説明

金属リチウムの除去方法

【課題】マイクロ電池製造時のリチウム真空堆積プロセスで用いられるメカニカルマスクから安全にリチウムを除去するとともに、該リチウムをリサイクルする方法を提供する。
【解決手段】支持体上の金属リチウムの除去方法は、プラズマ応用ステップを備える。プラズマは、50Wから400Wの間のパワーを持つ炭素源及び酸素源から形成される。プラズマは、金属リチウムを炭酸リチウムに変換する。さらに、水溶液に炭酸リチウムを溶解させるステップを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ応用ステップ(plasma application step)を備える、支持体(support)の上の金属リチウムの除去の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ電池の製造技術は、通常、連続して、例えばPVD(物理的気相成長法)といった真空堆積技術により、凹部(recesses)を持つメカニカルマスク(mechanical mask)を通じて、マイクロ電池(microbattery)の薄膜を堆積することにより構成されている。マスクは、基板の上に位置し、堆積の間、その位置に保持される。堆積後、メカニカルマスクは除去され、基板は所望のパターンを示す。このステップは、最終的な薄膜装置(thin-film device)を形成するために必要な回数だけ、繰り返される。
【0003】
このような技術の使用は、特に、洗浄ステップといった、マスクメンテナンス手順(mask maintenance protocols)の厳密な制御を要求する。このステップの最適化においては、所定の基準を、特に、マスクにダメージを与えないための基準と、プロセスの収率や時間についての基準と、を重要視する。リチウムマイクロ電池の製造の場合、他の安全に関係する基準は、先に述べた基準に追加することができる。洗浄は、その表面に金属リチウムを有するマスクに対して行うことができ、その材料は空気及び水蒸気と接触することにより不安定である。リチウム層の反応は、マスクの上のリチウムの量と比例するものであり、マスクの上にあるリチウムの量は、製造率(production rate)とともに増加する。水によりこのマスクを洗浄することは、水蒸気の存在の下でのリチウムの不安定性によりもたらされる安全性に関する多くのリスクを構成する。
【0004】
欧州特許出願EP1845065には、リチウム遷移金属酸化物(lithiated transition metal oxide)、又は、過リチウム遷移金属酸化物(super-lithiated transition metal oxide)を得ることができる方法が記載されている。この方法は、大量のアルコール系溶液(heavy alcohol-based solution)中に金属リチウムの膜を溶解するステップを備える。例えば、金属リチウム3gの溶解は、室温下のペンチルアルデヒド(pentylaldehyde)溶液中で行われ、2時間後に、反応が完全なものとなる。この方法は、以下の欠点を示す。すなわち、金属リチウムの堆積装置から溶解槽への移動は、リチウムと空気との間の接触のリスクを生じさせることと、このようなプロセスを行うために必要とする時間は、比較的長いこととである。さらに、この方法は、実施が難しく、マスクの洗浄に適したものではない。
【0005】
文献“Plasma cleaning of lithium off of collector optics material for use in extreme ultraviolet lithography applications”(J. Micro/Nanolith. MEMS MOEMS 6(2),023005,2007)には、ヘリウム系プラズマの応用により、オプティックコレクター(optic collector)上のリチウムを洗浄する方法が記載されている。プラズマは、13.56MHzの高周波パワーソースを備える装置によってヘリウムから生成される。ヘリウムプラズマは、極紫外線リソグラフィー(extreme ultraviolet lithography)で用いられる光学ミラー(optic mirror)の表面に存在するリチウムを噴射するために用いられる。ガラス基板の上の薄い膜厚の金属リチウム層は、温度400℃の高周波プラズマの適用によって除去される。しかしながら、この方法は、ゆっくりとしたものであり、全ての厚さのリチウム層に適したものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来技術の欠点を改善する、金属リチウムの除去方法を提供することである。さらに、本発明の目的は、実施が簡単で、使用がシンプルで、迅速な除去のための方法を提供することである。
【0007】
本発明によれば、この目的は、以下のことにより、すなわち、プラズマは、炭素源及び酸素源から形成され、且つ、リチウムを炭酸リチウム(lithium carbonate)に変換するものであることと、方法が、水に炭酸リチウムを溶解させるステップを備えることと、により、達成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
方法は、支持体の上に位置する金属リチウムと化学的に反応するプラズマの適用により構成されている。従って、リチウムは、空気中において安定で、除去が簡単な化合物に変換される。除去は、好ましくは水に溶解させることによって行われる。
【0009】
その表面に金属リチウムを含む支持体の上にプラズマを適用することは、プラズマ化学気相成長法装置(plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition:PECVD)のものと似たチャンバー(chamber)の中で行われる。化学種(chemical species)を含む反応ガスを使用し、化学種を含む反応ガスは、このような装置の中に注入される。装置は、通常、電磁場を形成する高周波タイプのAC供給源を備える。この電磁場は、ガス中に存在する化学種の原子の一部をイオン化し、プラズマを形成する。プラズマは、炭素源と酸素源とから形成される。炭素源は、好ましくは、二酸化炭素(CO)である。また、炭素源は、例えば、Cといった、式C、且つ、X≧1及びY≧1で示される化合物とすることもできる。酸素源は、好ましくは、水(HO)、又は、二原子酸素(diatomic oxygen)(O)である。
【0010】
二酸素(dioxide)及び二酸化炭素を使用した場合、金属リチウムとのプラズマの化学反応は、以下の2つの反応に従って起こる。
【数1】

【数2】

【0011】
第1のステージにおいて、固体リチウムはガス状の二酸素と反応し、固体の酸化リチウムLiOを形成する。第2のステージにおいて、固体の酸化リチウムLiOは、ガス状の二酸化炭素と反応し、固体の炭酸リチウムLiCOを形成する。
【0012】
これらの反応からの結果として得られたLiCO膜は、溶液槽中で溶解される。溶解ステップは、水とのリチウムの反応を特徴付けるガス放出(gas release)が全体的にほとんどないことを、明らかにするものである。反応がほとんど完全に行われた際には、未反応の金属リチウムの量は、ごくわずかである。
【0013】
加熱は、含まれる反応の速度(kinetics)を促進させるために、支持体に対して行うことができる。従って、支持体は、好ましくは、20から200℃の間で加熱される。
【0014】
安定化ステップとも呼ばれるプラズマ応用ステップは、例えば、約233mTorrの圧力と100℃の温度との下で、20分間行われる。ガスのフローレート(flowrate)については、二酸化炭素は、約1.1リットル/分(standard liter per minute(SLM))であり、二酸素は、約5リットル/分
(SLM)である。プラズマは、高周波タイプのAC信号手段により形成され、印加されるパワーは、好ましくは、50Wから400Wの間のものである。プラズマは、低周波で、持続的(continuous)、又は、パルス持続的(pulsed-continuous)なものとすることもできる。
【0015】
例えば、この方法は、Si/SiO(1000Å)/Si(3000Å)の基板の上の厚さ3μmのリチウム層を除去するために、用いられる。
【0016】
これによって、この方法は、金属リチウムを、空気及び水の中で安定な固体化合物である炭酸リチウムLiCOに変換することを可能にする。堆積装置と洗浄装置との間をマスクが移動することがないということは、空気(atomosphere)とのリチウムの反応のリスクを減らすものである。従って、安全性の要求を尊重することができる。さらに、反応速度が高いということは、プロセスを早いものとし、これによって、高い処理率(throughput rate)を促進する。
【0017】
この方法は、様々なアプリケーションにおけるリチウムの除去に適用することができる。特に、リチウムマイクロ電池の製造において用いられるメカニカルマスクを形成する支持体の洗浄には利益がある。反応性ガスとマスクの材料との性質により、方法は、メカニカルマスクにダメージを与えるものではない。方法は、チャンバーに堆積したリチウムの洗浄にも適用することができる。
【0018】
最終的には、方法は、次の使用のためのリサイクルを可能にするために、水溶液中に炭酸リチウムLiCOを生成する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ応用ステップを備える支持体の上の金属リチウムの除去方法であって、前記プラズマは、炭素源及び酸素源から形成され、且つ、前記金属リチウムを炭酸リチウムに変換し、前記方法は、水溶液に前記炭酸リチウムを溶解させるステップを備える、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記プラズマ応用ステップは、50Wから400Wの間のパワーにおいて行われることを特徴とする請求項1に記載の金属リチウムの除去方法。
【請求項3】
前記炭素源は二酸化炭素であり、前記酸素源は二原子酸素である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の金属リチウムの除去方法。
【請求項4】
前記支持体は、20から200℃の間の温度に加熱されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の金属リチウムの除去方法。
【請求項5】
前記支持体は、リチウム電池の製造で用いられるメカニカルマスクであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の金属リチウムの除去方法。

【公開番号】特開2011−9218(P2011−9218A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−142250(P2010−142250)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(510225292)コミサリア ア レネルジー アトミック エ オ ゼネルジー アルテルナティブ (97)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
【住所又は居所原語表記】Batiment Le Ponant D,25 rue Leblanc,F−75015 Paris, FRANCE
【Fターム(参考)】