説明

金属ランスと樹脂部品との係止構造

【課題】金属ランスが弾性復帰する際に、その先端が樹脂を削ることを防止することが可能な端子金具と樹脂部品との係止構造を提供する。
【解決手段】金属ランス41Bは、端子金具40の一部分を切り起こすことで形成され、キャビティ11への挿入方向の先端側から後側に向かって少しずつ側方に突出する形態をなし、キャビティ11の壁面には、キャビティ11からの端子金具40の抜け方向に対して略直角方向に広がる係止面31が形成され、金属ランス41Bの先端が係止面31に係止するものとされており、キャビティ11の壁面のうち、端子金具40をキャビティ11に挿入する途中の段階で、金属ランス41Bが弾性的に接触する被接触部32から係止面31にわたる部分を、一の金型ピン60で形成し、被接触部32から係止面31に続く部分を面取り形状をなす面取り部33とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ランスと樹脂部品との係止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、樹脂製の部品のキャビティに端子金具を収容した場合に、端子金具を抜け止めする手段として、端子金具に形成した金属ランスを、キャビティの壁面に係止させる方法が知られている(例えば特許文献1)。
金属ランスは、端子金具の一部分を切り起こすことで形成され、キャビティへの挿入方向における先端側から後側に向かって少しずつ側方に突出している。また、キャビティの壁面には、端子金具の抜け方向に対して略直角方向に広がる係止面が形成されている。金属ランスは、端子金具をキャビティに挿入する途中の段階では、キャビティの壁面に接触して弾性変形し、キャビティへの挿入が完了すると同時に弾性復帰して係止面に係止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−140700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような樹脂性の部品を成形する際には、一般に、キャビティの壁面から係止面にわたる部分を、別体の金型ピンを突き合わせて形成している。すなわち、係止面を形成する成形面を有する第1金型ピンと、キャビティの壁面を形成する成形面を有する第2金型ピンとを突き合わせて溶融樹脂を射出した後、これらの金型ピンを逆方向に型抜きしている。このため、キャビティの壁面から係止面に続く部分には、略直角をなす角部が形成される。したがって、金属ランスが弾性復帰する際に、その先端がキャビティの壁面から係止面に続く角部に接触して樹脂を削り、削りくずが生じることがある。このような異物の発生は、部品の性能を低下せしめる虞があるので対策が望まれていた。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、金属ランスが弾性復帰する際に、その先端が樹脂を削ることを防止することが可能な金属ランスと樹脂部品との係止構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の金属ランスと樹脂部品との係止構造は、樹脂製の部品のキャビティに端子金具を収容し、前記端子金具に形成した金属ランスを、前記キャビティの壁面に係止させる金属ランスと樹脂部品との係止構造であって、前記金属ランスは、前記キャビティへの挿入方向の先端側から後側に向かって少しずつ側方に突出する形態をなし、前記キャビティの壁面には、前記キャビティからの前記端子金具の抜け方向に対して略直角方向に広がる係止面が形成され、前記金属ランスの先端が前記係止面に係止するものとされており、前記キャビティの壁面のうち、前記端子金具を前記キャビティに挿入する途中の段階で、前記金属ランスが弾性的に接触する被接触部から前記係止面にわたる部分を、一の金型ピンで形成し、前記被接触部から前記係止面に続く部分を面取り形状をなす面取り部としたものである。
このような構成によれば、金属ランスが弾性復帰する際に、被接触部から係止面に続く角部に、金属ランスの先端が接触しにくいから、その先端が樹脂を削ることを防止することができる。
また、前記面取り部は、曲面であるものとしてもよい。
【0007】
本発明の金属ランスと樹脂部品との係止構造は、樹脂製の部品のキャビティに端子金具を収容し、前記端子金具に形成した金属ランスを、前記キャビティの壁面に係止させる金属ランスと樹脂部品との係止構造であって、前記キャビティの壁面には、前記キャビティからの前記端子金具の抜け方向に対して略直角方向に広がる係止面が形成され、前記金属ランスは、前記キャビティへの挿入方向の先端側から後側に向かって少しずつ外側に突出するとともに、前記係止面に係止する先端部が内側に屈曲した形態とされているものである。
このような構成によれば、金属ランスが弾性復帰する際に、金属ランスの突出部分(先端部と根元側部分との角部)が滑るので、樹脂を削ることを防止することができる。
【0008】
また、前記金属ランスは、前記先端部が前記係止面に沿う角度で屈曲しているものとしてもよい。このような構成によれば、端子金具に抜け方向の力が作用したときに、金属ランスの先端に比して広い部分が係止面に当接するから、樹脂を削ることを防止することができる。
【0009】
また、前記樹脂部品は、バルブが装着されるバルブソケットであって、前記端子金具は、前記バルブと電源側コネクタとの間を電気的に接続するものとしてもよい。
また、前記端子金具は、前記電源側コネクタに接続する雄タブを有し、前記端子金具のうち前記雄タブと同一面上の板面を有する部分に、前記金属ランスが形成されているものとしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、金属ランスが弾性復帰する際に、その先端が樹脂を削ることを防止することが可能な端子金具と樹脂部品との係止構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態1におけるバルブソケットを表す正面図
【図2】バルブソケットの平面図
【図3】バルブソケットの底面図
【図4】バルブソケットの断面構成を示す断面図であって、図2のA−A位置における断面に相当する断面図
【図5】成形金型の概略構成を表す概略図
【図6】端子金具が装着された状態のバルブソケットを表す平面図
【図7】端子金具が装着された状態のバルブソケットの断面構成を示す断面図であって、図6のB−B位置における断面に相当する断面図
【図8】端子金具の側面図
【図9】端子金具の正面図
【図10】端子金具の底面図
【図11】端子金具をキャビティに挿入する途中の段階において金属ランスが弾性変形した様子を表す一部拡大断面図
【図12】端子金具をキャビティに挿入する途中の段階において金属ランスが弾性復帰する様子を表す一部拡大断面図
【図13】端子金具のキャビティへの挿入が完了し、金属ランスが弾性復帰した状態を表す一部拡大断面図
【図14】実施形態2における端子金具のキャビティへの挿入が完了し、金属ランスが弾性復帰した状態を表す一部拡大断面図
【図15】金属ランスを表す一部拡大斜視図
【図16】他の実施形態(3)にかかる金属ランスを表す一部拡大斜視図
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1について、図1〜図13を参照しつつ詳細に説明する。
本実施形態では、樹脂製の部品のキャビティ11に端子金具40を収容し、端子金具40に形成した金属ランス41をキャビティ11の壁面に係止させる、金属ランス41と樹脂部品との係止構造について、樹脂部品が、バルブソケット10である場合について説明する。
【0013】
バルブソケット10は、図示しないウェッジベース型のバルブ(電球)が装着されるものであり、図示しないパネルの取付穴に取り付けられて使用される。バルブソケット10は合成樹脂製であって、バルブが装着されるバルブ装着部12と、図示しない電源側コネクタが嵌合されるコネクタ嵌合部13とを有してなる。以下、各構成部材において、バルブ装着部12側(図1では上側)を上方、コネクタ嵌合部13側(図1では下側)を下方として説明する。
【0014】
バルブ装着部12は、上方へ開口する筒状をなし、上方からバルブが装着可能とされている。バルブ装着部12の断面形状は、図2に示すように、全体として一方向に長い長方形状をなし、幅寸法の大きい一対の壁部(正面壁部14および背面壁部15と称する)と、幅寸法の小さい一対の側面壁部16とを有している。
【0015】
コネクタ嵌合部13は、下方へ開口する筒状をなし、下方から電源側コネクタが嵌合可能とされている。コネクタ嵌合部13の断面形状は、図3に示すように、全体として一方向に若干長い長方形状をなしている。
【0016】
バルブソケット10の中間部には、パネルの取付穴に嵌合する取付嵌合部17が設けられている(図1および図2参照)。取付嵌合部17は、取付穴の形状に整合する略円形断面をなし、その外周面には、取付穴の周縁部を挟持するフランジ部18と係合部19とが設けられている。
フランジ部18は、取付嵌合部17の下端に設けられ、取付嵌合部17の全周から外方へ突出する形態をなし、その外形形状は、取付穴よりも一回り大きい略円形状をなしている。
【0017】
係合部19は、フランジ部18の上方に設けられている。係合部19は、取付嵌合部17の四方に間欠的に設けられ、それぞれ幅寸法(取付嵌合部17の周方向に沿う方向の長さ寸法)が異なるものとされている。4つの係合部19のうち最も幅寸法が大きい係合部19(第1係合部19Aと称する)と、次に幅寸法が大きい係合部19(第2係合部19Bと称する)とが対向する位置に配され、その次に幅寸法が大きい係合部19(第3係合部19Cと称する)は、バルブソケット10を上方から見たときに、第2係合部19Bの時計回りの隣の位置に配され、最も幅寸法が小さい係合部19(第4係合部19Dと称する)は、第3係合部19Cと対向して配置されている。第1係合部19Aおよび第2係合部19Bは、バルブ装着部12およびコネクタ嵌合部13の短手方向の両端に配されている。各係合部19の長手方向における一端側の角部には、取り付け時の回動方向前方へ向かって、フランジ部18から離間する向きの傾斜をなす誘導面21が形成されている。なお、第1係合部19Aの長手方向の端部には、下側へ向かって突片22が突出されている。
【0018】
端子金具40は、バルブと電源側コネクタとの間を電気的に接続するものであり、導電性の金属板を展開形状に打ち抜いた後、順次曲げ加工を施すことで所定形状に形成されている。端子金具40は、本体部42、バルブ側に接続する接続部(接続片43と称する)、および電源側コネクタに接続する接続部(雄タブ44と称する)を有している。
【0019】
本体部42は、全体として略U字に屈曲され、バルブ装着部12の正面壁部14または背面壁部15に沿って配される外側板45と、バルブ装着部12の中央部に配される内側板46と、バルブ装着部12の側面壁部16に沿って配される中間板47とを有している(図6参照)。中間板47は、外側板45の端縁から略垂直方向に屈曲され、内側板46は、中間板47の端縁から外側板45と対向する方向に略垂直に屈曲されている(図10参照)。なお、外側板45と内側板46とは略平行をなしている。また、内側板46のうち中間板47とは反対側の端部における上側の角部には、切欠部48が形成されている(図9参照)。
【0020】
外側板45は、全体として略方形をなし、中間板47および内側板46に比して面積が大きいものとされている。また、中間板47および内側板46は、全体として上下方向に長い長方形状をなし、その上下方向の寸法は、外側板45の上下方向の寸法よりも小さくされている。
【0021】
本体部42の下端縁は水平をなし、すなわち外側板45、中間板47および内側板46の下端縁は、上下方向の位置が水平に揃っている。そして、端子金具40がバルブ装着部12のキャビティ11に収容されると、本体部42の下端縁は、後述するキャビティ11の突当部24に突き当たり、端子金具40の下方への変位を規制する。
【0022】
本体部42の下端には、平板状の雄タブ44が突出している。雄タブ44は、コネクタ嵌合部13内に突出して配され、給電用コネクタの給電端子が導通接続可能となる。雄タブ44は、本体部42の内側板46の下端に設けられ、内側板46と同一面上の板面を有している。雄タブ44は、内側板46の端縁に沿って直線状に延びている。雄タブ44は、内側板46に形成された切欠部48の幅寸法と同等の幅寸法を有している。雄タブ44は、板材が重ねられてなり、そのうちの略半分は、内側板46まで連なる端縁部が重ねられたものである。
【0023】
本体部42の上端には、一対の接続片43が突出している。一対の接続片43は、本体部42の外側板45に並んで設けられ、外側板45の上端から上方に立ち上がり、外側板45と同一面上の板面を有している。
【0024】
一対の接続片43のうち中間板47側に設けられた接続片43(第1接続片43Aと称する)は、他方の接続片(第2接続片43Bと称する)よりも幅寸法が小さくされている。
第1接続片43Aは、その長さ方向の略半分が先端から内側に屈曲され、この屈曲した部分(屈曲部49と称する)は、内外方向に弾性変位可能とされている。屈曲部49の下端部には、さらに内側に突出して、バルブの電極部に接触する第1接点部51が設けられている。
【0025】
第2接続片43Bは、その大部分が、内側に向かって斜めに立ち上がる形態とされている。第2接続片43Bの先端部には、さらに内側に突出して、バルブの電極部に接触する第2接点部52が設けられている。なお、第1接点部51と第2接点部52とは、内外方向における位置がほぼ同じとされている。
【0026】
第1接続片43Aの根元部分から外側板45の上端部分にわたる部分には、端子金具40がキャビティ11に収容されたときに、後述する係合溝28に差し入れられる係合片53が設けられている(図6および図9参照)。係合片53は、中間板47および第1接続片43Aの位置よりも側方に突出している。
【0027】
本体部42の外側板45と内側板46とには、それぞれ金属ランス41が形成されている(図8および図9参照)。なお、外側板45に形成された金属ランス41を外側金属ランス41A、内側板46に形成された金属ランス41を内側金属ランス41Bと称する。外側金属ランス41Aおよび内側金属ランス41Bは、本体部42の一部分を切り起こして形成され、下側(キャビティ11への挿入方向の先端側)から上側(同後側)へ向かって少しずつ側方に突出する片持ち状をなしている。内側金属ランス41Bは、内側板46の板厚方向に弾性変形可能とされ、外側金属ランス41Aは、外側板45の板厚方向に弾性変形可能とされている。両金属ランス41A,41Bは略長方形をなし、上方に向かってわずかに幅狭となる形状とされている。両金属ランス41A,41Bは、ほぼ同じ形状および同じ大きさとされている。各金属ランス41A,41Bの先端(自由端)は、後述する係止面(外側係止面29および内側係止面31)に係止し、この係止により端子金具40がバルブソケット10に対して抜け止め保持される。
【0028】
外側金属ランス41Aは、第2接続片43Bの幅内の下方位置、言い換えると、外側板45の幅方向の中央よりも中間板47とは反対側にわずかに寄った位置に形成されている。外側金属ランス41Aは、外側板45の上下方向の略中間に位置している。
【0029】
内側金属ランス41Bは、内側板46のうち中間板47寄りの略半分の領域に形成され、雄タブ44とは幅方向にずれて位置している。内側金属ランス41Bは、内側板46の上下方向の略中間に位置し、外側金属ランス41Aよりも若干下側、具体的には外側金属ランス41Aの上下方向の長さ寸法の略半分程度下側に位置している。
【0030】
バルブ装着部12には、端子金具40が収容されるキャビティ11が、バルブ装着部12の短手方向の一端側と他端側とに一ずつ形成されている(図2参照)。各キャビティ11は、端子金具40の外側板45が収容される外側収容部11A、中間板47が収容される中間収容部11B、および内側板46が収容される内側収容部11Cを有している。外側収容部11Aの壁面は外側板45の板面に沿い、内側収容部11Cの壁面は内側板46の板面に沿い、中間収容部11Bの壁面は中間板47の板面に沿う。各収容部11A,11B,11Cのうち本体部42の入口となる上端縁部には、上方に向かって入口の幅を広げる傾斜をなす案内面25が形成されている。
【0031】
また、各キャビティ11には、端子金具40の本体部42の下端縁が突き当たる突当部24が設けられている(図7参照)。突当部24は、外側収容部11Aおよび中間収容部11Bに設けられ、外側板45および中間板47の下端縁がそれぞれ突き当たる。
内側収容部11Cには、雄タブ44を挿通するタブ挿通孔26が上下方向に貫通して設けられている。タブ挿通孔26は、バルブ装着部12の略中央に位置している。
【0032】
外側収容部11Aは、バルブ装着部12の正面壁部14および背面壁部15に沿って形成されている。正面壁部14および背面壁部15には、スリット27が一対ずつ形成されている。スリット27は、正面壁部14および背面壁部15の上端から下方に向かって真っすぐに延び、バルブ装着部12のうち取付嵌合部17よりも上方の部分に形成されている(図1参照)。スリット27は、壁厚方向に対して斜め方向に入れられたものである。
【0033】
外側収容部11Aの幅方向の両側には、係合片53および外側板45の側縁部(係合片53とは反対側の側縁部)が差し入れられる係合溝28が形成されている。
外側収容部11Aの壁面には、外側金属ランス41Aが係止する外側係止面29が形成されている。外側係止面29は、正面壁部14または背面壁部15の内周面から取付嵌合部17の外面に至るまで内外方向に貫通する窓部23の周面のうちの上面である。窓部23は、上下方向に長い長方形状をなし、取付嵌合部17に設けられた第1係合部19Aおよび第2係合部19Bの下方に設けられている。
【0034】
中間収容部11Bは、バルブ装着部12の側面壁部16に沿って形成されている。
内側収容部11Cは、バルブ装着部12の中央部に並んで形成されている。内側収容部11Cの壁面には、内側金属ランス41Bが係止する内側係止面31が形成されている。内側係止面31は、タブ挿通孔26の側方(バルブ装着部12の長手方向)にずれた位置に形成されている。内側係止面31は、キャビティ11からの端子金具40の抜け方向に対して略直角方向に広がる水平な面である(図7参照)。内側係止面31は、内側収容部11Cの壁面のうち外側(外側収容部11Aとは反対側)の壁面に形成されている。内側係止面31は、内側収容部11Cの幅寸法を広げる向きに形成され、内側係止面31よりも下側には空間となっている。内側収容部11Cの壁面のうち、内側係止面31よりも上方の部分は、端子金具40をキャビティ11に挿入する途中の段階で、内側金属ランス41Bが弾性的に接触する被接触部32である。被接触部32は垂直をなす面である。
被接触部32から内側係止面31に続く部分は、面取り形状をなす面取り部33とされている。面取り部33は、R面取りされることで曲面とされている。
【0035】
キャビティ11の壁面のうち、被接触部32から内側係止面31にわたる部分は、一の金型ピン60で形成されている(図5参照)。詳しくは、バルブソケット10を成形する下型61には、上方に向けて突出する図示1個の金型ピン60が突出している。金型ピン60は、案内面25の下端まで突出する高さ寸法を有している。金型ピン60は、内側係止面31、面取り部33、被接触部32、およびそれらと反対側の対向する壁面を成形する成形面を有している。金型ピン60の先端には、上型62が突き当たるようになっている。
【0036】
そして、上型62と下型61とを型閉じし、図示しないゲートから溶融樹脂を射出すると、上型62と下型61との間の成形空間に樹脂が充填される。溶融樹脂が固化した後、上型62と下型61とを離型すると、内側係止面31および面取り部33の真下の部分と、被接触部32と対向する壁面との間の部分と、タブ挿通孔26となる部分とに、一つの型抜き穴34が形成される。型抜き穴34は、バルブソケット10を下方から見ると、図3に示すように、一つの横長の長方形状をなし、その中心側の部分がタブ挿通孔26である。なお、型抜き穴34の長さ寸法は、端子金具40の内側板46の幅寸法と同等の寸法である。
【0037】
次に、端子金具40の挿入作業について説明する。
端子金具40をキャビティ11に対して上方から挿入すると、外側板45の側縁部が係合溝28に差し入れられ、雄タブ44がタブ挿通孔26に挿入され、外側金属ランス41Aが外側収容部11Aの壁面に接触して弾性変形する。さらに、端子金具40を下方に押し込むと、内側板46が内側収容部11Cに差し入れられ、内側金属ランス41Bが内側収容部11Cの被接触部32に接触して弾性変形する(図11参照)。そして、内側金属ランス41Bおよび外側金属ランス41Aを弾性変形させたまま、端子金具40をさらに下方へ押し込むと、本体部42の下端縁が突当部24に突き当たり、それと同時に両金属ランス41A,41Bが弾性復帰する。この弾性復帰の際、内側金属ランス41Bの先端は、面取り部33が形成されることで形成された空間を通る(図12参照)。ここで、面取り部33が形成されていない場合には、この空間には、係止面と被接触部とが交差する角部が形成されているから、内側金属ランス41Bの先端がこの角部に接触し、樹脂を削る虞がある。しかしながら、本実施形態では、面取り部33が形成されて、内側金属ランス41Bが弾性復帰する際に、その先端が通過する経路上に空間が形成されているから、前述のように樹脂を削ることを防止することができる。そして、弾性復帰した内側金属ランス41Bの先端は、内側係止面31の下方に位置して内側係止面31に係止する(図13参照)。このとき、内側金属ランス41Bの先端は、内側係止面31の奥端側に位置し、内側金属ランス41Bの先端と面取り部33との間には、内側係止面31の略半分が存在している。また、外側金属ランス41Aの先端は、外側係止面29に係止した状態になり、端子金具40は、バルブソケット10の各キャビティ11にそれぞれ収容されて抜け止めされる。この後、バルブ装着部12にバルブが保持され、コネクタ嵌合部13に電源側コネクタが嵌合されると、端子金具40を介して電源とバルブとが電気的に接続される。
【0038】
以上説明したように実施形態1によれば、キャビティ11の壁面のうち、端子金具40をキャビティ11に挿入する途中の段階で、内側金属ランス41Bが弾性的に接触する被接触部32から内側係止面31にわたる部分を、一の金型ピン60で形成し、被接触部32から内側係止面31に続く部分を面取り形状をなす面取り部33とした。したがって、内側金属ランス41Bが弾性復帰する際に、被接触部32から内側係止面31に続く角部に、内側金属ランス41Bの先端が接触しにくいから、その先端が樹脂を削ることを防止することができる。また、従来においては、内側金属ランスが弾性復帰する際の軌道を確保するため、内側係止面の形成位置を、端子金具を所定位置に収容したときの内側金属ランスの先端の位置よりも、上側(端子金具40の挿入方向の手前側)に離間した位置にする必要があった。しかし、本実施形態によれば、被接触部32から内側係止面31に続く部分が面取り部33とされているから、内側係止面31の形成位置を従来よりも下側(挿入方向の奥側)にすることができる。したがって、内側係止面31と内側金属ランス41Bの先端との間の間隔を小さくでき、もって端子金具40のガタ付きを小さくすることができる。さらに、被接触部32から内側係止面31にわたる部分を一の金型ピン60で形成している。ここで、例えば、面取り部および内側係止面を形成する金型ピン(第1金型ピンと称する)と、被接触部を形成する金型ピン(第2金型ピンと称する)とを別々に設け、これらの金型ピンを突き合わせて面取り部、内側係止面および被接触部を形成する場合には、第1金型ピンの先端が尖り形状となるため、量産に耐え得るだけの強度を確保することが難しい。しかしながら、本実施形態の構成によれば、金型ピン60の先端が尖り形状とならないから、量産に耐え得るだけの強度を容易に確保することができる。
【0039】
<実施形態2>
次に、本発明を具体化した実施形態2について、図14および図15を参照しつつ説明する。
本実施形態は、金属ランス70が、キャビティ11への挿入方向の先端側から後側に向かって少しずつ外側に突出するとともに、係止面31に係止する係止部(先端部)71が内側に屈曲した形態とされている点で、実施形態1とは相違する。なお、本実施形態では、実施形態1と同様、樹脂部品が、バルブソケット10である場合について説明するものとし、実施形態1と同様の構成には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0040】
本実施形態の端子金具40は、実施形態1と同様、本体部42と、バルブ側に接続する接続片43と、電源側コネクタに接続する雄タブ44とを有し、本体部42の外側板45と内側板46とには、それぞれ金属ランスが形成されている。ここでは、本発明を、内側板46に形成された金属ランス70に適用した場合について説明する。
【0041】
バルブソケット10は、実施形態1と同様、図示しないウェッジベース型のバルブ(電球)が装着されるものであり、バルブが装着されるバルブ装着部12と、図示しない電源側コネクタが嵌合されるコネクタ嵌合部13とを有してなり、バルブ装着部12には、端子金具40が収容されるキャビティ11が設けられている。キャビティ11は、実施形態1と同様、端子金具40の外側板45が収容される外側収容部11A、中間板47が収容される中間収容部11B、および内側板46が収容される内側収容部11Cを有し、内側収容部11Cの壁面には、金属ランス70が係止する係止面31が形成されている。係止面31は、実施形態1と同様、キャビティ11からの端子金具40の抜け方向に対して略直角方向に広がる水平な面であり、内側収容部11Cの壁面のうち、係止面31よりも上方の部分は、端子金具40をキャビティ11に挿入する途中の段階で、金属ランス70が弾性的に接触する被接触部32である。なお、被接触部32から係止面31に続く部分は、従来のバルブソケットと同様、略直角をなす角部とされている。
【0042】
金属ランス70は、本体部42の一部分を切り起こすとともに所定形状に屈曲されて形成され、実施形態1と同様に片持ち状をなし、内側板46の板厚方向に弾性変形可能とされている。金属ランス70は、下側から上側へ向かって少しずつ外側に突出する突出部73と、突出部73から内側に屈曲されてなる係止部71とを有している。係止部71は、キャビティ11への端子金具40の収容が完了し、金属ランス70が弾性復帰した状態で、係止面31に沿う(略平行をなす)角度で屈曲されている。このように係止部71が内側に屈曲されたことで、金属ランス70の突出端部72(突出部73と係止部71との角部)はR形状に丸められている。なお、係止部71と突出部73とは鋭角をなしている。
【0043】
次に、端子金具40の挿入作業について説明する。
端子金具40をキャビティ11に対して上方から挿入すると、実施形態1と同様、内側板46が内側収容部11Cに差し入れられ、金属ランス70が内側収容部11Cの被接触部32に接触して弾性変形する。そして、金属ランス70を弾性変形させたまま、端子金具40をさらに下方へ押し込むと、本体部42の下端縁が突当部24に突き当たり、それと同時に金属ランス70が弾性復帰する。この弾性復帰の際、R形状をなす金属ランス70の突出端部72は、係止面31と被接触部32とが交差する角部を滑る。そして、弾性復帰した金属ランス70の係止部71は、係止面31の下方に位置して係止面31に係止する。このとき、係止部71の全体が係止面31と対向して配され、金属ランス70の突出端部72は、係止面31の奥端側に位置している。こうして、端子金具40は、バルブソケット10のキャビティ11に収容されて抜け止めされる。
【0044】
以上のように本実施形態においては、金属ランス70は、キャビティ11への挿入方向の先端側から後側に向かって少しずつ外側に突出するとともに、係止面31に係止する係止部71が内側に屈曲した形態とされているから、金属ランス70が弾性復帰する際に、金属ランス70の突出端部72が滑るので、樹脂を削ることを防止することができる。
【0045】
また、金属ランス70の係止部71は、係止面31に沿う角度で屈曲されているから、端子金具40に抜け方向の力が作用したときに、金属ランス70の先端に比して広い部分が係止面31に当接するので、樹脂を削ることを防止することができる。
このように、金属ランス70により係止面31の角部が削れることを防止できるから、係止面31の係止代が小さくなって係止力が低減する事態を防ぐことができる。
【0046】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0047】
(1)上記実施形態では、樹脂部品がバルブソケット10である場合について説明したが、これに限らず、例えば、樹脂部品は、キャビティに端子金具を収容し、端子金具に形成した金属ランスを、キャビティの壁面に係止させる構造を有するものであればどのような部品であってもよく、例えばコネクタハウジング等であってもよい。
(2)実施形態1では、面取り部33はR面取りとされているが、これに限らず、例えば、面取り部は、角部を斜めに切り落とした形態としてもよく、いわゆるC面取りとしてもよい。
【0048】
(3)実施形態2では、金属ランス70は、本体部42の一部分を切り起こして形成されているが、これに限らず、例えば、図16に示すように、金属ランス70となる部分の周囲を打ち抜き、その内側の部分を曲げ起こして(抜き曲げ)形成してもよい。このような場合には、金属ランス70を切り起こしにより形成する場合に比べて、本体部42の開口面積が大きくなるけれども、金属ランス70は、その根元部分を含む全体が弾性変形しやすくなる。
(4)実施形態2では、係止部71は、金属ランス70が弾性復帰した状態で、係止面31と略平行をなす角度で屈曲されており、端子金具40に抜け方向の力が作用したときには、係止部71の全体が係止面31に当接するものとされているが、これに限らず、例えば、係止部は、金属ランスが弾性復帰した状態では係止面に対して傾斜しており、端子金具が抜け方向に引っ張られたときには、係止部が係止面との当接により弾性変形し、その全体が係止面に押し付けられるものとしてもよい。
【符号の説明】
【0049】
10…バルブソケット(樹脂製の部品)
11…キャビティ
31…内側係止面(係止面)
32…被接触部
33…面取り部
40…端子金具
41B…内側金属ランス(金属ランス)
44…雄タブ
46…内側板(雄タブと同一面上の板面を有する部分)
60…金型ピン
70…金属ランス
71…係止部(先端部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の部品のキャビティに端子金具を収容し、前記端子金具に形成した金属ランスを、前記キャビティの壁面に係止させる金属ランスと樹脂部品との係止構造であって、
前記金属ランスは、前記キャビティへの挿入方向の先端側から後側に向かって少しずつ外側に突出する形態をなし、
前記キャビティの壁面には、前記キャビティからの前記端子金具の抜け方向に対して略直角方向に広がる係止面が形成され、前記金属ランスの先端が前記係止面に係止するものとされており、
前記キャビティの壁面のうち、前記端子金具を前記キャビティに挿入する途中の段階で前記金属ランスが弾性的に接触する被接触部から、前記係止面にわたる部分を、一の金型ピンで形成し、
前記被接触部から前記係止面に続く部分を、面取り形状をなす面取り部とした金属ランスと樹脂部品との係止構造。
【請求項2】
前記面取り部は、曲面である請求項1に記載の金属ランスと樹脂部品との係止構造。
【請求項3】
樹脂製の部品のキャビティに端子金具を収容し、前記端子金具に形成した金属ランスを、前記キャビティの壁面に係止させる金属ランスと樹脂部品との係止構造であって、
前記キャビティの壁面には、前記キャビティからの前記端子金具の抜け方向に対して略直角方向に広がる係止面が形成され、
前記金属ランスは、前記キャビティへの挿入方向の先端側から後側に向かって少しずつ外側に突出するとともに、前記係止面に係止する先端部が内側に屈曲した形態とされている金属ランスと樹脂部品との係止構造。
【請求項4】
前記金属ランスは、前記先端部が前記係止面に沿う角度で屈曲している請求項3に記載の金属ランスと樹脂部品の係止構造。
【請求項5】
前記樹脂部品は、バルブが装着されるバルブソケットであって、
前記端子金具は、前記バルブと電源側コネクタとの間を電気的に接続するものである請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の金属ランスと樹脂部品との係止構造。
【請求項6】
前記端子金具は、前記電源側コネクタに接続する雄タブを有し、
前記端子金具のうち前記雄タブと同一面上の板面を有する部分に、前記金属ランスが形成されている請求項5に記載の金属ランスと樹脂部品との係止構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−109200(P2012−109200A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88080(P2011−88080)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】