用いる飛行時間型質量分析装置(LDI−TOF−MS)を用いて、修飾分子の質量分析が行われる。より具体的には、該試料は、例えば図5に示されるような測定装置(TOF−MS)の試料台にセットされ、マススペクトルが測定される。励起光は、Nd/YAGレーザーおよびN2レーザーであり、測定装置の左下から斜めに照射され、プリズムで反射され、中央部の試料台を照射する。その後、試料台から反射された光をプリズムを通し外へ導く。金属ナノ微粒子の励起により、図6に模式的に示すように、修飾分子は金とともにイオン化される。イオン化した試料をパルス状に加速し、検出器に到達するまでの時間差が線形型飛行時間型質量分析計により測定される。これにより質量の測定がなされる。
【0036】
励起光は、金属の表面プラズモン励起が起こる波長近傍の波長が好ましく用いられる。質量分析の際には、例えば、Nd/YAGレーザーによる266nm、355nm、532nm、1064nm、N2レーザーによる337nmなどが適宜選択される。金ナノ微粒子に対しては、金ナノ微粒子の吸収波長と金ナノ微粒子が基板上に2次元最密充填されていることを考慮すると、Nd/YAGレーザーの532nmや1064nmが好ましい。Nd/YAGレーザーの266nm、355nmやN2レーザーの337nmなどでも上記のレーザー波長よりレーザーフルエンスを高く設定すれば、測定を行うことはできる。同一レーザーフルエンスで266nm、532nmおよび1064nmで測定した場合、532nmおよび1064nmではピークが検出され、266nmでは検出されない場合もある。測定条件は、従来知られたレーザー脱離イオン化法を用いる飛行時間型質量分析装置の測定条件の中から最適の条件を選択して行えばよい。また、レーザー強度(パワー)は弱いとイオンの離脱がないか弱く、強すぎると分子の分解が起こり、分析を行うことが難しい。レーザーパワー(レーザーフルエンス)は、投入レーザーパワーやレンズなどによる集光条件(照射面積のコントロール)によって変わることから、特に限定されるものではないが、本発明の実施例の金ナノ微粒子粒径、測定試料、測定装置などの場合においては、レンズを用いて焦点付近に集光する条件で、レーザーパワーを3.3μJ、より好ましくは7.5μJとすることにより、良好な結果が得られた。なお、レーザーパワーは、装置の検出系・光学系にも依存する。
【実施例】
【0037】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。
【0038】
実施例1
(20nm金ナノ微粒子最密充填基板の作製)
平均粒径20nmの金ナノ微粒子水溶液(BBI社製、2.6×1010個/ml)1mlを口径15mm、高さ45mmのサンプル管に入れ、シクロヘキサン1mlを加えた。次に、メタノール2mlを加え、静置させると、水溶液と有機溶媒に相分離し、その界面に金ナノ微粒子により形成された薄膜が生成した。そこに、5mm×5mm×0.5mmのシリコン基板を入れ、管底に静かに沈め、上記水相及び有機相を管底から静かに抜き取った。これにより、図4と同様の最密充填基板が作製された。
【0039】
(測定試料の作製)
1−ヘキサデカンチオール(C16H33SH)32μlをエタノール100mlに溶解して1mmol/lエタノール溶液を作製した。この溶液に20nm金ナノ微粒子が表面に配列されたシリコン基板を浸漬し、12時間後に取り出し、エタノールで表面を十分に洗浄して余分なチオール分子を除去して、試料とした。
【0040】
(質量分析)
上記で作製した試料を飛行時間型質量分析計の試料台にセットし、次の条件で測定を行った。結果(マススペクトル)を図7に示す。
【0041】
<測定条件>
レーザー:Nd/YAG 532nm/4Hz
加速電圧(二段加速型):1段目;4.5kV、2段目;3.8kV
遅延時間:1.0μs
加速時間:3.0μs
その他の条件:
検出器:MCP
MCP電圧:1.90kV
飛行距離:450mm
真空度:1×10-4Pa order
【0042】
レーザーパワーを7.5、3.3、1.0μJとして測定したところ、図7に示されるように、レーザーパワー7.5μJにおいて、m/z712に[Au(S−R)2]-、1166に[Au2(S−R)3]-、1621に[Au3(S−R)4]-の明確なピークが得られた(式中、RはC16H33−を示す。)。このことから、チオールは、あまり解離することなく、チオールの金化合物としてイオン化され、高強度で検出されることが明らかとなった。
【0043】
実施例2
金ナノ微粒子の粒径を60nmとすることを除き、実施例1と同様にしてヘキサデカンチオールで修飾された金ナノ微粒子の飛行時間型質量分析計による質量分析を行った。結果を図8に示す。
【0044】
図8のマススペクトル図から、金ナノ微粒子の粒径が60nmである場合も、金ナノ微粒子の粒径が20nmである場合と同様に、レーザーパワー7.5μJにおいて、m/z480、712、1166、1621に鋭く高いピークを示した。そして、金ナノ微粒子粒径60nmの場合、これらのピークの高さは、粒径20nmの場合と比べより高くなった。
【0045】
実施例3
金ナノ微粒子の粒径を100nmとすることを除き、実施例1と同様にしてヘキサデカンチオールで修飾された金ナノ微粒子の飛行時間型質量分析を行った。結果を図9に示す。
【0046】
図9から、金ナノ微粒子の粒径が100nmである場合も、金ナノ微粒子の粒径が20nmである場合と同様に、レーザーパワーを7.5μJにおいて、m/z480、712、1166、1621に明確なピークを示した。
【0047】
実施例4
アルカンチオールとして1−オクタデカンチオールを用いることを除き実施例2と同様にして飛行時間型質量分析計による試料の質量分析を行った。結果を図10に示す。図10から明らかなように、m/z768に[Au(S−R)2]-、1251に[Au2(S−R)3]-、1733に[Au3(S−R)4]-の明確なピークが出現した(RはC18H37−を示す。)。
なお、比較のため、図10中に実施例2の結果を記載した。
【0048】
実施例5
アルカンチオールとして1−ドデカンチオールを用いることを除き実施例2と同様にして飛行時間型質量分析計による試料の質量分析を行った。m/z600に[Au(S−R)2]-、998に[Au2(S−R)3]-、1396に[Au3(S−R)4]-の鋭いピークが出現した。
【0049】
実施例6
レーザー発振器としてN2レーザーを用い、レーザー波長を337nmとすることを除き実施例2と同様にして飛行時間型質量分析計による試料の質量分析を行った。図8と同様の結果が得られた。
【0050】
実施例7
アルカンチオールとして1−ドデカンチオールを用いることを除き実施例6と同様にして飛行時間型質量分析計による試料の質量分析を行った。実施例5と同様の結果が得られた。
【0051】
実施例8
レーザー波長を266nmとすることを除き実施例2と同様にして飛行時間型質量分析計による試料の質量分析を行った。図8と同様の結果が得られた。
【0052】
実施例9
レーザー波長を266nmとすることを除き実施例5と同様にして飛行時間型質量分析計による試料の質量分析を行った。実施例5と同様の結果が得られた。
【0053】
実施例10
レーザー波長を1064nmとすることを除き実施例2と同様にして飛行時間型質量分析計による試料の質量分析を行った。図8と同様の結果が得られた。
【0054】
実施例11
レーザー波長を1064nmとすることを除き実施例5と同様にして飛行時間型質量分析計による試料の質量分析を行った。実施例5と同様の結果が得られた。
【0055】
実施例12
アルカンチオールとして11−メルカプト−1−ウンデカノール(HS(CH2)11OH)を用いることを除き実施例2と同様にして飛行時間型質量分析計による試料の質量分析を行った(レーザーパワーは10mJ/cm2)。結果を図11に示す。図11から明らかなように、m/z604に[Au(S−R)2]-、1004に[Au2(S−R)3]-、1404に[Au3(S−R)4]-の明確なピークが出現した(RはHO−C11H22−を示す。)。このことから、置換アルカンチオールも、あまり解離することなく、チオールの金化合物としてイオン化され、高強度で検出されることが明らかになった。
【0056】
上記各実施例から明らかなように、本発明の解析方法により、自己組織化有機分子単分子層を構成する有機分子の質量分析を簡単かつ正確に行うことができるようになり、従来行うことのできなかった金属ナノ微粒子表面に結合した有機分子の解析が可能となった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己組織化有機分子単分子層を表面に有する金属ナノ微粒子が分散配置された基板にレーザー光を照射することにより有機分子を金化合物としてイオン化し、質量分析することを特徴とするレーザー脱離イオン化質量分析法を用いる金属ナノ微粒子表面結合分子の解析方法。
【請求項2】
上記金属が金であることを特徴とする請求項1に記載の金属ナノ微粒子表面結合分子の解析方法。
【請求項3】
金属ナノ微粒子の粒径が3nm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の金属ナノ微粒子表面結合分子の解析方法。
【請求項4】
上記金属ナノ微粒子の配置が、ランダム分散配置または2次元最密充填配置であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の金属ナノ微粒子表面結合分子の解析方法。
【請求項5】
上記有機分子が、チオール基、アセチル保護チオール基、あるいはジスルフィド結合等の金属表面と結合可能な置換基を有する化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の金属ナノ微粒子表面結合分子の解析方法。
【請求項6】
上記質量分析が、飛行時間型質量分析法により行われることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の金属ナノ微粒子表面結合分子の解析方法。
【請求項1】
自己組織化有機分子単分子層を表面に有する金属ナノ微粒子が分散配置された基板にレーザー光を照射することにより有機分子を金化合物としてイオン化し、質量分析することを特徴とするレーザー脱離イオン化質量分析法を用いる金属ナノ微粒子表面結合分子の解析方法。
【請求項2】
上記金属が金であることを特徴とする請求項1に記載の金属ナノ微粒子表面結合分子の解析方法。
【請求項3】
金属ナノ微粒子の粒径が3nm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の金属ナノ微粒子表面結合分子の解析方法。
【請求項4】
上記金属ナノ微粒子の配置が、ランダム分散配置または2次元最密充填配置であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の金属ナノ微粒子表面結合分子の解析方法。
【請求項5】
上記有機分子が、チオール基、アセチル保護チオール基、あるいはジスルフィド結合等の金属表面と結合可能な置換基を有する化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の金属ナノ微粒子表面結合分子の解析方法。
【請求項6】
上記質量分析が、飛行時間型質量分析法により行われることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の金属ナノ微粒子表面結合分子の解析方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図4】
【図2】
【図3】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図4】
【公開番号】特開2011−58823(P2011−58823A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−205617(P2009−205617)
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【出願人】(305027401)公立大学法人首都大学東京 (385)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【出願人】(305027401)公立大学法人首都大学東京 (385)
【Fターム(参考)】
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