説明

金属パターン材料及びその製造方法

【課題】めっき後に細線乃至小ドットの金属パターンを高解像度で形成できる金属パターン材料及び金属パターン材料の製造方法の提供。
【解決手段】特定のめっき形成用光感応材料を6μm未満のピッチで露光する際に、6μmピッチ露光時の最適パワーに対し、100%未満であり、かつ〔(ピッチ(μm)×75/6+25)−30〕〜〔(ピッチ(μm)×75/6+25)+15〕%のレーザーパワーで露光する露光工程と、露光後のめっき形成用光感応材料を現像液で現像する現像工程と、現像後のパターンが形成されためっき形成用光感応材料を、めっき浴比が10未満でめっきを行うめっき工程とを含む金属パターン材料の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップ、各種電気配線板等に用いられる金属パターン材料及び金属パターン材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、絶縁性基板の表面に金属パターンによる配線を形成した金属配線基板が、電子部品、半導体素子等に広く用いられている。
このような金属パターンを作製する方法として、本願出願人は、先に、基材上に、該基材と結合したグラフトポリマーを生成させてポリマー層を形成し、このポリマー層に対してめっきを施して、得られた金属膜をエッチングする方法を提案している(特許文献1参照)。
また、その後、本願出願人は、前記特許文献1の方法を改良して、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する非解離性官能基、ラジカル重合性基、及びイオン性極性基を有するポリマーを含有する被めっき層形成用組成物を提案している(特許文献2参照)。
これらの提案によって、基板との密着性に優れた金属パターンを簡易に形成することが可能となったが、更に、めっき後に細線乃至小ドットの金属パターンを高解像度に形成することができる金属パターン材料及び金属パターン材料の製造方法の提供が強く望まれているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−350307号公報
【特許文献2】特開2010−248464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、めっき後に細線乃至小ドットの金属パターンを高解像度で形成できる金属パターン材料及び金属パターン材料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、(1)特定のめっき形成用光感応材料を用いること、(2)前記特定のめっき形成用光感応材料を6μm未満のピッチで露光する際に、6μmピッチ露光時の最適パワーに対し、100%未満であり、かつ〔(ピッチ(μm)×75/6+25)−30〕〜〔(ピッチ(μm)×75/6+25)+15〕%のレーザーパワーで露光すること、及び(3)10未満のめっき浴比でめっきを行うこと、をすべて満たすことにより、めっき後に細線乃至小ドットの金属パターンを高解像度で形成できることを知見した。
【0006】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 下記式(A)〜(C)で表されるユニットを含む共重合体を含有するめっき形成用光感応材料を6μm未満のピッチで露光する際に、6μmピッチ露光時の最適パワーに対し、100%未満であり、かつ〔(ピッチ(μm)×75/6+25)−30〕〜〔(ピッチ(μm)×75/6+25)+15〕%のレーザーパワーで露光する露光工程と、
露光後のめっき形成用光感応材料を現像液で現像する現像工程と、
現像後のパターンが形成されためっき形成用光感応材料を、めっき浴比が10未満でめっきを行うめっき工程と、
を含むことを特徴とする金属パターン材料の製造方法である。
【化1】

ただし、前記式(A)〜(C)中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1〜4の置換若しくは無置換のアルキル基を表し、X、Y、Z、及びUは、それぞれ独立して、単結合、置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、L、L、及びLは、それぞれ独立して、単結合、又は置換若しくは無置換の二価の有機基を表し、Wはめっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する非解離性官能基を表し、Vはイオン性極性基を表す。
<2> 6μmピッチ露光時の最適パワーに対し、100%未満であり、かつ〔(ピッチ(μm)×75/6+25)−20〕%〜〔(ピッチ(μm)×75/6+25)+10〕%のレーザーパワーで露光する前記<1>に記載の金属パターン材料の製造方法である。
<3> めっき浴比が6以下である前記<1>から<2>のいずれかに記載の金属パターン材料の製造方法である。
<4> めっき形成用光感応材料が光重合開始剤を含有し、該光重合開始剤の光吸収量が2.5%以上である前記<1>から<3>のいずれかに記載の金属パターン材料の製造方法である。
<5> 前記<1>から<4>のいずれかに記載の金属パターン材料の製造方法により製造されたことを特徴とする金属パターン材料である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、従来における諸問題を解決でき、めっき後に細線乃至小ドットの金属パターンを高解像度で形成できる金属パターン材料及び金属パターン材料の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、ピッチと露光パワーと描画結果との関係を示すグラフである。
【図2A】図2Aは、めっき後の金属パターン材料の描画結果が良好「○」の状態を示す写真である。
【図2B】図2Bは、めっき後の金属パターン材料の描画結果が普通「△」の状態を示す写真である。
【図2C】図2Cは、めっき後の金属パターン材料の描画結果が不良「×」の状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(金属パターン材料及び金属パターン材料の製造方法)
本発明の金属パターン材料の製造方法は、露光工程と、現像工程と、めっき工程とを含み、触媒付与工程、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
本発明の金属パターン材料は、本発明の金属パターン材料の製造方法により製造される。
以下、本発明の金属パターン材料の製造方法の説明を通じて、本発明の金属パターン材料の詳細についても明らかにする。
【0010】
本発明においては、前記露光工程において、特定のめっき形成用光感応材料を6μm未満のピッチで露光する際に、6μmピッチ露光時の最適パワーに対し、100%未満であり、かつ〔(ピッチ(μm)×75/6+25)−30〕%〜〔(ピッチ(μm)×75/6+25)+15〕%のレーザーパワーで露光する。即ち、特定のめっき形成用光感応材料を6μm未満の狭いピッチで露光する場合には、レーザーパワーを通常より低く制御して露光を行う。
【0011】
前記ピッチとは、隣接するパターンの中心間の最短距離を意味し、6μm未満であり、好ましくは5μm以下、更に好ましくは3μm以下である。また下限は、0.01μm以上、0.1μm以上、1μm以上である。前記ピッチが、6μm以上であると、配線の密度が下がり、基板面積が大きくなる。0.01μm未満であると、短波レーザを使ってもレーザビーム幅を狭くできず、適切な露光パワーとしても本発明の効果が得られなくなることがある。
前記「6μm未満のピッチで露光する際に、6μmピッチ露光時の最適パワーに対し、」とは、「レーザビームのエアリーディスク直径(λ/NA×1.22)の10倍より狭いピッチで、めっき形成用光感応材料を露光する際に、エアリーディスク径10倍ピッチ露光時の最適パワーに対し」と言い換えることができる。このとき、好ましくはエアリーディスクの8倍以下のピッチ、更に好ましくは5倍以下のピッチである。
ここで、前記6μmピッチ露光時の最適パワーとは、めっき形成用光感応材料に応じて異なり適宜選定することができるが、本発明においては、エアリーディスク10倍ピッチ(6μmピッチ)で記録したとき、描画結果が良好(○)となる最も低いパワーを意味する。
【0012】
前記特定のめっき形成用光感応材料を用い、めっき浴比を10未満とし、ピッチを2μm〜20μm、レーザーパワーを2mW〜10mWに変化させて、等間隔ピッチでパターンを露光し、現像後、めっきを行い、得られた各金属パターン材料の描画結果を評価した。ピッチとレーザーパワーと描画結果との関係を図1に示す。
図1の結果から、6μmピッチ露光時の最適パワーが8mWであり、ピッチが6μm未満で良好な描画結果(○)が得られるのは、図1のグラフ中の線Aと線Bに囲まれた斜め領域、即ち、〔(ピッチ(μm)×75/6+25)−30〕%〜〔(ピッチ(μm)×75/6+25)+15〕%の領域であることが認められる。前記「(ピッチ(μm)×75/6+25)」において、75/6における「6」は6μmピッチ、「75/6」は傾きを表し、25は切片を表す。
したがって、前記特定のめっき形成用光感応材料を6μm未満のピッチで露光する際に、6μmピッチ露光時の最適パワーに対し、100%未満であり、かつ〔(ピッチ(μm)×75/6+25)−30〕%〜〔(ピッチ(μm)×75/6+25)+15〕%のレーザーパワーで露光することが必要であり、6μmピッチ露光時の最適パワーに対し、100%未満であり、かつ〔(ピッチ(μm)×75/6+25)−20〕%〜〔(ピッチ(μm)×75/6+25)+10〕%のレーザーパワーで露光することが好ましい。具体的には、ピッチが2μmのときには、6μmピッチ露光時の最適パワーに対し20%〜65%のレーザーパワー、好ましくは30%〜60%のレーザーパワーで露光する。ピッチが4μmのときには、6μmピッチ露光時の最適パワーに対し45%〜90%のレーザーパワー、好ましくは55%〜85%で露光する。
前記レーザーパワーが〔(ピッチ(μm)×75/6+25)+15〕%を超えると、露光パワーが大きすぎて、配線間で短絡が生ずることがあり、〔(ピッチ(μm)×75/6+25)−30〕%未満であると、露光パワーが不足して、充分な導通が得られないことがある。
【0013】
また、本発明においては、前記めっき工程において、現像後のパターンが形成されためっき形成用光感応材料を、めっき浴比が10未満でめっきを行う。
前記めっき浴比とは、浴負荷(めっき浴に対して投入するめっき対象物の表面積又は個数)の大小を示す数値であり、下記数式1により求めることができる。
<数式1>
めっき浴比=めっき槽の容量V(cm)÷めっき対象物の表面積A(cm
前記めっき浴比(V/A)は、10未満であり、8以下が好ましく、6以下がより好ましい。前記めっき浴比が、10以上であると、めっき皮膜が生成しやすく、配線が短絡することがある。
【0014】
本発明においては、(1)特定のめっき形成用光感応材料を用いること、(2)前記特定のめっき形成用光感応材料を6μm未満のピッチで露光する際に、6μmピッチ露光時の最適パワーに対し、100%未満であり、かつ〔(ピッチ(μm)×75/6+25)−30〕%〜〔(ピッチ(μm)×75/6+25)+15〕%のレーザーパワーで露光すること、(3)10未満のめっき浴比でめっきを行うこと、をすべて満たした場合に初めて、めっき後において細線乃至小ドットの金属パターンを高解像度で形成できるものである。
【0015】
<露光工程>
前記露光工程は、特定のめっき形成用光感応材料に対してエネルギーを付与して、その領域の特定のめっき形成用光感応材料を硬化させる工程である。
【0016】
<<めっき形成用光感応材料>>
前記特定のめっき形成用光感応材料は、下記式(A)〜(C)で表されるユニットを含む共重合体(以下、「特定のポリマー」と称することもある)を含有していれば特に制限はないが、基板上に被めっき層を有し、前記基板と前記被めっき層の間に密着補助層を有する態様が好ましい。この場合、前記被めっき層が前記特定のポリマーを含む被めっき層形成用組成物から形成される。
前記被めっき層形成用組成物は、前記特定のポリマーを含み、溶剤、特定ポリマーの溶解性を高めるための添加剤、光重合開始剤、増感剤、界面活性剤、可塑剤、重合禁止剤、硬化剤、硬化促進剤、更に必要に応じてその他の添加剤を含有してなる。
【化2】

ただし、前記式(A)〜(C)中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1〜4の置換若しくは無置換のアルキル基を表し、X、Y、Z、及びUは、それぞれ独立して、単結合、置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、L、L、及びLは、それぞれ独立して、単結合、又は置換若しくは無置換の二価の有機基を表し、Wはめっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する非解離性官能基を表し、Vはイオン性極性基を表す。
なお、本明細書において有機基とは、炭素を有する置換基を指す。
【0017】
〜Rが、置換若しくは無置換のアルキル基である場合、無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられる。また、置換アルキル基としては、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換された、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられる。
なお、Rとしては、水素原子、メチル基、或いは、ヒドロキシル基又は臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
としては、水素原子、メチル基、或いは、ヒドロキシル基又は臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
としては、水素原子が好ましい。
としては、水素原子が好ましい。
としては、水素原子、メチル基、或いは、ヒドロキシル基又は臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
としては、水素原子、メチル基、或いは、ヒドロキシル基又は臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
更に、特定ポリマーの柔軟性の観点から、R、R、及びRはいずれも水素原子が好ましい。
【0018】
X、Y、Z、及びUが、置換若しくは無置換の二価の有機基の場合、該二価の有機基としては、置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基が挙げられる。
X、Y、Z、及びUは、好ましくは、単結合、エステル基、アミド基、エーテル基であり、より好ましくは、単結合、エステル基、アミド基であり、X、Z、及びUにおいては、最も好ましくは、単結合、エステル基であり、更に、Yに関しては、前記単結合及びエステル基以外に、アミド基も最も好ましいものの1つとして挙げることができる。
【0019】
また、L、L、及びLは、それぞれ、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基、芳香族基、又はこれらを組み合わせた基が好ましい態様の1つである。該アルキレン基と芳香族基とを組み合わせた基は、更に、エーテル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基を介していてもよい。中でも、L、L、及びLはそれぞれ総炭素数が1〜15が好ましく、特に無置換が好ましい。なお、ここで、総炭素数とは、例えば、Lで表される置換若しくは無置換の二価の有機基に含まれる総炭素原子数を意味する。L及びLの場合も同様である。
具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、フェニレン基、及びこれらの基が、メトキシ基、ヒドロキシル基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換されたもの、更には、これらを組み合わせた基が挙げられる。
【0020】
なお、前記ユニット(A)におけるLにおける総炭素数は、1〜10がより好ましく、Lで表される二価の有機基は直鎖状であってもよく、分岐鎖を有していてもよい。また、Lに導入可能な置換基としては、エステル基、アミド基、ハロゲン原子、ホウ素原子、エーテル基、リン酸エステル基、硫酸エステル基、及び、チオール基が挙げられ、これらをその構造中に1つ以上有していてもよい。なお、形成される被めっき層の疎水性を維持するという観点からは、水酸基、チオール基、アミノ基、カルボン酸基、リン酸基などの置換基を有することは好ましくない。
特に、Lとしては、その連結基の構造中に実質的に水酸基を有しない態様が好ましい。Lに水酸基を有しない場合、水酸基を含む構造に比較して、架橋部に無電解めっき液(アルカリ水)を含有し難く、めっき液に起因する膜強度の低下、それに伴う形成された金属膜の密着力低下がより抑制される。
【0021】
特に、式(C)で表されるユニットにおいては、適度な酸性(他の官能基を分解しない)、アルカリ水溶液中では親水性を示し、水を乾燥すると環状構造により疎水性を示しやすいという点から、Vがカルボン酸基であり、かつ、LのVとの連結部に4員〜8員の環構造を有することが好ましい。ここで、4員〜8員の環構造としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、フェニル基が挙げられる。これらの中でも、シクロヘキシル基、フェニル基が特に好ましい。即ち、この態様では、式(C)で表されるユニットの末端が脂環式カルボン酸基となる。
また、式(C)で表されるユニットにおいては、適度な酸性(他の官能基を分解しない)、アルカリ水溶液中では親水性を示し、水を乾燥すると長鎖アルキル基構造により疎水性を示しやすいという点から、Vがカルボン酸基であり、かつ、Lの鎖長が6原子〜18原子が好ましい。ここで、Lの鎖長とは、式(C)中のUとVとの距離を表し、UとVとの間が6原子〜18原子の範囲で離間していることが好ましいことを意味する。Lの鎖長として、より好ましくは、6原子〜14原子であり、更に好ましくは、6原子〜12原子である。
【0022】
一方、式(C)で表されるユニットにおいて、Vがカルボン酸基であり、かつ、U及びLが単結合であることも好ましい態様の1つである。
この態様であると、ポリマー主鎖でカルボン酸基が遮蔽されると予想され、その結果、疎水化でき、金属パターン形成直後において、基板と金属パターンとの密着性を高めることができ、また、被めっき層の水に対する耐性を高めることができる。
【0023】
式(B)で表されるユニットにおいて、Wはめっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する非解離性官能基を表し、この非解離性官能基としては前述したものが挙げられる。中でも、Wは、極性が高く、めっき触媒等への吸着能が高いといった点で、シアノ基又はエーテル基が好ましい。
中でも、下記式(B−1)で表されるユニットが好ましい。なお、下記式(B−1)において、Rは前記式(B)で表されるユニットにおけるRと同義である。式(B)で表されるユニットとして、下記式(B−1)で表されるユニットを選択することで、ポリマーの重量あたりに含まれるシアノ基の数が多くなり、被めっき層形成用組成物の単位重量あたりのめっき触媒等の吸着効率がより向上する。
【0024】
【化3】

【0025】
前記式(C)で表されるユニットにおいて、Vはイオン性極性基を表し、このイオン性極性基としては前述したものが挙げられる。これらの中でも、適度な酸性(他の官能基を分解しない)という点から、前述のように、カルボン酸基が好ましい。
特に、下記式(C−1)で表されるユニットが好ましい。なお、下記式(C−1)において、R及びLは前記したのと同義である。
【0026】
【化4】

【0027】
前記式(A)で表されるユニットは、反応性(硬化性、重合性)及び合成の際のゲル化の抑制の点から、共重合ユニット全体に対し5mol%〜50mol%で含まれることが好ましく、更に好ましくは10mol%〜40mol%である。
前記式(B)で表されるユニットは、めっき触媒又はその前駆体に対する吸着性、合成のしやすさの観点から、共重合ユニット全体に対し5mol%〜40mol%で含まれることが好ましく、更に好ましくは10mol%〜35mol%である。
前記式(C)で表されるユニットは、水溶液による現像性と耐湿密着性の点から、共重合ユニット全体に対し20mol%〜70mol%で含まれることが好ましく、更に好ましくは20mol%〜60mol%である。特に好ましくは30mol%〜50mol%である。この範囲にて、より現像性と耐湿密着力を両立することができる。
【0028】
なお、特定ポリマーのイオン性極性価(イオン性極性基がカルボン酸基の場合は酸価)としては、1.5mmol/g〜7.0mmol/gが好ましく、2.0mmol/g〜5.0mmol/gがより好ましく、3.0mmol/g〜4.5mmol/gが特に好ましい。前記イオン性極性価が、この範囲であることで、水溶液での現像性付与と湿熱経時時の密着力低下の抑制とを両立させることができる。
なお、イオン性極性を有するユニットの分子量により最適なユニット数とイオン性極性価は変化するが、その場合はイオン性極性価が前記範囲に入ることを優先とする。
【0029】
前記特定ポリマーの具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。例えば、後述するユニット(A)、(B−1)、及び(C−1)を含む特定ポリマーの具体例として挙げた各種ポリマーもまた、前記特定ポリマーとして好適に挙げることができる。
なお、これらの具体例の重量平均分子量は、いずれも、3,000〜150,000の範囲である。
【0030】
【化5】

【0031】
【化6】

【0032】
【化7】

【0033】
【化8】

【0034】
【化9】

【0035】
【化10】

【0036】
【化11】

【0037】
【化12】

【0038】
前記特定ポリマーの重量平均分子量は、3,000以上15万以下が好ましく、更に好ましくは5,000以上10万以下である。特に、重合感度の観点から、前記特定ポリマーの重量平均分子量は、20,000以上が好ましい。更には、光硬化させて得られる被めっき層の膜厚を厚くし、めっき触媒又はその前駆体をより多く吸着させるといった観点から、重量平均分子量は60,000以上が最も好ましい。なお、合成中のゲル化抑制の観点から分子量の上限値は15万が好ましく、更に好ましくは10万以下である。
ここで、前記重量平均分子量とは、GPC(使用溶媒:N−メチルピロリドン)を用いてポリスチレン換算により測定される値であり、例えば、次の条件で測定することができる。
・カラム:ガードカラム TOSOH TSKguardcolum Super AW-H
分離カラム TOSOH TSKgel Super AWM-H(サイズ6.0mm×15cmを3本連結)
・溶離液:N−メチルピロリドン(LiBrを10mM含有)
・流速:0.35mL/min
・検出方法:RI
・温度:カラム40℃、インレット40℃、RI40℃
・サンプル濃度:0.1質量%
・注入量:60μL
【0039】
前記(A)〜(C)で表されるユニットを含む共重合体の合成方法としては、特開2010−248464号公報の段落〔0055〕〜〔0084〕に詳細に記載されている。
【0040】
前記被めっき層形成用組成物は、溶剤として有機溶剤のみを用いた場合は、前記特定ポリマーを、前記被めっき層形成用組成物全体に対して、0.01質量%〜50質量%で含有することが好ましく、0.01質量%〜30質量%がより好ましい。
また、前記被めっき層形成用組成物に溶剤として水と水溶性有機溶剤との混合液を使用する場合は、特定ポリマーの最適な濃度範囲としては、前記被めっき層形成用組成物全体に対して、0.01質量%〜25質量%が好ましく、0.01質量%〜15質量%がより好ましい。
【0041】
−溶剤−
前記被めっき層形成用組成物は、前記特定ポリマーの他に、該特定ポリマーを溶解しうる溶剤を含有することが好ましい。
前記使用できる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶剤;酢酸等の酸;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;ホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶剤;アセトニトリル、プロピロニトリル等のニトリル系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル系溶剤;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート系溶剤;エーテル系溶剤、グリコール系溶剤、アミン系溶剤、チオール系溶剤、ハロゲン系溶剤などが挙げられる。
また、相互作用性基としてシアノ基を有する特定ポリマーを含有する組成物を塗布する場合は、取り扱い安さから沸点が50℃〜150℃の溶剤が好ましい。なお、これらの溶剤は単一で使用してもよいし、混合して使用してもよい。
【0042】
−水溶性有機溶剤−
前記被めっき層形成用組成物において、イオン性極性基を塩基で中和し、親水性を上げることで、溶剤として水を使用することもできる。なお、塗布時の塗布性を考えると溶剤として水と水溶性有機溶剤とを併用することが好ましく、その際の有機溶剤の含有量は、全溶剤に対して、0.1質量%〜40質量%が好ましい。ここで、前記水溶性有機溶剤とは、前記含有量の範囲において水と溶解しうるものを意味する。このような性質を有している有機溶剤であれば、特に限定されず、組成物の溶剤として用いることができる。前記水溶性有機溶剤としては、例えば、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、アミン系溶媒、チオール系溶媒、ハロゲン系溶媒などが好ましく用いられる。
【0043】
前記ケトン系溶媒としては、例えば、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、γ−ブチロラクトン、ヒドロキシアセトンなどが挙げられる。前記エステル系溶媒としては、例えば、酢酸2−(2−エトキシエトキシ)エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、メチルセロソルブアセテート、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、グリコール酸メチル、グリコール酸エチルなどが挙げられる。
【0044】
前記アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、3−アセチル−1−プロパノール、2−(アリルオキシ)エタノール、2−アミノエタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、(±)−2−アミノ−1−プロパノール、3−アミノ−1−プロパノール、2−ジメチルアミノエタノール、2,3−エポキシ−1−プロパノール、エチレングリコール、2−フルオロエタノール、ジアセトンアルコール、2−メチルシクロヘキサノール、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、グリセリン、2,2’,2”−ニトリロトリエタノール、2−ピリジンメタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、2−[2−(ベンジルオキシ)エトキシ]エタノール、2,3−ブタンジオール、2−ブトキシエタノール、2,2’−チオジエタノール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,3−プロパンジオール、ジグリセリン、2,2’−メチルイミノジエタノール、1,2−ペンタンジオールなどが挙げられる。
【0045】
前記エーテル系溶媒としては、例えば、ビス(2−エトキシエチル)エーテル、ビス[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]エーテル、1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン、ビス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]エーテル、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、2−[2−(2−クロロエトキシ)エトキシ]エタノール、2−エトキシエタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−イソブトキシエタノール、2−(2−イソブトキシエトキシ)エタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシ酢酸、2−メトキシエタノールなどが挙げられる。
【0046】
前記グリコール系溶媒としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどが挙げられる。
前記アミン系溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。
前記チオール系溶媒としては、例えば、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノールなどが挙げられる。
前記ハロゲン系溶媒としては、例えば、3−ブロモベンジルアルコール、2−クロロエタノール、3−クロロ−1,2−プロパンジオールなどが挙げられる。
【0047】
前記水溶性有機溶剤の沸点は蒸散のし易さの観点から、70℃〜150℃が好ましく、65℃〜120℃がより好ましい。このような水溶性有機溶剤としては、例えば、エタノール(沸点:78℃)、イソプロピルアルコール(沸点:82℃)、n−プロピルアルコール(沸点:97℃)、テトラヒドロフラン(THF)(沸点:66℃)、1−メトシキ−2−プロパノール(沸点:119℃)、メチルエチルケトン(MEK)(沸点:80℃)などが好ましく挙げられる。
【0048】
また、上述のように、水と水溶性有機溶剤の混合液を用いる場合、作業のし易さの観点から、その引火点としては30℃以上のものが好ましく、40℃以上がより好ましく、60℃以上が更に好ましい。
前記引火点は、JIS−K2265に準拠するタグ密閉式によって得られた測定値を意味する。
【0049】
−水−
前記被めっき層形成用組成物に使用される水は、不純物を含まないことが好ましく、RO水、脱イオン水、蒸留水、精製水などが好ましく、脱イオン水、蒸留水がより好ましい。
【0050】
−特定ポリマーの溶解性を高めるための添加剤−
前記被めっき層形成用組成物に水と水溶性有機溶剤との混合液を使用する場合は、特定ポリマーの溶解性を高めるために添加剤を使用することができる。
例えば、溶質である特定ポリマーがカルボン酸基などの酸性基を有する場合は、この酸性基をカルボン酸ナトリウムなどの塩とすることで、この特定ポリマーは、水と水溶性有機溶剤との混合液に溶解し易くなる。カルボン酸基をカルボン酸ナトリウムに変換するために使用する添加剤としては、塩基性の化合物が使用することができ、具体的には、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸リチウム、水酸化リチウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、アンモニア、DBU、DBNなどが使用できる。特に好ましくは水溶性化の度合い、最適な塩基性度の観点から、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムが好ましい。
【0051】
−光重合開始剤−
前記被めっき層形成用組成物は、エネルギー付与に対する感度を高めるために、光重合開始剤を含有することが好ましい。
前記光重合開始剤としては、紫外線、電子線などの照射によりラジカルを発生し,そのラジカルが重合のきっかけとなるラジカル発生剤が好適である。
前記ラジカル発生剤としては、例えば、芳香族ケトン類、オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、ピリジウム類化合物などが挙げられる。
前記光重合開始剤における光吸収量は、2.5%以上が好ましく、3%以上がより好ましく、3.5%以上が更に好ましい。また上限値は、90%以下が好ましく、80%以下がより好ましく、20%以下が更に好ましい。前記光吸収量が、2.5%未満であると、感度が不足し、露光パターンが得られないことがある。
前記光吸収量は、例えば、レーザーパワーメータにより測定することができる。
【0052】
−増感剤−
前記被めっき層形成用組成物には、エネルギー付与が露光で行われる場合、その露光に対する感度をより高める目的で、前記光重合開始剤(ラジカル発生剤)に加え、増感剤を含有させることもできる。
前記増感剤は、活性エネルギー線により励起状態となり、ラジカル発生剤と相互作用(例えば、エネルギー移動、電子移動等)することにより、ラジカルの発生を促進することが可能である。
【0053】
前記増感剤としては、特に制限はなく、公知の増感剤の中から露光波長に合わせて、適宜選択することができる。
具体的には、例えば、公知の多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル等)、シアニン類(例えば、インドカルボシアニン、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン等)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー等)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン等)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン等)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム等)、アクリドン類(例えば、アクリドン、クロロアクリドン、N−メチルアクリドン、N−ブチルアクリドン、N−ブチル−クロロアクリドン等)、クマリン類(例えば、3−(2−ベンゾフロイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2−ベンゾフロイル)−7−(1−ピロリジニル)クマリン、3−ベンゾイル−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2−メトキシベンゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(4−ジメチルアミノベンゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3,3’−カルボニルビス(5,7−ジ−n−プロポキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−ベンゾイル−7−メトキシクマリン、3−(2−フロイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(4−ジエチルアミノシンナモイル)−7−ジエチルアミノクマリン、7−メトキシ−3−(3−ピリジルカルボニル)クマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジプロポキシクマリン等が挙げられる。その他として、特開平5−19475号、特開平7−271028号、特開2002−363206号、特開2002−363207号、特開2002−363208号、特開2002−363209号等の各公報に記載のクマリン化合物など)などが挙げられる。
【0054】
前記ラジカル発生剤と増感剤との組合せとしては、例えば、特開2001−305734号公報に記載の電子移動型開始系[(1)電子供与型開始剤及び増感色素、(2)電子受容型開始剤及び増感色素、(3)電子供与型開始剤、増感色素及び電子受容型開始剤(三元開始系)]などの組合せが挙げられる。
これらの中でも、トリアジン系の光重合開始剤と、360nm〜700nmの波長に極大吸収を有する増感剤との組合せが好ましく挙げられる。
【0055】
その他増感剤としては、塩基性核を有する増感剤、酸性核を有する増感剤、蛍光増白剤を有する増感剤などを用いることもできる。
【0056】
前記増感剤は、前記被めっき層形成用組成物中、前記特定ポリマーの質量に対して、1質量%〜30質量%程度の量で含有させることが好ましい。
【0057】
−界面活性剤−
前記被めっき層形成用組成物は、界面活性剤を含有していてもよい。
前記界面活性剤は、前述の溶剤に溶解するものであればよく、そのような界面活性剤としては、例えば、n−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤;n−ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド等のカチオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル(市販品としては、例えば、エマルゲン910、花王株式会社製など)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(市販品としては、例えば、商品名「ツイーン20」など)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等の非イオン性界面活性剤などが挙げられる。
【0058】
−可塑剤−
前記被めっき層形成用組成物には、必要に応じて可塑剤を添加することもできる。使用できる可塑剤としては、一般的な可塑剤が使用でき、例えば、フタル酸エステル類(ジメチルエステル、ジエチルエステル、ジブチルエステル、ジ−2−エチルヘキシルエステル、ジノルマルオクチルエステル、ジイソノニルエステル、ジノニルエステル、ジイソデシルエステル、ブチルベンジルエステル)、アジピン酸エステル類(ジオクチルエステル、ジイソノニルエステル)、アゼラインサンジオクチル、セバシンサンエステル類(ジブチルエステル、ジオクチルエステル)リン酸トリクレシル、アセチルクエン酸トリブチル、エポキシ化大豆油、トリメリット酸トリオクチル、塩素化パラフィン、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンのような高沸点溶媒も使用することができる。
【0059】
−重合禁止剤−
前記被めっき層形成用組成物には、必要に応じて、重合禁止剤を添加することもできる。
前記重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ジターシャリーブチルハイドロキノン、2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノン等のハイドロキノン類;p−メトキシフェノール、フェノール等のフェノール類;ベンゾキノン類、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニロキシフリーラジカル)、4−ヒドロキシTEMPO等のフリーラジカル類;フェノチアジン類、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン、そのアルミニウム塩等のニトロソアミン類;カテコール類を使用することができる。
【0060】
−硬化剤、硬化促進剤−
前記被めっき層形成用組成物を用いて密着補助層上に被めっき層を形成する場合、密着補助層の硬化を進めるために、被めっき層形成用組成物に硬化剤及び/又は硬化促進剤を添加することができる。例えば、密着補助層にエポキシ化合物が含まれる場合の硬化剤及び/又は硬化促進剤として、重付加型では、脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミン、芳香族ポリアミン、ポリアミド、酸無水物、フェノール、フェノールノボラック、ポリメルカプタン、活性水素を2個以上持つ化合物等、触媒型としては、脂肪族第三アミン、芳香族第三アミン、イミダゾール化合物、ルイス酸錯体などが挙げられる。
また、熱、光、湿気、圧力、酸、塩基などにより硬化開始するものとしては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ポリアミドアミン、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキシスピロ(5,5)ウンデカンアダクト、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、m−キシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミド、アジピン酸ジヒラジド、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ドデシル無水コハク酸、無水クロレンディック酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメート)、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、ポリアゼライン酸無水物、フェノールノボラック、キシリレンノボラック、ビスフェノールAノボラック、トリフェニルメタンノボラック、ビフェニルノボラック、ジシクロペンタジエンフェノールノボラック、テルペンフェノールノボラック、ポリメルカプタン、ポリサルファイド、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール−トリ−2−エチルヘキシル酸塩、ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−(2−メチルイミダゾリル−(1))−エチルS−トリアジン、BFモノエチルアミン錯体、ルイス酸錯体、有機酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル、メラミン誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアミン塩、アミンイミド化合物、芳香族ジアゾニウム塩、ジアーリルヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、トリアリールセレニウム塩、ケチミン化合物などが挙げられる。
【0061】
これらの硬化剤及び/又は硬化促進剤は、被めっき層形成用組成物の塗布性、基板及びめっき膜との密着性などの観点から、溶剤を除去した残りの不揮発成分の0〜50質量%程度まで添加することが好ましい。
なお、硬化剤及び/又は硬化促進剤は密着補助層に添加してもよく、その場合は、密着補助層に添加した量と被めっき層形成用組成物中に添加した総和量で前記範囲を満たすことが好ましい。
【0062】
−その他の添加剤−
前記被めっき層形成用組成物には、更に、ゴム成分(例えば、CTBN)、難燃化剤(例えば、りん系難燃化剤)、希釈剤、チキソトロピー化剤、顔料、消泡剤、レベリング剤、カップリング剤、水溶性物質(例えば、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等のミネラル成分)、溶解性低分子物質(例えば、εカプロラクタム、ポリエチレングリコール等のポリアルキルグリコール)などを添加してもよい。また、これらの添加剤は必要に応じて密着補助層に添加してもよい。
【0063】
前記被めっき層形成用組成物は、被めっき層中の、特定ポリマーが、分子内のラジカル重合性基により基板に結合していることが好ましい態様である。
【0064】
前記被めっき層形成用組成物を基板に接触させる場合には、その塗布量は、めっき触媒又はその前駆体との充分な相互作用形成性の観点からは、固形分換算で、0.1g/m〜10g/mが好ましく、0.5g/m〜5g/mがより好ましい。
なお、基板上に、特定ポリマーを含有する被めっき層形成用組成物を塗布し、乾燥させて、特定ポリマーを含有する層を形成する場合、塗布と乾燥との間に、20℃〜40℃で0.5時間〜2時間放置させて、残存する溶剤を除去してもよい。
【0065】
前記被めっき層形成用組成物と基板との接触は、基板を、該被めっき層形成用組成物中に浸漬することで行ってもよいが、取り扱い性及び製造効率の観点からは、後述するように、被めっき層形成用組成物からなる層を基板表面(密着補助層表面)に、塗布法により形成することが好ましい。
なお、基板が樹脂フィルムであって、この樹脂フィルムの両面に対して被めっき層を形成する場合にも、被めっき層を両面同時に形成し易いといった観点から、塗布法を用いることが好ましい。
【0066】
−基板−
前記基板としては、形状保持性を有するものであればよく、その表面が、前述の特定ポリマーと化学結合しうる機能を有することが好ましい。具体的には、基板自体が露光によりラジカルを発生しうるものであるか、基材上に、露光によりラジカルを発生しうる中間層(例えば、後述する密着補助層)を設け、この基材と中間層とで基板が構成されていてもよい。
【0067】
前記基材は、寸度的に安定な板状物が好ましく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリイミド、エポキシ、ビスマレインイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン等)、前記の如き金属がラミネート若しくは蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が挙げられる。これらの中でも、エポキシ樹脂、又はポリイミド樹脂が特に好ましい。
なお、これらの基材表面が、特定ポリマーが直接化学結合した状態を形成しうる機能を有している場合には、その基材そのものを基板として用いてもよい。
【0068】
前記基板として、特開2005−281350号公報の段落番号〔0028〕〜〔0088〕に記載の重合開始部位を骨格中に有するポリイミドを含む基材を用いることもできる。
【0069】
また、本発明の金属パターン材料の製造方法により得られた金属パターン材料は、半導体パッケージ、各種電気配線基板等に適用することができる。このような用途に用いる場合は、以下に示す、絶縁性樹脂を含んだ基板、具体的には、絶縁性樹脂からなる基板、又は、絶縁性樹脂からなる層を基材上に有する基板を用いることが好ましい。
【0070】
前記絶縁性樹脂からなる基板、絶縁性樹脂からなる層を得る場合には、公知の絶縁性樹脂組成物が用いられる。この絶縁性樹脂組成物には、主たる樹脂に加え、目的に応じて種々の添加物を併用することができる。例えば、絶縁層の強度を高める目的で、多官能のアクリレートモノマーを添加する、絶縁体層の強度を高め、電気特性を改良する目的で、無機、若しくは有機の粒子を添加する、などの手段をとることもできる。
なお、本発明における「絶縁性樹脂」とは、公知の絶縁膜及び絶縁層に使用しうる程度の絶縁性を有する樹脂であることを意味するものであり、完全な絶縁体でないものであっても、目的に応じた絶縁性を有する樹脂であれば、本発明に適用しうる。
【0071】
前記絶縁性樹脂の具体例としては、例えば、熱硬化性樹脂でも熱可塑性樹脂でもまたそれらの混合物でもよい。前記熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリオレフィン系樹脂、イソシアネート系樹脂、ABS樹脂などが挙げられる。
前記エポキシ樹脂としては、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。それにより、耐熱性等に優れるものとなる。
前記ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、シクロオレフィン系樹脂、これらの樹脂の共重合体などが挙げられる。
【0072】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルエーテル、ポリエーテルイミドなどが挙げられる。
その他の熱可塑性樹脂としては、1,2−ビス(ビニルフェニレン)エタン樹脂(1,2−Bis(vinylphenyl)ethane)、若しくはこれとポリフェニレンエーテル樹脂との変性樹脂(天羽悟ら、Journal of Applied Polymer Science Vol.92,1252−1258(2004)に記載)、液晶性ポリマー(具体的には、クラレ社製のベクスターなど)、フッ素樹脂(PTFE)などが挙げられる。
【0073】
熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。これはそれぞれの欠点を補いより優れた効果を発現する目的で行われる。例えば、ポリフェニレンエーテル(PPE)などの熱可塑性樹脂は熱に対しての耐性が低いため、熱硬化性樹脂などとのアロイ化が行われている。例えば、PPEとエポキシ、トリアリルイソシアネートとのアロイ化、或いは重合性官能基を導入したPPE樹脂とその他の熱硬化性樹脂とのアロイ化として使用される。またシアネートエステルは熱硬化性の中ではもっとも誘電特性の優れる樹脂であるが、それ単独で使用されることは少なく、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、熱可塑性樹脂などの変性樹脂として使用される。これらの詳細に関しては、「電子技術」2002/9号、P35に記載されている。また、熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂及び/又はフェノール樹脂を含み、熱可塑性樹脂としてフェノキシ樹脂及び/又はポリエーテルスルフォン(PES)を含むものも誘電特性を改善するために使用される。
【0074】
前記絶縁性樹脂組成物には、架橋を進めるために重合性の二重結合を有する化合物のようなもの、具体的には、アクリレート、メタクリレート化合物を含有していてもよく、特に多官能のものが好ましい。そのほか、重合性の二重結合を有する化合物として、熱硬化性樹脂、若しくは熱可塑性樹脂、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂等に、メタクリル酸、アクリル酸等を用い、樹脂の一部を(メタ)アクリル化反応させた樹脂を用いてもよい。
【0075】
前記絶縁性樹脂組成物には、樹脂被膜の機械強度、耐熱性、耐候性、難燃性、耐水性、電気特性などの特性を強化するために、樹脂と他の成分とのコンポジット(複合素材)も使用することができる。複合化するのに使用される材料としては、紙、ガラス繊維、シリカ粒子、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂などが挙げられる。
【0076】
更に、前記絶縁性樹脂組成物には、必要に応じて一般の配線板用樹脂材料に用いられる充填剤、例えば、シリカ、アルミナ、クレー、タルク、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウムなどの無機フィラー、硬化エポキシ樹脂、架橋ベンゾグアナミン樹脂、架橋アクリルポリマーなどの有機フィラーを一種又は二種以上配合してもよい。これらの中でも、充填材としてはシリカを用いることが好ましい。
また、更に、この絶縁性樹脂組成物には、必要に応じて着色剤、難燃剤、接着性付与剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、などの各種添加剤を一種又は二種以上添加してもよい。
【0077】
これらの材料を絶縁性樹脂組成物に添加する場合は、いずれも、樹脂100質量部に対して、1質量部〜200質量部が好ましく、10質量部〜80質量部がより好ましい。前記添加量が、1質量部未満であると、前記の特性を強化する効果がなく、200質量部を超えると、樹脂特有の強度などの特性が低下することがある。
【0078】
このような用途に用いる場合の基板として、具体的には、1GHzにおける誘電率(比誘電率)が3.5以下である絶縁性樹脂からなる基板であるか、又は、該絶縁性樹脂からなる層を基材上に有する基板が好ましい。また、1GHzにおける誘電正接が0.01以下である絶縁性樹脂からなる基板であるか、又は、該絶縁性樹脂からなる層を基材上に有する基板が好ましい。
絶縁性樹脂の誘電率及び誘電正接は、常法により測定することができる。例えば、「第18回エレクトロニクス実装学会学術講演大会要旨集」、2004年、p189、に記載の方法に基づき、空洞共振器摂動法(例えば、極薄シート用εr、tanδ測定器、キーコム株式会社製)を用いて測定することができる。
このように、本発明においては、誘電率及び誘電正接の観点から絶縁樹脂材料を選択することも有用である。誘電率が3.5以下であり、誘電正接が0.01以下の絶縁性樹脂としては、液晶ポリマー、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、シアネートエステル樹脂、ビス(ビスフェニレン)エタン樹脂などが挙げられ、更にそれらの変性樹脂も含まれる。
【0079】
前記基板は、半導体パッケージ、各種電気配線基板等への用途を考慮すると、表面凹凸は500nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましく、50nm以下が更に好ましく、20nm以下が特に好ましい。この基板の表面凹凸(中間層、密着補助層が設けられている場合はその層の表面凹凸)が小さくなるほど、得られた金属パターン材料を配線等に適用した場合に、高周波送電時の電気損失が少なくなり好ましい。
【0080】
前記基板が板状物、例えば、樹脂フィルム(プラスチックフィルム)であれば、その両面に露光工程を施し、後述する現像工程を経れば、樹脂フィルムの両面に被めっき層を形成することができる。
このように樹脂フィルム(基板)の両面に被めっき層が形成された場合には、更に、後述する触媒付与工程、及びめっき工程を行うことで、両面に金属膜が形成された金属パターン材料を得ることができる。
【0081】
−密着補助層−
以下、前記密着補助層について説明する。なお、前記基材が板状物であれば、その両面に密着補助層を形成してもよい。前記密着補助層としては、特定ポリマーが光硬化時に化学結合を生じるものが好ましい。このような化学結合を生じる密着補助層には、光重合開始剤を導入することが好ましい。また、前記密着補助層は作業性の観点から水分散ラテックスを用いて形成されることが好ましい。
【0082】
前記密着補助層は、基板と被めっき層との密着を確保する中間層であり、この層は基板と被めっき層に親和性があるものでもよく、硬化時に特定ポリマーと反応し、化学結合を形成してもよい。
前記密着補助層としては、基材との密着性が良好な樹脂組成物、及び、露光によりラジカルを発生しうる化合物を用いて形成されることが好ましい。なお、樹脂組成物を構成する樹脂が、ラジカルを発生しうる部位を有する場合には、ラジカルを発生しうる化合物を別途添加する必要はない。
【0083】
前記密着補助層としては、例えば、基材が、多層積層板、ビルドアップ基板、若しくはフレキシブル基板の材料として用いられてきた公知の絶縁樹脂からなる場合には、該基材との密着性の観点から、密着補助層を形成する際に用いられる樹脂組成物としても、絶縁樹脂組成物が用いられることが好ましい。
以下、基材が絶縁樹脂からなり、密着補助層が絶縁樹脂組成物から形成される態様について説明する。
【0084】
前記密着補助層を形成する際に用いられる絶縁樹脂組成物は、基材を構成する電気的絶縁性の樹脂と同じものを含んでいてもよく、異なっていてもよいが、ガラス転移点、弾性率、線膨張係数といった熱物性的が近いものを使用することが好ましい。具体的には、例えば、基材を構成する絶縁樹脂と同じ種類の絶縁樹脂を使用することが密着の点で好ましい。また、これ以外の成分として、前記密着補助層の強度を高める、また、電気特性を改良するために、無機若しくは有機の粒子を添加してもよい。
【0085】
なお、本発明において、前記密着補助層に使用される絶縁樹脂とは、公知の絶縁膜に使用しうる程度の絶縁性を有する樹脂を意味するものであり、完全な絶縁体でないものであっても、目的に応じた絶縁性を有する樹脂であれば、本発明に適用しうる。
前記絶縁樹脂の具体例としては、例えば、熱硬化性樹脂でも熱可塑性樹脂でもまたそれらの混合物でもよい。前記熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリオレフィン系樹脂、イソシアネート系樹脂などが挙げられる。前記熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルエーテル、ポリエーテルイミド、ABS樹脂などが挙げられる。
前記熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0086】
また、前記密着補助層に用いられる絶縁樹脂としては、めっき触媒受容性の感光性樹脂組成物と相互作用を形成し得る活性点を発生させる骨格を有する樹脂を用いることもできる。例えば、特開2005−307140号公報の段落番号〔0018〕〜〔0078〕に記載の重合開始部位を骨格中に有するポリイミドが用いられる。
【0087】
前記密着補助層の形成には、ポリマーラテックスを使用してもよい。前記ポリマーラテックスとは、水に不溶なポリマーの微粒子が水に分散したものである。詳細には、例えば「高分子ラテックスの化学」室井宗一著、高分子刊行会発行、昭和48年)に記載されている。
前記ポリマーラテックスとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレア/ウレタン、SBR(スチレン−ブタジエン系)、MBR(MMA/ブタジエン、アクリル/ブタジエン)、NBR(アクリロニトリル/ブタジエン)、NR(天然ゴム)、アクリルゴム、BR(ブタジエンゴム)、CR(クロロプレンゴム)、IR(イソプレンゴム)、VP(SBR/ジビニルピリジン)、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)又はこれらの共重合体からなるポリマーラテックスなどが挙げられる。特に、シアノ基を含むポリマーラテックスが好ましく、具体的には、Nipol 1561(日本ゼオン株式会社製)、Nipol 1562(日本ゼオン株式会社製)、Nipol 1577K(日本ゼオン株式会社製)、LX 531(日本ゼオン株式会社製)、LX 531B(日本ゼオン株式会社製)、Nipol SX1503A(日本ゼオン株式会社製)、NK−300(日本エイアンドエル株式会社製)などが挙げられる。
また、前記ポリマーラテックスには、種類の異なるポリマーラテックスを併用することもできる。併用できるポリマーラテックスとしては、例えば、SBRとNR、IRとNR、CRとNR、NBRでニトリル量が異なるもの、SBRでスチレン量が異なるもの、SBRとVP、NBRとMBR、SBRとNBR、SBRとMBR、BRとCR、NBRとVP、CRとVPなどが挙げられる。
前記密着補助層をポリマーラテックスにより形成する場合には、ポリマーラテックス分散液を塗布し、乾燥すればよい。
【0088】
前記密着補助層は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、目的に応じて、種々の化合物を添加することができる。具体的には、例えば、加熱時に応力を緩和させることができる、ゴム、SBRラテックスのような物質、膜性改良のためのバインダー、可塑剤、界面活性剤、粘度調整剤などが挙げられる。
【0089】
また、前記密着補助層には、樹脂被膜の機械強度、耐熱性、耐候性、難燃性、耐水性、電気特性などの特性を強化するために、樹脂と他の成分とのコンポジット(複合素材)も使用することができる。複合化するのに使用される材料としては、例えば、紙、ガラス繊維、シリカ粒子、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂などが挙げられる。
【0090】
更に、前記密着補助層には、必要に応じて、一般の配線板用樹脂材料に用いられる充填剤、例えば、シリカ、アルミナ、クレー、タルク、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウムなどの無機フィラー、硬化エポキシ樹脂、架橋ベンゾグアナミン樹脂、架橋アクリルポリマーなどの有機フィラーを一種又は二種以上配合してもよい。
【0091】
また、更に前記密着補助層には、必要に応じて、着色剤、難燃剤、接着性付与剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの各種添加剤を、一種又は二種以上添加してもよい。
【0092】
これらの材料を添加する場合は、いずれも、主成分となる樹脂に対して、0質量%〜200質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは0質量%〜80質量%の範囲で添加される。前記密着補助層と隣接する基材とが、熱及び電気に対して同じ若しくは近い物性値を示す場合には、これら添加物は必ずしも添加する必要はない。添加物を、樹脂に対して200質量%を超える範囲で用いる場合には、樹脂自体が本来有する強度などの特性が低下する懸念がある。
【0093】
前記密着補助層には、前述のように、樹脂組成物と露光によりラジカルを発生しうる化合物が用いられることが好ましい。
ここで、露光によりラジカルを発生しうる化合物としては、従来公知の光重合開始剤が用いられる。
前記光重合開始剤としては、例えば、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、2,2’−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のアセトフェノン類;ベンゾフェノン(4,4’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン等のケトン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類;ベンジルジメチルケタール、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のベンジルケタール類;トリフェニルスルホニウムクロライド、トリフェニルスルホニウムペンタフルオロフォスフェート等のスルホニウム塩;ジフェニルヨードニウムクロライド、ジフェニルヨードニウムサルフェート等のヨードニウム塩などが挙げられる。
【0094】
前記密着補助層に含有させる光重合開始剤(露光によりラジカルを発生しうる化合物)の量は、固形分で0.1質量%〜50質量%が好ましく、1.0質量%〜30質量%がより好ましい。
【0095】
前記密着補助層の厚みは、0.1μm〜10μmが好ましく、0.2μm〜5μmがより好ましい。前記密着補助層を設ける場合、厚みが前記一般的な範囲であれば、隣接する基材、被めっき層との十分な密着強度が得られ、また、一般の接着剤を用いるのに比較して薄層でありながら、その接着剤による層と同様の密着性が達成される。
【0096】
また、前記密着補助層の表面は、形成されるめっき金属膜の物性を向上させる観点から、JIS B 0601(1994年)、10点平均高さ法で測定した表面粗さRzは3μm以下が好ましく、Rzが1μm以下がより好ましい。密着補助層の表面平滑性が前記値の範囲内、即ち、平滑性が高い状態であれば、回路が極めて微細な(例えば、ライン/スペースの値が25/25μm以下の回路パターン)プリント配線板を製造する際に、好適に用いられる。
【0097】
前記密着補助層は基材表面に、塗布法、転写法、印刷法などの公知の層形成方法を適用して形成される。
前記密着補助層は、所望により、印刷法(例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法、インプリント法など)、現像法(例えば、湿式エッチング、乾式エッチング、アブレーション、光による硬化・可塑化(ネガ型/ポジ型)など)などでパターン化されてもよい。
【0098】
また、前記密着補助層は基材上に形成された後、何らかのエネルギーを与えて硬化処理を行ってもよい。与えるエネルギーとしては、光、熱、圧力、電子線などが挙げられるが、熱又は光が一般的であり、熱の場合は、100℃〜300℃の熱を5分間〜120分間加えることが好ましい。また、加熱硬化の条件は、基材の材料の種類、密着補助層を構成する樹脂組成物の種類等で異なり、これらの素材の硬化温度にもよるが、120℃〜220℃で20分間〜120分間の範囲で選択されることが好ましい。
【0099】
この硬化処理は密着補助層の形成後すぐに行ってもよく、密着補助層形成後に5分間〜10分間程度の予備硬化処理を行っておけば、密着補助層形成後に行われる他のすべてのそれぞれの工程を行ったあとに実施してもよい。
【0100】
前記密着補助層の形成後、その表面に形成される被めっき層に対する密着性向上の目的で、乾式及び/又は湿式法により表面を粗化してもよい。乾式粗化法としては、例えば、バフ、サンドブラスト等の機械的研磨、プラズマエッチングなどが挙げられる。一方、湿式粗化法としては、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸等の酸化剤、強塩基、樹脂膨潤溶剤を用いる方法等の化学薬品処理が挙げられる。
【0101】
前記露光工程では、前記特定めっき形成用光感応材料に対し、エネルギー付与を行う。前記エネルギー付与は、上述したとおり、特定のめっき形成用光感応材料を6μm未満のピッチで露光する際に、6μmピッチ露光時の最適パワーに対し、100%未満であり、かつ〔(ピッチ(μm)×75/6+25)−30〕%〜〔(ピッチ(μm)×75/6+25)+15〕%のレーザーパワーで露光を行う。
【0102】
前記エネルギー付与が行われると、その領域でのみ特定ポリマーの硬化反応が生起する。その結果、基板上では、前記めっき形成用光感応材料のエネルギー付与領域のみが硬化する。
【0103】
前記露光は、オートフォーカス記録することが好ましい。その時、被露光層の反射率は5%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、15%以上が更に好ましい。
この条件により、全面にわたって均一な幅及び形状のパターンを形成することができる。その結果、回路設計上の余裕度が増し、自由度の高い設計が可能となる。
【0104】
−レーザ光の種類−
前記レーザ光の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、液体レーザ、ガスレーザ、固体レーザ、半導体レーザ、自由電子レーザなどが挙げられる。これらの中でも、装置に組み込むためには、小型で液体、冷却が不要なものがよく、半導体レーザ、固体レーザが好ましく、自己変調ができる点で半導体レーザが特に好ましい。
【0105】
−レーザの線速−
本発明においては、低パワーで露光できるため、線速を高め、生産性を上げることができる。前記線速の下限値は、0.1m/s以上が好ましく、0.3m/s以上がより好ましく、0.5m/s以上が更に好ましい。
前記線速の上限値は、40m/s以下が好ましく、30m/s以下がより好ましく、20m/s以下が更に好ましい。
前記線速が、低すぎると、安定したサーボ、線幅が得られないことがあり、高すぎると、サーボはずれがおきたり、線幅が細くなったり、書けなくなったりすることがある。
【0106】
−サーボゲイン−
サーボゲイン(基準を50とする)の上限値は、80以下が好ましく、70以下がより好ましく、60以下が更に好ましい。
サーボゲインの下限値は、10以上が好ましく、15以上がより好ましく、20以上が更に好ましい。
前記サーボゲインが、高すぎると、発振して、サーボがはずれることがあり、低すぎると、サーボがかからないことがある。
【0107】
−サーボオフセット−
サーボオフセット(基準を50とする)の上限値は、100以下が好ましく、90以下がより好ましく、80以下が更に好ましい。
サーボオフセットの下限値は、10以上が好ましく、20以上がより好ましく、30以上が更に好ましい。
【0108】
−レーザ波長−
レーザ波長の上限値は、1,600nm以下が好ましく、1,100nmがより好ましく、900nm以下が更に好ましく、700nm以下が特に好ましい。
レーザ波長の下限値は、150nm以上が好ましく、200nm以上がより好ましく、250nm以上が更に好ましく、300nm以上が特に好ましい。
前記レーザ波長の好ましい範囲としては、150nm〜1,600nmがより好ましい。
【0109】
−開口数(NA)−
対物レンズの開口数(NA)は、上限値が、1.4以下が好ましく、0.98以下がより好ましく、0.9以下が更に好ましい。
開口数(NA)の下限値は、0.2以上が好ましく、0.4以上がより好ましく、0.5以上が更に好ましい。
前記開口数(NA)が、高すぎると、焦点深度が少なすぎ、サーボがはずれやすくなることがあり、低すぎると、スポットが大きくなり、細線がきれないことがある。
【0110】
−レーザーパワー−
レーザーパワーは、上限値が、200mW以下が好ましく、100mW以下がより好ましく、50mW以下が更に好ましい。
下限値は、0.5mW以上が好ましく、1mW以上がより好ましく、2mW以上が更に好ましい。
前記レーザーパワーが、高すぎると、材料が加熱変形することがあり、低すぎると、線速遅くなり、生産性が上がらないことがある。
【0111】
−レーザの発振形態−
前記レーザ光は、連続発振でもパルス発振でもよいが、連続発振の場合、半導体レーザが発光オンオフを変調できるので好ましい。パルス発振の場合は、出力が高められる固体レーザが好ましい。パルス発振は、その発光時間が1nsec以下になると、熱伝導で穴が広がる影響が低減できるので好ましい。
【0112】
−レーザ個数−
レーザは単独で用いるのが基本である。しかし、複数のレーザを合波させ、パワーを増しても構わない。また、異なる波長のレーザを組み合わせてもよい。複数レーザの場合、片方はフォーカスなどのサーボに用い、もう片方は加工に用いるといったことも可能である。
【0113】
−レーザのパターン−
レーザ加工により形成することができるパターン(形状)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば線状、点状、面状など様々なパターンが形成できる。
【0114】
<現像工程>
前記現像工程は、前記特定のめっき形成用光感応材料の未硬化部を現像し、パターン状の特定のめっき形成用光感応材料を形成する工程である。
【0115】
前記現像工程で用いられる水溶液としては、酸性水溶液、中性水溶液、アルカリ性水溶液などが挙げられる。
前記酸性水溶液としては、例えば、塩酸水溶液、硫酸水溶液、硝酸水溶液が用いられる。
前記中性水溶液としては、水に界面活性剤を溶解させたものが用いられアニオン性、ノニオン系、カチオン系の界面活性剤を使用することができる。
これらの中でも、アルカリ水溶液が好ましく、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウムの水溶液が用いられる。
これらの水溶液の濃度は0.01質量%〜10質量%が好ましい。濃度はイオン性極性性基のpKa、所望とする現像時間により決められる。
【0116】
また、現像方法としては、シャワー洗浄、浸漬法などが使用できる。また、現像液を攪拌して、そこへ露光後のめっき形成用光感応材料を浸漬して現像することもできる。
現像条件としては、現像温度は室温〜50℃が好ましく、現像時間は5秒間〜10分間が好ましい。
【0117】
前記現像により、基板上には、パターン状の被めっき層が形成される。
得られた被めっき層は、めっき触媒又はその前駆体との充分な相互作用形成性の観点から、前記被めっき層の厚みは、0.2μm〜1.5μmが好ましく、0.3μm〜1.5μmがより好ましく、0.6μm〜1.2μmが特に好ましい。
【0118】
<触媒付与工程>
前記触媒付与工程は、該パターン状の被めっき層が形成されためっき形成用光感応材料にめっき触媒又はその前駆体を付与する工程である。
【0119】
前記触媒付与工程においては、被めっき層を構成する特定ポリマーが有する相互作用性基が、その機能に応じて、付与されためっき触媒又はその前駆体を付着(吸着)する。
ここで、前記めっき触媒又はその前駆体としては、後述するめっき工程における、めっきの触媒、電極として機能するものが挙げられる。そのため、めっき触媒又はその前駆体は、めっき工程におけるめっきの種類により決定される。
前記触媒付与工程において用いられるめっき触媒又はその前駆体は、無電解めっき触媒又はその前駆体が好ましい。
【0120】
−無電解めっき触媒−
前記無電解めっき触媒は、無電解めっき時の活性核となるものであれば、如何なるものも用いることができ、具体的には、ものであり、自己触媒還元反応の触媒能を有する金属(Niよりイオン化傾向の低い無電解めっきできる金属として知られるもの)などが挙げられ、更に具体的には、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられる。中でも、多座配位可能なものが好ましく、特に、配位可能な官能基の種類数、触媒能の高さから、Ag、Pdが特に好ましい。
この無電解めっき触媒は、金属コロイドとして用いてもよい。一般に、金属コロイドは、荷電を持った界面活性剤又は荷電を持った保護剤が存在する溶液中において、金属イオンを還元することにより作製することができる。金属コロイドの荷電は、ここで使用される界面活性剤又は保護剤により調節することができる。
【0121】
−無電解めっき触媒前駆体−
前記触媒付与工程において用いられる無電解めっき触媒前駆体とは、化学反応により無電解めっき触媒となりうるものであれば、特に制限なく使用することができる。主には、前記無電解めっき触媒として挙げた金属の金属イオンが用いられる。無電解めっき触媒前駆体である金属イオンは、還元反応により無電解めっき触媒である0価金属になる。無電解めっき触媒前駆体である金属イオンは、被めっき層へ付与した後、無電解めっき浴への浸漬前に、別途還元反応により0価金属に変化させて無電解めっき触媒としてもよいし、無電解めっき触媒前駆体のまま無電解めっき浴に浸漬し、無電解めっき浴中の還元剤により金属(無電解めっき触媒)に変化させてもよい。
【0122】
実際には、無電解めっき前駆体である金属イオンは、金属塩を用いて被めっき層上に付与する。使用される金属塩としては、適切な溶媒に溶解して金属イオンと塩基(陰イオン)とに解離されるものであれば特に制限はなく、M(NO、MCln、2/n(SO)、M3/n(PO)(Mは、n価の金属原子を表す)などが挙げられる。金属イオンとしては、前記金属塩が解離したものを好適に用いることができる。具体例としては、例えば、Agイオン、Cuイオン、Alイオン、Niイオン、Coイオン、Feイオン、Pdイオンが挙げられる。これらの中でも、多座配位可能なものが好ましく、配位可能な官能基の種類数、及び触媒能の点で、Agイオン、Pdイオンが特に好ましい。
【0123】
前記無電解めっき触媒又はその前駆体の好ましい例の一つとして、パラジウム化合物が挙げられる。このパラジウム化合物は、めっき処理時に活性核となり金属を析出させる役割を果たす、めっき触媒(パラジウム)又はその前駆体(パラジウムイオン)として作用する。パラジウム化合物としては、パラジウムを含み、めっき処理の際に核として作用すれば、特に限定されないが、例えば、パラジウム(II)塩、パラジウム(0)錯体、パラジウムコロイドなどが挙げられる。
【0124】
前記パラジウム塩としては、例えば、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、硝酸パラジウム、臭化パラジウム、炭酸パラジウム、硫酸パラジウム、ビス(ベンゾニトリル)ジクロロパラジウム(II)、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム(II)、ビス(エチレンジアミン)パラジウム(II)塩化物などが挙げられる。これらの中でも、取り扱いやすさと溶解性の点で、硝酸パラジウム、酢酸パラジウム、硫酸パラジウム、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム(II)が特に好ましい。
前記パラジウム錯体としては、例えば、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム錯体、トリス(ベンジリデンアセトン)ジパラジウム錯体などが挙げられる。
前記パラジウムコロイドは、パラジウム(0)から構成される粒子で、その大きさは特に制限されないが、液中での安定性の観点から、5nm〜300nmが好ましく、10nm〜100nmがより好ましい。前記パラジウムコロイドは、必要に応じて、他の金属を含んでいてもよく、他の金属としては、例えば、スズなどが挙げられる。前記パラジウムコロイドとしては、例えば、スズ−パラジウムコロイドなどが挙げられる。なお、パラジウムコロイドは、公知の方法で合成してもよいし、市販品を使用してもよい。例えば、荷電を持った界面活性剤又は荷電を持った保護剤が存在する溶液中において、パラジウムイオンを還元することによりパラジウムコロイドを作製することができる。
【0125】
前記無電解めっき触媒又はその前駆体としては、選択的に被めっき層に吸着させることができるといった観点から、銀、及び銀イオンが好ましい別の例として挙げられる。
前記めっき触媒前駆体として銀イオンを用いる場合、以下に示すような銀化合物が解離したものを好適に用いることができる。銀化合物の具体例としては、例えば、硝酸銀、酢酸銀、硫酸銀、炭酸銀、シアン化銀、チオシアン酸銀、塩化銀、臭化銀、クロム酸銀、クロラニル酸銀、サリチル酸銀、ジエチルジチオカルバミン酸銀、ジエチルジチオカルバミド酸銀、p−トルエンスルホン酸銀などが挙げられる。これらの中でも、水溶性の観点から硝酸銀が特に好ましい。
【0126】
無電解めっき触媒である金属、或いは、無電解めっき前駆体である金属塩を被めっき層に付与する方法としては、金属を適当な分散媒に分散した分散液、或いは、金属塩を適切な溶媒で溶解し、解離した金属イオンを含む溶液を調製し、その分散液又は溶液を被めっき層上に塗布するか、或いは、その分散液又は溶液中に被めっき層が形成された基板を浸漬すればよい。
【0127】
また、前記露光工程において、基板上に、前記被めっき層形成用組成物を接触させるが、この組成物中に、無電解めっき触媒又はその前駆体を添加する方法を用いてもよい。つまり、特定ポリマーと、無電解めっき触媒又はその前駆体と、を含有する組成物(本発明の被めっき層形成用組成物)を、基板上に接触させて、パターン状に露光及び現像を行うことにより、めっき触媒又はその前駆体を含有する被めっきパターン(パターン状の被めっき層)を形成することができる。なお、この方法を用いれば、エッチング工程を施しことなく金属パターンを形成することができる。
【0128】
なお、基板として樹脂フィルムを用い、該樹脂フィルムの両面に対して被めっき層が形成されている場合には、その両面の被めっき層に対して同時に無電解めっき触媒又はその前駆体を接触させるために、前記の浸漬法を用いることが好ましい。
【0129】
前記無電解めっき触媒又はその前駆体を接触させることで、被めっき層中の相互作用性基に、ファンデルワールス力のような分子間力による相互作用、又は、孤立電子対による配位結合による相互作用を利用して、無電解めっき触媒又はその前駆体を吸着させることができる。
このような吸着を充分に行わせるという観点からは、分散液、溶液、組成物中の金属濃度、又は溶液中の金属イオン濃度は、0.001質量%〜50質量%が好ましく、0.005質量%〜30質量%がより好ましい。また、接触時間としては、30秒間〜24時間が好ましく、1分間〜1時間がより好ましい。
【0130】
なお、無電解めっき触媒又はその前駆体を含有する溶液、分散液、或いは組成物にパラジウム化合物を用いる場合、パラジウム化合物は、溶液、分散液、或いは組成物の全量に対して、0.001質量%〜10質量%が好ましく、0.05質量%〜5質量%がより好ましく、0.10質量%〜1質量%が更に好ましい。
また、無電解めっき触媒前駆体を含有する溶液に銀化合物を用いる場合、銀化合物は、溶液の全量に対して、0.1質量%〜20質量%が好ましく、0.1質量%〜20質量%がより好ましく、0.5質量%〜10質量%が更に好ましい。
どちらの化合物を用いる場合であっても、含有量が少なすぎると後述するめっきの析出がし難くなり、含有量が多すぎると、所望とされない領域までめっきが析出してしたり、エッチング残渣除去性が損なわれたりすることがある。
【0131】
前記被めっき層のめっき触媒又はその前駆体の吸着量に関しては、使用する無電解めっき触媒又はその前駆体の種類にもよるが、例えば、銀イオンの場合は、無電解めっきの析出性の観点から、300mg/m以上が好ましく、500mg/m以上がより好ましく、600mg/m以上が更に好ましい。また、基板との密着力の高い金属パターンを作製するという観点からは、被めっき層の銀イオンの吸着量は1,000mg/m以下が好ましい。
また、パラジウムイオンの場合、被めっき層の吸着量は、無電解めっきの析出性の観点から、5mg/m以上が好ましく、10mg/m以上がより好ましい。また、基板との密着力の高い金属パターンを作製するという観点からは、被めっき層のパラジウムイオンの吸着量は1,000mg/m以下が好ましい。
【0132】
−その他の触媒−
本発明において、後述のめっき工程において、被めっき層に対して、無電解めっきを行わず直接電気めっきを行うために用いられる触媒としては、0価金属を使用することができる。この0価金属としては、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられ、中でも、多座配位可能なものが好ましく、特に、相互作用性基(シアノ基・エーテル基)に対する吸着(付着)性、触媒能の高さから、Pd、Ag、Cuが好ましい。
【0133】
−有機溶剤、及び水−
前記めっき触媒又は前駆体は、前述のように、分散液、溶液(触媒液)として被めっき層に付与される。
前記触媒液には、有機溶剤、水が用いられる。
この有機溶剤を含有することで、被めっき層に対するめっき触媒又は前駆体の浸透性が向上し、相互作用性基に効率よくめっき触媒又はその前駆体を吸着させることができる。
【0134】
前記触媒液には、水を用いてもよく、この水としては、不純物を含まないことが好ましく、そのような観点からは、RO水、脱イオン水、蒸留水、精製水などを用いるのが好ましく、脱イオン水、蒸留水を用いるのが特に好ましい。
【0135】
前記めっき触媒液の調製に用いられる有機溶剤としては、被めっき層に浸透しうる溶剤であれば特に制限はないが、具体的には、アセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、エチレングリコールジアセテート、シクロヘキサノン、アセチルアセトン、アセトフェノン、2−(1−シクロヘキセニル)シクロヘキサノン、プロピレングリコールジアセテート、トリアセチン、ジエチレングリコールジアセテート、ジオキサン、N−メチルピロリドン、ジメチルカーボネート、ジメチルセロソルブなどが挙げられる。
【0136】
また、その他の有機溶剤としては、例えば、ダイアセトンアルコール、γブチロラクトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコールターシャリーブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4ジオキサン、n−メチル−2−ピロリドンなどが挙げられる。
【0137】
特に、めっき触媒又はその前駆体との相溶性、及び被めっき層への浸透性の観点では水溶性の有機溶剤が好ましく、アセトン、ジメチルカーボネート、ジメチルセロソルブ、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルが好ましい。
【0138】
更に、前記触媒液には、目的に応じて他の添加剤を含有することができる。他の添加剤としては、例えば、膨潤剤(ケトン、アルデヒド、エーテル、エステル類等の有機化合物など)、界面活性剤(アニオン性、カチオン性、双性、ノニオン性及び低分子性又は高分子性など)などが挙げられる。
【0139】
以上説明した触媒付与工程を経ることで、被めっき層中の相互作用性基とめっき触媒又はその前駆体との間に相互作用を形成することができる。
【0140】
<めっき工程>
前記めっき工程は、前記めっき触媒又はその前駆体が付与された特定のめっき形成用光感応材料に対してめっきを行う工程である。
本発明においては、上述したように、めっき浴比が10未満でめっきを行う。
【0141】
前記めっき工程において行われるめっきの種類としては、無電解めっき、電気めっき等が挙げられ、前記めっき工程において、被めっき層との間に相互作用を形成しためっき触媒又はその前駆体の機能によって、選択することができる。
つまり、前記めっき工程では、めっき触媒又はその前駆体が付与された被めっき層に対し、電気めっきを行ってもよいし、無電解めっきを行ってもよい。
これらの中でも、被めっき層中に発現するハイブリッド構造の形成性及び密着性向上の点から、無電解めっきを行うことが好ましい。また、所望の膜厚のめっき層を得るために、無電解めっきの後に、更に電気めっきを行うことがより好ましい態様である。
以下、前記めっき工程において好適に行われるめっきについて説明する。
【0142】
−無電解めっき−
前記無電解めっきとは、めっきとして析出させたい金属イオンを溶かした溶液を用いて、化学反応によって金属を析出させる操作のことをいう。
前記めっき工程における無電解めっきは、例えば、無電解めっき触媒が付与された基板を、水洗して余分な無電解めっき触媒(金属)を除去した後、無電解めっき浴に浸漬して行う。使用される無電解めっき浴としては一般的に知られている無電解めっき浴を使用することができる。
また、無電解めっき触媒前駆体が付与された基板を、無電解めっき触媒前駆体が被めっき層に吸着又は含浸した状態で無電解めっき浴に浸漬する場合には、基板を水洗して余分な前駆体(金属塩など)を除去した後、無電解めっき浴中へ浸漬される。この場合には、無電解めっき浴中において、めっき触媒前駆体の還元とこれに引き続き無電解めっきが行われる。ここで使用される無電解めっき浴としても、前記同様、一般的に知られている無電解めっき浴を使用することができる。
なお、無電解めっき触媒前駆体の還元は、前記のような無電解めっき液を用いる態様とは別に、触媒活性化液(還元液)を準備し、無電解めっき前の別工程として行うことも可能である。触媒活性化液は、無電解めっき触媒前駆体(主に金属イオン)を0価金属に還元できる還元剤を溶解した液で、液全体に対する該還元剤の濃度は、0.1質量%〜50質量%が好ましく、1質量%〜30質量%がより好ましい。前記還元剤としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボランのようなホウ素系還元剤、ホルムアルデヒド、次亜リン酸などの還元剤を使用することが可能である。
浸漬の際には、無電解めっき触媒又はその前駆体が接触する被めっき層表面付近の無電解めっき触媒又はその前駆体の濃度を一定に保つ上で、攪拌或いは揺動を加えながら浸漬することが好ましい。
【0143】
一般的な無電解めっき浴の組成としては、溶剤の他に、(1)めっき用の金属イオン、(2)還元剤、(3)金属イオンの安定性を向上させる添加剤(安定剤)が主に含まれている。このめっき浴には、これらに加えて、めっき浴の安定剤など公知の添加物が含まれていてもよい。
【0144】
めっき浴に用いられる有機溶剤としては、水に可能な溶媒である必要があり、その点から、アセトン等のケトン類;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類などが挙げられる。
【0145】
無電解めっき浴に用いられる金属の種類としては、例えば、銅、すず、鉛、ニッケル、金、パラジウム、ロジウムなどが挙げられ、中でも、導電性の観点からは、銅、金が特に好ましい。
【0146】
また、前記金属に合わせて最適な還元剤、添加物が選択される。
例えば、銅の無電解めっきの浴は、銅塩としてCuSO、還元剤としてHCOH、添加剤として銅イオンの安定剤であるEDTA、ロッシェル塩等のキレート剤、トリアルカノールアミンなどが含まれている。
また、CoNiPの無電解めっきに使用されるめっき浴には、その金属塩として硫酸コバルト、硫酸ニッケル、還元剤として次亜リン酸ナトリウム、錯化剤としてマロン酸ナトリウム、りんご酸ナトリウム、こはく酸ナトリウムが含まれている。また、パラジウムの無電解めっき浴は、金属イオンとして(Pd(NH)Cl、還元剤としてNH、HNNH、安定化剤としてEDTAが含まれている。これらのめっき浴には、前記成分以外の成分が入っていてもよい。
【0147】
このようにして形成される無電解めっきによるめっき膜の膜厚は、めっき浴の金属イオン濃度、めっき浴への浸漬時間、或いは、めっき浴の温度などにより制御することができるが、導電性の観点からは、0.1μm以上が好ましく、0.2μm〜2μmがより好ましい。
ただし、無電解めっきによるめっき膜を導通層として、後述する電気めっきを行う場合は、少なくとも0.1μmの膜が均一に付与されていればよい。
また、めっき浴への浸漬時間としては、1分間〜6時間程度が好ましく、1分間〜3時間程度がより好ましい。
【0148】
以上のようにして得られた無電解めっきによるめっき層は、走査型電子顕微鏡(SEM)による断面観察により、被めっき層中にめっき触媒、めっき金属からなる微粒子が高密度で分散していること、また更に被めっき層上にめっき金属が析出していることが確認される。被めっき層とめっき層との界面は、樹脂複合体と微粒子とのハイブリッド状態であるため、被めっき層(有機成分)と無機物(めっき触媒金属又はめっき金属)との界面が平滑(例えば、1mmの領域でRaが1.5μm以下)であっても、密着性が良好となる。
【0149】
−電気めっき−
前記めっき工程おいては、前記触媒付与工程において付与されためっき触媒又はその前駆体が電極としての機能を有する場合、その触媒又はその前駆体が付与された被めっき層に対して、電気めっきを行うことができる。
また、前述の無電解めっきの後、形成されためっき膜を電極とし、更に、電気めっきを行ってもよい。これにより基板との密着性に優れた無電解めっき膜をベースとして、そこに新たに任意の厚みをもつ金属膜を容易に形成することができる。このように、無電解めっきの後に、電気めっきを行うことで、金属膜を目的に応じた厚みに形成しうるため、本発明の金属膜を種々の応用に適用するのに好適である。
【0150】
前記電気めっきの方法としては、従来公知の方法を用いることができる。なお、めっき工程の電気めっきに用いられる金属としては、例えば、銅、クロム、鉛、ニッケル、金、銀、すず、亜鉛などが挙げられ、導電性の観点から、銅、金、銀が好ましく、銅がより好ましい。
【0151】
また、電気めっきにより得られる金属膜の膜厚は、めっき浴中に含まれる金属濃度、又は、電流密度などを調整することで制御することができる。
なお、得られた金属パターン材料を一般的な電気配線などに適用する場合の金属膜の膜厚は、導電性の観点から、0.5μm以上が好ましく、1μm〜30μmがより好ましい。
なお、電気配線の厚みは、電気配線の線幅が狭くなる、即ち、微細化するほどアスペクト比を維持するために薄くなる。従って、電気めっきによって形成されるめっき層の層厚は、前記に限定されず、任意に設定できる。
【0152】
上述のめっき膜の他の製造方法としては、上述の露光工程において被めっき層を形成する際、被めっき層形成用組成物にめっき触媒又はその前駆体を予め混合しておき、上述の塗布法、押出成形法、ラミネート法を用いて、基板上に被めっき層を積層する方法も挙げられる。
この方法の場合、上述の触媒付与工程を実施することなく、めっき触媒又はその前駆体を含有する被めっき層をひとつの工程で作製することができ、作業効率及び生産性の観点から好ましい。
【0153】
<金属パターン材料>
本発明の金属パターン材料は、本発明の金属パターン材料の製造方法により製造することができる。
前記金属パターン材料の製造方法において、基板として樹脂フィルム等を用いれば、その樹脂フィルムの両面に金属パターンが形成された金属パターン材料を得ることができる。
本発明の金属パターン材料は、基板に対する金属パターンの密着力に優れる。
【0154】
本発明の金属パターン材料は、表面の凹凸が500nm以下5nm以上(より好ましくは100nm以下)の基板上の局所的に、めっき膜を設けたものが好ましい。また、基板と金属パターンとの密着性が碁盤の目試験で100目中10目以下が好ましく、特に0目が好ましい。即ち、基板表面が平滑でありながら、基板と金属パターンとの密着性に優れることを特徴とする。
【0155】
なお、基板表面の凹凸は、基板を基板表面に対して垂直に切断し、その断面をSEMにより観察することにより測定した値である。
より詳細には、JIS B 0601に準じて測定したRz、即ち、「指定面における、最大から5番目までの山頂のZデータの平均値と、最小から5番目までの谷底の平均値との差」で、500nm以下5nm以上が好ましい。
【0156】
<用途>
本発明の金属パターン材料の製造方法により製造された金属パターン材料は、例えば、半導体チップ、各種電気配線板、FPC、COF、TAB、アンテナ、多層配線基板、マザーボード、等の種々の用途に適用することができる。
【実施例】
【0157】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0158】
(合成例1)
−ポリマーAの合成−
2Lの三口フラスコ内に、酢酸エチル1L、及び2−アミノエタノール159gを入れ、氷浴にて冷却をした。そこへ、2−ブロモイソ酪酸ブロミド150gを内温20℃以下になるように調節して滴下した。その後、内温を室温(25℃)まで上昇させて2時間反応させた。反応終了後、蒸留水300mLを追加して反応を停止させた。その後、酢酸エチル層を蒸留水300mLで4回洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、更に酢酸エチルを留去することで原料Aを80g得た。
【0159】
次に、500mLの三口フラスコ内に、得られた原料A 47.4g、ピリジン22g、及び酢酸エチル150mLを入れて氷浴にて冷却した。そこへ、アクリル酸クロライド25gを内温20℃以下になるように調節して滴下した。その後、室温に上げて3時間反応させた。反応終了後、蒸留水300mLを追加し、反応を停止させた。その後、酢酸エチル層を蒸留水300mLで4回洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、更に酢酸エチルを留去した。その後、カラムクロマトグラフィーにて、以下のモノマーMを精製して20g得た。
【化13】

【0160】
次に、500mLの三口フラスコ内に、N,N−ジメチルアセトアミド8gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、前記で得たモノマーMを14.3g、アクリロニトリル(東京化成工業株式会社製)3.0g、アクリル酸(東京化成工業株式会社製)6.5g、及びV−65(和光純薬工業株式会社製)0.4gのN,N−ジメチルアセトアミド8g溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、N,N−ジメチルアセトアミド41gを足し、室温まで反応溶液を冷却した。前記の反応溶液に、4−ヒドロキシTEMPO(東京化成工業株式会社製)0.09g、及びジアザビシクロウンデセン(DBU)54.8gを加え、室温で12時間反応を行った。その後、反応液に70質量%メタンスルホン酸水溶液54g加えた。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、特定ポリマーAを12g得た。
得られたポリマーAの重量平均分子量は53,000であった。
【0161】
(実施例1)
<めっき形成用光感応材料の作製>
基板として、直径100mm、厚さ0.5mmのシリコンウェハ(エレクトロニクス エンド マテリアルズ コーポレーション製)を用いた。
【0162】
<密着補助層塗布液の組成>
・アクリロニトリルブタジエンゴム(品名:Nipol 101L、日本ゼオン株式会社製)・・・5質量%
・シクロペンタノン・・・95質量%
前記組成の密着補助層塗布液を、基板上に回転数1,500rpmでスピンコート塗布し、厚みが1.8μmの密着補助層を形成した。その後、得られた密着補助層を150℃で1時間の熱処理を行った。
【0163】
<被めっき層塗布液の組成>
・重合性ポリマーA・・・3.5質量%
・光重合開始剤(品名:Irgacure 819、チバ・ジャパン株式会社製)・・・0.7質量%(光吸収量4.1%)
・1−メトキシ−2−プロパノール(MFG)・・・86.5質量%
・水・・・9.3質量%
前記組成の被めっき層塗布液を、密着補助層上に回転数750rpmでスピンコート塗布し、厚みが0.3μmの被めっき層を形成した。その後、室温にて自然乾燥させた。以上により、めっき形成用光感応材料を作製した。
【0164】
<レーザー露光>
作製しためっき形成用光感応材料について、レーザー加工装置(パルステック工業株式会社製、NEO1000)を用い、波長405nm、NA(開口数)が0.85、線速が0.6m/s、フォーカスゲインが30、エアリーディスク直径0.58μm、レーザーパワー2mW、ピッチ2μmでレーザー露光を行った。
【0165】
<現像条件>
露光後のめっき形成用光感応材料を1質量%の重曹水に15分間浸漬し、その後、水洗して、自然乾燥させた。これにより、パターン状の被めっき層を有するめっき形成用光感応材料を得た。
【0166】
<めっき触媒の付与>
パターン状の被めっき層を有するめっき形成用光感応材料を、10質量%硝酸銀水溶液に、10分間浸漬した後、アセトンに浸漬して洗浄した。
【0167】
<無電解めっき>
めっき触媒が付与された被めっき層を有するめっき形成用光感応材料に対し、下記組成の無電解めっき浴を用い、50℃で30分間、無電解めっきを行った。得られた無電解銅めっき膜の厚みは0.3μmであった。以上により、金属パターン材料を作製した。
−無電解めっき浴の組成−
・OPCカッパーT(奥野製薬工業社製)
めっき浴比は3
ただし、めっき浴比は、めっき槽の容量V(cm)÷めっき対象物の表面積A(cm)から求めた値である。
【0168】
次に、得られた金属パターン材料について、以下のようにして、最適パワー及び最適パワー比率、描画結果の評価、並びに導通性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0169】
<最適パワー及び最適パワー比率>
エアリーディスク10倍ピッチで記録したとき、描画結果の評価が良好(○)となるレーザーパワーのうち最も低いパワーであり、実施例1では、最適パワーは8mWとなる。
最適パワー比率は、(レーザーパワー/最適パワー)×100により求めた。
【0170】
<描画結果の評価方法>
作製した金属パターン材料について、100μm四方視野で光学顕微鏡観察を行い、下記基準で、描画結果を評価した。
〔評価基準〕
○:一様に配線が得られている(良好;図2A参照)
△:部分的に配線の細りがある(普通;図2B参照)
×:配線がつながってない(不良;図2C参照)
【0171】
<導通性の評価方法>
コンタクトプローブで電極両端に接触し、テスターで導通確認を行い、下記基準で導通性を評価した。
〔評価基準〕
○:導通が全てある場合
×:導通がNGの配線がある場合
【0172】
(実施例2〜4及び比較例1〜2)
実施例1において、レーザーパワーを表1に示すように変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜4及び比較例1〜2の金属パターン材料を作製した。
得られた各金属パターン材料について、実施例1と同様にして、最適パワー及び最適パワー比率、描画結果の評価、並びに導通性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0173】
【表1】

【0174】
(実施例5〜8及び比較例3〜4)
実施例1において、ピッチを4μmに変え、レーザーパワーを表2に示すように変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例5〜8及び比較例3〜4の金属パターン材料を作製した。
得られた各金属パターン材料について、実施例1と同様にして、最適パワー及び最適パワー比率、描画結果の評価、並びに導通性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0175】
【表2】

【0176】
(比較例5)
実施例1において、被めっき層塗布液中の光重合開始剤(品名:Irgacure 819、チバ・ジャパン株式会社製)の含有量を0.35質量%(光吸収量2.0%)としたところ、どの条件で露光してもパターニングができなかった。
【0177】
(実施例9〜11及び比較例6)
実施例1において、被めっき層塗布液中の光重合開始剤(品名:Irgacure 819、チバ・ジャパン株式会社製)の含有量を1.05質量%(光吸収量6.2%)とし、ピッチを4μmに変え、レーザーパワーを表3に示すように変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例9〜11及び比較例6の金属パターン材料を作製した。
得られた各金属パターン材料について、実施例1と同様にして、最適パワー及び最適パワー比率、描画結果の評価、並びに導通性の評価を行った。結果を表3に示す。なお、実施例9〜11では、最適パワーは6mWであった。
【0178】
【表3】

【0179】
(実施例12、13、及び比較例7)
実施例1において、めっき槽の容量V(cm)を調整して表4に示すようにめっき浴比を変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例12、13、及び比較例7の金属パターン材料を作製した。
得られた各金属パターン材料について、実施例1と同様にして、最適パワーの測定、描画結果の評価、導通性の評価を行った。結果を表4に示す。
【0180】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0181】
本発明の金属パターン材料の製造方法により製造された本発明の金属パターン材料は、例えば、半導体チップ、各種電気配線板、FPC、COF、TAB、アンテナ、多層配線基板、マザーボード、等の種々の用途に適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(A)〜(C)で表されるユニットを含む共重合体を含有するめっき形成用光感応材料を6μm未満のピッチで露光する際に、6μmピッチ露光時の最適パワーに対し、100%未満であり、かつ〔(ピッチ(μm)×75/6+25)−30〕〜〔(ピッチ(μm)×75/6+25)+15〕%のレーザーパワーで露光する露光工程と、
露光後のめっき形成用光感応材料を現像液で現像する現像工程と、
現像後のパターンが形成されためっき形成用光感応材料を、めっき浴比が10未満でめっきを行うめっき工程と、
を含むことを特徴とする金属パターン材料の製造方法。
【化1】

ただし、前記式(A)〜(C)中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1〜4の置換若しくは無置換のアルキル基を表し、X、Y、Z、及びUは、それぞれ独立して、単結合、置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、L、L、及びLは、それぞれ独立して、単結合、又は置換若しくは無置換の二価の有機基を表し、Wはめっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する非解離性官能基を表し、Vはイオン性極性基を表す。
【請求項2】
6μmピッチ露光時の最適パワーに対し、100%未満であり、かつ〔(ピッチ(μm)×75/6+25)−20〕%〜〔(ピッチ(μm)×75/6+25)+10〕%のレーザーパワーで露光する請求項1に記載の金属パターン材料の製造方法。
【請求項3】
めっき浴比が6以下である請求項1から2のいずれかに記載の金属パターン材料の製造方法。
【請求項4】
めっき形成用光感応材料が光重合開始剤を含有し、該光重合開始剤の光吸収量が2.5%以上である請求項1から3のいずれかに記載の金属パターン材料の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の金属パターン材料の製造方法により製造されたことを特徴とする金属パターン材料。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate


【公開番号】特開2012−234013(P2012−234013A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101771(P2011−101771)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】