説明

金属パターン形成用積層体、金属パターン形成方法及び有機エレクトロルミネッセンス素子

【課題】有機エレクトロルミネッセンス素子の発光効率と発光寿命を改良する金属パターン形成用積層体とそれを用いた金属パターン形成方法及び該金属パターンを有する有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
【解決手段】光熱変換層3と金属転写層4とを有する金属パターン形成用積層体1に真空下で赤外レーザー8を照射し、該赤外レーザーを照射した領域9の金属転写層を蒸発させて、非接触の被転写体5の上に金属パターンを形成することを特徴とする金属パターン10の形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種ディスプレイ、表示装置および照明等に適用される金属パターンの形成に用いる金属パターン形成用積層体とそれを用いた金属パターン形成方法及び該金属パターンを有する有機エレクトロルミネッセンス素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種ディスプレイのバックライト、看板や非常灯等の表示板、照明等の光源として用いられる面発光体は、高輝度、高発光効率、薄型、軽量といった多くの優れた特徴を有することから、近年注目されている。このような面発光体の中でも、有機材料を用いて正負の各電極からの電気エネルギーによって発光させる有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子ともいう)は、数V〜数十V程度の低電圧で発光が可能であり、薄膜型の完全固体素子であり、省スペースである等の理由から、特に近年注目されている。
【0003】
有機EL素子の高効率化には光取り出し効率の向上が必須であるが、有機EL素子は発光層と金属電極との距離が数十nmオーダーと近いため、表面プラズモンモード光の導波損失が大きく、光取り出し効率が上がらないという課題を有している。表面プラズモンモード光の導波損失を少なくする手段としては、トップエミッション型の構成を取ることが挙げられる。
【0004】
また、他の課題として、有機EL素子を、面積が広い照明等の用途で使用する場合、電圧降下に起因した輝度ムラが発生することが挙げられる。輝度ムラを抑制する手段としては、透明導電性膜に抵抗値が低い補助電極を付与する手段が挙げられるが、従来の手段では前述のトップエミッション型有機EL素子の補助電極の形成方法としては適さないことが判明した。例えば、特許文献1には、補助電極となる金属材料を全面に成膜し、続いてフォトリソグラフィー工程により、補助電極となる層をパターンエッチングして補助電極を形成する方法が開示されているが、該方法をトップエミッション型有機EL素子に適用した場合、素子寿命の著しい低下を引き起こすことが判明した。これは、フォトリソグラフィー工程において、有機層がエッチング液に浸漬されることに起因する。また、特許文献2では、スクリーン印刷法で補助電極を形成する方法が開示されているが、スクリーン印刷法では、インク溶媒による素子寿命の低下に加え、補助電極の抵抗値が十分に下がらないため、発光効率の改良度が不十分であるという課題があることが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−134647号公報
【特許文献2】WO2005/041217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光効率と発光寿命を改良する金属パターン形成用積層体とそれを用いた金属パターン形成方法及び該金属パターンを有する有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0008】
1.透過性支持基板上に、少なくとも光熱変換層と金属転写層とを有していることを特徴とする金属パターン形成用積層体。
【0009】
2.前記1に記載の光熱変換層と金属転写層とを有する金属パターン形成用積層体に真空下で赤外レーザーを照射し、該赤外レーザーを照射した領域の金属転写層を蒸発させて、非接触の被転写体の上に金属パターンを形成することを特徴とする金属パターン形成方法。
【0010】
3.前記赤外レーザーを照射する領域における前記金属パターン形成用積層体と前記被転写体との距離が、10nm以上、1000nm以下であることを特徴とする前記2に記載の金属パターン形成方法。
【0011】
4.前記光熱変換層を形成する材料Aの熱伝導率が、前記金属転写層を形成する材料Bの熱伝導率の50分の1以上、2分の1以下であることを特徴とする前記2または3に記載の金属パターン形成方法。
【0012】
5.前記光熱変換層を形成する材料Aの融点が、前記金属転写層を形成する材料Bの沸点よりも100度以上高いことを特徴とする前記2から4のいずれか1項に記載の金属パターン形成方法。
【0013】
6.前記赤外レーザーを照射するときの真空度が、10−5Pa以上、10−3Pa以下であることを特徴とする前記2から5のいずれか1項に記載の金属パターン形成方法。
【0014】
7.前記2から6のいずれか1項に記載の金属パターン形成方法で形成された補助電極を有していることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0015】
8.前記補助電極が、光取り出し側の透明導電性層上に形成されていることを特徴とする前記7に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光効率と発光寿命を改良する金属パターン形成用積層体とそれを用いた金属パターン形成方法及び該金属パターンを有する有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の金属パターン形成用積層体の構成の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の金属パターン形成方法の一例を示す工程フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0019】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、光熱変換層と金属転写層とを有する金属パターン形成用積層体に対し、真空下で赤外レーザーを照射し、該赤外レーザーを照射した領域の金属転写層を蒸発させて、被転写体上に金属パターンを形成することを特徴とする金属パターン形成方法により、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光効率と発光寿命を改良する金属パターン形成用積層体を用いた金属パターン形成方法を実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0020】
以下、本発明の金属パターン形成用積層体、それを用いた金属パターン形成方法について説明する。
【0021】
《金属パターン形成用積層体》
本発明の金属パターン形成用積層体の構成の一例を、図1に示す。
【0022】
図1において、本発明の金属パターン形成用積層体1は、透過性支持基板2上に、少なくとも光熱変換層3と金属転写層4を有していることを特徴とする。光熱変換層3と金属転写層4は隣接した構成をとり、金属転写層4は最外層であることが好ましい。
【0023】
(透過性支持基板)
本発明に適用可能な透過性支持基板としては、赤外レーザーを透過する基板であれば特に限定はなく、例えば、ガラス(特には、無アルカリガラス)、石英、透明樹脂フィルムを挙げることができる。
【0024】
ガラス基材としては、例えば、表面に官能基(例えば、水酸基、アミノ基、チオール基など)を有する無機ガラスや有機ガラス、ソーダライムシリケートガラス基材などのアルカリ含有ガラス基材や、ホウケイ酸ガラス基材などの無アルカリガラス基材等を挙げることができる。
【0025】
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート(TAC)、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類またはそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリルあるいはポリアリレート類、アートン(商品名JSR社製)あるいはアペル(商品名三井化学社製)といったシクロオレフィン系樹脂等を挙げられる。
【0026】
(光熱変換層)
本発明の金属パターン形成用積層体を構成する光熱変換層は、赤外レーザーを吸収し、発熱する材料Aから構成されている層であれば特に制限はないが、金属転写層を形成する材料Bよりも熱伝導率が低く、金属転写層を形成する材料Bの沸点よりも、光熱転写層を構成する材料Aの融点が高いことが好ましい。
【0027】
本発明の金属パターン形成用積層体においては、光熱変換層を形成する材料Aの熱伝導率が、後述する金属転写層を形成する材料Bの熱伝導率の50分の1以上、2分の1以下の範囲であることが、より好ましい。本発明で規定する光熱変換層を形成する材料A及び金属転写層を形成する材料Bの熱伝導率は、例えば、2009理科年表に記載のデータから選択することができる。また、市販の熱伝導率測定器(例えば、英弘精機株式会社製NC074シリーズや株式会社シロ産業社製迅速熱伝導率計M69M−500、株式会社アルバック社製TC7000シリーズなど)により測定することができる。
【0028】
本発明に係る光熱変換層を形成する材料Aとしては、金属材料が好ましく、Ti、V、Pt、Nb、Ta、Ca、Ni、Crが挙げられる。
【0029】
(金属転写層)
本発明に係る金属転写層は、光熱変換層を形成する材料Aの発熱によって加熱され、かつ蒸発する材料Bから構成される層であれば特に制限はないが、金属転写層を形成する材料Bの沸点が、光熱変換層を形成する材料Aの融点より低い構成であることが好ましい。より好ましくは、金属転写層を形成する材料Bの沸点が、光熱変換層を形成する材料Aの融点より100度以上低い構成であることが好ましい。また、金属転写層を形成する材料Bで本発明に係る金属パターンを形成されるため、20℃での電気抵抗率が1.0×10−8〜5.0×10−8Ωmの範囲にある材料が好ましく、具体的には、本発明に係る金属転写層を形成する材料Bとしては、金属材料が好ましく、Al、Cu、Agであることが特に好ましい。
【0030】
《金属パターン形成方法》
本発明の金属パターン形成方法は、上記説明した様な透過性支持基板上に光熱変換層と金属転写層とを有する金属パターン形成用積層体に対し、真空下で赤外レーザーを照射し、光熱変換層が発熱し、さらに近接する金属転写層が加熱され、金属転写層を形成する材料Bが蒸発し、非接触の状態で金属転写層に対向する位置に配置されている被転写体に金属パターンを形成することを特徴とする。
【0031】
以下、図を交えて本発明の金属パターン形成方法について説明する。
【0032】
図2は、本発明の金属パターン形成方法の一例を示す工程フロー図である。
【0033】
本発明の金属パターン形成方法においては、図2のa)に示す様に、金属パターン形成用積層体1として、赤外レーザー8を照射する面側には透過性支持基板2がくるように、被転写体5に対向する面側には金属転写層4がくるように配置する。
【0034】
一方、有機層7と透明導電性膜6とから構成される被転写体5は、透明導電性膜6が金属パターン形成用積層体1の金属転写層4と対向する様に配置する。
【0035】
本発明の金属パターン形成方法においては、図2のa)に示すように、赤外レーザー8を照射しているときの金属パターン形成用積層体1と被転写体5とは、間隙Lを介して非接触の状態で配置されている。これは、金属パターン形成用積層体1と被転写体5とが接触している状態では、加熱された金属転写層の熱が被転写体側まで伝導してしまい、金属転写層4を効率的に加熱することができなくなり、また被転写体5の熱による特性変化(例えば、熱膨張等)が生じ、良好な金属パターンが形成できなくなるからである。
【0036】
具体的な金属パターン形成用積層体1と被転写体5との間隙Lについては、赤外レーザー8を照射する領域において、金属パターン形成用積層体1と被転写体5との間隙Lが、10nm以上、1000nm以下の範囲にあることが好ましい。
【0037】
本発明の金属パターン形成方法においては、図2のb)に示すように、光熱変換層3の赤外レーザー8が照射された特定の領域9で、光エネルギーが熱エネルギーに変換されて光熱変換層3が発熱し、その熱エネルギーが隣接する金属転写層4に伝搬されて、加熱される。
【0038】
この時、光熱変換層3と金属転写層4との特性としては、1)光熱変換層3を形成する材料Aの熱伝導率が、金属転写層4を形成する材料Bの熱伝導率の50分の1以上、2分の1以下とするように構成すること、2)光熱変換層3を形成する材料Aの融点が、金属転写層4を形成する材料Bの沸点よりも100度以上高い様に構成することが、効率的に材料Bの蒸発を促し、かつ精緻に金属パンターンを形成することができる観点から好ましい。
【0039】
図2のb)の様にして金属転写層4の領域9が加熱され、次いで、図2のc)に示すように、金属転写層4の領域9の温度が、金属転写層4を構成する材料Bの沸点を超えると蒸発し、間隙Lを介して対向する位置に配置されている被転写体5の透明導電性膜上に蒸着して、金属パターン10を形成する。
【0040】
上記のような本発明の金属パターン形成方法では、全ての工程を真空下で赤外レーザーを照射して金属パターンを形成するが、赤外レーザーを照射するときの真空度としては、10−5Pa以上、10−3Pa以下であることが好ましい。これは、真空度を高めることにより、金属転写層を形成する材料の蒸発温度を下げることができる。
【0041】
本発明で使用する赤外レーザー8に関しては、特に限定がないが、ルビーレーザー、YAGレーザー等の固体レーザー、色素分子を有機溶媒に溶かした液体レーザー、炭酸ガスレーザー、ヘリウムネオンレーザー等の気体レーザー、半導体レーザー等を、コスト、生産性等の観点から適宜選択することができる。
【0042】
本発明の金属パターン形成方法では、有機EL素子用の補助電極を形成することができる。該補助電極は、透明導電性層に隣接するように形成することが好ましい。
【0043】
《有機EL素子》
次いで、面発光体の一例である本発明の有機EL素子の実施形態を詳細に説明するが、以下に記載する内容は、本発明の実施態様の代表例であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に限定されない。
【0044】
はじめに、有機EL素子の層構成の好ましい具体例を以下に示す。
【0045】
(i)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(ii)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(iii)陽極/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極
(iv)陽極/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
(v)陽極/陽極バッファー層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
ここで、発光層で発生した光が外部へ出射されるためには、陽極または陰極の少なくとも一方が透明であることが必要である。
【0046】
発光層は、少なくとも発光色の異なる2種以上の発光材料を含有していることが好ましく、単層でも複数の発光層からなる発光層ユニットを形成していてもよい。また、正孔輸送層には正孔注入層、電子阻止層も含まれる。
【0047】
〔透明導電性層:電極〕
有機EL素子における透明導電性層としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物が、透明導電層を形成する電極物質とするものが好ましく用いられる。
【0048】
このような電極物質の具体例としては、Au等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO、ZnO等の導電性光透過性材料が挙げられる。また、IDIXO(In−ZnO)等非晶質で光透過性の導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。本発明においては、透明導電層は陽極として用いられることが好ましい。陽極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。あるいは、有機導電性化合物のように塗布可能な物質を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式等湿式製膜法を用いることもできる。陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。更に膜厚は材料にもよるが、通常10〜1000nm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。
【0049】
〔発光層〕
発光層は、電極または電子輸送層、正孔輸送層から注入されてくる電子および正孔が再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても発光層と隣接層との界面であってもよい。
【0050】
発光層としては、含まれる発光材料が発光要件を満たしていれば、その構成には特に制限はない。また、同一の発光スペクトルや発光極大波長を有する層が複数層あってもよい。また、各発光層間には非発光性の中間層を有していることが好ましい。
【0051】
発光層の膜厚の総和は1〜100nmの範囲にあることが好ましく、更に好ましくは、より低い駆動電圧を得ることができることから1nm以上、30nm以下である。なお、発光層の膜厚の総和とは、発光層間に非発光性の中間層が存在する場合には、当該中間層も含む膜厚である。
【0052】
個々の発光層の膜厚としては、1〜50nmの範囲に調整することが好ましく、更に好ましくは1〜20nmの範囲に調整することである。青、緑、赤の各発光層の膜厚の関係については、特に制限はない。
【0053】
発光層の作製には、後述する発光材料やホスト化合物を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法、インクジェット法等の公知の薄膜形成方法により製膜して形成することができる。
【0054】
各発光層は複数の発光材料を混合してもよく、また燐光発光材料と蛍光発光材料を同一発光層中に混合して用いてもよい。
【0055】
発光層の構成として、ホスト化合物、発光材料(発光ドーパント化合物ともいう)を含有し、発光材料より発光させることが好ましい。
【0056】
〈ホスト化合物〉
有機EL素子の発光層に含有されるホスト化合物としては、室温(25℃)における燐光発光の燐光量子収率が0.1未満の化合物が好ましい。更に好ましくは燐光量子収率が0.01未満である。また、発光層に含有される化合物の中で、その層中での体積比が50%以上であることが好ましい。
【0057】
ホスト化合物としては、公知のホスト化合物を単独で用いてもよく、または複数種併用して用いてもよい。ホスト化合物を複数種用いることで、電荷の移動を調整することが可能であり、有機EL素子を高効率化することができる。また、後述する発光材料を複数種用いることで、異なる発光を混ぜることが可能となり、これにより任意の発光色を得ることができる。
【0058】
用いられるホスト化合物としては、従来公知の低分子化合物でも、繰り返し単位をもつ高分子化合物でもよく、ビニル基やエポキシ基のような重合性基を有する低分子化合物(蒸着重合性発光ホスト)でもいい。
【0059】
公知のホスト化合物としては、正孔輸送能、電子輸送能を有しつつ、発光の長波長化を防ぎ、かつ高Tg(ガラス転移温度)化合物が好ましい。ここでいうガラス転移点(Tg)とは、DSC(Differential Scanning Colorimetry:示差走査熱量法)を用いて、JIS−K−7121に準拠した方法により求められる値である。
【0060】
公知のホスト化合物の具体例としては、以下の文献に記載されている化合物が挙げられる。例えば、特開2001−257076号公報、同2002−308855号公報、同2001−313179号公報、同2002−319491号公報、同2001−357977号公報、同2002−334786号公報、同2002−8860号公報、同2002−334787号公報、同2002−15871号公報、同2002−334788号公報、同2002−43056号公報、同2002−334789号公報、同2002−75645号公報、同2002−338579号公報、同2002−105445号公報、同2002−343568号公報、同2002−141173号公報、同2002−352957号公報、同2002−203683号公報、同2002−363227号公報、同2002−231453号公報、同2003−3165号公報、同2002−234888号公報、同2003−27048号公報、同2002−255934号公報、同2002−260861号公報、同2002−280183号公報、同2002−299060号公報、同2002−302516号公報、同2002−305083号公報、同2002−305084号公報、同2002−308837号公報等が挙げられる。
【0061】
〈発光材料〉
次に、発光材料について説明する。
【0062】
発光材料としては、蛍光性化合物、燐光発光材料(燐光性化合物、燐光発光性化合物等ともいう)を用いることができる。
【0063】
燐光発光材料とは、励起三重項からの発光が観測される化合物であり、具体的には室温(25℃)にて燐光発光する化合物であり、燐光量子収率が25℃において0.01以上の化合物であると定義されるが、好ましい燐光量子収率は0.1以上である。
【0064】
上記燐光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中での燐光量子収率は種々の溶媒を用いて測定できるが、本発明において燐光発光材料を用いる場合、任意の溶媒のいずれかにおいて上記燐光量子収率(0.01以上)が達成されればよい。
【0065】
燐光発光材料の発光の原理としては2種挙げられ、一つはキャリアが輸送されるホスト化合物上でキャリアの再結合が起こってホスト化合物の励起状態が生成し、このエネルギーを燐光発光材料に移動させることで燐光発光材料からの発光を得るというエネルギー移動型であり、もう一つは燐光発光材料がキャリアトラップとなり、燐光発光材料上でキャリアの再結合が起こり燐光発光材料からの発光が得られるというキャリアトラップ型であるが、いずれの場合においても、燐光発光材料の励起状態のエネルギーはホスト化合物の励起状態のエネルギーよりも低いことが条件である。
【0066】
燐光発光材料は、有機EL素子の発光層に使用される公知のものの中から適宜選択して用いることができるが、好ましくは元素の周期表で8〜10族の金属を含有する錯体系化合物であり、更に好ましくはイリジウム化合物、オスミウム化合物、または白金化合物(白金錯体系化合物)、希土類錯体であり、中でも最も好ましいのはイリジウム化合物である。
【0067】
有機EL素子には、蛍光発光体を用いることもできる。蛍光発光体(蛍光性ドーパント)の代表例としては、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素、又は希土類錯体系蛍光体等が挙げられる。
【0068】
また、従来公知のドーパントも本発明に用いることができ、例えば、国際公開第00/70655号明細書、特開2002−280178号公報、同2001−181616号公報、同2002−280179号公報、同2001−181617号公報、同2002−280180号公報、同2001−247859号公報、同2002−299060号公報、同2001−313178号公報、同2002−302671号公報、同2001−345183号公報、同2002−324679号公報、国際公開第02/15645号明細書、特開2002−332291号公報、同2002−50484号公報、同2002−332292号公報、同2002−83684号公報、特表2002−540572号公報、特開2002−117978号公報、同2002−338588号公報、同2002−170684号公報、同2002−352960号公報、国際公開第01/93642号明細書、特開2002−50483号公報、同2002−100476号公報、同2002−173674号公報、同2002−359082号公報、同2002−175884号公報、同2002−363552号公報、同2002−184582号公報、同2003−7469号公報、特表2002−525808号公報、特開2003−7471号公報、特表2002−525833号公報、特開2003−31366号公報、同2002−226495号公報、同2002−234894号公報、同2002−235076号公報、同2002−241751号公報、同2001−319779号公報、同2001−319780号公報、同2002−62824号公報、同2002−100474号公報、同2002−203679号公報、同2002−343572号公報、同2002−203678号公報等が挙げられる。
【0069】
本発明においては、少なくとも一つの発光層に2種以上の発光材料を含有していてもよく、発光層における発光材料の濃度比が発光層の厚さ方向で変化していてもよい。
【0070】
〔中間層〕
各発光層間に非発光性の中間層(非ドープ領域等ともいう)を設ける場合について説明する。
【0071】
非発光性の中間層とは、複数の発光層を有する場合、その発光層間に設けられる層である。非発光性の中間層の膜厚としては1〜20nmの範囲にあるのが好ましく、更には3〜10nmの範囲にあることが隣接発光層間のエネルギー移動等相互作用を抑制し、且つ素子の電流電圧特性に大きな負荷を与えないということから好ましい。
【0072】
この非発光性の中間層に用いられる材料としては、発光層のホスト化合物と同一でも異なっていてもよいが、隣接する2つの発光層の少なくとも一方の発光層のホスト材料と同一であることが好ましい。
【0073】
非発光性の中間層は非発光層、各発光層と共通の化合物(例えば、ホスト化合物等)を含有していてもよく、各々共通ホスト材料(ここで、共通ホスト材料が用いられるとは、燐光発光エネルギー、ガラス転移点等の物理化学的特性が同一である場合やホスト化合物の分子構造が同一である場合等を示す。)を含有することにより、発光層−非発光層間の層間の注入障壁が低減され、電圧(電流)を変化させても正孔と電子の注入バランスが保ちやすいという効果を得ることができる。更に、非ドープ発光層に各発光層に含まれるホスト化合物と同一の物理的特性または同一の分子構造を有するホスト材料を用いることにより、従来の有機EL素子作製の大きな問題点である素子作製の煩雑さをも併せて解消することができる。
【0074】
ホスト材料はキャリアの輸送を担うため、キャリア輸送能を有する材料が好ましい。キャリア輸送能を表す物性としてキャリア移動度が用いられるが、有機材料のキャリア移動度は一般的に電界強度に依存性が見られる。電界強度依存性の高い材料は正孔と電子注入・輸送バランスを崩しやすいため、中間層材料、ホスト材料は移動度の電界強度依存性の少ない材料を用いることが好ましい。
【0075】
また、一方では、正孔や電子の注入バランスを最適に調整するためには、非発光性の中間層は後述する阻止層、即ち正孔阻止層、電子阻止層として機能することも好ましい態様として挙げられる。
【0076】
〔注入層:電子注入層、正孔注入層〕
注入層は必要に応じて設け、電子注入層と正孔注入層があり、上記の如く陽極と発光層または正孔輸送層の間、および陰極と発光層または電子輸送層との間に存在させてもよい。
【0077】
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されており、正孔注入層(陽極バッファー層)と電子注入層(陰極バッファー層)とがある。
【0078】
陽極バッファー層(正孔注入層)は、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニンバッファー層、酸化バナジウムに代表される酸化物バッファー層、アモルファスカーボンバッファー層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子バッファー層等が挙げられる。
【0079】
陰極バッファー層(電子注入層)は、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、具体的にはストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。上記バッファー層(注入層)はごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるがその膜厚は0.1nm〜5μmの範囲が好ましい。
【0080】
〔阻止層:正孔阻止層、電子阻止層〕
阻止層は、上記の如く有機化合物薄膜の基本構成層の他に必要に応じて設けられるものである。例えば、特開平11−204258号公報、同11−204359号公報、および「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の237頁等に記載されている正孔阻止(ホールブロック)層がある。
【0081】
正孔阻止層とは、広い意味では、電子輸送層の機能を有し、電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が著しく小さい正孔阻止材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。また、後述する電子輸送層の構成を必要に応じて、本発明に係る正孔阻止層として用いることができる。正孔阻止層は、発光層に隣接して設けられていることが好ましい。
【0082】
一方、電子阻止層とは、広い意味では、正孔輸送層の機能を有し、正孔を輸送する機能を有しつつ電子を輸送する能力が著しく小さい材料からなり、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。また、後述する正孔輸送層の構成を必要に応じて電子阻止層として用いることができる。本発明に係る正孔阻止層、電子輸送層の膜厚としては好ましくは3〜100nmであり、更に好ましくは5〜30nmである。
【0083】
〔正孔輸送層〕
正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。正孔輸送層は単層または複数層設けることができる。
【0084】
正孔輸送材料としては、正孔の注入または輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体およびピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられる。
【0085】
正孔輸送材料としては上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物およびスチリルアミン化合物、特に芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。
【0086】
芳香族第3級アミン化合物およびスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル;N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル;N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、更には米国特許第5,061,569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば、4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。
【0087】
更にこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。また、p型−Si、p型−SiC等の無機化合物も正孔注入材料、正孔輸送材料として使用することができる。
【0088】
また、特開平11−251067号公報、J.Huang et.al.著文献(Applied Physics Letters 80(2002),p.139)に記載されているような所謂、p型正孔輸送材料を用いることもできる。本発明においては、より高効率の発光素子が得られることから、これらの材料を用いることが好ましい。
【0089】
正孔輸送層は、上記正孔輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。正孔輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmである。この正孔輸送層は上記材料の1種または2種以上からなる一層構造であってもよい。
【0090】
また、不純物をドープしたp性の高い正孔輸送層を用いることもできる。その例としては、特開平4−297076号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。
【0091】
このようなp性の高い正孔輸送層を用いることが、より低消費電力の素子を作製することができるため好ましい。
【0092】
〔電子輸送層〕
電子輸送層とは、電子を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に含まれる。電子輸送層は単層または複数層設けることができる。
【0093】
従来、単層の電子輸送層、および複数層とする場合は発光層に対して陰極側に隣接する電子輸送層に用いられる電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる)としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができ、例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタンおよびアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。更に、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。更にこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0094】
また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、およびこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、GaまたはPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。その他、メタルフリーもしくはメタルフタロシアニン、またはそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。また、発光層の材料として例示したジスチリルピラジン誘導体も電子輸送材料として用いることができるし、正孔注入層、正孔輸送層と同様にn型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
【0095】
電子輸送層は、上記電子輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。電子輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmである。電子輸送層は上記材料の1種または2種以上からなる一層構造であってもよい。
【0096】
また、不純物をドープしたn性の高い電子輸送層を用いることもできる。その例としては、特開平4−297076号公報、同10−270172号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。
【0097】
本発明においては、このようなn性の高い電子輸送層を用いることがより低消費電力の素子を作製することができるため好ましい。
【0098】
〔対向電極〕
対向電極としては、前述の透明導電性を構成する材料を用いても良いし、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極物質とするものが用いることもできる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性および酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50nm〜200nmの範囲で選ばれる。尚、発光した光を透過させるため、有機EL素子の陽極または陰極のいずれか一方が透明または半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
【0099】
また、陰極に上記金属を1nm〜20nmの膜厚で作製した後に、導電性透明材料をその上に作製することで、透明または半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
【0100】
《有機EL素子の作製方法》
本発明の金属パターン形成方法で形成された補助電極を用いた有機EL素子の一例として、透明基材上に、光取り出し層と、透明導電層、有機EL層(有機層)、および対向電極を順次形成したものが挙げられる。
【0101】
(透明導電層の形成)
透明基材上に、所望の電極物質を用いて透明導電層を形成することができる。例えば、電極物質としてITO(すずを添加した酸化インジウム)を用いる場合には、蒸着やスパッタリング等の方法により透明導電層を形成することができる。
【0102】
(有機EL層の形成)
陽極バッファー層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、陰極バッファー層の全部または一部からなる、透明導電層と陰極の間に形成された層を有機EL層という。この有機EL層の作製方法の一例として、正孔注入層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層からなる有機EL層の作製法について説明する。
【0103】
透明導電層を形成した透明基材上に、有機EL層の構成材料である正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層の有機化合物薄膜を形成させる。
【0104】
この有機化合物薄膜の薄膜化の方法としては、前記の如く蒸着法、ウェットプロセス(スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、印刷法)等があるが、均質な膜が得られやすく、且つピンホールが生成しにくい等の点から、真空蒸着法、スピンコート法、インクジェット法、印刷法が特に好ましい。更に層毎に異なる製膜法を適用してもよい。製膜に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は使用する化合物の種類等により異なるが、一般にボート加熱温度50〜450℃、真空度10−6〜10−2Pa、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−50〜300℃、膜厚0.1nm〜5μm、好ましくは5〜200nmの範囲で適宜選ぶことが望ましい。
【0105】
(対向電極の形成)
上記の有機EL層を形成後、その上に対向電極用物質からなる薄膜を1μm以下好ましくは50〜200nmの範囲の膜厚になるように、例えば、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、陰極を設ける。
【0106】
以上の工程により、本発明の有機EL素子が得られる。本発明に係る有機EL層の形成は、一回の真空引きで一貫して正孔注入層から対向電極まで作製するのが好ましいが、途中で取り出して異なる製膜法を施しても構わない。その際、作業を乾燥不活性ガス雰囲気下で行う等の配慮が必要となる。
【0107】
また作製順序を逆にして作製することも可能である。このようにして得られた多色の液晶表示装置に直流電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を−の極性として電圧2〜40V程度を印加すると発光が観測できる。また交流電圧を印加してもよい。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
【0108】
《用途》
本発明の有機EL素子は、表示デバイス、ディスプレイ、各種発光光源として用いることができる。発光光源として、例えば、家庭用照明、車内照明、時計や液晶用のバックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるがこれに限定するものではないが、特にカラーフィルターと組み合わせた液晶表示装置のバックライト、照明用光源としての用途に有効に用いることができる。
【実施例】
【0109】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0110】
実施例1
《金属パターンの作製》
〔金属パターン1の作製〕
厚さ500μmの無アルカリガラス(コーニング社製)の片面に、従来のスクリーン印刷法により、線幅100μm、厚み0.5μm、ピッチ1mmの間隔で、格子状の金属パターン1を作製した。
【0111】
〔金属パターン2の作製〕
(金属パターン形成用積層体1の作製)
透過性支持基板である厚さ500μmの無アルカリガラス(コーニング社製)の片面に、厚さ300nmとなるように、スパッタ法でカルシウムを成膜して、これを光熱変換層1とした。次いで、形成した光熱変換層1上に膜厚150nmとなるように蒸着法でアルミ膜を成膜して、金属転写層1を形成し、金属パターン形成用積層体1を作製した。
【0112】
(金属パターンの形成)
被転写体として無アルカリガラス(コーニング社製)を用い、上記で得られた金属パターン形成用積層体の金属転写層1と、被転写体である無アルカリガラスの片面とを、間隔Lが2000nmとなる条件で対向させて保持し、真空度10−2Paで金属パターン形成用積層体の透過性支持基板側(無アルカリガラス面側)から炭酸ガスレーザーを照射し、線幅100μm、厚み0.5μm、ピッチ1mm間隔で格子状の金属パターン2を作製した。
【0113】
〔金属パターン3の作製〕
上記金属パターン2の作製において、金属パターン形成時の金属パターン形成用積層体の金属転写層1と、被転写体である無アルカリガラスの片面との間隔Lを、5nmに変更した以外は同様にして、金属パターン3を作製した。
【0114】
〔金属パターン4の作製〕
上記金属パターン2の作製において、金属パターン形成時の金属パターン形成用積層体の金属転写層1と、被転写体である無アルカリガラスの片面との間隔Lを、20nmに変更した以外は同様にして、金属パターン4を作製した。
【0115】
〔金属パターン5の作製〕
上記金属パターン2の作製において、金属パターン形成時の金属パターン形成用積層体の金属転写層1と、被転写体である無アルカリガラスの片面との間隔Lを、500nmに変更した以外は同様にして、金属パターン5を作製した。
【0116】
〔金属パターン6の作製〕
上記金属パターン2の作製において、金属パターン形成時の金属パターン形成用積層体の金属転写層1と、被転写体である無アルカリガラスの片面との間隔Lを、800nmに変更した以外は同様にして、金属パターン6を作製した。
【0117】
〔金属パターン7の作製〕
上記金属パターン6の作製において、金属パターン形成用積層体1に代えて、下記方法で作製した金属パターン形成用積層体2を用いた以外は同様にして、金属パターン7を作製した。
【0118】
(金属パターン形成用積層体2の作製)
上記金属パターン形成用積層体1の作製において、光熱変換層1に代えて、膜厚300nmとなるようにスパッタ法でニッケルを成膜して形成した光熱変換層2を用いた以外は同様にして、金属パターン形成用積層体2を作製した。
【0119】
〔金属パターン8の作製〕
上記金属パターン6の作製において、金属パターン形成用積層体1に代えて、下記方法で作製した金属パターン形成用積層体3を用いた以外は同様にして、金属パターン8を作製した。
【0120】
(金属パターン形成用積層体3の作製)
上記金属パターン形成用積層体1の作製において、光熱変換層1に代えて、膜厚300nmとなるようにスパッタ法でクロムを成膜して形成した光熱変換層3を用いた以外は同様にして、金属パターン形成用積層体3を作製した。
【0121】
〔金属パターン9の作製〕
上記金属パターン6の作製において、金属パターン形成用積層体1に代えて、下記方法で作製した金属パターン形成用積層体4を用いた以外は同様にして、金属パターン9を作製した。
【0122】
(金属パターン形成用積層体4の作製)
上記金属パターン形成用積層体1の作製において、光熱変換層1に代えて、膜厚300nmとなるようにスパッタ法でチタンを成膜して形成した光熱変換層4を用いた以外は同様にして、金属パターン形成用積層体4を作製した。
【0123】
〔金属パターン10の作製〕
上記金属パターン6の作製において、金属パターン形成用積層体1に代えて、下記方法で作製した金属パターン形成用積層体5を用いた以外は同様にして、金属パターン10を作製した。
【0124】
(金属パターン形成用積層体5の作製)
上記金属パターン形成用積層体1の作製において、光熱変換層1に代えて、膜厚300nmとなるようにスパッタ法でタンタルを成膜して形成した光熱変換層5を用いた以外は同様にして、金属パターン形成用積層体5を作製した。
【0125】
〔金属パターン11の作製〕
上記金属パターン10の作製において、金属パターン形成時の真空度を10−3Paに変更した以外は同様にして、金属パターン11を作製した。
【0126】
〔金属パターン12の作製〕
上記金属パターン10の作製において、金属パターン形成時の真空度を10−4Paに変更した以外は同様にして、金属パターン12を作製した。
【0127】
〔金属パターン13の作製〕
上記金属パターン10の作製において、金属パターン形成時の真空度を10−5Paに変更した以外は同様にして、金属パターン13を作製した。
【0128】
〔金属パターン14の作製〕
上記金属パターン13の作製において、金属パターン形成用積層体5に代えて、下記方法で作製した金属パターン形成用積層体6を用いた以外は同様にして、金属パターン14を作製した。
【0129】
(金属パターン形成用積層体6の作製)
上記金属パターン形成用積層体5の作製において、金属転写層1に代えて、膜厚150nmとなるように蒸着法で銅を成膜して形成した金属転写層2を用いた以外は同様にして、金属パターン形成用積層体6を作製した。
【0130】
〔金属パターン15の作製〕
上記金属パターン13の作製において、金属パターン形成用積層体5に代えて、下記方法で作製した金属パターン形成用積層体7を用いた以外は同様にして、金属パターン15を作製した。
【0131】
(金属パターン形成用積層体7の作製)
上記金属パターン形成用積層体5の作製において、金属転写層1に代えて、膜厚150nmとなるように蒸着法で銀を成膜して形成した金属転写層3を用いた以外は同様にして、金属パターン形成用積層体7を作製した。
【0132】
なお、表1に記載の光熱変換層及び金属転写層の構成材料の熱伝導率は、2009理科年表に記載のデータから求めた。
【0133】
《金属パターンの評価》
上記作製した金属パターン1〜15のシート抵抗値を、三菱化学アナリテック社製のMCP−T610を用いて四端子法で測定し、金属パターン1のシート抵抗値を100とする相対値を求めた。得られた結果を表1に示す。
【0134】
【表1】

【0135】
表1に記載の結果より明らかな様に、本発明の金属パターン形成方法で形成した金属パターンは、比較例に対し、シート抵抗値が低いことが分かる。
【0136】
実施例2
《有機EL素子の作製》
〔有機EL素子1の作製〕
(補助電極の作製)
厚さ500μmの無アルカリガラス(コーニング社製)上に、スクリーン印刷法で線幅100μm、厚み0.5μm、ピッチ1mm間隔で格子状の金属パターンを形成して、補助電極を作製した。
【0137】
(ITO導電層の形成)
上記作製した補助電極上に、ITO(インジウムチンオキシド)を厚さ100nmとなる条件で製膜、パターニングして、ITO導電層の形成を行った。次いで、ITO導電層を設けた基板を、イソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。
【0138】
(正孔注入層の形成)
このITO導電層を設けた基板上に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS、Bayer社製、Baytron P Al 4083)を純水で70%に希釈した溶液を用い、3000rpm、30秒でスピンコート法によりITO導電層上に製膜した後、基板表面温度が200℃となる条件で1時間乾燥して、膜厚30nmの正孔注入層を設けた。
【0139】
(正孔輸送層の形成)
この正孔注入層を設けた基板を、窒素雰囲気下、JIS B 9920に準拠した測定法で測定した清浄度がクラス100で、露点温度が−80℃以下、酸素濃度0.8ppmのグローブボックスへ移した。グローブボックス中にて正孔輸送層用塗布液を下記のように調製し、スピンコーターにて、1500rpm、30秒の条件で、正孔注入層上に塗布した。この基板を、基板表面温度が150℃となる条件で30分間加熱乾燥して、正孔輸送層を形成した。別途用意した基板単独に、上記同条件で塗布を行い、膜厚測定を行った結果、膜厚は20nmであった。
【0140】
〈正孔輸送層用塗布液〉
モノクロロベンゼン 100g
ポリ−N,N′−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N′−ビス(フェニル)ベンジジン(ADS254BE:アメリカン・ダイ・ソース社製)
0.5g
(発光層の形成)
次いで、発光層塗布液を下記のように調製し、スピンコーターにて、2000rpm、30秒の条件で、正孔輸送層上に塗布した。さらに基板表面温度が120℃となる条件で30分加熱し発光層を形成した。別途用意した基板にて、同条件にて塗布を行い測定したところ、膜厚は40nmであった。尚、下記発光層組成物のうち、最も低いTgを示したのはH−Aであり、132℃であった。
【0141】
〈発光層用塗布液〉
酢酸ブチル 100g
H−A 1.0g
D−A 0.11g
D−B 0.002g
D−C 0.002g
(電子輸送層の形成)
次いで、電子輸送層用塗布液を下記のように調製し、スピンコーターにて、1500rpm、30秒の条件で、発光層上に塗布した。さらに基板表面温度が120℃となる条件で、30分加熱し電子輸送層を形成した。別途用意した基板にて、同条件にて塗布を行い測定したところ、膜厚は30nmであった。
【0142】
〈電子輸送層用塗布液〉
2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール 100g
トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム 0.75g
ET−A 0.75g
【0143】
【化1】

【0144】
(電子注入層の形成)
次いで、電子輸送層まで設けた基板を大気雰囲気に曝露せずに、蒸着器に移動し、4×10−4Paまで減圧した。尚、フッ化カリウムおよびアルミニウムをそれぞれタンタル製抵抗加熱ボートに入れ、蒸着器に取り付けておいた。
【0145】
先ず、フッ化カリウムの入った抵抗加熱ボートに通電して加熱し、基板の電子輸送層上にフッ化カリウムからなる電子注入層を3nm設けた。
【0146】
(陰極の形成)
続いて、アルミニウムの入った抵抗加熱ボートに通電加熱し、蒸着速度1〜2nm/秒でアルミニウムからなる膜厚100nmの陰極を設け、有機EL素子1を作製した。
【0147】
〔有機EL素子2の作製〕
(金属電極の作製)
厚さ500μmの無アルカリガラス(コーニング社製)上に、蒸着速度1〜2nm/秒でアルミニウムからなる膜厚100nmの金属電極を作製した。
【0148】
(正孔注入層〜電子輸送層の形成)
上記有機EL素子1の正孔注入層から電子輸送層まで形成方法と同様にして、上記金属電極上に正孔注入層から電子輸送層までを形成した。
【0149】
(バッファー層の形成)
次いで、電子輸送層まで設けた基板を大気雰囲気に曝露せずに、蒸着器に移動し、4×10−4Paまで減圧した。また、リチウムおよびトリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)を、それぞれタングステン製抵抗加熱ボートに入れ、蒸着器に取り付けた。
【0150】
各々の抵抗加熱ボートに通電して加熱し、Alq中にリチウムが1質量%含有するバッファー層を、厚さ50nmで形成した。
【0151】
(電子注入層の形成)
次いで、上記と同様の蒸着器を用い、フッ化カリウムの入った抵抗加熱ボートに通電して加熱し、基板のバッファー層上にフッ化カリウムからなる電子注入層を、膜厚として3nmとなるようにして形成した。
【0152】
(ITO導電層の形成)
電子注入層上に、ITO(インジウムチンオキシド)を厚さ100nmとなる条件で製膜し、ITO導電層を形成した。
【0153】
(補助電極の形成)
ITO導電層上に、スクリーン印刷法で線幅100μm、厚み0.5μm、ピッチ1mmの間隔で格子状の金属パターンを電子注入層上に形成し、有機EL素子2を得た。
【0154】
〔有機EL素子3の作製〕
(金属電極〜電子注入層の形成)
上記有機EL素子2の作製と同様の方法で、金属電極から電子注入層までを形成した。
【0155】
(補助電極の形成)
実施例1で作製した金属パターン形成用積層体1(光熱変換層1:カルシウム、金属転写層1:アルミニウム)の金属転写層面と、上記電子注入層まで形成した基材の電子注入層面とを、間隔Lが2000nmとなる条件で対向する位置に保持し、真空度10−2Paで金属パターン形成用積層体1のガラス面側から炭酸ガスレーザーを照射し、線幅100μm、厚み0.5μm、ピッチが1mm間隔で格子状の金属パターンを、電子注入層上に蒸着し、補助電極を形成した。
【0156】
(ITO導電層の形成)
上記形成した補助電極上に、ITO(インジウムチンオキシド)を厚さ100nmとなる条件で製膜してITO導電層を形成し、有機EL素子3を作製した。
【0157】
〔有機EL発光体4の作製〕
(金属電極〜ITO導電層の形成)
上記有機EL素子2の作製と同様の方法で、金属電極からITO導電層までを形成した。
【0158】
(補助電極の形成)
実施例1で作製した金属パターン形成用積層体1(光熱変換層1:カルシウム、金属転写層1:アルミニウム)の金属転写層面と、上記ITO導電層まで形成した基材のITO導電層面とを、間隔Lが2000nmとなる条件で対向する位置に保持し、真空度10−2Paで金属パターン形成用積層体1のガラス面側から炭酸ガスレーザーを照射し、線幅100μm、厚み0.5μm、ピッチが1mm間隔で格子状の金属パターンを、ITO導電層面上に蒸着して補助電極を形成し、有機EL素子4を作製した。
【0159】
〔有機EL素子5〜8の作製〕
上記有機EL素子4の作製において、補助電極の形成時の金属転写層面とITO導電層面との間隔Lを、それぞれ5nm、20nm、500nm、800nmに変更して補助電極を形成した以外は同様にして、有機EL素子5〜8を作製した。
【0160】
〔有機EL素子9〜12の作製〕
上記有機EL素子8の作製において、補助電極の形成に用いた実施例1で作製した金属パターン形成用積層体1(光熱変換層1:カルシウム)を、それぞれ実施例1で作製した金属パターン形成用積層体2(光熱変換層2:ニッケル)、金属パターン形成用積層体3(光熱変換層3:クロム)、金属パターン形成用積層体4(光熱変換層4:チタン)、金属パターン形成用積層体5(光熱変換層5:タンタル)に変更した以外は同様にして、有機EL素子9〜12を作製した。
【0161】
〔有機EL素子13〜15の作製〕
上記有機EL素子12の作製において、補助電極形成時の真空度を、それぞれ10−3Pa、10−4Pa、10−5Paに変更した以外は同様にして、有機EL素子13〜15を作製した。
【0162】
〔有機EL素子16、17の作製〕
上記有機EL素子15の作製において、補助電極の形成に用いた実施例1で作製した金属パターン形成用積層体5(金属転写層1:アルミニウム)を、それぞれ実施例1で作製した金属パターン形成用積層体6(金属転写層2:銅)、金属パターン形成用積層体7(金属転写層3:銀)に変更した以外は同様にして、有機EL素子16、17を作製した。
【0163】
【表2】

【0164】
《有機EL素子の評価》
上記作製した各有機EL素子について、下記の方法に従って発光効率及び発光寿命の評価を行った。
【0165】
〔発光効率の測定〕
上記作製した各有機EL素子に対し、2.5mA/cm定電流を流したときの外部取り出し量子効率(%)を測定した。なお、測定には分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタセンシング製)を用いた。
【0166】
得られた外部取り出し量子効率(%)の測定結果を基に、有機EL素子1の外部取り出し量子効率(%)を100としたときの相対値を求め、これを発光効率の尺度とした。尚、外部量子効率の相対値が大きいほど発光効率が高く、好ましい結果であることを表す。
【0167】
〔発光寿命の評価〕
上記作製した各有機EL素子に対し、正面輝度が1000cd/mとなるような電流を与え、連続駆動した。次いで、正面輝度が初期値(1000cd/m)の半減値(500cd/m)になるまでに要する半減時間Tを求めた。次いで、有機EL素子1の半減時間Tを100とした時の各有機EL素子の相対半減時間を求め、これを発光寿命の尺度とした。尚、相対半減時間が大きいほど発光寿命が長く、好ましい結果であることを表す。
【0168】
以上により得られた結果を、表3に示す。
【0169】
【表3】

【0170】
表3に記載の結果より明らかな様に、本発明の金属パターン形成方法で形成した補助電極を有する有機EL素子は、比較例に対し、発光効率及び発光寿命に優れていることが分かる。
【符号の説明】
【0171】
1 金属パターン形成用積層体
2 透過性支持基板
3 光熱変換層
4 金属転写層
5 被転写体
6 透明導電性膜
7 有機層
8 赤外レーザー
9 領域
10 金属パターン
L 間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過性支持基板上に、少なくとも光熱変換層と金属転写層とを有していることを特徴とする金属パターン形成用積層体。
【請求項2】
請求項1に記載の光熱変換層と金属転写層とを有する金属パターン形成用積層体に真空下で赤外レーザーを照射し、該赤外レーザーを照射した領域の金属転写層を蒸発させて、非接触の被転写体の上に金属パターンを形成することを特徴とする金属パターン形成方法。
【請求項3】
前記赤外レーザーを照射する領域における前記金属パターン形成用積層体と前記被転写体との距離が、10nm以上、1000nm以下であることを特徴とする請求項2に記載の金属パターン形成方法。
【請求項4】
前記光熱変換層を形成する材料Aの熱伝導率が、前記金属転写層を形成する材料Bの熱伝導率の50分の1以上、2分の1以下であることを特徴とする請求項2または3に記載の金属パターン形成方法。
【請求項5】
前記光熱変換層を形成する材料Aの融点が、前記金属転写層を形成する材料Bの沸点よりも100度以上高いことを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の金属パターン形成方法。
【請求項6】
前記赤外レーザーを照射するときの真空度が、10−5Pa以上、10−3Pa以下であることを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載の金属パターン形成方法。
【請求項7】
請求項2から6のいずれか1項に記載の金属パターン形成方法で形成された補助電極を有していることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
前記補助電極が、光取り出し側の透明導電性層上に形成されていることを特徴とする請求項7に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−92388(P2012−92388A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240512(P2010−240512)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】