説明

金属リン酸塩

【課題】より高い輝度を示すことができる金属リン酸塩を提供する。
【解決手段】式(1)で表される化合物における元素M2の一部が、希土類元素およびMnからなる群より選ばれる1種以上の元素(M3)で置換された化合物からなる金属リン酸塩。M12abc(1)(ここで、M1は、Li、NaおよびKからなる群より選ばれる1種以上のアルカリ金属元素を表し、M2はMg、Ca、SrおよびBaからなる群より選ばれる1種以上のアルカリ土類金属元素を表し、aは3以上5以下の範囲の値であり、bは2以上4以下の範囲の値であり、cは8.5以上15.5以下の範囲の値である)。前記金属リン酸塩を含有する蛍光体。前記蛍光体を有する発光素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属リン酸塩に関する。
【背景技術】
【0002】
金属リン酸塩は、蛍光体、燃料電池用固体電解質などに用いられている。中でも、蛍光体は、励起源を照射あるいは印加することにより発光することから、発光素子に用いられている。前記発光素子としては、ディスプレイ、ランプ等を挙げることができる。金属リン酸塩からなる蛍光体として、Sr3(PO42:Euで表される金属リン酸塩が、非特許文献1に記載されている。
【0003】
【非特許文献1】蛍光体同学会編、「蛍光体ハンドブック」、日本、オーム社、1987年、p.217
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記金属リン酸塩からなる蛍光体は輝度が十分とはいえず、また、発光色もディスプレイに適しているとはいえないことから、複写機用蛍光ランプ用蛍光体など、限定された用途にしか用いられていない。本発明の目的は、より高い輝度を示すことができる金属リン酸塩を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、本発明に至った。
すなわち本発明は、下記の発明を提供する。
<1>式(1)で表される化合物における元素M2の一部が、希土類元素およびMnからなる群より選ばれる1種以上の元素(M3)で置換された化合物からなる金属リン酸塩。
12abc (1)
(ここで、M1は、Li、NaおよびKからなる群より選ばれる1種以上のアルカリ金属元素を表し、M2はMg、Ca、SrおよびBaからなる群より選ばれる1種以上のアルカリ土類金属元素を表し、aは3以上5以下の範囲の値であり、bは2以上4以下の範囲の値であり、cは8.5以上15.5以下の範囲の値である。)
<2>式(2)で表される化合物からなる金属リン酸塩。
1(M21-x3x4(PO43 (2)
(ここで、M1、M2およびM3は前記と同じ意味を有し、xは0を超え0.5以下の範囲の値である。)
<3>前記M2がMgである前記<1>または<2>に記載の金属リン酸塩。
<4>前記M3がEuおよび/またはTbである前記<1>〜<3>のいずれかに記載の金属リン酸塩。
<5>前記<1>〜<4>のいずれかに記載の金属リン酸塩を含有する蛍光体。
<6>前記<5>記載の蛍光体を有する蛍光体ペースト。
<7>前記<6>記載の蛍光体ペーストを基板に塗布後、熱処理することにより得られる蛍光体層。
<8>前記<5>記載の蛍光体を有する発光素子。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、従来の蛍光体に比し、より高い発光輝度を示す蛍光体を与えることのできる金属リン酸塩を提供することができる。該金属リン酸塩を含有する蛍光体は、液晶ディスプレイ用バックライト等の紫外線励起発光素子、フィールドエミッションディスプレイ等の電子線励起発光素子、白色LED等の発光素子、プラズマディスプレイパネル等の真空紫外線励起発光素子、などの発光素子用として使用でき、特に、ディスプレイ用、とりわけプラズマディスプレイパネル用として好適に使用される。また、本発明の金属リン酸塩は、燃料電池用固体電解質用などとしても使用でき、本発明は、工業的に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明は、式(1)で表される化合物における元素M2の一部が、希土類元素およびMnからなる群より選ばれる1種以上の元素(M3)で置換された化合物からなる金属リン酸塩を提供する。
12abc (1)
(ここで、M1は、Li、NaおよびKからなる群より選ばれる1種以上のアルカリ金属元素を表し、M2はMg、Ca、SrおよびBaからなる群より選ばれる1種以上のアルカリ土類金属元素を表し、aは3以上5以下の範囲の値であり、bは2以上4以下の範囲の値であり、cは8.5以上15.5以下の範囲の値である。)
【0008】
また、本発明は、式(2)で表される化合物からなる金属リン酸塩を提供する。
1(M21-x3x4(PO43 (2)
(ここで、M1、M2およびM3は前記と同じ意味を有し、xは0を超え0.5以下の範囲の値である。)
【0009】
本発明において、より発光輝度を高める観点から、M1はNaであることが好ましい。この場合、M1の一部をLiおよび/またはKで置換しても良い。また、本発明において、より発光輝度を高める観点から、M2はMgであることが好ましい。
【0010】
また、本発明において、M3はEuおよび/またはTbであることが好ましい。このように、M3を選択することで、本発明の効果をより高めることができる。この場合、M3の一部をAl、Y、La、Gd、Pr、Nd、Sm、Dy、Ho、ErおよびBiからなる群より選ばれる1種以上の元素で置換してもよい。
【0011】
また、上記式(2)において、発光輝度をより高める観点で、好ましいxの範囲は、0を超え0.2以下の範囲である。
【0012】
次に、本発明の金属リン酸塩を製造する方法について説明する。
本発明の金属リン酸塩は、例えば、次のようにして製造することができる。本発明の金属リン酸塩は、焼成により本発明の金属リン酸塩となり得る組成を含有する金属化合物混合物を焼成することにより製造することができる。具体的には、対応する金属元素を含有する化合物を所定の組成となるように秤量し混合した後に得られた金属化合物混合物を焼成することにより製造することができる。
【0013】
具体的に、例えば式(2)で表される化合物からなる金属リン酸塩の場合には、M1を含有する化合物、M2を含有する化合物、M3を含有する化合物、Pを含有する化合物の各原料を、M1:M2:M3:Pのモル比が1:(4×(1−x)):(4×x):3となるように秤量し、それらを混合して得られる金属化合物混合物を焼成することにより製造される。
【0014】
前記の金属元素を含有する化合物で、M1を含有する化合物、M2を含有する化合物、M3を含有する化合物としては、例えば、酸化物を用いるか、または水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物、シュウ酸塩、リン酸塩など高温で分解および/または酸化して酸化物になりうるものを用いることができる。また、Pを含有する化合物としては、H3PO4、(NH42HPO4を用いることができる。
【0015】
前記の混合には、例えばボールミル、V型混合機、攪拌機等の通常工業的に用いられている装置を用いることができる。このとき乾式混合、湿式混合のいずれによってもよい。また晶析による工程を経てもよい。
【0016】
前記金属化合物混合物を、必要に応じて焼成容器に入れ、通常700℃〜1500℃の範囲の温度、好ましくは750℃〜1000℃の範囲の温度にて、通常0.5時間以上100時間以下の時間、保持して焼成することにより本発明の金属リン酸塩が得られる。
金属化合物混合物に水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物、シュウ酸塩など高温で分解および/または酸化しうる化合物を使用した場合、前記の焼成温度より低い温度で保持して仮焼を行い、酸化物としたり、結晶水を除去したりした後に、前記の焼成を行うことも可能である。仮焼を行う雰囲気は不活性ガス雰囲気、酸化性雰囲気もしくは還元性雰囲気のいずれでもよい。また仮焼後に粉砕することもできる。
【0017】
焼成を行う雰囲気としては、例えば、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気;空気、酸素、酸素含有窒素、酸素含有アルゴン等の酸化性雰囲気;水素を0.1から10体積%含有する水素含有窒素、水素を0.1から10体積%含有する水素含有アルゴン等の還元性雰囲気が挙げられる。強い還元性の雰囲気で焼成する場合には適量の炭素を金属化合物混合物に含有させて焼成するなどの技術を駆使してもよい。
【0018】
また、前記の焼成容器としては、上記の温度、雰囲気において、金属化合物混合物との反応性が低い材質の容器が好ましく、好ましい容器としては、例えば、Au製容器、Pt製容器を挙げることができる。
【0019】
上記の金属元素を含有する化合物としてフッ化物、塩化物等のハロゲン化物を適量用いることにより、生成する金属リン酸塩の結晶性、金属リン酸塩を構成する粒子の平均粒径を制御することができる。この場合、ハロゲン化物は、反応促進剤(フラックス)としての役割を果たす場合もある。フラックスとしては、例えば、LiF、NaF、KF、LiCl、NaCl、KCl、MgF2、CaF2、SrF2、BaF2、MgCl2、CaCl2、SrCl2、BaCl2、MgI2、CaI2、SrI2、BaI2などのハロゲン化物、Li2CO3、Na2CO3、K2CO3、NaHCO3などの炭酸塩、NH4Cl、NH4Iなどのアンモニウム塩、B23、H3BO3などのホウ素化合物を挙げることができ、これらを金属化合物混合物の原料として、あるいは、金属化合物混合物に適量添加して用いることができる。
【0020】
また、金属リン酸塩を構成する各元素の組成は、GD−MS分析装置等を用いて、測定することができる。
【0021】
上記により得られる金属リン酸塩を、例えばボールミルやジェットミル等を用いて粉砕したり、洗浄あるいは分級してもよい。また、粉砕と焼成を2回以上行ってもよい。また、金属リン酸塩の粒子表面を表面修飾材で被覆するなどの表面処理を施してもよい。表面修飾材としては、Si、Al、Ti等を含有する無機物質を挙げることができる。
【0022】
上記のようにして得られる金属リン酸塩は、単独で、または被覆などの表面処理を施すなどして、蛍光体として用いることができる。本発明の金属リン酸塩を含有する蛍光体は、各種励起源の照射により、高い発光輝度を示すことができる。
【0023】
次に、本発明の蛍光体を有する蛍光体ペーストについて説明する。
本発明の蛍光体ペーストは、本発明の蛍光体および有機物を主成分として含有し、該有機物としては、溶剤、バインダー等が挙げられる。本発明の蛍光体ペーストは、従来の発光素子の製造において使用されている蛍光体ペーストと同様に用いることができる。蛍光体ペーストを用いて、塗布などにより製膜後、熱処理することにより蛍光体ペースト中の有機物を揮発、燃焼、分解等により除去し、本発明の蛍光体から実質的になる蛍光体層を得ることができる。
【0024】
本発明の蛍光体ペーストは、例えば、特開平10−255671号公報に開示されているような公知の方法により製造することができ、例えば、本発明の蛍光体とバインダーと溶剤とを、ボールミルや三本ロール等を用いて混合することにより、得ることができる。
【0025】
前記バインダーとしては、セルロース系樹脂(エチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルセルロース、セルロースプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロース、ブチルセルロース、ベンジルセルロース、変性セルロースなど)、アクリル系樹脂(アクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、フェノキシアクリレート、フェノキシメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、スチレン、α−メチルスチレンアクリルアミド、メタアクリルアミド、アクリロニトリル、メタアクリロニトリルなどの単量体のうちの少なくとも1種の重合体)、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、プロピレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。
【0026】
また前記溶剤としては、例えば1価アルコールのうち高沸点のもの;エチレングリコールやグリセリンに代表されるジオールやトリオールなどの多価アルコール;アルコールをエーテル化および/またはエステル化した化合物(エチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルアセテート)などが挙げられる。
【0027】
前記のようにして得られた蛍光体ペーストを、基板に塗布後、熱処理して得られる蛍光体層も、蛍光体と同様に発光強度が高い。基板としては、材質はガラス基板、樹脂フィルム等であってもよく、また、形状は板状のもの、容器状のものであってもよく、さらにフレキシブルなものであってもよい。また、塗布の方法としては、スクリーン印刷法、インクジェット法等が挙げられる。また、熱処理の温度としては、通常、300℃〜600℃である。また、基板に塗布後、熱処理を行う前に、室温〜300℃の温度で乾燥を行ってもよい。
【0028】
また、本発明の発光素子は、前記の蛍光体を有する。発光素子は、通常、蛍光体とその励起源、必要に応じて、他の蛍光体を有する。
【0029】
ここで、本発明の蛍光体を有する発光素子の例として真空紫外線励起発光素子であるプラズマディスプレイパネルを挙げてその製造方法について説明する。プラズマディスプレイパネルの製造方法としては例えば、特開平10−195428号公報に開示されているような公知の方法が使用できる。すなわち、本発明の蛍光体が青色発光を示す場合は、緑色蛍光体、赤色蛍光体、本発明の青色蛍光体により構成されるそれぞれの蛍光体を、例えば、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコールからなるバインダーおよび溶剤と混合して蛍光体ペーストを調製する。背面基板の内面の、隔壁で仕切られアドレス電極を備えたストライプ状の基板表面と隔壁面に、蛍光体ペーストをスクリーン印刷などの方法によって塗布し、300〜600℃の温度範囲で熱処理し、それぞれの蛍光体層を得る。これに、蛍光体層と直交する方向の透明電極およびバス電極を備え、内面に誘電体層と保護層を設けた表面ガラス基板を重ねて接着する。内部を排気して低圧のXeやNe等の希ガスを封入し、放電空間を形成させることにより、プラズマディスプレイパネルを製造することができる。
【0030】
次に本発明の蛍光体を有する発光素子として電子線励起発光素子であるフィールドエミッションディスプレイを挙げてその製造方法について説明する。フィールドエミッションディスプレイの製造方法としては例えば、特開2002−138279号公報に開示されているような公知の方法が使用できる。すなわち、本発明の蛍光体が青色発光を示す場合は、緑色蛍光体、赤色蛍光体、本発明の青色蛍光体により構成されるそれぞれの蛍光体を、それぞれ、例えば、ポリビニルアルコール水溶液などに分散して蛍光体ペーストを調製する。その蛍光体ペーストをガラス基板上に塗布後、熱処理することにより蛍光体層を得てフェイスプレートとする。そのフェイスプレートと多数の電子放出素子を有するリアプレートとを支持枠を介して組立てるとともに、これらの間隙を真空排気しつつ気密封止するなど通常の工程を経て、フィールドエミッションディスプレイを製造することができる。
【0031】
次に本発明の蛍光体を有する発光素子として白色LEDを挙げてその製造方法について説明する。白色LEDの製造方法としては例えば、特開平5−152609号公報および特開平7−99345号公報等に開示されているような公知の方法が使用できる。すなわち本発明の蛍光体を少なくとも含有する蛍光体を、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、シリコンゴムなどの透光性樹脂中に分散させ、その蛍光体を分散させた樹脂を青色LEDまたは紫外LEDを取り囲むように成形することにより、白色LEDを製造することができる。
【0032】
次に本発明の蛍光体を有する発光素子として紫外線励起発光素子である高負荷蛍光ランプ(ランプの管壁の単位面積当りの消費電力が大きな小型の蛍光ランプ)を挙げてその製造方法について説明する。高負荷蛍光ランプの製造方法としては例えば、特開平10−251636号公報に開示されているような公知の方法が使用できる。すなわち、本発明の蛍光体が青色発光を示す場合は、緑色蛍光体、赤色蛍光体、本発明の青色蛍光体により構成されるそれぞれの蛍光体を、例えば、ポリエチレンオキサイド水溶液などに分散して蛍光体ペーストを調製する。この蛍光体ペーストをガラス管内壁に塗布し、乾燥を行ったあと、300〜600℃の温度範囲で熱処理し、蛍光体層を得る。これに、フィラメントを装着したのち、排気など通常の工程を経て、低圧のAr、KrやNe等の希ガスおよび水銀を封入して口金を取り付けて放電空間を形成させることにより、高負荷蛍光ランプを製造することができる。
【実施例】
【0033】
次に、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。なお、以下における色度xおよび色度yとは、CIE(国際照明委員会:Commission Internationale de l’Eclairage)の定めたCIE表色系のXYZ表色系における色度xおよび色度yを意味する。また、粉末X線回折測定は、金属リン酸塩を専用の基板に充填し、CuKα線源を用いて、回折角2θ=10°〜70°の範囲にて行った。
【0034】
比較例1(Sr3(PO42:Eu)
炭酸ストロンチウム(SrCO3、関東化学(株)製)、酸化ユーロピウム(Eu23、信越化学(株)製)、リン酸水素二アンモニウム((NH32HPO4、関東化学(株)製)を、Sr:Eu:Pのモル比が2.955:0.045:1を満足するように、秤量し、混合し、金属化合物混合物を得た。該混合物を、2体積%H2含有N2雰囲気下において、1200℃で2時間保持して焼成し、室温(25℃)まで冷却後、再度、2体積%H2含有N2雰囲気下において、1200℃で2時間保持して焼成して、金属リン酸塩1を得た。
【0035】
この金属リン酸塩1に、6.7Pa(5×10-2Torr)以下で室温(約25℃)の真空槽内で、エキシマ172nmランプ(ウシオ電機社製、H0016型)を用いて真空紫外線を照射して得られる発光について、分光放射計(株式会社トプコン製SR−3)を用いて評価したところ、発光輝度は8cd/cm2と低く、しかも、発光色は紫(色度xは0.175、色度yは0.024)であり、ディスプレイ用蛍光体として、不適であることがわかった。
【0036】
実施例1(NaMg4(PO43:Eu)
シュウ酸ナトリウム(Na224、ナカライテスク株式会社製)と炭酸マグネシウム(MgCO3、協和化学(株)製)、硝酸ユーロピウム6水和物(Eu(NO33・6H2O、関東化学株式会社製)、リン酸水素二アンモニウム((NH32HPO4、関東化学(株)製)の各原料をNa:Mg:Eu:Pのモル比が1:3.96:0.04:3となるように秤量し、乳鉢を用いて乾式混合を行った後、得られた金属化合物混合物をPt製の容器に入れ、2体積%H2含有N2雰囲気下において950℃で6時間保持して焼成して、金属リン酸塩2を得た。金属リン酸塩2につき、粉末X線回折測定を行い、得られた図形を図1に示す。
【0037】
この金属リン酸塩2に、6.7Pa(5×10-2Torr)以下で室温(約25℃)の真空槽内で、エキシマ172nmランプ(ウシオ電機社製、H0016型)を用いて真空紫外線を照射して得られる発光について、分光放射計(株式会社トプコン製SR−3)を用いて評価したところ、発光輝度は28cd/cm2と金属リン酸塩1の場合に比して極めて高く、しかも、発光色は青色(色度xは0.164、色度yは0.058)であり、ディスプレイ用蛍光体として、好適であることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施例1における金属リン酸塩2の粉末X線回折図形。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物における元素M2の一部が、希土類元素およびMnからなる群より選ばれる1種以上の元素(M3)で置換された化合物からなる金属リン酸塩。
12abc (1)
(ここで、M1は、Li、NaおよびKからなる群より選ばれる1種以上のアルカリ金属元素を表し、M2はMg、Ca、SrおよびBaからなる群より選ばれる1種以上のアルカリ土類金属元素を表し、aは3以上5以下の範囲の値であり、bは2以上4以下の範囲の値であり、cは8.5以上15.5以下の範囲の値である。)
【請求項2】
式(2)で表される化合物からなる金属リン酸塩。
1(M21-x3x4(PO43 (2)
(ここで、M1、M2およびM3は前記と同じ意味を有し、xは0を超え0.5以下の範囲の値である。)
【請求項3】
前記M2がMgである請求項1または2に記載の金属リン酸塩。
【請求項4】
前記M3がEuおよび/またはTbである請求項1〜3のいずれかに記載の金属リン酸塩。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の金属リン酸塩を含有する蛍光体。
【請求項6】
請求項5記載の蛍光体を有する蛍光体ペースト。
【請求項7】
請求項6記載の蛍光体ペーストを基板に塗布後、熱処理することにより得られる蛍光体層。
【請求項8】
請求項5記載の蛍光体を有する発光素子。

【図1】
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【公開番号】特開2009−179692(P2009−179692A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−19033(P2008−19033)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】