説明

金属ナノ材料組成の抗ウィルス使用法

本発明は、一般的には抗ウィルス応用分野における金属からなる新規なナノ材料の使用法に関する。そのようなナノ材料は、たとえば、高電力パルス化プラズマ・プロセスを使用して作製することができ、プラズマ・プロセスは、非凝集ナノ材料を形成するとき、前駆物質(すなわちアセチレンまたはメタンなどの気体前駆物質)と共に金属について任意選択で実施することができる。本発明の実施形態では、金属はナノ銀である。任意選択で、ナノ材料はまた、カルビンの形態にあることを含めて炭素を備えることも可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、米国特許出願第60/633671号(2004年12月6日出願)の以前の出願日の利益を主張し、この出願は、「Anti−Viral Uses of Carbon and Metal Nanomaterial Compositions」という名称であり、Miguel Jose Yacaman、Kurt A.Schroder、Schroder、Karl Mathew Martin、およびDarrin L Willauerが発明者である。この出願は、本発明の譲渡人に譲渡されている。
【0002】
本出願は、以下の特許出願にも関する。
【0003】
Kurt Schroder およびKarl Matthew Martinが発明者であり、(「PCT05/027711出願」)、米国特許出願第60/598784号(2005年8月4日出願)および第60/620181号(2004年10月19日出願)の以前の出願日の利益を主張する、「Carbon And Metal Nanomaterial Composition And Synthesis」という名称の2005年8月4日に出願されたPCT特許出願第PCT/US2005/027711号。この2つの仮特許出願は、PCT05/027711出願と同じ名称および名前の発明者を有する。
【0004】
「Nanopowder Synthesis Using Pulsed Arc Discharge and Applied Magnetic Field」という名称で、Kurt SchroderおよびDoug Jacksonが発明者である、2003年9月24日に出願された米国特許出願第10/669858号(「‘858特許出願」)。
【0005】
「Radial Pulsed Arc Discharge Gun For Synthesizing Nanopowders」という名称で、Kurt SchroderおよびDoug Jacksonが発明者である、2004年8月17日に出願された米国特許第6777639号。
【0006】
上記で特定された出願および特許のそれぞれは、参照によって本明細書に組み込まれている。
【0007】
本発明は、一般的には、抗ウィルス応用分野における金属からなる新規なナノ材料の使用法に関する。そのようなナノ材料は、たとえば、高電力パルス化プラズマ・プロセスを使用して作製することができ、このプラズマ・プロセスは、非凝集ナノ材料を形成するとき、前駆物質(すなわち、アセチレンまたはメタンなどの気体前駆物質)と共に金属について任意選択で実施することができる。本発明の実施形態では、金属はナノ銀である。任意選択で、ナノ材料はまた、カルビン(carbyne)の形態にあることを含めて、炭素を備えることも可能である。
【背景技術】
【0008】
抗菌剤の分野では、多くの化合物が使用される。従来、抗生物質が、細菌の呼吸機能を破壊し、タンパク質合成または細胞壁形成などの代謝機能を破壊し、あるいは細菌のDNAまたはRNAの形成を遮断することによって、細菌を殺傷するために使用される。これらのすべての場合において、抗生物質は、生きている細胞の機能のいくつかを破壊または遮断することによって作用する。抗細菌剤として長く使用されてきた1つの材料は、銀である。銀は、水を精製するために昔のローマ人によって使用され、現在は広範囲の抗生物質として医療の分野で使用されている。銀が作用する機構は、徹底的に研究されてきた。一般的な見解は、銀は、細胞壁の生成を破壊するために銀イオンを放出することによって作用し、DNAの生成を阻害するというものである。Q.L.Feng、J.Wu、G.Q.Chen、F.Z.Cui、T.N.Kim、J.O.Kim、「A mechanistic study of the antibacterial effect of silver ions on Escherichia coli and Staphylococcus aureus」、Journal of Biomedical Materials Research、Volume52、Issue4、662〜668ページ、2000年10月3日による刊行物は、これらの機構の詳細の多くを議論している。
【0009】
Westaim Technologies,Inc.も、米国特許第5837275号、第5454886号、および第5958440号において議論されたようなナノスケールの構造を含む銀を使用することによって、銀を抗細菌剤として使用した。この場合、大量のミクロン銀に対する銀の高い表面積対容積比は、より大きなサイズの銀より良好なイオン放出を与えるようである。さらに、Westaim Technologiesは、銀のイオン放出を促進するために、ナノ構造において欠陥を創出することを特に議論した。この銀抗細菌剤は、外傷用包帯から医療デバイス上のコーティングまで、多くの様々な応用分野において使用される。
【0010】
最近、SondiおよびSalopek−Sondiは、銀のナノ粒子が細菌を殺傷する異なる機構をも有する可能性があることを示唆する論文「Silver Nanoparticles as antimicrobial agent:a case study on E.coli as a model for Gram−negative bacteria」、Journal of Colloid and Interface Science 275(2004)、177〜182ページを発表した。彼らの研究において、より小さなナノ粒子が細菌との直接相互作用を有することが判明したが、殺傷の正確な機構は未確認であった。彼らの試験において、銀粒子は、細胞壁を貫通し、そしてそのことが最終的には細菌を殺傷することを示した。
【0011】
これらのすべての抗菌剤において、殺傷が行われる機構は、細胞の生物活性の破壊であった。この理由で、抗菌剤はウィルスに対して作用しない。ウィルスは、生きている有機体ではなく、タンパク質の薄いコートに包まれた核酸(DNAまたはRNA)の部分である。ウィルスは、細菌または細胞などの他の微生物に付着し、それにより、ホスト有機体が破裂して、新しいウィルスを放出するまで、ホスト有機体がそれ自体の内部でさらにウィルスを再生し始めるようにホスト有機体を変換する一連の事象が生じる。
【特許文献1】米国特許第6777639号明細書
【特許文献2】米国特許第5837275号明細書
【特許文献3】米国特許第5454886号明細書
【特許文献4】米国特許第5958440号明細書
【非特許文献1】Q.L.Feng、J.Wu、G.Q.Chen、F.Z.Cui、T.N.Kim、J.O.Kim、「A mechanistic study of the antibacterial effect of silver ions on Escherichia coli and Staphylococcus aureus」、Journal of Biomedical Materials Research、Volume52、Issue4、662〜668ページ、2000年10月3日
【非特許文献2】SondiおよびSalopek−Sondi「Silver Nanoparticles as antimicrobial agent:a case study on E.coli as a model for Gram−negative bacteria」、Journal of Colloid and Interface Science 275(2004)、177〜182ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
免疫システムは、ウィルスが宿主細胞に結合することができないように、ウィルスに結合する抗体を生成することによってウィルスに反応する。したがって、各ウィルスについて、特定の抗体が存在しなければならない。これは、ウィルスにおけるDNA構造の多数の順列のために、抗ウィルス剤の創出を非常に困難にする。さらに、免疫システムは、ウィルスを殺傷するためにコア本体の温度を上昇させることによって、しばしばウィルスに応答する。したがって、加熱せずにウィルスを殺傷することができる広範囲の殺傷を有する抗ウィルス剤が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、一般的には、抗ウィルス剤として使用される金属からなるナノ材料の使用法に関する。たとえば、PCT05/027711出願および‘858特許出願に記載された高電力パルス・プラズマ・プロセスは、ナノ金属を備える材料を作製する(本発明では、ナノは、約1ミクロンより小さい寸法を有する材料を指す。一般的には、寸法は、約500nm未満であり、およびさらに約100μm未満である)。本発明の実施形態では、金属は、ナノ銀とすることができる。さらに、ナノ材料は、カルビンの形態にあることを含めて炭素をさらに備えることが可能である。そのような炭素は、ナノ材料を形成するとき、高電力パルス化プラズマ・プロセス中に前駆物質(すなわち、アセチレンまたはメタンなどの気体前駆物質)を使用することによって、ナノ材料の内部に含むことが可能である。本発明の実施形態において使用されるナノ材料は、ナノ材料を抗ウィルス応用分野に使用することを可能にする属性および特性の組合せを有する。
【0014】
本発明の一実施形態は、ナノサイズの銀/炭素複合物を抗ウィルス剤として使用する。いくつかの実施形態では、組成は、約25nm未満の平均サイズを有するナノ粉末の形態にあり、他の実施形態では、平均は約8nmより小さい。
【0015】
すべての現在の文献は、銀の抗細菌特性が細菌の生物活性に関連することを教示するので、文献は、銀が有効な抗ウィルス剤ではないと示唆する。それにもかかわらず、このナノサイズの銀/炭素複合物は、抗ウィルス剤としてきわめて有効であることが示されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
ナノ金属材料は、固有の特性を利用するために使用することができる。そのようなナノ材料には、PCT05/027711出願および‘858特許出願に記載されているプロセスによって作製されたものがある。本発明において使用することができるナノ金属の例には、以下がある。
【0017】
(a)PCT05/027711出願の実施例1に記載されたプロセスを使用して、炭化水素気体を有さずに作製された77nm銀組成。図1はこの作製された材料を示す。
【0018】
(b)PCT05/027711出願の実施例1に記載されたプロセスを使用して、44−ppmの濃度のアセチレンを追加することによって作製された45nm銀/炭素組成。図2は、この作製された材料を示す。
【0019】
(c)PCT05/027711出願の実施例1に記載されたプロセスを使用して、8800−ppmの濃度のメタンを使用することによって作製された30nm銀/炭素組成。図3は、この作製された材料を示す。
【0020】
(d)PCT05/027711出願の実施例1に記載されたプロセスを使用して、440−ppmの濃度のアセチレンを追加することによって作製された28nm銀/炭素組成。図4は、この作製された材料を示す。
【0021】
(e)PCT05/027711出願の実施例1に記載されたプロセスを使用して、400−ppmの濃度のアセチレンを追加することによって作製された25nm銀/炭素組成。この組成は、22m2/g(BET)の比表面積を有し、97重量%の銀および3重量%の炭素である。図5A〜Bは、この作製された材料を示す。
【0022】
(f)PCT05/027711出願の実施例1に記載されたプロセスを使用して、4,400−ppmの濃度のアセチレンを追加することによって作製された22nm銀/炭素組成。図6は、この作製された材料を示す。
【0023】
(g)PCT05/027711出願の実施例1に記載されたプロセスを使用して、44,000−ppmの濃度のアセチレンを追加することによって作製された10nm銀/炭素組成。このプロセスは、70重量%の銀および30重量%の炭素である60m2/gの比表面積を有する材料をもたらした。この材料の炭素構造は、図7A〜Cに示されるような金属ナノ粒子の湾曲表面上に付着した炭素の「層」のように見える異なるモルフォロジ(morphorogy)を有する。図7Aの暗い要素は、分離した銀粒子を示し、一方、銀粒子の高い結晶性は図7Cに示され、格子平面の存在によって明らかである。ほとんどの部分について、銀粒子は離散的であり、炭素構造の内部に散在する。図8も、この作製された材料を示す。
【0024】
(h)PCT05/027711出願の実施例1に記載されたプロセスを使用して、44,000−ppmの濃度のアセチレンを追加することによって作製された9nm銀/炭素組成。図9は、この作製された材料を示す。
【0025】
(i)‘858特許出願に記載されたプロセスを使用して作製された銀/炭素組成。図10A〜Fは、これらの作製された材料を示す。
【0026】
(j)PCT05/027711出願の実施例1に記載されたプロセスを使用して、8,800ppmの濃度のメタンを追加することによって作製された銀/炭素組成。図11A〜Cは、この作製された材料を示す。これらの図は、カルビンの存在を示し、点在する銀粒子を有するからみ合った炭素の層を反映する。この組成は、19m2/gの比表面積を有し、98.5/1.5の銀および炭素の質量をそれぞれ有していた。
【0027】
(k)PCT05/027711出願の実施例2に記載されたプロセスを使用して、44,000ppmの濃度のアセチレンを追加することによって作製された銅/炭素組成。図12A〜Dは、この作製された材料を示す。これらの図は、グラファイトおよびフラーレンの炭素の存在を示す。この組成は、44m2/gの比表面積を有し、20重量%の銅および80重量%の炭素の質量含有量を有していた。
【0028】
(l)PCT05/027711出願の実施例3に記載されたプロセスを使用して、4,400ppmの濃度のアセチレンを追加することによって作製された鉄/炭素組成。図13A〜Bは、この作製された材料を示す。この組成は、65m2/gの比表面積を有していた。
【0029】
(m)PCT05/027711出願の実施例4に記載されたプロセスを使用して、アセチレンを追加することによって作製された鉄/銀/炭素組成/合金。図14A〜Bは、この作製された材料を示す。
【0030】
これらおよび他のナノ材料は、Nanotechnologics,Inc.[テキサス州オースチン在]から得ることが可能である。
【0031】
抗ウィルス剤として使用されるナノ材料は、炭素構造内に散在することができる離散金属粒子(通常は銀)を有する。しばしば、ナノ材料内の炭素構造自体は、カルビン構造を含む。そのような銀/炭素複合物のTEM画像は、小さい離散銀粒子上にコーティングが存在しないことを示す。多くのプロセスは、粒子を離散して維持するために、表面活性剤または分散剤などの表面機能を必要とする。その結果、炭素マトリックスの銀粒子は、他の銀より高い反応性の表面を有する。これは、このプロセスで作製された他の金属より銅、鉄、金などに当てはまるようである。これらのナノ材料のこの特性により、この材料は抗ウィルス剤となると考えられる。
抗ウィルスの使用法
新しいナノ金属材料(銀/炭素組成など)の新規な使用法は、それらを抗ウィルス剤として使用することである。たとえば、銀(およびより具体的にはナノ銀が放出する銀イオン)は、抗細菌性の特性を有することが長く知られてきた。文献は、イオンが細菌の代謝機能を阻害し、細菌の最後をもたらすことを示唆する。銀は、ウィルスに対して無効であることが示されているが、その理由は、ウィルスは、銀イオンとの相互作用を可能にする代謝機能を有さないからである。新しい銀/炭素材料は、そのウィルス破壊性の有効性を判定するために試験された。いくつかのウィルスに対する試験が、「Standard Test Method for Efficacy of Antimicrobial Agents Against Viruses in Suspension」という名称のAmerican Society for Test Materials(ASTM)試験方法E1052−96を使用して実施された。試験は、広範囲のウィルス族を代表するウィルスについて実施された。試験は、RNAおよびDNAに基づくウィルス、ならびにエンベロープ・ウィルスおよび非エンベロープ・ウィルスの大きな変異体および小さな変異体を含んでいた。具体的には、試験は、単純疱疹ウィルス−1(HSV−1)、ウシ下痢ウィルス(BVDV;ヒトC型肝炎のサロゲート)、ネコ・カリチウィルス(ノーウォークのサロゲート)、およびアデノウィルスについて実施された。
【0032】
すべての試験は、10nm銀/炭素組成の3つの異なる濃度で脱イオン水における10e6 CFU(コロニー形成単位)で実施された(上記および図7A〜Cおよび8に示された組成(g))。以下の表Aは、異なるウィルスについてのこの試験の結果を反映する(1時間の暴露時間)。
【0033】
【表1】

【0034】
表Aのデータは、銀/炭素組成がウィルスに対して著しい効力を有し、効力が宿主細胞の毒性レベルより低いレベルにおいて生じたことを示す。すなわち、ウィルスを不活性化する濃度において、宿主細胞は影響を受けない。試験の結果は、銀/炭素組成が、ウィルスが宿主細胞を使用して複製する能力を阻害し、本質的にウィルスを終結させたことを示す。
【0035】
これらの試験の結果は、ナノ銀の組成がウィルスを瞬時に殺傷し、1時間に1000μg/mlの濃度の組成がHSV−1を完全に殺傷したことを示す。業界では、抗ウィルス静剤(anti−viral static agents)は、成長を阻害する材料であると考えられている。これらの材料は、通常、少なくともLog0の減少を有する。材料は、少なくともLog2の減少、しばしばLog3の減少が存在する場合、抗ウィルス特性を有すると一般に考えられる。基準に応じて、「完全殺傷」は、少なくともLog4または少なくともLog6の減少の間として定義される。現在の試験は、1時間について実施されたが、当業者なら、これらの試験の時間感度を認識するであろう。しばしば、さらなるウィルス殺傷が、抗ウィルス剤に長い時間暴露することでおこる。
【0036】
追加の試験が、25nm銀/炭素組成を使用してHIViiibウィルス(HIV−1の実験室株)に暴露されたCD4+MT2細胞について実施された(上記および図5A〜Bに示された組成(e))。当初の試験は、正常細胞に対する毒性濃度を決定するために実施され、次いで、細胞毒性レベル未満の材料濃度を使用してウィルスに暴露された細胞について、試験が実施された。新しい材料は、ウィルスの完全な不活性化を示した。異なる濃度の25nm銀/炭素組成に暴露されたHIV−1によるMT−2におけるシンシチウムのパーセンテージは、図15に反映されている。
【0037】
追加の試験が、なぜナノ銀組成が具体的には銀イオンを含む他の銀材料とは異なる振舞いをするのかを特定するために実施された。TEM画像は、主に20面体または10面体(dechedral)のモルフォロジを有する0〜10nmの範囲の粒子がウィルスと相互作用したことを示す。これらの粒子は、そのモルフォロジのためにより反応性である傾向があると考えられる。
【0038】
したがって、せいぜい約25nmの平均サイズを有するようなより小さいナノ金属組成(ナノ銀など)が、一般的には、より大きなナノ金属組成より優れた抗ウィルス有効性を示すようである。また、せいぜい約15nmおよび次いでせいぜい約8nmなど、平均サイズがさらに小さくなるにつれ、有効性は再び、一般に漸進的により良好になるようである。したがって、非凝集ナノ金属組成を形成する能力は(PCT05/027711出願および‘858特許出願に記載されたプロセスによるなど)有利である。
【0039】
試験はまた、ナノ銀組成のイオン放出を監視するためにも実施された。結果は、イオン放出は維持されなかったことを示した。したがって、銀粒子のモルフォロジの反応性により、粒子はウィルスを不活性化することが可能であると考えられた。
【0040】
この理論によって制約されることを意図しないが、本出願人は、ナノ銀の抗ウィルス有効性を可能にし得る他の態様は、銀粒子を囲む炭素構造でもあると考えられるとさらに考慮する。TEM画像およびEELSスペクトルは、いくつかの実施形態では、炭素がケージ化カルビン構造からなると示唆する。分析は、カルビン構造は、銀粒子の周りにケージを形成し、銀粒子を離散して維持することが可能であると示唆する。実験は、粒子が電子ビームと当たるとき、粒子がカルビン構造から放出されることを示す。さらに、炭素構造は、より小さい粒子が容易に放出または除去されることを可能にし、一方、より大きい粒子を優先的に保持することによって、あるタイプのフィルタとして作用することが可能であるようである。これにより、銀ナノ粒子(または他の金属ナノ粒子)が、ケージから有機体の特定の部位に送達される可能性を可能にし得る。この放出効果を図16において見ることができる。
【0041】
図16において、カルビン構造内に含まれていた粒子は、TEM炭素格子に移動している。TEM格子は、画像の左側に位置し、一方、カルビン構造は、画像の中心のより軽量な球状構造にある。
【0042】
これらの結果は、ウィルスをナノ銀組成にさらすことによって、ナノ銀組成を抗ウィルス剤として使用することができることを反映している。銅、銅酸化物、鉄、コバルト、ニッケル、および銀酸化物などの他のナノ金属材料も、有効な抗ウィルス剤であると考えられる。
【0043】
材料を様々な化合物に組み込むことにより、多くの異なる応用分野を創出することができる。1つのそのような産物は、水またはIPAなどの溶液に中程度の添加量(0.0001%〜10%)において材料を分散させるものである。次いで溶液は、表面上のウィルスを無効にする抗ウィルススプレーとして使用することができる。溶液は表面上に噴霧され、液体は蒸発して、任意のウィルスを無効にするようにナノ粒子を表面上に残す。可能な表面には、カウンタトップ、シンク、トイレット、ウッド・デッキ、病院用ベッド・フレーム、床、金属、プラスチック、コンクリート、岩、石工、空気または液体フィルタ媒質、皮膚、および外傷があるが、これに限定されるものではない。材料はまた、眼および呼吸システムのウィルスを不活性化するために、鼻噴霧、点眼、または吸入器溶液として使用するように食塩水などの殺菌および緩衝溶液に取り入れることができる。材料はまた、ウィルスを輸送する、またはウィルスが残存することを可能にする織物およびコーティングなどの製品において使用することもできる。
【0044】
材料を織物、プラスチック、塗料、産業用コーティングなどに取り入れることによって、ナノ銀組成(または他のナノ金属組成)は、ウィルスを無効にするために利用可能である。たとえば、銀は、後に表面上に塗装されるラテックス塗料内に分散させることができる。塗料内の銀は、ウィルスを無効にする。追加の活動を促進することを補助するために、コーティングは、所与の時間にわたって磨耗するように設計されるものとすることが可能である。これにより、粒子を連続的に暴露させ、向上した性能を有する。たとえば、材料は、表面に加えられて時間の経過に共に磨耗するアクリル・ラテックス・ワックスなどのコーティングに取り入れることができる。織物などの多孔性または浸透性の媒体では、ウィルスは、表面に存在せず、製品内部で生き残っている可能性がある。この応用分野では、産物中にくまなく含浸させることにより、製品に浸透するウィルスを無効にする。製品には、ティッシュ、包帯、女性用製品、おむつ、ガーゼ、衣服および生地、洗浄スポンジなどがある。
【0045】
さらに、ナノ金属組成は、抗ウィルス性の効力を提供するために、クリーム、ローション、ペースト、または軟膏に混和することができる。たとえば、粒子は、中程度の添加量(0.0001%〜10%)でワセリンに混和することが可能である。次いで軟膏は、保護障壁を形成することによって、開いた外傷および潰瘍を保護するために適用することができる。
【0046】
ナノ金属組成の他の応用分野は、内科の使用においてである。本発明の一実施形態では、銀は、選択的なウィルス効力を可能にするために、アプタマーなどで、特定のタンパク質または抗体に結合することができる。他の薬学的応用分野は、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アクリル酸)、ポリアクリルアミド、ポリ(エチレン−コ−ビニルアセテート)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(メタクリル酸)、ポリアクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)、ポリ無水物、ポリオルソエステルなど、時間制御医薬品送達システムに材料を組み込むことである。これにより、材料は、身体内の特定の位置に送達されたり、調節およびまたは制御が可能になる。さらに、pH、濃度勾配、温度などの環境の変化に応答するシステムを使用することができる。システムはまた、超音波処理、放射(X線、UVなど)、磁場、温度変化、および電場などの外部刺激に応答することも可能である。これらのシステムにより、ウィルス効力を向上させるように、より優れた材料制御が可能になる。
【0047】
本明細書において言及されたすべての特許および刊行物は、参照によって本明細書に組み込まれている。上述された実施形態のある上述されたある構造、機能、および動作は、本発明を実施するために必要ではなく、単に1つまたは複数の例示的な実施形態を完全にするために説明に含まれていることが理解されるであろう。さらに、上述された参照の特許および刊行物において述べられた特定の構造、機能、および動作は、本発明と関連して実施することができるが、本発明の実施には本質的ではないことも理解されるであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神および範囲から実際に逸脱せずに、具体的に説明されたものとは異なるように実施することが可能であることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】77nm銀組成のTEM画像を示す図である。
【図2】45nm銀/炭素組成のTEM画像を示す図である。
【図3】30nm銀/炭素組成のTEM画像を示す図である。
【図4】28nm銀/炭素組成のTEM画像を示す図である。
【図5A】25nm銀/炭素成のTEM画像を示す図である。
【図5B】25nm銀/炭素成のTEM画像を示す図である。
【図6】22銀/炭素組成のTEM画像を示す図である。
【図7A】10nm銀/炭素組成のTEM画像を示す図である。
【図7B】10nm銀/炭素組成のTEM画像を示す図である。
【図7C】10nm銀/炭素組成のTEM画像を示す図である。
【図8】図7A〜7Cにも示された10nm銀/炭素組成のTEM画像を示す図である。
【図9】9nm銀/炭素組成のTEM画像を示す図である。
【図10A】炭素/銀組成のTEM画像を示す図である。
【図10B】炭素/銀組成のTEM画像を示す図である。
【図10C】炭素/銀組成のTEM画像を示す図である。
【図10D】炭素/銀組成のTEM画像を示す図である。
【図10E】炭素/銀組成のTEM画像を示す図である。
【図10F】炭素/銀組成のTEM画像を示す図である。
【図11A】カルビンの存在を示す銀/炭素組成のTEM画像を示す図である。
【図11B】カルビンの存在を示す銀/炭素組成のTEM画像を示す図である。
【図11C】カルビンの存在を示す銀/炭素組成のTEM画像を示す図である。
【図12A】グラファイトおよびフラーレンの炭素の存在を示す、銅/炭素組成のTEM画像を示す図である。
【図12B】グラファイトおよびフラーレンの炭素の存在を示す、銅/炭素組成のTEM画像を示す図である。
【図12C】グラファイトおよびフラーレンの炭素の存在を示す、銅/炭素組成のTEM画像を示す図である。
【図12D】グラファイトおよびフラーレンの炭素の存在を示す、銅/炭素組成のTEM画像を示す図である。
【図13A】グラファイトおよびフラーレンの炭素の存在を示す、鉄/炭素組成のTEM画像を示す図である。
【図13B】グラファイトおよびフラーレンの炭素の存在を示す、鉄/炭素組成のTEM画像を示す図である。
【図14A】鉄/銀/炭素の組成/合金のTEM画像を示す図である。
【図14B】鉄/銀/炭素の組成/合金のTEM画像を示す図である。
【図15】異なる濃度の25nm銀/炭素組成に暴露されたHIV−1によるMT−2におけるシンシチウムのパーセンテージを反映する棒グラフである。
【図16】電子ビームによって照射された銀/炭素組成のTEM画像を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ほぼ非凝集性のナノ粒子の組成を選択するステップであって、前記ナノ粒子が金属を含んでおり、
(b)前記ナノ粒子を抗ウィルス剤として使用するステップとを含むプロセス。
【請求項2】
前記金属が銀を含む請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記金属が、銀、銅、銅、鉄、コバルト、ニッケル、それらの酸化物、およびそれらの組合せ、ならびにそれらの合金からなる群から選択された金属を含む請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記組成が、第2金属をさらに含む請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項5】
前記組成が、炭素をさらに含む請求項1から3または4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記炭素が、カルビンの形態にある炭素を含む請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記組成が、ナノ粉末の形態にある請求項1から5または6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記ナノ粒子が、高電力パルス化プラズマ・プロセスを使用して形成される請求項1から6または7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記高電力パルス化プラズマ・プロセスが、前駆物質の使用を含み、前記前駆物質が炭素を含む請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記前駆物質が、気体前駆物質である請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記気体前駆物質が、アセチレン、メタン、およびそれらの組合せからなる群から選択される請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記ナノ金属が、せいぜい約25nmの平均サイズを有する請求項1から10または11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記ナノ金属の前記平均サイズが、せいぜい約15nmである請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記ナノ金属の前記平均サイズが、せいぜい約8nmである請求項12に記載のプロセス。
【請求項15】
前記組成が、少なくとも約10μg/mlの濃度において抗ウィルス剤として使用される請求項1から13または14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記濃度が、少なくとも約100μg/mlである請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記濃度が、少なくとも約1000μg/mlである請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記組成が、少なくとも1時間、抗ウィルス剤として使用される請求項1から16または17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記組成が、1時間後に少なくとも約Log2の減少を有する請求項1から16または17に記載のプロセス。
【請求項20】
前記組成が、1時間後に少なくとも約Log3の減少を有する請求項1から16または17に記載のプロセス。
【請求項21】
前記組成が、1時間後に少なくとも約Log4の減少を有する請求項1から16または17に記載のプロセス。
【請求項22】
前記組成が、1時間後に少なくともほぼ完全な殺傷を有する請求項1から16または17に記載のプロセス。
【請求項23】
前記組成が、溶液に分散する請求項1から21または22に記載のプロセス。
【請求項24】
組成が、約0.0001%と10%の間の濃度において前記溶液に添加される請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
前記溶液が、抗ウィルススプレーとして使用される請求項23または24に記載のプロセス。
【請求項26】
前記溶液が、カウンタトップ、シンク、トイレット、ウッド・デッキ、病院用ベッド・フレーム、床、金属、プラスチック、コンクリート、岩、石工、空気または液体フィルタ媒質、皮膚、および外傷からなる群から選択された表面上において使用される請求項23から24または25に記載のプロセス。
【請求項27】
前記溶液が、殺菌および緩衝溶液である請求項23から25または26に記載のプロセス。
【請求項28】
前記溶液が食塩水である請求項27に記載にプロセス。
【請求項29】
前記溶液が、眼球のウィルスを不活性化するために(i)鼻噴霧として、(ii)点眼として、(iii)吸入器溶液として、呼吸システムのウィルスを不活性化するために(iv)呼吸器溶液として、および(v)それらの組合せからなる群から選択された用途において使用される請求項27または28に記載のプロセス。
【請求項30】
前記組成が、織物、プラスチック、塗料、もしくは産業用コーティングの内部において、またはその表面上において使用される請求項1から21または22に記載のプロセス。
【請求項31】
前記組成が、コーティングとして使用される請求項1から21または22に記載のプロセス。
【請求項32】
前記コーティングが、時間と共に磨耗する請求項31に記載のプロセス。
【請求項33】
前記組成が、ティッシュ、包帯、女性用製品、おむつ、ガーゼ、衣服および生地、ならびに洗浄スポンジからなる群から選択された材料において使用される請求項1から21または22に記載のプロセス。
【請求項34】
前記組成が、抗ウィルス効力を提供するように使用可能な製品において使用され、前記製品が、クリーム、ローション、ペースト、軟膏、およびそれらの組合せからなる群から選択される請求項1から21または22に記載のプロセス。
【請求項35】
前記製品が、約0.0001%から約10%の間の量において前記組成を含む請求項34に記載のプロセス。
【請求項36】
前記製品が、開いた外傷に適用される請求項34または35に記載のプロセス。
【請求項37】
前記ナノ粒子が、内科プロセスにおいて抗ウィルス剤として使用される請求項1から21または22に記載のプロセス。
【請求項38】
前記金属が、選択されたタンパク質または抗体に結合される請求項1から21または22に記載のプロセス。
【請求項39】
前記組成を医薬品送達システムに組み込むことをさらに含む請求項1から21または22に記載のプロセス。
【請求項40】
前記医薬品送達システムが、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アクリル酸)、ポリアクリルアミド、ポリ(エチレン−コ−ビニルアセテート)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(メタクリル酸)、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)、ポリ無水物、ポリオルソエステル、およびそれらの組合せからなる群から選択された材料を含む請求項39に記載のプロセス。
【請求項41】
前記医薬品送達システムが、前記ナノ粒子を特定の治療する部位に送達することと、前記ナノ粒子の放出を調節することと、前記ナノ粒子の放出を制御することとの少なくとも1つを備える請求項39または40に記載のプロセス。
【請求項42】
前記医薬品送達システムが、pH、濃度勾配、温度、およびそれらの組合せからなる群から選択された変化に反応する請求項39から40または41に記載のプロセス。
【請求項43】
前記医薬品送達システムが、外部刺激に反応し、前記外部刺激が、超音波処理、放射、磁場、温度変化、および電場からなる群から選択される請求項39から41または42に記載のプロセス。
【請求項44】
前記ナノ粒子が、HSV−1、BVDV、ネコ・カリチウィルス、アデノウィルス、およびそれらの組合せからなる群から選択されたウィルスを処置するために使用される請求項1から42または43に記載のプロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図10E】
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【図10F】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2008−523063(P2008−523063A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−545526(P2007−545526)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【国際出願番号】PCT/US2005/043686
【国際公開番号】WO2006/062826
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(507186388)
【出願人】(507186414)ボード オブ リージェンツ,ユニバーシティ オブ テキサス システム (1)
【Fターム(参考)】