説明

金属フィルタの再生方法とセルロースアシレート溶液の濾過方法ならびにセルロースアシレートフイルムの製造方法および装置

【課題】 セルロースアシレート溶液を濾過した後の金属フィルタを残留異物量の少ない再生品とする。
【解決手段】 焼結繊維からなる金属フィルタを有する濾過装置によりセルロースアシレート溶液を濾過する。目詰まりにより濾過効率が低下したら、新たな濾過装置に切り替える。洗浄溶剤タンクから、目詰まりした濾過装置に新規洗浄溶剤を送り込み、循環ポンプをONにする。金属フィルタの入り口付近での圧力を2MPa以上10MPa以下としながら、洗浄溶剤を循環させる。この洗浄溶剤中のドープ濃度が0.05%以下の場合に、循環を停止し、さらに配管を切り替えて洗浄溶剤を排出する。洗浄後の金属フィルタを取り出して焙焼する。濾過装置に新規金属フィルタをセットする。洗浄後焙焼した金属フィルタの再生品によりセルロースアシレート溶液を濾過したドープからは、平面性や光学特性に優れたフイルムを製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属フィルタの再生方法とセルロースアシレート溶液の濾過方法ならびにセルロースアシレートフイルムの製造方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、低電圧・低消費電力であり、また、小型化・薄型化が可能であるなどの利点を有することから、パーソナルコンピュータや携帯機器のモニターおよびテレビ用途などに幅広く利用されている。一般に液晶表示装置は、液晶セルや光学補償シートや偏光子などの光学材料から構成されており、このような光学材料の技術分野では、偏光板の保護や画像着色の解消および視野角の拡大などの用途に応じて、様々なポリマーフイルムが用いられている。
【0003】
ポリマーフイルムの代表例であるセルロースアシレートフイルムは、大きな複屈折率や高いレタデーション値を発現し、また偏光板の保護膜になることができるなどの利点を有することから、安価で薄型の液晶表示装置を提供することができるポリマーフイルムとして幅広く利用されている。セルロースアシレートフイルムの液晶表示装置における具体的な用途としては、偏光板の保護フイルムやカラーフィルタやパソコン用液晶表示装置の保護膜などが例示できる。特に、液晶用表示装置の保護膜としての用途は、近年著しく増大している。また、単なる保護膜でなく、視野角の拡大を可能としたフイルム(例えば、富士写真フイルム株式会社製WVフイルム)や液晶テレビの反射防止膜(例えば、富士写真フイルム製CVフイルム)などのように、フイルム自身に新たな機能を付与して利用するセルロースアシレートフイルムも増大している。
【0004】
セルロースアシレートフイルムの製造方法としては、溶液製膜方法が挙げられる。溶液製膜方法とは、フイルムの主原料となるセルロースアシレートと、これを溶かす溶媒と、各種機能を付与する添加剤とを混合して調製したドープを、走行する支持体上に流延して流延膜を形成してから、溶媒を含んだ湿潤フイルムとして剥ぎ取り、これを乾燥させることで、平面性や光学特性に優れたセルロースアシレートフイルムを製造する(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
フイルムの原料となる前記ドープは、セルロースアシレートと溶媒と添加剤とを混合したセルロースアシレート溶液を濾過装置で濾過することで調製する。セルロースアシレート溶液を濾過する際には、金属フィルタを有する濾過装置を用いる。このとき、焼結繊維で構成された金属フィルタを用いると、セルロースアシレート溶液を濾過した後に、それ自体を焙焼することで、金属フィルタの網目に残留している粒径の大きいセルロースアシレートや添加剤などの異物(以下、総称して異物とする)または、セルロースアシレート溶液を焼き払うことができるので、金属フィルタとして再利用することができる再生品とすることができる。
【非特許文献1】発明協会公開技報公技番号2001−1745
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、焙焼前の金属フィルタにおいて、異物やドープの残存量(以下、残留異物量と称する)が多すぎると、焙焼しても、燃えカスや焼け焦げなど(以下、燃焼異物とする)が残ってしまう。そのため、このような金属フィルタの再生品を用いて濾過すると、前記燃焼異物がドープ中に流出して、フイルム製品の品質が低下してしまうという問題が生じた。
【0007】
本発明は、セルロースアシレート溶液を濾過した金属フィルタを洗浄して、異物およびドープの残留異物量を低減してから、これを焙焼することで高洗浄度の再生品を得ることができる金属フィルタの再生方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の金属フィルタの再生方法は、金属フィルタによりセルロースアシレート溶液を濾過する濾過装置の金属フィルタの再生方法において、洗浄溶剤タンクから洗浄溶液をポンプにより前記金属フィルタに送って前記洗浄溶剤タンクに戻す洗浄溶剤循環工程と、前記洗浄溶剤中のドープ濃度が一定値に達したときに、前記洗浄溶剤を排出し、新たな洗浄溶剤を前記洗浄溶剤タンクに投入する新規洗浄溶剤の投入工程と、洗浄終了後の前記金属フィルタを焙焼する焙焼工程とを有し、前記洗浄溶剤循環工程および投入工程とを複数回繰り返すことを特徴とする。また、前記洗浄溶剤中のドープ濃度が0.05%以下になるまで、前記洗浄溶剤循環工程と前記投入工程とを繰り返すことが好ましく、前記洗浄溶剤を前記金属フィルタに送り込むとき、その入口付近での圧力が2MPa以上10MPa以下であることが好ましい。
【0009】
また、本発明のセルロースアシレート溶液の製造装置は、洗浄溶剤を保管する洗浄溶剤タンクとこの洗浄溶剤タンクから金属フィルタに洗浄溶剤を送り出すポンプとこれらをつなぐ配管からなり、前記ポンプにより前記洗浄タンクから洗浄溶剤を金属フィルタに送り出して循環させる洗浄溶剤循環ラインと、前記洗浄溶剤中のドープ濃度が一定値に達したときに、前記洗浄溶剤を排出し、新たな洗浄溶剤を前記洗浄溶剤タンクに投入する新規洗浄溶剤の投入ラインとを有し、前記洗浄溶剤循環ラインによる前記金属フィルタの洗浄と、前記投入ラインによる新規洗浄溶剤の投入とを交互に行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、セルロースアシレート溶液を濾過した後の金属フィルタを、異物やドープの残留異物量を低減して洗浄することができるので、洗浄後の金属フィルタを焙焼すると、燃焼異物の残存量が少ない再生品を得ることができる。したがって、この再生品を用いてセルロースアシレート溶液を濾過すると、異物などの残存量が非常に少ない高純度のドープを調製することができるので、結果として、平面性や光学特性に優れたセルロースアシレートフイルムを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明での実施形態について図を引用しながら説明する。ただし、本発明は下記実施形態に限定されるものではない。
【0012】
本発明に使用されるドープを構成する材料としては、セルロースアシレートを用いることが好ましく、セルロースの水酸基へのアシル基の置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足するセルロースアシレートを用いることが好ましい。
(I) :2.5≦A+B≦3.0
(II) :0≦A≦3.0
(III) :0≦B≦2.9
ただし、式中のAおよびBは、セルロースの水酸基中の水素がアシル基に置換されている割合を表しており、Aはアセチル基の置換度、Bは炭素原子数が3〜22のアシル基の置換度である。なお、0.1mm以上4mm以下の粒子の割合が、全重量に対して90質量%以上であるセルロースアシレートを用いることが好ましい。
【0013】
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部が、炭素数2以上のアシル基でエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位および6位それぞれについて、セルロースの水酸基がエステル化している割合(100%のエステル化の場合には、置換度1とする)を意味する。
【0014】
全アシル置換度、すなわち、DS2+DS3+DS6の値が、2.00〜3.00が好ましく、より好ましくは、2.22〜2.90であり、特に好ましくは、2.40〜2.88である。また、D6S/(DS2+DS3+DS6)の値が、0.28以上が好ましく、より好ましくは0.30以上であり、特に好ましくは0.31〜0.34である。ここで、DS2はグルコース単位において、2位の水酸基の水素がアシル基により置換されている割合(以下、2位のアシル基置換度と称する)であり、DS3は、グルコース単位において、3位の水酸基の水素がアシル基により置換されている割合(以下、3位のアシル置換度と称する)であり、DS6は、グルコース単位において、6位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合である(以下、6位のアシル置換度と称する)。
【0015】
セルロースアシレートが有するアシル基は1種類だけでもよく、あるいは2種類以上のアシル基が含まれていてもよい。アシル基が2種類以上のときには、そのひとつがアセチル基であることが好ましい。2位、3位および6位の水酸基がアセチル基により置換されている度合いの総数をDSAとし、2位、3位および6位の水酸基がアセチル基以外のアシル基により置換されている度合いの総数をDSBとすると、DSA+DSBの値が、2.22〜2.90であることが好ましく、より好ましくは、2.40〜2.88である。また、DSBは0.30以上であることが好ましく、特に好ましくは0.7以上である。さらにDSBは、その20%以上が6位水酸基の置換基であることが好ましく、より好ましくは25%以上であり、30%以上がさらに好ましく、特に好ましくは、33%以上である。また、セルロースアシレートの6位におけるDSA+DSBの値が、0.75以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.80以上であり特に好ましくは0.85以上である。これらのセルロースアシレートを用いることにより、優れた溶解性のセルロースアシレート溶液を調整することができる。なお、セルロースアシレートは、リンター綿またはパルプ綿のどちらか一方から得られたものでも、両者を混合させたものでも使用することができるが、リンター綿から得られたものが好ましい。
【0016】
本発明におけるセルロースアシレートの炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でもよく、特に限定はされない。例えば、セルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステル、芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどが挙げられ、それぞれ、さらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましい例としては、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、iso−ブタノイル基、t−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などが例示される。これらの中でも、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、t−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などがより好ましく、特に好ましくは、プロピオニル基、ブタノイル基である。
【0017】
セルロースアシレートを溶かす溶媒としては、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン,トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼンなど)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ジエチレングリコールなど)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトンなど)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピルなど)およびエーテル(例えば、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブなど)などが挙げられる。
【0018】
上記のハロゲン化炭化水素においては、炭素原子数が1〜7のハロゲン化炭化水素や、ジクロロメタンが好ましく用いられる。セルロースアシレートの溶解性、流延膜の支持体からの剥ぎ取り性、フイルムの機械的強度、光学特性などの物性の観点から、ジクロロメタンの他に炭素原子数1〜5のアルコールを1種類ないしは数種類混合することが好ましい。アルコールの含有量は、溶媒全体に対して、2質量%以上25質量%以下が好ましく、より好ましくは、5質量%以上20質量%以下である。アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどが挙げられるが、メタノール、エタノール、n−ブタノール、あるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。
【0019】
最近、環境に対する影響を最小限に抑えるため、ジクロロメタンを用いない溶媒組成も提案されている。この場合には、炭素原子数が4〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステルが好ましく、これらを適宜混合して用いる。これらのエーテル、ケトンおよびエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトンおよびエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれか2つ以上を有する化合物も溶媒として用いることができる。溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。2種類以上の官能基を有する溶媒を用いる場合には、その炭素原子数は、いずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
【0020】
セルロースアシレートの詳細については、特開2005−104148号公報の[0140]から[0195]に記載されており、本発明にも適用できる。同様に、溶媒および可塑剤、劣化防止剤、紫外線吸収剤、光学異方性コントロール剤、染料、マット剤、剥離剤などの添加剤についても、特開2005−104148号公報の[0196]から[0516]に詳細に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
【0021】
本発明により製造されたセルロースアシレートフイルムは、優れた平面性および光学特性から、偏光板または液晶表示用部材などに用いられるが、これらの劣化防止を目的として、紫外線吸収剤が好ましく用いられる。紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤としては、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが例示される。
【0022】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としての例を下記に示すが、本発明はこれらに限定されない。2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)、(2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2(2' −ヒドロキシ−3' ,5' −ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、(2(2' −ヒドロキシ−3' ,5' −ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N' −ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイトなどが挙げられる。特に、(2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2(2' −ヒドロキシ−3' ,5' −ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、(2(2' −ヒドロキシ−3' ,5' −ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕を用いることが好ましい。また、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジンなどのヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイトなどの燐系加工安定剤を併用してもよい。
【0023】
また、特開平6−148430号公報および特開平7−11056号公報に記載されている紫外線吸収剤も好ましく用いることができる。上記記載の中において、本発明で好ましく用いられる紫外線吸収剤は、透明性が高く、偏光板や液晶素子の劣化を防ぐ効果に優れており、また、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤である。紫外線吸収剤の使用量は、化合物の種類, 使用条件などにより一様ではないが、通常は、セルロースアシレートフイルム1m当りに対して、0.2g以上5.0g以下が好ましく、より好ましくは、0.4g以上1.5g以下であり、特に好ましくは、0.6g以上1.0g以下である。
【0024】
その他の添加剤としては、旭電化プラスチック用添加剤概要「アデカスタブ」のカタログにある光安定剤が例示されるが、チバ・スペシャル・ケミカルズのチヌビン製品案内にある光安定剤および紫外線吸収剤も用いることができる。また、SHIPRO KASEI KAISHAのカタログにあるSEESORB,SEENOX,SEETECや城北化学工業のUV吸収剤および酸化防止剤や共同薬品のVIOSORB、吉富製薬の紫外線吸収剤も好ましく用いることができる。
【0025】
なお、紫外領域の分光透過率に関しては、特開2003−043259号公報の記載にしたがうものとする。すなわち、色再現性に優れ、かつ紫外線照射の耐久性にも優れた光学フイルム、偏光板および表示装置を得るため、390nmにおける分光透過率が、50%以上95%以下であり、かつ350nmにおける分光透過率が5%以下とする。
【0026】
セルロースアシレート溶液を調製するときの温度は、0℃以上150℃以下であることが好ましく、より好ましくは、0℃以上100℃以下であり、さらには、0℃以上90℃以下であることが好ましいが、特に好ましくは、20℃以上90℃以下である。また、本セルロースアシレート溶液を調整する際には、塩基を用いないことが好ましいが、塩基を用いる場合には、有機塩基または無機塩基のどちらを用いてもよい。ただし、有機塩基を用いることがより好ましく、例えば、ピリジン、3 級アルキルアミン(好ましくはトリエチルアミン,エチルジイソプルピルアミン)などが挙げられる。
【0027】
本発明のセルロースアシレートフイルムの光学特性は、下記の式(IV)および(V)で表されるReレタデーション値、Rthレタデーション値が、それぞれ、下記の式(VI)および(VII)を満たすことが好ましい。
(IV) :Re(λ)=(nx−ny)×d、
(V) :Rth(λ)={(nx+ny)/2−nz}×d
(VI) :46nm≦Re(630)≦200nm
(VII) :70nm≦Rth(630)≦350nm
式(IV)中のRe(λ)は、波長λnmにおける正面レタデーション値(単位;nm)であり、式(V)中のRth(λ)は、波長λnmにおける膜厚方向のレタデーション値(単位;nm)である。また、nxはフイルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyはフイルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzはフイルムの厚み方向の屈折率であり、dはフイルムの厚さである。さらに好ましくは、下記の式(VIII)および(IX)を満たすことである。
(VIII) :46nm≦Re(630)≦100nm
(IX) :180nm≦Rth(630)≦350nm
【0028】
湿度変化や高温経時による質量変化や寸法変化に伴い、ReおよびRthの光学特性値は変化するが、ReおよびRthの値の変化は少ないほど好ましい。湿度による光学特性値の変化を少なくするためには、6位アシル置換度の大きなセルロースアシレートや疎水性の各種添加剤(可塑剤,レタデーション発現剤,紫外線吸収剤など)を用いて、フイルムの透湿度や平衡含水率を小さくする。透湿度は、60℃,95%RH24時間で1平方メートル当たり400g以上2300g以下であることが好ましく、平衡含水率は、25℃,80%RHにおける測定値が3.4%以下であることが好ましい。また、25℃における湿度を10%RHから80%RHに変化させたときの光学特性の変化量が、Re値で12nm以下,Rth値で32nm以下であることが好ましい。疎水性添加剤の量は、セルロースアシレートに対して10重量%以上30重量%以下であることが好ましく、より好ましくは、12重量%以上25重量%以下であり、特に好ましくは、14.5重量%以上20.0重量%以下である。さらに、添加剤が揮発性や分解性を有する場合、フイルムの質量変化や寸法変化が発生して、光学特性に変化が生じる。したがって、質量変化量は、80℃,90%RHで48時間経時後において、5重量%以下であることが好ましく、寸法変化量は、60℃,95%RHで24時間経時後において、5重量%以下であることが好ましい。また、寸法変化や質量変化が少々あっても、フイルムの光弾性係数が小さいと光学特性の変化量は少なくなる。したがって、フイルムの光弾性係数が、50×10−13 cm/dyne以下であることが好ましい。
【0029】
図1に、本発明におけるセルロースアシレートフイルムの製造工程の流れを示す。ただし、本発明は、ここに示す形態に限定されるものではない。本発明でのフイルムの製造工程は、大きく分けて、ドープ製造工程12と流延工程14と剥取工程16と乾燥工程18からなる。ここでは、製造工程の流れのみを説明し、詳細は後で示す。
【0030】
ドープ製造工程12では、セルロースアシレートフイルムの原料となるドープ13を製造する。このドープ13は、セルロースアシレートと溶媒と添加剤とを混合させたセルロースアシレート溶液を、金属フィルタを有する濾過装置で濾過することで調製する。
【0031】
ドープ13を製造した後に、流延工程14として、これを走行する支持体上に流延して流延膜15を形成する。この流延膜15が自己支持性を有するようになった後、所望の膜厚に調整してから、前記支持体より連続的に剥ぎ取って溶媒を含んだ湿潤フイルム17を作製する。続いて、この湿潤フイルム17を、乾燥工程18として、所定の乾燥装置に送り込み、溶媒を揮発させて乾燥してフイルム19を製造する。
【0032】
図2に、ドープ製造ライン20を示す。ただし、本発明は、図2に示す形態に限定されるものではない。ドープ製造ライン20は、溶媒タンク21と添加剤タンク22とホッパ23と溶解タンク24と濾過装置25a,25bとストックタンク26からなる。また、ドープ製造ライン20を構成するこれらの各装置は、複数の配管によりそれぞれ接続されている。
【0033】
溶媒タンク21、添加剤タンク22およびホッパ23には、ドープ13を構成する各種原料が、それぞれ貯蔵されている。溶媒タンク21には、セルロースアシレートを溶解させる溶媒が貯蔵されており、例えば、ジクロロメタンを主溶媒とし、これにアルコール類を混合した混合溶媒などを用いる。添加剤タンク22には、添加剤が貯蔵されており、例えば、可塑剤、紫外線吸収剤(例えば、ベンゾトリアゾール系化合物)、マット剤(例えば、シリカ粒子)や、劣化防止剤、光学異方性コントロール剤、染料および剥離剤などが挙げられ、これらを目的に応じて適宜選択して用いる。また、ホッパ23には、フイルムの主原料であるセルロースアシレートが貯蔵されている
【0034】
バルブ30を開くことで、前記溶媒を溶媒タンク21から溶解タンク24に送り込む。このとき、前記溶媒の量は、バルブ30により調整する。同様に、バルブ31を開けて添加剤タンク22から添加剤を送り込み、さらに、ホッパ23からセルロースアシレートを溶解タンク24に送り込む。
【0035】
前記添加剤が常温で液体の場合には、液体状態のままで溶解タンク24に送り込むことができる。また、前記添加剤が固体の場合には、ホッパを用いて溶解タンク24に送り込むこともできる。なお、複数種類の添加剤を用いる場合には、添加剤タンク22中に複数種類の添加剤を溶解させた溶液を入れておき、適宜バルブ31を調整して送り出してもよいし、用いる添加剤の種類に応じて、これらの添加剤が溶解している溶液を入れた複数の添加剤タンクを用意し、バルブを設けた配管により、各種添加剤タンクと溶解タンク24とを接続させて、前記バルブを調整することで送り込むこともできる。
【0036】
ドープ13を構成するセルロースアシレート、溶媒および添加剤を混合する順番は、特に限定はされない。本実施形態においては、セルロースアシレートと溶媒と添加剤とをそれぞれ単独、かつこの順に溶解タンク24に送り込んで混合した形態を示したが、これ以外の方法として、例えば、あらかじめ溶媒と添加剤とを混合した混合溶液を作製し、この混合溶液とセルロースアシレートとを混合してもよいし、セルロースアシレートと添加剤とを混合したものに溶媒を添加してもよい。また、フイルム製造ライン60(図4参照)において、適宜添加剤を添加することもできる。
【0037】
溶解タンク24は、これを覆うようにしてその外周に配されたジャケット32と第1攪拌翼33と第2攪拌翼34とから構成される。この第1攪拌羽33と第2攪拌羽34とは、それぞれモータ35およびモータ36により、それぞれ回転する。モータ35により回転する第1攪拌翼33は、アンカー翼であることが好ましく、第2攪拌翼34は、ディゾルバータイプの偏芯攪拌機を用いることが好ましい。ジャケット32は温度調整機能を有するものであり、これにより溶解タンク24内の温度を調整する。本実施形態においては、前記温度調整機能として、ジャケット32の内部に伝熱媒体を流して溶解タンク24内を−10℃以上55℃以下の範囲に温度調整する。第1攪拌翼33および第2攪拌翼34は、適宜選択し、それぞれに連動しているモータ35またはモータ36を回転させることで、溶媒中にセルロースアシレートを膨潤させた膨潤液37を作製する。
【0038】
ポンプ40を用いて、膨潤液37を加熱装置41に送液する。加熱装置41は、ジャケット付き配管を用いるとともに、膨潤液37を加圧できる機能を有している。加熱装置41は、膨潤液37を所定の温度に保持できる形態であれば、特に限定はされないが、本実施形態のように加圧できる機能を有していることが好ましい。このように、膨潤液37を加熱、または加圧加熱条件下に保持することで、溶媒中にセルロースアシレートが十分に溶解したセルロースアシレート溶液42を作製することができる。このとき、膨潤液37の温度は、0℃以上97℃以下であることが好ましい。なお、膨潤液37を−150℃以上−10℃以下の温度に冷却することで、溶媒中にセルロースアシレートを溶解させる冷却溶解法を実施することもできる。このような加熱溶解法、または冷却溶解法を適宜選択して行うと、溶媒中にセルロースアシレートが十分に溶解したセルロースアシレート溶液42を作製することができる。また、加熱装置41の下流には、温調機43が設けられており、これにより、セルロースアシレート溶液42の温度を略室温とする。
【0039】
セルロースアシレート溶液42を濾過装置25a,25bにより濾過してドープ13を調整する。本実施形態においては、2台の濾過装置25a,25bが並列に配されたラインを用いる。このように並列に配したラインを用いると、バルブによりラインを切り替えることができるので、後述するように、いずれかの濾過装置25a,25bを洗浄する際にも、ラインを停止させずにドープ13を連続して製造することができる。ラインの切り替えは、目詰まりなどにより使用中の濾過装置25aまたは25bの濾過効率が低下した時点で行う。例えば、濾過装置25aを用いてセルロースアシレート溶液42を濾過する場合には、バルブ44,45の濾過装置25a側とバルブ46のストックタンク26側をともに開けて、セルロースアシレート溶液42を濾過装置25aに送り込んで濾過する。濾過装置25bを用いる場合には、バルブ44,47の濾過装置25b側とバルブ48のストックタンク26側をともに開けて、セルロースアシレート溶液42を濾過装置25bに送り込んで濾過すればよい。
【0040】
濾過装置25a,25bは、焼結繊維からなる金属フィルタを有しており、この金属フィルタにセルロースアシレート溶液42を通過させることで、この中に含まれている粒径の大きい添加剤やセルロースアシレート、または不純物などの異物を取り除くことができる。本実施形態においては、金属繊維で構成され、平均孔径が40μm以下である金属フィルタを用いた。金属フィルタに関しては、その材質および孔径などは特に限定はされないが、焼結繊維からなり、その平均孔径が100μm以下であることが好ましい。また、その濾過流量は50L/時とすることが好ましい。
【0041】
ストックタンク26は、モータ54に連動した攪拌羽54aを備える。モータ54により攪拌羽54aを回転させることで、ドープ13を攪拌して均一の状態を保持する。このようにして調整したドープ13を用いて、図4に示すフイルム製造ライン60によりセルロースアシレートフイルムを製造する。フイルム製造ライン60の詳細に関しては、後で説明する。なお、ドープ13およびセルロースアシレート溶液42は、光学特性に優れたフイルム19を製造するために、泡抜き作業を行うことが好ましい。この泡抜き作業においては、実施箇所など特に限定はされない。また、公知のいずれの方法も適用することができる。
【0042】
本発明では、濾過装置25a,25bに備えられている金属フィルタを、洗浄溶剤により洗浄した後に焙焼して、再び濾過する際に用いる再生品とする。図3に、金属フィルタの再生方法を示す。金属フィルタを洗浄する際には、洗浄溶剤が濾過装置25a,25bを繰り返し通過(循環)するよう各バルブにより配管を切り替えることで構成される洗浄装置55を用いる。洗浄装置55は、複数の配管と、前記配管を切り替える複数のバルブ44〜50と、一時的に洗浄溶剤を保管したり経路となったりする洗浄溶剤タンク51と循環ポンプ52とドープ濃度計53a,53bからなる(図2参照)。
【0043】
例えば、濾過装置25bの金属フィルタを洗浄する場合には、まず、バルブ44,45の濾過装置25a側とバルブ46のストックタンク26側を開けて、バルブ44〜46の上述以外の側は全て閉める。こうすることで、セルロースアシレート溶液42を濾過装置25aで濾過してドープ13の製造を停止させずに作業を続けることができる。次に、濾過装置25bと洗浄溶剤タンク51とがつながるようにバルブ47〜50を調整する。すなわち、バルブ47〜50は、順に、濾過装置25b側、ドープ濃度計53b側、洗浄溶剤タンク側、バルブ47側を開けるとともに、その他の側を全て閉める。
【0044】
上述のように配管を切り替えた後で、金属フィルタの洗浄を開始する。まず、洗浄溶剤タンク51に新規洗浄溶剤を送り込んでから、前記新規洗浄溶剤を配管内に送り込む。次に、配管内を洗浄溶剤が循環するように循環ポンプ52を調整する。前記洗浄溶剤を循環させる際の流速は、特に限定されるものではないが、前記洗浄溶剤が金属フィルタを通過する際、その入り口付近での圧力が2MPa以上10MPa以下であることが好ましい。より好ましくは、3MPa以上5MPa以下である。前記洗浄溶剤を送り込むときの圧力は、循環ポンプ52で調整すればよい。上記範囲を満たすように前記洗浄溶剤を循環する場合には、金属フィルタ上の残留異物を一度で大量に押し流すことができるので、洗浄時間の短縮化が図れるとともに、残留異物量を低減することができる。したがって、このような金属フィルタを焙焼すると、燃焼異物の生成を抑制した高洗浄度の再生品を得ることができる。しかし、入り口付近での圧力が2MPa未満の場合には、洗浄溶剤が金属フィルタに通過する際の圧力が弱いために、フィルタ上に存在する異物を押し流す効果が弱くなってしまう。一方で、入り口付近での圧力が10MPaよりも大きい場合には、耐圧配管を用いなければならないので、設備コストが増加してしまうので好ましくない。
【0045】
循環する前記洗浄溶剤中のドープ濃度を、ドープ濃度計53bで計測する。これにより、前記洗浄溶剤の汚れの程度を把握することができる。前記ドープ濃度は、特に限定されるものではないが、前記ドープ濃度が高いと、前記洗浄溶剤中の汚れによりドープ濃度が飽和していることを意味する。したがって、このような前記洗浄溶剤を循環させても、金属フィルタを洗浄する能力に欠けるので、洗浄効果が得られない。前記洗浄溶剤中のドープ濃度は、0.05%以下となることが好ましく、できるかぎり小さい値であることが、より好ましい。上記範囲を満たすようにして洗浄された金属フィルタは洗浄度が高いので、この金属フィルタを焙焼すると、燃焼異物の生成量が大幅に低減された再生品を得ることができる。前記再生品によりセルロースアシレート溶液42を濾過すると、異物や燃焼異物の混入が抑制された高純度のドープ13を得ることができ、このドープ13からは、平面性や光学特性に優れたフイルム19を製造することができる。一方で、ドープ濃度が0.05%よりも大きい場合には、残留する異物量が多いので、このような金属フィルタを焙焼しても、燃焼異物量が非常に多い再生品しか得ることができない。このような再生品でセルロースアシレート溶液を濾過すると、ドープ13中に異物が多量に混入してしまうので、セルロースアシレートフイルムの品質を低下させてしまう。なお、本実施形態では、ドープ濃度計53a,53bを洗浄装置55に組み込んでオンラインで、洗浄溶剤中のドープ濃度を計測する形態を示したが、特に限定はされない。例えば、オンラインでなく、循環している洗浄溶剤を採取してから、ドープ濃度計により、前記洗浄溶剤のドープ濃度を測定してもよい。
【0046】
前記洗浄溶剤中のドープ濃度が0.05%以下の場合には、循環ポンプ52を停止後、バルブ49により切り替えてから、循環させていた前記洗浄溶剤を洗浄装置55外へ排出する。ただし、循環させた後の洗浄溶剤のドープ濃度が0.05%以下の場合には、前記洗浄溶剤はあまり汚れていないので、循環用として再利用することができる。このように、洗浄溶剤を再利用する際には、洗浄溶剤タンク51に一時的に保管しておき、適宜、循環ポンプ52により配管内に送り出せばよい。
【0047】
洗浄した後、濾過装置25bから金属フィルタを取り出す。このとき、濾過装置25bには、新規金属フィルタを取り付ける。この新規金属フィルタは、焼結繊維で構成されたものであればよく、その様態においては特に限定はされない。例えば、あらかじめ、洗浄後に焙焼して作製しておいた再生品でもよいし、未使用品でもよく、適宜選択して使用すればよい。取り出した前記金属フィルタは、焙焼工程に供して焙焼する。前記金属フィルタを焙焼する際には、高温に加熱できる装置(例えば、オーブンなど)を用いるが、この形態は特に限定はされない。また、焙焼する際の温度(焙焼温度)は、ドープ13の原料となるポリマーや添加剤などが燃焼して炭化する程度の温度であり、かつ金属フィルタを構成する焼結繊維の耐熱性などを考慮して適宜選択すればよい。例えば、焼結繊維としてSUS製の金属フィルタを用いて、添加剤に紫外線吸収剤(UV剤)を用いる場合の焙焼温度は、100℃以上600℃以下であることが好ましい。ただし、焙焼工程においては、使用する装置および温度などは、特に限定はされない。
【0048】
上述する再生手順において、循環させる洗浄溶剤中のドープ濃度が、0.05%以下でない場合には、さらに、前記洗浄溶剤を循環させる。一定時間経過後、循環ポンプ52により、前記洗浄溶剤の循環を停止してから、バルブ49を切り替えて前記洗浄溶剤を排出する。このとき、循環させる時間は特に限定はされないが、循環時間が長すぎると、前記洗浄溶剤中のドープ濃度が過飽和しているおそれがあるので、充分な洗浄効果を得ることができない。また、洗浄時間が短すぎると、洗浄が不十分になるおそれがある。したがって、循環させている間は、ドープ濃度計53bにより前記洗浄溶剤中のドープ濃度を測定して、洗浄溶剤の状態を把握することが好ましく、過飽和状態になる前に新しく洗浄溶剤の入れ替えを行うことが好ましい。ドープ濃度を測定するタイミングは、特に限定されないが、例えば、一定時間経過後でもよいし、一定回数循環させた後でもよい。前記洗浄溶剤を排出した後に、再び洗浄溶剤タンク51から新規洗浄溶剤を配管内に送り込み、循環ポンプ52により前記新規洗浄溶剤を循環させて、濾過装置25b内の金属フィルタを洗浄する。この作業は、前記洗浄溶剤のドープ濃度が0.05%以下になるまで繰り返し行う。洗浄溶剤タンク51には、必要に応じて適量の新規洗浄溶剤を入れておく。
【0049】
上述したように、新規洗浄溶剤を送液してから循環させた後に排出して金属フィルタを洗浄する作業は、少なくとも2回以上行うことが好ましく、高洗浄度の金属フィルタを得るうえでは、3回以上行うことがより好ましい。ただし、1回目の洗浄時において、洗浄溶剤中のドープ濃度が0.05%以下となった場合には、そこで洗浄を終了してもよい。このように洗浄溶剤で洗浄した金属フィルタを焙焼すると、この洗浄溶剤が燃焼剤として作用するために、効率よく焙焼させることができるので、さらに燃焼異物の生成量を低減することができる。
【0050】
なお、濾過装置25aを洗浄する場合には、洗浄溶剤タンク51から送り込む洗浄溶剤が濾過装置25aを通過するように、各バルブを切り替えて、濾過装置25bを洗浄した方法と同じようにして洗浄すればよい。このとき、濾過装置25bは、セルロースアシレート溶液42を濾過してドープ13を製造することができるように、各バルブを切り替えておく。
【0051】
濾過する際に用いる前記洗浄溶剤としては、特に限定はされないが、ドープ13の原料として使用する溶媒を用いればよい。例えば、アセトン、エタノール、メタノール、ブタノール、酢酸メチル、ジクロロメタンなどが挙げられる。また、使用する際には、これらの溶媒を単一で使用してもよいし、これらを適宜適量混合して調製した混合溶媒でもよい。また、洗浄溶剤として、1回に配管内に流す量(流量)に関しても特に限定はされない。前記流量は、配管や各種タンクの長さや容量などの形状を考慮して、適宜選択する。
【0052】
ドープ13の製造に関して、素材、原料、添加剤の溶解方法、濾過方法、脱泡、添加方法については、特開2005−104148号公報の[0517]から[0616]に詳しく記載されており、本発明に適用できる。
【0053】
図4に、フイルム製造ライン60を示す。フイルム製造ライン60は、流延室61と剥取ローラ62と渡り部63とテンター64と乾燥室65と巻取室66とからなる。ただし、本発明においては、図4に示す形態に限定されるものではない。
【0054】
流延室65は、流延工程14が実施される場所であり、流延ダイ70と回転ローラ71,72と、流延バンド73と伝熱媒体循環装置74と温調設備75と回収装置76と減圧チャンバ77と給気ダクト78と排気ダクト79とからなる。ドープ製造ライン20で製造されたドープ13を、流延ダイ70から1対の回転ローラ71,72で支持されながら連続的に搬送されている流延バンド73上に流延する。
【0055】
流延ダイ70の下流には、回転ローラ71,72に掛け渡された流延バンド73が設けられている。流延バンド73は、駆動装置(図示しない)により回転ローラ71、72が回転することに伴い無端で走行する。流延バンド73の移動速度、すなわち流延速度は、10m/分以上200m/分以下であることが好ましい。回転ローラ71,72には、伝熱媒体循環装置74が取り付けられており、これにより、流延バンド73の表面温度を所定の値に調整する。このとき、流延バンド73の表面温度は、−20℃以上40℃以下であることが好ましい。回転ローラ71,72内には伝熱媒体流路(図示しない)が形成されており、その中を所定の温度に保持されている伝熱媒体が通過することにより、回転ローラ71,72の温度を所定の値に保持する。
【0056】
流延ダイ70や流延バンド73などが収められている流延室61には、温調設備75が設けられており、これにより、その内部温度が所定の値に保持されている。流延室61の温度は、−10℃以上57℃以下であることが好ましい。また、揮発している有機溶媒を凝縮回収するための凝縮器(コンデンサ)68が設けられている。凝縮液化した有機溶媒は、回収装置76により回収されてから再生されて、ドープ調製用溶媒として再利用される。このように回収溶媒をドープ調整用溶媒として用いた場合には、生産コストを低下させることができる。
【0057】
流延ダイ70からドープ13を流延バンド73上に流延して、流延膜15を形成させる。流延時におけるドープ13の温度は、−10℃以上57℃以下であることが好ましい。また、減圧チャンバ77を流延するドープ13の背面付近に設けて、所望の圧力に調整しながら流延することが好ましい。減圧チャンバ77は、特に限定されるものではないが、所定の温度に保つためのジャケット(図示しない)を備えていることが好ましく、その温度が10℃以上50℃以下の範囲に保持されていることが好ましい。
【0058】
流延膜15は、流延バンド73の走行とともに移動する。このとき、流延膜90中の溶媒を蒸発させるため、送風機(図示しない)を設けることが好ましい。送風機の取り付け位置は、特に限定はされないが、例えば、流延バンド73の上部上流側、下流側、下部に設ければよい。また、形成直後の流延膜15に乾燥風が吹き付けられることによる膜面の面状変動を抑制するために、遮風装置(図示しない)が設けられていることが好ましい。図4においては、流延膜15の支持体として流延バンド73を用いているが、この形態に限定されるものではなく、例えば、流延ドラムを用いることもできる。なお、流延ドラムの表面温度は、−20℃以上40℃以下であることが好ましい。
【0059】
流延膜15が自己支持性を有するものとなった後に、剥取工程16として、剥取ローラ62により、流延バンド73から流延膜15を湿潤フイルム17として連続的に剥ぎ取る。この湿潤フイルム17は、多数のローラが設けられている渡り部53を搬送させてから、テンター54に送り込む。渡り部63には、送風機80が設けられており、これにより所望の温度の乾燥風を送風して、湿潤フイルム17を搬送しながら乾燥させる。このとき、乾燥風の温度は、20℃以上250℃以下であることが好ましい。なお、渡り部63では、下流側のローラの回転速度を上流側のローラの回転速度より速くすることにより湿潤フイルム17にドローを付与させることも可能である。
【0060】
テンター64内においては、湿潤フイルム17の両縁をクリップなどの把持部材で把持して搬送する。このように搬送しながら、溶媒を揮発させて乾燥させる。テンター64内は、異なる温度の区画域を設けて、乾燥条件を調整しながら乾燥させることが好ましい。このとき、テンター64内で湿潤フイルム17を幅方向に延伸させてもよい。この場合、渡り部63および/またはテンター64において、湿潤フイルム17の流延方向と幅方向との少なくとも1方向を0.5%以上300%以下で延伸することが好ましい。
【0061】
テンター64内で、湿潤フイルム17を所定の残留溶媒量まで乾燥した後に、フイルム19として乾燥室65へ送り出す。テンター64と乾燥室65との間に耳切装置90を設けて、フイルム19の両端を切断する。このとき、切断されたフイルムの両端は、カッターブロワー(図示しない)によりクラッシャー91に送られ、そこで粉砕されてチップとなる。このチップは、ドープ調製用に再利用することができ、生産コストを低減することができる。なお、このフイルムの両縁を切断する工程は、省略することもできるが、流延工程14から巻取工程までのいずれかで行うことが好ましい。
【0062】
乾燥室65は、多数のローラ92が備えられている。フイルム19は、このローラ92により支持されながら搬送される間に、溶媒が揮発して乾燥する。乾燥室65内の温度は、特に限定されるものではないが、50℃以上180℃以下の範囲であることが好ましい。乾燥室65には、吸着回収装置93が取り付けられており、これにより、揮発溶媒を吸着回収する。溶媒成分が除去された大気は、乾燥室65内に乾燥風として再度送風される。なお、乾燥室65は、乾燥温度を変えるために複数の区画に分割されていることがより好ましい。
【0063】
乾燥したフイルム19を冷却室94に搬送し、略室温まで冷却する。なお、乾燥室65と冷却室94との間に調湿室(図示しない)を設けてもよい。この調湿室内で、フイルム19に所望の湿度および温度に調整された空気を吹き付けることで、フイルム19上においてカールが発生したり巻取時に巻き取り不良が発生したりするのを抑制することができる。
【0064】
冷却室94の下流には、フイルム19を搬送している間の帯電圧が所定の範囲(例えば、−3kV以上+3kV以下)となるように強制除電装置(除電バー)95を設けている。ただし、この強制除電装置95の設置箇所は、本実施形態に限定されるものではない。さらに、ナーリング付与ローラ96を設けて、フイルム19の両縁に、エンボス加工を施してナーリングを付与することが好ましい。なお、ナーリングされた箇所の凹凸は、1μm以上200μm以下であることが好ましい。
【0065】
フイルム19を巻取室66内に送り込み、その内部に備えられている巻取ローラ97で連続的に巻き取る。このとき、プレスローラ98で、所望のテンションを付与しつつ巻き取ることが好ましい。なお、テンションは巻取開始時から終了時まで徐々に変化させることがより好ましい。巻き取られるフイルム19は、長手方向(流延方向)に少なくとも100m以上とし、幅方向が600mm以上であることが好ましく、1400mm以上1800mm以下であることがより好ましい。ただし、1800mmより大きい場合にも効果がある。
【0066】
流延ダイ、減圧チャンバ、支持体などの構造、共流延、剥離法、延伸、各工程の乾燥条件、ハンドリング方法、カール、平面性矯正後の巻取方法から、溶媒回収方法、フイルム回収方法まで、特開2005−104148号公報の[0617]から[0889]に詳しく記述されている。これらの記載も本発明に適用できる。
【0067】
[機能層]
(帯電防止・硬化層・反射防止・易接着・防眩)
前記セルロースアシレートフイルムの少なくとも一方の面が下塗りされていてもよい。さらに前記セルロースアシレートフイルムをベースフイルムとして、他の機能性層を付与した機能性材料として用いることが好ましい。前記機能性層が帯電防止層、硬化樹脂層、反射防止層、易接着層、防眩層および光学補償層から選択される少なくとも1層を設けることが好ましい。
【0068】
前記機能性層が、少なくとも一種の界面活性剤を0.1mg/m以上1000mg/m 以下含有することが好ましい。また、前記機能性層が、少なくとも一種の滑り剤を0.1mg/m以上1000mg/m以下含有することが好ましい。さらに、前記機能性層が、少なくとも一種のマット剤を0.1mg/m以上1000mg/m以下含有することが好ましい。さらには、前記機能性層が、少なくとも一種の帯電防止剤を1mg/m以上1000mg/m以下含有することが好ましい。セルロースアシレートフイルムに、種々様々な機能、特性を実現するための表面処理機能性層の付与方法は、上記以外にも、特開2005−104148号公報の[0890]から[1087]に詳細な条件、方法も含めて記載されている。これらも本発明に適用できる。
【0069】
このようにして製膜されたセルロースアシレートフイルムは、写真用支持体や液晶表示装置に用いられる偏光板保護フイルムとして有用である。特に、偏光板保護フイルムとして有用であり、このようなフイルムを用いた偏光板も優れた特性を有する。特開2005−104148号公報の[1088]から[1265]に用途について記載されているが、これらも本発明に適用できる。〜は、セルロースアシレートフイルムを、TN型,STN型,VA型,OCB型,反射型、その他の液晶表示装置に用いる例が詳しく記載されている。また、同出願には光学的異方性層を付与した、セルロースアシレートフイルムや、反射防止、防眩機能を付与したセルロースアシレートフイルムについての記載もある。さらに、同出願には、適度な光学性能を付与した二軸性セルロースアシレートフイルムを光学補償フイルムとして用いる例も記載されており、製膜されたセルロースアシレートフイルムは、各種用途に用いることができる。
【0070】
なお、セルロースアシレートフイルムを例に説明をしたが、ドープの原料としてセルロースアシレート以外のポリマーを用いたポリマーフイルムに対しても本発明を適用することもできる。ただし、前記ポリマーフイルムは、光学フイルムであることが好ましく、前記ポリマーフイルムがセルロースエステルフイルムであることが好ましい。前記セルロースエステルフイルムとしては、セルロースアシレートフイルムであることが好ましく、より好ましくはセルロースアセテートフイルムであり、最も好ましくはセルローストリアセテートフイルムである。また、本発明には前記セルロースエステルフイルムを各種光学機能性フイルムに用いるものも含まれる。例えば、写真感光材料のベースフイルム,偏光板の保護フイルム、光学補償フイルムのベースフイルムなどである。さらに、本発明には、前記光学機能性フイルムを用いて構成される液晶表示装置や、フイルムを溶融製膜方法で製造したポリマーフイルムも含まれる。
【0071】
このようにして製造されたフイルムは、フイルムの任意領域における遅相軸と、この任意領域と隣接する全ての領域の遅相軸との軸ズレが、2.0度未満であることが好ましい。なお、軸ズレが1.0度未満であることがより好ましい。さらに、本発明は、フイルムの厚みが、15μm以上100μm以下の薄いフイルムを製造する際にも適用することができる。
【実施例】
【0072】
以下、実験例を示し、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実験例に限定されるものではない。なお、実験を行った際の条件および方法などは、実験例1においてのみ詳細に説明し、その他の実験例に関しては、実験例1と同じ場合、説明は省略する。表1に実施条件および結果を示す。
【0073】
[実験例1]
図1に示す工程に基づき、まず、ドープ製造ライン20を用いて、ドープ13を製造した。セルロースアシレートフイルムを製造するために下記の原料を、各タンクから、それぞれ適量ずつ溶解タンク24に送り込み、第1攪拌羽33および第2攪拌羽34で攪拌させてから、加熱装置41で加熱してセルロースアシレート溶液42を作製した。続いて、このセルロースアシレート溶液42を、材質が金属繊維であり、孔径が100μmの金属フィルタを有する濾過装置25aで濾過してから、ストックタンク26で十分に攪拌してドープ13を製造した。なお、実験例1の濾過装置25aには、あらかじめ、洗浄装置55により、金属フィルタ入り口付近での圧力が1.5MPaとなるように洗浄溶剤を送り込み、最終的に洗浄溶剤中のドープ濃度が0.5%となるまで洗浄した(1回洗浄)後に焙焼した再生品の金属フィルタを用いた。
【0074】
フイルム製造に使用したドープの原料ならびに配合量を下記に示す。
〔ドープ〕
セルローストリアセテート(置換度2.84、粘度平均重合度306、含水率0.2質量%、ジクロロメタン溶液中6質量%の粘度 315mPa・s、平均粒子径1.5mmであって標準偏差0.5mmである粉体) 100質量部
ジクロロメタン(第1溶媒) 320質量部
メタノール(第2溶媒) 83質量部
1−ブタノール(第3溶媒) 3質量部
可塑剤A(トリフェニルフォスフェート) 7.6質量部
可塑剤B(ジフェニルフォスフェート) 3.8質量部
UV剤a:2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾ
トリアゾール 0.7質量部
UV剤b:2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)−5−
クロルベンゾトリアゾール 0.3質量部
クエン酸エステル混合物(クエン酸、モノエチルエステル、ジエチルエステル、トリエチ
ルエステル混合物) 0.006質量部
微粒子(二酸化ケイ素(平均粒径15nm)、モース硬度 約7) 0.05質量部

【0075】
図2に示すフイルム製造ライン60を用いて、ドープ13を流延ダイ70より流延バンド73に連続的に流延し、流延膜15を形成した。このとき、流延ダイ70は、コートハンガー型ダイを用いた。次に、流延膜15を剥取ローラ72で剥ぎ取ってから、湿潤フイルム17として渡り部63に搬送した後に、テンター64および乾燥室65に送り込んで、十分に溶媒を揮発させて(セルロースアシレート)フイルム19を作製した。このとき、乾燥室65内部の温度は、120℃になるように調整し、その搬送速度は40m/分とした。乾燥したフイルム19は、冷却室94に送り込み、ここで略室温まで冷却した後に、巻取室66内の巻取ローラ97で巻き取った。
【0076】
[実験例2]
実験例1と同じ原料および製造条件でセルロースアシレートフイルムを製造した。ただし、セルロースアシレート溶液42を濾過する際には、あらかじめ、洗浄装置55により、金属フィルタ入り口付近での圧力が1.5MPaとなるように洗浄溶剤を送り込み、最終的に洗浄溶剤中のドープ濃度が0.3%になるまで洗浄した(1回洗浄)後に焙焼した再生品の金属フィルタを用いた。
【0077】
[実験例3]
実験例1と同じ原料および製造条件でセルロースアシレートフイルムを製造した。ただし、セルロースアシレート溶液42を濾過する際には、あらかじめ、洗浄装置55により、金属フィルタ入り口付近での圧力が1.5MPaとなるように洗浄溶剤を送り込み、最終的に洗浄溶剤中のドープ濃度が0.1%になるまで洗浄した(2回洗浄)後に焙焼した再生品の金属フィルタを用いた。
【0078】
[実験例4]
実験例1と同じ原料および製造条件でセルロースアシレートフイルムを製造した。ただし、セルロースアシレート溶液42を濾過する際には、あらかじめ、洗浄装置55により、金属フィルタ入り口付近での圧力が1.5MPaとなるように洗浄溶剤を送り込み、最終的に洗浄溶剤中のドープ濃度が0.07%になるまで洗浄した(3回洗浄)後に焙焼した再生品の金属フィルタを用いた。
【0079】
[実験例5]
実験例1と同じ原料および製造条件でセルロースアシレートフイルムを製造した。ただし、セルロースアシレート溶液42を濾過する際には、あらかじめ、洗浄装置55により、金属フィルタ入り口付近での圧力が1.5MPaとなるように洗浄溶剤を送り込み、最終的に洗浄溶剤中のドープ濃度が0.05%になるまで洗浄した(4回洗浄)後に焙焼した再生品の金属フィルタを用いた。
【0080】
[実験例6]
実験例1と同じ原料および製造条件でセルロースアシレートフイルムを製造した。ただし、セルロースアシレート溶液42を濾過する際には、あらかじめ、洗浄装置55により、金属フィルタ入り口付近での圧力が2MPaとなるように洗浄溶剤を送り込み、最終的に洗浄溶剤中のドープ濃度が0.05%になるまで洗浄した(4回洗浄)後に焙焼した再生品の金属フィルタを用いた。
【0081】
[実験例7]
実験例1と同じ原料および製造条件でセルロースアシレートフイルムを製造した。ただし、セルロースアシレート溶液42を濾過する際には、あらかじめ、洗浄装置55により、金属フィルタ入り口付近での圧力が2.5MPaとなるように洗浄溶剤を送り込み、最終的に洗浄溶剤中のドープ濃度が0.05%になるまで洗浄した(4回洗浄)後に焙焼した再生品の金属フィルタを用いた。
【0082】
本実験例の実施条件および結果を表1に示す。
【0083】
【表1】

【0084】
〔本発明での効果の評価方法〕
本発明においては、製品として用いることができないセルロースアシレートフイルムの量を製造損失(m)、異物の混入量が多いなどフイルムの製造に用いることができないドープ量を損失ドープ量(L)として、各実験例でのこれらの値を比較することで、金属フィルタの洗浄度を評価した。なお、各値が小さいほど、優れた洗浄度の金属フィルタが得られたことを示す。
【0085】
表1からも明らかなように、本実験例では、ドープ濃度および金属フィルタ入り口付近での圧力(以下、入り口圧力と称する)を変えて洗浄してから焙焼した金属フィルタの再生品を用いて、フイルムを製造した際の製造損失と損失ドープ量を評価した。その結果、入り口圧力が同じであるにも関わらず、ドープ濃度が高いものほど製造損失および損失ドープ量ともに、大きくなった(実験例1〜5)。一方で、ドープ濃度が同じであるにも関わらず入り口圧力が異なると、入り口圧力の値が1.5MPa(実験例5)に比べて2MPa以上(実験例6、7)とした場合のほうが、製造損失および損失ドープ量ともに低減することができた(実験例6、7は、ともに0)。また、入り口圧力が同じ場合には、洗浄回数を多くしたほうがドープ濃度を低減させるには効果があり、この洗浄回数が少なくとも2回以上であれば、効果的にドープ濃度を低減できることが分かった。以上より、洗浄装置55を用いて、新しく洗浄溶剤を少なくとも2回以上入れ替えて、かつ金属フィルタの入り口付近での圧力を2MPa以上とし、最終的な洗浄溶剤中のドープ濃度が0.05%以下になるまで洗浄すると、洗浄度の高い金属フィルタを得ることができることを確認した。このように洗浄した金属フィルタを焙焼して再生品とし、前記再生品によりセルロースアシレート溶液を濾過すると、異物の混入を低減したドープを得ることができるので、結果として、平面性や光学特性に優れたセルロースアシレートフイルムを製造することができることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明でのセルロースアシレートフイルムの製造工程の流れを示す概略図である。
【図2】本発明でのドープ製造ラインを示す概略図である。
【図3】金属フィルタの再生(洗浄)方法を示すフローチャートである。
【図4】本発明でのフイルム製造ラインを示す概略図である。
【符号の説明】
【0087】
13 ドープ
14 流延工程
15 流延膜
17 湿潤フイルム
19 フイルム
20 ドープ製造ライン
25a,25b 濾過装置
51 洗浄溶剤タンク
52 循環ポンプ
53a,53b ドープ濃度計
55 洗浄装置
60 フイルム製造ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属フィルタによりセルロースアシレート溶液を濾過する濾過装置の金属フィルタの再生方法において、
洗浄溶剤タンクから洗浄溶液をポンプにより前記金属フィルタに送って前記洗浄溶剤タンクに戻す洗浄溶剤循環工程と、
前記洗浄溶剤中のドープ濃度が一定値に達したときに、前記洗浄溶剤を排出し、新たな洗浄溶剤を前記洗浄溶剤タンクに投入する新規洗浄溶剤の投入工程と、
洗浄終了後の前記金属フィルタを焙焼する焙焼工程とを有し、
前記洗浄溶剤循環工程および投入工程とを複数回繰り返すことを特徴とする金属フィルタの再生方法。
【請求項2】
前記洗浄溶剤中のドープ濃度が0.05%以下になるまで、前記洗浄溶剤循環工程と前記投入工程とを繰り返すことを特徴とする請求項1記載の金属フィルタの再生方法。
【請求項3】
前記洗浄溶剤を前記金属フィルタに送り込むときには、その入口付近での圧力が2MPa以上10MPa以下であることを特徴とする請求項1または2記載の金属フィルタの再生方法。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかひとつの方法により再生した金属フィルタを用いて濾過することを特徴とするセルロースアシレート溶液の濾過方法。
【請求項5】
請求項4記載の方法により濾過されたセルロースアシレート溶液を用いることを特徴とするセルロースアシレートフイルムの製造方法。
【請求項6】
洗浄溶剤を保管する洗浄溶剤タンクとこの洗浄溶剤タンクから金属フィルタに洗浄溶剤を送り出すポンプとこれらをつなぐ配管からなり、前記ポンプにより前記洗浄タンクから洗浄溶剤を金属フィルタに送り出して循環させる洗浄溶剤循環ラインと、
前記洗浄溶剤中のドープ濃度が一定値に達したときに、前記洗浄溶剤を排出し、新たな洗浄溶剤を前記洗浄溶剤タンクに投入する新規洗浄溶剤の投入ラインとを有し、
前記洗浄溶剤循環ラインによる前記金属フィルタの洗浄と、前記投入ラインによる新規洗浄溶剤の投入とを交互に行うことを特徴とするセルロースアシレート溶液の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−281200(P2006−281200A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−61506(P2006−61506)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】